説明

マッサージ装置およびその制御方法

【課題】 使用者がリラクゼーション効果の有無を認識でき、かつ、リラクゼーション効果のあるマッサージを選択的に実行可能なマッサージ装置を提供する。
【解決手段】 マッサージ装置であって、使用者の拍動を検出し、所定時間内に算出されたローレンツプロットデータのばらつきを算出するとともに、前記所定時間内に前記使用者の脳波を検出し、該検出された脳波と前記ばらつきと前記検出された拍動の単位時間あたりの拍動数とに基づいて、前記使用者が精神的にリラックスした状態にあるのか否かを表す心地よさ度を算出し、表示する手段(120)と、前記算出された心地よさ度が増加するように、前記使用者に対するマッサージの動作内容または動作位置を制御する制御手段(111)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電波形や脈拍等の生体信号に基づいて制御されるマッサージ装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、肩や腰等の筋肉のこりを軽減させたり、血行を回復させたりする目的でマッサージ装置が広く用いられてきている。特に、最近では、ストレス社会を反映して、ストレスの解消やリラクゼーション等のマッサージ装置における精神面の効能も注目されており、リラクゼーション効果を高めるための各種機能が付加されるようになってきている。
【特許文献1】特開2001−258972号公報
【特許文献2】特開2003−250895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これまでのマッサージ装置は、リラクゼーション効果を高めるための機能を付加するにとどまり、使用者がそれらの機能を用いた場合に、実際にどの程度のリラクゼーション効果が得られたのかまでは判らなかった。
【0004】
また、マッサージの種類や方法についても、使用者が予め定められたプログラムのいずれかを選択し、当該プログラムに従った種類や方法のマッサージを受けるにとどまり、マッサージ中の使用者のリラクゼーションの効果とは無関係に、そのプログラムが実行されていた。
【0005】
このため、使用者がリラクゼーション効果を認識でき、かつ使用者にとってリラクゼーション効果のあるマッサージを選択的に実行できるマッサージ装置が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、使用者がリラクゼーション効果の有無を認識でき、かつ、リラクゼーション効果のあるマッサージを選択的に実行可能なマッサージ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明に係るマッサージ装置は以下のような構成を備える。即ち、
使用者の拍動を検出し、1拍毎の拍動間隔を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された拍動間隔に基づいて時間領域解析を行う解析手段と、
所定時間内に前記使用者の脳波を検出し、該検出された脳波と前記解析結果と前記検出された拍動の単位時間あたりの拍動数とに基づいて、前記使用者が精神的にリラックスした状態にあるのか否かを表す心地よさ度を算出する心地よさ度算出手段と、
前記算出された心地よさ度を表示する表示手段と、
前記算出された心地よさ度が増加するように、前記使用者に対するマッサージの動作内容または動作位置を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者がリラクゼーション効果の有無を認識でき、かつ、リラクゼーション効果のあるマッサージを選択的に実行可能なマッサージ装置およびその制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、必要に応じて添付図面を参照しながら本発明の各実施形態を詳細に説明する。以下の各実施形態で説明するマッサージ装置では、マッサージ中の使用者のリラクゼーションの度合いと関わりのある生体情報を検出・解析することで、リラクゼーションの度合いを監視し、リラクゼーション効果が上がるようにマッサージ動作を制御する。
【0010】
具体的には、リラクゼーションの度合いと関わりのある生体情報として、心電波形や脈拍等の心拍に関する生体情報と、脳波に関する生体情報(例えば、α波)とを検出する。そして、これらの生体情報に基づいて、使用者の心地よさ度を定量的に算出することで、リラクゼーションの度合いを監視する。
【0011】
リラクゼーションの度合いとして以下の各実施形態において用いる心地よさ度は、以下の式に基づいて算出する。
(式1)心地よさ度=A×心拍数+B×ゆらぎ度+C×α波+D
ただし、A、B、C、Dは係数
なお、上式に基づいて心地よさ度を算出するにあたって利用される「ゆらぎ度」は、心拍に関する生体情報に基づいて時間領域解析の幾何学的図形解析法を用いることで算出される。
【0012】
なお、以下の各実施形態では、ゆらぎ度の算出にあたり、時間領域解析の幾何学的図形解析法の1つとしてローレンツプロットを採用することとするが、本発明における時間領域解析法としては、特にこれに限定されるものではない。ゆらぎ度の指標として、他の時間領域解析の幾何学的図形解析法であるトライアングルインデックスや、時間/領域解析であるSDNN、SDANN、r−MSSD、RR50(NN50)、pNN50(φ0NN50)、CVRR等を採用するようにしてもよい。
【0013】
[第1の実施形態]
1.ローレンツプロットの概要
はじめに、ゆらぎ度を表す指標の1つであるローレンツプロットについて簡単に説明する。ローレンツプロットとは、交感神経と副交感神経の亢進状態の評価方法として知られている。一般に交感神経と副交感神経とはバランスがとれていることが重要であり、交感神経と副交感神経とのバランスが乱れると、拍動(心拍)のゆらぎに影響を及ぼす。
【0014】
ローレンツプロットとは、この心拍のゆらぎを、心電波形や脈拍等の生体信号に基づいて可視化したものである。
【0015】
図13、図14は、心電波形に基づいてローレンツプロットを生成する方法を示した図である。図13の1301に示すような心電波形が収集されると、まず、R波の位置が同定され、R−R間隔が算出される。R波とは心電波形のピーク部分をいい、R−R間隔とはR波のn拍目(nは任意の整数)とn+1拍目の心拍間隔をいう。図10の例では、R波の位置はそれぞれ、R1、R2、R3、R4と同定され、R−R間隔はそれぞれT21、T32、T43と算出される。
【0016】
そして、当該算出されたR−R間隔に基づいて、図14に示す2次元グラフ領域に、T32を横軸に、T21を縦軸にプロットする。更に、T43を横軸に、T32を縦軸にプロットする。このような処理を、連続するR−R間隔に対して順次行うことで、ローレンツプロットが生成される。
【0017】
そして、ゆらぎ度は、当該生成されたローレンツプロットの2次元グラフ領域における分布領域の大きさ(つまり、ローレンツプロットデータのばらつき)として算出される。
【0018】
なお、参考までに図15に、生成されたローレンツプロットの一例を示す。(a)は一般にバランスがとれた良好な状態を示しており、(b)、(c)はバランスがとれていない状態を示している((b)はストレス・疾患パターンを、(c)は不整脈パターンをそれぞれ示している)。
【0019】
2.マッサージ装置の外観構成
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるマッサージ装置100の外観構成を示す図である。同図において、110はマッサージ装置本体部であり、使用者130が座った状態において使用者130の肩、腰等の各部をマッサージすることが可能な機械構成(不図示)が内蔵されている。111は制御部であり、マッサージ装置本体部110に内蔵され、該機械構成を制御する。
【0020】
112はアームレスト部であり、使用者130が座った状態で、腕を載せることができるようにマッサージ装置本体部110から水平方向に延びて配設されている。114は操作部であり、使用者130は、該操作部114を介して指示を入力することで、マッサージ装置100が有する各種マッサージ機能を動作させることができる。
【0021】
120は測定部であり、心電波形を検出するとともに、検出された脳波(例えば、α波)を受信し、使用者130の心地よさ度を算出する。測定部120は支持部113によりアームレスト部112に固定されており、使用者130は、マッサージを受けている状態で、心電波形ならびに脳波の検出を行うことができ、かつ、算出された心地よさ度を見ることができる。
【0022】
3.測定部120の外観構成
図2は、測定部120の外観構成を示す図である。同図において、201はハウジングであり、内部の電子機器を覆うとともに、装置の外形を形成する。ハウジング201の一部分(202に示す部分)には、心電波形を検出するための電極が埋め込まれており、使用者130が202に示す部分に手のひらを当てることにより、使用者130の心電波形を検出することができる。
【0023】
203は表示/操作部であり、検出された心電波形に基づいて時間領域解析法の幾何学的図形解析法の1つで得られるデータの1つとしてのローレンツプロットを表示したり、算出された心地よさ度を表示したりすると共に、測定に関する各種操作を使用者130より受け付ける。
【0024】
なお、図2には示されていないが、測定部120には、使用者130の脳波(α波)を測定する脳波検出器が接続できるように構成されているものとする。
【0025】
4.測定部120の機能構成
図3は、測定部120の機能構成を示す図である(脳波検出器が接続された場合の機能構成を示す図である)。同図において、301はクロック部であり、クロック信号を発振し、CPU302に供給する。302はCPUであり、クロック部301より発振されたクロック信号に基づいて動作する。303はRAMであり、CPU302において処理されるプログラムのワークエリアとして機能するとともに、プログラム処理時にデータ等を一時的に記憶する記憶手段としても機能する。304はROMであり、CPU302にて処理されるプログラムが格納されている。
【0026】
305は表示/操作部(図2の203に対応)であり、CPU302において処理された処理結果を表示するとともに、使用者130からの指示入力を受け付ける。306は電極であり、使用者130の心電波形を検出し、電気信号を出力する。307はアンプであり、電極306より出力された電気信号を増幅するとともに、デジタル信号(以下、心拍測定データ)に変換する。
【0027】
308は脳波検出器であり、使用者130の脳波(α波)を検出し、電気信号を出力する。309はアンプであり、脳波検出器308より出力された電気信号を増幅するとともに、デジタル信号(以下、脳波測定データ)に変換する。
【0028】
310はデータ送信部であり、CPU302において心拍測定データや脳波測定データを処理することにより得られた心地よさ度を、制御部111に送信する。
【0029】
ROM304に格納されたプログラムにより実現される機能を321から328に示す。321は心拍検出処理部であり、アンプ307より出力された心拍測定データを受信する。322は心拍間隔検出処理部であり、受信した心拍測定データに基づいて、心電波形のR波を同定したのち、各R−R間隔を算出し、ローレンツプロットデータ(2次元グラフ領域にローレンツプロットを表示するための座標データ)を生成する。また、所定時間、例えば、1分間あたりの心拍数を算出する。
【0030】
323は表示処理部であり、測定中は、心拍間隔検出処理部322において生成されたローレンツプロットデータに基づいて、表示/操作部305上にローレンツプロットを表示するとともに、心電波形のR波のタイミングに合わせて、文字、記号、シンボルマーク等で表示される心拍検出マーク(後述)を点滅させ、更に心拍数を表示する。また、後述する算出部328において算出されたゆらぎ度ならびに心地よさ度を表示する。更に、後述するトレンド処理部において生成された心地よさ度のトレンドグラフを表示する。
【0031】
324はデータ送信部であり、算出部328にて算出された心地よさ度を制御部111に送信するための処理を行う。
【0032】
325はトレンド処理部であり、算出された心地よさ度を時系列に配列し、トレンドグラフを生成する。326はユーザ入力処理部であり、表示/操作部305を介して使用者130より入力された指示を受信する。
【0033】
327は脳波入力処理部であり、アンプ309より出力された脳波測定データを受信する。
【0034】
328は算出部であり、心拍間隔検出処理部322にて生成されたローレンツプロットデータに基づいて、所定時間ごとのゆらぎ度を算出する。また、算出されたゆらぎ度と、心拍間隔検出処理部322にて算出された心拍数と、脳波入力処理部327において受信した脳波測定データとに基づいて、心地よさ度を算出する。
【0035】
5.測定部120における画面構成
図4は、表示/操作部305の画面例を示す図である(なお、画面は液晶画面のほか、視認性の高い有機ELなどを用いても良い)。401はデータ表示部であり、表示処理部323が各種データを表示する。図4の例では、ローレンツプロットを表示するための画面が図示されており、横軸および縦軸の単位はmsecである。408、409はそれぞれデータ表示部401をスクロールするためのスクロールバーである。407は、カーソル、スクロールバーを任意に移動させるための十字キーである。
【0036】
402は測定開始/終了ボタンであり、使用者130は測定開始/終了ボタン402を1回押下することにより測定を開始し、再度押下することにより、測定を終了させることができる。
【0037】
403はローレンツプロット表示ボタンであり、データ表示部401にローレンツプロットを表示させるためのボタンである(ローレンツプロット表示ボタン403が押下されることで、ローレンツプロット表示モードとなる)。一方、404は心地よさ度表示ボタンであり、データ表示部401に心地よさ度のトレンドグラフを表示させるためのボタンである(心地よさ度表示ボタン404が押下されることで、トレンド表示モードとなる)。
【0038】
405、406はそれぞれ縮小ボタンおよび拡大ボタンであり、データ表示部401上に表示されるローレンツプロットやトレンドグラフ等を縮小または拡大する。
【0039】
6.測定部120における処理の流れ
図5は、測定部120における測定処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
ステップS501では、表示モードの判定を行う。表示モードとは、データ表示部401に表示されるデータの種類を特定するためのものであり、本実施形態にかかるマッサージ装置100の場合、ローレンツプロット表示モードとトレンド表示モードとがある。ローレンツプロット表示ボタン403が押下されていれば、ローレンツプロット表示モードと判定し、ステップS502に進む。一方、心地よさ度表示ボタン404が押下されていれば、トレンド表示モードと判定し、ステップS517に進む。
【0041】
ステップS502では、ローレンツプロット表示画面(図4)を表示する。更に、ステップS503では、測定終了指示がなされていないかを確認し(測定開始/終了ボタン402が再度押下されていないかを確認し)、測定終了指示がなされていなければ、ステップS504に進む。
【0042】
ステップS504では、心拍検出処理部321が心拍測定データを受信したか否かを判定する。本実施形態にかかるマッサージ装置100の場合、電極306は測定部120に内蔵されているため、使用者が当該埋め込み位置にて測定部120を握っている間は心電波形を検出することができるが、マッサージ中に一方の手が離れたりした場合には、心電波形が検出できなくなってしまう。そこで、ステップS504では、所定時間、心拍測定データを受信できているか否かを監視する。
【0043】
ステップS504において、心拍測定データを受信できていないと判定された場合には、ステップS509に進み、“所定時間”のカウント開始から心拍測定データを受信できていないと判定されるまでの間に受信した心拍測定データを削除する。また、ステップS510にて“所定時間”をカウントするタイマーをリセットする。更に、ステップS511では、データ表示部401のローレンツプロットの表示をリセットし、所定時間のカウント開始から心拍測定データを受信できていないと判定されるまでの間に表示されたローレンツプロットを消去する。
【0044】
一方、ステップS504において、心拍測定データを受信できていると判定された場合には、ステップS505に進み、心拍間隔検出処理部322が心拍検出処理部321にて受信した心拍測定データならびに、脳波入力処理部327にて受信した脳波測定データを取得する。
【0045】
ステップS506では、取得した心拍測定データのR波を同定し、単位時間あたり(例えば、1分間あたり)の心拍数を算出する。表示処理部323では、該同定したR波にあわせてローレンツプロット表示画面上の心拍検出マーク(後述)を点滅させるとともに、算出した心拍数を心拍数表示欄(後述)に表示する。
【0046】
ステップS507では、ローレンツプロットを行う。ステップS508では、タイマーのカウントが開始されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していなければステップS501まで戻る。
【0047】
これにより、所定時間経過前に、表示モードの切り替え指示がなされた場合にあっては、それに応じて画面が切り替わり、所定時間経過前に、電極306から使用者130の手が離れた場合にあっては、途中まで表示されたローレンツプロットの表示がリセットされることとなる。
【0048】
なお、所定時間が経過するまでの間、データ表示部401の任意の位置に所定表示(セグメント表示などで、カウントダウン表示またはカウントアップ表示)をしたり、ペット、子供、風景、キャラクタなどを任意に選択して順次画像等を完成させるような画面表示を行ったりしてもよい。
【0049】
ステップS508において所定時間が経過したと判定された場合には、タイマーのカウントを停止し、ステップS512に進む。ステップS512では心拍測定データの受信を一旦終了し、それまでに算出されたローレンツプロットデータを用いてゆらぎ度を算出し、表示する。好ましくは、更にステップS513では、ローレンツプロットデータの分布領域を示す線を算出し、表示する。
【0050】
更にステップS514では、所定時間経過時の脳波測定データを表示する。
【0051】
更に、ステップS515では、ステップS505にて取得された脳波測定データとステップS506にて検出された心拍数とステップS512にて算出されたゆらぎ度とに基づいて、使用者130の心地よさ度を算出する。なお、心地よさ度の算出にあたっては下式を用いる。
(式1)心地よさ度=A×心拍数+B×ゆらぎ度+C×α波+D
ただし、A、B、C、Dは係数
図6は、所定時間経過前のデータ表示部401のローレンツプロット表示画面の一例を示す図である。同図において601は心拍検出マークであり、602は心拍数表示欄である。603は、データ表示部401が現在拡大表示されているのか、標準の大きさで表示されているのか、縮小表示されているのかを示す欄である。604は現在の日時を表示する欄である。
【0052】
更に、605はローレンツプロットデータであり、606は算出されたゆらぎ度や心地よさ度を表示する欄である。
【0053】
また、図7は、所定時間経過時のデータ表示部401のローレンツプロット表示画面の一例を示す図である。同図において701は、ローレンツプロットデータの分布領域を示す線である。また、701、702は算出されたゆらぎ度ならびに心地よさ度である。
【0054】
図5に戻る。ステップS516では、ステップS515にて算出された心地よさ度を制御部111に出力する。心地よさ度を出力した後は、タイマーをリセットした後、再びステップS501に戻る。
【0055】
一方、ステップS501において、表示モードがトレンド表示モードであると判定された場合には、ステップS517に進み、トレンド表示画面を表示する。更に、ステップS518では、測定終了指示がなされていないかを確認し(測定開始/終了ボタン402が再度押下されていないかを確認し)、測定終了指示がなされていなければ、ステップS519に進む。
【0056】
ステップS519では、心拍検出処理部321が心拍測定データを受信したか否かを判定する。ステップS519において、心拍測定データを受信できていないと判定された場合には、ステップS522に進み、“所定時間”のカウント開始から心拍測定データを受信できていないと判定されるまでの間に受信した心拍測定データを削除する。また、ステップS523にて“所定時間”をカウントするタイマーをリセットする。
【0057】
一方、ステップS519において、心拍測定データを受信できていると判定された場合には、ステップS520に進み、心拍間隔検出処理部322が心拍検出処理部321にて受信した心拍測定データならびに、脳波入力処理部327にて受信した脳波測定データを取得する。
【0058】
ステップS521では、取得した心拍測定データのR波を同定し、単位時間あたり(例えば、1分間あたり)の心拍数を算出するとともに、ローレンツプロットデータを算出する。
【0059】
ステップS524では、タイマーのカウントが開始されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していなければステップS501に戻る。一方、ステップS524において所定時間が経過したと判定された場合には、タイマーのカウントを停止し、ステップS525に進む。
【0060】
ステップS525では、心拍測定データの受信を一旦終了し、それまでに算出されたローレンツプロットデータを用いてゆらぎ度を算出する。更に、ステップS526では、ステップS520にて取得された脳波測定データ、ならびにステップS521にて算出された心拍数とステップS525にて算出されたゆらぎ度とに基づいて、使用者130の心地よさ度を算出する。
【0061】
ステップS527では、算出された心地よさ度をトレンドグラフ表示画面にプロットする。
【0062】
図8は、データ表示部401のトレンド表示画面の一例を示す図であり、横軸は時間を、縦軸は心地よさ度(%)をである。同図において800は心地よさ度のトレンドグラフである。
【0063】
図5に戻る。ステップS528では、算出された心地よさ度を制御部111に出力する。心地よさ度を出力した後は、タイマをリセットした後、再びステップS501に戻る。
【0064】
なお、ステップS502またはステップS518において測定開始/終了ボタン402が再度押下されたと判定された場合には、ステップS529に進み、データ表示部401の表示をリセットし、処理を終了する。
【0065】
このように、本実施形態にかかるマッサージ装置100では、測定開始/終了ボタン402が1回押下されると、測定開始/終了ボタン402が次に押下されるまで、図5に示す測定処理が繰り返し実行される。
【0066】
つまりマッサージ装置100では、所定時間、心拍測定データの受信・脳波測定データの受信を行い、心拍数・ローレンツプロットデータを取得し、ゆらぎ度の算出を行い、心地よさ度を算出するといった処理を繰り返し行うこととなる。
【0067】
図9は、図5に示すフローチャートに従って測定処理が実行された場合の、データ表示部401の表示を示したものである。
【0068】
図9において、901は心拍測定データの受信/非受信を示している。測定開始/終了ボタン402が押下されると(902)、心拍測定データの受信と非受信とが交互に繰り返され、ローレンツプロット表示モードにあっては、所定時間内に受信されたそれぞれの心拍測定データに基づいて、ローレンツプロットが行われ、その間の心拍数、ゆらぎ度、心地よさ度がそれぞれ算出され、表示される(904に示す各画面参照)。また、トレンド表示モードにあっては、所定時間内に受信されたそれぞれの心拍測定データに基づいて算出された心拍数、ゆらぎ度および脳波測定データに基づいて算出された心地よさ度がプロットされていく(905に示す各画面参照)。なお、ローレンツプロット表示ボタン403または心地よさ度表示ボタン404が押下されることで表示モードが切り替わると、図9の904に示す画面と905に示す画面とが切り替わることとなる。そして、再度、測定開始/終了ボタン402が押下されると処理を終了する(903)。
【0069】
7.制御部111の機能構成
制御部111の機能構成について説明する。図10は、制御部111の機能構成を示す図である。同図において、1001はクロック部であり、クロック信号を発振し、CPU1002に供給する。1002はCPUであり、クロック部1001より発振されたクロック信号に基づいて動作する。1003はRAMであり、CPU1002において処理されるプログラムのワークエリアとして機能するとともに、プログラム処理時にデータ等を一時的に記憶する記憶手段としても機能する。1004はROMであり、CPU1002にて処理されるプログラムが格納されている。
【0070】
1005は操作I/F部(図1の操作部114に接続される)であり、マッサージ機能に関する指示を使用者130から受け付ける。1006は駆動部であり、使用者130の足や尻、腰、背中、肩、手等をマッサージするための機械構成を駆動させる。
【0071】
1007はデータ受信部であり、測定部120において算出された心地よさ度を受信する。
【0072】
ROM1004に格納されたプログラムにより実現される機能を1011から1013に示す。1011はマッサージ動作制御部であり、手動モードにあっては、操作I/F部1005を介して使用者130より入力された指示に基づいて、駆動部1006に対して動作指示を与える。また、自動モードにあっては、データ受信部1007を介して測定部120より受信した心地よさ度に基づいて、動作指示を決定し、該決定された指示を駆動部1006に対して与える。
【0073】
1012は操作処理部であり、操作I/F部1005より入力された各種指示を受信し、マッサージ動作制御部1011に渡す。1013はデータ受信部であり、測定部120より送信された心地よさ度を受信し、マッサージ動作制御部1011に渡す。
【0074】
8.操作部114の構成
図11は、操作部114の構成を示す図である。同図に示すように、操作部114は、動作モードを指定する領域と、動作内容を指定する領域と動作位置を指定する領域とに大別することができる。
【0075】
動作モードを指定する領域には、自動モード指定ボタン1101と手動モード指定ボタン1102とが配されている。自動モード指定ボタン1101が指定された場合には、測定部120から送信される心地よさ度に基づいて、マッサージ動作制御部1011が動作指示を決定し、マッサージ動作することになる。
【0076】
一方、手動モード指定ボタン1102が指定された場合には、動作内容を指定する領域と動作位置を指定する領域とにおいて指定された内容に従って、マッサージ動作制御部1011がマッサージ動作をすることになる。
【0077】
動作内容を指定する領域には、“もみ”動作を指定するためのボタン1103、“たたき”動作を指定するためのボタン1104、“伸ばし”動作を指定するためのボタン1105、“もみたたき”動作を指定するためのボタン1106、“指圧”動作を指定するためのボタン1107、“振動”動作を指定するためのボタン1108が配されている。また、それぞれの動作内容に対して、動作強度を強めたり弱めたりするために、強弱ボタン1109が配されている。
【0078】
動作位置を指定する領域には、“足”を指定するためのボタン1110、“尻”を指定するためのボタン1111、“腰”を指定するためのボタン1112、“背中”を指定するためのボタン1113、“肩”を指定するためのボタン1114、“手”を指定するためのボタン1115が配されている。
【0079】
このように、手動モードの場合には、動作内容、動作強度、動作位置を任意に組み合わせることができる。
【0080】
9.制御部111における処理の流れ
次に、自動モードが指定された場合の、制御部111におけるマッサージ動作処理の流れについて説明する。自動モードが指定されると、図12に示すフローチャートが実行開始される。
【0081】
ステップS1201では、測定部120より心地よさ度が受信されたか否かを判定する。使用者130は、自動モード指定ボタン1101を押下した後、測定部120の測定開始/終了ボタン402を押下することで、心電波形および脳波の検出を開始する。この結果、制御部111には、測定部120にて算出された心地よさ度が送信される。
【0082】
ステップS1201において、心地よさ度が受信されなかった場合には、処理を終了する。一方、ステップS1201において、心地よさ度が受信されたと判定された場合には、ステップS1202に進み、規定時間が経過したか否かを判定する。規定時間は、予め制御部111に設定されているものとする。当該規定時間が経過するごとに、制御部111のマッサージ動作制御部1011では、動作内容、動作強度、動作位置を見直し、心地よさ度が改善される方向に変更する。
【0083】
ステップS1203では、心地よさ度が、前回(規定時間前)よりも増加したか否かを判定する。心地よさ度が、前回(規定時間前)よりも増加したと判定された場合には、ステップS1207に進む。
【0084】
一方、心地よさ度が、前回(規定時間前)と同等、あるいは減少したと判定された場合には、ステップS1204に進み、動作内容の変更が可能であるか否かを判定する。ここで、マッサージ動作制御部1011では、規定時間経過時に、心地よさ度が増加していない場合には、順次、動作内容を変更していく。このため、特定の動作位置に対して全ての動作内容が実行された場合には、ステップS1204において、動作変更が可能でないと判定する。一方、まだ実行されていない動作内容がある場合には、ステップS1204において動作変更可能であると判定され、ステップS1205に進む。
【0085】
ステップS1205では、動作内容を変更する。なお、動作内容の変更は、例えば、“もみ”→“たたき”→“伸ばし”→“もみたたき”→“指圧”→“振動”の順序で行われるものとする。ただし、順序がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0086】
一方、ステップS1204において、動作内容の変更が可能でないと判定された場合には、ステップS1206に進み、動作位置の変更が可能か否かを判定する。
【0087】
ステップS1206において、動作位置の変更が可能であると判定された場合には、ステップS1207に進み、動作位置の変更を行う。なお、動作位置の変更は、例えば、““足”→“尻”→“腰”→“背中”→“肩”→“手”の順序で行われるものとする。ただし、順序がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0088】
ステップS1207では、心地よさ度が目標値に到達したか否かを判定する。ステップS1208において、心地よさ度が目標値に到達していないと判定された場合には、ステップS1201に戻る。一方、心地よさ度が目標値に到達したと判定された場合には、処理を終了する。
【0089】
以上の説明から明らかなように、本実施形態にかかるマッサージ装置では、心電波形と脳波を検出し、心電波形に基づいて算出された心拍数、ゆらぎ度、ならびに脳波とを用いて、心地よさ度を算出し、表示する構成とした。この結果、使用者は、マッサージ中のリラクゼーション効果の有無を認識することが可能となった。
【0090】
更に、本実施形態にかかるマッサージ装置では、算出された心地よさ度が増加するように、マッサージ動作の動作内容ならびに動作位置を順次変更していく構成とした。これにより、リラクゼーション効果のあるマッサージを選択的に実行させることが可能となった。
【0091】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、規定時間内に心地よさ度が増加しなかった場合に、動作内容および動作位置を一定の順序で変更することとしたが、本発明は特にこれに限られない。例えば、動作内容または動作位置と心地よさ度の変化との関係を記録しておき、心地よさ度の増加に効果のある動作内容または動作位置を優先的に選択するように構成してもよい。
【0092】
また、上記第1の実施形態では、自動モードにおいて、動作強度を一定にして制御することとしたが、本発明は特にこれに限定されず、動作強度についても順次変更するように構成してもよい。
【0093】
なお、上記第1の実施形態において示した動作内容、動作位置は、あくまで一例であり、その他の動作内容や動作位置が含まれていてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるマッサージ装置の外観構成を示す図である。
【図2】測定部120の外観構成を示す図である。
【図3】測定部120の機能構成を示す図である。
【図4】表示/操作部305の画面例を示す図である。
【図5】測定部120における測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】測定開始後のデータ表示部401のローレンツプロット表示画面の一例を示す図である。
【図7】所定時間経過後のデータ表示部401のローレンツプロット表示画面の一例を示す図である。
【図8】所定時間経過後のデータ表示部401のトレンド表示画面の一例を示す図である。
【図9】図5に示すフローチャートに従って処理が実行された場合の、データ表示部401の表示の遷移を示した図である。
【図10】制御部111の機能構成を示す図である。
【図11】操作部114の構成を示す図である。
【図12】制御部111における処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】心電波形に基づいてローレンツプロットを生成する方法を示した図である。
【図14】心電波形に基づいてローレンツプロットを生成する方法を示した図である。
【図15】ローレンツプロットの一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の拍動を検出し、1拍毎の拍動間隔を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された拍動間隔に基づいて時間領域解析を行う解析手段と、
所定時間内に前記使用者の脳波を検出し、該検出された脳波と前記解析結果と前記検出された拍動の単位時間あたりの拍動数とに基づいて、前記使用者が精神的にリラックスした状態にあるのか否かを表す心地よさ度を算出する心地よさ度算出手段と、
前記算出された心地よさ度を表示する表示手段と、
前記算出された心地よさ度が増加するように、前記使用者に対するマッサージの動作内容または動作位置を制御する制御手段と
を備えることを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
使用者の拍動を検出し、拍動間隔を抽出する抽出手段と、
前記抽出されたn拍目の拍動間隔とn+1拍目の拍動間隔とを、2次元グラフ領域の縦軸または横軸として順次プロットする場合の各座標データを算出する座標算出手段と、
所定時間内に算出された前記座標データのばらつきを算出するばらつき算出手段と、
前記所定時間内に前記使用者の脳波を検出し、該検出された脳波と前記ばらつきと前記検出された拍動の単位時間あたりの拍動数とに基づいて、前記使用者が精神的にリラックスした状態にあるのか否かを表す心地よさ度を算出する心地よさ度算出手段と、
前記算出された心地よさ度を表示する表示手段と、
前記算出された心地よさ度が増加するように、前記使用者に対するマッサージの動作内容または動作位置を制御する制御手段と
を備えることを特徴とするマッサージ装置。
【請求項3】
前記心地よさ度算出手段は、所定の係数A、B、C、Dを用いて、A×(単位時間あたりの拍動数)+B×ばらつき+C×脳波+Dを計算することにより心地よさ度を算出することを特徴とする請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記所定時間ごとに算出された心地よさ度を、トレンドグラフとして表示することを特徴とする請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項5】
前記表示手段は、更に、
前記座標データに基づいて前記2次元グラフ領域にプロット表示するとともに、前記算出されたばらつきを表示することを特徴とする請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
規定時間ごとに前記算出された心地よさ度を監視し、前回よりも心地よさ度が増加していなかった場合に、マッサージの動作内容を変更することを特徴とする請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
規定時間ごとに前記算出された心地よさ度を監視し、前回よりも心地よさ度が増加していなかった場合に、マッサージの動作位置を変更することを特徴とする請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項8】
使用者の拍動を検出し、1拍毎の拍動間隔を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程により抽出された拍動間隔に基づいて時間領域解析を行う解析工程と、
所定時間内に前記使用者の脳波を検出し、該検出された脳波と前記解析結果と前記検出された拍動の単位時間あたりの拍動数とに基づいて、前記使用者が精神的にリラックスした状態にあるのか否かを表す心地よさ度を算出する心地よさ度算出工程と、
前記算出された心地よさ度を表示する表示工程と、
前記算出された心地よさ度が増加するように、前記使用者に対するマッサージの動作内容または動作位置を制御する制御工程と
を備えることを特徴とするマッサージ装置の制御方法。
【請求項9】
使用者の拍動を検出し、拍動間隔を抽出する抽出工程と、
前記抽出されたn拍目の拍動間隔とn+1拍目の拍動間隔とを、2次元グラフ領域の縦軸または横軸として順次プロットする場合の各座標データを算出する座標算出工程と、
所定時間内に算出された前記座標データのばらつきを算出するばらつき算出工程と、
前記所定時間内に前記使用者の脳波を検出し、該検出された脳波と前記ばらつきと前記検出された拍動の単位時間あたりの拍動数とに基づいて、前記使用者が精神的にリラックスした状態にあるのか否かを表す心地よさ度を算出する心地よさ度算出工程と、
前記算出された心地よさ度を表示する表示工程と、
前記算出された心地よさ度が増加するように、前記使用者に対するマッサージの動作内容または動作位置を制御する制御工程と
を備えることを特徴とするマッサージ装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の制御方法をコンピュータによって実行させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−148949(P2008−148949A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340521(P2006−340521)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】