説明

マイクロ電磁バルブ

【課題】敏捷な切換え動作を行い得るマイクロ電磁バルブを提供することにある。
【解決手段】軸線方向中間部と軸線方向両端部とにポートを持つシリンダ1と、そのシリンダの軸線方向に往復移動可能にそのシリンダ内に収容されるとともに永久磁石を有し、前記シリンダの軸線方向両端部のポートを選択的に閉止するプランジャ2と、前記シリンダの軸線方向中間部のポートを挟んだ両側の部分の少なくとも一方の周囲に設けられた電磁石6と、前記シリンダの内周面に形成され、そのシリンダの軸線方向に延在するとともに前記軸線方向中間部のポートに連通する一または複数の通路溝1eと、を具えてなるマイクロ電磁バルブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁石の作用によりシリンダ内でプランジャが往復移動することで3ポート2位置切り換え弁として機能するシャトルバルブ型の電磁バルブに関し、特にはマイクロリアクタ、化学装置、空圧制御機器等に適するようにバルブ全体の小型化を進めたマイクロ電磁バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述の如きシャトルバルブ型の電磁バルブとしては従来、例えば特許文献1記載のものが知られており、この電磁バルブは、軸線方向中間部と軸線方向両端部とにポートを持つシリンダと、そのシリンダ内にそのシリンダの軸線方向に往復移動可能に収容されるとともに内部に永久磁石を埋設され、さらに周囲にその移動方向へ延在する複数の通路溝を形成されたプランジャと、シリンダの軸線方向中央部を挟んだ両側の部分の周囲に設けられた二つの電磁石とを具えている。
【0003】
かかる従来のシャトルバルブ型の電磁バルブでは、二つの電磁石にシリンダの軸線方向両端部の磁極がある互いに同一の極性になるように通電すると、プランジャ内の永久磁石の一方の端部がシリンダの一方の端部に磁力で引かれるとともにプランジャ内の永久磁石の他方の端部がシリンダの他方の端部から磁力で反発されて、プランジャがシリンダのその一方の端部に押し付けられてその一方の端部のポートを閉止し、その一方でシリンダの他方の端部のポートとシリンダの軸線方向中間部のポートとがプランジャの周囲の通路溝を介して連通する。
【0004】
また、二つの電磁石にシリンダの軸線方向両端部の磁極が上記と逆の互いに同一の極性になるように通電すると、同様にしてプランジャがシリンダの上記他方の端部に押し付けられてその他方の端部のポートを閉止し、その一方でシリンダの上記一方の端部のポートとシリンダの軸線方向中間部のポートとがプランジャの周囲の通路溝を介して連通する。
【0005】
従ってこの従来の電磁バルブは、二つの電磁石への通電状態の切換えにより、シリンダの軸線方向中間部のポートを両端部のポートに選択的に連通させる2位置電磁バルブとして機能する。
【特許文献1】特開平8−138932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のシャトルバルブ型の電磁バルブは、流体が満ちているシリンダ内を押し退けながらプランジャが移動し、その際プランジャの周囲の表面積の大きい通路溝内をその表面に接触しつつ流体が通過することから、流体の粘性による摩擦抵抗の影響を大きく受ける。一般に粘性の影響は小型化するほど顕著になるので、この問題は電磁バルブの小型化を進めると特に重大な問題となってくる。それゆえ、電磁バルブの小型化のためにプランジャを小型化した場合には敏捷な切換え動作が困難になるという問題があった。
【0007】
また、シャトルバルブ型の電磁バルブひいてはプランジャを小型化しつつ、流量の確保のために通路溝の断面積を大きくすると、内部の永久磁石を小さくせざるを得ず、このことも敏捷な切換え動作を妨げるという問題があった。
【0008】
さらに、上記従来のシャトルバルブ型の電磁バルブは、電磁石のみでプランジャをシリンダの何れか一方の端部に維持するものであるため、プランジャの位置を保持し続けるには電磁石への通電を常に続ける必要があり、電磁石の発熱が大きな問題となった。特に、小型の電磁石ではこの問題は重大であった。また、通電をやめるとプランジャが自由になり、バルブとして機能しなくなるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明のマイクロ電磁バルブは、電磁石の作用によりシリンダ内でプランジャが往復移動することで3ポート2位置切り換え弁として機能するシャトルバルブ型の電磁バルブであって、軸線方向中間部と軸線方向両端部とにポートを持つシリンダと、そのシリンダの軸線方向に往復移動可能にそのシリンダ内に収容されるとともに永久磁石を有し、前記シリンダの軸線方向両端部のポートを選択的に閉止するプランジャ(プランジャ自体が永久磁石の場合も含む)と、前記シリンダの軸線方向中間部のポートを挟んだ両側の部分の少なくとも一方の周囲に設けられた電磁石と、前記シリンダの内周面に形成され、そのシリンダの軸線方向に延在するとともに前記軸線方向中間部のポートに連通する一または複数の通路溝と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0010】
かかるこの発明のシャトルバルブ型のマイクロ電磁バルブは、シリンダの軸線方向中間部のポートを挟んだ両側の部分の一方のみに電磁石を具える場合には、その電磁石に近い側の、シリンダの軸線方向一端部の磁極が、シリンダ内のプランジャの永久磁石の、そのシリンダの軸線方向一端部に対向する側の端部の磁極と異なる磁性になるようにその電磁石に通電すると、シリンダ内のプランジャの永久磁石の、シリンダの上記一端部に対向する端部がシリンダの上記一端部に磁力で引かれてプランジャがその一端部に移動して、その一端部のポートを閉止し、これによりシリンダの軸線方向中間部のポートがシリンダの軸線方向他端部のポートとのみ、シリンダ内周面の通路溝を介して連通する。そして電磁石の通電方向を上記と逆にすれば、シリンダ内のプランジャの永久磁石の、シリンダの上記一端部に対向する端部がシリンダの上記一端部から磁力で反発されてシリンダの他端部に移動して、その他端部のポートを閉止し、これによりシリンダの軸線方向中間部のポートがシリンダの軸線方向の上記一端部のポートとのみ、シリンダ内周面の通路溝を介して連通する。
【0011】
またシリンダの軸線方向中間部のポートを挟んだ両側の部分の両方に電磁石を具える場合には、それらのうちの一方の電磁石に近い側のシリンダの軸線方向一端部の磁極が、シリンダ内のプランジャの永久磁石の、そのシリンダの軸線方向一端部に対向する側の端部の磁極と異なる磁性になるとともに、それらのうちの他方の電磁石に近い側のシリンダの軸線方向他端部の磁極が、シリンダ内のプランジャの永久磁石の、そのシリンダの軸線方向他端部に対向する側の端部の磁極と同じ磁性になるように通電すると、シリンダ内のプランジャの永久磁石の、シリンダの上記一端部に対向する端部が磁力で引かれるとともにそのプランジャの永久磁石の他方の端部がシリンダの軸線方向他端部から磁力で反発されてプランジャがシリンダの軸線方向のその一端部のポートを閉止し、これによりシリンダの軸線方向中間部のポートがシリンダの軸線方向他端部のポートとのみ、シリンダ内周面の通路溝を介して連通する。そして両方の電磁石の通電方向を上記と逆にすれば、シリンダ内のプランジャの永久磁石の、シリンダの上記一端部に対向する端部がシリンダの上記一端部から磁力で反発されるとともにそのプランジャの永久磁石の他方の端部がシリンダの軸線方向他端部に磁力で引かれてプランジャがシリンダの軸線方向のその他端部のポートを閉止し、これによりシリンダの軸線方向中間部のポートがシリンダの軸線方向の上記一端部のポートとのみ、シリンダ内周面の通路溝を介して連通する。
【0012】
従って、この発明のマイクロ電磁バルブによれば、電磁石がシリンダの軸線方向中間部のポートを挟んだ片側のみの場合も両側にある場合も何れも、その電磁石への通電状態の切換えにより、シリンダの軸線方向中間部のポートを両端部のポートに選択的に連通させる2位置電磁バルブとして機能することができる。
【0013】
しかも、この発明のマイクロ電磁バルブによれば、シリンダ内をプランジャが移動する際にプランジャが接するのが、シリンダの内周面に形成された一または複数の通路溝内の流体であることから、プランジャの、流体が接しながら通過する面積が、プランジャ自体に通路溝が設けられた従来のシャトルバルブ型の電磁バルブの場合よりも小さくなって、流体の粘性による摩擦抵抗の影響が小さくなるので、電磁バルブひいてはそのプランジャを小型化してマイクロ電磁バルブを構成しても、敏捷な切換え動作を行うことができる。
【0014】
さらに、この発明のマイクロ電磁バルブによれば、通路溝をシリンダの内周面に形成していることから、電磁バルブひいてはそのプランジャを小型化してマイクロ電磁バルブを構成しつつ、流量の確保のために通路溝の断面積を大きくしても、プランジャの永久磁石を小さくせずに済むので、この点からも敏捷な切換え動作を可能にすることができる。
【0015】
なお、この発明のマイクロ電磁バルブにおいては、前記プランジャを前記シリンダの軸線方向両端部のポートへ向けて前記電磁石より弱い力で附勢するプランジャ固定用磁性体もしくはプランジャ固定用永久磁石を具えていても良く、このようにすれば、電磁石のみでなくプランジャ固定用磁性体またはプランジャ固定用永久磁石でもプランジャをシリンダの端部に維持しているため、小型の電磁石でもシリンダ端部へのプランジャの維持のための発熱が問題とならず、また停電等何らかの原因で電磁石への給電が止まった場合でも、プランジャが自由になるのを防止し得て、バルブとしての機能を維持し続けることができる。
【0016】
ここで、前記プランジャ固定用磁性体および前記プランジャ固定用永久磁石は、前記シリンダの軸線方向両端部のポート近傍にそれぞれ設けられていても良く、また、前記プランジャ固定用永久磁石は、前記シリンダの軸線方向中間部に設けられていても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a)は、この発明のマイクロ電磁バルブの第1実施例の構成をそこにおけるプランジャが電磁石に近い側の、シリンダの軸線方向一端部に移動した状態で示す断面図、また図1(b)は、その第1実施例のマイクロ電磁バルブの構成をそこにおけるプランジャが電磁石から遠い近い側の、シリンダの軸線方向他端部に移動した状態で示す断面図であり、図中符号1はシリンダ、2は永久磁石で形成されたプランジャをそれぞれ示す。
【0018】
この第1実施例のマイクロ電磁バルブにおける上記シリンダ1は、図では左右方向へ中心孔1aの軸線が延在するもので、図では左端部から軸線方向中央に近い中間部まで延在する例えば外経6mmで内径2mmの円筒状の大径部1bと、図では右端部付近からその大径部1bまで延在する例えば外経3mmで内径2mmの円筒状の小径部1cとを一体に有するとともに、その小径部1cに固定されて図では右端部に位置する例えば外経6mmで内径2mmのワッシャ状のフランジ部1dを有して、例えば全長5.9mmの小型形状に構成されており、それら大径部1bと小径部1cとフランジ部1dとは、例えばプラスチックにて形成することができる。
【0019】
このシリンダ1の軸線方向両端部の中心孔1a内には磁性体製の円筒状のノズル3,4がそれぞれ圧入固定されており、これらのノズル3,4の中心孔が端部ポートA,Bをそれぞれ構成する。また大径部1bの中間部にはパイプ5が外周面から中心孔付近まで貫通して圧入固定されており、このパイプ5の中心孔が中間部ポートSを構成している。
【0020】
さらにシリンダ1は、大径部1bから小径部1cにかけて中心孔1aの内周面に形成され、そのシリンダ1の軸線方向に延在するとともにその軸線方向中間部のポートSに連通するここでは一本の通路溝1eを有しており、この通路溝1eは、シリンダ1の上記軸線方向両端部では外部に開口せずに閉じている。
【0021】
シリンダ1の中心孔1a内には、その中心孔1aの軸線方向に往復移動可能に、この実施例では永久磁石で形成された上記プランジャ2が収容され、このプランジャ2は、上記ノズル3,4の、シリンダ1の中心孔1a内に面した端面に、それらに対向する端面が密接することで、端部ポートA,Bを選択的に閉止する。またこのプランジャ2は、例えば図示のように右端部の磁極がN極になるとともに左端部の磁極がS極になるというように、軸線方向両端部の磁極が互いに逆の極性になるように構成されている。
【0022】
さらにシリンダ1の軸線方向中間部のポートSを挟んだ両側の部分の一方である小径部1bの周囲には、電磁石を構成するように巻回された銅線からなるコイル6が設けられており、このコイル6は上記フランジ部1dによってシリンダ1上に固定保持されている。
【0023】
そしてこの実施例のマイクロ電磁バルブでは、ノズル3,4の、シリンダ1の中心孔1a内に面した端面が、例えば図示のようにノズル3ではN極になり、ノズル4ではS極になるというように、ノズル3,4が磁化されてプランジャ固定用永久磁石とされている。
【0024】
かかる実施例のマイクロ電磁バルブにあっては、電磁石を構成するコイル6に近い側の、シリンダ1の軸線方向一端部である図では右端部の磁極が、シリンダ1内のプランジャ2の永久磁石の、そのシリンダ1の軸線方向右端部に対向する右端部の磁極であるN極と異なる磁性になるようにそのコイル6に通電すると、図1(a)に示すように、シリンダ1内のプランジャ2の永久磁石の、シリンダ1の上記右端部に対向する右端部がシリンダ1の上記右端部に磁力で引かれてプランジャ2がシリンダ1の右端部に移動して、その右端部のポートBを閉止し、これによりシリンダ1の軸線方向中間部のポートSがシリンダ1の左端部のポートAとのみ、シリンダ1の中心孔1aの内周面の通路溝1eを介して連通する。そしてコイル6の通電方向を上記と逆にすれば、図1(b)に示すように、シリンダ1内のプランジャ2の永久磁石の、シリンダ1の上記右端部に対向する右端部がシリンダの上記右端部から磁力で反発されてシリンダ1の左端部に移動して、その左端部のポートAを閉止し、これによりシリンダ1の軸線方向中間部のポートSがシリンダ1の右端部のポートBとのみ、シリンダ1の中心孔1aの内周面の通路溝1eを介して連通する。
【0025】
従って、この実施例のマイクロ電磁バルブによれば、コイル6への通電状態の切換えにより、シリンダ1の軸線方向中間部のポートSを両端部のポートA,Bに選択的に連通させる2位置電磁バルブとして機能することができる。
【0026】
しかも、この実施例のマイクロ電磁バルブによれば、シリンダ1内をプランジャ2が移動する際に、プランジャ2が接するのが、シリンダ1の中心孔1aの内周面に形成された通路溝1e内の流体であることから、プランジャ2の、流体が接しながら通過する面積が、プランジャ自体に通路溝が設けられた従来のシャトルバルブ型の電磁バルブの場合よりも小さくなって、流体の粘性による摩擦抵抗の影響が小さくなるので、電磁バルブひいてはそのプランジャをこの実施例のプランジャ2のように小型化してマイクロ電磁バルブを構成しても、敏捷な切換え動作を行うことができる。
【0027】
さらに、この実施例のマイクロ電磁バルブによれば、通路溝1eをシリンダ1の中心孔1aの内周面に形成していることから、電磁バルブひいてはそのプランジャを小型化してマイクロ電磁バルブを構成しつつ、流量の確保のために通路溝1eの断面積を大きくしても、プランジャ2の永久磁石を小さくせずに済むので、この点からも敏捷な切換え動作を可能にすることができる。
【0028】
さらに、この実施例のマイクロ電磁バルブによれば、プランジャ2をシリンダ1の軸線方向両端部のポートA,Bへ向けてコイル6による電磁力より弱い力で附勢するプランジャ固定用永久磁石としてノズル3,4を具えていることから、コイル6のみでなくプランジャ固定用永久磁石でも、プランジャ2をシリンダ1の両端部に吸引力で維持するため、停電等何らかの原因でコイル6への給電が止まった場合でも、プランジャ2が自由になるのを防止し得て、バルブとしての機能を維持し続けることができる。
【0029】
なお、上記第1実施例ではノズル3,4を永久磁石で構成したが、この発明はこれに限定するものではない。すなわち、例えばノズル3,4を強磁性体で構成すれば、プランジャ2がノズル端面に接触したときに、プランジャ固定用磁性体としてのノズル3,4がプランジャ2を吸着し、永久磁石でノズルを構成したのと同じようにプランジャを吸引することができる。さらに、電磁石の発熱が問題とならない場合には、ノズル3,4を非磁性体材料で構成しても構わない。
【0030】
図2(a)は、この発明のマイクロ電磁バルブの第2実施例の構成をそこにおけるプランジャが電磁石に近い側の、シリンダの軸線方向一端部に移動した状態で示す断面図、また図2(b)は、その第2実施例のマイクロ電磁バルブの構成をそこにおけるプランジャが電磁石から遠い近い側の、シリンダの軸線方向他端部に移動した状態で示す断面図であり、この第2実施例のマイクロ電磁バルブは、ノズル3,4がプランジャ固定用永久磁石を構成する代わりに、シリンダ1の大径部1bと小径部1cとの結合部に、シリンダ1の中心孔1aの内周面に隣接する半径方向内側がS極になり、中心孔1aの内周面から離間する半径方向外側がN極になるように複数のプランジャ固定用永久磁石7をシリンダ1の周方向に互いに離間させて配置した点のみ、先の第1実施例と異なっており、他の点は先の実施例と同一の構成とされている。
【0031】
かかる第2実施例のマイクロ電磁バルブによっても、先の第1実施例と同様の作用効果を奏することができ、この場合に、プランジャ固定用永久磁石7は、シリンダ1の右端部に関してはS極同士の反発力で、またシリンダ1の左端部に関してはS極とN極との吸引力で、プランジャ2をシリンダ1の両端部に維持する。
【0032】
図3は、上記第1実施例のマイクロ電磁バルブを用いて相互流(プラグ流)を形成する実験の方法を示す説明図、図4は、その実験の結果を示す説明図であり、この実験では図3に示すように、上記第1実施例のマイクロ電磁バルブ8の端部ポートA,Bにシリンジポンプ9のシリンダ9a,9bをそれぞれチューブ10,11を介して接続し、その第1実施例のマイクロ電磁バルブ8の中間部ポートSにチューブ12を接続し、シリンジポンプ9のシリンダ9aには着色水W、シリンダ9bにはシリコンオイルOを入れ、コントローラ13でシリンジポンプ9を連続的に作動させるとともに、その第1実施例のマイクロ電磁バルブ8のコイル6に直流電源装置14から電流アンプ15を介して通電し、その電流アンプ15の出力電流を、関数発生器16で発生させた矩形波により、所定時間毎にコイル6への通電方向が反転するように制御している。
【0033】
この実験の結果、図4に示すように、中間部ポートSに接続したチューブ12内には着色水WとシリコンオイルOとの相互流(プラグ流)が形成されており、このことは、上記第1実施例のマイクロ電磁バルブ8が、シリンジポンプ9による端部ポートA,B内の着色水WおよびシリコンオイルOの圧力上昇に耐えて端部ポートA,Bを交互に確実に閉止および開放していたことを示している。
【0034】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えば、通路溝1eは一本でなく、シリンダ1の中心孔1aの内周面にその周方向に互いに間隔を空けて複数本並べて形成し、中間部ポートSの位置に周方向溝を形成してそれら複数本の通路溝1eを中間部ポートSに接続するようにしても良い。
【0035】
また上記第2実施例におけるプランジャ固定用永久磁石7の代わりに、大径部1bに貫通させたパイプ5を磁化させて、そのパイプ5の、シリンダ1の中心孔1aの内周面に隣接する端部を例えばS極とするとともに、そのパイプ5の配置を、シリンダ1の軸線方向模擬被疑両端部にプランジャ2を維持し得る位置に設定するようにしても良い。
【0036】
さらに、電磁石を構成するコイル6を、シリンダ1の軸線方向の、中間部のポートSの両側の位置に設けるようにしても良い。またプランジャ2の永久磁石の表面をテフロン(登録商標)等の低摩擦素材等で覆って構成しても良く、各永久磁石の磁極の極性を上記実施例と逆にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
かくしてこの発明のマイクロ電磁バルブによれば、シリンダ内をプランジャが移動する際にプランジャが接するのが、シリンダの内周面に形成された一または複数の通路溝内の流体であることから、プランジャの、流体が接しながら通過する面積が、プランジャ自体に通路溝が設けられた従来のシャトルバルブ型の電磁バルブの場合よりも小さくなって、流体の粘性による摩擦抵抗の影響が小さくなるので、電磁バルブひいてはそのプランジャを小型化してマイクロ電磁バルブを構成しても、敏捷な切換え動作を行うことができる。
【0038】
しかもこの発明のマイクロ電磁バルブによれば、通路溝をシリンダの内周面に形成していることから、電磁バルブひいてはそのプランジャを小型化してマイクロ電磁バルブを構成しつつ、流量の確保のために通路溝の断面積を大きくしても、プランジャの永久磁石を小さくせずに済むので、この点からも敏捷な切換え動作を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a),(b)は、この発明のマイクロ電磁バルブの第1実施例の構成をそこにおけるプランジャが電磁石に近い側の、シリンダの軸線方向一端部に移動した状態および、そのプランジャが電磁石から遠い近い側の、シリンダの軸線方向他端部に移動した状態でそれぞれ示す断面図である。
【図2】(a),(b)は、この発明のマイクロ電磁バルブの第2実施例の構成をそこにおけるプランジャが電磁石に近い側の、シリンダの軸線方向一端部に移動した状態および、そのプランジャが電磁石から遠い近い側の、シリンダの軸線方向他端部に移動した状態でそれぞれ示す断面図である。
【図3】上記第1実施例のマイクロ電磁バルブを用いて相互流(プラグ流)を形成する実験の方法を示す説明図である。
【図4】上記実験の結果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 シリンダ
1a 中心孔
1b 大径部
1c 小径部
1d フランジ部
1e 通路溝
2 プランジャ
3,4 ノズル
5 パイプ
6 コイル
7 プランジャ固定用永久磁石
8 マイクロ電磁バルブ
9 シリンジポンプ
9a,9b シリンダ
10,11,12 チューブ
13 コントローラ
14 直流電源装置
15 電流アンプ
16 関数発生器
A,B 端部ポート
S 中間部ポート
O シリコンオイル
W 着色水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向中間部と軸線方向両端部とにポートを持つシリンダと、
そのシリンダの軸線方向に往復移動可能にそのシリンダ内に収容されるとともに永久磁石を有し、前記シリンダの軸線方向両端部のポートを選択的に閉止するプランジャと、
前記シリンダの軸線方向中間部のポートを挟んだ両側の部分の少なくとも一方の周囲に設けられた電磁石と、
前記シリンダの内周面に形成され、そのシリンダの軸線方向に延在するとともに前記軸線方向中間部のポートに連通する一または複数の通路溝と、
を具えてなる、マイクロ電磁バルブ。
【請求項2】
前記プランジャを前記シリンダの軸線方向両端部のポートへ向けて前記電磁石より弱い力で附勢するプランジャ固定用磁性体もしくはプランジャ固定用永久磁石を具えることを特徴とする、請求項1記載のマイクロ電磁バルブ。
【請求項3】
前記プランジャ固定用磁性体もしくはプランジャ固定用永久磁石は、前記シリンダの軸線方向両端部のポート近傍にそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項2記載のマイクロ電磁バルブ。
【請求項4】
前記プランジャ固定用永久磁石は、前記シリンダの軸線方向中間部に設けられていることを特徴とする、請求項2記載のマイクロ電磁バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−303659(P2007−303659A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135629(P2006−135629)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】