説明

マトリクスアレイ駆動装置、ディスプレイ、イメージセンサ

【課題】本発明は、回路規模の拡大や解像度の低下を招くことなく、画素に流す瞬時電流を抑えることが可能なマトリクスアレイ駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るマトリクスアレイ駆動装置は、水平走査回路10と垂直走査回路20を用いて、マトリクスアレイ30を駆動するものであって、水平走査回路10は、所定の水平走査期間毎にマトリクスアレイ30のN行分に相当するデータ信号DATAを各行毎に順次ラッチし、かつ、各行毎のラッチ出力をN行分の水平走査期間ずつ継続するように、マトリクスアレイ30の信号電極(Ya1〜Yan、Yb1〜Ybn)を制御するものであり、垂直走査回路20は、マトリクスアレイ30をN行ずつ同時駆動するように、かつ、水平走査期間毎に駆動対象行を1行ずつシフトしていくように、マトリクスアレイ30の走査電極(DU1、DU2、X1〜Xm、DL)を制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブマトリクスアレイを駆動するマトリクスアレイ駆動装置、並びに、これを用いたディスプレイ及びイメージセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、軽薄性や低消費電力などの利点から、テレビジョン放送受像機やパーソナルコンピュータ、或いは、携帯電話端末などのモニタ手段として、液晶ディスプレイや有機EL[ElectroLuminescence]ディスプレイが広く一般に普及している。
【0003】
このようなドットマトリクスディスプレイの駆動方式としては、走査電極(ロウ電極)と信号電極(カラム電極)との交差点毎にアクティブ素子を備え、発光させるべき画素をアクティブ素子のオン/オフによって選択するアクティブマトリクス方式と、走査電極と信号電極との交差点に画素のみを備え、発光させるべき画素を直接選択するパッシブマトリクス方式(単純マトリクス方式)とがあり、特に、有機ELディスプレイでは、その駆動方式として、後者のパッシブマトリクス方式を採用しているものが多い。
【0004】
なお、上記に関連する従来技術の一例として、特許文献1、2を挙げることができる。
【特許文献1】特開2003−280586号公報
【特許文献2】特開2001−265282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、パッシブマトリクス方式を採用したディスプレイであれば、素子構造が単純であり、加工精度もさほど厳しくないため、製造コストを低減することが可能である。
【0006】
しかしながら、従来のパッシブマトリクス方式は、N行の走査電極を順次走査して1行ずつ発光させる構成(言い換えれば、垂直方向の走査を1ラインずつ行う構成)であるため、1ラインの選択期間T’は、1フレームの単位期間Tに対して1/Nとなっていた。従って、走査電極の本数Nが多くなるほど、1ラインの選択期間T’が短くなるため、ディスプレイとして必要な平均輝度を維持するためには、例えば、有機ELディスプレイであれば、各画素をN倍の輝度で発光させる必要があり、画素媒体への負担が大きく、寿命の劣化や効率の低下など(例えば、有機EL素子の量子効率の低下)を生じる原因となっていた。
【0007】
なお、上記の課題を解決する従来技術の一例として、特許文献1では、画面を上下2段のブロックに分け、各々のブロックを同時に駆動することにより、画素に流す瞬時電流を低減する方式(いわゆるダブルスキャン方式)が開示・提案されている。
【0008】
しかしながら、このような方式を採用するためには、少なくとも1フレーム分の画像データをラッチしておくフレームメモリなどが必要となるため、回路規模のオーバーヘッドが大きく、また、少なくとも1フレーム分だけ画像データの出力が遅れるため、入力された画像データのリアルタイム表示ができなくなる、という問題があった。
【0009】
また、上記の課題を解決する従来技術の別の一例として、特許文献2では、ロウ駆動回路は、隣り合った走査電極を2本以上同時に駆動し、発光素子を同時に駆動する走査電極数分の水平区間続けて発光し順次点灯させる機能を有し、カラム駆動回路は、発光素子の電流密度が変化しないようにデータ電極の電流を制御する機能を有することを特徴とする画像表示装置が開示・提案されている。
【0010】
しかしながら、上記の従来技術では、(N+1)行目のデータを出力する際に、(N+1)行目だけでなく、N行目も選択することで、画素に流す瞬時電流の低減を実現しているため、画像が上方向に伸び、縦方向の解像度が少なからず低下してしまう、という問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑み、回路規模の拡大や解像度の低下を招くことなく、画素に流す瞬時電流を抑えることが可能なマトリクスアレイ駆動装置、並びに、これを用いたディスプレイ及びイメージセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るマトリクスアレイ駆動装置は、水平走査回路と垂直走査回路を用いて、マトリクスアレイを駆動するマトリクスアレイ駆動装置であって、前記水平走査回路は、所定の水平走査期間毎に、前記マトリクスアレイのN行分(ただし、Nは2以上の整数)に相当するデータ信号を各行毎に順次ラッチし、かつ、各行毎のラッチ出力をN行分の水平走査期間ずつ継続するように、前記マトリクスアレイの信号電極を制御するものであり、前記垂直走査回路は、前記マトリクスアレイをN行ずつ同時駆動するように、かつ、前記水平走査期間毎に、その駆動対象行を1行ずつシフトしていくように、前記マトリクスアレイの走査電極を制御するものである構成(第1の構成)とされている。
【0013】
なお、上記第1の構成から成るマトリクスアレイ駆動装置にて、前記水平走査回路は、各自に入力される前記データ信号を順次格納し、所定のトリガ信号に応じて、各々のラッチ出力対象行を構成する画素に前記データ信号をラッチ出力する第1〜第Nデータラッチ部と;前記水平走査期間毎に、第1〜第Nデータラッチ部のいずれか一に対して前記トリガ信号を巡回出力するラッチ制御部と;を有して成る構成(第2の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1または第2の構成から成るマトリクスアレイ駆動装置にて、前記垂直走査回路は、所定の垂直走査期間毎に、1行目の走査電極よりも上側に設けられたN行分のダミー走査電極を同時駆動する状態に初期化される構成(第3の構成)にするとよい。
【0015】
或いは、上記第1または第2の構成から成るマトリクスアレイ駆動装置において、前記垂直走査回路は、所定の垂直走査期間毎に、N行分の水平走査期間だけアクティブ状態となる基準パルス信号を生成する基準パルス生成部と、前記水平走査期間毎に、前記基準パルス信号を1桁ずつシフトさせて前記マトリクスアレイの走査電極に出力するシフトレジスタと、有して成る構成(第4の構成)としてもよい。
【0016】
また、本発明に係るディスプレイは、上記第1〜第4いずれかの構成から成るマトリクスアレイ駆動装置を有して成る構成(第5の構成)とされている。
【0017】
また、本発明に係るイメージセンサは、上記第1〜第4いずれかの構成から成るマトリクスアレイ駆動装置を有して成る構成(第6の構成)とされている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回路規模の拡大や解像度の低下を招くことなく、画素に流す瞬時電流を抑えることができるので、画素媒体への負担を軽減して、寿命の劣化や効率の低下などを回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、有機ELディスプレイに本発明を適用した場合を例に挙げて説明を行う。
【0020】
図1は、本発明に係る有機ELディスプレイの一実施形態を示すブロック図である。
【0021】
本図に示すように、本実施形態の有機ELディスプレイは、水平走査回路10と、垂直走査回路20と、有機ELディスプレイパネル30と、を有して成る。
【0022】
水平走査回路10は、所定の水平走査期間毎に、有機ELディスプレイパネル30の2行分に相当するデータ信号DATAを各行毎に順次ラッチし、かつ、各行毎のラッチ出力を2行分の水平走査期間ずつ継続するように、有機ELディスプレイパネル30の信号電極(奇数行用の信号電極Ya1〜Yan、及び、偶数行用の信号電極Yb1〜Ybn)を制御するものであり、第1データラッチ部11aと、第2データラッチ部11bと、ラッチ制御部12と、を有して成る。
【0023】
第1データラッチ部11aは、入力されるデータ信号DATAを順次格納し、第1トリガ信号LATaに応じて、ラッチ出力対象行(奇数行)を構成する画素にデータ信号DATAをラッチ出力する手段である。第2データラッチ部11bは、入力されるデータ信号DATAを順次格納し、第2トリガ信号LATbに応じて、ラッチ出力対象行(偶数行)を構成する画素にデータ信号DATAをラッチ出力する手段である。なお、第1データラッチ部11a、及び、第2データラッチ部11bの内部構成については後述する。
【0024】
ラッチ制御部12は、所定の水平走査期間毎に、第1データラッチ部11aと第2データラッチ部11bのいずれか一に対して、第1トリガ信号LATa、及び、第2トリガ信号LATbを巡回出力する手段であり、論理積演算器ANDa、ANDbを有して成る。
【0025】
論理積演算器ANDaの第1入力端は、選択信号SLTの印加端に接続されている。論理積演算器ANDaの第2入力端は、基準トリガ信号LATの印加端に接続されている。論理積演算器ANDaの出力端は、第1トリガ信号LATaの出力端として、第1データラッチ部11aに接続されている。
【0026】
論理積演算器ANDbの第1入力端は、基準トリガ信号LATの印加端に接続されている。論理積演算器ANDbの第2入力端は、反転入力形式とされており、選択信号SLTの印加端に接続されている。論理積演算器ANDbの出力端は、第2トリガ信号LATbの出力端として、第2データラッチ部11bに接続されている。
【0027】
すなわち、基準トリガ信号LATがハイレベルであるときに、選択信号SLTがハイレベルであれば、第1トリガ信号LATaがハイレベルとなり、第2トリガ信号LATbがローレベルとなる。一方、基準トリガ信号LATがハイレベルであるときに、選択信号SLTがローレベルであれば、第1トリガ信号LATaがローレベルとなり、第2トリガ信号LATbがハイレベルとなる。なお、基準トリガ信号LATがローレベルであるときには、選択信号SLTの論理に依ることなく、第1トリガ信号LATa及び第2トリガ信号LATbがいずれもローレベルとなる。
【0028】
垂直走査回路20は、有機ELディスプレイパネル30を2行ずつ同時に駆動するように、かつ、所定の水平走査期間毎に、その駆動対象行を1行ずつシフトしていくように、有機ELディスプレイパネル30の走査電極(画素部31を構成する走査電極X1〜Xmのほか、ダミー画素部32を構成するダミー走査電極DU1、DU2、DLを含む)を制御するものである。なお、垂直走査回路20の内部構成については後述する。
【0029】
有機ELディスプレイパネル30は、水平方向に配設された走査電極X1〜Xmと、垂直方向に配設された第1信号電極Ya1〜Yan(奇数行用)及び第2信号電極Yb1〜Ybn(偶数行用)との交差点に画素(有機EL素子)を備え、発光させるべき画素を直接選択するパッシブマトリクス方式(単純マトリクス方式)のマトリクスアレイである。
【0030】
なお、有機ELディスプレイパネル30は、走査電極X1〜Xmと第1信号電極Ya1〜Yan及び第2信号電極Yb1〜Ybnとの交差領域に形成される画素部31のほか、その周囲領域に使用されないダミー画素を並べたダミー画素部32が形成されている。このようなダミー画素部32を設けることにより、画素部31のレイアウト依存性(周辺画素の欠損や特性不良など)を排除することが可能となる。
【0031】
そのため、有機ELディスプレイパネル30は、ダミー画素に接続されるダミーの走査電極及び信号電極として、パネルの上下両側にダミー走査電極DU1、DU2、DLを有して成り、また、パネルの左右両側にもダミー信号電極(不図示)を有して成る。
【0032】
次に、第1データラッチ部11a(第2データラッチ部11b)の内部構成について、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図2は、第1データラッチ回路11a(第2データラッチ回路11b)の一構成例を示すブロック図である。
【0034】
本図に示すように、本構成例の第1データラッチ回路11a(第2データラッチ回路11b)は、シフトレジスタSR1と、出力ラッチ部OL1と、を有して成る。
【0035】
シフトレジスタSR1は、不図示のクロックをトリガとして、シリアルに入力されるデータ信号DATAを一桁ずつ順次シフトさせながら格納していく手段である。
【0036】
出力ラッチ部OL1は、ラッチ制御部12から入力される第1トリガ信号LATa(第2トリガ信号LATb)をトリガとして、シフトレジスタSR1に格納されたデータ信号DATAを第1信号電極Ya1〜Yan(第2信号電極Yb1〜Ybn)にラッチ出力する手段である。
【0037】
次に、垂直走査回路20の内部構成について、図3を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
図3は、垂直走査回路20の一構成例を示すブロック図である。
【0039】
本図に示すように、本構成例の垂直走査回路20は、D型のフリップフロップFFDU1、FFDU2、FF1〜FFm、FFDLを直列多段に重ねて構成されるループ型のシフトレジスタSR2を有して成り、各フリップフロップの出力端がそれぞれダミー走査電極DU1、DU2、走査電極X1〜Xm、及び、ダミー走査電極DLに接続されている。
【0040】
なお、フリップフロップFFDU1、FFDU2、FF1〜FFm、FFDLは、いずれもクロック端に入力される水平同期信号HSをトリガとして動作する。また、前から2段分のフリップフロップFFDU1、FFDU2は、セット端に入力される垂直同期信号VSをトリガとして、その出力論理がアクティブ状態(ここではローレベル)に初期化される構成とされており、その余のフリップフロップFF1〜FFm、FFDLは、いずれもリセット端に入力される垂直同期信号VSをトリガとして、その出力論理が非アクティブ状態(ここではハイレベル)に初期化される構成とされている。
【0041】
すなわち、本構成例の垂直走査回路20は、所定の垂直走査期間毎に、1行目の走査電極X1よりも上側に設けられた2行分のダミー走査電極DU1、DU2を同時駆動する状態に初期化される構成とされている。このような構成とすることにより、別途のパルス生成部を設けることなく、シフトレジスタSR2のみを用いて、極めて簡易に、かつ、スムーズに、有機ELディスプレイパネル30を2行ずつ同時に駆動することが可能となる。
【0042】
なお、本構成を採用する場合、走査電極X1の上側には、2行分のダミー走査電極DU1、DU2が必要となる。
【0043】
次に、上記構成から成る水平走査回路10及び垂直走査回路20の動作シーケンスについて、図4を参照しながら詳細に説明する。
【0044】
図4は、水平走査回路10及び垂直走査回路20の動作シーケンスを説明するためのタイミングチャートである。なお、図4では、上から順に、垂直同期信号VS、水平同期信号HS、ダミー走査電極DU1、DU2、走査電極X1〜Xm、ダミー走査電極DL、データ信号DATA、選択信号SLT、基準トリガ信号LAT、第1トリガ信号LATa、第2トリガ信号LATb、第1信号電極Ya1〜Yan、及び、第2信号電極Yb1〜Ybnが示されている。
【0045】
時刻t1〜t2において、垂直走査回路20は、垂直同期信号VS(立上がりエッジ)をトリガとして、ダミー走査電極DU1、DU2を同時駆動する状態に初期化される。また、時刻t1〜t2では、第1データラッチ部11a及び第2データラッチ部11bの双方に対して、1行目のデータ信号DATA(1行目データd1)が入力される。なお、時刻t1〜t2では、第1信号電極Ya1〜Yan及び第2信号電極Yb1〜Ybnのいずれにも、データ信号DATAは出力されない。すなわち、時刻t1〜t2は、1行目データd1の入力待機状態として、ダミー走査電極DU1、DU2が選択された形となる。
【0046】
続く時刻t2〜t3において、ラッチ制御部12は、第1トリガ信号LATaを出力する。第1データラッチ部11aは、この第1トリガ信号LATa(立上がりエッジ)をトリガとして、自身に格納されている1行目データd1を第1信号電極Ya1〜Yanにラッチ出力する。一方、第2データラッチ部11bには、第2トリガ信号LATbが入力されないため、第2信号電極Yb1〜Ybnには、データ信号DATAが出力されない。
【0047】
また、時刻t2〜t3において、垂直走査回路20は、水平同期信号HS(立上がりエッジ)をトリガとして、その駆動対象行を1行ずつシフトし、ダミー走査電極DU2と1行目の走査電極X1を同時駆動する状態とする。従って、走査電極X1と第1信号電極Ya1〜Yanとの交差点に接続された画素が1行目データd1に応じて発光されることになる。なお、時刻t2〜t3では、上記と平行して、第1データラッチ部11a及び第2データラッチ部11bの双方に2行目のデータ信号DATA(2行目データd2)が入力される。
【0048】
続く時刻t3〜t4において、ラッチ制御部12は、第2トリガ信号LATbを出力する。第2データラッチ部11bは、この第2トリガ信号LATb(立上がりエッジ)をトリガとして、自身に格納されている2行目データd2を第2信号電極Yb1〜Ybnにラッチ出力する。一方、第1データラッチ部11aには、第1トリガ信号LATaが入力されないため、第1信号電極Ya1〜Yanには、時刻t2〜t3に引き続いて、1行目データd1がラッチ出力される。
【0049】
また、時刻t3〜t4において、垂直走査回路20は、水平同期信号HS(立上がりエッジ)をトリガとして、その駆動対象行を1行ずつシフトし、1行目の走査電極X1と2行目の走査電極X2を同時駆動する状態とする。従って、走査電極X1と第1信号電極Ya1〜Yanとの交差点に接続された画素は、時刻t2〜t3に引き続いて、1行目データd1に応じて発光されることになり、走査電極X2と第2信号電極Yb1〜Ybnとの交差点に接続された画素は、2行目データd2に応じて発光されることになる。なお、時刻t3〜t4では、上記と平行して、第1データラッチ部11a及び第2データラッチ部11bの双方に3行目のデータ信号DATA(3行目データd3)が入力される。
【0050】
以後も、上記と同様のシーケンスにより、水平走査回路10は、所定の水平走査期間毎に、有機ELディスプレイ30の2行分に相当するデータ信号DATAを各行毎に順次ラッチし、かつ、各行毎のラッチ出力を2行分の水平走査期間ずつ継続するように、有機ELディスプレイ30の信号電極(Ya1〜Yan、Yb1〜Ybn)を制御し、垂直走査回路20は、マトリクスアレイ30を2行ずつ同時駆動するように、かつ、水平走査期間毎に駆動対象行を1行ずつシフトしていくように、マトリクスアレイ30の走査電極(DU1、DU2、X1〜Xm、DL)を制御する。
【0051】
このように、本実施形態の有機ELディスプレイであれば、第1データラッチ部11a及び第2データラッチ部11bの各ラッチ出力が更新されるまでの期間(2行分の水平走査期間)を各行の駆動時間に費やすことが可能となる。
【0052】
すなわち、本実施形態の有機ELディスプレイであれば、回路規模の拡大や解像度の低下を招くことなく、各行の駆動時間を2倍に延ばすことができるので、平均輝度を一定に保ちながら、画素に流す瞬時電流を通常のパッシブマトリクス方式に比べて1/2に抑えることが可能となり、延いては、瞬時電流の大きさが問題となる画素媒体(有機EL素子等)への負担を軽減して、寿命の劣化や効率の低下などを回避することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の有機ELディスプレイであれば、従来のダブルスキャン方式と異なり、シーケンシャルに入力される画像データDATAを1画面分ラッチする必要がなく、回路的に追加される部分としては、基本的に水平走査回路10におけるデータラッチ部の増加のみであるため、回路規模の拡大を招くことなく、画像データDATAのリアルタイム表示を行うことが可能となる。
【0054】
なお、上記実施形態では、第1データラッチ部11aと第2データラッチ部11bを用いて、各行の駆動時間を2倍に延ばし、画素に流す瞬時電流を1/2とした構成を例示して説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、図5で示すように、第1データラッチ部11−1〜第Nデータラッチ部11−Nを用いることで、各行の駆動時間をN倍に延ばし、画素に流す瞬時電流を1/Nとする構成としても構わない。このとき、データラッチ部の段数Nについては、どの程度まで瞬時電流を小さくしたいかというニーズに応じて適宜設定すればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、垂直走査回路20として、D型のフリップフロップを直列多段に重ねて構成されるループ型のシフトレジスタSR2を用いた構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、図6に示すように、垂直走査回路20は、垂直同期信号VSをトリガとして、垂直走査期間毎に、N行分の水平走査期間だけアクティブ状態となる基準パルス信号を生成する基準パルス生成部PG1と、水平同期信号HSをトリガとして、水平走査期間毎に、上記の基準パルス信号を1桁ずつシフトさせながら格納していくシフトレジスタSR3とを用いて、有機ELディスプレイパネル30の走査電極(DU、X1〜Xm、DL)を制御する構成としても構わない。
【0056】
上記構成から成る垂直走査回路20を用いれば、基準パルス生成部PG1を別途設ける必要があるものの、同時駆動行数Nを増やす場合でも、走査電極X1の上側にN行分のダミー走査電極を設ける必要がなくなるため、画素部31の占有面積を圧迫せずに済む。
【0057】
また、上記実施形態では、有機ELディスプレイに本発明を適用した場合を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、ピクセルアレイを有するディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ)や、センサアレイを有するイメージセンサなど、マトリクスアレイ(特に瞬時電流に制限のあるもの)を駆動するマトリクス駆動装置全般に広く適用することが可能である。
【0058】
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、パッシブマトリクス方式のディスプレイやイメージセンサを構成する画素媒体の寿命劣化や効率低下を回避する上で有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】は、本発明に係るディスプレイの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】は、第1データラッチ回路11a(第2データラッチ回路11b)の一構成例を示すブロック図である。
【図3】は、垂直走査回路20の一構成例を示すブロック図である。
【図4】は、水平走査回路10及び垂直走査回路20の動作シーケンスを説明するためのタイミングチャートである。
【図5】は、水平走査回路10の一変形例を示すブロック図である。
【図6】は、垂直走査回路20の一変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
10 水平走査回路
11a 第1データラッチ部(奇数行用)
11b 第2データラッチ部(偶数行用)
11−1、11−2、…、11−N 第1〜第Nデータラッチ部
12 ラッチ制御部
20 垂直走査回路
30 有機ELディスプレイパネル(マトリクスアレイ)
31 画素部
32 ダミー画素部
ANDa、ANDb 論理積演算器
SR1、SR2、SR3 シフトレジスタ
OL1 出力ラッチ部
FFDU1、FFDU2、FF1〜FFm、FFDL フリップフロップ
PG1 基準パルス生成部
X1〜Xm 走査電極
Ya1〜Yan 第1信号電極(奇数行用)
Yb1〜Ybn 第2信号電極(偶数行用)
DU1、DU2、DL ダミー走査電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平走査回路と垂直走査回路を用いて、マトリクスアレイを駆動するマトリクスアレイ駆動装置であって、
前記水平走査回路は、所定の水平走査期間毎に、前記マトリクスアレイのN行分(ただし、Nは2以上の整数)に相当するデータ信号を各行毎に順次ラッチし、かつ、各行毎のラッチ出力をN行分の水平走査期間ずつ継続するように、前記マトリクスアレイの信号電極を制御するものであり、
前記垂直走査回路は、前記マトリクスアレイをN行ずつ同時駆動するように、かつ、前記水平走査期間毎に、その駆動対象行を1行ずつシフトしていくように、前記マトリクスアレイの走査電極を制御するものであることを特徴とするマトリクスアレイ駆動装置。
【請求項2】
前記水平走査回路は、各自に入力される前記データ信号を順次格納し、所定のトリガ信号に応じて、各々のラッチ出力対象行を構成する画素に前記データ信号をラッチ出力する第1〜第Nデータラッチ部と;前記水平走査期間毎に、第1〜第Nデータラッチ部のいずれか一に対して、前記トリガ信号を巡回出力するラッチ制御部と;を有して成ることを特徴とする請求項1に記載のマトリクスアレイ駆動装置。
【請求項3】
前記垂直走査回路は、所定の垂直走査期間毎に、1行目の走査電極よりも上側に設けられたN行分のダミー走査電極を同時駆動する状態に初期化されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマトリクスアレイ駆動装置。
【請求項4】
前記垂直走査回路は、所定の垂直走査期間毎に、N行分の水平走査期間だけアクティブ状態となる基準パルス信号を生成する基準パルス生成部と、前記水平走査期間毎に、前記基準パルス信号を1桁ずつシフトさせて前記マトリクスアレイの走査電極に出力するシフトレジスタと、有して成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマトリクス駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のマトリクスアレイ駆動装置を有して成ることを特徴とするディスプレイ。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のマトリクスアレイ駆動装置を有して成ることを特徴とするイメージセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−48061(P2009−48061A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215744(P2007−215744)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】