説明

メタニコチン化合物のヒドロキシ安息香酸塩

【課題】反応副生物が実質的に存在しない精製されたE−メタニコチン化合物並びにその調製方法の提供。
【解決手段】E−メタニコチン化合物を、ヒドロキシ安息香酸との塩に変換する方法並びにその方法によって得られた塩。E−メタニコチン化合物のヒドロキシ安息香酸塩は結晶化して、Z−メタニコチン化合物及び二重結合が移動した化合物などの不純物を溶液中に残存させるので、E−メタニコチン化合物のヒドロキシ安息香酸塩の形成は、E−メタニコチン化合物を精製する上で有用である。所望であれば、ヒドロキシ安息香酸塩は、遊離塩基(E−メタニコチン)または薬学的に許容される別の塩形態へと変換することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン性化合物及び薬学的に許容されるその塩を調製する方法並びに中枢神経系及び自律神経系の機能不全を伴う様々な症状及び疾患を治療するための薬学的組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンは、多数の薬理学的効果を有すると提案されてきた。例えば、「Pullan et al, N. Engl. J. Med. 330:811−815 (1994)」を参照されたい。これらの効果の幾つかは、神経伝達物質の放出に対する効果に関連することが可能である。ニコチンの投与により、アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン及びグルタミン酸の放出が報告されている(Rowell et al., J. Neurochem. 43:1593(1984);Rapier et al, J. Neurochem.50:1123(1988);Sandor et al, Brain Res.567:313(1991);Vizi, Br. J. Pharmacol. 47:765(1973);Hall et al, Biochem. Pharmacol. 21:1829(1972);Hery et al, Arch. Int. Pharmacodyn. Ther. 296:91(1977);及びToth et al, Neurochem Res.17:265 (1992))。確証的な報告及びさらなる最近の研究には、中枢神経系(CNS)における、グルタミン酸、一酸化窒素、GABA、タキキニン、サイトカイン及びペプチドの調整が含まれる(Brioni et al., Adv.Pharmacol 38:153(1997)。さらに、報告によれば、ニコチンは、ある種の疾患を治療するために使用されるある種の薬学的組成物の薬理学的挙動を強化する。例えば、Sanberg et al, Pharmacol. Biochem. & Behavior 46:303 (1993); Harsing et al, J. Neurochem. 59:48 (1993);及びHughes, Proceedings from Intl. Symp. Nic. S40 (1994)を参照。さらに、ニコチンの神経保護的効果が提唱されており、例えば、Sjak−shie et al, Brain Res. 624:295 (1993)を参照されたい。他の様々な有益な薬理学的効果も提唱されている。例えば、Decina et al, Biol Psychiatry 28:502 (1990); Wagner et al, Pharmacopsychiatry 21:301 (1988); Pomerleau et al, Addictive Behaviors 9:265 (1984); Onaivi et al, Life Sci.54(3):193 (1994); Tripathi et al, J. Pharmacol. Exp. Ther. 221:91 (1982);及びHamon, Trends in Pharmacol. Res. 15:36 (1994)を参照されたい。
【0003】
nAChRを標的とする様々な化合物が、多様な症状及び疾患を治療するために有用であると報告されている。例えば、Williams et al., DN&P 7(4):205 (1994); Arneric et al, CNS Drug Rev. 1(1):1 (1995); Arneric et al, Exp.Opin. Invest. Drugs 5(1):79 (1996); Bencherif et al, J. Pharmacol. Exp. Ther. 279:1413 (1996); Lippiello et al, J. Pharmacol. Exp. Ther. 279:1422 (1996); Damaj et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 291:390 (1999); Chiari et al., Anesthesiology 91:1447 (1999); Lavand’homme and Eisenbach, Anesthesiology 91:1455 (1999); Holladay et al, J. Med. Chem. 40(28):4169 (1997); Bannon et al, Science 279:77 (1998); PCT WO 94/08992;PCT WO 96/31475;PCT WO 96/40682;及びBencherifらに付与された米国特許第5,583,140号;Dullらに付与された米国特許第5,597,919号;Smithらに付与された米国特許第5,604,231号及びCosfordらに付与された米国特許第5,852,041号を参照。ニコチン性化合物は、多様な中枢神経系疾患を治療するのに特に有用であると報告されている。実際に、様々なニコチン性化合物が、治療的特性を有すると報告されている。例えば、Bencherif and Schmitt, Current Drug Targets:CNS and Neurological Disorders 1(4):349−357 (2002), Levin and Rezvani, Current Drug Targets:CNS and Neurological Disorders 1(4):423−431 (2002), O’Neill, et al, Current Drug Targets:CNS and Neurological Disorders 1(4):399−411 (2002)、Kikuchiらに付与された米国特許第5,1871,166号、Cignarellaに付与された米国特許第5,672,601号、PCT WO 99/21834及びPCT WO 97/40049、英国特許出願GB 2295387号及び欧州特許出願第297,858号を参照されたい。
【0004】
中枢神経系疾患は、神経疾患の一種である。中枢神経系疾患は薬物によって誘導可能であり、遺伝的素因、感染若しくは外傷を原因として挙げることができ、又は病因が不明であることもあり得る。中枢神経系疾患は、神経精神病、神経疾患及び精神病を含み、並びに、神経変性疾患、行動疾患、認知疾患及び認知情動障害が含まれる。その臨床症状が中枢神経系の機能不全を原因とすると考えられる幾つかの中枢神経系疾患(すなわち、神経伝達物質放出の不適切なレベル、神経伝達物質受容体の不適切な特性、及び/又は神経伝達物質と神経伝達物質受容体間の不適切な相互作用に起因する疾患)が存在する。幾つかの中枢神経系疾患は、アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン及び/又はセロトニンの欠乏を原因とし得る。
【0005】
相対的に一般的な中枢神経系疾患には、初老期認知症(早発型アルツハイマー病)、老年性認知症(アルツハイマー型の認知症)、微小梗塞性認知症、AIDS関連認知症、血管性認知症、クロイツフェルド・ヤコブ病、ピック病、パーキンソン病を含むパーキンソン症候群、レビィー小体認知症、進行性核上麻痺、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジア、運動過剰症、てんかん、躁病、注意不足障害、不安、失読症、統合失調症、うつ病、強迫神経症及びツーレット症候群が含まれる。
【0006】
nAChRのサブタイプが、中枢及び末梢の両神経系内に存在するが、サブタイプの分布は不均一である。例えば、脊椎動物の脳内で主要であるサブタイプはα4β2、α7及びα3β2であるのに対して、自律神経の神経節で主要なサブタイプはα3β4であり、神経筋接合部で主要であるのはα1β1δγ及びα1β1δεである(例えば、Dwoskin et al., Exp. Opin. Ther. Patents 10:1561 (2000); and Schmitt and Bencherif, Annual Reports in Med. Chem. 35:41 (2000))参照)。
【0007】
幾つかのニコチン性化合物の限界は、末梢組織中のnAChRとのそれらの相互作用のために(例えば、筋肉及び神経節のnAChRサブタイプを刺激することによって)、様々な望ましくない薬理学的効果を引き起こすことである。従って、様々な症状又は疾患(例えば、中枢神経系疾患)を予防及び/又は治療する(これらの疾病の症候を緩和することを含む。)ための化合物、組成物及び方法を有することが望ましく、これら化合物は、中枢神経系のnAChRに対して(例えば、中枢神経系の機能に対して)有益な効果を有するが、末梢のnAChRに対しては有意な付随効果を有さずにニコチンの薬理を示す(中枢神経系のnAChRに対して特異的な化合物)。望ましくない副作用(例えば、心血管及び骨格筋部位におけるかなりの活性)を誘導する可能性を有する受容体サブタイプに著しい影響を与えずに、中枢神経系機能に影響を与える化合物、組成物及び方法を有することも極めて望ましい。
【0008】
E−メタニコチン化合物、特に、望ましくない副作用を誘導する可能性を有する受容体サブタイプに著しい影響を与えずに、中枢神経系機能に対する効果を最大化するE−メタニコチン化合物を投与することによって、上記症状及び疾患を治療及び/又は予防するための方法が、本分野において記載されている。上記疾患の治療及び/又は予防において使用するための代表的なE−メタニコチン化合物は、例えば、Caldwellらに対して付与された米国特許第5,212,188号、Smithらに付与された米国特許第5,604,231号、Crooksらに対して付与された米国特許第5,616,707号;Dullらに対して付与された米国特許第5,616,716号、Ruecroftらに対して付与された米国特許第5,663,356号、Crooksらに対して付与された米国特許第5,726,316号、Bencherifらに対して付与された米国特許第5,811,442号、Caldwellらに対して付与された米国特許第5,861,423号、PCT WO 97/40011;PCT WO 99/65876 PCT WO 00/007600; 及び1999年9月8日に出願された米国特許出願第09/391,747号に開示されている(それぞれの内容は、参照により、本明細書中に組み込まれる。)。
【0009】
E−メタニコチンを形成するための、本分野において記載されている合成は、通例、ハロ−ピリジン又はハロ−ピリミジンなどのハロゲン化されたヘテロアリール環と二重結合含有化合物の間でのHeck反応を実施することを含む。二重結合含有化合物は、典型的には、水酸基(E−メタニコチンを形成するために、アミン基へと変換される。)を含むか、又は保護されたアミン基(E−メタニコチンを形成するためのHeck反応後に脱保護される。)を含む。Heckカップリング化学の限界は、主要反応産物が所望されるE−メタニコチンであるにもかかわらず、Z−メタニコチン、二重結合がヘテロアリール(ピリジン又はピリミジンなど)環に隣接する位置から移動した(すなわち、非共役二重結合)メタニコチン化合物、及びヘテロアリール基が(1級ではなく)2級アルケン炭素に付着した化合物(すなわち、メチレン化合物又は「エキソ」二重結合)を含む、主要でない反応生成物が存在することである。これらの主要でない反応生成物は、特に大規模化したときに、除去することが困難であり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記主要でない反応生成物が実質的に存在しない精製されたE−メタニコチン化合物を調製する新規方法を提供することが有利であろう。それらの生物学的利用性を改善し、及び/又は商業的に合理的な様式でこれらの化合物を大量に調製することを補助するために、これらの薬物の新たな塩の形態を提供することも有利であり得る。本発明は、このような新しい合成方法及び新しい塩形態を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
E−メタニコチン化合物を合成する新規方法及びE−メタニコチン化合物の薬学的に許容される新たな塩形態が本明細書に記載されている。新たな塩形態を含む薬学的組成物並びに新たな塩形態を使用する治療及び/又は予防方法も開示されている。
【0012】
E−メタニコチン化合物を合成するための方法は、通例、ハロ−ピリジン又はハロ−ピリミジンなどのハロゲン化されたヘテロアリール環と二重結合含有化合物の間でのHeck反応を実施する工程を含む。二重結合含有化合物は、典型的には、水酸基(E−メタニコチン化合物を形成するために、続いて、アミン基へと変換される。)を含むか、又は保護されたアミン基(E−メタニコチン化合物を形成するためのHeck反応後に脱保護される。)を含む。
【0013】
Heck反応及び遊離アミン基を有するE−メタニコチンの形成(水酸基の変換又は保護されたアミン基の脱保護によると否とを問わない。)後、次の工程は、E−メタニコチン化合物のヒドロキシ安息香酸塩を形成することを含む。ある種の条件下で、微少な不純物(Z−メタニコチン及び/又は二重結合がヘテロアリール環に直接隣接する以外の位置に移動し、又は、アルケン鎖へのアリール基の付着が第2級二重結合炭素に存在するE−メタニコチン化合物の異性体)が溶液中に残存するが、E−メタニコチン化合物のヒドロキシ安息香酸塩を沈殿させることが可能である。この改善は、これらの主要でない反応産物は、特に大規模化したときに、除去することを相対的に容易にする。
【0014】
一実施形態において、E−メタニコチンの合成は、アミン保護された4−ペンテン−2−アミン中間体を形成すること、及びHeck反応を介してこの中間体をハロゲン化されたヘテロアリール環とカップリングさせることを含む。ピリジン及びピリミジン環が好ましいものであり得るが、ヘテロアリール環の選択は、Heckカップリング反応の成功にとって不可欠ではない。(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)]−4−ペンテン−2−アミンは、代表的なE−メタニコチンであり、p−ヒドロキシベンゾアートは、代表的なヒドロキシ安息香酸塩であり、及び(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)]−4−ペンテン−2−アミン p−ヒドロキシベンゾアートは、代表的なE−メタニコチンヒドロキシ安息香酸塩である。
【0015】
典型的な反応が以下に記載されている。
Cy−Hal+CH=CH−CHCH(CH)N(CH)(tBoc)→
(E) Cy−CH=CH−CHCH(CH)N(CH)(tBoc)
+(Z) Cy−CH=CH−CHCH(CH)N(CH)(tBoc)
+(E及び/又はZ) Cy−CHCH=CHCH(CH)N(CH)(tBoc)
+Cy−C(=CH)−CHCH(CH)N(CH)(tBoc)(Cyは、5員又は6員のヘテロアリール環である。)。
【0016】
別の実施形態において、Heckカップリング反応は、4−ペンテン−2−オールなどのヒドロキシアルケンを用いて行われ、水酸基は、Heckカップリング反応が起こった後に、アミン基へと変換される。変換は、例えば、水酸基をトシラートへと変換し、トシラートをメチルアミンなどの適切なアミンで置換することによって実施することが可能である。本実施形態において、Heckカップリング反応は、保護されたアミン基ではなく水酸基を含むことを除き、なお、同じ主要生成物と主要でない生成物を形成する。アミン含有化合物(すなわち、(E)−メタニコチン)の形成後、不純物(すなわち、Heckカップリング反応の主要でない生成物)が既に除去されていなければ、ヒドロキシ安息香酸塩の形成に関与する化学は、実質的に同一である。
【0017】
(第1の実施形態において)アミン基を脱保護した後、又は(第2の実施形態において)アミン基を形成した後、本明細書に記載されているヒドロキシ安息香酸との反応によってE−メタニコチンのヒドロキシ安息香酸塩を形成することが可能である。主要な生成物((E)−メタニコチン及び主要でない生成物のヒドロキシ安息香酸塩が形成される。しかしながら、ある種の条件下では、主要な反応生成物のヒドロキシ安息香酸塩((E)−メタニコチンヒドロキシ安息香酸塩)は、相対的に純粋な形態で溶液から沈殿し、主要でない不純物が濃縮された母液を残す。この結果は、(E)−メタニコチンの合成及び精製に著しい進歩を有する。
【0018】
一実施形態において、ヒドロキシ安息香酸塩は単離された後、薬学的に許容される様々な酸又はその塩との反応によって、様々な塩形態を形成するための中間体として使用される。しかしながら、別の実施形態において、E−メタニコチンヒドロキシ安息香酸塩は、活性な薬学的成分(API)として使用される。ヒドロキシ安息香酸塩は、直接使用することが可能であり、又は、それらを薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることによって、薬学的組成物中に含めることが可能である。ヒドロキシ安息香酸塩及び/又は薬学的組成物は、多様な症状又は疾患を治療及び/又は予防するために使用することが可能である。疾患は、特に、ドーパミン放出などの神経伝達物質の放出の神経調節を伴う疾患を含むニコチン様コリン作動性神経伝達の機能不全によって特徴付けられる疾患である。これら化合物は、正常な神経伝達物質の放出の変化によって特徴付けられる、中枢神経系(CNS)疾患などの疾患の治療及び/又は予防のための方法において使用することが可能である。これら化合物は、ある種の条件を治療するために使用することも可能である(例えば、疼痛を緩和するための方法)。本方法は、本明細書に記載されているように、E−メタニコチンヒドロキシ安息香酸塩又はE−メタニコチンヒドロキシ安息香酸塩を含む薬学的組成物の有効量を対象に投与することを含む。
【0019】
薬学的組成物は、有効量で使用されると、患者中の適切なニコチン性受容体部位と相互作用し、多様な症状及び疾患、特に、正常な神経伝達物質の放出の変化を特徴とする中枢神経系疾患に関連して、治療及び/又は予防剤として作用することが可能である。これら薬学的組成物は、組成物内の化合物が、有効量で使用されたときに、(i)ニコチン性薬理を惹起し、適切なニコチン性受容体部位に影響を与えることが可能であり(例えば、ニコチン性受容体を活性化する)、並びに(ii)神経伝達物質の分泌を調節し、このため、疾患に伴う症候を抑制及び抑圧することが可能であるという点で、このような疾患に罹患し、このような疾患の臨床症状を呈している個体に対して治療的な有益性を与えることが可能である。さらに、これら化合物は、(i)患者の脳のニコチン様コリン作動性受容体の数を増加させること、(ii)神経保護効果を示すこと、及び(iii)有効量で使用されたときに、有害な副作用(例えば、血圧及び心拍数の著しい増加、胃腸管に対する著しい負の効果及び骨格筋に対する著しい効果)の比較的低いレベルを惹起することが可能である。
【0020】
本発明の先述の態様及びその他の態様は、以下に記されている詳細な説明及び実施例で詳細に説明されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の詳細な説明
E−メタニコチン及びヒドロキシ安息香酸に由来する、本明細書に記載されているヒドロキシ安息香酸塩は、E−メタニコチン及び他の酸に由来する他の塩に対して多数の利点を有する。一般に、E−メタニコチンのヒドロキシ安息香酸塩は、高度に結晶性で、他の塩より吸湿性が低い傾向がある水溶性物質である。例えば、(2S)−(4E)−N−メチル−5−[3−(5−イソプロポキシピリジン)イル)]−4−ペンテン−2−アミンのp−ヒドロキシ安息香酸塩は、物理的及び化学的に安定であり、自由流動性の結晶粉末である。このような特性は、薬学的製剤の開発及び医薬の製造にとって明確な利点である。必要であれば、この塩は、薬学的な処理のために、許容可能な粒径範囲へと製粉することが可能である。この塩は、固体の経口剤形の製造のために選択され得る多様な賦形剤と適合性を有する。これは、薬学的に確定された水和物である多糖誘導体などの賦形剤及び緩やかに結合した表面水のみを有する賦形剤の場合に、特に当てはまる。例示として、E−メタニコチンとフマル酸などのある種のE−メタニコチンに由来する塩は、塩内に不純物を形成する傾向がある。例えば、E−メタニコチン中の第2級アミンの、フマル酸中のオレフィンへのMichael付加反応から不純物が生じる。これらの不純物は、塩の化学的純度を低下させ、長期保存時に、塩の化学的完全性に対して悪影響を与える。
【0022】
本明細書中に記載されている合成法は、以下の好ましい実施形態を参照しながら、よりよく理解されるであろう。以下の定義は、本発明の範囲を定義する上で有用である。
【0023】
本明細書に使用されている「芳香族」は、3ないし10員、好ましくは5員及び6員環の芳香環及び複素芳香環を表す。
【0024】
本明細書に使用されている「芳香族基含有種」は、芳香族基である部分、又は芳香族基を含む部分を表す。従って、フェニル及びベンジル部分は何れも、芳香族基であり、又は芳香族基を含むので、フェニル及びベンジル部分はこの定義中に含まれる。
【0025】
本明細書において使用される「アリール」は、フェニル、ナフチルなど、6ないし10個の炭素原子を有する芳香族基を表し、「置換されたアリール」は、本明細書に定義されている1つ以上の置換基をさらに有するアリール基を表す。
【0026】
本明細書において使用される「アルキルアリール」は、アルキル置換されたアリール基を表し;「置換されたアルキルアリール」は、本明細書に定義されている1つ以上の置換基をさらに有するアルキルアリール基を表し、「アリールアルキル」は、アリール置換されたアルキル基を表し、及び「置換されたアリールアルキル」は、本明細書に定義されている1つ以上の置換基をさらに有するアリールアルキル基を表す。
【0027】
本明細書において使用されるC1−6アルキル残基(低級アルキル基)は、直鎖又は分岐鎖中に1から6個の炭素原子を含有し、C3−6シクロアルキル部分及びC3−6シクロアルキル部分を含有するアルキル基も含む。
【0028】
本明細書において使用される「アルケニル」は、C1−8、好ましくはC1−5を含み、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、「置換されたアルケニル」は、本明細書に定義されている1つ以上の置換基をさらに有するアルケニル基を表す。
【0029】
本明細書において使用されるC1−6アルコキシ基は、直鎖又は分岐鎖中に1から6個の炭素原子を含有し、C3−6シクロアルキル及びC3−6シクロアルキル部分を含有するアルコキシ基も含む。
【0030】
本明細書において使用されるアリール基は、フェニル、ナフチル及びインデニルから選択される。
【0031】
本明細書において使用されるシクロアルキル基は、3ないし8個の炭素原子、好ましくは3ないし6個の炭素原子を含有する飽和又は不飽和の環状環含有基であり、「置換されたシクロアルキル」は、本明細書に定義されている1つ以上の置換基をさらに有するシクロアルキル基を表す。
【0032】
本明細書において使用されるハロゲンは、塩素、ヨウ素、フッ素又は臭素である。
【0033】
本明細書において使用されるヘテロアリール基は、3から10員、好ましくは5又は6員を含有し、酸素、硫黄及び窒素から選択される1つ以上の複素原子を含む。適切な5員環へテロアリール部分の例には、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チエニル、テトラゾリル及びピラゾリルが含まれる。適切な6員環へテロアリール部分の例には、ピリジニル、ピリミジニル及びピラジニルが含まれ、これらのうち、ピリジニル及びピリミジニルが好ましい。
【0034】
本明細書において使用される「ヘテロシクリル」は、環構造の一部として、1つ以上の複素原子(例えば、O、N、S)を含有し、環中に2ないし7個の炭素原子を有する飽和又は不飽和環状基を表し、「置換されたヘテロシクリル」は、本明細書に定義されている1つ以上の置換基をさらに有するヘテロシクリル基を表す。適切なヘテロシクリル部分の例には、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、イソチアゾリジニル、チアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル及びテトラヒドロフラニルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本明細書において使用されるポリシクロアルキル基は、縮合環状環構造である。代表的なポリシクロアルキル基には、アダマンチル、ボルナニル、ノルボルナニル、ボルネニル及びノルボルネニルが含まれるが、これらに限定されない。ポリシクロアルキル基には、N、O又はSなどの1つ以上の複素原子も含むことが可能である。
【0036】
本明細書において使用されるシクロアルキル基は、3から8個までの炭素原子を含有する。適切なシクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書において使用される、上記用語の何れかとともに使用される「置換された」という用語は、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、ヘテロシクリル、置換されたヘテロシクリル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アルキルアリール、置換されたアルキルアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、F、Cl、Br、I、NR’R’’、CF3、CN、NO2、C2R’、SH、SCH3、N3、SO2 CH3、OR’、(CR’R’’)qOR’、O−(CR’R’’)qC2R’、SR’、C(=O)NR’R’’、NR’C(=O)R’’、C(=O)R’、C(=O)OR’、OC(=O)R’、(CR’R’’)qOCH2C2R’、(CR’R’’)qC(=O)R’、(CR’R’’)qC(CHCH3)OR’、O(CR’R’’)qC(=O)OR’、(CR’R’’)qC(=O)NR’R’’、(CR’R’’)qNR’R’’、CH=CHR’、OC(=O)NR’R’’及びNR’C(=O)OR’’(qは、1から6までの整数であり、R’及びR’’は、個別に、水素又はアルキル(例えば、C1−10アルキル、好ましくは、C1−5アルキル、より好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、3級ブチル又はイソブチル)、シクロアルキル(例えば、シクロプロピル シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチル)、複素環部分の複素原子が、他の何れの窒素、酸素又は硫黄原子からも、少なくとも2つの炭素原子だけ隔てられている非芳香族複素環式環(例えば、キヌクリジニル、ピロリジニル及びピペリジニル)、芳香族基含有種(例えば、ピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、フラニル、フェニル及びベンジル(先述の何れもが、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、ハロ又はアミノ置換基などの、少なくとも1つの置換基で適切に置換されることが可能である。)))などの1、2又は3個の置換基の存在を表す。
【0037】
本明細書において使用される「アゴニスト」とは、その結合対、典型的には、受容体を刺激する物質である。刺激とは、特定のアッセイに関連して定義されるか、又は、当業者によって理解される実質的に類似の環境下で、特定の結合対の「アゴニスト」又は「アンタゴニスト」として受容される因子又は物質に対して比較を行う本明細書中の考察から得られる文献中に出現し得る。刺激は、アゴニスト又は部分的アゴニストの、結合対との相互作用によって誘導される特定の効果又は機能の増加に関して定義され得、アロステリック効果を含むことが可能である。
【0038】
本明細書において使用される「アンタゴニスト」とは、その結合対、典型的には、受容体を阻害する物質である。阻害とは、特定のアッセイに関連して定義されるか、又は、当業者によって理解される実質的に類似の環境下で、特定の結合対の「アゴニスト」又は「アンタゴニスト」として受容される因子又は物質に対して比較を行う本明細書中の考察から得られる文献中に出現し得る。阻害は、アンタゴニストの、結合対との相互作用によって誘導される特定の効果又は機能の減少に関して定義され得、アロステリック効果を含むことが可能である。
【0039】
本明細書において使用される「部分的アゴニスト」とは、その結合対への刺激のレベルが、完全な又は完璧なアンタゴニストの刺激レベルとアゴニスト活性に対する何らかの受容された標準によって規定されるアゴニストの刺激レベルとの間の中間にあるレベルを提供する物質である。アゴニスト、アンタゴニスト又は部分的アゴニストとして定義されるべき何れかの物質又は物質のカテゴリーに対して、刺激及び阻害が本質的に定義さされることが認められる。本明細書において使用される「内在性活性」又は「効力」は、結合対複合体の生物学的有効性の幾つかの指標に関する。受容体の薬理学に関して、内在活性又は効力を定義すべき文脈は、結合対(例えば、受容体/リガンド)複合体の文脈及び特定の生物学的結果に関連する活性の考慮に依存する。例えば、幾つかの状況では、内在性活性は、関与する具体的なセカンドメッセンジャー系に依存して変動し得る。「Hoyer,D. and Boddeke, H., Trends Pharmacol Sci. 14(7):270−5 (1993)」を参照されたい。このような文脈的に特異的な評価が妥当である場合、及びその評価が本発明において、どのように妥当であるかは、当業者にとって自明である。
【0040】
本明細書において使用される、その放出が本明細書に記載されている化合物によって媒介される神経伝達物質には、アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン及びグルタミン酸が含まれるが、これらに限定されるものではなく、本明細書に記載されている化合物は、中枢神経系(CNS)nAChRの1つまたはそれ以上でアゴニスト又は部分的アゴニストとして機能する。
【0041】
I.化合物。
【0042】
本明細書に記載されている化合物は、(E)−メタニコチン型化合物のヒドロキシ安息香酸塩である。
【0043】
A.ヒドロキシ安息香酸
(E)−メタニコチン型化合物のヒドロキシ安息香酸塩を調製するために使用することが可能なヒドロキシ安息香酸は、以下の一般式:
【0044】
【化3】

を有する。
【0045】
(水酸基は、カルボン酸基に対してオルト、メタ又はパラの位置に存在することが可能であり、Zは、水素でない置換基を表し、jは、環上に存在することが可能なZ置換基の数を表す0から3までの数字である。適切なZ置換基の例には、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、ヘテロシクリル、置換されたヘテロシクリル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アルキルアリール、置換されたアルキルアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、F、Cl、Br、I、NRR’’、CF、CN、NO、CR’、SH、SCH3、N3、SO2 CH3、OR’、(CR’R’’)qOR’、O−(CR’R’’)qC2R’、SR’、C(=O)NR’R’’、NR’C(=O)R’’、C(=O)R’、C(=O)OR’、OC(=O)R’、(CR’R’’)qOCH2C2R’、(CR’R’’)qC(=O)R’、(CR’R’’)qC(CHCH3)OR’、O(CR’R’’)qC(=O)OR’、(CR’R’’)qC(=O)NR’R’’、(CR’R’’)qNR’R’’、CH=CHR’、OC(=O)NR’R’’及びNR’C(=O)OR’’が含まれる(qは、1から6までの整数であり、R’及びR’’は、個別に、水素又はアルキル(例えば、C1−10アルキル、好ましくは、C1−5アルキル、より好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、3級ブチル又はイソブチル)、シクロアルキル(例えば、シクロプロピル シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチル)、複素環部分の複素原子が、他の何れの窒素、酸素又は硫黄原子からも、少なくとも2つの炭素原子だけ隔てられている非芳香族複素環式環(例えば、キヌクリジニル、ピロリジニル及びピペリジニル)、芳香族基含有種(例えば、ピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、フラニル、フェニル及びベンジル(先述の何れもが、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、ハロ又はアミノ置換基などの、少なくとも1つの置換基で適切に置換されることが可能である。)))
【0046】
他の代表的な芳香環系は、「Gibson et al., J. Med. Chem. 39:4065 (1996)」に記載されている。R’及びR’’は、直鎖又は分岐アルキルであることができ、又はR’及びR’’並びに介在する原子は結合して、環構造(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル又はキヌクリジニル)を形成することが可能である。ヒドロキシ安息香酸は、ジアステレオマーを形成することによって、キラル炭素を含有するE−メタニコチンを精製することを補助することが可能なキラル官能基で場合によって置換されることが可能である。
【0047】
使用可能な代表的安息香酸には、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ゲンチジン酸、没食子酸、5−アミノサリチル酸、シリンガ酸、4−メチルサリチル酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸及び5−ヒドロキシフタル酸が含まれる。
【0048】
B.E−メタニコチン
E−メタニコチン化合物には、式:
【0049】
【化4】

の化合物が含まれる。
【0050】
(Cyは、5又は6員のヘテロアリール環であり、
E及びE’は、個別に、水素、アルキル、置換されたアルキル、ハロ置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクリル、置換されたヘテロシクリル、、アリール、置換されたアリール、アルキルアリール、置換されたアルキルアリール、アリールアルキル又は置換されたアリールアルキルを表し、
Z’及びZ’’は、個別に、水素又はアルキル(シクロアルキルを含む。)を表し、好ましくは、Z’及びZ’’の少なくとも1つが水素であり、最も好ましくは、Z’は水素であり、並びにZ’’はメチルであり、あるいは、Z’、Z’’及び付随する窒素原子は、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルなどの環構造を形成することが可能であり、二重結合上の両方のE基は、好ましくは、水素であり、並びに、
mは、1、2、3、4、5又は6である。
【0051】
1つの実施形態において、E及びE’の全ては水素であり、別の実施形態において、E又はE’の少なくとも1つはアルキルであり、残りのE及びE’は水素である。好ましい実施形態において、E’は、アルキル基、好ましくはメチル基である。
【0052】
これらの化合物の異性体、混合物(ラセミ混合物を含む。)、鏡像異性体、ジアステレオマー及び互変異性体並びに薬学的に許容されるこれらの塩も、本発明の範囲に属する。
【0053】
1つの実施形態において、Cyは、以下のように図示される6員環のヘテロアリールである。
【0054】
【化5】

【0055】
ここにおいて、X、X’、X’’、X’’’及びX’’’’の各々は、個別に、窒素、酸素に結合された窒素(例えば、N−オキシド又はN−O官能基)又はHに結合した炭素又は水素でない置換基種である。X、X’、X’’、X’’’及びX’’’’の3つ以下は窒素又は酸素に結合した窒素であり、X、X’、X’’、X’’’及びX’’’’の1つ又は2つのみが、窒素又は酸素に結合した窒素であることが好ましい。さらに、X、X’、X’’、X’’’及びX’’’’の1つ以下が、酸素に結合した窒素であることが極めて好ましく、これらの種の1つが酸素に結合した窒素である場合には、その種は、X’’’であることが好ましい。最も好ましくは、X’’’は窒素である。ある種の好ましい状況では、X’及びX’’’の両方が窒素である。典型的には、X、X’’及びX’’’’は、置換基種に結合した炭素であり、X、X’’及びX’’’’における置換基種は水素であることが典型的である。X’’’が水素などの置換基種に結合した炭素である、ある種の他の好ましい化合物の場合には、X及びX’は何れも窒素である。X’が水素などの置換基種に結合した炭素である、ある種の他の好ましい化合物の場合において、X及びX’’’は何れも窒素である。
【0056】
適切な非水素置換基種は、Zに関して上で定義されているとおりである。
【0057】
別の実施形態において、Cyは、以下の式の5員環のヘテロアリールである。
【0058】
【化6】

【0059】
(Y及びY’’は、個別に、窒素、置換基種に結合された窒素、酸素、硫黄又は置換基種に結合された炭素であり、Y’及びY’’’は、窒素であり、又は置換基種に結合された炭素である。破線は、結合(YとY’の間及びY’とY’’の間)が単結合又は二重結合の何れでもあり得ることを示している。)
【0060】
しかしながら、YとY’の間の結合が単結合である場合には、Y’とY’’の間の結合は二重結合でなければならず、逆もまた同様である。Y又はY’’が酸素又は硫黄である場合には、Y及びY’’の1つのみが酸素又は硫黄の何れかである。Y、Y’、Y’’及びY’’’の少なくとも1つは、酸素、硫黄、窒素又は置換基種に結合された窒素でなければならない。Y、Y’、Y’’及びY’’’の3つ以下が、酸素、硫黄、窒素又は置換基種に結合された窒素であることが好ましい。Y、Y’、Y’’及びY’’’の少なくとも1つ、但し、3つ以下が窒素であることはさらに好ましい。
【0061】
X、X’、X’’、X’’’、X’’’’、Y’、Y’’及びY’’’上の置換基種は、隣接している場合、結合して、エーテル、アセタール、ケタール、アミン、ケトン、ラクトン、ラクタム、カルバマート又は尿素官能基(これらに限定されない。)を含有する1つ以上の飽和又は不飽和の、置換又は非置換炭素環又は複素環を形成することができる。
【0062】
それぞれの各E及びE’の種類および位置に応じて、ある種の化合物は、光学的に活性であることが可能である(例えば、化合物は、R又はS配置を有する1つ以上のキラル中心を有することが可能である。)。本発明は、このような化合物のラセミ混合物及び単一の鏡像異性体化合物に関する。
【0063】
特に興味深いのは、式:
【0064】
【化7】

【0065】
(X’、E、E’、Z’、Z’’及びmは、本明細書に前述されているとおりであり、A、A’及びA’’は、水素又はヒドロキシ安息香酸に関して上で定義されている置換基種Zである。)
のアリール置換されたアミン化合物である。好ましくは、全てのEが水素であり、E’はアルキル、好ましくはメチルである。好ましくは、Z’が水素であり、Z’’は水素又はメチルである。好ましくは、mは1又は2である。
【0066】
アリール置換されたアミン化合物の典型的な種類は、Caldwellらに付与された米国特許第5,212,188号;Smithらに付与された米国特許第5,604,231号;Crooksらに付与された米国特許第5,616,707号;Dullらに付与された米国特許第5,616,716号;Ruecroftらに付与された米国特許第5,663,356号;Crooksらに付与された米国特許第5,726,316号;Bencherifらに付与された米国特許第5,811,442号;Caldwellらに付与された米国特許第5,861,423 号;Dullらに付与された米国特許第6,337,351号;WO 97/40011号;WO 99/65876号;及びWO 00/007600号が含まれる。本発明を実施する上で有用な代表的化合物の開示を与える目的で、前記参考文献の全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0067】
本発明において有用な典型的化合物には、メタニコチン型の化合物が含まれる。
代表的な好ましい化合物には、(E)−メタニコチン、(3E)−N−メチル−4−(5−エトキシ−3−ピリジニル)−3−ブテン−1−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−(5−ニトロ−6−アミノ−3−ピリジニル)−3−ブテン−1−アミン、(3E)−N−メチル−4−(5−(N−ベンジルカルボキサミド)−3−ピリジニル)−3−ブテン−1−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−ピリミジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−ピリミジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(2−アミノ−5−ピリミジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(5−アミノ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−1−オキソ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−(5−イソブトキシ−3−ピリジニル)−3−ブテン−1−アミン、(3E)−N−メチル−4−(1−オキソ−3−ピリジニル)−3−ブテン−1−アミン、(4E)−N−メチル−5−(l−オキソ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(3E)−N−メチル−4−(5−エチルチオ−3−ピリジニル)−3−ブテン−1−アミン、(4E)−N−メチル−5−(5−トリフルオロメチル−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(5−((カルボキシメチル)オキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン及び(4E)−N−メチル−5−(5−ヒドロキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが含まれる。さらなる代表的な例には、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−シクロヘキシルオキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−シクロヘキシルオキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−フェノキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−フェノキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−(4−フルオロフェノキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−(4−フルオロフェノキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−(3−シアノフェノキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−(3−シアノフェノキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−(5−インドリルオキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン及び(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−(5−インドリルオキシ)−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが含まれる。
【0068】
II.化合物の調製
本明細書に記載されている(E)−メタニコチン型の化合物が合成的に産生される様式は、変化し得る。例えば、これら化合物は、パラジウムによって触媒される芳香族ハロゲン化物のカップリング反応、及び保護されたアミン置換基を含有する末端オレフィン、第1級又は第2級アミンを取得するための保護基の除去、及び第2級又は第3級アミンを提供するために場合によって行われるアルキル化によって調製することが可能である。特に、ある種のメタニコチン型化合物は、3−ハロ置換され、場合によって5−ハロ置換されたピリジン化合物又は5−ハロ置換されたピリミジン化合物を、保護されたアミン官能基を有するオレフィン(例えば、フタルイミド塩の、3−ハロ−1−プロペン、4−ハロ−1−ブテン、5−ハロ−1−ペンテン又は6−ハロ−1−ヘキセンとの反応によって提供されるオレフィンなど)を用いた、パラジウムによって触媒されるカップリング反応に供することによって調製することが可能である。「Frank et al., J. Org. Chem., 43(15):2947−2949 (1978)」;及び「Malek et al., J. Org. Chem., 47:5395−5397 (1982)」を参照されたい。
【0069】
別の実施形態において、これら化合物は、4−ペンテン−2−オールなどのオレフィンアルコールを、3−ブロモピリジン又は3−ヨードピリジンなどの芳香族ハロゲン化物と縮合させることによって合成される。典型的には、Frank et al., J. Org. Chem., 43(15):2947−2949 (1978)及びMalek et al., J. Org. Chem., 47:5395−5397 (1982)に記載されている、オレフィンと芳香族ハロゲン化物の、パラジウムによって触媒されるカップリングを伴う手順の種類が使用される。オレフィンアルコールは、場合によって、カップリングの前に、t−ブチルジメチルシリルエーテルとして保護することが可能である。次いで、脱シリル化が、オレフィンアルコールを与える。次いで、アルコール縮合産物は、「deCosta et al., J. Org. Chem., 35:4334−4343(1992)」に記載されている手順の種類を用いて、アミンへと変換される。典型的には、アルコール縮合産物は、塩化メタンスルホニル又は塩化p−トルエンスルホニルを用いたアルコールの活性化、その後、アンモニア又は第1級若しくは第2級アミンを用いたメシラート又はトシラート置換によって、アリール置換されたオレフィンアミンへ変換される。このため、アミンがアンモニアである場合には、アリール置換されたオレフィン第1級アミン化合物が提供され、アミンがメチルアミン又はシクロブチルアミンなどの第1級アミンである場合には、アリール置換されたオレフィン第2級アミン化合物が提供され、アミンがジメチルアミン又はピロリジンなどの第2級アミンである場合には、アリール置換されたオレフィン第3級アミン化合物が提供される。他の代表的なオレフィンアルコールには、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−2−オール、5−ヘキセン−3−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−2−オール、1−オクテン−4−オール、5−メチル−1−ヘプテン−4−オール、4−メチル−5−ヘキセン−2−オール、5−メチル−5−ヘキセン−2−オール、5−ヘキセン−2−オール及び5−メチル−5−ヘキセン−3−オールが含まれる。1,1,1−トリフルオロ−4−ペンテン−2−オールなどのトリフルオロメチル置換されたオレフィンアルコールは、「Kubota et al., Tetrahedron Letters, 33(10):1351−1354 (1992)」の手順を用いて、1−エトキシ−2,2,2−トリフルオロ−エタノール及びアリルトリメチルシランから、又は「Ishihara et al., Tetrahedron Letters, 34(56):5777−5780 (1993)」の手順を用いて、トリフルオロ酢酸エチルエステル及びアリルトリブチルスタンナンから調製することが可能である。ある種のオレフィンアルコールは光学活性であり、アリール置換されたオレフィンアミン化合物の対応する光学活性形態を提供するために、鏡像異性体混合物として、又は純粋な鏡像異性体として使用することが可能である。メタリルアルコールなどのオレフィンアリルアルコールを芳香族ハロゲン化物と反応させると、アリール置換されたオレフィンアルデヒドが産生され、生じたアルデヒドは、還元的アミノ化によって(例えば、アルキルアミン及びシアノホウ水素化ナトリウムを用いた処理によって)、アリール置換されたオレフィンアミン化合物へ変換することが可能である。好ましい芳香族ハロゲン化物は、3−ブロモピリジン型化合物及び3−ヨードピリジン型化合物である。典型的には、このような3−ハロピリジン型化合物の置換基は、化学物質(例えば、塩化トシル及びメチルアミン)との接触及び、アリール置換されたオレフィンアミン化合物の調製中に経験される反応条件を生き延びることが可能であるような置換基である。あるいは、−OH、−NH及び−SHなどの置換基は、対応するアシル化合物として保護することが可能であり、又は−NHなどの置換基はフタルイミド官能基として保護されることが可能である。二ハロ芳香族の場合には、2つの異なるオレフィン側鎖への、パラジウム触媒された(Heck型)逐次カップリングが可能である。
【0070】
1つの実施形態において、(E)−メタニコチン型化合物は、(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンなどの分岐した側鎖を有する。1つの合成アプローチを使用することによって、後者の化合物は、側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンが、Heck反応条件下で、3−置換された5−ハロ−置換ピリジンである5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンとカップリングされた後、tert−ブトキシカルボニル保護基が除去される収束的な様式で合成することが可能である。典型的には、「W.C.Frank et al., J. Org. Chem., 43(15):2947(1978)」及び「N.J. Malek et al., J. Org. Chem., 47:5395(1982)」に記載されている、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒されたカップリングを伴う手順の種類が使用される。必要とされるN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンは、以下のように合成することが可能である。(i)「T. Michel, et al., Liebigs Ann. 11:1811 (1996)」によって以前に記載されている、市販の4−ペンテン−2−オール(Aldrich Chemical Company,Lancaster Synthesis Inc.)を、ピリジン中の塩化p−トルエンスルホニルで処理して、4−ペンテン−2−オール p−トルエンスルホナートを得ることができ、(ii)得られたトシラートは、過剰のメチルアミンとともに加熱されて、N−メチル−4−ペンテン−2−アミンを与えることが可能であり、(iii)「A. Viola et al., J. Chem. Soc, Chem. Commun. 21:1429 (1984)」によって、以前に記載されているような得られたアミンは、無水テトラヒドロフラン中のジ−tert−ブチル二カルボナートの1.2モル当量と反応させて、側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンを与えることが可能である。ハロ置換されたピリジン(例えば、5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジン)は、少なくとも2つの異なる経路によって合成することが可能である。1つの調製では、密封されたガラス管中、(3,5−ジブロモピリジンの5%w/w)、銅粉末の存在下で、無水イソプロパノール中のカリウムイソプロポキシドの2モル当量とともに、3,5−ジブロモピリジンを140℃で14時間加熱して、5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンを得る。5−ブロモニコチン酸からの5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンの第二の調製は、以下のようにして行うことができる。(i)塩化チオニルによる処理後、中間体酸塩化物の、アンモニア水との反応によって、5−ブロモニコチン酸が5−ブロモニコチンアミドへと変換され、(ii)「C. V. Greco et al., J. Heteocyclic Chem. 7(4):761 (1970)」によって以前に記載された、得られた5−ブロモニコチンアミドを、水酸化ナトリウム及び次亜塩素酸カルシウムの70%溶液を用いた処理によるHofmann分解に供し、(iii)「C. V. Greco et al., J. Heteocyclic Chem. 7(4):761 (1970)」によって以前に記載された、得られた3−アミノ−5−ブロモピリジンを、酸性条件下で、亜硝酸イソアミルを用いたジアゾ化によって、5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンへと変換した後、イソプロパノールにより、中間体ジアゾニウム塩を処理して、5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジンを得ることが可能である。5−ブロモ−3−イソプロポキシピリジン及びN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンの、パラジウムによって触媒されたカップリングは、1モル%の酢酸パラジウム(II)及び4モル%のトリ−o−トリルホスフィンからなる触媒を用いて、アセトニトリル−トリエチルアミン(2:1、v/v)中で実施される。反応は、80℃で20時間、成分を加熱することによって実施することができ、(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。tert−ブトキシカルボニル保護基の除去は、0℃で、アニソール中のトリフルオロ酢酸の30モル当量での処理によって達成することが可能であり、(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。様々なN−メチル−5−(5−アルコキシ又は5−アリールオキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンは、この種の技術(すなわち、ナトリウム又はカリウムアルコキシド又はアリールオキシドによる処理、及びその後のHeckカップリング及び脱保護)を用いて、3,5−ジブロモピリジンから入手することが可能である。
【0071】
別の実施形態において、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンなどの化合物は、Heck反応条件下で、ハロ置換されたピリジンである5−ブロモ−3−メトキシピリジンを、2級アルコール官能基を含有するオレフィンである4−ペンテン−2−オールとカップリングさせることによって合成することが可能であり、得られたピリジニルアルコール中間体は、そのp−トルエンスルホナートエステルへと変換された後、メチルアミンで処理することが可能である。典型的には、「W.C.Frank et al., J. Org. Chem., 43(15):2947(1978)」及び「N.J.Malek et al., J. Org. Chem., 47:5395(1982)」に記載されている、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒されたカップリングを伴う手順の種類が使用される。ハロ置換されたピリジンである5−ブロモ−3−メトキシピリジンは、「H. J. den Hertog et al., Recl. Trav. Chim. Pays−Bas 67:377 (1948)」によって記載されている方法と類似の方法を用いて、すなわち、150℃で14時間、密封されたガラス管中、銅粉末(3,5−ジブロモピリジンの5%、w/w)の存在下で、無水メタノール中のナトリウムメトキシドの2.5モル当量とともに3,5−ジブロモピリジンを加熱して、5−ブロモ−3−メトキシピリジンを与えることによって合成される。「D. L. Comins, et al., J. Org. Chem. 55:69 (1990)」によって以前に記載された、得られた5−ブロモ−3−メトキシピリジンは、1モル%の酢酸パラジウム(II)及び4モル%のトリ−o−トリルホスフィンからなる触媒を用いて、アセトニトリル−トリエチルアミン(1:1:1、v/v)中の4−ペンテン−2−オールとカップリングさせることが可能である。反応は、140℃で14時間、密封されたガラス管中の成分を加熱することによって実施され、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−オールが得られる。得られたアルコールは、0℃で、無水ピリジン中の塩化p−トルエンスルホニルの2モル当量で処理されて、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−オール p−トルエンスルホナートを生じる。共溶媒としてエタノールの少量を含有する40%水溶液としてのメチルアミンの120モル当量で、トシラート中間体を処理して、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンを生じる。上記条件下で、3,5−ジブロモピリジンを、N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとのHeckカップリングに供すると、N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−ブロモ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが産生される。これは、その後のHeck反応において、スチレンとカップリングされ、前述のように脱保護(tert−ブトキシカルボニル基の除去)されて、(4E)−N−メチル−5−[3−(5−トランス−β−スチリルピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンを与える。エチニルベンゼンとの第2の類似のカップリング及びその後の脱保護は、(4E)−N−メチル−5−[3−(5−フェニルエチニルピリジン)イル]−4−ペンテン−2−アミンを与える。
【0072】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンなどの、アリール置換されたある種のオレフィンアミン化合物の光学的に活性な形態を提供することが可能である。1つの合成アプローチにおいて、化合物の後者の種類は、Heck反応条件下で、ハロ置換されたピリジンである3−ブロモピリジンを、キラル第2級アルコール官能基(2R)−4−ペンテン−2−オールを有するオレフィンとカップリングさせることによって合成される。得られたキラルピリジニルアルコール中間体(2R)−(4E)−5−(3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−オールは、その対応するp−トルエンスルホナートエステルへと変換され、続いて、これは、メチルアミンで処理され、立体配置が反転したトシラート置換がもたらされる。典型的には、「W.C.Frank et al., J. Org. Chem., 43(15):2947(1978)」及び「N.J.Malek et al., J. Org. Chem., 47:5395(1982)」に記載されている、芳香族ハロゲン化物とオレフィンのパラジウム触媒されたカップリングを伴う手順の種類が使用される。キラル側鎖(2R)−4−ペンテン−2−オールは、「A. Kalivretenos, J. K. Stille, and L. S. Hegedus, J. Org. Chem. 56:2883 (1991)」の一般的な合成方法を用いて、低温(−25ないし−10℃)で、テトラヒドロフラン中の臭化ビニルマグネシウム及びヨウ化銅(I)で、キラルエポキシドである(R)−(+)−プロピレンオキシド(Fluka Chemical Companyから市販されている。)を処理して、(2R)−4−ペンテン−2−オールを得ることによって調製することが可能である。得られたキラルアルコールは、1モル%の酢酸パラジウム(II)及び4モル%のトリ−o−トリルホスフィンからなる触媒を用いて、アセトニトリル−トリエチルアミン(1:1、v/v)中の3−ブロモピリジンとのHeck反応に供される。反応は、140℃で14時間、密封されたガラス管中の成分を加熱して、Heak反応産物である(2R)−(4E)−5−(3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−オールを産生することによって行われる。得られたキラルピリジニルアルコールは、0℃の無水ピリジン中の塩化p−トルエンスルホニルの3モル当量で処理されて、トシラート中間体を与える。共溶媒としてエタノールの少量を含有する40%水溶液としてのメチルアミンの82モル当量で、p−トルエンスルホナートエステルを加熱して、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンを生じる。
【0073】
類似の様式で、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンなどの、アリール置換された対応するオレフィンアミン鏡像異性体は、3−ブロモピリジンと(2S)−4−ペンテン−2−オールのHeckカップリングによって合成することが可能である。得られた中間体(2S)−(4E)−5−(3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−オールは、そのp−トルエンスルホナートへと変換され、これは、メチルアミン置換へと供される。キラルアルコール(2S)−4−ペンテン−2−オールは、「A.Kalivretenos, J. K. Stille, and L. S. Hegedus, J. Org. Chem. 56:2883 (1991)」によって報告されたように、(R)−(+)−プロピレンオキシドからの(2R)−4−ペンテン−2−オールの調製に関して記載された手順と類似の手順を用いて、(S)−(−)−プロピレンオキシド(Aldrich Chemical Companyから市販されている。)から調製される。
【0074】
別のアプローチでは、(3E)−N−メチル−4−(3−(6−アミノピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミンなどの化合物は、2−アミノ−5−ブロモピリジン(Aldrich Chemical Company)などの3−ハロ置換されたピリジンを、N−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミドなどの保護されたアミン官能基を有するオレフィントとの、パラジウムによって触媒されたカップリング反応へ供することによって調製することが可能である。得られたHeck反応産物から得られるベンゾイル保護基は、酸水溶液とともに加熱することによって除去することが可能であり、(3E)−N−メチル−4−(3−(6−アミノピリジン)イル)−3−ブテン−1−アミンが得られる。オレフィン出発材料N−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミドは、4−ブロモ−1−ブテンを、炭酸カリウムの存在下、N,N−ジメチルホルムアミド中で、縮合されたメチルアミンの過剰と反応させて、N−メチル−3−ブテン−1−アミンを得るによって調製することが可能である。トリエチルアミンを含有するジクロロメタン中の塩化ベンゾイルで後者の化合物を処理することにより、オレフィン側鎖N−メチル−N−(3−ブテン−1−イル)ベンズアミドが得られる。
【0075】
本明細書中に記載されている化合物は、ピラジン又はピリダジン環を含有することが可能である。M.Hasegawaら(欧州特許第0 516 409 B1号)によって報告された手順を用いて、2−メチルピラジン又は3−メチルピリダジン(何れもAldrich Chemical Companyから入手可能)は、N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノブタナールと縮合して、それぞれ、(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(2−ピラジニル)−4−ペンテン−2−アミン及び(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(3−ピリダジニル)−4−ペンテン−2−アミンを与える。トリフルオロ酢酸でtert−ブトキシカルボニル基を除去することによって、それぞれ、(4E)−N−メチル−5−(2−ピラジニル)−4−ペンテン−2−アミン及び(4E)−N−メチル−5−(3−ピリダジニル)−4−ペンテン−2−アミンが産生される。必要なN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノブタナールは、PCT国際出願WO9212122中で、M.Adamczyk及びY.Y.Chenによって記載された技術を用いて、対応するアルコールから産生することが可能である。アルコールN−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノ−1−ブタノールは、連続的な還元的アミノ化(R. F. Borch in Org. Syn., 52:124(1974)によって報告された化学を用いて、メチルアミン及びシアノホウ水素化ナトリウムを用いる。)及びジ−tert−ブチルジカルボナートでの保護によって、市販の4−ヒドロキシ−2−ブタノン(Lancaster Synthesis,Inc.)から作製することが可能である。
【0076】
上述したHeckカップリング反応は、ある種の縮合環複素環を有する化合物を調製する上でも有用である。このような化合物は、6−ブロモ−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンなどのブロモ複素環式化合物の、前述したオレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとの、パラジウムによって触媒されたカップリングによって合成することが可能である。典型的には、「W.C.Frank et al., J. Org. Chem., 43(15):2947(1978)」及び「N.J.Malek et al., J. Org. Chem., 47:5395(1982)」に記載されている、オレフィンと芳香族ハロゲン化物のパラジウム触媒されたカップリングを伴う手順の種類が、カップリング反応のために使用される。得られたtert−ブトキシカルボニル保護された(Boc−保護された)中間体は、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンを産生するために、トリフルオロ酢酸などの強酸による処理に供することが可能である。必要なブロモイミダゾピリジンである6−ブロモ−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンは、「P. K. Dubey et al., Indian J. Chem. 16B(6):531−533(1978)」によって記載された方法に従って、ポリリン酸中で、酢酸とともに2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンを加熱することにより、82%の収率で調製することが可能である。2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンは、「S. X. Cai et al., J. Med. Chem. 40(22):3679−3686 (1997)」によって記載された技術に従って、沸騰しているエタノール中で、塩化スズ(II)二水和物とともに、2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジン(Aldrich Chemical Company及びLancaster Synthesis,Inc.から市販されている。)を加熱することによって、97%の収率で調製することが可能である。
【0077】
別の例では、6−ブロモ−1,3−ジオキソロ[4,5−b]ピリジンなどのブロモ縮合環複素環は、Heck反応を用いて、前述したオレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとカップリングさせることが可能である。得られたBoc保護された中間体は、(4E)−N−メチル−5−(6−(1,3−ジオキソロ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンを産生するために、トリフルオロ酢酸などの強酸で脱保護することが可能である。必要なブロモ化合物6−ブロモ−1,3−ジオキソロ[4,5−b]ピリジンは、「F.Dallacker et al., Z. Naturforsch. 34 b:1729−1736(1979)」の方法に従って、炭酸カリウム及びN,N−ジメチルホルムアミドの存在下で、ブロモクロロメタンを用いて、メチレン化操作を介して、5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジン(5−ブロモ−3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノンとしても知られる。)から合成することが可能である。5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンは、「F. Dallacker et al., Z Naturforsch. 34 b:1729−1736 (1979)」に記載されている方法を用いて、フルフラル(2−フルアルデヒド、Aldrich Chemical Company及びLancaster Synthesis, Inc.から市販されている。)から調製することが可能である。あるいは、5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンは、D.Rose及びN.Maakに付与されたEP 0081745に記載された技術に従って調製することが可能である。
【0078】
縮合環複素環を有する化合物の別の例では、ブロモ化合物7−ブロモ−2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジン(7−ブロモ−5−アザ−4−オキサクロマンとしても知られる。)は、Heck反応を用いて、前述したオレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンと縮合させることが可能である。得られたBoc保護された化合物は、(4E)−N−メチル−5−(7−(2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンを産生するために、トリフルオロ酢酸などの強酸で脱保護することが可能である。ブロモ化合物7−ブロモ−2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキシノ[2,3−b]ピリジンは、「F. Dallacker et al., Z Naturforsch. 34 b:1729−1736(1979)」の方法に従って、N,N−ジメチルホルムアミド中、5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンを1,2−ジブロモエタン及び炭酸カリウムで処理することによって調製することが可能である。5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシピリジンは、上述のようにフルフラルから調製することが可能である。
【0079】
他の多環式芳香族化合物は、Heck反応によって調製することが可能である。このため、ある種の化合物は、6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールなどのブロモ縮合環複素環の、前述したオレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとの、パラジウムによって触媒されたカップリングによって合成することが可能である。Heck反応から生じたBoc−保護された中間体は、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−チオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンを産生するために、トリフルオロ酢酸などの強酸による処理に供することが可能である。必要なブロモ化合物6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールは、「Y.M. Yutilov,Khim.Geterotsikl Doedin.6:799−804(1988)」に記載されている方法に従って、230〜260℃で、6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンを硫黄で処理することによって調製することが可能である。6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンは、Sigma−Aldrich Chemical Companyから取得することが可能である。あるいは、6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンは、「P. K. Dubey et al., Indian J. Chem. 16B(6):531−533 (1978)」によって記載された方法と類似の方法を用いて、ポリリン酸中で、2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンを、ギ酸で処理することによって調製することが可能である。2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンは、「S. X. Cai et al, J. Med. Chem. 40(22):3679−3686 (1997)」によって記載された技術に従って、沸騰しているエタノール中で、塩化スズ(II)二水和物とともに、2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジン(Aldrich Chemical Company及びLancaster Synthesis,Inc.から市販されている。)を加熱することによって、97%の収率で調製することが可能である。あるいは、6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールは、「T.C. Kuhler et al., J.Med.Chem.38(25):4906−4916(1995)」によって記載された方法と類似の方法を用いて、エタノール水溶液中で、2,3−ジアミノ−5−ブロモピリジンを、K−SCSOEtとともに加熱することによって調製することが可能である。2.3−ジアミノ−5−ブロモピリジンは、上述のように、2−アミノ−5−ブロモ−3−ニトロピリジンから調製することが可能である。
【0080】
関連する例において、6−ブロモ−2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンは、前述したオレフィンアミン側鎖N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとのHeck反応を介してカップリングさせることが可能である。得られたBoc−保護された中間体は、(4E)−N−メチル−5−(6−(2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンを産生するために、トリフルオロ酢酸などの強酸による処理に供することが可能である。ブロモ化合物6−ブロモ−2−フェニルメチルチオ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンは、炭酸カリウム及びN,N−ジメチルホルムアミドの存在下で、前述した6−ブロモ−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−チオールを、臭化ベンジルでアルキル化することによって調製することが可能である。
【0081】
別の例において、6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンは、N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンへの、パラジウム触媒されたカップリング及びトリフルオロ酢酸による脱保護に順次供されると、(4E)−N−メチル−5−(6−オキサゾロ[4,5−b]ピリジニル)−4−ペンテン2−アミンを与える。必要な6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンは、「M−C.Viaud et al., Heterocycles 41:2799−2809(1995)」の方法と類似の方法を用いて、ギ酸又はトリアルキルオルトホルマートとの縮合によって、2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールから産生することが可能である。他のカルボン酸の使用は、同じくHeck反応に対する基質である2−置換された−6−ブロモオキサゾロ[4,5−b]ピリジンを産生する。2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールの合成は、フルフリルアミンから進行する(Aldrich Chemical Company)。このため、5−ブロモ−3−ピリジノール(米国特許第4,192,946号に従って、フルフリルアミンから製造された。)は、「V. Koch et al., Synthesis, 499 (1990)」によって記載された方法を用いて塩素化して、2−クロロ−5−ブロモ−3−ピリジノールを与えることができ、これは、次いで、アンモニアによる処理によって、2−アミノ−5−ブロモ−3−ピリジノールへと変換することが可能である。
【0082】
5−ブロモオキサゾロ[5,4−b]ピリジン(先述の6−ブロモオキサゾロ「4,5−b」ピリジンへの環融合の配向性による異性体)は、N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとのHeckカップリングにおいて使用することも可能である。その後、tert−ブトキシカルボニル保護基を除去することによって、(4E)−N−メチル−5−(5−オキサゾロ[5,4−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。5−ブロモオキサゾロ[5,4−b]ピリジンは、上述のようにギ酸(又はその誘導体)との縮合によって、3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリジノール(3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリドン)から合成することが可能である。3−アミノ−5−ブロモ−2−ピリジノールは、((「T. Batkowski, Rocz. Chem. 41:729−741 (1967)」によって記載されている技術を用いた)臭素化、及び、これに引き続く、(S.X.Cai et al.,J.Med.Chem.40(22):3679−3686(1997)によって記載されている方法に従う)市販の3−ニトロ−2−ピリジノール(Aldrich Chemical Company)の塩化スズ(II)還元によって作製することが可能である。
【0083】
本発明の他の多環式芳香族化合物は、Heck反応によって調製することが可能である。このため、5−ブロモフロ[2,3−b]ピリジン及び5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンの何れも、先述のオレフィンアミン側鎖N−メチルーN−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとの、パラジウム触媒されたカップリングを行うことが可能であり、それぞれ、(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−フロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン及び(4E)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(5−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンを与える。その後、トリフルオロ酢酸でtert−ブトキシカルボニル基を除去することによって、(4E)−N−メチル−5−(5−フロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン及び(4E)−N−メチル−5−(5−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが産生される。必要な5−ブロモフロ[2,3−b]ピリジン及び5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンは、「E. C. Taylor et al., Tetrahedron 43:5145−5158(1987)」によって記載された化学を用いて、臭素化(メタノール中の、臭素及び炭酸水素ナトリウム)及び脱水素化(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン)により、それぞれ、2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジン及び2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンから作製することが可能である。2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジン及び2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンは、「A. E. Frissen et al., Tetrahedron 45:803−812 (1989)」によって記載されているように、次いで、(3−ブチン−1−オールのナトリウム塩又は4−アミノ−1−ブチンを用いた)塩化物の求核置換及びその後の分子内Diels−Alder反応によって、2−クロロピリミジン(Aldrich Chemical Company)から作製される。類似の化学を用いて、2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジン及び2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンは、3−メチルチオ−1,2,4−トリアゼンからも作製され(E. C. Taylor et al., Tetrahedron 43:5145−5158(1987))、3−メチルチオ−1,2,4−トリアゼンは、グリオキサール及びS−メチルチオセミカルバジド(W. Paudler et al., J. Heterocyclic Chem. 7:767−771 (1970))から作製される。
【0084】
臭素化された、ジヒドロフロピリジン、ジヒドロピロロピリジン及びジヒドロピラノピリジンも、パラジウムによって触媒されるカップリングのための基質である。例えば、5−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジン及び5−ブロモ−2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジン(上述のように、2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジン及び2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジンの臭素化から得られる。)は何れも、Heckプロセスにおいて、先述のオレフィンアミン側鎖とカップリングすることが可能である。その後の脱保護によって、対応する(4E)−N−メチル−5−(5−(2,3−ジヒドロフロ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミン及び(4E)−N−メチル−5−(5−(2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンが得られる。6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジン([2,3−b]系との環融合での異性体)の同様の処理によって、(4E)−N−メチル−5−(6−(2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンを与える。必要な6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジンは、リチウムジイソプロピルアミドの2当量(2−メチレニル、3−0オキシジアニオンを与えるため)及びジブロモメタンの1当量での順次の処理によって、5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールから作製することが可能である。あるいは、「M. U. Koller et al., Synth. Commun. 25:2963−74(1995)」によって記載された化学と類似の化学を用いて、シリル保護されたピリジノール(5−ブロモ−2−メチル−3−トリメチルシリルオキシピリジン)は、リチウムジイソプロピルアミドの1当量及びアルキル又はアリールアルデヒドで、順次処理することが可能であり、2−(2−(1−アルキル又は1アリール−1−ヒドロキシ)エチル)−5−ブロモ−3−(トリメチルシリルオキシ)ピリジンを生じる。このような材料は、当業者に公知の(酸によって触媒された環化又はWilliamson合成などの)方法によって、対応する環状エーテル(2−アルキル−又は2−アリール−6−ブロモ−2,3−ジヒドロフロ[3,2−b]ピリジン)へと変換されることが可能である。エポキシド(アルデヒドの代わりに)が、ピリジニルメチルカルバニオンとの反応において使用される類似の化学は、2−アルキル−及び2−アリール−7−ブロモ−2,3−ジヒドロピラノ[3,2−b]ピリジンをもたらす。これらの2−置換された、臭素化された、ジヒドロフロ及びジヒドロピラノピリジンも、Heck反応のための基質である。例えば、6−ブロモ−2,3−ジヒドロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジンは、パラジウムによって触媒されるプロセスにおいて、N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとカップリングすることが可能であり、(tert−ブトキシカルボニル基を除去するために)カップリング生成物をトリフルオロ酢酸で処理すると、(4E)−N−メチル−5−(6−(2,3−ジヒドロ−2−フェニルフロ[3,2−b]ピリジン)イル)−4−ペンテン−2−アミンを与える。
【0085】
臭素化されたジヒドロフロ及びジヒドロピラノピリジンを合成するために使用される5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールは、市販の材料の標準的な転換によって作製される。このため、2−メチニコチン酸(2methyinicotinic acid)(Aldrich Chemical Company)は、塩化チオニル、臭素及びアンモニアでの順次の処理によって(C. V. Greco et al., J. Heterocyclic Chem. 7:761−766(1970))によって記載された方法)、5−ブロモ−2−メチルニコチンアミドへと変換することが可能である。5−ブロモ−2−メチルニコチンアミドの、次亜塩素酸塩によるHofmann転位は、3−アミノ−5−ブロモ−2−メチルピリジンを与え、これは、硫酸水溶液中の亜硝酸ナトリウムでのジアゾ化によって、5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールへと変換することが可能である。あるいは、アラニンエチルエステル(Aldrich Chemical Company)は、(ギ酸エチルを用いて)そのN−ホルミル誘導体へと変換され、次いで、これは、五酸化リンを用いて、5−エトキシ−4−メチルオキサゾールへと変換される(N. Takeo et al.,日本国特許第45,012,732号)。5−エトキシ−4−メチルオキサゾールの、アクリロニトリルによるDiels−Alder反応は、5−ヒドロキシ−6−メチルニコチノニトリル(T. Yoshikawa et al, Chem. Pharm. Bull. 13:873 (1965))を与え、5−ヒドロキシ−6−メチルニコチノニトリルは、水和及びHofmann転位(Y. Morisawa et al., Agr. Biol. Chem.39:1275−1281 (1975))によって、5−アミノ−メチル−3−ピリジノールへと変換される。5−アミノ−2−メチル−3−ピリジノールは、次いで、臭化銅の存在下で、ジアゾ化によって、所望の5−ブロモ−2−メチル−3−ピリジノールへと変換することが可能である。
【0086】
これらの方法は、各々、(E)−メタニコチン型化合物を主生成物として与えるが、前述のように、対応する(Z)−メタニコチン型化合物及びその他の異性体の微量も生成する。これらの微小な反応生成物は、所望であれば、慣用の技術を用いて除去することが可能である。あるいは、以下でさらに詳細に記載されているように、(E)−メタニコチン型化合物は、ヒドロキシ安息香酸塩として単離することが可能であり、ヒドロキシ安息香酸塩は、(Z)−メタニコチン型化合物及びその他の微小な反応生成物のヒドロキシ安息香酸塩を含む反応混合物から実質的に純粋な形態で沈殿させることが可能である。
【0087】
本化合物を与えるために、Heckカップリング反応以外の他の方法を使用することが可能である。例えば、(E)−メタニコチン型化合物は、置換されたニコチン型化合物から、「Loffler et al., Chem. Ber., 42:3431−3438 (1909)」及び「Laforge, J.A.C.S., 50:2477(1928)」によって記されている技術を用いて調製することが可能である。ある種の6置換されたメタニコチン型化合物は、「Acheson et al., J. Chem. Soc, Perkin Trans. l(2):579−585 (1980)」の一般的な方法を用いて対応する6置換されたニコチン型化合物から調製することが可能である。このような化合物の必要な前駆体である6置換されたニコチン型化合物は、「Rondahl, Acta Pharm. Suec, 14:113−118(1977)」によって開示された一般的方法を用いて、6−置換されたニコチン酸エステルから合成することが可能である。ある種の5置換されたメタニコチン型化合物の調製は、「Acheson et al., J. Chem. Soc, Perkin Trans. 1(2):579−585(1980)」によって教示された一般的な方法を用いて、対応する5置換されたニコチン型化合物から達成することが可能である。5−ハロ置換されたニコチン型化合物(例えば、フルオロ及びブロモ置換されたニコチン型化合物)及び5−アミノニコチン型化合物は、「Rondahl,Act.Pharm. Suec,14:113−118(1977)」によって開示された一般的手順を用いて調製することが可能である。5−トリフルオロメチルニコチン型化合物は、「Ashimori et al., Chem. Pharm. Bull, 38(9):2446−2458 (1990)」及び「Rondahl, Acta Pharm. Suec, 14:113−118 (1977)」に記載されている技術及び材料を用いて調製することが可能である。
【0088】
E−メタニコチンヒドロキシベンゾアートの形成
(E)−メタニコチンヒドロキシベンゾアートは、上述したE−メタニコチン型化合物をヒドロキシ安息香酸と反応させることによって形成される。塩を調製するために使用される各成分(E−メタニコチン及びヒドロキシ安息香酸)の化学量論は、変動することが可能である。ヒドロキシ安息香酸:塩基(E−メタニコチン)のモル比は、典型的には2:1ないし1:2、より典型的には2:1又は1:1であることが典型的であるが、他の比(3:2など)が可能である。酸:塩基のモル比は1:1であることが好ましい。本発明の塩が形成される様式に応じて、本発明の塩は、塩形成の際に存在する溶媒を閉塞し得る結晶構造を有し得る。このため、本発明の塩は、アリール置換されたアミンに対する溶媒の変動する化学量論の水和物及び他の溶媒和物として生じ得る。
【0089】
本発明の化合物を提供する方法は、様々であり得る。例えば、p−ヒドロキシベンゾアート形態の(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンの調製は、(1)エタノール中に溶解された適切に純粋な化合物の溶液を、還流しながら加熱された、エタノール中のp−ヒドロキシ安息香酸(1−1当量)の溶液へ添加して、沈殿を形成させること、(2)沈殿を溶解するために、熱及び/又は水及びエタノール(水は10%を超えない。)を付与すること、(3)必要であれば、塩の沈殿を生じさせるために、得られた溶液を冷却すること、並びに塩をろ過及び収集することを含むことが可能である。使用される化学量論、溶媒の混合、溶質の濃度及び温度は変動し得るが、塩の形成は、当業者の技術水準の範疇に属する。
【0090】
他の塩形態の形成
所望であれば、ヒドロキシ安息香酸塩が一旦単離されたら、例えば、薬学的に許容される別の酸との直接反応によって、又は(強塩基との反応及び適切な溶媒中への抽出によって)遊離塩基をまず単離した後、薬学的に許容される別の酸との反応によって他の塩形態を形成することが可能である。このような手順は、当業者に公知である。
【0091】
III.薬学的組成物
本発明の薬学的組成物は、純粋な状態で、又は前記化合物が他の何らかの薬学的に適合性のある生成物(不活性であってもよく、又は生理的に活性であってもよい。)と組み合わされた組成物の形態で、本明細書に記載されているヒドロキシベンゾアートを含む。このような組成物は、例えば、経口、非経口、直腸又は局所的に投与することが可能である。
【0092】
経口投与用の固体組成物の例には、錠剤、丸薬、粉末(ゼラチンカプセル、カプセル)及び顆粒が含まれるが、これらに限定されない。これらの組成物において、活性化合物は、デンプン、セルロース、スクロース、ラクトース又はシリカなどの1つ以上の不活性希釈剤と、理想的には、アルゴンなどの不活性気体の流れの下で混合される。
【0093】
前記組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はタルクなどの1つ以上の潤滑剤、着色剤、コーティング(被覆された錠剤)又はワニスも含むことが可能である。
【0094】
経口投与用の液体組成物の例には、薬学的に許容される溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ及びエリキシルが含まれるが、これらに限定されるものではなく、典型的には、水、エタノール、グリセロール、植物油又は液体パラフィンなどの不活性希釈剤を含有する。これらの組成物は、希釈剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、濃縮剤、香味剤及び安定化剤以外の物質を含むことが可能である。
【0095】
非経口投与用の無菌組成物は、例えば、水性又は非水性溶液、懸濁液及びエマルジョンを含むことが可能である。適切な溶媒及びビヒクルの例には、水溶液、好ましくは緩衝化された水溶液、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油、注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチル及び他の適切な有機溶媒を含むが、これらに限定されない。これらの組成物は、佐剤、特に、湿潤剤、等張剤、乳化剤、分散剤及び安定化剤も含むことが可能である。このような無菌組成物は、数多くの方法で、例えば、無菌ろ過によって、滅菌剤を組成物中に取り込ませることによって、放射線によって、及び加熱によって滅菌することが可能である。無菌組成物は、無菌水又は他の何らかの無菌注射可能溶媒中へ、使用時に溶解させることが可能な無菌固体組成物の形態で調製することも可能である。
【0096】
直腸投与用組成物の例には、活性な生成物の他に、カカオバター、半合成グリセリド及びポリエチレングリコールなどの賦形剤を含むことが可能な坐剤及び直腸カプセルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
局所投与用の組成物は、例えば、クリーム、ローション、洗眼液、うがい剤、点鼻薬又はエアロゾルであり得る。
【0098】
薬学的組成物は、添加物又は付加物として、様々な他の成分を含むことも可能である。適切な状況で使用される、薬学的に許容される典型的な成分又は付加物には、抗酸化剤、フリーラジカルスカベンジャー剤、ペプチド、成長因子、抗生物質、静菌剤、免疫抑制剤、抗凝固剤、緩衝剤、抗炎症剤、解熱剤、徐放結合剤、麻酔薬、ステロイド及びコルチコステロイドが含まれる。このような成分は、さらなる治療的な利点を提供し、薬学的組成物の治療作用に影響を与えるように作用し、又は薬学的組成物の投与の結果として生じる可能性がある何らかの副作用を抑制するように作用することが可能である。ある種の状態において、本発明の化合物は、特定の疾患を予防又は治療することを目的とする他の化合物との薬学的組成物の一部として使用することが可能である。
【0099】
IV.治療方法
本明細書に記載のヒドロキシ安息香酸塩は、ニコチン性化合物の他種が治療法として提案されている状態及び疾患の種類を治療するのに有用である。例えば、Williams et al.,DN&P 7(4):205−227(1994)、Arneric et al.,CNS Drug Rev.1(1):1−26(1995)、Arneric et al.,Exp.Opin.Invest.Drugs5(1):79−100(1996)、Bencherif et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.279:1413(1996)、Lippiello et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.279:1422(1996)、Damaj et al.,Neuroscience(1997)、Holladay et al.,J.Med.Chem.40(28):4169−4194(1997)、Bannon et al.,Science 279:77−80(1998)、PCT WO94/08992、PCT WO96/31475並びにBencherifらの米国特許第5,583,140号、Dullらの米国特許第5,597,919号及びSmithらの米国特許第5,604,231号を参照する。
【0100】
疾病及び疾患の前記種類の管理における既存の治療と組み合わせた補助的療法として、前記塩を使用することもできる。こうした状況において、筋肉及び神経節と関連するnAChRサブタイプなどのnAChRサブタイプに対する影響を最小限に抑える様式で、活性成分を投与するのが好ましい。これは、標的化された薬物送達により、及び/又は著しい副作用を引き起こすのに必要とされる閾値用量を充足せずに所望の効果が得られるように用量を調節することにより、達成可能である。本医薬組成物は、これらの症状、疾病及び疾患と関連したあらゆる症状を改善するために使用できる。
【0101】
治療可能な状態及び疾患の例には、神経疾患、神経変性疾患、特に、中枢神経系疾患、及び炎症性疾患を含む。中枢神経系疾患は、薬剤によって誘導することが可能であり、遺伝的素因、感染症又は外傷に起因することが可能であり、又は病因不明の場合があり得る。中枢神経系疾患は、精神神経疾患、神経疾患及び精神疾患を含み、並びに神経変性疾患、行動障害、認知障害、及び認知情動障害を含む。臨床症状が、中枢神経系機能不全(即ち、神経伝達物質放出の不適当なレベル、神経伝達物質受容体の不適当な特性、及び/又は神経伝達物質と神経伝達物質受容体の間の不適当な相互作用から生じる疾患)に起因すると考えられている複数の中枢神経系疾患が存在する。幾つかの中枢神経系疾患は、コリン、ドパミン、ノルエピネフリン及び/又はセロトニンの欠乏に起因すると考えることができる。
【0102】
本明細書中に記載されているE−メタニコチン化合物及びヒドロキシ安息香酸塩並びにこれらの化合物及び塩を含有する医薬組成物を使用して治療できる中枢神経系疾患の例には、初老期認知症(早発型アルツハイマー病)、老年性認知症(アルツハイマー型の認知症)、レビィー小体認知症、微小梗塞性認知症、AIDS関連認知症、HIV認知症、多発性脳梗塞、パーキンソン病を含むパーキンソン症候群、ピック病、進行性核上麻痺、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジア、運動過剰症、てんかん、躁病、注意不足障害、不安、うつ病、失読症、統合失調症うつ病、強迫神経症、ツーレット症候群、軽度認知障害(MCI)、加齢性記憶障害(AAMI)、加齢に関連した、又はアルコール依存症若しくは免疫不全症の結果、又は血管疾患、遺伝的な変化(例えば、21トリソミーなど)、又は注意不足若しくは学習障害と関連した早発性健忘症及び認知障害、筋萎縮性側索硬化症などの急性又は慢性の神経変性症状、多発性硬化症、末梢神経症、及び脳外傷又は脊椎外傷を含む。更に、依存状態(例えば、アルコール、コカイン、ヘロイン及びアヘン、覚醒剤、ベンゾジアゼピン並びにバルビツレート)をもたらす物質に関連するニコチン依存症及び/又は他の行動障害を治療するために並びに肥満を治療するために本化合物を使用することができる。また、クローン病、過敏性腸症候群及び潰瘍性大腸炎並びに下痢などの胃腸系内における炎症性の特性を示す病状を治療するためにも使用することが可能である。
【0103】
ヒドロキシ安息香酸塩を投与する様式は変えることが可能である。吸入により(例えば、経鼻的にエアゾールの形態で、又はBrooksらの米国特許第4,922,901号に記載されている種類の送達製品を用いて)、局所的に(例えば、ローション形態で)、経口的に(例えば、水性若しくは非水性の液体などの溶媒内で又は固体担体内の液体形態で)、静脈内で(例えば、ブドウ糖又は食塩溶液内で)、注入又は注射として(例えば、懸濁液として、又は薬学的に許容される液体若しくは液体混合物中のエマルジョンとして)、鞘内で、脳室内に、又は経皮的に(例えば、経皮パッチを用いて)塩を投与することができる。塩をバルクの活性化学物質形態で投与することも可能であるが、各塩を効率的かつ効果的に投与するための医薬組成物又は製剤の形態で与えることが好ましい。このような塩を投与するための典型的な方法は、当業者には明白であろう。例えば、錠剤、硬質ゼラチンカプセル又は徐放カプセルとしての形態で、塩を投与することができる。他の例として、Novartis及びAlza Corporationから入手できるパッチ技術の種類を使用して、塩を経皮的に送達することができる。本発明の薬学的組成物の投与は、間欠的に、又は漸次の継続的な一定の速さ又は調節された速さで、温血動物(例えば、マウス、ラット、ネコ、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシ又はサルなどの哺乳動物)に対して行うことができるが、有利には、化合物をヒトに投与するのが好ましい。更に、薬学的製剤が投与される1日の時刻及び1日当りの回数を変えることが可能である。投与は、薬学的製剤の活性成分が中枢神経系又は胃腸(GI)管の機能に影響を及ぼす、対象の体内に存在する受容体部位と相互作用するような投与が好ましい。更に具体的には、中枢神経系疾患の治療において、筋肉型受容体サブタイプに対する影響を最小限に抑えながら、中枢神経系の機能に影響を及ぼすこれらの関連受容体サブタイプに対する影響を最適化する投与が望ましい。塩を投与するための他の適切な方法は、Smithらの米国特許第5,604,231号に記載されており、その開示内容の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0104】
塩の適切な投与量は、疾患の症状の発生を予防し、又は患者が罹患している疾患の幾つかの症候を治療するのに有効な量である。「有効な用量」、「治療量」又は「有効投与量」とは、所望の薬理効果又は治療効果を引き出すのに十分な量を意味し、従って、疾患の効果的な予防又は治療をもたらす。このため、中枢神経系疾患を治療する場合、ヒドロキシ安息香酸塩の有効量は、対象の血液脳関門を横切って、被験者の脳中の関連受容体部位に結合するため、遊離塩基薬物の十分な量を送達し、関連のニコチン受容体サブタイプ(例えば、神経伝達物質の分泌を提供し、従って、疾患の効果的な予防又は治療をもたらす。)を調節するのに必要な用量である。疾患の予防は、疾患の症候の発生を少なくとも遅延させることによって、又は症候の重篤さを低減することによって現れる。疾患の治療は、疾患に伴う症候の減少によって、又は疾患の症候の再発を軽減する
ことによって現れる。
【0105】
患者の状態、疾患の症候の重症度及び薬学的組成物の投与様式などの要因に応じて、有効投与量は変動することが可能である。ヒト患者の場合、典型的な塩の有効投与量は、一般的に、関連の受容体を調節して、神経伝達物質(例えば、ドーパミン)の放出に影響を及ぼすのに十分な量で塩を投与する必要があるが、何らかの有意な程度まで骨格筋及び神経節に対する効果を誘導するには不十分な量とすべきである。ヒドロキシ安息香酸塩の有効投与量は、当然ながら、患者ごとに異なるが、一般的には、中枢神経系の効果又は他の所望の治療効果の発生を開始する量であるが、この量より少ない量で、筋肉効果が観察される量が含まれる。
【0106】
投与量は、所望の効果、治療の期間、使用される投与経路に依存し、成人に対する経口投与において、一般的には、活性成分、0.05mg〜100mg/日である。一般的にいえば、医師は、年齢、体重及び患者特有の他の全ての要因の関数として、適切な投与量を決定する。
【0107】
本発明の塩は、本発明の方法に従って、有効量で使用されると、何らかの有意な程度まで、ヒト神経節のnAChRの活性化をもたらすことができない場合が多い。副腎クロマフィン組織のニコチン様機能を活性化するこれらの塩の能力の欠如により、心血管系副作用に関与するこれらのnAChRに対する本発明の塩のかかる選択性が示される。従って、このような塩は、副腎に由来する細胞調製物中のnAChRを通じた同位体ルビジウムイオン流動を引き起こす能力が乏しい。一般的に、本発明を実施する上で有用である好ましい典型的な塩は、同位体ルビジウムイオンの流出を、S(−)ニコチンにより最大限に与えられる流出の10%未満、多くの場合、5%未満で最大限に活性化する。
【0108】
これらの塩は、ある程度の中枢神経系疾患の進行予防を提供すること、中枢神経系疾患の症候を改善すること、及び中枢神経系疾患の再発をある程度まで改善することに対して有効である。しかしながら、心臓血管系に対する影響又は骨格筋への影響を反映すると考えられる調製物に対する影響を軽減することによって示されるように、これらの塩のこのような有効量は、かなりの望ましくないニコチン様効果を惹起するには十分ではない。従って、本発明の塩の投与は、ある種の中枢神経系疾患の治療が提供され、不要な末梢ニコチン様効果/副作用が回避される治療域を提供する。つまり、本発明の化合物の有効投与量は、中枢神経系に対する所望の効果をもたらすのに十分であるが、望ましくない副作用をもたらすには不十分(即ち、十分に高いレベルでない。)である。好ましくは、中枢神経系疾患の治療をもたらす本発明の化合物の有効な投与は、何らかの副作用を有意な程度で引き起こすのに十分な量の1/3未満、しばしば1/5未満、多くの場合1/10未満の投与で生じる。
【0109】
以下の合成及び分析例は本発明を例示するために提供されており、その範囲を限定するものと解釈すべきでない。これらの例において、別段の記載がなければ、全ての部及びパーセントは重量によるものである。反応収率は、モル百分率で報告されている。
【実施例1】
【0110】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンp−ヒドロキシベンゾアートの合成
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンp−ヒドロキシベンゾアート
p−ヒドロキシ安息香酸(2.62g、19.0mmol)を、酢酸イソプロピル(50mL)中の(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン(93%純度で4.79g、19.0mmol)の攪拌した溶液に少量ずつ添加した。添加中、塩の結晶化が明瞭であった。p−ヒドロキシ安息香酸を完全に添加した後、イソプロパノールをゆっくりと添加しながら、懸濁液を、その融点近くに加熱した。イソプロパノール15mLを添加した後、完全な溶解を得た。室温に溶液を冷却すると(一晩)、結晶状塊の沈殿物を生じ、この沈殿物を吸引ろ過により収集し、空気乾燥させた(4.3g)。アセトンの添加により、第二の結晶物(0.82g)を、濃縮したろ液から単離した。二つの結晶物を混合し、アセトン(50mL)から再結晶化した。吸引ろ過により固体を収集し、真空オーブン(50℃)で18時間乾燥させた。こうして白い結晶(GCMS及びLCMSにより98+%純度、融点99−101℃)を4.24g(60.0%)残した。
【実施例2】
【0111】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンの合成((S)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミンとのヘック反応による)及び(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンの単離及び精製を促進するp−ヒドロキシ安息香酸塩の使用
3−ブロモ−5−イソプロポキシピリジン
72Lの反応器に、ナトリウムtert−ペントキシド(2.2g、20mol)及び1−メチル−2−ピロリジノン(17.6L)を連続して投入した。この混合物を1時間攪拌し、次いで2−プロパノール(12L)を、2時間にわたり添加した。続いて3,5−ジブロモピリジン(3.0kg、13mol)を反応器に添加し、窒素雰囲気下にて、混合物を75℃で12時間加熱した。次いで混合物を冷却し、トルエン(15L)で希釈して、水(30L)で洗浄した。水相をトルエン(15L)で抽出し、混合したトルエン相を水(15L)で洗浄し、減圧下で濃縮して、暗色の油状物2.5kgを得た。この油状物を、均等サイズのバッチの第二処理段階からの物質と混合し、減圧蒸留して(0.3mmにて沸点65℃)、3−ブロモ−5−イソプロポキシピリジン3.1kg(57%)を淡黄色の油状物として生成した。
【0112】
(2R)−4−ペンテン−2−オール
「A.Kalivretenos,J.K.Stille and L.S.Hegedus,J.Org.Chem.56:2883(1991)」に記載の方法に従って、(R)−(+)−プロピレンオキシドから(2R)−4−ペンテン−2−オールを82.5%の収率で調製した。
【0113】
(S)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミン
塩化p−トルエンスルホニル(18.6g、97.4mmol)を、3分間にわたって添加しながら、(R)−4−ペンテン−2−オール(7.62g、88.5mmol)、ピリジン(15mL)及び無水(水素化カルシウムから蒸留)ジクロロメタン(30mL)の混合物を氷浴中で攪拌した。重量の大きな沈殿物が形成したので、混合物を0℃で20分間攪拌し、室温で16時間攪拌した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液(75mL)を添加し、二相混合物を激しく3時間攪拌した。ジクロロメタン相及び水相の二つのジクロロメタン抽出液(各50mL)を混合し、乾燥させ(NaSO)、ロータリーエバポレータにより濃縮した。高真空処理により、淡黄色の油状物18.7gを生成し、この油状物をジメチルホルムアミド(DMF)(35mL)及び40%メチルアミン水溶液(35mL)と混合した。この溶液を室温で48時間攪拌し、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液(300mL)及び2.5M水酸化ナトリウム(50mL)の混合物中に注いだ。この混合物をエーテル(5×250mL)で抽出し、エーテル抽出物を乾燥させ(NaSO)、約250mLの量なるまで、ロータリーエバポレータにより(氷冷浴から)濃縮した。残りの溶液を、ジ−tert−ブチルジカルボナート(16.9g、77.4mmol)及びTHF(100mL)と混合し、混合物を室温で16時間攪拌した。揮発性物質をロータリーエバポレータにより蒸発し、残留物を5mmの圧力にて減圧蒸留し(沸点79−86℃)、透明で無色の液体7.74g(43.9%収率)を得た。
【0114】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンp−ヒドロキシベンゾアート
3−ブロモ−5−イソプロポキシピリジン(21.0g、97.2mmol)、(S)−N−メチル−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ペンテン−2−アミン(24.0g、120mmol)、DMF(53mL)、KCO(22g、159mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.22g、0.98mmol)及びトリ−o−トリルホスフィン(0.57g、1.9mmol)の混合物を脱気し、窒素下に置いた。次いで、攪拌した混合物を130℃で2.5時間加熱した。パラジウム塩を除去するため、SmopexTM(20g)及び酢酸エチル(100mL)を添加した。攪拌した混合物を50℃で5時間加熱し、室温で16時間加熱して、次いでろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残留物(83g)をメタノール(25mL)中で溶解し、冷水浴(<5℃)中で冷却して、6M HCl(100mL)を滴下して処理した。この混合物を室温で3時間攪拌し、真空下の濃縮によりメタノールを取り除いた。残りの混合物水溶液を、ジクロロメタン(100mL)で洗浄し、3M NaOHを慎重に(冷却しながら)添加することにより塩基性化し、ジクロロメタンで抽出した(2×200mL)。これらの後者の抽出物を飽和NaCl水溶液で洗浄し、真空下で濃縮した。残留物をアセトン(150mL)中で溶解し、p−ヒドロキシ安息香酸(14.0g、101mmol)を添加した。多量の固体を形成したので、p−ヒドロキシ安息香酸を完全に溶解した後、溶液を室温に維持した(数時間)。−15℃にて数時間の冷却後、混合物を吸引ろ過した。生じた固体(24.8g)をアセトン(240mL)から再結晶化し、灰白色の結晶22.3g(61.6%)(GCMS及びLCMSにより97+%純度)を得た。
【実施例3】
【0115】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン2,5−ジヒドロキシベンゾアート(ゲンチザート)の合成
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン2,5−ジヒドロキシベンゾアート
無水エタノール(1mL)中の2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチシン酸)(0.582g、3.78mmol)の熱い溶液を、無水エタノール(1mL)中の(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン(1.00g、4.85mmol、GC−FIDによる86.7%E異性体)の温溶液へ添加し、転移に追加のエタノール(2mL)を使用した。生じた混合物を、ロータリーエバポレータで濃縮し、メタノールの溶液1.5mLが残存した。攪拌し、ほぼ還流まで加熱しながら、結晶化を生じた。生じた熱混合物を、酢酸エチル(5.5mL)を滴下して処理した。室温まで冷却した後、5℃で48時間、混合物を更に冷却した。生じた固体をろ過し、酢酸エチル(2×5mL)で洗浄し、50℃で乾燥させ、灰白色の粉末1.24g(91%)(遊離塩基に対し、GC−FIDにより98.0%E異性体)を得た。試料から色を取り除くため、物質をエタノール/イソプロパノール(3.5mL:5.5mL)から再結晶化して、灰白色の粉末1.03g(85%回収率)を得、続いてエタノール/酢酸エチル(3mL:12mL)から再結晶化して、白色の結晶性粉末0.90g(87%回収率)を得た。融点166−167℃。
【実施例4】
【0116】
E−メタニコチン2,5−ジヒドロキシベンゾアートの合成
E−メタニコチン2,5−ジヒドロキシベンゾアート
2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチシン酸)(0.475g、3.08mmol)を、酢酸エチル(3mL)及びイソプロパノール(2.5mL)中のE−メタニコチン(0.500g、3.08mmol)の溶液へ添加し、全固体が溶解するまで、生じた混合物を徐々に加熱した。冷却すると、白い粒状沈殿物が沈殿し、混合物を5℃で冷却した。固体をろ過し、冷イソプロパノール(3×2mL)で洗浄し、40℃で4時間、真空下で乾燥させ、淡黄色のフレーク状の固体0.58g(29.7%)を得た。融点90−91.5℃。H NMR(DO):単塩化学量論。C1014 0.15HOに対し算出:C,64.00%;H,6.41%;N,8.78%。検出:C,63.92,64.00%;H,6.33,6.34%;N,8.79,8.84%。
【実施例5】
【0117】
E−メタニコチン3,5−ジヒドロキシベンゾアートの合成
E−メタニコチン3,5−ジヒドロキシベンゾアート
3,5−ジヒドロキシ安息香酸(0.475g、3.08mmol)を、イソプロパノール(11mL)及びメタノール(4.5mL)中のE−メタニコチン(0.500g、3.08mmol)の温溶液へ添加した。ほぼ還流になるまで加熱し、生じたゴム状物を溶解して、淡黄色の溶液を室温に冷却し、更に5℃で冷却した。沈殿して生じた暗黄色のゴム状物を酢酸イソプロピル(3mL)及びメタノール(4mL)中に溶解し、加熱によって補助した。室温に冷却し、更に5℃で冷却した後、灰白色の固体をろ過し、酢酸イソプロピルで洗浄し、ワックス状で褐色のフレーク状物0.505g(51.8%)を得た。融点160−161.5℃。H NMR(DO):単塩化学量論.C1014 0.15HOに対し算出:C,64.00%;H,6.41%;N,8.78%.検出:C,64.03,64.02%;H,6.38,6.38%;N,8.80,8.76%。
【0118】
分析的実施例
【実施例6】
【0119】
関連受容体部位への結合の測定
Dullらの米国特許第5,597,919号に記載の技術に従って、ヒドロキシ安息香酸塩と関連の受容体部位との相互作用を決定することが可能である。Cheng et al.,Biochem,Pharnacol.22:3099(1973)の方法を使用し、nMで報告した阻害定数(Ki値)を、IC50値から算出できる。低い結合定数は、本明細書に記載の塩の成分が、特定のCNSニコチン受容体との優れた高親和性結合を表すことを示している。
【0120】
先の記述は、本発明の例示であり、その範囲を限定するものと解釈すべきでない。本発明は、以下の特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲には、特許請求の範囲の均等物が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンとヒドロキシ安息香酸との反応産物として形成される塩であり、前記ヒドロキシ安息香酸は、式:
【化1】

[式中、
ヒドロキシ基は、カルボン酸基に対してオルト位、メタ位又はパラ位に存在することが可能であり、Zは、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、ヘテロシクリル、置換されたヘテロシクリル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アルキルアリール、置換されたアルキルアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、F、Cl、Br、I、NR’R’’、CF、CN、NO、CR’、SH、SCH、N、SOCH、OR’、(CR’R’’)OR’、O−(CR’R’’)R’、SR’、C(=O)NR’R’’、NR’C(=O)R’’、C(=O)R’、C(=O)OR’、OC(=O)R’、(CR’R’’)OCHR’、(CR’R’’)C(=O)R’、(CR’R’’)(CHCH)OR’、O(CR’R’’)C(=O)OR’、(CR’R’’)C(=O)NR’R’’、(CR’R’’)NR’R’’、CH=CHR’、OC(=O)NR’R’’及びNR’C(=O)OR’’からなる群から選択される非水素置換基を表し、
qは、1〜6の整数を表し、並びにR’及びR’’は、個別に、水素、C1−10アルキル、シクロアルキル、複素環部分の複素原子が他の何れの窒素、酸素若しくは硫黄原子からも、少なくとも2個の炭素原子によって隔てられた非芳香族複素環であり、又はピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、フラニル、フェニル及びベンジルからなる群から選択される芳香族基含有種であり、前述の何れも、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、ハロ又はアミノ置換基などの少なくとも1つの置換基で適切に置換されることが可能であり、
並びに、jは、環上に存在することが可能なZ置換基の数を表す0〜3の数字である]を有し、
ここで、(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン:ヒドロキシ安息香酸のモル比が、1:2〜2:1の範囲である、前記塩。
【請求項2】
前記ヒドロキシ安息香酸が、o−、m−又はp−ヒドロキシ安息香酸である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
前記ヒドロキシ安息香酸が、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)である、請求項1に記載の塩。
【請求項4】
(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンが、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンである、請求項1に記載の塩。
【請求項5】
薬学的に許容される担体とともに、請求項1〜4の何れかに記載の塩を含む薬学的組成物。
【請求項6】
(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン又は対応するヒドロキシ安息香酸塩を調製する方法であって、
a)3−ハロ−5−イソプロポキシピリジンと、式(S)−CH=CH−CH−CH(CH)−N(CH)(pg){ここで、pgはアミンに対する保護基である}の化合物との間でHeckカップリング反応を実施する工程;及び
b)保護されたアミノ基を脱保護する工程;又は
c)3−ハロ−5−イソプロポキシピリジンと、式(R)−CH=CH−CH−CH(CH)−OHの化合物との間でHeckカップリング反応を実施する工程;及び
d)(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンを含む化合物、関連するZ−メタニコチン化合物及び他の異性体の混合物を形成するために、OH基をNHCH基へと変換する工程;
e)前記混合物の、式:
【化2】

[式中、
ヒドロキシ基は、カルボン酸基に対してオルト位、メタ位又はパラ位に存在することが可能であり、Zは、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、ヘテロシクリル、置換されたヘテロシクリル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アルキルアリール、置換されたアルキルアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、F、Cl、Br、I、NR’R’’、CF、CN、NO、CR’、SH、SCH、N、SOCH、OR’、(CR’R’’)OR’、O−(CR’R’’)R’、SR’、C(=O)NR’R’’、NR’C(=O)R’’、C(=O)R’、C(=O)OR’、OC(=O)R’、(CR’R’’)OCHR’、(CR’R’’)C(=O)R’、(CR’R’’)(CHCH)OR’、O(CR’R’’)C(=O)OR’、(CR’R’’)C(=O)NR’R’’、(CR’R’’)NR’R’’、CH=CHR’、OC(=O)NR’R’’及びNR’C(=O)OR’’からなる群から選択される非水素置換基を表し、
qは、1〜6の整数を表し、並びにR’及びR’’は、個別に、水素、C1−10アルキル、シクロアルキル、複素環部分の複素原子が他の何れの窒素、酸素若しくは硫黄原子からも、少なくとも2個の炭素原子によって隔てられた非芳香族複素環であり、又はピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、フラニル、フェニル及びベンジルからなる群から選択される芳香族基含有種であり、前述の何れも、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、ハロ又はアミノ置換基などの少なくとも1つの置換基で適切に置換されることが可能であり、
並びに、jは、環上に存在することが可能なZ置換基の数を表す0〜3の数字である]
のヒドロキシ安息香酸との反応によって、ヒドロキシ安息香酸塩を形成する工程{ここで、E−メタニコチン:ヒドロキシ安息香酸のモル比は1:2〜2:1の範囲にある};
f)(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミン ヒドロキシベンゾアート塩を単離する工程;並びに
g)場合によって、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンヒドロキシ安息香酸塩を、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジニル)−4−ペンテン−2−アミンに変換する工程、を含む前記方法。
【請求項7】
前記ヒドロキシ安息香酸が、o−、m−又はp−ヒドロキシ安息香酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドロキシ安息香酸塩が、薬学的に許容される別の塩形態へと変換される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
中枢神経系疾患を治療するのに有用な医薬の調製における、請求項1〜4の何れかに記載の塩を含む組成物の使用。

【公開番号】特開2009−108082(P2009−108082A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291862(P2008−291862)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【分割の表示】特願2007−540196(P2007−540196)の分割
【原出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(501054735)ターガセプト,インコーポレイテッド (37)
【Fターム(参考)】