説明

マスタオシレータ、レーザシステム、およびレーザ生成方法

【課題】安定したレーザ光を得る。
【解決手段】マスタオシレータは、励起光を出力するポンピングレーザと、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、前記ポンピングレーザを所定の繰返し周波数で継続的に発振させるとともに、前記光シャッタを開閉制御するコントローラと、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスタオシレータ、レーザシステム、およびレーザ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リソグラフィプロセスに使用される典型的な紫外線光源エキシマレーザは、波長がおよそ248nmのKrFエキシマレーザと波長がおよそ193nmのArFエキシマレーザである。
【0003】
そうしたArFエキシマレーザの殆どは発振段レーザと増幅段を含む2ステージレーザシステムとして市場に供給されている。2ステージのArFエキシマレーザシステムの発振段レーザと増幅段の共通する主要な構成を説明する。発振段レーザは第1チャンバを有し、増幅段は第2チャンバを有する。それらの第1、第2チャンバ内にレーザガス(F、Ar、Ne、Xeの混合ガス)が封入されている。発振段レーザと増幅段はまた、前記レーザガスを励起するために電気エネルギーを供給する電源を有する。発振段レーザと増幅段とはそれぞれ電源を有することができるが、1台の電源を共有することもできる。前記第1チャンバ内には、それぞれが前記電源に接続された第1アノードと第1カソードとを含む第1放電電極が設置され、前記第2チャンバ内にも同様にそれぞれが前記電源に接続された第2アノードと第2カソードとを含む第2放電電極が設置されている。
【0004】
発振段レーザ特有の構成は、例えば狭帯域モジュールである。狭帯域モジュールは典型的にはひとつのグレーティングと少なくともひとつのプリズムビームエキスパンダとを含む。半透過ミラーと前記グレーティングとが光共振器を構成し、これらの半透過ミラーとグレーティングとの間に発振段レーザの前記第1チャンバが設置されている。
【0005】
前記第1放電電極の第1アノードと第1カソードとの間に放電が発生されると前記レーザガスが励起されて、その励起エネルギーを放出する際に光が発生する。その光が前記狭帯域モジュールによって波長選択されたレーザ光となって発振段レーザから出力される。
【0006】
増幅段が共振器構造を含むレーザである場合の2ステージレーザシステムをMOPOと言い、増幅段が共振器構造を含まずレーザではない場合の2ステージレーザシステムをMOPAと言う。前記発振段レーザからのレーザ光が前記増幅段の第2チャンバ内に存在するときに、前記第2放電電極の第2アノードと第2カソードとの間に放電を発生させる制御が行なわれる。これにより前記第2チャンバ内のレーザガスが励起されて、前記レーザ光が増幅されて増幅段から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009−67468号明細書
【概要】
【0008】
本開示の一態様によるマスタオシレータは、励起光を出力するポンピングレーザと、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、前記ポンピングレーザを所定の繰返し周波数で継続的に発振させるとともに、前記光シャッタを開閉制御するコントローラと、を備えてもよい。
【0009】
本開示の他の態様によるレーザシステムは、パルスレーザ光を出力するマスタオシレータと、該マスタオシレータから出力された前記パルスレーザ光を増幅する増幅装置とを備えるレーザシステムであって、前記マスタオシレータが、励起光を出力するポンピングレーザと、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する第2増幅器と、前記シードレーザと前記第2増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、前記ポンピングレーザを所定の繰返し周波数で継続的に発振させるとともに、前記光シャッタを開閉制御するコントローラと、を備えてもよい。
【0010】
本開示の他の態様によるレーザ生成方法は、励起光を出力するポンピングレーザと、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、を備える装置のレーザ生成方法であって、前記ポンピングレーザを所定の繰返し周波数で継続的に発振させ、前記ポンピングレーザの継続発振中に前記光シャッタを開閉制御することで、前記パルスレーザ光のバースト出力を生成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、本開示の実施の形態1による波長変換素子を有するマスタオシレータおよびそれを用いた2ステージレーザ装置の一例の概略構成を示す。
【図2】図2は、図1に示すレーザシステムの運転動作を示すタイミングチャートである。
【図3】図3は、本開示の実施の形態2によるレーザシステムの概略構成を示す。
【図4】図4は、図3に示すマスタオシレータの概略構成を示す。
【図5】図5は、図4に示す光シャッタの一例を示す。
【図6】図6は、実施の形態2における1つのパルスレーザ光と光シャッタの動作との関係を示す。
【図7】図7は、実施の形態2においてポンピングレーザから出力されるポンプ光を示す。
【図8】図8は、実施の形態2における光シャッタの開閉動作を示す。
【図9】図9は、実施の形態2においてマスタオシレータから出力されるパルスレーザ光を示す。
【図10】図10は、実施の形態2によるレーザシステムの概略動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、実施の形態2における図10のステップS101に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は、実施の形態2において図10のステップS103によってコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態2において図10のステップS104によってレーザコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。
【図14】図14は、本開示の実施の形態3によるレーザシステムの概略構成を示す。
【図15】図15は、実施の形態3においてポンピングレーザから出力されるポンプ光を示す。
【図16】図16は、実施の形態3における光シャッタの開閉動作を示す。
【図17】図17は、実施の形態3においてマスタオシレータから出力されるパルスレーザ光を示す。
【図18】図18は、実施の形態3によるレーザシステムの概略動作を示すフローチャートである。
【図19】図19は、実施の形態3における図18のステップS201に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。
【図20】図20は、実施の形態3において図18のステップS203によってコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。
【図21】図21は、実施の形態3において図18のステップS204によってレーザコントローラが開始する動作を示すフローチャートである。
【図22】図22は、実施の形態4によるマスタオシレータの概略構成を示す。
【図23】図23は、実施の形態1〜3にかかるTi:サファイアレーザの一例を示す。
【図24】図24は、実施の形態1〜3にかかる増幅器の一例を示す。
【図25】図25は、実施の形態1〜3にかかるファブリーペロー型の増幅器の概略構成を示す。
【図26】図26は、実施の形態3による光軸制御機構における光軸センサの一例(構成例1)を示す。
【図27】図27は、実施の形態3による光軸制御機構における光軸センサの他の一例(構成例2)を示す。
【図28】図28に、実施の形態3による光軸調整部の一例を示す。
【図29】図29に、実施の形態3による2軸傾斜ステージ付きミラーの一例を示す。
【実施の形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0013】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.波長変換装置を有するマスタオシレータと増幅装置とを含むレーザシステム(実施の形態1)
3.1 構成
3.2 動作
3.3 バースト発振
4.光シャッタを含むマスタオシレータと増幅装置とを組み合わせたレーザシステム(実施の形態2)
4.1 構成
4.1.1 光シャッタを含むマスタオシレータ
4.1.2 光シャッタ(ポッケルスセルと偏光子との組み合わせ)
4.2 動作
4.2.1 マスタオシレータのタイミングチャート
4.2.2 レーザシステムのフローチャート
4.3 作用
5.光シャッタを含むマスタオシレータと増幅装置とを組み合わせたレーザシステム(実施の形態3)
5.1 構成
5.2 動作
5.2.1 マスタオシレータのタイミングチャート
5.2.2 レーザシステムのフローチャート
5.3 作用
6.ポンピングレーザの光軸制御装置を備えたマスタオシレータ(実施の形態4)
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用
7.補足説明
7.1 Ti:サファイアレーザ(シードレーザ)
7.2 増幅器(PA)
7.3 増幅器の代替例(光共振器を含む増幅器(PO))
7.4 光軸制御機構
7.4.1 光軸センサ(構成例1)
7.4.2 光軸センサ(構成例2)
7.4.3 光軸調整部(2軸傾斜ステージ付きミラー)
【0014】
1.概要
以下で例示する実施の形態では、マスタオシレータ内に配置された光シャッタを開閉することで、所定繰返し周波数で継続的に出力されたパルスレーザ光のバーストを生成してもよい。
【0015】
2.用語の説明
KBBF結晶とは、化学式KBeBOで表される非線形光学結晶であり、波長変換素子である。バースト発振とは、所定の期間に、所定の繰返し周波数で、パルスレーザ光を出力することである。光路とは、レーザ光が伝搬する経路のことである。
【0016】
3.波長変換素子を有するマスタオシレータと増幅装置とを含むレーザシステム(実施の形態1)
3.1 構成
図1に本開示の実施の形態1による2ステージレーザ装置の一例の概略構成を示す。
2ステージレーザ装置(以下、レーザシステムという)1は、大別すると、マスタオシレータ2と、増幅装置3とを含む。マスタオシレータ2は、たとえば波長変換素子を有してもよい。増幅装置3は、たとえば放電励起式ArFエキシマ増幅器であってよい。前記マスタオシレータ2と前記増幅装置3との間には、低コヒーレンス化光学システム4が設置されてもよい。低コヒーレンス化光学システム4としては、光学パルスストレッチャーやランダム位相板等のシステムを使用してよい。
【0017】
次に、マスタオシレータ2について説明する。マスタオシレータ2は、ポンピングレーザ5と、Ti:サファイアレーザ6と、増幅器7と、ビームスプリッタ81と、高反射ミラー82と、LBO結晶9と、KBBF結晶10と、高反射ミラー11とを含んでもよい。
【0018】
ポンピングレーザ5は、たとえば半導体レーザ励起Nd:YAGレーザの第2高調波光を発振するレーザであってもよい。Ti:サファイアレーザ6は、Ti:サファイア結晶と光共振器を含んでもよい。増幅器7は、Ti:サファイア結晶を含む増幅器であってよい。
【0019】
次いで、増幅装置3について説明する。増幅装置3は、チャンバ20と、一対の放電電極(アノード21およびカソード22)と、出力結合ミラー14と、高反射ミラー15、16、および17とを含んでもよい。チャンバ20内には、レーザガスが封入されていてもよい。このレーザガスは、Ar、Ne、F、およびXeの混合ガスでもよい。アノード21およびカソード22は、チャンバ20内に設置されてもよい。アノード21およびカソード22は、図1の紙面に対して垂直方向に配列していてもよい。アノード21およびカソード22の間は、放電空間23であってよい。チャンバ20には、パルスレーザ光32を透過するウィンドウ18および19が取り付けてあってもよい。また、図示を省略した電源がチャンバ20の外に設置されていてもよい。
【0020】
前記出力結合ミラー14と高反射ミラー15、16、および17とは、リング光共振器を構成していてもよい。出力結合ミラー14は、一部の光を透過し、一部の光を反射する素子であってもよい。
【0021】
3.2 動作
マスタオシレータ2は、波長がおよそ193nmのパルスレーザ光31を出力してもよい。低コヒーレンス化光学システム4は、前記パルスレーザ光31のコヒーレンシーを低下させてもよい。増幅装置3は、コヒーレンシーの低下したパルスレーザ光32を増幅してパルスレーザ光33として出力してもよい。パルスレーザ光33は、例えば図示していない半導体露光機へ送られて、露光処理に使用されてもよい。
【0022】
ポンピングレーザ5からは、波長がおよそ532nmの励起光(ポンピング光ともいう)51が出力されてもよい。励起光51の一部は、ビームスプリッタ81を透過してもよい。励起光51の他の一部はビームスプリッタ81で反射してもよい。ビームスプリッタ81を透過した励起光51は、Ti:サファイアレーザ6を励起してもよい。励起されたレーザ6からは、波長がおよそ773.6nmのパルスレーザ光が出力されてもよい。ここで、Ti:サファイアレーザ6は、図示しない波長選択素子を備える光共振器を含んでもよい。このTi:サファイアレーザ6からは、波長選択素子によって狭帯域化されたスペクトル幅のパルスレーザ光が出力されてもよい。
【0023】
ポンピングレーザ5から出力された励起光51のうち、ビームスプリッタ81で反射した励起光51は、さらに高反射ミラー82で反射されてもよい。この反射した励起光51は、Ti:サファイアの増幅器7に入射し、これが備えるTi:サファイア結晶を励起してもよい。増幅器7はその励起エネルギーによってTi:サファイアレーザ6から出力されたパルスレーザ光を増幅してもよい。この結果、増幅器7からは、波長がおよそ773.6nmのパルスレーザ光が出力されてもよい。
【0024】
Ti:サファイアの増幅器7から出力されたパルスレーザ光は、波長変換素子であるLBO結晶9を透過することで、波長がおよそ386.8nm(前記773.6nmの1/2)のパルスレーザ光へ変換されてもよい。波長変換後のパルスレーザ光は、波長変換素子であるKBBF結晶10を透過することで、波長がおよそ193.4nm(前記386.8nmの1/2)のパルスレーザ光31へさらに変換されてもよい。
【0025】
KBBF結晶10を透過後のパルスレーザ光31は、反射ミラー11によって進行方向を変えられて、低コヒーレンス化光学システム4に入射してもよい。パルスレーザ光31のコヒーレンスは、低コヒーレンス化光学システム4を透過することによって低下してもよい。そのコヒーレンスが低下したパルスレーザ光32は増幅装置3に入射してもよい。
【0026】
チャンバ20内のアノード2とカソード22に電気的に接続された電源は、アノード21およびカソード22間に電位差を加えてもよい。これにより、増幅装置3の放電空間23にパルスレーザ光32が通過するタイミングで、アノード21およびカソード22間で放電が発生してもよい。
【0027】
低コヒーレンス化光学システム4を出射したパルスレーザ光32の一部は、出力結合ミラー14を透過して、高反射ミラー15を反射してもよい。このパルスレーザ光32は、ウィンドウ18を透過して、前記アノード21と前記カソード22との間の放電空間23へ進行してもよい。パルスレーザ光32が前記放電空間23内に存在するときに前記放電空間23に放電を生じさせる制御が行われることによって、そのパルスレーザ光32が増幅されてもよい。増幅されたパルスレーザ光32は、ウィンドウ19を介してチャンバ20から出射してもよい。出射したパルスレーザ光32は、高反射ミラー16および17を高反射して、再びウィンドウ19を介して、チャンバ20内の放電空間23へ進行してもよい。そして、このパルスレーザ光32は、今度はウィンドウ18を介してチャンバ20から出射してもよい。出射したパルスレーザ光32は、出力結合ミラー14に入射してもよい。このパルスレーザ光32の一部は、出力結合ミラー14を透過して、パルスレーザ光33として増幅装置3から出射してもよい。パルスレーザ光32の他の一部は、出力結合ミラー14で反射することで、フィードバック光として、再びリング光共振器中に戻されてもよい。
【0028】
本説明では、増幅装置3がリング光共振器を含む場合を例示したが、この例に限定されるものではない。たとえば、増幅装置3は、増幅器に光共振器が配置されたファブリーペロー型共振器を含んでもよい。
【0029】
3.3 バースト発振
図2は、レーザシステム1の運転動作を示すタイミングチャートである。レーザシステム1を用いた露光では、所定の繰返し周波数のパルスレーザ光33を用いてたとえば半導体ウエハを露光してもよい。ただし、例えば、露光装置におけるウエハの移動、ウエハの交換、マスクの交換等を行う期間では、パルスレーザ光33による露光が休止してもよい。すなわち、図2に示すように、レーザシステム1を用いた露光では、パルスレーザ光33を所定の繰返し周波数で露光装置へ出力するバースト出力期間TBと、パルスレーザ光33の露光装置への出力を停止するバースト休止期間TRとが繰り返してもよい。
【0030】
通常、レーザシステム1が上記のようなバースト出力期間TBとバースト休止期間TRとを繰り返す運転動作をするためには、マスタオシレータ2のパルスレーザ光31を出力する動作も同様に、バースト出力期間TBとバースト休止期間TRとを繰り返す運転動作である必要があると考えられる。
【0031】
しかし、この様な運転動作をマスタオシレータ2にさせると、マスタオシレータ2が熱的に不安定となる可能性がある。マスタオシレータ2が熱的に不安定となると、パルスレーザ光31のビーム径が変動したりパワーが不安定となったりして、安定したパルスレーザ光31の生成が困難になる場合があると考えれらる。マスタオシレータ2が出力するパルスレーザ光31が不安定であると、この不安定なパルスレーザ光31を増幅する増幅装置3からも、不安定な増幅後のパルスレーザ光33が出力される場合があると考えられる。
【0032】
4.光シャッタを含むマスタオシレータと増幅装置とを組み合わせたレーザシステム(実施の形態2)
つぎに、レーザシステムの他の形態を、本開示の実施の形態2として、図面を用いて詳細に説明する。
【0033】
4.1 構成
図3は、実施の形態2によるレーザシステム1Aの概略構成を示す。図3に示すように、レーザシステム1Aは、マスタオシレータ2Aと、高反射ミラー11と、低コヒーレンス化光学システム4と、増幅装置3Aと、レーザコントローラ220Aとを備えてもよい。レーザコントローラ220Aは、レーザシステム1Aの全体動作を制御してもよい。
【0034】
増幅装置3Aは、図1に示す増幅装置3と同様の構成に加え、レーザ電源24と、スイッチ遅延回路350とをさらに含んでもよい。レーザ電源24は、チャンバ20内のアノード21とカソード22とに電気的に接続されていてもよい。遅延回路350は、レーザコントローラ220Aからレーザ電源24内のスイッチ25へ出力されたスイッチ信号S5を、所定遅延時間(スイッチ遅延時間Dpp)分遅延させてもよい。
【0035】
4.1.1 光シャッタを含むマスタオシレータ
ここで、図4に、実施の形態2によるマスタオシレータ2Aの概略構成を示す。図4に示すように、マスタオシレータ2Aは、固体レーザ装置200と、コントローラ210とを含んでもよい。また、マスタオシレータ2Aは、コントローラ210から固体レーザ装置200へ入力する各種信号を、タイミング調整のために遅延させる1つ以上の遅延回路を含んでもよい。
【0036】
固体レーザ装置200は、上述したように、ポンピングレーザ5、Ti:サファイアレーザ6(シードレーザ)、増幅器7、LBO結晶9およびKBBF結晶10を含む波長変換装置8、ビームスプリッタ81、および高反射ミラー82を備えてもよい。固体レーザ装置200は、さらに、光シャッタ41〜44の内の少なくとも1つの光シャッタを備えてもよい。光シャッタ41は、Ti:サファイアレーザ6と増幅器7との間の光路上に配置してもよい。光シャッタ42は、増幅器7と波長変換装置8との間の光路上に配置してもよい。光シャッタ43は、LBO結晶9とKBBF結晶10との間の光路上に配置してもよい。光シャッタ44は、マスタオシレータ2Aの出力端に配置してもよい。光シャッタ41〜44は、それぞれ同様の構成および動作としてよい。光シャッタ41〜44の構成または動作は、それぞれ異なるものとしてもよい。
【0037】
コントローラ210は、内部トリガ発振器211を含んでもよい。内部トリガ発振器211は、たとえば所定繰返し周波数で内部トリガを発振してもよい。また、コントローラ210には、たとえば上位コントローラであるレーザコントローラ20Aなどの外部装置220から略所定繰返し周波数でトリガ信号S1が入力されてもよい。コントローラ210は、内部トリガ発振器211が発振した内部トリガ、または、外部装置220から入力されたトリガ信号S1を、ポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5に入力してもよい。これにより、ポンピングレーザ5が、略所定繰返し周波数で励起光51を継続的に出力し得る。なお、内部トリガの繰返し周波数は、トリガ信号S1の繰返し周波数と略同じであってもよいし、異なっていてもよい。内部トリガの繰返し周波数は、ポンピングレーザ5、Ti:サファイアレーザ6、増幅器7等において大きな熱変動が起こらないような繰返し周波数、例えばトリガ信号S1と同程度の繰返し周波数であるとよい。
【0038】
遅延回路は、発振遅延回路311を含んでもよい。発振遅延回路311は、ポンピングレーザ発振信号S11を、所定遅延時間(発振遅延時間Ddp)分、遅延させてもよい。発振遅延回路311は、発振遅延時間Ddpを外部から設定できるとよい。
【0039】
また、コントローラ210には、外部装置220からバースト要求信号S2が入力されてもよい。このバースト要求信号S2がコントローラ210に入力されている期間をバースト出力期間TBとしてもよい。コントローラ210は、バースト要求信号S2に基づいて、各光シャッタ41〜44を開閉動作させる光シャッタ動作信号S41〜S44を生成してもよい。
【0040】
4.1.2 光シャッタ(ポッケルスセルと偏光子との組み合わせ)
ここで、図5に、実施の形態2による光シャッタの一例を示す。なお、図5に示す光シャッタ40は、光シャッタ41〜44のいずれに対しても適用可能である。
【0041】
図5に示すように、光シャッタ40は、たとえば2つの偏光子141および143とポッケルスセル142と高圧電源144とを含んでもよい。偏光子141は、たとえば入射した光のうち、Y方向の偏光成分を透過させ、X方向の偏光成分を遮断してもよい。一方、偏光子143は、たとえば入射した光のうち、X方向の偏光成分を透過させ、Y方向の偏光成分を遮断してもよい。このように、偏光子141と偏光子143とでは、透過させる光の偏光成分が異なっていてもよい。たとえば、本例のように、偏光子141と偏光子143とでは、透過する光の偏光方向が略90°異なっていてもよい。
【0042】
光シャッタ動作信号S41は、光シャッタ41の高圧電源144に入力されてもよい。高圧電源144は、光シャッタ動作信号S41が入力されるとポッケルスセル142に、電圧S61を印加してもよい。電圧S61は、光シャッタ動作信号S41と実質的に同じパルス幅(時間長)を有してもよい。ポッケルスセル142は、たとえば電圧S61が印加されている期間、入射した光の偏光方向を変更し得る。本例では、入射光の偏光方向を略90°変更する電圧値の電圧S61が、高圧電源144からポッケルスセル142に印加されてもよい。
【0043】
光シャッタ40に入射したパルスレーザ光L0は、まず、偏光子141に入射してもよい。偏光子141は、入射したパルスレーザ光L0のうち、Y方向の直線偏光成分(以下、Y直線偏光パルスレーザ光という)を透過させる。偏光子141を透過したY直線偏光パルスレーザ光は、ポッケルスセル142に入射する。
【0044】
ポッケルスセル142に電圧S61が印加されていない場合、ポッケルスセル142に入射したY直線偏光パルスレーザ光は、Y方向の直線偏光のまま、ポッケルスセル142から出力され、偏光子143に入射する。このため、ポッケルスセル142を透過したY直線偏光パルスレーザ光は、偏光子143によって反射および吸収される。この結果、パルスレーザ光L0が、光シャッタ41によって遮断される。
【0045】
一方、ポッケルスセル142に電圧S61が印加されている場合、ポッケルスセル142に入射したY直線偏光パルスレーザ光の偏光方向は、略90°変更され得る。この結果、ポッケルスセル142からは、X方向の直線偏光のパルスレーザ光(以下、X直線偏光パルスレーザ光という)が出力され得る。このX直線偏光パルスレーザ光は、偏光子143を透過する。この結果、パルスレーザ光L1が、光シャッタ41から出力される。
【0046】
また、図6に示すように、たとえばパルスレーザ光L0の時間長(パルス時間幅)を20nsとすると、光シャッタ40のポッケルスセル142には、パルスレーザ光L0の多少の時間ジッタを吸収できる程度の時間幅(たとえば40ns)を持つ電圧S61が印加されるのが好ましい。ただし、電圧S61の時間幅を長くしすぎると、戻り光を遮断できない可能性がある。このため、電圧S61の時間幅は、適度に設定されることが好ましい。なお、一般的なポッケルスセルは、数nsの応答性を有しているため、高速スイッチングが要求されるレーザシステムの光シャッタに適していると考えられる。
【0047】
なお、本例は、偏光子141を透過したパルスレーザ光L0と偏光子143を透過したパルスレーザ光L1との偏光方向を略90°変えた構成である。このため、ポッケルスセル142に電圧S61を印加した期間、光シャッタ40が開状態となってもよい。ただし、この例に限定されるものではない。たとえば偏光子141を透過したパルスレーザ光L0と偏光子143を透過したパルスレーザ光L1との偏光方向を同じ方向としてもよい。この場合、ポッケルスセル142に電圧S61を印加しない期間、光シャッタ40が開状態となってもよい。なお、光シャッタを開状態にするとは、光シャッタがパルスレーザ光を通過可能な状態にすることを意味し、光シャッタを閉状態にするとは、光シャッタがパルスレーザ光を遮断する状態にすることを意味する。
【0048】
4.2 動作
つづいて、実施の形態2によるレーザシステム1Aの動作を、図面を用いて詳細に説明する。
【0049】
4.2.1 マスタオシレータのタイミングチャート
図7〜図9は、実施の形態2によるマスタオシレータ2Aの動作の概略を示すタイミングチャートの一例である。図7は、ポンピングレーザ5から出力される励起光51を示す。図8は、光シャッタ41〜44の開閉動作を示す。図9は、マスタオシレータ2Aから出力されるパルスレーザ光31を示す。
【0050】
コントローラ210は、ポンピングレーザ発振信号S11内部トリガを所定繰返し周波数でポンピングレーザ5に入力してもよい。すると、図7に示すように、ポンピングレーザ5からは、略所定繰返し周波数の励起光51が継続的に出力されてもよい。これにより、Ti:サファイアレーザ6からは、図7に示す励起光51と同様に、略所定繰返し周波数のパルスレーザ光L0が継続的に出力されてもよい。
【0051】
また、図8に示すように、コントローラ210は、バースト出力期間TB中、すなわちバースト要求信号S2が立ち上がってから立ち下がるまでの間、光シャッタ41〜44を開状態にする光シャッタ動作信号S41〜S44を各光シャッタ41〜44に入力してもよい。これにより、各光シャッタ41〜44が開状態としてもよい。また、コントローラ210は、バースト要求信号S2が立ち下がってから次のバースト要求信号S2が立ち上がるまでのバースト休止期間TR中、光シャッタ41〜44を閉状態にする光シャッタ動作信号S41〜S44を各光シャッタ41〜44に入力してもよい。これにより、各光シャッタ41〜44が閉状態としてもよい。
【0052】
このような、光シャッタ41〜44の開閉動作により、図9に示すように、マスタオシレータ2Aからは、バースト出力期間TB中に所定繰返し周波数のパルスレーザ光31が出力してもよい。一方、バースト休止期間TR中、マスタオシレータ2Aからは、パルスレーザ光31が出力されなくともよい。
【0053】
4.2.2 レーザシステムのフローチャート
つぎに、図3に示すレーザシステム1Aの動作を、図面を用いて詳細に説明する。図10は、レーザシステム1Aの概略動作を示すフローチャートである。図11は、図10のステップS101に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。図12は、図10のステップS104によってコントローラ210が開始する動作を示すフローチャートである。図13は、図10のステップS105によってレーザコントローラ220Aが開始する動作を示すフローチャートである。なお、図10、図11および図14では、レーザコントローラ220Aの動作を示す。図12では、コントローラ210の動作を示す。
【0054】
図10に示すように、レーザコントローラ220Aは、起動後、各種パラメータを初期設定するパラメータ初期設定ルーチンを実行してもよい(ステップS101)。なお、設定する初期パラメータは、予め登録されていてもよいし、露光コントローラ601等の外部から入力または要求されてもよい。
【0055】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、露光コントローラ601等からパルスレーザ光33のバーストを要求するバースト要求信号S2を受信するまで待機してもよい(ステップS102;NO)。バースト要求信号S2を受信すると(ステップS102;YES)、レーザコントローラ220Aは、光シャッタ41〜44を開状態とする光スイッチ動作信号S41〜S44の各光シャッタ41〜44への送信を開始してもよい(ステップS103)。これにより、各光シャッタ41〜44が開状態としてもよい。
【0056】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、マスタオシレータ2Aにパルスレーザ光31のバーストを出力させる制御を実行してもよい(ステップS104)。これとともに、レーザコントローラ220Aは、増幅装置3Aに放電させる制御を実行してもよい(ステップS105)。つづいて、レーザコントローラ220Aは、トリガ信号S1を、所定繰返し周波数となるように、コントローラ210へ出力してもよい(ステップS106)。
【0057】
その後、レーザコントローラ220Aは、パルスレーザ光33の出力を停止するか否かを判定してもよい(ステップS107)。出力を停止する場合(ステップS107;YES)、レーザコントローラ220Aは、ステップS103で開始した光シャッタ動作信号S41〜S44の出力を終了してもよい(ステップS108)。つぎに、レーザコントローラ220Aは、ステップS104で開始したマスタオシレータ2Aの制御を終了してもよい(ステップS109)。また、レーザコントローラ220Aは、ステップS105で開始した増幅装置3Aの制御を終了し(ステップS110)、その後、本動作を終了してもよい。一方、出力を停止しない場合(ステップS107;NO)、レーザコントローラ220Aは、ステップS104へリターンし、以降の動作を実行してもよい。
【0058】
つぎに、図10のステップS101に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を説明する。図11に示すように、パラメータ初期設定ルーチンでは、レーザコントローラ220Aは、発振遅延回路311に設定する発振遅延時間Ddpを取得してもよい(ステップS121)。取得される発振遅延時間Ddpは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得した発振遅延時間Ddpを、コントローラ210を介して発振遅延回路311に設定してもよい(ステップS122)。これにより、発振遅延回路311を通過するポンピングレーザ発振信号S11のタイミングが、発振遅延時間Ddp分遅延されてもよい。
【0059】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ遅延回路350に設定するスイッチ遅延時間Dppを取得してもよい(ステップS123)。取得されるスイッチ遅延時間Dppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得したスイッチ遅延時間Dppをスイッチ遅延回路350に設定してもよい(ステップS124)。これにより、スイッチ遅延回路350を通過するスイッチ信号S5のタイミングが、スイッチ遅延時間Dpp分遅延されてもよい。
【0060】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ24をオンとする時間、すなわちアノード21およびカソード22間に放電用電圧を印加する時間(スイッチオン時間ΔTpp)を取得してもよい(ステップS125)。取得されるスイッチオン時間ΔTppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、図10に示す動作へリターンしてもよい。
【0061】
また、図10のステップS104によってコントローラ210が開始する動作を説明する。図12に示すように、レーザコントローラ220Aの制御の下、コントローラ210は、たとえばレーザコントローラ220Aからトリガ信号S1を受信するまで待機してもよい(ステップS131;NO)。なお、コントローラ210は、レーザコントローラ220Aからトリガ信号S1が略所定繰返し周波数で入力されない期間、内部トリガ発振器211が所定繰返し周波数で発振した内部トリガをポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい。
【0062】
トリガ信号S1を受信すると(ステップS131;YES)、コントローラ210は、トリガ信号S1をポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい(ステップS132)。ポンピングレーザ発振信号S11は、発振遅延回路311を経由してポンピングレーザ5に入力してもよい。
【0063】
その後、コントローラ210は、動作の終了がレーザコントローラ220A等から入力されたか否かを判定してもよい(ステップS133)。終了が入力されていた場合(ステップS133;YES)、コントローラ210は、本動作を終了してもよい。一方、終了が入力されていなかった場合(ステップS133;NO)、コントローラ210は、ステップS131へリターンしてもよい。
【0064】
また、図10のステップS105によってレーザコントローラ220Aが開始する動作を説明する。図13に示すように、レーザコントローラ220Aは、略所定繰返し周波数でトリガ信号S1をコントローラ210へ出力するまで待機してもよい(ステップS141;NO)。トリガ信号S1を出力すると(ステップS141;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5のスイッチ25への送信を開始してもよい(ステップS142)。スイッチ信号S5は、スイッチ遅延回路350を経由して、スイッチ25に入力してもよい。スイッチ遅延回路350には、低コヒーレンス化光学システム4を経由したパルスレーザ光32が放電空間23を通過するタイミングに合わせて、放電空間23で放電が発生するように、スイッチ遅延時間Dppが設定されていてもよい。
【0065】
その後、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。レーザコントローラ220Aは、この計測時間が予め設定しておいたスイッチオン時間ΔTpp以上となるまで待機してもよい(ステップS143;NO)。
【0066】
スイッチオン時間ΔTppが経過すると(ステップS143;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5の送信を終了してもよい(ステップS144)。これにより、放電空間23で放電が発生する期間が調整されてもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、動作を終了するか否かを判定してもよい(ステップS145)。終了する場合(ステップS145;YES)、レーザコントローラ220Aは、本動作を終了してもよい。一方、終了しない場合(ステップS145;NO)、レーザコントローラ220Aは、ステップS141へリターンしてもよい。
【0067】
4.3 作用
以上のように動作することで、マスタオシレータ2Aをバースト出力期間TBとバースト休止期間TRとを繰り返す運転動作させる際に、ポンピングレーザ5を継続的に所定の繰返し周波数で発振させることができる。これによりポンピングレーザ5を熱的に安定し得る。また、Ti:サファイアレーザ6にポンピングレーザ5からの励起光51を継続的に入力することができる。これにより、Ti:サファイアレーザ6を熱的に安定させることができる。さらに、励起光51を増幅器7に継続的に入力することができる。これにより、増幅器7を熱的に安定し得る。この結果、マスタオシレータ2Aから出力するパルスレーザ光31が安定し得る。すなわち、安定したパルスレーザ光31からなるバースト発振を繰り返すことができる。また、マスタオシレータ2Aから出力されたパルスレーザ光が増幅装置3A内の放電空間23を通過するタイミングに合わせて、放電空間23に放電を発生させることが可能である。
【0068】
5.光シャッタを含むマスタオシレータと増幅装置とを組み合わせたレーザシステム(実施の形態3)
また、レーザシステムのさらなる他の形態を、本開示の実施の形態3として、図面を用いて詳細に説明する。
【0069】
5.1 構成
図14は、実施の形態3によるレーザシステム1Bの概略構成を示す。図14に示すように、レーザシステム1Bは、図3に示すレーザシステム1Aと同様の構成を備えてもよい。ただし、レーザシステム1Bでは、レーザシステム1Aのマスタオシレータ2Aがマスタオシレータ2Bに置き換えられている。
【0070】
マスタオシレータ2Bは、マスタオシレータ2Aと同様の構成に加え、第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344を備えてもよい。各第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344は、各光シャッタ41〜44に対して設けられてもよい。各第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344は、コントローラ210から各光シャッタ41〜44へ出力された光シャッタ動作信号S41〜S44を、各光シャッタ41〜44に応じた所定遅延時間(シャッタ遅延時間Dpp)分、遅延させてもよい。各第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344は、それぞれが対応する光シャッタ41〜44をパルスレーザ光L1が通過するタイミングに合わせて各光シャッタ41〜44が開状態となるように、各光シャッタ動作信号S41〜S44を遅延させてもよい。
【0071】
5.2 動作
つづいて、実施の形態3によるレーザシステム1Bの動作を、図面を用いて詳細に説明する。
【0072】
5.2.1 マスタオシレータのタイミングチャート
図15〜図17は、実施の形態3によるマスタオシレータ2Bの動作の概略を示すタイミングチャートの一例である。図15は、ポンピングレーザ5から出力される励起光51を示す。図16は、光シャッタ41〜44の開閉動作を示す。図17は、マスタオシレータ2Aから出力されるパルスレーザ光31を示す。
【0073】
図16と図8とを比較すると明らかなように、本動作例では、バースト出力期間TB中、光シャッタ41〜44が1つ1つのパルスレーザ光に対して開閉動作する。このような動作によっても、図15に示すような継続的な所定繰返し周波数の励起光51に基づいて、図17に示すようなパルスレーザ光31のバースト出力を生成することが可能である。
【0074】
5.2.2 レーザシステムのフローチャート
つぎに、図14に示すレーザシステム1Bの動作を、図面を用いて詳細に説明する。図18は、レーザシステム1Bの概略動作を示すフローチャートである。図19は、図18のステップS201に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を示すフローチャートである。図20は、図18のステップS203によってコントローラ210が開始する動作を示すフローチャートである。図21は、図18のステップS204によってレーザコントローラ220Aが開始する動作を示すフローチャートである。なお、図18、図19および図21では、レーザコントローラ220Aの動作を示す。図20では、コントローラ210の動作を示す。
【0075】
図18に示すように、レーザコントローラ220Aは、起動後、各種パラメータを初期設定するパラメータ初期設定ルーチンを実行してもよい(ステップS201)。なお、設定する初期パラメータは、予め登録されていてもよいし、露光コントローラ601等の外部から入力または要求されてもよい。
【0076】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、露光コントローラ601等からパルスレーザ光33のバーストを要求するバースト要求信号S2を受信するまで待機してもよい(ステップS202;NO)。バースト要求信号S2を受信すると(ステップS202;YES)、レーザコントローラ220Aは、マスタオシレータ2Aにパルスレーザ光31のバーストを出力させる制御を実行してもよい(ステップS203)。これとともに、レーザコントローラ220Aは、増幅装置3Aに放電させる制御を実行してもよい(ステップS204)。つづいて、レーザコントローラ220Aは、トリガ信号S1を、所定繰返し周波数となるように、コントローラ210へ出力してもよい(ステップS205)。
【0077】
その後、レーザコントローラ220Aは、パルスレーザ光33の出力を停止するか否かを判定してもよい(ステップS206)。出力を停止する場合(ステップS206;YES)、レーザコントローラ220Aは、ステップS203で開始したマスタオシレータ2Aの制御を終了してもよい(ステップS207)。また、レーザコントローラ220Aは、ステップS204で開始した増幅装置3Aの制御を終了し(ステップS208)、その後、本動作を終了してもよい。一方、出力を停止しない場合(ステップS206;NO)、レーザコントローラ220Aは、ステップS203へリターンし、以降の動作を実行してもよい。
【0078】
つぎに、図18のステップS201に示すパラメータ初期設定ルーチンの概略動作を説明する。図19に示すように、パラメータ初期設定ルーチンでは、レーザコントローラ220Aは、発振遅延回路311に設定する発振遅延時間Ddpを取得してもよい(ステップS221)。取得される発振遅延時間Ddpは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得した発振遅延時間Ddpを、コントローラ210を介して発振遅延回路311に設定してもよい(ステップS222)。これにより、発振遅延回路311を通過するポンピングレーザ発振信号S11のタイミングが、発振遅延時間Ddp分遅延されてもよい。
【0079】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344に設定するシャッタ遅延時間Dopを取得してもよい(ステップS223)。各第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344に対して取得されるシャッタ遅延時間Dopは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得したシャッタ遅延時間Dopを、コントローラ210を介して各第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344に設定してもよい(ステップS224)。これにより、各第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344を通過するシャッタ動作信号S41〜S44のタイミングが、それぞれのシャッタ遅延時間Dop分遅延されてもよい。
【0080】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、各光シャッタ41〜44を開状態とする時間、すなわちパルスレーザ光L1の切り出し時間(光シャッタ開時間ΔTop)を取得してもよい(ステップS225)。取得される光シャッタ開時間ΔTppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。
【0081】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ遅延回路350に設定するスイッチ遅延時間Dppを取得してもよい(ステップS226)。取得されるスイッチ遅延時間Dppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。つづいて、レーザコントローラ220Aは、取得したスイッチ遅延時間Dppをスイッチ遅延回路350に設定してもよい(ステップS227)。これにより、スイッチ遅延回路350を通過するスイッチ信号S5のタイミングが、スイッチ遅延時間Dpp分遅延されてもよい。
【0082】
つぎに、レーザコントローラ220Aは、スイッチ24をオンとする時間、すなわちアノード21およびカソード22間に放電用電圧を印加する時間(スイッチオン時間ΔTpp)を取得してもよい(ステップS228)。取得されるスイッチオン時間ΔTppは、予め不図示のメモリ等に保存しておいた初期値であってもよいし、新たにレーザコントローラ220Aによって算出された値であってもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、図8に示す動作へリターンしてもよい。
【0083】
また、図19のステップS203によってコントローラ210が開始する動作を説明する。図20に示すように、レーザコントローラ220Aの制御の下、コントローラ210は、たとえばレーザコントローラ220Aからトリガ信号S1を受信するまで待機してもよい(ステップS231;NO)。なお、コントローラ210は、レーザコントローラ220Aからトリガ信号S1が略所定繰返し周波数で入力されない期間、内部トリガ発振器211が所定繰返し周波数で発振した内部トリガをポンピングレーザ発振信号S11としてポンピングレーザ5へ送信してもよい。
【0084】
トリガ信号S1を受信すると(ステップS231;YES)、コントローラ210は、ポンピングレーザ発振信号S11をポンピングレーザ5へ送信してもよい(ステップS232)。これとともに、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41〜S44の各光シャッタ41〜44への送信を開始してもよい(ステップS233)。ポンピングレーザ発振信号S11は、発振遅延回路311を経由してポンピングレーザ5に入力してもよい。光シャッタ動作信号S41〜S44は、それぞれ第1〜第4シャッタ遅延回路341〜344を経由して、各光シャッタ41〜44に入力してもよい。発振遅延回路311は、ポンピングレーザ発振信号S11を発振遅延時間Ddp分遅延させるように設定されていてもよい。第1〜第4シャッタ遅延回路341には、パルスレーザ光が通過するタイミングに合わせて光シャッタ41〜44が開閉動作するように、それぞれ異なるシャッタ遅延時間Dopが設定されていてもよい。これにより、ポンピングレーザ5から励起光51が出力されるタイミングと、光シャッタ41〜44が開閉動作するタイミングとが調節されてもよい。
【0085】
その後、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41〜S44を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。コントローラ210は、この計測時間が予め設定しておいた光シャッタ開時間ΔTop以上となるまで待機してもよい(ステップS234;NO)。
【0086】
光シャッタ開時間ΔTopが経過すると(ステップS234;YES)、コントローラ210は、光シャッタ動作信号S41〜S44の送信を終了してもよい(ステップS235)。これにより、光シャッタ41〜44が閉状態となってもよい。なお、上述のように、光シャッタ41の開閉動作を用いて、パルスレーザ光L1の波形を調節することが可能であってもよい。
【0087】
その後、コントローラ210は、動作の終了がレーザコントローラ220A等から入力されたか否かを判定してもよい(ステップS236)。終了が入力されていた場合(ステップS236;YES)、コントローラ210は、本動作を終了してもよい。一方、終了が入力されていなかった場合(ステップS236;NO)、コントローラ210は、ステップS231へリターンしてもよい。
【0088】
また、図18のステップS204によってレーザコントローラ220Aが開始する動作を説明する。図21に示すように、レーザコントローラ220Aは、略所定繰返し周波数でトリガ信号S1をコントローラ210へ出力するまで待機してもよい(ステップS241;NO)。トリガ信号S1を出力すると(ステップS241;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5のスイッチ25への送信を開始してもよい(ステップS242)。スイッチ信号S5は、スイッチ遅延回路350を経由して、スイッチ25に入力してもよい。スイッチ遅延回路350には、低コヒーレンス化光学システム4を経由したパルスレーザ光32が放電空間23を通過するタイミングに合わせて、放電空間23で放電が発生するように、スイッチ遅延時間Dppが設定されていてもよい。
【0089】
その後、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5を送信開始してからの経過時間を、たとえば不図示のタイマなどを用いて計測してもよい。レーザコントローラ220Aは、この計測時間が予め設定しておいたスイッチオン時間ΔTpp以上となるまで待機してもよい(ステップS243;NO)。
【0090】
スイッチオン時間ΔTppが経過すると(ステップS243;YES)、レーザコントローラ220Aは、スイッチ信号S5の送信を終了してもよい(ステップS244)。これにより、放電空間23で放電が発生する期間が調整されてもよい。その後、レーザコントローラ220Aは、動作を終了するか否かを判定してもよい(ステップS245)。終了する場合(ステップS245;YES)、レーザコントローラ220Aは、本動作を終了してもよい。一方、終了しない場合(ステップS245;NO)、レーザコントローラ220Aは、ステップS241へリターンしてもよい。
【0091】
5.3 作用
以上のように動作することで、実施の形態2と同様の作用を得ることができる。さらに、実施の形態3では、パルスレーザ光が各光シャッタ41〜44を通過するタイミングに合わせて光シャッタ41〜44を開閉動作した場合、各光シャッタ41〜44は下流側からの自励発振光や戻り光を抑制することができる。すなわち、光シャッタ41〜44は、自励発振光や戻り光の抑制およびバースト生成の2つの機能を果たすことができる。
【0092】
なお、図8に示す開閉動作と、図16に示す開閉動作とを組み合わせてもよい。たとえば光シャッタ41を図16に示す開閉動作とし、他の光シャッタ42〜44を図8に示す開閉動作としてもよい。
【0093】
6.ポンピングレーザの光軸制御装置を備えたマスタオシレータ(実施の形態4)
つぎに、本開示の実施の形態4によるレーザシステムを、図面を用いて詳細に説明する。
【0094】
6.1 構成
図22は、実施の形態4によるマスタオシレータ2Cの概略構成を示す。図22に示すように、マスタオシレータ2Cは、たとえばポンピングレーザ5から出力された励起光51の光軸を調整する光軸制御機構90を備えてもよい。その他の構成は、たとえば図14に示すマスタオシレータ2Bと同様の構成を備えてもよい。ただし、ビームスプリッタ81および高反射ミラー82のアレンジメントは異なる。
【0095】
光軸制御機構90は、ビームスプリッタ91と、光軸センサ92と、光軸コントローラ93と、2軸傾斜ステージ付き高反射ミラー94および95と、ドライバ96と、を含んでもよい。
【0096】
6.2 動作
図22に示す構成において、ポンピングレーザ5から出力された励起光51は、光軸制御機構90のビームスプリッタ91によって2経路に分岐されてもよい。ビームスプリッタ91を透過した励起光51は、光軸センサ92に入射してもよい。光軸センサ92は、励起光51の光軸を検出し、この検出結果を光軸コントローラ93に入力してもよい。
【0097】
また、ビームスプリッタ91を反射した励起光51は、2つの2軸傾斜ステージ付き高反射ミラー94および95間の光路に進入してもよい。2軸傾斜ステージ付き高反射ミラー94および95は、それぞれミラー面の傾斜角度を2軸方向(θx方向およびθy方向)に変更することができる。したがって、2軸傾斜ステージ付き高反射ミラー94および95のミラー面の傾斜を調節することで、下流の2軸ステージ付き高反射ミラー95を反射した励起光51の光軸を所定の光軸に調節することができる。
【0098】
光軸コントローラ93は、光軸センサ92より励起光51の光軸の検出結果が入力されると、この検出結果に基づいてドライバ96を動作させてもよい。ドライバ96は、光軸コントローラ93の制御の下で、2軸傾斜ステージ付き高反射ミラー94および95の傾斜を制御してもよい。これにより、下流の2軸ステージ付き高反射ミラー95を反射した励起光51の光軸が所定の光軸に調節され得る。
【0099】
光軸制御機構90から出力された励起光51は、ビームスプリッタ81に入射してもよい。ビームスプリッタ81を反射した励起光51は、高反射ミラー82を反射し、Ti:サファイアレーザ6内のTi:サファイア結晶に入射してもよい。ビームスプリッタ81を透過した励起光51は、増幅器7内のTi:サファイア結晶に入射してもよい。
【0100】
6.3 作用
このように、各Ti:サファイア結晶に入射する励起光51の光軸を、光軸制御機構90を用いて高精度に調整することで、Ti:サファイアレーザ6および増幅器7でのエネルギー効率を向上できる。この結果、安定した高エネルギーのパルスレーザ光を効率的に生成し得る。
【0101】
その他の構成、動作および効果は、上述した実施の形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0102】
7.補足説明
つづいて、上述した各実施の形態における各部の補足説明を、以下に記す。
【0103】
7.1 Ti:サファイアレーザ(シードレーザ)
図23は、上述のTi:サファイアレーザ6の一例を示す。図23に示すように、Ti:サファイアレーザ6は、いわゆるリットマン型のレーザであってよい。このTi:サファイアレーザ6は、高反射ミラー61と、出力結合ミラー65と、Ti:サファイア結晶62と、グレーティング63と、高反射ミラー64と、を備える。高反射ミラー61および出力結合ミラー65は、光共振器を形成する。Ti:サファイア結晶62およびグレーティング63は、この光共振器内の光路上に配置される。高反射ミラー64は、グレーティング63で回折されたレーザ光を反射してグレーティング63に戻す。高反射ミラー61および64は、高反射ミラー61および出力結合ミラー65とは別の共振器を形成する。また、出力結合ミラー65は、パルスレーザ光L1aを出力する光出力端としても機能する。
【0104】
高反射ミラー61は、ポンピングレーザ5からの励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶62からのパルスレーザ光を反射する。高反射ミラー61を介して入力された励起51は、Ti:サファイア結晶62に入射する。Ti:サファイア結晶62の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。これにより、この端面でのレーザ光の反射が抑えられる。励起光51が入射したTi:サファイア結晶62は、共振器内を往復する励起光51からエネルギーを得て発振することで、パルスレーザ光L1を出射する。Ti:サファイア結晶62から出射されたパルスレーザ光L1は、グレーティング63によって回折される。ここで、出力結合ミラー65は、グレーティング63に対してたとえば0次回折光の出射方向に配置される。また、高反射ミラー64は、グレーティング63に対して±m次回折光の出射方向に配置される。この構成では、グレーティング63に対する高反射ミラー64の角度を調節することで、Ti:サファイアレーザ6が出力するパルスレーザ光L1の波長を選択することができる。この結果、Ti:サファイアレーザ6が出力するパルスレーザ光L1のスペクトル線幅を、露光時の色収差が無視できる程度のスペクトル線幅に制御することが可能となる。
【0105】
7.2 増幅器(Power Amplifier:PA)
図24は、上述の増幅器7の一例を示す。なお、本例では、光共振器を含まないマルチパス増幅方式のパワー増幅器を例に挙げる。図24に示すように、増幅器7は、複数の高反射ミラー72〜78と、Ti:サファイア結晶71と、を備える。この複数の高反射ミラー72〜78は、Ti:サファイアレーザ6から入力したパルスレーザ光L1がTi:サファイア結晶71を複数回(本例では4回)通過するマルチパスを形成する。Ti:サファイア結晶71には、高反射ミラー72を介して、ポンピングレーザ5からの励起光51も入射する。Ti:サファイア結晶71の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。Ti:サファイア結晶71は、マルチパスを進行するパルスレーザ光L1に基づいて、励起光51からエネルギーを得つつ発振する。これにより、複数回通過する際に、パルスレーザ光L1がマルチパス増幅される。この結果、増幅器7から増幅されたパルスレーザ光L1aが出射する。なお、高反射ミラー72は、励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶71からのレーザ光を反射する。
【0106】
7.3 増幅器の代替例(光共振器を含む増幅器(Power Oscillator):PO)
また、増幅器7は、内部に光共振器を備えたパワー発振器に置き換えることも可能である。図25は、ファブリーペロー型の増幅器7Aの概略構成を示す。図25に示すように、増幅器7Aは、高反射ミラー172と、出力結合ミラー173と、Ti:サファイア結晶174と、高反射ミラー171と、を備える。高反射ミラー172および出力結合ミラー173は、光共振器を形成する。Ti:サファイア結晶174は、この光共振器内の光路上に配置される。高反射ミラー171は、Ti:サファイアレーザ6から入射したパルスレーザ光L1およびポンピングレーザ5から入射した励起光51を光共振器内に導く。
【0107】
高反射ミラー171は、Ti:サファイアレーザ6からのパルスレーザ光L1を光共振器側へ反射するとともに、ポンピングレーザ5からの励起光51を光共振器側へ透過する。また、光共振器を形成する一方の高反射ミラー172は、パルスレーザ光L1および励起光51を透過し、Ti:サファイア結晶174からのレーザ光を反射する。Ti:サファイア結晶174の光入出力端面は、ブリュースタカットされている。これにより、この端面でのレーザ光の反射が抑えられる。Ti:サファイア結晶174は、光共振器内を往復するパルスレーザ光L1に基づいて、励起光51からエネルギーを得つつ発振することで、増幅されたパルスレーザ光L1aを出射する。増幅後のパルスレーザ光L1aは、出力結合ミラー173を介して出力される。
【0108】
7.4 光軸制御機構
つぎに、図22に示す光軸制御機構90について、その一例を説明する。
【0109】
7.4.1 光軸センサ(構成例1)
図26は、光軸制御機構90における光軸センサ92の一例(構成例1)を示す。図26に示すように、光軸センサ92は、ビームスプリッタ191と、高反射ミラー194と、レンズ192および195と、ビームプロファイラ193および196とを含む。ビームプロファイラ193の受光面には、ビーム伝播経路上の位置A1での励起光51のビームプロファイル(レーザビームの断面強度プロファイル)が、レンズ192によって結像される。一方、ビームプロファイラ196の受光面には、分岐したビーム伝播経路上の位置A2での励起光51のビームプロファイルが、レンズ195によって結像される。このように、離れた複数の位置(A1およびA2)におけるビームプロファイルを計測することで、励起光51の方向(光軸)やダイバージェンス(波面の曲率)などを算出することができる。たとえば各ビームプロファイルの中心位置と、位置A1およびA2間のビーム伝播経路上の距離とから、ビーム伝播経路の空間位置およびビーム伝播経路の方向を計算することができる。さらに、位置A1およびA2におけるビームプロファイルの大きさの差から、励起光51のダイバージェンス(波面の曲率)を計算することができる。
【0110】
7.4.2 光軸センサ(構成例2)
また、光軸センサ92は、図27のようにも変形することができる。図27は、光軸センサ92の他の一例(構成例2)を示す。図27に示すように、光軸センサ92Aは、ウェッジビームスプリッタ291と、レンズ292および294と、ビームプロファイラ293および295とを含む。レンズ292およびビームプロファイラ293は、光軸センサ92のレンズ192およびビームプロファイラ193と同様に、ウェッジビームスプリッタ291を透過した励起光51のビームプロファイルを計測する。一方、ビームプロファイラ295は、レンズ294の焦点位置に配置される。ビームプロファイラ295は、ウェッジビームスプリッタ291で反射された励起光51の集光位置におけるビームプロファイルを計測する。各ビームプロファイルの中心位置とレンズ294の焦点距離から、励起光51のビーム伝播経路の空間位置およびビーム伝播経路の方向を求めることができる。さらに、各ビームプロファイルの大きさと各プロファイラの観測位置から、励起光51のダイバージェンスを求めることができる。
【0111】
7.4.3 光軸調整部(2軸傾斜ステージ付きミラー)
また、励起光51の光軸調整は、上述のように、2つの2軸傾斜ステージ付き高反射ミラー94および95を用いて実現することができる。ここでは、2つの2軸傾斜ステージ付き高反射ミラー94および95を光軸調整部という。図28に、光軸調整部の一例を示す。図28に示すように、2軸傾斜ステージ付き高反射ミラー94および95は、それぞれの姿勢角度(θx、θy)を制御することによって、励起光51のビーム伝播経路を所望のビーム伝播経路に調整できる。ここで、θxの方向とθyの方向とは、互いに垂直であってもよい。
【0112】
ここで、図29に、2軸傾斜ステージ付きミラー94および95の一例を示す。図29に示すように、2軸傾斜ステージ付きミラー94および95は、高反射ミラー391と、高反射ミラー391を保持するホルダ392と、たとえば2つの自動マイクロメータ393および394とを備える。ホルダ392を自動マイクロメータ393および394を介して所定のプレートに取り付けることで、ホルダ392に保持された高反射ミラー391のX軸方向のアオリ角度θxとY軸方向のアオリ角度θyとを所定のプレートに対して調節可能である。このようなミラーホルダには市販品を用いることができる。たとえば、NEWPORT社製AG−M100NV6などであってもよい。
【0113】
このように、励起光51のビーム伝播経路は、2つの高反射ミラー391それぞれの姿勢角度(θx、θy)を制御することによって、所望のビーム伝播経路となるように補正できる。ただし、光軸調整部の構成は、図29に示す構成に限定されない。たとえば、レーザ光を透過する2つのウエッジ基板を励起光51のビーム伝播経路上に配置した構成であってもよい。この構成の場合、それぞれのウエッジ基板をたとえばビーム伝播経路の中心軸を中心に回転させることによって、励起光51のビーム伝播経路を所望のビーム伝播経路に調節することができる。このように、光軸調整部は、励起光51のビーム伝播経路を所望のビーム伝播経路に調節できる機構を含んでいればよい。
【0114】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0115】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0116】
上述の実施形態においては、増幅器7が1つである例を示したが、増幅器7を複数使用してもよい。また、Ti:サファイアレーザ6と増幅器7は共通のポンピングレーザ5によってポンピングしているが、別々のポンピングレーザ5を使用してもよい。また、ポンピングレーザ5としてYLFレーザ、YBO4レーザを使用してもよい。また、Ti:サファイアレーザ6の代わりにエルビウムドープト光ファイバレーザを使用してもよい。その際には、波長変換素子を使用し、エルビウムドープト光ファイバレーザから出射する光をその2倍の周波数の光に変換して増幅器7に入射させてもよい。また、エルビウムドープト光ファイバレーザは、半導体レーザによってポンピングしてもよい。また、波長変換装置8は、本開示の構成に限定されるものではなく、波長変換装置8に入射される光を増幅装置3の増幅波長帯域の波長、例えば略193nmの波長の光に変換するものであればよい。例えば、波長変換装置8に含まれる波長変換素子としては、LBO結晶9の代わりにCLBO結晶を使用してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1、1A、1B、1C 2ステージレーザ装置(レーザシステム)
2、2A、2B、2C マスタオシレータ
3 増幅装置
4 低コヒーレンス化光学システム
5 ポンピングレーザ
6 Ti:サファイアレーザ
7 増幅器
8 波長変換装置
81 ビームスプリッタ
11、82 高反射ミラー
9 LBO結晶
10 KBBF結晶
14 出力結合ミラー
15〜17 高反射ミラー
18、19 ウィンドウ
20 チャンバ
21 アノード
22 カソード
23 放電空間
24 レーザ電源
25 スイッチ
26 磁気パルス圧縮回路
31 パルスレーザ光(出力パルスレーザ光)
32〜33 パルスレーザ光
41〜44 光シャッタ
141、143 偏光子
142 ポッケルスセル
144 高圧電源
200 固体レーザ装置
210 コントローラ
211 内部トリガ発振器
220 外部装置
220A レーザコントローラ
311 発振遅延回路
341〜344 シャッタ遅延回路
600 露光装置
601 露光コントローラ
AL1 可飽和リアクトル
L0 シードパルスレーザ光
L1 通過パルスレーザ光
L1a 増幅パルスレーザ光
S1 トリガ信号
S11 ポンピングレーザ発振信号
S41〜S44 光シャッタ動作信号
S5 スイッチ信号
S61 電圧
TB バースト出力期間
TR バースト休止期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出力するポンピングレーザと、
前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、
前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、
前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、
前記ポンピングレーザを所定の繰返し周波数で継続的に発振させるとともに、前記光シャッタを開閉制御するコントローラと、
を備える、マスタオシレータ。
【請求項2】
前記光シャッタは、
電気光学素子と、
前記電気光学素子の光入力端側に配置される第1の光フィルタと、
前記電気光学素子の光出力端側に配置される第2の光フィルタと、
前記電気光学素子に接続され、前記電気光学素子に電圧を印加する電源と、
を備える、
請求項1記載のマスタオシレータ。
【請求項3】
前記電気光学素子は、ポッケルスセルである、請求項2記載のマスタオシレータ。
【請求項4】
前記第1および第2の光フィルタは、それぞれ少なくとも1つの偏光子を含む、請求項2記載のマスタオシレータ。
【請求項5】
前記コントローラは、前記ポンピングレーザの継続発振中に前記光シャッタの少なくとも1つを開閉制御することで、前記パルスレーザ光のバースト出力を生成する、
請求項1記載のマスタオシレータ。
【請求項6】
パルスレーザ光を出力するマスタオシレータと、該マスタオシレータから出力された前記パルスレーザ光を増幅する増幅装置とを備えるレーザシステムであって、
前記マスタオシレータは、
励起光を出力するポンピングレーザと、
前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、
前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する第2増幅器と、
前記シードレーザと前記第2増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、
前記ポンピングレーザを所定の繰返し周波数で継続的に発振させるとともに、前記光シャッタを開閉制御するコントローラと、
を備える、
レーザシステム。
【請求項7】
励起光を出力するポンピングレーザと、前記励起光によってレーザ発振するシードレーザと、前記シードレーザから出力されたパルスレーザ光を前記励起光によって増幅する増幅器と、前記シードレーザと前記増幅器との間の光路上に設置された少なくとも1つの光シャッタと、を備える装置のレーザ生成方法であって、
前記ポンピングレーザを所定の繰返し周波数で継続的に発振させ、
前記ポンピングレーザの継続発振中に前記光シャッタを開閉制御することで、前記パルスレーザ光のバースト出力を生成する、
レーザ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−199425(P2012−199425A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63150(P2011−63150)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/リソグラフィ用ハイブリッドArFレーザシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】