説明

マルチバンドアンテナおよび携帯端末

【課題】小型化したアンテナエレメントおよびインダクタを用いた単純な構造により複数の共振が得られるマルチバンドアンテナを提供する。
【解決手段】所望する共振周波数の各波長よりもエレメント長が短い小型化した4個の第1〜第4のアンテナエレメント1〜4をGND接地点11にてGND接地して構成される逆F型のアンテナに、それぞれがインダクタンスL1〜L3の値を有する3個の第1〜第3のインダクタ5〜7が配置された構成とし、該逆F型のアンテナに対して整合回路9を介して給電部10より給電することにより、高周波数側の2つの共振周波数で共振する2共振ループアンテナ、低周波数側の2つの共振周波数で共振する逆F型アンテナ、逆L型アンテナの複数のアンテナ動作を行うことを可能とする。また、必要に応じて、周波数調整用として、キャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8を第3のインダクタ7に並列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバンドアンテナおよび携帯端末に関し、特に、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末に搭載するマルチバンド対応の小型化アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話だけでなく、スマートフォンも急速に普及し、携帯端末におけるデータのダウンロード量が大幅に増加している。そのトラフィックの増加に対応するため、複数の周波数帯にトラフィックを分散させたり、LTE(Long Term Evolution)などの新たな通信規格を採用したり、使用周波数の多様化が益々進んでいる。
【0003】
また、使用周波数帯は国によって異なるため、海外での使用などを考えると、携帯端末は、非常に多くの周波数帯に対応する必要がある。その対応手段としては、アンテナの広帯域化やマルチバンド化が考えられる。アンテナを広帯域化させる手段としては、特許文献1の特開2010−10960号公報「マルチバンドアンテナ及び無線通信端末」や特許文献2の特開平11−88032号公報「マルチバンドアンテナ装置及びそれを用いた携帯無線機」に記載の技術が公開されている。これらの文献に記載の技術は、アンテナエレメントの途中に共振回路を挿入してアンテナ特性を広帯域化させるというものであるが、かくのごとき手段を用いても、携帯端末で使用されている周波数帯である704MHz〜2170MHzの広範囲の帯域に対応することができる広帯域アンテナを実現することは不可能である。
【0004】
また、マルチバンド化の手段としては、特許文献3の特開2007−123982号公報「マルチバンド対応アンテナ装置および通信端末装置」に、逆F型アンテナに3つのアンテナエレメントを実装し、3共振を発生させる手段が記載されている。しかし、3つのアンテナエレメントを実装するためにアンテナサイズが大きくなることと、携帯端末で使用されている周波数帯すべてには対応することができないこと、さらには、4共振以上は不可能であるという問題がある。
【0005】
よって、現時点においては、マルチバンドに対応する手段として、アンテナエレメントを複数配置して対応する方法しかなく、携帯端末のサイズが大きくなってしまうため、小型のマルチバンドアンテナの開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−10960号公報(第5−6頁)
【特許文献2】特開平11−88032号公報(第4−6頁)
【特許文献3】特開2007−123982号公報(第3−5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、現状の技術の問題点は、マルチバンドに対応する手段として、アンテナエレメントを複数配置して対応する方法しかなく、携帯端末のサイズが大きくなってしまうという点にある。
【0008】
かくのごとき問題点について、さらに説明する。まず、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末において使用されている周波数について説明する。図42は、携帯端末用として使用されている周波数の一覧を示すテーブルである。図42に示すように、日本においては、携帯端末用として800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯の3バンドが主に使用されており、米国においては、携帯端末用として700MHz帯、900MHz帯、1.9GHz帯の3バンドが主に使用されている。図43は、このような日本と米国との両国における携帯端末の周波数の使用状況をグラフ化した説明図であり、図43(A)が、日本の周波数使用状況をハッチングした領域で示し、図43(B)が、米国の周波数使用状況をハッチングした領域で示し、図43(C)が、両国の周波数使用状況を合成した結果を示している。
【0009】
図43(C)に示すように、日本と米国との両国で携帯端末用として使用されている周波数を合成すると、4バンドに分類されることが分かる。以降の説明においては、704〜798MHzを700MHz帯、824〜960MHzを800MHz帯、1448〜1511MHzを1.5GHz帯、1850〜2170MHzを2GHz帯と呼ぶことにする。
【0010】
ここで、携帯端末は、日本国内だけでなく、海外でもローミングして使用することが想定されているため、少なくとも、前述の4バンドすべてに対応する必要がある。前述の4バンドに対応する手段としては、次の2つの手段がある。
【0011】
第1の手段は、それぞれのバンドに対応する4本のアンテナを実装することであるが、実際には不可能に近い。その理由を、スマートフォンを例にして説明すると、次の通りである。
【0012】
近年のスマートフォンのサイズは130mm×65mm×10mm程度である。かくのごときサイズの中にあって、液晶画面が大半を占めており、通常は、補強のために、液晶画面と同サイズの金属板が液晶と重ねて実装されている。アンテナは、該金属板の近くに実装すると、有効な特性が得られなくなるため、該金属板から5〜10mm程度離して実装する必要がある。したがって、アンテナを実装することができる領域は、携帯端末の上下に10mm×65mm×10mm程度の狭い領域となる。
【0013】
アンテナエレメントサイズを(λ/4)タイプの逆L型アンテナの場合として考えると(λ:波長)、700MHz帯においては107mm、800MHz帯においては94mm、1.5GHz帯においては50mm、2GHz帯においては38mmのサイズになり、これらの4本のアンテナを前述した狭い領域内に、物理的にも特性的にも干渉しないように、実装することは不可能である。
【0014】
第2の手段は、マルチバンドアンテナを採用する方法である。図44は、マルチバンドアンテナとして一般的に採用されている2分岐タイプの逆L型アンテナの形状を示す模式図である。また、図45は、図44のマルチバンドアンテナの特性を示す特性図であり、電磁界シミュレータを使用して計算したリターンロスを示している。図45の右上には、700MHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯および2GHz帯の4つのバンドそれぞれの境界周波数におけるリターンロスを数値で表示している。目安として、−5dB以下であれば、有効なアンテナ特性を有しているものと判断することができるので、800MHz帯と2GHz帯との2つのバンドであれば対応することができるものの、700MHz帯と1.5GHz帯とは対応が困難であり、4バンドすべてに対応することは不可能である。
【0015】
このため、図44に示すような2分岐のアンテナ形状を、さらに、3分岐や4分岐のアンテナ形状とすることも考えられるが、アンテナサイズが大きくなったり、あるいは、アンテナエレメント同士が結合して所望の特性を得られなくなったりするなど、技術的課題も多く、現時点では、実現することが困難である。
【0016】
(本発明の目的)
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、小型化したアンテナエレメントとインダクタとを用いた単純な構造により複数の共振が得られ、2共振ループアンテナと逆L型アンテナと逆F型アンテナといった複数のアンテナ動作を併せ持つマルチバンドアンテナおよび携帯端末を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の課題を解決するため、本発明によるマルチバンドアンテナおよび携帯端末は、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0018】
(1)本発明によるマルチバンドアンテナは、複数の共振周波数を有するマルチバンドアンテナであって、前記共振周波数の各波長よりもエレメント長が短い小型化したアンテナエレメントによって形成したループアンテナに対して、第1のインダクタと第2のインダクタとを追加して接続配置することにより、前記共振周波数のうち高周波数側の第1の共振周波数と第2の共振周波数との2つの共振周波数において共振させることが可能な2共振ループアンテナを少なくとも備えて構成していることを特徴とする。
【0019】
(2)本発明による携帯端末は、マルチバンドに対応するアンテナを搭載した携帯端末において、前記アンテナを、少なくとも前記(1)に記載のマルチバンドアンテナを用いて構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のマルチバンドアンテナおよび携帯端末によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0021】
第1の効果は、マルチバンドアンテナを搭載する携帯端末として、大幅な装置の小型化が実現することができることである。その理由は、一般的な携帯端末に採用される単共振アンテナと同等のアンテナサイズであっても複数の共振を得ることが可能になったので、アンテナサイズの拡大や、アンテナ本数の増加をすることなく、マルチバンドに対応することが可能になったためである。
【0022】
第2の効果は、マルチバンドアンテナを搭載した携帯端末の大幅なコストダウンが可能なことである。その理由は、本発明のマルチバンドアンテナは、4共振アンテナの場合、小型化アンテナエレメントに対してチップ部品を3点(3個のインダクタ)、ないし、場合によっては、4点(3個のインダクタおよびコンデンサ)追加するだけで実現することが可能であり、アンテナエレメントのさらなる追加や複雑な構成を必要とするアンテナを採用する場合と比較して、遥かに安価な装置を設計することができるためである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるマルチバンドアンテナの回路構成の一例を示す回路図である。
【図2】図1に示したマルチバンドアンテナの形状を示す模式図である。
【図3】第1のインダクタを第1のアンテナエレメントの箇所に配置する前の1.5GHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図4】第1のインダクタを第1のアンテナエレメントの箇所に配置した後であって第2のインダクタを第2のアンテナエレメントの箇所に配置する前の1.5GHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図5】第1,第2のインダクタを第1,第2のアンテナエレメントのそれぞれの箇所に配置した後の1.5GHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図6】第1,第2のインダクタを第1,第2のアンテナエレメントのそれぞれの箇所に配置した後の2GHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図7】第3のインダクタを第2のインダクタよりも給電側に接続した接続構成からなるマルチバンドアンテナを説明するための接続構成図である。
【図8】図7の接続構成からなるマルチバンドアンテナの700MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図9】図7の接続構成からなるマルチバンドアンテナの800MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図10】一般的なループアンテナのモデルを示す模式図である。
【図11】図10の一般的なループアンテナの特性を示す特性図である。
【図12】図10の一般的なループアンテナの1,700MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図13】図10の一般的なループアンテナの等価回路を示す模式図である。
【図14】図10の一般的なループアンテナのサイズを68mm×20mmから40mm×20mmに短縮した小型化ループアンテナのモデルを示す模式図である。
【図15】図14の小型化ループアンテナの特性を示す特性図である。
【図16】図14の小型化ループアンテナに対してインダクタを新たに配置した小型化ループアンテナのモデルを示す模式図である。
【図17】図16の小型化ループアンテナの特性を示す特性図である。
【図18】図16の小型化ループアンテナとの比較対象とするダイポールアンテナのモデルを示す模式図である。
【図19】図18のダイポールアンテナの特性を示す特性図である。
【図20】図10の一般的なループアンテナ、図16のインダクタを配置した小型化ループアンテナ、図18の比較対象のダイポールアンテナのそれぞれの1,760MHzにおけるアンテナ効率を比較した比較表である。
【図21】図16の小型化ループアンテナモデルの等価回路を示す模式図である。
【図22】図16の小型化ループアンテナモデルの1,760MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図23】図16の小型化ループアンテナモデルの1,760MHz帯における電流の弱い低濃度箇所を示す模式図である。
【図24】図16の小型化ループアンテナに対して第2のインダクタを新たに配置した小型ループアンテナのモデルを示す模式図である。
【図25】図24の小型化ループアンテナモデルの1,760MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図26】図24の小型化ループアンテナの特性を示す特性図である。
【図27】図24の小型ループアンテナの1,960MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【図28】通常の逆F型アンテナのモデルの形状を示す模式図である。
【図29】図28の通常の逆F型アンテナの特性を示す特性図である。
【図30】図28の通常の逆F型アンテナのモデルのループ部分のみを用いて構成するループアンテナの形状を示す模式図である。
【図31】図30のループアンテナの特性を示す特性図である。
【図32】図30のループアンテナに第1のインダクタを新たに配置した状態を示す模式図である。
【図33】図32のループアンテナの特性を示す特性図である。
【図34】図32のループアンテナに第2のインダクタを新たに配置した状態を示す模式図である。
【図35】図34のループアンテナの特性を示す特性図である。
【図36】図34のループアンテナに第3のインダクタ、コンデンサおよび第4のアンテナエレメントをさらに追加した構成である図2のマルチバンドアンテナの特性を示す特性図である。
【図37】図2のマルチバンドアンテナからコンデンサを除去した場合の特性を示す特性図である。
【図38】1575.42MHz帯と2.4GHz帯との2共振アンテナの形状を示す模式図である。
【図39】図38のループアンテナの特性を示す特性図である。
【図40】図38のループアンテナのアンテナ効率を電磁界シミュレータによって計算した結果を示す特性図である。
【図41】図2のマルチバンドアンテナのモデルのアンテナ効率を電磁界シミュレータによって計算した結果を示す特性図である。
【図42】携帯端末用として使用されている周波数の一覧を示すテーブルである。
【図43】日本と米国との両国における携帯端末の周波数の使用状況をグラフ化した説明図である。
【図44】マルチバンドアンテナとして一般的に採用されている2分岐タイプの逆L型アンテナの形状を示す模式図である。
【図45】図44のマルチバンドアンテナの特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明によるマルチバンドアンテナおよび携帯端末の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。ここで、携帯端末は、本発明によるマルチバンドアンテナを搭載した携帯端末であって、携帯電話、スマートフォン、ノートPC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistants)等を含む携帯性を有する小型の情報端末のことである。また、本発明において対象とする周波数についても、携帯端末が扱う対象の無線信号の周波数であれば如何なる種類のものであっても構わなく、携帯電話などにおいて通信用として使用する周波数のみならず、GPS(Global Positioning System)やBluetoothや無線LAN(Local Area Network)等の用途として使用する周波数も同様に扱うことができる。
【0025】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、携帯端末などに内蔵されるマルチバンドアンテナに関するものであり、逆F型をベースとした小型化アンテナエレメントにインダクタ(場合によっては、コンデンサを含むようにしても良い)のチップ部品を複数個搭載することによって、アンテナサイズを拡大することなく、複数の共振例えば4つの共振を発生させて、マルチバンドに対応する小型のアンテナを実現することを主要な特徴としている。而して、携帯端末に容易に搭載することが可能なマルチバンド対応の小型のアンテナを得ることができる。
【0026】
より具体的には、例えば、4つのバンドに対応するマルチバンドアンテナを例に採ると、本発明によるマルチバンドアンテナにおいては、小型化した逆F型のアンテナエレメントに少なくとも3つのインダクタを配置し、4共振を発生させることによって、アンテナサイズを拡大することなく、例えば700MHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯の4バンドに対応するマルチバンド対応アンテナを実現することができる。
【0027】
その理由は、本発明によるマルチバンドアンテナは、第1のインダクタにより第1の共振を発生させるループアンテナとして動作する手段と、第2のインダクタにより第1の共振状態を保ったまま第2の共振を発生させるループアンテナとして動作する手段と、高周波帯で動作するループアンテナに対して、インピーダンスが高くなるように定数を設定した第3のインダクタを介して接続された追加アンテナエレメントが低周波数帯で逆F型アンテナとして動作する手段と、前記第3のインダクタを介して接続された該追加アンテナエレメントが低周波数帯で逆L型アンテナとして動作する手段とを少なくとも備えて構成しているからである。
【0028】
(実施形態の構成例)
次に、本発明によるマルチバンドアンテナの回路構成の一例を、図1を参照して詳細に説明する。図1は、本発明によるマルチバンドアンテナの回路構成の一例を示す回路図であり、複数のバンド帯として、例えば700MHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯の4個のバンド帯に対応するマルチバンドアンテナの構成例を示している。
【0029】
図1に示すマルチバンドアンテナは、小型化した4個の第1〜第4のアンテナエレメント1〜4で構成される逆F型のアンテナに対して、それぞれがインダクタンスL1〜L3の値を有する3個の第1〜第3のインダクタ5〜7が追加して配置されている構成としている。なお、図1には、第3のインダクタ7に並列にキャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8を接続しているが、コンデンサ8については、周波数調整を容易にすることが可能になるという効果があるものの、本発明の必須の構成要素ではない。
【0030】
図1に示す構成において、第1、第3のアンテナエレメント1、3は、GND接地点11に接続されて、第1〜第3のアンテナエレメント1〜3が、ループアンテナを形成し、第3のアンテナエレメント3には整合回路9、給電部10が接続されている。そして、第1のアンテナエレメント1には第1のインダクタ5が配置され、第2のアンテナエレメント2には第2のインダクタが配置されており、第2のアンテナエレメント2と第3のアンテナエレメント3との接続点には、第3のインダクタ7を介して第4のアンテナエレメント4が接続されている。つまり、図1に示すマルチバンドアンテナは、GND接地点11にてGND接地された4個の第1〜第4のアンテナエレメント1〜4で構成される逆F型のアンテナに、それぞれがインダクタンスL1〜L3の値を有する3個の第1〜第3のインダクタ5〜7およびキャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8が配置された構成であり、該逆F型のアンテナには、整合回路9を介して給電部10より給電されるように構成されている。
【0031】
ループアンテナの場合は、通常、(1λ)のエレメント長を必要とするが(λ:波長)、本発明においては、(λ/3)程度のエレメント長に小型化したサイズで、2共振を得ることができる。その理由は、図1に示すように、給電部10と対向する電流の強い部分に、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5を配置することによって、第1の共振となる共振周波数を低い周波数帯に移動させることができるため、アンテナエレメントを短くすることができることと、第1の共振としてインダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5により共振する周波数において電流の弱い部分つまりインピーダンスの高い部分には、インダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6を配置することによって、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5による第1の共振状態を変化させずに、第2の共振を得ることができるためである。
【0032】
本発明によるマルチバンドアンテナにおいては、図1に示すように、前述の2共振ループアンテナに、さらに、第4のアンテナエレメント4を、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7を介して接続する。インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7は、インダクタンスL3の値として、高周波においてインピーダンスが高くなるようにあらかじめ定めた定数を選択して、ループ部分を流れる高周波の電流が、第4のアンテナエレメント4に流れ込むことを防ぐ役割を果たしている。その結果として、前述の2共振ループアンテナは、高い周波数帯で共振し、第4のアンテナエレメント4は低い周波数帯で共振することになる。この時、さらに、第4のアンテナエレメント4は、4個の第1〜第4のアンテナエレメント1〜4によって構成される逆F型アンテナとしての動作と、第3,第4のアンテナエレメント3,4による逆L型アンテナとしての動作とを併せ持つことにより、第3,第4の共振を発生させることができる。
【0033】
したがって、図1に示す構成を採用することによって、通常は、単共振しか得られない逆F型アンテナと同じサイズで、4共振を得られるアンテナを実現することができるため、携帯端末のサイズを大きくすることなく、マルチバンドに対応するアンテナを容易に搭載することが可能となる。
【0034】
図1に示す回路構成を用いたマルチバンドアンテナについて、図2を参照してさらに説明する。図2は、図1に示したマルチバンドアンテナの形状を示す模式図であり、各構成要素は図1と同様である。当該マルチバンドアンテナを実装する携帯端末としては、スマートフォンの場合を例にとって、基板100のサイズが120mm×60mmであり、アンテナ領域が10mm×60mmの領域内に制限されている場合について説明する。
【0035】
まず、1.5GHz帯と2GHz帯との2つの高周波帯をカバーするループアンテナを構成するため、3個の第1〜第3のアンテナエレメント1〜3を配置する。ループアンテナの開口部は広い方がアンテナ特性の向上に繋がるので、給電部10とGND接地点11とは少し離して配置した方が望ましい。また、3個の第1〜第3のアンテナエレメント1〜3と基板100とによって囲まれるループ部分の周囲の長さは、前述したように、(λ/3)程度あれば良いので、1.5GHz帯と2GHz帯との2つの高周波帯をカバーするためには、1,500MHzではλ/3=66.6mm、2,000MHzではλ/3=50mm以上確保すれば良いことになる。図2においては、第1,第3のアンテナエレメント1,3の長さ=10mm、第2のアンテナエレメント2の長さ=20mmに設定した場合を示しており、ループアンテナの周囲の長さは、(10+20)×2=60mmとなり、ほぼ1.5GHz帯の高周波数帯の近傍の領域までカバーすることができる長さに設定している。なお、アンテナエレメント1乃至4の幅は、例えば、何れも1mmである。また、インダクタ5,6,7及びコンデンサ8並びに整合回路9は、チップ部品でなる。インダクタ5,6のチップ部品の寸法は、例えば、横幅1mm、縦幅0.5mm、厚さ0.5mmである。インダクタ7及びコンデンサ8の各チップ部品の寸法は、例えば、横幅0.5mm、縦幅0.5mm、厚さ0.5mmである。整合回路9は、例えば、インダクタ用のチップ部品とコンデンサ用のチップ部品とを並列に接続してなる。整合回路9を構成するインダクタ用のチップ部品とコンデンサ用のチップ部品は、何れも横幅0.5mm、縦幅0.5mm、厚さ0.5mmである。整合回路9は、このようにインダクタ用のチップ部品とコンデンサ用のチップ部品とを並列に接続してもよいし、或いはインダクタ及びコンデンサで構成した電子回路をモールドしてなる1つのチップ部品でも構成できる。
【0036】
次に、3個の第1〜第3のアンテナエレメント1〜3からなるループアンテナを、1.5GHz帯で共振させるためのインダクタンスL1の値を有するインダクタ5を配置する。通常、ループアンテナにおいては、電流が最大となる箇所は、給電部10の周辺箇所と該給電部10に対向する箇所(第1のアンテナエレメント1側の箇所)との2箇所であり、インダクタンスL1の値を有するインダクタ5は、給電部10と対向する電流の強い箇所に配置する。図3は、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5を第1のアンテナエレメント1の箇所に配置する前の1.5GHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図であり、電流の強い箇所は濃い濃度(黒)、電流の弱い箇所は薄い濃度(白)で表示している。ここで、電流の強い箇所とは、1.5GHz帯の周波数で共振している箇所である。
【0037】
図3に示すように、給電部10に対向する第1のアンテナエレメント1上には電流の強い高濃度箇所13が存在していることが分かる。なお、給電部10を配置した第3のアンテナエレメント3の給電周辺部分12において電流が強くなっていない理由は、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5を配置していない状態においては、1.5GHz帯では共振していないためである。インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5は、この電流の強い高濃度箇所13に配置するが、配置する位置如何によって共振周波数が変化するため、所望の共振周波数となるように、配置位置を微調整するようにしても良い。
【0038】
また、本実施形態においては、第1のインダクタ5のインダクタンスL1の定数を38nHに設定したが、1.5GHz帯における共振周波数を調整するために、10nH〜60nH程度の範囲で選択することが可能である。
【0039】
次に、インダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6を第2のアンテナエレメント2の箇所に配置する。図4は、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5を第1のアンテナエレメント1の箇所に配置した後であってインダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6を第2のアンテナエレメント2の箇所に配置する前の1.5GHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5を第1のアンテナエレメント1の箇所に配置した状態においては、1.5GHz帯に共振しているので、図4に示すように、給電周辺部分12と給電部10に対向する高濃度箇所13との2つの箇所に電流の強い箇所が存在していることが分かる。
【0040】
ここで、インダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6は、2GHz帯の共振を得ることが目的であるので、1.5GHz帯の共振状態を変化させないように、図4において、1.5GHz帯における電流の弱い低濃度箇所14に配置する。
【0041】
本実施形態においては、第2のインダクタ6のインダクタンスL2の定数を34nHに設定したが、2GHz帯における共振周波数を調整するために、第1のインダクタ5のインダクタンスL1の場合と同様に、10nH〜60nH程度の範囲で選択することが可能である。
【0042】
以上のように、第1,第2インダクタ5,6を配置した構成における電流分布をシミュレーションした結果を図5、図6に示している。つまり、図5は、それぞれがインダクタンスL1,L2の値を有する第1,第2のインダクタ5,6を第1,第2のアンテナエレメント1,2のそれぞれの箇所に配置した後の1.5GHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図であり、図6は、それぞれがインダクタンスL1,L2の値を有する第1,第2のインダクタ5,6を第1,第2のアンテナエレメント1,2のそれぞれの箇所に配置した後の2GHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【0043】
図5の電流分布に示すように、1.5GHz帯においては、給電周辺部分12とインダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5が配置された高濃度箇所13との2箇所において電流が強く、また、図6の電流分布に示すように、2GHz帯においては、給電周辺部分12とインダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6が配置された高濃度箇所15との2箇所において電流が強くなっている。したがって、1つのループアンテナによって、1.5GHz帯と2GHz帯との2つのバンドで共振する2共振ループアンテナを実現していることが分かる。
【0044】
さらに、本実施形態のマルチバンドアンテナにおいては、図2に示したように、第1〜第3のアンテナエレメント1〜3からなるループアンテナに対して、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7を介して第4のアンテナエレメント4を追加アンテナエレメントとして追加して配置する。
【0045】
インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7は、ループアンテナの動作を変化させないように、インダクタンス値として、1.5GHz以上の高周波数においてはインピーダンスが高くなるような定数をあらかじめ定めて設定する。本実施形態においては、第3のインダクタ7のインダクタンスL3の定数を25nHに設定したが、1.5GHz帯以上の高周波数帯において十分に高いインピーダンスとするために、少なくとも20nH以上の範囲で選択することが望ましい。
【0046】
また、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7のループアンテナへの接続位置については、第2のインダクタ6を配置した第2のアンテナエレメント2と給電部10を配置した第3のアンテナエレメント3との接続点の位置に一端を接続することにより、第3のインダクタ7をインダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6よりも給電側に接続する。
【0047】
かくのごとく、第3のインダクタ7を第2のインダクタ6よりも給電側に接続する理由は、次の2つにある。第1の理由は、第3のインダクタ7の接続位置と給電部10との間に、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5やインダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6が介在する状態になってしまうと、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5やインダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6が、第4のアンテナエレメント4の整合回路として働き、第4のアンテナエレメント4が対象とする700MHz帯、800MHz帯におけるインピーダンスがずれてしまうためである。
【0048】
第2の理由は、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5およびインダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6よりも、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7を給電側に接続することによって、800MHz帯の周波数帯においては、図7に矢印で示した接続位置からGND接地点11側を観測したインピーダンス16が高くなるように設定するためである。理想的には、インピーダンス16が、960MHz付近では無限大になり、図7に矢印で示した接続がOPEN状態となることである。図7は、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7を第2のインダクタ6よりも給電側に接続した接続構成からなるマルチバンドアンテナを説明するための接続構成図である。
【0049】
図7に示すような接続構成とすることにより、700MHz帯においては、第1〜第4のアンテナエレメント1〜4によって構成された逆F型アンテナとして動作し、800MHz帯においては、第3,第4のアンテナエレメント3,4によって構成された逆L型アンテナとして動作する。かくのごとき動作は、図8に示す700MHz帯の電流分布においては、第1〜第4のアンテナエレメント1〜4すべてに電流が流れ、一方、図9に示す800MHz帯の電流分布においては、第1,第2のアンテナエレメント1,2には電流がほとんど流れることはなく、第3,第4のアンテナエレメント3,4のみに電流が流れていることからも分かる。ここで、図8は、図7の接続構成からなるマルチバンドアンテナの700MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図であり、図9は、図7の接続構成からなるマルチバンドアンテナの800MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【0050】
また、本実施形態においては、図2、図7に示すように、キャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8を、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7と並列に配置する構成としている例を示した。しかし、キャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8は、800MHz帯と1.5GHz帯とのバランス調整を容易にするために配置したものであり、本発明によるマルチバンドアンテナにおいては必須の構成要素ではなく、前述のような周波数調整が可能であれば、キャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8は無くても構わない。
【0051】
(実施形態の動作の説明)
次に、図1に本発明の一例として示したマルチバンドアンテナの動作について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、図10に示す基本的なループアンテナのモデルを用いて、本発明の動作原理について順を追って説明する。
【0052】
図10は、一般的なループアンテナのモデルを示す模式図である。図10におけるループアンテナのサイズは、68mm×20mm、アンテナエレメント周囲の長さは、(68+20)×2=176mmである。ループアンテナは、(1λ)の長さで共振するので(λ:波長)、アンテナエレメントの長さが176mmの場合は、計算上、1,700MHzで共振することになる。また、ループアンテナは、1λ、2λ、3λ、…となる各周波数で共振するので、1,700MHzで共振するサイズであれば、1,700MHz、3,400MHz、5,100MHz、…それぞれで共振が発生する。よって、一般的なループアンテナにおいては、1.5GHz帯と2GHz帯とのように、近接する2つの周波数帯で2共振させることはできない。
【0053】
図10の一般的なループアンテナのモデルについて、電磁界シミュレータにて、リターンロスを算出した結果を図11に示している。つまり、図11は、図10の一般的なループアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。図11において、リターンロスが小さくなるところが共振点である。
【0054】
図10のループアンテナのモデルにおいて周波数が最も低い共振点は、図11の右下に示すように、図11のグラフ上にマーカ1を付けた1,760MHzであり、前述した共振周波数の計算値の1,700MHzとほぼ一致していることが分かる。また、図10に示すループアンテナの1,760MHzにおける電流分布は、図12のように、給電部10の近傍の給電周辺箇所17と、給電部10と対向する高濃度箇所18との2箇所において、電流が強くなる。図12は、図10の一般的なループアンテナの1,700MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【0055】
このように、図10のループアンテナのモデルにおいては、給電部10の周辺の給電周辺箇所17と、給電部10と対向する高濃度箇所18との2箇所において電流が強くなる状態がループアンテナの共振状態を示している。かくのごとき共振状態を等価回路で示した模式図が図13であり、ループアンテナは、ダイポールアンテナを2つ並べたものと同等である。図13は、図10の一般的なループアンテナの等価回路を示す模式図であり、共振状態においては、2本のダイポールアンテナを並置したアンテナ構成と同等であることを示している。
【0056】
以上のように、図10に示した一般的なループアンテナは、アンテナエレメント周囲の長さとして、共振周波数が得られる波長(1λ)の長さが必要であるため、サイズが大きくなるという問題があり、小型の携帯端末に内蔵するためには、さらなる小型化が必要である。したがって、携帯端末に内蔵可能なサイズまでループアンテナのサイズの小型化を図るために、例えば、図14のように、図10の一般的なループアンテナの長尺側のアンテナエレメントのサイズを68mmから40mmに短縮する。図14は、図10の一般的なループアンテナのサイズを68mm×20mmから40mm×20mmに短縮した小型化ループアンテナのモデルを示す模式図である。図14の小型化ループアンテナの場合、アンテナエレメント周囲の長さは、図10の(68+20)×2=176mmから(40+20)×2=120mmへと短くなっている。
【0057】
その結果、図14の小型化ループアンテナにおいては、図15のグラフ上のマーカ1に示すように、図10のループアンテナからのサイズ縮小により、共振周波数が、1,700MHzから2,700MHzへと高くなってしまう。図15は、図14の小型化ループアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。図15において、リターンロスが小さくなるところが共振点である。
【0058】
そこで、本発明においては、図14のような小型化したループアンテナにおいても、図10のループアンテナの場合と同等の共振周波数が得られるようにするために、図16に示すように、図14の小型化ループアンテナにおいて給電部10と対向する電流の強い高濃度箇所にインダクタ19を新たに配置する。ここで、インダクタ19の定数として、インダクタンスは60nH、内部抵抗は9Ωと設定した。図16は、図14の小型化ループアンテナに対してインダクタ19を新たに配置した小型ループアンテナのモデルを示す模式図である。
【0059】
図16に示す小型化ループアンテナのモデルの共振周波数は、図17のグラフ上のマーカ1に示すように、約1,760MHzであり、図10の68×20mmの一般的なループアンテナと同等の共振周波数が得られることになる。図17は、図16の小型化ループアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。
【0060】
次に、図16の小型化ループアンテナにおいて、インダクタ19の内部抵抗9Ωの存在によるアンテナ効率の劣化について考える。通常、アンテナエレメント内に9Ωものの抵抗成分があると、アンテナ特性上大きな損失が発生し、アンテナ効率が劣化することが予想される。そこで、比較対象として、図18のようなダイポールアンテナの場合との特性比較を行う。
【0061】
図18は、図16の小型化ループアンテナとの比較対象とするダイポールアンテナのモデルを示す模式図であり、ダイポールアンテナに図16の場合と同様の定数を有するインダクタ20を配置している場合を示している。つまり、インダクタ20の定数を、図16の小型化ループアンテナにおけるインダクタ19と同じ値(インダクタンス60nH、内部抵抗9Ω)に設定し、かつ、アンテナエレメントの長さを調整して、図19のグラフ上のマーカ1に示すように、共振周波数を図16の小型化ループアンテナの場合と同様の1,760MHzに調整した。図19は、図18のダイポールアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。
【0062】
以上の図10の一般的なループアンテナ、図16のインダクタ19を配置した小型化ループアンテナ、図18の比較対象のダイポールアンテナのそれぞれの1,760MHzにおけるアンテナ効率を比較した結果を、図20に表示する。つまり、図20は、図10の一般的なループアンテナ、図16のインダクタ19を配置した小型化ループアンテナ、図18の比較対象のダイポールアンテナのそれぞれの1,760MHzにおけるアンテナ効率を比較した比較表である。
【0063】
図20の1,760MHzにおけるアンテナ効率(Rad. Efficiency)欄に示すように、図10の68×20mmのループアンテナにおいては、アンテナ効率が−0.01dBと問題ない値を示している。ここで、アンテナ効率を示すRad. Efficiency(Radiation Efficiency)とは、給電点とアンテナインピーダンスとの差から発生する整合損失を補正し、純粋に、アンテナ効率を比較することができるように補正した値である。
【0064】
また、図18の比較対象のダイポールアンテナにおいては、図20の表の右欄に示すように、アンテナ効率が−6.77dBと大幅に劣化している。この劣化の大部分は、インダクタ20の内部抵抗の9Ωによる損失である。これに対して、図16のインダクタ19を配置した小型化ループアンテナにおいては、内部抵抗が9Ωのインダクタ19を配置しているにも関わらず、図20の表の中央欄に示すように、アンテナ効率が−0.34dBと良好な値になっている。
【0065】
図16のインダクタ19を配置した小型化ループアンテナは、図1や図2にて説明した本発明の実施形態におけるループアンテナに相当するモデルであり、内部抵抗が9Ωのインダクタ19を配置しているにも関わらず、アンテナ効率が−0.34dBと良好な値になっている理由について、図21を用いて説明する。図21は、図16の小型化ループアンテナモデルの等価回路を示す模式図であり、図13の等価回路に示した場合と同様に、共振状態においては、2本の第1,第2のダイポールアンテナ21,22を並置したアンテナ構成と同等になる。
【0066】
図21の等価回路において、第2のダイポールアンテナ22は、図20の比較表に示した図18のダイポールアンテナの場合と同様の構成であり、インダクタ19の内部抵抗により、アンテナ効率が大幅に劣化することになる。一方、第1のダイポールアンテナ21は、抵抗成分を全く含まない構成になっているので、アンテナ効率が劣化しないことになる。ここで、ループアンテナの効率とは、給電された電力がアンテナエレメントからどの程度放射されるかを表すものである。例えば、第1のダイポールアンテナ21と第2のダイポールアンテナとの特性が同等でかつ良好な状態にあった場合には、給電された電力は、第1のダイポールアンテナ21と第2のダイポールアンテナとに均等に配分され、均等に放射される。
【0067】
これに対して、図21の等価回路に示す本実施形態のように、第2のダイポールアンテナ22のアンテナ特性が著しく劣化している場合は、アンテナに給電された電力のほとんどが良好な特性を示す第1のダイポールアンテナ21に供給されて、放射されることになる。したがって、第2のダイポールアンテナ22の特性が著しく劣化していても、給電された電力は、問題なく、第1のダイポールアンテナ21から放射されるので、内部抵抗があるインダクタ19を配置した図16に示すような小型化ループアンテナであっても、ループアンテナとしてのアンテナ特性は劣化しないことになる。以上が、アンテナ特性を劣化させることなく、ループアンテナの小型化が可能になる理由である。
【0068】
次に、小型化ループアンテナとして2共振を得る手段について説明する。前述したように、図16に示したインダクタ19配置の小型化ループアンテナのモデルは、図17の特性図に示したように、1,760MHzの周波数で共振している。1,760MHzの周波数で共振した時の電流分布は、図22の模式図に示すように、給電部10周辺の電流の強い給電周辺箇所23が広範囲に亘って分布し、給電部10と対向する部分の電流の強い高濃度箇所24は、インダクタ19による短縮効果の結果として、狭い範囲で分布している。図22は、図16の小型化ループアンテナモデルの1,760MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。
【0069】
ここで、図22の高濃度箇所24の周辺に存在する1,760MHzにおける電流の弱い低濃度箇所に着目する。図23は、図16の小型化ループアンテナモデルの1,760MHz帯における電流の弱い低濃度箇所を示す模式図であり、図22の電流分布のシミュレーション結果に基づいて低濃度箇所として抽出された箇所を示している。
【0070】
図23に示すように、1,760MHz帯における電流の弱い低濃度箇所は、第1,第2の低濃度箇所25,26の2箇所存在している。そこで、1,760MHzにおける共振動作に影響を及ぼさない状態で、第2の共振周波数が得られるようにするために、図24に示すように、図23の小型化ループアンテナにおいて給電部10と対向する電流の弱い第1,第2の低濃度箇所25,26のいずれか一方に、インダクタ19(第1のインダクタに相当するインダクタ)とは異なる第2のインダクタ27を新たに配置する。ここで、第2のインダクタ27の定数として、インダクタンスは40nH、内部抵抗は6Ωと設定した。図24は、図16の小型化ループアンテナに対して第2のインダクタ27を新たに配置した小型ループアンテナのモデルを示す模式図である。
【0071】
図24の小型化ループアンテナにおいては、図25(A)に示すように、第2のインダクタ27は1,760MHz帯における電流の弱い第1,第2の低濃度箇所25,26のいずれかの箇所つまり1,760MHz帯におけるインピーダンスが大きい箇所に配置されるので、第2のインダクタ27の配置によっても、1,760MHzにおける電流分布の状態が図22の状態からほとんど変化しない状態にすることができる。
【0072】
図25は、図24の小型化ループアンテナモデルの1,760MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図であり、図25(A)が第2のインダクタ27を新たに配置した後の1,760MHz帯における電流分布の状態を示し、図25(B)が第2のインダクタ27を配置しない前の1,760MHz帯における電流分布の状態(すなわち、図22の電流分布の状態)を示している。
【0073】
なお、図24に示す小型化ループアンテナのモデルの共振周波数は、図17の場合と同様に、図26のグラフ上のマーカ1に示す約1,760MHzに存在している以外に、さらに、図17の場合とは異なり、第2の共振周波数として、マーカ2に示すように、約1,960MHzが、新たに得られることになる。図26は、図24の小型化ループアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。
【0074】
第2の共振周波数として新たに得られた1,960MHzにおける電流分布の様子を、図27の模式図に示している。図27は、図24の小型ループアンテナの1,960MHz帯における電流の強弱の分布をシミュレーションした結果について該電流の強弱を濃度の濃淡として模式的に示した模式図である。図27の模式図に示すように、1,960MHz帯における電流分布は、第2のインダクタ27が配置された箇所の周辺にある高濃度箇所28と、給電部10の周辺に位置する給電周辺箇所29との2箇所において、1,960MHz帯における電流が強くなり、第2のインダクタ27によって、1,960MHz帯において共振が発生していることが分かる。
【0075】
以上の説明が、小型化ループアンテナにおいて、2つの共振周波数を有する2共振が得られる原理である。かくのごとき原理を利用した本発明によるマルチバンドアンテナの動作について、次に説明する。
【0076】
まず、通常の逆F型アンテナの形状について、図28を用いて説明する。図28は、通常の逆F型アンテナのモデルの形状を示す模式図である。図28に示す通常の逆F型アンテナのモデルは、図2に示したように、基板サイズは120mm×60mmであり、逆F型アンテナは、10mm×60mmの領域内に制限され、10mm×45mmのアンテナサイズに設定している場合を示している。
【0077】
また、図28に示す通常の逆F型アンテナのモデルの共振周波数は、図29のグラフ上のマーカ1に示すように、2,150MHzのみであり、複数の共振点を持たない単共振アンテナである。図29は、図28の通常の逆F型アンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。つまり、図28に示す通常の逆F型アンテナのモデルは、700MHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯には共振点を有していなく、2GHz帯の2,150MHzのみに共振点を有している。
【0078】
これに対して、図28に示す通常の逆F型アンテナのモデルのループ部分のみを用いて構成するループアンテナの形状を図30に示している。図30は、図28の通常の逆F型アンテナのモデルのループ部分のみを用いて構成するループアンテナの形状を示す模式図である。図30に示すループアンテナは、図2の場合と同様、10mm×20mmのサイズに小型化され、該ループアンテナのモデルの共振周波数は、図31のグラフに示すように、3,200MHzとなっている。図31は、図30のループアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。つまり、図31に示すように、図30に示すループアンテナのモデルは、700MHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯のいずれにも共振点を有していなく、3,200MHzのみに共振点を有している。
【0079】
そこで、まず、図30に示すループアンテナ(つまり図28の逆F型アンテナのループ部分に相当する部位)の共振周波数を1.5GHz帯に合わせるため、図32に示すように、インダクタンスL1の値を有する第1のインダクタ5を、給電部10に対向する箇所に配置する。図32は、図30のループアンテナに第1のインダクタ5を新たに配置した状態を示す模式図である。ここで、第1のインダクタ5のインダクタンスL1の定数としては、図32に示すように、38nHに設定し、内部抵抗rは4Ωに設定する。
【0080】
図32のような第1のインダクタ5を配置することによって、図33のグラフ上のマーカ5,6に示すように、1.5GHz帯の共振が得られることになる。図33は、図32のループアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。つまり、図32に示すループアンテナのモデルは、700MHz帯、800MHz帯、2GHz帯には共振点を有していなく、携帯端末の通信用として使用されている1.5GHz帯の帯域として、マーカ5(1,448MHz)からマーカ6(1,511MHz)までの1.5GHz帯に共振点を有している。
【0081】
次に、図32のループアンテナに対して、さらに、第2の共振点を追加して得るために、インダクタンスL2の値を有する第2のインダクタ6を、図34に示すように、追加して配置する。図34は、図32のループアンテナに第2のインダクタ6を新たに配置した状態を示す模式図である。ここで、第2のインダクタ6の図34に示す配置位置は、1.5GHz帯の共振動作に影響を及ぼさないように、図6において説明したように、1.5GHz帯における電流の弱い低濃度箇所に配置する。また、第2のインダクタ6のインダクタンスL2の値を有する定数としては、図34に示すように、34nHに設定し、内部抵抗rは3.5Ωに設定する。
【0082】
図34のような第2のインダクタ6を第1のインダクタ5に追加してさらに配置することによって、図35のグラフ上のマーカ5,6に示す1.5GHz帯の共振点の他に、さらに、第2の共振周波数として、図35のグラフ上のマーカ7,8に示す2GHz帯の共振点が得られることになる。図35は、図34のループアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。つまり、図35に示すように、図34に示すループアンテナのモデルは、700MHz帯、800MHz帯には共振点を有していなく、携帯端末の通信用として使用されている高周波数側の1.5GHz帯と2GHz帯との2つの帯域として、マーカ5(1,448MHz)からマーカ6(1,511MHz)までの1.5GHz帯とマーカ7(1,850MHz)からマーカ8(2,170MHz)までの2GHz帯との2つの共振点を有している。
【0083】
さらに、図2に示すアンテナ形状のように、第2のアンテナエレメント2と第3のアンテナエレメント3との接続点に、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7と、第3のインダクタ7に並列に接続したキャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8と、を配置し、さらに、第3のインダクタ7とコンデンサ8とを介して第4のアンテナエレメント4を配置する。かくのごとく、第4のアンテナエレメント4を配置することによって、2つの共振点を有する2共振ループアンテナと、第1〜第4のアンテナエレメント1〜4すべてからなる逆F型アンテナと、第3、第4のアンテナエレメントからなる逆L型アンテナといった複数のアンテナ動作を併せ持つマルチバンドアンテナが形成される。
【0084】
ここで、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7は、インダクタンスL3の値として、高周波においてインピーダンスが高くなるようにあらかじめ定めた定数として例えば25nHを選択して、ループ部分を流れる高周波の電流が、第4のアンテナエレメント4に流れ込むことを防ぐ役割を果たしている。したがって、2つの共振点を有する2共振ループアンテナは、高い周波数帯で共振し、第4のアンテナエレメント4は低い周波数帯で共振することになる。この時、第4のアンテナエレメント4は、4個の第1〜第4のアンテナエレメント1〜4によって構成される逆F型アンテナとしての動作と、第3,第4のアンテナエレメント3,4による逆L型アンテナとしての動作とを併せ持つことにより、低い周波数帯で共振する第3,第4の2つの共振点を発生させることができる。
【0085】
つまり、図2のような第3のインダクタ7および第4のアンテナエレメント4を図34のループアンテナにさらに追加して配置することによって、図36のグラフ上のマーカ5,6に示す1.5GHz帯、マーカ7,8に示す2GHz帯の2つの共振点の他に、さらに、第3,第4の共振周波数として、図36のグラフ上のマーカ1,2に示す700MHz帯の共振点とマーカ3,4に示す800MHz帯の共振点との2つの共振点が得られることになる。図36は、図34のループアンテナに第3のインダクタ7、コンデンサ8および第4のアンテナエレメント4をさらに追加した構成である図2のマルチバンドアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。つまり、図36に示すように、図2に示すマルチバンドアンテナのモデルは、携帯端末の通信用として使用されている4つの帯域として、マーカ1(704MHz)からマーカ2(798MHz)までの700MHz帯、マーカ3(824MHz)からマーカ4(960MHz)までの800MHz帯、マーカ5(1,448MHz)からマーカ6(1,511MHz)までの1.5GHz帯、マーカ7(1,850MHz)からマーカ8(2,170MHz)までの2GHz帯、の合計4つの共振点を有している。
【0086】
以上に詳細に説明したように、本実施形態のマルチバンドアンテナにおいては、通常は単共振しか得ることのできない逆F型アンテナと同様のアンテナ形状であっても、小型化した4個の第1〜第4のアンテナエレメント1〜4と少なくとも3つの第1〜第3のインダクタとを配置した構成とすることによって、4バンドに対応する広帯域のアンテナを実現することができる。
【0087】
なお、図2に示すマルチバンドアンテナのモデルは、インダクタンスL3の値を有する第3のインダクタ7と並列にキャパシタンスC1(0.25pF)の値を有するコンデンサ8を配置した場合を示しているが、第3のインダクタ7と並列に配置したキャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8が存在していない場合は、図37に示すように、共振周波数のズレが起きる可能性がある。図37は、図2のマルチバンドアンテナからキャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8を除去した場合の特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。図37に示すように、第3のインダクタ7と並列のキャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8が存在していない場合は、4つの共振周波数が、図36の場合とは異なり、ズレが発生している。
【0088】
図37のアンテナ特性のズレにおいて特に問題になるのは、800MHz帯と1.5GHz帯との間の特性劣化点が1.5GHz帯寄りになってしまうことである。しかしながら、キャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8を配置することによって、かくのごとき特性劣化点を800MHz帯と1.5GHz帯の中央の周波数に調整し易くなるという利点があるものの、コンデンサ8を配置しなくても、アンテナエレメントや他の部品の定数を吟味することによっても、前述の特性劣化点の調整を行うことが可能である。したがって、本発明においては、キャパシタンスC1の値を有するコンデンサ8の配置は、必ずしも、必須の構成要件ではない。
【0089】
(他の実施形態)
前述した実施形態においては、携帯端末の通信周波数である700MHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯の4バンドに共振する4共振用のマルチバンドアンテナを構成する場合について説明したが、本発明はかかる場合に限るものではなく、他の周波数への応用も勿論可能である。
【0090】
例えば、携帯端末には、音声やデータ通信に使用するための前述のようなアンテナ以外にも、GPS(Global Positioning System)やBluetooth、無線LAN(Local Area Network)などのアンテナも備えられるようになってきており、本発明は、このような音声やデータ通信以外の用途に用いられるアンテナに対しても応用することができる。
【0091】
また、装置サイズを小型化する場合、GPSとBluetoothと無線LANとのいずれかのアンテナを、共用アンテナとする場合が多い。かくのごとき場合には、例えば、Bluetoothと無線LANとは、2.4GHzと同じ周波数帯を使用するので、GPSの1575.42MHz帯と2.4GHz帯との2共振アンテナを採用することによって、GPS、Bluetooth、無線LANの3つの用途をカバーすることができる。
【0092】
GPSの1575.42MHz帯と2.4GHz帯との2共振アンテナを実現する場合は、例えば、図38に示す模式図のような10mm×10mmという小型のアンテナサイズで実現することができる。図38は、1,575.42MHz帯と2.4GHz帯との2共振アンテナの形状を示す模式図であり、2つの共振点を有するループアンテナとして形成している。
【0093】
図38に示すループアンテナを形成することによって、図39のグラフ上のマーカ1に示す1,575.42MHz帯と、マーカ2(2,400MHz)からマーカ3(2,500MHz)までの2.4GHz帯との、2つの共振点を有する2共振アンテナが得られることになる。図39は、図38のループアンテナの特性を示す特性図であり、横軸が周波数、縦軸がリターンロスである。
【0094】
さらに、図38のループアンテナは、図39に示したアンテナ特性を有する2共振アンテナを確実に実現することができるが、図40に示すアンテナ効率のように、−1dB以上という非常に良好な特性が得られるので、10×10mmというアンテナサイズをさらに小型化することも可能である。図40は、図38のループアンテナのアンテナ効率を電磁界シミュレータによって計算した結果を示す特性図である。なお、図40におけるアンテナ効率は、Total Efficiencyによって表されている。図20に前述したアンテナ効率を示すRad. Efficiency(Radiation Efficiency)が、給電点とアンテナインピーダンスとの差から発生する整合損失を補正して、純粋にアンテナ特性同士を比較しようとしているのに対し、図40におけるTotal Efficiencyは、給電点とアンテナインピーダンスとの整合損失を含むものであり、アンテナを装着した装置全体の特性を表している。
【0095】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態におけるマルチバンドアンテナによれば、次のような効果が得られる。
【0096】
第1の効果は、マルチバンドアンテナを搭載する携帯端末として、大幅な装置の小型化が実現することができることである。その理由は、一般的な携帯端末に採用される単共振アンテナと同等のアンテナサイズであっても複数の共振例えば4共振を得ることが可能になったので、アンテナサイズの拡大や、アンテナ本数の増加をすることなく、マルチバンドに対応することが可能になったためである。
【0097】
また、マルチバンドに対応する場合、アンテナエレメント同士の干渉などにより特性が劣化する場合が多いが、本実施形態のアンテナの場合には、図41の特性図に示すように、全周波数帯域に亘って約−3dB以上の良好なアンテナ効率が得られる。図41は、図2のマルチバンドアンテナのモデルのアンテナ効率を電磁界シミュレータによって計算した結果を示す特性図である。なお、図41におけるアンテナ効率は、図40の場合と同様に、図20に前述したアンテナ効率を示すRad. Efficiencyとは異なり、Total Efficiencyによって表されていて、給電点とアンテナインピーダンスとの整合損失を含むものであり、アンテナを装着した装置全体の特性を表している。
【0098】
また、一般的な携帯端末においては、−3〜−5dB程度のアンテナ効率で用いることが多いので、図41に示すように、アンテナ効率が−3dB以上であれば、アンテナ特性が良好な携帯端末として実現することができる。
【0099】
第2の効果は、マルチバンドアンテナを搭載した携帯端末の大幅なコストダウンが可能なことである。その理由は、本実施形態のマルチバンドアンテナは、4共振アンテナの場合、小型化アンテナエレメントに対してチップ部品を3点(3個の第1〜第3のインダクタ5〜7)、ないし、場合によっては、4点(3個の第1〜第3のインダクタ5〜7およびコンデンサ8)追加するだけで実現することが可能であり、アンテナエレメントのさらなる追加や複雑な構成を必要とするアンテナを採用する場合と比較して、遥かに安価な装置を設計することができるためである。
【0100】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0101】
1 第1のアンテナエレメント
2 第2のアンテナエレメント
3 第3のアンテナエレメント
4 第4のアンテナエレメント
5 第1のインダクタ
6 第2のインダクタ
7 第3のインダクタ
8 コンデンサ
9 整合回路
10 給電部
11 GND接地点
12 給電周辺部分
13 高濃度箇所
14 低濃度箇所
15 高濃度箇所
16 インピーダンス
17 給電周辺箇所
18 高濃度箇所
19 インダクタ
20 インダクタ
21 第1のダイポールアンテナ
22 第2のダイポールアンテナ
23 給電周辺箇所
24 高濃度箇所
25 第1の低濃度箇所
26 第2の低濃度箇所
27 第2のインダクタ
28 高濃度箇所
29 給電周辺箇所
100 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の共振周波数を有するマルチバンドアンテナであって、前記共振周波数の各波長よりもエレメント長が短い小型化したアンテナエレメントによって形成したループアンテナに対して、第1のインダクタと第2のインダクタとを追加して接続配置することにより、前記共振周波数のうち高周波数側の第1の共振周波数と第2の共振周波数との2つの共振周波数において共振させることが可能な2共振ループアンテナを少なくとも備えて構成していることを特徴とするマルチバンドアンテナ。
【請求項2】
前記第1の共振周波数は、前記第1のインダクタのインダクタンスの値を調整することにより任意の周波数に設定することが可能であり、また、前記第2の共振周波数は、前記第2のインダクタのインダクタンスの値を調整することにより任意の周波数に設定することが可能であることを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項3】
前記第1のインダクタは、前記2共振ループアンテナの給電部に対向する箇所であって、前記第1の共振周波数における電流が強くなっている箇所に配置し、前記第2のインダクタは、前記2共振ループアンテナの前記給電部に対向する箇所であって、前記第1の共振周波数における電流が弱くなっている箇所に配置することを特徴とする請求項1または2に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項4】
前記2共振ループアンテナに対して、第3のインダクタを介して追加アンテナエレメントをさらに接続配置することにより、前記2共振ループアンテナのみならず、逆F型アンテナおよび逆L型アンテナとしても動作させ、前記第1、第2の共振周波数にさらに追加して、低周波数側の第3の共振周波数および第4の共振周波数においても共振させることが可能な4共振アンテナを構成していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項5】
前記第3のインダクタのインダクタンスの値は、前記2共振ループアンテナに流れる高周波数の電流が前記追加アンテナエレメント側に流れ込むことを抑止するインピーダンス値に設定することを特徴とする請求項4に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項6】
前記第3のインダクタに対して、並列に、周波数調整用のコンデンサを接続配置することを特徴とする請求項4または5に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項7】
マルチバンドに対応するアンテナを搭載した携帯端末において、前記アンテナを、請求項1ないし6のいずれかに記載のマルチバンドアンテナを用いて構成していることを特徴とする携帯端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図24】
image rotate

【図26】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図12】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図25】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2013−110624(P2013−110624A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254754(P2011−254754)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】