メモリーカード基板の分割方法
【課題】角部が切除されたメモリーカード基板を安価にかつ効率良く製造することができるメモリーカード基板の分割方法を提供する。
【解決手段】マザーボード301から角部が斜めに切り落とされたメモリーカード用基板を切り出す技術において、縦横の切削予定ライン302、304は、切削ブレードを利用した切削によって切断し、角部は、高圧水の噴射流またはレーザ光を用いて切断する。
【解決手段】マザーボード301から角部が斜めに切り落とされたメモリーカード用基板を切り出す技術において、縦横の切削予定ライン302、304は、切削ブレードを利用した切削によって切断し、角部は、高圧水の噴射流またはレーザ光を用いて切断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリーカードの基材として用いられるメモリーカード基板を得るための技術に係り、特に、メモリーカード基板の角部を切除する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
SDカード等のメモリーカードは、ガラスエポキシ樹脂等の材料で構成されるメモリーカード基板の表面や裏面に、半導体チップ、配線、および電極等を配置し、さらに保護のための樹脂モールドを行った基本構造を有している。メモリーカードは、その角部の内1カ所を斜めに切除した形状とすることで、カードの挿入方向を特定できるようになっている。このため、メモリーカードの基材であるメモリーカード基板の角部の一つも同様に斜めに切除されている。
【0003】
メモリーカードの製造においては、まずマザーボードと呼ばれる基板上に複数のメモリーカードの構造を配置し、その後にマザーボードを縦横に切断することで、メモリ機能が作り込まれた各メモリーカード基板を得る。この切断では、ダイシング装置などを用いる方法がコストや作業効率の点で有利である。一方、高圧水流やレーザ光を用いた方法により、各種の基板を加工する技術も知られている。高圧水流を用いた切断技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005―161460号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メモリーカードは縦横の寸法が数センチ程度と小さいので、ダイシング装置のような回転するブレードを用いる切断装置では、上述した基板の角部の斜め切除を行うことは困難である。一方、高圧水流やレーザ光を用いた方法は、ダイシング装置を利用した場合に比較して、微細な加工が可能であり、上述したメモリーカード基板における角部の斜め切除加工を行うことが可能である。しかしながら、高圧水流やレーザ光を用いた方法は、加工コストが高くしかも加工効率が劣るという欠点がある。
したがって、本発明は、角部が切除された形状のメモリーカード基板を得る技術において、製造コストを低減すると共に生産性を向上させることができるメモリカード基板の分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1のメモリーカード基板の分割方法は、第1の分割予定ラインとそれに直交する第2の分割予定ラインとによって区画されたメモリーカード領域と、このメモリーカード領域の外側に設けられた余剰領域とから構成されたマザーボードを個々のメモリーカード領域に分割するメモリーカード基板の分割方法であって、第1の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を形成するとともに、このメモリーカード領域の列の一側に、切削を行わないで余剰領域を残存させる第1の切削工程と、この第1の切削工程における切削により形成された切断線に沿って糸状の高圧水を噴射し、切断線をなぞるとともに個々のメモリーカード領域の所定の角部に斜め切断線を形成する角部切断工程と、第2の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を個々のメモリーカード領域に分割する第2の切削工程とを備えたことを特徴としている。
【0007】
第1のモリカード基板の分割方法によれば、メモリーカード基板の分割加工の大部分をなす第1、第2の分割予定ラインの切断が、切削ブレードを用いた切削によって行われ、角部の切断のみが高圧水の噴射によって行われる。つまり、低コストで作業効率の良い切削ブレードを用いて大部分の加工を行い、高コストな高圧水噴射を用いて残余の部分の加工を行うから、製造コストの増加や加工効率の低下を最小限に抑えつつ角部が切除された形状のメモリーカード基板の分割を行うことができる。
【0008】
より具体的には、第1の切削工程において、マザーボードは、切削ブレードを用いて第1の分割予定ラインに沿って切削されることにより、端部が余剰領域によって繋がった櫛状に切断される。そして、第1の切削工程で切断された切断線をなぞって高圧水の噴射流を移動させながらメモリーカード領域の角の部分のみを切断する。この場合において、角部切断工程は、斜め切断線を形成した後に、斜め切断線を逆方向になぞるように高圧水の噴射流を移動させ、第1の切削工程における切削により切断された切断線に戻る工程を備えることが望ましい。他の態様としては、角部切断工程が完了したら高圧水の噴射を止め、次のメモリーカード領域の切断線から角部切断工程を開始することもできるが、高圧水の噴射を止めると加工効率が低下する。さらに他の態様として、角部切断工程が完了したら、高圧水の噴射流を第2の分割予定ラインを切断しながら第1の切削工程で切断した切断線に戻る方法がある。ただし、この方法では、後に第2の切削工程で切断される部分を高圧水の噴射流で切断するから、無駄が多いという不利益は否めない。
【0009】
以上の工程を繰り返すことで、全てのメモリーカード領域に対する角部切断工程が実行される。角部切断工程が終了したら、第1の切削工程における切削方向に直交する第2の分割予定ラインに沿って切削を行う第2の切削工程を行う。これにより、短冊状に1列に繋がった複数のメモリーカード領域を、それぞれのメモリーカード基板に分割する。また、直角三角形状をなす角部の残りの一辺が切断されるので、角部はメモリーカード基板から分離される。
【0010】
なお、本発明が適用されるマザーボードの切断は、メモリーカードとしての機能が作り込まれる任意の段階で可能である。例えば、半導体メモリの配置完了段階、配線や電極の形成が終了した段階、一部電極等が形成されていない中間段階、樹脂モールドを行う前の段階、樹脂モールドが終了した段階、最終工程が終了した段階等の任意の段階において、本発明を適用することができる。またマザーボードは、メモリーカード基板として利用可能な材料であれば、特にその材質は限定されない。例えば、マザーボードとして、ガラスエポキシ基板やフッ素樹脂基板を挙げることができる。また、マザーボードは、単層構造に限定されず、多層構造であってもよい。
【0011】
上記第2の切削工程を行う前に、マザーボードを保護部材上に固定することもできる。保護部材としてはダイシングテープが好適であり、マザーボード全体を粘着力によって固定する機能を有する。第2の切削工程は、第1の分割予定ラインに切り目が入れられたマザーボードに対して、第1の分割予定ラインに直交する第2の分割予定ラインに沿って切削が行われ、各メモリーカード領域が分割されてメモリーカード基板が得られる工程である。また、第2の切削工程の後、分割された各メモリーカード基板は、次の工程に送られる。そのため、切削装置から取りはずしても、各メモリーカード基板がダイシングテープ上に貼着された状態にある方が扱い易い。このような利点は、以下に説明する本発明の他の特徴でも得ることができる。
【0012】
次に、本発明の第2のメモリーカード基板の分割方法は、第1の分割予定ラインとそれに直交する第2の分割予定ラインとによって区画されたメモリーカード領域と、このメモリーカード領域の外側に設けられた余剰領域とから構成されたマザーボードを個々のメモリーカード領域に分割するメモリーカード基板の分割方法であって、第1の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を形成するとともに、このメモリーカード領域の列の一側に、切削を行わないで余剰領域を残存させる第1の切削工程と、この第1の切削工程における切削により切断された切断線上からレーザ光を斜めに送って個々のメモリーカード領域の所定の角部に斜め切断線を形成する角部切断工程と、第2の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を個々のメモリーカード領域に分割する第2の切削工程とを備えたことを特徴としている。
【0013】
上記第2の発明によれば、斜め切断線の切断を行う時だけ、レーザ光の照射を行えばよいので、エネルギーの利用効率を高め、製造コストを低減することができるのは勿論のこと、第1の発明のように糸状の高圧水で切断線をなぞる必要がないので加工効率が向上する。
【0014】
また、本発明の第2のメモリーカード基板の分割方法では、第1の切削工程〜第2の切削工程において上述した保護部材上にマザーボードを固定すると好適である。この態様によれば、ダイシングテープなどの保護部材上にマザーボードを固定した状態で第1の切削工程、角部切断工程および第2の切削工程を行うことができる。このため、各工程間におけるハンドリングが容易であり、作業性を高めることができる。また、マザーボード全体が保護部材上で固定された状態となるので、短冊状のメモリーカード領域の列を接続する余剰領域を必要としない。このため、マザーボードの材料歩留まりを向上させることができる。この場合において、保護部材は、レーザ光を吸収しない材料で構成されることが好ましく、これにより、保護部材がレーザー光の照射によって損傷を受け難くすることができる。レーザ光を吸収しない材料としては、使用するレーザ光を80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上透過するものであることが好ましい。保護部材として利用可能なレーザ光を透過し易い材料としては、ポリオレフィン(PO)を挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、メモリーカード基板の分割加工の大部分をなす第1、第2の分割予定ラインの切断が、切削ブレードを用いた切削によって行われ、角部の切り落としのみが高圧水の噴射またはレーザ光の照射によって行われるから、コストや加工効率の犠牲を最小限に抑えつつ角部が切除された形状のメモリーカード基板の分割を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
1.第1の実施形態
(A)マザーボードの構成
図7は、この実施形態で分割加工するマザーボード301の平面図であり、マザーボード301は、ガラスエポキシ樹脂を矩形状の板に成形したものである。図7において符号302は、第1の切削工程において切削される第1の切断予定ラインであり、符号304は、第2の切削工程において切削される第2の切断予定ラインである。符号305の矩形状の領域は、これら第1、第2の切削予定ライン302,304によって区画されるメモリーカード領域である。また、符号303は、メモリーカード領域305の角部を切り落とすための斜め切断予定ライン303である。
【0017】
(B)治具の構成
図3は、図1に示すチャックテーブル125にマザーボード301を吸着するための治具20の斜視図(A)、上面図(B)および側面図(C)である。治具20の上面には、X軸方向に延在した溝201とY方向に延在した溝202が形成されている。この溝201,202が形成されている面上にマザーボード301が位置決めをして載置される。溝201は、マザーボード301が載置された状態において、図1に示す切断装置10を用いた図中X軸方向への切削が行われる際に、切削ブレード142の逃げ溝として機能する。また、溝202は、同様な状態における図中Y軸方向への切断が行われる際に切削ブレード142の逃げ溝として機能する。
【0018】
治具20の上面には、溝201,202によって複数のメモリーカード対応領域203が区画されている。各メモリーカード対応領域203には、治具20の上下面に連通する複数の孔204が形成されている。この孔204によって、チャックテーブル125が備えるバキュームチャック機能による吸引が、治具20上に載置されるマザーボード301に作用し、治具20を介してマザーボード301をチャックテーブル125に吸着することができる。
【0019】
(C)切断装置の構成
図1は、切断装置10を示す斜視図である。図1に示す切断装置10は、基台100を備えており、この基台100上に、チャックテーブル機構120、切削ユニット140、および切削ユニット支持機構160を備えている。チャックテーブル機構120は、治具20(図3参照)またはダイシングテープ401(図4参照)を、水平に保持するとともに切削送り方向(図1でX方向)に移動させる。切削ユニット140は、切削用の治具20またはダイシングテープ401上に固定されたマザーボード301(図7参照)を所定の切削ラインに沿って切削し切断する。切削ユニット支持機構160は、切削ユニット140を支持するとともに、それを図1でY方向に移動させる。また、切削ユニット140は、切削ユニット支持機構160に対し、切り込み方向(図1でZ方向)に移動自在に取り付けられている。
【0020】
チャックテーブル機構120は、基台100上のY方向一端側に配されており、基台100に固定されたX方向に延びる一対のガイドレール121と、これらガイドレール121上に摺動自在に取り付けられた移動板122と、この移動板122上に円筒状のポスト123を介して支持されたステージ124と、このステージ124上に回転自在に取り付けられた円盤状のチャックテーブル125と、移動板122をガイドレール121に沿って移動させるスライド機構130とを備えている。
【0021】
チャックテーブル125は、上面が水平であり、Z方向を回転軸として、ポスト123内に収容された図示せぬ回転駆動機構により時計方向または反時計方向に回転させられる。チャックテーブル125のチャック方式は、周知のバキュームチャックであり、チャックテーブル125には、表裏面に通じる吸引孔が形成され、裏面側に、図示せぬバキューム装置の空気吸引口が接続されている。そして、そのバキューム装置を運転すると、切削用治具20またはダイシングテープ401がチャックテーブル125上に吸着・保持される。
【0022】
スライド機構130は、基台100と移動板122との間に配されてX方向に延びる螺子ロッド131と、この螺子ロッド131を回転駆動するパルスモータ132とを備えている。螺子ロッド131は、移動板122の下面に突出形成された図示せぬブラケットに螺合して貫通しており、かつ、軸方向には移動不能な状態で回転自在に支持されている。このスライド機構130によれば、パルスモータ132によって螺子ロッド131が回転すると、その回転方向に応じたX方向に、移動板122がガイドレール121に沿って移動させられる。
【0023】
切削ユニット支持機構160は、基台100上に、上記チャックテーブル機構120のガイドレール121とともにT字状を呈するように配されて固定されたY方向に延びる一対のガイドレール161と、これらガイドレール161上に摺動自在に取り付けられた移動台162と、この移動台162をガイドレールに沿って移動させるスライド機構170とを備えている。
【0024】
移動台162は、水平板部163と、この水平板部163のX方向一端部(この場合、基台100のチャックテーブル機構120側の端部からY方向に沿って切削ユニット140の方向を見た図1のF矢視において右側の端部)から立ち上がる鉛直板部164とを有するL字状の台であり、水平板部163の下面が、ガイドレール161に摺動自在に取り付けられている。
【0025】
スライド機構170は、上記チャックテーブル機構120のスライド機構130と同様の構成であり、基台100と水平板部163との間に配されてY方向に延びる螺子ロッド171と、この螺子ロッド171を回転駆動するパルスモータ172とを備えている。螺子ロッド171は、水平板部163の下面に突出形成された図示せぬブラケットに螺合して貫通しており、かつ、軸方向には移動不能な状態で回転自在に支持されている。このスライド機構170によれば、パルスモータ172によって螺子ロッド171が回転すると、その回転方向に応じたY方向に、移動台162がガイドレール161に沿って移動させられる。
【0026】
切削ユニット140は、Y方向に延びる円筒状のハウジング141と、このハウジング141のチャックテーブル機構120側の先端に取り付けられた円盤状の切削ブレード142と、この切削ブレード142で切削する切断ラインを読み取るアライメント手段150とを備えている。切削ユニット140は、移動台162の鉛直板部164のF矢視で左側の面に、ハウジングホルダ165を介して昇降自在に取り付けられている。
【0027】
ハウジングホルダ165は、上記鉛直板部164の左側の面に形成された上下方向に延びるガイドレール166に摺動自在に取り付けられており、鉛直板部164上に固定されたパルスモータ180を駆動源とする昇降機構により、ガイドレール166に沿って昇降させられる。このハウジングホルダ165に、ハウジング141が通され、かつ固定されており、これによって、切削ユニット140は、ハウジングホルダ165とともに昇降自在とされている。
【0028】
図2は、切断装置が備える切削ブレードの取り付け構造を示す側断面図である。図2に示すように、切削ブレード142は、傘状のハブ143の周縁に固着されたいわゆるハブブレードである。ハブ143は、図1のハウジング141内に収容された図示せぬモータによって回転駆動されるスピンドル144の先端に、挟持金具145によって固定されている。スピンドル144の軸方向は図1のY方向と平行であり、このスピンドル144と一体に回転する切削ブレード142の、露出する下側の部分が、マザーボード301(図7参照)に接触し、マザーボード301の切削が行われる。
【0029】
図1に示すように、アライメント手段150は、顕微鏡やCCDカメラ等で構成され、先端に、被写体を撮像する撮像部151を有する。このアライメント手段150は、撮像部151が切削ブレード142の切削送り方向(Y方向)に隣接するように、ハウジング141の先端部に取り付けられている。このアライメント手段150を利用することで、切削カ所に対する切削ブレード142のアライメント(位置合わせ)が行われる。
【0030】
(D)ウォータジェット切断装置
図5は、ウォータジェット切断装置50の概要を示す概念図である。ウォータジェット切断装置50は、砥粒が混合された糸状の高圧水の噴射流を被加工部材に噴射し、砥粒が含まれた噴射流によって被加工部材を切削する。ウォータジェット切断装置50は、糸鋸のように扱うことができるので、部分的な切断、曲線の切断、屈曲した切断を行うのに適している。
【0031】
ウォータジェット切断装置50において、高圧水発生装置501は、給水された水道水や純水などの水を加圧し、それを砥粒混合装置502に供給する。加圧の圧力は、被加工部材の材質や厚さに応じて適宜設定されるが、例えば600〜700(kg/cm2)が利用される。砥粒混合装置502は、高圧水に砥粒を混合し、その混合物を水流制御装置504に送る。また、砥粒混合装置502には、砥粒回収装置503から砥粒が供給される。砥粒は、ガーネット、ダイヤモンド、アルミナ等の数十μm径の粒状体が利用される。水流制御装置504は、被加工部材に対する高圧水流の噴射のON/OFF、および噴射流量の制御を行う。
【0032】
水流制御装置504からの高圧水は、噴射ノズル505に供給され、噴射ノズル505から糸状の高圧水が噴射される。噴射ノズル505は、オリフィス511を備えている。このオリフィス511は、ネジ止めされたオリフィスカバー512によって、噴射ノズル505に固定されている。オリフィス511は、高圧水の噴出径を小さく絞るための部材であり、その噴射口513の口径は例えば250μmである。例えば、噴射ノズル505と被加工部材との距離を50μm〜1mmとし、噴射口513の口径を250μmとすると、被加工物の切断幅(切削幅)は、300μm程度となる。
【0033】
噴射ノズル505から噴出した糸状の高圧水流506は、移動テーブル507に固定された図示しない被加工部材に噴射される。保持テーブル507は、テーブル支持アーム508によって支持されている。テーブル支持アーム508は、テーブル移動装置509によって駆動され、それにより保持テーブル507を2次元的に動かすことができる。
【0034】
被加工部材の切削に使われた水は、キャッチタンク510に回収される。キャッチタンク510内には、砥粒を含む水が所定の水位で貯められており、高圧水流の勢いを緩衝して受け止めるようにされている。砥粒回収装置503は、キャッチタンク510から排出される砥粒を含んだ水から、砥粒を回収し、それを砥粒混合装置502に送り、また不要な砥粒や水を排出する。砥粒の回収は、例えば、フィルターによって行われる。また、キャッチタンク510に砥粒を投入することで、砥粒の補充を行うことができる。
【0035】
図6は、保持テーブル507の概要を示す斜視図(A)と矢視601の方向から見た側面図(B)である。図6(A)に示すように、保持テーブル507は、テーブル支持アーム508によって支持され、その中央には開口部507aが形成されている。高圧水流は、この開口部507aを抜けるので、保持テーブル507が高圧水流によって損傷することはない。保持テーブル507の上面には、被加工部材を固定するためのクランパ507bが配置されている。図6(B)には、クランパ507bによってマザーボード301が保持テーブル507に固定された状態が示されている。
【0036】
(E)切断工程
E−1.第1の切削工程
以下、マザーボード301を切断し、メモリーカード基板を得る工程を説明する。始めに、切削装置10を用いた第1の切削工程について説明する。まず、マザーボード301を図3に示す治具20上に位置合わせを行った状態で載置する。そして、マザーボード301が載置された治具20を、図1に示す切断装置10のチャックテーブル125上に載置する。次いで、チャックテーブル125のバキュームチャック機能を作動させ、治具20をチャックテーブル125上に吸着すると共に、治具20にマザーボード301を吸着する。図8は、治具20を介してマザーボード301をチャックテーブル125に吸着した状態を示す側断面図である。図8に示すように、チャックテーブル125のバキュームチャック機能を作動させると、治具20に設けられた複数の孔204を介して、チャックテーブル125に空気が吸引され、治具20にマザーボード301が吸着される。
【0037】
図8に示す状態でチャックテーブル125上に固定されたマザーボード301への切削は、以下のようにして行われる。まず、切断装置10において、チャックテーブル125の回転角度と、切削ブレード142に対するY軸方向の相対位置を微調整し、切削ブレード142をマザーボード301の第1の切削予定ライン302に合わせる。次に、チャックテーブル125のX軸方向の位置を微調整し、上記第1の切削予定ライン302の切削開始位置に切削ブレード142の位置を合わせる。そして、切削ブレード142を回転させ、さらに切削ブレードのZ軸方向における位置を微調整し、切削ブレード142がマザーボード301を切断し、かつその刃先が治具20の溝201または202に収容される状態とする。この後、チャックテーブル125をX軸方向に動かすことで、マザーボード301に対する切削ブレード142による切削が行われ、マザーボード301が切断される。
【0038】
次にマザーボードを切断する手順についてさらに詳細に説明する。図9は、第1の切削工程の手順を示す概念図である。第1の切削工程においては、図9に示すように、端から第1の切削予定ライン302a→302b→302c→・・・302iの順に切削が行われる。切削は、各切削予定ライン302a…において縁部312から開始され、そこから切削を行わない余剰領域313の方向に向かって行われる。すなわち、まず切削予定ライン302aにおいて、縁部312から切削を開始し、余剰領域313に至った段階でチャックテーブル125の移動を止めると同時に切削ブレード142を上昇させる。そして、チャックテーブル125を元の位置まで戻し、次の切削予定ライン302bに対して同様の作業を行う。この作業工程を繰り返すことで、切削予定ライン302a〜302iを順に切削して切断する。切削予定ライン302a〜302iが切断されることで、短冊状のメモリーカード領域305の列314が複数形成され、それらが余剰領域313によって繋がった櫛状の状態となる。
【0039】
E−2.角部切断工程
図9に示す第1の切削予定ライン302a…の切断が終了したら、メモリーカード領域305の角部を切除する角部切断工程を行う。角部切断工程は、図5に示すウォータジェット切断装置50を用いて行う。そのために、先ずチャックテーブル125のバキュームチャック機能を停止し、治具20からマザーボード301を取り外してウォータジェット切断装置50の保持テーブル507に装着する。図10は、角部切断工程の手順を示す概念図である。図10において、符号315a〜315cのラインが、それぞれ図9に示す第1の切削予定ライン302a〜302cを切削した後の切断線である。以下、図10を参照して角部切断工程の一例を詳細に説明する。
【0040】
図5のウォータジェット切断装置を用いた切断工程においては、まず糸状の高圧水を噴射し、噴射流を安定させる。そして、図10(A)に示すように、矢印316aによって示される切断線315bをなぞり、角部切断予定ライン303の端部まで噴射流を移動させる。この段階では、既に切断されている線状の隙間をなぞるだけであるので、噴射流によるマザーボード301の切断は行われない。
【0041】
次に、角部切断予定ライン303に、図10(B)の矢印316bで示す経路で高圧水流を移動させ、角部切断予定ライン303を切削する。この切削は、マザーボード301の厚さ方向に切削が完全に行われる条件で行う。角部切断予定ライン303の切断が終了したら、図10(c)の矢印316cで示されるように、その切断線を逆方向になぞって噴射流を移動させ、切削線315bに戻る。そして、図10(D)の矢印316dによって示されるように再び切削跡315bを高圧水流でなぞり、次の切削予定ライン303の端部まで高圧水流を移動させる。そして、以上の作業を繰り返し、角部切断予定ライン303を順次切断する。
【0042】
図11は、角部切断工程が終了した状態を示す概念図である。図11には、第1切削工程において切断された切削線315a〜315i、角部切断工程において切断された斜め切断線317、さらに次の第2切削工程において切断される第2の切削予定ライン304a〜304fが示されている。
【0043】
E−3.第2の切削工程
次に、図13を参照して第2の切削工程を行う手順について説明する。第2の切削工程は、切断装置10によって行うから、先ずマザーボード301をウォータジェット切断装置50の保持テーブル507から取り外して、チャックテーブル125上の治具20に載置して位置決めする。次いで、チャックテーブル125のバキュームチャック機能を作動させ、チャックテーブル125を90°回転させて切削可能な状態とする。
【0044】
図13には、第2の切削工程の第2切削予定ライン304a〜304fの内、最下段の第2の切削予定ライン304aを切断する状態が示されている。第2の切削工程における切断は、第2の切削予定ライン304a→304b→304c→・・・304fの順に行われる。これにより、各メモリーカード領域305は、マザーボード301からそれぞれ分割される。その際、切削ブレード142が角部切断工程において切断された斜め切断線317の端部に達すると、角部はメモリーカード領域305から分離され、図14に示すメモリーカード基板320単体を得ることができる。その後、チャックテーブル125のバキュームチャック機能を停止し、メモリーカード基板320を載置した治具20を次の工程に搬送する。
【0045】
上記実施形態では、メモリーカード基板320の分割加工の大部分をなす第1、第2の分割予定ライン302,304の切断が、切削ブレード142を用いた切削によって行われ、角部の切断のみがウォータジェット切断装置50によって行われる。つまり、低コストで作業効率の良い切削ブレード142を用いて大部分の加工を行い、高コストなウォータジェット切断装置50を用いて残余の部分の加工を行うから、製造コストの増加や加工効率の低下を最小限に抑えつつ角部が切除された形状のメモリーカード基板の分割を行うことができる。
【0046】
2.変形例
図15は、第1の実施形態における図10に示すウォータジェット切断装置50による切断経路の変形例を示すものである。この例では、角部切断予定ライン303の切断において、糸状の高圧水流を矢印318a→矢印318b→矢印318c→矢印318dと進め、この際、矢印318bおよび矢印318cの部分において、高圧水の噴射流を用いたマザーボード301の切断を行う。なお、高圧水の噴射流を用いた切断を極力少なくするという観点からは図10に示す経路の方が有利である。
【0047】
3.第2の実施形態
(A)ダイシングテープの構成
本実施形態は、レーザ光を用いてマザーボード301の角部切断工程を行う例である。この実施形態では、マザーボード301をダイシングテープに固定して分割するので、まず、ダイシングテープの構成について説明する。
【0048】
図4は、ダイシングテープ(保護部材)401の概要を示す斜視図(A)と側断面図(B)である。図4に示すダイシングテープ401は、表面に粘着剤層を備えた柔軟性のある円形のテープ402からなり、粘着剤層にマザーボード301が貼着されるとともに、マザーボード301を粘着剤層から剥がすこともできる。テープ402の縁部には、リング状のフレーム403が貼着されている。フレーム403は、金属製の板で構成され、フレーム403によってダイシングテープ401をハンドリングすることもできる。なお、ダイシングテープ401を用いた場合、切削ブレード142を用いた切削において、切削ブレード142によってテープ402がハーフカットされるように切削ブレード142の高さが調整される。
【0049】
(B)レーザ切断装置の構成
次に、図16は、レーザ切断装置を示す概念図である。レーザ切断装置70は、レーザ発振器701、ミラー702、光学系703、X―Yステージ704を備えている。レーザ発振器701において発生したレーザ光は、ミラー702によってビーム方向が変えられ、光学系703に導かれる。光学系703において、レーザ光は、焦点位置やビーム径が調整され、XYテーブル704上に照射される。
【0050】
XYテーブル704は、X−Y平面内において自在に移動可能となっている。XYテーブル704上には、クランパ704bが設けられ、このクランパ704bによって、図4に示すダイシングテープ401がXYテーブル704に取り付けられる。図16では、ダイシングテープ401にマザーボード301が貼着された状態が示されている。また、本実施形態においては、テープ402として、レーザ光を吸収しないかあるいは吸収し難い材料を選択する。例えば、テープ402の材料として、使用するレーザ光を80%以上透過するものを選択する。
【0051】
(C)切断工程
C−1.第1の切削工程
本実施形態では、第1の切削工程→角部切断工程→第2の切削工程の全体をマザーボード301をダイシングテープ401に固定して行う。図12は、ダイシングテープ401をチャックテーブル125に吸着させた状態を示す側面図である。先ずダイシングテープ401に、マザーボード301を粘着させる。次に、ダイシングテープ401をチャックテーブル125上に載置し、チャックテーブル125のバキューム吸着機能を作動させてダイシングテープ401をチャックテーブル125上に吸着する。この状態で、第1の実施形態と同様にして第1の切削工程を行う。
【0052】
C−2.角部切断工程
第1の切削工程が終了したら、ダイシングテープ401をチャックテーブル125から取り外し、レーザ切断装置70のXYテーブル704に取り付ける。レーザ光を用いる本実施形態では、レーザ光照射のON/OFFを随時切り換えることができるので、例えば図10に示す経路で切断を行う場合には、図10(B)の矢印316bで示す経路においてのみ、レーザ光を照射し、マザーボード301の切断を行う。この場合、切削跡315bの1点からレーザ光の照射を開始して角部切断予定ライン303に沿って移動させ、第2の切削工程における第2の切削予定ライン304に至った段階でレーザ光の照射を停止する。これにより、矢印316bによって示される斜め切断線の形成が行われる。
【0053】
C−3.第2の切削工程
角部切断工程が終了したら、ダイシングテープ401をXYテーブル704から取り外し、
チャックテーブル125に吸着させる。そして、第1の実施形態と同様にして第2の切削工程を行う。第2の切削工程が終了したら、分割されたメモリーカード基板320を貼着させたダイシングテープ401を次の工程へ搬送する。
【0054】
上記第2の実施形態では、ダイシングテープ401にマザーボード301を固定したまま第1の切削工程から第2の切削工程までを行うので、前述の第1の実施形態と比較してハンドリングや位置決めが極めて容易であるという利点がある。また、ダイシングテープ401の粘着剤層にマザーボード301全体が固定されるので、マザーボード301に余剰領域313を設ける必要がない。このため、マザーボード301において、メモリカードとして利用されないデットスペースを減らすことができ、材料歩留まりを向上させることができる。
【0055】
(D)変形例
第2の実施形態では、全工程でダイシングテープ401を用いているが、第1の切削工程だけ治具20を用いることも可能である。なお、この場合には、マザーボード301のハンドリングのために、余剰領域313を設ける必要がある。
また、第1の実施形態において、第2の切削工程からダイシングテープ401を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、角部が切除されたメモリーカードを安価にかつ効率良く製造することができ、その製造技術に適用して極めて有望である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態で使用する切断装置を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態において切断装置が備える切削ブレードの取り付け構造を示す側断面図である。
【図3】第1の実施形態においてチャックテーブルにマザーボードを固定する治具の斜視図(A)、上面図(B)および側面図(C)である。
【図4】第1の実施形態におけるダイシングテープの概要を示す斜視図(A)および側断面図(B)である。
【図5】第1の実施形態で使用するウォータジェット切断装置の概要を示す概念図である。
【図6】第1の実施形態における保持テーブルの概要を示す斜視図(A)と側面図である。
【図7】第1の実施形態におけるマザーボードの概要を示す上面図である。
【図8】第1の実施形態における治具を介してマザーボードをチャックテーブルに固定した状態を示す側断面図である。
【図9】第1の実施形態における第1の切削工程の手順を示す概念図である。
【図10】第1の実施形態における角部切断工程の手順を示す概念図である。
【図11】第1の実施形態における角部切断工程の終了段階を示す概念図である。
【図12】第1の実施形態においてダイシングテープをチャックテーブルに載置した状態を示す側面図である。
【図13】第1の実施形態における第2の切削工程の手順を示す概念図である
【図14】第1の実施形態におけるメモリーカードの概要を示す上面図である。
【図15】第1の実施形態における角部切断工程の他の手順を示す概念図である。
【図16】第2の実施形態で使用するレーザ切断装置の概要を示す概念図である。
【符号の説明】
【0058】
10…切断装置、20…治具、50…ウォータジェット切断装置、
125…チャックテーブル、 142…切削ブレード、201…溝、202…溝、
203…メモリーカード対応領域、301…マザーボード、
302(302a〜302i)…第1の切削予定ライン、
303…角部切断予定ライン、
304(304a〜304f)…第2の切削予定ライン、
305…メモリーカード領域、313…余剰領域、315a〜315i…切断線、
316a〜316d…切削経路、317…斜め切断線、320…メモリーカード基板、
401…ダイシングテープ(保護部材)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリーカードの基材として用いられるメモリーカード基板を得るための技術に係り、特に、メモリーカード基板の角部を切除する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
SDカード等のメモリーカードは、ガラスエポキシ樹脂等の材料で構成されるメモリーカード基板の表面や裏面に、半導体チップ、配線、および電極等を配置し、さらに保護のための樹脂モールドを行った基本構造を有している。メモリーカードは、その角部の内1カ所を斜めに切除した形状とすることで、カードの挿入方向を特定できるようになっている。このため、メモリーカードの基材であるメモリーカード基板の角部の一つも同様に斜めに切除されている。
【0003】
メモリーカードの製造においては、まずマザーボードと呼ばれる基板上に複数のメモリーカードの構造を配置し、その後にマザーボードを縦横に切断することで、メモリ機能が作り込まれた各メモリーカード基板を得る。この切断では、ダイシング装置などを用いる方法がコストや作業効率の点で有利である。一方、高圧水流やレーザ光を用いた方法により、各種の基板を加工する技術も知られている。高圧水流を用いた切断技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005―161460号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メモリーカードは縦横の寸法が数センチ程度と小さいので、ダイシング装置のような回転するブレードを用いる切断装置では、上述した基板の角部の斜め切除を行うことは困難である。一方、高圧水流やレーザ光を用いた方法は、ダイシング装置を利用した場合に比較して、微細な加工が可能であり、上述したメモリーカード基板における角部の斜め切除加工を行うことが可能である。しかしながら、高圧水流やレーザ光を用いた方法は、加工コストが高くしかも加工効率が劣るという欠点がある。
したがって、本発明は、角部が切除された形状のメモリーカード基板を得る技術において、製造コストを低減すると共に生産性を向上させることができるメモリカード基板の分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1のメモリーカード基板の分割方法は、第1の分割予定ラインとそれに直交する第2の分割予定ラインとによって区画されたメモリーカード領域と、このメモリーカード領域の外側に設けられた余剰領域とから構成されたマザーボードを個々のメモリーカード領域に分割するメモリーカード基板の分割方法であって、第1の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を形成するとともに、このメモリーカード領域の列の一側に、切削を行わないで余剰領域を残存させる第1の切削工程と、この第1の切削工程における切削により形成された切断線に沿って糸状の高圧水を噴射し、切断線をなぞるとともに個々のメモリーカード領域の所定の角部に斜め切断線を形成する角部切断工程と、第2の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を個々のメモリーカード領域に分割する第2の切削工程とを備えたことを特徴としている。
【0007】
第1のモリカード基板の分割方法によれば、メモリーカード基板の分割加工の大部分をなす第1、第2の分割予定ラインの切断が、切削ブレードを用いた切削によって行われ、角部の切断のみが高圧水の噴射によって行われる。つまり、低コストで作業効率の良い切削ブレードを用いて大部分の加工を行い、高コストな高圧水噴射を用いて残余の部分の加工を行うから、製造コストの増加や加工効率の低下を最小限に抑えつつ角部が切除された形状のメモリーカード基板の分割を行うことができる。
【0008】
より具体的には、第1の切削工程において、マザーボードは、切削ブレードを用いて第1の分割予定ラインに沿って切削されることにより、端部が余剰領域によって繋がった櫛状に切断される。そして、第1の切削工程で切断された切断線をなぞって高圧水の噴射流を移動させながらメモリーカード領域の角の部分のみを切断する。この場合において、角部切断工程は、斜め切断線を形成した後に、斜め切断線を逆方向になぞるように高圧水の噴射流を移動させ、第1の切削工程における切削により切断された切断線に戻る工程を備えることが望ましい。他の態様としては、角部切断工程が完了したら高圧水の噴射を止め、次のメモリーカード領域の切断線から角部切断工程を開始することもできるが、高圧水の噴射を止めると加工効率が低下する。さらに他の態様として、角部切断工程が完了したら、高圧水の噴射流を第2の分割予定ラインを切断しながら第1の切削工程で切断した切断線に戻る方法がある。ただし、この方法では、後に第2の切削工程で切断される部分を高圧水の噴射流で切断するから、無駄が多いという不利益は否めない。
【0009】
以上の工程を繰り返すことで、全てのメモリーカード領域に対する角部切断工程が実行される。角部切断工程が終了したら、第1の切削工程における切削方向に直交する第2の分割予定ラインに沿って切削を行う第2の切削工程を行う。これにより、短冊状に1列に繋がった複数のメモリーカード領域を、それぞれのメモリーカード基板に分割する。また、直角三角形状をなす角部の残りの一辺が切断されるので、角部はメモリーカード基板から分離される。
【0010】
なお、本発明が適用されるマザーボードの切断は、メモリーカードとしての機能が作り込まれる任意の段階で可能である。例えば、半導体メモリの配置完了段階、配線や電極の形成が終了した段階、一部電極等が形成されていない中間段階、樹脂モールドを行う前の段階、樹脂モールドが終了した段階、最終工程が終了した段階等の任意の段階において、本発明を適用することができる。またマザーボードは、メモリーカード基板として利用可能な材料であれば、特にその材質は限定されない。例えば、マザーボードとして、ガラスエポキシ基板やフッ素樹脂基板を挙げることができる。また、マザーボードは、単層構造に限定されず、多層構造であってもよい。
【0011】
上記第2の切削工程を行う前に、マザーボードを保護部材上に固定することもできる。保護部材としてはダイシングテープが好適であり、マザーボード全体を粘着力によって固定する機能を有する。第2の切削工程は、第1の分割予定ラインに切り目が入れられたマザーボードに対して、第1の分割予定ラインに直交する第2の分割予定ラインに沿って切削が行われ、各メモリーカード領域が分割されてメモリーカード基板が得られる工程である。また、第2の切削工程の後、分割された各メモリーカード基板は、次の工程に送られる。そのため、切削装置から取りはずしても、各メモリーカード基板がダイシングテープ上に貼着された状態にある方が扱い易い。このような利点は、以下に説明する本発明の他の特徴でも得ることができる。
【0012】
次に、本発明の第2のメモリーカード基板の分割方法は、第1の分割予定ラインとそれに直交する第2の分割予定ラインとによって区画されたメモリーカード領域と、このメモリーカード領域の外側に設けられた余剰領域とから構成されたマザーボードを個々のメモリーカード領域に分割するメモリーカード基板の分割方法であって、第1の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を形成するとともに、このメモリーカード領域の列の一側に、切削を行わないで余剰領域を残存させる第1の切削工程と、この第1の切削工程における切削により切断された切断線上からレーザ光を斜めに送って個々のメモリーカード領域の所定の角部に斜め切断線を形成する角部切断工程と、第2の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を個々のメモリーカード領域に分割する第2の切削工程とを備えたことを特徴としている。
【0013】
上記第2の発明によれば、斜め切断線の切断を行う時だけ、レーザ光の照射を行えばよいので、エネルギーの利用効率を高め、製造コストを低減することができるのは勿論のこと、第1の発明のように糸状の高圧水で切断線をなぞる必要がないので加工効率が向上する。
【0014】
また、本発明の第2のメモリーカード基板の分割方法では、第1の切削工程〜第2の切削工程において上述した保護部材上にマザーボードを固定すると好適である。この態様によれば、ダイシングテープなどの保護部材上にマザーボードを固定した状態で第1の切削工程、角部切断工程および第2の切削工程を行うことができる。このため、各工程間におけるハンドリングが容易であり、作業性を高めることができる。また、マザーボード全体が保護部材上で固定された状態となるので、短冊状のメモリーカード領域の列を接続する余剰領域を必要としない。このため、マザーボードの材料歩留まりを向上させることができる。この場合において、保護部材は、レーザ光を吸収しない材料で構成されることが好ましく、これにより、保護部材がレーザー光の照射によって損傷を受け難くすることができる。レーザ光を吸収しない材料としては、使用するレーザ光を80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上透過するものであることが好ましい。保護部材として利用可能なレーザ光を透過し易い材料としては、ポリオレフィン(PO)を挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、メモリーカード基板の分割加工の大部分をなす第1、第2の分割予定ラインの切断が、切削ブレードを用いた切削によって行われ、角部の切り落としのみが高圧水の噴射またはレーザ光の照射によって行われるから、コストや加工効率の犠牲を最小限に抑えつつ角部が切除された形状のメモリーカード基板の分割を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
1.第1の実施形態
(A)マザーボードの構成
図7は、この実施形態で分割加工するマザーボード301の平面図であり、マザーボード301は、ガラスエポキシ樹脂を矩形状の板に成形したものである。図7において符号302は、第1の切削工程において切削される第1の切断予定ラインであり、符号304は、第2の切削工程において切削される第2の切断予定ラインである。符号305の矩形状の領域は、これら第1、第2の切削予定ライン302,304によって区画されるメモリーカード領域である。また、符号303は、メモリーカード領域305の角部を切り落とすための斜め切断予定ライン303である。
【0017】
(B)治具の構成
図3は、図1に示すチャックテーブル125にマザーボード301を吸着するための治具20の斜視図(A)、上面図(B)および側面図(C)である。治具20の上面には、X軸方向に延在した溝201とY方向に延在した溝202が形成されている。この溝201,202が形成されている面上にマザーボード301が位置決めをして載置される。溝201は、マザーボード301が載置された状態において、図1に示す切断装置10を用いた図中X軸方向への切削が行われる際に、切削ブレード142の逃げ溝として機能する。また、溝202は、同様な状態における図中Y軸方向への切断が行われる際に切削ブレード142の逃げ溝として機能する。
【0018】
治具20の上面には、溝201,202によって複数のメモリーカード対応領域203が区画されている。各メモリーカード対応領域203には、治具20の上下面に連通する複数の孔204が形成されている。この孔204によって、チャックテーブル125が備えるバキュームチャック機能による吸引が、治具20上に載置されるマザーボード301に作用し、治具20を介してマザーボード301をチャックテーブル125に吸着することができる。
【0019】
(C)切断装置の構成
図1は、切断装置10を示す斜視図である。図1に示す切断装置10は、基台100を備えており、この基台100上に、チャックテーブル機構120、切削ユニット140、および切削ユニット支持機構160を備えている。チャックテーブル機構120は、治具20(図3参照)またはダイシングテープ401(図4参照)を、水平に保持するとともに切削送り方向(図1でX方向)に移動させる。切削ユニット140は、切削用の治具20またはダイシングテープ401上に固定されたマザーボード301(図7参照)を所定の切削ラインに沿って切削し切断する。切削ユニット支持機構160は、切削ユニット140を支持するとともに、それを図1でY方向に移動させる。また、切削ユニット140は、切削ユニット支持機構160に対し、切り込み方向(図1でZ方向)に移動自在に取り付けられている。
【0020】
チャックテーブル機構120は、基台100上のY方向一端側に配されており、基台100に固定されたX方向に延びる一対のガイドレール121と、これらガイドレール121上に摺動自在に取り付けられた移動板122と、この移動板122上に円筒状のポスト123を介して支持されたステージ124と、このステージ124上に回転自在に取り付けられた円盤状のチャックテーブル125と、移動板122をガイドレール121に沿って移動させるスライド機構130とを備えている。
【0021】
チャックテーブル125は、上面が水平であり、Z方向を回転軸として、ポスト123内に収容された図示せぬ回転駆動機構により時計方向または反時計方向に回転させられる。チャックテーブル125のチャック方式は、周知のバキュームチャックであり、チャックテーブル125には、表裏面に通じる吸引孔が形成され、裏面側に、図示せぬバキューム装置の空気吸引口が接続されている。そして、そのバキューム装置を運転すると、切削用治具20またはダイシングテープ401がチャックテーブル125上に吸着・保持される。
【0022】
スライド機構130は、基台100と移動板122との間に配されてX方向に延びる螺子ロッド131と、この螺子ロッド131を回転駆動するパルスモータ132とを備えている。螺子ロッド131は、移動板122の下面に突出形成された図示せぬブラケットに螺合して貫通しており、かつ、軸方向には移動不能な状態で回転自在に支持されている。このスライド機構130によれば、パルスモータ132によって螺子ロッド131が回転すると、その回転方向に応じたX方向に、移動板122がガイドレール121に沿って移動させられる。
【0023】
切削ユニット支持機構160は、基台100上に、上記チャックテーブル機構120のガイドレール121とともにT字状を呈するように配されて固定されたY方向に延びる一対のガイドレール161と、これらガイドレール161上に摺動自在に取り付けられた移動台162と、この移動台162をガイドレールに沿って移動させるスライド機構170とを備えている。
【0024】
移動台162は、水平板部163と、この水平板部163のX方向一端部(この場合、基台100のチャックテーブル機構120側の端部からY方向に沿って切削ユニット140の方向を見た図1のF矢視において右側の端部)から立ち上がる鉛直板部164とを有するL字状の台であり、水平板部163の下面が、ガイドレール161に摺動自在に取り付けられている。
【0025】
スライド機構170は、上記チャックテーブル機構120のスライド機構130と同様の構成であり、基台100と水平板部163との間に配されてY方向に延びる螺子ロッド171と、この螺子ロッド171を回転駆動するパルスモータ172とを備えている。螺子ロッド171は、水平板部163の下面に突出形成された図示せぬブラケットに螺合して貫通しており、かつ、軸方向には移動不能な状態で回転自在に支持されている。このスライド機構170によれば、パルスモータ172によって螺子ロッド171が回転すると、その回転方向に応じたY方向に、移動台162がガイドレール161に沿って移動させられる。
【0026】
切削ユニット140は、Y方向に延びる円筒状のハウジング141と、このハウジング141のチャックテーブル機構120側の先端に取り付けられた円盤状の切削ブレード142と、この切削ブレード142で切削する切断ラインを読み取るアライメント手段150とを備えている。切削ユニット140は、移動台162の鉛直板部164のF矢視で左側の面に、ハウジングホルダ165を介して昇降自在に取り付けられている。
【0027】
ハウジングホルダ165は、上記鉛直板部164の左側の面に形成された上下方向に延びるガイドレール166に摺動自在に取り付けられており、鉛直板部164上に固定されたパルスモータ180を駆動源とする昇降機構により、ガイドレール166に沿って昇降させられる。このハウジングホルダ165に、ハウジング141が通され、かつ固定されており、これによって、切削ユニット140は、ハウジングホルダ165とともに昇降自在とされている。
【0028】
図2は、切断装置が備える切削ブレードの取り付け構造を示す側断面図である。図2に示すように、切削ブレード142は、傘状のハブ143の周縁に固着されたいわゆるハブブレードである。ハブ143は、図1のハウジング141内に収容された図示せぬモータによって回転駆動されるスピンドル144の先端に、挟持金具145によって固定されている。スピンドル144の軸方向は図1のY方向と平行であり、このスピンドル144と一体に回転する切削ブレード142の、露出する下側の部分が、マザーボード301(図7参照)に接触し、マザーボード301の切削が行われる。
【0029】
図1に示すように、アライメント手段150は、顕微鏡やCCDカメラ等で構成され、先端に、被写体を撮像する撮像部151を有する。このアライメント手段150は、撮像部151が切削ブレード142の切削送り方向(Y方向)に隣接するように、ハウジング141の先端部に取り付けられている。このアライメント手段150を利用することで、切削カ所に対する切削ブレード142のアライメント(位置合わせ)が行われる。
【0030】
(D)ウォータジェット切断装置
図5は、ウォータジェット切断装置50の概要を示す概念図である。ウォータジェット切断装置50は、砥粒が混合された糸状の高圧水の噴射流を被加工部材に噴射し、砥粒が含まれた噴射流によって被加工部材を切削する。ウォータジェット切断装置50は、糸鋸のように扱うことができるので、部分的な切断、曲線の切断、屈曲した切断を行うのに適している。
【0031】
ウォータジェット切断装置50において、高圧水発生装置501は、給水された水道水や純水などの水を加圧し、それを砥粒混合装置502に供給する。加圧の圧力は、被加工部材の材質や厚さに応じて適宜設定されるが、例えば600〜700(kg/cm2)が利用される。砥粒混合装置502は、高圧水に砥粒を混合し、その混合物を水流制御装置504に送る。また、砥粒混合装置502には、砥粒回収装置503から砥粒が供給される。砥粒は、ガーネット、ダイヤモンド、アルミナ等の数十μm径の粒状体が利用される。水流制御装置504は、被加工部材に対する高圧水流の噴射のON/OFF、および噴射流量の制御を行う。
【0032】
水流制御装置504からの高圧水は、噴射ノズル505に供給され、噴射ノズル505から糸状の高圧水が噴射される。噴射ノズル505は、オリフィス511を備えている。このオリフィス511は、ネジ止めされたオリフィスカバー512によって、噴射ノズル505に固定されている。オリフィス511は、高圧水の噴出径を小さく絞るための部材であり、その噴射口513の口径は例えば250μmである。例えば、噴射ノズル505と被加工部材との距離を50μm〜1mmとし、噴射口513の口径を250μmとすると、被加工物の切断幅(切削幅)は、300μm程度となる。
【0033】
噴射ノズル505から噴出した糸状の高圧水流506は、移動テーブル507に固定された図示しない被加工部材に噴射される。保持テーブル507は、テーブル支持アーム508によって支持されている。テーブル支持アーム508は、テーブル移動装置509によって駆動され、それにより保持テーブル507を2次元的に動かすことができる。
【0034】
被加工部材の切削に使われた水は、キャッチタンク510に回収される。キャッチタンク510内には、砥粒を含む水が所定の水位で貯められており、高圧水流の勢いを緩衝して受け止めるようにされている。砥粒回収装置503は、キャッチタンク510から排出される砥粒を含んだ水から、砥粒を回収し、それを砥粒混合装置502に送り、また不要な砥粒や水を排出する。砥粒の回収は、例えば、フィルターによって行われる。また、キャッチタンク510に砥粒を投入することで、砥粒の補充を行うことができる。
【0035】
図6は、保持テーブル507の概要を示す斜視図(A)と矢視601の方向から見た側面図(B)である。図6(A)に示すように、保持テーブル507は、テーブル支持アーム508によって支持され、その中央には開口部507aが形成されている。高圧水流は、この開口部507aを抜けるので、保持テーブル507が高圧水流によって損傷することはない。保持テーブル507の上面には、被加工部材を固定するためのクランパ507bが配置されている。図6(B)には、クランパ507bによってマザーボード301が保持テーブル507に固定された状態が示されている。
【0036】
(E)切断工程
E−1.第1の切削工程
以下、マザーボード301を切断し、メモリーカード基板を得る工程を説明する。始めに、切削装置10を用いた第1の切削工程について説明する。まず、マザーボード301を図3に示す治具20上に位置合わせを行った状態で載置する。そして、マザーボード301が載置された治具20を、図1に示す切断装置10のチャックテーブル125上に載置する。次いで、チャックテーブル125のバキュームチャック機能を作動させ、治具20をチャックテーブル125上に吸着すると共に、治具20にマザーボード301を吸着する。図8は、治具20を介してマザーボード301をチャックテーブル125に吸着した状態を示す側断面図である。図8に示すように、チャックテーブル125のバキュームチャック機能を作動させると、治具20に設けられた複数の孔204を介して、チャックテーブル125に空気が吸引され、治具20にマザーボード301が吸着される。
【0037】
図8に示す状態でチャックテーブル125上に固定されたマザーボード301への切削は、以下のようにして行われる。まず、切断装置10において、チャックテーブル125の回転角度と、切削ブレード142に対するY軸方向の相対位置を微調整し、切削ブレード142をマザーボード301の第1の切削予定ライン302に合わせる。次に、チャックテーブル125のX軸方向の位置を微調整し、上記第1の切削予定ライン302の切削開始位置に切削ブレード142の位置を合わせる。そして、切削ブレード142を回転させ、さらに切削ブレードのZ軸方向における位置を微調整し、切削ブレード142がマザーボード301を切断し、かつその刃先が治具20の溝201または202に収容される状態とする。この後、チャックテーブル125をX軸方向に動かすことで、マザーボード301に対する切削ブレード142による切削が行われ、マザーボード301が切断される。
【0038】
次にマザーボードを切断する手順についてさらに詳細に説明する。図9は、第1の切削工程の手順を示す概念図である。第1の切削工程においては、図9に示すように、端から第1の切削予定ライン302a→302b→302c→・・・302iの順に切削が行われる。切削は、各切削予定ライン302a…において縁部312から開始され、そこから切削を行わない余剰領域313の方向に向かって行われる。すなわち、まず切削予定ライン302aにおいて、縁部312から切削を開始し、余剰領域313に至った段階でチャックテーブル125の移動を止めると同時に切削ブレード142を上昇させる。そして、チャックテーブル125を元の位置まで戻し、次の切削予定ライン302bに対して同様の作業を行う。この作業工程を繰り返すことで、切削予定ライン302a〜302iを順に切削して切断する。切削予定ライン302a〜302iが切断されることで、短冊状のメモリーカード領域305の列314が複数形成され、それらが余剰領域313によって繋がった櫛状の状態となる。
【0039】
E−2.角部切断工程
図9に示す第1の切削予定ライン302a…の切断が終了したら、メモリーカード領域305の角部を切除する角部切断工程を行う。角部切断工程は、図5に示すウォータジェット切断装置50を用いて行う。そのために、先ずチャックテーブル125のバキュームチャック機能を停止し、治具20からマザーボード301を取り外してウォータジェット切断装置50の保持テーブル507に装着する。図10は、角部切断工程の手順を示す概念図である。図10において、符号315a〜315cのラインが、それぞれ図9に示す第1の切削予定ライン302a〜302cを切削した後の切断線である。以下、図10を参照して角部切断工程の一例を詳細に説明する。
【0040】
図5のウォータジェット切断装置を用いた切断工程においては、まず糸状の高圧水を噴射し、噴射流を安定させる。そして、図10(A)に示すように、矢印316aによって示される切断線315bをなぞり、角部切断予定ライン303の端部まで噴射流を移動させる。この段階では、既に切断されている線状の隙間をなぞるだけであるので、噴射流によるマザーボード301の切断は行われない。
【0041】
次に、角部切断予定ライン303に、図10(B)の矢印316bで示す経路で高圧水流を移動させ、角部切断予定ライン303を切削する。この切削は、マザーボード301の厚さ方向に切削が完全に行われる条件で行う。角部切断予定ライン303の切断が終了したら、図10(c)の矢印316cで示されるように、その切断線を逆方向になぞって噴射流を移動させ、切削線315bに戻る。そして、図10(D)の矢印316dによって示されるように再び切削跡315bを高圧水流でなぞり、次の切削予定ライン303の端部まで高圧水流を移動させる。そして、以上の作業を繰り返し、角部切断予定ライン303を順次切断する。
【0042】
図11は、角部切断工程が終了した状態を示す概念図である。図11には、第1切削工程において切断された切削線315a〜315i、角部切断工程において切断された斜め切断線317、さらに次の第2切削工程において切断される第2の切削予定ライン304a〜304fが示されている。
【0043】
E−3.第2の切削工程
次に、図13を参照して第2の切削工程を行う手順について説明する。第2の切削工程は、切断装置10によって行うから、先ずマザーボード301をウォータジェット切断装置50の保持テーブル507から取り外して、チャックテーブル125上の治具20に載置して位置決めする。次いで、チャックテーブル125のバキュームチャック機能を作動させ、チャックテーブル125を90°回転させて切削可能な状態とする。
【0044】
図13には、第2の切削工程の第2切削予定ライン304a〜304fの内、最下段の第2の切削予定ライン304aを切断する状態が示されている。第2の切削工程における切断は、第2の切削予定ライン304a→304b→304c→・・・304fの順に行われる。これにより、各メモリーカード領域305は、マザーボード301からそれぞれ分割される。その際、切削ブレード142が角部切断工程において切断された斜め切断線317の端部に達すると、角部はメモリーカード領域305から分離され、図14に示すメモリーカード基板320単体を得ることができる。その後、チャックテーブル125のバキュームチャック機能を停止し、メモリーカード基板320を載置した治具20を次の工程に搬送する。
【0045】
上記実施形態では、メモリーカード基板320の分割加工の大部分をなす第1、第2の分割予定ライン302,304の切断が、切削ブレード142を用いた切削によって行われ、角部の切断のみがウォータジェット切断装置50によって行われる。つまり、低コストで作業効率の良い切削ブレード142を用いて大部分の加工を行い、高コストなウォータジェット切断装置50を用いて残余の部分の加工を行うから、製造コストの増加や加工効率の低下を最小限に抑えつつ角部が切除された形状のメモリーカード基板の分割を行うことができる。
【0046】
2.変形例
図15は、第1の実施形態における図10に示すウォータジェット切断装置50による切断経路の変形例を示すものである。この例では、角部切断予定ライン303の切断において、糸状の高圧水流を矢印318a→矢印318b→矢印318c→矢印318dと進め、この際、矢印318bおよび矢印318cの部分において、高圧水の噴射流を用いたマザーボード301の切断を行う。なお、高圧水の噴射流を用いた切断を極力少なくするという観点からは図10に示す経路の方が有利である。
【0047】
3.第2の実施形態
(A)ダイシングテープの構成
本実施形態は、レーザ光を用いてマザーボード301の角部切断工程を行う例である。この実施形態では、マザーボード301をダイシングテープに固定して分割するので、まず、ダイシングテープの構成について説明する。
【0048】
図4は、ダイシングテープ(保護部材)401の概要を示す斜視図(A)と側断面図(B)である。図4に示すダイシングテープ401は、表面に粘着剤層を備えた柔軟性のある円形のテープ402からなり、粘着剤層にマザーボード301が貼着されるとともに、マザーボード301を粘着剤層から剥がすこともできる。テープ402の縁部には、リング状のフレーム403が貼着されている。フレーム403は、金属製の板で構成され、フレーム403によってダイシングテープ401をハンドリングすることもできる。なお、ダイシングテープ401を用いた場合、切削ブレード142を用いた切削において、切削ブレード142によってテープ402がハーフカットされるように切削ブレード142の高さが調整される。
【0049】
(B)レーザ切断装置の構成
次に、図16は、レーザ切断装置を示す概念図である。レーザ切断装置70は、レーザ発振器701、ミラー702、光学系703、X―Yステージ704を備えている。レーザ発振器701において発生したレーザ光は、ミラー702によってビーム方向が変えられ、光学系703に導かれる。光学系703において、レーザ光は、焦点位置やビーム径が調整され、XYテーブル704上に照射される。
【0050】
XYテーブル704は、X−Y平面内において自在に移動可能となっている。XYテーブル704上には、クランパ704bが設けられ、このクランパ704bによって、図4に示すダイシングテープ401がXYテーブル704に取り付けられる。図16では、ダイシングテープ401にマザーボード301が貼着された状態が示されている。また、本実施形態においては、テープ402として、レーザ光を吸収しないかあるいは吸収し難い材料を選択する。例えば、テープ402の材料として、使用するレーザ光を80%以上透過するものを選択する。
【0051】
(C)切断工程
C−1.第1の切削工程
本実施形態では、第1の切削工程→角部切断工程→第2の切削工程の全体をマザーボード301をダイシングテープ401に固定して行う。図12は、ダイシングテープ401をチャックテーブル125に吸着させた状態を示す側面図である。先ずダイシングテープ401に、マザーボード301を粘着させる。次に、ダイシングテープ401をチャックテーブル125上に載置し、チャックテーブル125のバキューム吸着機能を作動させてダイシングテープ401をチャックテーブル125上に吸着する。この状態で、第1の実施形態と同様にして第1の切削工程を行う。
【0052】
C−2.角部切断工程
第1の切削工程が終了したら、ダイシングテープ401をチャックテーブル125から取り外し、レーザ切断装置70のXYテーブル704に取り付ける。レーザ光を用いる本実施形態では、レーザ光照射のON/OFFを随時切り換えることができるので、例えば図10に示す経路で切断を行う場合には、図10(B)の矢印316bで示す経路においてのみ、レーザ光を照射し、マザーボード301の切断を行う。この場合、切削跡315bの1点からレーザ光の照射を開始して角部切断予定ライン303に沿って移動させ、第2の切削工程における第2の切削予定ライン304に至った段階でレーザ光の照射を停止する。これにより、矢印316bによって示される斜め切断線の形成が行われる。
【0053】
C−3.第2の切削工程
角部切断工程が終了したら、ダイシングテープ401をXYテーブル704から取り外し、
チャックテーブル125に吸着させる。そして、第1の実施形態と同様にして第2の切削工程を行う。第2の切削工程が終了したら、分割されたメモリーカード基板320を貼着させたダイシングテープ401を次の工程へ搬送する。
【0054】
上記第2の実施形態では、ダイシングテープ401にマザーボード301を固定したまま第1の切削工程から第2の切削工程までを行うので、前述の第1の実施形態と比較してハンドリングや位置決めが極めて容易であるという利点がある。また、ダイシングテープ401の粘着剤層にマザーボード301全体が固定されるので、マザーボード301に余剰領域313を設ける必要がない。このため、マザーボード301において、メモリカードとして利用されないデットスペースを減らすことができ、材料歩留まりを向上させることができる。
【0055】
(D)変形例
第2の実施形態では、全工程でダイシングテープ401を用いているが、第1の切削工程だけ治具20を用いることも可能である。なお、この場合には、マザーボード301のハンドリングのために、余剰領域313を設ける必要がある。
また、第1の実施形態において、第2の切削工程からダイシングテープ401を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、角部が切除されたメモリーカードを安価にかつ効率良く製造することができ、その製造技術に適用して極めて有望である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態で使用する切断装置を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態において切断装置が備える切削ブレードの取り付け構造を示す側断面図である。
【図3】第1の実施形態においてチャックテーブルにマザーボードを固定する治具の斜視図(A)、上面図(B)および側面図(C)である。
【図4】第1の実施形態におけるダイシングテープの概要を示す斜視図(A)および側断面図(B)である。
【図5】第1の実施形態で使用するウォータジェット切断装置の概要を示す概念図である。
【図6】第1の実施形態における保持テーブルの概要を示す斜視図(A)と側面図である。
【図7】第1の実施形態におけるマザーボードの概要を示す上面図である。
【図8】第1の実施形態における治具を介してマザーボードをチャックテーブルに固定した状態を示す側断面図である。
【図9】第1の実施形態における第1の切削工程の手順を示す概念図である。
【図10】第1の実施形態における角部切断工程の手順を示す概念図である。
【図11】第1の実施形態における角部切断工程の終了段階を示す概念図である。
【図12】第1の実施形態においてダイシングテープをチャックテーブルに載置した状態を示す側面図である。
【図13】第1の実施形態における第2の切削工程の手順を示す概念図である
【図14】第1の実施形態におけるメモリーカードの概要を示す上面図である。
【図15】第1の実施形態における角部切断工程の他の手順を示す概念図である。
【図16】第2の実施形態で使用するレーザ切断装置の概要を示す概念図である。
【符号の説明】
【0058】
10…切断装置、20…治具、50…ウォータジェット切断装置、
125…チャックテーブル、 142…切削ブレード、201…溝、202…溝、
203…メモリーカード対応領域、301…マザーボード、
302(302a〜302i)…第1の切削予定ライン、
303…角部切断予定ライン、
304(304a〜304f)…第2の切削予定ライン、
305…メモリーカード領域、313…余剰領域、315a〜315i…切断線、
316a〜316d…切削経路、317…斜め切断線、320…メモリーカード基板、
401…ダイシングテープ(保護部材)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分割予定ラインとそれに直交する第2の分割予定ラインとによって区画されたメモリーカード領域と、このメモリーカード領域の外側に設けられた余剰領域とから構成されたマザーボードを個々のメモリーカード領域に分割するメモリーカード基板の分割方法であって、
前記第1の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を形成するとともに、このメモリーカード領域の列の一側に、切削を行わないで前記余剰領域を残存させる第1の切削工程と、
この第1の切削工程における切削により切断された切断線に沿って糸状の高圧水を噴射し、前記切断線をなぞるとともに個々のメモリーカード領域の所定の角部に斜め切断線を形成する角部切断工程と、
前記第2の分割予定ラインを切削ブレードで切削して前記短冊状のメモリーカード領域の列を個々のメモリーカード領域に分割する第2の切削工程とを備えたことを特徴とするメモリーカード基板の分割方法。
【請求項2】
前記角部切断工程は、前記斜め切断線を形成した後に、前記斜め切断線をなぞるように前記糸状の高圧水を移動させ、前記第1の切削工程における切削により切断された切断線に戻る工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載のメモリーカード基板の分割方法。
【請求項3】
第1の分割予定ラインとそれに直交する第2の分割予定ラインとによって区画されたメモリーカード領域と、このメモリーカード領域の外側に設けられた余剰領域とから構成されたマザーボードを個々のメモリーカード領域に分割するメモリーカード基板の分割方法であって、
前記第1の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を形成するとともに、このメモリーカード領域の列の一側に、切削を行わないで前記余剰領域を残存させる第1の切削工程と、
この第1の切削工程における切削により切断された切断線上からレーザ光を斜めに送って個々のメモリーカード領域の所定の角部に斜め切断線を形成する角部切断工程と、
前記第2の分割予定ラインを切削ブレードで切削して前記短冊状のメモリーカード領域の列を個々のメモリーカード領域に分割する第2の切削工程とを備えたことを特徴とするメモリーカード基板の分割方法。
【請求項4】
少なくとも前記第2の切削工程は、前記マザーボードが粘着性を有する保護部材上に配設された状態で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメモリーカード基板の分割方法。
【請求項1】
第1の分割予定ラインとそれに直交する第2の分割予定ラインとによって区画されたメモリーカード領域と、このメモリーカード領域の外側に設けられた余剰領域とから構成されたマザーボードを個々のメモリーカード領域に分割するメモリーカード基板の分割方法であって、
前記第1の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を形成するとともに、このメモリーカード領域の列の一側に、切削を行わないで前記余剰領域を残存させる第1の切削工程と、
この第1の切削工程における切削により切断された切断線に沿って糸状の高圧水を噴射し、前記切断線をなぞるとともに個々のメモリーカード領域の所定の角部に斜め切断線を形成する角部切断工程と、
前記第2の分割予定ラインを切削ブレードで切削して前記短冊状のメモリーカード領域の列を個々のメモリーカード領域に分割する第2の切削工程とを備えたことを特徴とするメモリーカード基板の分割方法。
【請求項2】
前記角部切断工程は、前記斜め切断線を形成した後に、前記斜め切断線をなぞるように前記糸状の高圧水を移動させ、前記第1の切削工程における切削により切断された切断線に戻る工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載のメモリーカード基板の分割方法。
【請求項3】
第1の分割予定ラインとそれに直交する第2の分割予定ラインとによって区画されたメモリーカード領域と、このメモリーカード領域の外側に設けられた余剰領域とから構成されたマザーボードを個々のメモリーカード領域に分割するメモリーカード基板の分割方法であって、
前記第1の分割予定ラインを切削ブレードで切削して短冊状のメモリーカード領域の列を形成するとともに、このメモリーカード領域の列の一側に、切削を行わないで前記余剰領域を残存させる第1の切削工程と、
この第1の切削工程における切削により切断された切断線上からレーザ光を斜めに送って個々のメモリーカード領域の所定の角部に斜め切断線を形成する角部切断工程と、
前記第2の分割予定ラインを切削ブレードで切削して前記短冊状のメモリーカード領域の列を個々のメモリーカード領域に分割する第2の切削工程とを備えたことを特徴とするメモリーカード基板の分割方法。
【請求項4】
少なくとも前記第2の切削工程は、前記マザーボードが粘着性を有する保護部材上に配設された状態で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメモリーカード基板の分割方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−90508(P2007−90508A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286181(P2005−286181)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]