説明

マスク材組成物、不純物拡散層の形成方法、および太陽電池

【課題】半導体基板への不純物拡散成分の拡散の際に拡散保護のために形成するマスクに好適に採用可能なマスク材組成物、当該マスク材組成物を用いた不純物拡散層の形成方法、および太陽電池を提供する。
【解決手段】マスク材組成物は、半導体基板への不純物拡散成分の拡散保護に用いられるマスク材組成物であって、下記式(a1)で表される構成単位を含むシロキサン樹脂(A1)を含有する。
【化1】


式(a1)中、Rは、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、Rは、炭素数6〜20のアリール基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク材組成物、不純物拡散層の形成方法、および太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池の製造において、半導体基板中に、例えばN型またはP型の不純物拡散層を形成する場合には、N型またはP型の不純物拡散成分を含む拡散剤を半導体基板表面にパターニングし、パターニングされた拡散剤からN型またはP型の不純物拡散成分を拡散させて、N型またはP型の不純物拡散層を形成していた。具体的には、まず、半導体基板表面に熱酸化膜を形成し、続いてフォトリソグラフィ法により所定のパターンを有するレジストを熱酸化膜上に積層する。そして、当該レジストをマスクとして酸またはアルカリによりレジストでマスクされていない熱酸化膜部分をエッチングし、レジストを剥離して熱酸化膜のマスクを形成する。続いて、N型またはP型の不純物拡散成分を含む拡散剤を塗布してマスクが開口している部分に拡散膜を形成する。その後、拡散膜中の不純物拡散成分を高温で拡散させてN型またはP型の不純物拡散層を形成している。
【0003】
このような太陽電池の製造に関して、特許文献1には、拡散制御用マスクとして用いられるマスキングペーストが開示されている。このようなマスキングペーストを用いることで、複雑なフォトリソグラフィー技術等を用いず、簡易的に不純物拡散領域の微細なパターニング形成をすることができ、低コストな太陽電池を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−49079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池に用いられる半導体基板は、その表面に鏡面加工が施されないことが多い。また、太陽電池に用いられる半導体基板は、半導体基板表面での光の反射を防止するために、その表面に微細な凹凸構造を有するテクスチャ部が形成されることが多い。そのため、このような半導体基板の表面にマスクを形成した場合、マスク材が凹部に溜まって凹部におけるマスクの膜厚が大きくなってしまうことがあった。従来のマスク材では、膜厚が大きくなった部分にクラックが発生してしまい、これによりマスク材の拡散保護性能が損なわれてしまうおそれがあった。また、従来のマスク材では、経時変化によりマスク材を構成する樹脂の分子量が増大してしまう場合があった。樹脂の分子量が増大するとマスク材の粘度等の特性が変化し、塗布安定性が低下してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、発明者によるこうした認識に基づいてなされたものであり、その目的は、半導体基板への不純物拡散成分の拡散の際に拡散保護のために形成するマスクに好適に採用可能なマスク材組成物、当該マスク材組成物を用いた不純物拡散層の形成方法、および太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様はマスク材組成物であり、このマスク材組成物は、半導体基板への不純物拡散成分の拡散保護に用いられるマスク材組成物であって、下記式(a1)で表される構成単位を含むシロキサン樹脂(A1)を含有することを特徴とする。
【化1】

式(a1)中、Rは、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、Rは、炭素数6〜20のアリール基である。
【0008】
この態様によれば、半導体基板への不純物拡散成分の拡散の際に拡散保護のために形成するマスクに好適に採用可能なマスク材組成物を提供することができる。
【0009】
本発明の他の態様は不純物拡散層の形成方法であり、この不純物拡散層の形成方法は、半導体基板に、上記態様のマスク材組成物を選択的に塗布する工程と、半導体基板に塗布されたマスク材組成物をマスクとして、不純物拡散成分を半導体基板に選択的に塗布し、拡散させる拡散工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この態様によれば、より高精度に不純物拡散層を形成することができる。
【0011】
本発明のさらに他の態様は太陽電池であり、この太陽電池は、上記態様の不純物拡散層の形成方法により不純物拡散層が形成された半導体基板を備えたことを特徴とする。
【0012】
この態様によれば、より信頼性の高い太陽電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体基板への不純物拡散成分の拡散の際に拡散保護のために形成するマスクに好適に採用可能なマスク材組成物、当該マスク材組成物を用いた不純物拡散層の形成方法、および太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(A)〜図1(F)は、実施形態に係る不純物拡散層の形成方法を含む太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本実施形態に係るマスク材組成物は、半導体基板への不純物拡散成分の拡散保護に用いられるマスク材組成物であり、シロキサン樹脂(A)と、溶剤(B)とを含有する。以下、本実施形態に係るマスク材組成物の各成分について詳細に説明する。
【0017】
《シロキサン樹脂(A)》
シロキサン樹脂(A)は、マスク材本体を構成する樹脂である。本実施形態に係るマスク材組成物は、シロキサン樹脂(A)として、下記式(a1)で表される構成単位(以下、適宜この構成単位を構成単位a1と称する)を含むシロキサン樹脂(A1)を含有する。
【0018】
【化2】

式(a1)中、Rは、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、Rは、炭素数6〜20のアリール基である。
【0019】
ここで「構成単位」とは、高分子化合物(重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
【0020】
式(a1)中、Rの炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等の直鎖状のアルキレン基や、イソプロピレン基、t−ブチレン基等の分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。Rとしては、メチレン基およびエチレン基が好ましい。
【0021】
また、式(a1)中、Rの炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。また、このアリール基は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、イミノ基、アミノ基等の置換基を有していてもよい。Rとしては、フェニル基およびナフチル基が好ましい。
【0022】
構成単位a1の具体例としては、例えば、下記式(a1−1)で表される構成単位(以下、適宜この構成単位を構成単位a1−1と称する)、下記式(a1−2)で表される構成単位(以下、適宜この構成単位を構成単位a1−2と称する)、下記式(a1−3)で表される構成単位(以下、適宜この構成単位を構成単位a1−3と称する)、および下記式(a1−4)で表される構成単位(以下、適宜この構成単位を構成単位a1−4と称する)などが挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
また、シロキサン樹脂(A1)は、下記式(a2)で表される構成単位(以下、適宜この構成単位を構成単位a2と称する)や、下記式(a3)で表される構成単位(以下、適宜この構成単位を構成単位a3と称する)を含んでもよい。
【0028】
【化7】

式(a2)中、Rは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、イミノ基、アミノ基等の置換基を有していてもよい。また、この脂肪族炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれでもよい。飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、ヘキシル基、オクチルデシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、例えば、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基等が挙げられる。
【0029】
【化8】

式(a3)中、RおよびRは、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基である。炭素数6〜20のアリール基、および炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基の具体例は、上述のとおりである。
【0030】
構成単位a2の具体例としては、Rがメチル基であるメチルシルセスキオキサンモノマー、Rがエチル基であるエチルシルセスキオキサンモノマー、Rがプロピル基であるプロピルシルセスキオキサンモノマーなどが挙げられる。構成単位a1と構成単位a2との共重合体であるシルセスキオキサン樹脂の具体例としては、例えば下記式(A1−1)で表されるものが挙げられる。
【0031】
【化9】

式(A1−1)中、j:kは、1:99〜99:1の範囲である。
【0032】
なお、構成単位a1と構成単位a2との共重合体は、構成単位a1の共重合比が50%以上、すなわちj:kが50:50〜1:99であることが好ましく、また、構成単位a1の共重合比が70%以上、すなわちj:kが30:70〜1:99であることがより好ましい。
【0033】
また、構成単位a3において、RおよびRは、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係るマスク材組成物は、構成単位a1を含むシロキサン樹脂(A1)を含有している。構成単位a1に含まれるアリール基は、嵩高い構造を有する。そのため、半導体基板表面へのマスク形成の際に、マスク材組成物の熱硬化によって嵩高いアリール基が焼失して、マスク中にポーラスが形成される。そして、このポーラスによって、隣接する構成単位同士あるいは隣接するポリマー同士の結合(シラノール脱水縮合)による体積収縮が適度に抑えられる。そのため、アリール基を有する構成単位a1を含むことでマスクに柔軟性を持たせることができる。これにより、半導体基板の表面の凹部でマスクの膜厚が大きくなった場合でも、当該箇所におけるクラックの発生を抑制することができる。すなわち、マスクのクラック耐性を向上させることができる。
【0035】
また、構成単位a1は、ケイ素(Si)の4つの結合手のうちの1つに嵩高いアリール基が結合した構造を有する。そのため、例えば従来のスピンオングラス(SOG)と比較した場合、マスクを構成するシロキサン樹脂(A)は反応性が乏しく、したがって分子量の変化が小さい。よって、シロキサン樹脂(A)の分子量が経時変化にともなって増大することを抑制することができる。これにより、マスク材の粘度等の特性が変化することを抑制でき、良好な塗布安定性を維持することができる。
【0036】
シロキサン樹脂(A1)は、構成単位a1を含むシルセスキオキサン樹脂であることが好ましい。また、構成単位a1と構成単位a2とを含むシルセスキオキサン樹脂であってもよい。シルセスキオキサン樹脂は、かご状構造などの3次元構造をとるため、3次元ネットワーク構造を形成しやすい。したがって、シロキサン樹脂(A1)がシルセスキオキサン樹脂である場合は、他のシロキサン樹脂の場合と比べてマスクのクラック耐性をより高めることができる。
【0037】
さらに、シロキサン樹脂(A1)は、構成単位a1のみからなるシルセスキオキサン樹脂であることが好ましい。この場合には、マスク中に含まれるアリール基の割合を増やすことができるため、マスクのクラック耐性の向上を図ることができ、またシルセスキオキサン樹脂によるクラック耐性向上効果も得ることができる。このようなシルセスキオキサン樹脂として、例えば、下記式(A1−2)で表されるものが挙げられる。
【0038】
【化10】

式(A1−2)中、R、Rは、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、R、Rは、アリール基であり、RとRからなる有機基と、RとRとからなる有機基とは互いに同じでも異なってもよく、異なる場合、m:nは1:99〜99:1の範囲である。
【0039】
式(A1−2)で表されるシルセスキオキサン樹脂の具体例としては、例えば、下記式(A1−2a)で表されるもの(以下、適宜シルセスキオキサン樹脂A1−2aと称する)や、下記式(A1−2b)で表されるもの(以下、適宜シルセスキオキサン樹脂A1−2bと称する)などが挙げられる。
【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
シロキサン樹脂(A1)の質量平均分子量は、1000〜30000であることが好ましく、1500〜10000であることがより好ましい。このような質量平均分子量の範囲にすることにより、良好な塗布安定性が得られる。
【0043】
なお、マスク材組成物は、シロキサン樹脂(A)として、構成単位a1を含まないシロキサン樹脂(A2)を含有してもよい。シロキサン樹脂(A2)としては、例えば構成単位a2からなるシルセスキオキサン樹脂、構成単位式a3のみからなるシロキサン樹脂、または構成単位a2および構成単位a3からなるシロキサン樹脂などが挙げられる。
【0044】
マスク材組成物の樹脂濃度は、1〜50%であることが好ましく、5〜40%であることがより好ましい。このような樹脂濃度の範囲にすることにより、良好な塗布安定性が得られる。
【0045】
《溶剤(B)》
溶剤(B)は、シロキサン樹脂(A)を溶解できるものであればよい。溶剤(B)の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコール誘導体類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸3-メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル‐2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の極性溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、溶剤(B)は、沸点が100℃以上の有機溶剤(B1)を含有することが好ましい。有機溶剤(B1)を含有することで、マスク材組成物の乾燥を抑制することができる。そのため、マスクパターンの形成にインクジェット印刷法を採用した場合に、マスク材組成物の乾燥によって起こるインクジェットノズルの目詰まりを防ぐことができる。また、マスクパターンの形成にスクリーン印刷法を採用した場合に、印刷版上でマスク材組成物が乾燥して固着してしまうのを回避することができる。したがって、溶剤(B)に有機溶剤(B1)を含有させることで、半導体基板に高精度のマスクパターンを形成することができる。溶剤(B)に有機溶剤(B1)を含有させる場合、有機溶剤(B1)は、溶剤(B)の全質量に対し約10質量%以上となるように含有させることが好ましい。
【0047】
有機溶剤(B1)の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、エチル−3−プロポキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、イソプロピル−3−メトキシプロピオネート、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、アセト酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブタノール、イソブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
また、溶剤(B)は、沸点が180℃以上の有機溶剤(B2)を含有することが好ましい。有機溶剤(B2)を含有することで、マスク材組成物の乾燥をさらに抑制することができる。そのため、マスクパターンの形成にインクジェット印刷法を採用した場合に、マスク材組成物の乾燥によって起こるインクジェットノズルの目詰まりをより確実に防ぐことができる。また、マスクパターンの形成にスクリーン印刷法を採用した場合に、印刷版上でマスク材組成物が乾燥して固着してしまうのをより確実に回避することができる。したがって、溶剤(B)に有機溶剤(B2)を含有させることで、半導体基板により高精度のマスクパターンを形成することができる。溶剤(B)に有機溶剤(B2)を含有させる場合、有機溶剤(B2)は、マスク材組成物の全質量に対して、1〜60%であることが好ましく、5〜50%であることがより好ましく、10〜40%であることがさらに好ましい。このような範囲にすることにより、良好な塗布安定性が得られる。
【0049】
有機溶剤(B2)の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリン、ベンジルアルコール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、アセト酢酸エチル、乳酸ブチル、乳酸エチルヘキシル、ジヘキシルエーテル、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、テルピネオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
《その他》
マスク材組成物中に含まれる金属不純物の濃度は、約500ppb以下であることが好ましく、約100ppb以下であることがより好ましい。また、マスク材組成物は、その他の添加剤として一般的な界面活性剤や増粘剤などを含有してもよい。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、金属不純物の汚染リスクを低減する点からノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0051】
なお、マスク材組成物は、実質的にシロキサン樹脂(A1)と溶剤(B)とのみからなるものであることが好ましい。この場合には、不純物拡散成分を半導体基板に熱拡散させた際に、マスク材組成物が半導体基板に影響を与えるおそれを低減することができる。
【0052】
《不純物拡散層の形成方法、および太陽電池の製造方法》
図1を参照して、不純物拡散層の形成方法と、これにより不純物拡散層が形成された半導体基板を備えた太陽電池の製造方法の一例について説明する。図1(A)〜(F)は、実施形態に係る不純物拡散層の形成方法を含む太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0053】
まず、図1(A)に示すように、シリコン基板等のN型の半導体基板1上に、マスク材組成物Mを選択的に塗布する。マスク材組成物Mは、インクジェット方式により半導体基板1の表面に選択的に塗布されてパターン状となる。すなわち、周知のインクジェット吐出機のインクジェットノズルから、半導体基板1の所定領域にマスク材組成物Mを吐出してパターニングする。インクジェット吐出機としては、電圧を加えると変形するピエゾ素子(圧電素子)を利用したピエゾ方式の吐出機を用いる。なお、加熱により発生する気泡を利用したサーマル方式の吐出機等を用いてもよい。マスクパターンを形成した後は、焼成してマスク材組成物Mを乾燥させる。
【0054】
次に、図1(B)に示すように、半導体基板1上に形成されたマスク材組成物Mのパターンに応じて、半導体基板1上に、P型の不純物拡散成分を含有する拡散剤組成物2と、N型の不純物拡散成分を含有する拡散剤組成物3とを選択的に塗布する。拡散剤組成物2および拡散剤組成物3は、周知の方法で調整されたものである。
【0055】
次に、図1(C)に示すように、拡散剤組成物2および拡散剤組成物3がパターニングされた半導体基板1を、例えば、電気炉等の拡散炉内に載置して焼成し、拡散剤組成物2中のP型の不純物拡散成分、および拡散剤組成物3中のN型の不純物拡散成分を半導体基板1の表面から半導体基板1内に拡散させる。なお、拡散炉に代えて、慣用のレーザーの照射により半導体基板1を加熱してもよい。このようにして、P型の不純物拡散成分が半導体基板1内に拡散して、P型不純物拡散層4が形成され、また、N型の不純物拡散成分が半導体基板1内に拡散して、N型不純物拡散層5が形成される。
【0056】
次に、図1(D)に示すように、例えばフッ酸などの剥離剤を用いて、マスク材組成物M、拡散剤組成物2、および拡散剤組成物3を除去する。
【0057】
次に、図1(E)に示すように、熱酸化等により、半導体基板1のP型不純物拡散層4およびN型不純物拡散層5が形成された側の表面に、パッシベーション層6を形成する。また、半導体基板1のパッシベーション層6が形成された側と反対側の面に、周知の方法により微細な凹凸構造を有するテクスチャ構造を形成し、その上に太陽光の反射防止効果を有するシリコン窒化膜7を形成する。
【0058】
次に、図1(F)に示すように、周知のフォトリソグラフィ法およびエッチング法により、パッシベーション層6を選択的に除去して、P型不純物拡散層4およびN型不純物拡散層5の所定領域が露出するようにコンタクトホール6aを形成する。そして、P型不純物拡散層4上に設けられたコンタクトホール6aに、例えば電解めっき法および無電解めっき法により所望の金属を充填して、P型不純物拡散層4と電気的に接続された電極8を形成する。また、同様にして、N型不純物拡散層5上に設けられたコンタクトホール6aに、N型不純物拡散層5と電気的に接続された電極9を形成する。以上の工程により、本実施形態に係る太陽電池10を製造することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係るマスク剤組成物は、半導体基板への不純物拡散成分の拡散保護に用いられるマスク材組成物であって、構成単位a1を含むシロキサン樹脂(A1)を含有する。構成単位a1は、嵩高い構造を有するアリール基を含むため、アリール基に起因する立体障害によって、隣接する構成単位同士あるいは隣接するポリマー同士の結合が適度に抑えられる。そのため、マスクに柔軟性を持たせることができ、マスクのクラック耐性を向上させることができる。また、構成単位a1は、ケイ素(Si)の4つの結合手のうちの1つにアリール基が結合した構造を有する。そのため、シロキサン樹脂(A)の分子量が経時変化にともなって増大することを抑制することができ、マスクのクラック耐性を向上させることができる。したがって、本実施形態に係るマスク材組成物は、半導体基板への不純物拡散成分の拡散保護の際に形成されるマスクに好適に採用可能である。
【0060】
また、シロキサン樹脂(A1)を、構成単位a1を含むシルセスキオキサン樹脂とすることで、マスク材組成物のクラック耐性をより高めることができる。また、シロキサン樹脂(A1)を、構成単位a1のみからなるシルセスキオキサン樹脂とすることで、マスク材組成物のクラック耐性をさらに高めることができる。
【0061】
また、マスク材組成物をシロキサン樹脂(A1)と溶剤(B)とのみからなる構成とすることで、マスク材組成物が半導体基板に与える影響を低減することができる。また、溶剤(B)に、沸点が100℃以上の有機溶剤(B1)を含有させることで、常温環境下におけるマスク材組成物の乾燥を抑制することができる。そのため、マスク材組成物をパターニングした際に印刷カスレが生じる可能性を低減することができ、高精度のマスクパターンを形成することができる。
【0062】
また、本実施形態に係るマスク材組成物を用いて不純物拡散層を形成した場合には、より高精度に不純物拡散層を形成することができる。そして、このような不純物拡散層の形成方法により不純物拡散層が形成された半導体基板を太陽電池に用いた場合には、より信頼性の高い太陽電池を得ることができる。
【0063】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれるものである。上述の実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0064】
例えば、上述の実施形態では、インクジェット印刷法により半導体基板1にマスク材組成物Mを選択的に塗布したが、スピンコート法、スプレー印刷法、ロールコート印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法などの他の印刷法を採用してもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、マスク材組成物を太陽電池の製造に用いたが、特にこれに限定されず、半導体素子を搭載した様々な半導体装置の製造に用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0067】
[マスク形成にスピンコート法を用いた実施例]
(マスク材組成物の作成)
実施例1:シルセスキオキサン樹脂A1−2a(質量平均分子量7500)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、シルセスキオキサン樹脂A1−2aが最終生成物であるマスク材組成物の全質量に対して約30質量%となるマスク材組成物を作成した。
実施例2:シルセスキオキサン樹脂A1−2b(質量平均分子量7000)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、シルセスキオキサン樹脂A1−2bがマスク材組成物の全質量に対して約30質量%となるマスク材組成物を作成した。
実施例3:構成単位a1−1からなるシルセスキオキサン樹脂(質量平均分子量3500)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、このシルセスキオキサン樹脂がマスク材組成物の全質量に対して約30質量%となるマスク材組成物を作成した。
実施例4:構成単位a1−4からなるシルセスキオキサン樹脂(質量平均分子量4000)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、このシルセスキオキサン樹脂がマスク材組成物の全質量に対して約30質量%となるマスク材組成物を作成した。
比較例1:メチルシルセスキオキサン樹脂(質量平均分子量2000)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、メチルシルセスキオキサン樹脂がマスク材組成物の全質量に対して約30質量%となるマスク材組成物を作成した。
比較例2:下記式(a4)で表される構成単位からなるシロキサン樹脂(質量平均分子量2000)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、このシロキサン樹脂がマスク材組成物の全質量に対して約30質量%となるマスク材組成物を作成した。
【0068】
【化13】

【0069】
各マスク材組成物に、ノニオン系界面活性剤(SF8421EG:ダウケミカル社製)を、最終生成物であるマスク材組成物の全質量に対して約0.1質量%となるように添加した。
【0070】
(マスク形成および不純物拡散層形成)
実施例1〜4、比較例1、2のマスク材組成物を、公知のスピンコート法でN型のシリコンウェハーに塗布した。マスク材組成物の塗布後、各シリコンウェハーを100℃で1分間、さらに200℃で1分間プリベークした。プリベーク後のマスク材組成物の膜厚は約2μmであった。膜厚は、サーフェイスプロファイラー(DEKTAK社製)を用いて測定されたマスク材組成物の厚みの高低差から算出した。続いて、各シリコンウェハーを電気炉内に載置し、O雰囲気下、600℃で30分間加熱してマスク材組成物を焼成した。これにより、各シリコンウェハーの表面にマスクが形成された。
【0071】
次に、ボロン含有不純物拡散剤(PBF 3P−31A:東京応化工業株式会社製)を、公知のスピンコート法でマスク上に塗布した。拡散剤の塗布後、各シリコンウェハーを100℃で1分間、さらに200℃で1分間プリベークした。続いて、N雰囲気下、950℃で30分間加熱して不純物拡散成分を熱拡散させた。熱拡散後、各シリコンウェハーを、5質量%濃度のフッ酸に23℃で10分間浸漬させて、拡散剤およびマスクを剥離した。
【0072】
また、参考例として、マスク材組成物をシリコンウェハー上に塗布せず、不純物拡散成分を各実施例および各比較例と同条件で熱拡散させたものを用意した。
【0073】
(クラック耐性の評価)
光学顕微鏡を用いて、焼成後のマスク材組成物におけるクラック発生の有無を目視で評価した。評価は、クラック発生が見られなかった場合を「無」、クラック発生が見られた場合を「有」とした。各実施例、各比較例、および参考例の結果を表1に示す。
【0074】
(マスク性の評価)
マスク性の評価として、シリコンウェハーにおける表面にマスクが形成された領域に対してP/N判定機を用いてP/N判定を実施した。また、マスク性の評価の参考として、半導体基板のシート抵抗値(Ω/sq.)を、シート抵抗測定器(VR−70(国際電気株式会社製))を用いて四探針法により測定した。各実施例、各比較例、および参考例の結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すように、全ての実施例において、クラック発生がなく、導電型の反転もなかった。これに対し、全ての比較例において、クラック発生があり、導電型の反転があった。また、全ての実施例において、シート抵抗値の上昇が見られず、好適なシート抵抗値が得られた。このことから、各実施例のマスク材組成物が、高いクラック耐性とマスク性とを備えていることが分かった。
【0077】
[マスク形成にインクジェット印刷法を用いた実施例]
(マスク材組成物の作成)
表2の樹脂および溶剤の欄に示す成分および含有比にしたがって樹脂を溶剤に溶解し、実施例5〜11、比較例3,4に係るマスク材組成物を作成した。当該欄において括弧内に示す数値が含有比である。各数値の単位は質量%であり、各成分の割合はマスク材組成物の全質量に対する割合である。
【0078】
【表2】

【0079】
表2中の略語は以下の化合物を示す。
樹脂A:シルセスキオキサン樹脂A1−2a(質量平均分子量7500)
樹脂B:シルセスキオキサン樹脂A1−2b(質量平均分子量7000)
樹脂C:下記式(A1−2c)で表されるシルセスキオキサン樹脂(質量平均分子量5000)
【化14】

樹脂D:下記式(A1−2d)で表されるシルセスキオキサン樹脂(質量平均分子量4500)
【化15】

樹脂E:構成単位a1−1からなるシルセスキオキサン樹脂(質量平均分子量3500)
樹脂F:上記式(a4)で表される構成単位からなるシロキサン樹脂(質量平均分子量2000)
樹脂G:メチルシルセスキオキサン樹脂(質量平均分子量2000)
樹脂H:下記式(A1−1a)で表されるシルセスキオキサン樹脂(質量平均分子量3000)
【化16】

PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DPG:ジプロピレングリコール
DPGM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
【0080】
(マスク形成および不純物拡散層形成)
実施例5〜11、比較例3,4のマスク材組成物を、インクジェット吐出機(MID−500C:武蔵エンジニアリング社製)を用いて6インチN型シリコンウェハー上に吐出して塗布した。射出周波数を8452Hzとした。解像度は360dpi×2160dpi、射出分解能は11.8μmであった。また、ステージ速度を100mm/s、ステージ温度を70℃とした。マスク材組成物の吐出後、各シリコンウェハーをホットプレート上に載置し、200℃で3分間乾燥させた。その後、上述したスピンコート法を用いた実施例の場合と同様にして、マスク材組成物をプリベーク、焼成し、各シリコンウェハーの表面にマスクを形成した。そして、ボロン含有不純物拡散剤をマスク上に塗布し、不純物拡散成分を熱拡散させた。熱拡散後、各シリコンウェハーから拡散剤およびマスクを剥離した。なお、マスク材組成物の印刷安定性としてインクジェットノズルの目詰まりのし難さを評価するためにマスクを5時間連続して形成した。
【0081】
(クラック耐性の評価)
上述したスピンコート法を用いた実施例の場合と同様にして、クラック発生の有無を目視で評価した。各実施例、および各比較例の結果を表2に示す。
【0082】
(シート抵抗値の測定)
上述したスピンコート法を用いた実施例の場合と同様にして、半導体基板のシート抵抗値(Ω/sq.)を測定した。各実施例、および各比較例の結果を表2に示す。
【0083】
(マスク性の評価)
マスク性の評価として、上述したスピンコート法を用いた実施例の場合と同様にして、P/N判定を実施した。また、マスク性の評価の参考として、上述したスピンコート法を用いた実施例の場合と同様にして、半導体基板のシート抵抗値(Ω/sq.)を測定した。各評価について、各実施例、および各比較例の結果を表2に示す。
【0084】
(印刷安定性の評価)
光学顕微鏡を用いて、5時間連続して形成したマスクにおける部分的な欠落、いわゆる「かすれ」の有無を評価した。評価は、かすれが見られなかった場合を「◎」、かすれが見られるが、その程度が不純物拡散層の形成に影響しない程度である場合を「○」、不純物拡散層の形成に影響する程度のかすれが見られた場合を「×」とした。なお、前記「不純物拡散層の形成に影響する程度」は、当業者が実験等によって適宜設定することができる。各実施例、および各比較例の結果を表2に示す。
【0085】
表2に示すように、全ての実施例において、クラック発生がなく、導電型の反転もなかった。これに対し、全ての比較例において、クラック発生があり、導電型の反転があった。また、全ての実施例において、シート抵抗値の上昇が見られず、好適なシート抵抗値が得られた。このことから、各実施例のマスク材組成物が、高いクラック耐性とマスク性とを備えていることが分かった。
【0086】
また、全ての実施例において、比較例よりも優れた印刷安定性を示した。このことから、各実施例のマスク材組成物が高い経時安定性を備えていることが分かった。したがって、各実施例のマスク材組成物は、インクジェット印刷法に好適に採用可能である。また、上述した有機溶剤(B2)であるジプロピレングリコール、あるいはジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有する実施例5,7〜11では、有機溶剤(B2)を含有しない実施例6に比べてより優れた印刷安定性を示した。このことから、有機溶剤(B2)を含有したマスク材組成物は、インクジェット印刷法により好適に採用可能であることが分かった。
【符号の説明】
【0087】
M マスク材組成物、 1 半導体基板、 2,3 拡散剤組成物、 4 P型不純物拡散層、 5 N型不純物拡散層、 6 パッシベーション層、 6a コンタクトホール、 7 シリコン窒化膜、 8,9 電極、 10 太陽電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板への不純物拡散成分の拡散保護に用いられるマスク材組成物であって、
下記式(a1)で表される構成単位を含むシロキサン樹脂(A1)を含有することを特徴とするマスク材組成物。
【化1】

式(a1)中、Rは、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、Rは、炭素数6〜20のアリール基である。
【請求項2】
前記シロキサン樹脂(A1)は、前記構成単位を含むシルセスキオキサン樹脂である請求項1に記載のマスク材組成物。
【請求項3】
前記シロキサン樹脂(A1)は、前記構成単位のみからなるシルセスキオキサン樹脂である請求項1または2に記載のマスク材組成物。
【請求項4】
前記シルセスキオキサン樹脂は、下記式(A1−2)で表される請求項3に記載のマスク材組成物。
【化2】

式(A1−2)中、R、Rは、単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、R、Rは、アリール基であり、RとRからなる有機基と、RとRとからなる有機基とは互いに同じでも異なってもよく、異なる場合、m:nは1:99〜99:1の範囲である。
【請求項5】
前記シロキサン樹脂(A1)と溶剤(B)とのみからなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマスク材組成物。
【請求項6】
前記溶剤(B)は、沸点が100℃以上の有機溶剤(B1)を含有する請求項5に記載のマスク材組成物。
【請求項7】
前記溶剤(B)は、沸点が180℃以上の有機溶剤(B2)を含有する請求項5または6に記載のマスク材組成物。
【請求項8】
半導体基板に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマスク材組成物を選択的に塗布する工程と、
前記半導体基板に塗布された前記マスク材組成物をマスクとして、不純物拡散成分を前記半導体基板に選択的に塗布し、拡散させる拡散工程と、
を含むことを特徴とする不純物拡散層の形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の不純物拡散層の形成方法により不純物拡散層が形成された半導体基板を備えたことを特徴とする太陽電池。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−116953(P2011−116953A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237107(P2010−237107)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】