説明

ミルク内の体細胞または脂肪小滴を計数する方法および装置

自動または半自動の搾乳装置による搾乳中にミルク中の体細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する方法は、搾乳装置によって搾乳されたミルクを測定チャンバ(59)を通して流すステップと、測定チャンバを通って流れるミルクを照明するステップと、測定チャンバを通って流れる照明されたミルクの多数の二次元デジタル画像を記録するステップと、を有し、それらの画像は、画像において5ミクロンよりも高い空間解像度をなるべく得るために、レンズシステム(49)を通して記録されている。最後に、体細胞数または脂肪小滴数のスコアが、好ましくはニューラルネットワークを用いることを含むデジタル画像処理によってそれらの画像から求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して酪農に関し、より詳しくはミルク内の体細胞または脂肪小滴を計数する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酪農における損失の主要な原因は、動物の乳腺に起こる乳腺炎と呼ばれる感染である。乳腺炎は、乳腺に侵入し、哺乳類の腺に有害な毒素を発生させる伝染性の病原体によって引き起こされる。一般に、乳腺炎は1つの乳房四半部で発生する。
【0003】
体細胞、主として白血球および上皮細胞は、感染または薬品による炎症による細胞被覆層の損傷に起因して乳腺に進入する。ミルク内に排出された体細胞の計数は、乳腺の炎症の程度を知るために広く使用される手段になっている。体細胞は、染色したミルクのスメアを直接顕微鏡で調べる手間のかかる方法によって数えるか、または直接化学試験によって細胞数を概算することができる。他の方法では、ミルクの体細胞が間接的に測定されるか、または炎症反応の様々な副産物の濃度を求めることによって測定される。
【0004】
体細胞数(SCC)は、ミルク1ミリリットル当たりの白血球の数であり、群の中で乳腺炎が広がるにつれてバルクタンク内で増加していく。SCCスコアは、ミルクの品質および価格を決定する際の国際標準として使用されている。たいていの販売組織および地域当局は、バルクタンクのミルクのSCCを定期的に測定し、このスコアを罰金控除および/または生産性向上の奨励金に使用している。SCCスコアが高いと、群れの中に乳腺炎が存在することを示し、これはバルクタンクの平均スコアに反映される。バルクタンクSCCは、群れ全体の乳腺が健康であることの良好な指標であり、乳腺炎の抑制計画を評価するのに良い手段である。
【0005】
バルクミルクのSCCと個々の動物の数の平均との間にも顕著な相関が見られる。特に小さい群れでは、問題のある少数の動物がバルクタンク内の体細胞のうちの50%を超える原因になっていることが少なくない。ミルクの生産量が多くSCCが中レベルの動物は、生産量が少なくSCCが高い一部の乳牛よりもタンクスコアに対するSCCの寄与度が著しく高いことがあることに留意されたい。高品質のミルクを得るには、SCCは1ml当たりの細胞数が200000個よりも少なくあるべきである。1ml当たりの細胞数が200000個から500000個のSCCスコアを有するミルクは許容の範囲内である。感染した動物の場合、ミルクのSCCスコアは、1ml当たりの細胞数が600000個から1200000個の間である。
【0006】
群れの中の動物が感染性病原体に感染すると、2日か3日のうちにミルク生産量が急激に低下する。動物内のバクテリア数が多いと、ミルク内の体細胞数が増える。ミルク内の体細胞数が増えると、ミルク製品の品質が低下し、加工するのが困難になる。搾乳における防止処置は、乳腺炎が潜伏段階であり、目に見える病気の兆候がないときに特に非効率的である。個々の動物の無症状の乳腺炎を発見するには、搾乳ごとに特別の措置が必要である。
【0007】
SCCは、ミルクに界面活性剤を添加したときの、体細胞の数に応じた凝集反応の程度の差を利用することにより、CMT(カリフォルニア乳腺炎試験)によって測定することができる。pH測定にBTB試薬も含まれるため、この試薬は、血管浸透性が高くなり、乳腺炎中の白血球とバクテリアとの争いが進むと、ミルク内の塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩分が増え、アルカリ度が高くなり、色が黄色から緑色、次に青色に変化することを利用することによって、乳腺炎の評価指数として使用される。この測定法の利点は、この測定を誰でも容易に行うことができ、一般に乳腺炎の有無を区別することができ、極めてコストが低い方法であることである。CMTの欠点は、白血球とバクテリアとの争いを伴う反応が起こるか、または血管浸透性を高くした後に反応が起こるまで診断が困難であり、診断が人間の主観的な判断に依存し、したがって、この方法がおおよその診断方法としてしか役立たないことである。診断は、ミルクの体細胞数が1ml当たり300000個以下の場合に特に大雑把になる。したがって、この方法は自動化には適していない。
【0008】
たとえば特許文献1を参照すると、SCCを求めるためにCL(化学発光)の働きを測定することも使用されている。この方法に関連して、細胞に吸収される蛍光添加剤がミルクに添加される。ミルクを特定の波長の光で照明することによって、細胞は別の固有波長の蛍光を発する。固有波長の光を排除する適切なフィルタによって、細胞の数を数えることができる。
【0009】
このような手法では、ミルクサンプルを採取すること、適切な量の蛍光添加剤を添加してミルクと混合すること、および特定の光源およびフィルタを使用することが必要である。これは、手間およびコストのかかるやり方である。この方法を搾乳ロボットシステムにおいて自動化する場合には、乳牛すなわち乳牛の乳腺からのミルクの標本である少量のミルクを得て分離するために特定の準備をしておく必要がある。
【0010】
乳腺炎のミルクにおけるイオン濃度、したがって導電率は正常なミルクよりも一般に高いので、乳腺炎はミルクの導電率の変化を測定することによって見つけることも可能である。導電率は、一般に、ミルク流れの中に位置するプローブを有するDC回路またはAC回路によって測定される。このオンライン方法の最も感度の高い部分はプローブである。プローブは、一般に、ミルクを通る電気回路を形成するためにAC電流またはDC電流が供給される2つの電極を含んでいる。ミルクの導電率は、それらのプローブを含む回路の電流変化を測定することによって求められる。しかし、その表示示度は、ミルクのコロイド状物質が電極上に堆積し、かつ分極が起こるため、不正確であることが少なくない。分極は、電極の方へ移動するイオンの一部が中和されず、したがって、電極間にオフセット電流または漏洩電流が発生するために起こる。漏洩電流が存在すると導電率の表示示度が不正確になる。たとえば特許文献2〜6を参照すると、ミルクの導電率の測定に関する様々な態様が特許されている。
【0011】
導電率測定法は、バクテリアが侵入して白血球と争った後の炎症反応によって起こる変化に依存し、したがって、乳腺炎の初期段階の診断に適しておらず、また、たとえ正常なミルクでも異なる乳首または異なる乳牛では電解液の成分および濃度が大幅に異なるため再現性が不十分であり、したがって、この診断方法のみによる診断は危険であるという欠点を有する。
【0012】
非特許文献1を参照すると、ミルクの導電率の測定によって乳腺炎を見つける場合に起こり得る他の問題は、ミルクの導電率が搾乳間隔に強く依存することである。したがって、搾乳時間が従来の搾乳システムほど一定ではない場合、搾乳間隔を考慮に入れる必要がある。
【特許文献1】米国特許第6,297,045号明細書
【特許文献2】米国特許第3,762,371号明細書
【特許文献3】米国特許第5,416,417号明細書
【特許文献4】米国特許第5,302,903号明細書
【特許文献5】米国特許第6,307,362号明細書
【特許文献6】米国特許第6,378,455号明細書
【非特許文献1】Influence of different milking intervals on electrical conductivity before alveolar milk ejection in cows, K. Barth and H. Worstorff, Milchwissenschaft 55(7), 2000, p.363
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の概括的な目的は、上述の従来技術に関連する欠点および制限がない、自動搾乳システムによる搾乳中にミルク内の体細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する方法および装置のそれぞれを提供することである。
【0014】
本発明の特定の目的は、完全に自動であり、かつ信頼性のある体細胞数または脂肪小滴数のスコアを得ることができる、このような方法およびこのような装置を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、乳牛の乳房四半部の各々についての別々に体細胞数または脂肪小滴数のスコアを得ることができる、このような方法およびこのような装置を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、信頼性があり、融通が利き、コストがかなり低く、実施が比較的容易な、このような方法およびこのような装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、これらの目的は、特に、添付の特許請求の範囲において特定された方法および装置によって達成される。
【0018】
本発明の他の特徴および本発明の他の利点は、以下に述べる本発明の好ましい実施形態の詳細な説明と、一例としてのみ示されたものであり、したがって本発明を制限するものではない添付の図1〜図6とから明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は搾乳ロボットの主要な構成部材の一部を示している。搾乳ロボットは4つの乳首カップ11を有しており、図を簡単にするためにその1つだけが示されている。各乳首カップ11は各ミルクチューブ13に連結されており、ミルクチューブは、各々の弁すなわち調圧器17、各々のミルク導管18、各々の流量計19、および共通のミルク計量器21を介して端部ユニット15に連結されている。端部ユニットは、ミルク/空気分離器および真空供給導管23を介して真空源(不図示)に連結されている。
【0020】
搾乳動物の乳首を搾乳する間、乳首カップが乳牛の乳首に、通常はロボットアーム(不図示)によって取り付けられ、真空供給導管23を介して端部ユニット15に真空が供給され、乳牛の乳首からミルク管路13を通して端部ユニット15にミルクが引き込まれる。弁すなわち調圧器17は、乳首カップ11内の個々の真空レベルを調節することに用いることができる。乳牛の各乳房四半部から得られたミルクは流量計19によって個別に測定され、その後、乳牛から得られたミルクの重量が共通のミルク計量器21によって測定される。最後に、ミルクは端部ユニット15内に収集され、空気が導管23を通して吸い出される。
【0021】
さらに、搾乳ロボットは、端部ユニット15に連結された複数のミルク出口管路29,31のうちの1つ29を介して例えばより大きいミルク貯蔵タンク(不図示)にミルクを汲み出すポンプと調圧器とからなるシステム27を有している。他のミルク出口管路31を、乳牛の搾乳によるミルクを破棄するか、ミルクを別のタンク(不図示)に汲み出すか、またはミルクを子牛に与える供給装置に汲み出すことに用いてもよい。
【0022】
搾乳ロボットは、有利なことに、搾乳ロボットの処理および制御を行い、通常はマイクロコンピュータと、適切なソフトウェアと、例えば各乳牛が最後に搾乳されたのはいつか、その乳牛が最後に食料を与えられたのはいつか、その乳牛のミルク生産量、その乳牛の健康状態などの、搾乳ロボットによって搾乳される各乳牛の情報を含むデータベースとを有する、コンピュータによる処理および制御装置35に接続されている。
【0023】
SCCスコアが高くなった乳牛を識別する目的で、例えば、このような乳牛を処置または監視したり、このような乳牛から得たミルクを健康な乳牛またはSCCスコアの低い乳牛から得たミルクと混ぜないように管理するために、本発明は、搾乳中にミルク内の体細胞をオンラインで計数する改良された技術を提供する。
【0024】
図1に符号33で概略的に示されている、搾乳中にミルク内の体細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する本発明の装置は、概ね平坦であるかまたは浅い測定チャンバと、光源と、レンズシステム、好ましくは顕微鏡を含む二次元カメラシステムと、デジタル画像処理システムとを有している。装置の特定の実施形態が図2〜図3に詳しく示されており、その実施形態について以下に詳しく説明する。
【0025】
平坦な測定チャンバは、乳牛の乳首からミルク管路13を通して端部ユニット15内に引き込まれるミルクの少なくとも一部が、測定チャンバを通って流れるように配置されている。光源は平坦な測定チャンバを通って流れるミルクを照明するように設置され、二次元カメラシステムは平坦な測定チャンバを通って流れる照明されたミルクの二次元デジタル画像を繰り返し記録するようになっている。カメラアレイおよびレンズシステムは、かなり小さい画像領域が高い倍率で記録されるようになっている。二次元デジタル画像内の空間解像度は約5ミクロンよりも高いことが好ましい。最後に、デジタル画像処理システムは、たとえばニューラルネットワークを用いることによって、二次元画像から体細胞数または脂肪小滴数のスコアを求めるようになっている。
【0026】
デジタル画像システムは、処理および制御装置35で実現されることが好ましい。
【0027】
平坦な測定チャンバは、1つまたは複数のミルク導管18からミルクの一部を導くために設けられた別個の導管内に構成することができる。任意に、ミルクは、平坦な測定チャンバを通過した後に、ミルク導管18に戻されるか、または端部ユニット15に運ばれる。しかしながら、平坦な測定チャンバは複数のミルク導管18の1つの中に構成されていることが有利である。
【0028】
このような解決策は、図2〜図3に示されている装置の特定の実施形態によって採用されている。測定セルは、4本のボルト41などの手段によって互いに液密に取り付けられたときに、左から右にミルク通路43を形成する、上部セルブロック37と下部セルブロック39を有している。通路43は、図示のように円形断面を有することが好ましい。測定セルは、ミルクが矢印44によって示されているように通路43を通って流れるように、複数のミルク導管18の1つの中に取り付けられている。あるいは、セルブロック37,39は、例えば方形や矩形の他の断面形状のミルク通路を形成するように構成されている。
【0029】
さらに、測定セルの下部セルブロック39は、ほぼ垂直な貫通穴45を備えている。上部セルブロック37の対応する表面と共に通路43を形成する下部セルブロック39の表面は、所与の領域の大部分において平坦になるような形状を有している。平坦な部分内に取り付けられた透光板48は、下部セルブロック39に液密に接着されている。下部セルブロック39の平面部の位置は、透光板48の上面が、その領域の外側に通路43を形成する表面の最下部と同じ高さに位置するように選択されている。所与の領域内でかつ平面部の外側の下部セルブロック39の通路面は、所与の領域の外側の下部セルブロック39の通路面への滑らかな移行部が得られるような形状を有してよい。測定セル内に滑らかな表面を設けることによって、ミルクが溜まる可能性のあるポケットが無くなる。穴45の大きさは、拡大用にレンズシステム49、好ましくは顕微鏡を備えた、CCDによるシステムなどの二次元カメラシステム51の前部が図示のように穴45の中に挿入できるように選択されている。
【0030】
測定セルの上部セルブロック37は、好ましくは穴45より小さく穴45に位置合わせされている、ほぼ垂直な貫通穴53を備えている。ロッド55は、ロッド55の平坦な端面55aが透光板48に平行に対向して通路43内に設置されるように、貫通穴53に挿入されてはめ込まれている。ロッド55は、ミルクが穴53を通って漏れるのを防止するために貫通穴53にしっかりとはめ込まれており、かつ矢印57で示されているように垂直方向に移動可能である。
【0031】
平坦な測定チャンバ59は、透光板48とロッド55の平坦な端面55aとの間に空間として形成されている。したがって、平坦な測定チャンバ59は、透光板48と端面55aに平行で、かつ矢印44で示されているミルクの全般的な流れの方向に対して直交する方向に開いている。SCC測定中における測定チャンバ59の厚さt、すなわち測定中のカメラシステム51の光軸61に平行な方向における測定チャンバ59の寸法は、約100ミクロンより小さいことが好ましく、約50ミクロンより小さいことがより好ましく、約10ミクロンより小さいことが最も好ましい。カメラシステム51の被写界深度および焦点合わせを画像が鮮明になるようにし、かつ撮像された細胞の裏側に細胞が「隠れている」確率を低くすることが重要である。このような細胞を数えることができないことは明らかである。
【0032】
ロッド55は、平坦な測定チャンバ59を通って流れるミルクを、概略的に符号63で示されている光源によってロッド55を通して照明するのを可能にするために透光性であることが好ましい。しかしながら、当業者は、たとえばミラーとビームスプリッタの構成を含む他の照明技術を用いることができることを理解するであろう。平坦な測定チャンバ59内のミルクは、図示のように上から照明してもよいし、あるいは、下方から、すなわちカメラシステム51の側から照明してもよい。後者の例では、ロッド55の端面55aは光を反射するであろう。
【0033】
概して、測定チャンバ内のミルクを透過した光はカメラシステムによって記録される。あるいはまたはさらに、測定チャンバ内のミルクによって反射された光が記録される。さらに、測定チャンバ59およびカメラシステム51の向きは、図2〜図3に示されているのとは異なる向きであってもよい。
【0034】
ミルクは、管路18を通して断続的に吸引され、空気と混合される。したがって、ミルクは重力によって通路43の最底部を通る可能性が最も高いため、通路43の最底部に配置された測定チャンバ59を有することが特に有利である。ミルクが測定チャンバ59に詰まらないように、矢印65で示されているように、ロッドを軸61を中心として測定中に連続的に回転させてもよい。ロッドは、処理および制御装置35に接続されたモータ(不図示)によって、垂直に移動させ、かつ自動的に回転させてもよい。
【0035】
カメラシステム51は、顕著に拡大された二次元画像を記録するために顕微鏡またはテレ/マクロ写真レンズシステム49を備えていることが好ましい。カメラシステム51は、二次元デジタル画像において、2ミクロンより高く、より好ましくは約1ミクロンより高く、最も好ましくは約0.5ミクロンより高い空間解像度をもたらす。その結果、非常に小さい領域が記録され、おそらくは、正確で貴重なSCCスコアを得るために非常に多くの画像を記録する必要がある。
【0036】
実験室の環境に設置された本発明の原理によるSCC測定装置によって記録された3つの異なる二次元画像が、図4〜図6に示されている。
【0037】
第1の画像(図4)では脂肪小滴だけが見られる一方で、第2および第3の画像(図5〜図6)では多数の脂肪小滴の間にいくつかの体細胞があることが認められる(体細胞は矢印で示されている)。図5〜図6を見ると分かるように、体細胞は脂肪小滴とはかなり異なるように見え、このような違いは、デジタル画像処理システムによって画像内の種々の粒子を区別するために用いられる。一般に、使用されるデジタル画像処理には、記録された画像に見られる粒子の反射特性および/または透過特性によって示される、各画像に見られる粒子の数、サイズ、形状、構造、形態構造、密度および/または組成の分析が含まれる。画像処理システムはニューラルネットワークを用いることが好ましい。
【0038】
顕微鏡を備えた600×400画素のCCDカメラを用いて0.3×0.2mm2の面積に及ぶ画像を記録した場合、画像の空間解像度は約0.5ミクロンであると概算される。厚さが約0.1mmの測定チャンバを用いた場合、撮像される各サンプルは0.6×10-6mlになる。したがって、SCCスコアが感染した乳牛の典型的なスコアである100万[細胞/ml]であるとすると、1画像当たりに見られる細胞数は平均で0.6個に過ぎない。多数の、たとえば数千枚の画像を記録し、これらの画像をデジタル画像処理することによって、体細胞総のスコアを求めることができる。
【0039】
体細胞は、ある例では、例えばミルクが乳腺炎の兆候を示しているときには主として白血球であり、したがって、体細胞数のスコアは白血球数のスコアである。他の例では、たとえば、生まれつき高いSCCスコアを有する健康な動物の場合、上皮細胞の方が数が比較的多い。さらに他の例では、たとえば、重病であるかまたは重傷を負っている場合、赤血球の数を概算することができる。
【0040】
画像内の脂肪小滴の数およびサイズから、デジタル画像処理を用いて脂肪の含有量を概算することができる。
【0041】
SCC測定装置の特定の実施形態を、複数のミルク導管18の1つの中に取り付けられ、したがって単一の乳房四半部におけるSCCを測定する装置として説明してきたが、このSCC測定装置は、乳房四半部から送られてきたミルクが混合される点の下流側に連結してもよい。たとえば、乳首カップが(単部ユニットの上流側で)クローを介して単一のミルク管路に連結される搾乳機では、SCC測定装置をこの単一のミルク管路内に配置してもよい。しかしながら、乳腺炎は1つまたはおそらく2つの乳房四半部で発生するため、感染した乳房四半部から得られたミルクが健康な乳房四半部から得られたミルクとSCC測定を行う前に混合すると乳腺炎に対する検出感度が低くなることから、これは最も好ましい解決策ではない。
【0042】
最も融通に富む解決策は、図1のロボットにおける各ミルク管路18内に取り付けられた測定セルを有し、1つの光源および1つのカメラシステムを各測定セルごとに設けるか、または、異なる測定セルを通って流れるミルクのSCC測定に代わる代わる使用される単一の光源またはカメラシステムを設けることである。その場合には、異なる乳房四半部のSCCスコアを互いに比較して、別個の乳房四半部から得られたミルクにおける乳腺炎、すなわちSCCスコアの上昇を非常に感度よく検出することができる。
【0043】
さらに、上記の融通に富む解決策を実行することによって、搾乳ロボットは各乳房四半部ごとに1つの、4つの端部ユニットを備え、ミルクを乳房四半部ごとに移送して処理することができ、たとえば、低いSCCスコアを有する乳房四半部から得られたミルクは1つのタンクに収集され、高いSCCスコアを有する乳房四半部から得られたミルクは別のタンクに収集される、ということが理解されるであろう。
【0044】
本発明はあらゆる種類の自動または半自動の搾乳システムで実際に実施し得ることが、当業者に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の概括的な実施形態による、搾乳中にミルク内の体細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する装置を備えた搾乳ロボットの主要構成部材を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の特定の実施形態による、ミルク内の体細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する装置を概略的に示す断面平面図である。
【図3】本発明の特定の実施形態による、ミルク内の体細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する装置を概略的に示す断面端面図である。
【図4】体細胞または脂肪小滴を計数している間に図2〜図3の装置によって記録された二次元デジタル画像のサンプルを示す図である。
【図5】体細胞または脂肪小滴を計数している間に図2〜図3の装置によって記録された二次元デジタル画像のサンプルを示す図である。
【図6】体細胞または脂肪小滴を計数している間に図2〜図3の装置によって記録された二次元デジタル画像のサンプルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳動物の搾乳中にミルク中の細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する方法において、
前記搾乳動物の前記搾乳中に得られたミルクの少なくとも一部を測定チャンバ(59)を通して流すステップと、
前記測定チャンバを通って流れるミルクを照明するステップと、
前記測定チャンバを通って流れる照明されたミルクの二次元デジタル画像を、レンズシステム(49)、好ましくは顕微鏡を通して繰り返し記録するステップと、
デジタル画像処理によって、前記二次元画像から体細胞数または脂肪小滴数のスコアを求めるステップと、
を有することを特徴とする、ミルク内の細胞または脂肪小滴を計数する方法。
【請求項2】
前記測定チャンバ(59)を通って流れるミルクの前記少なくとも一部は有毒の添加物を含んでいない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定チャンバ(59)を通って流れるミルクの前記少なくとも一部は、任意に空気と混合されるが、化学添加物を全く含まない純粋な未処理のミルクである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
二次元デジタル画像の前記繰り返し記録は、前記二次元デジタル画像において、約5ミクロンより高く、好ましくは約2ミクロンより高く、より好ましくは約1ミクロンより高く、最も好ましくは約0.5ミクロンより高い空間解像度を得るように行われる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記測定チャンバは、前記繰り返し記録中の前記レンズシステムの光軸(61)に平行な方向において、約100ミクロンより小さく、好ましくは約50ミクロンより小さく、より好ましくは約10ミクロンより小さい寸法(t)を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記デジタル画像処理は、前記カメラシステムによって空間的に分解されて記録された粒子の反射特性および/または透過特性によって示される、各画像に見られる粒子の数、形状、サイズ、構造、密度および/または組成の分析を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記デジタル画像処理はニューラルネットワークを用いることを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記測定チャンバを通って流れる前記ミルクの前記少なくとも一部は、前記搾乳動物の前記搾乳中に得られた前記ミルクを収集するのに用いられる搾乳機のミルク管路(13)から出るように導かれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ミルク管路から出るように導かれる前記ミルクの前記少なくとも一部は、前記測定チャンバを通った後に、前記ミルク管路に戻されるか、あるいはミルク収集容器に運ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ミルクの前記少なくとも一部は、前記搾乳動物の前記搾乳中に得られたミルクを収集するのに用いられる搾乳機のミルク管路(13)内の前記測定チャンバ(59)を通って流れる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記搾乳動物の前記搾乳は、クローおよび単一のミルク管路を介して容器(15)に連結された各ミルク管路(13)に各々が連結されている複数の乳首カップ(11)を有する自動または半自動の搾乳システムによって行われ、前記搾乳動物の乳首の搾乳中に、前記複数の乳首カップが前記搾乳動物の前記乳首に取り付けられ、かつ真空(23)が前記容器に加えられて、ミルクが複数の前記ミルク管路、前記クロー、前記単一のミルク管路を通して前記容器内に引き込まれる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記搾乳動物の前記搾乳は、容器(15)に連結された各ミルク管路(13)に各々が連結されている複数の乳首カップ(11)を有する自動または半自動の搾乳システムによって行われ、前記搾乳動物の乳首の搾乳中に、前記複数の乳首カップが前記搾乳動物の前記乳首に取り付けられ、かつ真空(23)が前記容器に加えられて、ミルクが複数の前記ミルク管路を通して前記容器内に引き込まれ、前記ミルクは前記容器までずっと別個のミルク管路(13)内に引き込まれている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記体細胞数または脂肪小滴数のスコアは白血球数のスコアである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記容器は複数のミルク出口管路(29,31)を備えており、前記複数のミルク管路を通って前記容器内に引き込まれた前記ミルクは、前記体細胞数のスコアまたは脂肪小滴数のスコアに応じて前記複数のミルク出口管路の1つを通って出る、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
脂肪含有量が前記デジタル画像処理によって前記二次元画像から概算される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記脂肪含有量は前記デジタル画像内における脂肪小滴の数およびサイズから概算される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
測定チャンバ(59)が各ミルク管路内に設けられ、
前記各ミルク管路を通って引き込まれる前記ミルクの少なくとも一部は、前記各測定チャンバを通り、
前記各測定チャンバを通って流れるミルクは照明され、
前記各測定チャンバを通って流れる照明されたミルクの二次元デジタル画像は、前記二次元デジタル画像において約5ミクロンより高い空間解像度が得られるようにレンズシステムを通して繰り返し記録され、
前記各ミルク管路を通して引き込まれたミルクの体細胞数または脂肪小滴数のスコアはデジタル画像処理によって前記二次元画像から求められる、
請求項12に記載の方法。
【請求項18】
搾乳動物の搾乳中にミルク中の細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する装置において、
前記搾乳動物の前記搾乳中に得られたミルクの少なくとも一部が流れる測定チャンバ(59)と、
前記測定チャンバを通って流れるミルクを照明する光源システム(63)と、
レンズシステム(49)、好ましくは顕微鏡を含み、前記測定チャンバを通って流れる照明されたミルクの二次元デジタル画像を前記レンズシステム(49)を通して繰り返し記録する二次元カメラシステム(51)と、
前記二次元画像から体細胞数または脂肪小滴数のスコアを求めるデジタル画像処理システム(35)と、
を有することを特徴とする、搾乳動物の搾乳中にミルク中の細胞または脂肪小滴をオンラインで計数する装置。
【請求項19】
前記測定チャンバ(59)を通って流れるミルクの前記少なくとも一部は有毒の添加物を含んでいない、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記測定チャンバ(59)を通って流れるミルクの前記少なくとも一部は、任意に空気と混合されるが、化学添加物を全く含まない純粋な未処理のミルクである、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記二次元カメラシステムは、前記二次元デジタル画像において、約5ミクロンより高く、好ましくは約2ミクロンより高く、より好ましくは約1ミクロンより高く、最も好ましくは約0.5ミクロンより高い空間解像度をもたらす、請求項18〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記測定チャンバは、前記繰り返し記録中の前記レンズシステムの光軸(61)に平行な方向において、約100ミクロンより小さく、好ましくは約50ミクロンより小さく、より好ましくは約10ミクロンより小さい寸法(t)を有する、請求項18〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記デジタル画像処理システムは、前記カメラシステムによって記録された粒子の反射特性および/または透過特性によって示される、各画像に見られる粒子の数、形状、サイズ、構造、密度および/または組成を分析するようになっている、請求項18〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記デジタル画像処理システムは、前記二次元画像から前記体細胞数または脂肪小滴数のスコアを求める際にニューラルネットワークを用いるようになっている、請求項18〜23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記搾乳動物の前記搾乳は、容器(15)に連結された各ミルク管路(13)に各々が連結されている複数の乳首カップ(11)を有する自動または半自動の搾乳システムによって行われ、前記搾乳動物の乳首の搾乳中に、前記複数の乳首カップが前記搾乳動物の前記乳首に取り付けられ、かつ真空(23)が前記容器に加えられて、ミルクが複数の前記ミルク管路を通して前記容器内に引き込まれ、
前記ミルクの前記少なくとも一部が通って流れる前記測定チャンバ(59)は前記複数のミルク管路(13)の1つの中に構成されている、
請求項18〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記測定チャンバは、前記複数のミルク管路の前記1つのミルク管路の壁内に取り付けられた透光板であって、該透光板を通して前記二次元カメラシステムが前記二次元画像を記録するようになっている透光板(48)と、それに向かいあって位置する、実質的に平坦で平行な表面(55a)とによって形成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記測定チャンバは、前記透光板および前記実質的に平坦な表面に平行で、かつ前記ミルクの前記少なくとも一部の全般的な流れ(44)の方向に対して直交する方向に開いている、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記実質的に平坦な表面は、前記透光板および前記実質的に平坦な表面に対して直交する軸を中心として回転可能(65)である、請求項26または27に記載の装置。
【請求項29】
前記実質的に平坦な表面はロッド(55)の端面である、請求項26〜28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記ロッドは前記測定チャンバを通って流れる前記ミルクを前記ロッドによって照明できるように透光性である、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記容器は複数のミルク出口管路(29,31)を備えており、前記装置は、前記体細胞数または脂肪小滴数のスコアに応じて、前記複数のミルク管路を通って前記容器内に引き込まれた前記ミルクを前記複数のミルク出口管路のうちの1つを通して汲み出す、前記デジタル画像処理システム(35)に接続されたポンプと調圧器とからなるシステム(27)をさらに有する、請求項25〜30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
前記ミルク管路の各々は、前記各ミルク管路を通して引き込まれたミルクの一部が通る測定チャンバを備え、
前記光源システムは、前記測定チャンバの各々を通って流れるミルクを照明するようになっており、
前記二次元カメラシステムは、前記測定チャンバの各々を通って流れる照明されたミルクの二次元デジタル画像を繰り返し記録するようになっており、
前記デジタル画像処理システムは、前記ミルク管路の各々を通して引き込まれたミルクの体細胞数または脂肪小滴数のスコアを前記二次元画像から求めるようになっている、請求項25〜30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
前記搾乳動物の前記搾乳は、各ミルク管路(13)に各々が連結されている複数の乳首カップ(11)を有する自動または半自動の搾乳システムによって行われ、前記搾乳動物の乳首の搾乳中に、前記複数の乳首カップが前記搾乳動物の前記乳首に取り付けられ、かつ真空(23)が複数の前記ミルク管路を介して前記乳首カップに供給されて、ミルクが複数の前記ミルク管路を通して吸い出され、
前記ミルク管路の各々は、前記各ミルク管路を通して引き込まれたミルクの一部が通る測定チャンバを備え、
前記光源システムは、前記測定チャンバの各々を通って流れるミルクを照明するようになっており、
前記二次元カメラシステムは、前記測定チャンバの各々を通って流れる照明されたミルクの二次元デジタル画像を繰り返し記録するようになっており、
前記デジタル画像処理システムは、前記ミルク管路の各々を通して引き込まれたミルクの体細胞数または脂肪小滴数のスコアを前記二次元画像から求めるようになっており、
前記体細胞数または脂肪小滴数のスコアの各々に応じて、前記ミルク管路の各々を通して引き込まれたミルクを複数の容器のうちの選択された容器内に導く、前記デジタル画像処理システムに接続された導き手段を有する、請求項18〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項34】
前記複数の乳首カップ(11)と、前記複数のミルク管路(13)と、前記容器(15)と、請求項25〜33のいずれか1項に記載の体細胞または脂肪小滴を計数する前記装置と、を有する搾乳ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−518852(P2006−518852A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502805(P2006−502805)
【出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000204
【国際公開番号】WO2004/073391
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(500254480)デラヴァール ホルディング アクチボラゲット (10)
【氏名又は名称原語表記】DeLaval Holding AB
【Fターム(参考)】