説明

マルチモーダル生体認証装置

【課題】 被写体28の希望に応じ,自動的に撮影ユニットが回転し認証してくれることのできるマルチモーダル生体認証装置を提供する。
【解決手段】 被写体28の少なくとも眼を撮影する虹彩撮影ユニット3と,被写体28までの距離を繰り返し測定する距離測定部6と,被写体28の眼が虹彩撮影ユニット3の合焦範囲にあるか否かを判定する判定部7と,被写体28の少なくとも手のひらを撮影する静脈撮影ユニット5と,被写体28の少なくとも指を撮影する指紋撮影ユニット4と,静脈撮影ユニット5で撮影された画像を2値化(白黒)し,2値化した画像から,画像の黒部分の面積の大小を固定閾値に基づいて,被写体28の手のひらかもしくは被写体28の指を判定する画像処理部10と,虹彩撮影ユニット3あるいは,静脈撮影ユニット5あるいは,指紋撮影ユニット4を選択する制御部8とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,被写体の眼,手のひら,指のいずれを用いて,個人認証を行う認証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,ゲート例えば部屋の出入り口等にゲート開閉手段として,指紋認証付き非接触ICカードゲート装置を設け,指紋またはICカードを利用することで,ゲート装置の施錠・開錠が自動的に行われ,人の出入りを許容または禁止するようにしたものが提案されている(例えば,特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−350960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,従来の指紋認証付き非接触ICカードゲート装置においては,ICカードのデータ読取または指紋情報にて本人を特定し,ゲート自動開閉できるが,ICカードは携帯品のため,紛失しやすい恐れがあり,また,ICカードと指紋認証の複合認証方式だと,被写体のある身体事情(例えば指紋の薄い,指切断などの人は,指紋認証の利用は困難)により,所定の生体認証では利用できない欠点がある。もちろん,何かの身体障害で虹彩・手の静脈・音声などの生体認証が利用できない人も存在する。このように,ユーザーに対応した生体認証が自由選択できないという問題点があった。
【0004】
本発明は,従来の問題を解決するためになされたもので,ICカードなどの携帯品は不要で,複数の生体認証のいずれを自由選択が可能である,利便性の優れたマルチモーダル生体認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のマルチモーダル生体認証装置は,被写体の少なくとも眼を撮影する虹彩撮影ユニットと,前記被写体までの距離を繰り返し測定する距離測定部と,前記距離測定部によって測定された前記被写体までの距離に基づいて,前記被写体の眼が前記虹彩撮影ユニットの合焦範囲にあるか否かを判定する判定部と,被写体の少なくとも手のひらを撮影する静脈撮影ユニットと,被写体の少なくとも指を撮影する指紋撮影ユニットと,前記静脈撮影ユニットで撮影された画像を2値化(白黒)し,2値化した画像から,画像の黒部分の面積の大小を固定閾値に基づいて,前記被写体の手のひらかもしくは前記被写体の指を判定する画像処理部(面積判定部)と,前記判定部あるいは,前記画像処理部で判断された結果に基づいて,前記虹彩撮影ユニットあるいは,前記静脈撮影ユニットあるいは,前記指紋撮影ユニットを選択する制御部とを備えた構成を有している。
【0006】
この構成により,ユーザー行動による認証装置の選択意図に応じて,自動的に目的の認証装置が認証動作することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は,ユーザーの好みで自由選択するという効果を有するマルチモーダル生体認証装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下,本発明の実施の形態のマルチモーダル生体認証装置について,図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
【0009】
本発明の第1実施形態の認証装置1の機能的構成を図1に示す。図1において,認証装置1は,被写体28の手のひらを撮影する静脈撮影ユニット5・被写体28の指を撮影する指紋撮影ユニット4・被写体28の眼を撮影する虹彩撮影ユニット3を円周に移動するための回転式パン2と,被写体28までの距離を繰り返し測定する距離測定部6と,静脈撮影ユニット5から得られた画像に2値化処理およびその2値化画像の面積を算出する処理をかけ,面積の総和が固定の閾値に基づいて,手のひらかあるいは指紋を判定する画像処理部10と,画像処理部10で判断した結果に基づいて,各撮影ユニットを選択する制御部8とを有する。
【0010】
以上のように構成された認証装置1について,図2〜図8を用いてその動作を説明する。
【0011】
まず,図2(a)において,距離測定部6で,被写体28と認証装置1との距離L1が35cm以上の場合,虹彩モードとなり,虹彩撮影ユニット3が撮影・認証が動作する。
【0012】
図2(b)において,距離測定部6で,被写体28と認証装置1との距離L2が35cm未満の場合,距離測定部6から得られた結果に基づいて,判定部7が,静脈撮影ユニット5に切り替えるようにと,回転式パン2に指示をし,静脈モードとなり,静脈撮影ユニット5が撮影・認証が動作する。その際に,図3(a)に示したように,静脈撮影ユニット5が撮影した画像を用いて,画像処理部10で2値化後,固定位置の平行線上で抽出した2値画像の面積の総和を算出し,その面積の総和が固定閾値以上の場合,静脈認証開始する。
【0013】
また,図2(b)により動作中の静脈撮影ユニット5が撮影した画像を用いて,画像処理部10で2値化後,固定位置の平行線上で抽出した2値画像の面積の総和を算出し,その面積の総和が固定閾値未満の場合,画像処理部10から得られた結果に基づいて,判定部7が,指紋撮影ユニット4に切り替えるようにと,回転式パン2に指示をし,指紋モードとなり,指紋撮影ユニット4が撮影・認証が動作する。その際に,指紋撮影ユニット4が指を撮影・認証した状況を図2(c)に示す。
【0014】
次に,図4は,認証装置1の動作フロー図である。
【0015】
図4に示したように,まず,距離測定部6が認証装置1から被写体28までの距離の測定を開始し,被写体28までの距離の測定を繰り返して行い,測定結果を判定部7に出力する(S1)。そして,判定部7は,距離測定部6からの出力を判断し,判定部7の判定結果はの制御部8に送られる。
【0016】
判定部7の判定結果では,距離測定部6の測定可能範囲が35cm以上の場合,制御部8が虹彩撮影ユニット3が動作し(S3),認証開始とする(S9)。
【0017】
一方,判定部7の判定結果では,距離測定部6の測定可能範囲が35cm未満の場合,制御部8が回転式パン2を回転させ,静脈撮影ユニット5が動作する(S4)。
【0018】
次に,静脈撮影ユニット5が撮影した画像を用いて,画像処理部10で2値化後,2値画像の面積の総和を算出し,その面積の総和が固定閾値以上かあるいは固定閾値未満かを判定する(S5)。
【0019】
続いて,面積の総和が固定閾値未満の場合,画像処理部10の判定結果が制御部8に送
られ,回転式パン2を回転させ,指紋撮影ユニット4が動作し(S6),認証開始とする(S8)。
【0020】
続いて,面積の総和が固定閾値以上の場合,画像処理部10の判定結果が制御部8に送られ,そのまま静脈撮影ユニット5が認証開始とする(S7)。
【0021】
このような本発明の第1実施形態の認証装置1の機能的構成によれば,被写体28のどの認証装置を選択しようとするしぐさを距離測定部6および画像処理部10の並行作動で読み取る機能を設けることにより,被写体28の希望に応え,静脈撮影ユニット5または指紋撮影ユニット4または虹彩撮影ユニット3が自動的に回転し,認証動作することができる。
【0022】
次に,本発明の撮影仕様を図5に示す。虹彩,静脈,指紋それぞれの場合における,ガラスからの距離と,撮影範囲は以下のようになる。
指紋の場合・・・ガラスからの距離=0cm,撮影範囲=5cm
静脈の時・・・・ガラスからの距離=5cm,撮影範囲=30cm
虹彩の時・・・・ガラスからの距離=30cm,撮影範囲=10cm
図5は,撮影対象物51と,レンズ52,CCD9の関係を示したものである。撮影対象物51の大きさをa,CCDの大きさをcとすると,撮影対象物51をCCD9で撮影した場合の視野角をαとする。また,撮影対象物とレンズの距離をu,CCDとレンズの距離をvとし,撮影対象物とCCDの距離をlとすれば,以下の式が成り立つ。
【0023】
【数1】

・・・(1)
【0024】
式(1)より,式(2)のように,u,v,αを求めることが出来る。
【0025】
【数2】

・・・(2)
【0026】
また,レンズに対するガウスの公式よりがなりたつので,レンズの焦点距離fを求めることが出来る。
【0027】
【数3】

・・・(3)
【0028】
物体とガラスの距離を,指紋の時0cm,静脈の時5cm,虹彩の時30cmとした場合の,各々値を計算したものを図6に示す。
【0029】
撮影対象物によって,レンズの焦点距離f,レンズとCCDの距離vなどが異なっている。
(第2実施形態)
【0030】
図7に示す,指紋撮影ユニット4,静脈撮影ユニット5,虹彩撮影ユニット3は,それぞれ,図6の条件を満たすように構成されている。回転式パン2には,静脈撮影ユニット5と指紋撮影ユニット4と虹彩撮影ユニット3が設けられる。
【0031】
以上のように構成された各撮影ユニットについて,図7(a),(b),(c)を用いて説明する(図7上面図(a)〜(c)および図8斜面図(a)〜(c)の説明は省く)。
【0032】
まず,図7側面図(a)において,被写体28の眼を撮影する虹彩撮影ユニット3の虹彩用レンズ17を用い,CCD9から通して,被写体28の眼を撮影する。
【0033】
続いて,図7側面図(b)において,被写体28の手のひらを撮影する静脈撮影ユニット5の静脈用レンズ18を用い,CCD9から通して,被写体28の手のひらを撮影する。
【0034】
続いて,図7側面図(c)において,被写体28の指を撮影する指紋撮影ユニット4の指紋用レンズ19を用い,CCD9から通して,被写体28の指を撮影する。
【0035】
そして,CCD9は,静脈撮影ユニット5,指紋撮影ユニット4,虹彩撮影ユニット3が撮影する時に使うCCDの種類が同じであるため,CCD9を共用とする。ただし,虹彩用ガラス20と虹彩用レンズ17との距離と,静脈用ガラス21と静脈用レンズ18との距離とは同様であるが,指紋用ガラス22と指紋用レンズ19との距離は異なる。
【0036】
したがって,虹彩用ガラス20と虹彩用レンズ17,静脈用ガラス21と静脈用レンズ18,指紋用ガラス22と指紋用レンズ19をそれぞれセットし,被写体28を撮影するためのCCD9を共用する。
【0037】
最後に,図9は,被写体28を撮影する際の認証装置1の形状である。認証装置1に付加した回転式パン2の上に,静脈撮影ユニット5,指紋撮影ユニット4,虹彩撮影ユニッ
ト3が配置されている。そして,見栄えをよくするため,回転式パン2を,ユニット用窓16と距離測定部6を付加したカバー25で覆っている。
【0038】
以上のように本発明の第2実施形態の各撮影ユニットによれば,回転式パン2上に静脈撮影ユニット5,指紋撮影ユニット4,虹彩撮影ユニット3を設けることにより,静脈撮影ユニット5,指紋撮影ユニット4,虹彩撮影ユニット3が撮影する時に使うCCD9を共用することで,コストの低減化かつ,認証装置の構成簡略化が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように,本発明にかかるマルチモーダル生体認証装置は,利用者の希望に応じて自動的に撮影ユニットが回転し認証してくれるので,身体障害者への対応かつ利用者の手を煩わさせないという効果を有し,被写体の眼,手のひら,指のいずれを用いて,個人認証を行う認証装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態における認証装置1の機能的構成のブロック図
【図2】本発明の第1実施形態における認証装置1の撮影手法図
【図3】本発明の第1実施形態における認証装置1の画像処理部の手順図
【図4】本発明の第1実施形態における認証装置1の機能的構成のフロー図
【図5】本発明の第1実施形態における認証装置1の撮影対象物51と,レンズ52,CCD9の関係を示した説明図
【図6】本発明の第1実施形態における認証装置1の指紋撮影ユニット4,静脈撮影ユニット5,虹彩撮影ユニット3の撮影条件図
【図7】本発明の第2実施形態における各撮影ユニットの側面図
【図8】本発明の第2実施形態における各撮影ユニットの斜面図
【図9】本発明の第1実施形態における認証装置1の形状図
【符号の説明】
【0041】
1 認証装置
2 回転式パン
3 虹彩撮影ユニット
4 指紋撮影ユニット
5 静脈撮影ユニット
6 距離測定部
7 判定部
8 制御部
9 CCD
10 画像処理部(面積判定部)
11 認証処理部
12 切り替え部
13 虹彩認証処理部
14 指紋認証処理部
15 静脈処理部
16 ユニット用窓
17 虹彩用レンズ
18 静脈用レンズ
19 指紋用レンズ
20 虹彩用ガラス
21 静脈用ガラス
22 指紋用ガラス
23 LED
24 赤外線LED
25 カバー
26 軸
28 被写体
51 撮影対象物
52 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の少なくとも眼を撮影する虹彩撮影ユニットと,
前記被写体までの距離を繰り返し測定する距離測定部と,
前記距離測定部によって測定された前記被写体までの距離に基づいて,前記被写体の眼が前記虹彩撮影ユニットの合焦範囲にあるか否かを判定する判定部と,
被写体の少なくとも手のひらを撮影する静脈撮影ユニットと,
被写体の少なくとも指を撮影する指紋撮影ユニットと,
前記静脈撮影ユニットで撮影された画像を2値化(白黒)し,2値化した画像から,画像の黒部分の面積の大小を固定閾値に基づいて,前記被写体の手のひらかもしくは前記被写体の指を判定する画像処理部(面積判定部)と,
前記判定部あるいは,前記画像処理部で判断された結果に基づいて,前記虹彩撮影ユニットあるいは,前記静脈撮影ユニットあるいは,前記指紋撮影ユニットを選択する各撮影ユニットの制御部とを備えたことを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
前記判定部は,前記被写体の眼が前記虹彩撮影ユニットの前記合焦範囲より近くにいるのかまたは遠くにいるのかをさらに判定し,
前記各撮影ユニットの制御部は,前記判定部において前記被写体の眼が前記合焦範囲より遠くにいると判定された場合には,前記虹彩撮影ユニットを選択することを特徴とする請求項1記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記判定部は,前記被写体の眼が前記虹彩撮影ユニットの前記合焦範囲より近くにいるのかまたは遠くにいるのかをさらに判定し,
前記各撮影ユニットの制御部は,前記判定部において前記被写体の眼が前記合焦範囲より近くにいると判定された場合には,前記静脈撮影ユニットを選択することを特徴とする請求項1記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記各撮影ユニットの制御部で選択した前記静脈撮影ユニットが,前記被写体の手のひらかもしくは前記被写体の指を撮影し,前記撮影した画像を,前記画像処理部によって2値化し,2値化した画像の黒部分の面積が固定閾値より大きい場合,前記被写体の手のひらを判定することを特徴とする請求項3記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記各撮影ユニットの制御部で選択した前記静脈撮影ユニットが,前記被写体の手のひらかもしくは前記被写体の指を撮影し,前記撮影した画像を,前記画像処理部によって2値化し,2値化した画像の黒部分の面積が固定閾値より小さい場合,前記被写体の指を判定することを特徴とする請求項3記載の生体認証装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の撮影装置と,
前記撮影装置の前記虹彩撮影ユニットあるいは,前記静脈撮影ユニットあるいは,前記指紋撮影ユニットで撮影された画像に対して認証処理を行う認証処理部と,
を備えたことを特徴とする認証装置。
【請求項7】
前記虹彩撮影ユニット,前記静脈撮影ユニット,前記指紋撮影ユニットの撮影用CCDを共用することを特徴とする撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−328571(P2007−328571A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159445(P2006−159445)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】