マルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システム
【課題】高分解能の測距精度を確保しながらも極めて安価に複数台の測距装置をロボット等に組み込むことが可能なマルチ信号処理装置等を提供する。
【解決手段】
複数の測距装置1と接続され、各測距装置1から入力される発光要求信号のエッジを検知すると対応する測距装置の発光部を駆動する発光信号を出力する発光制御部110,120,130と、発光制御した測距装置の受光部から受光信号を入力する入力処理部140と、入力処理した受光信号に基づいて被測定物迄の距離を算出する演算処理部150と、各処理部により実行される一連の処理を、任意の測距装置から入力される走査角度信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に実行させるジョブ管理部110,120とを備えている。
【解決手段】
複数の測距装置1と接続され、各測距装置1から入力される発光要求信号のエッジを検知すると対応する測距装置の発光部を駆動する発光信号を出力する発光制御部110,120,130と、発光制御した測距装置の受光部から受光信号を入力する入力処理部140と、入力処理した受光信号に基づいて被測定物迄の距離を算出する演算処理部150と、各処理部により実行される一連の処理を、任意の測距装置から入力される走査角度信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に実行させるジョブ管理部110,120とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
測定光を出力する発光部と、発光部から出力された測定光を測定対象空間に向けて走査する走査部と、測定対象空間に存在する測定対象物からの反射光を検出する受光部を備え、測定光と受光部で検出された反射光に基づいて測定対象物までの距離を算出する演算部を備えた測距装置が提案されている。
【0003】
このような測距装置は、発光部に備えた光源から出力される測定光をAM変調するAM(amplitude modulation)方式と、光源をパルス駆動するTOF(Time of Flight)方式の二種類の測距原方式の何れかが採用されている。
【0004】
図11(a)に示すように、AM方式は、正弦波でAM変調された測定光とその反射光を光電変換して、それらの信号間の位相差Δφを計算し、位相差Δφから距離Dを以下の数式に基づいて算出する方式である。
D=Δφ・C/(4π・f)
【0005】
図11(b)に示すように、TOF方式は、パルス状に変調された測定光とその反射光を光電変換し、それらの信号間の遅延時間Δtから距離Dを以下の数式に基づいて算出する方式である。
D=Δt・C/2
尚、数式中、Cは光速、fは変調周波数であり、図11(a),(b)で示される符号Tはターゲットである被測定物を示し、符号LDは光源であるレーザダイオードを示し、符号PDは受光素子であるフォトダイオードを示している。
【0006】
特許文献1にはAM方式の測距装置が開示され、特許文献2にはTOF方式の測距装置が開示されている。何れの測距装置も、測定光の走査平面に対して45度の傾斜角で配置された偏向ミラーと、偏向ミラーを回転させるモータを備え、測定光が周囲360度にわたり走査される。
【0007】
さらに、各測距装置には、偏向ミラーによる走査角度を検知するエンコーダが配置され、エンコーダから入力されるパルス信号に基づいて走査角度を求める角度演算部と、測定光と反射光の位相差または時間差に基づいて被測定物までの距離を算出する距離演算部が設けられ、角度演算部で算出された走査角度と、距離演算部で求められた距離によって、被測定物が位置する二次元座標情報が把握される。
【0008】
何れの測距装置も、発光部、受光部、走査部、角度演算部及び距離演算部となる信号処理基板等が、ケーシングに内蔵されたスタンドアロン型で構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−3127号公報
【特許文献2】米国特許5,455,669号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような測距装置では、人間の目の安全を確保するため、光源であるレーザダイオードからの出力光の強度が安全規格によって制限されている。
【0011】
そのような制限の下で、長い検出距離を確保し、距離の精度を向上させるために、AM方式では正弦波で変調された測定光を数μs程度の長さで間歇的にバースト発光させ、発光時の強度を強くしながらも平均強度が小さくなるように設定されている。同様に、TOF方式では、測定光のパルス幅を数ns以下に制御することによりし、発光時の強度を強くしながらも平均強度が小さくなるように設定されている。
【0012】
また、例えば1mmの分解能で距離を求める場合、TOF方式を採用すると、演算の時間分解能が6.7ps以下の超高速の演算処理を実行する必要があり、そのため、数GHzオーダの周波数のクロックや、広帯域の演算回路が必要となり、非常に高価なものとなる。
【0013】
特に、ロボットの視覚センサや、安全センサとして測距装置を用いる場合には、目的・用途に合わせて複数台の測距装置を組み込む必要がある。例えば、ロボットの視覚センサとして使用する場合には、ロボットが移動するために必要な環境地図作成や自己位置認識及び移動経路探索に使用する測距装置、足元の傾きや段差を検出する測距装置、物を把持するため物の位置や大きさを検出する3次元の測距装置等が必要となる。
【0014】
上述したスタンドアロン型の測距装置をこれらに用いると、ロボットの部品コストが嵩み、低価格化に大きな支障を来たしていた。
【0015】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、高分解能の測距精度を確保しながらも極めて安価に複数台の測距装置をロボット等に組み込むことが可能なマルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明によるマルチ信号処理装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、測定光を出力する発光部と、前記発光部から出力された測定光を測定対象空間に偏向走査する走査部と、前記測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を検出して受光信号を出力する受光部とを備えた複数の測距装置と接続され、各測距装置から入力される発光要求信号のエッジを検知すると対応する測距装置の発光部を駆動する発光信号を出力する発光制御部と、発光制御した測距装置の受光部から受光信号を入力する入力処理部と、入力処理した受光信号に基づいて被測定物迄の距離を算出する演算処理部と、各処理部により実行される一連の処理を、任意の測距装置から入力される走査角度信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に実行させるジョブ管理部とを備えている点にある。
【0017】
発光制御部、入力処理部、演算処理部の各処理部で構成される信号処理回路が各測距装置に対して費やす処理時間は非常に短時間であり、一つの測距装置から入力される走査角度信号のエッジで各処理が起動されても、次の走査角度信号のエッジ迄には十分なアイドル時間が生じる。ジョブ管理部は、このアイドル時間を活用して、任意の測距装置から入力される発光要求信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に処理を実行させることにより、一組の処理部で複数台の測距装置に対する距離演算を、発光要求信号の一周期内で完結させることができるようになる。
【0018】
従って、各測距装置に高価な信号処理回路を個別に設ける必要がなくなるので、測距装置そのものを小型化でき、一つの信号処理回路を複数の測距装置で共用できるので、一台の測距装置あたりの信号処理回路のコストを数分の一から十数分の一に低減させることができるようになる。
【0019】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記ジョブ管理部に、前記一連の処理が複数の測距装置で競合すると、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理を優先させ、他の処理を遅延させる遅延処理部を備えている点にある。
【0020】
個々の測距装置がそれぞれ個別に測定光を走査する場合に、複数の測距装置からマルチ信号処理装置に発光要求信号のエッジが入力されると、各測距装置に対する処理が重複して発生するが、遅延処理部によって、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理が優先処理され、他の処理が遅延されるので、処理に支障を来たすことがない。また、遅延された処理は、最先の発光要求信号の次のエッジを検知するまでに実行可能となるので、所定の精度を確保することも可能になる。
【0021】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、各測距装置に優先順位が設定され、前記遅延処理部は、複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジを同時に検知すると、優先順位の高い測距装置に対する処理を優先し、他方の処理を遅延させる点にある。
【0022】
複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジが同時に検知されると、何れかの測距装置の処理から開始されるが、システムによっては重要な測距装置の処理を遅延させることが困難な場合もある。そのような場合であっても、各測距装置に優先順位が設定されているため、遅延処理部によって、優先順位の高い測距装置に対する処理が優先して実行されるようになり、重要な測距装置の処理が遅延するようなことが無くなる。
【0023】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二または第三特徴構成に加えて、各測距装置に優先順位が設定され、前記遅延処理部は、処理の遅延中に当該遅延中の測距装置より優先順位の高い測距装置から発光要求信号のエッジを検知すると、当該優先順位の高い測距装置に対する処理を優先させ、当該遅延中の測距装置に対する処理をさらに遅延させる点にある。
【0024】
遅延処理部により処理が遅延されているときに、他の測距装置からの発光要求信号のエッジが検知される場合であっても、優先順位の高い測距装置に対する処理が優先して実行されるので、優先順位の高い測距装置ほど精度の高い演算結果が得られるようになる。
【0025】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第三または第四特徴構成に加えて、各測距装置に設定される優先順位は、各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて決定される点にある。
【0026】
各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて優先順位が設定されるので、優先順位を設定するための別途の回路や、設定入力のためのソフトウェア等を設ける必要が無く、また、コネクタの接続位置を変更するというシンプルな操作で極めて容易に優先順位を変更することも可能になる。
【0027】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、各測距装置の発光要求信号の周期が、全測距装置に対する前記一連の処理の処理時間以上に設定されている点にある。
【0028】
任意の測距装置の発光要求信号の周期内で、全測距装置に対する一連の処理が完結でき、少なくとも発光要求信号の周期以内の誤差に抑制することができるようになる。また、発光要求信号の周期を長くすれば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数を増やすことができ、発光要求信号の周期を短くすれば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数が減るが、測距処理の間隔を短くして測距精度を向上させることができる。
【0029】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記ジョブ管理部は一連の処理を開始する測距装置のID信号を出力するID信号出力部を備え、前記発光制御部は当該ID信号に基づいて対応する測距装置に発光信号を出力するデコーダを備え、前記入力処理部は当該ID信号に基づいて対応する測距装置からの受光信号を前記演算処理部に出力するスイッチ回路を備えている点にある。
【0030】
ID信号出力部から出力されるID信号に基づいて、発光制御部及び入力処理部が必要な測距装置との間で信号の入出力を行なうための回路が極めてシンプルに構成できる。
【0031】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、各測距装置から入力される発光要求信号が走査部の走査角度を示す走査角度信号で構成され、当該走査角度信号に基づいて各測距装置の走査部の走査速度を目標速度に制御する走査速度制御部を備えている点にある。
【0032】
測距装置は、通常、走査部の走査角度と対応して測距演算することにより、被測定物に対する二次元位置情報を取得するように構成される。発光要求信号が走査部の走査角度を示す走査角度信号と兼用されるため、走査角度信号以外の別途の発光要求信号を生成するための回路が不要になる。しかも、当該走査角度信号に基づいて各測距装置の走査速度をマルチ信号処理装置側で制御できるので、システムの自由度が向上する。例えば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数によって各測距装置の走査速度を可変に制御することも可能になる。
【0033】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第八特徴構成に加えて、前記走査速度制御部は、走査速度が目標速度に制御された測距装置に対して前記一連の処理が実行されるように前記ジョブ管理部を起動する点にある。
【0034】
走査速度が目標速度に制御された測距装置に対して一連の処理が実行されるので、早く立上った測距装置から測距のための処理を開始することができるようになる。
【0035】
本発明による測距装置の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述した第一から第九の何れかの特徴構成を備えたマルチ信号処理装置に接続され、前記マルチ信号処理装置から入力される発光信号に基づいて測定光を出力する発光部と、前記発光部から出力された測定光を測定対象空間に偏向走査する走査部と、前記測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を検出して受光信号を前記マルチ信号処理装置に出力する受光部とを備えている点にある。
【0036】
本発明によるマルチ測距システムの特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述した第一から第九の何れかの特徴構成を備えたマルチ信号処理装置と、上述の特徴構成を備えた測距装置とを備え、前記マルチ信号処理装置に前記測距装置が複数台接続されている点にある。
【発明の効果】
【0037】
以上説明した通り、本発明によれば、高分解能の測距精度を確保しながらも極めて安価に複数台の測距装置をロボット等に組み込むことが可能なマルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるマルチ測距システムの説明図
【図2】測距装置の外観説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図
【図3】測距装置の断面図
【図4】測距装置の回路ブロック構成図
【図5】マルチ信号処理装置の回路ブロック構成図
【図6】マルチ信号処理装置の信号処理の説明図
【図7】マルチ信号処理装置の信号処理のタイムチャート
【図8】角度信号検知処理のフローチャート
【図9】(a)は発光信号出力処理のフローチャート、(b)は受光信号処理のフローチャート
【図10】制御部処理のフローチャート
【図11】(a)はAM方式の説明図、(b)はTOF方式の説明図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明によるマルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0040】
図1に示すように、マルチ測距システムは、TOF方式が採用された複数台の測距装置1と、マルチ信号処理装置100と、ホストコンピュータ200で構成されている。各測距装置1とマルチ信号処理装置100とがローカルの信号ケーブルC1,C2,・・・,Cnで接続され、マルチ信号処理装置100とホストコンピュータ200が汎用の通信線Ch、例えばUSBケーブル等で接続されている。
【0041】
各測距装置1は、例えばロボットの視覚センサとして予め設定された所定位置に組み付けられている。ホストコンピュータ200は、当該ロボットのシステムコントローラとしての機能を備えるもので、その形態は図示したようなコンピュータの形態に制限されるものではない。また、各測距装置1の外観も適宜変更可能である。
【0042】
各測距装置1は、図2(a),(b),(c)に示すように、横断面視で略半円形状の湾曲面に形成された光透過性の光学窓2aが上部ハウジング21と下部ハウジング22の間に配置され、上部ハウジング21の正面には装置1の状態が判別可能なモニタ表示部79が設けられている。光学窓2aに対向配置された背部ハウジング23の下部に信号ケーブルを接続する端子78が設けられている。
【0043】
図3に示すように、測距装置1は、内壁面が迷光を吸収する暗幕等の吸光部材で被覆されたハウジング21,22,23の内部に、測定光を出力する発光部3と反射光を検出する受光部5が光軸L1に沿って対向配置され、発光部3と受光部5との間に測定光を回転走査する走査部4が配置されている。
【0044】
走査部4は、発光部3と受光部5を結ぶ光軸L1と一致する回転軸心P周りに光学系9を回転させる筒状の回転体8と、回転体8を回転駆動するモータ11を備えている。
【0045】
回転体8は、下端部が縮径された円筒状の周壁部8aと天板部8bとからなり、その内周面に備えた軸受12を介して中空軸13によって回転可能に支承されている。
【0046】
縮径された周壁部8aの下端部の外周面に取り付けられたマグネット11bでなる回転子と、ケーシング側に配置されたコイル11aでなる固定子とで、ブラシレスDCモータ11が構成され、コイル11aとマグネット11bとの相互作用により、回転体8が回転軸心P周りで回転する。
【0047】
発光部3は、半導体レーザを用いた発光素子3aと、発光素子3aの駆動回路3bを備えている。発光素子3aは、そこから出力される測定光の光軸L1と軸心Pが一致するように上部ハウジング21に固定配置されるとともに光軸L1上に光のビーム径を一定にする光学レンズ3cが配置されている。
【0048】
受光部5は、回転軸心P上に走査機構4を挟んで発光部3と対向するように回転体8の内部に固定配置され、反射光を検出するアバランシェフォトダイオードでなる受光素子5aと、受光素子5aで光電変換された反射信号を増幅する増幅回路5bを備えている。
【0049】
回転体8には、発光部3から光軸L1に沿って出力された測定光を測定対象空間に向けて90度偏向する第一偏向ミラー9aと、測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を集光する受光レンズ9cと、受光レンズ9cを透過した反射光を光軸L1に沿って投光部3と対向配置された受光部5に向けて90度偏向する第二偏向ミラー9bを備えた光学系9が取り付けられている。
【0050】
つまり、投光部3から光軸L1に沿った光路Laで出射された測定光が、第一偏向ミラー9aで光軸L1と垂直な光軸L2に沿った光路Lbに偏向された後に、光学窓2aを通過して測定対象空間に照射され、光軸L2と平行な光軸L3に沿った光路Lcで光学窓2aを通過した測定対象物からの反射光が、受光レンズ9cで収束され、第二偏向ミラー9bにより光軸L1と等しい光軸L4に偏向されて受光部5に導かれる。
【0051】
回転体8の周壁8aの一部に受光レンズ9cを取り付ける開口部8cが形成され、開口部8cに対応して天板部8bに偏向ミラー9a,9bを取り付ける切欠部8dが形成されている。
【0052】
偏向ミラー9a,9bは、樹脂または光学ガラスで一体成形された光学部材90の直交する二つの平面に、金またはアルミニウムが反射部材としてコーティングされた偏向面により構成されている。
【0053】
回転体8に形成された開口部8cから、一体形成された偏向ミラー9a,9bを挿入し、天板部8bに形成された切欠部8dの周面に接合させてビス止めすることにより、偏向ミラー9a,9bが回転体8に固定され、その後、開口部8cに受光レンズ9cが固定される。
【0054】
受光レンズ9cのレンズ中心より上部側の一部が直線状に切り欠かれ、さらにその中央部がレンズ中心方向に一部切り欠かれた切欠部が形成されている。第一偏向ミラー9aにより偏向された測定光を測定対象空間に案内する中空筒状のガイド部材9dが回転体8の天板部8bに形成された切欠部8dに固定され、ガイド部材9dの先端側端部が受光レンズ9cに形成された切欠部から延出するように、そしてガイド部材9dの基端側端部が第一偏向ミラー9aの下端側と接当するように配置されている。即ち、受光レンズのうち前記測定光が通過する領域が切り欠かれている。
【0055】
ガイド部材9dの外周は遮光部材で被覆され、第一偏向ミラー9aにより偏向された測定光がガイド部材9dの中を通過して測定対象空間に案内される。従って、投光部3から出力された測定光の一部が回転体8内部に漏れて発生する迷光が受光部5で誤検出されるような不都合を解消することができる。
【0056】
上部ハウジング21と下部ハウジング22間に設けられた光学窓2aは、投光部3から出力された測定光が走査機構4により測定対象空間に照射され、測定対象空間に存在する被測定物で反射した反射光が受光部5で検出されるように、上下方向に一定幅を有するとともに、上端から下端にかけて内側に僅かに傾斜するように配置され、測定光が回転軸心Pを中心として約250度範囲で走査可能に配置されている。これにより光学窓2a表面に埃等が積もりにくくしながらも、広範囲に亘る空間を走査できる。
【0057】
光学窓2aに対向する背部ハウジング23の内壁部に、信号処理基板7で算出される距離を補正するための基準光を導くプリズム等の導光部材17が配置されている。
【0058】
回転体8の外周面に周方向に複数の光学的スリットが形成されたスリット板15aが設置されるとともに、スリット板15aの回転経路上にフォトインタラプタ15bが配置され、これらにより回転体8の走査角度を検出する走査角度検出部15が構成されている。
【0059】
下部ハウジング22の下部には、測距装置1を制御する制御基板7が配置されている。制御基板7には、モータ制御回路、駆動回路、増幅回路等が組み込まれている。
【0060】
図4には、上述した測距装置1の制御ブロックが示されている。当該制御ブロックには、レーザダイオード3aを駆動する駆動する駆動回路3bと、アバランシェフォトダイオード5aで検知される被測定物Rからの反射信号または導光部材17からの基準光を増幅する増幅回路5aと、ブラシレスDCモータ11の回転数を制御するモータ制御回路16と、走査角度検出部15を備えている。
【0061】
当該制御ブロックは、マルチ信号処理装置100のコネクタCNを介して信号線Cで接続されている。信号線Cには、当該制御ブロックに給電する電源ラインとグランドラインの他に、発光信号ライン、受光信号ライン、PWM信号ライン、角度信号ラインが含まれる。
【0062】
駆動回路3bは、発光信号ラインから入力される発光信号をトリガーとして所定時間、ここでは5μsec.レーザダイオード3aを駆動する。モータ制御回路16は、PWM信号ラインから入力されるPWM信号に基づいてモータ11を速度制御する。PWM信号のデュ−ティ比が0%のときモータを停止制御し、10%から90%の間で回転数をリニアに制御する。
【0063】
増幅回路5aで増幅された受光信号が受光信号ラインを介してマルチ信号処理装置100に出力され、走査角度検出部15からの角度信号が角度信号ラインを介してマルチ信号処理装置100に出力される。
【0064】
図5には、マルチ信号処理装置100の回路ブロックが示されている。当該回路ブロックはゲートアレイ、アナログスイッチ、デジタルシグナルプロセッサ等が集積されたASICで構成されている。
【0065】
マルチ信号処理装置100は、角度信号検知部110、角度信号記憶部120、発光信号出力部130、受光信号入力部140、距離演算部150、距離記憶部160、マイクロコンピュータを備えた制御部170、各ブロックの演算処理に必要なシステムクロックを生成するクロック回路180等を備えている。
【0066】
制御部170は、マルチ測距システムを統括制御するブロックで、ホストインタフェースを介してホストコンピュータ200と接続されている。
【0067】
角度信号検知部110は、各測距装置1から入力される発光要求信号(ここでは角度信号が用いられる)の立上りエッジを検知するエッジ検出回路を備え、当該立上りエッジに基づいて各測距装置1に発光信号を出力するタイミングを制御するタイミング制御回路を備えている。
【0068】
タイミング制御回路は、発光信号の出力タイミングで該当する測距装置1に対応するセンサID信号を出力する。
【0069】
角度信号記憶部120は、角度信号検知部110によって検知された角度信号の立上りエッジで対応する測距装置1に発光信号を出力できない場合に、当該未発行の発光要求信号とセンサID信号を記憶する記憶回路である。
【0070】
発光信号出力部130は、センサID信号の発生時に当該センサID信号に対応する測距装置1に発光信号を出力するデコーダ回路を備えている。例えば、16台の測距装置1が接続されている場合には、4−16デコーダを備え、4ビットのセンサID信号を入力して16台の測距装置1の何れかに発光信号を出力する。当該発光信号をトリガーとして各測距装置1の駆動回路3bが駆動される。
【0071】
尚、8台の測距装置1が接続されている場合には3−8デコーダ、17台以上の測距装置1が接続されている場合には5−32デコーダを備えればよい。
【0072】
受光信号入力部140は、センサID信号の発生時に、当該センサID信号に対応する測距装置1から出力された受光信号を距離演算部150に出力するアナログスイッチ回路を備えている。アナログスイッチ回路は、各測距装置1から入力される受光信号に対応した入力端子を備え、センサID信号に対応する測距装置1から入力される受光信号のみを選択的に後段に通過させるスイッチ回路である。
【0073】
距離演算部150は、デジタルシグナルプロセッサで構成され、任意の測距装置1に発光信号が出力された時点から受光信号が入力されるまでの時間を算出し、当該測距装置1で検知された被測定物Rまでの距離を算出する。
【0074】
さらに、距離演算部150は、発光信号が出力された時点から導光部材17からの基準光に対応する受光信号が入力されるまでの時間を算出し、当該測距装置の基準補正距離を算出する。
【0075】
距離演算部150は、被測定物Rまでの距離から基準補正距離を減算した値を補正後の距離として算出し、距離記憶部160に記憶する。当該基準補正距離は、各測距装置1の発光部3や受光部5の部品ばらつき等を吸収するための値である。
【0076】
制御部170は、各測距装置1から入力された角度信号に基づいて各測距装置1の走査角度を把握するとともに、センサID信号に同期して距離演算部150から出力される演算終了信号を検知すると、距離記憶部160から距離を読み出して、走査角度と対応する距離とからなる二次元位置情報を対応する測距装置と関連付けて内部メモリであるRAMに格納する。
【0077】
制御部170は、ホストインタフェースを介してホストコンピュータ200から二次元位置情報の送信リクエストを受信すると、測距装置のIDと対応する二次元位置情報をホストコンピュータ200に転送する。
【0078】
図6に示すように、任意の測距装置1の走査角度検出部15から角度信号検知部110に一定周期Tのパルス状の角度信号が入力されると、角度信号検知部110はその立上りエッジを検知して、当該立上りエッジで当該測距装置1に対応するセンサID信号を出力する。
【0079】
発光信号出力部130が、センサID信号に対応する測距装置1に発光信号を出力すると、当該測距装置1の駆動回路3bは、5nsec.だけレーザダイオード3aを駆動して発光させる。
【0080】
当該測定光に対する反射光が受光部5で検知されると、受光信号入力部140を介して受光信号が距離演算部150に入力され、距離演算部150で距離演算が実行される。
【0081】
角度信号の周期Tが、距離演算のために要する時間T/n(nは測距装置1の台数)よりも十分に長い場合、距離演算部150には、(n−1)T/nだけのアイドル時間が発生する。この間にn−1台の測距装置1に対する距離演算が実行できる。
【0082】
例えば、測距装置1の最大検出距離が150mである場合には、距離演算のために要する時間は最大1μsec.となる。この値は、上述したTOF方式の距離算出式 D=Δt・C/2 から導かれる。
【0083】
角度信号の周期Tが18μsec.に設定される場合には、距離演算部150は、周期Tの間に18回の距離演算を実行することができる。つまり、マルチ信号処理装置100に最大18台の測距装置1を接続しても、周期Tの間に18台の測距装置1に対する距離演算を少なくとも一回は実行できるようになる。
【0084】
尚、レーザダイオード3aを18μsec.の周期で駆動する場合、IEC60825-1で定められたComparison with AEL multiplied by Cs for a single pulseの規定で、クラス1の安全性を確保しながらも、最も測定効率のよい発光間隔となる。
【0085】
つまり、本発明によるマルチ信号処理装置100は、距離演算部150のアイドル時間を利用して複数台の測距装置1に対する距離演算を実行するように構成されている。
【0086】
図7には、各測距装置1から出力される周期Tの角度信号がT/nずれる理想的な場合のタイミングチャートが示されている。測距装置(1)からの角度信号の立上りエッジで測距装置1に対する距離演算が終了すると、測距装置(2)からの角度信号の立上りエッジが入力され、測距装置(2)に対する距離演算が開始される。
【0087】
このようなタイミングでn台の測距装置に対する距離演算が、角度信号の一周期内でそれぞれ一回実行されるようになる。従って、各測距装置に高価な信号処理回路を個別に設ける必要がなくなるので、測距装置そのものを小型化できる。また、一つの信号処理回路を複数の測距装置で共用できるので、一台の測距装置当たりの信号処理回路のコストを数分の一から十数分の一に低減させることができるようになる。
【0088】
しかし、各測距装置1から角度信号がランダムに出力される場合には、図7に示す理想的な順序で距離演算が実行できなくなる。そこで、本発明によるマルチ信号処理装置100は、各測距装置から入力される発光要求信号のエッジを検知すると対応する測距装置の発光部を駆動する発光信号を出力する発光制御部と、発光制御した測距装置の受光部から受光信号を入力する入力処理部と、入力処理した受光信号に基づいて被測定物迄の距離を算出する演算処理部と、各処理部により実行される一連の処理を、任意の測距装置から入力される走査角度信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に実行させるジョブ管理部とを備えている。
【0089】
尚、上述した角度信号検知部110、角度信号記憶部120、発光信号出力部130によって発光制御部が構成され、上述した受光信号入力部140によって入力処理部が構成され、上述した距離演算部150によって演算処理部が構成されている。
【0090】
また、角度信号検知部110、角度信号記憶部120によって、ジョブ管理部が構成されている。さらに、本実施形態では、角度信号が発光要求信号として用いられているが、角度信号とは別に発光要求信号が測距装置1から出力されるように構成してもよい。
【0091】
ジョブ管理部には、各測距装置に対する一連の処理が複数の測距装置で競合すると、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理を優先させ、他の処理を遅延させる遅延処理部を備えている。遅延処理部も、角度信号検知部110、角度信号記憶部120によって実現されている。
【0092】
つまり、角度信号検知部110は、任意の測距装置1から出力された角度信号の立上りエッジを検知すると、当該測距装置1に対して発光信号を出力するべく、センサID信号をT/n時間(本実施形態では1μsec.)出力する。
【0093】
角度信号検知部110は、この間に他の測距装置から出力された角度信号の立上りエッジを検知すると、当該発光要求信号の実行を留保して、当該他の測距装置からの発光要求信号を角度信号記憶部120に記憶する。この間にさらに他の複数の測距装置から出力された角度信号の立上りエッジを検知する場合も、同様に他の複数の測距装置からの発光要求信号を、エッジを検知した順番に角度信号記憶部120に記憶する。
【0094】
角度信号検知部110は、クロック回路180から入力されるクロック信号に基づいて、距離演算に必要な1μsec.の時間の経過を認識すると、角度信号記憶部120に記憶した当該他の測距装置からの発光要求信号を読み出して、当該他の測距装置に対して発光信号を出力するべく、センサID信号を1μsec.出力する。角度信号記憶部120に複数の発光要求信号が格納されている場合には、エッジを検知した順番に1μsec.インタバルで各測距装置に発光信号を出力する。
【0095】
各測距装置に対するセンサID信号は、各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて設定される。図1の例では、コネクタCN1に接続された測距装置のIDが1に、コネクタCN2に接続された測距装置のIDが2に、コネクタCNnに接続された測距装置のIDがnにそれぞれ設定される。
【0096】
遅延処理部によって、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理が優先処理され、他の測距装置に対する処理が遅延されるので、処理に支障を来たすことがない。また、遅延された処理は、最先の発光要求信号の次のエッジを検知するまでに実行可能となるので、所定の精度を確保することも可能になる。
【0097】
各測距装置で検知された被測定物に対する角度と距離で示される二次元位置情報のうち、角度の最大誤差が角度信号の周期Tに対応する角度以内に収まるのである。
【0098】
複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジが同時に検知される場合には、例えば、小さいIDの測距装置から、或は大きいIDの測距装置から順番に処理を開始することも可能である。しかし、システムによっては重要な測距装置の処理を遅延させることが困難な場合もある。
【0099】
そのような場合に備えて、各測距装置に優先順位が設定されている。遅延処理部は、複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジを同時に検知すると、優先順位の高い測距装置に対する処理を優先し、他方の処理を遅延させるように構成されている。
【0100】
遅延処理部によって、優先順位の高い測距装置に対する処理が優先して実行されるようになり、重要な測距装置の処理が遅延するようなことが無くなる。
【0101】
また、各測距装置に優先順位が設定され、遅延処理部は、処理の遅延中に当該遅延中の測距装置より優先順位の高い測距装置から発光要求信号のエッジを検知すると、当該優先順位の高い測距装置に対する処理を優先させ、当該遅延中の測距装置に対する処理を、さらに遅延させるように構成されている。
【0102】
各測距装置に設定される優先順位は、各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて決定される。コネクタCN1に接続された測距装置の優先順位が最も高く、コネクタCN2に接続された測距装置の優先順位がその次の優先順位に設定され、コネクタCNnに接続された測距装置の優先順位が最下位に設定される。
【0103】
このように構成すれば、優先順位を設定するための別途の回路や、設定入力のためのソフトウェア等を設ける必要が無く、また、コネクタの接続位置を変更するというシンプルな操作で極めて容易に優先順位を変更することも可能になる。
【0104】
尚、各コネクタに付ける優先順位を予め設定し、制御部170のROMや角度信号記憶部120に記憶してもよい。
【0105】
角度信号検知部110が、任意の測距装置から出力された角度信号の立上りエッジを検知したときに、角度信号記憶部120に記憶された他の測距装置の発光要求信号の有無を検知し、角度信号記憶部120に他の測距装置の発光要求信号が記憶されていれば、これらの測距装置の中で最も優先順位が高い測距装置の発光要求信号に対するセンサID信号を出力するように構成することにより、当該優先処理が実現できる。
【0106】
これによって、優先順位の高い測距装置に対する処理が優先して実行されるようになり、優先順位の高い測距装置ほど精度の高い演算結果が得られるようになる。
【0107】
本実施形態では、各測距装置1の発光要求信号の周期が、全測距装置に対する一連の距離演算処理の合計の処理時間以上に設定されているため、任意の測距装置の発光要求信号の周期内で、全測距装置に対する一連の処理が完結でき、少なくとも発光要求信号の周期以内の誤差に抑制することができるようになる。
【0108】
また、発光要求信号の周期を長くすれば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数を増やすことができ、発光要求信号の周期を短くすれば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数が減るが、測距処理の間隔を短くして、走査角度に関する測距精度を向上させることができる。
【0109】
マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数に基づいて、発光要求信号の周期を可変設定できるように構成してもよい。例えば、制御部170が、マルチ信号処理装置100に接続されている測距装置の台数をカウントして、その結果に基づいて測距装置の走査速度を可変に制御すればよい。
【0110】
後述するように、制御部170は、各測距装置1から出力される角度信号をモニタして各測距装置1の走査速度を目標速度に制御するように構成されているため、角度信号の入力の有無を検知することにより、マルチ信号処理装置100に接続されている測距装置の台数をカウントすることが可能になる。
【0111】
以下、マルチ測距システムの処理手順を説明する。
図10に示すように、システムに電源が投入されると(SD1)、制御部170は、各測距装置に対してモータ駆動指令を出力する(SD2)。当該モータ駆動指令はPWM信号であり、目標速度に対応するデューティ比のパルス信号が各測距装置に出力される。
【0112】
制御部170は、各測距装置から角度信号が入力されると、当該角度信号が入力された入力ポートの配置に従って、各測距装置のIDを識別する(SD4)。上述のコネクタCN1,CN2,・・・,CNnと入力ポートの配置が対応しているため、入力ポートの配置に従ってIDが識別できる。
【0113】
制御部170は、角度信号の周期が目標周期Tとなるように、PWM信号のデューティ比をフィードバック制御し(SD5)、各測距装置の角度信号の周期が目標周期Tに収束すると(SD6)、角度信号検知部110に起動指令を出力する(SD7)。
【0114】
その後、角度信号検知部110から出力されるセンサID信号を入力し、距離演算部50から演算終了信号が入力されると、センサID信号に対応する測距装置の演算結果を距離記憶部160から読み出して、測距装置のID、走査角度、距離をRAMに格納し、ステップSD3に戻る。
【0115】
制御部170は、当該ルーチンに加えて、ホストコンピュータ200からの割り込み要求があると、RAMに格納した測距装置のID、走査角度、距離をホストコンピュータ200に送信する。
【0116】
図8に示すように、角度信号検知部110は、制御部170から起動指令を受信すると、各測距装置からの角度信号を入力して(SA1)、各測距装置のIDを識別する(SA2)。
【0117】
角度信号検知部110は、任意の測距装置からの角度信号の立上りエッジ、つまり発光要求信号を検知すると(SA3)、他の測距装置からの角度信号の立上りエッジと競合状態にあるか否かを判定する(SA4)。
【0118】
競合状態とは、上述したように、角度信号記憶部120に既に他の測距装置からの発光要求信号が格納されている場合、複数の測距装置から同時に角度信号の立上りエッジが検知される場合等をいう。
【0119】
競合している場合には優先順位を判断して(SA5)、優先順位の低い測距装置の発光要求信号を角度信号記憶部120にセーブし(SA6)、前回の距離演算が終了した所定周期、つまり1μsec.の周期であるか否かを判定し(SA7)、所定周期であれば優先順位の高い測距装置に対するセンサID信号を出力し(SA8)、ステップSA1に戻る。
【0120】
ステップSA3で任意の測距装置からの角度信号の立上りエッジを検知しない場合には、ステップSA5以下の処理を実行し、角度信号記憶部120に複数の測距装置からの発光要求信号が記憶されている場合には、その優先順位を判断して(SA5)、優先順位の高い測距装置からの発光要求信号に対してステップSA7の処理を実行する。
【0121】
図9(a)に示すように、発光信号出力部130は、角度信号検知部110から出力されたセンサID信号を検出すると(SB1)、IDに対応する測距装置に発光信号を出力し(SB2)、所定時間が経過すると(SB3)、当該発光信号をオフする(SB4)。
【0122】
当該発光信号を受信した測距装置の駆動回路3bは、当該発光信号をトリガーとして5nsec.の間、レーザダイオード3aを駆動する。
【0123】
図9(b)に示すように、受光信号入力部140は、角度信号検知部110から出力されたセンサID信号を検出すると、対応する測距装置からの受光信号が距離演算部150に入力されるように、経路スイッチであるアナログスイッチを切り替える(SC1)。
【0124】
距離演算部150は、アナログスイッチを介して入力される受光信号が入力されると、発光信号の出力時(当該センサID信号の切替時期であってもよい)から受光信号の立上り迄の時間、つまり測定光の遅延時間を算出して、被測定物までの距離を算出し(SC2)、その結果を距離記憶部160に記憶し(SC3)、制御部170に演算終了信号を出力する(SC5)。
【0125】
尚、詳述しないが、角度信号の周期、つまり、走査角度検出部15から出力される角度信号は、測定光が導光部材17に照射される基準位置でパルスが欠落するように構成されている。
【0126】
角度信号検知部110は、このパルスの欠落時期を判別して、基準補正距離算出時期であると判断すると、角度信号の立上り時期であると判断して、センサID信号を出力するとともに、距離演算部150にその旨の信号を出力するように構成されている。
【0127】
距離演算部150はこれに対応して距離演算した結果を基準補正距離として距離記憶部160に格納するように構成されている。そして、距離演算部150はステップSC2で距離演算する度に算出した距離から基準補正距離を減算した距離を補正後の距離として距離記憶部160に格納するように構成されている。
【0128】
以下、別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、角度信号の周期が18μsec.に設定され、距離演算が1μsec.で終了するように設定されているため、最大18台の測距装置がマルチ信号処理装置100に接続可能なシステムを説明したが、角度信号の周期、距離演算の所要時間1μsec.は例示に過ぎず、本発明がこのような数値範囲に制限されるものではない。
【0129】
最大測距範囲が150mに設定された場合に、距離演算が1μsec.を要するのであるが、最大測距範囲が150mより短ければ、距離演算が1μsec.未満で終了する。例えば、最大測距範囲が75mであれば、距離演算が0.5μsec.となる。この場合、角度信号の周期が18μsec.であれば、その間に各測距装置で二回の距離演算を行うことができる。また、この場合、角度信号の周期を9μsec.に設定すれば、角度信号の一周期で各測距装置に対する距離演算を一回ずつ実行することができる。
【0130】
つまり、マルチ測距システムの用途に応じて定まる最大測距範囲に基づいて、角度信号の周期をフレキシブルに可変設定することができる。例えば、ホストコンピュータ200からマルチ信号処理装置100の制御部170に角度信号の周期を規定する制御情報を送信し、制御部170がモータ制御用のPWM信号により各測距装置の角度信号の周期を可変に設定すればよい。
【0131】
また、マルチ信号処理装置100に接続される特定の測距装置の角度信号の周期を、他の測距装置の角度信号の周期より長くなるように設定し、或は短くなるように設定してもよい。
【0132】
走査角度の高い分解能を要求されない特定の測距装置に対して、その角度信号の周期を他の測距装置の角度信号の周期の2倍に設定すれば、当該特定の測距装置は、他の測距装置に対する距離演算周期の2倍の周期で距離演算が実行される。
【0133】
走査角度の高い分解能が要求される特定の測距装置に対して、その角度信号の周期を他の測距装置の角度信号の周期の1/2倍に設定すれば、当該特定の測距装置は、他の測距装置に対する距離演算周期の1/2倍の周期で距離演算が実行される。
【0134】
この場合も、上述と同様に、ホストコンピュータ200からマルチ信号処理装置100の制御部170に角度信号の周期を規定する制御情報を送信し、制御部170がモータ制御用のPWM信号により各測距装置の角度信号の周期を可変に設定すればよい。
【0135】
また、マルチ信号処理装置100に接続されている測距装置の台数によって、角度信号の周期を異ならせてもよい。
【0136】
上述した実施形態では、TOF方式の測距装置を例に説明したが、本発明に用いられる測距装置はAM方式が採用される測距装置であってもよい。
【0137】
この場合、レーザダイオード3aの出力光を正弦波で変調した測定光を数μsの間、例えば3μsの間、出力するバースト制御を実行することが好ましい。測定光を間歇的に出力するバースト制御を実行すると、発光時の強度を強くしながらも平均強度が小さくなるように設定でき、人体の目への安全性を確保できるからである。
【0138】
AM方式を採用する場合には、測距装置1から出力される受光信号に測定光及び反射光に対する受光信号が含まれるように構成するとともに、距離演算部150に、測定光と反射光の位相差を求める位相差検出部と、測定光の立上がりから反射光の立上がりまでの遅延時間に基づいて、変調された正弦波の波数を検出する波数検出部とを備え、波数検出部で検出した波数と位相差検出部により検出された位相差に基づいて測定対象物までの距離を算出するように構成すればよい。
【0139】
つまり、位相差検出部により、測定光と反射光の位相差が求められ、波数検出部により、測定光の出力からから反射光の検出までの遅延時間に基づいて被測定物までの距離が算出される。このとき算出された距離に基づいて変調信号の波長が求められる。
【0140】
そして、位相差検出部で求められた位相差に基づいて、変調信号の一波長内における被測定物までの仮の距離が算出され、当該仮の距離に波数検出部で求められた波数に対応する距離が加算さる結果、測定対象物までの正確な距離が算出される。
【0141】
従って、測定対象物までの距離が変調信号の一波長以上に及ぶ場合であっても、波数検出部により求められる波数が判明するので正確な距離が算出される。
【0142】
上述した実施形態は、本発明の一実施例であり、走査式測距装置の具体的構造、信号処理部23の具体的な回路構成等は、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0143】
上述のマルチ測距システムは、二足歩行ロボットや、産業機械ロボット等の各種のロボット、或は、無人車の視覚認識センサとしてのナビゲーション用センサに好適に利用される。また、ドアの開閉センサや危険な装置に人や物が近づくのを検出し、機械を安全に停止する安全センサ、車の形状を検出して車種の判別及び通過する車の数をカウントするETCシステム用センサにも好適に利用される。さらには、人を検出して人数をカウントして混み具合や、人の流れを検出する人体検出用センサ、監視領域への侵入者の有無を検出する監視センサ等にも好適に利用される。
【符号の説明】
【0144】
1:測距装置
3:発光部
3a:光源(レーザダイオード)
3b:駆動回路
5:受光部
5a:受光素子(アバランシェフォトダイオード)
5b:増幅回路
4:走査部
11:モータ
15:走査角度検出部
16:モータ制御回路
100:マルチ信号処理装置
110:角度信号検知部
120:角度信号記憶部
130:発光信号出力部
140:受光信号入力部
150:距離演算部
160:距離記憶部
170:制御部
110,120,130:発光制御部
110,120:ジョブ管理部(遅延処理部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
測定光を出力する発光部と、発光部から出力された測定光を測定対象空間に向けて走査する走査部と、測定対象空間に存在する測定対象物からの反射光を検出する受光部を備え、測定光と受光部で検出された反射光に基づいて測定対象物までの距離を算出する演算部を備えた測距装置が提案されている。
【0003】
このような測距装置は、発光部に備えた光源から出力される測定光をAM変調するAM(amplitude modulation)方式と、光源をパルス駆動するTOF(Time of Flight)方式の二種類の測距原方式の何れかが採用されている。
【0004】
図11(a)に示すように、AM方式は、正弦波でAM変調された測定光とその反射光を光電変換して、それらの信号間の位相差Δφを計算し、位相差Δφから距離Dを以下の数式に基づいて算出する方式である。
D=Δφ・C/(4π・f)
【0005】
図11(b)に示すように、TOF方式は、パルス状に変調された測定光とその反射光を光電変換し、それらの信号間の遅延時間Δtから距離Dを以下の数式に基づいて算出する方式である。
D=Δt・C/2
尚、数式中、Cは光速、fは変調周波数であり、図11(a),(b)で示される符号Tはターゲットである被測定物を示し、符号LDは光源であるレーザダイオードを示し、符号PDは受光素子であるフォトダイオードを示している。
【0006】
特許文献1にはAM方式の測距装置が開示され、特許文献2にはTOF方式の測距装置が開示されている。何れの測距装置も、測定光の走査平面に対して45度の傾斜角で配置された偏向ミラーと、偏向ミラーを回転させるモータを備え、測定光が周囲360度にわたり走査される。
【0007】
さらに、各測距装置には、偏向ミラーによる走査角度を検知するエンコーダが配置され、エンコーダから入力されるパルス信号に基づいて走査角度を求める角度演算部と、測定光と反射光の位相差または時間差に基づいて被測定物までの距離を算出する距離演算部が設けられ、角度演算部で算出された走査角度と、距離演算部で求められた距離によって、被測定物が位置する二次元座標情報が把握される。
【0008】
何れの測距装置も、発光部、受光部、走査部、角度演算部及び距離演算部となる信号処理基板等が、ケーシングに内蔵されたスタンドアロン型で構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−3127号公報
【特許文献2】米国特許5,455,669号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような測距装置では、人間の目の安全を確保するため、光源であるレーザダイオードからの出力光の強度が安全規格によって制限されている。
【0011】
そのような制限の下で、長い検出距離を確保し、距離の精度を向上させるために、AM方式では正弦波で変調された測定光を数μs程度の長さで間歇的にバースト発光させ、発光時の強度を強くしながらも平均強度が小さくなるように設定されている。同様に、TOF方式では、測定光のパルス幅を数ns以下に制御することによりし、発光時の強度を強くしながらも平均強度が小さくなるように設定されている。
【0012】
また、例えば1mmの分解能で距離を求める場合、TOF方式を採用すると、演算の時間分解能が6.7ps以下の超高速の演算処理を実行する必要があり、そのため、数GHzオーダの周波数のクロックや、広帯域の演算回路が必要となり、非常に高価なものとなる。
【0013】
特に、ロボットの視覚センサや、安全センサとして測距装置を用いる場合には、目的・用途に合わせて複数台の測距装置を組み込む必要がある。例えば、ロボットの視覚センサとして使用する場合には、ロボットが移動するために必要な環境地図作成や自己位置認識及び移動経路探索に使用する測距装置、足元の傾きや段差を検出する測距装置、物を把持するため物の位置や大きさを検出する3次元の測距装置等が必要となる。
【0014】
上述したスタンドアロン型の測距装置をこれらに用いると、ロボットの部品コストが嵩み、低価格化に大きな支障を来たしていた。
【0015】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、高分解能の測距精度を確保しながらも極めて安価に複数台の測距装置をロボット等に組み込むことが可能なマルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明によるマルチ信号処理装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、測定光を出力する発光部と、前記発光部から出力された測定光を測定対象空間に偏向走査する走査部と、前記測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を検出して受光信号を出力する受光部とを備えた複数の測距装置と接続され、各測距装置から入力される発光要求信号のエッジを検知すると対応する測距装置の発光部を駆動する発光信号を出力する発光制御部と、発光制御した測距装置の受光部から受光信号を入力する入力処理部と、入力処理した受光信号に基づいて被測定物迄の距離を算出する演算処理部と、各処理部により実行される一連の処理を、任意の測距装置から入力される走査角度信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に実行させるジョブ管理部とを備えている点にある。
【0017】
発光制御部、入力処理部、演算処理部の各処理部で構成される信号処理回路が各測距装置に対して費やす処理時間は非常に短時間であり、一つの測距装置から入力される走査角度信号のエッジで各処理が起動されても、次の走査角度信号のエッジ迄には十分なアイドル時間が生じる。ジョブ管理部は、このアイドル時間を活用して、任意の測距装置から入力される発光要求信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に処理を実行させることにより、一組の処理部で複数台の測距装置に対する距離演算を、発光要求信号の一周期内で完結させることができるようになる。
【0018】
従って、各測距装置に高価な信号処理回路を個別に設ける必要がなくなるので、測距装置そのものを小型化でき、一つの信号処理回路を複数の測距装置で共用できるので、一台の測距装置あたりの信号処理回路のコストを数分の一から十数分の一に低減させることができるようになる。
【0019】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記ジョブ管理部に、前記一連の処理が複数の測距装置で競合すると、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理を優先させ、他の処理を遅延させる遅延処理部を備えている点にある。
【0020】
個々の測距装置がそれぞれ個別に測定光を走査する場合に、複数の測距装置からマルチ信号処理装置に発光要求信号のエッジが入力されると、各測距装置に対する処理が重複して発生するが、遅延処理部によって、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理が優先処理され、他の処理が遅延されるので、処理に支障を来たすことがない。また、遅延された処理は、最先の発光要求信号の次のエッジを検知するまでに実行可能となるので、所定の精度を確保することも可能になる。
【0021】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、各測距装置に優先順位が設定され、前記遅延処理部は、複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジを同時に検知すると、優先順位の高い測距装置に対する処理を優先し、他方の処理を遅延させる点にある。
【0022】
複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジが同時に検知されると、何れかの測距装置の処理から開始されるが、システムによっては重要な測距装置の処理を遅延させることが困難な場合もある。そのような場合であっても、各測距装置に優先順位が設定されているため、遅延処理部によって、優先順位の高い測距装置に対する処理が優先して実行されるようになり、重要な測距装置の処理が遅延するようなことが無くなる。
【0023】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二または第三特徴構成に加えて、各測距装置に優先順位が設定され、前記遅延処理部は、処理の遅延中に当該遅延中の測距装置より優先順位の高い測距装置から発光要求信号のエッジを検知すると、当該優先順位の高い測距装置に対する処理を優先させ、当該遅延中の測距装置に対する処理をさらに遅延させる点にある。
【0024】
遅延処理部により処理が遅延されているときに、他の測距装置からの発光要求信号のエッジが検知される場合であっても、優先順位の高い測距装置に対する処理が優先して実行されるので、優先順位の高い測距装置ほど精度の高い演算結果が得られるようになる。
【0025】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第三または第四特徴構成に加えて、各測距装置に設定される優先順位は、各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて決定される点にある。
【0026】
各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて優先順位が設定されるので、優先順位を設定するための別途の回路や、設定入力のためのソフトウェア等を設ける必要が無く、また、コネクタの接続位置を変更するというシンプルな操作で極めて容易に優先順位を変更することも可能になる。
【0027】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、各測距装置の発光要求信号の周期が、全測距装置に対する前記一連の処理の処理時間以上に設定されている点にある。
【0028】
任意の測距装置の発光要求信号の周期内で、全測距装置に対する一連の処理が完結でき、少なくとも発光要求信号の周期以内の誤差に抑制することができるようになる。また、発光要求信号の周期を長くすれば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数を増やすことができ、発光要求信号の周期を短くすれば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数が減るが、測距処理の間隔を短くして測距精度を向上させることができる。
【0029】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記ジョブ管理部は一連の処理を開始する測距装置のID信号を出力するID信号出力部を備え、前記発光制御部は当該ID信号に基づいて対応する測距装置に発光信号を出力するデコーダを備え、前記入力処理部は当該ID信号に基づいて対応する測距装置からの受光信号を前記演算処理部に出力するスイッチ回路を備えている点にある。
【0030】
ID信号出力部から出力されるID信号に基づいて、発光制御部及び入力処理部が必要な測距装置との間で信号の入出力を行なうための回路が極めてシンプルに構成できる。
【0031】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、各測距装置から入力される発光要求信号が走査部の走査角度を示す走査角度信号で構成され、当該走査角度信号に基づいて各測距装置の走査部の走査速度を目標速度に制御する走査速度制御部を備えている点にある。
【0032】
測距装置は、通常、走査部の走査角度と対応して測距演算することにより、被測定物に対する二次元位置情報を取得するように構成される。発光要求信号が走査部の走査角度を示す走査角度信号と兼用されるため、走査角度信号以外の別途の発光要求信号を生成するための回路が不要になる。しかも、当該走査角度信号に基づいて各測距装置の走査速度をマルチ信号処理装置側で制御できるので、システムの自由度が向上する。例えば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数によって各測距装置の走査速度を可変に制御することも可能になる。
【0033】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第八特徴構成に加えて、前記走査速度制御部は、走査速度が目標速度に制御された測距装置に対して前記一連の処理が実行されるように前記ジョブ管理部を起動する点にある。
【0034】
走査速度が目標速度に制御された測距装置に対して一連の処理が実行されるので、早く立上った測距装置から測距のための処理を開始することができるようになる。
【0035】
本発明による測距装置の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述した第一から第九の何れかの特徴構成を備えたマルチ信号処理装置に接続され、前記マルチ信号処理装置から入力される発光信号に基づいて測定光を出力する発光部と、前記発光部から出力された測定光を測定対象空間に偏向走査する走査部と、前記測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を検出して受光信号を前記マルチ信号処理装置に出力する受光部とを備えている点にある。
【0036】
本発明によるマルチ測距システムの特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述した第一から第九の何れかの特徴構成を備えたマルチ信号処理装置と、上述の特徴構成を備えた測距装置とを備え、前記マルチ信号処理装置に前記測距装置が複数台接続されている点にある。
【発明の効果】
【0037】
以上説明した通り、本発明によれば、高分解能の測距精度を確保しながらも極めて安価に複数台の測距装置をロボット等に組み込むことが可能なマルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるマルチ測距システムの説明図
【図2】測距装置の外観説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図
【図3】測距装置の断面図
【図4】測距装置の回路ブロック構成図
【図5】マルチ信号処理装置の回路ブロック構成図
【図6】マルチ信号処理装置の信号処理の説明図
【図7】マルチ信号処理装置の信号処理のタイムチャート
【図8】角度信号検知処理のフローチャート
【図9】(a)は発光信号出力処理のフローチャート、(b)は受光信号処理のフローチャート
【図10】制御部処理のフローチャート
【図11】(a)はAM方式の説明図、(b)はTOF方式の説明図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明によるマルチ信号処理装置、測距装置、及びマルチ測距システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0040】
図1に示すように、マルチ測距システムは、TOF方式が採用された複数台の測距装置1と、マルチ信号処理装置100と、ホストコンピュータ200で構成されている。各測距装置1とマルチ信号処理装置100とがローカルの信号ケーブルC1,C2,・・・,Cnで接続され、マルチ信号処理装置100とホストコンピュータ200が汎用の通信線Ch、例えばUSBケーブル等で接続されている。
【0041】
各測距装置1は、例えばロボットの視覚センサとして予め設定された所定位置に組み付けられている。ホストコンピュータ200は、当該ロボットのシステムコントローラとしての機能を備えるもので、その形態は図示したようなコンピュータの形態に制限されるものではない。また、各測距装置1の外観も適宜変更可能である。
【0042】
各測距装置1は、図2(a),(b),(c)に示すように、横断面視で略半円形状の湾曲面に形成された光透過性の光学窓2aが上部ハウジング21と下部ハウジング22の間に配置され、上部ハウジング21の正面には装置1の状態が判別可能なモニタ表示部79が設けられている。光学窓2aに対向配置された背部ハウジング23の下部に信号ケーブルを接続する端子78が設けられている。
【0043】
図3に示すように、測距装置1は、内壁面が迷光を吸収する暗幕等の吸光部材で被覆されたハウジング21,22,23の内部に、測定光を出力する発光部3と反射光を検出する受光部5が光軸L1に沿って対向配置され、発光部3と受光部5との間に測定光を回転走査する走査部4が配置されている。
【0044】
走査部4は、発光部3と受光部5を結ぶ光軸L1と一致する回転軸心P周りに光学系9を回転させる筒状の回転体8と、回転体8を回転駆動するモータ11を備えている。
【0045】
回転体8は、下端部が縮径された円筒状の周壁部8aと天板部8bとからなり、その内周面に備えた軸受12を介して中空軸13によって回転可能に支承されている。
【0046】
縮径された周壁部8aの下端部の外周面に取り付けられたマグネット11bでなる回転子と、ケーシング側に配置されたコイル11aでなる固定子とで、ブラシレスDCモータ11が構成され、コイル11aとマグネット11bとの相互作用により、回転体8が回転軸心P周りで回転する。
【0047】
発光部3は、半導体レーザを用いた発光素子3aと、発光素子3aの駆動回路3bを備えている。発光素子3aは、そこから出力される測定光の光軸L1と軸心Pが一致するように上部ハウジング21に固定配置されるとともに光軸L1上に光のビーム径を一定にする光学レンズ3cが配置されている。
【0048】
受光部5は、回転軸心P上に走査機構4を挟んで発光部3と対向するように回転体8の内部に固定配置され、反射光を検出するアバランシェフォトダイオードでなる受光素子5aと、受光素子5aで光電変換された反射信号を増幅する増幅回路5bを備えている。
【0049】
回転体8には、発光部3から光軸L1に沿って出力された測定光を測定対象空間に向けて90度偏向する第一偏向ミラー9aと、測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を集光する受光レンズ9cと、受光レンズ9cを透過した反射光を光軸L1に沿って投光部3と対向配置された受光部5に向けて90度偏向する第二偏向ミラー9bを備えた光学系9が取り付けられている。
【0050】
つまり、投光部3から光軸L1に沿った光路Laで出射された測定光が、第一偏向ミラー9aで光軸L1と垂直な光軸L2に沿った光路Lbに偏向された後に、光学窓2aを通過して測定対象空間に照射され、光軸L2と平行な光軸L3に沿った光路Lcで光学窓2aを通過した測定対象物からの反射光が、受光レンズ9cで収束され、第二偏向ミラー9bにより光軸L1と等しい光軸L4に偏向されて受光部5に導かれる。
【0051】
回転体8の周壁8aの一部に受光レンズ9cを取り付ける開口部8cが形成され、開口部8cに対応して天板部8bに偏向ミラー9a,9bを取り付ける切欠部8dが形成されている。
【0052】
偏向ミラー9a,9bは、樹脂または光学ガラスで一体成形された光学部材90の直交する二つの平面に、金またはアルミニウムが反射部材としてコーティングされた偏向面により構成されている。
【0053】
回転体8に形成された開口部8cから、一体形成された偏向ミラー9a,9bを挿入し、天板部8bに形成された切欠部8dの周面に接合させてビス止めすることにより、偏向ミラー9a,9bが回転体8に固定され、その後、開口部8cに受光レンズ9cが固定される。
【0054】
受光レンズ9cのレンズ中心より上部側の一部が直線状に切り欠かれ、さらにその中央部がレンズ中心方向に一部切り欠かれた切欠部が形成されている。第一偏向ミラー9aにより偏向された測定光を測定対象空間に案内する中空筒状のガイド部材9dが回転体8の天板部8bに形成された切欠部8dに固定され、ガイド部材9dの先端側端部が受光レンズ9cに形成された切欠部から延出するように、そしてガイド部材9dの基端側端部が第一偏向ミラー9aの下端側と接当するように配置されている。即ち、受光レンズのうち前記測定光が通過する領域が切り欠かれている。
【0055】
ガイド部材9dの外周は遮光部材で被覆され、第一偏向ミラー9aにより偏向された測定光がガイド部材9dの中を通過して測定対象空間に案内される。従って、投光部3から出力された測定光の一部が回転体8内部に漏れて発生する迷光が受光部5で誤検出されるような不都合を解消することができる。
【0056】
上部ハウジング21と下部ハウジング22間に設けられた光学窓2aは、投光部3から出力された測定光が走査機構4により測定対象空間に照射され、測定対象空間に存在する被測定物で反射した反射光が受光部5で検出されるように、上下方向に一定幅を有するとともに、上端から下端にかけて内側に僅かに傾斜するように配置され、測定光が回転軸心Pを中心として約250度範囲で走査可能に配置されている。これにより光学窓2a表面に埃等が積もりにくくしながらも、広範囲に亘る空間を走査できる。
【0057】
光学窓2aに対向する背部ハウジング23の内壁部に、信号処理基板7で算出される距離を補正するための基準光を導くプリズム等の導光部材17が配置されている。
【0058】
回転体8の外周面に周方向に複数の光学的スリットが形成されたスリット板15aが設置されるとともに、スリット板15aの回転経路上にフォトインタラプタ15bが配置され、これらにより回転体8の走査角度を検出する走査角度検出部15が構成されている。
【0059】
下部ハウジング22の下部には、測距装置1を制御する制御基板7が配置されている。制御基板7には、モータ制御回路、駆動回路、増幅回路等が組み込まれている。
【0060】
図4には、上述した測距装置1の制御ブロックが示されている。当該制御ブロックには、レーザダイオード3aを駆動する駆動する駆動回路3bと、アバランシェフォトダイオード5aで検知される被測定物Rからの反射信号または導光部材17からの基準光を増幅する増幅回路5aと、ブラシレスDCモータ11の回転数を制御するモータ制御回路16と、走査角度検出部15を備えている。
【0061】
当該制御ブロックは、マルチ信号処理装置100のコネクタCNを介して信号線Cで接続されている。信号線Cには、当該制御ブロックに給電する電源ラインとグランドラインの他に、発光信号ライン、受光信号ライン、PWM信号ライン、角度信号ラインが含まれる。
【0062】
駆動回路3bは、発光信号ラインから入力される発光信号をトリガーとして所定時間、ここでは5μsec.レーザダイオード3aを駆動する。モータ制御回路16は、PWM信号ラインから入力されるPWM信号に基づいてモータ11を速度制御する。PWM信号のデュ−ティ比が0%のときモータを停止制御し、10%から90%の間で回転数をリニアに制御する。
【0063】
増幅回路5aで増幅された受光信号が受光信号ラインを介してマルチ信号処理装置100に出力され、走査角度検出部15からの角度信号が角度信号ラインを介してマルチ信号処理装置100に出力される。
【0064】
図5には、マルチ信号処理装置100の回路ブロックが示されている。当該回路ブロックはゲートアレイ、アナログスイッチ、デジタルシグナルプロセッサ等が集積されたASICで構成されている。
【0065】
マルチ信号処理装置100は、角度信号検知部110、角度信号記憶部120、発光信号出力部130、受光信号入力部140、距離演算部150、距離記憶部160、マイクロコンピュータを備えた制御部170、各ブロックの演算処理に必要なシステムクロックを生成するクロック回路180等を備えている。
【0066】
制御部170は、マルチ測距システムを統括制御するブロックで、ホストインタフェースを介してホストコンピュータ200と接続されている。
【0067】
角度信号検知部110は、各測距装置1から入力される発光要求信号(ここでは角度信号が用いられる)の立上りエッジを検知するエッジ検出回路を備え、当該立上りエッジに基づいて各測距装置1に発光信号を出力するタイミングを制御するタイミング制御回路を備えている。
【0068】
タイミング制御回路は、発光信号の出力タイミングで該当する測距装置1に対応するセンサID信号を出力する。
【0069】
角度信号記憶部120は、角度信号検知部110によって検知された角度信号の立上りエッジで対応する測距装置1に発光信号を出力できない場合に、当該未発行の発光要求信号とセンサID信号を記憶する記憶回路である。
【0070】
発光信号出力部130は、センサID信号の発生時に当該センサID信号に対応する測距装置1に発光信号を出力するデコーダ回路を備えている。例えば、16台の測距装置1が接続されている場合には、4−16デコーダを備え、4ビットのセンサID信号を入力して16台の測距装置1の何れかに発光信号を出力する。当該発光信号をトリガーとして各測距装置1の駆動回路3bが駆動される。
【0071】
尚、8台の測距装置1が接続されている場合には3−8デコーダ、17台以上の測距装置1が接続されている場合には5−32デコーダを備えればよい。
【0072】
受光信号入力部140は、センサID信号の発生時に、当該センサID信号に対応する測距装置1から出力された受光信号を距離演算部150に出力するアナログスイッチ回路を備えている。アナログスイッチ回路は、各測距装置1から入力される受光信号に対応した入力端子を備え、センサID信号に対応する測距装置1から入力される受光信号のみを選択的に後段に通過させるスイッチ回路である。
【0073】
距離演算部150は、デジタルシグナルプロセッサで構成され、任意の測距装置1に発光信号が出力された時点から受光信号が入力されるまでの時間を算出し、当該測距装置1で検知された被測定物Rまでの距離を算出する。
【0074】
さらに、距離演算部150は、発光信号が出力された時点から導光部材17からの基準光に対応する受光信号が入力されるまでの時間を算出し、当該測距装置の基準補正距離を算出する。
【0075】
距離演算部150は、被測定物Rまでの距離から基準補正距離を減算した値を補正後の距離として算出し、距離記憶部160に記憶する。当該基準補正距離は、各測距装置1の発光部3や受光部5の部品ばらつき等を吸収するための値である。
【0076】
制御部170は、各測距装置1から入力された角度信号に基づいて各測距装置1の走査角度を把握するとともに、センサID信号に同期して距離演算部150から出力される演算終了信号を検知すると、距離記憶部160から距離を読み出して、走査角度と対応する距離とからなる二次元位置情報を対応する測距装置と関連付けて内部メモリであるRAMに格納する。
【0077】
制御部170は、ホストインタフェースを介してホストコンピュータ200から二次元位置情報の送信リクエストを受信すると、測距装置のIDと対応する二次元位置情報をホストコンピュータ200に転送する。
【0078】
図6に示すように、任意の測距装置1の走査角度検出部15から角度信号検知部110に一定周期Tのパルス状の角度信号が入力されると、角度信号検知部110はその立上りエッジを検知して、当該立上りエッジで当該測距装置1に対応するセンサID信号を出力する。
【0079】
発光信号出力部130が、センサID信号に対応する測距装置1に発光信号を出力すると、当該測距装置1の駆動回路3bは、5nsec.だけレーザダイオード3aを駆動して発光させる。
【0080】
当該測定光に対する反射光が受光部5で検知されると、受光信号入力部140を介して受光信号が距離演算部150に入力され、距離演算部150で距離演算が実行される。
【0081】
角度信号の周期Tが、距離演算のために要する時間T/n(nは測距装置1の台数)よりも十分に長い場合、距離演算部150には、(n−1)T/nだけのアイドル時間が発生する。この間にn−1台の測距装置1に対する距離演算が実行できる。
【0082】
例えば、測距装置1の最大検出距離が150mである場合には、距離演算のために要する時間は最大1μsec.となる。この値は、上述したTOF方式の距離算出式 D=Δt・C/2 から導かれる。
【0083】
角度信号の周期Tが18μsec.に設定される場合には、距離演算部150は、周期Tの間に18回の距離演算を実行することができる。つまり、マルチ信号処理装置100に最大18台の測距装置1を接続しても、周期Tの間に18台の測距装置1に対する距離演算を少なくとも一回は実行できるようになる。
【0084】
尚、レーザダイオード3aを18μsec.の周期で駆動する場合、IEC60825-1で定められたComparison with AEL multiplied by Cs for a single pulseの規定で、クラス1の安全性を確保しながらも、最も測定効率のよい発光間隔となる。
【0085】
つまり、本発明によるマルチ信号処理装置100は、距離演算部150のアイドル時間を利用して複数台の測距装置1に対する距離演算を実行するように構成されている。
【0086】
図7には、各測距装置1から出力される周期Tの角度信号がT/nずれる理想的な場合のタイミングチャートが示されている。測距装置(1)からの角度信号の立上りエッジで測距装置1に対する距離演算が終了すると、測距装置(2)からの角度信号の立上りエッジが入力され、測距装置(2)に対する距離演算が開始される。
【0087】
このようなタイミングでn台の測距装置に対する距離演算が、角度信号の一周期内でそれぞれ一回実行されるようになる。従って、各測距装置に高価な信号処理回路を個別に設ける必要がなくなるので、測距装置そのものを小型化できる。また、一つの信号処理回路を複数の測距装置で共用できるので、一台の測距装置当たりの信号処理回路のコストを数分の一から十数分の一に低減させることができるようになる。
【0088】
しかし、各測距装置1から角度信号がランダムに出力される場合には、図7に示す理想的な順序で距離演算が実行できなくなる。そこで、本発明によるマルチ信号処理装置100は、各測距装置から入力される発光要求信号のエッジを検知すると対応する測距装置の発光部を駆動する発光信号を出力する発光制御部と、発光制御した測距装置の受光部から受光信号を入力する入力処理部と、入力処理した受光信号に基づいて被測定物迄の距離を算出する演算処理部と、各処理部により実行される一連の処理を、任意の測距装置から入力される走査角度信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に実行させるジョブ管理部とを備えている。
【0089】
尚、上述した角度信号検知部110、角度信号記憶部120、発光信号出力部130によって発光制御部が構成され、上述した受光信号入力部140によって入力処理部が構成され、上述した距離演算部150によって演算処理部が構成されている。
【0090】
また、角度信号検知部110、角度信号記憶部120によって、ジョブ管理部が構成されている。さらに、本実施形態では、角度信号が発光要求信号として用いられているが、角度信号とは別に発光要求信号が測距装置1から出力されるように構成してもよい。
【0091】
ジョブ管理部には、各測距装置に対する一連の処理が複数の測距装置で競合すると、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理を優先させ、他の処理を遅延させる遅延処理部を備えている。遅延処理部も、角度信号検知部110、角度信号記憶部120によって実現されている。
【0092】
つまり、角度信号検知部110は、任意の測距装置1から出力された角度信号の立上りエッジを検知すると、当該測距装置1に対して発光信号を出力するべく、センサID信号をT/n時間(本実施形態では1μsec.)出力する。
【0093】
角度信号検知部110は、この間に他の測距装置から出力された角度信号の立上りエッジを検知すると、当該発光要求信号の実行を留保して、当該他の測距装置からの発光要求信号を角度信号記憶部120に記憶する。この間にさらに他の複数の測距装置から出力された角度信号の立上りエッジを検知する場合も、同様に他の複数の測距装置からの発光要求信号を、エッジを検知した順番に角度信号記憶部120に記憶する。
【0094】
角度信号検知部110は、クロック回路180から入力されるクロック信号に基づいて、距離演算に必要な1μsec.の時間の経過を認識すると、角度信号記憶部120に記憶した当該他の測距装置からの発光要求信号を読み出して、当該他の測距装置に対して発光信号を出力するべく、センサID信号を1μsec.出力する。角度信号記憶部120に複数の発光要求信号が格納されている場合には、エッジを検知した順番に1μsec.インタバルで各測距装置に発光信号を出力する。
【0095】
各測距装置に対するセンサID信号は、各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて設定される。図1の例では、コネクタCN1に接続された測距装置のIDが1に、コネクタCN2に接続された測距装置のIDが2に、コネクタCNnに接続された測距装置のIDがnにそれぞれ設定される。
【0096】
遅延処理部によって、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理が優先処理され、他の測距装置に対する処理が遅延されるので、処理に支障を来たすことがない。また、遅延された処理は、最先の発光要求信号の次のエッジを検知するまでに実行可能となるので、所定の精度を確保することも可能になる。
【0097】
各測距装置で検知された被測定物に対する角度と距離で示される二次元位置情報のうち、角度の最大誤差が角度信号の周期Tに対応する角度以内に収まるのである。
【0098】
複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジが同時に検知される場合には、例えば、小さいIDの測距装置から、或は大きいIDの測距装置から順番に処理を開始することも可能である。しかし、システムによっては重要な測距装置の処理を遅延させることが困難な場合もある。
【0099】
そのような場合に備えて、各測距装置に優先順位が設定されている。遅延処理部は、複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジを同時に検知すると、優先順位の高い測距装置に対する処理を優先し、他方の処理を遅延させるように構成されている。
【0100】
遅延処理部によって、優先順位の高い測距装置に対する処理が優先して実行されるようになり、重要な測距装置の処理が遅延するようなことが無くなる。
【0101】
また、各測距装置に優先順位が設定され、遅延処理部は、処理の遅延中に当該遅延中の測距装置より優先順位の高い測距装置から発光要求信号のエッジを検知すると、当該優先順位の高い測距装置に対する処理を優先させ、当該遅延中の測距装置に対する処理を、さらに遅延させるように構成されている。
【0102】
各測距装置に設定される優先順位は、各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて決定される。コネクタCN1に接続された測距装置の優先順位が最も高く、コネクタCN2に接続された測距装置の優先順位がその次の優先順位に設定され、コネクタCNnに接続された測距装置の優先順位が最下位に設定される。
【0103】
このように構成すれば、優先順位を設定するための別途の回路や、設定入力のためのソフトウェア等を設ける必要が無く、また、コネクタの接続位置を変更するというシンプルな操作で極めて容易に優先順位を変更することも可能になる。
【0104】
尚、各コネクタに付ける優先順位を予め設定し、制御部170のROMや角度信号記憶部120に記憶してもよい。
【0105】
角度信号検知部110が、任意の測距装置から出力された角度信号の立上りエッジを検知したときに、角度信号記憶部120に記憶された他の測距装置の発光要求信号の有無を検知し、角度信号記憶部120に他の測距装置の発光要求信号が記憶されていれば、これらの測距装置の中で最も優先順位が高い測距装置の発光要求信号に対するセンサID信号を出力するように構成することにより、当該優先処理が実現できる。
【0106】
これによって、優先順位の高い測距装置に対する処理が優先して実行されるようになり、優先順位の高い測距装置ほど精度の高い演算結果が得られるようになる。
【0107】
本実施形態では、各測距装置1の発光要求信号の周期が、全測距装置に対する一連の距離演算処理の合計の処理時間以上に設定されているため、任意の測距装置の発光要求信号の周期内で、全測距装置に対する一連の処理が完結でき、少なくとも発光要求信号の周期以内の誤差に抑制することができるようになる。
【0108】
また、発光要求信号の周期を長くすれば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数を増やすことができ、発光要求信号の周期を短くすれば、マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数が減るが、測距処理の間隔を短くして、走査角度に関する測距精度を向上させることができる。
【0109】
マルチ信号処理装置に接続される測距装置の台数に基づいて、発光要求信号の周期を可変設定できるように構成してもよい。例えば、制御部170が、マルチ信号処理装置100に接続されている測距装置の台数をカウントして、その結果に基づいて測距装置の走査速度を可変に制御すればよい。
【0110】
後述するように、制御部170は、各測距装置1から出力される角度信号をモニタして各測距装置1の走査速度を目標速度に制御するように構成されているため、角度信号の入力の有無を検知することにより、マルチ信号処理装置100に接続されている測距装置の台数をカウントすることが可能になる。
【0111】
以下、マルチ測距システムの処理手順を説明する。
図10に示すように、システムに電源が投入されると(SD1)、制御部170は、各測距装置に対してモータ駆動指令を出力する(SD2)。当該モータ駆動指令はPWM信号であり、目標速度に対応するデューティ比のパルス信号が各測距装置に出力される。
【0112】
制御部170は、各測距装置から角度信号が入力されると、当該角度信号が入力された入力ポートの配置に従って、各測距装置のIDを識別する(SD4)。上述のコネクタCN1,CN2,・・・,CNnと入力ポートの配置が対応しているため、入力ポートの配置に従ってIDが識別できる。
【0113】
制御部170は、角度信号の周期が目標周期Tとなるように、PWM信号のデューティ比をフィードバック制御し(SD5)、各測距装置の角度信号の周期が目標周期Tに収束すると(SD6)、角度信号検知部110に起動指令を出力する(SD7)。
【0114】
その後、角度信号検知部110から出力されるセンサID信号を入力し、距離演算部50から演算終了信号が入力されると、センサID信号に対応する測距装置の演算結果を距離記憶部160から読み出して、測距装置のID、走査角度、距離をRAMに格納し、ステップSD3に戻る。
【0115】
制御部170は、当該ルーチンに加えて、ホストコンピュータ200からの割り込み要求があると、RAMに格納した測距装置のID、走査角度、距離をホストコンピュータ200に送信する。
【0116】
図8に示すように、角度信号検知部110は、制御部170から起動指令を受信すると、各測距装置からの角度信号を入力して(SA1)、各測距装置のIDを識別する(SA2)。
【0117】
角度信号検知部110は、任意の測距装置からの角度信号の立上りエッジ、つまり発光要求信号を検知すると(SA3)、他の測距装置からの角度信号の立上りエッジと競合状態にあるか否かを判定する(SA4)。
【0118】
競合状態とは、上述したように、角度信号記憶部120に既に他の測距装置からの発光要求信号が格納されている場合、複数の測距装置から同時に角度信号の立上りエッジが検知される場合等をいう。
【0119】
競合している場合には優先順位を判断して(SA5)、優先順位の低い測距装置の発光要求信号を角度信号記憶部120にセーブし(SA6)、前回の距離演算が終了した所定周期、つまり1μsec.の周期であるか否かを判定し(SA7)、所定周期であれば優先順位の高い測距装置に対するセンサID信号を出力し(SA8)、ステップSA1に戻る。
【0120】
ステップSA3で任意の測距装置からの角度信号の立上りエッジを検知しない場合には、ステップSA5以下の処理を実行し、角度信号記憶部120に複数の測距装置からの発光要求信号が記憶されている場合には、その優先順位を判断して(SA5)、優先順位の高い測距装置からの発光要求信号に対してステップSA7の処理を実行する。
【0121】
図9(a)に示すように、発光信号出力部130は、角度信号検知部110から出力されたセンサID信号を検出すると(SB1)、IDに対応する測距装置に発光信号を出力し(SB2)、所定時間が経過すると(SB3)、当該発光信号をオフする(SB4)。
【0122】
当該発光信号を受信した測距装置の駆動回路3bは、当該発光信号をトリガーとして5nsec.の間、レーザダイオード3aを駆動する。
【0123】
図9(b)に示すように、受光信号入力部140は、角度信号検知部110から出力されたセンサID信号を検出すると、対応する測距装置からの受光信号が距離演算部150に入力されるように、経路スイッチであるアナログスイッチを切り替える(SC1)。
【0124】
距離演算部150は、アナログスイッチを介して入力される受光信号が入力されると、発光信号の出力時(当該センサID信号の切替時期であってもよい)から受光信号の立上り迄の時間、つまり測定光の遅延時間を算出して、被測定物までの距離を算出し(SC2)、その結果を距離記憶部160に記憶し(SC3)、制御部170に演算終了信号を出力する(SC5)。
【0125】
尚、詳述しないが、角度信号の周期、つまり、走査角度検出部15から出力される角度信号は、測定光が導光部材17に照射される基準位置でパルスが欠落するように構成されている。
【0126】
角度信号検知部110は、このパルスの欠落時期を判別して、基準補正距離算出時期であると判断すると、角度信号の立上り時期であると判断して、センサID信号を出力するとともに、距離演算部150にその旨の信号を出力するように構成されている。
【0127】
距離演算部150はこれに対応して距離演算した結果を基準補正距離として距離記憶部160に格納するように構成されている。そして、距離演算部150はステップSC2で距離演算する度に算出した距離から基準補正距離を減算した距離を補正後の距離として距離記憶部160に格納するように構成されている。
【0128】
以下、別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、角度信号の周期が18μsec.に設定され、距離演算が1μsec.で終了するように設定されているため、最大18台の測距装置がマルチ信号処理装置100に接続可能なシステムを説明したが、角度信号の周期、距離演算の所要時間1μsec.は例示に過ぎず、本発明がこのような数値範囲に制限されるものではない。
【0129】
最大測距範囲が150mに設定された場合に、距離演算が1μsec.を要するのであるが、最大測距範囲が150mより短ければ、距離演算が1μsec.未満で終了する。例えば、最大測距範囲が75mであれば、距離演算が0.5μsec.となる。この場合、角度信号の周期が18μsec.であれば、その間に各測距装置で二回の距離演算を行うことができる。また、この場合、角度信号の周期を9μsec.に設定すれば、角度信号の一周期で各測距装置に対する距離演算を一回ずつ実行することができる。
【0130】
つまり、マルチ測距システムの用途に応じて定まる最大測距範囲に基づいて、角度信号の周期をフレキシブルに可変設定することができる。例えば、ホストコンピュータ200からマルチ信号処理装置100の制御部170に角度信号の周期を規定する制御情報を送信し、制御部170がモータ制御用のPWM信号により各測距装置の角度信号の周期を可変に設定すればよい。
【0131】
また、マルチ信号処理装置100に接続される特定の測距装置の角度信号の周期を、他の測距装置の角度信号の周期より長くなるように設定し、或は短くなるように設定してもよい。
【0132】
走査角度の高い分解能を要求されない特定の測距装置に対して、その角度信号の周期を他の測距装置の角度信号の周期の2倍に設定すれば、当該特定の測距装置は、他の測距装置に対する距離演算周期の2倍の周期で距離演算が実行される。
【0133】
走査角度の高い分解能が要求される特定の測距装置に対して、その角度信号の周期を他の測距装置の角度信号の周期の1/2倍に設定すれば、当該特定の測距装置は、他の測距装置に対する距離演算周期の1/2倍の周期で距離演算が実行される。
【0134】
この場合も、上述と同様に、ホストコンピュータ200からマルチ信号処理装置100の制御部170に角度信号の周期を規定する制御情報を送信し、制御部170がモータ制御用のPWM信号により各測距装置の角度信号の周期を可変に設定すればよい。
【0135】
また、マルチ信号処理装置100に接続されている測距装置の台数によって、角度信号の周期を異ならせてもよい。
【0136】
上述した実施形態では、TOF方式の測距装置を例に説明したが、本発明に用いられる測距装置はAM方式が採用される測距装置であってもよい。
【0137】
この場合、レーザダイオード3aの出力光を正弦波で変調した測定光を数μsの間、例えば3μsの間、出力するバースト制御を実行することが好ましい。測定光を間歇的に出力するバースト制御を実行すると、発光時の強度を強くしながらも平均強度が小さくなるように設定でき、人体の目への安全性を確保できるからである。
【0138】
AM方式を採用する場合には、測距装置1から出力される受光信号に測定光及び反射光に対する受光信号が含まれるように構成するとともに、距離演算部150に、測定光と反射光の位相差を求める位相差検出部と、測定光の立上がりから反射光の立上がりまでの遅延時間に基づいて、変調された正弦波の波数を検出する波数検出部とを備え、波数検出部で検出した波数と位相差検出部により検出された位相差に基づいて測定対象物までの距離を算出するように構成すればよい。
【0139】
つまり、位相差検出部により、測定光と反射光の位相差が求められ、波数検出部により、測定光の出力からから反射光の検出までの遅延時間に基づいて被測定物までの距離が算出される。このとき算出された距離に基づいて変調信号の波長が求められる。
【0140】
そして、位相差検出部で求められた位相差に基づいて、変調信号の一波長内における被測定物までの仮の距離が算出され、当該仮の距離に波数検出部で求められた波数に対応する距離が加算さる結果、測定対象物までの正確な距離が算出される。
【0141】
従って、測定対象物までの距離が変調信号の一波長以上に及ぶ場合であっても、波数検出部により求められる波数が判明するので正確な距離が算出される。
【0142】
上述した実施形態は、本発明の一実施例であり、走査式測距装置の具体的構造、信号処理部23の具体的な回路構成等は、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0143】
上述のマルチ測距システムは、二足歩行ロボットや、産業機械ロボット等の各種のロボット、或は、無人車の視覚認識センサとしてのナビゲーション用センサに好適に利用される。また、ドアの開閉センサや危険な装置に人や物が近づくのを検出し、機械を安全に停止する安全センサ、車の形状を検出して車種の判別及び通過する車の数をカウントするETCシステム用センサにも好適に利用される。さらには、人を検出して人数をカウントして混み具合や、人の流れを検出する人体検出用センサ、監視領域への侵入者の有無を検出する監視センサ等にも好適に利用される。
【符号の説明】
【0144】
1:測距装置
3:発光部
3a:光源(レーザダイオード)
3b:駆動回路
5:受光部
5a:受光素子(アバランシェフォトダイオード)
5b:増幅回路
4:走査部
11:モータ
15:走査角度検出部
16:モータ制御回路
100:マルチ信号処理装置
110:角度信号検知部
120:角度信号記憶部
130:発光信号出力部
140:受光信号入力部
150:距離演算部
160:距離記憶部
170:制御部
110,120,130:発光制御部
110,120:ジョブ管理部(遅延処理部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光を出力する発光部と、前記発光部から出力された測定光を測定対象空間に偏向走査する走査部と、前記測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を検出して受光信号を出力する受光部とを備えた複数の測距装置と接続され、
各測距装置から入力される発光要求信号のエッジを検知すると対応する測距装置の発光部を駆動する発光信号を出力する発光制御部と、発光制御した測距装置の受光部から受光信号を入力する入力処理部と、入力処理した受光信号に基づいて被測定物迄の距離を算出する演算処理部と、各処理部により実行される一連の処理を、任意の測距装置から入力される走査角度信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に実行させるジョブ管理部とを備えているマルチ信号処理装置。
【請求項2】
前記ジョブ管理部に、前記一連の処理が複数の測距装置で競合すると、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理を優先させ、他の処理を遅延させる遅延処理部を備えている請求項1記載のマルチ信号処理装置。
【請求項3】
各測距装置に優先順位が設定され、前記遅延処理部は、複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジを同時に検知すると、優先順位の高い測距装置に対する処理を優先し、他方の処理を遅延させる請求項2記載のマルチ信号処理装置。
【請求項4】
各測距装置に優先順位が設定され、前記遅延処理部は、処理の遅延中に当該遅延中の測距装置より優先順位の高い測距装置から発光要求信号のエッジを検知すると、当該優先順位の高い測距装置に対する処理を優先させ、当該遅延中の測距装置に対する処理をさらに遅延させる請求項2または3記載のマルチ信号処理装置。
【請求項5】
各測距装置に設定される優先順位は、各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて決定される請求項3または4記載のマルチ信号処理装置。
【請求項6】
各測距装置の発光要求信号の周期が、全測距装置に対する前記一連の処理の処理時間以上に設定されている請求項1から5の何れかに記載のマルチ信号処理装置。
【請求項7】
前記ジョブ管理部は一連の処理を開始する測距装置のID信号を出力するID信号出力部を備え、前記発光制御部は当該ID信号に基づいて対応する測距装置に発光信号を出力するデコーダを備え、前記入力処理部は当該ID信号に基づいて対応する測距装置からの受光信号を前記演算処理部に出力するスイッチ回路を備えている請求項1から6の何れかに記載のマルチ信号処理装置。
【請求項8】
各測距装置から入力される発光要求信号が走査部の走査角度を示す走査角度信号で構成され、当該走査角度信号に基づいて各測距装置の走査部の走査速度を目標速度に制御する走査速度制御部を備えている請求項1から7の何れかに記載のマルチ信号処理装置。
【請求項9】
前記走査速度制御部は、走査速度が目標速度に制御された測距装置に対して前記一連の処理が実行されるように前記ジョブ管理部を起動する請求項8記載のマルチ信号処理装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れかに記載のマルチ信号処理装置に接続され、前記マルチ信号処理装置から入力される発光信号に基づいて測定光を出力する発光部と、前記発光部から出力された測定光を測定対象空間に偏向走査する走査部と、前記測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を検出して受光信号を前記マルチ信号処理装置に出力する受光部とを備えている測距装置。
【請求項11】
請求項1から9の何れかに記載のマルチ信号処理装置と、請求項10記載の測距装置とを備え、前記マルチ信号処理装置に前記測距装置が複数台接続されているマルチ測距システム。
【請求項1】
測定光を出力する発光部と、前記発光部から出力された測定光を測定対象空間に偏向走査する走査部と、前記測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を検出して受光信号を出力する受光部とを備えた複数の測距装置と接続され、
各測距装置から入力される発光要求信号のエッジを検知すると対応する測距装置の発光部を駆動する発光信号を出力する発光制御部と、発光制御した測距装置の受光部から受光信号を入力する入力処理部と、入力処理した受光信号に基づいて被測定物迄の距離を算出する演算処理部と、各処理部により実行される一連の処理を、任意の測距装置から入力される走査角度信号の一周期内で、各測距装置に対して順番に実行させるジョブ管理部とを備えているマルチ信号処理装置。
【請求項2】
前記ジョブ管理部に、前記一連の処理が複数の測距装置で競合すると、最先の発光要求信号のエッジを検知した測距装置に対する処理を優先させ、他の処理を遅延させる遅延処理部を備えている請求項1記載のマルチ信号処理装置。
【請求項3】
各測距装置に優先順位が設定され、前記遅延処理部は、複数の測距装置から入力される発光要求信号のエッジを同時に検知すると、優先順位の高い測距装置に対する処理を優先し、他方の処理を遅延させる請求項2記載のマルチ信号処理装置。
【請求項4】
各測距装置に優先順位が設定され、前記遅延処理部は、処理の遅延中に当該遅延中の測距装置より優先順位の高い測距装置から発光要求信号のエッジを検知すると、当該優先順位の高い測距装置に対する処理を優先させ、当該遅延中の測距装置に対する処理をさらに遅延させる請求項2または3記載のマルチ信号処理装置。
【請求項5】
各測距装置に設定される優先順位は、各測距装置の信号線が接続されるコネクタの接続位置に基づいて決定される請求項3または4記載のマルチ信号処理装置。
【請求項6】
各測距装置の発光要求信号の周期が、全測距装置に対する前記一連の処理の処理時間以上に設定されている請求項1から5の何れかに記載のマルチ信号処理装置。
【請求項7】
前記ジョブ管理部は一連の処理を開始する測距装置のID信号を出力するID信号出力部を備え、前記発光制御部は当該ID信号に基づいて対応する測距装置に発光信号を出力するデコーダを備え、前記入力処理部は当該ID信号に基づいて対応する測距装置からの受光信号を前記演算処理部に出力するスイッチ回路を備えている請求項1から6の何れかに記載のマルチ信号処理装置。
【請求項8】
各測距装置から入力される発光要求信号が走査部の走査角度を示す走査角度信号で構成され、当該走査角度信号に基づいて各測距装置の走査部の走査速度を目標速度に制御する走査速度制御部を備えている請求項1から7の何れかに記載のマルチ信号処理装置。
【請求項9】
前記走査速度制御部は、走査速度が目標速度に制御された測距装置に対して前記一連の処理が実行されるように前記ジョブ管理部を起動する請求項8記載のマルチ信号処理装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れかに記載のマルチ信号処理装置に接続され、前記マルチ信号処理装置から入力される発光信号に基づいて測定光を出力する発光部と、前記発光部から出力された測定光を測定対象空間に偏向走査する走査部と、前記測定対象空間に存在する被測定物からの反射光を検出して受光信号を前記マルチ信号処理装置に出力する受光部とを備えている測距装置。
【請求項11】
請求項1から9の何れかに記載のマルチ信号処理装置と、請求項10記載の測距装置とを備え、前記マルチ信号処理装置に前記測距装置が複数台接続されているマルチ測距システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−214926(P2011−214926A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81982(P2010−81982)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000242600)北陽電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000242600)北陽電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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