説明

マップ歪みによるカテーテル組織間接触の視覚化

【課題】体腔の疑似表面を構築することと、プローブの遠位端部を体腔の壁に押圧することとを、含む方法を開示する。
【解決手段】壁に遠位端部を押圧しながら、体腔内におけるプローブの位置を示す位置測定値がプローブから受け取られ、また遠位端部と壁との間の力を示す力測定値がプローブから受け取られる。力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するために、位置測定値で示される位置において、疑似表面の歪みが作成される。次いで、この歪んだ表面が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には医用画像に関し、具体的には、医用プローブが体内組織に及ぼす力を視覚化することに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓内電気マッピングなどの電気生理学的な診断法において、侵襲的な医用プローブが体器官の空洞の中に導入される。プローブが器官内の特定の位置に配置されているとき、プローブは特定の情報(例えば電位)を測定し、測定値をマッピングシステムに伝達する。マッピングシステムは、器官内のそれぞれの箇所における測定値を含んだマップを作成する。このマップは、様々な診断法及び治療法を器官に適用する上で使用され得る。
【0003】
プローブを器官内に配置するとき、プローブの遠位先端部を器官組織に直接接触させることが望ましい場合がある。この接触は、例えば、遠位先端部と組織との接触圧力を測定することによって確認され得る。参照によって開示内容が本願に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0100332号、同第2009/0093806号及び同第2009/0138007号には、カテーテルに埋め込まれた力覚センサーを使用して体腔におけるカテーテルの遠位先端部と組織との接触圧力を検知する方法が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態によれば、ある方法が提供され、その方法は、体腔の疑似表面を構築することと、遠位端部を壁に押圧しながら、プローブの遠位端部を体腔の壁に押圧することと、体腔内におけるプローブの位置を示す位置測定値と、遠位端部と壁との間の力を示す力測定値とをプローブから受け取ることと、力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するために、位置測定値によって示される位置にて疑似表面に歪みを作成することと、歪んだ表面を表示することと、を含む。
【0005】
この方法は、疑似表面を構築する前の時点で、医画像システムから体腔の画像データを収集することを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、医画像システムは、プローブマッピングシステム、磁気共鳴画像システム、及びコンピュータ断層撮影システムからなる群から選択されてもよい。別の実施形態においては、疑似表面を構築することは、高速マッピングプロセスを画像データに適用することを含んでもよい。更なる実施形態においては、プローブは心臓内カテーテルを含んでもよい。更なる別の実施形態においては、体腔は心臓の心室を含んでもよい。更なる別の実施形態においては、歪みを形成することは、3次元効果を疑似表面に取り入れることを含んでもよい。別の実施形態においては、3次元効果は、刺激表面から突出する頂点を含んでもよい。更なる実施形態においては、3次元効果は、刺激表面へと凹む頂点を含んでもよい。別の実施形態においては、歪みを作成することは、疑似表面のうちのある領域を、位置測定値によって示される位置における力に対応する特定の色で満たすことを含んでもよい。
【0006】
また、本発明の実施形態によれば、プローブとプロセッサとを有する装置が提供される。プローブは、患者の体腔の中に挿入するように構成されており、体腔の内側におけるプローブの遠位端部の位置を測定するための位置センサーと、遠位端部と体腔の壁との間の力を測定するための力センサーとを備えている。プロセッサは、体腔の疑似表面を構築し、遠位端部を壁に押圧する間に、体腔内におけるプローブの位置を示す位置測定値と、遠位端部と壁との間の力を示す力測定値とをプローブから受け取り、力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するために、位置測定値によって示される位置にて疑似表面に歪みを作成し、歪んだ表面を表示するように構成されている。
【0007】
本発明の実施形態によれば、コンピュータソフトウェア製品が更に提供され、そのコンピュータソフトウェア製品は、患者の体腔の中に挿入するように構成されており、体腔の内側におけるプローブの遠位端部の位置を測定するための位置センサーと、遠位端部と体腔の壁との間の力を測定するための力センサーとを含むプローブと相まって操作されるものであり、プログラム命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体を備え、その命令がコンピュータに読み取られると、コンピュータは、体腔の疑似表面を構築し、遠位端部を壁に押圧する間に、体腔内におけるプローブの位置を示す位置測定値と、遠位端部と壁との間の力を示す力測定値とを前記プローブから受け取り、力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するために、位置測定値によって示される位置にて疑似表面に歪みを作成し、歪んだ表面を表示するコンピュータソフトウェア製品である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
この開示内容は本願において、添付の図面を参照して単に一例として記載するものである。
【図1】本発明の実施形態による、力覚カテーテル用のカテーテル組織間接触視覚化システムの概略絵画図。
【図2】本発明の実施形態による力覚カテーテルの遠位部分の細部を示す概略側面図。
【図3】開示する本発明の実施形態によるカテーテル組織間接触視覚化システムの各要素を概略的に示すブロック図。
【図4】本発明の実施形態によるカテーテル組織間接触を示す歪みの図。
【図5】本発明の実施形態によるカテーテル組織間接触を視覚化する方法を概略的に示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概観
生理学的又は解剖学的マッピング法は通常、電気解剖学的マッピングシステムから収集されたマップポイントを含んだマップを作成するものである。各マップポイントは、体器官内にそれぞれの座標を、またおそらくは、それぞれの座標にて医用プローブから収集された生理学的特性を含んでいる。
【0010】
マップポイントを収集するとき、プローブと心臓壁などの体腔組織との間の力を適切なレベルに維持することが重要となる。プローブと組織との間で電極の接触が良好となるようにするために、十分な力が必要である。電気接触が不十分であると、結果として読みが不正確となることがある。他方で、過度な力により組織が変形し、したがってマップが歪むこともある。深刻な場合には、過度な力が心臓壁に物理的損傷を生じることもある。
【0011】
本発明の各実施形態は、心臓内カテーテルなどの力覚プローブと心臓壁などの体内組織との間の接触力を視覚化するための方法及びシステムを提供する。いくつかの実施形態においては、医用画像システムから受信したデータポイントに基づいて、疑似表面が心臓壁に対して構成される。力覚プローブが力を心臓壁に加えると、歪みが疑似表面上で接触点に生じ得る。この歪みは、カテーテル組織間接触の位置に対応する疑似表面上の突起頂点として図形的に提示され、それによって、心臓壁の3次元(3D)表示が医療専門家などの操作者に提示され得る。
【0012】
この歪みを心室の外側から見ると、歪みの図形的効果は、弾力性のある布に対して棒を突き当てたときに観測される類の突出する隆起部に似たものとなり得る。別の方法として、歪みは、疑似表面における凹んだ頂点(すなわち凹部)として、心室の内側から視覚化されてもよい。別の実施形態において、地図学で用いられる高度段彩及び陰影起伏法に似た方式で、歪みは彩色及び陰影を用いてカテーテルと体内組織との間の力を示してもよく、ここで、色彩又は陰影が異なることは、力のレベルが異なることに対応する。
【0013】
疑似表面に示される歪みの大きさは、その力の結果として生じる心臓壁の実際の歪みを必ずしも反映しなくてもよい。本発明の実施形態は、操作者が視覚化の目的で歪みの大きさを調節することを可能にするものである。それに加えて、あるいはそれに代わって、様々な相対的な歪みの程度が、様々な状況下で用いられてもよい。例えば、カテーテルが同じ力を加えるときに、心室と比べてより大きな歪みが心房において提示されてもよい(心房は通常、心室よりも薄い壁を有する)。
【0014】
いくつかの実施形態においては、カテーテル組織間接触を表わす歪みは、接触のポイントを示すことができるだけでなく、疑似表面の歪みをカテーテルと体内組織との間の力に比例させて増大させることにより、接触力を示すこともできる。
【0015】
システムの説明
図1は、本発明による、マップ歪みによってカテーテル組織間接触の視覚化を実現する心臓内マッピングシステム20の概略的絵画図である。システム20は、カテーテルなどのプローブ22と、制御コンソール24とを備えている。以下で説明する実施形態においては、プローブ22は、患者28の心臓26内における電位のマッピングなど、診断又は治療処置に使用されるものと仮定されている。別法として、プローブ22は、心臓内又は他の体器官内における他の治療及び/又は診断の目的で、必要に応じて変更を加えて使用されてもよい。
【0016】
操作者30が、プローブ22の遠位端部32が心臓26の心腔に進入するように、患者28の脈管系を通じてプローブ22を挿入する。システム20は通常、磁気位置検知を用いて、心臓26の内側における遠位端部32の位置座標を判定する。コンソール24は駆動回路34を備えており、この駆動回路34は、患者28に対して外側の既知の位置、例えば患者の胴体に配置された磁場発生器36を駆動する。プローブ22の遠位端部32内の磁場センサー38(センサー38は図2により詳細に示す)が、コイルから生じた磁場に応答して電気信号を発生させ、それによって、コンソール24は、心腔内における遠位端部32の位置を判定することが可能となっている。
【0017】
この例において、システム20は、磁気式のセンサーを使用して遠位端部32の位置を測定しているが、他の位置追跡技術が用いられてもよい(例えば、インピーダンス式のセンサー)。磁気位置追跡技術は、例えば、米国特許第5,391,199号、同第5,4434,89号、同第6,788,967号、同第6,690,963号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,177,792号に記載されており、これらの開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。インピーダンス式の位置追跡技術は、例えば、米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号、同第5,944,022号に記載されており、これらの開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0018】
対象となる心室をマッピングするために、操作者30は、心室の内部表面上(又はその近く)の複数の位置に遠位端部32を配置する。各位置で、遠位端部に結合された電極40が、ある生理学的特性(例えば、局所的な表面電位)を測定する。システム20は、この位置測定値と電位測定値とを相関させる。したがって、システムは複数のマップポイントを収集し、各マップポイントは、内部の心室表面上の座標と、この座標におけるそれぞれの生理学的特性の測定値とを含んでいる。
【0019】
コンソール24はプロセッサ42を備えており、プロセッサ42は、磁気共鳴画像(MRI)システム若しくはコンピュータ断層(CT)システムなどの医用画像システム(図示せず)、又は、カリフォルニア州ダイアモンドバー(Diamond Bar)のバイオセンス・ウェブスター社(Biosense Webster Inc.)によって生産されているCARTO(商標)マッピングシステムなどのプローブマッピングシステムからデータを収集する。プロセッサ42は、この画像データを使用して、対象となる心室の疑似表面を構築する。疑似表面を構築する例示的な方法について、以下で更に説明する。次いで、プロセッサ42が、画像データから生成された疑似表面の上に電位測定値を「置く」。プロセッサ42は、疑似表面の画像44を、その上に置かれた電位測定値と共に(疑似表面と電位測定値とを統合したものが本明細書ではマップと呼ばれる)、操作者30に向けてディスプレイ46上に表示する。
【0020】
プロセッサ42は通常、プローブ22から信号を受信し、コンソール24の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド及びインターフェイス回路を有する汎用コンピュータを備えている。プロセッサ42は、本明細書で説明する機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされてもよい。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でコンソール24にダウンロードされてもよく、あるいは、光学的、磁気的又は電子的記憶メディアなどの非一時的な有形のメディア上に提供されてもよい。別法として、プロセッサ42の機能の一部又はすべてが、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0021】
本実施形態においては、プロセッサ42はまた、心臓26の心内膜組織に遠位端部32が及ぼす力を正確に評価するために、遠位端部32内の力センサー48(力センサー48は図2に更に詳細に示されている)から受信した信号測定値を監視する。心内膜組織に遠位端部32が及ぼす力が所定の大きさを超えると、プロセッサ42は、その及ぼされた力を示す画像44内に歪んだ表面を作成してもよい。
【0022】
プロセッサ42は、画像44を表わすデータをメモリー50内に格納する。いくつかの実施形態においては、1つ以上の入力装置52を使用する操作者30は、プロセッサ42が歪みを提示する方法を制御することができる。例えば、画像44が心臓26の3次元表現を含む場合、操作者は入力装置52を使用して、遠位端部が及ぼした力を表わす頂点の実際の幾何学的大きさを制御することができる。(そのような頂点は、組織のテンティングが生じている場合、概ね円錐形をなして生じる。)それに加えて、あるいはそれに代わって、操作者30は入力装置52を使用して、及ぼされた力を示すために使用される彩色及び/又は陰影を制御することができる。
【0023】
図1は特定のシステム構成を示しているが、他のシステム構成もまた本発明の実施形態を実現するために使用され得るものであり、したがって本発明の趣旨及び範囲に含まれると見なされる。例えば、本明細書にて以下で説明する方法は、インピーダンス式の位置センサー又は超音波位置センサーなど、上述した磁場センサー以外のタイプの位置変換器を使用して適用されてもよい。本明細書で用いられる「位置変換器」という用語は、遠位端部の座標を示す信号をコンソール24に受信させる、プローブ22上に装着された要素を指す。位置変換器はしたがって、変換器が受信したエネルギーに基づいて制御ユニットに向けて位置信号を発生させる受信器をプローブ上に備えていてもよく、あるいは、プローブに対して外側にある受信器によって検知されるエネルギーを放出する送信器を備えていてもよい。更に、本明細書にて以下で説明する方法は、心臓内で、また他の体組織及び領域内で、カテーテルだけでなく他のタイプのプローブも使用する治療及び診断の用途で同様に適用されてもよい。
【0024】
図2は、本発明の実施形態によるプローブ22の遠位端部32の概略断面図である。特に、図2は、治療及び/又は診断行為に使用される遠位端部32の機能的要素を示している。プローブの遠位先端部60にある電極40は、組織内の電気信号を検知する。電極40は通常、白金/イリジウム合金又は他の好適な材料などの金属材料でできている。別の方法として、複数の電極(図示せず)がプローブの全長に沿って設けられてもよい。
【0025】
位置センサー38は、遠位端部32の位置座標を示す信号をコンソール24に送信する。位置センサー38は、1つ以上の小形コイルを備えていてもよく、通常、種々の軸線に沿って方向付けられた複数のコイルを備えている。別の方法として、位置センサー38は、別のタイプの磁気センサー、つまり位置変換器として働く電極か、又はインピーダンス式の位置センサー若しくは超音波位置センサーなどの他のタイプの位置変換器を備えていてもよい。図2は単一の位置センサーを有するプローブを示しているが、本発明の実施形態は、複数の位置センサーを有するプローブを利用してもよい。
【0026】
別の実施形態においては、位置センサー38及び磁場発生器36の役割は逆にされてもよい。換言すれば、駆動回路34が遠位端部32内の磁場発生器を駆動して、1つ以上の磁場を発生させてもよい。発生器36内のコイルは、磁場を検知し、それらの磁場の成分の振幅を示す信号を発生させるように構成されてもよい。プロセッサ42は、心臓26内における遠位端部32の位置座標を判定するために、これらの信号を受信及び処理する。
【0027】
力センサー48は、遠位先端部が心内膜組織に及ぼした力を示す信号をコンソールに向けて発生させることによって、遠位先端部60が心臓26の心内膜組織に加えた力を測定する。一実施形態において、力センサーは、遠位端部32内のバネによって連結された磁場送信器と受信器を備えていてもよく、バネのたわみの測定に基づいて力の指示を発生させてもよい。この種のプローブ及び力センサーの更なる詳細が、米国特許公開第2009/0093806号及び同第2009/0138007号に記載されており、これらの開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。別の方法として、遠位端部32は別のタイプの力センサーを備えていてもよい。
【0028】
図3は、開示する本発明の実施形態によるコンソール24の各要素を概略的に示すブロック図である。心臓データ取得モジュール70が、力測定値及び位置信号をプローブ22から収集し、その測定値及び信号を視覚化モジュール72に伝達する。画像取得モジュール74が心臓26の画像データを(通常は、上に説明したようにMRI又はCTシステムから)収集し、その画像データをモジュール72に伝達する。モジュール72は、それぞれモジュール70及び74と通信するためのインターフェイス76及び78を備えている。
【0029】
プロセッサ42は通常、収集した画像データをメモリー50に格納する。メモリー50は、ランダムアクセスメモリー又はハードディスクドライブなど、任意の好適な揮発性及び/又は不揮発性メモリーを含んでもよい。画像データを収集した後、プロセッサ42はアルゴリズム(例えば、高速マッピングプロセス)を適用して画像44を構築する。本実施例においては、画像44は、心室の表面の疑似3D表面(例えば、多角形メッシュ)を含んでおり、この疑似3D表面をプロセッサ42がディスプレイ46上に画像44として提示する。
【0030】
収集された力測定値が所定の大きさを超える場合、プロセッサ42は、遠位端部32と心内膜組織との間の力の視覚的表現を操作者30に提示するために、画像44を歪めてもよい。上で議論したように、歪みの例には、疑似表面内の頂点、並びに、遠位端部32が力を加えている、心臓26内の位置に対応する疑似表面内の領域の彩色及び/又は陰影が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
インターフェイス58を介した入力装置52からの入力により、操作者30は歪みの視覚化を調節することが可能である。例えば、操作者30は、プロセッサ42が歪みをディスプレイ46上に提示する方法を決定することができる。換言すれば、操作者の入力に基づいて、疑似表面上に示される歪みは、必ずしも心臓の実際の歪みを反映するものでなくてもよい(例えば、歪みは力を誇張するものであってもよい)。
【0032】
カテーテル組織間接触の視覚化
図4は、本発明の実施形態によるカテーテル組織間接触を表わす歪みを示す疑似表面90の図である。図示の例においては、疑似表面90は、心臓の外側から見た心臓26の壁の一部分を表わしている。図示の例においては、遠位端部32が、心臓26内の心内膜組織を押圧しており、すなわち、カテーテル22が心臓26内にあり、心臓壁を押圧している。遠位端部32が心臓壁に及ぼした力に起因する、疑似表面90に表示される歪みは、突起頂点92、暗色部分94、及び明色部分96としてグレースケールで表示されており、したがって、3D陰影効果が表面に取り入れられている。別の方法として、疑似表面90は心臓26の内側から視覚化されてもよく、この場合、歪みは凹んだ頂点(すなわち、突起92ではなく表面90の凹部)として表示されてもよい。更なる別法として、歪みはカラー形式で表示されてもよい。
【0033】
図5は、本発明の実施形態による、カテーテル組織間接触を視覚化するためにマップ44に歪みを作成する方法を概略的に示す流れ図である。心臓内手術を実施するのに先立って、第1の収集工程100において、プロセッサ42は心臓26の心室の画像データを医用画像システム(例えば、CARTO(商標)又はMRI又はCT撮影システム)から収集する。画像データは通常、心室の組織を表わすデータポイントを含んでいる。構築工程102において、疑似表面90を構築するために、プロセッサ42は、収集した画像データにアルゴリズム(例えば、高速マッピングプロセス)を適用する。
【0034】
閾値設定工程104において、入力装置52を使用して、操作者30は、力の閾値を規定する所定の大きさを設定する。別の方法として、その所定の大きさは、事前に規定され、メモリー50に格納されてもよい。
【0035】
心臓内手術の間、位置決め工程106において、操作者30は、心臓26の心内膜組織をプローブの遠位端部32が押圧するように、プローブ22を位置決めする。第2の収集工程108において、プロセッサ42が、心臓26内における遠位端部32の位置測定値を示す位置センサー38からの信号と、遠位端部32と心内膜組織との間の力測定値を示す力センサー48からの信号を受け取る。
【0036】
比較工程110において、力測定値が力の閾値を超える場合、歪み工程112にて、プロセッサ42は、位置測定値が示す箇所にて疑似表面90上に歪み(例えば、突起92)を作成し、それによって歪んだ表面を形成する。操作者30は、入力装置52を使用して、歪みの大きさ及び/又は歪みのタイプ(例えば、突起又は彩色/陰影)を制御することができる。加えて、プロセッサ42は、遠位端部32と接触する組織に応じて歪みの大きさを調節してもよい。例えば、心臓26の心房は、(心臓の)心室よりも薄い壁を有するので、プロセッサ42は、遠位端部が心房組織と接触しているとき(そして対応する力を加えているとき)、より大きな程度の歪みをマップ44に導入してもよい。
【0037】
表示工程114において、プロセッサ42は、疑似表面(任意の歪みを有する)とそれに対応する電位測定値とを含んだマップ44をディスプレイ46上に表示し、この方法は、操作者30が心臓内手術を完了するまで工程106に戻る。工程110に戻ると、測定された力が力の閾値未満である場合、この方法は、疑似表面90にいかなる歪みも導入することなく工程114を継続する。
【0038】
以下の「特許請求の範囲」における機能的要素に加えて、すべての手段又は工程の対応する構造、材料、作用、及び等価物は、特許請求する他の要素と共に、それらの機能を実施するための任意の構造、材料、又は作用を、明確に特許請求されるものとして包含することを意図したものである。本開示の説明は、例示及び説明の目的で提示されているが、開示した形態における開示内容に対して包括的又は限定的となることを意図したものではない。多数の修正形態及び変形形態が、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。その実施形態は、本開示の原理及び実際的な応用について最良に説明するため、並びに、当業者が、種々の修正形態を伴う様々な実施形態に関する開示内容を、企図される特定の用途に適するものとして理解できるようにするために、選択し説明したものである。
【0039】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかとなろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には思いつくものであり、従来技術では開示されていないものである。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 体腔の疑似表面を構築することと、
プローブの遠位端部を前記体腔の壁に押圧することと、
前記壁に前記遠位端部を押圧しながら、前記プローブから、前記体腔内における前記プローブの位置を示す位置測定値と、前記遠位端部と前記壁との間の力を示す力測定値とを受け取ることと、
前記力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するように、前記位置測定値で示される前記位置において前記疑似表面に歪みを作成することと、
前記歪んだ表面を表示することと、を含む方法。
(2) 前記疑似表面を構築する前の時点で、医用画像システムから前記体腔の画像データを収集することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記医用画像システムは、プローブマッピングシステム、磁気共鳴画像システム、及びコンピュータ断層撮影システムからなる群から選択される、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記疑似表面を構築することは、高速マッピングプロセスを前記画像データに適用することを含む、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記プローブは心臓内カテーテルを含む、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記体腔は心臓の心室を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記歪み作成することは、3次元効果を前記疑似表面に取り入れることを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記3次元効果は、前記疑似表面から突出する頂点を含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記3次元効果は、前記疑似表面内へ凹む頂点を含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記歪みを作成することは、前記疑似表面のうちのある領域を、前記位置測定値によって示される前記位置における前記力に対応する特定の色で満たすことを含む、実施態様1に記載の方法。
【0041】
(11) 患者の体腔の中に挿入するように構成されたプローブであって、前記体腔の内側における前記プローブの遠位端部の位置を測定するための位置センサーと、前記遠位端部と前記体腔の壁との間の力を測定するための力センサーとを備える、プローブと、
前記体腔の疑似表面を構築し、前記遠位端部を前記壁に押圧しながら、前記体腔内における前記プローブの位置を示す位置測定値と、前記遠位端部と前記壁との間の力を示す力測定値とを前記プローブから受け取り、前記力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するように、前記位置測定値によって示される前記位置にて前記疑似表面に歪みを作成し、前記歪んだ表面を表示するように構成されたプロセッサと、を備える装置。
(12) 前記プロセッサは、前記疑似表面を構築する前の時点で、医用画像システムから前記体腔の画像データを収集するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記医用画像システムは、プローブマッピングシステム、磁気共鳴画像システム、及びコンピュータ断層撮影システムからなる群から選択される、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記プロセッサは、高速マッピングプロセスを前記画像データに適用することによって、前記疑似表面を構築するように構成されている、実施態様12に記載の装置。
(15) 前記プローブは心臓内カテーテルを含む、実施態様11に記載の装置。
(16) 前記プロセッサは、3次元効果を前記表面に取り入れることによって前記歪みを作成するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(17) 前記3次元効果は、前記疑似表面から突出する頂点を含む、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記3次元効果は、前記疑似表面内へ凹む頂点を含む、実施態様16に記載の装置。
(19) 前記プロセッサは、前記疑似表面のうちのある領域を、前記位置測定値によって示される前記位置における前記力に対応する特定の色で満たすことによって、前記歪みを作成するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(20) プローブと相まって操作されるコンピュータソフトウェア製品であって、前記プローブは、患者の体腔の中に挿入するように構成され、前記体腔の内側における前記プローブの遠位端部の位置を測定するための位置センサーと、前記遠位端部と前記体腔の壁との間の力を測定するための力センサーとを含み、前記製品は、プログラム命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体を備え、前記命令がコンピュータに読み取られると、前記コンピュータは、前記体腔の疑似表面を構築し、前記遠位端部を前記壁に押圧しながら、前記体腔内における前記プローブの位置を示す位置測定値と、前記遠位端部と前記壁との間の力を示す力測定値とを前記プローブから受け取り、前記力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するために、前記位置測定値によって示される前記位置にて前記疑似表面に歪みを作成し、前記歪んだ表面を表示する、コンピュータソフトウェア製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔の疑似表面を構築することと、
プローブの遠位端部を前記体腔の壁に押圧することと、
前記壁に前記遠位端部を押圧しながら、前記プローブから、前記体腔内における前記プローブの位置を示す位置測定値と、前記遠位端部と前記壁との間の力を示す力測定値とを受け取ることと、
前記力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するように、前記位置測定値で示される前記位置において前記疑似表面に歪みを作成することと、
前記歪んだ表面を表示することと、を含む方法。
【請求項2】
前記疑似表面を構築する前の時点で、医用画像システムから前記体腔の画像データを収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医用画像システムは、プローブマッピングシステム、磁気共鳴画像システム、及びコンピュータ断層撮影システムからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記疑似表面を構築することは、高速マッピングプロセスを前記画像データに適用することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記プローブは心臓内カテーテルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記体腔は心臓の心室を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記歪み作成することは、3次元効果を前記疑似表面に取り入れることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記3次元効果は、前記疑似表面から突出する頂点を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記3次元効果は、前記疑似表面内へ凹む頂点を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記歪みを作成することは、前記疑似表面のうちのある領域を、前記位置測定値によって示される前記位置における前記力に対応する特定の色で満たすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
患者の体腔の中に挿入するように構成されたプローブであって、前記体腔の内側における前記プローブの遠位端部の位置を測定するための位置センサーと、前記遠位端部と前記体腔の壁との間の力を測定するための力センサーとを備える、プローブと、
前記体腔の疑似表面を構築し、前記遠位端部を前記壁に押圧しながら、前記体腔内における前記プローブの位置を示す位置測定値と、前記遠位端部と前記壁との間の力を示す力測定値とを前記プローブから受け取り、前記力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するように、前記位置測定値によって示される前記位置にて前記疑似表面に歪みを作成し、前記歪んだ表面を表示するように構成されたプロセッサと、を備える装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記疑似表面を構築する前の時点で、医用画像システムから前記体腔の画像データを収集するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記医用画像システムは、プローブマッピングシステム、磁気共鳴画像システム、及びコンピュータ断層撮影システムからなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、高速マッピングプロセスを前記画像データに適用することによって、前記疑似表面を構築するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記プローブは心臓内カテーテルを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、3次元効果を前記表面に取り入れることによって前記歪みを作成するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記3次元効果は、前記疑似表面から突出する頂点を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記3次元効果は、前記疑似表面内へ凹む頂点を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記疑似表面のうちのある領域を、前記位置測定値によって示される前記位置における前記力に対応する特定の色で満たすことによって、前記歪みを作成するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項20】
プローブと相まって操作されるコンピュータソフトウェア製品であって、前記プローブは、患者の体腔の中に挿入するように構成され、前記体腔の内側における前記プローブの遠位端部の位置を測定するための位置センサーと、前記遠位端部と前記体腔の壁との間の力を測定するための力センサーとを含み、前記製品は、プログラム命令が格納された非一時的なコンピュータ可読媒体を備え、前記命令がコンピュータに読み取られると、前記コンピュータは、前記体腔の疑似表面を構築し、前記遠位端部を前記壁に押圧しながら、前記体腔内における前記プローブの位置を示す位置測定値と、前記遠位端部と前記壁との間の力を示す力測定値とを前記プローブから受け取り、前記力測定値が所定の大きさを超えたことを検出すると、歪んだ表面を形成するために、前記位置測定値によって示される前記位置にて前記疑似表面に歪みを作成し、前記歪んだ表面を表示する、コンピュータソフトウェア製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96037(P2012−96037A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−240962(P2011−240962)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(511099630)バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
【住所又は居所原語表記】4 Hatnufa Street, Yokneam 20692, Israel
【Fターム(参考)】