説明

マルチチップモジュール構造を有する高周波回路

【課題】マイクロ波・ミリ波における集積回路寸法を小型化し、安価なマルチチップモジュール構造を有する高周波回路を提供する。
【解決手段】複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3をそれぞれ形成する半導体基板161〜163と、複数のキャパシタC1〜C4をそれぞれ形成する第1誘電体基板141〜144と、複数の整合回路をそれぞれ形成する第2誘電体基板181,182とを備え、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3は直列接続されたことを特徴とするマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチップモジュール構造を有する高周波回路に関し、特に、マイクロ波帯の高周波用半導体装置において、1つのパッケージ内に複数段のアンプでモジュールを構成するマルチチップモジュール構造を有する高周波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのパッケージからより高い利得を得るために、パッケージ内で複数段のトラジスタが直列接続されている。その複数段のトランジスタ、複数の整合回路、複数のバイアス回路を1枚の半導体基板上に形成する技術として、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC:Monolithic Microwave Integrated Circuit)が盛んに用いられている。
【0003】
従来のMMICにおいては、半導体基板上に半導体デバイス、入出力整合回路、キャパシタ、電源供給ラインなどが集積化されている。
【0004】
複数のMMICが並列に誘電体基板上の回路で接続されている構成を備える電力増幅器は、既に開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の電力増幅器は、並列に配置された複数の半導体チップ(MMIC)と、誘電体基板上の複数の整合回路と、1組の入出力端子と複数の直流バイアス端子とを備え、複数の半導体チップ(MMIC)と、誘電体基板上の複数の整合回路が1つのパッケージに収納されている。しかしながら、高い利得を得るために多段に接続された電力増幅器を、能動回路部品と受動回路部品からなるMMICで構成しているため、小型化することが困難である。
【0005】
一方、誘電体基板上、フリップによりチップが直列接続されたフリップチップ実装構造を持つ半導体装置は、既に開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2において、フリップチップ実装構造を持つ半導体装置は、フリップ接続であることを除けば、トランジスタ部と端子のみが半導体基板上に形成され、回路は誘電体基板上に形成されている。特に、特許文献2の第2の実施形態(図2)では、多段の増幅器を複数の誘電体基板上の整合回路で結合している。しかしながら、増幅器間を結合する回路は、1枚の誘電体基板上に形成され、誘電率の高い基板を部分的に用いることができないため、小型化することが困難である。
【0006】
電力増幅器を備えた半導体装置の小型化のために、分布線路上にFETを配置する半導体装置は、既に開示されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3においては、分布線路上にFETを配置し、位相をずらして広帯域化し、また、その位相を揃えて、電力合成している。特許文献3の半導体装置は、上記合成回路と増幅回路からなる電力増幅器を複数組み合わせたものであってもよく、例えば2つの電力増幅器を並列接続する構成や直列接続する構成、あるいは3つ以上の電力増幅器を直列・並列に接続する構成などであっても良い。特許文献3においては、増幅器のみを半導体基板で構成し、受動回路部品を安価な誘電体基板で構成している。しかしながら、増幅器を誘電体基板上にフリップ接続しているため、増幅器の放熱性が損なわれている。また、受動回路部品を構成している誘電体基板を1枚にしているため、誘電率の高い基板を部分的に用いることができないため、小型化することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−49549号公報
【特許文献2】特開2002−110737号公報
【特許文献3】特開2003−110381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
MMICにおいては、トランジスタも整合回路も1枚の基板上に形成する。このため、誘電率が固定されてしまう。したがって、大きなキャパシタや長い線路長が必要な場合は、回路の構成が面積的に大きくなる。
【0009】
シリコンカーバイド(SiC)系トランジスタや窒化ガリウム(GaN)系トランジスタは、従来のシリコン(Si)系トランジスタやガリウム砒素(GaAs)系トランジスタに比べて、高い出力電力が得られる。しかしながら、SiCやGaNは、SiやGaAsに比べて高価なため、その複数のトランジスタ、複数の整合回路、複数のバイアス回路を1枚の半導体基板上に形成するMMICでは材料費が高くなる。
【0010】
本発明の目的は、マイクロ波・ミリ波における集積回路寸法を小型化し、安価なマルチチップモジュール構造を有する高周波回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、複数のディスクリートトランジスタを形成する半導体基板と、キャパシタを形成する第1誘電体基板と、整合回路を形成する第2誘電体基板とを備え、前記複数のディスクリートトランジスタは直列接続されたマルチチップモジュール構造を有する高周波回路が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マイクロ波・ミリ波における集積回路寸法を小型化し、安価なマルチチップモジュール構造を有する高周波回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路の模式的平面パターン構成図。
【図2】図1に対応し、3段のディスクリートトランジスタFET1〜FET3が直列に接続されて多段増幅回路を構成した模式的回路構成図。
【図3】図1のI−I線に沿う模式的断面構造図。
【図4】図1のII−II線に沿う模式的断面構造図。
【図5】(a)本発明の第1の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路に適用されるディスクリートトランジスタFET3部分の拡大された模式的平面パターン構成図、(b)図5(a)のJ部分の拡大図。
【図6】ディスクリートトランジスタの構成例1であって、図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構造図。
【図7】ディスクリートトランジスタの構成例2であって、図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構造図。
【図8】ディスクリートトランジスタの構成例3であって、図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構造図。
【図9】ディスクリートトランジスタの構成例4であって、図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構造図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路の模式的平面パターン構成図。
【図11】図10のIV−IV線に沿う模式的断面構造図。
【図12】図10のV−V線に沿う模式的断面構造図。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路において、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFET1〜FET3の入力端子Piから出力端子Poまでの信号の流れを説明する模式的平面パターン構成図。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路において、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFET1〜FET3のゲート端子電極G1〜G3・ドレイン端子電極D1〜D3間を伝搬する信号の流れを説明する模式的平面パターン構成図。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路であって、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタが奇数段配置された場合において、入力端子Piから出力端子Poまでの信号の流れを説明する模式的平面パターン構成図。
【図16】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路において、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFET1〜FET4の入力端子Piから出力端子Poまでの信号の流れを説明する模式的平面パターン構成図。
【図17】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路において、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFET1〜FET4のゲート端子電極・ドレイン端子電極間を伝搬する信号の流れを説明する模式的平面パターン構成図。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路であって、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタが偶数段配置された場合において、入力端子Piから出力端子Poまでの信号の流れを説明する模式的平面パターン構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下において、同じ要素には同じ符号を付して説明の重複を避け、説明を簡略にする。図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、各構成部品の配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30の模式的平面パターン構成は、図1に示すように、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3を形成する半導体基板161〜163と、キャパシタC1〜C4を形成する第1誘電体基板141〜144と、整合回路を形成する第2誘電体基板181,182とを備え、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3は直列接続されている。
【0017】
複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3は、それぞれ複数の別々の半導体基板161〜163上に形成されている。
【0018】
半導体基板161〜163と、第1誘電体基板141〜144と、第2誘電体基板181,182は、1つのパッケージ基板10上にフレーム部材12に囲まれて配置され、1つのパッケージ内に収められている。
【0019】
ディスクリートトランジスタFET1〜FET3を搭載する複数の半導体基板161〜163は、パッケージ基板10の表面上に直接マウントされていても良い。
【0020】
また、半導体基板161〜163は、ディスクリートトランジスタFET1〜FET3と、ディスクリートトランジスタFET1〜FET3のゲート端子電極G1〜G3,ソース端子電極S1〜S3,およびドレイン端子電極D1〜D3のみを回路要素として含んでいても良い。
【0021】
第1の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30の模式的平面パターン構成上、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3の信号伝播方向は、各段ごとに互い違いになるように配置されていても良い。すなわち、図1に示すように、ディスクリートトランジスタFET1のゲート端子電極G1からドレイン端子電極D1への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向は、逆方向であり、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET3のゲート端子電極G3からドレイン端子電極D3への信号伝搬方向は、逆方向である。
【0022】
図1に対応する多段増幅回路の模式的回路構成は、図2に示すように表される。図2においては、3段のディスクリートトランジスタFET1〜FET3が直列にカスケード接続されて多段増幅器を構成した例が示されている。
【0023】
図1および図2に示すように、入力端子Piには、キャパシタC1が接続され、出力端子Poには、キャパシタC4が接続される。
【0024】
入力端子PiにキャパシタC1を介して接続されたゲート入力端子g1には、ゲートバイアス電圧VGGによって、ゲート電圧Vgg1が供給される。
【0025】
ゲート入力端子g1は、入力伝送線路λg1を介してディスクリートトランジスタFET1のゲート端子電極G1に接続される。
【0026】
ディスクリートトランジスタFET1のドレイン端子電極D1は、出力伝送線路λd1を介してドレイン出力端子d1に接続される。
【0027】
ドレイン出力端子d1には、ドレインバイアス電圧VDDによって、ドレイン電圧Vdd1が供給される。
【0028】
ドレイン出力端子d1には、キャパシタC2が接続される。
【0029】
ドレイン出力端子d1にキャパシタC2を介して接続されたゲート入力端子g2には、ゲートバイアス電圧VGGによって、ゲート電圧Vgg2が供給される。
【0030】
ゲート入力端子g2は、入力伝送線路λg2を介してディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2に接続される。
【0031】
ディスクリートトランジスタFET2のドレイン端子電極D2は、出力伝送線路λd2を介してドレイン出力端子d2に接続される。
【0032】
ドレイン出力端子d2には、ドレインバイアス電圧VDDによって、ドレイン電圧Vdd2が供給される。
【0033】
ドレイン出力端子d2には、キャパシタC3が接続される。
【0034】
ドレイン出力端子d2にキャパシタC3を介して接続されたゲート入力端子g3には、ゲートバイアス電圧VGGによって、ゲート電圧Vgg3が供給される。
【0035】
ゲート入力端子g3は、入力伝送線路λg3を介してディスクリートトランジスタFET3のゲート端子電極G3に接続される。
【0036】
ディスクリートトランジスタFET3のドレイン端子電極D3は、出力伝送線路λd3を介してドレイン出力端子d3に接続される。
【0037】
ドレイン出力端子d3には、ドレインバイアス電圧VDDによって、ドレイン電圧Vdd3が供給される。
【0038】
ドレイン出力端子d3には、キャパシタC4が接続され、キャパシタC4は、出力端子Poに接続される。
【0039】
ここで、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3の内、最終段に用いられるディスクリートトランジスタFET3のゲート幅に対して、その前段に用いられるディスクリートトランジスタFET2のゲート幅を狭く構成することによって、カスケード接続による多段増幅器を構成しても良い。
【0040】
さらに、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3の内、第2段に用いられるディスクリートトランジスタFET2のゲート幅に対して、第1段に用いられるディスクリートトランジスタFET1のゲート幅を狭く構成することによって、カスケード接続による多段増幅器を構成しても良い。
【0041】
なお、第1の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30に用いるディスクリートトランジスタFET1〜FET3としては、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)などを適用することができる。
【0042】
図1のI−I線に沿う模式的断面構造は、図3に示すように、パッケージ基板10と、パッケージ基板10上に配置された絶縁層20と、絶縁層20上に配置された入力ストリップライン221と、パッケージ基板10上に配置された第1誘電体基板141,142と、パッケージ基板10上に配置された半導体基板161とを備える。
【0043】
第1誘電体基板141,142には、それぞれキャパシタC1,C2が配置され、半導体基板161には、ディスクリートトランジスタFET1が配置される。
【0044】
第1誘電体基板141の厚さtを調整して、第1誘電体基板141をキャパシタ形成用基板として適用することもできる。第1誘電体基板141の厚さtを変えてキャパシタ値を変化させることができるからである。同様に、第1誘電体基板141の誘電率を変えてキャパシタ値を変化させることもできる。
【0045】
図1のII−II線に沿う模式的断面構造は、図4に示すように、パッケージ基板10と、パッケージ基板10上に配置された絶縁層20と、絶縁層20上に配置された出力ストリップライン222と、パッケージ基板10上に配置された第1誘電体基板143,144と、パッケージ基板10上に配置された半導体基板163と、パッケージ基板10上に配置された第2誘電体基板181,182とを備える。
【0046】
第1誘電体基板143,144には、それぞれキャパシタC3,C4が配置され、半導体基板163には、ディスクリートトランジスタFET3が配置される。
【0047】
第2誘電体基板181,182には、それぞれ入力整合回路,出力整合回路が配置される。
【0048】
図4に示すように、第1誘電体基板143,144、および第2誘電体基板181,182の厚さは、適宜変更することができる。また、誘電率を変えてキャパシタ値を調整し、配置される伝送線路の特性インピーダンスを調整することもできる。同様に、キャパシタ面積、配置されるスタブ長を大幅に短縮することもできる。
【0049】
(素子構造)
第1の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路において、適用されるディスクリートトランジスタFET3部分の拡大された模式的平面パターン構成は、図5(a)に示すように表され、図5(a)のJ部分の拡大図は、図5(b)に示すように表される。また、第1の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路に適用されるディスクリートトランジスタの構成例1〜4であって、図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構成例1〜4は、それぞれ図6〜図9に示すように表される。尚、ディスクリートトランジスタFET1〜FET2の断面構造もディスクリートトランジスタFET3と同様に構成される。
【0050】
第1の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路において、ディスクリートトランジスタFET3は、図5および図6〜図9に示すように、半絶縁性基板110と、半絶縁性基板110の第1表面に配置され,それぞれ複数のフィンガーを有するゲートフィンガー電極124、ソースフィンガー電極120およびドレインフィンガー電極122と、半絶縁性基板110の第1表面に配置され,ゲートフィンガー電極124、ソースフィンガー電極120およびドレインフィンガー電極122ごとに複数のフィンガーをそれぞれ束ねて形成した複数のゲート端子電極G3、複数のソース端子電極S3および複数のドレイン端子電極D3と、ソース端子電極S3の下部に配置されたVIAホールSC3と、半絶縁性基板110の第1表面と反対側の第2表面に配置され、ソース端子電極S3に対してVIAホールSC3を介して接続された裏面接地電極(図示省略)とを備える。
【0051】
半絶縁性基板は、GaAs基板、SiC基板、GaN基板、SiC基板上にGaNエピタキシャル層を形成した基板、SiC基板上にGaN/AlGaNからなるヘテロ接合エピタキシャル層を形成した基板、サファイア基板、若しくはダイヤモンド基板のいずれかである。
【0052】
(構造例1)
図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構成として、ディスクリートトランジスタの構成例1は、図6に示すように、半絶縁性基板110と、半絶縁性基板110上に配置された窒化物系化合物半導体層112と、窒化物系化合物半導体層112上に配置されたアルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118と、アルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118上に配置されたソースフィンガー電極120,ゲートフィンガー電極124およびドレインフィンガー電極122とを備える。窒化物系化合物半導体層112とアルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118との界面には、2次元電子ガス(2DEG:Two Dimensional Electron Gas)層116が形成されている。図6に示す構成例1では、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)が示されている。
【0053】
(構造例2)
図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構成として、ディスクリートトランジスタの構成例2は、図7に示すように、半絶縁性基板110と、半絶縁性基板110上に配置された窒化物系化合物半導体層112と、窒化物系化合物半導体層112上に配置されたソース領域126およびドレイン領域128と、ソース領域126上に配置されたソースフィンガー電極120,窒化物系化合物半導体層112上に配置されたゲートフィンガー電極124およびドレイン領域128上に配置されたドレインフィンガー電極122とを備える。窒化物系化合物半導体層112とゲートフィンガー電極124との界面には、ショットキーコンタクト(Schottky Contact)が形成されている。図7に示す構成例2では、金属−半導体電界効果トランジスタ(MESFET:Metal Semiconductor Field Effect Transistor)が示されている。
【0054】
(構造例3)
図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構成として、ディスクリートトランジスタの構成例3は、図8に示すように、半絶縁性基板110と、半絶縁性基板110上に配置された窒化物系化合物半導体層112と、窒化物系化合物半導体層112上に配置されたアルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118と、アルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118上に配置されたソースフィンガー電極120およびドレインフィンガー電極122と、アルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118上のリセス部に配置されたゲートフィンガー電極124とを備える。窒化物系化合物半導体層112とアルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118との界面には、2DEG層116が形成されている。図8に示す構成例3では、HEMTが示されている。
【0055】
(構造例4)
図5(b)のIII−III線に沿う模式的断面構成として、ディスクリートトランジスタの構成例4は、図9に示すように、半絶縁性基板110と、半絶縁性基板110上に配置された窒化物系化合物半導体層112と、窒化物系化合物半導体層112上に配置されたアルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118と、アルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118上に配置されたソースフィンガー電極120およびドレインフィンガー電極122と、アルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118上の2段リセス部に配置されたゲートフィンガー電極124とを備える。窒化物系化合物半導体層112とアルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)118との界面には、2DEG層116が形成されている。図15に示す構成例4では、HEMTが示されている。
【0056】
また、上記の構成例4においては、活性領域以外の窒化物系化合物半導体層112を電気的に不活性な素子分離領域として用いている。ここで、活性領域とは、ソースフィンガー電極120、ゲートフィンガー電極124およびドレインフィンガー電極122の直下の2DEG層116、ソースフィンガー電極120とゲートフィンガー電極124間およびドレインフィンガー電極122とゲートフィンガー電極124間の2DEG層116からなる。上記の構成例4においては、この活性領域以外の窒化物系化合物半導体層112を電気的に不活性な素子分離領域として用いている。
【0057】
素子分離領域の他の形成方法としては、アルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)18および窒化物系化合物半導体層112の深さ方向の一部まで、イオン注入により形成することもできる。イオン種としては、例えば、窒素(N)、アルゴン(Ar)などを適用することができる。また、イオン注入に伴うドーズ量は、例えば、約1×1014(ions/cm2)であり、加速エネルギーは、例えば、約100keV〜200keVである。
【0058】
素子分離領域上およびデバイス表面上には、パッシベーション用の絶縁層(図示省略)が形成されている。この絶縁層としては、例えば、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法によって堆積された窒化膜、アルミナ(Al23)膜、酸化膜(SiO2)、酸窒化膜(SiON)などで形成することができる。
【0059】
ソースフィンガー電極120およびドレインフィンガー電極122は、例えば、Ti/Alなどで形成される。ゲートフィンガー電極124は、例えばNi/Auなどで形成することができる。
【0060】
なお、ゲートフィンガー電極124、ソースフィンガー電極120およびドレインフィンガー電極122の長手方向のパターン長は、マイクロ波/ミリ波/サブミリ波と動作周波数が高くなるにつれて、短く設定される。
【0061】
第1の実施の形態によれば、キャパシタ面積、スタブ長を大幅に短縮することができ、マイクロ波・ミリ波における集積回路寸法の小型化を図ることができる。
【0062】
第1の実施の形態によれば、複数のトランジスタ、複数の整合回路、複数のバイアス回路をパッケージ内に個々に配置、接続するため、パッケージとしての素子のサイズを小さくすることができる。
【0063】
第1の実施の形態によれば、複数のトランジスタ、複数の整合回路、複数のバイアス回路をパッケージ内に個々に配置、接続するため、パッケージとしての素子のコストを安くすることができる。
【0064】
第1の実施の形態によれば、整合回路を安価な誘電体基板上に形成し、高価な半導体の寸法を小型化し、安価なマルチチップモジュール構造を有する高周波回路を提供することができる。
【0065】
第1の実施の形態によれば、マイクロ波・ミリ波における集積回路寸法を小型化し、安価なマルチチップモジュール構造を有する高周波回路を提供することができる。
【0066】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30の模式的平面パターン構成は、図10に示すように、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3を形成する半導体基板160と、キャパシタC1〜C4を形成する第1誘電体基板141〜144と、整合回路を形成する第2誘電体基板181,182とを備え、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3は直列接続されている。
【0067】
複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3は、同一の半導体基板160上に集積化形成されているため、第1の実施の形態に比べ、集精度が向上している。
【0068】
半導体基板160と、第1誘電体基板141〜144と、第2誘電体基板181,182は、1つのパッケージ基板10上にフレーム部材12に囲まれて配置され、1つのパッケージ内に収められている。
【0069】
ディスクリートトランジスタFET1〜FET3を搭載する半導体基板160は、パッケージ基板10の表面上に直接マウントされていても良い。
【0070】
また、半導体基板160は、ディスクリートトランジスタFET1〜FET3と、ディスクリートトランジスタFET1〜FET3のゲート端子電極G1〜G3,ソース端子電極S1〜S3,およびドレイン端子電極D1〜D3のみを回路要素として含んでいても良い。
【0071】
図10に対応する多段増幅回路の模式的回路構成は、図2と同様に表される。同様に、3段のディスクリートトランジスタFET1〜FET3が直列に、カスケード接続されて多段増幅器を構成している。
【0072】
なお、第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30に用いるディスクリートトランジスタFET1〜FET3としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、FET、HEMTなどを適用することができる。
【0073】
図10に示すように、入力端子Piには、キャパシタC1が接続され、出力端子Poには、キャパシタC4が接続される。
【0074】
入力端子PiにキャパシタC1を介して接続されたゲート入力端子g1には、ゲートバイアス電圧VGGによって、ゲート電圧Vgg1が供給される。
【0075】
ゲート入力端子g1は、入力伝送線路λg1を介してディスクリートトランジスタFET1のゲート端子電極G1に接続される。
【0076】
ディスクリートトランジスタFET1のドレイン端子電極D1は、出力伝送線路λd1を介してドレイン出力端子d1に接続される。
【0077】
ドレイン出力端子d1には、ドレインバイアス電圧VDDによって、ドレイン電圧Vdd1が供給される。
【0078】
ドレイン出力端子d1には、キャパシタC2が接続される。
【0079】
ドレイン出力端子d1にキャパシタC2を介して接続されたゲート入力端子g2には、ゲートバイアス電圧VGGによって、ゲート電圧Vgg2が供給される。
【0080】
ゲート入力端子g2は、入力伝送線路λg2を介してディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2に接続される。ここで、入力伝送線路λg2は、第1誘電体基板144上に配置されているため、第1の実施の形態に比べ、集精度が向上している。
【0081】
ディスクリートトランジスタFET2のドレイン端子電極D2は、出力伝送線路λd2を介してドレイン出力端子d2に接続される。ここで、出力伝送線路λd2は、第1誘電体基板143上に配置されているため、第1の実施の形態に比べ、集精度が向上している。
【0082】
ドレイン出力端子d2には、ドレインバイアス電圧VDDによって、ドレイン電圧Vdd2が供給される。
【0083】
ドレイン出力端子d2には、キャパシタC3が接続される。
【0084】
ドレイン出力端子d2にキャパシタC3を介して接続されたゲート入力端子g3には、ゲートバイアス電圧VGGによって、ゲート電圧Vgg3が供給される。
【0085】
ゲート入力端子g3は、入力伝送線路λg3を介してディスクリートトランジスタFET3のゲート端子電極G3に接続される。
【0086】
ディスクリートトランジスタFET3のドレイン端子電極D3は、出力伝送線路λd3を介してドレイン出力端子d3に接続される。
【0087】
ドレイン出力端子d3には、ドレインバイアス電圧VDDによって、ドレイン電圧Vdd3が供給される。
【0088】
ドレイン出力端子d3には、キャパシタC4が接続され、キャパシタC4は、出力端子Poに接続される。
【0089】
ここで、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3の内、最終段に用いられるディスクリートトランジスタFET3のゲート幅に対して、その前段に用いられるディスクリートトランジスタFET2のゲート幅を狭く構成することによって、カスケード接続による多段増幅器を構成しても良い。
【0090】
さらに、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3の内、第2段に用いられるディスクリートトランジスタFET2のゲート幅に対して、第1段に用いられるディスクリートトランジスタFET1のゲート幅を狭く構成することによって、カスケード接続による多段増幅器を構成しても良い。
【0091】
図10のIV−IV線に沿う模式的断面構造は、図11に示すように、パッケージ基板10と、パッケージ基板10上に配置された絶縁層20と、絶縁層20上に配置された入力ストリップライン221と、パッケージ基板10上に配置された第1誘電体基板141,142と、パッケージ基板10上に配置された半導体基板160とを備える。
【0092】
第1誘電体基板141,142には、それぞれキャパシタC1,C2が配置され、半導体基板160には、ディスクリートトランジスタFET1が配置される。
【0093】
第1誘電体基板141の厚さを調整して、第1誘電体基板141をキャパシタ形成基板として適用することもできる。第1誘電体基板141の厚さを変えてキャパシタ値を変化させることもできるからである。同様に、第1誘電体基板141の誘電率を変えてキャパシタ値を変化させることもできる。
【0094】
図10のV−V線に沿う模式的断面構造は、図12に示すように、パッケージ基板10と、パッケージ基板10上に配置された絶縁層20と、絶縁層20上に配置された出力ストリップライン222と、パッケージ基板10上に配置された第1誘電体基板143,144と、パッケージ基板10上に配置された半導体基板160と、パッケージ基板10上に配置された第2誘電体基板181,182とを備える。
【0095】
第1誘電体基板143,144には、それぞれキャパシタC3,C4が配置され、半導体基板160には、ディスクリートトランジスタFET3が配置される。
【0096】
第2誘電体基板181,182には、それぞれ入力整合回路,出力整合回路が配置される。
【0097】
図12に示すように、第1誘電体基板143,144、および第2誘電体基板181,182の厚さは、適宜変更することができる。また、誘電率を変えてキャパシタ値を調整し、配置される伝送線路の特性インピーダンスを調整することもできる。同様に、キャパシタ面積、配置されるスタブ長を大幅に短縮することもできる。
【0098】
(素子構造)
第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30において、適用されるディスクリートトランジスタFET3部分の模式的平面パターン構成は、図5(a)および図5(b)と同様に表され、断面構造も図6〜図9と同様に表される。尚、ディスクリートトランジスタFET1〜FET2もディスクリートトランジスタFET3と同様に構成される。
【0099】
(信号伝搬方向)
第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30において、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFET1〜FET3の入力端子Piから出力端子Poまでの信号の流れを説明する模式的平面パターン構成は、図13に示すように表される。図13において、半導体基板160の周辺部には、第2誘電体基板181,182が示され、第1誘電体基板141〜144は図示を省略されている。また、ドレイン端子電極D1からゲート端子電極G2への信号伝搬は、第2誘電体基板182上に示されているが、省略された第1誘電体基板142,144も含まれることは、図10から明らかである。同様に、ドレイン端子電極D2からゲート端子電極G3への信号伝搬は、第2誘電体基板181上に示されているが、省略された第1誘電体基板143も含まれることは、図10から明らかである。
【0100】
また、ディスクリートトランジスタFET1〜FET3のゲート端子電極G1〜G3・ドレイン端子電極D1〜D3間を伝搬する信号の流れを説明する模式的平面パターン構成は、図14に示すように表される。
【0101】
第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30は、図13および図14に示すように、直列接続された複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3を形成する同一の半導体基板160と、キャパシタを形成する第1誘電体基板(図示省略)と、整合回路を形成する第2誘電体基板181,182と、半導体基板160と第1誘電体基板と第2誘電体基板181,182とを配置するパッケージ基板10と、パッケージ基板10の対向する辺に配置された入力端子Piおよび出力端子Poとを備え、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3の信号伝播方向が、各段ごとに互い違いになっている。
【0102】
複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3の信号伝播方向は、各段ごとに互い違いになっている。すなわち、図10および図13〜図14に示すように、ディスクリートトランジスタFET1のゲート端子電極G1からドレイン端子電極D1への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向は、逆方向であり、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET3のゲート端子電極G3からドレイン端子電極D3への信号伝搬方向は、逆方向である。
【0103】
第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30において、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFETが奇数段(FET1〜FET2k+1:ここでkは、1以上の整数)配置された場合の入力端子Piから出力端子Poまでの信号の流れを説明する模式的平面パターン構成は、図15に示すように表される。図15において、半導体基板160の周辺部には、第2誘電体基板181,182が示され、第1誘電体基板141〜144は図示を省略されている。また、ドレイン端子電極D1からゲート端子電極G2への信号伝搬は、第2誘電体基板182上に示されているが、省略された第1誘電体基板142,144も含まれることは、図13と同様である。同様に、ドレイン端子電極D2からゲート端子電極G3への信号伝搬は、第2誘電体基板181上に示されているが、省略された第1誘電体基板143も含まれることは、図13と同様である。
【0104】
また、第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30は、図15に示すように、複数のディスクリートトランジスタは奇数段(FET1,FET2,…,FET2k,FET2k+1:ここでkは、1以上の整数)を備え、奇数段目のゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向は、入力端子Piと出力端子Poが配置された辺に垂直方向でかつ入力端子Piと出力端子Po間の入出力信号伝搬方向に等しい。
【0105】
また、第2の実施の形態に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30は、図15に示すように、偶数段目のディスクリートトランジスタのゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向は、入力端子Piと出力端子Poが配置された辺に垂直方向でかつ入力端子Piと出力端子Po間の入出力信号伝搬方向と逆方向である。
【0106】
ディスクリートトランジスタFET1〜FET2k+1のゲート端子電極G1〜G2k+1からドレイン端子電極D1〜D2k+1への信号伝播方向は、各段ごとに互い違いになっている。すなわち、図15に示すように、ディスクリートトランジスタFET1のゲート端子電極G1からドレイン端子電極D1への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向は、逆方向であり、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET3のゲート端子電極G3からドレイン端子電極D3への信号伝搬方向は、逆方向であり、同様に拡張して、ディスクリートトランジスタFET2kのゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2kへの信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET2k+1のゲート端子電極G2k+1からドレイン端子電極D2k+1への信号伝搬方向は、逆方向である。
【0107】
第2の実施の形態によれば、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFETが奇数段(FET1〜FET2k+1:ここでkは、1以上の整数)配置された場合、パッケージ基板10の対向する辺に入力端子Piと出力端子Poを配置することにより、入出力信号間のクロストークを良好に回避することができる。
【0108】
(変形例)
第2の実施の形態の変形例に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30において、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFET1〜FET4の入力端子Piから出力端子Poまでの信号の流れを説明する模式的平面パターン構成は、図16に示すように表される。図16においても、半導体基板160の周辺部には、第2誘電体基板181,182が示され、第1誘電体基板などは省略されている。
【0109】
また、ディスクリートトランジスタFET1〜FET4のゲート端子電極・ドレイン端子電極間を伝搬する信号の流れを説明する模式的平面パターン構成は、図17に示すように表される。
【0110】
第2の実施の形態の変形例に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30においても、図16〜図17に示すように、直列接続された複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET4を形成する同一の半導体基板160と、キャパシタを形成する第1誘電体基板(図示省略)と、整合回路を形成する第2誘電体基板181,182と、半導体基板160と第1誘電体基板と第2誘電体基板181,182とを配置するパッケージ基板10と、パッケージ基板10の対向する辺に配置された入力端子Piおよび出力端子Poとを備え、複数のディスクリートトランジスタFET1〜FET3の信号伝播方向が、各段ごとに互い違いになっている点は、第2の実施の形態と同様である。
【0111】
すなわち、図16〜図17に示すように、ディスクリートトランジスタFET1のゲート端子電極G1からドレイン端子電極D1への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向は、逆方向であり、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET3のゲート端子電極G3からドレイン端子電極D3への信号伝搬方向は、逆方向であり、ディスクリートトランジスタFET3のゲート端子電極G3からドレイン端子電極D3への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET4のゲート端子電極G4からドレイン端子電極D4への信号伝搬方向は、逆方向である。
【0112】
第2の実施の形態の変形例に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30において、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFETが偶数段(FET1〜FET2m:ここでmは、1以上の整数)配置された場合の入力端子Piから出力端子Poまでの信号の流れを説明する模式的平面パターン構成は、図18に示すように表される。図18においても、半導体基板160の周辺部には、第2誘電体基板181,182が示され、第1誘電体基板などは図示を省略されている。
【0113】
第2の実施の形態の変形例に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路30において、複数のディスクリートトランジスタは偶数段(FET1〜FET2m:ここでmは、1以上の整数)を備え、各段のゲート端子電極G1〜G2mおよびドレイン端子電極D1〜D2m間の信号伝搬方向は、入力端子Piと出力端子Poが配置された辺に平行方向でかつ入力端子Piと出力端子Po間の入出力信号伝搬方向に垂直方向である。
【0114】
また、奇数段目のディスクリートトランジスタのゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向は、偶数段目のディスクリートトランジスタのゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向と逆方向である。
【0115】
すなわち、図18に示すように、ディスクリートトランジスタFET1のゲート端子電極G1からドレイン端子電極D1への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向は、逆方向であり、ディスクリートトランジスタFET2のゲート端子電極G2からドレイン端子電極D2への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET3のゲート端子電極G3からドレイン端子電極D3への信号伝搬方向は、逆方向であり、同様に拡張して、ディスクリートトランジスタFET2m−1のゲート端子電極G2m−1からドレイン端子電極D2m−1への信号伝搬方向と、ディスクリートトランジスタFET2mのゲート端子電極G2mからドレイン端子電極D2mへの信号伝搬方向は、逆方向である。
【0116】
第2の実施の形態の変形例によれば、同一の半導体基板160上に配置されたディスクリートトランジスタFETが偶数段(FET1〜FET2m:ここでmは、1以上の整数)配置された場合、パッケージ基板10の対向する辺に入力端子Piと出力端子Poを配置することにより、入出力信号間のクロストークを良好に回避することができる。
【0117】
第2の実施の形態および変形例によれば、キャパシタ面積、スタブ長を大幅に短縮することができ、マイクロ波・ミリ波における集積回路寸法の小型化を図ることができる。
【0118】
第2の実施の形態および変形例によれば、複数のトランジスタ、複数の整合回路、複数のバイアス回路をパッケージ内に個々に配置、接続するため、パッケージとしての素子のサイズを小さくすることができ、また、パッケージのコストを安価にすることができる。
【0119】
第2の実施の形態および変形例によれば、整合回路を安価な誘電体基板上に形成し、高価な半導体の寸法を小型化し、安価なマルチチップモジュール構造を有する高周波回路を提供することができる。
【0120】
第2の実施の形態および変形例によれば、第1の実施の形態に比べ、さらに集積回路寸法の小型化を図ることができる。
【0121】
第2の実施の形態および変形例によれば、マイクロ波・ミリ波における集積回路寸法を小型化し、安価なマルチチップモジュール構造を有する高周波回路を提供することができる。
【0122】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1〜第2の実施の形態および変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0123】
なお、第1〜第2の実施の形態および変形例に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路に適用するディスクリートトランジスタとしては、FET、HEMTに限らず、LDMOS(Laterally Diffused Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)やヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Hetero-junction Bipolar Transistor)などの増幅素子、メムス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)素子なども適用できることは言うまでもない。
【0124】
また、第1〜第2の実施の形態および変形例に係るマルチチップモジュール構造を有する高周波回路に適用するディスクリートトランジスタのカスケード接続段数は、3段に限定されず、4段以上であっても良い。
【0125】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路は、マイクロ波電力増幅器、ミリ波電力増幅器、高周波MEMS素子などの幅広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0127】
10…パッケージ基板
12…フレーム部材
160、161〜163…半導体基板
141〜144…第1誘電体基板
181、182…第2誘電体基板
20…絶縁層
221…入力ストリップライン
222…出力ストリップライン
30…マルチチップモジュール構造を有する高周波回路
110…半絶縁性基板
112…窒化物系化合物半導体層(GaNエピタキシャル成長層)
116…2次元電子ガス(2DEG)層
118…アルミニウム窒化ガリウム層(AlxGa1-xN)(0.1≦x≦1)
120…ソースフィンガー電極
122…ドレインフィンガー電極
124…ゲートフィンガー電極
126…ソース領域
128…ドレイン領域
Pi…入力端子
Po…出力端子
FET1〜FET2k,FET2k+1,FET2m−1,FET2m…ディスクリートトランジスタ
C1〜C4…キャパシタ
λg1〜λg3…入力伝送線路
λd1〜λd3…出力伝送線路
Vgg1〜Vgg3…ゲート電圧
Vdd1〜Vdd3…ドレイン電圧
GG…ゲートバイアス電圧
DD…ドレインバイアス電圧
S1〜S3…ソース端子電極
SC3…VIAホール
D1〜D2k,D2k+1,D2m−1,D2m…ドレイン端子電極
G1〜G2k,G2k+1,G2m−1,G2m…ゲート端子電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のディスクリートトランジスタを形成する半導体基板と、
キャパシタを形成する第1誘電体基板と、
整合回路を形成する第2誘電体基板と
を備え、前記複数のディスクリートトランジスタは直列接続されたことを特徴とするマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項2】
前記複数のディスクリートトランジスタは、同一の前記半導体基板上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項3】
前記複数のディスクリートトランジスタは、それぞれ複数の別々の前記半導体基板上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項4】
前記半導体基板と、前記第1誘電体基板と、前記第2誘電体基板は、1つのパッケージ基板上に配置され、1つのパッケージ内に収められ、かつ、前記ディスクリートトランジスタを搭載する前記半導体基板は、前記パッケージ基板の表面上に直接マウントされていることを特徴とする請求項1または3に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項5】
前記半導体基板は、前記ディスクリートトランジスタと、前記ディスクリートトランジスタのゲート端子電極,ソース端子電極,およびドレイン端子電極のみを回路要素として含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項6】
前記複数のディスクリートトランジスタの内、最終段に用いられるディスクリートトランジスタのゲート幅に対して、その前段に用いられるディスクリートトランジスタのゲート幅が狭いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項7】
前記複数のディスクリートトランジスタのゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝播方向が、各段ごとに互い違いになっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項8】
直列接続された複数のディスクリートトランジスタを形成する同一の半導体基板と、
キャパシタを形成する第1誘電体基板と、
整合回路を形成する第2誘電体基板と、
前記半導体基板と前記第1誘電体基板と前記第2誘電体基板とを配置するパッケージ基板と、
前記パッケージ基板の対向する辺に配置された入力端子および出力端子と
を備え、前記複数のディスクリートトランジスタのゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝播方向が、各段ごとに互い違いになっていることを特徴とするマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項9】
前記複数のディスクリートトランジスタは奇数段を備え、奇数段目のゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向は、前記入力端子と前記出力端子が配置された辺に垂直方向でかつ前記入力端子と前記出力端子間の入出力信号伝搬方向に等しいことを特徴とする請求項8に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項10】
偶数段目のディスクリートトランジスタのゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向は、前記入力端子と前記出力端子が配置された辺に垂直方向でかつ前記入出力信号伝搬方向と逆方向であることを特徴とする請求項9に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項11】
前記複数のディスクリートトランジスタは偶数段を備え、各段のゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向は、前記入力端子と前記出力端子が配置された辺に平行方向でかつ前記入力端子と前記出力端子間の入出力信号伝搬方向に垂直方向であることを特徴とする請求項8に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項12】
奇数段目のディスクリートトランジスタのゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向は、偶数段目のディスクリートトランジスタのゲート端子電極およびドレイン端子電極間の信号伝搬方向と逆方向であることを特徴とする請求項11に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項13】
前記複数のディスクリートトランジスタは、
半絶縁性基板と、
前記半絶縁性基板の第1表面に配置され,それぞれ複数のフィンガーを有するゲートフィンガー電極、ソースフィンガー電極およびドレインフィンガー電極と、
前記半絶縁性基板の第1表面に配置され,前記ゲートフィンガー電極、前記ソースフィンガー電極および前記ドレインフィンガー電極ごとに複数のフィンガーをそれぞれ束ねて形成した複数のゲート端子電極、複数のソース端子電極およびドレイン端子電極と、
前記ソース端子電極の下部に配置されたVIAホールと、
前記半絶縁性基板の第1表面と反対側の第2表面に配置され、前記ソース端子電極に対して前記VIAホールを介して接続された接地電極と
を備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。
【請求項14】
前記半絶縁性基板は、GaAs基板、SiC基板、GaN基板、SiC基板上にGaNエピタキシャル層を形成した基板、SiC基板上にGaN/AlGaNからなるヘテロ接合エピタキシャル層を形成した基板、サファイア基板、若しくはダイヤモンド基板のいずれかであることを特徴とする請求項13に記載のマルチチップモジュール構造を有する高周波回路。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図1】
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【図5】
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【図10】
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【図14】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−66380(P2011−66380A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48155(P2010−48155)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】