マットレス
【課題】褥瘡予防のための接触圧分散と、既に褥瘡が発生している場合の褥瘡緩和のための除荷との双方を達成することができるマットレスを提供する。
【解決手段】マットレス1を構成するための複数のエアセル3、身体の患部またはその近辺に取り付けられるマーカ6、各エアセル3に対するマーカ6の位置を検出する磁気検出センサ5、各エアセル3の内圧を検出する圧力検出センサ14、および圧力検出センサ14と磁気検出センサ5の検出出力に基づいてエアセル3の内圧を制御する圧力制御装置7を備えている。
【解決手段】マットレス1を構成するための複数のエアセル3、身体の患部またはその近辺に取り付けられるマーカ6、各エアセル3に対するマーカ6の位置を検出する磁気検出センサ5、各エアセル3の内圧を検出する圧力検出センサ14、および圧力検出センサ14と磁気検出センサ5の検出出力に基づいてエアセル3の内圧を制御する圧力制御装置7を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドや椅子などを利用する場合の身体への接触圧力を調整して接触圧分散を有効に図ることが可能なマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、老人ホーム等に収容される寝たきりの高齢者や、病院における術後患者などは、就寝状態が長く継続するために褥瘡(床擦れ)が発生し易く、褥瘡が一度発生すると治りにくいため、褥瘡予防が強く望まれている。
【0003】
褥瘡予防のためには、介護者が就寝者を抱きかかえるなどして就寝姿勢を変更することである程度は対処可能であるが、頻繁に就寝姿勢を変更することは、就寝者に余分な負担を強いるだけでなく、介護者にも過剰な労力を要することになる。このため、従来より、人手に頼り切りにならずに褥瘡発生を防止するための種々の褥瘡防止装置が提案されている。
【0004】
従来のこのような褥瘡防止装置として、例えば、加圧/減圧の系統の異なる2種のエアセルを長手方向に沿って配置し、就寝者の生体情報から推定演算される睡眠段階情報に基づいて、各エアセルを交互に加圧および減圧制御するようにした就寝用具制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の従来技術として、例えば、直方形状をした左右一対のエアセルを長手方向に沿って多数配列するとともに、各エアセルには接触圧を検出する感圧センサを個別に設け、これらの感圧センサで測定される圧力検出信号に基づいて各エアセルの空気量を制御することで、就寝者の身体各部に加わる接触圧を時間的に平均化して褥瘡発生を防止するようにした装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−229875号公報(第10頁、図1)
【特許文献2】特開2000−189472号公報(第12頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近ではQOL(Quality Of Life)向上の高まりにより、褥瘡発生を防止するだけでなく、就寝者の身体に既に褥瘡が発生した場合、この褥瘡発生部位が寝具から受ける接触圧を低減して褥瘡緩和を図り、就寝者を快適に就寝させたいとの要請も強くなっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の装置は、加圧/減圧するエアセルが2系統に分かれている構成であるため、人体の複雑な形状凹凸に追随した接触圧分散を精度良く行うことが難しい。しかも、仮に褥瘡が発生した特定部位に対してエアセルを減圧することで高い接触圧を受けないようにできたとしても、減圧したエアセルの周辺に位置するエアセルとの間に生じる圧力勾配を考慮していないため、減圧したエアセル以外のエアセルに新たに生じる高接触圧領域の形成によって、現在褥瘡を生じている部位以外の部位に褥瘡を誘発する恐れがある。
【0009】
また、褥瘡が発生し易い部位は、骨突出部などのように局部的に高い接触圧を受けるところであるが、特許文献2記載の装置のように、就寝者の身体各部位がマットレス面から常に時間的に平均化された接触圧を受けるように周期的にエアセルを加減圧制御するだけでは、骨突出部等のように局部的に高い接触圧を受ける部位の褥瘡発生を有効に防止することが難しい。ましてや、既に褥瘡が発生した部位の接触圧の緩和を図ることは極めて困難である。
【0010】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、身体に特別な高接触圧部位が発生しないように、エアセル内の圧力制御によって接触圧分散を促して褥瘡予防を図るとともに、既に褥瘡が発生している場合には、その褥瘡発生部位を簡単な構成でもって精度良く特定して当該部位に加わる接触圧を低減することで褥瘡緩和を図り、QOLを向上させることができるマットレスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のマットレスは、複数のエアセルと、身体の患部またはその近辺に取り付けられるマーカと、上記各エアセルに対するマーカの位置を検出するマーカ位置検出手段と、上記各エアセルの内圧を検出する圧力検出センサと、上記圧力検出センサで検出されたエアセルの内圧および上記マーカ位置検出手段で検出されたマーカ位置の情報の少なくとも一方の検出出力に基づいて各々のエアセルに対して空気を吸排気してエアセルの内圧を制御する圧力制御装置とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマットレスは、圧力検出センサによって全てのエアセルの内圧を計測することによって、各エアセルの内圧を人体の圧力分布を考慮して予め設定された目標値へ整定させるので、身体の特定部位が高い接触圧を受けるのが抑制され、褥瘡予防を図ることができる。
【0013】
また、既に褥瘡が発生している場合には、その褥瘡が発生している患部にマーカを取り付け、このマーカをマーカ位置検出手段によって検出して当該患部における接触圧を低減するようにしているので、褥瘡緩和を図ることができる。
このように、本発明のマットレスは、褥瘡予防および褥瘡緩和の双方を達成できるため、QOLを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるマットレスを示す断面図、図2は同マットレスを構成するエアセルの配列を示す平面図、図3は同マットレスのクッション材を除いた全体構成を示す斜視図、図4はマットレスを構成するクッション材とエアセルを拡大して示す断面図である。
【0015】
この実施の形態1のマットレス1は、例えば発泡ウレタンなどの低反発性素材からなる上下一対のクッション材2と、このクッション材2の間に配置された多数個のエアセル3とを備える。
【0016】
各エアセル3は、シリコン樹脂からなる直方体状のもので、その内部は空気が注入できるように中空に形成されており、これらのエアセル3がクッション材2の長手方向および短手方向に沿ってそれぞれ複数個づつ平面状に配置されている。具体例として、エアセル3を構成するシリコン樹脂の肉厚は2mmt、外形寸法は60mmW×60mmL×50mmHであり、これらの各エアセル3がクッション材2の長手方向に6個、短手方向に7個、それぞれ平面状に配置される。
【0017】
このように、本発明における個々のエアセル3の上面の寸法は従来に比べて十分に小さいので、身体の各部位に接触するエアセル3の内圧をより細かく制御することができるため、身体に加わる負荷を少なくできる効果がある。
【0018】
そして、各エアセル3には、エアセル3と同じ材質でできた吸排気用のチューブ4の一端が個別に接続され、各チューブ4の他端は図示しないコネクタを介して流路分配器21に接続されている。また、各々のエアセル3の上面には凹部3aが形成され、この凹部3a内に後述するマーカ6の位置を検出するマーカ位置検出手段としての磁気検出センサ5が接着固定されている。さらに、磁気検出センサ5の上面には集磁効果を促進する集磁箔8が設置されている。そして、各磁気検出センサ5は、リード線18aを介して上記の圧力制御装置7に接続されている。
【0019】
磁気検出センサ5は、ホール素子、磁気抵抗素子、ピックアップコイルなどが適用される。特に、温度補償回路、オフセット補償回路、増幅回路等が一体となり1チップで構成されたホールICが小型で使い易く、例えばA3515LUA(アレグロ社製)などを好適に使用できる。
【0020】
なお、この実施の形態1では、エアセル3やクッション材2の上面に余分な凹凸が生じないように、磁気検出センサ5をエアセル3の凹部3a内に収納しているが、磁気検出センサ5が薄型であって、設置後にエアセル3やクッション材2の表面に凹凸が生じなければ凹部3aを省略してもよい。また、外付け回路として、増幅回路、フィルタ回路を追加してもよい。
【0021】
また、就寝者あるいは座りきり者の身体に生じた褥瘡発生部が受ける接触圧を選択的に低減したい場合には、褥瘡発生箇所にマーカ6が取り付けられる。この場合のマーカ6としては、例えば、磁気粉末を樹脂に混合してシート状に成形してなるシート磁石が使用される。磁気粉末としては、例えば、Sm−Co、Nd−Fe−B、Sm−Fe−N、フェライトなどがある。また、このマーカ6から発生される磁束を集磁する集磁箔8としては、例えば高透磁率を有するアモルファス磁性体、ファインメット(日立金属製)などが使用される。
【0022】
図5は本発明の実施の形態1におけるマットレス1が備える圧力制御装置7の構成を示すブロック図である。
この圧力制御装置7は、各々のエアセル3に対して空気を吸排気するためのポンプ10と、アクチュエータ19とを備える。ポンプ10は、吸気口と排気口の2口をもっている。また、アクチュエータ19は、ポンプ10による加圧もしくは減圧のいずれか一方のモードを選択する第1の電磁弁11a、11bと、主としてエアセル3の定常状態での内圧を計測するために使用する第2の電磁弁12と、エアセル3に対して個別に設けられた第3の電磁弁13とからなる。
【0023】
上述の流路分配器21は、第3の電磁弁13とマニホールド23とがユニット化されてなり、各エアセル3は、チューブ4を介してマニホールド23に接続され、各チューブ4の途中に第3の電磁弁13が設けられている。また、第2の電磁弁12とマニホールド23との間を接続する配管22の途中には各エアセル3の内圧を計測する圧力検出センサ14が接続されている。
【0024】
さらに、圧力制御装置7は、磁気検出センサ5および圧力検出センサ14からの出力信号をデジタル化して取り込むA/D変換部15と、これらのセンサ5、14の検出出力を取り込んで各エアセル3の内圧を制御する演算制御部16と、この演算制御部16の演算結果に基づいてアクチュエータ19を制御する制御信号をアナログ化して出力するD/A変換部17とを有している。ここで、18b、18c、18dは、D/A変換部17からのリード線であり、それぞれ第3の電磁弁13、第2の電磁弁12、第1の電磁弁11aならびに11bへ配線される。また、18bは、圧力制御装置7と流路分配器21内の第3の電磁弁13とを適当なコネクタによって配線される。
【0025】
図6は、図5に示した圧力制御装置7の一連の制御演算を実施する電気系統の全体のハードウェアの具体的構成を示しており、図5と対比した場合、複数の検出出力を1つのA/D変換部15で読み込むためのマルチプレクサ27と、D/A変換部17から出力される信号を増幅するための電力増幅器28を追記している。
【0026】
そして、上記の圧力制御装置7の演算制御部16に所定の制御プログラムをインストールすることにより、特許請求の範囲における圧力整定機能部、および選択的減圧機能部が構成されている。
【0027】
次に、褥瘡予防のために、個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。なお、以下において符号Sは各処理ステップを意味する。
【0028】
褥瘡予防のために、個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御は、マーカ位置検出手段である磁気検出センサ5の検出出力は利用されず、専ら圧力検出センサ14の検出出力に基づいて各エアセル3の内圧が制御される。
【0029】
すなわち、まず、制御対象であるエアセル3に連結した第3の電磁弁13を開き、かつ第2の電磁弁12を閉じてから所定の時間Tsが経過した時点で圧力検出センサ14によって制御対象である一つのエアセル3の現在の内圧値P(i)を読み込む(S1)。
【0030】
次に、こうして読み込んだ一つのエアセル3の現在の内圧値P(i)を予め設定された目標値Pdと比較する(S2)。ここに、褥瘡予防を図る場合において、エアセル3の内圧の目標値Pdは、身体の圧力分布を考慮して各エアセル3ごとに適切な値が個別に設定されている。例えば、就寝時の身体の体重分布から割り出した各部位ごとの体重を、各エアセル3の表面積で除算して得られる単位エアセルあたりの接触圧に基づいて目標値Pdが設定される。なお、このエアセル3の内圧計測時には、本例の場合、第1の電磁弁11aならびに11bは、空気を大気中へ排出する減圧モードに設定される。
【0031】
そして、制御対象である一つのエアセル3の内圧値P(i)が目標値Pdよりも小さい場合には加圧制御を行う(S3)。すなわち、具体的動作としては、第2、第3の電磁弁12、13を開き、かつ第1の電磁弁11a、11bでポンプ10を加圧モードに切換えることによって、該当エアセル3に対して加圧制御を実施し、再度、S1に戻って、所定時間Tsが経過した時点のエアセル3の現在の内圧値P(i)を読み込んで目標値Pdと比較する。
【0032】
これとは逆に、制御対象である一つのエアセル3の内圧値P(i)が目標値Pdよりも大きい場合は減圧制御を行う(S4)。すなわち、具体的動作としては、第2、第3の電磁弁12、13を開き、かつ第1の電磁弁11a、11bでポンプ10を減圧モードに切換えることによって、該当エアセル3に対して減圧制御を実施し、再度、S1に戻って、所定時間Tsが経過した時点のエアセル3の現在の内圧値P(i)を読み込んで目標値Pdと比較する。
【0033】
そして、現在の内圧値P(i)が目標値Pdの許容範囲(=Pd±α、αは許容マージン)内に達した場合には、該当するエアセル3の圧力制御を完了する(S5)。次いで、全てのエアセル3について目標値への圧力整定が完了したか否かを判定し(S6)、全エアセル3についての処理が完了していれば圧力制御を終了する。一方、すべてのエアセル3について目標値への圧力整定が未完了ならば、制御対象とするエアセル3の番号iを増やして、次のエアセル3の圧力制御に移行するためにS1に戻る。このようにして、全エアセルについて、その内圧が予め設定された目標値になるように圧力制御が行われる。
【0034】
ところで、この実施の形態1のマットレス1において、加減圧時の圧力検出センサ14は、物理的にはポンプの過渡的な吸排気圧を計測しているに過ぎず、エアセル3内の実際の圧力を直接計測しているわけではないので、第2の電磁弁12を閉じた後に圧力検出センサ14で検出されるエアセル3内の圧力が定常状態になるまでにはある程度のタイムラグが生じる。
【0035】
そこで、上記のS1〜S4においてエアセル3の加圧制御あるいは減圧制御を行う際に、圧力整定までに要する時間Tsを考慮し、かつエアセル3の内圧目標値に達するまでの応答速度を調整する重みβを予め設定し、時分割でアクチュエータ19を動作させて加減圧制御することで、エアセル3の内圧を目標値の許容範囲(=Pd±α)内に整定するようにしている。
【0036】
例えば、加圧制御の場合は、図8に示すように、圧力整定までに要する時間Tsと、重みβを予め設定し、圧力検出センサ14の信号が、目標値Pdと重みβとの和で与えられる圧力検出センサ14の上限値を上回った場合には、直ちに加圧制御を中断して、所定時間Tsの経過後にエアセル3の内圧を計測する。
【0037】
一方、エアセルの減圧制御の場合には、加圧制御を行う場合と逆の動作、すなわち図9に示すように、圧力整定までに要する時間Tsと、重みβを予め設定し、圧力検出センサ14の信号が、目標値Pdと重みβとの差で与えられる圧力検出センサ14の下限値を下回った場合には、直ちに減圧制御を中断して、所定時間Tsの経過後にエアセル3の内圧を計測する。
【0038】
このような動作を時分割で繰り返すことによって、各々のエアセル3の内圧が、身体の圧力分布を考慮して予め設定された各目標値の許容範囲内に個別に整定されるため、身体の特定部位のみがマットレス1から高い接触圧を受けるといったことがなくなり、褥瘡予防を図ることができる。
【0039】
なお、各エアセル3の内圧を目標値の許容範囲内に個別に整定する圧力制御では、吸排気圧の上限および下限を規定する重みβを固定としているが、この重みβを可変パラメータとし、例えば、内圧の目標値Pdとの偏差が大きい場合は重みβを大きくし、目標値Pdの近傍に近づくにつれて重みβを小さくしていってもよい。これにより、短時間の内にエアセル3の内圧を目標値の許容範囲内に収束させることができるので、圧力制御の速応性を改善することができる。
【0040】
また、図7のフローチャートに示す圧力制御では、各エアセル3の現在の内圧P(i)を検出するたびに、その都度、当該エアセル3を対象としてその内圧P(i)が目標値の許容範囲(=Pd±α)内になるように整定しているが、これに限らず、例えば全てのエアセル3について現在の内圧を予め計測してそれらのデータを格納した後、現在の内圧P(i)と目標値Pdとの偏差が大きいエアセル3を抽出し、その抽出したエアセル3から優先的に圧力制御を実施してもよい。これにより、エアセルの内圧が高い高接触圧領域を早期に検出して褥瘡の発生を抑えると共に、内圧整定に要する時間を短縮化することもできる。
【0041】
次に、褥瘡緩和のために褥瘡発生部位に対応した特定のエアセル3について選択的に減圧制御を実行するにあたり、接触圧を低減したい褥瘡部位に取り付けられたマーカ6直下に位置するエアセル3を磁気検出センサ5を用いて特定するための原理について説明する。
【0042】
図10に示すように、褥瘡患部もしくは患部近傍に取り付けられマーカ6と磁気検出センサ5との相対位置が変化すると、両者5、6の相対位置に応じて磁気検出センサ5の検出出力(出力電圧)が変化する。
【0043】
すなわち、図11に示すように、磁気検出センサ5の検出出力は、マーカ6が磁気検出センサ5の直上に存在するときに最も高く、マーカ6と磁気検出センサ5の相対的な位置関係がずれるのに伴って磁気検出センサ5の検出出力は次第に小さくなる。
【0044】
そこで、図11に示した特性関係に基づいて、予め磁気検出センサ5の検出出力に対する電圧閾値V0を設定する。この場合の電圧閾値V0は、エアセル3への実装状態や磁気検出センサ5の検出特性等のバラツキを考慮して設定される。そして、この電圧閾値V0を圧力制御装置7の演算制御部16内の図示しないメモリなどに記憶しておく。
【0045】
これによって、接触圧を低減したい褥瘡部位に取り付けられたマーカ6が磁気検出センサ5の直上、ないしその近傍の位置に存在する場合には、磁気検出センサ5の出力電圧が電圧閾値V0を越えるので、これによってマーカ6直下に位置するエアセル3を特定することができ、このようにして特定されたエアセル3を選択的に減圧制御することができる。
【0046】
次に、褥瘡予防のために個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御、ならびに、褥瘡緩和のために褥瘡発生部位に対応した特定のエアセル3についての選択的な減圧制御を一定周期で繰り返して行う場合の全体的な制御動作について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。
【0047】
まず、圧力制御装置7の演算制御部16は、各エアセル3に設けられている各磁気検出センサ5のオフセット量を検出するために、各磁気検出センサ5の出力電圧(i_ms_i)を読み込み、これを基準電圧とする(S11)。
【0048】
次に、就寝者あるいは座りきり者の身体の褥瘡発生部位にマーカ6を取り付け、その人体がマットレス1に就寝あるいは着座する(S12)。このステップは、場合によっては、次のS13の処理後にマーカ6を取り付けてもよい。
【0049】
次いで、個々のエアセル3の内圧が各エアセル3ごとに設定された目標値の許容範囲内(=Pd±α)となるように整定する圧力制御を実施する(S13)。この場合の圧力制御の詳細は、既に図7のフローチャートで示した制御内容と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0050】
続いて、全てのエアセル3を対象として、各磁気検出センサ5で検出された出力電圧(fs_ms_i)を読み込む(S14)。そして、各磁気検出センサ5の検出電圧の絶対値abs(fs_ms_i)とオフセットとなる基準電圧の絶対値abs(i_ms_i)との差分を計算し、この差分を予め設定された電圧閾値V0と比較する(S15)。なお、この電圧閾値V0は、前述のように、図11に示した特性曲線に基づいて設定されている。
【0051】
ここで、接触圧を低減したい褥瘡部位に取り付けられたマーカ6が磁気検出センサ5の直上、ないしその近傍の位置に存在する場合には、検出電圧の絶対値abs(fs_ms_i)とオフセットとなる基準電圧の絶対値abs(i_ms_i)との差分が前述の電圧閾値V0を越えるので、このような電圧閾値V0を越える磁気検出センサ5の検出出力が得られるエアセル3を特定する。なお、ここでは、電圧閾値V0を越える磁気検出センサ5の検出出力が得られる位置にあるエアセル3は一つだけであるので、一つのエアセル3のみが特定される。
【0052】
そして、電圧閾値V0を超えた該当エアセル3を対象として減圧制御を実行する(S16)。また、この場合の減圧制御の仕方は、図7のS4における減圧制御の場合と基本的に同じである。一方、S15で上記条件を満足しない場合にはステップS14へ戻って再度マーカ6に対応した位置にあるエアセル3を特定する。
【0053】
ここで、上記の褥瘡緩和のために褥瘡発生部と対応した位置にあるエアセル3の内圧を下げる選択的な減圧制御を行う場合、特定されたエアセル3の内圧を局所的に低下させると、減圧されたエアセルとその周辺のエアセル間の急な圧力勾配、もしくは高接触圧領域の形成により、他の部位の接触圧が増大して褥瘡が発生するおそれがある。
【0054】
そこで、この実施の形態1では、該当エアセルの減圧制御が終了した時点で、減圧されたエアセル3の内圧はそのままの状態にして、その減圧されたエアセル3の周辺に位置する他のエアセル3を圧力制御する(S17)。この場合、例えば、各エアセル3の目標値Pdに対する重み付け係数kを予め設定しておき、減圧されたエアセル周辺のエアセル3に対してはk・Pdを新たな目標値として圧力制御を行う。これにより、減圧されたエアセル3とその周辺のエアセル3との間に生じる圧力勾配、もしくは高接触圧領域が形成されるのを抑制できるため、他の部位に新たに褥瘡が発生するといった不具合を防止することができる。
【0055】
次に、適正な待ち時間が経過した後(S18)にS14に戻る。なお、この待ち時間は、就寝者あるいは座りきり者の健康状態に応じて、任意に設定できる。これは、人が寝返りを打つなど、身体に取り付けたマーカ6がマットレス1に対して移動する場合があるため、それに対応できるように減圧制御を自動追従する必要があるためである。
【0056】
このように、この実施の形態1では、個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御、ならびに褥瘡発生部位に対応した特定のエアセル3についての選択的な減圧制御を一定周期で繰り返して行うので、褥瘡予防と褥瘡緩和とを同時に達成することができる。
【0057】
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、電圧閾値V0を一つだけ設定しているので、減圧制御対象となるエアセル3は、マーカ6の直下に位置する一つのエアセル3に限られているが、このようにエアセル3を一つだけ減圧制御対象とする場合には褥瘡緩和を十分に図ることが難しい状況が発生する。例えば、マーカ6の位置が隣接するエアセル3の中間にあるような場合、つまり褥瘡発生部位が隣接するエアセル3間にまたがって位置してるような場合には、単一のエアセル3のみを減圧制御するだけでは不十分である。
【0058】
そこで、この実施の形態2では、選択的な減圧制御を実施する制御対象となるエアセル3を、磁気検出センサ5に対するマーカ6の位置に応じて1個、2個、4個という単位で切り替えることで選択的な減圧制御を行うようにしている。
【0059】
すなわち、図13(a)に示すように、マーカ6が磁気検出センサ5の直上もしくはその近傍に存在する場合には、減圧制御対象となるエアセル3を1個とする。また、同図(b)に示すように、マーカ6が互いに隣接する左右2つまたは上下2つのエアセル間に存在している場合には、減圧制御対象となるエアセル3を2個とする。また、同図(c)に示すように、マーカ6が互いに隣接する4個のエアセル3の中央付近に存在している場合には、減圧制御対象となるエアセル3を4個とする。なお、選択的な減圧制御対象となるエアセル3を最大で4個としているのは、褥瘡の大きさを最大で数センチメートル程度と仮定しているためであるが、これに限らず、それ以上の数のエアセルを減圧制御対象とすることも可能である。
【0060】
そして、前述のごとく、マーカ6と磁気検出センサ5との相対位置に対する磁気検出センサ5の検出出力(出力電圧)の関係は、図14に示す特性を示すので、磁気検出センサ5に対するマーカ6の位置が図13(a)、(b)、(c)に示した状態にあると、磁気検出センサ5の出力電圧もこの図13(a)→(b)→(c)の順に次第に低下する。
【0061】
したがって、例えば、複数個の電圧閾値V1、V2、V3を設定し、磁気検出センサ5の電圧出力が第1の電圧閾値V1を越えた場合には、褥瘡部位に取り付けたマーカ6の位置が図13(a)に示す状態にあるものと判断して1つのエアセル3を選択的に減圧制御する。また、第2の電圧閾値V2を越えて第1の電圧閾値V1以下であれば、マーカ6の位置が図13(b)に示す状態にあるものと判断して2つのエアセル3を選択的に減圧制御する。また、第3の電圧閾値V3を越えて第2の電圧閾値V2以下であれば、マーカ6の位置が図13(c)に示す状態にあるものと判断して4つのエアセル3を選択的に減圧制御する。さらに、磁気検出センサ5の電圧出力が第3の電圧閾値V3以下であれば、マーカ6なしと判断して減圧制御を実施しないようにする。
【0062】
次に、この実施の形態2において、褥瘡予防のために個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御、ならびに、褥瘡緩和のために褥瘡発生部位に対応した特定のエアセル3についての選択的な減圧制御を一定周期で繰り返して行う場合の全体的な制御動作について、図15に示すフローチャートを参照して説明する。この場合、選択的な減圧制御を行う制御対象となるエアセル3の数は、マーカ6と磁気検出センサ5との相対位置の違いによって、図13(a)〜(c)に示したように1個、2個、4個のいずれかに選択される。
【0063】
まず、圧力制御装置7の演算制御部16は、各エアセル3に設けられている各磁気検出センサ5のオフセット量を検出するために、各磁気検出センサ5の出力電圧(i_ms_i)を読み込み、これを基準電圧とし(S11)、次に、就寝者あるいは座りきり者の身体の褥瘡発生部位またはその近傍にマーカ6を取り付け、その人体がマットレス1に就寝あるいは着座する(S12)。そして、個々のエアセル3の内圧が各エアセル3ごとに設定された目標値の許容範囲内(=Pd±α)となるように圧力を整定する圧力制御を実施する(S13)。続いて、全てのエアセル3を対象として、各磁気検出センサ5で検出された出力電圧(fs_ms_i)を個々に読み込む(S14)。ここまでの制御動作は、図12のフローチャートに示したS11〜S14の内容と同じである。
【0064】
次に、各磁気検出センサ5の検出電圧の絶対値abs(fs_ms_i)とオフセットとなる基準電圧の絶対値abs(i_ms_i)との差分を計算し、この差分を予め設定された電圧閾値V1と比較する(S21)。なお、この電圧閾値V1は、図14に示した特性曲線に基づいて設定されたものである。
【0065】
ここで、図13(a)に示したようにマーカ6が磁気検出センサ5の直上、ないしその近傍の位置に存在する場合には、検出電圧の絶対値abs(fs_ms_i)とオフセットとなる基準電圧の絶対値abs(i_ms_i)との差分は電圧閾値V1を越えるので、このような電圧閾値V1を越える検出出力が得られるエアセル3を抽出する。ここでは電圧閾値V1を越える検出出力が得られるエアセル3は1つだけなので、この1つのエアセル3を対象として減圧制御を実行する(S22)。
【0066】
一方、S21において上記差分が電圧閾値V1を越えない場合には、引き続いて、互いに隣接する4つのエアセル3を単位として計測対象とし、各磁気検出センサ5の出力電圧の差分が電圧閾値V2を超えV1以下となる検出出力が得られるエアセル3を調べて(S23)、この条件に該当するエアセル3を抽出する。ここでは差分がV2を越えV1以下となる検出出力が得られるのは図13(b)に示す状態にあるときなので、互いに隣接する2個のエアセル3を対象として減圧制御を実行する(S24)。
【0067】
一方、S23で各磁気検出センサ5の出力電圧の差分がV2を超えV1以下となる検出出力が得られるエアセル3が存在しない場合には、次に、互いに隣接する4つのエアセル3を単位として計測対象とし、各磁気検出センサ5の出力電圧の差分が電圧閾値V3を超えV2以下となる検出出力が得られるエアセル3を調べて(S25)、この条件に該当するエアセル3を抽出する。ここでは差分がV3を越えV2以下となる検出出力が得られるのは図13(c)に示す状態にあるときなので、互いに隣接する4個のエアセル3を対象として減圧制御を実行する(S26)。
【0068】
さらに、S25で各磁気検出センサ5の出力電圧の差分がV3を超えV2以下となる検出出力が得られるエアセル3が存在しない場合には、マーカ6が存在せず減圧制御対象となるエアセル3は無しと判断し、減圧制御は実行しない(S27)。
【0069】
そして、S22、S24、S26での減圧制御、またはS27での非減圧制御が終了した時点で、減圧されたエアセル3の内圧はそのままの状態にして、その周辺に位置する他のエアセル3の圧力制御を行う(S28)。この場合の圧力制御の動作は、図12のフローチャートに示したS17の内容と同じである。これにより、減圧されたエアセル3とその周辺のエアセル3との間に生じる圧力勾配、もしくは高接触圧領域が形成されるのを抑制できるため、褥瘡緩和した部位を除く他の部位に新たに褥瘡が発生するといった不具合を防止することができる。
【0070】
次に、適正な待ち時間が経過した後(S29)にS14に戻る。なお、この待ち時間は、就寝者あるいは座りきり者の健康状態に応じて、任意に設定できる。これは、前述のように、人が寝返りを打つなど、身体に取り付けたマーカ6がマットレス1に対して移動する場合があるため、それに対応できるように減圧制御を自動追従する必要があるためである。
【0071】
以上のように、この実施の形態2では、マーカ6の検出位置に応じて減圧制御対象となるエアセル3の個数を切り替えるので、実施の形態1に比べて一層褥瘡緩和を図ることができる。
【0072】
実施の形態3.
上記の実施の形態1、2では、各エアセル3の内圧を目標値に整定させる際、各エアセル3の現在の内圧P(i)を検出すると、引き続いて、当該エアセル3を対象としてその内圧P(i)が目標値の許容範囲内になるように逐次圧力制御を実施している。
【0073】
これに対して、この実施の形態3では、全エアセル3を対象として現在の個々の内圧を計測してそのデータを格納した後、現在の内圧P(i)と目標値Pdとの偏差が大きいエアセル群を抽出する。そして、その抽出したエアセル群を対象として同時に加圧ないし減圧制御を実施する。
【0074】
例えば、目標値に対して現在検出される内圧が低くて加圧対象となるエアセル群については、そのエアセル群に連結されている第3の電磁弁13を同時に開き、かつ第2の電磁弁12を閉じて加圧対象のエアセル群の内圧を計測する。この場合に計測されている加圧対象のエアセル群の内圧は、一定時間後に一定値となるので、次の段階では、第2の電磁弁12を開き、加圧対象のエアセル群に含まれるエアセル3について、エアセル群に直結された第3の電磁弁13を同時に開き、圧力制御をしてエアセル群の内圧が目標値の許容範囲になるように整定させる。また、逆に目標値に対して現在検出されている内圧が高くて減圧対象となるエアセル群に対しても、これと同様な方法で内圧が目標値の許容範囲内になるように整定させる。
【0075】
このようにすれば、実施の形態1、2のように、各エアセル3の内圧を目標値に整定させる際、各エアセル3の現在の内圧P(i)を検出するたびに、引き続いて、当該エアセル3を対象としてその内圧P(i)が目標値の許容範囲内になるように逐次圧力を整定する場合に比べて、複数のエアセルを同時に圧力制御するので、圧力制御による内圧整定に要する時間を短縮化することができる。
【0076】
実施の形態4.
上記の実施の形態1では、エアセル3の上面に設けた凹部3aに磁気検出センサ5を配置しているが、この実施の形態4では、図16および図17に示すように、互いに隣接するエアセル3の角部の突き合せ箇所に磁気検出センサ5を配置している。すなわち、互いに隣接する4つのエアセル3の突き合せ箇所にできる隙間部分を利用して磁気検出センサ5が配置されている。
【0077】
このような位置に磁気検出センサ5を設置するためには、例えば、可撓性の薄いシート(例えばテフロン(登録商標)シート)20を適用し、このシート20の下面に磁気検出センサ5を接着固定し、このシート20をクッション材2とエアセル3との間に挟み込んで、各磁気検出センサ5を各エアセル3の突き合せ箇所にできた隙間部分に装着する。
【0078】
このように、シート20を利用して磁気検出センサ5を取り付けるようにすれば、磁気検出センサ5を圧力制御装置7に電気的に接続するリード線18aをシート20上に配線することができるため、磁気検出センサ5の配線と圧力制御に利用するチューブ4とをエアセル3を上下に挟むように分離して構成することができる。このため、リード線18aやチューブ4の確保が容易になり構成を簡素化することができる。また、エアセル3上面に凹部3aを設ける必要もないため、エアセル3の製作も容易になる。さらにまた、エアセル3の隙間部分を利用して集磁のための板等を拡大して設置できるので、マーカ6の検出性能を向上することが可能となる。
なお、このようなシート20を用いずに、上側のクッション材2の下面のエアセル3の突き合せ箇所に対応する位置に予め磁気検出センサ5を直接接着することも可能である。
【0079】
実施の形態5.
上記の実施の形態1では、個々のエアセル3について1つの磁気検出センサ5を配置している。この構成の場合、使用する磁気検出センサ5の性能やマーカ6の性能等によっては、互いに隣接するエアセル3の間にマーカ6が位置したときには、磁気検出センサ5の検出出力が小さくなってマーカ6の位置を精度良く特定できない場合がある。
【0080】
そこで、この実施の形態5では、図18に示すように、各エアセルの上面に2つの磁気検出センサ5a、5bを設けている。そして、互いに隣接するエアセル3間で磁気検出センサ5a、5bの縦横の配置状態が変わるように取り付けるとともに、各エアセル3ごとに磁気検出センサ5a、5bの出力を加算して圧力制御装置7に送出するように構成されている。
【0081】
このように、各エアセル3について2つの磁気検出センサ5a、5bを縦横の配置状態が変わるように設置し、かつ、両センサ5a、5bの加算出力を用いることで、実施の形態1、2の場合よりもさらにマーカ6の検出性能を向上させることができる。
なお、各エアセル3に対する磁気検出センサの数は2つに限るものではなく、これよりも多い数の磁気検出センサを設置して加算出力を得るようにすることも可能である。
【0082】
実施の形態6.
この実施の形態6におけるマットレス1の全体構成は図1ないし図6に示した実施の形態1の場合と同じであるが、この実施の形態6の特徴として、圧力制御装置7の演算制御部16は、エアセル3の圧力制御前あるいは後に圧力検出センサ14の検出出力P(i)を読み込んで定常状態の内圧を一定時間にわたって計測し、その内圧が徐々に低下するか否かを判断する。そして、定常状態の内圧が徐々に低下するときには、エアセル3あるいはチューブ4や配管22等に空気漏れ等の異常が発生しているものと判断する。
【0083】
また、圧力制御装置7の演算制御部16は、マーカ6がマットレス1上に存在しない状態において、全磁気検出センサ5からの検出出力を読み込み、初期調整時の出力電圧に対して明らかに差異が大きい検出出力が存在する場合には、該当する磁気検出センサ5の故障あるいはリード線18aの断線などの異常が発生しているものと判断する。
【0084】
そして、圧力制御装置7は、マットレス1の構成要素の異常を検知したときには、これに応じてブザーを鳴らしたりランプ等を点滅したり、あるいはディスプレイを点滅して異常発生を外部に報知する。これにより、ユーザに構成要素の交換を促すことができる。
【0085】
なお、マットレス1に設けたディスプレイに上記のような異常発生を報知するだけでなく、圧力整定状態や選択的減圧状態を表示して、介護者等に視覚的に圧力制御状態を知らせるようにすることも可能である。
【0086】
実施の形態7.
上記の各実施の形態1〜5では、褥瘡予防や褥瘡緩和を行う場合の圧力制御について説明したが、この実施の形態7では、エアセル3の内圧を特定のパターンによって圧力制御することによって、就寝者および座りきり者に対してマッサージ効果を促すようにしたものである。例えば、圧力制御装置7は、全エアセル3の内圧を予め計測して内圧の高いエアセル3を検出し、それらに該当するエアセル3を加圧あるいは減圧することによって、当該エアセル3に接触している身体部位の血行を促進する。
【0087】
このマッサージ機能は、予め内圧の上限値と下限値の範囲内で、圧力制御をかけることによってエアセル3の膨張/収縮を実現してもよいが、特にエアセルの厳密な圧力調整を必要としないならば、例えば圧力検出センサ14の出力がPd+βとなるまで加圧(つまり膨張)して、次に圧力検出センサ14の出力がPd−βとなるまで減圧(つまり収縮)する一連の動作を、任意のエアセルに実行させるという簡易的な動作を行わせてもよい。
【0088】
上記の各実施の形態1〜7について、次の変形例や応用例を考えることができる。
(1)上記の各実施の形態1〜5では、褥瘡予防や褥瘡緩和を行う場合の圧力制御について説明したが、本発明は、このような褥瘡予防や褥瘡緩和のための圧力制御を行う場合に限定されるものではなく、身体の特定部位がマットレス1から高い接触圧を受けるのを低減したい場合にも広く適用することが可能である。例えば、手術を受けた患者の手術部位が、マットレス1から高い接触圧を受けるのを防止したい場合にも適用することができる。
【0089】
(2)上記の各実施の形態1〜7では、マーカ6を1つだけ使用していることを前提としているが、患部もしくは患部近傍にマーカ6を複数個を設置してもよい。この場合にも、体位変換等によってマーカ6が移動した場合でも、所定の周期で磁気検出センサ5の検出出力を検索し、それから再度、選択的な減圧制御に移行することができる。さらに、図12、図15に示したフローチャートには記載していないが、一度選択的に減圧制御されたエアセル3については、マーカ6の移動によって圧力制御対象となるエアセル3が変化した場合には、元の内圧の目標値Pdへ戻すようにしてもよい。
【0090】
(3)また、上記の各実施の形態1〜7では、磁気を利用してマーカ6の位置を検出しているが、これに限らず、例えば、各エアセル3ごとに高周波コイルを設ける一方、マーカ6としてコイルとコンデンサとからなる並列共振回路を用いることもできる。この構成の場合には、マーカ6を構成する並列共振回路がエアセル3のコイルに接近すると、並列共振回路による電気エネルギの共振吸収による高周波電圧の減衰変化により、各エアセル3に設けたコイルの両端電圧の変化を検出できるので、磁気を利用する場合と同様に各エアセル3に対するマーカ6の位置を特定することができる。
【0091】
(4)上記の各実施の形態1〜7では、エアセル3がシリコン樹脂製である場合を示したが、内圧に追従して容積を可変する柔軟性のある素材であればこれに限定されるものではない。また、ここでのエアセル3は接触面が立方体状のものを示したが、エアセル3の平面形状を六角形などの緻密性のある他の形状を採用することもできる。これにより、マトリックス配置によってデッドスペースがなくなるので、エアセル3の相互のずれを抑制することができる。さらには、伸びのあるシーツとの併用によってずれを抑制してもよい。
【0092】
(5)上記の各実施の形態1〜7では、磁気検出センサ5の上面にシート磁石6からの磁束の集磁効果を促進する集磁箔8を設置した場合を示したが、さらに磁気検出センサ5の検出出力を増加するためには、図19に示すように、磁気検出センサ5の上下に集磁板9を複合的に設置してもよい。この場合の集磁板9としては、高透磁率を有するフェライト、パーマロイなどがあげられる。
【0093】
(6)本発明における実施の形態すべてにおいて、体位変換時、寝衣やオムツ交換時等の処置時には、介護に支障をきたさぬように全エアセル3の内圧を一律に増大することもできる。
【0094】
(7)本発明はベッドに設置されるマットレスに限定されるものではなく、例えば、椅子を構成するマットレスについても本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマットレスを示す断面図である。
【図2】同マットレスを構成するエアセルの配列状態を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるマットレスのクッション材を除いた全体構成を示す斜視図である。
【図4】同マットレスを構成するクッション材とエアセルを拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるマットレスが備える圧力制御装置の構成要素を示すブロック図である。
【図6】同圧力制御装置の電気系統のハードウェアを示す構成図である。
【図7】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、個々のエアセルの内圧を目標値に整定させる圧力制御動作の説明に供するフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、エアセルを加圧制御する時の電磁弁の挙動と圧力検出センサの出力波形を示す特性図である。
【図9】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、エアセルを減圧制御する時の電磁弁の挙動と圧力検出センサの出力波形を示す特性図である。
【図10】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、エアセル上部のマーカ位置と磁気検出センサとの相対的な位置関係を示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、エアセル上部のマーカ位置と磁気検出センサとの相対位置の変化に伴う磁気検出センサの出力電圧の関係を示す特性図である。
【図12】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、褥瘡予防のための圧力制御と褥瘡緩和のための選択的な減圧制御の処理内容の説明に供するフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2のマットレスにおいて、エアセル上部のマーカ位置と磁気検出センサとの相対的な位置関係を示す平面図である。
【図14】本発明の実施の形態2のマットレスにおいて、エアセル上部のマーカ位置と磁気検出センサとの相対位置の変化に伴う磁気検出センサの出力電圧の関係を示す特性図である。
【図15】本発明の実施の形態2のマットレスにおいて、褥瘡予防のための圧力制御と褥瘡緩和のための選択的な減圧制御の処理内容の説明に供するフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態4のマットレスを示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態4のマットレスにおいて、隣接するエアセルの突き合わせ部分に磁気検出センサを配置した状態を示す平面図である。
【図18】本発明の実施の形態5のマットレスにおいて、各エアセルに複数の磁気検出センサを配置した状態を示す平面図である。
【図19】本発明の他の実施の形態において、一つのエアセルに対して磁気検出センサ、集磁箔、集磁板を配置した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 マットレス、2 クッション材、3 エアセル、3a 凹部、4 チューブ、
5,5a,5b 磁気検出センサ、6 マーカ、7 圧力制御装置、8 集磁箔、
9 集磁板、10 ポンプ、11a,11b 第1の電磁弁、12 第2の電磁弁、
13 第3の電磁弁、14 圧力検出センサ、15 A/D変換部、16 演算制御部、
17 D/A変換部、18a,18b,18c,18d リード線、
19 アクチュエータ、20 シート、21 流路分配器、22 配管、
23 マニホールド、27 マルチプレクサ、28 電力増幅器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドや椅子などを利用する場合の身体への接触圧力を調整して接触圧分散を有効に図ることが可能なマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、老人ホーム等に収容される寝たきりの高齢者や、病院における術後患者などは、就寝状態が長く継続するために褥瘡(床擦れ)が発生し易く、褥瘡が一度発生すると治りにくいため、褥瘡予防が強く望まれている。
【0003】
褥瘡予防のためには、介護者が就寝者を抱きかかえるなどして就寝姿勢を変更することである程度は対処可能であるが、頻繁に就寝姿勢を変更することは、就寝者に余分な負担を強いるだけでなく、介護者にも過剰な労力を要することになる。このため、従来より、人手に頼り切りにならずに褥瘡発生を防止するための種々の褥瘡防止装置が提案されている。
【0004】
従来のこのような褥瘡防止装置として、例えば、加圧/減圧の系統の異なる2種のエアセルを長手方向に沿って配置し、就寝者の生体情報から推定演算される睡眠段階情報に基づいて、各エアセルを交互に加圧および減圧制御するようにした就寝用具制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の従来技術として、例えば、直方形状をした左右一対のエアセルを長手方向に沿って多数配列するとともに、各エアセルには接触圧を検出する感圧センサを個別に設け、これらの感圧センサで測定される圧力検出信号に基づいて各エアセルの空気量を制御することで、就寝者の身体各部に加わる接触圧を時間的に平均化して褥瘡発生を防止するようにした装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−229875号公報(第10頁、図1)
【特許文献2】特開2000−189472号公報(第12頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近ではQOL(Quality Of Life)向上の高まりにより、褥瘡発生を防止するだけでなく、就寝者の身体に既に褥瘡が発生した場合、この褥瘡発生部位が寝具から受ける接触圧を低減して褥瘡緩和を図り、就寝者を快適に就寝させたいとの要請も強くなっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の装置は、加圧/減圧するエアセルが2系統に分かれている構成であるため、人体の複雑な形状凹凸に追随した接触圧分散を精度良く行うことが難しい。しかも、仮に褥瘡が発生した特定部位に対してエアセルを減圧することで高い接触圧を受けないようにできたとしても、減圧したエアセルの周辺に位置するエアセルとの間に生じる圧力勾配を考慮していないため、減圧したエアセル以外のエアセルに新たに生じる高接触圧領域の形成によって、現在褥瘡を生じている部位以外の部位に褥瘡を誘発する恐れがある。
【0009】
また、褥瘡が発生し易い部位は、骨突出部などのように局部的に高い接触圧を受けるところであるが、特許文献2記載の装置のように、就寝者の身体各部位がマットレス面から常に時間的に平均化された接触圧を受けるように周期的にエアセルを加減圧制御するだけでは、骨突出部等のように局部的に高い接触圧を受ける部位の褥瘡発生を有効に防止することが難しい。ましてや、既に褥瘡が発生した部位の接触圧の緩和を図ることは極めて困難である。
【0010】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、身体に特別な高接触圧部位が発生しないように、エアセル内の圧力制御によって接触圧分散を促して褥瘡予防を図るとともに、既に褥瘡が発生している場合には、その褥瘡発生部位を簡単な構成でもって精度良く特定して当該部位に加わる接触圧を低減することで褥瘡緩和を図り、QOLを向上させることができるマットレスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のマットレスは、複数のエアセルと、身体の患部またはその近辺に取り付けられるマーカと、上記各エアセルに対するマーカの位置を検出するマーカ位置検出手段と、上記各エアセルの内圧を検出する圧力検出センサと、上記圧力検出センサで検出されたエアセルの内圧および上記マーカ位置検出手段で検出されたマーカ位置の情報の少なくとも一方の検出出力に基づいて各々のエアセルに対して空気を吸排気してエアセルの内圧を制御する圧力制御装置とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマットレスは、圧力検出センサによって全てのエアセルの内圧を計測することによって、各エアセルの内圧を人体の圧力分布を考慮して予め設定された目標値へ整定させるので、身体の特定部位が高い接触圧を受けるのが抑制され、褥瘡予防を図ることができる。
【0013】
また、既に褥瘡が発生している場合には、その褥瘡が発生している患部にマーカを取り付け、このマーカをマーカ位置検出手段によって検出して当該患部における接触圧を低減するようにしているので、褥瘡緩和を図ることができる。
このように、本発明のマットレスは、褥瘡予防および褥瘡緩和の双方を達成できるため、QOLを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるマットレスを示す断面図、図2は同マットレスを構成するエアセルの配列を示す平面図、図3は同マットレスのクッション材を除いた全体構成を示す斜視図、図4はマットレスを構成するクッション材とエアセルを拡大して示す断面図である。
【0015】
この実施の形態1のマットレス1は、例えば発泡ウレタンなどの低反発性素材からなる上下一対のクッション材2と、このクッション材2の間に配置された多数個のエアセル3とを備える。
【0016】
各エアセル3は、シリコン樹脂からなる直方体状のもので、その内部は空気が注入できるように中空に形成されており、これらのエアセル3がクッション材2の長手方向および短手方向に沿ってそれぞれ複数個づつ平面状に配置されている。具体例として、エアセル3を構成するシリコン樹脂の肉厚は2mmt、外形寸法は60mmW×60mmL×50mmHであり、これらの各エアセル3がクッション材2の長手方向に6個、短手方向に7個、それぞれ平面状に配置される。
【0017】
このように、本発明における個々のエアセル3の上面の寸法は従来に比べて十分に小さいので、身体の各部位に接触するエアセル3の内圧をより細かく制御することができるため、身体に加わる負荷を少なくできる効果がある。
【0018】
そして、各エアセル3には、エアセル3と同じ材質でできた吸排気用のチューブ4の一端が個別に接続され、各チューブ4の他端は図示しないコネクタを介して流路分配器21に接続されている。また、各々のエアセル3の上面には凹部3aが形成され、この凹部3a内に後述するマーカ6の位置を検出するマーカ位置検出手段としての磁気検出センサ5が接着固定されている。さらに、磁気検出センサ5の上面には集磁効果を促進する集磁箔8が設置されている。そして、各磁気検出センサ5は、リード線18aを介して上記の圧力制御装置7に接続されている。
【0019】
磁気検出センサ5は、ホール素子、磁気抵抗素子、ピックアップコイルなどが適用される。特に、温度補償回路、オフセット補償回路、増幅回路等が一体となり1チップで構成されたホールICが小型で使い易く、例えばA3515LUA(アレグロ社製)などを好適に使用できる。
【0020】
なお、この実施の形態1では、エアセル3やクッション材2の上面に余分な凹凸が生じないように、磁気検出センサ5をエアセル3の凹部3a内に収納しているが、磁気検出センサ5が薄型であって、設置後にエアセル3やクッション材2の表面に凹凸が生じなければ凹部3aを省略してもよい。また、外付け回路として、増幅回路、フィルタ回路を追加してもよい。
【0021】
また、就寝者あるいは座りきり者の身体に生じた褥瘡発生部が受ける接触圧を選択的に低減したい場合には、褥瘡発生箇所にマーカ6が取り付けられる。この場合のマーカ6としては、例えば、磁気粉末を樹脂に混合してシート状に成形してなるシート磁石が使用される。磁気粉末としては、例えば、Sm−Co、Nd−Fe−B、Sm−Fe−N、フェライトなどがある。また、このマーカ6から発生される磁束を集磁する集磁箔8としては、例えば高透磁率を有するアモルファス磁性体、ファインメット(日立金属製)などが使用される。
【0022】
図5は本発明の実施の形態1におけるマットレス1が備える圧力制御装置7の構成を示すブロック図である。
この圧力制御装置7は、各々のエアセル3に対して空気を吸排気するためのポンプ10と、アクチュエータ19とを備える。ポンプ10は、吸気口と排気口の2口をもっている。また、アクチュエータ19は、ポンプ10による加圧もしくは減圧のいずれか一方のモードを選択する第1の電磁弁11a、11bと、主としてエアセル3の定常状態での内圧を計測するために使用する第2の電磁弁12と、エアセル3に対して個別に設けられた第3の電磁弁13とからなる。
【0023】
上述の流路分配器21は、第3の電磁弁13とマニホールド23とがユニット化されてなり、各エアセル3は、チューブ4を介してマニホールド23に接続され、各チューブ4の途中に第3の電磁弁13が設けられている。また、第2の電磁弁12とマニホールド23との間を接続する配管22の途中には各エアセル3の内圧を計測する圧力検出センサ14が接続されている。
【0024】
さらに、圧力制御装置7は、磁気検出センサ5および圧力検出センサ14からの出力信号をデジタル化して取り込むA/D変換部15と、これらのセンサ5、14の検出出力を取り込んで各エアセル3の内圧を制御する演算制御部16と、この演算制御部16の演算結果に基づいてアクチュエータ19を制御する制御信号をアナログ化して出力するD/A変換部17とを有している。ここで、18b、18c、18dは、D/A変換部17からのリード線であり、それぞれ第3の電磁弁13、第2の電磁弁12、第1の電磁弁11aならびに11bへ配線される。また、18bは、圧力制御装置7と流路分配器21内の第3の電磁弁13とを適当なコネクタによって配線される。
【0025】
図6は、図5に示した圧力制御装置7の一連の制御演算を実施する電気系統の全体のハードウェアの具体的構成を示しており、図5と対比した場合、複数の検出出力を1つのA/D変換部15で読み込むためのマルチプレクサ27と、D/A変換部17から出力される信号を増幅するための電力増幅器28を追記している。
【0026】
そして、上記の圧力制御装置7の演算制御部16に所定の制御プログラムをインストールすることにより、特許請求の範囲における圧力整定機能部、および選択的減圧機能部が構成されている。
【0027】
次に、褥瘡予防のために、個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。なお、以下において符号Sは各処理ステップを意味する。
【0028】
褥瘡予防のために、個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御は、マーカ位置検出手段である磁気検出センサ5の検出出力は利用されず、専ら圧力検出センサ14の検出出力に基づいて各エアセル3の内圧が制御される。
【0029】
すなわち、まず、制御対象であるエアセル3に連結した第3の電磁弁13を開き、かつ第2の電磁弁12を閉じてから所定の時間Tsが経過した時点で圧力検出センサ14によって制御対象である一つのエアセル3の現在の内圧値P(i)を読み込む(S1)。
【0030】
次に、こうして読み込んだ一つのエアセル3の現在の内圧値P(i)を予め設定された目標値Pdと比較する(S2)。ここに、褥瘡予防を図る場合において、エアセル3の内圧の目標値Pdは、身体の圧力分布を考慮して各エアセル3ごとに適切な値が個別に設定されている。例えば、就寝時の身体の体重分布から割り出した各部位ごとの体重を、各エアセル3の表面積で除算して得られる単位エアセルあたりの接触圧に基づいて目標値Pdが設定される。なお、このエアセル3の内圧計測時には、本例の場合、第1の電磁弁11aならびに11bは、空気を大気中へ排出する減圧モードに設定される。
【0031】
そして、制御対象である一つのエアセル3の内圧値P(i)が目標値Pdよりも小さい場合には加圧制御を行う(S3)。すなわち、具体的動作としては、第2、第3の電磁弁12、13を開き、かつ第1の電磁弁11a、11bでポンプ10を加圧モードに切換えることによって、該当エアセル3に対して加圧制御を実施し、再度、S1に戻って、所定時間Tsが経過した時点のエアセル3の現在の内圧値P(i)を読み込んで目標値Pdと比較する。
【0032】
これとは逆に、制御対象である一つのエアセル3の内圧値P(i)が目標値Pdよりも大きい場合は減圧制御を行う(S4)。すなわち、具体的動作としては、第2、第3の電磁弁12、13を開き、かつ第1の電磁弁11a、11bでポンプ10を減圧モードに切換えることによって、該当エアセル3に対して減圧制御を実施し、再度、S1に戻って、所定時間Tsが経過した時点のエアセル3の現在の内圧値P(i)を読み込んで目標値Pdと比較する。
【0033】
そして、現在の内圧値P(i)が目標値Pdの許容範囲(=Pd±α、αは許容マージン)内に達した場合には、該当するエアセル3の圧力制御を完了する(S5)。次いで、全てのエアセル3について目標値への圧力整定が完了したか否かを判定し(S6)、全エアセル3についての処理が完了していれば圧力制御を終了する。一方、すべてのエアセル3について目標値への圧力整定が未完了ならば、制御対象とするエアセル3の番号iを増やして、次のエアセル3の圧力制御に移行するためにS1に戻る。このようにして、全エアセルについて、その内圧が予め設定された目標値になるように圧力制御が行われる。
【0034】
ところで、この実施の形態1のマットレス1において、加減圧時の圧力検出センサ14は、物理的にはポンプの過渡的な吸排気圧を計測しているに過ぎず、エアセル3内の実際の圧力を直接計測しているわけではないので、第2の電磁弁12を閉じた後に圧力検出センサ14で検出されるエアセル3内の圧力が定常状態になるまでにはある程度のタイムラグが生じる。
【0035】
そこで、上記のS1〜S4においてエアセル3の加圧制御あるいは減圧制御を行う際に、圧力整定までに要する時間Tsを考慮し、かつエアセル3の内圧目標値に達するまでの応答速度を調整する重みβを予め設定し、時分割でアクチュエータ19を動作させて加減圧制御することで、エアセル3の内圧を目標値の許容範囲(=Pd±α)内に整定するようにしている。
【0036】
例えば、加圧制御の場合は、図8に示すように、圧力整定までに要する時間Tsと、重みβを予め設定し、圧力検出センサ14の信号が、目標値Pdと重みβとの和で与えられる圧力検出センサ14の上限値を上回った場合には、直ちに加圧制御を中断して、所定時間Tsの経過後にエアセル3の内圧を計測する。
【0037】
一方、エアセルの減圧制御の場合には、加圧制御を行う場合と逆の動作、すなわち図9に示すように、圧力整定までに要する時間Tsと、重みβを予め設定し、圧力検出センサ14の信号が、目標値Pdと重みβとの差で与えられる圧力検出センサ14の下限値を下回った場合には、直ちに減圧制御を中断して、所定時間Tsの経過後にエアセル3の内圧を計測する。
【0038】
このような動作を時分割で繰り返すことによって、各々のエアセル3の内圧が、身体の圧力分布を考慮して予め設定された各目標値の許容範囲内に個別に整定されるため、身体の特定部位のみがマットレス1から高い接触圧を受けるといったことがなくなり、褥瘡予防を図ることができる。
【0039】
なお、各エアセル3の内圧を目標値の許容範囲内に個別に整定する圧力制御では、吸排気圧の上限および下限を規定する重みβを固定としているが、この重みβを可変パラメータとし、例えば、内圧の目標値Pdとの偏差が大きい場合は重みβを大きくし、目標値Pdの近傍に近づくにつれて重みβを小さくしていってもよい。これにより、短時間の内にエアセル3の内圧を目標値の許容範囲内に収束させることができるので、圧力制御の速応性を改善することができる。
【0040】
また、図7のフローチャートに示す圧力制御では、各エアセル3の現在の内圧P(i)を検出するたびに、その都度、当該エアセル3を対象としてその内圧P(i)が目標値の許容範囲(=Pd±α)内になるように整定しているが、これに限らず、例えば全てのエアセル3について現在の内圧を予め計測してそれらのデータを格納した後、現在の内圧P(i)と目標値Pdとの偏差が大きいエアセル3を抽出し、その抽出したエアセル3から優先的に圧力制御を実施してもよい。これにより、エアセルの内圧が高い高接触圧領域を早期に検出して褥瘡の発生を抑えると共に、内圧整定に要する時間を短縮化することもできる。
【0041】
次に、褥瘡緩和のために褥瘡発生部位に対応した特定のエアセル3について選択的に減圧制御を実行するにあたり、接触圧を低減したい褥瘡部位に取り付けられたマーカ6直下に位置するエアセル3を磁気検出センサ5を用いて特定するための原理について説明する。
【0042】
図10に示すように、褥瘡患部もしくは患部近傍に取り付けられマーカ6と磁気検出センサ5との相対位置が変化すると、両者5、6の相対位置に応じて磁気検出センサ5の検出出力(出力電圧)が変化する。
【0043】
すなわち、図11に示すように、磁気検出センサ5の検出出力は、マーカ6が磁気検出センサ5の直上に存在するときに最も高く、マーカ6と磁気検出センサ5の相対的な位置関係がずれるのに伴って磁気検出センサ5の検出出力は次第に小さくなる。
【0044】
そこで、図11に示した特性関係に基づいて、予め磁気検出センサ5の検出出力に対する電圧閾値V0を設定する。この場合の電圧閾値V0は、エアセル3への実装状態や磁気検出センサ5の検出特性等のバラツキを考慮して設定される。そして、この電圧閾値V0を圧力制御装置7の演算制御部16内の図示しないメモリなどに記憶しておく。
【0045】
これによって、接触圧を低減したい褥瘡部位に取り付けられたマーカ6が磁気検出センサ5の直上、ないしその近傍の位置に存在する場合には、磁気検出センサ5の出力電圧が電圧閾値V0を越えるので、これによってマーカ6直下に位置するエアセル3を特定することができ、このようにして特定されたエアセル3を選択的に減圧制御することができる。
【0046】
次に、褥瘡予防のために個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御、ならびに、褥瘡緩和のために褥瘡発生部位に対応した特定のエアセル3についての選択的な減圧制御を一定周期で繰り返して行う場合の全体的な制御動作について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。
【0047】
まず、圧力制御装置7の演算制御部16は、各エアセル3に設けられている各磁気検出センサ5のオフセット量を検出するために、各磁気検出センサ5の出力電圧(i_ms_i)を読み込み、これを基準電圧とする(S11)。
【0048】
次に、就寝者あるいは座りきり者の身体の褥瘡発生部位にマーカ6を取り付け、その人体がマットレス1に就寝あるいは着座する(S12)。このステップは、場合によっては、次のS13の処理後にマーカ6を取り付けてもよい。
【0049】
次いで、個々のエアセル3の内圧が各エアセル3ごとに設定された目標値の許容範囲内(=Pd±α)となるように整定する圧力制御を実施する(S13)。この場合の圧力制御の詳細は、既に図7のフローチャートで示した制御内容と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0050】
続いて、全てのエアセル3を対象として、各磁気検出センサ5で検出された出力電圧(fs_ms_i)を読み込む(S14)。そして、各磁気検出センサ5の検出電圧の絶対値abs(fs_ms_i)とオフセットとなる基準電圧の絶対値abs(i_ms_i)との差分を計算し、この差分を予め設定された電圧閾値V0と比較する(S15)。なお、この電圧閾値V0は、前述のように、図11に示した特性曲線に基づいて設定されている。
【0051】
ここで、接触圧を低減したい褥瘡部位に取り付けられたマーカ6が磁気検出センサ5の直上、ないしその近傍の位置に存在する場合には、検出電圧の絶対値abs(fs_ms_i)とオフセットとなる基準電圧の絶対値abs(i_ms_i)との差分が前述の電圧閾値V0を越えるので、このような電圧閾値V0を越える磁気検出センサ5の検出出力が得られるエアセル3を特定する。なお、ここでは、電圧閾値V0を越える磁気検出センサ5の検出出力が得られる位置にあるエアセル3は一つだけであるので、一つのエアセル3のみが特定される。
【0052】
そして、電圧閾値V0を超えた該当エアセル3を対象として減圧制御を実行する(S16)。また、この場合の減圧制御の仕方は、図7のS4における減圧制御の場合と基本的に同じである。一方、S15で上記条件を満足しない場合にはステップS14へ戻って再度マーカ6に対応した位置にあるエアセル3を特定する。
【0053】
ここで、上記の褥瘡緩和のために褥瘡発生部と対応した位置にあるエアセル3の内圧を下げる選択的な減圧制御を行う場合、特定されたエアセル3の内圧を局所的に低下させると、減圧されたエアセルとその周辺のエアセル間の急な圧力勾配、もしくは高接触圧領域の形成により、他の部位の接触圧が増大して褥瘡が発生するおそれがある。
【0054】
そこで、この実施の形態1では、該当エアセルの減圧制御が終了した時点で、減圧されたエアセル3の内圧はそのままの状態にして、その減圧されたエアセル3の周辺に位置する他のエアセル3を圧力制御する(S17)。この場合、例えば、各エアセル3の目標値Pdに対する重み付け係数kを予め設定しておき、減圧されたエアセル周辺のエアセル3に対してはk・Pdを新たな目標値として圧力制御を行う。これにより、減圧されたエアセル3とその周辺のエアセル3との間に生じる圧力勾配、もしくは高接触圧領域が形成されるのを抑制できるため、他の部位に新たに褥瘡が発生するといった不具合を防止することができる。
【0055】
次に、適正な待ち時間が経過した後(S18)にS14に戻る。なお、この待ち時間は、就寝者あるいは座りきり者の健康状態に応じて、任意に設定できる。これは、人が寝返りを打つなど、身体に取り付けたマーカ6がマットレス1に対して移動する場合があるため、それに対応できるように減圧制御を自動追従する必要があるためである。
【0056】
このように、この実施の形態1では、個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御、ならびに褥瘡発生部位に対応した特定のエアセル3についての選択的な減圧制御を一定周期で繰り返して行うので、褥瘡予防と褥瘡緩和とを同時に達成することができる。
【0057】
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、電圧閾値V0を一つだけ設定しているので、減圧制御対象となるエアセル3は、マーカ6の直下に位置する一つのエアセル3に限られているが、このようにエアセル3を一つだけ減圧制御対象とする場合には褥瘡緩和を十分に図ることが難しい状況が発生する。例えば、マーカ6の位置が隣接するエアセル3の中間にあるような場合、つまり褥瘡発生部位が隣接するエアセル3間にまたがって位置してるような場合には、単一のエアセル3のみを減圧制御するだけでは不十分である。
【0058】
そこで、この実施の形態2では、選択的な減圧制御を実施する制御対象となるエアセル3を、磁気検出センサ5に対するマーカ6の位置に応じて1個、2個、4個という単位で切り替えることで選択的な減圧制御を行うようにしている。
【0059】
すなわち、図13(a)に示すように、マーカ6が磁気検出センサ5の直上もしくはその近傍に存在する場合には、減圧制御対象となるエアセル3を1個とする。また、同図(b)に示すように、マーカ6が互いに隣接する左右2つまたは上下2つのエアセル間に存在している場合には、減圧制御対象となるエアセル3を2個とする。また、同図(c)に示すように、マーカ6が互いに隣接する4個のエアセル3の中央付近に存在している場合には、減圧制御対象となるエアセル3を4個とする。なお、選択的な減圧制御対象となるエアセル3を最大で4個としているのは、褥瘡の大きさを最大で数センチメートル程度と仮定しているためであるが、これに限らず、それ以上の数のエアセルを減圧制御対象とすることも可能である。
【0060】
そして、前述のごとく、マーカ6と磁気検出センサ5との相対位置に対する磁気検出センサ5の検出出力(出力電圧)の関係は、図14に示す特性を示すので、磁気検出センサ5に対するマーカ6の位置が図13(a)、(b)、(c)に示した状態にあると、磁気検出センサ5の出力電圧もこの図13(a)→(b)→(c)の順に次第に低下する。
【0061】
したがって、例えば、複数個の電圧閾値V1、V2、V3を設定し、磁気検出センサ5の電圧出力が第1の電圧閾値V1を越えた場合には、褥瘡部位に取り付けたマーカ6の位置が図13(a)に示す状態にあるものと判断して1つのエアセル3を選択的に減圧制御する。また、第2の電圧閾値V2を越えて第1の電圧閾値V1以下であれば、マーカ6の位置が図13(b)に示す状態にあるものと判断して2つのエアセル3を選択的に減圧制御する。また、第3の電圧閾値V3を越えて第2の電圧閾値V2以下であれば、マーカ6の位置が図13(c)に示す状態にあるものと判断して4つのエアセル3を選択的に減圧制御する。さらに、磁気検出センサ5の電圧出力が第3の電圧閾値V3以下であれば、マーカ6なしと判断して減圧制御を実施しないようにする。
【0062】
次に、この実施の形態2において、褥瘡予防のために個々のエアセル3の内圧を目標値に整定させる圧力制御、ならびに、褥瘡緩和のために褥瘡発生部位に対応した特定のエアセル3についての選択的な減圧制御を一定周期で繰り返して行う場合の全体的な制御動作について、図15に示すフローチャートを参照して説明する。この場合、選択的な減圧制御を行う制御対象となるエアセル3の数は、マーカ6と磁気検出センサ5との相対位置の違いによって、図13(a)〜(c)に示したように1個、2個、4個のいずれかに選択される。
【0063】
まず、圧力制御装置7の演算制御部16は、各エアセル3に設けられている各磁気検出センサ5のオフセット量を検出するために、各磁気検出センサ5の出力電圧(i_ms_i)を読み込み、これを基準電圧とし(S11)、次に、就寝者あるいは座りきり者の身体の褥瘡発生部位またはその近傍にマーカ6を取り付け、その人体がマットレス1に就寝あるいは着座する(S12)。そして、個々のエアセル3の内圧が各エアセル3ごとに設定された目標値の許容範囲内(=Pd±α)となるように圧力を整定する圧力制御を実施する(S13)。続いて、全てのエアセル3を対象として、各磁気検出センサ5で検出された出力電圧(fs_ms_i)を個々に読み込む(S14)。ここまでの制御動作は、図12のフローチャートに示したS11〜S14の内容と同じである。
【0064】
次に、各磁気検出センサ5の検出電圧の絶対値abs(fs_ms_i)とオフセットとなる基準電圧の絶対値abs(i_ms_i)との差分を計算し、この差分を予め設定された電圧閾値V1と比較する(S21)。なお、この電圧閾値V1は、図14に示した特性曲線に基づいて設定されたものである。
【0065】
ここで、図13(a)に示したようにマーカ6が磁気検出センサ5の直上、ないしその近傍の位置に存在する場合には、検出電圧の絶対値abs(fs_ms_i)とオフセットとなる基準電圧の絶対値abs(i_ms_i)との差分は電圧閾値V1を越えるので、このような電圧閾値V1を越える検出出力が得られるエアセル3を抽出する。ここでは電圧閾値V1を越える検出出力が得られるエアセル3は1つだけなので、この1つのエアセル3を対象として減圧制御を実行する(S22)。
【0066】
一方、S21において上記差分が電圧閾値V1を越えない場合には、引き続いて、互いに隣接する4つのエアセル3を単位として計測対象とし、各磁気検出センサ5の出力電圧の差分が電圧閾値V2を超えV1以下となる検出出力が得られるエアセル3を調べて(S23)、この条件に該当するエアセル3を抽出する。ここでは差分がV2を越えV1以下となる検出出力が得られるのは図13(b)に示す状態にあるときなので、互いに隣接する2個のエアセル3を対象として減圧制御を実行する(S24)。
【0067】
一方、S23で各磁気検出センサ5の出力電圧の差分がV2を超えV1以下となる検出出力が得られるエアセル3が存在しない場合には、次に、互いに隣接する4つのエアセル3を単位として計測対象とし、各磁気検出センサ5の出力電圧の差分が電圧閾値V3を超えV2以下となる検出出力が得られるエアセル3を調べて(S25)、この条件に該当するエアセル3を抽出する。ここでは差分がV3を越えV2以下となる検出出力が得られるのは図13(c)に示す状態にあるときなので、互いに隣接する4個のエアセル3を対象として減圧制御を実行する(S26)。
【0068】
さらに、S25で各磁気検出センサ5の出力電圧の差分がV3を超えV2以下となる検出出力が得られるエアセル3が存在しない場合には、マーカ6が存在せず減圧制御対象となるエアセル3は無しと判断し、減圧制御は実行しない(S27)。
【0069】
そして、S22、S24、S26での減圧制御、またはS27での非減圧制御が終了した時点で、減圧されたエアセル3の内圧はそのままの状態にして、その周辺に位置する他のエアセル3の圧力制御を行う(S28)。この場合の圧力制御の動作は、図12のフローチャートに示したS17の内容と同じである。これにより、減圧されたエアセル3とその周辺のエアセル3との間に生じる圧力勾配、もしくは高接触圧領域が形成されるのを抑制できるため、褥瘡緩和した部位を除く他の部位に新たに褥瘡が発生するといった不具合を防止することができる。
【0070】
次に、適正な待ち時間が経過した後(S29)にS14に戻る。なお、この待ち時間は、就寝者あるいは座りきり者の健康状態に応じて、任意に設定できる。これは、前述のように、人が寝返りを打つなど、身体に取り付けたマーカ6がマットレス1に対して移動する場合があるため、それに対応できるように減圧制御を自動追従する必要があるためである。
【0071】
以上のように、この実施の形態2では、マーカ6の検出位置に応じて減圧制御対象となるエアセル3の個数を切り替えるので、実施の形態1に比べて一層褥瘡緩和を図ることができる。
【0072】
実施の形態3.
上記の実施の形態1、2では、各エアセル3の内圧を目標値に整定させる際、各エアセル3の現在の内圧P(i)を検出すると、引き続いて、当該エアセル3を対象としてその内圧P(i)が目標値の許容範囲内になるように逐次圧力制御を実施している。
【0073】
これに対して、この実施の形態3では、全エアセル3を対象として現在の個々の内圧を計測してそのデータを格納した後、現在の内圧P(i)と目標値Pdとの偏差が大きいエアセル群を抽出する。そして、その抽出したエアセル群を対象として同時に加圧ないし減圧制御を実施する。
【0074】
例えば、目標値に対して現在検出される内圧が低くて加圧対象となるエアセル群については、そのエアセル群に連結されている第3の電磁弁13を同時に開き、かつ第2の電磁弁12を閉じて加圧対象のエアセル群の内圧を計測する。この場合に計測されている加圧対象のエアセル群の内圧は、一定時間後に一定値となるので、次の段階では、第2の電磁弁12を開き、加圧対象のエアセル群に含まれるエアセル3について、エアセル群に直結された第3の電磁弁13を同時に開き、圧力制御をしてエアセル群の内圧が目標値の許容範囲になるように整定させる。また、逆に目標値に対して現在検出されている内圧が高くて減圧対象となるエアセル群に対しても、これと同様な方法で内圧が目標値の許容範囲内になるように整定させる。
【0075】
このようにすれば、実施の形態1、2のように、各エアセル3の内圧を目標値に整定させる際、各エアセル3の現在の内圧P(i)を検出するたびに、引き続いて、当該エアセル3を対象としてその内圧P(i)が目標値の許容範囲内になるように逐次圧力を整定する場合に比べて、複数のエアセルを同時に圧力制御するので、圧力制御による内圧整定に要する時間を短縮化することができる。
【0076】
実施の形態4.
上記の実施の形態1では、エアセル3の上面に設けた凹部3aに磁気検出センサ5を配置しているが、この実施の形態4では、図16および図17に示すように、互いに隣接するエアセル3の角部の突き合せ箇所に磁気検出センサ5を配置している。すなわち、互いに隣接する4つのエアセル3の突き合せ箇所にできる隙間部分を利用して磁気検出センサ5が配置されている。
【0077】
このような位置に磁気検出センサ5を設置するためには、例えば、可撓性の薄いシート(例えばテフロン(登録商標)シート)20を適用し、このシート20の下面に磁気検出センサ5を接着固定し、このシート20をクッション材2とエアセル3との間に挟み込んで、各磁気検出センサ5を各エアセル3の突き合せ箇所にできた隙間部分に装着する。
【0078】
このように、シート20を利用して磁気検出センサ5を取り付けるようにすれば、磁気検出センサ5を圧力制御装置7に電気的に接続するリード線18aをシート20上に配線することができるため、磁気検出センサ5の配線と圧力制御に利用するチューブ4とをエアセル3を上下に挟むように分離して構成することができる。このため、リード線18aやチューブ4の確保が容易になり構成を簡素化することができる。また、エアセル3上面に凹部3aを設ける必要もないため、エアセル3の製作も容易になる。さらにまた、エアセル3の隙間部分を利用して集磁のための板等を拡大して設置できるので、マーカ6の検出性能を向上することが可能となる。
なお、このようなシート20を用いずに、上側のクッション材2の下面のエアセル3の突き合せ箇所に対応する位置に予め磁気検出センサ5を直接接着することも可能である。
【0079】
実施の形態5.
上記の実施の形態1では、個々のエアセル3について1つの磁気検出センサ5を配置している。この構成の場合、使用する磁気検出センサ5の性能やマーカ6の性能等によっては、互いに隣接するエアセル3の間にマーカ6が位置したときには、磁気検出センサ5の検出出力が小さくなってマーカ6の位置を精度良く特定できない場合がある。
【0080】
そこで、この実施の形態5では、図18に示すように、各エアセルの上面に2つの磁気検出センサ5a、5bを設けている。そして、互いに隣接するエアセル3間で磁気検出センサ5a、5bの縦横の配置状態が変わるように取り付けるとともに、各エアセル3ごとに磁気検出センサ5a、5bの出力を加算して圧力制御装置7に送出するように構成されている。
【0081】
このように、各エアセル3について2つの磁気検出センサ5a、5bを縦横の配置状態が変わるように設置し、かつ、両センサ5a、5bの加算出力を用いることで、実施の形態1、2の場合よりもさらにマーカ6の検出性能を向上させることができる。
なお、各エアセル3に対する磁気検出センサの数は2つに限るものではなく、これよりも多い数の磁気検出センサを設置して加算出力を得るようにすることも可能である。
【0082】
実施の形態6.
この実施の形態6におけるマットレス1の全体構成は図1ないし図6に示した実施の形態1の場合と同じであるが、この実施の形態6の特徴として、圧力制御装置7の演算制御部16は、エアセル3の圧力制御前あるいは後に圧力検出センサ14の検出出力P(i)を読み込んで定常状態の内圧を一定時間にわたって計測し、その内圧が徐々に低下するか否かを判断する。そして、定常状態の内圧が徐々に低下するときには、エアセル3あるいはチューブ4や配管22等に空気漏れ等の異常が発生しているものと判断する。
【0083】
また、圧力制御装置7の演算制御部16は、マーカ6がマットレス1上に存在しない状態において、全磁気検出センサ5からの検出出力を読み込み、初期調整時の出力電圧に対して明らかに差異が大きい検出出力が存在する場合には、該当する磁気検出センサ5の故障あるいはリード線18aの断線などの異常が発生しているものと判断する。
【0084】
そして、圧力制御装置7は、マットレス1の構成要素の異常を検知したときには、これに応じてブザーを鳴らしたりランプ等を点滅したり、あるいはディスプレイを点滅して異常発生を外部に報知する。これにより、ユーザに構成要素の交換を促すことができる。
【0085】
なお、マットレス1に設けたディスプレイに上記のような異常発生を報知するだけでなく、圧力整定状態や選択的減圧状態を表示して、介護者等に視覚的に圧力制御状態を知らせるようにすることも可能である。
【0086】
実施の形態7.
上記の各実施の形態1〜5では、褥瘡予防や褥瘡緩和を行う場合の圧力制御について説明したが、この実施の形態7では、エアセル3の内圧を特定のパターンによって圧力制御することによって、就寝者および座りきり者に対してマッサージ効果を促すようにしたものである。例えば、圧力制御装置7は、全エアセル3の内圧を予め計測して内圧の高いエアセル3を検出し、それらに該当するエアセル3を加圧あるいは減圧することによって、当該エアセル3に接触している身体部位の血行を促進する。
【0087】
このマッサージ機能は、予め内圧の上限値と下限値の範囲内で、圧力制御をかけることによってエアセル3の膨張/収縮を実現してもよいが、特にエアセルの厳密な圧力調整を必要としないならば、例えば圧力検出センサ14の出力がPd+βとなるまで加圧(つまり膨張)して、次に圧力検出センサ14の出力がPd−βとなるまで減圧(つまり収縮)する一連の動作を、任意のエアセルに実行させるという簡易的な動作を行わせてもよい。
【0088】
上記の各実施の形態1〜7について、次の変形例や応用例を考えることができる。
(1)上記の各実施の形態1〜5では、褥瘡予防や褥瘡緩和を行う場合の圧力制御について説明したが、本発明は、このような褥瘡予防や褥瘡緩和のための圧力制御を行う場合に限定されるものではなく、身体の特定部位がマットレス1から高い接触圧を受けるのを低減したい場合にも広く適用することが可能である。例えば、手術を受けた患者の手術部位が、マットレス1から高い接触圧を受けるのを防止したい場合にも適用することができる。
【0089】
(2)上記の各実施の形態1〜7では、マーカ6を1つだけ使用していることを前提としているが、患部もしくは患部近傍にマーカ6を複数個を設置してもよい。この場合にも、体位変換等によってマーカ6が移動した場合でも、所定の周期で磁気検出センサ5の検出出力を検索し、それから再度、選択的な減圧制御に移行することができる。さらに、図12、図15に示したフローチャートには記載していないが、一度選択的に減圧制御されたエアセル3については、マーカ6の移動によって圧力制御対象となるエアセル3が変化した場合には、元の内圧の目標値Pdへ戻すようにしてもよい。
【0090】
(3)また、上記の各実施の形態1〜7では、磁気を利用してマーカ6の位置を検出しているが、これに限らず、例えば、各エアセル3ごとに高周波コイルを設ける一方、マーカ6としてコイルとコンデンサとからなる並列共振回路を用いることもできる。この構成の場合には、マーカ6を構成する並列共振回路がエアセル3のコイルに接近すると、並列共振回路による電気エネルギの共振吸収による高周波電圧の減衰変化により、各エアセル3に設けたコイルの両端電圧の変化を検出できるので、磁気を利用する場合と同様に各エアセル3に対するマーカ6の位置を特定することができる。
【0091】
(4)上記の各実施の形態1〜7では、エアセル3がシリコン樹脂製である場合を示したが、内圧に追従して容積を可変する柔軟性のある素材であればこれに限定されるものではない。また、ここでのエアセル3は接触面が立方体状のものを示したが、エアセル3の平面形状を六角形などの緻密性のある他の形状を採用することもできる。これにより、マトリックス配置によってデッドスペースがなくなるので、エアセル3の相互のずれを抑制することができる。さらには、伸びのあるシーツとの併用によってずれを抑制してもよい。
【0092】
(5)上記の各実施の形態1〜7では、磁気検出センサ5の上面にシート磁石6からの磁束の集磁効果を促進する集磁箔8を設置した場合を示したが、さらに磁気検出センサ5の検出出力を増加するためには、図19に示すように、磁気検出センサ5の上下に集磁板9を複合的に設置してもよい。この場合の集磁板9としては、高透磁率を有するフェライト、パーマロイなどがあげられる。
【0093】
(6)本発明における実施の形態すべてにおいて、体位変換時、寝衣やオムツ交換時等の処置時には、介護に支障をきたさぬように全エアセル3の内圧を一律に増大することもできる。
【0094】
(7)本発明はベッドに設置されるマットレスに限定されるものではなく、例えば、椅子を構成するマットレスについても本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマットレスを示す断面図である。
【図2】同マットレスを構成するエアセルの配列状態を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるマットレスのクッション材を除いた全体構成を示す斜視図である。
【図4】同マットレスを構成するクッション材とエアセルを拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるマットレスが備える圧力制御装置の構成要素を示すブロック図である。
【図6】同圧力制御装置の電気系統のハードウェアを示す構成図である。
【図7】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、個々のエアセルの内圧を目標値に整定させる圧力制御動作の説明に供するフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、エアセルを加圧制御する時の電磁弁の挙動と圧力検出センサの出力波形を示す特性図である。
【図9】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、エアセルを減圧制御する時の電磁弁の挙動と圧力検出センサの出力波形を示す特性図である。
【図10】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、エアセル上部のマーカ位置と磁気検出センサとの相対的な位置関係を示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、エアセル上部のマーカ位置と磁気検出センサとの相対位置の変化に伴う磁気検出センサの出力電圧の関係を示す特性図である。
【図12】本発明の実施の形態1のマットレスにおいて、褥瘡予防のための圧力制御と褥瘡緩和のための選択的な減圧制御の処理内容の説明に供するフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2のマットレスにおいて、エアセル上部のマーカ位置と磁気検出センサとの相対的な位置関係を示す平面図である。
【図14】本発明の実施の形態2のマットレスにおいて、エアセル上部のマーカ位置と磁気検出センサとの相対位置の変化に伴う磁気検出センサの出力電圧の関係を示す特性図である。
【図15】本発明の実施の形態2のマットレスにおいて、褥瘡予防のための圧力制御と褥瘡緩和のための選択的な減圧制御の処理内容の説明に供するフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態4のマットレスを示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態4のマットレスにおいて、隣接するエアセルの突き合わせ部分に磁気検出センサを配置した状態を示す平面図である。
【図18】本発明の実施の形態5のマットレスにおいて、各エアセルに複数の磁気検出センサを配置した状態を示す平面図である。
【図19】本発明の他の実施の形態において、一つのエアセルに対して磁気検出センサ、集磁箔、集磁板を配置した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 マットレス、2 クッション材、3 エアセル、3a 凹部、4 チューブ、
5,5a,5b 磁気検出センサ、6 マーカ、7 圧力制御装置、8 集磁箔、
9 集磁板、10 ポンプ、11a,11b 第1の電磁弁、12 第2の電磁弁、
13 第3の電磁弁、14 圧力検出センサ、15 A/D変換部、16 演算制御部、
17 D/A変換部、18a,18b,18c,18d リード線、
19 アクチュエータ、20 シート、21 流路分配器、22 配管、
23 マニホールド、27 マルチプレクサ、28 電力増幅器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエアセルと、身体の患部またはその近辺に取り付けられるマーカと、上記各エアセルに対するマーカの位置を検出するマーカ位置検出手段と、上記各エアセルの内圧を検出する圧力検出センサと、上記圧力検出センサで検出されたエアセルの内圧および上記マーカ位置検出手段で検出されたマーカ位置の情報の少なくとも一方の検出出力に基づいて各々のエアセルに対して空気を吸排気してエアセルの内圧を制御する圧力制御装置と、を備えることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
上記圧力制御装置は、上記圧力検出センサの検出出力に基づいて各エアセルの内圧を身体の圧力分布を考慮して予め設定された目標値へ整定させる圧力整定機能部を備えることを特徴とする請求項1記載のマットレス。
【請求項3】
上記圧力整定機能部は、上記圧力検出センサによって内圧が検出された全エアセルの内、目標値に対しての偏差が大きいエアセルから優先的に圧力制御を行うものであることを特徴とする請求項2記載のマットレス。
【請求項4】
上記圧力整定機能部は、上記圧力検出センサによって内圧が検出された全エアセルの内、目標値に対して加圧対象あるいは減圧対象となるエアセル群を分別し、分別したエアセル群に対して同時に圧力制御を行うものであることを特徴とする請求項2記載のマットレス。
【請求項5】
上記圧力制御装置は、上記圧力整定機能部により各エアセルの内圧が整定された状態で、上記マーカ位置検出手段で検出されたマーカ検出位置に対応する特定のエアセルについて整定後の内圧よりもさらに減圧する選択的減圧機能部を備えることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項6】
上記選択的減圧機能部は、マーカ検出位置に対応する特定のエアセルの内圧を整定後の内圧よりも減圧する際に、その周辺の他のエアセルとの圧力勾配が小さくなるように当該周辺のエアセルの予め整定された内圧を加減するものであることを特徴とする請求項5記載のマットレス。
【請求項7】
上記圧力制御装置は、上記マーカ位置検出手段および圧力検出センサの各出力異常の有無を検知し、いずれかに異常発生を検知した場合には警報を発するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項8】
上記圧力制御装置は、上記各エアセルを周期的に膨張または収縮させてマッサージを行うマッサージ機能部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項9】
上記圧力制御装置は、各エアセルに対して空気を吸排気するポンプおよびアクチュエータを備えており、このアクチュエータは、上記ポンプによる加圧もしくは減圧のいずれか一方のモードを選択する第1の電磁弁と、主として上記各エアセルの定常状態での内圧計測を行うための第2の電磁弁と、各エアセルに対して個別に設けられた第3の電磁弁とが配設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項10】
上記マーカはシート磁石であり、上記マーカ位置検出手段は磁気検出センサであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項11】
上記磁気検出センサは、上記各エアセルの上面に複数配置され、かつ、互いに隣接するエアセル間で縦横の配置状態が変更して設置されるとともに、各エアセルごとにこれらの磁気検出センサの出力を加算して上記圧力制御装置に送出するように構成されていることを特徴とする請求項10記載のマットレス。
【請求項12】
上記磁気検出センサに近接して、集磁箔および集磁板の少なくとも一方が配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項13】
上記各エアセルを覆うようにシートが配置され、このシートの下面には、互いに隣接するエアセルの突き合わせ箇所に対応する位置に上記磁気検出センサが固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項1】
複数のエアセルと、身体の患部またはその近辺に取り付けられるマーカと、上記各エアセルに対するマーカの位置を検出するマーカ位置検出手段と、上記各エアセルの内圧を検出する圧力検出センサと、上記圧力検出センサで検出されたエアセルの内圧および上記マーカ位置検出手段で検出されたマーカ位置の情報の少なくとも一方の検出出力に基づいて各々のエアセルに対して空気を吸排気してエアセルの内圧を制御する圧力制御装置と、を備えることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
上記圧力制御装置は、上記圧力検出センサの検出出力に基づいて各エアセルの内圧を身体の圧力分布を考慮して予め設定された目標値へ整定させる圧力整定機能部を備えることを特徴とする請求項1記載のマットレス。
【請求項3】
上記圧力整定機能部は、上記圧力検出センサによって内圧が検出された全エアセルの内、目標値に対しての偏差が大きいエアセルから優先的に圧力制御を行うものであることを特徴とする請求項2記載のマットレス。
【請求項4】
上記圧力整定機能部は、上記圧力検出センサによって内圧が検出された全エアセルの内、目標値に対して加圧対象あるいは減圧対象となるエアセル群を分別し、分別したエアセル群に対して同時に圧力制御を行うものであることを特徴とする請求項2記載のマットレス。
【請求項5】
上記圧力制御装置は、上記圧力整定機能部により各エアセルの内圧が整定された状態で、上記マーカ位置検出手段で検出されたマーカ検出位置に対応する特定のエアセルについて整定後の内圧よりもさらに減圧する選択的減圧機能部を備えることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項6】
上記選択的減圧機能部は、マーカ検出位置に対応する特定のエアセルの内圧を整定後の内圧よりも減圧する際に、その周辺の他のエアセルとの圧力勾配が小さくなるように当該周辺のエアセルの予め整定された内圧を加減するものであることを特徴とする請求項5記載のマットレス。
【請求項7】
上記圧力制御装置は、上記マーカ位置検出手段および圧力検出センサの各出力異常の有無を検知し、いずれかに異常発生を検知した場合には警報を発するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項8】
上記圧力制御装置は、上記各エアセルを周期的に膨張または収縮させてマッサージを行うマッサージ機能部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項9】
上記圧力制御装置は、各エアセルに対して空気を吸排気するポンプおよびアクチュエータを備えており、このアクチュエータは、上記ポンプによる加圧もしくは減圧のいずれか一方のモードを選択する第1の電磁弁と、主として上記各エアセルの定常状態での内圧計測を行うための第2の電磁弁と、各エアセルに対して個別に設けられた第3の電磁弁とが配設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項10】
上記マーカはシート磁石であり、上記マーカ位置検出手段は磁気検出センサであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項11】
上記磁気検出センサは、上記各エアセルの上面に複数配置され、かつ、互いに隣接するエアセル間で縦横の配置状態が変更して設置されるとともに、各エアセルごとにこれらの磁気検出センサの出力を加算して上記圧力制御装置に送出するように構成されていることを特徴とする請求項10記載のマットレス。
【請求項12】
上記磁気検出センサに近接して、集磁箔および集磁板の少なくとも一方が配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項13】
上記各エアセルを覆うようにシートが配置され、このシートの下面には、互いに隣接するエアセルの突き合わせ箇所に対応する位置に上記磁気検出センサが固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のマットレス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−144007(P2007−144007A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345018(P2005−345018)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]