説明

マスクブランク収納ケース及びマスクブランクの収納方法、並びにマスクブランク収納体

【課題】蓋の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を抑制できるようにしたマスクブランクの収納ケースを提供する。
【解決手段】上方が開口したケース本体5と、該ケース本体5に被せる蓋体6とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランク収納ケースである。ここで、蓋体6の上部から被せる固定部材8を、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部より下方の位置でケース本体5と係合させることにより、蓋体5とケース本体6とを固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの製造に使用されるフォトマスク等の製造に用いられるマスクブランクを収納する収納ケース及びその収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子デバイス、特に半導体素子や液晶モニター用のカラーフィルター或いはTFT素子等は、IT技術の急速な発達に伴い、一層の微細化が要求されている。このような微細加工技術を支える技術の一つが、転写マスクと呼ばれるフォトマスクを用いたリソグラフィー技術である。このリソグラフィー技術においては、露光用光源の電磁波を転写マスクを通じてレジスト膜付きシリコンウエハー等に露光することにより、シリコンウエハー上に微細なパターンを形成している。この転写マスクは通常、透光性基板上に遮光性膜を形成したマスクブランクにリソグラフィー技術を用いて原版となるパターンを形成して製造される。ところで、マスクブランクの表面にパーティクル等の異物があると、形成されるパターンの欠陥の原因となるので、マスクブランクの表面には異物等が付着しないように清浄に保管される必要がある。
【0003】
このようなマスクブランクを収納保管し運搬するためのケースとしては、従来では例えば下記特許文献1に開示されているようなマスク運搬用ケースが知られている。すなわち、従来のマスクブランクを収納保管するケースは、キャリアなどと呼ばれている内ケースにマスクブランクを数枚乃至数十枚並べて保持させ、このマスクブランクを保持した内ケースを外箱(ケース本体)内に収容し、さらに外箱上に蓋を被せて、マスクブランクを収納する構造となっていた。
【0004】
図3乃至図5は、特許文献1に開示されたものと同様の構造の収納ケースを示すもので、図3は収納ケースの蓋を示す斜視図、図4はマスクブランクを中ケースに収納する状態を示す斜視図、図5は収納ケースのケース本体(外ケース)を示す斜視図である。
この収納ケースは、マスクブランク1を中ケース2に収納し、この中ケース2をケース本体3に収納し、このケース本体3の開口部側に蓋4を被せる構造である。
【0005】
上記中ケース2は、開口部側(上方)から底面側(下方)に向けて複数の溝21,22を一方の互いに対向する内側面に所定間隔をおいて一対をなして形成し、その溝21,22の底面側の底部と中ケース底面にはそれぞれ開口窓23,24と開口部27が設けられ、さらに中ケース底面側には基板支持部26が形成され、この基板支持部26でマスクブランク1の下方端面を支持している(図4)。そして、この中ケース2をケース本体3に収納して固定するための凹面部28,29がそれぞれ中ケースの他方の互いに対向する外側面に底面側から開口部側の途中まで形成されている。数枚のマスクブランク1を中ケース2の一対の溝21,22に沿って入れると、これらのマスクブランクは所定間隔をおいて互いに平行に林立する。
【0006】
上記ケース本体3は、上述した中ケース2の凹面部28,29と当接するに適合した突出部31,32を、互いに対向する内側面に形成し、その突出部31,32の底部はケース本体3底面とも接合している(図5)。また、一方の対向する外側面の開口部側には凸部33,34が形成されている。そして、ケース本体3の開口縁35のやや下方の位置に続く外周面36と上記凸部33,34の凸面とは略同一面に形成されている。
また上記蓋4は、その一方の対向する下方縁47(ケース本体へ差し込む開口部側の縁であって、図3では上方へ向いている)の中央から延びた係合片41,42に凹部43,44を形成している。これにより、蓋4をケース本体3に被せたときに、上記凹部43,44が前記ケース本体3の凸部33,34とそれぞれ嵌合することで、蓋4とケース本体3とが固定される構造となっている。また、中ケース2の開口部側上端面25と当接して中ケース2を垂直方向において支持固定するストッパー45,46を一方の内側面に互いに対向させて形成している。
【0007】
【特許文献1】特公平1−39653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の電子デバイスの高性能化に伴って、転写マスクに形成されるパターンも一段と微細化が要求されており、このような微細パターンを形成するためにもマスクブランクの清浄度は極めて高いものでないと許容できなくなってきている。従って、マスクブランクに異物等が付着するのを出来るだけ抑制することにより、特にマスクブランクの保管中は出来るだけ高い清浄度に維持する必要がある。
【0009】
しかしながら、従来構造の収納ケースは、上述したように、蓋4をケース本体3に被せると、前記蓋4の凹部43,44が前記ケース本体3の凸部33,34とそれぞれ嵌合することで、蓋4とケース本体3とが固定されるようになっており、また上記蓋4やケース本体3はポリプロピレン等の樹脂で形成されているため、蓋を開閉する際に、前記蓋4の凹部43,44と前記ケース本体3の凸部33,34との擦れによるパーティクルが発生する。さらにこのような蓋の開閉時の作業者のハンドリングによる発塵があり、それがケースに付着してパーティクルの発生要因となる。しかも、従来構造の収納ケースの場合、上述のようなパーティクルの発生源(発塵源)、つまり蓋4の凹部43,44とケース本体3の凸部33,34との嵌合部分が、蓋4をケース本体3に被せたときのケース本体3の開口縁部の外周面36と蓋4の下縁部の外周面48との接合部(合わせ部)と同じ位置にあるため、たとえば蓋4を開けた際に生じたパーティクルがケース内に進入してマスクブランクに付着して、異物欠陥となるおそれが極めて高かった。
【0010】
従って、本発明は、上記従来の問題点を解消し、蓋の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を抑制できるようにしたマスクブランクの収納ケース及び収納方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、収納ケースの開閉時の発塵源が、蓋をケース本体に被せたときの蓋とケース本体との接合部(合わせ部)とは異なる位置となるようにすることにより、蓋の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制できることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
(構成1)上方が開口したケース本体と、該ケース本体に被せる蓋体とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースであって、蓋体の上部から被せる固定部材によって、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部より下方の位置で前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とするマスクブランク収納ケース。
構成1のマスクブランク収納ケースによれば、蓋体の上部から被せる固定部材によって、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部より下方の位置で前記蓋体と前記ケース本体とを固定するため、収納ケースの開閉時に発塵のおそれがある固定部材による固定位置が、ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体と蓋体との接合部より下方の位置にあり、蓋とケース本体との接合部(合わせ部)から発塵源を離すことにより、パーティクルがケース内部に進入するおそれが少なくなり、蓋の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
【0013】
(構成2)上方が開口したケース本体と、該ケース本体に被せる蓋体とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースであって、蓋体の上部から被せる固定部材を、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部より下方の位置で前記ケース本体と係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とするマスクブランク収納ケース。
構成2のマスクブランク収納ケースによれば、蓋体の上部から被せる固定部材を、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部より下方の位置で前記ケース本体と係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定する。そのため、収納ケースの開閉時に発塵のおそれがある固定部材とケース本体との係合による固定位置が、ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体と蓋体との接合部より下方の位置にあり、蓋とケース本体との接合部(合わせ部)から発塵源を離すことにより、パーティクルがケース内部に進入するおそれが少なくなり、蓋の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
【0014】
(構成3)前記固定部材の両端部をそれぞれ、前記蓋体を前記ケース本体に被せたときの前記ケース本体の底部に係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とする構成1又は2に記載のマスクブランク収納ケース。
前記固定部材による蓋体とケース本体とを固定する一態様としては、構成3にあるように、前記固定部材の両端部をそれぞれ、前記蓋体を前記ケース本体に被せたときの前記ケース本体の底部に係合させる。
【0015】
(構成4)前記ケース本体における対向する一対の側壁外側面にそれぞれ係合凸部を備え、前記固定部材の両端部をそれぞれ、前記蓋体を前記ケース本体に被せたときの前記ケース本体の前記係合凸部に係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とする構成1又は2に記載のマスクブランク収納ケース。
前記固定部材による蓋体とケース本体とを固定する他の態様としては、構成4にあるように、ケース本体における対向する一対の側壁外側面にそれぞれ係合凸部を備え、前記固定部材の両端部をそれぞれ、前記蓋体を前記ケース本体に被せたときの前記ケース本体の前記係合凸部に係合させる。
【0016】
(構成5)前記ケース本体の開口縁部又は前記蓋体の下縁部の少なくとも一方に弾性体を周設し、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部に前記弾性体を介在させることを特徴とする構成1乃至4のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケース。
構成5にあるように、固定部材によって蓋体とケース本体を固定する際、固定部材によって蓋体を押し付け、弾性体をつぶして、ケース内を密閉状態とすることができる。また、ケース内部に収納されたマスクブランクを輸送、搬送中でもきちっと固定し、パーティクル発生を抑えることができる。
【0017】
(構成6)構成1乃至5のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケースに、レジスト膜を有するマスクブランクを収納することを特徴とするマスクブランクの収納方法。
構成1乃至5のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケースに、レジスト膜を有するマスクブランクを収納することにより、収納ケースの開閉時に発塵のおそれがある固定部材とケース本体との係合による固定位置が、ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体と蓋体との接合部より下方の離れた位置にあるため、パーティクルがケース内部に進入するおそれが少なくなり、蓋の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
【0018】
(構成7)構成6に記載の収納方法によりマスクブランクが収納されたことを特徴とするマスクブランク収納体。
構成7のマスクブランク収納体によれば、収納ケースの開閉時に発塵のおそれがある固定部材とケース本体との係合による固定位置が、ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体と蓋体との接合部より下方の離れた位置にあるため、パーティクルがケース内部に進入するおそれが少なくなり、蓋の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上方が開口したケース本体と該ケース本体に被せる蓋体とを備えたマスクブランクの収納ケースにおいて、ケース本体に蓋体を被せたときのケース本体と蓋体との接合部より下方の位置で、蓋体の上部から被せる固定部材をケースと係合させて蓋体とケース本体とを固定するため、収納ケースの開閉時に発塵のおそれがある固定部材による固定位置が、ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体と蓋体との接合部より下方の位置にあり、蓋とケース本体との接合部(合わせ部)から発塵源が離れた位置にあるため、パーティクルがケース内部に進入するおそれが少なくなり、蓋の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
図1は本発明の収納ケースの一実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定する前の状態の正面図、(c)固定部材で固定した状態の側面図である。
【0021】
本実施の形態に係るマスクブランクの収納ケースは、上方が開口したケース本体5と、該ケース本体5に被せる蓋体6とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースである。上記ケース本体5及び蓋体6は、その全体的な形状は、従来構造の収納ケースが前記蓋4の凹部43,44と前記ケース本体3の凸部33,34を備えている点を除いては、図3に示す蓋4及び図5に示すケース本体3と同様の形状を有している。また、図1には示していないが、前述の従来構造の収納ケースのようにマスクブランクを複数枚保持するための中ケース(図4参照)を用いる構成とすることができる。上記中ケースを使用せずに、マスクブランクをケース本体5に直接溝等を設けて収納する形態とすることもできるが、中ケースを使用すると、数枚乃至数十枚のマスクブランクをまとめて中ケース2に入れた状態で取り扱えるので便利である。
【0022】
本実施形態の収納ケースは、主表面が正方形のガラス基板の一主表面上にクロム膜等の遮光性薄膜を成膜し、その上にレジスト膜を形成したマスクブランクをたとえば中ケース(図示せず)に収納し、この中ケースをケース本体5に収納し、このケース本体5の開口部側に蓋体6を被せる構造である(図1(b)参照)。ケース本体5の上から蓋体6を被せると、蓋体6の下方縁に続く外周面61とケース本体5の開口縁部51とが前後に重なり合うと同時に、蓋体6の下方縁の外周面61とケース本体5の開口縁部51の下方の外周面52とが同一面上に重なり合って蓋体6とケース本体5とが接合される。
なお、本実施形態では、蓋体6を閉じた収納ケースの密閉性をより高めるために、ケース本体5の開口縁部51に沿って適当な大きさの環状の弾性体7を嵌め込んでいる(図1(b))。弾性体7としては、雰囲気の温度、気圧等の変動があっても化学成分ガスの放出が少ない材料が好ましく、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマーが挙げられる。
【0023】
本実施の形態による収納ケースは、上述のように内部にマスクブランクを収納して、ケース本体5に蓋体6を被せた状態でケース本体5と蓋体6とを固定するため、蓋体6の上部から被せる固定部材8を使用する。この固定部材8は、好ましくは、ケース本体5と蓋体6とを固定する際、蓋体上部からケース本体にかけて被せることができるように多少変形可能な程度の柔軟性を有し、所定の幅を有する帯状部材であり、なお且つ収納ケースの外形形状に合わせて略コの字状に形成されている(図1(b)参照)。すなわち、固定部材8は、蓋体6を閉じた状態の収納ケースの高さに略相当する長さを有する部分81と83、及び、蓋体6を閉じた状態の収納ケースの横幅に略相当する長さを有する部分82を有する略コの字状に形成されている。そして、固定部材8の両端部はそれぞれ、ケース本体5の底部に係合させるのに都合が良いように、内方に折れ曲がった部分8a,8bを有している。
【0024】
このような本実施の形態のマスクブランク収納ケースによれば、内部にマスクブランクを収納して、ケース本体5に蓋体6を被せた状態で、固定部材8を蓋体6の上部から被せて、当該固定部材8の両端部8a,8bをそれぞれケース本体5の底部に係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定する。収納ケースの開閉時には、固定部材8を収納ケースから着脱するが、その際に発塵のおそれがある固定部材8とケース本体5の底部との係合位置が、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部より下方の位置にあり、発塵源が蓋体6とケース本体5との接合部(合わせ部)から離れているため、蓋体6を開けた際にパーティクルがケース内部に進入するおそれが少なくなり、結果的に、蓋体6の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
また、上記固定部材8によって蓋体6とケース本体5を固定する際、固定部材8によって蓋体6を押し付け、前記弾性体7をつぶして、ケース内を密閉状態とすることができる。また、ケース内部に収納されたマスクブランクを輸送、搬送中でもきちっと固定し、パーティクル発生を抑えることができる。
【0025】
なお、上述のケース本体5及び蓋体6の材質は、例えばポリプロピレン、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチルサルファイト、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の樹脂から適宜選択されることが好ましい。これらの中でも、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。なお、マスクブランクの保管中にチャージが溜まると、マスク製造過程において放電破壊を起こし、パターン欠陥となる場合があるので、たとえばケース本体5の構成樹脂にカーボン等を混ぜ込んで導電性を付与するようにしてもよい。
また、上述の固定部材8の材質は、例えばポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の樹脂や、ステンレス、アルミニウム等の金属から適宜選択されることが好ましい。
【0026】
[第2の実施の形態]
図2は本発明の収納ケースの他の実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定する前の状態の正面図、(c)固定部材で固定した状態の側面図である。図1と同等の箇所には同一符号を付している。
【0027】
本実施の形態の収納ケースにおいては、ケース本体5における対向する一対の側壁外側面にあって開口側の外周面52より下方の位置にそれぞれ係合凸部53,54を備え、蓋体6の上部から被せる固定部材9の両端部9a,9bをそれぞれ、蓋体6をケース本体5に被せたときのケース本体5の前記係合凸部53,54に係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定するように構成されている。上記固定部材9は、好ましくは、ケース本体5と蓋体6とを固定する際、蓋体上部からケース本体にかけて被せることができるように多少変形可能な柔軟性を有し、所定の幅を有する帯状部材であり、なお且つ収納ケースの外形形状に合わせて略コの字状に形成されている(図2(b)参照)。
【0028】
すなわち、本実施の形態のマスクブランク収納ケースによれば、内部にマスクブランクを収納して、ケース本体5に蓋体6を被せた状態で、固定部材9を蓋体6の上部から被せて、当該固定部材9の両端部9a,9bをそれぞれケース本体5の前記係合凸部53,54に係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定する。そして本実施の形態においても、収納ケースの開閉時には、固定部材9を収納ケースから着脱するが、その際に発塵のおそれがある固定部材9とケース本体5の前記係合凸部53,54との係合位置が、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部より下方の位置にあり、発塵源が蓋体6とケース本体5との接合部(合わせ部)から離れているため、蓋体6を開けた際にパーティクルがケース内部に進入するおそれが少なくなり、結果的に、蓋体6の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することが可能である。
なお、固定部材9の両端部にそれぞれ、ケース本体5の係合凸部53,54と嵌合できるような例えば凹部を設けておき、当該固定部材9の両端部をそれぞれケース本体5の係合凸部53,54に係合させるようにしてもよい。
【0029】
また、上述した第1の実施の形態、および第2の実施の形態においては、蓋体6とケース本体5との接合部より下の位置で、蓋体6の上部から被せる固定部材をケース本体5と係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定するようにしているが、これに限らず、たとえば蓋体6の上方側から被せる上部固定部材と、ケース本体5の下方側から被せる下部固定部材同士を係合(あるいは嵌合)させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定するようにしてもよい。この場合、上部固定部材と下部固定部材同士を係合(あるいは嵌合)させる位置を、ケース本体5と蓋体6との接合部より下方の離れた位置とすることにより、発塵源が蓋体6とケース本体5との接合部から離れているので、蓋体6の開閉時の発塵によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することが可能である。
【0030】
以下、具体的な実施例により本発明を説明する。
(実施例1)
合成石英基板(6インチ×6インチの大きさ)上にスパッタ法で、表層に反射防止機能を有するクロム膜を形成し、その上にスピンコート法でポジ型の化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製:FEP171)を形成してレジスト膜付きマスクブランクを製造した。
このようにして製造した10枚のマスクブランクを、1ケースに5枚収納し、計2ケースを用意した。収納ケースとして、前述の図1に示す第1の実施の形態に係る収納ケースを用いた。なお、蓋体の材質は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ケース本体の材質はポリプリピレン、中ケースの材質はポリプロピレンを用いた。収納作業はクリーンルーム内で行った。
【0031】
そして、同じくクリーンルーム内で、固定部材をケースから外して、蓋体を開け、再び蓋体を閉じて、固定部材をケースに装着するという蓋の開閉動作を連続して50回行った。
そして、このような蓋の開閉動作を行った後、収納ケースからマスクブランクを取り出し、欠陥検査装置(レーザーテック社製:M2350)を用いて、マスクブランク主表面上の付着異物による欠陥(90μm以上の大きさの欠陥)個数を測定した。なお、評価は、収納ケースに収納する前の欠陥個数を予め上記と同様に測定しておき、これに対する蓋の開閉動作後の欠陥個数の増加個数で行った。その結果、本実施例では、増加欠陥個数は、平均して0.1個であり、蓋体の開閉動作によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することが可能である。
【0032】
(実施例2)
本実施例では、実施例1と同様に製造したマスクブランクを収納するケースとして、前述の図2に示す第2の実施の形態に係る収納ケースを用いたこと以外は実施例1と同様にしてマスクブランクの収納を行った。
そして、固定部材をケースから外して、蓋体を開け、再び蓋体を閉じて、固定部材をケースに装着するという蓋の開閉動作を連続して50回行った。
【0033】
そして、このような蓋の開閉動作を行った後、実施例1と同様に、収納ケースに収納する前の欠陥個数に対する蓋の開閉動作後の欠陥個数の増加個数を測定した。その結果、本実施例では、増加欠陥個数は、平均して0.2個であり、蓋体の開閉動作によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することが可能である。
【0034】
(比較例)
実施例1と同様に製造したマスクブランクを収納するケースとして、前述の図3乃至図5に示す従来構造の収納ケースを用いたこと以外は実施例1と同様にしてマスクブランクの収納を行った。
そして、収納ケースの前記蓋4の凹部43,44と前記ケース本体3の凸部33,34とを係合し、またその係合を外すことにより蓋の開閉動作を連続して50回行った。
【0035】
そして、このような蓋の開閉動作を行った後、実施例1と同様に、収納ケースに収納する前の欠陥個数に対する蓋の開閉動作後の欠陥個数の増加個数を測定した。その結果、本比較例では、増加欠陥個数は、平均して6.8個と非常に多く、蓋体の開閉動作によるマスクブランクへのパーティクル付着を抑制することができない。これは、従来構造の収納ケースの場合、蓋の開閉動作に伴う発塵源が、蓋とケース本体との接合部と同じ位置にあることが要因であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の収納ケースの一実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定する前の状態の正面図、(c)固定部材で固定した状態の側面図である。
【図2】本発明の収納ケースの他の実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定する前の状態の正面図、(c)固定部材で固定した状態の側面図である。
【図3】従来構造の収納ケースの蓋を示す斜視図である。
【図4】マスクブランクを中ケースに収納する状態を示す斜視図である。
【図5】従来構造の収納ケースのケース本体(外ケース)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 マスクブランク
2 中ケース
3 ケース本体
4 蓋
5 ケース本体
6 蓋体
7 弾性体
8,9 固定部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口したケース本体と、該ケース本体に被せる蓋体とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースであって、少なくとも蓋体の上部から被せる固定部材によって、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部より下方の位置で前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とするマスクブランク収納ケース。
【請求項2】
上方が開口したケース本体と、該ケース本体に被せる蓋体とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースであって、蓋体の上部から被せる固定部材を、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部より下方の位置で前記ケース本体と係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とするマスクブランク収納ケース。
【請求項3】
前記固定部材の両端部をそれぞれ、前記蓋体を前記ケース本体に被せたときの前記ケース本体の底部に係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクブランク収納ケース。
【請求項4】
前記ケース本体における対向する一対の側壁外側面にそれぞれ係合凸部を備え、前記固定部材の両端部をそれぞれ、前記蓋体を前記ケース本体に被せたときの前記ケース本体の前記係合凸部に係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクブランク収納ケース。
【請求項5】
前記ケース本体の開口縁部又は前記蓋体の下縁部の少なくとも一方に弾性体を周設し、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部に前記弾性体を介在させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケース。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケースに、レジスト膜を有するマスクブランクを収納することを特徴とするマスクブランクの収納方法。
【請求項7】
請求項6に記載の収納方法によりマスクブランクが収納されたことを特徴とするマスクブランク収納体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−102021(P2009−102021A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273238(P2007−273238)
【出願日】平成19年10月20日(2007.10.20)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】