説明

マルチメディア受信を実行するマルチメディア端末装置及び方法

【課題】スクランブル、スクランブル解除、及び送り状作成手続きを実行しやすくするマルチメディア受信方法及び装置を提供する。
【解決手段】装置は、コンピュータ又はテレビジョンなどの記憶提示装置と、移動電話又はコードレス電話などの双方向通信システムの端末装置とから成り、マルチメディア表現を受信し、それをユーザー向けに再生する。マルチメディア情報は動的にロードされ、スクランブルされている通信をスクランブル解除するのに必要なキーは双方向通信システムを介してユーザーに送られる。端末装置において、システムの容量を少しだけ使用する局所エージェントが情報のロードを処理し、使用可能な資源を調べる。マルチメディア・サービスの制作者及び/又は配布者にテレバンク・サービスに似た操作の形で支払いを行うためにも双方向通信を利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費者指向のマルチメディア技術に関し、特に消費者が多様なマルチメディアにアクセスすることを可能にする方法及び装置と、種々の通信需要に柔軟に使用することのできる装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
消費者が強力なパソコンをどんどん使えるようになってきて、マルチメディア、即ち同時視聴覚オブジェクトの同期再生、がはやるようになってきた。マルチメディアの最も広く使用される形は、CD−ROM等のコンピュータ大容量記憶媒体で配布され、コンピュータ上で実行されるときに表示装置とスピーカーとによって画像、テキスト及び音響の形のデータを再生するプログラムである。マルチメディアは、同時再生を行うだけではなくて、しばしば対話的である、即ちユーザーが自分の選択を通してプログラムの流れに影響を及ぼすことができる。
【0003】
マルチメディア・プログラムのアブストラクト・レベルでの取り扱いはISO/IEC規格13522で論じられているが、それは現在は5部分から成っていて、本書ではそれをMHEG規格(Multimedia Hypermedia Information Coding Experts Group(マルチメディア・ハイパーメディア情報符号化専門家グループ))と称する。この規格ではマルチメディア・プログラムはいわゆるオブジェクトから成るものと定義される。前記のオブジェクトはクラスオブジェクトである、即ち前記オブジェクトは一定の構文法に従ってオブジェクトクラスに分類され、与えられたクラスの中のオブジェクトはそのクラスの規格に従う。オブジェクトクラスは例えばリンク、アクション・オブジェクト、構図オブジェクト、内容オブジェクト及び容器オブジェクトを含む。或るオブジェクトは時間的に連続していて、それらは流れと呼ばれる。更に、オブジェクトを多重化することもでき、多重化されたオブジェクトは要素流れと呼ばれる2つ以上の流れから成る。それらを多重化して、もっと多数の流れを包含させることもできる。
【0004】
MHEG規格に従うオブジェクトを使用してマルチメディア表現を作るためには、オブジェクトを取り扱い又は解釈し、それらの相互の関係を正しく整え、ユーザーに対してそれらの表現を制御することのできる特別の手段が必要である。その特別の手段はMHEGエンジンと呼ばれている。通常、それはプログラムコードの形で実現され、一般的レベルでのその動作はMHEG規格で定義されている。
【0005】
システムが改良されてより広く使用されるようになるに連れて、マルチメディア・プログラムも無線通信局、衛星及び/又はケーブルTVシステムを通して、今日ラジオやテレビの番組が放送されているのと同じように放送されるようになろう。放送とは、広い地理的領域内の、送信されたプログラムを自分の選択に従って受信することができて、その受信について放送者の選択に応じて一定の料金を支払う義務を負うことのできる非常に多数のユーザーのグループに対して中央送信所からプログラムを配布することを意味する。その様な送信を効率よく受信するために使用することのできる、消費者向けの妥当な価格のマルチメディア端末装置は、これまでのところは殆ど提案されていない。
【0006】
1方向放送型の配布方法に対し、効果的な方法の幾つかが知られており、ここではデジタルオーディオ放送(Digital Audio Broadcasting (DAB))と呼ばれる新しいデジタル放送システムを例として取り上げる。DABシステムの規格は、欧州放送連盟(European Broadcasting Union (EBU) )及び欧州通信規格協会(European Telecommunications Standards Institute (ETSI))が作成した規格ETS300401に見られる。DABシステムのマルチメディア・オブジェクトの送信での使用に関して、フィンランド特許出願952880("Multimediaobjektien valitys digitaalisessa tiedonsiirtojarjestelmassa")、955504("Multimediaohjelman palvelukomponenttien koodaus digitaalisessa radiokanavassa" )、及び960418("Dgitaalisten esitysobjektien salaus lahetyksessa ja tallennuksessa")に記載がなされており、これらの出願の出願人は本願の出願人と同じである。これらの出願は、最新のデジタル放送システムを使ってオブジェクトをファイル又はストリーム・フォーマットで送り手から受信装置へ送信できることを示している。しかし、これらの出願は適当なマルチメディア受信装置を開示してはいない。
【0007】
マルチメディア受信装置は、非常に大きな供給源からユーザーが自分の好みに応じてプログラム及びサービスを選択する技術的手段を提供するべきである。対話型マルチメディアの場合には、受信装置は、ユーザーの選択を示すメッセージを、通信システムの送信局又はその他の、その選択がユーザーの受信するプログラムの内容に対して所望の効果を発揮するポイントへ送るための手段も提供するべきである。この様に、放送型のマルチメディアに関連する通信は少なくとも一定限度までは双方向型でなければならない(アップストリーム情報即ちユーザーからシステムへの情報の量はダウンストリーム情報の量の数分の一に過ぎないであろうから“一定限度”なのである)。
【0008】
この様なプログラムの製作及び配布の見地からは、ユーザーが使用するプログラム及びサービスについて合意されている報酬をユーザーが支払うこと、及び、意図的な無許可の受信を何らかの方法で防止することが重要である。実際には、プログラムは通常スクランブルされた形で送信され、支払いがなされるとスクランブル状態を解除する装置及び/又はキーがユーザーに引き渡されるが、後者は一定の疑似ランダム文字列である。マルチメディア受信用に設計される装置は、スクランブル、スクランブル解除、及び送り状作成(invoicing)手続きを実行しやすくするべきである。また、マルチメディア受信装置は、消費者市場向けの他の技術的製品と同じ規則に従う、即ち、融通が利いて役に立てば立つほどユーザーはその装置に興味を持ち、販売価格が有利であるほど、人はその製品を買おうとするであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】フィンランド特許出願952880
【特許文献2】フィンランド特許出願955504
【特許文献3】フィンランド特許出願960418
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ISO/IEC規格13522
【非特許文献2】ETS規格300401
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記したマルチメディア送受信についての要件を満たす方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、双方向通信網の端末装置と大容量単方向通信網の端末装置又はコンピュータ装置とを組み合わせ、動作条件及び要件に応じてそれらの特徴を動的に組み合わせて使用することにより達成される。
【0013】
本発明の第1の形態によれば、マルチメディア通信を通信網から選択的に受信し、ユーザーに提示するための装置であって、マルチメディア情報を前記通信網から受信するための第1の装置と情報を通信網に送るための第2の装置とから成っており、前記第1の装置は、前記マルチメディア情報を、単方向通信システムを使って前記通信網から受信するための手段と、提示されるべきマルチメディア情報を一時記憶するための記憶手段と、マルチメディア情報の動的受信及び記憶を制御すると共に、前記マルチメディア情報がどのように使用されるかの条件に関連する使用情報を前記第2の装置を介して前記通信網に送るためのエージェントと、を有し、且つ、前記第2の装置は、前記使用情報を、双方向通信システムを使って前記通信網に送るための手段を有することを特徴とする装置が提供される。
本発明の第2の形態によれば、マルチメディア端末装置中の第1の装置として使用されるべき装置であって、通信網からマルチメディア情報を受信するための手段を有しており、前記マルチメディア情報を、単方向通信システムを使って前記通信網から受信するための手段と、提示されるべきマルチメディア情報を一時記憶するための記憶手段と、マルチメディア情報の動的受信及び記憶を制御すると共にマルチメディア情報の使用に関連する情報を前記通信システムに送るためのエージェントと、マルチメディア情報の動的受信及び記憶を制御すると共に、前記マルチメディア情報がどのように使用されるかの条件に関連する使用情報を、双方向通信システムを使って前記通信網に送るためのエージェントと、を有することを特徴とする装置が提供される。
本発明の第3の形態によれば、通信網からマルチメディア表現を選択的に受信して、それをユーザーに提示するための方法において、該方法は、ユーザーの選択に応じて、そのユーザーの選択が要求している一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報が局所的に第1の装置に記憶されているか否かを調べ、前記マルチメディア情報がどのように使用されるかの条件に関連する使用情報を、双方向通信システムを使って第2の装置を介して、前記第1の装置から前記通信網に送り、そのユーザーの選択によって要求され、局所的に記憶されていない一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報が該通信網からロードされて局所的に記憶するようにロードし、そして、そのユーザーの選択によって要求され、一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報が、該マルチメディア表現をユーザーに提示するために、それが最早不要になったときに局所記憶装置から除去するのを有することを特徴とする方法が提供される。
第1の装置と第2の装置とから成る本発明の装置は、
提示されるべきマルチメディア情報の一時記憶のための記憶手段と、
マルチメディア情報の動的受信及び記憶を制御し、該マルチメディア情報の使用に関連する情報を前記第2装置を介して通信システムに伝えるエージェントと、を前記第1の装置中に有することを特徴とする。
【0014】
本発明は、マルチメディア端末装置において前記の第1の装置として使用されるべき装置にも関する。本発明の装置は、
マルチメディア情報を一時記憶する記憶手段と、
マルチメディア情報の動的受信及び記憶を制御し、該マルチメディア情報の使用に関連する情報を通信システムに伝えるエージェントと、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、通信システムからマルチメディア表現を選択的に受信し、前記表現をユーザーに提示する方法にも関する。本発明の方法は、
ユーザーの選択に応じて、そのユーザー選択により要求され、一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報が局所に記憶されているか否かを調べ、
該ユーザー選択により要求され、一定のマルチメディア表現に関連する局所に記憶されていないマルチメディア情報が通信システムからロードされ局所に記憶され、
該ユーザー選択により要求され、一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報を、該マルチメディア表現をユーザーに提示するために不要になったら局所記憶装置から除去する段階を有することを特徴とする。
【0016】
本発明は、例えば双方向ページング装置、セルラーネットワークの移動電話、又はデジタル交換センターに接続されている通常の電話器などの、双方向通信網の端末装置と放送型受信装置とを組み合わせることにより上記の要件を満たす実用的マルチメディア受信装置を制作し得ることを示す。前記放送型受信装置は、好ましくは現代のTV受信装置であり、それに対して本発明は僅かな変更を必要とするに過ぎないか、或いは全く変更を必要としない。必要な記憶容量を少なく保つために、該装置では、公知のCD−ROM装置とは異なって、提示されるべきマルチメディア・プログラム全体が1つの記憶媒体に記憶されるのではなくて、必要なプログラム要素が送信の流れから動的に抽出され、記憶されずに提示され、又は必要な間だけ局所に記憶される。該要素の抽出及び提示は、そのスクランブル解除を含むことがある。
【0017】
このシステムの1つの有利な特徴は、局所エージェント、即ちロード及び検査プログラムであり、このプログラムは非常に僅かな記憶スペースを必要とするに過ぎなくて、ユーザーの要求に基づいて、使用可能なハードウェア資源が要求を満たすか否か検査し、適切なプログラムの動的ロード及び実行を開始する。双方向システムの前記端末装置は、ユーザーから送信局又は通信網の他の部分へのロードを制御する選択データを伝送するために使われる。本発明の好ましい1実施例では、双方向システムの端末装置はダウンストリーム・マルチメディア情報の転送媒体としても機能し、前記放送型受信装置は単なる提示媒体に過ぎない。双方向システムの同じ端末装置を使って、ユーザーとサービス・プロバイダとの間で送り状情報を転送すると共に、スクランブル解除のために必要な許可及びキーを送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施例であるシステムを示す図である。
【図2】本発明の第2の好ましい実施例のハードウェア構成を示す図である。
【図3】好ましいエージェントの状態図の第1の部分を示す図である。
【図4】好ましいエージェントの状態図の第2の部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図中の同じ要素は同じ参照符号で指示されている。
図1は、1方向放送システムの受信装置3と双方向通信システムの端末装置4とから成る、消費者の使用のためのマルチメディア端末装置2を示しており、この2つは局所通信リンク5により接続されている。受信装置3は、例えば、その動作を制御するマイクロプロセッサ6と、半導体メモリー及び/又は大量記憶媒体の形の記憶装置7と、表示装置8としての陰極線管(CRT)又はエレクトロルミナンス(electroluminance)又は液晶表示装置等のフラットパネル表示装置から成る現代のTV受信装置である。図1に示されている実施例では、受信装置3は、ケーブル又は電磁輻射を介してユーザーに伝送され得るTV送信を受信する通常の受信部9も有する。マイクロプロセッサ6がアプリケーション・プログラム10に従って受信装置の動作を制御するので、この技術分野では通例そうであるように、一定の動作を「アプリケーション・プログラムが実行する」と言うことができる。
【0020】
受信部9も、ケーブル、衛星又は無線又は有線のローカルエリアネットワーク(LAN)又はメトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network)(MAN)を介してアナログ及びデジタル信号を受信するための手段を有する汎用マルチレシーバーであってよい。双方向システムの端末装置4は、もしそれを経由するデータ転送速度が充分であるならば、プログラム構成要素の伝送のためのダウンストリーム伝送チャネルとしても作用することができる。その場合、受信部9は、1つの受信入力として端末装置4からの代替直接入力9aを有する。
【0021】
双方向通信システムの端末装置4は、例えば、デジタル・セルラー通信網のGSM電話等の移動電話であり、或いは近くの無線基地局(図には示されていない)との間で簡単なメッセージを交換することのできる双方向ページング装置である。局所通信リンク5は、例えば、有線接続装置(例えばRS−232接続装置)、赤外線リンク又は低電力無線リンクなどである。当業者は、例えばデジタル移動電話及び携帯用コンピュータを構成する装置からその様なリンクを確立する方法をよく知っている。
【0022】
図1は通信網11も示しており、これは、中継器及びプロトコル変換器(図示せず)を通して相互に接続された数個の独立のシステムから成る非常に複雑で多様な通信網であってよい。図1の場合、通信網11は、少なくとも、MPEG(Motion Picture Experts Group)フォーマットの視聴覚送信とDABフォーマットの放送送信とを行う要素12とデジタルセルラー無線システム13とを有する。通信網11は、コンピュータ間通信用に設計された広域インターネット型通信網の部分と、有線電話通信網及び局地ケーブル分布通信網及びコンピュータ用の有線又は無線ローカルエリアネットワークの部分とを含んでいてもよい。また、通信網11は、地上又は衛星に置かれることの出来る広域伝送リンク局を用いて前記のMPEG及びDAB型のTV及び/又は無線送信以外の送信データを作成して配布する要素を持っていてもよい。
【0023】
図1に示されている実施例では、記憶装置に関連する製造コストをなるべく低く保つために、受信装置3の記憶装置7の容量は例えば数百メガバイトに制限される。通信網11を通して伝送されるマルチメディア・プログラムは、通常、端末装置に一時記憶する必要のある大きな画像及び音響ファイルから成る。また、マルチメディア・プログラムのユーザーへの提示は、一定の最低要件を端末装置2の再生特性に課すが、例えば、表示装置8の解像度と、システムに接続されることのあるスピーカー(図示せず)の音響再生能力とは一般に一定の最低レベルを上回っていなければならない。ハードウェア資源が不十分であるために既に始まっているプログラムが中断されたり、それらの要件を満たしていなかったりすると、ユーザーはがっかりする。その目的のために、受信装置3は図1に示されている実施例に従って、階層的に言えばアプリケーション・プログラム10の下で作用するエージェント14を有する。これはソフトウェア・プロセスとして実現されることが好ましく、その任務は、端末装置の資源が与えられたプログラムを実行するために充分であることを確かめることである。
【0024】
マルチメディア・プログラムを受信し使用する図1のシステムの動作は、図3及び4を参照して例を通して説明する。図中の長方形のブロックは、前記エージェントの状態又は機能を表し、図中の楕円形のブロックは、1つの状態又は機能から他の状態又は機能への遷移を行わせる遷移状態又は事象を表す。スイッチをオンにして(30)エージェントを始動させると一連の事象が始まり、エージェントはブロック31に従ってどのシステム資源(プロセッサ、周辺装置、メモリー、等々)が使用可能かを調べる。ブロック32において、エージェントは通常のRGB(赤、みどり、青色)信号の形でスタートメニューを表示装置で表示することを可能にし、その後にエージェントは待ち状態33に入る。スタートメニューは、例えば、通信網を通して利用することのできるマルチメディア・プログラム及びアプリケーション・プログラムのリストを含む。ユーザーは、例えば、リモートコントロール装置によって一定のコマンドを発することにより、自分の選択を示す。ユーザーがメニュー選択34を行うと、エージェントはブロック35でプログラム(例えば、マルチメディア・プログラム)がどのシステム資源を必要とするかを調べる。もしエージェントがブロック36に従って使用可能なシステム資源が不十分であることを検出すれば、エージェントはユーザーにそれを知らせ(37)、場合によっては、同時に、その時同時に実行されている他のプログラムを終了させることによってもっと多くのシステム資源を利用できるようにすることを勧め、待ち状態33に戻る。
【0025】
もしエージェントがブロック38で充分なシステム資源が稼働していなくて使用可能であることを検出すれば、次にエージェントはブロック39でユーザーがプログラムを使用するのに必要な権利を持っているか否かを調べる。否定的結果41であれば、ユーザーに対して通知37が行われ、待ち状態33に戻る。ブロック40でユーザーの権利が充分であれば、エージェントはブロック42で問題のプログラムが必要とするプログラム構成要素が端末装置のメモリーに既に記憶されているか否か調べる。図4は、状態42からどの様にして手順が続行するかを示す。ブロック43に示されているように、適当なスタートプログラムが記憶装置の中に発見されれば(それは、例えばMHEGフォーマットのマルチメディア・プログラムを実行するために必要なMHEGエンジンである)、エージェントはブロック46で該スタート・プログラムのロードを可能にし、システムの制御権を該スタート・プログラムに渡し、バックグランドにとどまって、ブロック47に従ってメモリー中に存在する。もしエージェントがブロック42においてブロック44の通りにユーザーにより選択されたマルチメディア・プログラムが通信網からロードされなければならないことを検出したならば、エージェントは、ブロック45で双方向通信システムに含まれている端末装置を使って注文を出し、動作は通信網から受信されたスタート・プログラムがロードされた後にブロック46で続行する。
【0026】
例えばマルチメディア・プログラムなどの対話型プログラムの実行中に、ユーザーの選択又はコマンドがそのマルチメディア・プログラムに含まれていない新しいサービスの実行を必要とするような事態が発生することがある。マルチメディア・プログラムは、例えばプールズ・クーポン(a pools coupon)の書き込みを必要とし、ユーザーはプールズ・クーポン書き込みプログラムに含まれていない乱数発生手段を使ってそのクーポンの行を選択するチャンスを与えられる。ブロック49は、この様な場合には、稼働しているマルチメディア・プログラムによりエージェントに送られることになるサービス呼び出しを一般的方法で表している。エージェントは、ブロック50で、その新しいサービスのために充分なシステム資源があるか否かを調べる。ブロック51の通りに、充分な資源がなければ、エージェントはユーザーに知らせ(52)、サービス呼び出し49以前の状態47に戻る。ブロック53の通りに、充分な資源があるならば、エージェントは54でサービスを実行して状態47に戻る。サービスの実行には複雑な動作(例えば、通信網を介してプログラムの構成要素を得るなど)を必要とすることがあるので、ブロック54は上記したブロック39、40、41、42、43、44、45及び46の全ての機能を含むこともできる。ブロック48でマルチメディア・プログラムを終了させるとき、エージェントは状態32に戻り、それを介して図3に示されているように状態33に戻る。
【0027】
或る実施例では、装置が受信及び再生を行うことのできるプログラムのみをスタート・メニューがユーザーに示すように、システムはハードウェア要件に基づいて予備選択を行うこともできる。もし充分なハードウェア資源があるならば、数個のマルチメディア・プログラムを同時に稼働状態にしておくことができる。1つのエージェントが複数のマルチメディア・プログラムを処理してもよく、また各プログラムがそれ自身のエージェントを持ってもよい。
【0028】
もし受信部9が上記したように数個の異なるシステムから情報を受信することができるならば、ユーザーの立場からは、与えられたプログラム又はプログラム構成要素をロードするために、その都度最も有利な通信システム及びチャネルを選択するのが好ましい。ユーザーが負担する通信コストはしばしば通信リンクの容量に比例するので、非常に高速の通信モード(DAB受信など)は大きく且つ/又は連続的な画像及び音声オブジェクトをロードするためにのみ使用されるべきである。また、電話接続の使用は例えば夕方及び夜間よりも日中が高価であるので、時刻がコストに影響を及ぼすことがある。テキスト・メッセージなどの簡単なオブジェクトを例えばページング・サービスやデジタルセルラー無線通信網を通してロードするのは損にはならないので、必要ならば、公知の規格に従うショート・メッセージ・サービス(SMS)をその送信のために使用することができる。
【0029】
最も有利なチャネルは、ユーザーにより選択(オンライン選択又は前もって行われる選択)、又はエージェントにより、もしくはアプリケーション・プログラムにより選択されることができる。ロード開始時に、エージェントは双方向端末装置4により種々のチャネルの“その日の価格”を問い合わせて、なされた提議に基づいて最も有利なチャネルを選択することができる。例えば、セルラー無線システムの周辺部では受信状態がよくないためにロードが相当妨げられることがあるので、コストという要素に加えて、予想される接続の質も決定の基礎とすることができる。他に考えられる要素としては、ユーザーの登録されている権利や、ユーザーの好みによる選択がある。
【0030】
マルチメディア・プログラムに付随するオブジェクト及びプログラム構成要素は、配布者がそのプログラムの受信及び使用と料金支払い方法とを制御できるように、スクランブルされた状態で送られるのが有利である。そのとき端末装置2はスクランブル解除キーを持っていなければならない。キーを端末装置に送る方法は幾つかある。装置がスマートカード・リーダー(a smart card reader)を含んでいるならば、ユーザーは配布者の代理人のところへ行って必要な支払いをして所要のキーを自分のスマートカードにロードすることができる。装置のスマートカード・リーダーに挿入されると、スマートカードはそのキーを装置内のスクランブル解除回路に送る。キーをユーザーの装置に送るための二つ目の方法は、それを双方向通信システムを介して端末装置4に送り、そこから必要ならば通信リンク5を介して受信装置3に送る方法である。もし前記の双方向通信システムが支払いに関連するメッセージの偽造と悪用とを防止するために充分な識別及び確認の機能を持っているならば、他の公知のテレバンク・サービスと同様にユーザーによる支払いを転送するために前記の双方向通信システムを使用することもできる。そのとき端末装置4は、識別コード又はその他のその通信システムのためにユーザーを特定する情報を含んでいる。公知の識別コード方法は、例えば、GSMシステムのSIM(Subscriber Identity Module(加入者識別モジュール)に基づく方法である。
【0031】
装置2では、プログラムの使用と、その使用から生じるコストの計算と、支払い情報の記憶とに関連するタスクはエージェントに残されるのが好ましい。エージェントはデータをメモリー7に、或いは、装置がスマートカードを使用する場合にはスマートカードに、記憶させる。送り状作成に関連する実用的装置を実現するための好ましい方法が、フィンランド特許出願第960418号“Digitaalisten esitysobjektien salaus lahetyksessa ja tallennuksessa ”に開示されており、その出願人は本出願の出願人と同じである。送り状作成を、1回払い、ロード毎支払いシステムに、又は時間課金に基づいて行うことができる。これらの方法のうちの第1の方法では、サービス・プロバイダ又はその他の集金機関にまとめて料金を支払い、その後に一定のプログラムをロードして使用する無制限の権利を持つことになる。ロード毎支払いシステムでは、ユーザーは通信網に接続してプログラムを通信網から自分の装置にロードする毎に支払いをする。ロードされ記憶されたプログラムの実際の使用回数が支払いに影響を及ぼすのは、そのプログラムがユーザーにより実際に使用された時間に基づいて支払いがなされる第3の場合である。当然に、送り状作成方式を上記した方法同士の組み合わせに基づかせることもできる。送り状作成の根拠は商用接続の使用であってもよく、その場合には支払いはマルチメディア・プログラムの制作者ではなくて接続を提供するオペレータにゆきそうである。勿論、オペレータはマルチメディア・プログラムの制作者に報酬を支払うことができる。
【0032】
システムの動作は、与えられたマルチメディア・プログラムの使用を終わらせることを含む。ユーザーが例えばリモートコントロール装置によって自分が与えられたマルチメディア・プログラムの使用をやめたいと思っていることを示すと、エージェント又はアプリケーションは該プログラムにより保留されている送信及び提示チャネルを閉じ、必要ならば最早不要になったデータを記憶装置から除去すると共に、双方向通信システムの端末装置によって該ユーザーがそのプログラムの使用をやめたことをサービス・プロバイダに知らせる。その最後の情報を使って送り状作成の根拠を決定することもできる。
【0033】
図2は、本発明の第2の実施例に従うハードウェア構成15を示す。それは、携帯型コンピュータ16、小型DAB受信装置17、前記コンピュータに接続されたPCMCIAカード18(Personal Computer Memory Card International Association (パーソナルコンピュータメモリーカード国際協会))、局所的に前記PCMCIAカードと通信するデジタル電話装置(GSM又はDECT電話19(Digital European Cordless Telephone (デジタル欧州コードレス電話)が好ましい)から成っている。コンピュータ16は、アプリケーション・プログラム10と、上記したTV受信装置のようなエージェント14とを有する。DAB受信装置17は、多目的拡張ポート20を通してコンピュータに接続され得るように作られるのが好ましい。多くの最新のコンピュータは、必要に応じてユーザーが大容量記憶媒体又はその他の周辺装置を結合させることのできるその様な拡張ポートを持っている。図に示されている実施例では、PCMCIAカード18と電話19との接続は赤外線リンクから成っている。
【0034】
図1を参照して上記した実施例と比べると、図2の実施例はより軽量、小型で、従って1つの場所から他の場所へ移動させやすいという利点を有する。マルチメディア・プログラムのうちの最も簡単なものに関して、DAB受信装置17も図2の実施例から外しておくことができ、その場合には装置と“外側の世界”との間の全ての通信は電話19を通して行われる(当然に、同じことが図1の実施例についても言える)。しかし、DABシステムは現在のコードレス電話システム又はセルラー無線システムより相当早い通信速度を提供するものであるので、完全動画又はマルチチャネル・ハイファイ音響をユーザーに送る場合には、おそらくDABシステム又はこれに相当する他の放送システムを使う必要があるであろう。
【0035】
上記した実施例は単なる例に過ぎず、それらの構成要素及び機能的に同等の装置を多様な態様で種々の量で組み合わせて、本発明に従ってマルチメディア装置を組み立てることができることは当業者には明白なことである。動作の性質及び順序は、特許請求の範囲の欄の請求項で定義されている発明の範囲内で変化し得るので、上記した使用法の例は、本発明を限定するものではない。双方向ページング装置を使ってホテルTVシステムのロッキング・コードを解除することは本発明の明白な修正である。双方向ページング装置はホテルTVと通信し、ホテルTVで番組を見るために必要なキーを該TVに送る。そのキーを得るために双方向ページング装置は、支払いを必要とする番組の受信及び再生のためにホテルTVシステムの使用を管理する受取人に通信システムを介してユーザーの送り状情報を送る。
【0036】
本発明に従って、独立した装置としても役に立つ構成要素を使ってマルチメディア端末装置を組み立てることができるので、本発明は明らかに従来技術からの改良である。ユーザーは、実施例に含まれている移動電話、コードレス電話、TV受信装置及び携帯型コンピュータをそれらの通常の機能で使用することができる。好ましい実施例では、マルチメディア端末装置の一部分としての本発明の作用には装置のプログラミングの一定のやり直しが必要なだけであり、それは当業者にとっては公知の手続きである。例えば、殆どの最新のTVセットはいわゆるサービス・インターフェースを持っていて、これを通してTVの動作を制御するプログラム・コードを修正することができる。特にいわゆるホテルTVシステムでは、ソフトウェアの修正をケーブル配布システム内で遠隔制御でも実行することができる。
【符号の説明】
【0037】
2 マルチメディア端末装置
3 受信装置
4 端末装置
5 局所通信リンク
6 マイクロプロセッサ
7 記憶装置
8 表示装置
9 受信部
10 アプリケーション・プログラム
11 通信網
13 デジタルセルラー無線システム
14 エージェント
16 携帯コンピュータ
19 コードレス電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチメディア通信を通信網から選択的に受信し、ユーザーに提示するための装置であって、マルチメディア情報を前記通信網から受信するための第1の装置と情報を通信網に送るための第2の装置とから成っており、前記第1の装置は、
前記マルチメディア情報を、単方向通信システムを使って前記通信網から受信するための手段と、
提示されるべきマルチメディア情報を一時記憶するための記憶手段と、
マルチメディア情報の動的受信及び記憶を制御すると共に、前記マルチメディア情報がどのように使用されるかの条件に関連する使用情報を前記第2の装置を介して前記通信網に送るためのエージェントと、を有し、且つ、
前記第2の装置は、前記使用情報を、双方向通信システムを使って前記通信網に送るための手段を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1の装置は、前記通信網から前記第2の装置を介してマルチメディア情報を受信するための受信リンクを有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の装置は、放送通信の形式のマルチメディア情報を受信するための受信装置から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記受信装置は、DAB受信装置であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記受信装置は、MPEG受信装置であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の装置は、テレビジョン受信装置あることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の装置は、コンピュータであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の装置は、デジタルセルラー無線通信網の移動電話であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の装置は、デジタルコードレス電話であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2装置は、双方向ページング装置であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
マルチメディア端末装置中の第1の装置として使用されるべき装置であって、通信網からマルチメディア情報を受信するための手段を有しており、
前記マルチメディア情報を、単方向通信システムを使って前記通信網から受信するための手段と、
提示されるべきマルチメディア情報を一時記憶するための記憶手段と、
マルチメディア情報の動的受信及び記憶を制御すると共にマルチメディア情報の使用に関連する情報を前記通信システムに送るためのエージェントと、
マルチメディア情報の動的受信及び記憶を制御すると共に、前記マルチメディア情報がどのように使用されるかの条件に関連する使用情報を、双方向通信システムを使って前記通信網に送るためのエージェントと、を有することを特徴とする装置。
【請求項12】
双方向通信システムの端末装置との局地的通信リンクを作るためのインターフェースを有することを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
双方向通信システムの前記端末装置を介して前記通信網からマルチメディア情報を受信するための受信リンクを有することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
放送通信の形式のマルチメディア情報を受信するための受信装置を有することを特徴とする請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記受信装置は、DAB受信装置であることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記受信装置は、MPEG受信装置であることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項17】
その装置は、テレビジョン受信装置であることを特徴とする請求項11ないし16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
その装置は、コンピュータであることを特徴とする請求項11ないし16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
通信網からマルチメディア表現を選択的に受信して、それをユーザーに提示するための方法において、該方法は、
ユーザーの選択に応じて、そのユーザーの選択が要求している一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報が局所的に第1の装置に記憶されているか否かを調べ、
前記マルチメディア情報がどのように使用されるかの条件に関連する使用情報を、双方向通信システムを使って第2の装置を介して、前記第1の装置から前記通信網に送り、
そのユーザーの選択によって要求され、局所的に記憶されていない一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報が該通信網からロードされて局所的に記憶するようにロードし、そして、
そのユーザーの選択によって要求され、一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報が、該マルチメディア表現をユーザーに提示するために、それが最早不要になったときに局所記憶装置から除去するのを有することを特徴とする方法。
【請求項20】
通信網からマルチメディア情報をロードするためにいろいろなチャネルを比較し、その比較に基づいて、ユーザーの選択によって要求される一定のマルチメディア表現に関連するマルチメディア情報をロードするために最も有利なチャネルを選択することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ユーザーが負担するコスト、接続の質、種々の通信網において登録されているユーザーの権利、及びユーザーの計画的な選択、のうちの少なくとも1つの基準を前記の比較において使用することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
マルチメディア情報の使用に対応する支払い協定に関連する情報を集めて、それを前記通信網に送ることを特徴とする請求項19ないし21のうちのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−219143(P2009−219143A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120377(P2009−120377)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願平9−106181の分割
【原出願日】平成9年4月23日(1997.4.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】