説明

マスクパターンの補正方法、マスクパターンの形成方法、及びイオン注入方法

【課題】イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを小さくする。
【解決手段】本発明に係るマスクパターンの補正方法は、マスクパターンの形成位置とウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきとから、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算し、演算して得た位置ずれ補正量を補正パラメータ(i) に変換する位置ずれ補正パラメータ生成工程S10と、補正パラメータ(i) を描画補正データにフィードバックし、イオン注入領域の位置ずれを加味した描画補正演算データ(iii) を生成する描画補正データ生成工程S13とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクパターンの補正方法、マスクパターンの形成方法、及びイオン注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体結晶に不純物を導入するイオン注入法においては、面内で均一にイオン注入することが求められている。このようなイオン注入の均一性を向上させる手法として、例えば特許文献1に開示された技術が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示された手法では、偏向装置のクロック周波数を連続的に制御してイオン注入量を制御し、被処理物表面に選択的にイオンを注入して、所望のイオン注入パターンを形成している。そして、これにより、容易に正確なドーズ量を実現し、イオン注入の均一性を向上させることができる。
【0004】
また、特許文献2には、ウエハ面内のイオン注入角度のばらつきを検出する検出手段が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−143630号公報(1985年7月29日公開)
【特許文献2】特開2006−253029号公報(2006年9月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術では、イオン注入角度差により発生するイオン注入領域のシフトは、考慮されていない。それゆえ、微細パターンにおいては、ウエハ面内でイオン注入角度が変化するため、イオン注入領域の位置ずれが生じる。
【0007】
以下、図9を参照して、イオン注入角度差により発生するイオン注入領域の位置ずれについて、説明する。図9は、イオン注入角度差により発生するイオン注入領域の位置ずれを説明するための説明図である。
【0008】
図9に示される方法では、微細パターンのマスクとしてレジストRが形成された描画ウエハWに対し、イオン注入ビームBを方向Sに走査し、イオン注入領域Iを形成する。なお、レジストRによるマスクの前に、描画ウエハWには、所定のパターンでイオン注入領域Iが形成されている。
【0009】
図9に示されるように、描画ウエハWの位置C及びDにおける、イオン注入ビームBの注入角度(イオン注入ビームBの光軸と描画ウエハWの法線とのなす角度)は、一定していない。位置Aにおける注入角度δは、位置Bにおける注入角度δ’よりも大きくなっており、位置Aと位置Bとで注入角度差が生じている。
【0010】
そして、位置Aと位置Bとにおける注入角度差に起因して、位置Aと位置Bとにおいて、形成されているイオン注入領域Iに位置のずれが生じている。具体的には、位置Aにおけるイオン注入領域Iとイオン注入領域Iとの距離Aが、位置Bにおけるイオン注入領域Iとイオン注入領域Iとの距離A’よりも大きくなっている。このように、位置Aと位置Bとの注入角度差に起因して、形成されるイオン注入領域Iの位置ずれが生じ、描画ウエハWの面内において、均一な位置にイオン注入領域Iを形成することができないという問題が生じる。
【0011】
描画ウエハWにスキャン方式でレジストRを描画する場合には、注入角度差に起因するイオン注入領域の位置ずれを回避するために、スキャン幅を狭くするという方法がある。この方法では、スキャン方向における注入角度変化が小さくなる一方、スキャン方向と垂直な方向における注入角度変化は、小さくならない。すなわち、スキャン方向と垂直な方向における注入角度変化に対応することができない。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを小さくすることができるマスクパターンの補正方法、マスクパターンの形成方法、及びイオン注入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のマスクパターンの補正方法は、上記の課題を解決するために、露光装置に描画補正データを入力し、イオン注入用のマスクパターンを補正するマスクパターンの補正方法であって、現像したマスクパターンの形成位置とウエハ面におけるイオン注入角度のばらつきとから、該イオン注入角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算し、演算して得た位置ずれ補正量を補正パラメータに変換する位置ずれ補正パラメータ生成工程と、上記補正パラメータを描画補正データにフィードバックし、上記イオン注入領域の位置ずれを加味した位置ずれ描画補正データを生成する描画補正データ生成工程とを含むことを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、位置ずれ補正パラメータ生成工程にて、マスクパターンの形成位置とウエハ面におけるイオン注入角度のばらつきとから、該イオン注入角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算し、演算して得た位置ずれ補正量を補正パラメータに変換している。そして、描画補正データ生成工程にて、上記補正パラメータを描画補正データにフィードバックし、上記イオン注入領域の位置ずれを加味した位置ずれ描画補正データを生成している。これにより、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができるマスクパターンを実現することができる。
【0015】
また、上記の構成によれば、描画補正データ生成工程にて、上記補正パラメータを描画補正データにフィードバックし、上記イオン注入領域の位置ずれを加味した位置ずれ描画補正データを生成しており、露光装置とイオン注入を行うイオン注入装置とについて、処理装置の性能および特性を一体化した精度管理を行うようになっている。これにより、装置の機構及び性能のばらつき、並びにイオン注入の要因で発生するウエハ面の加工ばらつきを低減し、ウエハ面内の出来映えや均一性を向上させることができる。
【0016】
本発明のマスクパターンの補正方法では、イオンビームの入射方向が上記マスクパターンに対し入り込む第1の方向であって、上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記第1の方向に進むイオンビームの入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、イオン注入方向が上記マスクパターンに対し入り込む第1の方向であるので、イオン注入領域は、マスクパターンの下側に形成されることになる。このようにイオン注入領域をマスクパターンの下側に形成する場合においても、上記位置ずれ補正パラメータ生成工程で、上記第1の方向に進むイオンビームの入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することで、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができる。
【0018】
本発明のマスクパターンの補正方法では、上記第1の方向に進むイオンビームの入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算する場合には、上記第1の方向に進むイオンビームのマスクパターン側壁に対する入射角度をθとし、ウエハ面内において該イオンビームの入射角度がθからθ’にばらついたとき、上記イオン注入領域の位置ずれ補正量Δbは、イオンビームの注入入射距離をRpとすると、下記式(2)、
Δb=Rp×(cos(90−θ)−cos(90−θ’)) (2)
で表わされることが好ましい。
【0019】
これにより、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれをより確実に低減することができる。
【0020】
本発明のマスクパターンの補正方法では、イオンビームの入射方向が上記マスクパターンに対し影になる第2の方向であって、上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記第2の方向に進むイオンビームの入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、イオン注入方向が上記マスクパターンに対し影になる第2の方向であるので、イオン注入領域は、マスクパターン形成領域の外側に形成されることになる。このようにイオン注入領域をマスクパターン形成領域の外側に形成する場合においても、上記位置ずれ補正パラメータ生成工程で、上記第2の方向に進むイオンビームの入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することで、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができる。
【0022】
本発明のマスクパターンの補正方法では、特に、上記第2の方向に進むイオンビームの入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算する場合には、上記第2の方向に進むイオンビームのマスクパターン側壁に対する入射角度をθとし、ウエハ面内において該イオンビームの入射角度がθからθ’にばらついたとき、上記イオン注入領域の位置ずれ補正量Δbは、イオンビームの注入入射距離をRpとし、上記マスクパターンの高さをhとすると、下記式(4)、
Δb=(Rp×sin(90−θ)+h)/tan(90−θ
−(Rp×sin(90−θ’)+h)/tan(90−θ’) (4)
で表わされることが好ましい。
【0023】
これにより、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれをより確実に低減することができる。
【0024】
本発明のマスクパターンの補正方法では、ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきを検出する検出工程を含み、上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記検出工程の検出結果に合わせて、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、イオン注入の条件設定の違い(例えばイオン注入装置内へのウエハ貼り付け方向の違い)により、イオン注入角度のばらつきの方向が異なる場合であっても、検出工程にて、ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきを検出し、位置ずれ補正パラメータ生成工程で、上記検出工程の検出結果に合わせて、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することにより、ウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができる。また、検出工程にて、事前にイオン注入条件毎にイオン注入角度分布(ばらつき)の情報を取得し、該イオン注入角度分布に対し演算して得たイオン注入領域の位置ずれ補正量をデータとして保有することにより、イオン注入角度のウエハ面内ばらつきがイオン注入条件毎に異なる場合であっても、ウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができる。
【0026】
本発明のマスクパターンの補正方法では、上記検出工程の結果、ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきが連続的であるとき、上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記検出工程の検出結果に合わせて、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を連続的に変動させることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、イオン注入角度分布の情報の違いにより、例えばイオン注入角度のウエハ面内ばらつきが連続的に変化する場合でも、保有したイオン注入領域の位置ずれ補正量をデータに従って、上記位置ずれ補正パラメータ生成工程にて、ウエハ面全体に渡って、イオン注入領域の位置ずれ補正量を変動させることで、ウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができる。
【0028】
本発明のマスクパターンの補正方法では、上記検出工程の結果、ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきが特定の領域で局所的に生じているとき、上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記検出工程の検出結果に合わせて、上記特定の領域でのみ、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、例えばイオン注入角度がウエハ面の両端領域にて極端に変動している場合であっても、極端に変動した対象領域のみを、保有したイオン注入領域の位置ずれ補正量をデータに従って、イオン注入領域の位置ずれ補正量を変動させることができる。なお、上記の構成によれば、極端に変動した対象領域を複数の領域に分割して、領域毎にイオン注入領域の位置ずれ補正量を変動させることができる。
【0030】
本発明のマスクパターンの形成方法は、上記の課題を解決するために、上述のマスクパターンの補正方法により補正されたマスクパターンの形成方法であって、ウエハ面にレジストを塗布するレジスト塗布工程と、露光装置に、上記描画補正データ生成工程で得られた位置ずれ描画補正データを入力し、上記レジストを露光し、イオン注入用のマスクパターンを形成するパターン形成工程と、露光されたマスクパターンを現像する現像工程とを含むことを特徴としている。
【0031】
これにより、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができるマスクパターンの形成方法を実現することができる。
【0032】
本発明のイオン注入方法は、上記の課題を解決するために、上記マスクパターンの形成方法により形成されたマスクパターンをマスクとして、イオンビームを打ち込むイオン打ち込み工程を含むことを特徴としている。
【0033】
これにより、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができるイオン注入方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のマスクパターンの補正方法は、以上のように、マスクパターンの形成位置とウエハ面におけるイオン注入角度のばらつきとから、該イオン注入角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算し、演算して得た位置ずれ補正量を補正パラメータに変換する位置ずれ補正パラメータ生成工程と、上記補正パラメータを描画補正データにフィードバックし、上記イオン注入領域の位置ずれを加味した位置ずれ描画補正データを生成する描画補正データ生成工程とを含む構成である。
【0035】
また、本発明のマスクパターンの形成方法は、以上のように、ウエハ面にレジストを塗布するレジスト塗布工程と、露光装置に、上記描画補正データ生成工程で得られた位置ずれ描画補正データを入力し、上記レジストを露光し、イオン注入用のマスクパターンを形成するパターン形成工程と、露光されたマスクパターンを現像する現像工程とを含む構成である。
【0036】
本発明のイオン注入方法は、以上のように、上記マスクパターンの形成方法により形成されたマスクパターンをマスクとして、イオンビームを打ち込むイオン打ち込み工程を含む構成である。
【0037】
それゆえ、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれが低減することができるマスクパターンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の一形態におけるイオン注入方法の各種工程を示すフローチャートである。
【図2】イオンビームの注入方向がレジストに対して入り込む第1の方向である場合における、イオン注入領域のパターン補正量を模式的に示した模式図である。
【図3】図2に示すイオン注入領域のパターン補正量の演算を説明するための説明図である。
【図4】イオンビームの注入方向がレジストに対して影になる第2の方向である場合における、イオン注入領域のパターン補正量を模式的に示した模式図である。
【図5】図4に示すイオン注入領域のパターン補正量の演算を説明するための説明図である。
【図6】イオン注入装置におけるイオンビームの注入角度のばらつきの方向が異なる場合における補正方法を模式的に示した模式図であり、(a)は、ウエハ面におけるX方向にイオンビームの注入角度のばらつきが生じた場合を示し、(b)は、ウエハ面におけるY方向にイオンビームの注入角度のばらつきが生じた場合を示す。
【図7】(a)は、イオン注入装置におけるイオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきが連続的である場合における補正方法を模式的に示した模式図であり、(b)は、X方向におけるイオンビームの注入角度のばらつきを示したグラフである。
【図8】(a)は、イオン注入装置におけるイオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきが局所的である場合における補正方法を模式的に示した模式図であり、(b)は、X方向におけるイオンビームの注入角度のばらつきを示したグラフである。
【図9】イオン注入角度差により発生するイオン注入領域の位置ずれを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の一形態について、図1〜図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0040】
本実施形態のパターン形成方法(以下、本パターン形成方法と記す)は、ウエハ面にイオン注入するためのイオン注入パターン(露光パターン)を形成する方法である。また、本実施形態のイオン注入方法(以下、本イオン注入方法と記す)は、本パターン形成方法により形成されたイオン注入パターンにイオンビームを打ち込み、ウエハ面にイオン注入領域を形成する方法である。図1は、本イオン注入方法の各種工程を示すフローチャートである。
【0041】
図1に示されるように、本イオン注入方法は、フォトリソグラフィ工程と、ウエハ面にイオンビームを打ち込むイオン打ち込み工程S4とを含む。注入前フォトリソグラフィ工程は、ウエハ面にレジストを塗布するレジスト塗布工程S1と、露光装置を用いてウエハ面に塗布されたレジストを露光してイオン注入マスクパターンを形成するパターン形成工程S2と、露光されたイオン注入マスクパターンを現像する現像工程S3とを含む。本パターン形成方法は、上記フォトリソグラフィ工程に相当する。
【0042】
フォトリソグラフィ工程にて得られた、レジストからなるレジストパターンは、イオン打ち込み工程S4にて、イオンビームをマスクする。それゆえ、現像工程S3後に、レジストが形成されていない部分が、イオン注入パターンになる。
【0043】
本イオン注入方法では、イオン打ち込み工程S4にて、ウエハ面内に所望のイオン注入領域を形成した後、レジスト剥離工程S5にて、レジストを剥離する。
【0044】
本発明は、パターン形成工程S2にて形成されるイオン注入マスクパターン(露光パターン)を補正する補正方法に特徴がある。本実施形態のイオン注入マスクパターンの補正方法(以下、本補正方法と記す)では、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれ(イオン注入位置ずれ)を小さくするため、まず、ウエハ面内のイオン注入角度のばらつきにより想定されるイオン注入領域の位置ずれ量を算出する。そして、算出された位置ずれ量を露光装置のパターン位置精度補正機能を用いて補正する。すなわち、本補正方法では、イオン注入マスクパターンの描画補正データとして、イオン注入位置ずれを加味した描画補正演算データ(位置ずれ描画補正データ)を用いている。本イオン注入方法では、上記した補正方法により補正されたイオン注入マスクパターンを形成し、イオン注入マスクパターンに基づいて、ウエハ面に所望のイオン注入領域を形成する。図1を参照して、本補正方法の一例について、説明する。なお、図1において、点線で囲まれた工程が、本補正方法に含まれる各種工程に相当する。
【0045】
本補正方法は、図1に示されるように、位置ずれ補正パラメータ生成工程S10と、パターン位置精度補正パラメータ生成工程S11と、補正演算工程S12と、描画補正データ生成工程S13とを含む。
【0046】
位置ずれ補正パラメータ生成工程S10では、イオン打ち込み工程S4にて想定されるイオン注入領域の位置ずれデータ(具体的には、ウエハ面内のイオン注入角度のばらつき)を検出する。そして、この検出されたイオン注入角度のばらつきから、イオン注入領域のパターン補正量を演算する。そして、演算して得たパターン補正量を補正パラメータとして表現して、注入位置ずれデータに基づく、位置ずれ補正パラメータ(i) を生成する。なお、本補正方法における「補正パラメータ」としては、イオン注入マスクパターンの「アライメント」及び「線幅」に関するパラメータが挙げられる。
【0047】
また、パターン位置精度補正パラメータ生成工程S11では、現像工程S3にて現像されたイオン注入マスクパターンについて、描画検査を行う。この描画検査では、最終的に現像工程S3にて現像されたイオン注入マスクパターンが、露光装置により予め設定した露光描画パターンに合致するか否かを検査する。そして、この描画検査の結果に基づいて、現像されたイオン注入マスクパターンが露光描画パターンに合致するように、パターン補正量を演算する。そして、演算して得たパターン補正量を補正パラメータとして表現し、描画検査に基づく、現像補正パラメータ(ii)を生成する。
【0048】
補正演算工程S12および描画補正データ生成工程S13では、位置ずれ補正パラメータ(i) と現像補正パラメータ(ii)とを加味した描画補正演算データ(iii) を生成する。具体的には、補正演算工程S12にて上記位置ずれ補正パラメータ(i) と現像補正パラメータ(ii)との合計を演算する。この演算して得た両パラメータの合計を描画補正量とする。そして、描画補正データ生成工程S13にて、演算して得た描画補正量を描画補正演算データ(iii) に変換する。描画補正データ生成工程S13にて生成された描画補正演算データ(iii) は、イオン注入位置ずれを加味した補正データである。パターン形成工程S2にて、パターン形成(露光)装置に、描画補正演算データ(iii) を入力することにより、ウエハ面内のイオン注入角度ばらつきにより想定されるイオン注入領域の位置ずれ量を補正することができる。
【0049】
本補正方法では、上記のように、補正演算工程S12および描画補正データ生成工程S13では、イオン注入位置ずれを加味した描画補正演算データ(iii) を生成している。そして、この描画補正演算データ(iii) をパターン形成(露光)装置に、描画補正演算データ(iii) を入力し、ウエハ面にイオン注入マスクパターンを形成する。これにより、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができる。特に、微細で精密なイオン注入位置精度が要求されるセンサーデバイスに対して、本補正方法を適用すると、デバイス特性のばらつき低減により歩留りが向上するという効果を奏する。
【0050】
また、本補正方法によれば、フォトリソグラフィ工程で、フォトリソグラフィ工程後のイオン打ち込み工程S4で発生するウエハ面内の位置ずれを補正している。すなわち、フォトリソグラフィ工程後のイオン打ち込み工程S4で発生するウエハ面内の位置ずれ量を、フォトリソグラフィ工程のパターン形成工程S2で使用されるパターン形成位置補正値(描画補正演算データ(iii) )にフィードバックして、イオン注入位置のばらつきを低減している。すなわち、本補正補正方法では、パターン形成工程S2で使用される露光装置とパターン形成工程S2後に使用されるイオン注入装置とについて、処理装置の性能および特性を一体化した精度管理を行うようになっている。これにより、装置の機構及び性能のばらつき、並びにイオン打ち込み工程S4の要因で発生する加工ばらつきを低減し、ウエハ面内の出来映えや均一性を向上させることができる。
【0051】
以下、本補正方法の特徴である位置ずれ補正パラメータ生成工程S10について、さらに詳述する。位置ずれ補正パラメータ生成工程S10では、イオン注入マスクパターンを構成するレジストに対するイオンビームの注入方向(入射方向)によって、イオン注入領域のパターン補正量の演算方法が異なる。具体的には、イオンビームの注入方向がレジストに対して入り込む第1の方向である場合と、イオンビームの注入方向がレジストに対して影になる第2の方向である場合とで、イオン注入領域のパターン補正量の演算方法が異なる。本補正方法では、上記第1の方向と上記第2の方向との2方向のうち、何れかの方向を選択して、イオン注入領域のパターン補正量を調整することが可能である。
【0052】
まず、イオンビームの注入方向がレジストに対して入り込む第1の方向である場合における、イオン注入領域のパターン補正量の演算について説明する。図2は、イオンビームの注入方向がレジストに対して入り込む第1の方向である場合における、イオン注入領域のパターン補正量を模式的に示した模式図である。また、図3は、図2に示すイオン注入領域のパターン補正量の演算を説明するための説明図である。
【0053】
図2に示されるように、イオン注入マスクパターンを構成するレジストRに対して、入り込む第1の方向にイオンビームBを注入したとき、(レジストRの側壁に対する)入射角度θにばらつきが生じ、角度θ’または角度θ''になる(θ<θ’<θ'')。レジストRに対して入射角度θ’で入射するイオンビームをイオンビームB’とし、レジストRに対して入射角度θ''で入射するイオンビームをイオンビームB''とする。そして、イオンビームBを入射したときの、ウエハ面W内部のイオン注入位置をbとする。また、イオンビームB’を入射したときの、ウエハ面W内部のイオン注入位置をb’とする。また、イオンビームB''を入射したときの、ウエハ面W内部のイオン注入位置をb''とする。
【0054】
このようにイオンビームBの入射角度θにばらつきが生じたとき、ウエハ面W内部のイオン注入位置bは、ウエハ面Wの延在方向において、位置bと位置b''との間でばらつきΔbが生じる。位置ずれ補正パラメータ生成工程S10では、上記ばらつきΔbをイオン注入領域のパターン補正量として演算する。そして、演算されたイオン注入領域のパターン補正量(すなわち、ばらつきΔb)を、露光装置を用いて制御可能な、アライメントや線幅といったパラメータに変換し、位置ずれ補正パラメータ(i) を生成する。そして、位置ずれ補正パラメータ(i) をレジストの位置補正に用いる。
【0055】
図3に示されるように、レジストRに対し入り込む第1の方向に入射角度θでイオンビームBを注入したしたとき、イオンビームBの注入入射距離をRpとすると、ウエハ面W内部のイオン注入位置bは、下記数式(1)で表わすことができる。
=Rp×cos(90−θ) (1)
また、イオンビームBの入射角度θについて、ばらついた入射角度をθ’(=θ±1度)とし、この入射角度のばらつきより生じたイオン注入位置のばらつきをΔbとすると、このΔbは、下記式(2)で表わすことができる。
Δb=Rp×(cos(90−θ)−cos(90−θ’)) (2)
位置ずれ補正パラメータ生成工程S10では、レジストRに対して、入り込む第1の方向にイオンビームBを注入したとき、上記式(2)に示されるΔbをイオン注入領域のパターン補正量として、各種補正パラメータに変換する。
【0056】
Δbの演算について、以下に具体例を示して説明する。ここでは、ウエハの中心部分でのイオンビームBの入射角度θが7度であり、ウエハ周辺部において、入射角度θが1度ばらつき、入射角度θ’が6度になっている。そして、イオン注入条件として11Bをエネルギー100keVで打ち込む場合には、イオン注入入射距離Rpは0.2994μmになる。このとき、イオン注入位置のばらつきをΔbは、上記式(2)より、
Δb=Rp×(cos(90−θ)−cos(90−θ’))
=0.2994×(cos(90−7)−cos(90−6))
=0.0052μm
となる。この補正量データとしてのΔb(=0.0052μm)を、線幅等の位置ずれ補正パラメータ(i) として変換する。そして、変換された位置ずれ補正パラメータ(i) を本補正方法に適用し、ウエハ周辺部のイオン注入マスクパターンの露光線幅などを調整する。これにより、イオン打ち込み工程S4にて、ウエハ周辺部においても、ウエハ中心部と同様の位置にイオン注入領域を形成することができる。
【0057】
また、上述のイオン注入領域のパターン補正量の演算手法は、例えばセンサーデバイスにおけるフォトダイオードから電荷を転送する転送トランジスタの製造において、好適に適用され得る。上述のイオン注入領域のパターン補正量の演算手法を適用することにより、転送トランジスタの下側に潜り込むイオン注入位置(すなわち、フォトダイオード形成位置)を正確に制御することができる。このため、トランジスタ特性のウエハ面内のばらつきを抑制し、フォトダイオードによる電荷の転送不良を防止できるとともに、歩留りの向上が可能になる。
【0058】
次に、イオンビームの注入方向がレジストに対して影になる第2の方向である場合における、イオン注入領域のパターン補正量の演算について説明する。図4は、イオンビームの注入方向がレジストに対して影になる第2の方向である場合における、イオン注入領域のパターン補正量を模式的に示した模式図である。また、図5は、図4に示すイオン注入領域のパターン補正量の演算を説明するための説明図である。
【0059】
図4に示されるように、イオン注入マスクパターンを構成するレジストRに対して、影になる第2の方向にイオンビームBを注入したとき、入射角度θについて、角度θ’と〜θ''との間でばらつきが生じる(θ<θ’<θ'')。レジストRに対して入射角度θ’で入射するイオンビームをイオンビームB’とし、レジストRに対して入射角度θ''で入射するイオンビームをイオンビームB''とする。そして、イオンビームBを入射したときの、ウエハ面W内部のイオン注入位置をbとする。また、イオンビームB’を入射したときの、ウエハ面W内部のイオン注入位置をb’とする。また、イオンビームB''を入射したときの、ウエハ面W内部のイオン注入位置をb''とする。
【0060】
このようにイオンビームBの入射角度θにばらつきが生じたとき、ウエハ面W内部のイオン注入位置bは、ウエハ面Wの延在方向において、位置bと位置b''との間でばらつきΔbが生じる。位置ずれ補正パラメータ生成工程S10では、上記ばらつきΔbをイオン注入領域のパターン補正量として演算する。そして、演算されたイオン注入領域のパターン補正量(すなわち、ばらつきΔb)を、露光装置を用いて制御可能な、アライメントや線幅といったパラメータに変換し、位置ずれ補正パラメータ(i) を生成する。そして、位置ずれ補正パラメータ(i) をレジストの位置補正に用いる。
【0061】
図5に示されるように、レジストRに対し影になる第2の方向に入射角度θでイオンビームBを注入したとき、イオンビームBの注入入射距離をRpとし、レジストRの高さをhとすると、ウエハ面W内部のイオン注入位置bは、下記数式(3)で表わすことができる。
=(Rp×sin(90−θ)+h)/tan(90−θ) (3)
また、イオンビームBの入射角度θについて、ばらついた入射角度をθ’(=θ±1度)とし、この入射角度のばらつきより生じたイオン注入位置のばらつきをΔbとすると、このΔbは、下記式(4)で表わすことができる。
Δb=(Rp×sin(90−θ)+h)/tan(90−θ
−(Rp×sin(90−θ’)+h)/tan(90−θ’) (4)
位置ずれ補正パラメータ生成工程S10では、レジストRに対して、影になる第2の方向にイオンビームBを注入したとき、上記式(4)に示されるΔbをイオン注入領域のパターン補正量として、各種補正パラメータに変換する。
【0062】
Δbの演算について、以下に具体例を示して説明する。ここでは、レジストRの高さを2.0μmとしている。また、ウエハの中心部分でのイオンビームBの入射角度θが7度であり、ウエハ周辺部において、入射角度θが1度ばらつき、入射角度θ’が6度になっている。そして、イオン注入条件として11Bをエネルギー100keVで打ち込む場合には、イオン注入入射距離Rpは0.2994μmになる。このとき、イオン注入位置のばらつきをΔbは、上記式(4)より、
Δb=(Rp×sin(90−θ)+h)/tan(90−θ
−(Rp×sin(90−θ’)+h)/tan(90−θ’)
=(Rp×sin(90−7)+2.0)/tan(90−7)
−(Rp×sin(90−6)+2.0)/tan(90−6)
=0.0406μm
となる。この補正量データとしてのΔb(=0.0406μm)を、線幅等の位置ずれ補正パラメータ(i) として変換する。そして、変換された位置ずれ補正パラメータ(i) を本補正方法に適用し、ウエハ周辺部のイオン注入マスクパターンの露光線幅などを調整する。これにより、イオン打ち込み工程S4にて、ウエハ周辺部においても、ウエハ中心部と同様の位置にイオン注入領域を形成することができる。
【0063】
また、上述のイオン注入領域のパターン補正量の演算手法は、例えばセンサーデバイスの製造方法における画素分離注入工程において、好適に適用され得る。上述のイオン注入領域のパターン補正量の演算手法を適用することにより、フォトダイオードと画素分離領域との境界位置のウエハ面内ばらつきの発生を抑制することができる。その結果、ウエハ面内で安定したフォトダイオード容量を有するセンサーデバイスを提供することが可能になる。
【0064】
また、図2〜図5に示された例では、位置ずれ補正パラメータ生成工程S10にて、上記第1の方向と上記第2の方向との二方向のうち、何れかの方向を選択して、イオン注入領域のパターン補正量を調整していた。しかしながら、本補正方法においては、位置ずれ補正パラメータ生成工程S10にて、上記第1の方向と上記第2の方向との両方向を選択して、イオン注入領域のパターン補正量を調整することが可能である。上述した具体例と同様のイオン注入条件、及びレジストRの寸法の条件でイオン打ち込みを行った場合には、上記第1の方向に入射するイオンビームBに対しては、補正量データとしてのΔb(=0.0052μm)を線幅等の位置ずれ補正パラメータ(i) として変換し、線幅及び露光位置の補正量を調整する。上記第2の方向に入射するイオンビームB に対しては、補正量データとしてのΔb(=0.0406μm)を線幅等の位置ずれ補正パラメータ(i) として変換し、線幅及び露光位置の補正量を調整する。これにより、ウエハ周辺部においても、ウエハ中心部と同様の位置にイオン注入領域を形成することができる。
【0065】
また、例えばセンサーデバイスの製造において、上述のように、上記第1の方向と上記第2の方向との両方向を選択して、イオン注入領域のパターン補正量を調整することにより、ウエハ面内でさらに安定したフォトダイオード容量を有するセンサーデバイスを提供することが可能になる。そして、歩留りや品質が向上したセンサーデバイスを提供することができる。
【0066】
また、イオン注入領域のパターン補正量は、イオン注入装置によるイオンビームの注入角度(入射角度)のウエハ面W内のばらつきに合わせて自由に変化させることが可能である。すなわち、本補正方法は、ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきを検出する検出工程を含み、位置ずれ補正パラメータ生成工程S10にて、上記検出工程の検出結果に合わせて、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することが可能である。ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきの検出方法として、従来公知の方法を適用することができ、例えば、上記特許文献2に記載の方法が挙げられる。なお、ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきは、イオン注入装置のディスク上に備え付けられた検出器により、検出可能である。また、検出工程にて、事前にイオン注入条件毎にイオン注入角度分布(ばらつき)の情報を取得し、該イオン注入角度分布に対し演算して得たイオン注入領域の位置ずれ補正量をデータとして保有することにより、イオン注入角度のウエハ面内ばらつきがイオン注入条件毎に異なる場合であっても、ウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれを低減することができる。
【0067】
例えば、イオン注入装置がウエハ外周部において注入角度にばらつきが生じる装置である場合には、ウエハ外周部において、イオン注入領域のパターン補正量を演算し、この補正量を位置ずれ補正パラメータ(i) として変換する(位置ずれ補正パラメータ生成工程S10)。そして、位置ずれ補正パラメータ(i)を用いて、露光装置における線幅及び露光位置の補正量を調整する(補正演算工程S12および描画補正データ生成工程S13)。
【0068】
また、イオン注入装置におけるイオンビームの注入角度のばらつきの方向の違いに応じて、イオン注入パターンの形成位置を補正することができる。図6は、イオン注入装置におけるイオンビームの注入角度のばらつきの方向が異なる場合における補正方法を模式的に示した模式図であり、(a)は、ウエハ面におけるX方向にイオンビームの注入角度のばらつきが生じた場合を示し、(b)は、ウエハ面におけるY方向にイオンビームの注入角度のばらつきが生じた場合を示す。
【0069】
図6(a)及び(b)において、注入角度のばらつきがないと想定した場合のレジストおよびイオンビームを、点線で示し、レジストR’、及びイオンビームB’としている。図6(a)または(b)に示されるように、ウエハ面WのX方向またはY方向において、イオンビームB’の入射角度(注入角度)は、一様であり、この入射角度に基づいて、レジストR’の位置が設計されている。また、注入角度のばらつきを想定した場合のレジストおよびイオンビームは、実線で示し、レジストR、及びイオンビームBとしている。
【0070】
図6(a)に示されるように、ウエハ面WにおけるX方向にイオンビームB’の注入角度のばらつきが生じた場合には、X方向の注入角度のばらつきに合わせて、イオン注入領域のパターン補正量Δbを演算し、この補正量Δbを位置ずれ補正パラメータ(i) として変換する。そして、位置ずれ補正パラメータ(i) を用いて、露光装置における線幅及び露光位置の補正量を調整する(補正演算工程S12および描画補正データ生成工程S13)。そして、パターン形成工程S2にて、調整した線幅及び露光位置の補正量を描画補正データ(iii) とし、描画補正データ(iii) に基づいて、イオン注入マスクパターン(レジストR)を形成する。一方、Y方向においては、注入角度のばらつきが生じていないので、イオン注入領域のパターン補正量を演算する必要がない。
【0071】
また、図6(b)に示されるように、ウエハ面WにおけるY方向にイオンビームB’の注入角度のばらつきが生じた場合には、Y方向の注入角度のばらつきに合わせて、イオン注入領域のパターン補正量Δbを演算し、この補正量Δbを位置ずれ補正パラメータ(i) として変換する。そして、位置ずれ補正パラメータ(i) を用いて、露光装置における線幅及び露光位置の補正量を調整する(補正演算工程S12および描画補正データ生成工程S13)。そして、パターン形成工程S2にて、調整した線幅及び露光位置の補正量を描画補正データ(iii) とし、描画補正データ(iii) に基づいて、イオン注入マスクパターン(レジストR)を形成する。一方、X方向においては、注入角度のばらつきが生じていないので、イオン注入領域のパターン補正量を演算する必要がない。
【0072】
また、イオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきが連続的である場合には、この注入角度のばらつきに応じて、イオン注入パターンの形成位置を補正することができる。図7(a)は、イオン注入装置におけるイオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきが連続的である場合における補正方法を模式的に示した模式図であり、図7(b)は、X方向におけるイオンビームの注入角度のばらつきを示したグラフである。
【0073】
まず、図7(b)に示されるグラフは、x軸がウエハ面におけるX方向の位置を示し、y軸がイオン注入角度を示す。y軸のイオン注入角度は、ウエハ中心部のイオン注入角度との角度差(絶対値)として示している。図7(b)から、X方向におけるイオン注入角度は、ウエハ中心部からウエハ外周部へ向かうに従い、連続的に変化していることが分かる。本補正方法は、このようなイオン注入角度のばらつきに応じて、イオン注入マスクパターンの形成位置を補正することができる。
【0074】
図7(a)に示されるように、イオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきがX方向に連続的である場合には、X方向の注入角度の連続的なばらつきに合わせて、イオン注入領域のパターン補正量Δbを変動させ、この補正量Δbを位置ずれ補正パラメータ(i) として変換する。そして、位置ずれ補正パラメータ(i) を用いて、露光装置における線幅及び露光位置の補正量を調整する(補正演算工程S12および描画補正データ生成工程S13)。そして、パターン形成工程S2にて、調整した線幅及び露光位置の補正量を描画補正データ(iii) とし、描画補正データ(iii) に基づいて、イオン注入マスクパターン(レジストR)を形成する。
【0075】
なお、上述した「X方向の注入角度の連続的なばらつきに合わせて、イオン注入領域のパターン補正量Δbを変動させる」方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。すなわち、図7(b)に示されるグラフから、X方向の各位置(x)と注入角度差(y)との関係を示す関数を求め、該関数を、パターン補正量を表わす式(例えば式(2)または(4))に代入し、パターン補正量をxの関数で表わす。そして、この関数に基づいて、パターン補正量ΔbをX方向に変動させる。
【0076】
また、イオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきが連続的である場合には、検出工程にて、事前に連続的なイオン注入角度分布の情報を取得してもよい。そして、このイオン注入角度分布に対し演算して得たイオン注入領域の位置ずれ補正量をデータとして保有してもよい。これにより、位置ずれ補正パラメータ生成工程S10にて、保有したイオン注入領域の位置ずれ補正量をデータに従って、イオン注入領域の位置ずれ補正量を変動させることができる。
【0077】
また、イオン注入装置におけるイオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきが局所的である場合には、この注入角度のばらつきに応じて、イオン注入マスクパターンの形成位置を補正することができる。図8(a)は、イオン注入装置におけるイオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきが局所的である場合における補正方法を模式的に示した模式図であり、図8(b)は、X方向におけるイオンビームの注入角度のばらつきを示したグラフである。
【0078】
まず、図8(b)に示されるグラフは、x軸がウエハ面におけるX方向の位置を示し、y軸がイオン注入角度を示す。y軸のイオン注入角度は、ウエハ中心部のイオン注入角度との角度差(絶対値)として示している。図8(b)から、X方向におけるイオン注入角度は、ウエハ面の中心領域では一定の角度であり、外周領域にのみ局所的に(極端に)変化していることが分かる。本補正方法は、このようなイオン注入角度のばらつきに応じて、イオン注入マスクパターンの形成位置を補正することができる。すなわち、ウエハ面の外周領域にのみ、イオン注入マスクパターンの形成位置を補正することができる。
【0079】
図8(a)に示されるように、イオンビームの注入角度がウエハ面の外周領域Eで局所的に変化している場合には、外周領域Eでのみイオン注入領域のパターン補正量Δbを演算し、この補正量Δbを位置ずれ補正パラメータ(i) として変換する。そして、位置ずれ補正パラメータ(i) を用いて、露光装置における線幅及び露光位置の補正量を調整する(補正演算工程S12および描画補正データ生成工程S13)。そして、パターン形成工程S2にて、調整した線幅及び露光位置の補正量を描画補正データ(iii) とし、描画補正データ(iii) に基づいて、イオン注入マスクパターン(レジストR)を形成する。
【0080】
また、イオンビームの注入角度のウエハ面内のばらつきが局所的である場合には、検出工程にて、事前に局所的なイオン注入角度分布の情報を取得してもよい。そして、このイオン注入角度分布に対し演算して得たイオン注入領域の位置ずれ補正量をデータとして保有してもよい。これにより、位置ずれ補正パラメータ生成工程S10にて、保有したイオン注入領域の位置ずれ補正量をデータに従って、イオン注入領域の位置ずれ補正量を変動させることができる。また、局所的にイオン注入角度が変動した領域を複数の領域に分割して、領域毎にイオン注入領域の位置ずれ補正量を変動させることもできる。
【0081】
なお、イオン注入角度のウエハ面内のばらつきとしては、イオン打ち込み工程S4で使用されるイオン注入装置固有のばらつき、イオン打ち込み工程S4毎に変化するばらつき等が挙げられる。イオン注入条件(装置レシピ上で設定するイオン注入角度等)によって、イオン注入角度のウエハ面内のばらつきが大きく変動する。本補正方法は、このようなイオン打ち込み工程S4毎に変化するばらつきに対しても対応することができる。
【0082】
本補正方法のように、イオン注入装置のイオン注入角度のウエハ面内のばらつきを、露光装置のパターン位置精度補正機能を用いてイオン注入マスクパターンを補正した。その結果、イオン注入装置のイオン注入角度のウエハ面内のばらつきに起因するウエハの不良率を、1/10以下にすること可能になった。
【0083】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、イオンビームの注入角度差に起因するウエハ面内のイオン注入領域の位置ずれが低減することができるので、半導体装置の製造分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
S1 レジスト塗布工程
S2 パターン形成工程
S3 現像工程
S4 イオン打ち込み工程
S5 レジスト剥離工程
S10 位置ずれ補正パラメータ生成工程
S11 パターン位置精度補正パラメータ生成工程
S12 補正演算工程(演算工程)
S13 描画補正データ生成工程
B,B’ イオンビーム
イオンビーム(第1の方向に進むイオンビーム)
イオンビーム(第2の方向に進むイオンビーム)
R,R’ レジスト
W ウエハ面
Δb,Δb ばらつき(位置ずれ補正量)
Δb,Δb 補正量(位置ずれ補正量)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置に描画補正データを入力し、イオン注入用のマスクパターンを補正するマスクパターンの補正方法であって、
現像したマスクパターンの形成位置とウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきとから、該入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算し、演算して得た位置ずれ補正量を補正パラメータに変換する位置ずれ補正パラメータ生成工程と、
上記補正パラメータを描画補正データにフィードバックし、上記イオン注入領域の位置ずれを加味した位置ずれ描画補正データを生成する描画補正データ生成工程とを含むことを特徴とするマスクパターンの補正方法。
【請求項2】
イオンビームの入射方向が上記マスクパターンに対し入り込む第1の方向であって、
上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記第1の方向に進むイオンビームの入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することを特徴とする請求項1に記載のマスクパターンの補正方法。
【請求項3】
上記第1の方向に進むイオンビームのマスクパターン側壁に対する入射角度をθとし、ウエハ面内において該イオンビームの入射角度がθからθ’にばらついたとき、上記イオン注入領域の位置ずれ補正量Δbは、イオンビームの注入入射距離をRpとすると、下記式(2)、
Δb=Rp×(cos(90−θ)−cos(90−θ’)) (2)
で表わされることを特徴とする請求項2に記載のマスクパターンの補正方法。
【請求項4】
イオンビームの入射方向が上記マスクパターンに対し影になる第2の方向であって、
上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記第2の方向に進むイオンビームの入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のマスクパターンの補正方法。
【請求項5】
上記第2の方向に進むイオンビームのマスクパターン側壁に対する入射角度をθとし、ウエハ面内において該イオンビームの入射角度がθからθ’にばらついたとき、上記イオン注入領域の位置ずれ補正量Δbは、イオンビームの注入入射距離をRpとし、上記マスクパターンの高さをhとすると、下記式(4)、
Δb=(Rp×sin(90−θ)+h)/tan(90−θ
−(Rp×sin(90−θ’)+h)/tan(90−θ’) (4)
で表わされることを特徴とする請求項4に記載のマスクパターンの補正方法。
【請求項6】
ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきを検出する検出工程を含み、
上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記検出工程の検出結果に合わせて、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のマスクパターンの補正方法。
【請求項7】
上記検出工程の結果、ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきが連続的であるとき、
上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記検出工程の検出結果に合わせて、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を連続的に変動させることを特徴とする請求項6に記載のマスクパターンの補正方法。
【請求項8】
上記検出工程の結果、ウエハ面におけるイオンビームの入射角度のばらつきが特定の領域で局所的に生じているとき、
上記位置ずれ補正パラメータ生成工程では、上記検出工程の検出結果に合わせて、上記特定の領域でのみ、入射角度のばらつきに対するイオン注入領域の位置ずれ補正量を演算することを特徴とする請求項6に記載のマスクパターンの補正方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のマスクパターンの補正方法により補正されたマスクパターンの形成方法であって、
ウエハ面にレジストを塗布するレジスト塗布工程と、
露光装置に、上記描画補正データ生成工程で得られた位置ずれ描画補正データを入力し、上記レジストを露光し、イオン注入用のマスクパターンを形成するパターン形成工程と、
露光されたマスクパターンを現像する現像工程とを含むことを特徴とするマスクパターンの形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載のマスクパターンの形成方法により形成されたマスクパターンをマスクとして、イオンビームを打ち込むイオン打ち込み工程を含むことを特徴とするイオン注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−266684(P2010−266684A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117865(P2009−117865)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】