説明

メディア再生デコーダ及びその追跡方法

装置内に組み込まれた追跡中のメディア再生デコーダを識別する方法において、追跡メッセージを表現するデータをメディアコンテンツファイルのコンテンツフィールド内に含め、トリガストリング(16)をファイルのユーザーデータフィールド内に含める。このファイルをデコーダに入力し、追跡中のデコーダは、トリガ信号の検出に応答して追跡メッセージを所望フォーマットにするように構成されている。デコーダが追跡中のデコーダでなければ、トリガストリングは無視され、ソフトウェアコンポーネントは、メディアコンテンツファイルを通常のメディアコンテンツファイルのように処理しようとし、このことはエラーを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、装置内に組み込まれたソフトウェアコンポーネント形式のようなプロプライエタリ(使用、配布、複製、改変等に制限付きの)メディア再生デコーダの存在を追跡(トレース)するために用いる、メディア再生デコーダの追跡方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話のような装置がプロプライエタリ・ソフトウェアコンポーネントを含むか否かを判定することを、ソフトウェアプロバイダが求められ得る多くの状況が存在する。この目的のために、ソフトウェアを追跡する種々の方法が開発され、実現されている。一般に、ソフトウェア追跡は、追跡中のソフトウェアを含むと思われる装置に、追跡中のソフトウェアが存在する場合のみに追跡メッセージ(即ち、追跡するソフトウェアの存在の何らかの明確な特徴付け)が正しく発行されるような、以下で追跡トリガと称する特定の操作を施すことを含む。
【0003】
特定例として、追跡中のソフトウェアコンポーネントがビデオデコーダである場合を考える。ソフトウェアを追跡する目的で、追跡するソフトウェアコンポーネントは、特定のビデオのストリームを再生用に入力すると、装置内のビデオデコーダが追跡中のソフトウェアで構成される場合にのみに追跡メッセージを当該装置上に正しく表示するメカニズムを備えることができる。さもなければ、異なる結果が、それが何であるかにかかわらず、ビデオデコーダが追跡中のソフトウェアで構成されないことを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0233547号明細書
【0005】
別の例では、特許文献1(米国特許出願公開第2003/0233547号)が、ソフトウェアプログラムがサーバーから合法的に(許諾の下に)ダウンロードされてユーザーのマシンにインストールされると、認可ユーザーのマシンに固有の識別番号が割り当てられて、この識別番号は、ダウンロードしたソフトウェアプログラムのコピー内に1回以上埋め込まれる。クライアントプログラムを提供し、このクライアントプログラムは、ソフトウェアプログラムが実行される際にいつも、このソフトウェアを実行中のマシンの識別番号をソフトウェアプログラム内に埋め込まれた識別番号と比較し、これら2つの番号が一致した場合のみにこのソフトウェアプログラムの実行を許可する。こうして、このソフトウェアプログラムのさらなるコピーが他のユーザーのマシンに不法に提供された場合に、このソフトウェアプログラム内に埋め込まれた識別番号がユーザーのマシンに割り当てられた識別番号と一致しないので、このソフトウェアプログラムはこのマシン上では実行されない。さらに、ソフトウェアプログラム内に埋め込まれた識別番号を通して元のユーザーを追跡することができる。
【0006】
より一般的には、追跡メッセージ発生器をソフトウェアコンポーネント中に組み込むことが知られ、ここでは、圧縮したメディアコンテンツファイル内にトリガストリングを挿入し、このメディアコンテンツファイルを上記ソフトウェアコンポーネントで再生すると、このソフトウェアコンポーネントが追跡中のソフトウェアコンポーネントでない場合は、トリガは無視されメディアコンテンツが再生されるのに対し、このソフトコンポーネントが追跡中のソフトウェアコンポーネントである場合は、メディアデコーダがトリガを認識してメッセージ発生器に特定の追跡メッセージを発生させる。しかし、追跡メッセージファイルは、追加的メッセージ発生器によるオーバーヘッドがあるように非常に大きくなることがあり、これによりソフトウェアコンポーネント全体のオーバーヘッドを増加させ、このことは望ましくない。
【0007】
上述した種類のメカニズムは、ソフトウェア産業においてしばしば「バックドア」と称され、種々のバックドアメカニズムが知られ、プロプライエタリ・ソフトウェアの不正使用を防止するために一般に使用されている。
【0008】
大部分のメディアデータフォーマットは、(少なくとも)ユーザーデータフィールド及びコンテンツフィールドを含み、データはユーザーデータフィールド内に「隠す」ことが可能である、というのは、準拠型デコーダ/パーサ(構文解析器)はこのフィールド内のデータを無視するように命令されているからである。従って、一部の状況下では、ユーザーデータフィールドは、追跡トリガを含むのに適したメディアデータファイルの部分と考えることができる。しかし、ビデオ及びオーディオデコーダのようなメディア処理コンポーネントにおいてこの方法でソフトウェア追跡を実現するに当たり、いくつかの特定の問題が予想される。主な問題の1つは、こうしたコンポーネントは、装置のスクリーンに「直接」アクセスしてテキスト(文字列)の追跡メッセージを表示することができない、ということである。メディア処理コンポーネントは、これらのコンポーネントが表示するように設計されたメディアフォーマットしか出力することができず、例えばビデオデコーダは画像(YUVフレーム)しか生成することができず、音楽プレーヤーは音(PCMフレーム)しか出力することができない、等である。従って、「トリガ」をユーザーデータフィールド内に設けることはできるが、十分な選択性のある特定の追跡メッセージ出力を実現することは単純なことではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、追跡中のメディア再生デコーダを識別する方法を提供することにあり、この方法は、偶発的なトリガ発生を比較的低い確率にして、デコーダの通常の動作またはサイズに影響を与えずに、デコーダが追跡中のデコーダで構成される場合のみに、明確な追跡メッセージを正しいフォーマットで確実に出力する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、受信したメディアコンテンツを所定メディアフォーマットでの再生用にデコードするデコーダが提供され、このメディアコンテンツは、ユーザーデータフィールド及びコンテンツフィールドを含むデータフォーマットを有し、追跡メッセージを表現するデータはメディアコンテンツのコンテンツフィールド内に含まれ、このデコーダはさらに、上記受信したメディアコンテンツ中に含まれるデータによって表現される上記追跡メッセージを上記所定メディアフォーマットにする手段を備えている。また、本発明によれば、追跡中のメディア再生デコーダを識別する方法が提供され、このデコーダは、受信したメディアコンテンツを所定メディアフォーマットでの再生用にデコードするように構成され、この方法は、受信したメディアコンテンツ中に含まれる表現データからの追跡メッセージを、上記所定メディアフォーマットにする手段に含めるステップと、メディアコンテンツファイルをメディア再生デコーダに入力するステップとを備え、上記メディアコンテンツは、ユーザーデータフィールド及びコンテンツフィールドを含むデータフォーマットを有し、上記追跡メッセージを表示するデータフィールドのデータを含んでおり、上記メディアコンテンツファイルの再生中に、上記追跡メッセージが適正に上記所定メディアフォーマットにされた場合のみに、上記メディア再生デコーダが追跡中のメディア再生デコーダとして識別される。
【0011】
本発明は、以上に規定した方法用のメディアコンテンツファイルに拡張され、このメディアコンテンツファイルは、ユーザーデータフィールド及びコンテンツフィールドを含むデータフォーマットを有し、追跡メッセージを表現するデータは、このコンテンツフィールド中に含まれる。
【0012】
従って、上述した本発明の目的は、(追跡中のメディア再生デコーダを明確に特徴付ける)追跡メッセージを表現するデータを、入力メディアコンテンツファイルのコンテンツフィールド内に含めることによって達成され、これにより、このメディアコンテンツファイルを適切なメディアフォーマットで再生した際に、この再生デコーダが実際に追跡中のメディア再生デコーダであれば、追跡メッセージが同じメディアフォーマットで出力される。
【0013】
本発明の1つの好適例では、上記追跡メッセージを表現するデータが、上記追跡メッセージの上記所定メディアフォーマットでの表現、好適には一部または全体を所定の暗号化メカニズムで暗号化した表現を含み、この場合には、デコーダは、受信したメディアコンテンツ中に含まれる上記暗号化された追跡メッセージを暗号解読して上記所定メディアフォーマットにする手段を備えている。上記追跡メッセージは、上記追跡中のデコーダに固有のプロダクト(製品)キーを用いて暗号化することができる。
【0014】
他の好適例では、上記追跡メッセージを表現するデータが、上記メディアコンテンツのコンテンツフィールド内に含まれるフォントファイルを備え、追跡中のデコーダは、このフォントファイルを用いて上記追跡メッセージを発生する文字発生器を含む。
【0015】
上記コンテンツファイルの上記ユーザーデータフィールド内にトリガ信号を含めて、追跡中のデコーダに、受信したメディアコンテンツ中に含まれる上記表現データからの上記追跡メッセージを所定メディアフォーマットにする動作をさせることが有利である。このトリガ信号は、上記メディアコンテンツファイルの上記ユーザーデータフィールド内に挿入されたトリガストリングを備えることができる。
【0016】
上記メディアコンテンツファイルは、上記追跡メッセージを表現するデータを暗号化する前でも後でも圧縮することができる。
【0017】
上記デコーダは、処理装置によって実行されるソフトウェアコードから成るソフトウェアコンポーネントの形をとることができる。なお、上記デコーダは、復号化に加えて他の再生機能を実現するためのコードを含むことができることは明らかである。上記ソフトウェアは、電子メモリデバイス、ハードディスク、光ディスク、または他のマシン可読の記憶媒体上に有形に具体化することができる。上記ソフトウェアは、マシン可読担体上のコンピュータプログラム製品として届けることができ、あるいは、ネットワーク接続経由で装置にダウンロードすることができる。
【0018】
本発明のこれら及び他の態様は、本明細書に記載する実施例より明らかになり、これらの実施例を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の好適な実施例による方法を例示する概略ブロック図である。
【図2】本発明の第2の好適な実施例による方法を例示する概略ブロック図である。
【図3】本発明の第3の好適な実施例による方法を例示する概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を、ほんの一例として、図面を参照しながら説明する。
【0021】
従って、以上で説明したように、本発明はメディアコンテンツファイルのコンテンツフィールド内に暗号化した追跡メッセージを与えることに関するものであり、この追跡メッセージは、メディアコンテンツファイルの再生中に、メディア再生ソフトウェアコンポーネントがそれぞれの追跡中のソフトウェアコンポーネントである場合のみに、暗号解読され、要求されたメディアフォーマットの非常に明確な追跡メッセージ出力にされる。
【0022】
種々の異なる種類のメディア再生アプリケーションが知られ、本発明は、必ずしもこの関係に限定されない。出力される追跡メッセージのメディアフォーマットは、追跡するメディア再生ソフトウェアコンポーネントによってサポートされるメディアフォーマットに依存することは明らかである。
【0023】
例えば、ビデオデコーダ/プレーヤーを考える。一般的な出力は、追跡メッセージを含むYUV信号であるべきである。しかし、この信号は、追跡メッセージを含む単一静止画像で構成することができる意味で、真の「ビデオ」信号である必要はないことは明らかであり、この静止画像は、ある期間中ディスプレイ上に保持される。あるいはまた、追跡メッセージはスクロールする表示中に含めることができる。オーディオプレーヤーの場合は、一般的な出力は、追跡メッセージを含むPCMアレイであるべきである。
【0024】
追跡メッセージはソフトウェアコンポーネント中ではなくメディアコンテンツ中に含まれるので、追加的オーバーヘッド及びソフトウェアコンポーネントをサポートするリソースを使用する必要性によって生じる欠点が回避される。
【実施例1】
【0025】
第1実施例では、追跡メッセージを所望のフォーマットで発生する。従って、ビデオデコーダ/プレーヤーの場合は、ビットマップ画像形式のテキストの追跡メッセージを例えば文字発生器を用いて発生することができるのに対し、オーディオプレーヤーの場合は、追跡メッセージは録音された音声メッセージで構成することができる。どちらの場合にも、追跡メッセージの内容は、バージョン番号、製品及び所有権の会社から成る可能性が高いが、本発明は必ずしもこの関係に限定されない。
【0026】
追跡メッセージを暗号化するために使用する暗号化の種類は、比較的原始的なものとすることができる、というのは、暗号化のただ1つの目的が、追跡中のソフトウェアを含まない製品がメディアファイルを処理することを不可能にするためであるからである。例えば、追跡メッセージと、非常に短くすることのできる、即ち、プラットフォームによって最も効率的に処理される長さの任意のビットストリーム(例えば、対称鍵(キー))との排他的論理和をとる。上記鍵を、追跡中のソフトウェアコンポーネントの製品番号及びバージョン番号に一意的にマッピングして、製品中の追跡中のソフトウェアコンポーネントの誤検出を回避することができる。
【0027】
図1を参照すれば、本発明の第1の好適な実施例では、(PCMアレイまたはYUV信号形式の)追跡メッセージ10を従来のメディアエンコーダ12に入力して、圧縮した追跡メッセージ14を発生する。そして、トリガストリング16を挿入し、圧縮したメッセージ及びトリガストリングを特定のプロダクトキー18によって部分暗号化し、トリガ20を有する圧縮して部分暗号化した追跡メッセージを発生し、この追跡メッセージは有効な標準メディアコンテンツファイルではない。追跡メッセージ及びトリガファイルは部分暗号化のみすることができ、特に暗号化はメディアファイルヘッダーをカバーしてはならないことは明らかである、というのは、メディアファイルヘッダーは追跡トリガを(例えばユーザーデータフィールド内に)含み、この追跡トリガは、追跡中のソフトウェアコンポーネントが、残りの追跡処理、即ち暗号解読し所定フォーマットにする前に読み込む必要があるからである。
【0028】
また、トリガを有する圧縮して部分暗号化した追跡メッセージは、圧縮したコンテンツを暗号化しているので、有効な標準メディアコンテンツファイルでないことも明らかである。従って、トリガ20を有する圧縮して部分暗号化した追跡メッセージを、追跡中のソフトウェアコンポーネントを含まない装置24の標準的なメディアデコーダ22に入力すると、エラーが発生し、装置が故障することさえあり得る。他方では、トリガ20を有する圧縮して部分暗号化した追跡メッセージを、追跡中のソフトウェアコンポーネントを含む装置26に入力すると、トリガ検出器兼デスクランブラ(逆スクランブル装置)28が、プロダクトキー18及びトリガストリング16とを入力として用いて、圧縮した追跡メッセージ14を再生する。圧縮した追跡メッセージ14を標準的なメディアデコーダ22に入力して、元の追跡メッセージがサポートされたメディアフォーマットで出力される。
【0029】
準拠型メディアデコーダが、圧縮して暗号化したメッセージの受信に応答して故障することを防止するために、選択的暗号化を用いて、ビットストリーム中で制御ビットを含まない部分のみ、即ち、デコーダがデータは処理する方法は変化させないが、伸張(圧縮の復元)の最終部分のみを変化させる部分のみをスクランブルすることが好ましい。しかし、図1を参照して説明する実施例は効果的であるが、不必要に複雑になり得る。
【0030】
上述した好適な実施例におけるように、従来のシステムでは、メディアの暗号化は通常、圧縮後に実行する、というのは、生のメディアを暗号化(またはスクランブル)すれば、(圧縮技術が頼りにする)生のメディアの統計的性質が完全に変化し、従って圧縮性能が大幅に劣化し得るからである。しかし、本発明の場合は、この問題は特定のトリガファイルにしか生じない、というのは、トリガファイルはソフトウェアコンポーネントではなくメディアコンテンツファイルに含まれ、このファイルのサイズは軽微であるからである。
【実施例2】
【0031】
従って、図2を参照すれば、本発明の第2の好適な実施例では、必要なメディアフォーマットの追跡メッセージ10を、追跡中のソフトウェアコンポーネントに特有のプロダクトキー18を使用するコンテンツスクランブラ30に入力して、スクランブルした追跡メッセージ32を発生する。スクランブルした追跡メッセージ32を標準的なメディアエンコーダ12に入力し、スクランブルして圧縮した結果的な追跡メッセージ34を、トリガストリング16を挿入するトリガ挿入ツール36に供給して、標準的な有効ファイルであるトリガファイル38を有する圧縮した追跡メッセージを発生する。このファイル38を、メディアコンテンツファイルのコンテンツフィールド内に組み込んで、ターゲット装置の標準的なメディアデコーダ22に入力する。試験する装置24が追跡中のソフトウェアコンポーネントを含まない場合は、メディアコンテンツは正しく再生されることもされないこともあるが、追跡メッセージ42はスクランブルされる。他方では、試験する装置26が追跡中のソフトウェアコンポーネントを含む場合は、スクランブルされた追跡メッセージ32が標準的なメディアデコーダ22によってトリガストリング16を用いて再生され、コンテンツ・デスクランブラ40は、検出したトリガ33に応答して、スクランブルされた追跡メッセージ32を、プロダクトキー18を用いてデスクランブル(逆スクランブル)して(スクランブルを元に戻して)、追跡メッセージ10を出力する。
【0032】
以上より、暗号化を圧縮後(図1)ではなく圧縮前(図2)に実行する実施例は、より簡略化した実現をもたらす。
【0033】
以上では、追跡メッセージを含むフレームまたはアレイ全体を暗号化することが考えられる。しかし、メディアコンテンツ中で必須情報(例えばバージョン番号)を含む部分のみ(例えばビデオコンテンツの場合はスクリーンの一部分のみ)に対する部分暗号化を実行することができる。
【0034】
本発明に関して考慮すべき1つの重要なことは、理想的には、ソフトウェアコンポーネントの各バージョンを試験するように設計された特定のメディアコンテンツファイルが存在すべきである、ということである。従って、ソフトウェアコンポーネントのどのバージョンが試験する装置内にあり得るかを知らない場合は、可能な一致を見出すために、いくつかの異なるメディアコンテンツファイルを用いて、試行錯誤に基づく何回かの試験を実行する必要がある。
【0035】
この問題を解決するために、追跡メッセージ自体を入力メディアコンテンツファイルのコンテンツフィールド内に組み込む代わりに、フォントファイルを含める。フォントファイルは、追跡メッセージの文字または音は含まないが、追跡中のソフトウェアコンポーネントが解釈して実際に追跡メッセージを発生することのできる命令の集合を含む。従って、本明細書では「フォント」は、各パターンがテキストの断片(即ち文字、単語または文)に対応するパターン(ビデオの場合は図形(グラフィックス)、オーディオの場合は音)の集合として定義することができる。
【0036】
前のように、追跡トリガファイルの入力メディアフォーマットは、トリガ信号を含むユーザーデータフィールドを含み、このトリガ信号は、追跡中のソフトウェアコンポーネントに追跡処理を開始させるが、他のソフトウェアコンポーネントによって無視され、他のソフトウェアコンポーネントは、コンテンツファイルを通常のメディアコンテンツファイルとして処理しようとする。前のように、メディアフォーマットは全体または一部を暗号化することができ、このことは、追跡ソフトウェアを含まない製品が入力メディアコンテンツファイルを全く処理することができないことが望ましい場合に有用である。追跡トリガ・メディアコンテンツファイルは、追跡メッセージ最小フォントを含み、この追跡メッセージ最小フォントは、追跡中のソフトウェアのバージョン番号に応じた適正な追跡メッセージの発生の基礎を形成する。
【実施例3】
【0037】
図3を参照すれば、本発明の好適な実施例では、要求されたメディアコンテンツフォーマットのフォントファイル50をメディアエンコーダ52に入力して、圧縮したフォントメッセージ54を発生する。圧縮したフォントメッセージ54をトリガ挿入兼メッセージ暗号化ツール56に入力し、トリガ挿入兼メッセージ暗号化ツール56は、(追跡ソフトウェアコンポーネントに特有の)トリガストリング16及びプロダクトキー18を入力として用いて、トリガを有する圧縮したフォントメッセージ58を発生する。圧縮したフォントメッセージ58は有効な標準コンテンツファイルではない。従って、圧縮したフォントメッセージ58を、追跡中のソフトウェアコンポーネントを有しない装置24の標準的なメディアデコーダに入力すれば、エラーが発生する。他方では、ファイル58を、追跡中のソフトウェアコンポーネントを組み込んだ装置24に入力すれば、トリガ検出器60がユーザーデータフィールド内のトリガストリングを検出し、トリガストリング16及びプロダクトキー18を入力として用いて、圧縮したフォントメッセージ62を再生する。そして、圧縮したフォントメッセージ62及び追跡中のソフトウェアのバージョン番号64を表現するデータを文字発生器66(または「追跡メッセージ発生器」)への入力として用いて、追跡メッセージを所望のファイルフォーマットで発生する。
【0038】
ビデオの場合は、フォントファイルは複数のYUV矩形領域で構成することができ、各矩形領域はテキストの小片(文字、単語または文の断片)の画像を含む。これらの矩形領域を所定方法で順序付け、これにより、追跡中のソフトウェアコンポーネント中に組み込まれた追跡ソフトウェアがこれらの矩形領域を容易に検索して、各矩形領域をテキストの対応する小片にマッピングすることができ、このことは、特に文字にとって有用である(このことがフォントの目的であり:即ち、記号文字「x」をメディア中の文字「X」にするやり方でマッピングする方法である)。そして、追跡ソフトウェアは、このフォントを用いて追跡メッセージを発生する。
【0039】
このことを実現するための1つの可能な方法は、この方式を、バージョン番号を符号化するためだけに用いることである。例えば、入力コンテンツは、次の12個のフォント要素を含む。(これは単なる例である。):
i)1つのフォント構成要素は、「これはバージョンである」を表示する画像である。
ii)1つのフォント構成要素は、「X社のビデオデコーダ」を表示する画像である。
iii)残り10個のフォント構成要素は、0から9までの数字用である。
そして追跡メッセージは、i)を用い、次に試験するソフトウェアのバージョン番号に対応するii)の要素の組合せを用い、次にiii)を用いることによって組み立てる。
【0040】
オーディオの場合は、フォントは文の小片(ただし音節より小さくはない:このことは、文字の「音」は文を作るには有用でないという古典的なテキスト−音声の問題による)から成り、各フォントアイテムは、こうした文の断片のPCMサンプルを含む。これらのPCMアレイをメディアコンテナ中に所定方法で配置し、これにより、追跡中のソフトウェア中に組み込まれた追跡ソフトウェアは、これらのフォントアイテムを容易に検索して、各フォントアイテムを所定の文字列にマッピングすることができる。そして、追跡ソフトウェアはこのフォントを用いて追跡メッセージを発生する。
【0041】
一般に、1つの可能な方式は、「これはバージョンである」のような変化しないメッセージの全小片を単一断片に符号化することである。逆に、バージョン番号は、各数字「1」、「2」、「3」等の符号化を用いることによって構成することができる。
【0042】
この方法の主要な利点は、追跡ソフトウェアのメモリ使用量を大幅に低減することができることにある、というのは、追跡ソフトウェアは出力に必要なメディア材料を含まず、その代わりに、追跡ソフトウェアはメディア材料を、追跡トリガも含む入力メディアファイル内に見出すからである。
【0043】
なお、上述した実施例は、本発明を限定するものではなく例示するものであり、当業者は、請求項に規定した本発明の範囲を逸脱することなしに、多数の代案実施例を設計することができる。「備えている」、「備える」等は、あらゆる請求項中及び明細書全体中に挙げた要素またはステップの存在を排除するものではない。各要素は複数存在し得る。本発明は、いくつかの別個の要素から成るハードウェアを用いて、そして適切にプログラムしたコンピュータを用いて実現することができる。いくつかの手段を挙げた装置の請求項では、これらの手段のいくつかは同一のハードウェアのアイテムで実現することができる。単に、特定方策が、互いに異なる縦続請求項中に挙げられていることは、これらの方策の組合せを有利に用いることができないことを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したメディアコンテンツを所定メディアフォーマットでの再生用に復号化するデコーダであって、前記メディアコンテンツが、ユーザーデータフィールド及びコンテンツフィールドを含むデータフォーマットを有するデコーダにおいて、
追跡メッセージを表現するデータを、前記メディアコンテンツの前記コンテンツフィールド内に含め、前記デコーダがさらに、前記受信したメディアコンテンツ中に含まれる前記データによって表現される前記追跡メッセージを前記所定メディアフォーマットにする手段を備えていることを特徴とするデコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のデコーダにおいて、前記追跡メッセージを表現するデータが、前記追跡メッセージの前記所定メディアフォーマットでの表現を含むことを特徴とするデコーダ。
【請求項3】
請求項2に記載のデコーダにおいて、前記表現が、一部または全体を所定の暗号化メカニズムで暗号化した前記追跡メッセージを含み、前記デコーダが、前記受信したメディアコンテンツに含まれる前記暗号化した追跡メッセージを暗号解読して前記所定メディアフォーマットにする手段を備えていることを特徴とするデコーダ。
【請求項4】
請求項3に記載のデコーダにおいて、前記追跡メッセージを、前記追跡デコーダに固有のプロダクトキーを用いて暗号化することを特徴としたデコーダ。
【請求項5】
請求項1に記載のデコーダにおいて、前記追跡メッセージを表現するデータが、前記メディアコンテンツの前記コンテンツフィールド内に含まれるフォントファイルを含み、前記デコーダが、前記フォントファイルを用いて前記追跡メッセージを発生する文字発生器を備えていることを特徴とするデコーダ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のデコーダにおいて、前記デコーダに、前記受信したメディアコンテンツ中に含まれる前記追跡メッセージを表現するデータからの前記追跡メッセージを前記所定メディアフォーマットにする動作をさせるためのトリガ信号が、前記コンテンツファイルの前記ユーザーデータフィールド内に含まれることを特徴とするデコーダ。
【請求項7】
請求項6に記載のデコーダにおいて、前記トリガ信号は、前記メディアコンテンツファイルの前記ユーザーデータフィールド内に挿入されたトリガストリングを含むことを特徴とするデコーダ。
【請求項8】
請求項2に記載のデコーダにおいて、前記メディアコンテンツファイルを、前記追跡メッセージを表現するデータの暗号化の前または後のいずれかに圧縮することを特徴とするデコーダ。
【請求項9】
追跡中のメディア再生デコーダを識別する方法であって、前記メディア再生デコーダが、受信したメディアコンテンツを所定メディアフォーマットでの再生用に復号化するように構成されている方法において、
前記受信したメディアコンテンツ中に含まれる表現データからの追跡メッセージを前記所定メディアフォーマットにする手段を、前記追跡中のメディア再生デコーダに含めるステップと、
メディアコンテンツファイルをメディア再生デコーダに入力するステップとを備え、
前記メディアコンテンツは、ユーザーデータフィールド及びコンテンツフィールドを含むデータフォーマットを有し、前記追跡メッセージを表現するデータを前記データフィールド内に含み、前記メディア再生デコーダは、前記メディアコンテンツファイルの再生中に前記追跡メッセージが正しく前記所定メディアフォーマットにされた場合のみに、前記メディア再生デコーダを、前記追跡中のメディア再生デコーダとして識別することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法で用いるメディアコンテンツファイルにおいて、前記メディアコンテンツファイルが、ユーザーデータフィールド及びコンテンツフィールドを含むデータフォーマットを有し、前記追跡メッセージを表現するデータが前記コンテンツフィールド内に含まれることを特徴としたメディアコンテンツファイル。
【請求項11】
請求項10に記載のメディアコンテンツファイルにおいて、さらに、前記デコーダに、前記受信したメディアコンテンツ中に含まれる前記表現データからの前記追跡メッセージを前記所定メディアフォーマットにする動作をさせるためのトリガ信号が、前記コンテンツファイルの前記ユーザーデータフィールド内に含まれることを特徴とするメディアコンテンツファイル。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のデコーダを含むメディア再生装置。
【請求項13】
ソフトウェアコンポーネント形式の、請求項1〜8のいずれか一項に記載のデコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−545224(P2009−545224A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521401(P2009−521401)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052887
【国際公開番号】WO2008/012739
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【氏名又は名称原語表記】NXP B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 60, NL−5656 AG Eindhoven, Netherlands
【Fターム(参考)】