説明

マーキング用粘着シート

【課題】特に耐候性に優れると共に、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性、所望の光沢度、延伸時における耐クラック性などを有し、例えば自動車用などとして好適に用いられるマーキング用粘着シートを提供する。
【解決手段】基材フィルムの一方の面に粘着剤層を有すると共に、他方の面に、(A)重量平均分子量が15,000〜80,000のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂と、(B)ポリイソシアネート系化合物と、上記(A)成分の固形分100質量部に対して、(C)ルチル型酸化チタン粒子1〜15質量部を含むコーティング剤を用いて形成されてなる、架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層を有するマーキング用粘着シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマーキング用粘着シートに関し、さらに詳しくは、特に耐候性に優れると共に、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性、所望の光沢度、延伸時における耐クラック性などを有し、例えば自動車用などとして好適に用いられるマーキング用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着シート(粘着テープも含む。以下同様)は、多くの分野において幅広く用いられるようになってきた。例えば、包装・結束用、事務・家庭用、接合用、塗装マスキング用、表面保護用、シーリング用、防食・防水用、電気絶縁用、電子機器用、医療・衛生材料用、表示・標識用、装飾用、ラベル用などとして使用されている。
一方、最近、前記用途の中で表示・標識用粘着シートや装飾用粘着シートなどのマーキング用粘着シートの分野においては、塗装製品の生産性の向上や製造コストの低減を図るために、塗装代替用としての粘着シートの需要が増加してきている。例えば表示・標識用として、危険表示用テープ、ラインテープ、マーキングテープなどが用いられ、また装飾用として、看板、ショーウインドや建造物の内外装、マーキングシート・ステッカーによる車やオートバイの装飾、自動車ドアサッシュ部の装飾などに粘着シートが用いられている。
このような塗装代替用粘着シートが適用される被着体としては様々なものがあり、例えば金属板、塗装金属板、ガラス、セラミックス、石材、木質材料、プラスチック、紙類などが挙げられる。
塗装代替用粘着シートにおいては、その貼付製品は屋外で使用されることが多く、基材及び粘着剤共に、耐候性に優れることが必要であり、粘着剤としては、通常耐候性が良好なアクリル系粘着剤が用いられる。一方、基材は、耐候性に優れると共に、収縮率が小さく、かつ貼付作業性の面からは、あまり硬質でないものが好ましく、例えば塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ四フッ化エチレン、熱可塑性ポリウレタンなどからなるフィルム基材が用いられている。
ところで、自動車に用いられるマーキング用粘着シートに対しては、耐候性以外に、基材の光沢度、耐擦傷性、耐薬品浸漬性(耐ガソリン浸漬性)などが要求されるものの、従来のマーキング用粘着シートにおいては、これらを同時に満たすことは困難であった。
一方、ゴルフボール分野においては、耐衝撃・耐摩耗性を有すると共に、耐候性にも優れるゴルフボール用塗料組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この塗料組成物は、マーキング用粘着シートにはゴルフボールよりも長期間の耐候性が求められるため、耐候性が不十分であった。
【特許文献1】特開2003−253201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、特に耐候性に優れると共に、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性、所望の光沢度、延伸時における耐クラック性などを有し、例えば自動車用などとして好適に用いられるマーキング用粘着シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記の好ましい性質を有するマーキング用粘着シートを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、基材フィルムの表面側に、特定のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート系化合物、好ましくは前記ポリイソシアネート系化合物の特定の変性体と、特定の割合のルチル型酸化チタン粒子とを含む、架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層を有する粘着シートにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]基材フィルムの一方の面に粘着剤層を有すると共に、他方の面に、(A)重量平均分子量が15,000〜80,000のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂と、(B)ポリイソシアネート系化合物と、上記(A)成分の固形分100質量部に対して、(C)ルチル型酸化チタン粒子1〜15質量部を含むコーティング剤を用いて形成されてなる、架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層を有することを特徴とするマーキング用粘着シート、
[2](A)成分のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂のガラス転移温度が42〜60℃である上記[1]項に記載のマーキング用粘着シート、
[3](C)ルチル型酸化チタン粒子の平均粒径が、10〜100nmである上記[1]又は[2]項に記載のマーキング用粘着シート、
[4](B)成分のポリイソシアネート系化合物が、脂肪族、脂環式、芳香族及び芳香脂肪族イソシアネート、並びにこれらのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体及び弾性変性ポリイソシアネートの中から選ばれる少なくとも1種である上記[1]〜[3]項のいずれかに記載のマーキング用粘着シート、
[5](B)成分のイソシアネート基と(A)成分の水酸基とのモル比[NCO]/[OH]が0.5〜1.5である上記[1]〜[4]項のいずれかに記載のマーキング用粘着シート、及び
[6]架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層の厚さが、1〜8μmである上記[1]〜[5]項のいずれかに記載のマーキング用粘着シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、特に耐候性に優れると共に、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性、所望の光沢度、延伸時における耐クラック性などを有し、例えば自動車用などとして好適に用いられるマーキング用粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のマーキング用粘着シートは、基材フィルムの一方の面に粘着剤層を有すると共に、他方の面に、(A)重量平均分子量が15,000〜80,000のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂と、(B)ポリイソシアネート系化合物と、上記(A)成分の固形分100質量部に対して、(C)ルチル型酸化チタン粒子1〜15質量部を含むコーティング剤を用いて形成されてなる、架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層を有することを特徴とする。
【0007】
[基材フィルム]
本発明のマーキング用粘着シートにおいて用いられる基材フィルムとしては、該粘着シートが塗装代替用として使用されるため、収縮率が小さく、かつ貼付作業性の面から、あまり硬質でないものが好ましい。したがって、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートや非晶質ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物などを用いて得られた基材フィルムを用いることができる。
【0008】
(表面処理)
これらの基材フィルムは、その上に設けられる粘着剤層やアクリルウレタン系コーティング層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、片面又は両面にプライマー処理を施したものも用いることができる。
この基材フィルムの厚さは、粘着シートの用途にもよるが、通常10〜300μmの範囲、好ましくは30〜200μmの範囲で選定される。
【0009】
[粘着剤層]
本発明のマーキング用粘着シートにおいて、前記基材フィルムの一方の面に設けられる粘着剤層を形成する粘着剤としては特に制限はなく、従来マーキング用粘着シートの粘着剤層に慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤などを用いることができる。これらの粘着剤は、エマルション型、溶剤型、無溶剤型のいずれであってもよい。粘着剤層の厚さは、通常1〜300μm、好ましくは5〜100μm程度である。
前記各種の粘着剤の中では、耐候性などの面から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0010】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、重量平均分子量50万〜200万程度、好ましくは70万〜170万のアクリル系樹脂を含み、かつ架橋処理されたアクリル系粘着剤からなる層であることが好適である。重量平均分子量が上記範囲にあれば、粘着力及び保持力のバランスがとれたマーキング用粘着シートが得られる。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0011】
<アクリル系樹脂>
前記アクリル系粘着剤に含まれるアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が用いられる。この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、活性水素をもつ官能基を有する単量体と、所望により用いられる他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
一方活性水素をもつ官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
また、所望により用いられる他の単量体の例としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該アクリル系粘着剤において、樹脂成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
本発明においては、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
<架橋剤、その他添加成分>
該アクリル系粘着剤としては、架橋処理されたものが好ましく、この架橋処理に用いられる架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物やエポキシ化合物が好ましく用いられる。
本発明においては、この架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋剤の種類にもよるが、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対し、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部の範囲で選定される。
また、このアクリル系粘着剤には、所望により粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、シランカップリング剤、充填剤などを添加することができる。
【0015】
[コーティング剤]
本発明のマーキング用粘着シートにおいて、基材フィルムの前記粘着剤層とは反対側の面に設けられるアクリルウレタン系コーティング層は、(A)ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂と、(B)ポリイソシアネート系化合物と、(C)ルチル型酸化チタン粒子を含むコーティング剤を用いて形成されてなる架橋されたコーティング層である。
((A)ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂)
当該コーティング剤において、(A)成分として用いられるポリエステル変性アクリルポリオール樹脂は、アクリル系重合体からなる主鎖とポリエステルからなる側鎖から構成されている。
当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂においては、側鎖のポリステル部分の含有量は、コーティング層の耐擦過性、延伸時の耐クラック性、耐汚染性、耐候性などの観点から、2〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0016】
また、当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂は、重量平均分子量Mwが15,000〜80,000の範囲にあることを要す。重量平均分子量が上記の範囲にあれば、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性、延伸時における耐クラック性などが良好となる。好ましい重量平均分子量は16,000〜75,000、より好ましくは17,000〜70,000である。また、ガラス転移温度が42〜60℃の範囲にあることが好ましい。このガラス転移温度が上記範囲にあれば耐薬品擦過性などが良好となる。より好ましいガラス転移温度は42〜55℃である。
なお、この重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の値であり、ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)装置を用いて測定した値である。
さらに、水酸基価が30〜180mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。この水酸基価が30mgKOH/g以上であれば十分な架橋が可能となり、コーティング層の耐薬品擦過性や耐薬品浸漬性が良好となる。また、水酸基価が180mgKOH/g以下であれば、延伸時における耐クラック性が良好となる。より好ましい水酸基価は50〜150mgKOH/gである。
なお、前記水酸基価は、JIS K 0070 7.1に準じて測定した値である。
【0017】
当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂の主鎖であるアクリル系重合体の構造に特に制限はないが、当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂を構成する全モノマー単位のうち、以下に述べるアクリル系モノマー由来の繰り返し単位が50質量%以上であることが好ましい。また、主鎖を構成するアクリル系モノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、また、アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとを共重合させたものであってもよい。
当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂の側鎖であるポリエステル部分は、一般式(I)及び/又は(II)
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ炭素数1〜12のアルキレン基、n及びmは、それぞれ1〜20の整数を示す。)
で表される構造を有することが好ましい。
【0018】
当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂は、例えば(1)アクリル系重合体の主鎖にラクトンなどの側鎖を構成する成分を付加させたもの、(2)ポリエステルが付加されたアクリル系モノマー(以下、ポリエステル含有アクリル系モノマーと略記する。)を単独重合させたもの、(3)ポリエステル含有アクリル系モノマーと他のアクリル系モノマーとを共重合させたものなどを挙げることができる。
本発明においては、当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂を、少なくとも2種のアクリル系モノマーから構成される共重合体とすることが好ましい。また、アクリル系モノマーとして、ポリエステル含有アクリル系モノマーを含んでいることが好ましい。
本発明においては、ポリエステル含有アクリル系モノマーの量を、コーティング層の耐薬品擦過性、延伸時の耐クラック性などの観点から、モノマーの全質量に対して5〜50質量%とすることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。
【0019】
本発明においては、ポリエステル含有アクリル系モノマーとして、水酸基末端ラクトン変性(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。水酸基末端ラクトン変性(メタ)アクリレートとしては、例えば、水酸基含有アクリル系モノマーにラクトン化合物を触媒を用いて1〜10モル程度開環付加させたものが挙げられる。ラクトン化合物の例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンなどを挙げることができる。具体的には、ダイセル化学工業株式会社製の「プラクセルFMシリーズ(プラクセルFM−3等)」(カプロラクトン変性メタクリレート)、「プラクセルFAシリーズ」(カプロラクトン変性アクリレート)等を用いることができる。
【0020】
前記ポリエステル含有アクリル系モノマー以外のアクリル系モノマーとして、その他のアクリル系モノマーを用いてもよく、かかるアクリル系モノマーの種類に関しては特に制限はない。例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール化アクリルアミド、カーボネート変性メタクリレート[ダイセル化学工業株式会社製、「HEMAC」]等の水酸基を含有するアクリルモノマー類を用いることもできる。
【0021】
当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂には、前記のポリエステル含有アクリル系モノマー及びその他のアクリル系モノマー以外に、これらと共重合可能な不飽和モノマーを、モノマー成分として含んでいてもよい。このような不飽和モノマーとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系化合物類、ビニルメチルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルベンジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等のビニルエーテル系化合物類、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のエチレン性不飽和二重結合含有芳香族化合物類、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類、マレイン酸ジアルキル等のマレイン酸ジエステル類、フマル酸ジアルキル等のフマル酸ジエステル類、イタコン酸ジメチル等のイタコン酸ジエステル類、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン等の複素環ビニル化合物類、アリルアルコール、グリセロールモノアリルエーテル、グリセロールジアリルエーテル等のアリル化合物、等が挙げられる。
【0022】
さらに、分子内に紫外線吸収性ユニットを有するアクリル系モノマー、分子内に酸化防止性ユニットを有するアクリル系モノマー、分子内に帯電防止性ユニットを有するアクリル系モノマーなどを用いることができる。これらのアクリル系モノマーを用いることにより、コーティング層に、良好な紫外線吸収能、酸化防止能、帯電防止能を付与することができる。
本発明においては、当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂は、特に延伸時の耐クラック性、耐候性の点から、ポリエステル含有アクリルモノマー、メチル(メタ)アクリレート及び水酸基を含有する(メタ)アクリレートから構成される共重合体が好ましく、カプロラクトン変性メタクリレート、メチルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートから構成される共重合体であることが特に好ましい。
【0023】
当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂は、例えば前記のモノマーを、有機過酸化物化合物、アゾ系化合物、過硫酸塩などのラジカル重合開始剤を用い、従来公知の重合方法、例えば溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などによって製造することができる。
溶液重合法により、当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂を製造する場合には、適当な溶媒中において、油溶性の有機過酸化物やアゾ系化合物などのラジカル重合開始剤の存在下に、前記の各モノマーを共重合させればよい。
この際、重合溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類など、公知の溶媒を使用することができる。また、これらの溶媒は単独で、又は2種以上混合して用いることができる。重合開始剤の使用量は、特に制限はないが、モノマー全量に対し、0.05〜2質量%程度である。
一方、乳化重合法により、当該ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂を製造する場合には、必要に応じ乳化剤を用いて単量体成分を乳化させ、水溶性の有機過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸塩などの重合開始剤の存在下に、共重合させればよい。
このようにして得られたエステル変性アクリルポリオール樹脂は、重量平均分子量が15,000〜80,000の範囲にあることが必要である。また、ガラス転移温度が42〜60℃の範囲にあることが好ましい。
【0024】
((B)ポリイソシアネート系化合物)
当該コーティング剤において、(B)成分として用いるポリイソシアネート化合物は、前述した(A)成分のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂を架橋して、架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層を形成させるための硬化剤として機能する。
このポリイソシアネート系化合物としては、2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はない。具体的には、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4'−ジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシジフェニル−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。その他、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、2,4,4−トリイソシアネートジフェニルエーテルなどのトリイソシアネート類、4個のイソシアネート基を有するテトライソシアネート類が挙げられる。
【0025】
また、上記したイソシアネート類のアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、弾性変性ポリイソシアネート等のいわゆる変性ポリイソシアネートも使用できる。
前記アダクト変性体とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物と、前記各種のイソシアネート類との反応物である。
また、前記弾性変性ポリイソシアネートとは、前記のトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート類をモノマーとして用い、これに弾性を有する活性水素含有化合物をウレタン反応させ、NCO末端のプレポリマーとしたものである。
イソシアネート類を弾性変性するために用いられる弾性を有する活性水素含有化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール又はこれらのコポリオールなどが挙げられる。
【0026】
本発明においては、(B)成分として、前記ポリイソシアネート系化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、延伸時の耐クラック性の観点から、ジイソシアネート類のアダクト変性体、イソシアヌレート変性体及び弾性変性ポリイソシアネートが好適である。
また、前記(A)成分と(B)成分の配合割合については、(B)成分のイソシアネート基と(A)成分の水酸基とのモル比[NCO]/[OH]が0.5〜1.5の範囲にあることが好ましい。該モル比が0.5以上であれば未反応の水酸基が少なくなり、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性が良好となり、一方1.5以下であれば過剰のイソシアネート基が少なくなり、コーティング層にべた付きが残りにくい上、延伸時における耐クラック性が良好となる。より好ましい[NCO]/[OH]は0.8〜1.2である。
【0027】
((C)ルチル型酸化チタン粒子)
当該コーティング剤においては、(C)成分として、ルチル型酸化チタン粒子が配合される。
酸化チタン粉体は、古くから紫外線散乱剤として知られ、化粧品分野で用いられてきた。また近年、その光触媒能が注目され、応用開発が積極的になされている。
酸化チタン結晶には、アナターゼ型、ブルッカイト型及びルチル型があり、光触媒能は、アナターゼ型が最も高く、ルチル型が最も低い。光触媒能の高い酸化チタン粒子を有機コーティング層に含有させた場合、該酸化チタン粒子の光触媒能により、有機コーティング層の劣化が激しくなる。
したがって本発明のマーキング用粘着シートにおいては、耐候性を向上させるために、当該コーティング剤中に、紫外線散乱能が高く、かつ光触媒能が最も低いルチル型酸化チタン粒子を含有させる。
酸化チタンの粒子径と紫外線散乱能の理論計算から、波長300nmの紫外線防御に最適な粒子径は、およそ30〜70nmであり、波長400nmでは、およそ100〜150nmであることが知られている[J.Coatings Tech.,62(789),95(1990)]。
本発明においては、ルチル型酸化チタン粒子として、平均粒径が、好ましくは10〜100nm、より好ましくは20〜70nm、さらに好ましくは20〜50nmの範囲にあるものを用いる。ルチル型酸化チタン粒子の平均粒径が上記の範囲にあれば、得られるマーキング用粘着シートの耐候性が向上する。なお該平均粒径は、レーザ回折散乱方式で測定することができる。
また、このルチル型酸化チタン粒子の配合量は、前記(A)成分のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂の固形分100質量部に対して、1〜15質量部である。ルチル型酸化チタン粒子の配合量が上記の範囲にあれば、形成される架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層は、紫外線遮蔽能が充分に発揮され、マーキング用粘着シートの耐候性が向上すると共に、該コーティング層の他の性能が低下するのを抑制することができる。好ましい配合量は2〜9質量部、より好ましい配合量は2〜7質量部である。
【0028】
(その他添加成分)
当該コーティング剤には、形成される架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層の表面光沢度を調節するために、必要に応じ艶消し用として、平均粒径1〜5μm程度の無機粒子及び/又は有機粒子を含むことができる。
この粒子の平均粒径が上記範囲にあれば、きめ細かい塗膜表面を有し、かつ艶消し効果を有効に発揮することができる。
無機粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ砂、シラスバルーンなどを用いることができ、有機粒子としては、例えばポリエチレン粒子、ポリスチレン粒子、アクリル系樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ベンゾグアナミン/ホルムアルデヒド縮合物粒子、ベンゾグアナミン/メラミン/ホルムアルデヒド縮合物粒子、尿素系樹脂粒子、さらにはワックス粒子などを用いることができる。
本発明においては、これらの粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層中の前記艶消し用粒子の含有量は、所望する表面光沢度にもよるが、固形分濃度で通常0.05〜10質量%程度、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0029】
(コーティング剤の調製)
当該コーティング剤は、溶剤型、エマルション型のいずれであってもよいが、本発明においては溶剤型が好ましい。
当該コーティング剤は、溶剤型の場合、適当な溶媒中に、前記(A)成分のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂、前記(B)成分のポリイソシアネート系化合物、(C)成分のルチル型酸化チタン粒子及び必要に応じて、前記艶消し用の無機粒子や有機粒子、各種添加剤を加え、均一に溶解又は分散させることにより調製することができる。
前記溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類など、公知の溶媒を使用することができる。また、これらの溶媒は単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
また、各種添加剤としては例えば添加型(低分子量型)の紫外線吸収剤や酸化防止剤や帯電防止剤、レベリング剤、充填剤、着色剤、加水分解防止剤、消泡剤などを含有させることができる。
塗工に適した濃度としては、固形分濃度で、通常5〜50質量%程度、好ましくは10〜40質量%である。
【0030】
[コーティング層]
本発明の粘着シートにおいて、基材フィルムの粘着剤層とは反対側の表面に形成される架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層は、前記コーティング剤を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用い、基材フィルムの粘着剤層とは反対側の面に塗布し、30〜80℃程度の温度で30秒〜5分間程度加熱乾燥処理することにより、形成することができる。
この架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層の厚さに特に制限はないが、通常1〜8μm程度、好ましくは3〜6μmである。
【0031】
[剥離シート]
本発明のマーキング用粘着シートにおいては、粘着剤層に剥離シートを貼付することができる。この剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、上質紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などを用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。該剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜250μm程度である。
このように粘着剤層に剥離シートを貼付する場合には、該剥離シートの剥離剤層面に粘着剤を塗布して、所定の厚さの粘着剤層を設けたのち、これを基材フィルムの一方の面に貼付し、該粘着剤層を転写し、剥離シートはそのまま貼り付けた状態にしておいてもよい。
【0032】
本発明のマーキング用粘着シートは、特に耐候性に優れると共に、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性、延伸時における耐クラック性及び所望の光沢度を有し、例えば表示・標識用として、危険表示用テープ、ラインテープ、マーキングテープなどに用いられ、また装飾用として、看板、ショーウインドや建造物の内外装、マーキングシート・ステッカーによる車やオートバイの装飾、自動車ドアサッシュ部の装飾などに好適に用いられる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、マーキング用粘着シートの性能は、以下に示す方法に従って評価した。
(1)耐候性
JIS D 0205自動車部品の耐候性試験方法に基づき、5.4促進耐候性試験を実施し、下記の評価を行った。
7.3 60°鏡面光沢度における光沢の変化(光沢残存率γ(%)):2000時間で75%以上が合格である。
7.4 変退色ΔE*ab:2000時間で2以下が合格である。
7.7 その他の外観の変化
なお、促進耐候性試験は、いずれも1000時間及び2000時間行った。
(2)耐クラック性
延伸時の外観(クラック発生の有無など)を、下記の評価基準に従って評価した。
なお、延伸は、剥離シートを剥がした25mm×100mmの粘着シートの長手方向を、オリエンテック社製、「TENSILON RTA−100」を用いて行った。
評価基準
○:10%延伸時においてクラックの発生なし
△:5%延伸時においてクラックの発生なし
×:5%延伸時においてクラックの発生
(3)耐薬品擦過性
綿布に、イソプロピルアルコール(IPA)、コンパウンド入りWAX(WAX)及びケロシンをそれぞれ浸み込ませたものを用い、荷重4.9Nにてマーキング用粘着シートの架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層表面を10往復して耐擦過試験を行い、試験前後の60°鏡面光沢度の変化率を求め、下記の評価基準で評価した。
○:試験前後で60°鏡面光沢度の変化率が10%未満、試験後に傷が入らない
△:試験前後で60°鏡面光沢度の変化率が10〜20%未満、試験後にわずかに傷が入る
×:試験前後で60°鏡面光沢度の変化率が20%以上、試験後に傷が入る
(4)60°鏡面光沢度
日本電色工業(株)製の光沢計「VG2000」を使用し、JIS Z 8741に準拠して60°鏡面光沢度を測定した。
(5)耐薬品浸漬性
23℃、50%RH下において、剥離シートを剥がした25mm×50mmの粘着シートをメラミン樹脂塗装板に貼付し、同環境下にて24時間放置後、ガソリン中へ30分間浸漬した後の外観を目視観察し、下記の判定基準に従って評価した。
○:外観変化なし
△:僅かにくもり発生又は僅かにコーティング層の剥がれあり
×:明らかな外観異常あり
【0034】
また、各例で用いたポリエステル変性アクリルポリオール樹脂の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)及び酸化チタンの平均粒径は、下記の方法により測定した。
<重量平均分子量(Mw)>
GPC法
測定機器:「HLC−8120」東ソー社製
カラム:TSK−GelSuper HM−MX1
カラム温度:40℃
展開溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
流速:0.6mL/min
<ガラス転移温度(Tg)>
DSC装置
測定機器:「DSC6200」セイコーインスツル社製
温度条件:−30℃〜100℃(昇温速度8℃/min)
<平均粒径>
レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置
測定機器:「LA−920」堀場製作所社製
【0035】
実施例1
酢酸エチル182質量部に対し、ポリエステル変性アクリルポリオール樹脂[亜細亜工業(株)製、商品名「NX−62−1」、Mw=38,000、Tg=47℃、水酸基価19.0mgKOH/g、固形分濃度54.9質量%]182質量部(固形分100質量部)、硬化剤[亜細亜工業(株)製、商品名「#8000」、脂肪族ジイソシアネートのシアヌレート変性体、固形分濃度48.1質量%。NCO含量10.1質量%]27.3質量部(固形分13.1質量部)、及びルチル型酸化チタン分散体[シーアイ化成(株)製、商品名「RTTDNB15WT%−E38」、平均粒径38nm、固形分濃度15質量%]9.1質量部(固形分1.4質量部)を加え、固形分濃度約29質量%のコーティング剤を調製した。
次に、白色塩化ビニル樹脂製粘着シート[リンテック(株)製、商品名「フジペイントFP(M)5011」、基材フィルムの厚さ50μm、粘着剤層:厚さ30μmのアクリル系、剥離シート付]の表面に、前記コーティング剤を、乾燥後が5g/m2になるように塗布し、70℃で1分間加熱処理して、架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層を形成することにより、マーキング用粘着シートを作製した。
このマーキング用粘着シートの性能評価結果を第1表に示す。
【0036】
実施例2〜5及び比較例1
酸化チタン分散体の量を第1表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、各マーキング用粘着シートを作製した。
各マーキング用粘着シートの性能評価結果を第1表に示す。
参考例1
コーティング層を設けない白色塩化ビニル樹脂製粘着シート(前出)の性能評価結果を第1表に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
第1表から分かるように、本発明のマーキング用粘着シート(実施例1〜5)は、いずれも耐候性は合格であり、特に実施例2及び3が耐候性に優れている。なお、実施例4は、酸化チタンのチョーキング(頭出し)により、光沢残存率が若干低く、また実施例5は酸化チタンのチョーキングにより、酸化チタン層が1層できて、干渉縞が発生した。
これに対し、ルチル型酸化チタン粒子を用いていない比較例1は、耐候性が悪い。
さらに、実施例1〜5のマーキング用粘着シートは、いずれも延伸時耐クラック性、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性について良好である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のマーキング用粘着シートは、特に耐候性に優れると共に、耐薬品擦過性、耐薬品浸漬性、延伸時における耐クラック性及び所望の光沢度を有し、例えば自動車用などとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に粘着剤層を有すると共に、他方の面に、(A)重量平均分子量が15,000〜80,000のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂と、(B)ポリイソシアネート系化合物と、上記(A)成分の固形分100質量部に対して、(C)ルチル型酸化チタン粒子1〜15質量部を含むコーティング剤を用いて形成されてなる、架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層を有することを特徴とするマーキング用粘着シート。
【請求項2】
(A)成分のポリエステル変性アクリルポリオール樹脂のガラス転移温度が42〜60℃である請求項1に記載のマーキング用粘着シート。
【請求項3】
(C)ルチル型酸化チタン粒子の平均粒径が、10〜100nmである請求項1又は2に記載のマーキング用粘着シート。
【請求項4】
(B)成分のポリイソシアネート系化合物が、脂肪族、脂環式、芳香族及び芳香脂肪族イソシアネート、並びにこれらのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体及び弾性変性ポリイソシアネートの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のマーキング用粘着シート。
【請求項5】
(B)成分のイソシアネート基と(A)成分の水酸基とのモル比[NCO]/[OH]が0.5〜1.5である請求項1〜4のいずれかに記載のマーキング用粘着シート。
【請求項6】
架橋化されたアクリルウレタン系コーティング層の厚さが、1〜8μmである請求項1〜5のいずれかに記載のマーキング用粘着シート。

【公開番号】特開2009−221425(P2009−221425A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69960(P2008−69960)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】