説明

マニピュレータ機構

【課題】十分な強度の付与と軽量化を両立させることが出来、然も過大な外力の作用によってアームが折れ曲がったときにも復旧が可能な伸縮式のマニピュレータ機構を提供する。
【解決手段】本発明に係るマニピュレータ機構は、アーム1と、アーム1の基端部が連結されてアーム1の巻き取り及び繰り出しを行なうアーム繰り出し装置2とを具え、アーム1は、弾性を有する複数本のテープ41を束ねてなるテープ集合体4と、テープ集合体4の長手方向に間隔をおいてテープ集合体4に装着されて、前記複数本のテープ41を互いに結束する複数の結束部材5とを具え、前記複数本のテープ41は、1本の連続する帯状弾性資材46を折り畳んで構成され、帯状弾性資材46の一方の端部がアーム繰り出し装置2に巻き取られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアーム等に用いられるマニピュレータ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のマニピュレータ機構においては、伸縮可能であると共に、外力の作用に対して十分な強度を有し、然も軽量であることが要求される。そこで、従来より種々の機構が提案されている。例えば、1本の帯状の板バネをドラムの周囲に巻き付けて該ドラムから板バネを繰り出し、若しくは該ドラムに板バネを巻き取る構成により、該板ばねを伸縮可能な作業アームとして利用する軽荷重用アクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
又、複数本のチューブが鉛直方向に伸縮自在に連結され、これらのチューブの内部を1本の金属テープが貫通して、その先端部が先端のチューブから上方へ突出すると共に、その基端部がテープハウジング内に巻き取られている伸縮式のアンテナマストが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
更に又、外径の異なる2本の筒状部材を同軸上に配置して1本のアームが構成されており、各筒状部材は、金属製の帯板をその長手方向に中心軸を有する筒状にプレス成形してなり、各筒状部材を弾性変形させて筒状から帯板に展開しつつロール状に巻き取ることにより、アームを収縮させ、又は、ロール状に巻き取れた部材を帯板から筒状に弾性復帰させつつ巻き戻すことにより、2本の筒状部材を組み合わせて1本のアームを構成すると共に該アームを伸張させる、伸縮式のアーム機構が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特公平9−11178号公報
【特許文献2】米国特許第4426650号公報
【特許文献3】米国特許第3975581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の軽荷重用アクチュエータにおいては、作業アームが1本の板バネから構成されているに過ぎないため、作業アームに大きな荷重が作用すると、作業アームが折れ曲がる問題があり、軽荷重の用途に限定される欠点があった。
【0006】
又、上述の伸縮式アンテナマストにおいては、複数本のチューブの内部を貫通する金属テープは単にマストを伸縮させるものに過ぎず、マストの強度は複数本のチューブによって保持されているため、ロボットアームとして利用する場合、これらのチューブが軽量化の妨げとなる問題がある。
【0007】
更に又、上述の2本の筒状部材を同軸上に配置してなる伸縮式のアーム機構においては、十分な強度を発揮させるために、厚さの大きな帯板を用いて筒状部材を形成する必要があり、これによってアームの重量が大きくなる問題があった。
【0008】
この様に、従来のマニピュレータ機構においては、十分な強度を与えることと軽量化することの両立が困難である問題があった。又、過大な外力の作用によってアームが折れ曲がると、アームの折れ曲がり箇所に塑性変形が生じて復旧が不可能となる問題があった。
【0009】
本発明の目的は、十分な強度の付与と軽量化を両立させることが出来、然も過大な外力の作用によってアームが折れ曲がったときにも復旧が可能な伸縮式のマニピュレータ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマニピュレータ機構は、先端部と基端部を有するアーム(1)と、該アーム(1)の基端部が連結されて該アーム(1)の巻き取り及び繰り出しを行なうアーム繰り出し装置(2)とを具え、該アーム(1)は、弾性を有する複数本のテープ(41)を束ねてなるテープ集合体(4)と、前記テープ集合体(4)の長手方向に間隔をおいてテープ集合体(4)に摺動可能に装着されて、前記複数本のテープ(41)を互いに結束する複数の結束部材(5)とを具えている。
ここで、前記複数本のテープ(41)は、1本の連続する帯状弾性資材(46)を折り畳んで構成されている。
尚、前記テープ(41)は、バネ性を有する金属製若しくは合成樹脂製の帯板から形成されており、適度な弾性と剛性を有している。
【0011】
そして、前記帯状弾性資材(46)の一方の端部がアーム繰り出し装置(2)に巻き取られると共に、該帯状弾性資材(46)の他方の端部がアーム繰り出し装置(2)に対して一定の位置に固定されている。
或いは、前記帯状弾性資材(46)の一方の端部がアーム繰り出し装置(2)に巻き取られると共に、該帯状弾性資材(46)の他方の端部がアーム(1)の先端部に固定されている。
【0012】
前記結束部材(5)には、前記複数本のテープ(41)が摺動可能に貫通して複数本のテープ(41)の互いの離間を阻止するための1つのガイド溝(51)が開設され、該ガイド溝(51)内を貫通する複数本のテープ(41)は、その長手方向に伸びるそれぞれの両側端縁にて、互いに接触している。或いは、前記結束部材(5)には、前記複数本のテープ(41)のそれぞれが摺動可能に貫通して複数本のテープ(41)の互いの離間を阻止するための複数のガイド溝(51)が開設され、該複数のガイド溝(51)内を貫通する複数本のテープ(41)は互いに離間している。
【0013】
上記本発明のマニピュレータ機構においては、アーム繰り出し装置(2)から帯状弾性資材(46)を繰り出し、或いは帯状弾性資材(46)をアーム繰り出し装置(2)により巻き取ることによって、アーム(1)が伸縮することになる。
アーム繰り出し装置(2)からアーム(1)が繰り出された状態で、該アーム(1)が、複数本のテープ(41)を束ねてなるテープ集合体(4)を主骨とし、これら複数本のテープ(41)が複数箇所で結束部材(5)により互いの位置関係を拘束されているので、1本のテープ(41)の剛性が十分に高いものでなくても、複数本のテープ(41)が束ねられたテープ集合体(4)は高い剛性を発揮する。
【0014】
又、アーム繰り出し装置(2)から繰り出されたアーム(1)に対し、仮にテープ集合体(4)の剛性を上回る過大な外力が作用してアーム(1)が折れ曲がったとしても、テープ集合体(4)を構成する複数本のテープ(41)が複数箇所で結束部材(5)により互いの位置関係を拘束されているので、これら複数本のテープ(41)が十分な弾性復帰力を発揮して、アーム(1)は元の直線状の形態に戻り得る。
【0015】
アーム(1)が自身の弾性復帰力によって元の直線状の形態に戻らない場合は、折れ曲がったアーム(1)の復旧操作を行なう。例えば、アーム(1)を鉛直下方へ垂れ下げる操作や、アーム(1)の先端を地面等に押し当てて強制的に復旧させる操作の他、アーム(1)を一旦巻き戻して収縮させた後に伸張させる操作が有効である。
【0016】
具体的構成において、テープ集合体(4)を構成する複数本のテープ(41)は、アーム繰り出し装置(2)から繰り出された状態で、テープ集合体(4)の集合中心を原点とする円座標において180度以下の角度領域に各テープ(41)の断面形状が収容される様、円陣に配置されている。例えば、円座標において90度、120度、或いは180度の角度領域にそれぞれテープ(41)を配置する構成が採用可能である。これによって、特性の方向に曲がり難いテープ集合体(4)を実現することが出来る。
【0017】
又、テープ集合体(4)を構成する複数本のテープ(41)はそれぞれ、長手方向に直交する断面が円弧状に形成され、凸曲面からなる背面を互いに対向させた背中合わせの位置関係、若しくは凹曲面からなる腹面を互いに対向させた腹合わせの位置関係、或いはこれらの位置関係を組み合わせた位置関係で束ねられている。これによって、テープ集合体(4)の剛性が増大すると共に、アーム(1)が折れ曲がったときの弾性復帰動作がより確実なものとなる。
【0018】
ここで、複数本のテープ(41)をそれぞれの両側端縁にて互いに接触させた構成によれば、折れ曲がりに対して極めて高い強度を発揮する。これに対し、複数本のテープ(41)を互いに離間させた構成によれば、アーム(1)が過負荷によって折れ曲がった場合にも十分な可逆性をもって元の形態に復旧させることが出来る。
【0019】
具体的構成において、前記複数の結束部材(5)は、アーム(1)の伸張状態にて互いの間隔を規定するための連結機構によって互いに連結されており、該連結機構は、アーム(1)の収縮に伴って収縮し、前記複数の結束部材(5)の互いの間隔を狭めるものである。
【0020】
ここで、アーム(1)の伸張状態における前記複数の結束部材(5)の間隔は、アーム(1)の基端部から先端部に向かって徐々に増大する様に規定されている。従って、結束部材(5)は必要最小限の個数で、テープ集合体(4)を構成する複数のテープ(41)を結束し、テープ集合体(4)の全長に亘って高い剛性を与えることが出来る。
【0021】
又、他の具体的構成において、アーム繰り出し装置(2)は、テープ集合体(4)を構成する複数本のテープ(41)を巻き取るための1或いは複数のリール(21)を具え、該リール(21)を回転させることによってアーム(1)の巻き取り及び繰り出しが可能である。前記複数のリール(21)は、それらの回転軸がアーム(1)の長手方向と直交する面内で互いに交叉する位置関係、若しくは、それらの回転軸がアーム(1)の長手方向と直交する面内で互いに平行となる位置関係に配置されている。
【0022】
又、前記複数の結束部材(5)の内、アーム(1)の最も基端寄りに位置する結束部材(5a)は、アーム繰り出し装置(2)に対して固定され、若しくはアーム(1)の繰り出し方向に沿う一定範囲内でスライド可能に取り付けられている。従って、複数のリール(21)から繰り出された複数本のテープ(41)は、アーム(1)の最も基端寄りに位置する結束部材(5a)に至る過程で、各リール(21)の出口における姿勢から捻れ等の弾性変形を生じて、該結束部材(5a)に開設されているガイド溝(51)へ嵌入することになる。そして、次の結束部材(5)から先端機構(3)までの領域で、複数本のテープ(41)は、所定の姿勢で互いの相対位置を一定に保つことになる。
【0023】
ここで、前記結束部材(5a)を一定範囲内でスライド可能に取り付けた構成によれば、アーム(1)の収縮状態におけるアーム繰り出し装置(2)から結束部材(5a)までの遷移変形部(40)が短くなってコンパクトな収納が可能となり、且つ、アーム(1)の繰り出し動作においては遷移変形部(40)を伸張させてアーム(1)の繰り出しをスムーズに行なうことが出来る。
【0024】
前記結束部材(5a)を一定範囲内でスライド可能に取り付ける方法としては、アーム繰り出し装置(2)のケース内に結束部材(5a)を収容して、該ケースによって結束部材(5a)のスライドを案内する構成が可能であり、これによって簡易な構造で実現が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るマニピュレータ機構によれば、テープ集合体(4)を構成する複数本のテープ(41)をそれぞれ厚さの薄い帯板から形成して軽量化を図ったとしても、テープ集合体(4)は十分な剛性を発揮する。又、仮に一時的に過大な外力が作用してアーム(1)が折れ曲がったとしても復旧が可能であるため、極限までテープ(41)の軽量化を図ることが出来る。然も、結束部材(5)は必要最小限の個数を装備すればよいから、軽量化の妨げとはならない。
従って、本発明に係るマニピュレータ機構は、十分な強度の付与と軽量化の両立が可能であり、然も過大な外力の作用によってアームが折れ曲がったときにも復旧が可能であるため、伸縮式のロボットアームとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。先ず、本発明の開発過程で考案したマニピュレータ機構について述べた後、本発明に係るマニピュレータ機構について説明する。
本発明の開発過程で考案したマニピュレータ機構は、図1(a)(b)に示す如く、先端部に先端機構(3)を具えたアーム(1)と、該アーム(1)の基端部が連結されて該アーム(1)の巻き取り及び繰り出しを行なうアーム繰り出し装置(2)とを具えている。
【0027】
アーム(1)は、図2に示す如く、バネ鋼板からなる3本のテープ(41)(41)(41)を束ねてなるテープ集合体(4)と、該テープ集合体(4)の長手方向に間隔をおいてテープ集合体(4)に摺動可能に装着された複数の結束部材(5)とを具えている。テープ集合体(4)を構成する3本のテープ(41)(41)(41)はそれぞれ、長手方向に直交する断面が円弧状に形成されている。そして、これら3本のテープ(41)(41)(41)は、テープ集合体(4)の集合中心を原点とする円座標において120度の角度領域に各テープ(41)の断面形状が収容される様、円陣に配置され、凸曲面からなる背面を互いに対向させた背中合わせの位置関係を有している。
【0028】
アーム(1)は、テープ集合体(4)を構成する3本のテープ(41)(41)(41)がアーム繰り出し装置(2)によってロール状に巻き取られることによって図1(b)の如く収縮し、アーム繰り出し装置(2)から3本のテープ(41)(41)(41)が同時に繰り出されることによって図1(a)の如く伸張する。図1(a)に示す伸張状態で、アーム(1)は、テープ集合体(4)が3本のテープ(41)(41)(41)の束からなる構成により、十分な剛性を発揮して、先端機構(3)に作用する外力によって容易に折れ曲がることはない。
【0029】
図2に示す様に、結束部材(5)には、テープ集合体(4)が摺動可能に貫通して3本のテープ(41)(41)(41)の姿勢及び相対位置を一定に保つための3つのガイド溝(51)(51)(51)が、結束部材(5)の中央部から120度の角度差で放射状に開設されている。
【0030】
又、図3に示す如く、結束部材(5)には、結束部材(5)の中央開口と対向して、3つの凹部(52)(52)(52)がガイド溝(51)(51)(51)と60度の位相差で形成され、これらの凹部(52)(52)(52)にそれぞれローラ(53)が配備されている。これらのローラ(53)(53)(53)は、図4に示す様にガイド溝(51)(51)(51)を貫通する3本のテープ(41)(41)(41)の各腹面中央部に接触して、これらのテープ(41)(41)(41)の結束部材(5)に対する相対移動をスムーズなものとしている。
【0031】
図1(a)に示す如く、複数の結束部材(5)は、断面円形のロープ状の連結コード(6)によって互いに連結されており、アーム(1)の伸張状態では、緊張状態となって複数の結束部材(5)の互いの間隔を規定する。ここで、隣接する結束部材(5)どうしの間隔は、アーム(1)の基端部から先端部に向かって徐々に増大する様に規定されている。図1(b)の如くアーム(1)の収縮状態では、各連結コード(6)が弛んで、複数の結束部材(5)は互いに当接することになる。
【0032】
尚、複数の結束部材(5)の内、最もアーム(1)の基端寄りの結束部材(5a)は、アーム繰り出し装置(2)のケーシングに固定されている。これに対し、残りの複数の結束部材(5)は、テープ集合体(4)に対して摺動可能に係合している。
【0033】
上記アーム(1)においては、過大な外力の作用によってテープ集合体(4)が途中で折れ曲がり、折れ曲がり箇所で3本のテープ(41)(41)(41)の円陣の配置が潰れたとしても、結束部材(5)が装着された複数箇所では、テープ集合体(4)を構成する3本のテープ(41)(41)(41)が上述の円陣の配置に維持されるので、外力が除去されると同時に3本のテープ(41)(41)(41)は弾性復帰し、アーム(1)は元の直線状の形態に戻ることになる。
【0034】
特に、テープ集合体(4)を構成する3本のテープ(41)(41)(41)がそれぞれの背面を互いに対向させて円陣に配置されているので、3本のテープ(41)(41)(41)がそれぞれの腹面を互いに対向させて円陣に配置された構成と比べて、折れ曲がり箇所での変形量が少なく、テープ(41)が塑性変形を生じることはない。
【0035】
アーム繰り出し装置(2)はリール駆動機構(22)によって構成されており、テープ集合体(4)を構成する3本のテープ(41)を巻き取るための1或いは複数のリール(21)を具え、モータ(23)の駆動によりリール(21)を正逆に回転させることによって、アーム(1)の伸縮を行なうものである。ここで、各テープ(41)は、リール(21)によってロール状に巻き取られ、或いは、リール(21)から繰り出されることになる。
【0036】
例えば図5(a)(b)(c)に示すアーム繰り出し装置(2)は、それぞれがリールを内蔵した3つのリールケース(24)(24)(24)から構成されており、これらのリールケース(24)(24)(24)は、リールの回転軸がアーム(1)の長手方向と直交する面内で互いに120度の位相差で交叉する位置関係に配置されている。ここで、3つのリールケース(24)(24)(24)のリールは、ウォームギア等を用いた連動機構(図示省略)によって、回転の同期が図られている。
【0037】
図5(b)の如く3つのリールケース(24)(24)(24)から繰り出される3本のテープ(41)(41)(41)は、円座標の120度の角度領域に各テープ(41)の断面形状が収容される様に円陣に配置されているものの、互いに大きく離間しているが、図5(c)の如く、第1番目の結束部材(5a)を通過した3本のテープ(41)(41)(41)は、円座標の120度の角度領域に各テープ(41)の断面形状が収容される様に円陣に配置されると共に、互いに背中合わせで接触している。この場合、アーム繰り出し装置(2)から繰り出されるテープ集合体(4)には、第1番目の結束部材(5a)に至る領域に、3本のテープ(41)(41)(41)が互いに接近する遷移変形部(40)が生じることになる。
【0038】
又、図6(a)(b)(c)に示すアーム繰り出し装置(2)は、それぞれがリールを内蔵した3つのリールケース(24)(24)(24)から構成されており、これらのリールケース(24)(24)(24)は、リールの回転軸がアーム(1)の長手方向と直交する面内で互いに平行となる位置関係に配置されている。同様に、3つのリールケース(24)(24)(24)のリールは、歯車を用いた連動機構(図示省略)によって、回転の同期が図られている。
【0039】
図6(b)の如く3つのリールケース(24)(24)(24)から繰り出される3本のテープ(41)(41)(41)は、互いに離間した相対位置で平行に対峙しており、円陣の配置を有していないが、図6(c)の如く、第1番目の結束部材(5a)を通過した3本のテープ(41)(41)(41)は、円座標の120度の角度領域に各テープ(41)の断面形状が収容されて、円陣に配置されると共に、互いに接触している。この場合、アーム繰り出し装置(2)から繰り出されるテープ集合体(4)には、第1番目の結束部材(5a)に至る領域に、3本のテープ(41)(41)(41)がねじれつつ互いに接近する遷移変形部(40)が生じることになる。
【0040】
又、図7(a)(b)(c)に示すアーム繰り出し装置(2)は、1つのリールケース(25)から構成されており、該リールケース(25)内のリールに、3本のテープが図7(b)に示す背中合わせの相対姿勢で巻き付けられている。該アーム繰り出し装置(2)によれば、リール連動機構は不要であり、コンパクト化が可能である。
【0041】
図7(b)の如くリールケース(25)から繰り出される3本のテープ(41)(41)(41)は、互いに離間した相対位置で平行に対峙しており、円陣の配置を有していないが、図7(c)の如く、第1番目の結束部材(5a)を通過した3本のテープ(41)(41)(41)は、円座標の120度の角度領域に各テープ(41)の断面形状が収容されて、円陣に配置されると共に、互いに接触している。この場合、アーム繰り出し装置(2)から繰り出されるテープ集合体(4)には、第1番目の結束部材(5a)に至る領域に、3本のテープ(41)(41)(41)がねじれつつ互いに接近する遷移変形部(40)が生じることになる。
【0042】
更に、図8(a)又は(b)に示すアーム繰り出し装置(2)においては、3つのリールケース(24)(24)(24)を立てた姿勢に配置しており、これらのリールケース(24)(24)(24)のリールの回転軸がアーム(1)の長手方向と直交し且つ互いに平行となる位置関係を有している。これらのリールケース(24)(24)(24)のリールは連動ギア(図示省略)により互いに連動して回転するようになっている。該アーム繰り出し装置(2)においても、アーム繰り出し装置(2)から繰り出されるテープ集合体(4)には、第1番目の結束部材(5a)に至る領域に、2本のテープ(41)(41)がねじれつつ互いに接近する遷移変形部(40)が生じることになる。尚、図8(a)に示すアーム繰り出し装置(2)においては、遷移変形部(40)でねじれを生じるべき2本のテープ(41)(41)を繰り出すリールケース(24)(24)が、遷移変形部(40)でねじれを生じる必要のない1本のテープ(41)を繰り出すリールケース(24′)の前方に配置されているのに対し、図8(b)に示すアーム繰り出し装置(2)においては、遷移変形部(40)でねじれを生じるべき2本のテープ(41)(41)を繰り出すリールケース(24)(24)が、遷移変形部(40)でねじれを生じる必要のない1本のテープ(41)を繰り出すリールケース(24′)の後方に配置されている。
【0043】
一方、図9に示すアーム繰り出し装置(2)においては、リールケース(20)内に、リール本体(42)の回転を案内する複数のローラ(26)を配備すると共に、リール本体(42)をテープ繰り出し方向に回転付勢するぜんまい(27)を配備し、テープ集合体(4)の繰り出しを付勢すると共に、ぜんまい(27)の巻き取り時にはラチェット機構等で逆回転を阻止した構成が採用されている。これによって、アーム(1)の迅速な伸張動作を実現することが出来る。
【0044】
アーム(1)の先端部に取り付けられる先端機構(3)は、特定の作業若しくは動作を行なうための機能を有しているものであって、例えば図10(a)に示す如く開閉動作が可能な一対の突片(31)(31)を具えたもの、図10(b)の如くカメラ(32)を具えたもの、図10(c)の如く着地のための支え部材(33)を具えたもの、図10(d)の如く移動のための車輪(34)を具えたもの等、種々の構成が採用可能である。
【0045】
本発明に係るマニピュレータ機構は、上述のマニピュレータ機構を改良したものであって、図11は、本発明に係るマニピュレータ機構の構成例を示している。該構成例においては、1本の断面円弧状の帯状弾性資材(46)を2つに折り曲げて、2本のテープ(41)(41)が構成されており、帯状弾性資材(46)の一方の端部(41b)はアーム繰り出し装置(2)に固定され、帯状弾性資材(46)の他方の端部はアーム繰り出し装置(2)のリール(21)に巻き取られている。
【0046】
この様にして構成されたテープ集合体(4)には複数の結束部材(5)が装着されており、これらの結束部材(5)は2本の連結コード(6)によって互いに連結されて、伸縮式のアーム(1)が構成されている。
【0047】
アーム(1)の先端部には先端ケース部(45)が設けられ、該先端ケース部(45)内には、ローラ(43)が枢支されると共に、該ローラ(43)の外周面に対向するガイド壁(44)が形成されている。帯状弾性資材(46)の折り曲げ部分(41a)は、ローラ(43)に巻き付けられると共に、該ガイド壁(44)によってガイドされることにより、スムーズに180度の方向転換を行なうことが可能である。
【0048】
アーム繰り出し装置(2)には、リール(21)に巻き付けられたテープ(41)の外周面に接触して、テープ(41)の繰り出しと巻き取りを行なうテープ駆動ローラ(28)が配備されている。テープ駆動ローラ(28)の回転によって、リール(21)からテープ(41)が繰り出されると、該テープ(41)は、先端ケース部(45)内にて180度の方向転換を行なって、他方のテープ(41)側へ移行し、これに伴ってアーム(1)は伸張することになる。
【0049】
図12及び図13に示す様に、結束部材(5)には、前記2本のテープ(41)(41)が貫通すべき2つの円弧状のガイド溝(51)(51)が開設されると共に、両ガイド溝(51)(51)の間に、2本の連結コード(6)(6)が貫通して結束部材(5)に固定されている。連結コード(6)は帯状を呈しており、図14及び図15に示す如くアーム(1)が収縮した状態で、連結コード(6)は、予め施されている折り目加工によって図16の如く屏風状に折り畳まれる。従って、連結コード(6)が2本のテープ(41)(41)の間からはみ出すことがないばかりでなく、2本のテープ(41)(41)が互いに絡み合うことはない。
上述の如くテープ集合体(4)を1本の帯状弾性資材(46)から形成することによって、テープ集合体(4)の量産性を向上させることが出来る。
【0050】
図17A(a)〜(f)は、結束部材(5)の種々の構成例を示している。図17A(a)(b)(c)に示す結束部材(5)には、円弧状の3つのガイド溝(51)(51)(51)が背中合わせの位置関係に開設され、各ガイド溝(51)に1本のテープ(41)が貫通する。これらの結束部材(5)によれば、断面円弧状の3本のテープ(41)を互いに背中合わせの位置関係に保持することが出来る。
【0051】
これに対し、図17A(d)(e)(f)に示す結束部材(5)には、円弧状の2つのガイド溝(51)(51)が互いに対向する向きに開設され、各ガイド溝(51)に1本のテープ(41)が貫通する。これらの結束部材(5)によれば、断面円弧状の2本のテープ(41)を互いに腹合わせの位置関係に保持することが出来る。
【0052】
又、図17A(a)(b)(d)(e)に示す結束部材(5)には、複数のガイド溝(51)の外側に複数の丸孔(55)が開設されると共に、複数のガイド溝(51)の内側に1或いは複数のスリット孔(56)が開設されている。尚、図17A(a)(d)に示す結束部材(5)の片面には、スリット孔(56)が開設されている領域に、凹部(57)が形成されており、該凹部(57)によって、アーム収縮時の連結コード(6)の収容空間が形成されている。一方、図17A(c)(f)に示す結束部材(5)には、複数のガイド溝(51)の内側にのみ1或いは複数のスリット孔(56)が開設されている。これらの丸孔(55)或いはスリット孔(56)の一部若しくは全てを利用して、連結コード(6)の固定が行なわれる。
【0053】
図17A(a)〜(f)に示す結束部材(5)によれば、アーム(1)が伸張した状態で、複数本のテープ(41)がそれぞれ結束部材(5)のガイド溝(51)によって個別に拘束されることになるので、各テープ(41)の伸張状態での形状精度や強度を上げることが出来る。又、アーム(1)が伸張した状態で、複数本のテープ(41)は互いに離間した状態に保持されているので、アーム(1)が過負荷によって折れ曲がったときのテープ(41)間の干渉が抑制されて、アーム(1)は安全に折れ曲がることになる。更に、複数のガイド溝(51)の内側に孔を開設して連結コード(6)を通すことが出来るので、アーム(1)が収縮したときにも連結コード(6)をアーム(1)内に拘束することが出来る。
【0054】
図17A(d)(e)(f)に示す結束部材(5)においては、ガイド溝(51)の溝幅が両端部に向かって溝幅が拡大している。これによって、アーム(1)が折れ曲がったときのテープ(41)の断面円弧状から断面直線状への変形を許容している。尚、結束部材(5)自体の弾性変形によって、アーム(1)が折れ曲がったときのテープ(41)の変形を許容する構成も採用可能である。
【0055】
図17Bは、6本のテープ(41)〜(42)と結束板(5)の更に他の構成例を示している。6本のテープ(41)〜(42)は、凸曲面からなる背面を互いに対向させた中央部の3本のテープ(41)(41)(41)と、これらの3本のテープ(41)(41)(41)に対して、凹曲面からなる腹面を対向させた外周部の3本のテープ(41)(41)(41)とから構成されている。結束板(5)には、6本のテープ(41)〜(42)が貫通すべき6つのガイド溝(51)と、連結コード(6)を通すための1つのスリット孔(56)とが開設されている。
【0056】
図18に示すマニピュレータ機構においては、アーム繰り出し装置(2)に、テープ(41)の基端部(41c)が巻き付けられたリール(21)を正逆に回転駆動するテープ伸縮用駆動モータ(29)が配備されると共に、該テープ(41c)の外周面を包囲して、コイルバネ(7)とローラ(73)とを交互に連結してなる押さえ機構が配備され、コイルバネ(7)の弾性収縮力によってローラ(73)をテープ(41c)の外周面に押し当てている。これによって、テープ伸縮用駆動ローラ(29)からテープ(41)が繰り出される過程におけるテープ(41)の膨らみが阻止されて、テープ(41)はスムーズに繰り出されることになる。
【0057】
尚、アーム(1)の先端部に外部負荷が作用すると、該負荷は、リール(21)に巻き付けられたテープ(41c)に反力として作用し、テープ(41c)の緊密な巻き取り状態が緩むことになるので、前記ローラ(73)の押圧力は、予想される外部負荷に耐え得る大きさに設定する必要がある。但し、前記ローラ(73)の押圧力を調整して、アーム(1)の先端部に外部負荷が作用したときに敢えてテープ(41c)の巻き取り状態を僅かに緩めることにより、隣接するローラ(73)(73)間で該テープ(41c)を膨らませ、これによって、リール(21)の逆回転に対する制動力を発生させることも可能である。
【0058】
図19に示すマニピュレータ機構においては、アーム繰り出し装置(2)に、テープ(41)の基端部(41c)が巻き付けられたリール(21)を駆動するテープ巻き取り用駆動モータ(71)が配備されると共に、該テープ(41c)の外周面に接触してテープ(41c)を繰り出すためのテープ繰り出し用駆動ローラ(72)が配備されている。従って、テープ巻き取り用駆動モータ(71)によるテープ巻き取り時の駆動力とテープ繰り出し用駆動ローラ(72)によるテープ繰り出し時の駆動力を個別に設定して、テープ巻き取り動作とテープ繰り出し動作に適した駆動系を構成することが出来る。これによって、テープ(41)に弛みを発生させることなく、テープ(41)の巻き取り及び繰り出しを行なうことが可能となる。尚、テープ巻き取り用駆動モータ(71)とテープ繰り出し用駆動ローラ(72)については、それぞれテープ巻き取り用とテープ繰り出し用に限定する構成に限らず、線速度と角速度の違いに配慮した上で、テープに対して同一方向の駆動力を与える構成も可能である。駆動モータ(71)と駆動ローラ(72)とを互いに連動させることも可能である。
【0059】
又、図20に示す如くアーム繰り出し装置(2)から、互いに平行な姿勢で3本のテープ(41d)(41d)(41e)が繰り出されるマニピュレータ機構においては、アーム(1)の収縮時に、アーム繰り出し装置(2)のリール中心寄りの1本のテープ(41e)が他の2本のテープ(41d)(41d)よりも低い巻き取り速度となるため、該1本のテープ(41e)に弛みが生じることになる。そこで、図21に示す如く、アーム繰り出し装置(2)には、アーム(1)の最も基端寄りに位置する結束部材(5a)とリール(21)との間を伸びる該1本のテープ(41e)の移動経路に沿って、ガイドローラ(81)とテンション付与ローラ(8)とを配備し、テンション付与ローラ(8)を該テープ(41e)に向けてバネ付勢することにより、該テープ(41e)に一定以上のテンションを与える。これによって、前記弛みが吸収されることになる。
【0060】
尚、前記テープ(41e)の弛みを吸収するためのテンション付与機構は、アーム繰り出し装置(2)に配備する構成に限らず、アーム(1)の先端部に配備することも可能である。又、テンション付与機構としては、テンション付与ローラ(8)をバネ付勢する構成に限らず、リールの回転と連動するカム機構や演算装置を利用して、テンション付与ローラを移動させることも可能である。
【0061】
上述のマニピュレータ機構によれば、例えば図22(a)の如くアーム(1)の伸縮を機材(9)の昇降作業に利用する形態や、図22(b)の如くアーム(1)の伸縮を車輌(91)の昇降動作に利用する形態や、図22(c)の如く車輌(91)に装備したアーム(1)を伸張させることによって狭所や高所の作業を行なう形態が考えられる。ここでアーム(1)の伸縮は遠隔操作によって行なうことが可能である。
【0062】
又、図23(a)の如く、アーム(1)の伸縮を利用して車輌(91)の溝乗り越え動作を実現し、或いは図23(b)の如く、前述のぜんまい等を用いたアーム(1)の急速伸張動作により車輌(91)の跳躍動作を実現することが出来る。
【0063】
更に、図24(a)の如く複数のマニピュレータ機構を用いて車輌(91)の高所間の移動を実現し、或いは図24(b)の如く車輪を具えた先端機構(3)によって車輌(91)の階段昇降を実現することも可能である。更に又、3本以上のアーム(1)を組み合わせて移動等の動作を実現することも可能である。
【0064】
本発明に係るマニピュレータ機構によれば、複数本のテープ(41)からなるテープ集合体(4)をアーム(1)の主骨とする構成により、種々の作業に伴って作用する外力に対してはアーム(1)に十分な強度を付与し、然も、テープ集合体(4)を複数の結束部材(5)によって結束した構成により、過大な外力の作用時にはテープ集合体(4)を復旧可能に弾性変形させてアーム(1)の破損を防止すると共に、アーム(1)の軽量化を図ることが出来る。
【0065】
又、本発明に係るマニピュレータ機構によれば、アーム(1)の伸縮を利用して種々の作業や動作を実現することが出来るので、災害地域や高所における危険な作業や重労働の軽減に有効利用が可能である。例えば河川などの救助作業で、長く伸張させたアーム(1)を救助ロープの代わりとして利用することが出来る。高所における作業の例としては、安全帯(命綱)の取り外しを挙げることが出来るが、低層建築物における作業にも有効である。更に、床下等の狭所における作業にも有効である。そして、作業時には、アーム(1)を縮めることによってコンパクト化されるので、作業の邪魔になることはない。その他、迅速なアームの伸縮により、動物の捕獲や、動物に対する威嚇手段としても使用可能である。
【0066】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えばアーム(1)は、1本の帯状弾性資材(46)を2つに折り畳んで2本のテープ(41)(41)から構成する例に限らず、3つ以上に折り畳んで3本のテープ(41)(41)(41)から構成する例や、更にはそれ以上の本数、例えば6本のテープ(41)〜(41)をハニカム状に組み合わせた構成など、種々の構成が採用可能である。
【0067】
例えば図25は、1本の帯状弾性資材(46)を3つに折り畳んで3本のテープ(41)(41)(41)からアーム(1)を構成した例を示している。図示の如く、帯状弾性資材(46)はアーム繰り出し装置(2)から繰り出され、アーム(1)の先端部にて先端ケース部(45)内のローラ(43)及びガイド壁(44)で折り返された後、アーム繰り出し装置(2)内のローラ(43)及びガイド壁(44)で再び折り返され、その先端部(41b)が先端ケース部(45)に固定されている。
【0068】
又、テープ(41)はバネ鋼板に限らず、適度なバネ性と剛性を有する合成樹脂板や、金属と合成樹脂の複合材料から形成することも可能である。又、テープ集合体(4)の集合中心を原点とする円座標の各角度領域には、複数枚のテープ(41)を互いに重ね合わせて配置する構成も採用可能である。円座標の1つの角度領域としては、90度、120度、或いは180度等、360度を分割した180度以下の種々の角度領域を採用することが出来る。
【0069】
更に、テープ(41)は、外部負荷が作用しない自由状態で直線状に伸張するように予め成型されている構成に限らず、自由状態で渦巻き状に巻き取られるように予め成型されている構成も可能である。この様な場合においても、複数本のテープ(41)は伸張状態で複数の結束部材(5)により結束され、これらのテープ(41)の集合体として、アーム(1)は剛性を発揮し、直線状態を維持することになる。
【0070】
更に又、複数の結束部材(5)を相互に連結しない構成もあり得る。即ち、アーム(1)が伸張する過程で、アーム繰り出し装置(2)側に蓄積された複数の結束部材(5)を、適宜間隔をおいてテープ(41)と共に順次繰り出す構成である。結束板(5)の繰り出し間隔は、一定、或いはテープ集合体(4)が予測される負荷に耐え得る任意の間隔とすることが出来る。
この場合、アーム伸張部においてはテープ(41)が結束部材(5)に対して固定されるに対し、アーム繰り出し装置(2)側で蓄積された複数の結束部材(5)については、テープ(41)が結束部材(5)に対して固定されず、テープ(41)が結束部材(5)内を伸縮両方向に通過する必要がある。このような具体例としては、テープ集合体(4)の長手方向とは直交する平面に対して湾曲する方向のばね性を有する結束部材を採用し、この様な結束部材を長手方向に圧迫して蓄積し、個々に繰り出しと収納を行なう蓄積部を設けることが考えられる。結束部材の繰り出しと収納を行なうには、スクリュー機構やラッチ機構が適用可能である。
【0071】
ここで、テープ(41)が貫通する結束部材(5)のガイド溝(51)の溝幅をテープ(41)の厚さよりも僅かに大きい程度に設定すると、結束部材(5)のばね性によって、通常状態ではテープ断面に対して結束部材(5)の溝幅が狭まり、テープ(41)を締め付けるため、結束部材に対してテープが固定される。一方、蓄積部においては、結束部材(5)は平面状になるよう圧迫されることにより、テープ(41)の締め付けが解除されてテープ(41)の通過が可能となる。この様な機能は、ロープウェーにおける搬送用動力ロープに対するゴンドラの固定/開放機能と同じものである。
尚、蓄積部の構成としては、複数の結束部材(5)がアーム繰り出し装置(2)側に蓄積されて順次繰り出される構成に限らず、アーム先端側に蓄積されて順次繰り出される構成や、これらの構成を組み合わせた構成も採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の開発過程で考案したマニピュレータ機構の伸張状態(a)と収縮状態(b)を示す側面図である。
【図2】テープ集合体と結束部材の拡大斜視図である。
【図3】結束部材の正面図である。
【図4】結束部材にテープ集合体が貫通している状態を示す正面図である。
【図5】アーム繰り出し装置の構成を示す側面図(a)及び2つの正面図(b)(c)である。
【図6】他のアーム繰り出し装置の構成を示す側面図(a)及び2つの正面図(b)(c)である。
【図7】他のアーム繰り出し装置の構成を示す側面図(a)及び2つの正面図(b)(c)である。
【図8】更に他のアーム繰り出し装置の構成を示す側面図(a)(b)である。
【図9】アーム繰り出し装置の内部構造を示す側面図である。
【図10】先端機構の種々の構成例を示す側面図(a)〜(d)である。
【図11】本発明に係るマニピュレータ機構の構成例を示す側面図である。
【図12】該マニピュレータ機構の正面図である。
【図13】結束部材の正面図である。
【図14】該マニピュレータ機構の収縮状態を示す側面図である。
【図15】該マニピュレータ機構の収縮状態を示す平面図である。
【図16】連結コードが折り畳まれる様子を示す側面図である。
【図17A】結束部材の各種構成例を示す正面図(a)〜(f)である。
【図17B】テープの配置と結束部材についての更に他の構成例を示す正面図である。
【図18】アーム繰り出し装置の他の構成例を示す側面図である。
【図19】アーム繰り出し装置の更に他の構成例を示す側面図である。
【図20】3本のテープの配置例を示す正面図である。
【図21】テンション付与機構の構成例を示す側面図である。
【図22】本発明に係るマニピュレータ機構の応用例を示す図(a)(b)(c)である。
【図23】本発明に係るマニピュレータ機構の他の応用例を示す図(a)(b)である。
【図24】本発明に係るマニピュレータ機構の更に他の応用例を示す図(a)(b)である。
【図25】本発明に係るマニピュレータ機構の他の構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0073】
(1) アーム
(2) アーム繰り出し装置
(21) リール
(22) リール駆動機構
(23) モータ
(3) 先端機構
(4) テープ集合体
(40) 変形遷移部
(41) テープ
(5) 結束部材
(51) ガイド溝
(53) ローラ
(6) 連結ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と基端部を有するアーム(1)と、該アーム(1)の基端部が連結されて該アーム(1)の巻き取り及び繰り出しを行なうアーム繰り出し装置(2)とを具え、該アーム(1)は、弾性を有する複数本のテープ(41)を束ねてなるテープ集合体(4)と、前記テープ集合体(4)の長手方向に間隔をおいてテープ集合体(4)に装着されて、前記複数本のテープ(41)を互いに結束する複数の結束部材(5)とを具え、前記複数本のテープ(41)は、1本の連続する帯状弾性資材(46)を折り畳んで構成されていることを特徴とするマニピュレータ。
【請求項2】
前記帯状弾性資材(46)の一方の端部がアーム繰り出し装置(2)に巻き取られると共に、該帯状弾性資材(46)の他方の端部がアーム繰り出し装置(2)に対して一定の位置に固定されている請求項1に記載のマニピュレータ機構。
【請求項3】
前記帯状弾性資材(46)の一方の端部がアーム繰り出し装置(2)に巻き取られると共に、該帯状弾性資材(46)の他方の端部がアーム(1)の先端部に固定されている請求項1に記載のマニピュレータ機構。
【請求項4】
前記アーム(1)の先端部及び/又はアーム繰り出し装置(2)には、前記帯状弾性資材(46)の180度の方向転換を案内するガイド機構が配備されている請求項1乃至請求項3の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項5】
前記複数本のテープ(41)は、アーム繰り出し装置(2)から繰り出された状態で、テープ集合体(4)の集合中心を原点とする円座標において180度以下の角度領域に各テープ(41)の断面形状が収容される様、円陣に配置されている請求項1乃至請求項4の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項6】
テープ集合体(4)を構成する複数本のテープ(41)はそれぞれ、長手方向に直交する断面が円弧状に形成され、凸曲面からなる背面を互いに対向させた背中合わせの位置関係、又は凹曲面からなる腹面を互いに対向させた腹合わせの位置関係、或いはこれらの位置関係を組み合わせた位置関係で束ねられている請求項1乃至請求項5何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項7】
前記結束部材(5)には、前記複数本のテープ(41)が摺動可能に貫通して複数本のテープ(41)の互いの離間を阻止するための1つのガイド溝(51)が開設され、該ガイド溝(51)内を貫通する複数本のテープ(41)は、その長手方向に伸びるそれぞれの両側端縁にて、互いに接触している請求項1乃至請求項6の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項8】
前記結束部材(5)には、前記複数本のテープ(41)のそれぞれが摺動可能に貫通して複数本のテープ(41)の互いの離間を阻止するための複数のガイド溝(51)が開設され、該複数のガイド溝(51)内を貫通する複数本のテープ(41)は互いに離間している請求項1乃至請求項6の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項9】
前記複数の結束部材(5)は、アーム(1)の伸張状態にて互いの間隔を規定するための連結機構によって互いに連結されており、該連結機構は、アーム(1)の収縮に伴って収縮し、前記複数の結束部材(5)の互いの間隔を狭める請求項1乃至請求項8の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項10】
前記連結機構は、前記複数の結束部材(5)を互いに連結する1或いは複数本の連結コード(6)によって構成されている請求項9に記載のマニピュレータ機構。
【請求項11】
前記連結コード(6)は、前記複数本のテープ(41)によって包囲されたアーム中央空間に収容されている請求項10に記載のマニピュレータ機構。
【請求項12】
前記アーム(1)の伸張状態における前記複数の結束部材(5)の間隔は、アーム(1)の基端部から先端部に向かって徐々に増大する様に規定されている請求項1乃至請求項11の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項13】
前記複数の結束部材(5)の内、アーム(1)の最も基端寄りに位置する結束部材(5a)は、アーム繰り出し装置(2)に対して固定され、若しくはアーム(1)の繰り出し方向に沿う一定範囲内でスライド可能に取り付けられている請求項1乃至請求項12の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項14】
アーム繰り出し装置(2)は、テープ集合体(4)を構成する複数本のテープ(41)を巻き取るための1或いは複数のリール(21)を具え、該リール(21)を回転させることによってアーム(1)の巻き取り及び繰り出しが可能である請求項1乃至請求項13の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項15】
アーム繰り出し装置(2)には、前記リール(21)に巻き付けられたテープ(41)の外周面に接触してテープ(41)の繰り出しを行なう駆動ローラ(72)と、前記リール(21)を回転駆動してテープ(41)の巻き取りを行なう駆動モータ(71)とが装備されている請求項14に記載のマニピュレータ機構。
【請求項16】
アーム繰り出し装置(2)には、前記リール(21)に巻き付けられたテープ(41)の外周面を周囲から押圧して、テープ(41)の膨らみを阻止するテープ押圧機構が装備されている請求項14に記載のマニピュレータ機構。
【請求項17】
アーム繰り出し装置(2)から繰り出されてアーム(1)の先端部に至るテープ(41)に対して一定以上のテンションを与えるテンション付与機構が装備されている請求項1乃至請求項16の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項18】
アーム(1)の先端部に先端機構(3)を具え、該先端機構(3)は、特定の作業若しくは動作を行なうための機能を有している請求項1乃至請求項17の何れかに記載のマニピュレータ機構。
【請求項19】
前記テープ(41)は、バネ性を有する金属製若しくは合成樹脂製の帯板から形成されている請求項1乃至請求項18の何れかに記載のマニピュレータ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−196026(P2009−196026A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39483(P2008−39483)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(508053784)
【Fターム(参考)】