説明

マイクロ電極システムからなるマイクロアレイを有するDNAチップ

本発明は、支持体(14)と、この支持体(14)に配置された固定捕捉分子を含むスポット(1)のマイクロアレイとを備え、各スポット(1)が捕捉分子とスポット(1)上に付着させられる検体溶液(38)との間の結合事象をインピーダンス分光法により検出するためのマイクロ電極システムを含んでいるDNAチップに関する。マイクロ電極システムは薄膜4極システムであり、薄膜4極システムは、交番電磁場を発生するための一対の分極電極(2,4)と検体(38)内の電圧降下を測定するための一対のセンサ電極(8,10)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に相当するマイクロ電極システムからなるマイクロアレイを備えたDNAチップに関する。
【0002】
DNAチップは一般的に大抵は平らに形成された支持体を含み、この支持体上にスポットからなるマイクロアレイが配置されている。スポットは、支持体表面および電極の上に固定された捕捉分子、例えばオリゴヌクレオチドを含んでいる。分析実施のために、標的分子、例えばDNA断片を含んでいる検体溶液がスポット上にもたらされる。塩基配列が相補的に一致した場合、標的分子がスポットの捕捉分子に連結される。分析結果の読出し、すなわち連結もしくは結合事象の起きたスポットの決定は、例えば光学的に、熱量測定により、あるいは電気的に行なわれる。
【0003】
独国特許第19610115号明細書および刊行物「“Nanoscaled interdigitated electrode arrays for biochemical sensor(生化学センサ用のナノ規模のインターディジタル構造の電極アレイ)”,Van Gerwen et al., Sensor and Actuators,B49,1998,73−80,Elsevier Science S.A.」から、結合事象の電気的検出のために2極の電極システムを有する電気的読出し可能なDNAチップが知られている。これらのDNAチップはそれぞれ、交流電流を印加される互いにかみ合わせられた一対の櫛形電極から形成されている。電極範囲において起きる結合事象は、例えば導電値および検体の固有静電容量の如き電気的パラメータを変化させ、それに応じてマイクロ電極システムにより検出可能である。
【0004】
この種のDNAチップにおける問題点は、電極寸法が単分子状態で支持体表面および電極表面の上に存在する捕捉分子の分子寸法に比べて非常に大きいことにある。従って、そこで起きる結合事象は検出困難である。上記のファン・ゲルベン(van Gerwen)らの場合には測定効果もしくは感度の改善のために電極を縮小することが提案されている。しかしながら、技術的および経済的な理由から縮小化には限界がある。
【0005】
他の問題点は、生化学分子の検出の際に比較的高い電解液導電値およびそれに応じた低い検体インピーダンスが存在することにある。これに、電極と検体との間の電解質二重層静電容量によってひき起こされる大抵は非常に高い電極インピーダンスが重なる。検体インピーダンスと電極インピーダンスとの分離はほとんど不可能である。更に、小さい検体インピーダンスにより、非常に高い測定周波数が必要である。これは、従来の測定技術によれば非常に困難である。なぜならば、ケーブル静電容量などの如き寄生静電容量が測定の妨げになるからである。
【0006】
従来のDNAチップの場合、検体の静電容量つまりインピーダンスを検出するための測定効果が非常に弱く目立たないかまたは存在しない。そのうえに、測定周波数がMHz範囲になければならない。更に、電極において起きる全ての化学的または物理学的なプロセス(例えば、生化学分子で覆われること、分極、電極の腐食、膜形成など)が電極間での測定に影響する。
【0007】
更に、独国特許出願公開第10015816号明細書から、酸化還元サイクリングプロセスの電気的監視のための2極電極システムを可能にする電気的読出し可能なDNAチップが知られている。場合によっては、この上に更に、酸化還元サイクリングプロセスを制御するために電位を印加される第3の電極が存在し得る。
【0008】
本発明の課題は、従来技術から出発して、検体固有の測定値の検出を簡単化する改善された電気的読出し可能なDNAチップを提供することにある。
【0009】
この課題は請求項1の特徴事項全体によって解決される。実施態様は従属請求項に示されている。
【0010】
本発明においては、マイクロ電極システムが薄膜4極システムとして構成されている。DNAチップは、交番電磁場を発生するための一対の分極電極と、検体内に結合により誘発された電圧降下を測定するためのセンサ電極とを有する。分極電極には、与えられた振幅および与えられた周波数の交流電流もしくは交流電圧が印加される。センサ電極とセンサ電極に接続された高抵抗測定増幅器とにより結合事象によってひき起こされたインピーダンス変化が電圧変化として分極なしに取出される。従って、電極インピーダンスの妨害的影響は除去されている。センサ電極での電圧取出しは高抵抗で行なわれるので、大きな電流がセンサ電極から流出したりまたはセンサ電極に流入したりすることはない。これによって、センサ電極には付加的な分極が起こらず、このことは、分極、膜形成、酸化などの上述の不都合な影響を最小化する。この影響は分極電極においては依然として発生し得るが、しかし、もっぱらセンサ電極を介する電圧測定により測定結果には入ってこないかまたは極めて僅かしか入ってこない。
【0011】
分極化させる分極電極と、実際上障害となる化学的または物理学的事象を起こさない測定用センサ電極との分離によって、好ましいことに、測定品質が著しく向上する。薄膜電極を有する4極システムの構成が重要であり、このような薄膜電極は好ましいことに半導体技術において知られている方法によってチップ内に集積することができる。
【0012】
本発明の有利な実施態様では、DNAチップの支持体がシリコン基板を含み、シリコン基板上にマイクロ電極システムが薄膜技術で集積されている。電極はSi基板内にある集積回路に直接に接続されている。好ましいことに、特に、例えば10MHz以上の高周波範囲での測定の場合にとりわけ障害として目立っていた配線静電容量が存在しない。従って、上述の実施態様のDNAチップは高い測定周波数においても適用可能である。
【0013】
上述の措置にもかかわらず、なおも、測定に関与する電極間に他の寄生静電容量が存在し、これらは不都合な場合には検体内のインピーダンス測定の際に障害となり得る。この場合に弊害除去のために、本発明の他の有利な実施態様では、センサ電極に遮蔽電極が付設され、遮蔽電極はセンサ電極と同電位に保たれている。センサ電極に接続されているゲイン1のバッファ増幅器によって、センサ電極の電位が遮蔽電極に保持されていると好ましい。バッファ増幅器は能動電子要素として電位、電流強さもしくは電荷を減結合する。付加的な遮蔽電極と他の電極との間に生じる寄生静電容量は測定に対しては電気的に作用しない。なぜならば、静電容量の充電または放電が能動増幅器によって引き受けられ、従って測定装置および電位測定用センサ電極は負荷を軽減されているからである。遮蔽電極は、例えばセンサ電極の両側で実施されもよいし、あるいはセンサ電極と分極電極との間にのみ存在してもよい。遮蔽電極による遮蔽作用と遮蔽電極挿入による電極ユニットの距離増大は個々のケースにおいて十分に吟味すべきである。
【0014】
バッファ増幅器はDNAチップ上に集積されている。これによってDNAチップの特にコンパクトで有効な構成が得られる。配線はできるかぎり短く保たれ、それにより信号線全体における妨害をできるかぎり良好に排除することができる。
【0015】
センサ電極および遮蔽電極の内部において測定を悪化させる電流の流れが生じるのを避けるために、これらの電極は電位電極よりも明白に小さくすべきである。1μmの電位電極幅の場合、これは上述の電極にとって技術上もはや実現不可能な更なる縮小化を意味する。そこで、有利な実施態様では他の方法がとられる。この場合にはセンサ電極および/または遮蔽電極が検体から完全に直流電気的に絶縁され、それにより検体と電極との間に電流の流れが生じるのが阻止される。
【0016】
他の有利な実施態様では、これはセンサ電極の点状の形成によって達成される。この場合、センサ電極での電圧降下を取出すための装置は高い入力インピーダンスおよび低い入力静電容量を有することが必要である。点状のセンサ電極の電気接続は基板内に埋め込まれた母線によって行なわれ、母線はスルーホールを介してセンサ電極に電気的に接続されている。
【0017】
生化学分析システムとしてのDNAチップの適性を保証するために、電極形状およびそれにともなうインピーダンス分光検出範囲ができるだけ生化学分子の大きさに近づけられねばならない。しかしながら、約500nmを下回る超小型化の電極幅は非常に高い費用のかかる技術でしか実現可能でない。さらに、4電極システムの場合、分極電極間には他の電極、例えばセンサ電極があるので、分極電極の相互間隔が2電極システムの場合よりも元来大きいことが難点である。特に有利な実施態様では、結合事象が行なわれてインピーダンス分光法による検出が行われる空間を著しく拡大する反応層が設けられ、反応層内にマイクロ電極が埋め込まれている。従って、反応層により、検出可能な結合事象の個数およびそれにともなうDNAチップの測定効果もしくは感度を著しく増大させることができる。
【0018】
反応層は、好ましくは電極幅と相関させられかつ好ましくは電極幅の約5〜10倍の値に相当する厚みを有する。いずれの場合にも反応層は100μm以下の厚みであるべきである。さもなければ標的分子が捕捉分子へ移動するための拡散経路が長くなりすぎ、それにより反応時間が長くなりすぎるからである。電極幅として1μm(1000nm)から出発するならば、反応層の厚みは約5〜10μmにある。これにより、反応層上にもたらされた検体溶液に含まれている標的分子が十分な速度で拡散できることが保証されている。反応層の形成のためにヒドロゲルが特に適していることが分かった。
【0019】
特許請求の範囲に関連した以下の図面に基づく実施例の説明から本発明の更なる詳細および利点を明らかにする。
図1はインターディジタル構造の電極マイクロシステムを有するDNAチップの平面図を示す。
図2は埋設された母線を有する電極マイクロシステムの平面図を示す。
図3は点状のセンサ電極を有する電極マイクロシステムの平面図を示す。
図4は図1の電極マイクロシステムの線IV−IVに沿った断面図を、反応層なしの場合(a)と反応層ありの場合(b)について示す。
図5は図1の電極マイクロシステムの線IV−IVに沿った断面図を、条帯上にある電極が部分的に埋設されている場合(a)と完全に埋設されている場合(b)について示す。
図6は電極装置の平面図を、インターディジタル構造の場合(a)と埋設された電極母線およびスルーホールを有する場合(b)について示す。
図7は遮蔽電極および種々の絶縁されたもしくは埋め込まれた電極(a)〜(e)を有する電極装置を横断面図で示す。
図8は種々の実施形態(a)〜(f)にて上下に重なっている分極電極およびセンサ電極を有する電極装置を横断面図で示す。
図9は異なった装置技術の組合せ例(a)〜(d)にてそれぞれ原理的表示にて電極装置を横断面図で示す。
【0020】
図1はDNAチップの一部分の平面図を示し、支持体14が示されている。この部分はスポット1を示す。このマイクロ電極システムは一対の分極電極2,4を示している。分極電極2,4は電流源6から給電される。電流源6は電極2,4を通して流れる交流電流を発生し、交流電流は電極装置上にある詳しくは示されていない検体を分極させる。従って、検体が電流源6と分極電極2,4とを介して電流路を閉成する。
【0021】
更に、図1には一対のセンサ電極8,10が示されている。これらのセンサ電極8,10は高抵抗の電圧計12に接続されている。両分極電極2,4間において、支持体14および電極の上にもたらされた導電性の検体が電流線を形成するので、センサ電極8,10は異なる電位の検体の範囲に接触する。この電位差が電圧計12に指示される。電圧計12は高抵抗の入力インピーダンスを有するので、検体とセンサ電極8,10との間には大きな電荷移送は起こらず、つまり大きな電流の流れは生じない。
【0022】
図1において全部で4つの電極2,4,8,10がインターディジタル構造で配置されている。図示の電極装置は、マイクロチップの一部として、例えば薄膜技術の使用によって、例えばシリコンの支持体14上に、例えばシリコン酸化物の電気絶縁被膜(図示されていない。)とともに形成されている。全ての電極は電気絶縁間隙16によって互いに分離されている。象徴的に示されている電流源6および電圧計12は、一般に集積電気回路として、支持体14内で例えば電極の下に形成されている。この装置は拡張方向17に強く圧縮されて示されている。同じことが図2、図3および図6に当てはまる。
【0023】
図2に示された本発明の実施形態は同様に一対の分極電極2,4と一対のセンサ電極8,10とを含む。しかしながら、電極の個々の部分は図1におけるように櫛形もしくは蛇行状に互いに形成されていない。各電極型は、それぞれ互いに電気的に絶縁された縦長の多数の条片としてチップ表面上に形成されている。例えば分極電極2,4のそれぞれ2つの条片と、センサ電極8,10のそれぞれ4つの条片とが示されている。
【0024】
電気的接続のために、各電極型には電極母線が付設されている。分極電極2には例えば母線18が付設されている。従って、分極電極2の両条片は電気的スルーホール20によりその分極電極2に付設された母線18に接続されている。他の全ての電極4,8,10に対して母線18は電気的に絶縁されている。このために、母線は、例えば支持体14の絶縁被膜36内に埋め込まれているか、または少なくとも互いにおよび他の全ての電極に対して電気的に絶縁されている。第2の電極4にはスルーホール24を備えた母線22が付設されている。
【0025】
図3においては、図1および図2と同様に、分極電極およびセンサ電極の幅wおよび間隔gの幾何学的寸法がほぼ等しい大きさであることがわかる。これは場合によっては問題をもたらす。なぜならば、4極測定法の場合には一般にセンサ電極が常に分極電極よりも著しく小さく形成されているからである。従って、図3にはセンサ電極の代替的な実施例が示されている。センサ電極10は母線26を含んでいる。母線26は、図2における母線18,22に相応して、基板内に埋め込まれるか、もしくは例えば他の線および検体から十分に電気的に絶縁されるように構成されている。センサ電極10と検体との間の接触は、図1および図2におけるように平面的ではなく、点状の個別電極28を介してのみ形成される。
【0026】
各個別電極28は点状の電極ヘッド30を有し、電極ヘッド30は電気的スルーホール32により電極母線26に接続されている。電極幅wおよび電極間隔gが等しいにもかかわらず、この措置によって、センサ電極8,10の有効電極面が分極電極2,4の面と比べて著しく小さいことが達成される。ここに改めて、実際の装置においては電極の長さlが電極幅wよりも著しく大きいことが示されている。
【0027】
図1の線IV−IVに沿った断面が図4および図5に示されている。図4aには、本来は一般に単結晶のチップ支持体、従って例えばシリコン基板34と、例えばシリコン酸化物からなる電気絶縁膜36とからなる支持体14の構成を示す。絶縁膜36および間隙16によって電極2,4,8,10は互いに電気的に絶縁されている。チップ表面および電極に接触する検体38は分極電極2,4で終了する電流線40によって貫通されている。これらの電流線40は、分極電流が電流源6から分極電極2,4を介して検体38へ供給されることによって生じる。
【0028】
後者の装置では、捕捉分子をチップ表面の直ぐ上の非常に薄い膜42に付着させることができる。このための方法は従来技術から十分に知られている。検体38からの標的分子は膜42の捕捉分子へ向かって拡散する。一般に、膜42においてのみ結合事象が起き、そこでのみ検出される。膜42において媒体の電気特性が結合事象により変化するので、検出が行なわれる。検体38内の電流割合および電圧割合が変化し、センサ電極8,10で相応に変化した電圧が取出される。しかしながら、電流線40の経過から分かるように、電磁場が貫通する空間のうち非常に僅かな部分しか反応に利用されない。検体の電気特性の、この種の装置において発生する変化、およびこれにともなうセンサ電極8,10間における検出可能な電圧は、場合によっては測定電圧の測定技術上検出可能な範囲以下にある。
【0029】
改善は、図4bに示されているように、DNAチップ上に反応層44を被着することによって行なうことができる。この反応層44、例えばヒドロゲルにおいては、これの全容積に捕捉分子を埋め込む又は固定することができる。反応層44は約5〜10μmだけの厚みに実施される。従って、非常に薄い反応層44内へ迅速に拡散することのできる検体38からの標的分子と捕捉分子との間で化学反応が生じる。それゆえ、反応層44における化学反応もしくは電気パラメータ変化が電流線40を著しく大きな範囲に浸透させる。従って、電圧計12において著しく大きな電圧が測定される。
【0030】
図5aおよび図5bにおいては、分極電極2,4が電気絶縁性条帯46上にあり支持体14の表面に対して隔てられている。これは、特定の場合に、すなわち固定されている種と検体との特定の組合せのために、検体空間48内に一層好ましい電磁場分布を生じる。センサ電極8,10間でできるだけ大きな電圧差を電圧計12にて測定できると好ましい。
【0031】
図5aでは、両センサ電極8,10が支持体14内に部分的に埋め込まれている。図5bでは、これらの両電極が支持体14内に完全に埋め込まれ、従って検体空間48から直流電気的に分離されている。埋め込み度合または直流電気的分離は、検体38および固定されている種に応じて、電圧計12での信頼できる測定結果の獲得にとって好都合になったりあるいは不都合になったりする。分極電極2,4の担持体としての条帯46の選択も、場合に応じて好都合になったりあるいは不都合になったりする。構造的配置の相応の選択は多くの場合実験的に見つけ出すことができる。
【0032】
図6aおよび図6bは、再度、種々の電極の構成および接続技術についての種々の実施形態を、チップ製造時の半導体プロセスにおけるレイアウトおよび使用される技術に関して示す。図6aは分極電極2,4に関して図1の実施形態に対応する。もちろん、この場合、センサ電極8,10は、分極電極2,4とほぼ同じレイアウトにあるが、しかし分極電極2,4の下では電気絶縁性中間層すなわち条帯46によって分離されている。この装置の断面図が図8に示されている。DNAチップのこの種の構成によって、両電極型にとってすなわちセンサ電極および分極電極4,2にとって、ほぼ、半導体プロセスにおいて達成可能な最小限の構造寸法および間隔を相互に許容する非常にコンパクトな構成が達成される。更に、重ね合わせて配置されている電極の構成によって、図3に示された構成におけると類似して、両電極型の大きさ間の有効な関係が影響を受け、つまりセンサ電極8,10は分極電極2,4に比べて小さな大きさを示す。
【0033】
図6bは図2に示された装置に対応するが、ただし、ここでも図6aにおけると同様に電極型が横に並べて配置されているのではなく、上下に重ねて配置されている。図6bに示された構成においても分極電極2,4は再びセンサ電極10,8上の電気絶縁性条帯46上にあるが、条帯はこの平面図には示されていない。この装置の線A−Aに沿った断面は図6aにおけると同様にここでも図8に対応する。ただし、上下に重なっている電極は交換されている、すなわち分極電極2もしくは4はセンサ電極10もしくは8の上にある。
【0034】
使用される技術もしくはレイアウトの選択は、大抵、使用される半導体プロセスおよびDNAチップにより解決すべき課題の実状および周辺条件に従う。もちろん、説明した技術の組合せの実現も可能である。例えば、分極電極を図6aに従って櫛形のインターディジタル構造に構成し、センサ電極を図6bに従って母線にスルーホール接続された個別条片として構成し、両装置を条帯46によって分離して上下に重ねて配置することも考えられ得る。
【0035】
図7において、各センサ電極8,10にはそれぞれ2つの遮蔽電極50,52が付設されている。バッファ増幅器54によって、センサ電極8,10のそれぞれの電位が遮蔽電極50,52において電気的に活性に保たれる。遮蔽電極が無い場合にセンサ電極8,10と分極電極2,4との間に作用する寄生静電容量56,58,60が、この措置によって、装置の図示されていない電気的な等価回路からすぐに分かるように、部分的に電気的に作用しなくなる。なぜならば、存在する遮蔽電極により寄生静電容量62〜74が形成されるからである。しかしながら、このうち、静電容量62,68,74のみが、測定装置すなわち電圧計12および電流源6に付設された電流計における測定にとって有効である。他の静電容量はバッファ増幅器54を介して給電され、すなわちバッファ増幅器54を介して充放電され、それにより測定に入り込まず、このことは一般に著しく改善された測定結果をもたらす。従って、これらの寄生静電容量は、もはやセンサ電極と分極電極との間のインピーダンスには不利に作用しない。
【0036】
バッファ増幅器54は半導体技術により直接に支持体14内において電極装置の下方に実現することができる。これによって信号経路が短縮され、付加的な静電容量ができるだけ小さく保たれ、従って測定装置全体の周波数特性が好都合に影響を及ぼされる。個々の電極の配置に関する図7に示された種々の実施形態は、1つまたは複数の電極が検体から直流電気的に絶縁されているか、もしくは完全にまたは部分的に基板内に埋め込まれていることによって異なる。直流電気的な絶縁は、図7aにおけるように、例えば電極上における付加的な酸化膜の形成によって、あるいは図7eにおけるように、全ての関与する電極について電極埋め込みによって行なわれる。図7において、ここでも、図示された変形例間の種々の組合せが考えられ得る。これらは、シミュレーションによって又は実験にて、チップの個別的な測定または構成の要求に合わせることができる。
【0037】
図8においてもセンサ電極および分極電極からなる装置の種々の組合せが示されている。分極電極は常に支持体上の条帯の上に固定されているのに対して、センサ電極はそれぞれ条帯の下部または内部に配置されている。この措置によってDNAチップの極めてコンパクトな構造様式が達成される。なぜならば、電極型間の間隔を最小にすることができるからである。
【0038】
図9は、図8に応じた電極からなる構成を示す。ここでは付加的に1つ又は複数の遮蔽電極が、センサ電極の間に、もしくは分極電極の下方に、又はセンサ電極と分極電極との下、または両電極間に設けられている。図9に示された配置にも特定の構成の選択に関して上述のことが当てはまる。
【0039】
図示された実施形態は列挙した技術の種々の組合せの実現例である。もちろん、たびたび言及したように、明示した組合せ以外も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】インターディジタル構造の電極マイクロシステムを有するDNAチップの平面図
【図2】埋設された母線を有する電極マイクロシステムの平面図
【図3】図1の電極マイクロシステムの線IV−IVに沿った断面を、反応層なしの場合(a)および反応層ありの場合(b)について示す断面図
【図4】点状のセンサ電極を有する電極マイクロシステムの平面図
【図5】図1の電極マイクロシステムの線IV−IVに沿った断面を、条帯上にある電極が部分的に埋設されている場合(a)と完全に埋設されている場合(b)について示す断面図
【図6】電極装置を、インターディジタル構造の場合(a)と埋設された電極母線およびスルーホールを有する場合(b)について示す平面図
【図7】遮蔽電極および種々の絶縁されたもしくは埋め込まれた電極(a)〜(e)を備えた電極装置の横断面図
【図8】種々の実施形態(a)〜(f)にて上下に重なっている分極電極およびセンサ電極を有する電極装置の横断面図
【図9】異なった装置技術の組合せ例(a)〜(d)にて電極装置を示す横断面図
【符号の説明】
【0041】
1 スポット
2 分極電極
4 分極電極
6 電流源
8 センサ電極
10 センサ電極
12 電圧計
14 支持体
16 間隙
17 拡張方向
18 母線
20 電気的スルーホール
22 母線
24 電気的スルーホール
26 母線
28 個別電極
30 点状の電極ヘッド
32 電気的スルーホール
34 シリコン基板
36 絶縁被膜
38 検体
40 電流線
42 膜
44 反応層
46 条帯
48 検体空間
50 遮蔽電極
52 遮蔽電極
54 バッファ増幅器
56 寄生静電容量
58 寄生静電容量
60 寄生静電容量
62 寄生静電容量
64 寄生静電容量
66 寄生静電容量
68 寄生静電容量
70 寄生静電容量
72 寄生静電容量
74 寄生静電容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(14)と、この支持体(14)に配置されかつ固定されている捕捉分子を含むスポット(1)のマイクロアレイとを備え、各スポット(1)が、捕捉分子とスポット(1)上にもたらされた検体溶液(38)の標的分子との間の結合事象をインピーダンス分光法により検出するためのマイクロ電極システムを含んでいるDNAチップおいて、マイクロ電極システムは薄膜4極システムであり、薄膜4極システムは、交番電磁場を発生するための2つの分極電極(2,4)と、検体(38)内の電圧降下を測定するための2つのセンサ電極(8,10)とを有することを特徴とするDNAチップ。
【請求項2】
支持体(14)がシリコン基板(34)を含み、シリコン基板(34)上にマイクロ電極システムが薄膜技術で集積されていることを特徴とする請求項1記載のDNAチップ。
【請求項3】
少なくとも1つのセンサ電極(8,10)に遮蔽電極(50,52)が付設され、遮蔽電極(50,52)はセンサ電極(8,10)と同電位に保たれていることを特徴とする請求項1又は2記載のDNAチップ。
【請求項4】
センサ電極(8,10)に接続されているゲイン1のバッファ増幅器(54)によって、センサ電極(8,10)の電位が遮蔽電極(50,52)に保持されていることを特徴とする請求項3記載のDNAチップ。
【請求項5】
バッファ増幅器(54)は支持体(14)上に集積されていることを特徴とする請求項4記載のDNAチップ。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサ電極(8,10)および/または少なくとも1つの遮蔽電極(50,52)が検体(38)から直流電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載のDNAチップ。
【請求項7】
センサ電極(8,10)は点状の個別電極(28)を含み、個別電極(28)は、スルーホール(32)により、埋め込まれた電極母線(26)に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載のDNAチップ。
【請求項8】
薄膜マイクロ電極システムは、捕捉分子を含む反応層(44)内に埋め込まれていることを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載のDNAチップ。
【請求項9】
反応層(44)の厚みは100μm以下であり、電極幅もしくは電極間隙と相関させられていることを特徴とする請求項8記載のDNAチップ。
【請求項10】
電極幅が1μmであり、反応層(44)の厚みは電極幅の約5〜10倍の値に相当することを特徴とする請求項9記載のDNAチップ。
【請求項11】
反応層(44)はヒドロゲルであることを特徴とする請求項8又は9記載のDNAチップ。
【請求項12】
薄膜4極システムは二重蛇行状電流タップを備えたインターディジタル構造の電流電極装置を形成していることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載のDNAチップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2006−510881(P2006−510881A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561039(P2004−561039)
【出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【国際出願番号】PCT/DE2003/004127
【国際公開番号】WO2004/057334
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【出願人】(500048328)インフィニオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
【Fターム(参考)】