メチルトランスフェラーゼによる転移のための延長活性基を有する、新規S−アデノシル−L−メチオニン類縁体
式(I)によって表される化合物であって、同式において、Rは、スルフォニウム中心に対しβ−位置において、炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素三重結合、または、芳香族炭素環またはヘテロ環システムを含み;X-は、1個以上の負電荷を持つ有機または無機の陰イオンであり;Zは、−CR1R2−、−O−、−S−、または−NR3−であり;および、R1、R2、およびR3は、H、D、およびC1−C12アルキルから独立に選ばれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化1】
によって表される化合物に関する。
【0003】
上式において、Rは、スルフォニウム中心に対してβ−位置に存在する、炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素三重結合、または、芳香族炭素環またはヘテロ環システムを含み;X-は、1個以上の負電荷を持つ有機または無機の陰イオンであり;Zは、−CR1R2−、−O−、−S−、または−NR3−であり;および、R1、R2、およびR3は、H、D、およびC1−C12アルキルから独立に選ばれる。本発明はまた、本発明の化合物と、通常、S−アデノシル−L−メチオニン(SAM、またはAdoMet)を補因子として用いるメチルトランスフェラーゼとの複合体にも関する。さらに本発明は、本発明の化合物を含む製薬および診断組成物にも関する。最後に、本発明は、メチルトランスフェラーゼの存在下に、本発明の化合物と標的分子をインキュベートすることを含む、修飾された標的分子の調製法に関する。その際、メチルトランスフェラーゼは、標的分子に対し該化合物の一部の転移を可能とする条件下に、該化合物を補因子として使用することが可能である。
【0004】
本明細書の本文を通じていくつかの文書が引用される。本明細書に引用される文書の開示内容(メーカーの仕様、案内等を含む)を、参照することにより本明細書に含める。本明細書を通じて言及され、インビトロで実行される工程については、どのような組み合わせも(単一工程のみを含む)、細胞抽出物でも、またはインビボでも実行することが可能である。
【0005】
本発明は、DNAメチルトランスフェラーゼ(MTアーゼ)を用いて例示される。しかしながら、本発明は、RNAおよびタンパクメチルトランスフェラーゼにも、他の生体分子に作用するメチルトランスフェラーゼにも使用が可能である。
【背景技術】
【0006】
DNAメチル化は、ほとんど全ての生物に認められる(Jeltsch、(2002) ChemBioChem 3、275−293)。DNAは、シトシン、アデニン、チミン、およびグアニンの外に、メチル化された核酸塩基、5−メチルシトシン(5−mCyt)、N4−メチルシトシン(4−mCyt)、またはN6−メチルアデニン(6−mAde)を含むことが可能である。これらのメチル化核酸塩基は、DNAメチルトランスフェラーゼ(MTアーゼ)によって形成される。この酵素は、そのDNA認識配列内部のシトシンのC5炭素、シトシンのN4窒素、またはアデニンのN6窒素に対する、補因子S−アデノシル−L−メチオニン(AdoMet)からの活性化メチル基の転移を触媒する(Cheng、(1995) Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct. 24、293−318)。ある特定のヌクレオチド配列が、メチル化または非メチル化形として存在することが可能なのであるから、DNAメチル化は、多種多様な生物機能に与るDNAの情報内容の増加と見なすことも可能である。前核細胞では、DNAメチル化は、内因性制限エンドヌクレアーゼ、DNAミスマッチ修復、遺伝子発現調節、およびDNA複製から宿主のゲノムを守る、ゲノム保護に与る。真核細胞では、DNAメチル化は、重要な調節過程、例えば、遺伝子沈黙化(Bird、(2002) Genes Dev. 16、6−21)、ゲノムインプリンティング(Feil and Khosla、(1999) Trends Genet. 15、431−435)、X−染色体の不活性化(Panning and Jaenisch、(1998) Cell 93、305−308)、ゲノム内寄生生物の沈黙化(Yoder、(1997) Trends Genet. 13、335−340)、および、発癌(Baylin、(1998) Adv.Cancer Res. 72、141−196; Jones and Laird、(1999) Nat.Genet. 21、163−167)の一端を担っている。
【0007】
最近、Thermus aquaticus由来のDNAアデニン−6メチルトランスフェラーゼ(M.Taql)に対する、新規設計の蛍光補因子が提示された(Pljevalicic et al.、(2003) J.Am.Chem.Soc. 125、3486−3492)。もちろん、M.Taqlは、2本鎖の5′−TCGA−3′パリンドローム配列内のアデニンの環外アミノ基の、補因子S−アデノシル−L−メチオニン(SAM、またはAdoMet)のメチル基に対する求核性攻撃を触媒し、これが、配列−および塩基−特異的メチル基転移をもたらす。他のメチルトランスフェラーゼ同様、M.Taqlも、各標的塩基に対し1個のメチル基を転移することができるだけで、完全にメチル化された認識配列を有するDNAはそれ以上修飾されない。天然の補因子S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)のメチオニン側鎖の、アジリジニル残基による置換は、DNAの標的アデニンに対する、全体ヌクレオシドの、M.Taql触媒による求核性環解放および結合をもたらす。アデノシル成分は、補因子結合のための分子アンカーとなる。蛍光発色団の、屈曲性リンカーを介する、アデノシル成分の8位置に対する付着は、補因子の結合を妨げない。この補因子、8−アミノ[1”−(N”−ダンシル)−4”−アミノブチル]−5’−(1−アジリジニル)−5’−デオキシアデノシンを用いて、M.Taql触媒反応においてDNAを配列特異的に標識することが可能である(Pljevaljcic et al.、(2003) J.Am.Chem.Soc. 125、3486−3492)。
【0008】
従来技術には、前述のN−アデノシルアジリジン誘導体の外に、8−アミノ[1”−(N”−ビオチニル)−4”−アミノブチル]−5’−(1−アジリジニル)−5’−デオキシアデノシン(Pljevaljcic et al.、(2004) Methods Mol.Biol. 283、145−161)が記載される。これも生体分子を標識するのに使用が可能である(Pljevaljcic et al.、(2004) ChemBioChem 5、265−269)。標識化は、S−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼを用いることによって実行される。これらの酵素は、当然のことながら、補因子S−アデノシル−L−メチオニン(1、SAM、またはAdoMet)の活性化されたメチル基の、各種基質、例えば、DNA、RNA、タンパク、およびその他の生体分子内の定められた求核位置に対する転移を触媒する。これによって、メチル化生体分子と、脱メチル化補因子S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)が生成される(スキーム1)。このように、メチルトランスフェラーゼが、生体高分子の、配列特異的、共有結合修飾を触媒することが可能であるということは、これらメチルトランスフェラーゼをバイオテクノロジー全体における興味ある道具とするものであるが、メチル基の外に、もっと大きな化学的実体を転移し、それと共に標的生体分子に対し新たな機能を付加することができるならば、それは望ましいことであろう。原理的には、このことは、前述のN−アデノシルアジリジン誘導体を用いて実現することが可能である。しかしながら、アジリジン補因子は、メチルトランスフェラーゼに対し自殺基質として作用するという欠点を持つ。アジリジン補因子が標的生体分子に結合した後、メチルトランスフェラーゼは簡単に解離することができず、その結合産物に結合し続ける。このため、このメチルトランスフェラーゼは、真の触媒として作用しないので、標的分子に対し化学量論的量として用いなければならない。原理的には、この制限は、S−アデノシル−L−メチオニン(1、SAM、またはAdoMet)のメチル基を、より大きい脂肪族基によって置換することで克服することが可能である。Schlenk(Schlenk and Dainko、(1975) Biochem.Biophy.Acta 385、312−323; Schlenk、(1977) in Biochem.Adenosylmethionine(eds.Salvadore、Borek and Zappia)、Columbia University Press、3−17)による研究は、比較的大型の化学基、例えば、エチルおよびプロピルが、メチルトランスフェラーゼによって、S−アデノシル−L−エチオニン(3)およびS−アデノシル−L−プロピオニン(4)から転移が可能であることを示した(スキーム1)。しかしながら、同時に、酵素によるアルキル転移速度は、転移可能基のサイズの増加と共に急激に増す(メチル>>エチル>n−プロピル基)ことが認められた。この一般的傾向は、様々なDNAメチルトランスフェラーゼについても確かめられた(実施例3)。
【0009】
【化2】
【0010】
スキーム1
メチルトランスフェラーゼは、S−アデノシル−L−メチオニン(1)、および延長型飽和側鎖を持つ類縁体のスルフォニウム中心に隣接する、求電子性炭素原子に対する、各種生体分子の求核攻撃を触媒する。
【0011】
長さを増しながら転移可能基を用いると転移速度が急激に低下する(上記参照)ため、S−アデノシル−L−メチオニン誘導体は、S−アデノシル−L−トランスフェラーゼ依存性メチルトランスフェラーゼの効果的な補因子としての使用が妨げられる。S−アデノシル−L−メチオニン誘導体は、S−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼの天然の基質と緊密に関連するのであるから、スルフォニウム結合側鎖について転移速度が改善されたS−アデノシル−L−メチオニン系誘導体を開発することができたならば、それは望ましいと考えられる。上記に鑑みて、本発明の教示をもたらすきっかけとなった技術的問題は、S−アデノシル−L−メチオニン−依存性メチルトランスフェラーゼのための、さらに別のS−アデノシル−L−メチオニン系補因子を提供することである。
【発明の開示】
【0012】
この技術的問題に対する解答は、特許請求の範囲に詳述される実施態様を提供することによって実現される。
【0013】
従って、本発明は、式(I):
【化3】
【0014】
上式において、Rは、スルフォニウム中心に対してβ−位置において、炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素三重結合、または芳香族炭素環またはヘテロ環システムを含み;
X-は、1個以上の負電荷を持つ有機または無機の陰イオンであり;
Zは、−CR1R2−、−O−、−S−、または−NR3−であり;および、
R1、R2、およびR3は、H、D、およびC1−C12アルキルから独立に選ばれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本出願の教示は、従来技術において記載された所見、すなわち、酵素によるアルキル転移速度は、転移可能基のサイズの増加と共に急激に低下する(メチル>>エチル>n−プロピル基)という所見を確認した。この所見の理由は従来技術で解明されていない。本発明において提示される実験データに基づくと、この効果には、立体的要因の外に、電子的要因が関与しているらしいことが予想された。本発明の教示によれば、転移可能基の長さの増加に伴う転移速度の低下は、スルフォニウム中心に対するβ−位置に二重結合、三重結合、芳香族または複素環芳香族成分を導入することによって克服が可能であること;スルフォニウム中心の、この置換基の適切な例は、アリル、プロパルジル、およびベンジル置換基であることが予測された。実際、新規AdoMet類縁体5から9は、すなわち、プロプ−2−エニルを有するもの(−CH2CH=CH2;すなわち、Z=CH2およびR=−CH=CH2である式Iの化合物;補因子5)、プロプ−2−イニル(−CH2C≡CH;すなわち、Z=CH2およびR=−C≡CHである式Iの化合物;補因子6)、ブト−2−イニル(−CH2C≡C−CH3;すなわち、Z=CH2およびR=−C≡CCH3である式Iの化合物;補因子7)、ペント−2−イニル(−CH2C≡CCH2CH3;すなわち、Z=CH2およびR=−C≡CCH2CH3である式Iの化合物;補因子8)、またはベンジル基(すなわち、Z=CH2およびR=−フェニルである式Iの化合物;補因子9)を、活性化スルフォニウム中心に有する類縁体は、各種DNAメチルトランスフェラーゼに対し、優れたものから極めて優れたものに至る補因子として作動する(実施例3)。従って、延長型飽和アルキル基をスルフォニウム中心に持つAdoMet類縁体の貧弱な反応性は、転移可能基のスルフォニウム中心に対するβ位置に導入された、二重結合、三重結合、または芳香族置換基による活性化によって克服することが可能である。このような補因子は、適切なメチルトランスフェラーゼを触媒に用いて、DNA、RNA、およびタンパクのような各種生体分子に対し、反応基または他の化学的実体を配列特異的に転移するのに有用であると思われる。
【0016】
生体高分子の配列特異的標識化は、二つの方法で実現することが可能である。先ず、例えば、補因子5、6、または9のアリル、プロパルジル、またはベンジルシステムを、化学的反応基によって延長し、次に、適切な反応性標識によって共有的に修飾する(2工程標識化)。第二に、適切な標識によってアリル、プロパルジル、またはベンジル置換された補因子を調製し、次に、この標識を、適切なメチルトランスフェラーゼによって標的分子に直接転移する(1工程標識化)
【0017】
例として、補因子5の誘導体、基質としてDNA、およびアデニン特異的DNAメチルトランスフェラーゼM.Traqlを用いた、これら二つの戦略をスキーム2に示す。M.Taqlは、2本鎖DNA配列5′−TCGA−3′を認識し、当然のことながらS−アデノシル−L−メチオニン(1、SAM、またはAdoMet)のメチル基を、アデノシン残基のアミノ基に転移する。補因子5の場合、アリル基が、配列−および塩基−特異的に転移される(実施例2A.3)。スペーサを介してアリルシステムに化学的反応基Yを付着させることによって、この反応基は効率的にDNAに転移され、次に、適切な反応基Vを含む標識によって修飾される(スキーム2A)。それとは別に、共有的に付着した標識を含む補因子5の誘導体を、YとVを反応させることによって合成することが可能である。次に、標識を含むこの活性化基が、M.Taqlによって、DNAに直接配列特異的に転移される(スキーム2B)。本発明による他の化合物、例えば、プロパルジル活性化基を含む補因子6、およびベンジル活性化基を含む補因子9の誘導体についても同様の戦略を企図することが可能である。
【0018】
【化4】
【0019】
スキーム2
補因子5、基質としてDNA、およびアデニン特異的DNAメチルトランスフェラーゼM.Taqlによって示される2工程標識化(A)、および1工程標識化(B)。YおよびVは、相互に反応性を持つ基であり、Lは、基YおよびVの反応によってもたらされた化学結合を表し、黒塗り球は標識を表す記号である。
【0020】
水溶液において、この修飾された生体分子に標識を付着させるために、反応基YおよびV、および結合Lを定める、たくさんの化学選択的連結の利用が可能である。古典的連結(Garman、(1997) 「非放射性標識化:実技入門(Non−radioactive labeling: A practical introduction)」、Academic Press)は、アミン反応基、例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル、アシルアジド、アシルニトリル、アシルクロリド、ペンタフルオロフェニルエステル、チオエステル、スルフォニルクロリド、イソチオシアネート、イミドエステル、アルデヒド、またはケトンと反応し、安定なアミド類、スルフォナミド類、チオウレア類、イミテード類またはイミン類をもたらすことが可能な一次アミノ基の使用を含み、次に、これらアミド類、スルフォナミド類、チオウレア類、イミテード類またはイミン類を還元して安定な二次アミンをもたらすことが可能である。チオールは、ハロアセタミド、マレイミド、アジリジン、または他のチオール類と特異的に反応し、チオエステルまたはジスルフィド結合をもたらすが、1,2−ジオールは、アリールボロン酸によって修飾することが可能である。ヒドラジンまたはヒドロキシルアミンは、アルデヒドまたはケトンによって縮合されて、ヒドラゾンまたはオキシムを形成する。さらに、これらの古典的な連結の外に、それに代わる、いくつかの、水溶液において十分に進行する結合法が近年出現した。1,2−アミノチオールは、アルデヒドまたはチオエステルと選択的に反応してチアゾリジン(例えば、「ポリペプチドのN−末端システイン残基(N−terminal cysteine residues of polypeptides)」、Liu and Tam、(1994) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 91、6584−6588)、または、安定なアミド結合(例えば、ポリペプチドのN−末端システイン残基、未修飾の、化学的ペプチド結合(N−terminal cysteine residues of polypeptides、native chemical peptide ligation))、Dawson et al.、(1994) Science 266、776−779)を形成する。さらに、アジドは、アルキンと(「Huisgen 1,3−双極子環付加反応(Huisgen 1,3−dipolar cycloaddition)」、Angew.Chem.Int. Ed. 41、1053−1057)、または、フォスファンエステルと(「Staudinger連結(Staudinger ligation)」、Saxon and Bertozzi、(2000) Science 287、2007−2010)反応して、1,2,3−トリアゾールまたはアミドを形成することが可能である。さらに、活性化ジエンおよびジエノフィルの間におけるDiels−Alder環付加反応(例えば、「フランおよびマレイミド(furanes and maleimides)」、Graham et al.、(2002) Tet.Lett. 4785−4788)は、水性溶液において実行が可能である。他の、現代的な白金触媒架橋反応、例えば、アリールアルキンまたはビアリールを生成する、ハロゲン化アリールおよび末端アルキンの間(「Sonogashira結合(Sonogashira coupling)」、Casalnuova and Calabrese、(1990) J.Am.Chem.Soc. 112、4324−4330; Dibrowski and Schmidtchen、(1998) Angew.Chem.Int. Ed. 37、476−478; Bong and Ghaderi、(2001) Org.Lett. 3、2509−2511)、または、ハロゲン化アリールおよびアリールボロン酸の間(「Suzuki結合(Suzuki coupling)」、Casalnuova and Calbrese、(1990) J.Am.Chem.Soc. 112、4324−4330; DeVasher et al.、(2004) J.Org.Chem. 69、7919−7927)の反応も、使おうと思えば、使用することが可能であろう。さらに、末端ハロアルキンと、末端アルキンまたは末端シリルアルキンとの間の、銅触媒アルキン結合反応は、ジイン接合体をもたらすが、この反応も水溶液の中で実行することが可能である。最後に、フッ素性誘導体形成試薬、例えば、4−ハロ−7−ニトロベンゾフラン、N−メチルイサト酸無水物、または活性化ビマンを用い、転移チオール、アミノ、またはヒドロキシル基を直接標識することも可能である。
【0021】
核酸は一般に、求核性または求電子性の高い中心を持たない。従って、相互交換可能な基YおよびVを含む、求核分子および求電子分子の間のパラジウム触媒架橋反応、または銅触媒アルキン結合反応は、環付加の外に、核酸の配列特異的2工程標識化に使用することが可能である(表1)。補因子6の場合、末端アルキン基はDNAに転移され、DNAは直接、アジド(1,3−双極子環付加反応)、ハロゲン化アリール(Sonogashira結合)、または末端ハロアルキン(アルキン結合)と結合することが可能となる。
【0022】
【表1】
【0023】
ポリペプチドの2工程配列特異的標識化には、利用可能な化学選択的連結は、核酸の場合よりも数少ない。これはポリペプチドは一般に求核中心(アミノ基および、程度は低いがチオール基も)を含むからである。実行可能な反応のリストを表2に示す。この場合も、例えば、補因子6によって転移される末端アルキン基は、アジド(1,3−双極子環付加反応)、ハロゲン化アリール(Sonogashira結合反応)、または末端アルキン(アルキン結合反応)と直接結合することが可能である。
【0024】
【表2】
【0025】
1工程標識化(スキーム2B)のためには、アリル、プロパルジル、またはベンジルシステムを有する標識補因子(I)を先ず調製する必要がある。原理的には、これは、二つの方法で実行することが可能であり、スキーム3においてアリル補因子5の標識誘導体について図示される。例えば、反応基Vを含む標識を、反応基Yを含むアリルアルコールに付着させることが可能である。その後、アルコールを活性化し(例えば、X=ハロゲン化物またはスルフォネート)、S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)と反応させて、所望の標識補因子を得る(スキーム3、左側)。標識の共有結合付着は水性または有機溶媒において実行することが可能であるから、活性化基YおよびVについては様々な組み合わせが実行可能である(表3)。もちろん、この反応スキームは、標識そのものが、標識付着、活性化、およびS−アデノシル−L−ホモシステイン(2)との反応の条件に向けて安定であることを要求する。
【0026】
【化5】
【0027】
スキーム3
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)から、標識されたアリル補因子へ至る二つの合成ルート。YおよびVは、相互に反応する基であり、Lは化学結合を表し、Xはハロゲン化物またはスルフォネートであり、黒塗り円は標識を表す。
【0028】
【表3】
【0029】
それとは別に、標識は、反応基Yを含む、アリル、プロパルジル、およびベンジルシステムによって補因子(I)の中に導入することが可能である。これを、アリル補因子5の標識誘導体を例として用いてスキーム3(右)に示す。塩基条件下におけるS−アデノシル−L−メチオニン(1)の不安定性を考えると、この合成ルートによる標識補因子の合成は、水溶液におけるやや酸性条件下で進行する化学選択的連結反応が有利であろう。可能な連結反応を表4に挙げる。補因子6の場合、連結後、プロパルジルシステムをそのまま脱離するハロゲン化アリール(Sonogashira結合)と直接結合が可能な末端アルキレン基は既に存在する。
【0030】
【表4】
【0031】
本発明のある好ましい実施態様では、ZはCR1R2であり、R1、R2はそれぞれ独立にH、D、およびC1−C12アルキルから選ばれる。
【0032】
本発明のより好ましい実施態様では、Zは−CR1R2であり、R1、R2はそれぞれ独立にHおよびDから選ばれる。
【0033】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、Rは、スルフォニウム中心に対するβ位置に−CH=CH−、−C≡C−、またはフェニル基を含む。本発明の教示に一致するこのような化合物の例は、式(II)、(III)、または(IV)によって表される。
【0034】
【化6】
【0035】
上式において、X-は、1個以上の負の電荷を担持する有機または無機の分子である。
【0036】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記有機または無機の陰イオンは、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、ハロゲン化物、およびスルフォン酸塩から選ばれる。
【0037】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、Rは、官能基、X線回折データの位相角分析に好適な重原子または重原子クラスター、放射性同位元素または安定な希少同位元素、および、蛍光発色団、消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意に修飾が可能なタンパク、ペプチドまたはアミノ酸、任意に修飾が可能なヌクレオチド、ヌクレオシド、または核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子、およびビーズから選ばれるメンバーの残基から選ばれる少なくとも一員をさらに含む。
【0038】
好ましい、放射性の、または安定な希少同位元素は、3H(T)、14C、32P、33P、35S、125I、131I、2H(D)、13C、15N、17O、および18Oから成るグループから選ばれる。さらに、好ましい安定な同位元素は、19Fおよび127Iから成るグループから選ばれる。
【0039】
安定な常磁性基(通常、ニトリル根)である好ましいスピンラベルは、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−オキシル、および2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−1−オキシルから成るグループから選ばれる。
【0040】
好ましいアミノ酸修飾体は、β−およびγ−アミノ酸から成るグループから選ばれ、好ましいペプチド修飾体は、デプシペプチド、ビニル性ペプチド、過メチル化ペプチド、ペプトイド、アザペプチド(アザチド)、オリゴカルバメート、オリゴ尿素、オリゴスルフォン、オリゴスルフォンアミド、オリゴスルフィンアミド、ピロール−イミダゾール−ヒドロキシピロールポリアミド、およびペプチド核酸(PNA)から成るグループから選ばれ、より好ましくは前記ペプチド修飾体は、ピロール−イミダゾール−ヒドロキシピロールおよびペプチド核酸(PNA)である。
【0041】
好ましい核酸修飾体は、ペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(LNA)、およびフォスフォロチオエート修飾核酸から成るグループから選ばれる。
【0042】
好ましいトランスフェクション試薬は、陽イオン性脂質(例えば、Invitrogen、カリフォルニア州、米国から市販されるリポフェクタミンおよび誘導体)、陽イオン性ポリマー(例えば、Sigmaから市販されるポリエチレンイミン(PEI))およびポリ陽イオン性デンドリマーから成るグループから選ばれる。
【0043】
好ましい挿入剤は、通常、二重鎖核酸における隣接塩基間を結合する、平坦であるか、または平坦に近い芳香環システムであるが、これは、エチジウム、チアゾールオレンジ、アクリジンまたはその誘導体、およびピレンから成るグループから選ばれる。
【0044】
好ましいナノ粒子は、金および銀クラスターから成るグループから選ばれる。
【0045】
好ましいビーズは、シリカビーズ、磁気ビーズ、およびポリスチレン微小球(例えば、Molecular Probes、オレゴン州、米国から市販されている)から成るグループから選ばれる。
【0046】
本発明の一つの実施態様では、前記官能基は、アミノ基、チオール基、1,2−ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセタミド基、マレイミド基、アルデヒド基、ケトン基、1,2−アミノチオール基、アジド基、アルキン基、1,3−ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば、活性化炭素−炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、末端アルキン基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、および、保護されたアミノ、チオール、1,2−ジオール、ヒドラジノ、ヒドロキシアミノ、アルデヒド、ケトン、および1,2−アミノチオール基から選ばれる。
【0047】
本発明のもう一つの実施態様では、前記発色団は、Alexa、BODIPY、bimane、クマリン、Cascadeブルー、ダンシル、ダポキシル、フルオレセイン、マンシル、MANT、Oregonグリーン、ピレン、ローダミン、Texasレッド、TNS、蛍光ナノ結晶(量子ドット)、シアニン蛍光発色団およびその誘導体から選ばれる。
【0048】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記蛍光消光剤は、ダブシル、QSY、およびBHQから選ばれる。
【0049】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記アフィニティタグは、ペプチドタグ、金属キレート群、同位元素コード標識アフィニティタグ、ビオチン、マルトース、マンノース、グルコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルノイラミン酸、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、ジゴキシゲニン、およびジニトロフェノールから選ばれる。
【0050】
本発明のもう一つの実施態様では、前記ペプチドタグは、his−タグ、金属キレート性を有するタグ、ストレップ−タグ、フラッグ−タグ、c−myc−タグ、HA−タグ、エピトープ、およびグルタチオンから選ばれる。
【0051】
本明細書で用いる「アフィニティタグ」という用語は、特に、例えば、アフィニティ精製に使用することが可能な標識に関する。従来技術において、本発明に一致するいくつかのタグがよく知られる。このようなタグは、例えば、金属キレート性を持ち、メチルトランスフェラーゼ触媒による生体分子への転移前に、または転移後に、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)で使用される基質に対する、本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rの結合を可能としてもよい。Porath等(Porath et al.、(1975) Nature 258、598−599)によって開発されたIMAC技術は、いくつかのタンパク表層残基(ヒスチジン、システイン、および低級トリプトファン)と、ポリカルボン酸リガンドとキレートを形成する遷移金属由来の陽イオンとの間に生ずる相互作用に基づく。典型的条件は、従来技術に記述されており、当業者には既知である(Porath、(1992) Protein Expression and Purification 3、263−281; Hemdan and Porath、(1985) Journal of Chromatography 323、255−264; Porath and Hansen、(1991) Journal of Chromatography 550、751−764)。
【0052】
その他の好ましいタグとしては、8アミノ酸ストレプトアビジンに関する「ストレップ−タグ」が挙げられる。この配列は、最適アフィニティタグ性を持つペプチド結合配列を特定するために、ランダムペプチドライブラリーを体系的にスクリーニングすることによって特定された(Schmidt and Skerra、(1993) Prot.Engineering 6、109−122)。本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rに付着させると、修飾された核酸分子、または(ポリ)ペプチドは、例えば、StrepTactin、ストレプトアビジン、アビジン等を含む基質を備える重力流カラムを用いることによって、アフィニティ精製することが可能となる。このような基質は市販されており、例えば、Sigma−Genosys/The Woodlands(テキサス州、米国)、またはIBA/ゲッチンゲン(ドイツ)から購入することが可能である。
【0053】
その他の好ましいタグとしては、「フラッグ−タグ」が挙げられる。これは、抗フラッグ抗体に結合する8アミノ酸ペプチドに関する。本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rに付着させると、修飾された核酸分子、または(ポリ)ペプチドは、例えば、固定された抗フラッグ抗体を含む基質を備える重力流カラムを用いることによって、アフィニティ精製することが可能となる。このような基質は市販されており、例えば、Sigma−Aldrichから購入することが可能である。
【0054】
その他の好ましいタグとしては「c−myc−タグ」が挙げられる。これは、抗−c−myc抗体に結合する10アミノ酸ペプチドに関する。本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rに付着させると、修飾された核酸分子、または(ポリ)ペプチドは、例えば、固定された抗−c−myc抗体を含む基質を備える重力流カラムを用いることによって、アフィニティ精製することが可能となる。このような基質は市販されており、例えば、Pierce Biotechnology(イリノイ州、米国)から購入することが可能である。
【0055】
その他の好ましいタグとしては「HA−タグ」が挙げられる。これは、インフルエンザウィルスの表面血球凝集素から得られ、抗HA抗体に結合する9アミノ酸ペプチドに関する。本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rに付着させると、修飾された核酸分子、または(ポリ)ペプチドは、例えば、固定された抗HA抗体を含む基質を備える重力流カラムを用いることによって、アフィニティ精製することが可能となる。
【0056】
本発明のもう一つの実施態様では、前記金属キレート群は、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、1,10−フェナントロリン、クラウンエーテル、およびHis4-8ペプチドである。
【0057】
前記架橋剤は、一、または二官能白金(II)複合体、マレイミド、イオドアセタミド、アルデヒド、および光架橋剤、例えば、アリールアジド、ジアゾ化合物、2−ニトロフェニル化合物、プソラレンおよびベンゾフェノン化合物から選ばれる。
【0058】
本発明のもう一つの実施態様では、前記重原子、または重原子クラスターは、X線回折データを位相角分析するのに好適な、銅、亜鉛、セレン、臭素、ヨウ素、ルテニウム、パラジウム、カドミウム、タングステン、白金、金、水銀、ビスマス、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ウラニウム、Ta6Br14、Fe4S4、およびP2W18O62から選ばれることが好ましい。
【0059】
好ましい核酸切断試薬は、鉄−EDTA、銅−1,10−フェナントロリン、アクリジンまたはその誘導体、エンジン化合物、およびロジウム複合体から成るグループから選ばれ、より好ましくは、前記核酸切断試薬は、鉄−EDTA、銅1,10−フェナントロリン、およびロジウム複合体から選ばれる。
【0060】
本発明はまた、本発明の化合物(I)の複合体、および、通常S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)を補因子として用いるメチルトランスフェラーゼに関する。
【0061】
本発明のある好ましい実施態様では、前記メチルトランスフェラーゼは、通常、S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)のメチル残基を、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、または小型分子に転移する。SAM(AdoMet)−依存性メチルトランスフェラーゼに関しては、その総説が、例えば、Kagan and Clarke、(1994) Archives of Biochemistry and Biophysics 310、417−427に提示される。この論文はまた、例えば、カテコールO−メチルトランスフェラーゼおよびグリシンN−メチルトランスフェラーゼを含む、O−メチルトランスフェラーゼおよび小型分子N−メチルトランスフェラーゼのリストを示す。
【0062】
「核酸分子」、「ポリペプチド」、「炭水化物」、または「小型分子」という用語は、場合によって「生体分子」とも呼ばれる。生体分子は、全く天然である、すなわち、未修飾であってもよく、あるいは、合成または修飾されていてもよく、かつ、複合体として存在してもよい。従って、例えば、「核酸分子」という用語は、DNAおよびRNA分子の外に、修飾されたDNAおよびRNA分子も含む。DNAは、例えば、cDNA、またはゲノムDNAであってもよい。RNAは、例えば、mRNA、hnRNA、スプライスされたRNAでも、スプライスされていないRNAであってもよい。本明細書においてポリペプチドという用語が用いられる場合は必ず、それは、タンパク、ペプチド、およびポリペプチドを含むものと理解しなければならない。ペプチドは、例えば、長さが10、11、12、13、14、15、または16残基ほどの短いものであってもよい。
【0063】
本発明のより好ましい実施態様では、前記メチルトランスフェラーゼは、孤立DNAメチルトランスフェラーゼであるか、または、細菌の制限修飾システムの一部である。
【0064】
前記DNAメチルトランスフェラーゼは、M.AacDam、M.AatII、M.AbaORFDP、M.AbaORFKP、M.AbrI、M.AccI、M.AccIII、M.AciI、M.AclI、M.AcuI、M.Afa22MI、M.AflII、M.AflIII、M.AgeI、M.AhdI、M.AhyBP、M.AlaK2I、M.AluI、M.AlwI、M.Alw26I、M.ApaI、M.ApaLI、M.ApeKI、M.ApoI、M.AquI、M.AscI、M.AseI、M.AseII、M.AsiSI、M.AspCNI、M.AtuCI、M.AtuCORF1997P、M.AtuDORF794P、M.AtuDORF3839P、M.AvaI、M.AvaII、M.AvaIII、M.AvaIVP、M.AvaV、M.AvaVI、M.AvaVII、M.AvaVIII、M.AvaIX、M.AvaORF3700P、M.AvaORF7270P、M.AvrI、M.AvrII、M.BabI、M.BaeI、M.BalI、M.BamHI、M.BamHII、M.BanI、M.BanII、M.BanIII、M.BatAORF3814P、M.BatA581ORF3846P、M.Bbu297I、M.BbvI、M1.BbvCI、M2.BbvCI、M.BbvSI、M1.BccI、M2.BccI、M.Bce1247I、M1.BceAI、M2.BceAI、M.Bce14579ORF939P、M.BceSORF365P、M.BceSORF4605P、M1.BceSORF5606P、M2.BceSORF5606P、M.Bcep1P、M.Bcep43ORFAP、M.BchI、M.BclI、M1.BcnI、M2.BcnI(M.BcnIB)、M1.BcoKI、M2.BcoKI、M.Bcs139P、M.BdiI、M.BepI、M1.BfaI、M2.BfaI、M.BfaORFC157P、M2.BfiI(M.BfiC2)、M1.BfuAI、M2.BfuAI、M.BglI、M.BglII、M1.BhaI、M2.BhaI、M.BhaII、M.BjaORF2509P、M.BloNORF564P、M.BloNORF1473P、M.BlpI、M.BmaI、M.BmaPhiE125ORF56P、M.Bme216I、M.BmeLORF1444P、M.BmeTI、M1.BmrI、M2.BmrI、M.BnaI、M.BpmI、M1.Bpu10I、M2.Bpu10I、M1.BsaI、M2.BsaI、M.BsaAI、M.BsaJI、M.BsaWI、M1.BscGI、M2.BscGI、M.Bse634I、M.BseCI、M.BseDI、BseMII、BseRI、M.BseRI、M.BseYI、BsgI、M.BsgI、M.BsiWI、M.BslI、M1.BsmI、M2.BsmI、M.BsmAI、M.BsmBI、M.BsoBI、M.BspI、M.Bsp6I、M.Bsp50I、M.Bsp98I、M.Bsp106I、M.Bsp143II、BspCNI、M.BspCNI、M.BspEI、M.BspHI、M.BspIS4I、M.BspKT6I、BspLU11III、M1.BspLU11III、M2.BspLU11III、M1.BspMI、M2.BspMI、M.BspMII、M.BspRI、M.BspST5I、M1.BsrI、M2.BsrI、M1.BsrBI、M2.BsrBI、M.BsrFI、M.BssHI、M.BssHII、M.BssSI、M.BstI、M.BstEII、M.BstEIII、M1.BstF5I、M2.BstF5I、M3.BstF5I、M4.BstF5I、M.BstGII、M.BstLVI、M.BstNI、M.BstNBI、M.BstVI、M.BstXI、M.BstYI、M.Bsu15I、M.Bsu36I、M.Bsu6633I、M.BsuBI、M.BsuEII、M.BsuFI、M.Bsu1330ORF491P、M.BsuRI、M.BthIPS78、M.BthVORF4625P、M.BusLBORFC747P; M.BusLBORFC755P、M.Cac8I、M.Cac824I、M.Cac824ORF3358P、M.CauJORFC101P、M.CauJORFC102P、M.CauJORFC103P、M.CauJORFC104P、M.CauJORFC107P、M.CauJORFC110P、M.CauJORFC111P、M.CboI、M.CcrMI、M.Cdi630I、M.CdiCD6I、M.CdiCD6II、M.Cdi630ORFC898P、M.CefORF1493P、M.CeqI、M.CfrI、M.Cfr6I、M.Cfr9I、M.Cfr10I、M.Cfr13I、M.Cfr42I、M.CfrAI、M.CfrBI、M.CglI、M.CglASI、M.CglLP6P、M.CjeNI、M.Cje81116ORFBP、M.Cje81116ORFCP、M.ClaI、M.Csp6I、M.Csp68KI、M.Csp68KIV、M.Csp68KV、M.CteEORF387P、M.CthORFS26P、M.CthORFS34P、M.CthORFS93P、M.CviAI、M.CviAII、M.CviAIV、M.CviBI、M.CviBII、M.CviBIII、M.CviJI、M.CviORF5P、M.CviORF2111P、M.CviPI、M.CviQI、M.CviQII、M.CviQIII、M.CviQIVP、M.CviQVP、M.CviQVI、M.CviQVII、M.CviQVIIIP、M.CviQIXP、M.CviQXP、M.CviQXI、M.CviRI、M.CviRII、M.CviSI、M.CviSII、M.CviSIII、M.CviSIVP、M.CviSVP、M.CviSVIP、M.CviTI、M.DdeI、DhaORFC135P、M1.DpnII、M2.DpnII、M.DraI、M.DraII、M.DraIII、M.DsaV、M.DvuORF19P、M.DvuORF2842P、M.EacI、M.EaeI、M.EagI、M1.EarI、M2.EarI、M.EcaI、M.Ecl18kI、M1.Eco31I、M2.Eco31I、M.Eco32I、M.Eco47II、M.Eco47III、M.Eco56I、Eco57I、M.Eco57I、M.Eco64I、M.Eco72I、M.Eco88I、M.Eco98I、M.Eco105I、M.Eco147I、M.Eco231I、M.Eco255I、M.Eco536P、M.Eco1639P、M.Eco1831I、M.Eco248534P、M.EcoAI、M.EcoBI、M.EcoCFTDamP、M.EcoCFTDam2P、M.EcoCFTDam3P、M.EcoCFTDcmP、M.EcoDI、M.EcoDR2、M.EcoDR3、M.EcoDXXI、M.Eco67Dam、M.EcoEI、M.EcoHI、M.EcoHK31I、M.EcoKI、M.EcoKII、M.EcoKDam、M.EcoKDcm、M.EcoKO157DamP、M.EcoKO157Dam2P、M.EcoKO157Dam3P、M.EcoKO157DcmP、M.EcoKO157ORF1953P、M.EcoLahn1P、M.EcoLahn3P、M.EcoNI、M.EcoNi12P、M.EcoO109I、M.EcoO157DamP、M.EcoO157DcmP、M.EcoO157ORF1454P、M.EcoO157ORF2389P、M.EcoO157ORF3349P、M.Eco536ORF3P、M.EcoPI、M.EcoP15I、M.EcoP1Dam、M.EcoPhi4795DamP、M.EcoRI、M.EcoRII、M.EcoRV、M.EcoR124I、M.EcoR124II、M.EcoRD2、M.EcoRD3、M.EcoStx1DamP、M.EcoStx2DamP、M.EcoT22I、M.EcoT38I、M.EcoT1Dam、M.EcoT2Dam、M.EcoT4Dam、M.EcoVIII、M.EcoVT2Dam、M.EcoWphiP、M.Eco29kI、M.EcopHSHP、M.EcopHSH2P、M.EcoprrI、M.EfaHGSORFHP、M.EphP1ORF1P、M.EsaBC1I、M.EsaBC3I、M.EsaBC4I、M.EsaBS1I、M.EsaBS9I、M.EsaDix1I、M.EsaDix2I、M.EsaDix3I、M.EsaDix4I、M.EsaDix5I、M.EsaDix6I、M.EsaDix7I、M.EsaLHCI、M.EsaLHCIII、M.EsaRM1P、M.EsaRM13P、M.EsaRM16P、M.EsaRM17P、M.EsaRM21P、M.EsaRM38P、M.EsaRM61P、M.EsaRM63P、M.EsaRM65P、M.EsaRM67P、M.EsaRM69P、M1.EsaS1I、M2.EsaS1I、M.EsaS3I、M.EsaS4I、M.EsaS6I、M.EsaS7I、M.EsaS8I、M.EsaSS2P、M.EsaSS5P、M.EsaSS12P、M.EsaSS13P、M.EsaSS15P、M.EsaSS16P、M.EsaSS18P、M.EsaSS19P、M.EsaSS22P、M.EsaSS30P、M.EsaSS31P、M.EsaSS35P、M.EsaSS36P、M.EsaSS40P、M.EsaSS43P、M.EsaSS47P、M.EsaSS48P、M.EsaSS49P、M.EsaSS52P、M.EsaSS55P、M.EsaSS57P、M.EsaSS67P、M.EsaSS69P、M.EsaSS70P、M.EsaSS71P、M.EsaSS72P、M.EsaSS73P、M.EsaSS74P、M.EsaSS75P、M.EsaSS76P、M.EsaSS79P、M.EsaSS81P、M.EsaSS83P、M.EsaSS87P、M.EsaSS88P、M.EsaSS90P、M.EsaSS96P、M.EsaSS97P、M.EsaSS103P、M.EsaSS104P、M.EsaSS105P、M.EsaSS106P、M.EsaSS107P、M.EsaSS108P、M.EsaSS109P、M.EsaSS110P、M.EsaSS111P、M.EsaSS113P、M.EsaSS117P、M.EsaSS120P、M.EsaSS123P、M.EsaSS126P、M.EsaSS130P、M.EsaSS131P、M.EsaSS134P、M.EsaSS136P、M.EsaSS137P、M.EsaSS144P、M.EsaSS145P、M.EsaSS150P、M.EsaSS153P、M.EsaSS154P、M.EsaSS155P、M.EsaSS156P、M.EsaSS160P、M.EsaSS163P、M.EsaSS165P、M.EsaSS167P、M.EsaSS169P、M.EsaSS170P、M.EsaSS172P、M.EsaSS174P、M.EsaSS177P、M.EsaSS181P、M.EsaSS182P、M.EsaSS186P、M.EsaSS187P、M.EsaSS192P、M.EsaSS195P、M.EsaSS200P、M.EsaSS214P、M.EsaSS215P、M.EsaSS216P、M.EsaSS218P、M.EsaSS221P、M.EsaSS222P、M.EsaSS223P、M.EsaSS225P、M.EsaSS228P、M.EsaSS237P、M.EsaSS238P、M.EsaSS241P、M.EsaSS244P、M.EsaSS245P、M.EsaSS246P、M.EsaSS247P、M.EsaSS254P、M.EsaSS259P、M.EsaSS264P、M.EsaSS266P、M.EsaSS268P、M.EsaSS269P、M.EsaSS270P、M.EsaSS275P、M.EsaSS278P、M.EsaSS281P、M.EsaSS28
2P、M.EsaSS283P、M.EsaSS289P、M.EsaSS297P、M.EsaSS302P、M.EsaSS303P、M.EsaSS305P、M.EsaSS315P、M.EsaSS317P、M.EsaSS318P、M.EsaSS319P、M.EsaSS323P、M.EsaSS326P、M.EsaSS328P、M.EsaSS329P、M.EsaSS334P、M.EsaSS335P、M.EsaSS336P、M.EsaSS51DamP、M.EsaSS65DamP、M.EsaSS138DamP、M.EsaSS198DamP、M.Esp3I、M.Esp1396I、M.EspRB49DamP、M.FauI、M.FnuDI、M.FnuDII、M.FnuDIII、M.Fnu4HI、M.FnuVDamP、M.FokI、M.FseI、M.FspI、M.FssI、M.GmeORFC6P、M.GmeORFC16P、M.GsuI、M.GviDamP、M.H2I、M.HaeII、M.HaeIII、M.HapII、M.HduDamP、M1.HgaI、M2.HgaI、M.HgiAI、M.HgiBI、M.HgiCI、M.HgiCII、M.HgiDI、M.HgiDII、M.HgiEI、M.HgiGI、M.HhaI、M.HhaII、M.HheORF238P、M.HheORF1050P、M.HheORF1244P、M.HheORF1445P、M.Hin1II、M.HinB231ORFDP、M.HinHP1Dam、M.HinHP2Dam、M.HinP1I、M.HincII、M.HindI、M.HindII、M.HindIII、M.HindV、M.HindDam、M.HinfI、M.HinfIII、M.HjaI、M.HpaI、M.HpaII、M1.HphI、M2.HphI、M.HpyI、M.Hpy8I、M.Hpy87AP、M.Hpy99I、M.Hpy99II、M.Hpy99III、M.Hpy99IV、M1.Hpy99V、M2.Hpy99VP、M.Hpy99VI、M.Hpy99VIII、M.Hpy99IX、M.Hpy99X、M.Hpy99XI、M.Hpy166IV、M.Hpy178IP、M.Hpy188I、M.Hpy188II、M.Hpy188III、M.Hpy788606P、M.Hpy788845P、M.Hpy788849P、M.Hpy789115P、M.Hpy789117P、M.Hpy789137P、M.Hpy789145P、M.Hpy790101P、M.Hpy959772P、M.HpyAI、M1.HpyAII、M2.HpyAII、M.HpyAIII、M.HpyAIV、M.HpyAV、M1.HpyAVI、M2.HpyAVI、M.HpyAVII、M.HpyAVIII、M.HpyAIX、M.HpyAX、M.Hpy87AI、M.HpyAORF263P、M.HpyAORF369P、M.HpyAORF481P、M.HpyAORF483P、M1.HpyC1I、M2.HpyC1I、M.HpyCH4IV、M.HpyCH4V、M.HpyCR2ORF1P、M.HpyCR2ORF3P、M1.HpyCR4RM1P、M2.HpyCR4RM1P、M.HpyCR9RM1P、M.HpyCR9RM2P、M.HpyCR14RM1P、M.HpyCR14RM2P、M.HpyCR15RM2P、M.HpyCR16RM1P、M.HpyCR29RM1P、M.HpyCR29RM2P、M.HpyCR35RM1P、M.HpyCR35RM2P、M1.HpyCR38RM1P、M2.HpyCR38RM1P、M.HpyCR38RM2P、M.HpyF17I、M.Hpy99ORF430P、M.Hpy99ORF433P、M.Hpy99ORF846P、M.Hpy99ORF1012P、M.HspNORF1543P、M.KasI、M.KpnI、M.Kpn2I、M.KpnAI、M.KpnBI、M.Kpn19097DamP、M.Kpn19097Dam2P、M.Kpn19097ORFFP、M.Kpn2kI、M.Lci22RP、M.LinFORF11323P、M.LinFORF12222P、M.LinFORF12737P、M.LinLORF903P、M.LinLORF1547P、M.LinLORF2668P、M1.LlaAI、M2.LlaAI、M.LlaBI、M.LlaCI、M.LlaDI、M.LlaDII、M1.LlaDCHI、M2.LlaDCHI、M.LlaKR2I、M.LmoAP、M.LmoEORF470P、M.LmoFORF327P、M.Lmo19115ORF1P、M.Lsp1109I、M.MamI、M1.MboI、M2.MboI、M1.MboII、M2.MboII、M.Mca43617ORFAP、M.Mca43617ORFBP、M1.Mca43617ORFDP、M2.Mca43617ORFDP、M.Mca43617ORFJP、M.MfeI、M.MjaI、M.MjaII、M.MjaIII、M.MjaIVP、M.MjaV、M.MjaVI、M.MloORFmlr7520P、M.MluI、M.MlyI、M.MmaMORFC174P、M.MmaSORF735P、M.MmeI、M.MmeII、M.MmoORF950P、M.MmoORF3450P、M.MmyIP、M.MmySCORF186P、M.MmySCORF216P、M.MmySCORF950P、M1.MnlI、M2.MnlI、M.MpeORF1230P、M1.MpeORF1780P、M2.MpeORF1780P、M.MpeORF4940P、M.MpeORF9800P、M.MpuCORF430P、M.MscI、M.MseI、M.MsmChe9cORF76P、M.MsmChe9cORF77P、M.MsmChe9cORF80P、M.MsmcdP、M.MsmomegaORF127P、M.MspI、M.MspA1I、M.MspSD10I、M.MthFI、M.MthTI、M.MthZI、M.MunI、M.MvaI、M.Mva1269I、M.MwoI、M.NaeI、M.NarAORFC306P、M.NcoI、M.NdeI、M.NdeII、M.Ngo18785P、M.Ngo185840P、M.Ngo185841P、M.NgoAI、M.NgoAII、M.NgoAIII、M.NgoAIV、M.NgoAV、M.NgoAVIIP、M.NgoAXIP、M.NgoAORFC708P、M1.NgoAORFC717P、M2.NgoAORFC717P、M.NgoBI、M.NgoBII、M.NgoBIIIP、M.NgoBIVP、M.NgoBV、M1.NgoBVIII、M2.NgoBVIII、M.NgoBIX、M.NgoBXII、M.NgoDIII、M.NgoEI、M.NgoFVII、M.NgoGI、M.NgoGII、M.NgoGIII、M.NgoGIVP、M.NgoGV、M.NgoHIP、M.NgoHIIP、M.NgoHIIIP、M.NgoHIVP、M.NgoHVP、M.NgoHVIP; M.NgoHVIIP、M.NgoHVIII、M.NgoKVIP、M.NgoLIP、M.NgoLII、M.NgoLIIIP、M.NgoLIVP、M.NgoLVP、M.NgoMI、M.NgoMII、M.NgoMIII、M.NgoMIV、M.NgoMV、M.NgoMVIII、M.NgoMXV、M.NgoNIP、M.NgoNII、M.NgoNIIIP、M.NgoNIVP、M.NgoNVP、M.NgoPIP、M.NgoPII、M.NgoPIII、M.NgoPIVP、M.NgoPVP、M.NgoQIP、M.NgoQIIP、M.NgoQIIIP、M.NgoQIVP、M.NgoQVP、M.NgoSIP、M.NgoSII、M.NgoSIIIP、M.NgoSIVP、M.NgoSVP、M.NgoTIP、M.NgoTII、M.NgoTIIIP、M.NgoTIVP、M.NgoTVP、M.Ngo125VIIP、M.NlaI、M.NlaIII、M.NlaIV、M.NlaX、M.NlaL17ORFAP、M.NmaPhiCh1I、M.NmeAORF1453P、M.NmeAORF1500P、M1.NmeBI、M2.NmeBI、M.NmeBF13P、M.NmeBORF1033P、M.NmeBORF1290P、M.NmeSI、M.NmeST1117ORF1P、M.NmepNLE1P、M.NpuORFC221P、M.NpuORFC222P、M.NpuORFC224P、M.NpuORFC226P、M.NpuORFC228P、M.NpuORFC230P、M.NpuORFC231P、M.NpuORFC234P、M.NsiI、M.NspI、M.NspIII、M.NspV、M.NspHI、M.OihORF3333P、M.OihORF3336P、M.OkrAI、M.Pac25I、M.PaeI、M.PaeIMORF3201P、M.PaeMSHORF1P、M.Pae2164ORF7P、M.PaeR7I、M.PflMI、M.PgiI、M.PhaI、M.PhiBssHII、M.PhiMx8I、M.Phi3TI、M.Phi3TII、M.PhoI、M.PhoII、M.PhoWORFBP、M.PhsOYDam1P、M.PhsOYDam2P、M.PhsOYDam3P、M.PhsOYDam4P、M.PhsOYDam5P、M.PleI、M.PleLFBORF8P、M.PluTDamP、M.PluTDcmP、M.PluTORF600P、M.PluTORF2710P、M.PluTORF2942P、M.Pmi16525DamP、M.Pmi16525Dam2P、M.Pmi16525ORFDP、M.PmuADam、M.PmuDam、M.Ppu21I、M.Ppu111I、M.Ppu1253I、M.PpuMI、M.PshAI、M.PspGI、M.PspPI、M.PstI、M.PvuI、M.PvuII、M.PvuRts1DamP、M.PvuRts1Dam2P、M.RcoORF690P、M.ReuORF325P、M.Rho11sI、M.Rho11sII、M.Rle39BI、M.RmeADam、M.RpaORF1026P、M.RpapRPA4P、M.Rrh4273I、M.RruMORFS5P、M.RruMORFS15P、M.RsaI、M.RshI、M.RshIII、M.RsrI、M.RsrII、M.SPBetaI、M.SPRI、M.SacI、M.SacII、M.SalI,、M2.SapI、M.Sau96I、M.Sau3239I、M.Sau6782I、M.Sau3AI、M.SauLPI、M.SbaI、M.SbfI、M.Sbo13I、M.ScaI、M1.ScrFI、M2.ScrFI、M.SduI、M.SenPI、M.SenPhiE15P、M.SenPhiE15DamP、M.SenpCI、M.SeqORFC57P、M.SeqORFC272P、M.SeqORFC448P、M.SfaNI、M.SfeI、M.SfiI、M.Sfl2DamP、M.Sfl2DcmP、M.Sfl2ORF3300P、M.SflSf6DamP、M.SflTDamP、M.SflTDcmP、M.SflTORF3517P、M.Sfl2aI、M.SfoI、M.Sho27844P、M.SinI、M.SmaI、M.SmaII、M.SmapR478DcmP、M.SmapR478ORF272P、M.SmeIP、M1.SmuUORF504P、M2.SmuUORF504P、M.SnaBI、M.SonDamP、M.SonORF4P、M.SpeI、M.SphI、M.Spn526P、M.Spn6BI、M1.Spn19FORF24P、M2.Spn19FORF24P、M.Spn19FORF927P、M.SpnHGORF4P、M.SpnORF1431P、M.SpnORF1849P、M.SpnRORF1287P、M.SpomI、M.SptAI、M.SscL1I、M.Sse9I、M.Ssl1I、M.SsoI、M.SsoII、
M.Ssp6803I、M.Ssp6803ORF729P、M.Ssp6803ORF1803P、M.SspPhiBt1P、M.SssI、M.SstI、M.Ssu211I、M.Ssu212I、M1.Ssu2479I、M2.Ssu2479I、M1.Ssu4109I、M2.Ssu4109I、M1.Ssu4961I、M2.Ssu4961I、M1.Ssu8074I、M2.Ssu8074I、M1.Ssu11318I、M2.Ssu11318I、M1.SsuDAT1I、M2.SsuDAT1I、M.Sth368I、M.SthSt8IP、M.StsI、M.StyI、M.StyCDamP、M.StyCDam2P、M.StyCDam3P、M.StyCDam4P、M.StyCDcmP、M.StyD4I、M.StyDam、M.StyDam2P、M.StyDam3P、M.Sty1344Dam、M.Sty14028Dam、M.StyHCM1ORF187P、M.StyLTI、M.StyLTIII、M.StyLT2Dam、M.StyLT2DcmP、M.StyLT2FelsDamP、M.StyR27ORF154P、M.StySJI、M.StySKI、M.StySPI、M.StySQI、M.StySopEDamP、M.StyTDamP、M.StyTDam2P、M.StyTDam3P、M.StyTDam4P、M.StyTDcmP、M.SuaI、M.TaeII、M.TaqI、M.TdeII、M.TdeIII、M.TdeORF706P、M.TelBORF1578P、M.TelBORF1640P、M.TelBORF1878P、M1.TerORFS1P、M2.TerORFS1P、M.TerORFS14P、M.TerORFS18P、M.TerORFS62P、M.TerORFS122P、M.TfiTok6A1I、M.ThaI、M.ThaII、M.ThaIII、M.TliI、M.TmaI、M.TpaI、M.TrsKTI、M.TrsSI、M.TrsTI、M.TseI、M.Tsp32I、M.Tsp45I、M.Tsp509I、M.TspRI、M.Tth111I、Tth111II、M.TthHB8I、M.TthHB27P、M.TthHB27ORF41P、M.TvoORF849P、M.TvoORF1192P、M.TvoORF1400P、M.TvoORF1413P、M.TvoORF1416P、M.TwhORF771P、M.TwhTORF783P、M.Uba580P、M.Ucr1P、M.Van91II、M.VchADamP、M.Vch569BdamP、M.Vch0395Dam、M.VchK139I、M.VpaRDamP、M.VspI、M.VvuDamP、M.VvuYDamP、M.WsuORF1405P、M.WsuORF1930P、M.XamI、M.XaxCORF2436P、M.XbaI、M.XcmI、M.XcyI、M.XfaAORFC345P、M.XfaAORFC348P、M.XfaOORFC725P、M.XfaORF1804P、M.XfaTORF577P、M.XfaTORF1062P、M.XfaTORF1607P、M.XhoI、M.XhoI、M.XmaI、M.XmaIII、M.XmnI、M.XorII、M.XphI、M.YenI、M.YenSDamP、M.YenSORFC666P、M.YenWI、M.YpeDamP、M.YpeKDamP、M.YpeKORF2224P、M.YpeKORF3792P、M.YpeMDamP、M.YpeMORF1932P、M.YpeMORF3790P、M.YpeORF391P、M.YpeORF2088P、M.YpsDamから選ばれてもよい。
【0065】
本発明のより好ましい実施態様では、メチルトランスフェラーゼは、DNAメチルトランスフェラーゼM.Taql、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、M2.Eco31Iまたはその誘導体から成るグループから選ばれる。
【0066】
本発明はさらに、本発明の化合物(I)を含むキットに関する。このキットの各種成分は、保存のために要すれば任意に適切なバッファーに溶解されて、1個以上の容器にパックされてもよい。使用案内を載せたリーフレットを加えてもよい。
【0067】
本発明のある好ましい実施態様では、本発明のキットはさらに、本発明で定義されるものと同じメチルトランスフェラーゼを含む。
【0068】
本発明はさらに、本発明の複合体を含むキットに関する。
【0069】
本発明はさらに、本発明の化合物(I)または本発明の複合体、および、要すれば任意に製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物に関する。
【0070】
本発明はさらに、本発明の化合物(I)、または本発明の複合体を含む診断組成物に関する。一実施態様によれば、診断組成物は、液体組成物である。この診断組成物の好ましい溶媒は水性である。さらに、組成物は、処方のpH、浸透圧、粘度、色、滅菌性、安定性、溶解速度、または臭気を修飾または維持するための、他の成分または担体を含んでもよい。同様に、組成物は、その診断組成物の安定性、溶解速度、放出、または吸収を修飾または維持するために、さらに別の製薬学的に受容可能な成分を含んでもよい。一旦診断組成物が処方されたならば、これを、溶液、縣濁液、ゲル、乳液、固体、脱水または凍結粉末として、滅菌バイアルの中に貯蔵してもよい。このような処方は、すぐに使用できる形として、または、使用の直前に再構成を必要とする形として保存されてよい。
【0071】
本発明はさらに、本発明の化合物(I)、またはその混合物の、標的分子を修飾するための使用に関する。典型的使用は、本発明の教示による方法、例えば、本明細書に記載される方法である。
【0072】
本発明の好ましい実施態様では、標的分子の修飾は、本発明の化合物(I)またはその混合物を、該化合物の一部を標的分子に転移するメチルトランスフェラーゼの補因子として使用することによって実現される。
【0073】
本発明の好ましい実施態様では、標的分子は、核酸分子、要すれば任意に配列特異的なやり方で修飾されたポリペプチド、炭水化物、または小型分子である。
【0074】
本発明の好ましい実施態様では、核酸分子は、DNA、RNA、またはそれらのハイブリッドであり、より好ましくは、DNAまたはRNA分子は、配列特異的やり方で修飾される。
【0075】
本発明の、もう一つのより好ましい実施態様では、小型分子は、リン脂質、アミノ酸、ホルモン、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体から選ばれる。
【0076】
本発明の、もう一つのより好ましい実施態様では、メチルトランスフェラーゼは、上に定義したDNAメチルトランスフェラーゼである。
【0077】
本発明はさらに、修飾された標的分子の調製法であって、本発明の化合物(I)と、該化合物を補因子として使用することが可能なメチルトランスフェラーゼの存在下に、該化合物の一部を標的分子に転移することを可能とする条件下に、標的分子をインキュベートすることを含む方法に関する。
【0078】
本発明のある好ましい実施態様では、標的分子は、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、または小型分子、またはそれらの間の複合体である。
【0079】
本発明のより好ましい実施態様では、小型分子は、リン脂質、アミノ酸、ホルモン、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体である。
【0080】
本発明のより好ましい実施態様では、ポリペプチドは配列特異的やり方で修飾される。
【0081】
本発明のより好ましい実施態様では、DNA、またはRNA分子は配列特異的やり方で修飾される。
【0082】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、修飾は、標識として好適な基を標的分子に転移し、他の未標識分子の間において標識された該分子の特定を可能とすることによって実現される。最後に、本発明のより好ましい実施態様では、標識は、蛍光発色団、蛍光消光剤、アフィニティタグ、スピンラベル、質量タグ、放射性または安定な希少同位元素、発色団、および検出可能なナノ粒子から選ばれる。
【0083】
本発明はまた、生体分子における配列特異的メチル化を検出する方法であって、(a)前記メチルトランスフェラーゼの検出可能な補因子の存在下に、生体分子をS−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼに接触させること;および、(b)前記メチルトランスフェラーゼの認識部位が、補因子またはその誘導体によって修飾されたかどうかを検出することを含み、前記メチルトランスフェラーゼの認識部位の修飾は、前記認識部位におけるメチル化の不在を示し、前記補因子は、上に詳述した本発明の、式(I)の化合物、またはその誘導体であることを特徴とする、方法に関する。
【0084】
「生体分子」という用語は、DNA、RNA、または(ポリ)ペプチドを意味する。「(ポリ)ペプチド」という用語は、ペプチド、またはポリペプチドを交互に指す。通常、ペプチドは、最大30個の残基から成る共有的に結合されるアミノ酸であるが、一方ポリペプチドは(「タンパク」とも呼ばれる)31個以上のアミノ酸残基を含む。生体分子は、染色体またはゲノムDNAであることが好ましい。
【0085】
「生体分子をメチルトランスフェラーゼに接触させる」という用語は、メチルトランスフェラーゼと生体分子とを接触させることを意味する。一般に、このことは、生体分子を含むサンプルにメチルトランスフェラーゼを加えることによって実現される。それとは別に、生体分子を含むサンプルを、メチルトランスフェラーゼを含む溶液に加えてもよい。当業者には、最適な酵素活性を実現するのに必要な特定のバッファー条件は既知である。このような条件は、当業者には既知であるか、あるいは、様々なアッセイ条件下で酵素活性を調べることによって獲得することが可能である。
【0086】
通常、生体分子は、メチルトランスフェラーゼ補因子の存在下にメチルトランスフェラーゼと接触させられる。前記補因子は、上に詳述された、式(I)の化合物、またはその誘導体であることが好ましい。
【0087】
「メチルトランスフェラーゼ」という用語は、通常、活性化メチルを、S−アデノシル−L−メチオニン(AdoMet)からその基質へ転移する酵素を指す。メチルトランスフェラーゼは、DNA、RNA、または(ポリ)ペプチドをメチル化することが可能な酵素であることが好ましい。より好ましくは、メチルトランスフェラーゼは、M.TaqI、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、M2.Eco31I、またはそれらの誘導体から選ばれるDNAメチルトランスフェラーゼであることが好ましい。
【0088】
「前記メチルトランスフェラーゼの認識部位が、補因子またはその誘導体によって修飾されたかどうかを検出すること」という用語は、式(I)の補因子またはその誘導体が生体分子に付着したかどうかを評価することを意味する。好ましくは、検出法は、メチルトランスフェラーゼの認識配列の中に、前記補因子またはその誘導体によって修飾された特定の残基を特定することを含む。前記誘導体は、式(I)の化合物またはその誘導体と、生体分子との間の反応から生じる任意の化合物であってよい。
【0089】
「認識配列」という用語は、生体分子において、メチルトランスフェラーゼによって認識される特定の配列を指す。メチルトランスフェラーゼがDNAメチルトランスフェラーゼである場合、認識配列は、2、3、4、5、6、または8個または対のヌクレオチドまたはヌクレオチドペアを含んでもよい。本明細書で用いる認識配列は、通常、本発明の、式(I)の化合物、またはその誘導体に対するアクセプター部位を含む。本発明の教示は、メチルトランスフェラーゼ依存性に配列特異的標識付着を可能とする。いわゆるCpG島に配されるシトシン残基のDNA標識は、本発明の特異的局面である。なぜなら、これによって、ヒトの染色体DNAのメチル化状態を評価することが可能となるからである。従って、本発明の方法は、染色体DNAのメチル化状態の変化と関連する疾病を診断するのに特に有用であるが、ただし本発明が有用であるのはこれに限定されない。本発明の方法は、他の供給源から得られたDNAのメチル化状態ばかりでなく、RNAまたは(ポリ)ペプチドのメチル化状態を評価するのにも有用である筈である。さらに、メチルトランスフェラーゼと複合体を形成する式(I)の補因子またはその誘導体は、生化学、分子生物学、遺伝子治療、およびナノ生物工学における種々の応用にも有用となる筈である。さらに、式(I)の補因子またはその誘導体は、メチルトランスフェラーゼの、新たなメチル化標的を見出すのに使用することが可能である。
【0090】
本発明の好ましい実施態様では、前記生体分子は、核酸分子か、または(ポリ)ペプチドである。核酸分子は、DNAおよびRNAを含むものと理解しなければならない。好ましくは、DNAは、染色体またはゲノムDNAである。生体分子は任意の長さを持っていてよい。「染色体DNA」という用語はまた、染色体の断片を含む。前記断片は、最大500ヌクレオチド(nt)、1キロベース(kb)、2kb、3kb、4kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kbまたはそれ以上の長さを持つ。一方、染色体DNAによって包括されるものは、最大5nt、10nt、15nt、20nt、25nt、30nt、35nt、40nt、45nt、50nt、100nt、200nt、300nt、400nt、500ntの長さを持つ短い断片である。
【0091】
本発明のさらにもう一つの好ましい実施態様では、前記(a)工程は、インビトロか、細胞抽出物か、またはインビボで実行される。一般に、制限酵素およびDNAトランスフェラーゼによる処理にとって好適な反応条件は、当業者には既知であり、例えば、分子生物学の標準的教科書に記録される(例えば、Sambrook et al.,「分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)」; ISBN: 0879695765、CSH Press、Cold Spring Harbor、2001を参照されたい)。M.Ssslの変種Q142Aによって仲介される補因子標識化の適正条件は、バッファー(10mM Tris塩酸、50mM塩化ナトリウム、1mMジチオスレイトール、pH7.9)に溶解した、式(I)の化合物300μM、M.Sssl変種Q142A 73pmolである。インキュベーションは、37℃4時間でよい。本発明の方法をインビトロで実行する場合、分析の前に個体から生物サンプルを分離する。この「生物サンプル」という用語は、個体から取り出された標本に関する。前記標本は、毛髪、皮膚、粘膜表面、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、唾液、喀痰、涙液、脳脊髄液、精液、滑液、羊水、乳汁、リンパ液、肺喀痰、気管支分泌液を含む体液、または大便から採取されるのが好ましい。
【0092】
個体は、ヒトまたは動物であってよい。個体は、七面鳥またはニワトリを含む家禽であるか、あるいは、個体は、哺乳類、例えば、ヒト、霊長類、ラット、マウス、モルモット、ブタ、ウシ、ネコ、またはウサギを含む哺乳類であることが好ましい。
【0093】
本発明のより好ましい実施態様では、前記核酸分子はDNAである。前記DNAは染色体DNAであることが好ましい。
【0094】
本発明の、もう一つのより好ましい実施態様では、本法は、工程(a)の前に、制限酵素でDNAを処理する工程をさらに含む。制限酵素は、R.AatII、R.AccI、R.Acc65I、R.AciI、R.AclI、R.AfeI、R.AflII、R.AflIII、R.AgeI、R.AhdI、R.AluI、R.AlwI、R.AlwNI、R.ApaI、R.ApaLI、R.ApoI、R.AscI、R.AseI、R.AsiSI、R.AvaI、R.AvaII、R.AvrII、R.BaeI、R.BamHI、R.BanI、R.BanII、R.BbsI、R.BbvI、R.BbvCI、R.BceAI、R.BcgI、R.BciVI、R.BclI、R.BfaI、R.BfrBI、R.BfuAI、R.BglI、R.BglII、R.BlpI、R.Bme1580I、R.BmgBI、R.BmrI、R.BpmI、R.BsaI、R.BsaAI、R.BsaBI、R.BsaHI、R.BsaJI、R.BsaWI、R.BsaXI、R.BseRI、R.BsgI、R.BsiEI、R.BsiHKAI、R.BsiWI、R.BslI、R.BsmI、R.BsmAI、R.BsmBI、R.BsmFI、R.BsoBI、R.Bsp1286I、R.BspCNI、R.BspDI、R.BspEI、R.BspHI、R.BspMI、R.BsrI、R.BsrBI、R.BsrDI、R.BsrFI、R.BsrGI、R.BssHII、R.BssKI、R.BssSI、R.BstAPI、R.BstBI、R.BstEII、R.BstF5I、R.BstNI、R.BstUI、R.BstXI、R.BstYI、R.BstZ17I、R.Bsu36I、R.BtgI、R.BtrI、R.BtsI、R.Cac8I、R.ClaI、R.DdeI、R.DpnI、R.DpnII、R.DraI、R.DraIII、R.DrdI、R.EaeI、R.EagI、R.EarI、R.EciI、R.EcoNI、R.EcoO109I、R.EcoRI、R.EcoRV、R.FauI、R.Fnu4HI、R.FokI、R.FseI、R.FspI、R.HaeII、R.HaeIII、R.HgaI、R.HhaI、R.HinP1I、R.HincII、R.HindIII、R.HinfI、R.HpaI、R.HpaII、R.HphI、R.Hpy99I、R.Hpy188I、R.Hpy188III、R.HpyCH4III、R.HpyCH4IV、R.HpyCH4V、R.KasI、R.KpnI、R.MboI、R.MboII、R.MfeI、R.MluI、R.MlyI、R.MnlI、R.MscI、R.MseI、R.MslI、R.MspI、R.MspA1I、R.MwoI、R.NaeI、R.NarI、R.NciI、R.NcoI、R.NdeI、R.NgoMIV、R.NheI、R.NlaIII、R.NlaIV、R.NotI、R.NruI、R.NsiI、R.NspI、R.PacI、R.PaeR7I、R.PciI、R.PflFI、R.PflMI、R.PleI、R.PmeI、R.PmlI、R.PpuMI、R.PshAI、R.PsiI、R.PspGI、R.PspOMI、R.PstI、R.PvuI、R.PvuII、R.RsaI、R.RsrII、R.SacI、R.SacII、R.SalI、R.SapI、R.Sau96I、R.Sau3AI、R.SbfI、R.ScaI、R.ScrFI、R.SexAI、R.SfaNI、R.SfcI、R.SfiI、R.SfoI、R.SgrAI、R.SmaI、R.SmlI、R.SnaBI、R.SpeI、R.SphI、R.SspI、R.StuI、R.StyI、R.SwaI、R.TaqI、R.TfiI、R.TliI、R.TseI、R.Tsp45I、R.Tsp509I、R.TspRI、R.Tth111I、R.XbaI、R.XcmI、R.XhoI、R.XmaI、およびR.XmnIから成るグループから選ばれてもよい。
【0095】
本発明のさらにもう一つのより好ましい実施態様では、前記DNAは、固相支持体の上に固定される。本発明に従って用いられる固相支持体は、フィルター材料、チップ、ウェイファー、マイクロタイタープレートを含む。固相支持体に対する固定は、種々の手段、例えば、活性化表面に対する共有結合、または、核酸分子に対するハイブリダイゼーションを含む各種手段によって実現してよい。
【0096】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、前記DNA分子は、固相支持体に、この固相支持体に付着するオリゴヌクレオチドに該DNA分子をハイブリダイズすることによって付着する。ハイブリダイゼーション条件は、低度、中等度、または高度の厳格度であってよい。本明細書で用いる「厳格条件」という用語は、当業者にはよく知られているが、高度の厳格度条件に一致する。各配列に対する適切な厳格度のハイブリダイゼーション条件は、当業者であれば、温度、核酸分子の組成、塩条件等のパラメータを修飾することによって定めることが可能である。例えば、Sambrook et al.,「分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)」; ISBN: 0879695765、CSH Press、Cold Spring Harbor、2001、またはHiggins and Hames(eds.),「核酸ハイブリダイゼーション、実技入門(Nucleic acid hybridization、a practical approach)」、IRL Press、Oxford 1985、特に、「ハイブリダイゼーション戦略(Hybridization Strategy)」の章、Britten & Davidson著、3から5を参照されたい。厳格ハイブリダイゼーション条件とは、例えば、50%フォルムアミド、5xSSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xDenhardt液、10%硫酸デキストラン、および、20μg/mLの変性、せん断鮭精子DNAを含む溶液において42℃で一晩インキュベーション、その後、約65℃において0.1xSSCにおいてフィルター洗浄を含む条件である。他の厳格ハイブリダイゼーション条件は、例えば、65℃における0.2xSSC(30mM NaCl、30mMクエン酸三ナトリウム、pH7)である。さらにより低い厳格度を実現するために、厳格ハイブリダイゼーションの後に実行される洗浄を、より高い塩濃度(例えば、5xSSC)で行ってもよい。ハイブリダイゼーション実験における背景雑音を抑制するために使用されるブロッキング試薬を含めるか、および/または置換することによって、前述の条件に変動をもたらすことが可能であることに注意しなければならない。典型的ブロッキング試薬としては、Denhardt試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性鮭精子DNA、および市販の私企業専売処方が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。特定のブロッキング試薬の導入は、適合性問題のために、前述のハイブリダイゼーション条件の修正を要求する場合がある。比較的低い厳格度を持つハイブリダイゼーション条件も考慮の対象となる。ハイブリダイゼーションおよび信号検出の厳格度の変更は、例えば、フォルムアミド濃度(フォルムアミドのパーセンテージが低いと厳格度は低くなる)、塩条件、または温度を操作することによって実現される。例えば、比較的低い厳格度条件は、6xSSPE(20xSSPE=3M NaCl、0.2M NaH2PO4、0.02M EDTA、pH7.4)、0.5%SDS、30%フォルムアミド、100μg/mLの変性鮭精子DNAを含む溶液において37℃で一晩インキュベーション、その後、50℃において1xSSC、0.1%SDSにおいて洗浄を含む。さらに低い厳格度を実現するためには、厳格ハイブリダイゼーション後に実行される洗浄を、より高い塩濃度(例えば、5xSSC)において行ってもよい。
【0097】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、メチルトランスフェラーゼは、孤立DNAトランスフェラーゼであるか、または細菌制限修飾システムの一部である。
【0098】
本発明のさらにもう一つの好ましい実施態様では、前記メチルトランスフェラーゼは、M.TaqI、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、およびM2.Eco31I、またはその誘導体から選ばれる。用語”M.HhaI”は、アクセス番号P05102の下にSwissprotデータベースに保管されるDNAメチルトランスフェラーゼを指す。用語”M.TaqI”は、アクセス番号P14385の下にSwissprotデータベースに保管されるDNAメチルトランスフェラーゼを指す。用語”M.BseCI”は、アクセス番号P43423の下にSwissprotデータベースに保管されるDNAメチルトランスフェラーゼを指す。しかしながら、M.TaqI、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)およびM2.Eco31Iと同じ配列特異性を持つものであれば、すなわち、同じ認識配列を持つか、または、低い配列特異性を持つものでも該認識配列の一部だけを含んでいれば、他の任意のメチルトランスフェラーゼも、本発明の方法にとって有用である可能性がある。
【0099】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、(a)本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体は、DNAメチルトランスフェラーゼの認識部位における、または認識部位近傍における、制限酵素の切断を阻止し;かつ、(b)メチル化は、前記化合物によるDNAの修飾が、前記認識部位において、またはその近傍において、制限酵素による切断を阻止するかどうかを試験することによって検出される。
【0100】
本発明の発明人は、認識配列のアクセプター部位における、本発明の式(I)の化合物の存在が、重複するか、または同じ認識配列を持つ制限酵素によるDNA切断を阻止することを観察した。本明細書で用いる制限酵素切断の阻止とは、制限酵素が、DNA鎖を切断することを防止することを意味する。理論に縛られる心算はないが、立体的障碍が、認識配列への接触を阻止するため、制限酵素が生産的な形でその標的配列に結合できなくなると仮定される。この所見は、本発明の化合物による最初の標識化工程、および、制限酵素によるその後の切断工程を含むアッセイに利用することが可能である。もちろん、制限酵素の選択は、標識工程で用いられる特定のDNAトランスフェラーゼに依存する。一般的ガイドラインとして、制限酵素の認識配列は、修飾された塩基の近傍になければならない。制限酵素の認識配列は、修飾された塩基を含むことが好ましい。DNAトランスフェラーゼの認識配列と、制限酵素の認識配列とが同じであることがより好ましい。制限酵素およびDNAメチルトランスフェラーゼの特定の組み合わせの選択は、当業者には明らかであり、これ以上の説明を必要としない。さらに、DNAメチルトランスフェラーゼによって実行される標識化反応、および制限酵素切断は、標準条件下で実行されてよい。
【0101】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、(a)本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体は、メチルトランスフェラーゼの認識部位において核酸増幅を妨げ;かつ、(b)メチル化は、核酸の増幅が、メチルトランスフェラーゼの認識部位において遅れるかどうかを試験することによって検出される。増幅遅延は、増幅反応時においてプライマー結合または鎖伸長を妨げることによって実現されると考えられる。
【0102】
「増幅」または「増幅する」という用語は、コピー数の増加を意味する。当業者であれば、核酸分子を増幅するための様々な方法を存知しているであろうが、これらの方法は、本発明の診断法においても使用が可能である。増幅法としては、例えば、「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)、「リガーゼ連鎖反応」(LCR、EPA320308)、「周期的プローブ反応」(CPR)、「鎖移動増幅」(SDA、Walker et al.、(1992) Nucleic Acid Res. 7、1691−1696)、「転写依存増幅システム」(TAS、Kwoh et al.、(1989) Proc.Nat.Acad.Sci. USA 86、1173; Gingers et al.、PCT Application WO 88/10315)が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。DNAの増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて実行することが好ましい[Methods in Molecular Biology、Vol.226(Barlett and Stirling、eds.): PCR protocols、2nd edition; PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification(Ehrlich、ed.)、New York 1992; PCR Protocols: A guide to methods and applications(Innis et al.、eds.)、Academic Press、San Diego 1990]。サンプルがごく微量の核酸しか含んでいない場合には、核酸増幅法が特に便利な場合がある。前記核酸がRNAである場合、RT−PCRを実行してもよい。その後、PCRを含むもう一つの増幅工程を実行してもよい。それとは別に、同じサンプルに含まれる前記核酸がDNAである場合、PCRを実行してよい。
【0103】
一般に、PCRは、(a)DNA分子の二つの鎖を溶解する、変性工程;(b)DNA分子の溶解鎖にプライマーを特異的にアニールさせることを目的とするアニーリング工程;および、(c)鋳型鎖によって供給される情報を用いてアニールしたプライマーを伸長させる伸長工程から成るサイクルの、数多くの繰り返しから成る。一般に、PCRは、5μLの10xPCRバッファーを、1.5mM MgCl2、各デオキシヌクレオシド三リン酸200μM、各プライマー0.5μL(10μM)、約10から100ngの鋳型DNA、および、1から2.5単位のTaq DNAと共に含む50μLの反応混合液において実行される。増幅用プライマーは、標識されてもよいし、未標識であってもよい。DNA増幅は、例えば、モデル2400熱サイクラー(Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州)使用:94℃で2分、次いでアニーリング(50℃で30秒)、伸長(72℃で1分)、変性(94℃で10秒)から成るサイクルを35サイクル、および最終アニーリング工程55℃で1分および最終伸長工程72℃で5分、によって実行することが可能である。しかしながら、当業者であれば、特定の核酸分子の増幅のためにこれらの条件をどう最適化したらよいか、または、反応混合物容量をどのように縮小、または拡大したらよいかを承知している。
【0104】
核酸増幅のもう一つの方法は、「逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)」である。この方法は、増幅される核酸がRNAから成る場合に用いられる。「逆転写酵素」という用語は、リボ核酸鋳型に対して相補的なプライマー伸長産物を形成する、デオキシリボヌクレオシド三リン酸の重合を触媒する酵素を指す。この酵素は、プライマーの3′末端において合成を開始し、鋳型の5′末端に向かって進み、5′末端に達したところで合成が止む。RNA標的配列を、相補的なコピーDNA(cDNA)配列に変換するのに好適な重合剤の例として、ニワトリ骨髄芽細胞症ウィルス逆転写酵素およびThermus thermophilus DNAポリメラーゼ、Perkin Elmerによって市販される、逆転写酵素活性を持つ熱安定性DNAポリメラーゼがある。通常、ゲノムRNA/cDNA二重鎖鋳型は、最初の逆転写工程後の初回の変性工程時に熱変性されてDNA鎖を離脱させ、これが、増幅用鋳型として利用される。DNA鋳型と共に使用するのに好適なポリメラーゼとしては、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIまたはそのクレノウ断片、T.sub.4 DNAポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、および、Thermus aquaticusから単離され、Hoffmann−La Rocheによって開発・製造され、Perkin Elmerによって市販される、熱安定DNAポリメラーゼであるTaqポリメラーゼが挙げられる。この後者の酵素は、核酸の増幅および配列決定に広く使用される。Taq DNAポリメラーゼを使用するための反応条件は従来技術において既知であり、かつ、例えば、「PCR技術(PCR Technology)」、Ehrlich(1989、Stokton Press、New York; Innis、Gelfand、Sninsky and White. 1990、「PCRプロトコール:方法および応用ガイド(PCR Protocols: A guide to methods and applications)」、Academic Press、New Yorkに記載される。高温RTによって、より高いプライマー特異性および効率が実現される。1991年8月15日出願の、係属中の米国特許出願第07/746,121号は「相同性RT−PCR」を記載する。このPCRでは、逆転写とPCR増幅の両工程において同じプライマーおよびポリメラーゼで十分であり、二つの反応が試薬の交代無しに行われるように反応条件が最適化される。Thermus thermophilus DNAポリメラーゼは、逆転写酵素としても機能することが可能な熱安定DNAポリメラーゼであるが、これは、鋳型によらず、全てのプライマー伸長工程において使用することが可能である。両工程は、試薬を変える、または加えるためにチューブを開くことを要することなく実行することが可能である。ただ温度プロフィールだけは、第1サイクル(RNA鋳型)と残りの増幅サイクル(DNA鋳型)の間で調整する。RT反応は、例えば、5xANV−RTバッファー4μL、2μLのオリゴdT(100μg/mL)、10mM dNTP 2μL、全体RNA 1μL、10単位のAMV逆転写酵素、およびH2Oを加えて20μLの最終容量としたものを含む20μLの反応混合液において実行される。反応は、例えば、下記の条件を用いて実行してもよい。反応は、逆転写を可能とするために15分70℃に維持される。次に、反応温度を95℃に1分上げて、RNA−cDNA二重鎖を変性する。次に、反応温度を95℃で15秒および60℃で20秒から成る2サイクル、その後、90℃で15秒および60℃で20秒から成る38サイクルを経過させる。最後に、反応温度を、最終伸長工程のために60℃で4分維持し、15℃に冷却し、増幅サンプルのその後の処理までその温度に維持する。
【0105】
本発明を通じて使用される「プライマー」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然であると合成であるとを問わず、鋳型核酸鎖に対して相補的なプライマー伸長産物が誘発される条件下で、すなわち、適切な温度に維持された、適切なバッファーに溶解した4種類の異なるヌクレオシド三リン酸またはその類縁体、および重合剤(すなわち、DNAポリメラーゼ、または逆転写酵素)の存在下において、核酸合成の起点として作動することが可能な、約8から約30、最終的には約50ヌクレオチド長の、短い核酸分子を指す。プライマーは、1本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドであることが好ましい。プライマーの適切な長さは、そのプライマーの意図される用途に依存するが、通常、PCRプライマーおよび配列決定反応に使用されるプライマーとしては、10から25ヌクレオチドの範囲を持つ。短いプライマーは、一般に、鋳型に対し十分安定なハイブリッド複合体を形成するにはより低い温度を必要とする。プライマーは、鋳型の正確な配列を反映する必要はなく、その増幅仲介能力が侵されない限り、鋳型に特異的にハイブリダイズするのに十分なほど相補的であればよい。「ハイブリダイズする」とは、2本の1本鎖核酸同士が、相補的塩基の対合を介して、すなわち、A対T(RNAではU)、G対Cの対合を介して結合することを指す。「プライマーペア」という用語は、2本鎖核酸分子の、それぞれ、プラスおよびマイナス鎖にハイブリダイズし、例えば、PCR反応において、例えば、DNA断片の増幅を可能とする二つのプライマーを指す。要すれば、プライマーは、分光光度計、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段によって検出が可能な化合物を取り込ませることによって標識することが可能である。例えば、有用な標識としては、蛍光染料、高電子密度試薬、ビオチン、または、抗血清またはモノクロナール抗体が利用可能な小型分子が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。標識はまた、増幅された核酸またはその断片の選択をやり易くするために、プライマーを「捕捉する」ためにも用いられる。カルボキシフルオレセイン(FAM)および6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)は、好ましい標識である。他の好ましい標識としては、フルオロクローム、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Texasレッド、フィコエリスリン、アロフィコシアニン、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)、または、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、放射性標識、例えば、32P、35S、3Hが挙げられる。
【0106】
標識も2段階システムであってもよい。すなわち、プライマーが、高度の親和性を持つ結合パートナー、例えば、アビジン、特異的抗体等を持つ、ビオチン、ハプテン等に接合され、該結合パートナーは、検出可能な標識に接合されるシステムである。標識は、プライマーの片方だけ、または両方に接合されてよい。
【0107】
前記診断法において、核酸の配列決定工程を実行してもよい。配列決定のためには、従来技術で既知の任意の方法を用いてよい。核酸配列は、SangerまたはMaxam/Gilbertの配列決定技術(例えば、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、Vol. 167(Graham and Hill、eds.): DNA sequencing protocols、2nd edition、2001; Galas and McCormack,「ゲノム技術、現在と未来(Genomic Technologies: Present and Future)」、Caister Academic Press、Wymondham、UK、2002を参照)に基づく方法によって決められるのが好ましい。
【0108】
本発明のある好ましい実施態様では、PCRはリアルタイムPCRである。本発明のもう一つの好ましい実施態様では、核酸増幅は、リアルタイムPCRによって実行される。
【0109】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、(a)本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体は、蛍光標識を含み;かつ、(b)メチル化が、前記核酸分子における蛍光の存在、または量を測定することによって検出される。本発明の式(I)の前記化合物、またはその誘導体は、本発明において前述した蛍光標識、または、当業者に既知のものの内の任意のものによって標識してよい。本発明によれば、Alexa、BODIPY、bimane、クマリン、Cascadeブルー、ダンシル、ダポキシル、フルオレセイン、マンシル、MANT、Oregonグリーン、ピレン、ローダミン、Texasレッド、TNS、蛍光ナノ結晶(量子ドット)、シアニン蛍光発色団、およびそれらの誘導体が特に好ましい標識である。
【0110】
「蛍光の存在または量を測定する」とは、蛍光分光光度計測によって蛍光が検出されるかどうか、あるいは、どの程度の蛍光が検出されるかを意味する。
【0111】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、(a)メチルトランスフェラーゼの認識配列において修飾された核酸分子がアフィニティ精製によって精製され;かつ、(b)本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体はアフィニティタグを含む。
【0112】
核酸分子は、本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体の標識に特異的に結合することが可能な化合物を用いて精製してもよい。その場合、標識は、アフィニティタグに一致するか、アフィニティタグを含む。標識またはアフィニティタグに結合することが可能な化合物は、化合物の結合が特異的である、抗体、タンパク、ペプチド、またはアプタマーである。アフィニティタグは、エピトープ、例えば、フラッグ−タグ、c−myc−タグ、HA−タグ、ジゴキシゲニン、またはジニトロフェノールである。それとは別に、アフィニティタグは、人工ペプチド、例えば、Hisタグであってもよい。「Hisタグ」は、His4、His5、His6、His7、His8、His9、His10、His11、His12、His13、His14、His15から選ばれてもよい。さらに、アフィニティタグは、ビオチン、ストレップ−タグ、グルタチオン、ニッケル−ニトリロ三酢酸(NTA)、またはマルトースであってもよい。アフィニティタグが「Hisタグ」である場合、固相支持体に結合したニッケルを精製のために用いてもよい。アフィニティタグがエピトープである場合、精製には、固相支持体に結合した抗体−アフィニティを用いることが可能である。アフィニティタグがビオチンまたはストレップ−タグである場合には、固相支持体に結合させたアビジンまたはストレプトアビジンを精製のために用いてもよい。アフィニティタグがグルタチオンの場合、固相支持体に結合させたグルタチオントランスフェラーゼ(GST)を精製のために用いてよい。アフィニティタグがマルトースである場合、固相支持体に結合させたマルトース結合タンパクを精製のために用いてよい。アフィニティタグがニッケル−ニトリロ三酢酸(NTA)である場合には、固相支持体に結合させた、いくつかのヒスチジン残基含有ペプチドを精製のために用いてよい。
【0113】
アフィニティ精製は、一般に、静止材料(固相)に固定されたリガンドとの結合性相互作用における差に基づいて、溶液(移動相)における分子を分離することを含む。アフィニティ精製における支持体または基質は、リガンドが共有的に付着されるものであれば、任意の材料であってよい。典型的には、アフィニティ基質として使用される材料は、標的分子が存在するシステムに対し不溶である。通常、ただし必ずしもそうとは限らないが、不溶の基質は固体である。有用なアフィニティ支持体は、高い、表面積対容量比を持ち、リガンドの共有的付着のために簡単に修飾される化学基を有し、非特異的結合性が極めて小さく、流動性が良く、かつ、機械的および化学的安定性を持つものである。好ましい固相支持体は、アガロース、セファロース、およびポリスチレンビーズである。
【0114】
アフィニティ精製は、本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体のアフィニティタグとしてビオチン、ジゴキシゲニン、グルタチオン、またはニッケル−ニトリロ三酢酸(NTA)を用いることによって実行するのが好ましい。
【0115】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体は、DNAのシトシン残基には付加されるが、5−メチルシトシン残基に対しては付加させることができないことが好ましい。
【0116】
本発明の好ましい実施態様では、方法は、工程(a)の後に、DNA分子の配列を決定する追加工程を含む。配列決定のためには、従来技術で既知の任意の方法を用いてよい。核酸配列は、SangerまたはMaxam/Gilbertの配列決定技術(例えば、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、Vol.167(Graham and Hill、eds.): DNA sequencing protocols、2nd edition、2001; Galas and McCormack,「ゲノム技術、現在と未来(Genomic Technologies: Present and Future)」、Caister Academic Press、Wymondham、UK、2002を参照)に基づく方法によって決められるのが好ましい。
【0117】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記検出可能な補因子の標識は、(a)前記検出可能な補因子の標識に特異的に結合する抗体によって、あるいは、(b)前記検出可能な補因子に特異的に結合するアビジンまたはストレプトアビジンによって検出される。
【0118】
本発明を通じて使用される「抗体」という用語は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、キメラ抗体、1本鎖抗体、またはその断片を指す。抗体は、エピトープに対して特異的であることが好ましい。抗体は、ヒト化抗体、合成抗体、抗体断片、例えば、Fab、F(ab2)’、Fv、またはscFv断片等、または、これらの内の任意のものの化学的に修飾された誘導体であってもよい。モノクロナール抗体は、例えば、最初にKoehler and Milstein、(1975) Nature 256、495、and Galfre、(1981) Meth.Enzymol. 73、3に記載されたものと同じ技術によって調製される。この技術は、マウス骨髄腫細胞を、免疫化哺乳動物由来の脾臓細胞と融合させることを含むが、従来技術によって開発された修正を伴う。さらに、抗体、またはその断片は、例えば、Harlow and Lane「抗体、実験室マニュアル(Antibodies、A Laboratory Manual)」、CSH Press、Cold Spring Harbor、1998に記載される方法を用いることによって獲得される。前記抗体の誘導体がファージディスプレイ技術によって獲得される場合、分析されるエピトープに結合するファージ抗体の効率を増すために、ビアコアシステムに用いられる表面プラスモン共鳴を用いることが可能である(Schier、(1996) Human Antibodies Hybridomas 7、97−105; Malmborg、(1995) J.Immunol.Methods 183、7−13)。キメラ抗体の製造は、例えば、WO89/09622に記載される。
【0119】
抗体は標識してもよく、その際、標識は、本発明において述べた標識の内の任意のものであってよい。
【0120】
最後に、本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記DNA分子の配列が、DNA配列決定、ハイブリダイゼーション、Maldi−Tof分析、または、酵素断片化およびクロマトグラフィーによるヌクレオシド組成の分析によって決定される。
【0121】
本発明はさらに、下記の実施例によって、ただしこれらの実施例によって限定されることなく具体的に説明される。
【実施例】
【0122】
[実施例1]
補因子3−9の合成
補因子3−9の合成をスキーム1に示すとおりに実行した。
【0123】
【化7】
【0124】
スキーム4
補因子類縁体3−9の化学的合成、補因子類縁体5から9は本発明によるもので、補因子3および4は比較のためにのみ提示する。
【0125】
補因子類縁体3−9合成のための一般的手順
ギ酸および酢酸(1:1混合物)に溶解したS−アデノシル−L−ホモシステイン(2、Sigma−Aldrich)に、0℃でアリキルトリフレートまたは臭化アルキルをゆっくり加えた。この溶液を放置して室温に温め、室温で振とうしながらインキュベートした。補因子3−6に至る反応の進行を、分析的陽イオン交換HPLC(EC 250/4 Nucleosil 100−5 SA、CC 8/4 Nucleosil 100−5 SAプレカラム装備、Macherey−Nagel、Dueren、ドイツ)によって分析した。化合物は、アジ化ナトリウム(1mM)を含む、酢酸トリエチルアンモニウムバッファー(100mM、pH4.0)によって1mL/分の流速においてイソクラティックに溶出した。化合物は、260nmおよび278nmにおいて検出した。補因子7および8は、分析的逆相HPLC(Discovery C18 150x2.1mm、5μm、Supelguard Discovery C18 20x2.1m、5μmプレカラム装備、Supelco、ドイツ)、およびそれに結合される質量分析検出器(HP 1100 series ESI−MS、単一四重極装備)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウム水溶液(20mM、pH3.5)に溶解したメタノール(0%で6分、その後直線勾配で100%まで6分、100%で4分)によって0.3mL/分の流速において溶出した。MS検出の効率を上げるために、ポストカラム移動相修飾(メタノールに溶解した1%CF3COOHの等量共同流)を用いた。さらに、化合物を、210nm、260nm、および280nmにおいて検出した。
【0126】
水を加えて反応を停止させ(補因子3−6および9のためには30mL、補因子7および8のためには20mL)、水相をジエチルエーテルで抽出した(補因子3−6では3x5mL、補因子7,8では3x20mL、補因子9では3x15mL)。補因子3−6および9を含む水相を凍結によって濃縮し、得られた淡褐色油を0.01%のトリフルオロ酢酸を含む水(5mL)に溶解した。硫黄中心における補因子エピマーの精製および分離は(補因子9では、エピマーの分離は実現されなかった)、予備的逆相HPLC(Prontosil−ODS 5μm、120Å、30x20mmプレカラム、Bischoff、Leonberg、ドイツ)によって実行した。化合物は、トリフルオロ酢酸水溶液に溶解した(0.01%)アセトニトリル(補因子3−6:直線勾配で10%まで15分、70%まで5分;補因子9:14%から直線勾配で42%まで10分、70%まで5分)によって10mL/分の流速において溶出した。化合物は、260nmおよび278nmにおいて検出した。補因子7および8は、予備的逆相HPLC(Discovery C18 250x10mm、5μm、Supelguard Discovery C18 20x2.1 m、5μmプレカラム装備、Supelco、ドイツ)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウム水溶液(20mM、pH3.5)に溶解したメタノール(直線勾配で100%まで12分)によって20℃で4.5mL/分の流速において溶出した。化合物を、210nm、260nm、および280nmにおいて検出した。分画を含む産物を収集し、溶媒を凍結によって除去した。収率は、補因子のアデニン発色団の、260nmにおける吸光係数15400Lmol-1cm-1を用いUV分光光度計測によって定量した。
【0127】
A. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]エチルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン(S−アデノシル−L−エチオニン)、補因子3(比較例)
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(3mL)に溶解し、エチルトリフルオロメチルスルフォネート(1.21mL、9.36mmol、Sigma−Aldrich)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、2時間後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、3(保持時間7.5分、10.9μmol、21%)およびそのエピマー(保持時間7.8分、6.0μmol、12%)が白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 413.2(2)[M]+、334.2(5)[5’−エチルチオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、250.1(88)[M−エチオニン]+、136.2(100)[アデニン+H]+.
【0128】
B. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]プロピルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン(S−アデノシル−L−エチオニン)、補因子4(比較例)
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(3mL)に溶解し、プロピルトリフルオロメチルスルフォネート(1.8g、9.36mmol、Ross et al.、(2000) J.Chem.Soc.、Perkin Trans. 1、571−574による方法に従って調製)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、2.5時間後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、4(保持時間16.6分、10.5μmol、21%)およびそのエピマー(保持時間16.9分、8.3μmol、16%)が白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 348.0(17)[5’−プロピルチオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、326.0(100)[5’−プロピルチオ−5’−デオキシアデノシン+H]+.
【0129】
C. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]プロプ−2−エニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子5
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(3mL)に溶解し、臭化アリル(264μL、3.12mmol、Sigma−Aldrich)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、4時間後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、5(保持時間17.1分、7.2μmol、14%)およびそのエピマー(保持時間17.9分、11.6μmol、22%)が白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 346.0(30)[5’−(プロプ−2−エニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、324.0(100)[5’−(プロプ−2−エニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+.
【0130】
D. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]プロプ−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子6
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(3mL)に溶解し、プロパルギルトリフルオロメチルスルフォネート(1.76g、9.36mmol、Ross et al.、(2000) J.Chem.Soc.、Perkin Trans. 1、571−574による方法に従って調製)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、30分後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、6(保持時間8.8分、10.8μmol、21%)およびそのエピマー(保持時間9.5分、7.7μmol、15%)が白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 344.0(26)[5’−(プロプ−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、322.0(100)[5’−(プロプ−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+、136.0(8)[アデニニン+H]+.
【0131】
E. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]ブト−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子7
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(1mL)に溶解し、ブト−2−イニルトリフルオロメチルスルフォネート(200当量)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、2時間後に完了した。分析的逆相HPLCの際13.4分の保持時間で溶出した産物を、予備的逆相HPLCにて精製した。補因子7(2.6μmol、5%)が、硫黄中心におけるエピマーの混合物として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 437.1(100)[M]+、336.1(2)[5’−(ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+、250.1(88)[5′−デオキシアデノシン]+.
【0132】
F. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]ペント−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子8
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(10mg、26μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(0.5mL)に溶解し、ペント−2−イニルトリフルオロメチルスルフォネート(200当量)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、2時間後に完了した。分析的逆相HPLCの際16.0分および15.8分の保持時間で溶出した産物とそのエピマーを、予備的逆相HPLCにて精製した。補因子8(1.8μmol、7.0%)とそのエピマー(2.0μmol、7.7%)が、白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 451.1(100)[M]+、350.1(10)[5’−(ペント−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン)+H]+、250.1(20)[5′−デオキシアデノシン]+.
【0133】
G. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]ベンジルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子9
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(1mL)に溶解し、臭化ベンジル(1.1mL、9.4mmol)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、5時間後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、補因子9(保持時間9.0分、24.7μmol、47.5%)が、硫黄中心におけるエピマーの混合物として白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 475.2(100)[M]+. ESI−MS−MS(475.2)m/z(相対強度): 374.0(88.5)[5′−ベンジルチオ−5′−デオキシアデノシン+H]+、340.0(59.5)[M−アデニン]+、250.2(86.1)[5′−デオキシアデノシン]+、226.2(100)[S−ベンジル−ホモシステイン+H]+.
【0134】
[実施例2]
種々のクラスの補因子3−9およびDNAメチルトランスフェラーゼによる、短い二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの配列特異的修飾
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.Taql、DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaIの変種Q82A、またはDNAシトシン−N4メチルトランスフェラーゼM.BcnIBによる、補因子3−9からの、活性化エチル(CH2CH3)、プロピル(CH2CH2CH3)、プロプ−2−エニル(CH2CHCH2)、プロプ−2−イニル基(CH2CCH)、ブト−2−イニル(CH2CCCH3)、ペント−2−イニル(CH2CCCH2CH3)、またはベンジル基(CH2C6H5)の、DNAへの転移は、先ず、基質として短い二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドを用いて調べた。酵素転移の後、この二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドを酵素的に断片化し、修飾されたヌクレオシドを、ESI−MS結合の逆相HPLCによって分析した。
【0135】
A. M.Taqlによる二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド内のアデニン−N6の修飾
【0136】
【化8】
【0137】
スキーム5
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqIによる、半メチル化二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.IIの配列特異的修飾。M.Taqlの5’−TCGA−3’DNA認識部位(太字)は、上方鎖Iに配される、ただ一つの修飾可能な標的アデニンしか含まないことに注意。下方鎖IIの、他方の標的アデニンは、メチル化(AMe=N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)によってブロックされている。従って、認識鎖の修飾は、上方鎖Iのみに起こることが可能である。
【0138】
この半メチル化二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.IIは、バッファー(150μL、20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、0.01%のトリトンX−100、pH7.9)に溶解した、等量(15nmol)の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドI(5’−GCCGCTCGATGCCG−3’)およびII(5’−CGGCATCGAMeGCGGC−3’、AMe=N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)を混ぜ合わせ、95℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産される。酵素による修飾は、バッファー(20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、0.01%のトリトンX−100、pH7.9)において、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.II(20μM)を、補因子3−9(3−6では400μM、7−8では200μM、および9では300μM)、およびM.TaqI(22μM、Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125の記載の通りに製造)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって実行した。M.TaqIは、95℃で10分加熱することによって変性し、遠心(13200 rpm/分、2分)によって除去した。修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIは、ゲルろ過(NAP−5カラム、Amersham Biosciences、フライブルグ、ドイツ)によって脱塩し、水(1mL)で溶出し、凍結した。
【0139】
修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIを、ヌクレア−ゼP1(1500u、Sigma、Taukirchen、ドイツ)、および仔ウシ小腸アルカリフォスファターゼ(30u、MBI Fermantas、St.Leon−Rot、ドイツ)を含むバッファー(100μL、10mM Tris−塩酸、10mMの塩化マグネシウム、1mMの酢酸亜鉛、pH7.5)に溶解し、37℃で4時間インキュベートした。ヌクレオシドを、逆相HPLC(シンメトリ−C18 5μm、100A、250x4.6mm、シンメトリ−C18 5μm装備、100A、20x4.6mmプレカラム、Waters、Eschborn,ドイツ)によって分析した。化合物は、トリエチルアンモニウムアセテートバッファー(10mM、pH7.0)に溶解したアセトニトリル(5%で7分、その後直線勾配で6%まで15分、35%まで8分、および70%まで2分)で流速1mL/分で溶出し、254nmで検出した。
【0140】
HPLC−結合ESI−MS測定のために、化合物を、ギ酸アンモニウムバッファー(20mM、pH3.5)に溶解したメタノール(0%で3分、次いで直線勾配で100%まで22分)で溶出した。ポストカラム移動相修飾(96%メタノール、4%ギ酸との等量共同流)を用い、2’−デオキシアデノシンおよびその誘導体の検出効率を上げた。質量スペクトラムを、200−370m/z範囲で記録した。
【0141】
A.1 補因子3(−Z−R=−CH2CH3)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
−Z−R=−CH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースa)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(30.5分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:280.1 [M]+)は、N6−エチル−2’−デオキシアデノシン(dAEthyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.4(11)、dG 10.6(11)、dT 3.0(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dAEthyl 1.0(1)。従って、AdoMet類縁体3は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0142】
A.2 補因子4(−Z−R=−CH2CH2CH3)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
−Z−R=−CH2CH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースb)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(32.0分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:294.2 [M]+)は、N6−プロピル−2’−デオキシアデノシン(dAPropyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.4(11)、dG 10.7(11)、dT 2.9(3)、dA 1.0(1)、dAMe 1.0(1) dAPropyl 1.0(1)。従って、AdoMet類縁体4は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0143】
A.3 補因子5(−Z−R=−CH2CH=CH2)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2CH=CH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースc)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(31.5分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:292.2 [M]+)は、N6−プロペニル−2’−デオキシアデノシン(dAPropenyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.4(11)、dG 10.7(11)、dT 3.0(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dAPropenyl 1.1(1)。従って、AdoMet類縁体5は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0144】
A.4 補因子6(−Z−R=−CH2C≡CH)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CHによる、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースd)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(30.5分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:290.2 [M]+)は、N6−プロピニル−2’−デオキシアデノシン(dAPropynyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.4(11)、dG 11.1(11)、dT 2.7(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dAPropynyl 0.9(1)。従って、AdoMet類縁体6は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0145】
A.5 補因子7(−Z−R=−CH2C≡CCH3)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CCH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースe)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(31.9分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:304.2 [M]+)は、N6−ブト−2−イニル−2’−デオキシアデノシン(dABut-2-ynyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.2(11)、dG 10.9(11)、dT 2.8(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dABut-2-ynyl 1.0(1)。従って、AdoMet類縁体7は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0146】
A.6 補因子8(−Z−R=−CH2C≡CCH2CH3)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CCH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースf)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(33.5分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:318.2 [M]+)は、N6−ペント−2−イニル−2’−デオキシアデノシン(dAPent-2-ynyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.2(11)、dG 10.9(11)、dT 2.8(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dAPent-2-ynyl 1.0(1)。従って、AdoMet類縁体8は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0147】
A.7 補因子9(−Z−R=−CH2C6H5)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C6H5による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースg)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(34.3分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:341 [M]+)は、N6−ベンジル−2’−デオキシアデノシン(dABenzyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.3(11)、dG 11.0(11)、dT 3.0(3)、dA 0.8(1)、dAMe 1.0(1) dABenzyl 0.9(1)。従って、AdoMet類縁体9は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0148】
B. M.HhaI変種Q82Aによる二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドにおけるシトシン−C5の修飾
【0149】
【化9】
【0150】
スキーム6
DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaI−Q82Aによる、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IVの配列特異的修飾。二重鎖5’−GCGC−3’ DNA認識配列(太字)は、2本の修飾可能標的シトシンを含み、この認識配列内の第2シトシン残基の修飾は、上方鎖IIIにおいて起こるか(図示)、または下方鎖IVにおいて起こる(図示せず)。
【0151】
DNA、および天然補因子AdoMet 1(PDB同上:6MHT;Kumar et al.、(1997) Nucleic Acids Res. 25、2773−2783)と複合体を形成するM.HhaIの三次元構造は、Q82が、延長したメチル基置換体を含む補因子類縁体と相互作用を持つには立体的に不都合である可能性を示唆した。従って、Q82のコドンを、標準的Kunkel突然変異発生法(Kunkel et al.、(1989) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 82、488−492)によってアラニンに対するコドンに変更したところ、完全な遺伝子の適正なDNA配列が、DNA配列決定によって確かめられた。Q82A変種の発現および精製を、野生型酵素について記載されるものと同じやり方(Kumar et al.、(1992) Biochemistry 31、8648−8653; Kimasauskas et al.、(1998) EMBO J. 17、317−324)で実行した。
【0152】
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IVは、水に溶解した、等モル量(2.5nmol)の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII(5’−CATTACGCGCCGGGTCCTGGCTAT−3’)およびIV(5’−ATAGCCAGGACCCGGCGCGTAATG−3’)を混ぜ合わせ、85℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産された。酵素による修飾は、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IV(12.5μM)を、バッファー(補因子3−5、7、および8では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH6.0)に溶解した、補因子3−8(300μM)、およびM.HhaI(15μM)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって調べた。M.HhaI−Q82Aは、80℃で10分加熱し、プロテイナーゼKと55℃で10分インキュベーションすることによって変性した。加水分解産物は、ゲルろ過によって除去した(G−25カラム、Amersham Biosciences)。
【0153】
得られた二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド液を、ヌクレア−ゼP1(1500u、Sigma)、および仔ウシ小腸アルカリフォスファターゼ(30u、MBI Fermantas)を含むバッファー(1/10容量、10mM Tris−塩酸、10mMの塩化マグネシウム、10mMの酢酸亜鉛、pH7.5)で処理し、37℃で4時間インキュベートした。ヌクレオシドを、逆相HPLC(Discovery−C18 150x2.1mm、5μm、付属装備Supelguard Discovery C18 20x2.1mm、5μm、プレカラム、Supelco,ドイツ)−質量分析検出器(HP1100シリーズESI−MS、単一四重極装備)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウムバッファー(20mM、補因子3、4、6にはpH7.0、補因子5、7、8にはpH3.5)に溶解したメタノール(0%で6分、その後直線勾配で56%まで15分、80%まで1分)で流速0.3mL/分で溶出し、280nmで検出した。オンライン質量分析検出のために、ポストカラム移動相修飾(96%メタノール、4%ギ酸、および1mMの水酸化ナトリウムとの等量共同流)を用い、2’−デオキシシチジンおよびその誘導体の検出効率を上げた。質量スペクトラムを、50−600m/z範囲で記録した。
【0154】
B.1 補因子3(−Z−R=−CH2CH3)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
−Z−R=−CH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースa)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、16.5分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:278 [M+Na]+、162[C5−エチル−シトシン+Na]+は、C5−エチル−2’−デオキシシチジン(dCC5-Ethyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体3は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0155】
B.2 補因子4(−Z−R=−CH2CH2CH3)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの断片化(図2のトレースb)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAのみが明らかにされた。従って、AdoMet類縁体4は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能しない。
【0156】
B.3 補因子5(−Z−R=−CH2CH=CH2)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2CH=CH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースc)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、15.9分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:290 [M+Na]+、174[C5−プロペニル−シトシン+Na]+は、C5−プロペニル−2’−デオキシシチジン(dCC5-Propenyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体5は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0157】
B.4 補因子6(−Z−R=−CH2C≡CH)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CHによる、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースd)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、15.7分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:288 [M+Na]+、172[C5−プロピニル−シトシン+Na]+は、C5−プロピニル−2’−デオキシシチジン(dCC5-Propynyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体6は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0158】
B.5 補因子7(−Z−R=−CH2C≡CCH3)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CCH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースe)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、17.8分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:302 [M+Na]+、186[C5−ブト−2−イニル−2’−シトシン+Na]+は、C5−ブト−2−イニル−2’−デオキシシチジン(dCC5-But-2-ynyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体7は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0159】
B.6 補因子8(−Z−R=−CH2C≡CCH2CH3)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CCH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースf)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、20.3分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:316 [M+Na]+、200[C5−ペント−2−イニル−シトシン+Na]+は、C5−ペント−2−イニル−2’−デオキシシチジン(dCC5-Pent-2-ynyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体8は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0160】
C. M.BcnIBによる二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドにおけるシトシン−N4の修飾
【0161】
【化10】
【0162】
スキーム7
DNAシトシン−N4メチルトランスフェラーゼM.BcnIBによる、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドV.VIの配列特異的修飾。二重鎖内の5’−CCGGG−3’ DNA認識配列(太字)は、2本の修飾可能標的シトシンを含み、この認識配列内の第2シトシン残基の修飾は、上方鎖Vにおいて起こるか(図示)、または下方鎖VIにおいて起こる(図示せず)。
【0163】
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドV.VIは、水に溶解した、等モル量(2.5nmol)の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドV(5’−CATTACGCGCCGGGTCCTGGCTAT−3’)およびVI(5’−ATAGCCAGGACCCGGCGCGTAATG−3’)を混ぜ合わせ、85℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産された。酵素による修飾(スキーム7)は、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドV.VI(12.5μM)を、バッファー(補因子3−5では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH6.0)に溶解した、補因子3−6(300μM)、およびM.BcnIB(15μM)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって調べた。M.BcnIBは、80℃で10分加熱し、プロテイナーゼKと55℃で1時間インキュベーションすることによって変性した。加水分解産物は、ゲルろ過によって除去した(G−25カラム、Amersham Biosciences)。
【0164】
得られた二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド液を、ヌクレア−ゼP1(1500u、Sigma)、および仔ウシ小腸アルカリフォスファターゼ(30u、MBI Fermantas)を含むバッファー(1/10容量、10mM Tris−HCl、10mMの塩化マグネシウム、10mMの酢酸亜鉛、pH7.5)で処理し、37℃で4時間インキュベートした。ヌクレオシドを、逆相HPLC(Discovery−C18 150x2.1mm、5μm、付属装備Supelguard Discovery C18 20x2.1mm、5μm、プレカラム、Supelco,ドイツ)−質量分析検出器(HP1100シリーズESI−MS、単一四重極装備)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウムバッファー(20mM、補因子3、4、6にはpH7.0、補因子5にはpH3.5)に溶解したメタノール(0%で6分、その後直線勾配で56%まで15分、80%まで1分)で流速0.3mL/分で溶出し、280nmで検出した。オンライン質量分析検出のために、ポストカラム移動相修飾(96%メタノール、4%ギ酸、および1mMの水酸化ナトリウムとの等量共同流)を用い、2’−デオキシシチジンおよびその誘導体の検出効率を上げた。質量スペクトラムを、50−600m/z範囲で記録した。
【0165】
C.1 補因子3(−Z−R=−CH2CH3)およびM.BcnIBによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
−Z−R=−CH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図3のトレースa)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、16.9分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:278 [M+Na]+、162[N4−エチル−シトシン+Na]+は、N4−エチル−2’−デオキシシチジン(dCN4-Ethyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体3は、M.BcnIBの補因子として機能する。
【0166】
C.2 補因子4(−Z−R=−CH2CH2CH3)およびM.BcnIBによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの断片化(図3のトレースb)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAのみが明らかにされた。従って、AdoMet類縁体4は、M.BcnIBの補因子として機能しない。
【0167】
C.3 補因子5(−Z−R=−CH2CH=CH2)およびM.BcnIBによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2CH=CH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図3のトレースc)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、16.2分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:290 [M+Na]+、174[N4−プロペニル−シトシン+Na]+は、N4−プロペニル−2’−デオキシシチジン(dCN4-Propenyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体5は、M.BcnIBの補因子として機能する。
【0168】
C.4 補因子6(−Z−R=−CH2C≡CH)およびM.BcnIBによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの断片化(図3のトレースd)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAのみが明らかにされた。従って、AdoMet類縁体6は、M.BcnIBの補因子として機能しない。
【0169】
[実施例3]
種々のクラスの補因子3−9およびDNAメチルトランスフェラーゼによる、長いDNAの配列特異的修飾
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.Taqlおよびその変種V21G、DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaIおよびその変種Q82A、DNAシトシン−N4メチルトランスフェラーゼM.BcnIB、およびDNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.SssIの変種Q142Aによる、補因子3−9からの、活性化エチル(−CH2CH3)、プロピル(−CH2CH2CH3)、プロプ−2−エニル(−CH2CH=CH2)、プロプ−2−イニル基(−CH2C≡CH)、ブト−2−イニル(−CH2C≡CCH3)、ペント−2−イニル(−CH2C≡CCH2CH3)、およびベンジル基(−CH2C6H5)の、ファージラムダDNA(48502塩基対)への転移動態を、DNA保護アッセイによって調べた。このアッセイでは、制限エンドヌクレアーゼの認識部位内の核酸塩基の、DNAメチルトランスフェラーゼ触媒修飾は、これらの酵素による断片化からそのDNAを保護することが可能であるという事実を利用する。DNA保護アッセイの原理を、DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqIおよび制限エンドヌクレアーゼR.TaqIを例として用いてスキーム8に図示する。5’−TCGA−3’認識配列を含む、未修飾DNAは、R.TaqIによって容易に断片化される。補因子の存在下M.TaqIによってDNA修飾されると、活性基Z−R修飾5’−TCGAZ-R−3’配列が形成され、その結果、R.TaqIは、この修飾されたDNAを断片化することができない。次に、断片化の出現をアガロースゲル電気泳動によって分析する。
【0170】
【化11】
【0171】
スキーム8
天然補因子1および補因子類縁体3−9と共に用いられる各種DNAメチルトランスフェラーゼの酵素活性を定量するために使用されるDNA保護アッセイの原理。DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqIに関する結合酵素アッセイが、5’−TCGA−3’配列におけるDNA修飾を分析するために制限エンドヌクレアーゼR.TaqIを用いて図示される(M.TaqIおよびR.TaqIの認識配列5’−TCGA−3’は、黒塗り四角で示される)。
【0172】
DNAメチルトランスフェラーゼの量を変えることによって、このアッセイを用い、補因子3−9と組み合わせた各種DNAメチルトランスフェラーゼの酵素活性を調べ、その結果を、天然補因子1と組み合わせた場合の酵素活性と比較することが可能となる。与えられた実験条件下で、制限エンドヌクレアーゼによる断片化から、1μgのファージDNAを完全に保護するのに必要な、最小量のDNAメチルトランスフェラーゼを、1酵素単位(u)と定義する。
【0173】
A.1 各種補因子1および3−9と組み合わせたM.TaqI(野生型酵素)の酵素活性
ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、ファージラムダDNA(1μg、31.3fmol、121 5’−TCGA−3’認識配列、3.78pmol認識配列、MBI Fermentas)、および天然補因子1(300μM)、または補因子類縁体3−9(300μM)を含む、バッファー(20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、および0.01%のトリトンX−100、pH7.9)に溶解したM.TaqI(Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125に記載される通りに調製)の2倍連続希釈液(200ng、4.18pmolから開始)(20μL)を60℃で4時間インキュベートした。その後、R.TaqI制限エンドヌクレアーゼ(40u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.166mg/mL)、およびバッファー(16.6mM Tris−酢酸塩、166mMの塩化ナトリウム、8.3mMの塩化マグネシウム、pH8.0)を含む溶液(30μL)を、各希釈液に加え、60−65℃でのインキュベーションを15分続けた。各サンプルに負荷バッファー(10μL、0.25%ブロムフェノール青、30%グリセロール)を加え、分液(12μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.TaqIの不在下、およびM.TaqIの存在下(200ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0174】
与えられた実験条件下において、天然補因子1または補因子類縁体3−9と組み合わせたM.TaqIについて下記の特異的活性が観察された(図4)、すなわち、1:40960u/μg;3:10u/μg;4:<5u/μg;5:80u/μg;6:10u/μg;7:1280u/μg;8:640u/μg;9:640u/μgである。これらの結果は、メチルよりも大きな化学基であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接する炭素−炭素二重結合(アリルシステム)、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)、または隣接芳香環(ベンジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性をもってM.TaqIによって転移が可能であることを示す。
【0175】
A.2 各種補因子1および3−9と組み合わせたM.TaqI変種V21Gの酵素活性
DNAおよび非反応性補因子類縁体(Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125)と複合体を形成するM.TaqIの三次元構造、および、天然補因子1(Labahn et al.、(1994) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 91、10957−10961)と複合体を形成するM.TaqIの三次元構造の比較から、V21は、延長したメチル基置換体を含む補因子類縁体と相互作用を持つには立体的に不利となることが示唆された。従って、V21のコドンを、標準的PCR突然変異発生法(Ho et al.、(1989) Gene 77、51−59)によってグリシンに対するコドンに変更したところ、完全な遺伝子の適正なDNA配列が、DNA配列決定によって確かめられた。V21G変種の発現および精製を、野生型酵素について記載されるものと同じやり方(Ho et al.、(1998) Nucleic Acids Res. 26、1076−1083; Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125)で実行した。V21G変種に関するDNA保護アッセイは、野生型について記載される通りに行った(実施例3A.1)。
【0176】
天然補因子1または補因子類縁体3−9と組み合わせたM.TaqI−V21Gについて下記の特異的活性が観察された(図5)、すなわち、1:320u/μg;3:5u/μg;4:<5u/μg;5:640u/μg;6:20u/μg;7:80u/μg;8:80u/μg;および9:2560u/μgである。M.TaqIのV21G変種は、補因子5および9において、天然補因子1よりも活性が高い。さらに、V21G変種は、補因子5、6、および9において、野生型酵素よりもはっきりと高い活性を持つ。
【0177】
B.1 各種補因子1および3−8と組み合わせたM.HhaI(野生型酵素)の酵素活性
ウシ血清アルブミン(0.2mg/mL)、ファージラムダDNA(1.16μg、36.3fmol、215 5’−GCGC−3’認識配列、7.8pmol認識配列、MBI Fermentas)、および天然補因子1(300μM)、または補因子類縁体3−8(300μM)を含む、バッファー(補因子3−5、7および8では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH6.0)に溶解したM.HhaI(Kumar et al.、(1992) Biochemistry 31、8648−8653 and Klimasauskas et al.、(1998) EMBO J. 17、317−324に記載される通りに調製)の2倍連続希釈液(278ng、7.5pmolから開始)(15μL)を37℃で4時間インキュベートした。その後、80℃で10分加熱して反応を停止させた。R.Hin6I(M.HhaIと同じ配列を認識する制限エンドヌクレアーゼであるが、修飾されたDNAは切断しない)(12u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、およびバッファー(33mM Tris−酢酸塩、66mMの酢酸カリウム、26.5mMの塩化マグネシウム、pH7.9)を含む溶液(10μL)を、各希釈液に加え、37℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに橙色負荷染料液(5μL、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.HhaIの不在下、およびM.HhaIの存在下(278ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0178】
与えられた実験条件下において、天然補因子1または補因子類縁体3−8と組み合わせたM.HhaIについて下記の特異的活性が観察された(図6)、すなわち、1:460u/μg;3:<4u/μg;4:0u/μg;5:7u/μg;6:<4u/μg;7:29u/μg;および8:<4u/μgである。これらの結果は、メチルよりも大きな化学基であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接する炭素−炭素二重結合(アリルシステム)、または、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性をもってM.HhaIによって転移が可能であることを示す。
【0179】
B.2 各種補因子1および3−8と組み合わせたM.HhaI変種Q82Aの酵素活性
M.HhaI変種Q82A(実施例2B参照)に関するDNA保護アッセイは、野生型について記載される通りに行った(実施例3B.1)。
【0180】
天然補因子1または補因子類縁体3−8と組み合わせたM.HhaI−Q82Aについて下記の特異的活性が観察された(図7)、すなわち、1:115u/μg;3:7u/μg;4:0u/μg;5:29u/μg;6:<4u/μg;7:58u/μg;および8:<4u/μgである。Q82A変種は、大型の、メチル基置換体を担持する補因子においても(補因子4を例外として)、野生型M.HhaIと比べより高い活性を有する。
【0181】
C 各種補因子1および3−8と組み合わせたM.BcnIB(野生型酵素)の酵素活性
ウシ血清アルブミン(0.2mg/mL)、ファージラムダDNA(1.10μg、34.4pmol、114 5’−CCSGG−3’認識配列、S=CまたはG、3.9pmol認識配列、MBI Fermentas)、および天然補因子1(300μM)、または補因子類縁体3−8(300μM)を含む、バッファー(補因子3−5、7および8では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH6.0)に溶解したM.BcnIBの2倍連続希釈液(144ng、3.8pmolから開始)(15μL)を37℃で4時間インキュベートした。その後、80℃で10分加熱して反応を停止させた。R.BcnI(12u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、およびバッファー(33mM Tris−酢酸塩、66mMの酢酸カリウム、26.5mMの塩化マグネシウム、pH7.9)を含む溶液(10μL)を、各希釈液に加え、37℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに橙色負荷染料液(5μL、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.BcnIBの不在下、およびM.BcnIBの存在下(144ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0182】
与えられた実験条件下において、天然補因子1または補因子類縁体3−8と組み合わせたM.BcnIBについて下記の特異的活性が観察された(図8)、すなわち、1:444u/μg;3:<7u/μg;4:<7u/μg;5:<7u/μg;6:0u/μg;7:28u/μg;および8:14u/μgである。これらの結果は、メチルよりも大きな化学基であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性をもってM.BcnIによって転移が可能であることを示す。
【0183】
D. 各種補因子1、5、および7と組み合わせたM.SssI変種Q142Aの酵素活性
M.SssIは、DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼであり、短い2本鎖5’−CG−3’ DNA配列を認識する。野生型酵素は、補因子3−6とはほとんど何も酵素活性を示さない。しかしながら、M.SssIの三次元構造モデル(Koudan et al.、(2004) J.Biomol.Struct.Dyn. 22、339−346)から、Q142(M.HhaIにおけるQ82と相同である)は、延長したメチル基置換体を含む補因子類縁体と相互作用を持つには立体的に不利となることが示唆された。従って、Q142のコドンを、標準的PCR突然変異発生法(Ho et al.、(1989) Gene 77、51−59)によってアラニンに対するコドンに変更したところ、完全な遺伝子の適正なDNA配列が、DNA配列決定によって確かめられた。
【0184】
ファージラムダDNA(1μg、31.3fmol、3113 5’−CG−3’認識配列、97pmol認識配列、MBI Fermentas)、および天然補因子1(300μM)、または補因子類縁体5および7(300μM)を含む、バッファー(10mM Tris−塩酸、50mMの塩化ナトリウム、1mMのジチオスレイトール、pH7.9)に溶解したM.SssI−Q142Aの2倍連続希釈液(3300ng、73pmolから開始)(20μL)を37℃で4時間インキュベートした。その後、65℃で20分加熱して反応を停止させた。塩化マグネシウム(1μL、200mM)、およびR.BstUI制限エンドヌクレアーゼ(1μL、10u、New England Biolabs)を含む溶液を、各希釈液に加え、60℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに負荷バッファー(10μL、0.25%ブロムフェノール青、30%グリセロール)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。補因子無添加の下で実行した並行的コントロール実験は、ファージラムダDNAの完全な保護をもたらさなかった。
【0185】
与えられた実験条件下において、天然補因子1または補因子類縁体5および7と組み合わせたM.SssI−Q142Aについて下記の特異的活性が観察された(図9)、すなわち、1:20u/μg;5:1.2u/μg;および7:0.6u/μgである。これらの結果は、メチルよりも大きな化学基であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性を持つM.SssIのQ142A変種によって転移が可能であることを示す。
【0186】
[実施例4]
配列特異的2工程DNA標識化
一次アミノ基(補因子類縁体10)を含む活性化側鎖を、DNAメチルトランスフェラーゼ触媒によって転移し、次いで、アミン反応性蛍光標識による化学選択的修飾によって配列特異的DNA標識化を実現した(2工程標識化)。
【0187】
A. 補因子類縁体10の合成
側鎖に一次アミノ基を有する補因子10(Z=−CH2およびR=−C≡CCH2NHCOCH2−CH2CH2NH2)の化学的合成を、スキーム9に示すように実行した。
【0188】
【化12】
【0189】
スキーム9
本発明による補因子10の化学合成
【0190】
A.1 4−アミノブト−2−イン−1−オル塩酸、化合物11
メタノール(150mL)に溶解した、4−フタルイミドブト−2−イン−1−オル(7.66g、35.6mmol、Thomson、et al.、(2003) Synth.Commun. 33、3631−3641に従って調製)に、ヒドラジン水化物(3.46mL、71.2mmol)を加えた。この反応混合液を還流しながら2時間加熱し、室温に冷却後、溶媒を減圧留去した。水とエタノール(100mL、1:1混合物)および濃塩酸(100mL)を残留物に加えた。この混合物を還流しながら20分加熱し、沈殿をろ過によって除去した。ろ液を減圧下に濃縮し、得られた残留物をメタノールから再結晶させたところ、化合物11が、白色固体として得られた(3.57g、82%)。
1H−NMR(300MHz、D2O): δ=3.77(t、4J=2.0Hz、2H、CH2)、4.18(t、4J=2.0、2H、CH2); 13C−NMR(75MHz、D2O): δ=32.09、52.23、79.15、87.96.
【0191】
A.2 4−[(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンアミド]ブト−2−イン−1−オール、化合物12
4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ブタン酸(5.20g、25.6mmol、Houssin et al.、(1988) Synthesis 3、259−261の同様にして調製)を、無水テトラヒドロフラン(20mL)に溶解し、カルボキシジイミダゾール(CDI)(4.56g、28.1mmol)を加えた。得られた透明溶液を室温で2時間攪拌した。次に、一次アミン11(3.11g、25.6mmol)およびトリエチルアミン(7.10mL、50.9mmol)を加え、室温で2時間攪拌を続けた。溶媒を減圧留去し、未精製産物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、40g、クロロフォルム/酢酸エチル 1:1)で精製したところ、化合物12が淡黄色油状物(3.59g、52%)として得られた(Rf 0.3、クロロフォルム/酢酸エチル 1:1)。
1H−NMR(300MHz、CDCl3): δ=1.41(s、9H、CH3)、1.78(quint、3J=6.8Hz、2H、CH2)、2.22(t、3J=7.1Hz、2H、CH2)、3.13(q、3J=6.4Hz、2H、CH2)、4.03−4.09(m、2H、CH2)、4.09−4.14(m、2H、CH2)、4.84(br.s、1H、NH)、6.67(br.s、1H、NH); 13C−NMR(75MHz、CDCl3): δ=26.38、28.64、29.62、33.52、40.05、50.74、79.63、81.22、81.86、153.87、171.53.
【0192】
A.3 4−[(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンアミド]ブト−2−イニル、化合物13
塩化メチレン(15mL)に溶解したアルコール12(1.0g、3.7mmol)の溶液に、4−ニトロベンゼンスルフォニルクロリド(0.90g、4.07mmol)および水酸化ナトリウム(0.74g、18.5mmol)を0℃で加えた。得られた溶液を室温で3時間攪拌した。次に、冷水(20mL)を加え、反応混合液を塩化メチレン(3x10mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムの上で乾燥させた。ろ過後、溶媒を減圧留去したところ、化合物13(0.93g、55%)が、淡黄色固体として得られた。
1H−NMR(300MHz、CDCl3): δ=1.43(s、9H、CH3)、1.76(quint、3J=6.6Hz、2H、CH2)、2.19(t、3J=7.1、2H、CH2)、3.13(q、3J=6.4Hz、2H、CH2)、3.92(dt、4J=1.8Hz、3J=5.3Hz、2H、CH2)、4.74(br.s、1H、NH)、4.83(t、4J=1.8Hz、2H、CH2)、6.61(br.s、1H、NH)、8.09−8.17(m、2H、arom. H)、8.38−8.45(m、2H、arom. H); 13C−NMR(75MHz、CDCl3): δ=26.96、28.64、29.26、33.37、39.66、59.33、74.19、79.89、87.08、124.69、129.74、142.36、151.20、162.76、172.64.
【0193】
A.4 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]−4−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−ブタンアミド]ブト−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、化合物14
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸および酢酸の1:1混合液(0.4mL)に溶解し、スルフォン酸塩13(16当量)を0℃で加えた。溶液を放置して室温に温め、振とうしながら室温でインキュベートした。補因子7および8に関し、反応の進行を、実施例1に記載する通りに分析的逆相HPLCによって分析した。ただし、化合物は、Discovery HS C18逆相カラム(75x2.1mm、3μm、Supelco、ドイツ)、Supelguard Discovery HS C18プレカラム(20x2.1mm、5μm)装備を用い、30℃でメタノール勾配(80%まで5分、次に80%で3分)で溶出した。
【0194】
8時間後、水(4mL)を加えて反応を停止させ、水相をジエチルエーテル(3x4mL)で抽出した。化合物14を含む水相を減圧留去し、得られた淡褐色油をギ酸アンモニウムバッファー(10mL、20mM、pH3.5)に溶解した。精製は、予備的逆相HPLC(Discovery HS C18 150x10mm、5μmで、Supelguard Discovery HS C18、18x10mm、5μmプレカラム装備、Supelco,ドイツ)によって実行した。化合物は、ギ酸アンモニウム水溶液(20mM、pH3.5)に溶解したメタノール(直線勾配で10%から13.2%まで9分、80%まで2分、次に80%で2分)によって30℃、4.0mL/分の流速において溶出し、210nm、260nmおよび280nmにおいて検出した。産物14、および硫黄におけるそのエピマーは、それぞれ、9.3分および8.8分の保持時間で溶出した。分画を含む産物を収集し、溶媒を手早く減圧留去した。
ESI−MS m/z(相対強度): 637.3(100)[M]+、536.2(15)[5’−(4−(4−(tert.−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンアミド)ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+、558.2(12)[5’−(4−(4−(tert.−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンアミド)ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシ−アデノシン+Na]+、250.1(10)[5′−デオキシアデノシン]+.
【0195】
A.5 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]−4−[4−アミノブタンアミド]ブト−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子10
化合物14を水に溶解し、2容量のトリフルオロ酢酸を加えて脱保護を実行した。反応の進行を分析的逆相HPLC(実施例4A.4を参照)にて分析したところ、補因子10は、3.2分の保持時間で溶出した。室温で1時間インキュベーション後、溶媒を減圧留去し、残留物を、ギ酸アンモニウム水溶液(20mM、pH3.5)に溶解した。
【0196】
逆相カラムクロマトグラフィー(逆相シリカゲル100 C18、Fluka)によって精製を実行し、化合物を、5%アセトニトリルを含むギ酸アンモニウムバッファー(20mM、pH3.5)によって溶出した。分画を含む産物を収集し、溶媒を減圧留去し、残留物を水に溶解した。産物10の量(2.5μmol、最後の2工程では5%)は、アデニン発色団の260nmにおける消滅係数15400Lmol-1cm-1を用いUV分光光度計測によって定量した。
ESI−MS m/z(相対強度): 537.3(25)[M]+、458.1(33)[5’−(4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、436.2(100)[5’−(4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+.
【0197】
B. 種々のクラスの補因子10およびDNAメチルトランスフェラーゼによる、短い二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの配列特異的修飾
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.Taql、およびDNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaIの変種Q82A/N304Aによる、補因子10からの、活性化4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル基(Z−R=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2)の転移は、先ず、基質として短い二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドを用いて調べた。酵素転移の後、この二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドを酵素的に断片化し、得られた修飾ヌクレオシドを、ESI−MS結合の逆相HPLCによって分析した。
【0198】
B.1 M.TaqIによる、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド内のアデニン−N6の修飾
半メチル化二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.II(実施例2Aのスキーム5を参照)は、水に溶解した、等モル量の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドI(5’−GCCGCTCGATGCCG−3’)およびII(5’−CGGCATCGAMeGCGGC−3’、AMe=N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)を混ぜ合わせ、85℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産した。酵素による修飾は、バッファー(20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、0.01%のトリトンX−100、pH7.9)において、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.II(10μM)を、補因子10(300μM)、およびM.TaqI(12.5μM、Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125の記載の通りに製造)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって実行した。溶液を95℃で10分加熱し、プロテイナーゼKを添加し、55℃で10分インキュベートした。加水分解産物をゲルろ過(G−25カラム、Amersham Biosciences)によって除去した。
【0199】
得られた溶液を、ヌクレア−ゼP1(1.14u、Sigma、Taukirchen、ドイツ)、および仔ウシ小腸アルカリフォスファターゼ(18u、MBI Fermantas)を含むバッファー(1/10容量、100mM Tris−塩酸、100mMの塩化マグネシウム、10mMの酢酸亜鉛、pH7.5)に溶解し、42℃で4時間インキュベートし、Microcon YM−3スピンカラム(Amicon)に通過させた。ヌクレオシドを、逆相HPLC(Discovery HS C18 20x2.1mm、5μm、プレカラム、Supelco,ドイツ)−質量分析検出器(HP 1100シリーズESI−MS、単一四重極装備)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウムバッファー(20mM、pH3.5)に溶解したエタノール(0%で3分、その後直線勾配で20%まで15分、80%まで2分)で流速0.3mL/分で溶出した。オンライン質量分析検出のために、ポストカラム移動相修飾(96%メタノール、4%ギ酸、および1mMの水酸化ナトリウムとの等量共同流)を用い、2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシシチジンおよびその誘導体の検出効率を上げた。質量スペクトラムを、50−600m/z範囲で記録した。
【0200】
−Z−R=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-RIIの断片化(図10、上段のトレースa)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い(19.1分)の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:426 [M+Na]+、310[N6−(4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル)アデニン+Na]+)は、N6−[4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル]−2’−デオキシアデノシン(dA4-(4-Aminobutanamido)but-2-ynylと一致した。従って、AdoMet類縁体3は、M.BcnIBの補因子として機能する。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-RIIの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 10.2(11)、dG 11.8(11)、dT 3.0(3)、dA 1.0(1)、dAMe 1.0(1) dA4-(4-Aminobutanamido)but-2-ynyl1.1(1)。従って、AdoMet類縁体10は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0201】
B.2 M.HhaI変種Q82A/N304Aによる、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド内のシトシン−C5の修飾
DNA、および天然補因子AdoMet 1(PDB同上:6MHT;Kumar et al.、(1997) Nucleic Acids Res. 25、2773−2783)と複合体を形成するM.HhaIの三次元構造は、N304(Q82に加えて)が、延長したメチル基置換体を含む補因子類縁体と相互作用を持つには立体的に不都合である可能性を示唆した。従って、N304のコドンを、標準的メガプライマーPCR突然変異発生法(Sambrook and Russell、(2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press、13.31−13.35)によってアラニンに対するコドンに変更し、この突然変異を含む断片を、Q82A突然変異を含むプラスミドでクローンした(実施例2B、実施例3B.2)。完全な遺伝子の適正なDNA配列が、DNA配列決定によって確かめられた。Q82A/N304A変種の発現および精製を、野生型酵素について記載されるものと同じやり方(Kumar et al.、(1992) Biochemistry 31、8648−8653; Kimasauskas et al.、(1998) EMBO J. 17、317−324)で実行した。アミノ酸置換の存在は、精製M.HhaI−Q82A/N304Aの質量分析によって確かめられた。
【0202】
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IVは、水に溶解した、等モル量(2.5nmol)の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII(5’−CATTACGCGCCGGGTCCTGGCTAT−3’)およびIV(5’−ATAGCCAGGACCCGGCGCGTAATG−3’)を混ぜ合わせ、85℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産された。酵素による修飾は、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IV(12.5μM)を、バッファー(補因子3−5、7、および8では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH6.0)に溶解した、補因子3−8(300μM)、およびM.HhaI(15μM)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって調べた。M.HhaI−Q82Aは、80℃で10分加熱し、プロテイナーゼKを加え、55℃で2時間インキュベーションした。加水分解産物は、ゲルろ過によって除去した(G−25カラム、Amersham Biosciences)。酵素断片化および、得られたヌクレオシドのESI−MS−結合逆相HPLC分析は、実施例4B.1に記載する通りに実行した。
【0203】
−Z−R=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図10の曲線a、下段)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、11.5分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:402 [M+Na]+、286[C5−(4−(4−アミノブタン−アミド)ブト−2−イニル)シトシン+Na]+は、C5−[4−(4−アミノブタン−アミド)ブト−2−イニル]2’−デオキシシチジン(dCC5-[4-(4-Aminobutanamido)but-2-ynyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体10は、M.HhaI−Q82A/N304Aの補因子として機能する。
【0204】
C. 補因子10および種々のクラスのDNAメチルトランスフェラーゼによる、長いDNAの配列特異的修飾
補因子10と組み合わせた、DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqI、およびDNAシトシン−C5メチルトランスセラーゼM.HhaI変種Q82A/N304Aの酵素活性を、DNA保護アッセイ(実施例3、スキーム8を参照)を用いて調べた。
【0205】
C.1 補因子10と組み合わせたM.TaqI(野生型酵素)の酵素活性
ファージラムダDNA(1.03μg、32.3fmol、121 5’−TCGA−3’認識配列、3.91pmol認識配列、MBI Fermentas)、および補因子類縁体10(300μM)を含む、バッファー(20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、および0.01%のトリトンX−100、pH7.9)に溶解したM.TaqI(Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125に記載される通りに調製)の2倍連続希釈液(180ng、3.75pmolから開始)(15μL)を60℃で1時間インキュベートした。その後、R.TaqI制限エンドヌクレアーゼ(10u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、およびバッファー(33mM Tris−酢酸塩、66mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、pH7.9)を含む溶液(10μL)を、各希釈液に加え、65℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに橙色負荷染料液(5μL、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.TaqIの不在下、およびM.TaqIの存在下(180ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0206】
与えられた実験条件下において、補因子類縁体10(図11、左)と組み合わせたM.TaqIの特異的活性は、11u/μgであった。実施例3A.1に示す補因子1、3−9について得られたM.TaqIの特異的活性と比較する場合、この数字に4という倍数を掛けなければならない。なぜなら、M.Taqとのインキュベーションは1時間しかなく、実施例3A.1で用いた4時間ではなかったからである。この得られた結果は、延長し、アミノ官能基を持つ側鎖であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性をもってM.TaqIによって転移が可能であることを示す。
【0207】
C.2 補因子10と組み合わせたM.HhaI変種Q82A/N304Aの酵素活性
ウシ血清アルブミン(0.2mg/mL)、ファージラムダDNA(1.16μg、36.3fmol、215 5’−GCGC−3’認識配列、7.8pmol認識配列、MBI Fermentas)、および補因子類縁体10(300μM)を含む、バッファー(50mM Tris−塩酸、15mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH7.4)に溶解したM.HhaI変種Q82A/N304A(実施例4B.2に記載される通りに調製)の2倍連続希釈液(1100ng、30pmolから開始)(15μL)を37℃で1時間インキュベートした。その後、80℃で10分加熱して反応を停止させた。R.Hin6I(M.HhaIと同じ配列を認識する制限エンドヌクレアーゼであるが、修飾されたDNAは切断しない)(12u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、およびバッファー(33mM Tris−酢酸塩、66mMの酢酸カリウム、26.5mMの塩化マグネシウム、pH7.9)を含む溶液(10μL)を、各希釈液に加え、37℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに橙色負荷染料液(5μL、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.HhaI−Q82A/N304Aの不在下、およびM.HhaI−Q82A/N304Aの存在下(1100ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0208】
補因子10と組み合わせたM.HhaI変種Q82A/N304A(図11右側)は、ほぼ完全にファージラムダDNAを保護した。この結果は、延長し、アミノ官能基付き側鎖であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、M.HhaI−Q82A/N304Aによって転移が可能であることを示す。
【0209】
D. 補因子10および異なるクラスのDNAメチルトランスフェラーゼによる、pBR322プラスミドDNAの配列特異的2工程標識化
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqI、およびDNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaI変種Q82A/N304Aを触媒として用い、補因子10から、活性化4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル基(−Z−R=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2)の第1の配列特異的転移を行い、次に、6−(フルオレセイン−5(および−6)カルボキサミド)ヘキサン酸N−ヒドロキシスクシニミジルエステルを、配列特異的に修飾されたpBR322プラスミドDNAの一次アミノ基と第2反応させることによって長いプラスミドDNAの配列特異的標識化を実行した(スキーム10)。DNA標識化の配列特異性は、標識されたpBR322プラスミドDNAを各種制限エンドヌクレアーゼによって断片化し、得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって分離し、そのアガロースゲルを蛍光画像記録することによって確かめた(図12)。
【0210】
【化13】
【0211】
スキーム10
本発明による、DNAの、配列特異的2工程蛍光標識表示
【0212】
D1. DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqIによる、pBR322プラスミドDNAの5’−TCGA−3’ DNAに対する、補因子10からの配列特異的転移
pBR322プラスミドDNA(20.4μg、7.14pmol、7 5’−TCGA−3’ 認識配列、50pmol認識配列、MBI Fermentas)、M.TaqI(2.39μg、50pmol、Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125の記載の通りに調製)、および補因子類縁体10(300μM)を、バッファー(100μL、20mMのTris酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、および0.01% 還元済みTritonX−100、pH7.9)において60℃で4時間インキュベートした。その後、この反応混合液から、フェノール液、クロロフォルム、およびイソアミルアルコール(1x100μL)の25:24:1混合液を有するフェノール液(1x100μL)、およびクロロフォルム(3x100μL)で抽出した。水相に、酢酸ナトリウム(10μL、3M、pH7.0)およびイソプロパノール(80μL)を加えた。沈殿を、15000gにおいて室温で15分の遠心によって収集した。上清を除去し、ペレットを、エタノール水溶液(100μL、75%)で洗浄した。ペレットを乾燥し、水に溶解した(100μL)。
【0213】
D2. DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaI変種Q82A/N304Aによる、pBR322プラスミドDNAの5’−GCGC−3’ DNAに対する、補因子10からの配列特異的転移
pBR322プラスミドDNA(23.1μg、8.06pmol、31 5’−GCGC−3’ 認識配列、250pmol認識配列、MBI Fermentas)、M.HhaI 変種Q82A/N304A(9.25μg、250pmol、実施例4B.2の記載の通りに調製)、および補因子類縁体10(300μM)を、ウシ血清アルブミン(0.2mg/mL)を含むバッファー(100μL、50mMのTris塩酸、15mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH7.4)において37℃で4時間インキュベートした。その後、この反応混合液から、フェノール液、クロロフォルム、およびイソアミルアルコール(1x100μL)の25:24:1混合液を有するフェノール液(1x100μL)、およびクロロフォルム(3x100μL)で抽出した。水相に、酢酸ナトリウム(10μL、3M、pH7.0)およびイソプロパノール(80μL)を加えた。沈殿を、15000gで室温において15分の遠心によって収集した。上清を除去し、ペレットを、エタノール水溶液(100μL、75%)で洗浄した。ペレットを乾燥し、水に溶解した(100μL)。
【0214】
D3. M.TaqI−およびM.HhaI−Q82A/N304A修飾pBR322プラスミドDNAの蛍光標識化
実施例4D.1または4D.2において得られた、修飾されたpBR322プラスミドDNA、6−(フルオレセイン−5(および−6)−カルボキサミド)ヘキサン酸N−ヒドロキシ−スクシニミジルエステル(222μg、368nmol、あらかじめジメチルスルフォキシドに溶解させたもの)、および、炭酸水素ナトリウム(0.15M、pH9.0)を含む溶液(90μL)を、暗黒で室温で1時間インキュベートした。その後、この反応混合液を、NAP5カラム(Amersham Biosciences)を通過させ、イソプロパノール(4/5容量)を加えてプラスミドDNAを沈殿させた。沈殿を、15000gで室温において15分の遠心によって収集した。上清を除去し、ペレットを、エタノール水溶液(2x100μL、75%)で洗浄した。ペレットを乾燥し、水に溶解した(40μL)。
【0215】
D.4 蛍光標識pBR322プラスミドDNAの分析
実施例4D.3において得られた修飾されたpBR322プラスミドDNA(3μL)を、メーカーの指示に従って、各種制限エンドヌクレアーゼ、または制限エンドヌクレアーゼの組み合わせ(R.Xcel、R.MbiI+R.Eco88I、R.BpiI+R.BseSI、R.BpiI+R.PvulI、およびR.GsuI、MBI Fermentas)によって断片化した。その後、プロテイキナーゼK(2mg/mL)、およびドデシル硫酸ナトリウム(1%)の溶液(1/5容量)を各断片化反応液に加え、サンプルを55℃で30分インキュベートした。各サンプルに橙色負荷染料液(1/6容量、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、DNA断片を、臭化エチジウム無添加下、アガロースゲル(1.5%)電気泳動(10V/cm)によって分離した。アガロースゲルは、473nmレーザーおよびLPBフィルターセット使用によるFujiゲル画像化システムFLA−5100によって走査した(図12上段)。その後、アガロースゲルを臭化エチジウムで染色し、比較のために再び走査した(図12上段)。
【0216】
M.TaqIによるpBR322修飾体から得られたもので、M.TaqI認識配列を全く含まないDNA断片は、臭化エチジウム染色不在下では視認されなかった(図12、白楕円で示す)。さらに、個別のDNA断片の蛍光強度は、これらの断片におけるM.TaqIまたはM.HhaI認識配列の数とよく相関していた(表5)。これらの結果は、AdoMet類縁体10の存在下にM.TaqIまたはM.HhaI−Q82A/N304Aによってアミノ修飾されたDNAは、N−ヒドロキシスクシニミジルエステルによって標識されること、および、標識化は配列特異的であることを示す。
【0217】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、補因子3−9およびM.TaqI(dAMe=N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)による処理後に得られる、酵素的に断片化された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIのHPLC分析である。dAZ-Rでは、化学基Z−Rが、dAのN6位置に付着する。曲線(a):Z=CH2およびR=−CH3を有する補因子3;曲線(b):Z=CH2およびR=−CH2CH3を有する補因子4;曲線(c):Z=CH2およびR=−CH=CH2を有する補因子5;曲線(d):Z=CH2およびR=−C≡CHを有する補因子6;曲線(e):Z=CH2およびR=−C≡CCH3を有する補因子7;曲線(f):Z=CH2およびR=−C≡C−CH2CH3を有する補因子8;および、曲線(g):Z=CH2およびR=−C6H5を有する補因子9。
【図2】図2は、補因子3−9およびM.HhaI−Q23Aによる処理後に得られる、酵素的に断片化された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-RのHPLC分析である。dCZ-Rでは、化学基Z−Rが、dCのC5位置に付着する。曲線(a):Z=CH2およびR=−CH3を有する補因子3;曲線(b):Z=CH2およびR=−CH2CH3を有する補因子4;曲線(c):Z=CH2およびR=−CH=CH2を有する補因子5;曲線(d):Z=CH2およびR=−C≡CHを有する補因子6;曲線(e):Z=CH2およびR=−C≡CCH3を有する補因子7;および、曲線(f):Z=CH2およびR=−C≡C−CH2CH3を有する補因子8。
【図3】図3は、補因子3−6およびM.BcnIBによる処理後に得られる、酵素的に断片化された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(V.VI)Z-RのHPLC分析である。dCZ-Rでは、化学基Z−Rが、dCのN4位置に付着する。曲線(a):Z=CH2およびR=−CH3を有する補因子3;曲線(b):Z=CH2およびR=−CH2CH3を有する補因子4;曲線(c):Z=CH2およびR=−CH=CH2を有する補因子5;および、曲線(d):Z=CH2およびR=−C≡CHを有する補因子6。
【図4】図4は、天然補因子1、または補因子類縁体3−9から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.TaqI触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.TaqI(レーン1において200ngで開始し、レーン1から19において2倍連続希釈)と4時間インキュベートし、次に、R.TaqIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.TaqIおよび補因子無添加(C1はR.TaqI無添加、およびC4はR.TaqI添加)、および、M.TaqI添加(C2はR.TaqI無添加、およびC3はR.TaqI添加)の下におこなった。R.TaqIによる、ファージラムダDNAの完全な断片化は、M.TaqI無添加条件下において全ての補因子ついて観察された(データ図示せず)。
【図5】図5は、天然補因子1、および補因子類縁体3−9から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.TaqI変種V21G−触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.TaqI−V21G(レーン1において200ngで開始し、レーン1から21において2倍連続希釈)と4時間インキュベートし、次に、R.TaqIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.TaqI−V21Gおよび補因子無添加(C1はR.TaqI無添加、およびC4はR.TaqI添加)、および、M.TaqI−V21G添加(C2はR.TaqI無添加、およびC3はR.TaqI添加)の下におこなった。R.TaqIによる、ファージラムダDNAの完全な断片化は、M.TaqI−V21G無添加条件下において全ての補因子ついて観察された(データ図示せず)。
【図6】図6は、天然補因子1、または補因子類縁体3−8から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.HhaI触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1.16μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.HhaI(レーン1において278ngで開始し、レーン1から20において2倍連続希釈;レーン0ではM.HhaI無添加)と4時間インキュベートし、次に、R.Hin6Iによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.HhaIおよび補因子無添加(C1はR.Hin6I無添加、およびC2はR.Hin6I添加)、および、M.HhaI添加(C3はR.Hin6I添加)の下におこなった。
【図7】図7は、天然補因子1、または補因子類縁体3−8から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.HhaI変種Q82A触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1.16μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.HhaI−Q82A(レーン1において278ngで開始し、レーン1から20において2倍連続希釈;レーン0ではM.HhaI−Q82A無添加)と4時間インキュベートし、次に、R.Hin6Iによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.HhaI−Q82Aおよび補因子無添加(C1はR.Hin6I無添加、およびC2はR.Hin6I添加)、および、M.HhaI−Q82A添加(C3はR.Hin6I添加)の下におこなった。
【図8】図8は、天然補因子1、または補因子類縁体3−8から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.BcnIB触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1.1μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.BcnIB(レーン1において144ngで開始し、レーン1から20において2倍連続希釈;レーン0ではM.BcnIB無添加)と4時間インキュベートし、次に、R.BcnIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.BcnIBおよび補因子無添加(C1はR.BcnI無添加、およびC2はR.BcnI添加)、および、M.BcnIB添加(C3はR.BcnI添加)の下におこなった。
【図9】図9は、天然補因子1、および補因子類縁体5および7から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.SssI変種Q142A触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.SssI−Q142A(レーン1において3300ngで開始し、レーン1から14において2倍連続希釈;レーン0ではM.HhaI−Q82A無添加)とインキュベートし、次に、R.BstUIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、補因子無添加の下におこなった。
【図10】図10は、補因子10と組み合わせたDNAメチルトランスフェラーゼ触媒修飾後に得られる、酵素的に断片化された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドのHPLC分析である。上段:M.TaqIおよび補因子10による処理後に得られた二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(曲線a)、および、コントロールとして補因子10無添加においてM.TaqIとインキュベートした二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.IIの断片化(曲線b)。dAZ-Rでは、化学基Z−Rが、dAのN6位置に付着し、Z=CH2、およびR=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2(dAMe =N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)である。下段:M.HhaI−Q82A/N304Aおよび補因子10による処理後に得られた二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(曲線a)、および、コントロールとして補因子10無添加においてM.HhaI−Q82A/N304Aとインキュベートした二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.IIの断片化(曲線b)。dCZ-Rでは、化学基Z−Rが、dCのC5位置に付着し、Z=CH2、およびR=−C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2である。
【図11】図11は、補因子類縁体10から、ファージラムダDNAに向かう、化学基Z−Rの、DNAメチルトランスフェラーゼ触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。ここに、Z=CH2、およびR=−C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2である。左:DNA(1.03μg)および補因子10(300μM)を、先ず、様々な量のM.TaqI(レーン1において180ngで開始し、レーン1から9において2倍連続希釈、レーン0ではM.TaqI無添加)と1時間インキュベートし、次に、R.TaqIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.TaqIおよび補因子10無添加(C1はR.TaqI無添加、およびC2はR.TaqI添加)、および、M.TaqI添加(C3はR.TaqI添加)の下におこなった。右:DNA(1.16μg)および補因子10(300μM)を、先ず、様々な量のM.HhaI−Q82A/N304A(レーン1において1100ngで開始し、レーン1から9において2倍連続希釈、レーン0ではM.HhaI−Q82A/N304A無添加)と1時間インキュベートし、次に、R.Hin6Iによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.HhaI−Q82A/N304Aおよび補因子10無添加(C1はR.Hin6I無添加、およびC2はR.Hin6I添加)、および、M.HhaI−Q82A/N304A添加(C3はR.Hin6I添加)の下におこなった。
【図12】図12は、本発明による、pBR322プラスミドDNAの、配列特異的2工程蛍光標識表示を示す。pBR322プラスミドDNAを、AdoMet類縁体10の存在下に、M.TaqIまたはM.HhaI変種Q82A/N304A(M.HhaI*で表示)によってアミノ修飾し、フルオレセインN−ヒドロキシ−スクシニミジルエステル(スキーム10)と反応させた。標識化プラスミドDNAを、各種制限エンドヌクレアーゼ、または制限エンドヌクレアーゼの組み合わせ(表示)によって断片化し、DNA断片を、アガロースゲル電気泳動によって分離した。臭化エチジウム無添加の状態(上段)、および添加の状態(下段、コントロールとして)で蛍光画像記録を実施した。M.TaqIによるpBR322修飾体から得られ、M.TaqI認識配列を全く含まないDNA断片は、臭化エチジウム染色の不在下では視認されない(白楕円で示す)。コントロールは、未修飾のpBR322プラスミドDNAを、フルオレセインN−ヒドロキシスクシニミジルエステルによって処理し、次いで、制限エンドヌクレアーゼ断片化を行って実施した(M=DNAマーカー)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化1】
によって表される化合物に関する。
【0003】
上式において、Rは、スルフォニウム中心に対してβ−位置に存在する、炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素三重結合、または、芳香族炭素環またはヘテロ環システムを含み;X-は、1個以上の負電荷を持つ有機または無機の陰イオンであり;Zは、−CR1R2−、−O−、−S−、または−NR3−であり;および、R1、R2、およびR3は、H、D、およびC1−C12アルキルから独立に選ばれる。本発明はまた、本発明の化合物と、通常、S−アデノシル−L−メチオニン(SAM、またはAdoMet)を補因子として用いるメチルトランスフェラーゼとの複合体にも関する。さらに本発明は、本発明の化合物を含む製薬および診断組成物にも関する。最後に、本発明は、メチルトランスフェラーゼの存在下に、本発明の化合物と標的分子をインキュベートすることを含む、修飾された標的分子の調製法に関する。その際、メチルトランスフェラーゼは、標的分子に対し該化合物の一部の転移を可能とする条件下に、該化合物を補因子として使用することが可能である。
【0004】
本明細書の本文を通じていくつかの文書が引用される。本明細書に引用される文書の開示内容(メーカーの仕様、案内等を含む)を、参照することにより本明細書に含める。本明細書を通じて言及され、インビトロで実行される工程については、どのような組み合わせも(単一工程のみを含む)、細胞抽出物でも、またはインビボでも実行することが可能である。
【0005】
本発明は、DNAメチルトランスフェラーゼ(MTアーゼ)を用いて例示される。しかしながら、本発明は、RNAおよびタンパクメチルトランスフェラーゼにも、他の生体分子に作用するメチルトランスフェラーゼにも使用が可能である。
【背景技術】
【0006】
DNAメチル化は、ほとんど全ての生物に認められる(Jeltsch、(2002) ChemBioChem 3、275−293)。DNAは、シトシン、アデニン、チミン、およびグアニンの外に、メチル化された核酸塩基、5−メチルシトシン(5−mCyt)、N4−メチルシトシン(4−mCyt)、またはN6−メチルアデニン(6−mAde)を含むことが可能である。これらのメチル化核酸塩基は、DNAメチルトランスフェラーゼ(MTアーゼ)によって形成される。この酵素は、そのDNA認識配列内部のシトシンのC5炭素、シトシンのN4窒素、またはアデニンのN6窒素に対する、補因子S−アデノシル−L−メチオニン(AdoMet)からの活性化メチル基の転移を触媒する(Cheng、(1995) Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct. 24、293−318)。ある特定のヌクレオチド配列が、メチル化または非メチル化形として存在することが可能なのであるから、DNAメチル化は、多種多様な生物機能に与るDNAの情報内容の増加と見なすことも可能である。前核細胞では、DNAメチル化は、内因性制限エンドヌクレアーゼ、DNAミスマッチ修復、遺伝子発現調節、およびDNA複製から宿主のゲノムを守る、ゲノム保護に与る。真核細胞では、DNAメチル化は、重要な調節過程、例えば、遺伝子沈黙化(Bird、(2002) Genes Dev. 16、6−21)、ゲノムインプリンティング(Feil and Khosla、(1999) Trends Genet. 15、431−435)、X−染色体の不活性化(Panning and Jaenisch、(1998) Cell 93、305−308)、ゲノム内寄生生物の沈黙化(Yoder、(1997) Trends Genet. 13、335−340)、および、発癌(Baylin、(1998) Adv.Cancer Res. 72、141−196; Jones and Laird、(1999) Nat.Genet. 21、163−167)の一端を担っている。
【0007】
最近、Thermus aquaticus由来のDNAアデニン−6メチルトランスフェラーゼ(M.Taql)に対する、新規設計の蛍光補因子が提示された(Pljevalicic et al.、(2003) J.Am.Chem.Soc. 125、3486−3492)。もちろん、M.Taqlは、2本鎖の5′−TCGA−3′パリンドローム配列内のアデニンの環外アミノ基の、補因子S−アデノシル−L−メチオニン(SAM、またはAdoMet)のメチル基に対する求核性攻撃を触媒し、これが、配列−および塩基−特異的メチル基転移をもたらす。他のメチルトランスフェラーゼ同様、M.Taqlも、各標的塩基に対し1個のメチル基を転移することができるだけで、完全にメチル化された認識配列を有するDNAはそれ以上修飾されない。天然の補因子S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)のメチオニン側鎖の、アジリジニル残基による置換は、DNAの標的アデニンに対する、全体ヌクレオシドの、M.Taql触媒による求核性環解放および結合をもたらす。アデノシル成分は、補因子結合のための分子アンカーとなる。蛍光発色団の、屈曲性リンカーを介する、アデノシル成分の8位置に対する付着は、補因子の結合を妨げない。この補因子、8−アミノ[1”−(N”−ダンシル)−4”−アミノブチル]−5’−(1−アジリジニル)−5’−デオキシアデノシンを用いて、M.Taql触媒反応においてDNAを配列特異的に標識することが可能である(Pljevaljcic et al.、(2003) J.Am.Chem.Soc. 125、3486−3492)。
【0008】
従来技術には、前述のN−アデノシルアジリジン誘導体の外に、8−アミノ[1”−(N”−ビオチニル)−4”−アミノブチル]−5’−(1−アジリジニル)−5’−デオキシアデノシン(Pljevaljcic et al.、(2004) Methods Mol.Biol. 283、145−161)が記載される。これも生体分子を標識するのに使用が可能である(Pljevaljcic et al.、(2004) ChemBioChem 5、265−269)。標識化は、S−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼを用いることによって実行される。これらの酵素は、当然のことながら、補因子S−アデノシル−L−メチオニン(1、SAM、またはAdoMet)の活性化されたメチル基の、各種基質、例えば、DNA、RNA、タンパク、およびその他の生体分子内の定められた求核位置に対する転移を触媒する。これによって、メチル化生体分子と、脱メチル化補因子S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)が生成される(スキーム1)。このように、メチルトランスフェラーゼが、生体高分子の、配列特異的、共有結合修飾を触媒することが可能であるということは、これらメチルトランスフェラーゼをバイオテクノロジー全体における興味ある道具とするものであるが、メチル基の外に、もっと大きな化学的実体を転移し、それと共に標的生体分子に対し新たな機能を付加することができるならば、それは望ましいことであろう。原理的には、このことは、前述のN−アデノシルアジリジン誘導体を用いて実現することが可能である。しかしながら、アジリジン補因子は、メチルトランスフェラーゼに対し自殺基質として作用するという欠点を持つ。アジリジン補因子が標的生体分子に結合した後、メチルトランスフェラーゼは簡単に解離することができず、その結合産物に結合し続ける。このため、このメチルトランスフェラーゼは、真の触媒として作用しないので、標的分子に対し化学量論的量として用いなければならない。原理的には、この制限は、S−アデノシル−L−メチオニン(1、SAM、またはAdoMet)のメチル基を、より大きい脂肪族基によって置換することで克服することが可能である。Schlenk(Schlenk and Dainko、(1975) Biochem.Biophy.Acta 385、312−323; Schlenk、(1977) in Biochem.Adenosylmethionine(eds.Salvadore、Borek and Zappia)、Columbia University Press、3−17)による研究は、比較的大型の化学基、例えば、エチルおよびプロピルが、メチルトランスフェラーゼによって、S−アデノシル−L−エチオニン(3)およびS−アデノシル−L−プロピオニン(4)から転移が可能であることを示した(スキーム1)。しかしながら、同時に、酵素によるアルキル転移速度は、転移可能基のサイズの増加と共に急激に増す(メチル>>エチル>n−プロピル基)ことが認められた。この一般的傾向は、様々なDNAメチルトランスフェラーゼについても確かめられた(実施例3)。
【0009】
【化2】
【0010】
スキーム1
メチルトランスフェラーゼは、S−アデノシル−L−メチオニン(1)、および延長型飽和側鎖を持つ類縁体のスルフォニウム中心に隣接する、求電子性炭素原子に対する、各種生体分子の求核攻撃を触媒する。
【0011】
長さを増しながら転移可能基を用いると転移速度が急激に低下する(上記参照)ため、S−アデノシル−L−メチオニン誘導体は、S−アデノシル−L−トランスフェラーゼ依存性メチルトランスフェラーゼの効果的な補因子としての使用が妨げられる。S−アデノシル−L−メチオニン誘導体は、S−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼの天然の基質と緊密に関連するのであるから、スルフォニウム結合側鎖について転移速度が改善されたS−アデノシル−L−メチオニン系誘導体を開発することができたならば、それは望ましいと考えられる。上記に鑑みて、本発明の教示をもたらすきっかけとなった技術的問題は、S−アデノシル−L−メチオニン−依存性メチルトランスフェラーゼのための、さらに別のS−アデノシル−L−メチオニン系補因子を提供することである。
【発明の開示】
【0012】
この技術的問題に対する解答は、特許請求の範囲に詳述される実施態様を提供することによって実現される。
【0013】
従って、本発明は、式(I):
【化3】
【0014】
上式において、Rは、スルフォニウム中心に対してβ−位置において、炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素三重結合、または芳香族炭素環またはヘテロ環システムを含み;
X-は、1個以上の負電荷を持つ有機または無機の陰イオンであり;
Zは、−CR1R2−、−O−、−S−、または−NR3−であり;および、
R1、R2、およびR3は、H、D、およびC1−C12アルキルから独立に選ばれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本出願の教示は、従来技術において記載された所見、すなわち、酵素によるアルキル転移速度は、転移可能基のサイズの増加と共に急激に低下する(メチル>>エチル>n−プロピル基)という所見を確認した。この所見の理由は従来技術で解明されていない。本発明において提示される実験データに基づくと、この効果には、立体的要因の外に、電子的要因が関与しているらしいことが予想された。本発明の教示によれば、転移可能基の長さの増加に伴う転移速度の低下は、スルフォニウム中心に対するβ−位置に二重結合、三重結合、芳香族または複素環芳香族成分を導入することによって克服が可能であること;スルフォニウム中心の、この置換基の適切な例は、アリル、プロパルジル、およびベンジル置換基であることが予測された。実際、新規AdoMet類縁体5から9は、すなわち、プロプ−2−エニルを有するもの(−CH2CH=CH2;すなわち、Z=CH2およびR=−CH=CH2である式Iの化合物;補因子5)、プロプ−2−イニル(−CH2C≡CH;すなわち、Z=CH2およびR=−C≡CHである式Iの化合物;補因子6)、ブト−2−イニル(−CH2C≡C−CH3;すなわち、Z=CH2およびR=−C≡CCH3である式Iの化合物;補因子7)、ペント−2−イニル(−CH2C≡CCH2CH3;すなわち、Z=CH2およびR=−C≡CCH2CH3である式Iの化合物;補因子8)、またはベンジル基(すなわち、Z=CH2およびR=−フェニルである式Iの化合物;補因子9)を、活性化スルフォニウム中心に有する類縁体は、各種DNAメチルトランスフェラーゼに対し、優れたものから極めて優れたものに至る補因子として作動する(実施例3)。従って、延長型飽和アルキル基をスルフォニウム中心に持つAdoMet類縁体の貧弱な反応性は、転移可能基のスルフォニウム中心に対するβ位置に導入された、二重結合、三重結合、または芳香族置換基による活性化によって克服することが可能である。このような補因子は、適切なメチルトランスフェラーゼを触媒に用いて、DNA、RNA、およびタンパクのような各種生体分子に対し、反応基または他の化学的実体を配列特異的に転移するのに有用であると思われる。
【0016】
生体高分子の配列特異的標識化は、二つの方法で実現することが可能である。先ず、例えば、補因子5、6、または9のアリル、プロパルジル、またはベンジルシステムを、化学的反応基によって延長し、次に、適切な反応性標識によって共有的に修飾する(2工程標識化)。第二に、適切な標識によってアリル、プロパルジル、またはベンジル置換された補因子を調製し、次に、この標識を、適切なメチルトランスフェラーゼによって標的分子に直接転移する(1工程標識化)
【0017】
例として、補因子5の誘導体、基質としてDNA、およびアデニン特異的DNAメチルトランスフェラーゼM.Traqlを用いた、これら二つの戦略をスキーム2に示す。M.Taqlは、2本鎖DNA配列5′−TCGA−3′を認識し、当然のことながらS−アデノシル−L−メチオニン(1、SAM、またはAdoMet)のメチル基を、アデノシン残基のアミノ基に転移する。補因子5の場合、アリル基が、配列−および塩基−特異的に転移される(実施例2A.3)。スペーサを介してアリルシステムに化学的反応基Yを付着させることによって、この反応基は効率的にDNAに転移され、次に、適切な反応基Vを含む標識によって修飾される(スキーム2A)。それとは別に、共有的に付着した標識を含む補因子5の誘導体を、YとVを反応させることによって合成することが可能である。次に、標識を含むこの活性化基が、M.Taqlによって、DNAに直接配列特異的に転移される(スキーム2B)。本発明による他の化合物、例えば、プロパルジル活性化基を含む補因子6、およびベンジル活性化基を含む補因子9の誘導体についても同様の戦略を企図することが可能である。
【0018】
【化4】
【0019】
スキーム2
補因子5、基質としてDNA、およびアデニン特異的DNAメチルトランスフェラーゼM.Taqlによって示される2工程標識化(A)、および1工程標識化(B)。YおよびVは、相互に反応性を持つ基であり、Lは、基YおよびVの反応によってもたらされた化学結合を表し、黒塗り球は標識を表す記号である。
【0020】
水溶液において、この修飾された生体分子に標識を付着させるために、反応基YおよびV、および結合Lを定める、たくさんの化学選択的連結の利用が可能である。古典的連結(Garman、(1997) 「非放射性標識化:実技入門(Non−radioactive labeling: A practical introduction)」、Academic Press)は、アミン反応基、例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル、アシルアジド、アシルニトリル、アシルクロリド、ペンタフルオロフェニルエステル、チオエステル、スルフォニルクロリド、イソチオシアネート、イミドエステル、アルデヒド、またはケトンと反応し、安定なアミド類、スルフォナミド類、チオウレア類、イミテード類またはイミン類をもたらすことが可能な一次アミノ基の使用を含み、次に、これらアミド類、スルフォナミド類、チオウレア類、イミテード類またはイミン類を還元して安定な二次アミンをもたらすことが可能である。チオールは、ハロアセタミド、マレイミド、アジリジン、または他のチオール類と特異的に反応し、チオエステルまたはジスルフィド結合をもたらすが、1,2−ジオールは、アリールボロン酸によって修飾することが可能である。ヒドラジンまたはヒドロキシルアミンは、アルデヒドまたはケトンによって縮合されて、ヒドラゾンまたはオキシムを形成する。さらに、これらの古典的な連結の外に、それに代わる、いくつかの、水溶液において十分に進行する結合法が近年出現した。1,2−アミノチオールは、アルデヒドまたはチオエステルと選択的に反応してチアゾリジン(例えば、「ポリペプチドのN−末端システイン残基(N−terminal cysteine residues of polypeptides)」、Liu and Tam、(1994) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 91、6584−6588)、または、安定なアミド結合(例えば、ポリペプチドのN−末端システイン残基、未修飾の、化学的ペプチド結合(N−terminal cysteine residues of polypeptides、native chemical peptide ligation))、Dawson et al.、(1994) Science 266、776−779)を形成する。さらに、アジドは、アルキンと(「Huisgen 1,3−双極子環付加反応(Huisgen 1,3−dipolar cycloaddition)」、Angew.Chem.Int. Ed. 41、1053−1057)、または、フォスファンエステルと(「Staudinger連結(Staudinger ligation)」、Saxon and Bertozzi、(2000) Science 287、2007−2010)反応して、1,2,3−トリアゾールまたはアミドを形成することが可能である。さらに、活性化ジエンおよびジエノフィルの間におけるDiels−Alder環付加反応(例えば、「フランおよびマレイミド(furanes and maleimides)」、Graham et al.、(2002) Tet.Lett. 4785−4788)は、水性溶液において実行が可能である。他の、現代的な白金触媒架橋反応、例えば、アリールアルキンまたはビアリールを生成する、ハロゲン化アリールおよび末端アルキンの間(「Sonogashira結合(Sonogashira coupling)」、Casalnuova and Calabrese、(1990) J.Am.Chem.Soc. 112、4324−4330; Dibrowski and Schmidtchen、(1998) Angew.Chem.Int. Ed. 37、476−478; Bong and Ghaderi、(2001) Org.Lett. 3、2509−2511)、または、ハロゲン化アリールおよびアリールボロン酸の間(「Suzuki結合(Suzuki coupling)」、Casalnuova and Calbrese、(1990) J.Am.Chem.Soc. 112、4324−4330; DeVasher et al.、(2004) J.Org.Chem. 69、7919−7927)の反応も、使おうと思えば、使用することが可能であろう。さらに、末端ハロアルキンと、末端アルキンまたは末端シリルアルキンとの間の、銅触媒アルキン結合反応は、ジイン接合体をもたらすが、この反応も水溶液の中で実行することが可能である。最後に、フッ素性誘導体形成試薬、例えば、4−ハロ−7−ニトロベンゾフラン、N−メチルイサト酸無水物、または活性化ビマンを用い、転移チオール、アミノ、またはヒドロキシル基を直接標識することも可能である。
【0021】
核酸は一般に、求核性または求電子性の高い中心を持たない。従って、相互交換可能な基YおよびVを含む、求核分子および求電子分子の間のパラジウム触媒架橋反応、または銅触媒アルキン結合反応は、環付加の外に、核酸の配列特異的2工程標識化に使用することが可能である(表1)。補因子6の場合、末端アルキン基はDNAに転移され、DNAは直接、アジド(1,3−双極子環付加反応)、ハロゲン化アリール(Sonogashira結合)、または末端ハロアルキン(アルキン結合)と結合することが可能となる。
【0022】
【表1】
【0023】
ポリペプチドの2工程配列特異的標識化には、利用可能な化学選択的連結は、核酸の場合よりも数少ない。これはポリペプチドは一般に求核中心(アミノ基および、程度は低いがチオール基も)を含むからである。実行可能な反応のリストを表2に示す。この場合も、例えば、補因子6によって転移される末端アルキン基は、アジド(1,3−双極子環付加反応)、ハロゲン化アリール(Sonogashira結合反応)、または末端アルキン(アルキン結合反応)と直接結合することが可能である。
【0024】
【表2】
【0025】
1工程標識化(スキーム2B)のためには、アリル、プロパルジル、またはベンジルシステムを有する標識補因子(I)を先ず調製する必要がある。原理的には、これは、二つの方法で実行することが可能であり、スキーム3においてアリル補因子5の標識誘導体について図示される。例えば、反応基Vを含む標識を、反応基Yを含むアリルアルコールに付着させることが可能である。その後、アルコールを活性化し(例えば、X=ハロゲン化物またはスルフォネート)、S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)と反応させて、所望の標識補因子を得る(スキーム3、左側)。標識の共有結合付着は水性または有機溶媒において実行することが可能であるから、活性化基YおよびVについては様々な組み合わせが実行可能である(表3)。もちろん、この反応スキームは、標識そのものが、標識付着、活性化、およびS−アデノシル−L−ホモシステイン(2)との反応の条件に向けて安定であることを要求する。
【0026】
【化5】
【0027】
スキーム3
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)から、標識されたアリル補因子へ至る二つの合成ルート。YおよびVは、相互に反応する基であり、Lは化学結合を表し、Xはハロゲン化物またはスルフォネートであり、黒塗り円は標識を表す。
【0028】
【表3】
【0029】
それとは別に、標識は、反応基Yを含む、アリル、プロパルジル、およびベンジルシステムによって補因子(I)の中に導入することが可能である。これを、アリル補因子5の標識誘導体を例として用いてスキーム3(右)に示す。塩基条件下におけるS−アデノシル−L−メチオニン(1)の不安定性を考えると、この合成ルートによる標識補因子の合成は、水溶液におけるやや酸性条件下で進行する化学選択的連結反応が有利であろう。可能な連結反応を表4に挙げる。補因子6の場合、連結後、プロパルジルシステムをそのまま脱離するハロゲン化アリール(Sonogashira結合)と直接結合が可能な末端アルキレン基は既に存在する。
【0030】
【表4】
【0031】
本発明のある好ましい実施態様では、ZはCR1R2であり、R1、R2はそれぞれ独立にH、D、およびC1−C12アルキルから選ばれる。
【0032】
本発明のより好ましい実施態様では、Zは−CR1R2であり、R1、R2はそれぞれ独立にHおよびDから選ばれる。
【0033】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、Rは、スルフォニウム中心に対するβ位置に−CH=CH−、−C≡C−、またはフェニル基を含む。本発明の教示に一致するこのような化合物の例は、式(II)、(III)、または(IV)によって表される。
【0034】
【化6】
【0035】
上式において、X-は、1個以上の負の電荷を担持する有機または無機の分子である。
【0036】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記有機または無機の陰イオンは、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、ハロゲン化物、およびスルフォン酸塩から選ばれる。
【0037】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、Rは、官能基、X線回折データの位相角分析に好適な重原子または重原子クラスター、放射性同位元素または安定な希少同位元素、および、蛍光発色団、消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意に修飾が可能なタンパク、ペプチドまたはアミノ酸、任意に修飾が可能なヌクレオチド、ヌクレオシド、または核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子、およびビーズから選ばれるメンバーの残基から選ばれる少なくとも一員をさらに含む。
【0038】
好ましい、放射性の、または安定な希少同位元素は、3H(T)、14C、32P、33P、35S、125I、131I、2H(D)、13C、15N、17O、および18Oから成るグループから選ばれる。さらに、好ましい安定な同位元素は、19Fおよび127Iから成るグループから選ばれる。
【0039】
安定な常磁性基(通常、ニトリル根)である好ましいスピンラベルは、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−オキシル、および2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−1−オキシルから成るグループから選ばれる。
【0040】
好ましいアミノ酸修飾体は、β−およびγ−アミノ酸から成るグループから選ばれ、好ましいペプチド修飾体は、デプシペプチド、ビニル性ペプチド、過メチル化ペプチド、ペプトイド、アザペプチド(アザチド)、オリゴカルバメート、オリゴ尿素、オリゴスルフォン、オリゴスルフォンアミド、オリゴスルフィンアミド、ピロール−イミダゾール−ヒドロキシピロールポリアミド、およびペプチド核酸(PNA)から成るグループから選ばれ、より好ましくは前記ペプチド修飾体は、ピロール−イミダゾール−ヒドロキシピロールおよびペプチド核酸(PNA)である。
【0041】
好ましい核酸修飾体は、ペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(LNA)、およびフォスフォロチオエート修飾核酸から成るグループから選ばれる。
【0042】
好ましいトランスフェクション試薬は、陽イオン性脂質(例えば、Invitrogen、カリフォルニア州、米国から市販されるリポフェクタミンおよび誘導体)、陽イオン性ポリマー(例えば、Sigmaから市販されるポリエチレンイミン(PEI))およびポリ陽イオン性デンドリマーから成るグループから選ばれる。
【0043】
好ましい挿入剤は、通常、二重鎖核酸における隣接塩基間を結合する、平坦であるか、または平坦に近い芳香環システムであるが、これは、エチジウム、チアゾールオレンジ、アクリジンまたはその誘導体、およびピレンから成るグループから選ばれる。
【0044】
好ましいナノ粒子は、金および銀クラスターから成るグループから選ばれる。
【0045】
好ましいビーズは、シリカビーズ、磁気ビーズ、およびポリスチレン微小球(例えば、Molecular Probes、オレゴン州、米国から市販されている)から成るグループから選ばれる。
【0046】
本発明の一つの実施態様では、前記官能基は、アミノ基、チオール基、1,2−ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセタミド基、マレイミド基、アルデヒド基、ケトン基、1,2−アミノチオール基、アジド基、アルキン基、1,3−ジエン官能基、ジエノフィル官能基(例えば、活性化炭素−炭素二重結合)、ハロゲン化アリール基、末端アルキン基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、および、保護されたアミノ、チオール、1,2−ジオール、ヒドラジノ、ヒドロキシアミノ、アルデヒド、ケトン、および1,2−アミノチオール基から選ばれる。
【0047】
本発明のもう一つの実施態様では、前記発色団は、Alexa、BODIPY、bimane、クマリン、Cascadeブルー、ダンシル、ダポキシル、フルオレセイン、マンシル、MANT、Oregonグリーン、ピレン、ローダミン、Texasレッド、TNS、蛍光ナノ結晶(量子ドット)、シアニン蛍光発色団およびその誘導体から選ばれる。
【0048】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記蛍光消光剤は、ダブシル、QSY、およびBHQから選ばれる。
【0049】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記アフィニティタグは、ペプチドタグ、金属キレート群、同位元素コード標識アフィニティタグ、ビオチン、マルトース、マンノース、グルコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルノイラミン酸、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、ジゴキシゲニン、およびジニトロフェノールから選ばれる。
【0050】
本発明のもう一つの実施態様では、前記ペプチドタグは、his−タグ、金属キレート性を有するタグ、ストレップ−タグ、フラッグ−タグ、c−myc−タグ、HA−タグ、エピトープ、およびグルタチオンから選ばれる。
【0051】
本明細書で用いる「アフィニティタグ」という用語は、特に、例えば、アフィニティ精製に使用することが可能な標識に関する。従来技術において、本発明に一致するいくつかのタグがよく知られる。このようなタグは、例えば、金属キレート性を持ち、メチルトランスフェラーゼ触媒による生体分子への転移前に、または転移後に、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)で使用される基質に対する、本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rの結合を可能としてもよい。Porath等(Porath et al.、(1975) Nature 258、598−599)によって開発されたIMAC技術は、いくつかのタンパク表層残基(ヒスチジン、システイン、および低級トリプトファン)と、ポリカルボン酸リガンドとキレートを形成する遷移金属由来の陽イオンとの間に生ずる相互作用に基づく。典型的条件は、従来技術に記述されており、当業者には既知である(Porath、(1992) Protein Expression and Purification 3、263−281; Hemdan and Porath、(1985) Journal of Chromatography 323、255−264; Porath and Hansen、(1991) Journal of Chromatography 550、751−764)。
【0052】
その他の好ましいタグとしては、8アミノ酸ストレプトアビジンに関する「ストレップ−タグ」が挙げられる。この配列は、最適アフィニティタグ性を持つペプチド結合配列を特定するために、ランダムペプチドライブラリーを体系的にスクリーニングすることによって特定された(Schmidt and Skerra、(1993) Prot.Engineering 6、109−122)。本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rに付着させると、修飾された核酸分子、または(ポリ)ペプチドは、例えば、StrepTactin、ストレプトアビジン、アビジン等を含む基質を備える重力流カラムを用いることによって、アフィニティ精製することが可能となる。このような基質は市販されており、例えば、Sigma−Genosys/The Woodlands(テキサス州、米国)、またはIBA/ゲッチンゲン(ドイツ)から購入することが可能である。
【0053】
その他の好ましいタグとしては、「フラッグ−タグ」が挙げられる。これは、抗フラッグ抗体に結合する8アミノ酸ペプチドに関する。本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rに付着させると、修飾された核酸分子、または(ポリ)ペプチドは、例えば、固定された抗フラッグ抗体を含む基質を備える重力流カラムを用いることによって、アフィニティ精製することが可能となる。このような基質は市販されており、例えば、Sigma−Aldrichから購入することが可能である。
【0054】
その他の好ましいタグとしては「c−myc−タグ」が挙げられる。これは、抗−c−myc抗体に結合する10アミノ酸ペプチドに関する。本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rに付着させると、修飾された核酸分子、または(ポリ)ペプチドは、例えば、固定された抗−c−myc抗体を含む基質を備える重力流カラムを用いることによって、アフィニティ精製することが可能となる。このような基質は市販されており、例えば、Pierce Biotechnology(イリノイ州、米国)から購入することが可能である。
【0055】
その他の好ましいタグとしては「HA−タグ」が挙げられる。これは、インフルエンザウィルスの表面血球凝集素から得られ、抗HA抗体に結合する9アミノ酸ペプチドに関する。本発明の補因子(I)の側鎖−Z−Rに付着させると、修飾された核酸分子、または(ポリ)ペプチドは、例えば、固定された抗HA抗体を含む基質を備える重力流カラムを用いることによって、アフィニティ精製することが可能となる。
【0056】
本発明のもう一つの実施態様では、前記金属キレート群は、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、1,10−フェナントロリン、クラウンエーテル、およびHis4-8ペプチドである。
【0057】
前記架橋剤は、一、または二官能白金(II)複合体、マレイミド、イオドアセタミド、アルデヒド、および光架橋剤、例えば、アリールアジド、ジアゾ化合物、2−ニトロフェニル化合物、プソラレンおよびベンゾフェノン化合物から選ばれる。
【0058】
本発明のもう一つの実施態様では、前記重原子、または重原子クラスターは、X線回折データを位相角分析するのに好適な、銅、亜鉛、セレン、臭素、ヨウ素、ルテニウム、パラジウム、カドミウム、タングステン、白金、金、水銀、ビスマス、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ウラニウム、Ta6Br14、Fe4S4、およびP2W18O62から選ばれることが好ましい。
【0059】
好ましい核酸切断試薬は、鉄−EDTA、銅−1,10−フェナントロリン、アクリジンまたはその誘導体、エンジン化合物、およびロジウム複合体から成るグループから選ばれ、より好ましくは、前記核酸切断試薬は、鉄−EDTA、銅1,10−フェナントロリン、およびロジウム複合体から選ばれる。
【0060】
本発明はまた、本発明の化合物(I)の複合体、および、通常S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)を補因子として用いるメチルトランスフェラーゼに関する。
【0061】
本発明のある好ましい実施態様では、前記メチルトランスフェラーゼは、通常、S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)のメチル残基を、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、または小型分子に転移する。SAM(AdoMet)−依存性メチルトランスフェラーゼに関しては、その総説が、例えば、Kagan and Clarke、(1994) Archives of Biochemistry and Biophysics 310、417−427に提示される。この論文はまた、例えば、カテコールO−メチルトランスフェラーゼおよびグリシンN−メチルトランスフェラーゼを含む、O−メチルトランスフェラーゼおよび小型分子N−メチルトランスフェラーゼのリストを示す。
【0062】
「核酸分子」、「ポリペプチド」、「炭水化物」、または「小型分子」という用語は、場合によって「生体分子」とも呼ばれる。生体分子は、全く天然である、すなわち、未修飾であってもよく、あるいは、合成または修飾されていてもよく、かつ、複合体として存在してもよい。従って、例えば、「核酸分子」という用語は、DNAおよびRNA分子の外に、修飾されたDNAおよびRNA分子も含む。DNAは、例えば、cDNA、またはゲノムDNAであってもよい。RNAは、例えば、mRNA、hnRNA、スプライスされたRNAでも、スプライスされていないRNAであってもよい。本明細書においてポリペプチドという用語が用いられる場合は必ず、それは、タンパク、ペプチド、およびポリペプチドを含むものと理解しなければならない。ペプチドは、例えば、長さが10、11、12、13、14、15、または16残基ほどの短いものであってもよい。
【0063】
本発明のより好ましい実施態様では、前記メチルトランスフェラーゼは、孤立DNAメチルトランスフェラーゼであるか、または、細菌の制限修飾システムの一部である。
【0064】
前記DNAメチルトランスフェラーゼは、M.AacDam、M.AatII、M.AbaORFDP、M.AbaORFKP、M.AbrI、M.AccI、M.AccIII、M.AciI、M.AclI、M.AcuI、M.Afa22MI、M.AflII、M.AflIII、M.AgeI、M.AhdI、M.AhyBP、M.AlaK2I、M.AluI、M.AlwI、M.Alw26I、M.ApaI、M.ApaLI、M.ApeKI、M.ApoI、M.AquI、M.AscI、M.AseI、M.AseII、M.AsiSI、M.AspCNI、M.AtuCI、M.AtuCORF1997P、M.AtuDORF794P、M.AtuDORF3839P、M.AvaI、M.AvaII、M.AvaIII、M.AvaIVP、M.AvaV、M.AvaVI、M.AvaVII、M.AvaVIII、M.AvaIX、M.AvaORF3700P、M.AvaORF7270P、M.AvrI、M.AvrII、M.BabI、M.BaeI、M.BalI、M.BamHI、M.BamHII、M.BanI、M.BanII、M.BanIII、M.BatAORF3814P、M.BatA581ORF3846P、M.Bbu297I、M.BbvI、M1.BbvCI、M2.BbvCI、M.BbvSI、M1.BccI、M2.BccI、M.Bce1247I、M1.BceAI、M2.BceAI、M.Bce14579ORF939P、M.BceSORF365P、M.BceSORF4605P、M1.BceSORF5606P、M2.BceSORF5606P、M.Bcep1P、M.Bcep43ORFAP、M.BchI、M.BclI、M1.BcnI、M2.BcnI(M.BcnIB)、M1.BcoKI、M2.BcoKI、M.Bcs139P、M.BdiI、M.BepI、M1.BfaI、M2.BfaI、M.BfaORFC157P、M2.BfiI(M.BfiC2)、M1.BfuAI、M2.BfuAI、M.BglI、M.BglII、M1.BhaI、M2.BhaI、M.BhaII、M.BjaORF2509P、M.BloNORF564P、M.BloNORF1473P、M.BlpI、M.BmaI、M.BmaPhiE125ORF56P、M.Bme216I、M.BmeLORF1444P、M.BmeTI、M1.BmrI、M2.BmrI、M.BnaI、M.BpmI、M1.Bpu10I、M2.Bpu10I、M1.BsaI、M2.BsaI、M.BsaAI、M.BsaJI、M.BsaWI、M1.BscGI、M2.BscGI、M.Bse634I、M.BseCI、M.BseDI、BseMII、BseRI、M.BseRI、M.BseYI、BsgI、M.BsgI、M.BsiWI、M.BslI、M1.BsmI、M2.BsmI、M.BsmAI、M.BsmBI、M.BsoBI、M.BspI、M.Bsp6I、M.Bsp50I、M.Bsp98I、M.Bsp106I、M.Bsp143II、BspCNI、M.BspCNI、M.BspEI、M.BspHI、M.BspIS4I、M.BspKT6I、BspLU11III、M1.BspLU11III、M2.BspLU11III、M1.BspMI、M2.BspMI、M.BspMII、M.BspRI、M.BspST5I、M1.BsrI、M2.BsrI、M1.BsrBI、M2.BsrBI、M.BsrFI、M.BssHI、M.BssHII、M.BssSI、M.BstI、M.BstEII、M.BstEIII、M1.BstF5I、M2.BstF5I、M3.BstF5I、M4.BstF5I、M.BstGII、M.BstLVI、M.BstNI、M.BstNBI、M.BstVI、M.BstXI、M.BstYI、M.Bsu15I、M.Bsu36I、M.Bsu6633I、M.BsuBI、M.BsuEII、M.BsuFI、M.Bsu1330ORF491P、M.BsuRI、M.BthIPS78、M.BthVORF4625P、M.BusLBORFC747P; 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2P、M.EsaSS283P、M.EsaSS289P、M.EsaSS297P、M.EsaSS302P、M.EsaSS303P、M.EsaSS305P、M.EsaSS315P、M.EsaSS317P、M.EsaSS318P、M.EsaSS319P、M.EsaSS323P、M.EsaSS326P、M.EsaSS328P、M.EsaSS329P、M.EsaSS334P、M.EsaSS335P、M.EsaSS336P、M.EsaSS51DamP、M.EsaSS65DamP、M.EsaSS138DamP、M.EsaSS198DamP、M.Esp3I、M.Esp1396I、M.EspRB49DamP、M.FauI、M.FnuDI、M.FnuDII、M.FnuDIII、M.Fnu4HI、M.FnuVDamP、M.FokI、M.FseI、M.FspI、M.FssI、M.GmeORFC6P、M.GmeORFC16P、M.GsuI、M.GviDamP、M.H2I、M.HaeII、M.HaeIII、M.HapII、M.HduDamP、M1.HgaI、M2.HgaI、M.HgiAI、M.HgiBI、M.HgiCI、M.HgiCII、M.HgiDI、M.HgiDII、M.HgiEI、M.HgiGI、M.HhaI、M.HhaII、M.HheORF238P、M.HheORF1050P、M.HheORF1244P、M.HheORF1445P、M.Hin1II、M.HinB231ORFDP、M.HinHP1Dam、M.HinHP2Dam、M.HinP1I、M.HincII、M.HindI、M.HindII、M.HindIII、M.HindV、M.HindDam、M.HinfI、M.HinfIII、M.HjaI、M.HpaI、M.HpaII、M1.HphI、M2.HphI、M.HpyI、M.Hpy8I、M.Hpy87AP、M.Hpy99I、M.Hpy99II、M.Hpy99III、M.Hpy99IV、M1.Hpy99V、M2.Hpy99VP、M.Hpy99VI、M.Hpy99VIII、M.Hpy99IX、M.Hpy99X、M.Hpy99XI、M.Hpy166IV、M.Hpy178IP、M.Hpy188I、M.Hpy188II、M.Hpy188III、M.Hpy788606P、M.Hpy788845P、M.Hpy788849P、M.Hpy789115P、M.Hpy789117P、M.Hpy789137P、M.Hpy789145P、M.Hpy790101P、M.Hpy959772P、M.HpyAI、M1.HpyAII、M2.HpyAII、M.HpyAIII、M.HpyAIV、M.HpyAV、M1.HpyAVI、M2.HpyAVI、M.HpyAVII、M.HpyAVIII、M.HpyAIX、M.HpyAX、M.Hpy87AI、M.HpyAORF263P、M.HpyAORF369P、M.HpyAORF481P、M.HpyAORF483P、M1.HpyC1I、M2.HpyC1I、M.HpyCH4IV、M.HpyCH4V、M.HpyCR2ORF1P、M.HpyCR2ORF3P、M1.HpyCR4RM1P、M2.HpyCR4RM1P、M.HpyCR9RM1P、M.HpyCR9RM2P、M.HpyCR14RM1P、M.HpyCR14RM2P、M.HpyCR15RM2P、M.HpyCR16RM1P、M.HpyCR29RM1P、M.HpyCR29RM2P、M.HpyCR35RM1P、M.HpyCR35RM2P、M1.HpyCR38RM1P、M2.HpyCR38RM1P、M.HpyCR38RM2P、M.HpyF17I、M.Hpy99ORF430P、M.Hpy99ORF433P、M.Hpy99ORF846P、M.Hpy99ORF1012P、M.HspNORF1543P、M.KasI、M.KpnI、M.Kpn2I、M.KpnAI、M.KpnBI、M.Kpn19097DamP、M.Kpn19097Dam2P、M.Kpn19097ORFFP、M.Kpn2kI、M.Lci22RP、M.LinFORF11323P、M.LinFORF12222P、M.LinFORF12737P、M.LinLORF903P、M.LinLORF1547P、M.LinLORF2668P、M1.LlaAI、M2.LlaAI、M.LlaBI、M.LlaCI、M.LlaDI、M.LlaDII、M1.LlaDCHI、M2.LlaDCHI、M.LlaKR2I、M.LmoAP、M.LmoEORF470P、M.LmoFORF327P、M.Lmo19115ORF1P、M.Lsp1109I、M.MamI、M1.MboI、M2.MboI、M1.MboII、M2.MboII、M.Mca43617ORFAP、M.Mca43617ORFBP、M1.Mca43617ORFDP、M2.Mca43617ORFDP、M.Mca43617ORFJP、M.MfeI、M.MjaI、M.MjaII、M.MjaIII、M.MjaIVP、M.MjaV、M.MjaVI、M.MloORFmlr7520P、M.MluI、M.MlyI、M.MmaMORFC174P、M.MmaSORF735P、M.MmeI、M.MmeII、M.MmoORF950P、M.MmoORF3450P、M.MmyIP、M.MmySCORF186P、M.MmySCORF216P、M.MmySCORF950P、M1.MnlI、M2.MnlI、M.MpeORF1230P、M1.MpeORF1780P、M2.MpeORF1780P、M.MpeORF4940P、M.MpeORF9800P、M.MpuCORF430P、M.MscI、M.MseI、M.MsmChe9cORF76P、M.MsmChe9cORF77P、M.MsmChe9cORF80P、M.MsmcdP、M.MsmomegaORF127P、M.MspI、M.MspA1I、M.MspSD10I、M.MthFI、M.MthTI、M.MthZI、M.MunI、M.MvaI、M.Mva1269I、M.MwoI、M.NaeI、M.NarAORFC306P、M.NcoI、M.NdeI、M.NdeII、M.Ngo18785P、M.Ngo185840P、M.Ngo185841P、M.NgoAI、M.NgoAII、M.NgoAIII、M.NgoAIV、M.NgoAV、M.NgoAVIIP、M.NgoAXIP、M.NgoAORFC708P、M1.NgoAORFC717P、M2.NgoAORFC717P、M.NgoBI、M.NgoBII、M.NgoBIIIP、M.NgoBIVP、M.NgoBV、M1.NgoBVIII、M2.NgoBVIII、M.NgoBIX、M.NgoBXII、M.NgoDIII、M.NgoEI、M.NgoFVII、M.NgoGI、M.NgoGII、M.NgoGIII、M.NgoGIVP、M.NgoGV、M.NgoHIP、M.NgoHIIP、M.NgoHIIIP、M.NgoHIVP、M.NgoHVP、M.NgoHVIP; M.NgoHVIIP、M.NgoHVIII、M.NgoKVIP、M.NgoLIP、M.NgoLII、M.NgoLIIIP、M.NgoLIVP、M.NgoLVP、M.NgoMI、M.NgoMII、M.NgoMIII、M.NgoMIV、M.NgoMV、M.NgoMVIII、M.NgoMXV、M.NgoNIP、M.NgoNII、M.NgoNIIIP、M.NgoNIVP、M.NgoNVP、M.NgoPIP、M.NgoPII、M.NgoPIII、M.NgoPIVP、M.NgoPVP、M.NgoQIP、M.NgoQIIP、M.NgoQIIIP、M.NgoQIVP、M.NgoQVP、M.NgoSIP、M.NgoSII、M.NgoSIIIP、M.NgoSIVP、M.NgoSVP、M.NgoTIP、M.NgoTII、M.NgoTIIIP、M.NgoTIVP、M.NgoTVP、M.Ngo125VIIP、M.NlaI、M.NlaIII、M.NlaIV、M.NlaX、M.NlaL17ORFAP、M.NmaPhiCh1I、M.NmeAORF1453P、M.NmeAORF1500P、M1.NmeBI、M2.NmeBI、M.NmeBF13P、M.NmeBORF1033P、M.NmeBORF1290P、M.NmeSI、M.NmeST1117ORF1P、M.NmepNLE1P、M.NpuORFC221P、M.NpuORFC222P、M.NpuORFC224P、M.NpuORFC226P、M.NpuORFC228P、M.NpuORFC230P、M.NpuORFC231P、M.NpuORFC234P、M.NsiI、M.NspI、M.NspIII、M.NspV、M.NspHI、M.OihORF3333P、M.OihORF3336P、M.OkrAI、M.Pac25I、M.PaeI、M.PaeIMORF3201P、M.PaeMSHORF1P、M.Pae2164ORF7P、M.PaeR7I、M.PflMI、M.PgiI、M.PhaI、M.PhiBssHII、M.PhiMx8I、M.Phi3TI、M.Phi3TII、M.PhoI、M.PhoII、M.PhoWORFBP、M.PhsOYDam1P、M.PhsOYDam2P、M.PhsOYDam3P、M.PhsOYDam4P、M.PhsOYDam5P、M.PleI、M.PleLFBORF8P、M.PluTDamP、M.PluTDcmP、M.PluTORF600P、M.PluTORF2710P、M.PluTORF2942P、M.Pmi16525DamP、M.Pmi16525Dam2P、M.Pmi16525ORFDP、M.PmuADam、M.PmuDam、M.Ppu21I、M.Ppu111I、M.Ppu1253I、M.PpuMI、M.PshAI、M.PspGI、M.PspPI、M.PstI、M.PvuI、M.PvuII、M.PvuRts1DamP、M.PvuRts1Dam2P、M.RcoORF690P、M.ReuORF325P、M.Rho11sI、M.Rho11sII、M.Rle39BI、M.RmeADam、M.RpaORF1026P、M.RpapRPA4P、M.Rrh4273I、M.RruMORFS5P、M.RruMORFS15P、M.RsaI、M.RshI、M.RshIII、M.RsrI、M.RsrII、M.SPBetaI、M.SPRI、M.SacI、M.SacII、M.SalI,、M2.SapI、M.Sau96I、M.Sau3239I、M.Sau6782I、M.Sau3AI、M.SauLPI、M.SbaI、M.SbfI、M.Sbo13I、M.ScaI、M1.ScrFI、M2.ScrFI、M.SduI、M.SenPI、M.SenPhiE15P、M.SenPhiE15DamP、M.SenpCI、M.SeqORFC57P、M.SeqORFC272P、M.SeqORFC448P、M.SfaNI、M.SfeI、M.SfiI、M.Sfl2DamP、M.Sfl2DcmP、M.Sfl2ORF3300P、M.SflSf6DamP、M.SflTDamP、M.SflTDcmP、M.SflTORF3517P、M.Sfl2aI、M.SfoI、M.Sho27844P、M.SinI、M.SmaI、M.SmaII、M.SmapR478DcmP、M.SmapR478ORF272P、M.SmeIP、M1.SmuUORF504P、M2.SmuUORF504P、M.SnaBI、M.SonDamP、M.SonORF4P、M.SpeI、M.SphI、M.Spn526P、M.Spn6BI、M1.Spn19FORF24P、M2.Spn19FORF24P、M.Spn19FORF927P、M.SpnHGORF4P、M.SpnORF1431P、M.SpnORF1849P、M.SpnRORF1287P、M.SpomI、M.SptAI、M.SscL1I、M.Sse9I、M.Ssl1I、M.SsoI、M.SsoII、
M.Ssp6803I、M.Ssp6803ORF729P、M.Ssp6803ORF1803P、M.SspPhiBt1P、M.SssI、M.SstI、M.Ssu211I、M.Ssu212I、M1.Ssu2479I、M2.Ssu2479I、M1.Ssu4109I、M2.Ssu4109I、M1.Ssu4961I、M2.Ssu4961I、M1.Ssu8074I、M2.Ssu8074I、M1.Ssu11318I、M2.Ssu11318I、M1.SsuDAT1I、M2.SsuDAT1I、M.Sth368I、M.SthSt8IP、M.StsI、M.StyI、M.StyCDamP、M.StyCDam2P、M.StyCDam3P、M.StyCDam4P、M.StyCDcmP、M.StyD4I、M.StyDam、M.StyDam2P、M.StyDam3P、M.Sty1344Dam、M.Sty14028Dam、M.StyHCM1ORF187P、M.StyLTI、M.StyLTIII、M.StyLT2Dam、M.StyLT2DcmP、M.StyLT2FelsDamP、M.StyR27ORF154P、M.StySJI、M.StySKI、M.StySPI、M.StySQI、M.StySopEDamP、M.StyTDamP、M.StyTDam2P、M.StyTDam3P、M.StyTDam4P、M.StyTDcmP、M.SuaI、M.TaeII、M.TaqI、M.TdeII、M.TdeIII、M.TdeORF706P、M.TelBORF1578P、M.TelBORF1640P、M.TelBORF1878P、M1.TerORFS1P、M2.TerORFS1P、M.TerORFS14P、M.TerORFS18P、M.TerORFS62P、M.TerORFS122P、M.TfiTok6A1I、M.ThaI、M.ThaII、M.ThaIII、M.TliI、M.TmaI、M.TpaI、M.TrsKTI、M.TrsSI、M.TrsTI、M.TseI、M.Tsp32I、M.Tsp45I、M.Tsp509I、M.TspRI、M.Tth111I、Tth111II、M.TthHB8I、M.TthHB27P、M.TthHB27ORF41P、M.TvoORF849P、M.TvoORF1192P、M.TvoORF1400P、M.TvoORF1413P、M.TvoORF1416P、M.TwhORF771P、M.TwhTORF783P、M.Uba580P、M.Ucr1P、M.Van91II、M.VchADamP、M.Vch569BdamP、M.Vch0395Dam、M.VchK139I、M.VpaRDamP、M.VspI、M.VvuDamP、M.VvuYDamP、M.WsuORF1405P、M.WsuORF1930P、M.XamI、M.XaxCORF2436P、M.XbaI、M.XcmI、M.XcyI、M.XfaAORFC345P、M.XfaAORFC348P、M.XfaOORFC725P、M.XfaORF1804P、M.XfaTORF577P、M.XfaTORF1062P、M.XfaTORF1607P、M.XhoI、M.XhoI、M.XmaI、M.XmaIII、M.XmnI、M.XorII、M.XphI、M.YenI、M.YenSDamP、M.YenSORFC666P、M.YenWI、M.YpeDamP、M.YpeKDamP、M.YpeKORF2224P、M.YpeKORF3792P、M.YpeMDamP、M.YpeMORF1932P、M.YpeMORF3790P、M.YpeORF391P、M.YpeORF2088P、M.YpsDamから選ばれてもよい。
【0065】
本発明のより好ましい実施態様では、メチルトランスフェラーゼは、DNAメチルトランスフェラーゼM.Taql、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、M2.Eco31Iまたはその誘導体から成るグループから選ばれる。
【0066】
本発明はさらに、本発明の化合物(I)を含むキットに関する。このキットの各種成分は、保存のために要すれば任意に適切なバッファーに溶解されて、1個以上の容器にパックされてもよい。使用案内を載せたリーフレットを加えてもよい。
【0067】
本発明のある好ましい実施態様では、本発明のキットはさらに、本発明で定義されるものと同じメチルトランスフェラーゼを含む。
【0068】
本発明はさらに、本発明の複合体を含むキットに関する。
【0069】
本発明はさらに、本発明の化合物(I)または本発明の複合体、および、要すれば任意に製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物に関する。
【0070】
本発明はさらに、本発明の化合物(I)、または本発明の複合体を含む診断組成物に関する。一実施態様によれば、診断組成物は、液体組成物である。この診断組成物の好ましい溶媒は水性である。さらに、組成物は、処方のpH、浸透圧、粘度、色、滅菌性、安定性、溶解速度、または臭気を修飾または維持するための、他の成分または担体を含んでもよい。同様に、組成物は、その診断組成物の安定性、溶解速度、放出、または吸収を修飾または維持するために、さらに別の製薬学的に受容可能な成分を含んでもよい。一旦診断組成物が処方されたならば、これを、溶液、縣濁液、ゲル、乳液、固体、脱水または凍結粉末として、滅菌バイアルの中に貯蔵してもよい。このような処方は、すぐに使用できる形として、または、使用の直前に再構成を必要とする形として保存されてよい。
【0071】
本発明はさらに、本発明の化合物(I)、またはその混合物の、標的分子を修飾するための使用に関する。典型的使用は、本発明の教示による方法、例えば、本明細書に記載される方法である。
【0072】
本発明の好ましい実施態様では、標的分子の修飾は、本発明の化合物(I)またはその混合物を、該化合物の一部を標的分子に転移するメチルトランスフェラーゼの補因子として使用することによって実現される。
【0073】
本発明の好ましい実施態様では、標的分子は、核酸分子、要すれば任意に配列特異的なやり方で修飾されたポリペプチド、炭水化物、または小型分子である。
【0074】
本発明の好ましい実施態様では、核酸分子は、DNA、RNA、またはそれらのハイブリッドであり、より好ましくは、DNAまたはRNA分子は、配列特異的やり方で修飾される。
【0075】
本発明の、もう一つのより好ましい実施態様では、小型分子は、リン脂質、アミノ酸、ホルモン、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体から選ばれる。
【0076】
本発明の、もう一つのより好ましい実施態様では、メチルトランスフェラーゼは、上に定義したDNAメチルトランスフェラーゼである。
【0077】
本発明はさらに、修飾された標的分子の調製法であって、本発明の化合物(I)と、該化合物を補因子として使用することが可能なメチルトランスフェラーゼの存在下に、該化合物の一部を標的分子に転移することを可能とする条件下に、標的分子をインキュベートすることを含む方法に関する。
【0078】
本発明のある好ましい実施態様では、標的分子は、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、または小型分子、またはそれらの間の複合体である。
【0079】
本発明のより好ましい実施態様では、小型分子は、リン脂質、アミノ酸、ホルモン、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体である。
【0080】
本発明のより好ましい実施態様では、ポリペプチドは配列特異的やり方で修飾される。
【0081】
本発明のより好ましい実施態様では、DNA、またはRNA分子は配列特異的やり方で修飾される。
【0082】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、修飾は、標識として好適な基を標的分子に転移し、他の未標識分子の間において標識された該分子の特定を可能とすることによって実現される。最後に、本発明のより好ましい実施態様では、標識は、蛍光発色団、蛍光消光剤、アフィニティタグ、スピンラベル、質量タグ、放射性または安定な希少同位元素、発色団、および検出可能なナノ粒子から選ばれる。
【0083】
本発明はまた、生体分子における配列特異的メチル化を検出する方法であって、(a)前記メチルトランスフェラーゼの検出可能な補因子の存在下に、生体分子をS−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼに接触させること;および、(b)前記メチルトランスフェラーゼの認識部位が、補因子またはその誘導体によって修飾されたかどうかを検出することを含み、前記メチルトランスフェラーゼの認識部位の修飾は、前記認識部位におけるメチル化の不在を示し、前記補因子は、上に詳述した本発明の、式(I)の化合物、またはその誘導体であることを特徴とする、方法に関する。
【0084】
「生体分子」という用語は、DNA、RNA、または(ポリ)ペプチドを意味する。「(ポリ)ペプチド」という用語は、ペプチド、またはポリペプチドを交互に指す。通常、ペプチドは、最大30個の残基から成る共有的に結合されるアミノ酸であるが、一方ポリペプチドは(「タンパク」とも呼ばれる)31個以上のアミノ酸残基を含む。生体分子は、染色体またはゲノムDNAであることが好ましい。
【0085】
「生体分子をメチルトランスフェラーゼに接触させる」という用語は、メチルトランスフェラーゼと生体分子とを接触させることを意味する。一般に、このことは、生体分子を含むサンプルにメチルトランスフェラーゼを加えることによって実現される。それとは別に、生体分子を含むサンプルを、メチルトランスフェラーゼを含む溶液に加えてもよい。当業者には、最適な酵素活性を実現するのに必要な特定のバッファー条件は既知である。このような条件は、当業者には既知であるか、あるいは、様々なアッセイ条件下で酵素活性を調べることによって獲得することが可能である。
【0086】
通常、生体分子は、メチルトランスフェラーゼ補因子の存在下にメチルトランスフェラーゼと接触させられる。前記補因子は、上に詳述された、式(I)の化合物、またはその誘導体であることが好ましい。
【0087】
「メチルトランスフェラーゼ」という用語は、通常、活性化メチルを、S−アデノシル−L−メチオニン(AdoMet)からその基質へ転移する酵素を指す。メチルトランスフェラーゼは、DNA、RNA、または(ポリ)ペプチドをメチル化することが可能な酵素であることが好ましい。より好ましくは、メチルトランスフェラーゼは、M.TaqI、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、M2.Eco31I、またはそれらの誘導体から選ばれるDNAメチルトランスフェラーゼであることが好ましい。
【0088】
「前記メチルトランスフェラーゼの認識部位が、補因子またはその誘導体によって修飾されたかどうかを検出すること」という用語は、式(I)の補因子またはその誘導体が生体分子に付着したかどうかを評価することを意味する。好ましくは、検出法は、メチルトランスフェラーゼの認識配列の中に、前記補因子またはその誘導体によって修飾された特定の残基を特定することを含む。前記誘導体は、式(I)の化合物またはその誘導体と、生体分子との間の反応から生じる任意の化合物であってよい。
【0089】
「認識配列」という用語は、生体分子において、メチルトランスフェラーゼによって認識される特定の配列を指す。メチルトランスフェラーゼがDNAメチルトランスフェラーゼである場合、認識配列は、2、3、4、5、6、または8個または対のヌクレオチドまたはヌクレオチドペアを含んでもよい。本明細書で用いる認識配列は、通常、本発明の、式(I)の化合物、またはその誘導体に対するアクセプター部位を含む。本発明の教示は、メチルトランスフェラーゼ依存性に配列特異的標識付着を可能とする。いわゆるCpG島に配されるシトシン残基のDNA標識は、本発明の特異的局面である。なぜなら、これによって、ヒトの染色体DNAのメチル化状態を評価することが可能となるからである。従って、本発明の方法は、染色体DNAのメチル化状態の変化と関連する疾病を診断するのに特に有用であるが、ただし本発明が有用であるのはこれに限定されない。本発明の方法は、他の供給源から得られたDNAのメチル化状態ばかりでなく、RNAまたは(ポリ)ペプチドのメチル化状態を評価するのにも有用である筈である。さらに、メチルトランスフェラーゼと複合体を形成する式(I)の補因子またはその誘導体は、生化学、分子生物学、遺伝子治療、およびナノ生物工学における種々の応用にも有用となる筈である。さらに、式(I)の補因子またはその誘導体は、メチルトランスフェラーゼの、新たなメチル化標的を見出すのに使用することが可能である。
【0090】
本発明の好ましい実施態様では、前記生体分子は、核酸分子か、または(ポリ)ペプチドである。核酸分子は、DNAおよびRNAを含むものと理解しなければならない。好ましくは、DNAは、染色体またはゲノムDNAである。生体分子は任意の長さを持っていてよい。「染色体DNA」という用語はまた、染色体の断片を含む。前記断片は、最大500ヌクレオチド(nt)、1キロベース(kb)、2kb、3kb、4kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kbまたはそれ以上の長さを持つ。一方、染色体DNAによって包括されるものは、最大5nt、10nt、15nt、20nt、25nt、30nt、35nt、40nt、45nt、50nt、100nt、200nt、300nt、400nt、500ntの長さを持つ短い断片である。
【0091】
本発明のさらにもう一つの好ましい実施態様では、前記(a)工程は、インビトロか、細胞抽出物か、またはインビボで実行される。一般に、制限酵素およびDNAトランスフェラーゼによる処理にとって好適な反応条件は、当業者には既知であり、例えば、分子生物学の標準的教科書に記録される(例えば、Sambrook et al.,「分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)」; ISBN: 0879695765、CSH Press、Cold Spring Harbor、2001を参照されたい)。M.Ssslの変種Q142Aによって仲介される補因子標識化の適正条件は、バッファー(10mM Tris塩酸、50mM塩化ナトリウム、1mMジチオスレイトール、pH7.9)に溶解した、式(I)の化合物300μM、M.Sssl変種Q142A 73pmolである。インキュベーションは、37℃4時間でよい。本発明の方法をインビトロで実行する場合、分析の前に個体から生物サンプルを分離する。この「生物サンプル」という用語は、個体から取り出された標本に関する。前記標本は、毛髪、皮膚、粘膜表面、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、唾液、喀痰、涙液、脳脊髄液、精液、滑液、羊水、乳汁、リンパ液、肺喀痰、気管支分泌液を含む体液、または大便から採取されるのが好ましい。
【0092】
個体は、ヒトまたは動物であってよい。個体は、七面鳥またはニワトリを含む家禽であるか、あるいは、個体は、哺乳類、例えば、ヒト、霊長類、ラット、マウス、モルモット、ブタ、ウシ、ネコ、またはウサギを含む哺乳類であることが好ましい。
【0093】
本発明のより好ましい実施態様では、前記核酸分子はDNAである。前記DNAは染色体DNAであることが好ましい。
【0094】
本発明の、もう一つのより好ましい実施態様では、本法は、工程(a)の前に、制限酵素でDNAを処理する工程をさらに含む。制限酵素は、R.AatII、R.AccI、R.Acc65I、R.AciI、R.AclI、R.AfeI、R.AflII、R.AflIII、R.AgeI、R.AhdI、R.AluI、R.AlwI、R.AlwNI、R.ApaI、R.ApaLI、R.ApoI、R.AscI、R.AseI、R.AsiSI、R.AvaI、R.AvaII、R.AvrII、R.BaeI、R.BamHI、R.BanI、R.BanII、R.BbsI、R.BbvI、R.BbvCI、R.BceAI、R.BcgI、R.BciVI、R.BclI、R.BfaI、R.BfrBI、R.BfuAI、R.BglI、R.BglII、R.BlpI、R.Bme1580I、R.BmgBI、R.BmrI、R.BpmI、R.BsaI、R.BsaAI、R.BsaBI、R.BsaHI、R.BsaJI、R.BsaWI、R.BsaXI、R.BseRI、R.BsgI、R.BsiEI、R.BsiHKAI、R.BsiWI、R.BslI、R.BsmI、R.BsmAI、R.BsmBI、R.BsmFI、R.BsoBI、R.Bsp1286I、R.BspCNI、R.BspDI、R.BspEI、R.BspHI、R.BspMI、R.BsrI、R.BsrBI、R.BsrDI、R.BsrFI、R.BsrGI、R.BssHII、R.BssKI、R.BssSI、R.BstAPI、R.BstBI、R.BstEII、R.BstF5I、R.BstNI、R.BstUI、R.BstXI、R.BstYI、R.BstZ17I、R.Bsu36I、R.BtgI、R.BtrI、R.BtsI、R.Cac8I、R.ClaI、R.DdeI、R.DpnI、R.DpnII、R.DraI、R.DraIII、R.DrdI、R.EaeI、R.EagI、R.EarI、R.EciI、R.EcoNI、R.EcoO109I、R.EcoRI、R.EcoRV、R.FauI、R.Fnu4HI、R.FokI、R.FseI、R.FspI、R.HaeII、R.HaeIII、R.HgaI、R.HhaI、R.HinP1I、R.HincII、R.HindIII、R.HinfI、R.HpaI、R.HpaII、R.HphI、R.Hpy99I、R.Hpy188I、R.Hpy188III、R.HpyCH4III、R.HpyCH4IV、R.HpyCH4V、R.KasI、R.KpnI、R.MboI、R.MboII、R.MfeI、R.MluI、R.MlyI、R.MnlI、R.MscI、R.MseI、R.MslI、R.MspI、R.MspA1I、R.MwoI、R.NaeI、R.NarI、R.NciI、R.NcoI、R.NdeI、R.NgoMIV、R.NheI、R.NlaIII、R.NlaIV、R.NotI、R.NruI、R.NsiI、R.NspI、R.PacI、R.PaeR7I、R.PciI、R.PflFI、R.PflMI、R.PleI、R.PmeI、R.PmlI、R.PpuMI、R.PshAI、R.PsiI、R.PspGI、R.PspOMI、R.PstI、R.PvuI、R.PvuII、R.RsaI、R.RsrII、R.SacI、R.SacII、R.SalI、R.SapI、R.Sau96I、R.Sau3AI、R.SbfI、R.ScaI、R.ScrFI、R.SexAI、R.SfaNI、R.SfcI、R.SfiI、R.SfoI、R.SgrAI、R.SmaI、R.SmlI、R.SnaBI、R.SpeI、R.SphI、R.SspI、R.StuI、R.StyI、R.SwaI、R.TaqI、R.TfiI、R.TliI、R.TseI、R.Tsp45I、R.Tsp509I、R.TspRI、R.Tth111I、R.XbaI、R.XcmI、R.XhoI、R.XmaI、およびR.XmnIから成るグループから選ばれてもよい。
【0095】
本発明のさらにもう一つのより好ましい実施態様では、前記DNAは、固相支持体の上に固定される。本発明に従って用いられる固相支持体は、フィルター材料、チップ、ウェイファー、マイクロタイタープレートを含む。固相支持体に対する固定は、種々の手段、例えば、活性化表面に対する共有結合、または、核酸分子に対するハイブリダイゼーションを含む各種手段によって実現してよい。
【0096】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、前記DNA分子は、固相支持体に、この固相支持体に付着するオリゴヌクレオチドに該DNA分子をハイブリダイズすることによって付着する。ハイブリダイゼーション条件は、低度、中等度、または高度の厳格度であってよい。本明細書で用いる「厳格条件」という用語は、当業者にはよく知られているが、高度の厳格度条件に一致する。各配列に対する適切な厳格度のハイブリダイゼーション条件は、当業者であれば、温度、核酸分子の組成、塩条件等のパラメータを修飾することによって定めることが可能である。例えば、Sambrook et al.,「分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning、A Laboratory Manual)」; ISBN: 0879695765、CSH Press、Cold Spring Harbor、2001、またはHiggins and Hames(eds.),「核酸ハイブリダイゼーション、実技入門(Nucleic acid hybridization、a practical approach)」、IRL Press、Oxford 1985、特に、「ハイブリダイゼーション戦略(Hybridization Strategy)」の章、Britten & Davidson著、3から5を参照されたい。厳格ハイブリダイゼーション条件とは、例えば、50%フォルムアミド、5xSSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xDenhardt液、10%硫酸デキストラン、および、20μg/mLの変性、せん断鮭精子DNAを含む溶液において42℃で一晩インキュベーション、その後、約65℃において0.1xSSCにおいてフィルター洗浄を含む条件である。他の厳格ハイブリダイゼーション条件は、例えば、65℃における0.2xSSC(30mM NaCl、30mMクエン酸三ナトリウム、pH7)である。さらにより低い厳格度を実現するために、厳格ハイブリダイゼーションの後に実行される洗浄を、より高い塩濃度(例えば、5xSSC)で行ってもよい。ハイブリダイゼーション実験における背景雑音を抑制するために使用されるブロッキング試薬を含めるか、および/または置換することによって、前述の条件に変動をもたらすことが可能であることに注意しなければならない。典型的ブロッキング試薬としては、Denhardt試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性鮭精子DNA、および市販の私企業専売処方が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。特定のブロッキング試薬の導入は、適合性問題のために、前述のハイブリダイゼーション条件の修正を要求する場合がある。比較的低い厳格度を持つハイブリダイゼーション条件も考慮の対象となる。ハイブリダイゼーションおよび信号検出の厳格度の変更は、例えば、フォルムアミド濃度(フォルムアミドのパーセンテージが低いと厳格度は低くなる)、塩条件、または温度を操作することによって実現される。例えば、比較的低い厳格度条件は、6xSSPE(20xSSPE=3M NaCl、0.2M NaH2PO4、0.02M EDTA、pH7.4)、0.5%SDS、30%フォルムアミド、100μg/mLの変性鮭精子DNAを含む溶液において37℃で一晩インキュベーション、その後、50℃において1xSSC、0.1%SDSにおいて洗浄を含む。さらに低い厳格度を実現するためには、厳格ハイブリダイゼーション後に実行される洗浄を、より高い塩濃度(例えば、5xSSC)において行ってもよい。
【0097】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、メチルトランスフェラーゼは、孤立DNAトランスフェラーゼであるか、または細菌制限修飾システムの一部である。
【0098】
本発明のさらにもう一つの好ましい実施態様では、前記メチルトランスフェラーゼは、M.TaqI、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、およびM2.Eco31I、またはその誘導体から選ばれる。用語”M.HhaI”は、アクセス番号P05102の下にSwissprotデータベースに保管されるDNAメチルトランスフェラーゼを指す。用語”M.TaqI”は、アクセス番号P14385の下にSwissprotデータベースに保管されるDNAメチルトランスフェラーゼを指す。用語”M.BseCI”は、アクセス番号P43423の下にSwissprotデータベースに保管されるDNAメチルトランスフェラーゼを指す。しかしながら、M.TaqI、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)およびM2.Eco31Iと同じ配列特異性を持つものであれば、すなわち、同じ認識配列を持つか、または、低い配列特異性を持つものでも該認識配列の一部だけを含んでいれば、他の任意のメチルトランスフェラーゼも、本発明の方法にとって有用である可能性がある。
【0099】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、(a)本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体は、DNAメチルトランスフェラーゼの認識部位における、または認識部位近傍における、制限酵素の切断を阻止し;かつ、(b)メチル化は、前記化合物によるDNAの修飾が、前記認識部位において、またはその近傍において、制限酵素による切断を阻止するかどうかを試験することによって検出される。
【0100】
本発明の発明人は、認識配列のアクセプター部位における、本発明の式(I)の化合物の存在が、重複するか、または同じ認識配列を持つ制限酵素によるDNA切断を阻止することを観察した。本明細書で用いる制限酵素切断の阻止とは、制限酵素が、DNA鎖を切断することを防止することを意味する。理論に縛られる心算はないが、立体的障碍が、認識配列への接触を阻止するため、制限酵素が生産的な形でその標的配列に結合できなくなると仮定される。この所見は、本発明の化合物による最初の標識化工程、および、制限酵素によるその後の切断工程を含むアッセイに利用することが可能である。もちろん、制限酵素の選択は、標識工程で用いられる特定のDNAトランスフェラーゼに依存する。一般的ガイドラインとして、制限酵素の認識配列は、修飾された塩基の近傍になければならない。制限酵素の認識配列は、修飾された塩基を含むことが好ましい。DNAトランスフェラーゼの認識配列と、制限酵素の認識配列とが同じであることがより好ましい。制限酵素およびDNAメチルトランスフェラーゼの特定の組み合わせの選択は、当業者には明らかであり、これ以上の説明を必要としない。さらに、DNAメチルトランスフェラーゼによって実行される標識化反応、および制限酵素切断は、標準条件下で実行されてよい。
【0101】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、(a)本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体は、メチルトランスフェラーゼの認識部位において核酸増幅を妨げ;かつ、(b)メチル化は、核酸の増幅が、メチルトランスフェラーゼの認識部位において遅れるかどうかを試験することによって検出される。増幅遅延は、増幅反応時においてプライマー結合または鎖伸長を妨げることによって実現されると考えられる。
【0102】
「増幅」または「増幅する」という用語は、コピー数の増加を意味する。当業者であれば、核酸分子を増幅するための様々な方法を存知しているであろうが、これらの方法は、本発明の診断法においても使用が可能である。増幅法としては、例えば、「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)、「リガーゼ連鎖反応」(LCR、EPA320308)、「周期的プローブ反応」(CPR)、「鎖移動増幅」(SDA、Walker et al.、(1992) Nucleic Acid Res. 7、1691−1696)、「転写依存増幅システム」(TAS、Kwoh et al.、(1989) Proc.Nat.Acad.Sci. USA 86、1173; Gingers et al.、PCT Application WO 88/10315)が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。DNAの増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて実行することが好ましい[Methods in Molecular Biology、Vol.226(Barlett and Stirling、eds.): PCR protocols、2nd edition; PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification(Ehrlich、ed.)、New York 1992; PCR Protocols: A guide to methods and applications(Innis et al.、eds.)、Academic Press、San Diego 1990]。サンプルがごく微量の核酸しか含んでいない場合には、核酸増幅法が特に便利な場合がある。前記核酸がRNAである場合、RT−PCRを実行してもよい。その後、PCRを含むもう一つの増幅工程を実行してもよい。それとは別に、同じサンプルに含まれる前記核酸がDNAである場合、PCRを実行してよい。
【0103】
一般に、PCRは、(a)DNA分子の二つの鎖を溶解する、変性工程;(b)DNA分子の溶解鎖にプライマーを特異的にアニールさせることを目的とするアニーリング工程;および、(c)鋳型鎖によって供給される情報を用いてアニールしたプライマーを伸長させる伸長工程から成るサイクルの、数多くの繰り返しから成る。一般に、PCRは、5μLの10xPCRバッファーを、1.5mM MgCl2、各デオキシヌクレオシド三リン酸200μM、各プライマー0.5μL(10μM)、約10から100ngの鋳型DNA、および、1から2.5単位のTaq DNAと共に含む50μLの反応混合液において実行される。増幅用プライマーは、標識されてもよいし、未標識であってもよい。DNA増幅は、例えば、モデル2400熱サイクラー(Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア州)使用:94℃で2分、次いでアニーリング(50℃で30秒)、伸長(72℃で1分)、変性(94℃で10秒)から成るサイクルを35サイクル、および最終アニーリング工程55℃で1分および最終伸長工程72℃で5分、によって実行することが可能である。しかしながら、当業者であれば、特定の核酸分子の増幅のためにこれらの条件をどう最適化したらよいか、または、反応混合物容量をどのように縮小、または拡大したらよいかを承知している。
【0104】
核酸増幅のもう一つの方法は、「逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)」である。この方法は、増幅される核酸がRNAから成る場合に用いられる。「逆転写酵素」という用語は、リボ核酸鋳型に対して相補的なプライマー伸長産物を形成する、デオキシリボヌクレオシド三リン酸の重合を触媒する酵素を指す。この酵素は、プライマーの3′末端において合成を開始し、鋳型の5′末端に向かって進み、5′末端に達したところで合成が止む。RNA標的配列を、相補的なコピーDNA(cDNA)配列に変換するのに好適な重合剤の例として、ニワトリ骨髄芽細胞症ウィルス逆転写酵素およびThermus thermophilus DNAポリメラーゼ、Perkin Elmerによって市販される、逆転写酵素活性を持つ熱安定性DNAポリメラーゼがある。通常、ゲノムRNA/cDNA二重鎖鋳型は、最初の逆転写工程後の初回の変性工程時に熱変性されてDNA鎖を離脱させ、これが、増幅用鋳型として利用される。DNA鋳型と共に使用するのに好適なポリメラーゼとしては、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIまたはそのクレノウ断片、T.sub.4 DNAポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、および、Thermus aquaticusから単離され、Hoffmann−La Rocheによって開発・製造され、Perkin Elmerによって市販される、熱安定DNAポリメラーゼであるTaqポリメラーゼが挙げられる。この後者の酵素は、核酸の増幅および配列決定に広く使用される。Taq DNAポリメラーゼを使用するための反応条件は従来技術において既知であり、かつ、例えば、「PCR技術(PCR Technology)」、Ehrlich(1989、Stokton Press、New York; Innis、Gelfand、Sninsky and White. 1990、「PCRプロトコール:方法および応用ガイド(PCR Protocols: A guide to methods and applications)」、Academic Press、New Yorkに記載される。高温RTによって、より高いプライマー特異性および効率が実現される。1991年8月15日出願の、係属中の米国特許出願第07/746,121号は「相同性RT−PCR」を記載する。このPCRでは、逆転写とPCR増幅の両工程において同じプライマーおよびポリメラーゼで十分であり、二つの反応が試薬の交代無しに行われるように反応条件が最適化される。Thermus thermophilus DNAポリメラーゼは、逆転写酵素としても機能することが可能な熱安定DNAポリメラーゼであるが、これは、鋳型によらず、全てのプライマー伸長工程において使用することが可能である。両工程は、試薬を変える、または加えるためにチューブを開くことを要することなく実行することが可能である。ただ温度プロフィールだけは、第1サイクル(RNA鋳型)と残りの増幅サイクル(DNA鋳型)の間で調整する。RT反応は、例えば、5xANV−RTバッファー4μL、2μLのオリゴdT(100μg/mL)、10mM dNTP 2μL、全体RNA 1μL、10単位のAMV逆転写酵素、およびH2Oを加えて20μLの最終容量としたものを含む20μLの反応混合液において実行される。反応は、例えば、下記の条件を用いて実行してもよい。反応は、逆転写を可能とするために15分70℃に維持される。次に、反応温度を95℃に1分上げて、RNA−cDNA二重鎖を変性する。次に、反応温度を95℃で15秒および60℃で20秒から成る2サイクル、その後、90℃で15秒および60℃で20秒から成る38サイクルを経過させる。最後に、反応温度を、最終伸長工程のために60℃で4分維持し、15℃に冷却し、増幅サンプルのその後の処理までその温度に維持する。
【0105】
本発明を通じて使用される「プライマー」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然であると合成であるとを問わず、鋳型核酸鎖に対して相補的なプライマー伸長産物が誘発される条件下で、すなわち、適切な温度に維持された、適切なバッファーに溶解した4種類の異なるヌクレオシド三リン酸またはその類縁体、および重合剤(すなわち、DNAポリメラーゼ、または逆転写酵素)の存在下において、核酸合成の起点として作動することが可能な、約8から約30、最終的には約50ヌクレオチド長の、短い核酸分子を指す。プライマーは、1本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドであることが好ましい。プライマーの適切な長さは、そのプライマーの意図される用途に依存するが、通常、PCRプライマーおよび配列決定反応に使用されるプライマーとしては、10から25ヌクレオチドの範囲を持つ。短いプライマーは、一般に、鋳型に対し十分安定なハイブリッド複合体を形成するにはより低い温度を必要とする。プライマーは、鋳型の正確な配列を反映する必要はなく、その増幅仲介能力が侵されない限り、鋳型に特異的にハイブリダイズするのに十分なほど相補的であればよい。「ハイブリダイズする」とは、2本の1本鎖核酸同士が、相補的塩基の対合を介して、すなわち、A対T(RNAではU)、G対Cの対合を介して結合することを指す。「プライマーペア」という用語は、2本鎖核酸分子の、それぞれ、プラスおよびマイナス鎖にハイブリダイズし、例えば、PCR反応において、例えば、DNA断片の増幅を可能とする二つのプライマーを指す。要すれば、プライマーは、分光光度計、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段によって検出が可能な化合物を取り込ませることによって標識することが可能である。例えば、有用な標識としては、蛍光染料、高電子密度試薬、ビオチン、または、抗血清またはモノクロナール抗体が利用可能な小型分子が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。標識はまた、増幅された核酸またはその断片の選択をやり易くするために、プライマーを「捕捉する」ためにも用いられる。カルボキシフルオレセイン(FAM)および6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)は、好ましい標識である。他の好ましい標識としては、フルオロクローム、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Texasレッド、フィコエリスリン、アロフィコシアニン、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)、または、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、放射性標識、例えば、32P、35S、3Hが挙げられる。
【0106】
標識も2段階システムであってもよい。すなわち、プライマーが、高度の親和性を持つ結合パートナー、例えば、アビジン、特異的抗体等を持つ、ビオチン、ハプテン等に接合され、該結合パートナーは、検出可能な標識に接合されるシステムである。標識は、プライマーの片方だけ、または両方に接合されてよい。
【0107】
前記診断法において、核酸の配列決定工程を実行してもよい。配列決定のためには、従来技術で既知の任意の方法を用いてよい。核酸配列は、SangerまたはMaxam/Gilbertの配列決定技術(例えば、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、Vol. 167(Graham and Hill、eds.): DNA sequencing protocols、2nd edition、2001; Galas and McCormack,「ゲノム技術、現在と未来(Genomic Technologies: Present and Future)」、Caister Academic Press、Wymondham、UK、2002を参照)に基づく方法によって決められるのが好ましい。
【0108】
本発明のある好ましい実施態様では、PCRはリアルタイムPCRである。本発明のもう一つの好ましい実施態様では、核酸増幅は、リアルタイムPCRによって実行される。
【0109】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、(a)本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体は、蛍光標識を含み;かつ、(b)メチル化が、前記核酸分子における蛍光の存在、または量を測定することによって検出される。本発明の式(I)の前記化合物、またはその誘導体は、本発明において前述した蛍光標識、または、当業者に既知のものの内の任意のものによって標識してよい。本発明によれば、Alexa、BODIPY、bimane、クマリン、Cascadeブルー、ダンシル、ダポキシル、フルオレセイン、マンシル、MANT、Oregonグリーン、ピレン、ローダミン、Texasレッド、TNS、蛍光ナノ結晶(量子ドット)、シアニン蛍光発色団、およびそれらの誘導体が特に好ましい標識である。
【0110】
「蛍光の存在または量を測定する」とは、蛍光分光光度計測によって蛍光が検出されるかどうか、あるいは、どの程度の蛍光が検出されるかを意味する。
【0111】
本発明のもう一つのより好ましい実施態様では、(a)メチルトランスフェラーゼの認識配列において修飾された核酸分子がアフィニティ精製によって精製され;かつ、(b)本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体はアフィニティタグを含む。
【0112】
核酸分子は、本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体の標識に特異的に結合することが可能な化合物を用いて精製してもよい。その場合、標識は、アフィニティタグに一致するか、アフィニティタグを含む。標識またはアフィニティタグに結合することが可能な化合物は、化合物の結合が特異的である、抗体、タンパク、ペプチド、またはアプタマーである。アフィニティタグは、エピトープ、例えば、フラッグ−タグ、c−myc−タグ、HA−タグ、ジゴキシゲニン、またはジニトロフェノールである。それとは別に、アフィニティタグは、人工ペプチド、例えば、Hisタグであってもよい。「Hisタグ」は、His4、His5、His6、His7、His8、His9、His10、His11、His12、His13、His14、His15から選ばれてもよい。さらに、アフィニティタグは、ビオチン、ストレップ−タグ、グルタチオン、ニッケル−ニトリロ三酢酸(NTA)、またはマルトースであってもよい。アフィニティタグが「Hisタグ」である場合、固相支持体に結合したニッケルを精製のために用いてもよい。アフィニティタグがエピトープである場合、精製には、固相支持体に結合した抗体−アフィニティを用いることが可能である。アフィニティタグがビオチンまたはストレップ−タグである場合には、固相支持体に結合させたアビジンまたはストレプトアビジンを精製のために用いてもよい。アフィニティタグがグルタチオンの場合、固相支持体に結合させたグルタチオントランスフェラーゼ(GST)を精製のために用いてよい。アフィニティタグがマルトースである場合、固相支持体に結合させたマルトース結合タンパクを精製のために用いてよい。アフィニティタグがニッケル−ニトリロ三酢酸(NTA)である場合には、固相支持体に結合させた、いくつかのヒスチジン残基含有ペプチドを精製のために用いてよい。
【0113】
アフィニティ精製は、一般に、静止材料(固相)に固定されたリガンドとの結合性相互作用における差に基づいて、溶液(移動相)における分子を分離することを含む。アフィニティ精製における支持体または基質は、リガンドが共有的に付着されるものであれば、任意の材料であってよい。典型的には、アフィニティ基質として使用される材料は、標的分子が存在するシステムに対し不溶である。通常、ただし必ずしもそうとは限らないが、不溶の基質は固体である。有用なアフィニティ支持体は、高い、表面積対容量比を持ち、リガンドの共有的付着のために簡単に修飾される化学基を有し、非特異的結合性が極めて小さく、流動性が良く、かつ、機械的および化学的安定性を持つものである。好ましい固相支持体は、アガロース、セファロース、およびポリスチレンビーズである。
【0114】
アフィニティ精製は、本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体のアフィニティタグとしてビオチン、ジゴキシゲニン、グルタチオン、またはニッケル−ニトリロ三酢酸(NTA)を用いることによって実行するのが好ましい。
【0115】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、本発明の式(I)の化合物、またはその誘導体は、DNAのシトシン残基には付加されるが、5−メチルシトシン残基に対しては付加させることができないことが好ましい。
【0116】
本発明の好ましい実施態様では、方法は、工程(a)の後に、DNA分子の配列を決定する追加工程を含む。配列決定のためには、従来技術で既知の任意の方法を用いてよい。核酸配列は、SangerまたはMaxam/Gilbertの配列決定技術(例えば、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、Vol.167(Graham and Hill、eds.): DNA sequencing protocols、2nd edition、2001; Galas and McCormack,「ゲノム技術、現在と未来(Genomic Technologies: Present and Future)」、Caister Academic Press、Wymondham、UK、2002を参照)に基づく方法によって決められるのが好ましい。
【0117】
本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記検出可能な補因子の標識は、(a)前記検出可能な補因子の標識に特異的に結合する抗体によって、あるいは、(b)前記検出可能な補因子に特異的に結合するアビジンまたはストレプトアビジンによって検出される。
【0118】
本発明を通じて使用される「抗体」という用語は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、キメラ抗体、1本鎖抗体、またはその断片を指す。抗体は、エピトープに対して特異的であることが好ましい。抗体は、ヒト化抗体、合成抗体、抗体断片、例えば、Fab、F(ab2)’、Fv、またはscFv断片等、または、これらの内の任意のものの化学的に修飾された誘導体であってもよい。モノクロナール抗体は、例えば、最初にKoehler and Milstein、(1975) Nature 256、495、and Galfre、(1981) Meth.Enzymol. 73、3に記載されたものと同じ技術によって調製される。この技術は、マウス骨髄腫細胞を、免疫化哺乳動物由来の脾臓細胞と融合させることを含むが、従来技術によって開発された修正を伴う。さらに、抗体、またはその断片は、例えば、Harlow and Lane「抗体、実験室マニュアル(Antibodies、A Laboratory Manual)」、CSH Press、Cold Spring Harbor、1998に記載される方法を用いることによって獲得される。前記抗体の誘導体がファージディスプレイ技術によって獲得される場合、分析されるエピトープに結合するファージ抗体の効率を増すために、ビアコアシステムに用いられる表面プラスモン共鳴を用いることが可能である(Schier、(1996) Human Antibodies Hybridomas 7、97−105; Malmborg、(1995) J.Immunol.Methods 183、7−13)。キメラ抗体の製造は、例えば、WO89/09622に記載される。
【0119】
抗体は標識してもよく、その際、標識は、本発明において述べた標識の内の任意のものであってよい。
【0120】
最後に、本発明のもう一つの好ましい実施態様では、前記DNA分子の配列が、DNA配列決定、ハイブリダイゼーション、Maldi−Tof分析、または、酵素断片化およびクロマトグラフィーによるヌクレオシド組成の分析によって決定される。
【0121】
本発明はさらに、下記の実施例によって、ただしこれらの実施例によって限定されることなく具体的に説明される。
【実施例】
【0122】
[実施例1]
補因子3−9の合成
補因子3−9の合成をスキーム1に示すとおりに実行した。
【0123】
【化7】
【0124】
スキーム4
補因子類縁体3−9の化学的合成、補因子類縁体5から9は本発明によるもので、補因子3および4は比較のためにのみ提示する。
【0125】
補因子類縁体3−9合成のための一般的手順
ギ酸および酢酸(1:1混合物)に溶解したS−アデノシル−L−ホモシステイン(2、Sigma−Aldrich)に、0℃でアリキルトリフレートまたは臭化アルキルをゆっくり加えた。この溶液を放置して室温に温め、室温で振とうしながらインキュベートした。補因子3−6に至る反応の進行を、分析的陽イオン交換HPLC(EC 250/4 Nucleosil 100−5 SA、CC 8/4 Nucleosil 100−5 SAプレカラム装備、Macherey−Nagel、Dueren、ドイツ)によって分析した。化合物は、アジ化ナトリウム(1mM)を含む、酢酸トリエチルアンモニウムバッファー(100mM、pH4.0)によって1mL/分の流速においてイソクラティックに溶出した。化合物は、260nmおよび278nmにおいて検出した。補因子7および8は、分析的逆相HPLC(Discovery C18 150x2.1mm、5μm、Supelguard Discovery C18 20x2.1m、5μmプレカラム装備、Supelco、ドイツ)、およびそれに結合される質量分析検出器(HP 1100 series ESI−MS、単一四重極装備)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウム水溶液(20mM、pH3.5)に溶解したメタノール(0%で6分、その後直線勾配で100%まで6分、100%で4分)によって0.3mL/分の流速において溶出した。MS検出の効率を上げるために、ポストカラム移動相修飾(メタノールに溶解した1%CF3COOHの等量共同流)を用いた。さらに、化合物を、210nm、260nm、および280nmにおいて検出した。
【0126】
水を加えて反応を停止させ(補因子3−6および9のためには30mL、補因子7および8のためには20mL)、水相をジエチルエーテルで抽出した(補因子3−6では3x5mL、補因子7,8では3x20mL、補因子9では3x15mL)。補因子3−6および9を含む水相を凍結によって濃縮し、得られた淡褐色油を0.01%のトリフルオロ酢酸を含む水(5mL)に溶解した。硫黄中心における補因子エピマーの精製および分離は(補因子9では、エピマーの分離は実現されなかった)、予備的逆相HPLC(Prontosil−ODS 5μm、120Å、30x20mmプレカラム、Bischoff、Leonberg、ドイツ)によって実行した。化合物は、トリフルオロ酢酸水溶液に溶解した(0.01%)アセトニトリル(補因子3−6:直線勾配で10%まで15分、70%まで5分;補因子9:14%から直線勾配で42%まで10分、70%まで5分)によって10mL/分の流速において溶出した。化合物は、260nmおよび278nmにおいて検出した。補因子7および8は、予備的逆相HPLC(Discovery C18 250x10mm、5μm、Supelguard Discovery C18 20x2.1 m、5μmプレカラム装備、Supelco、ドイツ)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウム水溶液(20mM、pH3.5)に溶解したメタノール(直線勾配で100%まで12分)によって20℃で4.5mL/分の流速において溶出した。化合物を、210nm、260nm、および280nmにおいて検出した。分画を含む産物を収集し、溶媒を凍結によって除去した。収率は、補因子のアデニン発色団の、260nmにおける吸光係数15400Lmol-1cm-1を用いUV分光光度計測によって定量した。
【0127】
A. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]エチルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン(S−アデノシル−L−エチオニン)、補因子3(比較例)
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(3mL)に溶解し、エチルトリフルオロメチルスルフォネート(1.21mL、9.36mmol、Sigma−Aldrich)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、2時間後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、3(保持時間7.5分、10.9μmol、21%)およびそのエピマー(保持時間7.8分、6.0μmol、12%)が白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 413.2(2)[M]+、334.2(5)[5’−エチルチオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、250.1(88)[M−エチオニン]+、136.2(100)[アデニン+H]+.
【0128】
B. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]プロピルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン(S−アデノシル−L−エチオニン)、補因子4(比較例)
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(3mL)に溶解し、プロピルトリフルオロメチルスルフォネート(1.8g、9.36mmol、Ross et al.、(2000) J.Chem.Soc.、Perkin Trans. 1、571−574による方法に従って調製)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、2.5時間後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、4(保持時間16.6分、10.5μmol、21%)およびそのエピマー(保持時間16.9分、8.3μmol、16%)が白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 348.0(17)[5’−プロピルチオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、326.0(100)[5’−プロピルチオ−5’−デオキシアデノシン+H]+.
【0129】
C. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]プロプ−2−エニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子5
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(3mL)に溶解し、臭化アリル(264μL、3.12mmol、Sigma−Aldrich)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、4時間後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、5(保持時間17.1分、7.2μmol、14%)およびそのエピマー(保持時間17.9分、11.6μmol、22%)が白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 346.0(30)[5’−(プロプ−2−エニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、324.0(100)[5’−(プロプ−2−エニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+.
【0130】
D. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]プロプ−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子6
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(3mL)に溶解し、プロパルギルトリフルオロメチルスルフォネート(1.76g、9.36mmol、Ross et al.、(2000) J.Chem.Soc.、Perkin Trans. 1、571−574による方法に従って調製)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、30分後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、6(保持時間8.8分、10.8μmol、21%)およびそのエピマー(保持時間9.5分、7.7μmol、15%)が白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 344.0(26)[5’−(プロプ−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、322.0(100)[5’−(プロプ−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+、136.0(8)[アデニニン+H]+.
【0131】
E. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]ブト−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子7
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(1mL)に溶解し、ブト−2−イニルトリフルオロメチルスルフォネート(200当量)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、2時間後に完了した。分析的逆相HPLCの際13.4分の保持時間で溶出した産物を、予備的逆相HPLCにて精製した。補因子7(2.6μmol、5%)が、硫黄中心におけるエピマーの混合物として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 437.1(100)[M]+、336.1(2)[5’−(ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+、250.1(88)[5′−デオキシアデノシン]+.
【0132】
F. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]ペント−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子8
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(10mg、26μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(0.5mL)に溶解し、ペント−2−イニルトリフルオロメチルスルフォネート(200当量)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、2時間後に完了した。分析的逆相HPLCの際16.0分および15.8分の保持時間で溶出した産物とそのエピマーを、予備的逆相HPLCにて精製した。補因子8(1.8μmol、7.0%)とそのエピマー(2.0μmol、7.7%)が、白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 451.1(100)[M]+、350.1(10)[5’−(ペント−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン)+H]+、250.1(20)[5′−デオキシアデノシン]+.
【0133】
G. 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]ベンジルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子9
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸と酢酸の1:1混合液(1mL)に溶解し、臭化ベンジル(1.1mL、9.4mmol)を加えた。反応は、一般的手順において記載したとおりに実行し、5時間後に完了した。予備的逆相HPLCによる精製によって、補因子9(保持時間9.0分、24.7μmol、47.5%)が、硫黄中心におけるエピマーの混合物として白色固体として得られた。
ESI−MS m/z(相対強度): 475.2(100)[M]+. ESI−MS−MS(475.2)m/z(相対強度): 374.0(88.5)[5′−ベンジルチオ−5′−デオキシアデノシン+H]+、340.0(59.5)[M−アデニン]+、250.2(86.1)[5′−デオキシアデノシン]+、226.2(100)[S−ベンジル−ホモシステイン+H]+.
【0134】
[実施例2]
種々のクラスの補因子3−9およびDNAメチルトランスフェラーゼによる、短い二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの配列特異的修飾
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.Taql、DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaIの変種Q82A、またはDNAシトシン−N4メチルトランスフェラーゼM.BcnIBによる、補因子3−9からの、活性化エチル(CH2CH3)、プロピル(CH2CH2CH3)、プロプ−2−エニル(CH2CHCH2)、プロプ−2−イニル基(CH2CCH)、ブト−2−イニル(CH2CCCH3)、ペント−2−イニル(CH2CCCH2CH3)、またはベンジル基(CH2C6H5)の、DNAへの転移は、先ず、基質として短い二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドを用いて調べた。酵素転移の後、この二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドを酵素的に断片化し、修飾されたヌクレオシドを、ESI−MS結合の逆相HPLCによって分析した。
【0135】
A. M.Taqlによる二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド内のアデニン−N6の修飾
【0136】
【化8】
【0137】
スキーム5
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqIによる、半メチル化二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.IIの配列特異的修飾。M.Taqlの5’−TCGA−3’DNA認識部位(太字)は、上方鎖Iに配される、ただ一つの修飾可能な標的アデニンしか含まないことに注意。下方鎖IIの、他方の標的アデニンは、メチル化(AMe=N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)によってブロックされている。従って、認識鎖の修飾は、上方鎖Iのみに起こることが可能である。
【0138】
この半メチル化二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.IIは、バッファー(150μL、20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、0.01%のトリトンX−100、pH7.9)に溶解した、等量(15nmol)の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドI(5’−GCCGCTCGATGCCG−3’)およびII(5’−CGGCATCGAMeGCGGC−3’、AMe=N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)を混ぜ合わせ、95℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産される。酵素による修飾は、バッファー(20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、0.01%のトリトンX−100、pH7.9)において、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.II(20μM)を、補因子3−9(3−6では400μM、7−8では200μM、および9では300μM)、およびM.TaqI(22μM、Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125の記載の通りに製造)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって実行した。M.TaqIは、95℃で10分加熱することによって変性し、遠心(13200 rpm/分、2分)によって除去した。修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIは、ゲルろ過(NAP−5カラム、Amersham Biosciences、フライブルグ、ドイツ)によって脱塩し、水(1mL)で溶出し、凍結した。
【0139】
修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIを、ヌクレア−ゼP1(1500u、Sigma、Taukirchen、ドイツ)、および仔ウシ小腸アルカリフォスファターゼ(30u、MBI Fermantas、St.Leon−Rot、ドイツ)を含むバッファー(100μL、10mM Tris−塩酸、10mMの塩化マグネシウム、1mMの酢酸亜鉛、pH7.5)に溶解し、37℃で4時間インキュベートした。ヌクレオシドを、逆相HPLC(シンメトリ−C18 5μm、100A、250x4.6mm、シンメトリ−C18 5μm装備、100A、20x4.6mmプレカラム、Waters、Eschborn,ドイツ)によって分析した。化合物は、トリエチルアンモニウムアセテートバッファー(10mM、pH7.0)に溶解したアセトニトリル(5%で7分、その後直線勾配で6%まで15分、35%まで8分、および70%まで2分)で流速1mL/分で溶出し、254nmで検出した。
【0140】
HPLC−結合ESI−MS測定のために、化合物を、ギ酸アンモニウムバッファー(20mM、pH3.5)に溶解したメタノール(0%で3分、次いで直線勾配で100%まで22分)で溶出した。ポストカラム移動相修飾(96%メタノール、4%ギ酸との等量共同流)を用い、2’−デオキシアデノシンおよびその誘導体の検出効率を上げた。質量スペクトラムを、200−370m/z範囲で記録した。
【0141】
A.1 補因子3(−Z−R=−CH2CH3)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
−Z−R=−CH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースa)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(30.5分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:280.1 [M]+)は、N6−エチル−2’−デオキシアデノシン(dAEthyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.4(11)、dG 10.6(11)、dT 3.0(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dAEthyl 1.0(1)。従って、AdoMet類縁体3は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0142】
A.2 補因子4(−Z−R=−CH2CH2CH3)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
−Z−R=−CH2CH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースb)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(32.0分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:294.2 [M]+)は、N6−プロピル−2’−デオキシアデノシン(dAPropyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.4(11)、dG 10.7(11)、dT 2.9(3)、dA 1.0(1)、dAMe 1.0(1) dAPropyl 1.0(1)。従って、AdoMet類縁体4は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0143】
A.3 補因子5(−Z−R=−CH2CH=CH2)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2CH=CH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースc)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(31.5分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:292.2 [M]+)は、N6−プロペニル−2’−デオキシアデノシン(dAPropenyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.4(11)、dG 10.7(11)、dT 3.0(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dAPropenyl 1.1(1)。従って、AdoMet類縁体5は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0144】
A.4 補因子6(−Z−R=−CH2C≡CH)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CHによる、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースd)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(30.5分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:290.2 [M]+)は、N6−プロピニル−2’−デオキシアデノシン(dAPropynyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.4(11)、dG 11.1(11)、dT 2.7(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dAPropynyl 0.9(1)。従って、AdoMet類縁体6は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0145】
A.5 補因子7(−Z−R=−CH2C≡CCH3)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CCH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースe)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(31.9分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:304.2 [M]+)は、N6−ブト−2−イニル−2’−デオキシアデノシン(dABut-2-ynyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.2(11)、dG 10.9(11)、dT 2.8(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dABut-2-ynyl 1.0(1)。従って、AdoMet類縁体7は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0146】
A.6 補因子8(−Z−R=−CH2C≡CCH2CH3)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CCH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースf)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(33.5分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:318.2 [M]+)は、N6−ペント−2−イニル−2’−デオキシアデノシン(dAPent-2-ynyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.2(11)、dG 10.9(11)、dT 2.8(3)、dA 0.9(1)、dAMe 1.0(1) dAPent-2-ynyl 1.0(1)。従って、AdoMet類縁体8は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0147】
A.7 補因子9(−Z−R=−CH2C6H5)およびM.TaqIによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C6H5による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(図1のトレースg)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、dA、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い保持時間(34.3分)を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:341 [M]+)は、N6−ベンジル−2’−デオキシアデノシン(dABenzyl)と一致した。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 11.3(11)、dG 11.0(11)、dT 3.0(3)、dA 0.8(1)、dAMe 1.0(1) dABenzyl 0.9(1)。従って、AdoMet類縁体9は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0148】
B. M.HhaI変種Q82Aによる二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドにおけるシトシン−C5の修飾
【0149】
【化9】
【0150】
スキーム6
DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaI−Q82Aによる、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IVの配列特異的修飾。二重鎖5’−GCGC−3’ DNA認識配列(太字)は、2本の修飾可能標的シトシンを含み、この認識配列内の第2シトシン残基の修飾は、上方鎖IIIにおいて起こるか(図示)、または下方鎖IVにおいて起こる(図示せず)。
【0151】
DNA、および天然補因子AdoMet 1(PDB同上:6MHT;Kumar et al.、(1997) Nucleic Acids Res. 25、2773−2783)と複合体を形成するM.HhaIの三次元構造は、Q82が、延長したメチル基置換体を含む補因子類縁体と相互作用を持つには立体的に不都合である可能性を示唆した。従って、Q82のコドンを、標準的Kunkel突然変異発生法(Kunkel et al.、(1989) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 82、488−492)によってアラニンに対するコドンに変更したところ、完全な遺伝子の適正なDNA配列が、DNA配列決定によって確かめられた。Q82A変種の発現および精製を、野生型酵素について記載されるものと同じやり方(Kumar et al.、(1992) Biochemistry 31、8648−8653; Kimasauskas et al.、(1998) EMBO J. 17、317−324)で実行した。
【0152】
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IVは、水に溶解した、等モル量(2.5nmol)の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII(5’−CATTACGCGCCGGGTCCTGGCTAT−3’)およびIV(5’−ATAGCCAGGACCCGGCGCGTAATG−3’)を混ぜ合わせ、85℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産された。酵素による修飾は、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IV(12.5μM)を、バッファー(補因子3−5、7、および8では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH6.0)に溶解した、補因子3−8(300μM)、およびM.HhaI(15μM)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって調べた。M.HhaI−Q82Aは、80℃で10分加熱し、プロテイナーゼKと55℃で10分インキュベーションすることによって変性した。加水分解産物は、ゲルろ過によって除去した(G−25カラム、Amersham Biosciences)。
【0153】
得られた二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド液を、ヌクレア−ゼP1(1500u、Sigma)、および仔ウシ小腸アルカリフォスファターゼ(30u、MBI Fermantas)を含むバッファー(1/10容量、10mM Tris−塩酸、10mMの塩化マグネシウム、10mMの酢酸亜鉛、pH7.5)で処理し、37℃で4時間インキュベートした。ヌクレオシドを、逆相HPLC(Discovery−C18 150x2.1mm、5μm、付属装備Supelguard Discovery C18 20x2.1mm、5μm、プレカラム、Supelco,ドイツ)−質量分析検出器(HP1100シリーズESI−MS、単一四重極装備)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウムバッファー(20mM、補因子3、4、6にはpH7.0、補因子5、7、8にはpH3.5)に溶解したメタノール(0%で6分、その後直線勾配で56%まで15分、80%まで1分)で流速0.3mL/分で溶出し、280nmで検出した。オンライン質量分析検出のために、ポストカラム移動相修飾(96%メタノール、4%ギ酸、および1mMの水酸化ナトリウムとの等量共同流)を用い、2’−デオキシシチジンおよびその誘導体の検出効率を上げた。質量スペクトラムを、50−600m/z範囲で記録した。
【0154】
B.1 補因子3(−Z−R=−CH2CH3)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
−Z−R=−CH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースa)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、16.5分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:278 [M+Na]+、162[C5−エチル−シトシン+Na]+は、C5−エチル−2’−デオキシシチジン(dCC5-Ethyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体3は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0155】
B.2 補因子4(−Z−R=−CH2CH2CH3)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの断片化(図2のトレースb)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAのみが明らかにされた。従って、AdoMet類縁体4は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能しない。
【0156】
B.3 補因子5(−Z−R=−CH2CH=CH2)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2CH=CH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースc)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、15.9分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:290 [M+Na]+、174[C5−プロペニル−シトシン+Na]+は、C5−プロペニル−2’−デオキシシチジン(dCC5-Propenyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体5は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0157】
B.4 補因子6(−Z−R=−CH2C≡CH)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CHによる、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースd)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、15.7分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:288 [M+Na]+、172[C5−プロピニル−シトシン+Na]+は、C5−プロピニル−2’−デオキシシチジン(dCC5-Propynyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体6は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0158】
B.5 補因子7(−Z−R=−CH2C≡CCH3)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CCH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースe)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、17.8分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:302 [M+Na]+、186[C5−ブト−2−イニル−2’−シトシン+Na]+は、C5−ブト−2−イニル−2’−デオキシシチジン(dCC5-But-2-ynyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体7は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0159】
B.6 補因子8(−Z−R=−CH2C≡CCH2CH3)およびM.HhaI−QA2Aによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2C≡CCH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図2のトレースf)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、20.3分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:316 [M+Na]+、200[C5−ペント−2−イニル−シトシン+Na]+は、C5−ペント−2−イニル−2’−デオキシシチジン(dCC5-Pent-2-ynyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体8は、M.HhaI−Q82Aの補因子として機能する。
【0160】
C. M.BcnIBによる二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドにおけるシトシン−N4の修飾
【0161】
【化10】
【0162】
スキーム7
DNAシトシン−N4メチルトランスフェラーゼM.BcnIBによる、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドV.VIの配列特異的修飾。二重鎖内の5’−CCGGG−3’ DNA認識配列(太字)は、2本の修飾可能標的シトシンを含み、この認識配列内の第2シトシン残基の修飾は、上方鎖Vにおいて起こるか(図示)、または下方鎖VIにおいて起こる(図示せず)。
【0163】
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドV.VIは、水に溶解した、等モル量(2.5nmol)の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドV(5’−CATTACGCGCCGGGTCCTGGCTAT−3’)およびVI(5’−ATAGCCAGGACCCGGCGCGTAATG−3’)を混ぜ合わせ、85℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産された。酵素による修飾(スキーム7)は、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドV.VI(12.5μM)を、バッファー(補因子3−5では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH6.0)に溶解した、補因子3−6(300μM)、およびM.BcnIB(15μM)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって調べた。M.BcnIBは、80℃で10分加熱し、プロテイナーゼKと55℃で1時間インキュベーションすることによって変性した。加水分解産物は、ゲルろ過によって除去した(G−25カラム、Amersham Biosciences)。
【0164】
得られた二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド液を、ヌクレア−ゼP1(1500u、Sigma)、および仔ウシ小腸アルカリフォスファターゼ(30u、MBI Fermantas)を含むバッファー(1/10容量、10mM Tris−HCl、10mMの塩化マグネシウム、10mMの酢酸亜鉛、pH7.5)で処理し、37℃で4時間インキュベートした。ヌクレオシドを、逆相HPLC(Discovery−C18 150x2.1mm、5μm、付属装備Supelguard Discovery C18 20x2.1mm、5μm、プレカラム、Supelco,ドイツ)−質量分析検出器(HP1100シリーズESI−MS、単一四重極装備)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウムバッファー(20mM、補因子3、4、6にはpH7.0、補因子5にはpH3.5)に溶解したメタノール(0%で6分、その後直線勾配で56%まで15分、80%まで1分)で流速0.3mL/分で溶出し、280nmで検出した。オンライン質量分析検出のために、ポストカラム移動相修飾(96%メタノール、4%ギ酸、および1mMの水酸化ナトリウムとの等量共同流)を用い、2’−デオキシシチジンおよびその誘導体の検出効率を上げた。質量スペクトラムを、50−600m/z範囲で記録した。
【0165】
C.1 補因子3(−Z−R=−CH2CH3)およびM.BcnIBによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
−Z−R=−CH2CH3による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図3のトレースa)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、16.9分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:278 [M+Na]+、162[N4−エチル−シトシン+Na]+は、N4−エチル−2’−デオキシシチジン(dCN4-Ethyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体3は、M.BcnIBの補因子として機能する。
【0166】
C.2 補因子4(−Z−R=−CH2CH2CH3)およびM.BcnIBによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析(比較例)
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの断片化(図3のトレースb)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAのみが明らかにされた。従って、AdoMet類縁体4は、M.BcnIBの補因子として機能しない。
【0167】
C.3 補因子5(−Z−R=−CH2CH=CH2)およびM.BcnIBによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
−Z−R=−CH2CH=CH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図3のトレースc)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、16.2分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:290 [M+Na]+、174[N4−プロペニル−シトシン+Na]+は、N4−プロペニル−2’−デオキシシチジン(dCN4-Propenyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体5は、M.BcnIBの補因子として機能する。
【0168】
C.4 補因子6(−Z−R=−CH2C≡CH)およびM.BcnIBによる処理後の二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド分析
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの断片化(図3のトレースd)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAのみが明らかにされた。従って、AdoMet類縁体6は、M.BcnIBの補因子として機能しない。
【0169】
[実施例3]
種々のクラスの補因子3−9およびDNAメチルトランスフェラーゼによる、長いDNAの配列特異的修飾
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.Taqlおよびその変種V21G、DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaIおよびその変種Q82A、DNAシトシン−N4メチルトランスフェラーゼM.BcnIB、およびDNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.SssIの変種Q142Aによる、補因子3−9からの、活性化エチル(−CH2CH3)、プロピル(−CH2CH2CH3)、プロプ−2−エニル(−CH2CH=CH2)、プロプ−2−イニル基(−CH2C≡CH)、ブト−2−イニル(−CH2C≡CCH3)、ペント−2−イニル(−CH2C≡CCH2CH3)、およびベンジル基(−CH2C6H5)の、ファージラムダDNA(48502塩基対)への転移動態を、DNA保護アッセイによって調べた。このアッセイでは、制限エンドヌクレアーゼの認識部位内の核酸塩基の、DNAメチルトランスフェラーゼ触媒修飾は、これらの酵素による断片化からそのDNAを保護することが可能であるという事実を利用する。DNA保護アッセイの原理を、DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqIおよび制限エンドヌクレアーゼR.TaqIを例として用いてスキーム8に図示する。5’−TCGA−3’認識配列を含む、未修飾DNAは、R.TaqIによって容易に断片化される。補因子の存在下M.TaqIによってDNA修飾されると、活性基Z−R修飾5’−TCGAZ-R−3’配列が形成され、その結果、R.TaqIは、この修飾されたDNAを断片化することができない。次に、断片化の出現をアガロースゲル電気泳動によって分析する。
【0170】
【化11】
【0171】
スキーム8
天然補因子1および補因子類縁体3−9と共に用いられる各種DNAメチルトランスフェラーゼの酵素活性を定量するために使用されるDNA保護アッセイの原理。DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqIに関する結合酵素アッセイが、5’−TCGA−3’配列におけるDNA修飾を分析するために制限エンドヌクレアーゼR.TaqIを用いて図示される(M.TaqIおよびR.TaqIの認識配列5’−TCGA−3’は、黒塗り四角で示される)。
【0172】
DNAメチルトランスフェラーゼの量を変えることによって、このアッセイを用い、補因子3−9と組み合わせた各種DNAメチルトランスフェラーゼの酵素活性を調べ、その結果を、天然補因子1と組み合わせた場合の酵素活性と比較することが可能となる。与えられた実験条件下で、制限エンドヌクレアーゼによる断片化から、1μgのファージDNAを完全に保護するのに必要な、最小量のDNAメチルトランスフェラーゼを、1酵素単位(u)と定義する。
【0173】
A.1 各種補因子1および3−9と組み合わせたM.TaqI(野生型酵素)の酵素活性
ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、ファージラムダDNA(1μg、31.3fmol、121 5’−TCGA−3’認識配列、3.78pmol認識配列、MBI Fermentas)、および天然補因子1(300μM)、または補因子類縁体3−9(300μM)を含む、バッファー(20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、および0.01%のトリトンX−100、pH7.9)に溶解したM.TaqI(Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125に記載される通りに調製)の2倍連続希釈液(200ng、4.18pmolから開始)(20μL)を60℃で4時間インキュベートした。その後、R.TaqI制限エンドヌクレアーゼ(40u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.166mg/mL)、およびバッファー(16.6mM Tris−酢酸塩、166mMの塩化ナトリウム、8.3mMの塩化マグネシウム、pH8.0)を含む溶液(30μL)を、各希釈液に加え、60−65℃でのインキュベーションを15分続けた。各サンプルに負荷バッファー(10μL、0.25%ブロムフェノール青、30%グリセロール)を加え、分液(12μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.TaqIの不在下、およびM.TaqIの存在下(200ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0174】
与えられた実験条件下において、天然補因子1または補因子類縁体3−9と組み合わせたM.TaqIについて下記の特異的活性が観察された(図4)、すなわち、1:40960u/μg;3:10u/μg;4:<5u/μg;5:80u/μg;6:10u/μg;7:1280u/μg;8:640u/μg;9:640u/μgである。これらの結果は、メチルよりも大きな化学基であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接する炭素−炭素二重結合(アリルシステム)、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)、または隣接芳香環(ベンジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性をもってM.TaqIによって転移が可能であることを示す。
【0175】
A.2 各種補因子1および3−9と組み合わせたM.TaqI変種V21Gの酵素活性
DNAおよび非反応性補因子類縁体(Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125)と複合体を形成するM.TaqIの三次元構造、および、天然補因子1(Labahn et al.、(1994) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 91、10957−10961)と複合体を形成するM.TaqIの三次元構造の比較から、V21は、延長したメチル基置換体を含む補因子類縁体と相互作用を持つには立体的に不利となることが示唆された。従って、V21のコドンを、標準的PCR突然変異発生法(Ho et al.、(1989) Gene 77、51−59)によってグリシンに対するコドンに変更したところ、完全な遺伝子の適正なDNA配列が、DNA配列決定によって確かめられた。V21G変種の発現および精製を、野生型酵素について記載されるものと同じやり方(Ho et al.、(1998) Nucleic Acids Res. 26、1076−1083; Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125)で実行した。V21G変種に関するDNA保護アッセイは、野生型について記載される通りに行った(実施例3A.1)。
【0176】
天然補因子1または補因子類縁体3−9と組み合わせたM.TaqI−V21Gについて下記の特異的活性が観察された(図5)、すなわち、1:320u/μg;3:5u/μg;4:<5u/μg;5:640u/μg;6:20u/μg;7:80u/μg;8:80u/μg;および9:2560u/μgである。M.TaqIのV21G変種は、補因子5および9において、天然補因子1よりも活性が高い。さらに、V21G変種は、補因子5、6、および9において、野生型酵素よりもはっきりと高い活性を持つ。
【0177】
B.1 各種補因子1および3−8と組み合わせたM.HhaI(野生型酵素)の酵素活性
ウシ血清アルブミン(0.2mg/mL)、ファージラムダDNA(1.16μg、36.3fmol、215 5’−GCGC−3’認識配列、7.8pmol認識配列、MBI Fermentas)、および天然補因子1(300μM)、または補因子類縁体3−8(300μM)を含む、バッファー(補因子3−5、7および8では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH6.0)に溶解したM.HhaI(Kumar et al.、(1992) Biochemistry 31、8648−8653 and Klimasauskas et al.、(1998) EMBO J. 17、317−324に記載される通りに調製)の2倍連続希釈液(278ng、7.5pmolから開始)(15μL)を37℃で4時間インキュベートした。その後、80℃で10分加熱して反応を停止させた。R.Hin6I(M.HhaIと同じ配列を認識する制限エンドヌクレアーゼであるが、修飾されたDNAは切断しない)(12u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、およびバッファー(33mM Tris−酢酸塩、66mMの酢酸カリウム、26.5mMの塩化マグネシウム、pH7.9)を含む溶液(10μL)を、各希釈液に加え、37℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに橙色負荷染料液(5μL、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.HhaIの不在下、およびM.HhaIの存在下(278ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0178】
与えられた実験条件下において、天然補因子1または補因子類縁体3−8と組み合わせたM.HhaIについて下記の特異的活性が観察された(図6)、すなわち、1:460u/μg;3:<4u/μg;4:0u/μg;5:7u/μg;6:<4u/μg;7:29u/μg;および8:<4u/μgである。これらの結果は、メチルよりも大きな化学基であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接する炭素−炭素二重結合(アリルシステム)、または、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性をもってM.HhaIによって転移が可能であることを示す。
【0179】
B.2 各種補因子1および3−8と組み合わせたM.HhaI変種Q82Aの酵素活性
M.HhaI変種Q82A(実施例2B参照)に関するDNA保護アッセイは、野生型について記載される通りに行った(実施例3B.1)。
【0180】
天然補因子1または補因子類縁体3−8と組み合わせたM.HhaI−Q82Aについて下記の特異的活性が観察された(図7)、すなわち、1:115u/μg;3:7u/μg;4:0u/μg;5:29u/μg;6:<4u/μg;7:58u/μg;および8:<4u/μgである。Q82A変種は、大型の、メチル基置換体を担持する補因子においても(補因子4を例外として)、野生型M.HhaIと比べより高い活性を有する。
【0181】
C 各種補因子1および3−8と組み合わせたM.BcnIB(野生型酵素)の酵素活性
ウシ血清アルブミン(0.2mg/mL)、ファージラムダDNA(1.10μg、34.4pmol、114 5’−CCSGG−3’認識配列、S=CまたはG、3.9pmol認識配列、MBI Fermentas)、および天然補因子1(300μM)、または補因子類縁体3−8(300μM)を含む、バッファー(補因子3−5、7および8では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH6.0)に溶解したM.BcnIBの2倍連続希釈液(144ng、3.8pmolから開始)(15μL)を37℃で4時間インキュベートした。その後、80℃で10分加熱して反応を停止させた。R.BcnI(12u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、およびバッファー(33mM Tris−酢酸塩、66mMの酢酸カリウム、26.5mMの塩化マグネシウム、pH7.9)を含む溶液(10μL)を、各希釈液に加え、37℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに橙色負荷染料液(5μL、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.BcnIBの不在下、およびM.BcnIBの存在下(144ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0182】
与えられた実験条件下において、天然補因子1または補因子類縁体3−8と組み合わせたM.BcnIBについて下記の特異的活性が観察された(図8)、すなわち、1:444u/μg;3:<7u/μg;4:<7u/μg;5:<7u/μg;6:0u/μg;7:28u/μg;および8:14u/μgである。これらの結果は、メチルよりも大きな化学基であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性をもってM.BcnIによって転移が可能であることを示す。
【0183】
D. 各種補因子1、5、および7と組み合わせたM.SssI変種Q142Aの酵素活性
M.SssIは、DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼであり、短い2本鎖5’−CG−3’ DNA配列を認識する。野生型酵素は、補因子3−6とはほとんど何も酵素活性を示さない。しかしながら、M.SssIの三次元構造モデル(Koudan et al.、(2004) J.Biomol.Struct.Dyn. 22、339−346)から、Q142(M.HhaIにおけるQ82と相同である)は、延長したメチル基置換体を含む補因子類縁体と相互作用を持つには立体的に不利となることが示唆された。従って、Q142のコドンを、標準的PCR突然変異発生法(Ho et al.、(1989) Gene 77、51−59)によってアラニンに対するコドンに変更したところ、完全な遺伝子の適正なDNA配列が、DNA配列決定によって確かめられた。
【0184】
ファージラムダDNA(1μg、31.3fmol、3113 5’−CG−3’認識配列、97pmol認識配列、MBI Fermentas)、および天然補因子1(300μM)、または補因子類縁体5および7(300μM)を含む、バッファー(10mM Tris−塩酸、50mMの塩化ナトリウム、1mMのジチオスレイトール、pH7.9)に溶解したM.SssI−Q142Aの2倍連続希釈液(3300ng、73pmolから開始)(20μL)を37℃で4時間インキュベートした。その後、65℃で20分加熱して反応を停止させた。塩化マグネシウム(1μL、200mM)、およびR.BstUI制限エンドヌクレアーゼ(1μL、10u、New England Biolabs)を含む溶液を、各希釈液に加え、60℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに負荷バッファー(10μL、0.25%ブロムフェノール青、30%グリセロール)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。補因子無添加の下で実行した並行的コントロール実験は、ファージラムダDNAの完全な保護をもたらさなかった。
【0185】
与えられた実験条件下において、天然補因子1または補因子類縁体5および7と組み合わせたM.SssI−Q142Aについて下記の特異的活性が観察された(図9)、すなわち、1:20u/μg;5:1.2u/μg;および7:0.6u/μgである。これらの結果は、メチルよりも大きな化学基であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性を持つM.SssIのQ142A変種によって転移が可能であることを示す。
【0186】
[実施例4]
配列特異的2工程DNA標識化
一次アミノ基(補因子類縁体10)を含む活性化側鎖を、DNAメチルトランスフェラーゼ触媒によって転移し、次いで、アミン反応性蛍光標識による化学選択的修飾によって配列特異的DNA標識化を実現した(2工程標識化)。
【0187】
A. 補因子類縁体10の合成
側鎖に一次アミノ基を有する補因子10(Z=−CH2およびR=−C≡CCH2NHCOCH2−CH2CH2NH2)の化学的合成を、スキーム9に示すように実行した。
【0188】
【化12】
【0189】
スキーム9
本発明による補因子10の化学合成
【0190】
A.1 4−アミノブト−2−イン−1−オル塩酸、化合物11
メタノール(150mL)に溶解した、4−フタルイミドブト−2−イン−1−オル(7.66g、35.6mmol、Thomson、et al.、(2003) Synth.Commun. 33、3631−3641に従って調製)に、ヒドラジン水化物(3.46mL、71.2mmol)を加えた。この反応混合液を還流しながら2時間加熱し、室温に冷却後、溶媒を減圧留去した。水とエタノール(100mL、1:1混合物)および濃塩酸(100mL)を残留物に加えた。この混合物を還流しながら20分加熱し、沈殿をろ過によって除去した。ろ液を減圧下に濃縮し、得られた残留物をメタノールから再結晶させたところ、化合物11が、白色固体として得られた(3.57g、82%)。
1H−NMR(300MHz、D2O): δ=3.77(t、4J=2.0Hz、2H、CH2)、4.18(t、4J=2.0、2H、CH2); 13C−NMR(75MHz、D2O): δ=32.09、52.23、79.15、87.96.
【0191】
A.2 4−[(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンアミド]ブト−2−イン−1−オール、化合物12
4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ブタン酸(5.20g、25.6mmol、Houssin et al.、(1988) Synthesis 3、259−261の同様にして調製)を、無水テトラヒドロフラン(20mL)に溶解し、カルボキシジイミダゾール(CDI)(4.56g、28.1mmol)を加えた。得られた透明溶液を室温で2時間攪拌した。次に、一次アミン11(3.11g、25.6mmol)およびトリエチルアミン(7.10mL、50.9mmol)を加え、室温で2時間攪拌を続けた。溶媒を減圧留去し、未精製産物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、40g、クロロフォルム/酢酸エチル 1:1)で精製したところ、化合物12が淡黄色油状物(3.59g、52%)として得られた(Rf 0.3、クロロフォルム/酢酸エチル 1:1)。
1H−NMR(300MHz、CDCl3): δ=1.41(s、9H、CH3)、1.78(quint、3J=6.8Hz、2H、CH2)、2.22(t、3J=7.1Hz、2H、CH2)、3.13(q、3J=6.4Hz、2H、CH2)、4.03−4.09(m、2H、CH2)、4.09−4.14(m、2H、CH2)、4.84(br.s、1H、NH)、6.67(br.s、1H、NH); 13C−NMR(75MHz、CDCl3): δ=26.38、28.64、29.62、33.52、40.05、50.74、79.63、81.22、81.86、153.87、171.53.
【0192】
A.3 4−[(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンアミド]ブト−2−イニル、化合物13
塩化メチレン(15mL)に溶解したアルコール12(1.0g、3.7mmol)の溶液に、4−ニトロベンゼンスルフォニルクロリド(0.90g、4.07mmol)および水酸化ナトリウム(0.74g、18.5mmol)を0℃で加えた。得られた溶液を室温で3時間攪拌した。次に、冷水(20mL)を加え、反応混合液を塩化メチレン(3x10mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムの上で乾燥させた。ろ過後、溶媒を減圧留去したところ、化合物13(0.93g、55%)が、淡黄色固体として得られた。
1H−NMR(300MHz、CDCl3): δ=1.43(s、9H、CH3)、1.76(quint、3J=6.6Hz、2H、CH2)、2.19(t、3J=7.1、2H、CH2)、3.13(q、3J=6.4Hz、2H、CH2)、3.92(dt、4J=1.8Hz、3J=5.3Hz、2H、CH2)、4.74(br.s、1H、NH)、4.83(t、4J=1.8Hz、2H、CH2)、6.61(br.s、1H、NH)、8.09−8.17(m、2H、arom. H)、8.38−8.45(m、2H、arom. H); 13C−NMR(75MHz、CDCl3): δ=26.96、28.64、29.26、33.37、39.66、59.33、74.19、79.89、87.08、124.69、129.74、142.36、151.20、162.76、172.64.
【0193】
A.4 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]−4−[4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−ブタンアミド]ブト−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、化合物14
S−アデノシル−L−ホモシステイン(2)(20mg、52μmol)を、ギ酸および酢酸の1:1混合液(0.4mL)に溶解し、スルフォン酸塩13(16当量)を0℃で加えた。溶液を放置して室温に温め、振とうしながら室温でインキュベートした。補因子7および8に関し、反応の進行を、実施例1に記載する通りに分析的逆相HPLCによって分析した。ただし、化合物は、Discovery HS C18逆相カラム(75x2.1mm、3μm、Supelco、ドイツ)、Supelguard Discovery HS C18プレカラム(20x2.1mm、5μm)装備を用い、30℃でメタノール勾配(80%まで5分、次に80%で3分)で溶出した。
【0194】
8時間後、水(4mL)を加えて反応を停止させ、水相をジエチルエーテル(3x4mL)で抽出した。化合物14を含む水相を減圧留去し、得られた淡褐色油をギ酸アンモニウムバッファー(10mL、20mM、pH3.5)に溶解した。精製は、予備的逆相HPLC(Discovery HS C18 150x10mm、5μmで、Supelguard Discovery HS C18、18x10mm、5μmプレカラム装備、Supelco,ドイツ)によって実行した。化合物は、ギ酸アンモニウム水溶液(20mM、pH3.5)に溶解したメタノール(直線勾配で10%から13.2%まで9分、80%まで2分、次に80%で2分)によって30℃、4.0mL/分の流速において溶出し、210nm、260nmおよび280nmにおいて検出した。産物14、および硫黄におけるそのエピマーは、それぞれ、9.3分および8.8分の保持時間で溶出した。分画を含む産物を収集し、溶媒を手早く減圧留去した。
ESI−MS m/z(相対強度): 637.3(100)[M]+、536.2(15)[5’−(4−(4−(tert.−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンアミド)ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+、558.2(12)[5’−(4−(4−(tert.−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンアミド)ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシ−アデノシン+Na]+、250.1(10)[5′−デオキシアデノシン]+.
【0195】
A.5 5’−[(S)−[(3S)−3−アミノ−3−カルボキシプロピル]−4−[4−アミノブタンアミド]ブト−2−イニルスルフォニオ]−5’−デオキシアデノシン、補因子10
化合物14を水に溶解し、2容量のトリフルオロ酢酸を加えて脱保護を実行した。反応の進行を分析的逆相HPLC(実施例4A.4を参照)にて分析したところ、補因子10は、3.2分の保持時間で溶出した。室温で1時間インキュベーション後、溶媒を減圧留去し、残留物を、ギ酸アンモニウム水溶液(20mM、pH3.5)に溶解した。
【0196】
逆相カラムクロマトグラフィー(逆相シリカゲル100 C18、Fluka)によって精製を実行し、化合物を、5%アセトニトリルを含むギ酸アンモニウムバッファー(20mM、pH3.5)によって溶出した。分画を含む産物を収集し、溶媒を減圧留去し、残留物を水に溶解した。産物10の量(2.5μmol、最後の2工程では5%)は、アデニン発色団の260nmにおける消滅係数15400Lmol-1cm-1を用いUV分光光度計測によって定量した。
ESI−MS m/z(相対強度): 537.3(25)[M]+、458.1(33)[5’−(4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+Na]+、436.2(100)[5’−(4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル)チオ−5’−デオキシアデノシン+H]+.
【0197】
B. 種々のクラスの補因子10およびDNAメチルトランスフェラーゼによる、短い二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの配列特異的修飾
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.Taql、およびDNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaIの変種Q82A/N304Aによる、補因子10からの、活性化4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル基(Z−R=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2)の転移は、先ず、基質として短い二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドを用いて調べた。酵素転移の後、この二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドを酵素的に断片化し、得られた修飾ヌクレオシドを、ESI−MS結合の逆相HPLCによって分析した。
【0198】
B.1 M.TaqIによる、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド内のアデニン−N6の修飾
半メチル化二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.II(実施例2Aのスキーム5を参照)は、水に溶解した、等モル量の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドI(5’−GCCGCTCGATGCCG−3’)およびII(5’−CGGCATCGAMeGCGGC−3’、AMe=N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)を混ぜ合わせ、85℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産した。酵素による修飾は、バッファー(20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、0.01%のトリトンX−100、pH7.9)において、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.II(10μM)を、補因子10(300μM)、およびM.TaqI(12.5μM、Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125の記載の通りに製造)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって実行した。溶液を95℃で10分加熱し、プロテイナーゼKを添加し、55℃で10分インキュベートした。加水分解産物をゲルろ過(G−25カラム、Amersham Biosciences)によって除去した。
【0199】
得られた溶液を、ヌクレア−ゼP1(1.14u、Sigma、Taukirchen、ドイツ)、および仔ウシ小腸アルカリフォスファターゼ(18u、MBI Fermantas)を含むバッファー(1/10容量、100mM Tris−塩酸、100mMの塩化マグネシウム、10mMの酢酸亜鉛、pH7.5)に溶解し、42℃で4時間インキュベートし、Microcon YM−3スピンカラム(Amicon)に通過させた。ヌクレオシドを、逆相HPLC(Discovery HS C18 20x2.1mm、5μm、プレカラム、Supelco,ドイツ)−質量分析検出器(HP 1100シリーズESI−MS、単一四重極装備)によって分析した。化合物は、ギ酸アンモニウムバッファー(20mM、pH3.5)に溶解したエタノール(0%で3分、その後直線勾配で20%まで15分、80%まで2分)で流速0.3mL/分で溶出した。オンライン質量分析検出のために、ポストカラム移動相修飾(96%メタノール、4%ギ酸、および1mMの水酸化ナトリウムとの等量共同流)を用い、2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシシチジンおよびその誘導体の検出効率を上げた。質量スペクトラムを、50−600m/z範囲で記録した。
【0200】
−Z−R=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-RIIの断片化(図10、上段のトレースa)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAMeの外に、dAMeよりも長い(19.1分)の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:426 [M+Na]+、310[N6−(4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル)アデニン+Na]+)は、N6−[4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル]−2’−デオキシアデノシン(dA4-(4-Aminobutanamido)but-2-ynylと一致した。従って、AdoMet類縁体3は、M.BcnIBの補因子として機能する。この修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-RIIの、実験的に求められたヌクレオチド組成は、理論的ヌクレオチド組成(括弧の中に示す)とよく一致することが認められた。dC 10.2(11)、dG 11.8(11)、dT 3.0(3)、dA 1.0(1)、dAMe 1.0(1) dA4-(4-Aminobutanamido)but-2-ynyl1.1(1)。従って、AdoMet類縁体10は、M.TaqIの補因子として機能する。
【0201】
B.2 M.HhaI変種Q82A/N304Aによる、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド内のシトシン−C5の修飾
DNA、および天然補因子AdoMet 1(PDB同上:6MHT;Kumar et al.、(1997) Nucleic Acids Res. 25、2773−2783)と複合体を形成するM.HhaIの三次元構造は、N304(Q82に加えて)が、延長したメチル基置換体を含む補因子類縁体と相互作用を持つには立体的に不都合である可能性を示唆した。従って、N304のコドンを、標準的メガプライマーPCR突然変異発生法(Sambrook and Russell、(2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press、13.31−13.35)によってアラニンに対するコドンに変更し、この突然変異を含む断片を、Q82A突然変異を含むプラスミドでクローンした(実施例2B、実施例3B.2)。完全な遺伝子の適正なDNA配列が、DNA配列決定によって確かめられた。Q82A/N304A変種の発現および精製を、野生型酵素について記載されるものと同じやり方(Kumar et al.、(1992) Biochemistry 31、8648−8653; Kimasauskas et al.、(1998) EMBO J. 17、317−324)で実行した。アミノ酸置換の存在は、精製M.HhaI−Q82A/N304Aの質量分析によって確かめられた。
【0202】
二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IVは、水に溶解した、等モル量(2.5nmol)の、相補的な1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII(5’−CATTACGCGCCGGGTCCTGGCTAT−3’)およびIV(5’−ATAGCCAGGACCCGGCGCGTAATG−3’)を混ぜ合わせ、85℃で5分加熱し、室温にゆっくりと冷却することによって生産された。酵素による修飾は、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIII.IV(12.5μM)を、バッファー(補因子3−5、7、および8では、50mM Tris−塩酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH7.4であり;補因子6では、25mMの3−モルフォリノ−プロパンスルフォン酸、25mMの2−モルフォリノ−エタンスルフォン酸、10mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、0.2mg/mLのウシ血清アルブミン、pH6.0)に溶解した、補因子3−8(300μM)、およびM.HhaI(15μM)と共に37℃で一晩インキュベーションすることによって調べた。M.HhaI−Q82Aは、80℃で10分加熱し、プロテイナーゼKを加え、55℃で2時間インキュベーションした。加水分解産物は、ゲルろ過によって除去した(G−25カラム、Amersham Biosciences)。酵素断片化および、得られたヌクレオシドのESI−MS−結合逆相HPLC分析は、実施例4B.1に記載する通りに実行した。
【0203】
−Z−R=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2による、修飾された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-Rの断片化(図10の曲線a、下段)から、天然のヌクレオシドdC、dG、dT、およびdAの外に、11.5分の保持時間を持つ新規化合物のあることが明らかにされた。この新規化合物を、結合ESI−MSによって分析したところ、観察された質量(m/z:402 [M+Na]+、286[C5−(4−(4−アミノブタン−アミド)ブト−2−イニル)シトシン+Na]+は、C5−[4−(4−アミノブタン−アミド)ブト−2−イニル]2’−デオキシシチジン(dCC5-[4-(4-Aminobutanamido)but-2-ynyl)と一致した。従って、AdoMet類縁体10は、M.HhaI−Q82A/N304Aの補因子として機能する。
【0204】
C. 補因子10および種々のクラスのDNAメチルトランスフェラーゼによる、長いDNAの配列特異的修飾
補因子10と組み合わせた、DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqI、およびDNAシトシン−C5メチルトランスセラーゼM.HhaI変種Q82A/N304Aの酵素活性を、DNA保護アッセイ(実施例3、スキーム8を参照)を用いて調べた。
【0205】
C.1 補因子10と組み合わせたM.TaqI(野生型酵素)の酵素活性
ファージラムダDNA(1.03μg、32.3fmol、121 5’−TCGA−3’認識配列、3.91pmol認識配列、MBI Fermentas)、および補因子類縁体10(300μM)を含む、バッファー(20mM Tris−酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、および0.01%のトリトンX−100、pH7.9)に溶解したM.TaqI(Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125に記載される通りに調製)の2倍連続希釈液(180ng、3.75pmolから開始)(15μL)を60℃で1時間インキュベートした。その後、R.TaqI制限エンドヌクレアーゼ(10u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、およびバッファー(33mM Tris−酢酸塩、66mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、pH7.9)を含む溶液(10μL)を、各希釈液に加え、65℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに橙色負荷染料液(5μL、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.TaqIの不在下、およびM.TaqIの存在下(180ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0206】
与えられた実験条件下において、補因子類縁体10(図11、左)と組み合わせたM.TaqIの特異的活性は、11u/μgであった。実施例3A.1に示す補因子1、3−9について得られたM.TaqIの特異的活性と比較する場合、この数字に4という倍数を掛けなければならない。なぜなら、M.Taqとのインキュベーションは1時間しかなく、実施例3A.1で用いた4時間ではなかったからである。この得られた結果は、延長し、アミノ官能基を持つ側鎖であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、相当の活性をもってM.TaqIによって転移が可能であることを示す。
【0207】
C.2 補因子10と組み合わせたM.HhaI変種Q82A/N304Aの酵素活性
ウシ血清アルブミン(0.2mg/mL)、ファージラムダDNA(1.16μg、36.3fmol、215 5’−GCGC−3’認識配列、7.8pmol認識配列、MBI Fermentas)、および補因子類縁体10(300μM)を含む、バッファー(50mM Tris−塩酸、15mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH7.4)に溶解したM.HhaI変種Q82A/N304A(実施例4B.2に記載される通りに調製)の2倍連続希釈液(1100ng、30pmolから開始)(15μL)を37℃で1時間インキュベートした。その後、80℃で10分加熱して反応を停止させた。R.Hin6I(M.HhaIと同じ配列を認識する制限エンドヌクレアーゼであるが、修飾されたDNAは切断しない)(12u、MBI Fermentas)、ウシ血清アルブミン(0.1mg/mL)、およびバッファー(33mM Tris−酢酸塩、66mMの酢酸カリウム、26.5mMの塩化マグネシウム、pH7.9)を含む溶液(10μL)を、各希釈液に加え、37℃でのインキュベーションを1時間続けた。各サンプルに橙色負荷染料液(5μL、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、分液(15μL)を、保護の程度について、アガロースゲル(1%)電気泳動によって分析した。並行的なコントロール実験を、M.HhaI−Q82A/N304Aの不在下、およびM.HhaI−Q82A/N304Aの存在下(1100ng)におけるファージラムダDNAについて実行した。
【0208】
補因子10と組み合わせたM.HhaI変種Q82A/N304A(図11右側)は、ほぼ完全にファージラムダDNAを保護した。この結果は、延長し、アミノ官能基付き側鎖であっても、スルフォニウム中心直近の炭素が、隣接炭素−炭素三重結合(プロパルジルシステム)によってさらに活性化されると、M.HhaI−Q82A/N304Aによって転移が可能であることを示す。
【0209】
D. 補因子10および異なるクラスのDNAメチルトランスフェラーゼによる、pBR322プラスミドDNAの配列特異的2工程標識化
DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqI、およびDNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaI変種Q82A/N304Aを触媒として用い、補因子10から、活性化4−(4−アミノブタンアミド)ブト−2−イニル基(−Z−R=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2)の第1の配列特異的転移を行い、次に、6−(フルオレセイン−5(および−6)カルボキサミド)ヘキサン酸N−ヒドロキシスクシニミジルエステルを、配列特異的に修飾されたpBR322プラスミドDNAの一次アミノ基と第2反応させることによって長いプラスミドDNAの配列特異的標識化を実行した(スキーム10)。DNA標識化の配列特異性は、標識されたpBR322プラスミドDNAを各種制限エンドヌクレアーゼによって断片化し、得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって分離し、そのアガロースゲルを蛍光画像記録することによって確かめた(図12)。
【0210】
【化13】
【0211】
スキーム10
本発明による、DNAの、配列特異的2工程蛍光標識表示
【0212】
D1. DNAアデニン−N6メチルトランスフェラーゼM.TaqIによる、pBR322プラスミドDNAの5’−TCGA−3’ DNAに対する、補因子10からの配列特異的転移
pBR322プラスミドDNA(20.4μg、7.14pmol、7 5’−TCGA−3’ 認識配列、50pmol認識配列、MBI Fermentas)、M.TaqI(2.39μg、50pmol、Goedecke et al.、(2001) Nature Struct.Biol. 8、121−125の記載の通りに調製)、および補因子類縁体10(300μM)を、バッファー(100μL、20mMのTris酢酸塩、50mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、1mMのジチオスレイトール、および0.01% 還元済みTritonX−100、pH7.9)において60℃で4時間インキュベートした。その後、この反応混合液から、フェノール液、クロロフォルム、およびイソアミルアルコール(1x100μL)の25:24:1混合液を有するフェノール液(1x100μL)、およびクロロフォルム(3x100μL)で抽出した。水相に、酢酸ナトリウム(10μL、3M、pH7.0)およびイソプロパノール(80μL)を加えた。沈殿を、15000gにおいて室温で15分の遠心によって収集した。上清を除去し、ペレットを、エタノール水溶液(100μL、75%)で洗浄した。ペレットを乾燥し、水に溶解した(100μL)。
【0213】
D2. DNAシトシン−C5メチルトランスフェラーゼM.HhaI変種Q82A/N304Aによる、pBR322プラスミドDNAの5’−GCGC−3’ DNAに対する、補因子10からの配列特異的転移
pBR322プラスミドDNA(23.1μg、8.06pmol、31 5’−GCGC−3’ 認識配列、250pmol認識配列、MBI Fermentas)、M.HhaI 変種Q82A/N304A(9.25μg、250pmol、実施例4B.2の記載の通りに調製)、および補因子類縁体10(300μM)を、ウシ血清アルブミン(0.2mg/mL)を含むバッファー(100μL、50mMのTris塩酸、15mMの塩化ナトリウム、0.5mMのエチレンジアミンテトラ酢酸、2mMの2−メルカプトエタノール、pH7.4)において37℃で4時間インキュベートした。その後、この反応混合液から、フェノール液、クロロフォルム、およびイソアミルアルコール(1x100μL)の25:24:1混合液を有するフェノール液(1x100μL)、およびクロロフォルム(3x100μL)で抽出した。水相に、酢酸ナトリウム(10μL、3M、pH7.0)およびイソプロパノール(80μL)を加えた。沈殿を、15000gで室温において15分の遠心によって収集した。上清を除去し、ペレットを、エタノール水溶液(100μL、75%)で洗浄した。ペレットを乾燥し、水に溶解した(100μL)。
【0214】
D3. M.TaqI−およびM.HhaI−Q82A/N304A修飾pBR322プラスミドDNAの蛍光標識化
実施例4D.1または4D.2において得られた、修飾されたpBR322プラスミドDNA、6−(フルオレセイン−5(および−6)−カルボキサミド)ヘキサン酸N−ヒドロキシ−スクシニミジルエステル(222μg、368nmol、あらかじめジメチルスルフォキシドに溶解させたもの)、および、炭酸水素ナトリウム(0.15M、pH9.0)を含む溶液(90μL)を、暗黒で室温で1時間インキュベートした。その後、この反応混合液を、NAP5カラム(Amersham Biosciences)を通過させ、イソプロパノール(4/5容量)を加えてプラスミドDNAを沈殿させた。沈殿を、15000gで室温において15分の遠心によって収集した。上清を除去し、ペレットを、エタノール水溶液(2x100μL、75%)で洗浄した。ペレットを乾燥し、水に溶解した(40μL)。
【0215】
D.4 蛍光標識pBR322プラスミドDNAの分析
実施例4D.3において得られた修飾されたpBR322プラスミドDNA(3μL)を、メーカーの指示に従って、各種制限エンドヌクレアーゼ、または制限エンドヌクレアーゼの組み合わせ(R.Xcel、R.MbiI+R.Eco88I、R.BpiI+R.BseSI、R.BpiI+R.PvulI、およびR.GsuI、MBI Fermentas)によって断片化した。その後、プロテイキナーゼK(2mg/mL)、およびドデシル硫酸ナトリウム(1%)の溶液(1/5容量)を各断片化反応液に加え、サンプルを55℃で30分インキュベートした。各サンプルに橙色負荷染料液(1/6容量、0.2%オレンジG、0.05%キシレンシアノールFF、60mMエチレンジアミンテトラ酢酸、60%グリセロール、MBI Fermentas)を加え、DNA断片を、臭化エチジウム無添加下、アガロースゲル(1.5%)電気泳動(10V/cm)によって分離した。アガロースゲルは、473nmレーザーおよびLPBフィルターセット使用によるFujiゲル画像化システムFLA−5100によって走査した(図12上段)。その後、アガロースゲルを臭化エチジウムで染色し、比較のために再び走査した(図12上段)。
【0216】
M.TaqIによるpBR322修飾体から得られたもので、M.TaqI認識配列を全く含まないDNA断片は、臭化エチジウム染色不在下では視認されなかった(図12、白楕円で示す)。さらに、個別のDNA断片の蛍光強度は、これらの断片におけるM.TaqIまたはM.HhaI認識配列の数とよく相関していた(表5)。これらの結果は、AdoMet類縁体10の存在下にM.TaqIまたはM.HhaI−Q82A/N304Aによってアミノ修飾されたDNAは、N−ヒドロキシスクシニミジルエステルによって標識されること、および、標識化は配列特異的であることを示す。
【0217】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、補因子3−9およびM.TaqI(dAMe=N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)による処理後に得られる、酵素的に断片化された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIのHPLC分析である。dAZ-Rでは、化学基Z−Rが、dAのN6位置に付着する。曲線(a):Z=CH2およびR=−CH3を有する補因子3;曲線(b):Z=CH2およびR=−CH2CH3を有する補因子4;曲線(c):Z=CH2およびR=−CH=CH2を有する補因子5;曲線(d):Z=CH2およびR=−C≡CHを有する補因子6;曲線(e):Z=CH2およびR=−C≡CCH3を有する補因子7;曲線(f):Z=CH2およびR=−C≡C−CH2CH3を有する補因子8;および、曲線(g):Z=CH2およびR=−C6H5を有する補因子9。
【図2】図2は、補因子3−9およびM.HhaI−Q23Aによる処理後に得られる、酵素的に断片化された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(III.IV)Z-RのHPLC分析である。dCZ-Rでは、化学基Z−Rが、dCのC5位置に付着する。曲線(a):Z=CH2およびR=−CH3を有する補因子3;曲線(b):Z=CH2およびR=−CH2CH3を有する補因子4;曲線(c):Z=CH2およびR=−CH=CH2を有する補因子5;曲線(d):Z=CH2およびR=−C≡CHを有する補因子6;曲線(e):Z=CH2およびR=−C≡CCH3を有する補因子7;および、曲線(f):Z=CH2およびR=−C≡C−CH2CH3を有する補因子8。
【図3】図3は、補因子3−6およびM.BcnIBによる処理後に得られる、酵素的に断片化された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(V.VI)Z-RのHPLC分析である。dCZ-Rでは、化学基Z−Rが、dCのN4位置に付着する。曲線(a):Z=CH2およびR=−CH3を有する補因子3;曲線(b):Z=CH2およびR=−CH2CH3を有する補因子4;曲線(c):Z=CH2およびR=−CH=CH2を有する補因子5;および、曲線(d):Z=CH2およびR=−C≡CHを有する補因子6。
【図4】図4は、天然補因子1、または補因子類縁体3−9から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.TaqI触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.TaqI(レーン1において200ngで開始し、レーン1から19において2倍連続希釈)と4時間インキュベートし、次に、R.TaqIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.TaqIおよび補因子無添加(C1はR.TaqI無添加、およびC4はR.TaqI添加)、および、M.TaqI添加(C2はR.TaqI無添加、およびC3はR.TaqI添加)の下におこなった。R.TaqIによる、ファージラムダDNAの完全な断片化は、M.TaqI無添加条件下において全ての補因子ついて観察された(データ図示せず)。
【図5】図5は、天然補因子1、および補因子類縁体3−9から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.TaqI変種V21G−触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.TaqI−V21G(レーン1において200ngで開始し、レーン1から21において2倍連続希釈)と4時間インキュベートし、次に、R.TaqIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.TaqI−V21Gおよび補因子無添加(C1はR.TaqI無添加、およびC4はR.TaqI添加)、および、M.TaqI−V21G添加(C2はR.TaqI無添加、およびC3はR.TaqI添加)の下におこなった。R.TaqIによる、ファージラムダDNAの完全な断片化は、M.TaqI−V21G無添加条件下において全ての補因子ついて観察された(データ図示せず)。
【図6】図6は、天然補因子1、または補因子類縁体3−8から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.HhaI触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1.16μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.HhaI(レーン1において278ngで開始し、レーン1から20において2倍連続希釈;レーン0ではM.HhaI無添加)と4時間インキュベートし、次に、R.Hin6Iによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.HhaIおよび補因子無添加(C1はR.Hin6I無添加、およびC2はR.Hin6I添加)、および、M.HhaI添加(C3はR.Hin6I添加)の下におこなった。
【図7】図7は、天然補因子1、または補因子類縁体3−8から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.HhaI変種Q82A触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1.16μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.HhaI−Q82A(レーン1において278ngで開始し、レーン1から20において2倍連続希釈;レーン0ではM.HhaI−Q82A無添加)と4時間インキュベートし、次に、R.Hin6Iによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.HhaI−Q82Aおよび補因子無添加(C1はR.Hin6I無添加、およびC2はR.Hin6I添加)、および、M.HhaI−Q82A添加(C3はR.Hin6I添加)の下におこなった。
【図8】図8は、天然補因子1、または補因子類縁体3−8から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.BcnIB触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1.1μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.BcnIB(レーン1において144ngで開始し、レーン1から20において2倍連続希釈;レーン0ではM.BcnIB無添加)と4時間インキュベートし、次に、R.BcnIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.BcnIBおよび補因子無添加(C1はR.BcnI無添加、およびC2はR.BcnI添加)、および、M.BcnIB添加(C3はR.BcnI添加)の下におこなった。
【図9】図9は、天然補因子1、および補因子類縁体5および7から、ファージラムダDNAに向かう、各種化学基Z−Rの、M.SssI変種Q142A触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。DNA(1μg)および補因子(300μM)を、先ず、様々な量のM.SssI−Q142A(レーン1において3300ngで開始し、レーン1から14において2倍連続希釈;レーン0ではM.HhaI−Q82A無添加)とインキュベートし、次に、R.BstUIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、補因子無添加の下におこなった。
【図10】図10は、補因子10と組み合わせたDNAメチルトランスフェラーゼ触媒修飾後に得られる、酵素的に断片化された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドのHPLC分析である。上段:M.TaqIおよび補因子10による処理後に得られた二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(曲線a)、および、コントロールとして補因子10無添加においてM.TaqIとインキュベートした二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.IIの断片化(曲線b)。dAZ-Rでは、化学基Z−Rが、dAのN6位置に付着し、Z=CH2、およびR=−CH2C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2(dAMe =N6−メチル−2’−デオキシアデノシン)である。下段:M.HhaI−Q82A/N304Aおよび補因子10による処理後に得られた二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドIZ-R.IIの断片化(曲線a)、および、コントロールとして補因子10無添加においてM.HhaI−Q82A/N304Aとインキュベートした二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドI.IIの断片化(曲線b)。dCZ-Rでは、化学基Z−Rが、dCのC5位置に付着し、Z=CH2、およびR=−C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2である。
【図11】図11は、補因子類縁体10から、ファージラムダDNAに向かう、化学基Z−Rの、DNAメチルトランスフェラーゼ触媒による転移に関するDNA保護アッセイを示す。ここに、Z=CH2、およびR=−C≡CCH2NHCOCH2CH2CH2NH2である。左:DNA(1.03μg)および補因子10(300μM)を、先ず、様々な量のM.TaqI(レーン1において180ngで開始し、レーン1から9において2倍連続希釈、レーン0ではM.TaqI無添加)と1時間インキュベートし、次に、R.TaqIによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.TaqIおよび補因子10無添加(C1はR.TaqI無添加、およびC2はR.TaqI添加)、および、M.TaqI添加(C3はR.TaqI添加)の下におこなった。右:DNA(1.16μg)および補因子10(300μM)を、先ず、様々な量のM.HhaI−Q82A/N304A(レーン1において1100ngで開始し、レーン1から9において2倍連続希釈、レーン0ではM.HhaI−Q82A/N304A無添加)と1時間インキュベートし、次に、R.Hin6Iによる断片化を経過させた。ファージラムダDNAによる並行的コントロール実験を、M.HhaI−Q82A/N304Aおよび補因子10無添加(C1はR.Hin6I無添加、およびC2はR.Hin6I添加)、および、M.HhaI−Q82A/N304A添加(C3はR.Hin6I添加)の下におこなった。
【図12】図12は、本発明による、pBR322プラスミドDNAの、配列特異的2工程蛍光標識表示を示す。pBR322プラスミドDNAを、AdoMet類縁体10の存在下に、M.TaqIまたはM.HhaI変種Q82A/N304A(M.HhaI*で表示)によってアミノ修飾し、フルオレセインN−ヒドロキシ−スクシニミジルエステル(スキーム10)と反応させた。標識化プラスミドDNAを、各種制限エンドヌクレアーゼ、または制限エンドヌクレアーゼの組み合わせ(表示)によって断片化し、DNA断片を、アガロースゲル電気泳動によって分離した。臭化エチジウム無添加の状態(上段)、および添加の状態(下段、コントロールとして)で蛍光画像記録を実施した。M.TaqIによるpBR322修飾体から得られ、M.TaqI認識配列を全く含まないDNA断片は、臭化エチジウム染色の不在下では視認されない(白楕円で示す)。コントロールは、未修飾のpBR322プラスミドDNAを、フルオレセインN−ヒドロキシスクシニミジルエステルによって処理し、次いで、制限エンドヌクレアーゼ断片化を行って実施した(M=DNAマーカー)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
によって表される化合物であって、
上式において、
Rは、スルフォニウム中心に対しβ−位置において、炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素三重結合、または、芳香族炭素環またはヘテロ環システムを含み;
X-は、1個以上の負電荷を持つ有機または無機の陰イオンであり;
Zは、−CR1R2−、−O−、−S−、または−NR3−であり;および、
R1、R2、およびR3は、H、D、およびC1−C12アルキルから独立に選ばれる、
ことを特徴とする、前記化合物。
【請求項2】
Zが−CR1R2−であることを特徴とする、請求項1による化合物。
【請求項3】
R1およびR2がHおよびDから独立に選ばれることを特徴とする、請求項2による化合物。
【請求項4】
Rが、スルフォニウム中心に対するβ位置に−CH=CH−、−C≡C−、またはフェニル基を含むことを特徴とする、請求項1による化合物。
【請求項5】
前記有機または無機の陰イオンが、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、ハロゲン化物、およびスルフォン酸塩から選ばれることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項による化合物。
【請求項6】
Rが、官能基、X線回折データの位相角分析に好適な重原子または重原子クラスター、放射性同位元素または安定な希少同位元素、および、蛍光発色団、消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意に修飾が可能なタンパク、ペプチドまたはアミノ酸、任意に修飾が可能なヌクレオチド、ヌクレオシド、または核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子、およびビーズから選ばれるメンバーの残基から選ばれる少なくとも一員をさらに含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項による化合物。
【請求項7】
前記官能基が、アミノ基、チオール基、1,2−ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセタミド基、マレイミド基、アルデヒド基、ケトン基、1,2−アミノチオール基、アジド基、アルキン基、1,3−ジエン官能基、ジエノフィル官能基、ハロゲン化アリール基、末端アルキン基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、および、保護されたアミノ、チオール、1,2−ジオール、ヒドラジノ、ヒドロキシアミノ、アルデヒド、ケトン、および1,2−アミノチオール基から選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項8】
前記発色団が、Alexa、BODIPY、bimane、クマリン、Cascadeブルー、ダンシル、ダポキシル、フルオレセイン、マンシル、MANT、Oregonグリーン、ピレン、ローダミン、Texasレッド、TNS、蛍光ナノ結晶(量子ドット)、シアニン蛍光発色団およびその誘導体から選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項9】
前記蛍光消光剤が、ダブシル、QSY、およびBHQから選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項10】
前記アフィニティタグが、ペプチドタグ、金属キレート群、同位元素コード標識アフィニティタグ、ビオチン、マルトース、マンノース、グルコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルノイラミン酸、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、ジゴキシゲニン、およびジニトロフェノールから選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項11】
前記ペプチドタグが、his−タグ、金属キレート性を有するタグ、ストレップ−タグ、フラッグ−タグ、c−myc−タグ、HA−タグ、エピトープ、およびグルタチオンから選ばれることを特徴とする、請求項10による化合物。
【請求項12】
前記金属キレート群が、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、1,10−フェナントロリン、クラウンエーテル、およびHis4-8ペプチドであることを特徴とする、請求項10による化合物。
【請求項13】
前記架橋剤が、一、または二官能白金(II)複合体、マレイミド、イオドアセタミド、アルデヒド、および光架橋剤から選ばれる選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項14】
前記光架橋剤が、アリールアジド、ジアゾ化合物、2−ニトロフェニル化合物、プソラレン、およびベンゾフェノン化合物から選ばれることを特徴とする、請求項13による化合物。
【請求項15】
前記重原子、または重原子クラスターが、X線回折データを位相角分析するのに好適な、銅、亜鉛、セレン、臭素、ヨウ素、ルテニウム、パラジウム、カドミウム、タングステン、白金、金、水銀、ビスマス、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ウラニウム、Ta6Br14、Fe4S4、またはP2W18O62から選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項16】
前記核酸切断試薬は、鉄−エチレンジアミンテトラ酢酸(鉄−EDTA)、銅−1,10−フェナントロリン、アクリジンまたはその誘導体、エンジン化合物、およびロジウム複合体から選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項による化合物、および、通常S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)を補因子として用いるメチルトランスフェラーゼの複合体。
【請求項18】
前記メチルトランスフェラーゼが、通常、S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)のメチル残基を、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、または小型分子に転移することを特徴とする、請求項17による複合体。
【請求項19】
前記メチルトランスフェラーゼが、孤立DNAメチルトランスフェラーゼであるか、または、細菌の制限修飾システムの一部であることを特徴とする、請求項18による複合体。
【請求項20】
前記メチルトランスフェラーゼが、DNAメチルトランスフェラーゼのM.Taql、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、M2.Eco31Iまたはその誘導体から成るグループから選ばれることを特徴とする請求項19による複合体。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか1項による化合物を含むキット。
【請求項22】
請求項17から20のいずれか1項に定義されるものと同じメチルトランスフェラーゼをさらに含むことを特徴とする、請求項21によるキット。
【請求項23】
請求項17から20のいずれか1項による複合体を含むキット。
【請求項24】
請求項1から16のいずれか1項による化合物、または請求項17から20のいずれか1項による複合体、および、要すれば任意に製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物。
【請求項25】
請求項1から16のいずれか1項による化合物、または請求項17から20のいずれか1項による複合体を含む診断組成物。
【請求項26】
請求項1から16のいずれか1項による化合物、またはその混合物の、標的分子を修飾するための使用。
【請求項27】
標的分子の修飾が、請求項1から16のいずれか1項による化合物またはその混合物を、該化合物の一部を標的分子に転移するメチルトランスフェラーゼの補因子として使用することによって実現されることを特徴とする、請求項26による使用。
【請求項28】
標的分子が、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、または小型分子であることを特徴とする、請求項26または27による使用。
【請求項29】
核酸分子が、DNA、RNA、またはそれらのハイブリッドであることを特徴とする、請求項28による使用。
【請求項30】
小型分子が、リン脂質、アミノ酸、ホルモン、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体から選ばれることを特徴とする、請求項28による使用。
【請求項31】
メチルトランスフェラーゼが、請求項17から20のいずれか1項に定義されるメチルトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項27から29のいずれか1項による使用。
【請求項32】
修飾された標的分子の調製法であって、請求項1から16のいずれか1項による化合物と、該化合物を補因子として使用することが可能なメチルトランスフェラーゼの存在下に、該化合物の一部を標的分子に転移することを可能とする条件下に、標的分子をインキュベートすることを含む前記調製法。
【請求項33】
メチルトランスフェラーゼが、請求項17から20のいずれか1項に定義されるものと同じメチルトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項32による方法。
【請求項34】
標的分子が、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、小型分子、またはそれらの間の複合体であることを特徴とする、請求項32または33による方法。
【請求項35】
核酸分子が、DNA、RNA、またはそれらのハイブリッドであることを特徴とする、請求項34による方法。
【請求項36】
前記DNAまたはRNA分子が、配列特異的やり方で修飾されることを特徴とする、請求項35による方法。
【請求項37】
ポリペプチドが、配列特異的やり方で修飾されることを特徴とする、請求項34による方法。
【請求項38】
小型分子が、リン脂質、アミノ酸、ホルモン、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体から選ばれることを特徴とする、請求項34による方法。
【請求項39】
修飾が、標識として好適な基を標的分子に転移し、他の未標識分子の間において標識された該分子の特定を可能とすることによって実現されることを特徴とする、請求項36または38による方法。
【請求項40】
標識が、蛍光発色団、蛍光消光剤、アフィニティタグ、スピンラベル、放射性または安定な希少同位元素、発色団、および検出可能なナノ粒子から選ばれることを特徴とする、請求項39による方法。
【請求項41】
生体分子における配列特異的メチル化を検出する方法であって、
(a)前記メチルトランスフェラーゼの検出可能な補因子の存在下に、生体分子をS−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼに接触させること;および、
(b)前記メチルトランスフェラーゼの認識部位が、補因子またはその誘導体によって修飾されたかどうかを検出することを含み、
前記メチルトランスフェラーゼの認識部位の修飾は、前記認識部位におけるメチル化の不在を示し;
前記補因子は、請求項1から16のいずれか1項による化合物であることを特徴とする、前記方法。
【請求項42】
前記生体分子が、核酸分子、または(ポリ)ペプチドであることを特徴とする、請求項41による方法。
【請求項43】
工程(a)が、インビトロか、細胞抽出物についてか、またはインビボで実行されることを特徴とする、請求項41または42による方法。
【請求項44】
前記核酸分子がDNAであることを特徴とする、請求項42または43による方法。
【請求項45】
工程(a)の前に、制限酵素でDNAを処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項44による方法。
【請求項46】
前記DNAが、固相支持体の上に固定されることを特徴とする、請求項44または45による方法。
【請求項47】
前記DNA分子が、固相支持体に、該固相支持体に付着するオリゴヌクレオチドに該DNA分子をハイブリダイズすることによって付着されることを特徴とする、請求項46による方法。
【請求項48】
前記メチルトランスフェラーゼが、孤立DNAメチルトランスフェラーゼであるか、または、細菌の制限修飾システムの一部であることを特徴とする、請求項41から47のいずれか1項による方法。
【請求項49】
細菌の制限修飾システムから得られる前記メチルトランスフェラーゼが、M.Taql、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、およびM2.Eco31Iまたはその誘導体から選ばれることを特徴とする請求項48による方法。
【請求項50】
(a)前記補因子が、DNAメチルトランスフェラーゼの認識部位における、または認識部位近傍における、制限酵素の切断を阻止し;かつ、
(b)メチル化が、補因子誘導体によるDNAの修飾が、前記認識部位において、またはその近傍において、制限酵素によって仲介される切断を阻止するかどうかを試験することによって検出されることを特徴とする、請求項41から49のいずれか1項による方法。
【請求項51】
(a)補因子が、メチルトランスフェラーゼの認識部位において核酸増幅を妨げ;かつ、
(b)メチル化が、核酸の増幅が、メチルトランスフェラーゼの認識部位において遅れるかどうかを試験することによって検出されることを特徴とする、請求項41から49のいずれか1項による方法。
【請求項52】
(a)補因子が蛍光標識を含み;かつ、
(b)メチル化が、前記核酸分子における蛍光の存在、または量を測定することによって検出されることを特徴とする、請求項41から51のいずれか1項による方法。
【請求項53】
(a)メチルトランスフェラーゼの認識配列において修飾された核酸分子が、アフィニティ精製によって精製され;かつ、
(b)補因子がアフィニティタグを含むことを特徴とする、請求項41から52のいずれか1項による方法。
【請求項54】
補因子が、DNAのシトシン残基には付加されるが、5−メチルシトシン残基に対しては付加させることができないことを特徴とする、請求項41から53のいずれか1項による方法。
【請求項55】
工程(a)の後に、DNA分子の配列を決定する追加工程を含むことを特徴とする、請求項41から54のいずれか1項による方法。
【請求項56】
前記検出可能な補因子の標識は、(a)前記検出可能な補因子の標識に特異的に結合する抗体によって、あるいは、(b)前記検出可能な補因子に特異的に結合するアビジンまたはストレプトアビジンによって検出されることを特徴とする、請求項41から55のいずれか1項による方法。
【請求項57】
前記DNA分子の配列が、DNA配列決定、ハイブリダイゼーション、Maldi−Tof分析、または、酵素断片化およびクロマトグラフィーによるヌクレオシド組成の分析によって決定されることを特徴とする、請求項41から55のいずれか1項による方法。
【請求項1】
式(I):
【化1】
によって表される化合物であって、
上式において、
Rは、スルフォニウム中心に対しβ−位置において、炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−硫黄二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素三重結合、または、芳香族炭素環またはヘテロ環システムを含み;
X-は、1個以上の負電荷を持つ有機または無機の陰イオンであり;
Zは、−CR1R2−、−O−、−S−、または−NR3−であり;および、
R1、R2、およびR3は、H、D、およびC1−C12アルキルから独立に選ばれる、
ことを特徴とする、前記化合物。
【請求項2】
Zが−CR1R2−であることを特徴とする、請求項1による化合物。
【請求項3】
R1およびR2がHおよびDから独立に選ばれることを特徴とする、請求項2による化合物。
【請求項4】
Rが、スルフォニウム中心に対するβ位置に−CH=CH−、−C≡C−、またはフェニル基を含むことを特徴とする、請求項1による化合物。
【請求項5】
前記有機または無機の陰イオンが、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、ハロゲン化物、およびスルフォン酸塩から選ばれることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項による化合物。
【請求項6】
Rが、官能基、X線回折データの位相角分析に好適な重原子または重原子クラスター、放射性同位元素または安定な希少同位元素、および、蛍光発色団、消光剤、アフィニティタグ、架橋剤、核酸切断試薬、スピンラベル、発色団、任意に修飾が可能なタンパク、ペプチドまたはアミノ酸、任意に修飾が可能なヌクレオチド、ヌクレオシド、または核酸、炭水化物、脂質、トランスフェクション試薬、挿入剤、ナノ粒子、およびビーズから選ばれるメンバーの残基から選ばれる少なくとも一員をさらに含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項による化合物。
【請求項7】
前記官能基が、アミノ基、チオール基、1,2−ジオール基、ヒドラジノ基、ヒドロキシアミノ基、ハロアセタミド基、マレイミド基、アルデヒド基、ケトン基、1,2−アミノチオール基、アジド基、アルキン基、1,3−ジエン官能基、ジエノフィル官能基、ハロゲン化アリール基、末端アルキン基、アリールボロン酸基、末端ハロアルキン基、末端シリルアルキン基、および、保護されたアミノ、チオール、1,2−ジオール、ヒドラジノ、ヒドロキシアミノ、アルデヒド、ケトン、および1,2−アミノチオール基から選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項8】
前記発色団が、Alexa、BODIPY、bimane、クマリン、Cascadeブルー、ダンシル、ダポキシル、フルオレセイン、マンシル、MANT、Oregonグリーン、ピレン、ローダミン、Texasレッド、TNS、蛍光ナノ結晶(量子ドット)、シアニン蛍光発色団およびその誘導体から選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項9】
前記蛍光消光剤が、ダブシル、QSY、およびBHQから選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項10】
前記アフィニティタグが、ペプチドタグ、金属キレート群、同位元素コード標識アフィニティタグ、ビオチン、マルトース、マンノース、グルコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルノイラミン酸、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、ジゴキシゲニン、およびジニトロフェノールから選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項11】
前記ペプチドタグが、his−タグ、金属キレート性を有するタグ、ストレップ−タグ、フラッグ−タグ、c−myc−タグ、HA−タグ、エピトープ、およびグルタチオンから選ばれることを特徴とする、請求項10による化合物。
【請求項12】
前記金属キレート群が、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、1,10−フェナントロリン、クラウンエーテル、およびHis4-8ペプチドであることを特徴とする、請求項10による化合物。
【請求項13】
前記架橋剤が、一、または二官能白金(II)複合体、マレイミド、イオドアセタミド、アルデヒド、および光架橋剤から選ばれる選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項14】
前記光架橋剤が、アリールアジド、ジアゾ化合物、2−ニトロフェニル化合物、プソラレン、およびベンゾフェノン化合物から選ばれることを特徴とする、請求項13による化合物。
【請求項15】
前記重原子、または重原子クラスターが、X線回折データを位相角分析するのに好適な、銅、亜鉛、セレン、臭素、ヨウ素、ルテニウム、パラジウム、カドミウム、タングステン、白金、金、水銀、ビスマス、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ウラニウム、Ta6Br14、Fe4S4、またはP2W18O62から選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項16】
前記核酸切断試薬は、鉄−エチレンジアミンテトラ酢酸(鉄−EDTA)、銅−1,10−フェナントロリン、アクリジンまたはその誘導体、エンジン化合物、およびロジウム複合体から選ばれることを特徴とする、請求項6による化合物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項による化合物、および、通常S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)を補因子として用いるメチルトランスフェラーゼの複合体。
【請求項18】
前記メチルトランスフェラーゼが、通常、S−アデノシル−L−メチオニン(SAMまたはAdoMet)のメチル残基を、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、または小型分子に転移することを特徴とする、請求項17による複合体。
【請求項19】
前記メチルトランスフェラーゼが、孤立DNAメチルトランスフェラーゼであるか、または、細菌の制限修飾システムの一部であることを特徴とする、請求項18による複合体。
【請求項20】
前記メチルトランスフェラーゼが、DNAメチルトランスフェラーゼのM.Taql、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、M2.Eco31Iまたはその誘導体から成るグループから選ばれることを特徴とする請求項19による複合体。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか1項による化合物を含むキット。
【請求項22】
請求項17から20のいずれか1項に定義されるものと同じメチルトランスフェラーゼをさらに含むことを特徴とする、請求項21によるキット。
【請求項23】
請求項17から20のいずれか1項による複合体を含むキット。
【請求項24】
請求項1から16のいずれか1項による化合物、または請求項17から20のいずれか1項による複合体、および、要すれば任意に製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物。
【請求項25】
請求項1から16のいずれか1項による化合物、または請求項17から20のいずれか1項による複合体を含む診断組成物。
【請求項26】
請求項1から16のいずれか1項による化合物、またはその混合物の、標的分子を修飾するための使用。
【請求項27】
標的分子の修飾が、請求項1から16のいずれか1項による化合物またはその混合物を、該化合物の一部を標的分子に転移するメチルトランスフェラーゼの補因子として使用することによって実現されることを特徴とする、請求項26による使用。
【請求項28】
標的分子が、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、または小型分子であることを特徴とする、請求項26または27による使用。
【請求項29】
核酸分子が、DNA、RNA、またはそれらのハイブリッドであることを特徴とする、請求項28による使用。
【請求項30】
小型分子が、リン脂質、アミノ酸、ホルモン、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体から選ばれることを特徴とする、請求項28による使用。
【請求項31】
メチルトランスフェラーゼが、請求項17から20のいずれか1項に定義されるメチルトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項27から29のいずれか1項による使用。
【請求項32】
修飾された標的分子の調製法であって、請求項1から16のいずれか1項による化合物と、該化合物を補因子として使用することが可能なメチルトランスフェラーゼの存在下に、該化合物の一部を標的分子に転移することを可能とする条件下に、標的分子をインキュベートすることを含む前記調製法。
【請求項33】
メチルトランスフェラーゼが、請求項17から20のいずれか1項に定義されるものと同じメチルトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項32による方法。
【請求項34】
標的分子が、核酸分子、ポリペプチド、炭水化物、小型分子、またはそれらの間の複合体であることを特徴とする、請求項32または33による方法。
【請求項35】
核酸分子が、DNA、RNA、またはそれらのハイブリッドであることを特徴とする、請求項34による方法。
【請求項36】
前記DNAまたはRNA分子が、配列特異的やり方で修飾されることを特徴とする、請求項35による方法。
【請求項37】
ポリペプチドが、配列特異的やり方で修飾されることを特徴とする、請求項34による方法。
【請求項38】
小型分子が、リン脂質、アミノ酸、ホルモン、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体から選ばれることを特徴とする、請求項34による方法。
【請求項39】
修飾が、標識として好適な基を標的分子に転移し、他の未標識分子の間において標識された該分子の特定を可能とすることによって実現されることを特徴とする、請求項36または38による方法。
【請求項40】
標識が、蛍光発色団、蛍光消光剤、アフィニティタグ、スピンラベル、放射性または安定な希少同位元素、発色団、および検出可能なナノ粒子から選ばれることを特徴とする、請求項39による方法。
【請求項41】
生体分子における配列特異的メチル化を検出する方法であって、
(a)前記メチルトランスフェラーゼの検出可能な補因子の存在下に、生体分子をS−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼに接触させること;および、
(b)前記メチルトランスフェラーゼの認識部位が、補因子またはその誘導体によって修飾されたかどうかを検出することを含み、
前記メチルトランスフェラーゼの認識部位の修飾は、前記認識部位におけるメチル化の不在を示し;
前記補因子は、請求項1から16のいずれか1項による化合物であることを特徴とする、前記方法。
【請求項42】
前記生体分子が、核酸分子、または(ポリ)ペプチドであることを特徴とする、請求項41による方法。
【請求項43】
工程(a)が、インビトロか、細胞抽出物についてか、またはインビボで実行されることを特徴とする、請求項41または42による方法。
【請求項44】
前記核酸分子がDNAであることを特徴とする、請求項42または43による方法。
【請求項45】
工程(a)の前に、制限酵素でDNAを処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項44による方法。
【請求項46】
前記DNAが、固相支持体の上に固定されることを特徴とする、請求項44または45による方法。
【請求項47】
前記DNA分子が、固相支持体に、該固相支持体に付着するオリゴヌクレオチドに該DNA分子をハイブリダイズすることによって付着されることを特徴とする、請求項46による方法。
【請求項48】
前記メチルトランスフェラーゼが、孤立DNAメチルトランスフェラーゼであるか、または、細菌の制限修飾システムの一部であることを特徴とする、請求項41から47のいずれか1項による方法。
【請求項49】
細菌の制限修飾システムから得られる前記メチルトランスフェラーゼが、M.Taql、M.HhaI、M.BcnIB(M2.BcnI)、M.SssI、M.BseCI、M.RsrI、M2.BfiI(M.BfiC2)、およびM2.Eco31Iまたはその誘導体から選ばれることを特徴とする請求項48による方法。
【請求項50】
(a)前記補因子が、DNAメチルトランスフェラーゼの認識部位における、または認識部位近傍における、制限酵素の切断を阻止し;かつ、
(b)メチル化が、補因子誘導体によるDNAの修飾が、前記認識部位において、またはその近傍において、制限酵素によって仲介される切断を阻止するかどうかを試験することによって検出されることを特徴とする、請求項41から49のいずれか1項による方法。
【請求項51】
(a)補因子が、メチルトランスフェラーゼの認識部位において核酸増幅を妨げ;かつ、
(b)メチル化が、核酸の増幅が、メチルトランスフェラーゼの認識部位において遅れるかどうかを試験することによって検出されることを特徴とする、請求項41から49のいずれか1項による方法。
【請求項52】
(a)補因子が蛍光標識を含み;かつ、
(b)メチル化が、前記核酸分子における蛍光の存在、または量を測定することによって検出されることを特徴とする、請求項41から51のいずれか1項による方法。
【請求項53】
(a)メチルトランスフェラーゼの認識配列において修飾された核酸分子が、アフィニティ精製によって精製され;かつ、
(b)補因子がアフィニティタグを含むことを特徴とする、請求項41から52のいずれか1項による方法。
【請求項54】
補因子が、DNAのシトシン残基には付加されるが、5−メチルシトシン残基に対しては付加させることができないことを特徴とする、請求項41から53のいずれか1項による方法。
【請求項55】
工程(a)の後に、DNA分子の配列を決定する追加工程を含むことを特徴とする、請求項41から54のいずれか1項による方法。
【請求項56】
前記検出可能な補因子の標識は、(a)前記検出可能な補因子の標識に特異的に結合する抗体によって、あるいは、(b)前記検出可能な補因子に特異的に結合するアビジンまたはストレプトアビジンによって検出されることを特徴とする、請求項41から55のいずれか1項による方法。
【請求項57】
前記DNA分子の配列が、DNA配列決定、ハイブリダイゼーション、Maldi−Tof分析、または、酵素断片化およびクロマトグラフィーによるヌクレオシド組成の分析によって決定されることを特徴とする、請求項41から55のいずれか1項による方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−539166(P2008−539166A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505831(P2008−505831)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003463
【国際公開番号】WO2006/108678
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506329971)
【出願人】(507340186)インスティテュート オブ バイオテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003463
【国際公開番号】WO2006/108678
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506329971)
【出願人】(507340186)インスティテュート オブ バイオテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】
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