説明

マクロジアクリレート及びマクロポリアクリレート

本発明は、形状記憶特性を有しており医療技術において使用することができるマクロジアクリレート及びポリアクリレートから構成される共有結合高分子網目構造に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
1.発明の分野
本発明は、形状記憶特性を備えた共有結合高分子網目構造を製造するためのマクロジアクリレート及びポリアクリレート、それから得られる高分子網目構造及びその使用に関する。
【0002】
2.関連技術の説明
形状記憶材料は、外部刺激による作用が加えられたとき、その外部形状が変化する材料である。その材料は、例えば、温度がスイッチング温度Ttransとして知られるものより上昇したとき、制御されたやり方でその形状を変化させることができる。
【0003】
その形状記憶効果は、材料の特定的な固有の特性(形状記憶ポリマー(「SMP」))ではない。むしろそれは構造及び形態の組合せ並びに処理/プログラミング技術により直接的に生じる。
【0004】
形状記憶材料においては、永続的形状と一時的形状との間で違いが設けられる。材料は、最初に通常の処理方法(例えば、押し出し又は射出成形)によってその永続的形状にされる。その材料は、次にその所望の一時的な形状にされて固定される。この手順は、プログラミングとも呼ばれる。それは、試料を加熱し、成形し、冷却する手順であるか、そうでなければ比較的低温で成形するかのいずれかである。永続的形状は記憶の中にあり、一方で一次的な形状が実在している。形態の変化に対する転移温度(スイッチング温度)より高い温度にその材料を加熱することによって、形状記憶効果が誘発され、かくして記憶による永続的形状の回復がもたらされる。
【0005】
形状記憶効果、即ち、外部刺激の適用による材料の形状の変化の制御を可能にすることは、例えば、Angew.Chem.、114、2138〜62(2002)に記載されている。
【0006】
形状記憶ポリマーは、最初に通常の処理方法によってその永続的形状にされる。それは次に所望の一時的な形状に変形され、その形に(例えば温度降下によって)固定される。スイッチング温度より上の温度に加熱することにより、形状記憶効果が誘発され、永続的形状を記憶から取り戻す。その永続的形状は、物理的架橋若しくは化学的架橋、特に共有結合性の架橋により安定化させることができる。その共有結合高分子網目構造は、一方においては線状ポリマーのその後の架橋によって、又は他方においては二官能性モノマーのポリ反応(polyreaction)によって得ることができる。言い換えると、そのモノマーは、低分子量モノマーであることができ、或いはそれ自身が巨大分子(マクロモノマー)であることができる。
【0007】
本発明の目的に対して、マクロジアクリレートは、2個のアクリレート基を有するマクロモノマーであり、マクロポリアクリレートは、少なくとも2個のアクリレート基を有するマクロモノマーである。
【0008】
形状記憶特性を備えた共有結合高分子網目構造は、殆どがフリーラジカル重合(例えば、マクロジアクリレートの)によって得られる。共有結合高分子網目構造の製造は、多くの場合、以下の3つの段階を含む:
1.マクロジオールの合成、
2.末端基のアクリレート化、及び
3.アクリレート基のフリーラジカル架橋。
【0009】
これらの形状記憶ポリマー類は、長い間知られており、とりわけ、11〜90重量パーセントのn−ブチルアクリレートの存在下での平均分子量が2,000〜10,000g/モルの範囲にあるオリゴ(ε−カプロラクトン)ジメチルアクリレートの重合による形状記憶を備えた生分解性の高分子網目構造を記載しているA.Lendlein及びS.Kelchによる既刊の概説「Formgedachtnis−Polymere」[形状記憶ポリマー]、Angew.Chem.、114、2138〜62(2002)の中で見出すことができる。オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメチルアクリレートを調製するには、オリゴ(ε−カプロラクトン)−ジオールを重合性のメタクリレート末端基により官能化する必要がある。記載されているそのマクロジアクリレートは、ウレタン基を含まない。
【0010】
ドイツ特許第10217351B3号明細書は、(i)共有結合架橋ポリマー成分及び(ii)ポリエステルウレタン成分を含む相互侵入網目構造について記載している。そのポリエステル−ウレタン成分は、共有結合性の架橋ではなく物理的に架橋している。それは適切な場合はカプロラクトンと一緒のペンタデカラクトンに基づくマクロジオール又はp−ジオキサノンに由来しており、ここではブロックポリマー類が選択される。平均分子量が約1,000〜約20,000g/モルであるマクロジオールを、ジイソシアネートと反応させ、分子量が約100,000〜約250,000g/モルであるポリエステルウレタンを生じさせる。そのポリエステルウレタン成分の調製の詳細は記載されていない。しかしながら、反応性基、特にアクリレート基を含まないのは明白である。
【0011】
共有結合架橋ポリマー成分は、官能化マクロモノマーの架橋によって得られる。その官能化は、エチレン性不飽和単位、特にアクリレート基及びメタクリレート基によって達成される。マクロモノマーは、カプロラクトン、ラクチド、グリコリド及びp−ジオキサノンに基づくホモ−及び/又はコポリエステルジオールである。そのヒドロキシル基を、それ自体周知の合成法によってアクリレート基及びメタクリレート基を与えるように官能化する。1例として、GPC分析による平均分子量が2,000〜30,000g/モルであるジメタクリレートポリカプロラクトンが得られた。ドイツ特許第10217351B3号明細書には、マクロジアクリレートの調製に関して、それらがウレタン基を含まないことは確実であるが、具体的な記述が含まれていない。
【0012】
ドイツ特許第69917224T2号明細書は、同様に形状記憶特性を備えた生分解性ポリマー組成物について記載しており、そのポリマーは、硬質及び軟質部分(変形1)又は互いに共有結合架橋若しくはイオン架橋している1つ又は複数の軟質部分(変形2)又はポリマー混合物(変形3)のいずれかを含む。
【0013】
コポリエステルウレタンが、硬質及び軟質部分を有するポリマー組成物の例として述べられている。このマルチブロック共重合体は、80℃で少なくとも10日間、1,2−ジクロロエタン中でジイソシアネート(例えばTMDI)を2つの異なるマクロジオールと反応させてヘキサン中で沈殿させることによって調製し、1,2−ジクロロエタンへの溶解及びヘキサン中の沈殿を繰り返すことにより精製した。そのマクロジオールは、ポリ(ε−カプロラクトン)−ジオール(即ち、軟質部分)及びα,ω−ジヒドロキシ[オリゴ(L−ラクテート−co−グリコレート)エチレン−オリゴ(L−ラクテート−co−グリコレート)](即ち、硬質部分)であった。末端基については何も述べられていないが、そのポリエステルウレタンは、反応性基、例えばアクリレート基などは含んでいない。共有結合架橋の1例として、ポリジオール及び塩化メタクリロイルからのマクロモノマーの合成が記載されている。この反応に対しては、プロセス中に以下のきめ細かいステップが必要である:
(i)塩化メタクリロイルを、ポリ(ε−カプロラクトン)−ジオール及びトリエチルアミンのテトラヒドロフラン(THF)中の溶液に0℃で滴下して加える;
(ii)その反応混合物を0℃で3日間撹拌し、沈殿した塩を濾過して取り除いた;
(iii)一旦その混合物を減圧下の室温で濃縮したところで、酢酸エチルを加え、その混合物を再度濾過する;
(iv)最後に、その生成物は、10倍過剰のn−ヘキサン、ジエチルエーテル及びメタノール混合物により沈殿させた;
(v)その無色の沈殿物を集めてジクロロエタンに溶解し、再度沈殿させ;
(vi)最後に、そのポリ(ε−カプロラクトン)−ジメチルアクリレートを、減圧下の室温で注意深く乾燥させた。
【0014】
そのプロセスは、平均分子量4,500〜10,000g/モルであるマクロモノマーを与える。マクロジアクリレートのためのそのタイプの調製プロセスは、時間(3日間を超える)及び環境因子(大量の溶媒による多くの精製ステップ)に関して非常に問題がある。得られたマクロジアクリレートは、明らかにウレタン基を全く含まない。得られたポリマー混合物(変形3)は、同じ基礎構造の熱可塑性ポリマーの混合物である。反応性基については何も述べられておらず、アクリレート基について述べられていないのは勿論である。
【0015】
ドイツ特許第10217351B3号明細書は、形状記憶効果を示すことができるポリエステルウレタンについて記載している。平均分子量が1,000〜20,000g/モルであるポリペンタデカラクトンから誘導されたマクロジオールを、通常のジイソシアネート、好ましくはトリメチルヘキサン1,6−ジイソシアネート(TMDI)と反応させて分子量が50,000〜250,000g/モルの範囲である対応するポリエステルウレタンを生ずる。その反応は、触媒として使用されるエチルヘキサン酸スズ及び溶媒としての1,2−ジクロロエタンと共に80℃で、平均2日間で起こる。末端基については何も述べられていないが、これらは非反応性の末端基であり、特にアクリレート基ではない。
【0016】
ドイツ特許第69221128T3号明細書は、イソシアネート末端ポリウレタン類(ポリウレタンプレポリマー)の混合物について記載している。この反応生成物は、非晶性ポリエステルポリオール及びポリイソシアネート、特にジイソシアネートから誘導される。それは、ポリエステルジオール及びポリイソシアネートから誘導される半結晶性ポリウレタン、並びにポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール及びポリイソシアネートから誘導されるプレポリマーと一緒に使用される。このポリマー混合物は、金属基材上及びポリマー基材上への良好な接着性を特徴とし、それ故、ホットメルト接着剤として、コーティングとして及び/又はシーラントとして使用することが意図されている。このポリマー混合物は、それが改善されたクリープ強度を有するために、とりわけポリ基材(polysubstrates)の接着に使用することが意図されている。実際の形状記憶ポリマーとしてそれを使用することは記されていない。そのイソシアネートプレポリマーはアクリレート基を含まない。
【0017】
前述の事柄を考慮して、本発明の目的としては、技術的因子及び経済的因子の両方を視野に入れて、モノマーを素早く調製して容易に精製することができる新規な共有結合網目構造を提供することが挙げられる。その意図するところは、上記網目構造のスイッチング温度、機械的性質、及び劣化挙動を、形状記憶特性が結果的に失われることなく組成の変化によって制御調節することが可能なことである。できれば、その共有結合高分子網目構造は、また、生分解性であるべきである。
【0018】
形状記憶特性を備えた共有結合高分子網目構造の製造に有用な新規なマクロジアクリレート及びポリアクリレートが見出され、それらは、カルボン酸エステル構造単位及びウレタン構造単位の両方を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明のマクロポリアクリレートは、少なくとも約2個のアクリレート基、好ましくは約2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、より好ましくは約2、3又は4個のアクリレート基を含有する。
【0020】
本発明の目的に対して、好ましいマクロジアクリレート及びマクロジアクリレートを含有する好ましいマクロポリアクリレートは、一般式(I):
【化1】


を有しており、式中、Rは、マクロジオールの置換基であり、Rは、低分子量ジイソシアネート又は約500〜約3000g/モルの範囲の数平均分子量Mを有するジイソシアネートプレポリマーの少なくとも1つの置換基であり、Rは、水素及び低級アルキルの少なくとも1つであり、Rは、約2個〜約10個の炭素原子を有する分枝又は非分枝アルキレン基の少なくとも1つであり、mは、0又は約1〜約10の範囲の整数である。
【0021】
本発明の目的に対して、次の一般式(II):
【化2】


のマクロポリアクリレートと、特に次の一般式(IIa):
【化3】


のマクロジアクリレートもまた選択され、式中、Rは、マクロポリオールの置換基であり、Rは、水素及び低級アルキルの少なくとも1つであり、Rは、約2個〜約10個の炭素原子を有する分枝又は非分枝アルキレン基の少なくとも1つであり、nは、2以上の整数である。
【0022】
マクロジオール類及びポリオール類としては、ポリエステルジオール類及びポリオール類、ポリエーテルジオール類及びポリオール類又はポリカーボネートジオール類及びポリオール類が好ましい。本発明のマクロジオール類及びポリオール類は、少なくとも約2個のヒドロキシ基、好ましくは約2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、より好ましくは約2、3又は4個のヒドロキシ基を含有する。1例として、2個のヒドロキシ基を有するマクロポリオールは、マクロジオールとも呼ばれ、3個のヒドロキシ基では同じくマクロトリオール、4個のヒドロキシ基では同じくマクロテトラオールなどとも呼ばれる。
【0023】
好ましいポリエステルジオール又はポリオールは、通常は開始化合物を使用する環状ラクトン類の開環重合、或いはポリカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、又はポリヒドロキシポリカルボン酸とポリヒドロキシ化合物類との重縮合によって調製する。ポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、又はポリヒドロキシポリカルボン酸の場合、その重縮合は、同じ構造の分子及び/又はポリカルボン酸及び/又はポリヒドロキシ化合物の間でも行うことができる。
【0024】
開始化合物、ポリカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、ポリヒドロキシポリカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸及びポリヒドロキシ化合物の官能価(価数)は、所望のポリエステルポリオール、例えばポリエステルジオール、トリオール、テトロールなどを得るように当業者には明らかな検討を加えることによって選択する。
【0025】
開環重合用の環状ラクトン類としては、ε−カプロラクトン、ジグリコリド、ジラクチド(LL−、DL−、LL/DL−又はrac−ジラクチド)、p−ジオキサノン、ω−ペンタデカノラクトン、ブチロラクトン(β,γ−ブチロラクトン)又はそれらの混合物が使用される。好ましいのは、ε−カプロラクトン、ジグリコリド、ジラクチド(LL−、DL−、LL/DL−又はrac−ジラクチド)又はそれらの混合物である。
【0026】
重縮合によって合成されるポリエステルジオールは、少なくとも約1.9の平均ヒドロキシル官能価を有しており、技術的に周知であり、ヒドロキシル末端を提供するために過剰のジオールを用いて通常通りに調製される。本発明にとって有用なその他のポリエステルポリオールは、既知の方法によって適宜調製することができる。
【0027】
ポリカルボン酸、即ち、ジカルボン酸、それに加えて、より高官能価のカルボン酸類(価数の高い、例えば、トリカルボン酸、テトラカルボン酸など)、及びエステル形成性誘導体又は酸無水物、或いはそれらの任意の2個以上の酸の混合物の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、及びベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸(ヘミメリト酸)が挙げられる。
【0028】
本発明用に使用することができるポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸及びポリヒドロキシポリカルボン酸化合物類の例としては、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)、2−ヒドロキシ−ノナデカン−1,2,3−トリカルボン酸(アガリシン酸)、クエン酸、ヒドロキシコハク酸、及びジヒドロキシコハク酸が挙げられる。
【0029】
ポリヒドロキシ化合物(即ち、ジオール、トリオール、テトロール、ペントール、ヘキソールなどのポリオール)の例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリカーボネートジオール、ビスフェノール−A−エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン(トリメチロールエタン)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(トリメチロールプロパン)、[2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(ペンタエリスライト、ペンタエリスリトール)、糖類(ポリヒドロキシアルデヒド類又はポリヒドロキシケトン類)又は糖アルコール類(還元糖類)、並びにポリオールのエトキシ化誘導体類が挙げられる。
【0030】
上記の開環重合のための開始化合物(即ち、ポリヒドロキシ化合物、例えば上記のものと、加えて技術的に公知のその他の開始剤)の例としては、ポリアミン類又はポリメルカプタン類又はヒドロキシ、アミノ及びメルカプト基から選択される合計で少なくとも2個の基を含有する化合物が挙げられる。
【0031】
好ましいポリエステルポリオール及びジオールとしては、ポリカプロラクトンポリオール、ポリ−(ε−カプロラクトン−co−グリコリド)−ポリオール、ポリ−(ε−カプロラクトン−co−ラクチド)−ポリオール、ポリ−(ラクチド−co−グリコリド)−ポリオール、ポリペンタデカラクトンポリオール、ポリ−(ε−カプロラクトン−co−ペンタデカラクトン)−ポリオール、ポリ−(1,6−ヘキサメチレン−アジペート)ポリオール、ポリ−(1,6−ヘキサメチレン−セバケート)−ポリオール、ポリ−(1,10−デカメチレン−セバケート)−ポリオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−(ε−カプロラクトン−co−グリコリド)−ジオール、ポリ−(ε−カプロラクトン−co−ラクチド)−ジオール、ポリ−(ラクチド−co−グリコリド)−ジオール、ポリペンタデカラクトンジオール、ポリ−(ε−カプロラクトン−co−ペンタデカラクトン)−ジオール、ポリ−(1,6−ヘキサメチレン−アジペート)−ジオール、ポリ−(1,6−ヘキサメチレン−セバケート)−ジオール、ポリ−(1,10−デカメチレン−セバケート)−ジオール及びそれぞれのトリオール、テトロール、ペントロール、ヘキソールなどが挙げられる。
【0032】
マクロジオール類の例としては、ポリエーテルジオール類、例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール及びポリオキシテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0033】
マクロジオール類の例としては、ポリカーボネートジオール類、例えば市販されている脂肪族ポリカーボネートエーテルジオール(Desmophen(登録商標)C2200)及び長さをポリカルボン酸によって延長した脂肪族ポリカーボネートエーテルジオール又はジイソシアネートによる誘導体などが挙げられる。
【0034】
マクロポリオール類、特にマクロジオール類の例としては、ポリエーテルエステルブロックコポリマー類、例えばポリ−(カプロラクトン−b−エチレングリコール−b−カプロラクトン)トリブロックコポリマー、ポリ−(ω−ペンタデカノラクトン−b−エチレングリコール−b−ω−ペンタデカノラクトン)トリブロックコポリマー、ポリ−(ll−ラクチド−b−エチレングリコール−b−ll−ラクチド)トリブロックコポリマー、ポリ−(dl−ラクチド−b−エチレングリコール−b−dl−ラクチド)トリブロックコポリマー、ポリ−(カプロラクトン−b−ペンタデカラクトン−b−カプロラクトン)トリブロックコポリマー、ポリ−(プロピレングリコール−b−エチレングリコール−b−プロピレングリコール)トリブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0035】
好ましいマクロジオール及びポリオール類、特にマクロジオール類は、約1,000〜50,000、より好ましくは約3,000〜30,000、最も好ましくは5,000〜20,000の範囲の平均分子量と、約20℃〜約150℃の範囲、より好ましくは約30℃〜約100℃の範囲の融点と、2のヒドロキシル官能価と、3mgKOH/グラムを下回る酸価とを有する。
【0036】
ウレタンアクリレート末端基、例えば、好ましいCH=CR−CO−O−R−O−CO−NH−R−NH−CO−末端基としては、最初のステップにおける、マクロジオールのOH基のジイソシアネートのイソシアネート基への付加反応により、またこのプロセスの2番目のステップにおけるヒドロキシル化アクリレート化合物、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基の他のイソシアネート基への付加反応により得られている。
【0037】
最も簡単な場合、マクロジオール類及びポリオール類、特にマクロジオールは、ホモポリマー又はコポリマー又はブロックコポリマーから構成することができる。そのマクロポリオールは、ウレタン基を含んでもよく或いはウレタン基を含まなくてもよい。この場合は、したがって、ドイツ特許第10217351B3号明細書に記載されているように、ポリマー混合物について2つの一時的形状を備えた系を単一の成分によりプログラミングすることが可能である。
【0038】
低級アルキル(R)は、一般に、約1〜約4個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状炭化水素置換基である。
【0039】
本発明におけるヒドロキシル化アクリレート化合物(例えば、以下の式(VI)の化合物参照)は、好ましくは、アルキル基部分の炭素数が約1〜約10個であるヒドロキシアルキルアクリレートであり得、特に好ましくはアルキル基部分の炭素数が約1〜約5個であるヒドロキシアルキルアクリレートである。それらのうちで特に好ましいのは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート又はヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートを挙げることができ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシプロピルアクリレートが最も好ましい。
【0040】
(モノ)イソシアナートアクリレート化合物類(例えば式(VIII)の化合物参照)は、基本的に本発明にとって有用である故に、正規に(化学構造の意味を指し、必ずしも化学合成を意味するものではない)上記のヒドロキシル化アクリレート化合物からそのヒドロキシ基をイソシアナート基により置換することにより誘導する。好ましい化合物としては、イソシアナートアルキルアクリレート類が挙げられ、そのアルキル基部分の炭素数は、約1〜約10個、特に好ましくは約1〜約5個である。それらのうちで特に好ましいのは、イソシアナートアルキル(メタ)アクリレート類である。具体的には、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナートプロピル(メタ)アクリレート、3−イソシアナートプロピル(メタ)アクリレート、2−イソシアナートブチル(メタ)アクリレート又は4−イソシアナートブチル(メタ)アクリレートを例えば挙げることができ、2−イソシアナートエチルアクリレート又は2−イソシアナートプロピルアクリレートが特に好ましい。2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート又は2−イソシアナートプロピル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0041】
ヒドロキシル化アクリレート化合物又はイソシアナートアクリレート化合物は、通常は1個だけのアクリレート基を含有するが、2個以上のアクリレート基を含有することもできる。そのイソシアナートアクリレート化合物は、好ましくは1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートであることができ、これは即ち昭和電工からカレンツBEI(KarenzBEI)の商標名で入手できる化合物である。
【0042】
ポリイソシアネート、特にジイソシアネート(例えば以下の式(IV)の化合物を参照)としては、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びリシンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネート−メチル)シクロヘキサン、並びにイソホロンジイソシアネートが好ましい。そのポリイソシアネート化合物は、単独又はそれらの2つ以上の混合物としての組合せで使用することができる。
【0043】
医学的応用に対しては、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びリシンジイソシアネート等のポリイソシアネート類が最も好ましい。
【0044】
分子量が500g/モルより大きく、特に3,000g/モルまでであるジイソシアネートプレポリマーを使用することも可能である。これらのポリウレタンプレポリマー類は、上記のジイソシアネート類と、低分子量ジオール類又はマクロジオール類との(例えば、500〜3000g/モルのMWを有するオリゴエーテルジオール類、オリゴエステルジオール類又はオリゴカーボネートジオール類との)既知の反応によって調製される。
【0045】
好ましいマクロポリオールウレタンアクリレート、特にマクロジオールウレタンアクリレートは、好ましくは、約1,000〜約50,000、より好ましくは約3,000〜約30,000、最も好ましくは約5,000〜約20,000の範囲の平均分子量と、約20℃〜約150℃の範囲、より好ましくは約30℃〜約100℃の範囲内の融点と、約5ppm未満のイソシアネート含量を有する。
【0046】
本発明の第1の態様は、形状記憶架橋ポリマーに対する前駆物質としてのウレタンポリアクリレートを製造するための2つの方法又はプロセスを提供する。
【0047】
第1の方法は、上記のマクロジオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート末端のマクロジオールを形成するステップと、その後のそのイソシアネート末端基のヒドロキシル化アクリレート化合物による末端停止反応とを含む。この方法によって、一般式(I)の化合物が得られる。この方法において、2個を超えるヒドロキシ基を有するマクロポリオールの使用は、最初のステップにおいて望ましくない架橋を起こすこととなろう。
【0048】
第2の方法は、アクリレートのイソシアネート基によるワンステップでのマクロポリオールの末端停止反応を含む。この方法によって、一般式(II)の化合物が得られる。
【0049】
本発明の第2の態様は、マクロポリアクリレートの、好ましくは光硬化による硬化を含む。
【0050】
本発明の第3の態様は、これらの架橋したウレタンアクリレートの熱的及び機械的性質並びに形状記憶効果を含む。
【0051】
第1の方法によって、マクロジオール、特にマクロジオール(III)、
H−O−R−OH (III)
及びポリイソシアネート化合物、特にポリイソシアネート化合物(IV)、
OCN−R−NCO (IV)
を、末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、特にプレポリマー(V)
OCN−R−NH−CO[−O−R−O−CO−NH−R−NH−CO]−O−R−O−CO−NH−R−NCO (V)
を得るために、イソシアネート基が化学量論的に過剰であるような条件下で反応させる((III)、(IV)及び(V)のそれぞれについて、R及びRは、一般式(I)に対して上で定義したものと同じである)。次いで、そのヒドロキシル化アクリレート化合物、特にヒドロキシル化(メタ)アクリレート化合物(VI)、
CH=CR−CO−O−R−OH (VI)
を、ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基に反応させて、ポリエステルポリウレタンジアクリレート、特に一般式(I)のポリエステルポリウレタンジアクリレートを生じさせる。(VI)において、R及びRは、一般式(I)に対して上で定義したものと同じである。
【0052】
マクロジオール成分(例えば、一般式(III)の化合物)とポリイソシアネート化合物(例えば一般式(IV)の化合物)との比率は、好ましくは約1.5:1〜約2:1である。
【0053】
その反応は、好ましくは、通常のウレタン化反応に対する温度(例えば、溶媒中で約30℃〜約90℃、無溶剤の溶融中で約100℃〜約150℃)で行う。その反応のとき、ウレタン化触媒、例えばナフテン酸亜鉛、ジブチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、トリエチルアミン又は1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどを使用することができる。しかし、その反応は、好ましくは無触媒で行う。
【0054】
末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとヒドロキシレート化アクリレート化合物、特にヒドロキシレート化(メタ)アクリレート化合物(VI)との反応は、末端イソシアネート基対ヒドロキシル基のモル比が、好ましくは約1:1〜約1:1.5であるような割合で好ましくは行う。その反応のための温度は、好ましくは、溶媒中で約30℃〜約90℃、無溶剤の溶融中で約100℃〜約150℃である。その反応のとき、アクリロイル基、特に(メタ)アクリロイル基の熱重合反応を制御するために重合防止剤を加えることができる。好ましい重合防止剤としては、ヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテルを例えば挙げることができる。かかる重合防止剤は、ヒドロキシレート化アクリレート化合物、特にヒドロキシレート化(メタ)アクリレート化合物(VI)に対して約100〜約1000ppmの範囲で使用する。
【0055】
第2の方法によって、マクロポリオール、好ましくは一般式(VII)、
(OH) (VII)
のマクロポリオール、特にマクロジオール(VIIa)、
(OH) (VIIa)
と、イソシアナートアクリレート化合物、特にイソシアナートアクリレート化合物(VIII)、
CH=CR−CO−O−R−NCO (VIII)
とを、ワンステップのプロセスで反応させてマクロポリアクリレート、特にそれぞれ一般式(II)又は(IIa)のマクロポリアクリレートを生じさせる。マクロジオール又はポリオール成分、特にマクロポリオール成分(VII)又は(VIIa)と、イソシアナートアクリレート化合物、特にイソシアナートアクリレート化合物(VIII)との比率は、好ましくはn:1である。式中、R、R、R及びnは、一般式(II)に対して上で定義したものと同じ意味を有する。
【0056】
その反応は、好ましくは、通常のウレタン化反応に対する温度(例えば、溶媒中で約30℃〜約90℃、無溶剤の溶融中で約100℃〜約150℃)で行う。その反応のとき、ウレタン化触媒、例えばナフテン酸亜鉛、ジブチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、トリエチルアミン又は1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどを使用することができる。その反応は、しかしながら、好ましくは無触媒で行う。好ましい重合防止剤としては、ヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテルが挙げられる。かかる重合防止剤は、イソシアナートアクリレート化合物に対して約100〜約1000ppmの範囲で使用する。
【0057】
以下の利点が、マクロポリアクリレート、特にマクロジアクリレートのための本発明の調製プロセスと関連する:
1.マクロジアクリレート及びポリアクリレートが、より速くより低コストで得られ;
2.精製が容易であり(低溶媒);
3.収率が高く;
4.高度のアクリレート化が達成され;
5.該プロセス(即ち、ワンポット反応)は、マクロジオールの分子量をジイソシアネートとの反応によって増大させ、次いでジアクリレートによりそれを停止させるのを容易にする。様々なマクロポリオール類を本発明のプロセスにおいて使用することができる。様々なスイッチングセグメント類もそれ故形状記憶ポリマー中に導入することができる。
【0058】
得られた共有結合高分子網目構造は、とりわけ、良好な機械的及び熱的性質、高度の架橋、良好な形状記憶特性、非常に低レベルの応力緩和及びクリープ効果を発揮し、生体適合性である。
【0059】
ウレタンジアクリレートと、ポリアクリレート、特にウレタンジアクリレートとの架橋は、フリーラジカル重合によって起こる。このフリーラジカル重合は、通常の化学開始剤系、例えば過酸化物又は過酸化物とアミンとの組合せなどを用いることによって開始させることができる。ウレタンジアクリレート及びポリアクリレート、特にウレタンジアクリレートは、好ましくは光開始剤を使用し、場合によっては適当な光増感剤又は促進剤と組み合わせることによって開始される。その光開始剤は、約200と約800nmの間のある波長、より好ましくは約250と約700nmの間の波長、最も好ましくは約300と約500nmの間の波長で、付加重合のためのフリーラジカルを発生することができなくてはならない。適当な光開始剤としては、例えば、α−ジケトン類、α−ジケトン類又はケトアルデヒド類のモノケタール類、アクロレイン類及びそれに対応するエーテル類、発色団置換ハロメチル−s−トリアジン、発色団置換ハロメチル−オキサジアゾール類、アリールヨードニウム塩類、並びにその他の市販されている紫外線(「UV」)及び可視光の光開始剤類が挙げられる。好ましい光開始剤系としては、例えば、適当なドナー化合物又は促進剤と一緒のモノ又はジケトン光開始剤が挙げられる。より好ましい光開始剤は、Kip150(多官能オリゴマーのヒドロキシケトン、Lamberti Sp.A)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、TZT(液体ベンゾフェノン誘導体)及びD,L−カンファーキノンである。
【0060】
熱重合開始剤としては、有機過酸化物類、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジアルキル類、例えば過酸化ジクミル及び過酸化ジ−t−ブチルなど、ペルオキシジカーボネート類、例えばジイソプロピルペルオキシジカーボネート及びビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなど、アルキルペルエステル類、例えばt−ブチルペルオキシオクトエート及びt−ブチルペルオキシベンゾエートなどを使用することができる。特にラウロイルペルオキシドが好ましい。さらに、異なる種類のラジカル発生物質、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル発生性アゾ化合物を、過酸化物の代わりに使用することができる。
【0061】
共有結合架橋した形状記憶ウレタンジアクリレート及びポリアクリレート、特にウレタンジアクリレートは、半結晶性又は非晶性であり、一般に、約20℃〜約150℃の範囲内、より好ましくは約20℃〜約100℃の範囲内にスイッチング温度を有することができる。医学的応用に対しては、約35℃〜約55℃の範囲内のスイッチング温度が最も好ましい。
【0062】
架橋したウレタンポリアクリレート、特にジアクリレートの良好な熱的及び機械的性質、高い形状回復及び良好な生体適合性によって、これらの材料は、多くの技術的用途において使用することができ、医療技術における網目構造の前駆物質としての使用が好ましい。
【0063】
本発明の様々な実施形態をかくして大まかに説明してきたが、これから先はいくつかの実施例について論じることとして本発明の態様をより十分に説明する。
【0064】
様々な修正及び変形を本発明の精神又は範囲から逸脱することなく本発明及び本明細書に提供されている具体例に加えることができることは当業者には明らであろう。したがって、本発明は、いずれの特許請求の範囲及びそれらの相当物の範囲に入る本発明の修正及び変形も対象とするものと解釈される。
【実施例】
【0065】
[具体的な実施例]
以下の実施例は、説明のみを目的とするものであって、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、またそれらはそのように解釈されるべきではない。
【0066】
1.網目構造前駆物質としてのマクロジオールウレタンメタクリレートの調製
A.方法1(式I)
表1によるRを有する式(III)の乾燥したマクロジオール0.05モルに、2,2,4−及び4,4,2−トリメチルヘキサンジイソシアネート(TMDI)0.105モルを加え、続いて無触媒で3時間にわたり100℃で反応させてイソシアネート末端のマクロジオールを得た。そのイソシアネート末端のマクロジオールに、500ppmの防止剤存在下の100℃で、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.1モルを滴下して加えた。その反応は、式(I)のマクロジオールウレタンジアクリレートを得るために、赤外吸収スペクトルにおける波長2250cm−1のイソシアネート基による吸収がもはや見られなくなるまで行った。
【0067】
B.方法2(式II)
表2によるRを有する式(VIIa)の乾燥したマクロジオール0.05モルに、イソシアナートエチルメタクリレートIEM(Karenz(登録商標)MOI)0.105モルを滴下して加え、続いて、触媒は一切なしで、110℃で45分間にわたり反応させた。その後、反応は、式(II)のマクロジオールウレタンジアクリレートを得るために、赤外吸収スペクトルにおける2250cm−1のイソシアネート基による吸収がもはや見られなくなるまで行った。
【0068】
2.形状記憶特性を有する高分子網目構造の製造
マクロジオールジアクリレート(マクロジオールウレタンジメタクリレート)を光開始剤と一緒にガラス板上に均一に分配し、真空中で100℃〜140℃に5〜10分間加熱し、溶融物から気泡を除去した。第2のガラス板を、その溶融物の上に置き、クランプで固定し、2枚のガラス板を、0.5mmのスペーサーで分離した。
【0069】
網目構造を、波長が320〜500nmであるUV光を80℃でその溶融物に照射することによって得た。照射時間は3〜5分であった。下の表1及び2に組成及び特性が示されている様々な材料を溶融状態で架橋し、表3に示す高分子網目構造を得た。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
架橋が起こる形状は、永久形状に相当する。溶融物は、例えば、ワイヤー、繊維、糸、ホイルなどを含む任意の所望の材料で構成されたその他の基材上で架橋させ、それによってその基材にコーティングを施すこともできる。
【0073】
該高分子網目構造のその他の熱的及び機械的性質も検討した。これらの検討結果を下の表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
形状記憶特性を測定するには繰り返し熱機械試験(Cyclic thermomechanical experiments)(Angew.Chem.、114、2138〜2162(2002)に記載されている方法)を用いた。このために、厚さが0.5mmと長さが30mm及び2mmの幅(標点距離)の型で打ち抜いたダンベル型の試験片を用いた。
【0076】
一時的形状を固定するため、試験片をそれらのTm1より上で100%引き伸ばし、一定の応力でTm1の下まで冷却した。形状記憶効果を始動させるため、その試験片を応力のない条件下でTm1より上に加熱した。冷却速度は10K/分であり、加熱速度は、ここでは1℃/分とした。下の表4は、形状記憶効果の検討をTm1で行った本発明の網目構造についての対応する測定結果を示す。
【0077】
【表4】

【0078】
3.網目構造前駆物質としてのマクロテトロールウレタンメタクリレートの調製
乾燥したマクロテトロール(例えば、ポリカプロラクトン、MW16,000g/モル、ペンタエリスリトール開始)5000g(0.31モル)に、イソシアナートエチルメタクリレートIEM(Karenz Moi)193.8g(1.25モル)を、110℃で0.5時間かけて滴下して加えた。その反応は、ウレタンテトラメタクリレートを得るために、赤外吸収スペクトルにおける波長2250cm−1のイソシアネート基による吸収がもはや見られなくなるまで110℃で行った。
【0079】
4.網目構造の調製
光開始剤の存在下でウレタンテトラメタクリレートの光硬化を、2枚のガラス板とスペーサーとで形成された型の中で、波長が320〜600nmのUV光により80℃で行った。
【0080】
室温における高分子網目構造の熱的及び機械的性質を表5に示し、高分子網目構造フィルム(1サイクル)の形状記憶特性を表6に示す。
【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
5.テトラ−ヒドロキシ−ポリ−(ラクチド−グリコリド−カプロラクトン)−16k(56/34/10)に基づく網目構造前駆物質の調製
乾燥したマクロテトロール2000g(0.125モル)に、イソシアナートエチルメタクリレートIEM(Karenz Moi)78.1g(0.5モル)を0.5時間かけて140℃で滴下して加えた。その反応は、ウレタンテトラメタクリレートを得るために、赤外吸収スペクトルにおける波長2250cm−1のイソシアネート基による吸収がもはや見られなくなるまで140℃で行った。網目構造の調製は、上記のようにして行った。
【0084】
室温における高分子網目構造の熱的及び機械的性質を表7に示し、高分子網目構造フィルム(40%伸び、1サイクル)の形状記憶特性を表8に示す。
【0085】
【表7】

【0086】
【表8】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶特性を備えた共有結合高分子網目構造の製造に有用な、少なくとも2個のアクリレート基を含むマクロポリアクリレートであって、エステル構造単位及びウレタン構造単位の両方を含むマクロポリアクリレート。
【請求項2】
少なくとも2個〜10個のアクリレート基を含む、請求項1に記載のマクロポリアクリレート。
【請求項3】
少なくとも2個〜4個のアクリレート基を含む、請求項2に記載のマクロポリアクリレート。
【請求項4】
2個のアクリレート基を含む、請求項3に記載のマクロポリアクリレート。
【請求項5】
一般式(I):
【化1】


(式中、Rは、マクロジオールの置換基であり、Rは、低分子量ジイソシアネート及び約500〜約3000g/モルの範囲の数平均分子量Mを有するジイソシアネートプレポリマーの少なくとも1つの置換基であり、Rは、水素及び低級アルキルの少なくとも1つであり、Rは、約2個〜約10個の炭素原子を有する分枝又は非分枝アルキレン基の少なくとも1つであり、mは、0又は1〜10の範囲の整数である)
を有する、請求項4に記載のマクロポリアクリレート。
【請求項6】
一般式(II):
【化2】


(式中、Rは、マクロポリオールの置換基であり、Rは、水素及び低級アルキルの少なくとも1つであり、Rは、2個〜10個の炭素原子を有する分枝又は非分枝アルキレン基の少なくとも1つであり、nは、2以上の整数である)
を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のマクロポリアクリレート。
【請求項7】
一般式(IIa):
【化3】


(式中、Rは、マクロポリオールの置換基であり、Rは、水素及び低級アルキルの少なくとも1つであり、Rは、2個〜10個の炭素原子を有する分枝又は非分枝アルキレン基の少なくとも1つである)
を有する、請求項6に記載のマクロポリアクリレート。
【請求項8】
前記ウレタン構造単位が、低分子量ジイソシアネートに由来する、請求項1〜5のいずれかに記載のマクロジアクリレート。
【請求項9】
前記ジアクリレートが、ヒドロキシアルキルメタクリレートに由来する、請求項1〜5のいずれかに記載のマクロジアクリレート。
【請求項10】
環状ラクトンの開環重合、及び、ポリカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸又はポリヒドロキシポリカルボン酸と、ポリヒドロキシ化合物類との重縮合のうちの少なくとも1つによって調製されるポリエステルポリオールの構造単位をさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載のマクロポリアクリレート。
【請求項11】
約1000〜約50,000の平均分子量(M)を有する、請求項1〜10のいずれかに記載のマクロポリアクリレート。
【請求項12】
高分子網目構造の前駆物質としての少なくとも1つのマクロポリアクリレートの使用であって、前記少なくとも1つのマクロポリアクリレートが、少なくとも2個のアクリレート基を含み、前記少なくとも1つのマクロポリアクリレートが、エステル構造単位及びウレタン構造単位の両方を含む、使用。
【請求項13】
少なくとも1つの医療技術における前駆物質としてのものである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記少なくとも1つのマクロポリアクリレートが、請求項1〜11のいずれかに記載のマクロポリアクリレートの少なくとも1つである、請求項12又は請求項13に記載の使用。
【請求項15】
形状記憶特性を備えた共有結合高分子網目構造を調製するための、請求項1〜11のいずれかに記載のマクロポリアクリレートの使用。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれかに記載のマクロポリアクリレートの少なくとも1つを含む形状記憶特性を備えた共有結合高分子網目構造。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれかに記載の少なくとも1つのマクロポリアクリレートを共有結合架橋することによって得られる、請求項16に記載の共有結合高分子網目構造。
【請求項18】
分解可能である、請求項16又は請求項17に記載の共有結合高分子網目構造。
【請求項19】
生体適合性であることを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の共有結合高分子網目構造。
【請求項20】
請求項16〜19のいずれかに記載の共有結合高分子網目構造の医療分野における使用。
【請求項21】
請求項16〜19のいずれかに記載の共有結合高分子網目構造の血管及び非血管適用のためのインプラント材料としての使用。

【公表番号】特表2009−532511(P2009−532511A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546693(P2008−546693)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004196
【国際公開番号】WO2007/096708
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504380747)ネモサイエンス、ゲーエムベーハー (9)
【氏名又は名称原語表記】MNEMOSCIENCE GMBH
【Fターム(参考)】