説明

メモリ素子、積層体、メモリマトリックス及びそれらの動作方法

本発明は、メモリ素子と本メモリ素子を使用可能な積層体及びメモリマトリックス、メモリマトリックスの動作方法、並びにメモリ素子から成る配列構成で論理演算の真理値を決定方法に関する。本メモリ素子は、少なくとも第1の安定な状態0と第2の安定な状態1を有する。本メモリ素子は、第1の書込電圧V0 の印加によって抵抗が高い方の状態0に移行でき、第2の書込電圧V1 の印加によって同様に抵抗が高い方の状態1に移行できる。書込電圧V0 及びV1 よりも絶対値が小さい読出電圧VR を印加した場合、本メモリ素子は異なる電気抵抗値を示す。本メモリ素子は、メモリマトリックス内に生じる寄生電流経路内でオーム抵抗が高い抵抗器として作用し、それによって、原理的にユニポーラ型スイッチに限定するものではない。本発明によるメモリ素子から成る配列構成を任意の論理演算用のゲートとして改編できる方法を開発した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ素子、このメモリ素子を使用可能な積層体及びメモリマトリックス、並びにこれらのメモリ素子、積層体及びメモリマトリックスの動作方法及びこのメモリ素子を用いた論理演算の真理値の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フラッシュメモリなどの荷電ベースのメモリは、小型化の物理的な限界に到達する直前に有る。そのようなメモリは、一方では、それらの複雑さのために、最小フィーチャサイズをFとした場合に理想的な4F2 よりも大きい面積を占める。他方では、最小フィーチャサイズF自体を制限している。受動抵抗スイッチング型メモリセルに基づくメモリは、4F2 の面積で実現可能であり、10nm未満の最小フィーチャサイズFを技術的に想定することが可能である。
【0003】
多数のメモリセルは、通常ワード線及びビット線と呼ばれる母線が交差するメモリマトリックスに組み立てられる。この場合、ワード線とビット線の間には、それぞれ正確に1つのメモリセルが接続され、そのため、ワード線及びビット線の駆動によって、メモリセルを個別にアドレス指定できる。この方式では、真の受動抵抗型メモリセルを使用する場合、ワード線とビット線の間に、アドレス指定されたメモリセルを通る直接の電流経路の他に、別のメモリセル、ワード線及びビット線を通る寄生電流経路も存在することが欠点である。それは大きな電力損失を発生させるとともに、寄生電流経路の形成はメモリマトリックスに保存されたビットパターンに依存するので、記憶の信頼性が損なわれる。
【0004】
各寄生電流経路を少なくとも1箇所で遮断するために、メモリ素子をメモリセルと、例えば、ダイオードなどの非線形素子とから成る直列接続構成とする提案が知られている。そのような接続構成においては、非線形素子が順方向を予め定めてしまうので、ユニポーラ抵抗型のスイッチングメモリセルしか使用することができないことが欠点である。この寄生電流経路の問題は、単に、ユニポーラスイッチング型メモリセルが切換に高い電圧を必要とするという問題に置き換えられる。その結果生じる高い電流は、又もや大きな電力損失を発生させるとともに、スケーリング特性を悪化させる。従来においても、所要の電流密度に耐えられる十分に小型化されたダイオードは存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、本発明の課題は、原理的にユニポーラスイッチング型に限定されない、メモリマトリックスで生じる寄生電流経路内で高いオーム抵抗として機能するメモリ素子を提供することである。本発明の更に別の課題は、メモリ素子から成る配列構成を論理演算ゲートとして構成できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題は、本発明の独立請求項によるメモリ素子、そのようなメモリ素子を備えた積層体、そのようなメモリ素子又はその積層体を備えたメモリマトリックス、別の独立請求項によるメモリ素子、積層体又はメモリマトリックスの動作方法及び更に別の独立請求項による論理演算の真理値を決定する方法によって解決される。更に別の有利な実施形態は、それらを参照する従属請求項からそれぞれ明らかとなる。
【0007】
本発明の範囲内において、少なくとも第1の安定な状態0及び第2の安定な状態1を有するメモリ素子が開発される。このメモリ素子は、第1の書込電圧V0 を印加することにより状態0に移行でき、第2の書込電圧V1 を印加することにより状態1に移行できる。2つの状態0と1は、絶対値で書込電圧V0 及びV1 よりも小さい読出電圧VR を印加された場合にメモリ素子が異なる電気抵抗値を示すことによって区別される。
【0008】
本発明では、メモリ素子は、少なくとも2つのメモリセルAとBの直列接続構成を有し、メモリセルAとBは、それぞれ電気抵抗が高い方の安定な状態A0又はB0と、電気抵抗が低い方の安定な状態A1又はB1とを有する。
【0009】
このような直列接続構成が、メモリ素子に印加された電圧V0 、V1 又はVR を電圧分配器の意味合いで2つのメモリセルAとBに分配することが分かった。それにより、2つのメモリセルAとBは、それらが異なる状態に有る限り、互いに独立した影響を受けられ。例えば、メモリセルAが状態A0に有り、メモリセルBが状態B1に有る場合、印加される電圧のより大きな部分がメモリセルAを介して降下する。そして、メモリセルAは、電圧を印加することによって状態A1に切り換えることができ、それによって、メモリ素子全体に印加される電圧、従って、セルAとBの直列接続構成に印加される電圧もセルBの状態を変えることはない。
【0010】
このような形の接続構成によって、特に多数のメモリ素子から成るマトリックス内において、他のメモリ素子の状態は変えずに、単一のメモリ素子を目的通り呼び出せることが分かった。そのようなマトリックスでは、通常個々のメモリ素子に関して別個の電流回路を配備することは実用的ではない。その代わりに、各メモリ素子は、一般的に(通常ワード線と呼ばれる)第1の母線と(通常ビット線と呼ばれる)第2の母線の間に接続され、それらの母線には、それぞれ多数の更に別のメモリ素子が接続されている。この場合、所与のワード線と所与のビット線は、1つのメモリ素子を介してのみ互いに直接接続され、その結果、それらのワード線とビット線の間に電圧を印加することにより、その1つのメモリ素子を個別に呼び出せる。しかし、電流は、そのような電圧が間に印加されたワード線とビット線の間の別のメモリ素子、従って、別のワード線及びビット線を介した寄生迂回路にも流れる可能性が有る。そのため、そのような別のメモリ素子にも電圧が印加されることが欠点となる。本発明で規定されるメモリセルAとBから成る電圧分配器は、有利には、そのようなマトリックス内において、メモリ素子の切換に少なくとも必要な電圧と、意図しない形で上記の寄生経路上の別のメモリ素子を切り換えてしまう下限電圧との間の安全マージンを大きくするという作用を奏する。
【0011】
更に、本発明によるメモリ素子は、メモリセルA及びBの少なくとも一方が状態A0又はB0に有る場合は常にオーム抵抗が高いことが分かった。従って、直列接続構成で実現可能な4つの組合せの状態の中の3つ(A0とB1、A1とB0、A0とB0)において、メモリ素子の全抵抗が高い。即ち、メモリ素子において、1ビットの情報の記憶に使用できるとともに、それぞれ全抵抗が高い区別可能な状態が存在する。従って、メモリ素子は、そこにちょうど0又は1が記憶されているかに関係無く、寄生電流経路内で高いオーム抵抗として機能できる。この場合、メモリセルは、それぞれバイポーラスイッチング方式でも構成できる。従来技術で周知のメモリセルと非線形素子から成る直列接続構成に伴うユニポーラスイッチング型メモリセルに対する原理的な制約が無くなる。
【0012】
本発明の特に有利な実施形態では、メモリセルAとBは、メモリ素子の状態0が状態A1とB0の組合せで符号化され、メモリ素子の状態1が状態A0とB1の組合せで符号化されるように接続される。これは、メモリ素子が両方の状態で全抵抗が高いという作用効果を奏する。即ち、メモリ素子が休止状態に有る場合、読出しに必要な読出電圧VR よりも低い電圧がメモリ素子を介して降下し、従って、この電圧は非常に小さい漏れ電流しか生じさせない。これにより、特に多数のメモリ素子から成るメモリマトリックスにおいて、寄生電流経路を通る望ましくない漏れ電流が阻止される。
【0013】
本発明の別の特に有利な実施形態では、メモリセルAとB及び読出電圧VR の大きさは、読出電圧VR が状態A1を設定し、メモリセルBの状態を変化させないように規定される。
【0014】
この実施形態では、メモリ素子が状態0に有る場合、メモリセルAが既に状態A1に有るため、そのような読出電圧VR はメモリセルの状態を変えない。それにより、電気抵抗も変わらない。電気抵抗は、状態B0に有るメモリセルBによって支配されており、従って、高いままである。
【0015】
それに対して、メモリ素子が状態1に有る場合、メモリセルAは、読出電圧VR によって状態A0から状態A1に、従って、より小さい電気抵抗の状態に切り換えられる。メモリセルBが状態B1に有り、従って、同様により小さな電気抵抗の状態に有るので、メモリ素子の全抵抗が低くなる。メモリセルの状態A1とB1の組合せは、メモリ素子の状態ONである。このようにして、読出電圧VR を印加した場合に、メモリ素子の状態0と1を互いに区別できる。状態1の読出しは破壊的であり、即ち、メモリ素子は、読出し後、読出し前に占めていた状態に再び自然には戻らない。書込電圧V1 を印加することにより、メモリ素子を状態1に再び戻すことができる。
【0016】
メモリセルAとBは、状態A0とB0の組合せとすることもできる。これは、一般的にメモリ素子の1回目の使用前にのみ生じる。書込電圧V0 又はV1 の印加によって、メモリ素子は、この状態から、記憶用に規定された状態0又は1の一方に初期化できる。特に、1回目の使用前に、このようにして、メモリマトリックス内の全てのメモリ素子を初期化できる。
【0017】
このような多数のメモリ素子から成るマトリックス内のメモリ素子の構成において、読出電圧VR を印加されたワード線とビット線の間の寄生電流経路を通る電流が有利に最小にされることが分かった。直接呼び出されたメモリ素子のメモリセルAでのみ、読出電圧VR の中の高い割合が降下し、それは、場合によっては、このメモリセルを状態A0から状態A1に切り換えるのに十分である。それに対して、複数の別のメモリ素子を通る望ましくない各寄生経路に沿った個々のメモリ素子を介しては、それぞれ読出電圧VR の一部しか降下せず、それは、各メモリセルAを状態A1に切り換えるには十分でない。従って、ワード線とビット線の間に直に接続されたメモリ素子が状態1に有る限り、読出電圧VR の印加により、その読出電圧VR が間に印加されたワード線とビット線の間での抵抗が低い唯一つの経路しか開かない。寄生経路上の全ての他のメモリ素子の電気抵抗は、如何なる場合でも高いままである。
【0018】
有利には、書込電圧V0 とV1 の符号は異なる。これは、特に、本発明によるメモリセルAとBが逆直列に接続された別の特に有利な実施形態で実現できる。このような符号が異なる書込電圧V0 とV1 によって、書込電圧V0 とV1 の間の絶対値で大きな間隔を設けて、それらのメモリ素子に対する作用を技術的な公差も考慮しつつ確実に互いに区別できるようにする必要がなくなる。特に、書込電圧V0 とV1 は、符号が逆で大きさを等しくすることができる。そして、書込電圧V0 とV1 の間には、それらの絶対値の2倍の間隔があり、その結果、有利には、その絶対値を小さく設定できる。
【0019】
メモリセルAとBが逆直列に接続されている場合、書込電圧V0 又はV1 の印加は、メモリセルAとBがそれぞれ同時又はほぼ同時に逆の状態に、即ち、A0及びB1に、或いはA1及びB0に切り換わるように作用する。これらは、メモリ素子の2つの安定な状態1及び0である。
【0020】
従って、本発明は、全般的に受動抵抗型メモリ素子として構成された抵抗型メモリ素子に関する。このメモリ素子は、少なくとも機能的に同一の2つの抵抗型メモリセルAとBを有し、これらのメモリセルAとBは、電流経路内で直列に接続され、この電流経路内で互いに逆並列の方向を向いている。この場合、メモリセルAとBは逆直列に接続されている。受動とは、メモリ素子がメモリセルAとB内の活性材料を除いて、別の能動スイッチ素子を含まないことを意味する。特に、メモリセルAとBを通る電流経路が受動メモリ素子を形成できる。
【0021】
書込電圧V0 とV1 の異なる符号は、特に、メモリ素子がバイポーラスイッチング型メモリ素子として構成される場合に実現される。これは、例えば、メモリセルAとBを線形のバイポーラ抵抗スイッチング型材料から形成することによって実現できる。そのような材料は、例えば、二酸化ケイ素、メチルシルセスキオキサン、メチル化−水素化シルセスキオキサン、酸化タングステン(特に、酸化タングステン(VI)WO3 )、ゲルマニウムセレニド、二酸化チタン又はチタン酸ストロンチウムである。即ち、有利には、メモリセルA及びBの少なくとも一方が、この群の中の少なくとも1つの材料を電気抵抗が可変の活性材料として有する。
【0022】
抵抗型メモリセルに印加される電圧が小さくなる程、この電圧によってメモリセルを通して流れる電流が小さくなるとともに、動作時に消費される電力が少なくなる。より小さいエネルギー消費は、同時にメモリ素子のより小さな熱負荷、従って、寿命の改善に繋がる。また、切換プロセス毎にメモリセルが受ける小さな不可逆的な損傷も、書込電圧の絶対値での大きさに強く左右される。より小さな書込電圧では、メモリセルは、明らかにより多数の切換プロセスに耐えられる。電池によって10Vまでの高い書込電圧で電荷を加える従来技術によるフラッシュメモリでは、書込みによる損傷が技術的な制限因子となる。メモリセルの漸進的な損失は、制御に使用される制御装置がこの損失を管理する機能を必要とする範囲内では正常なことである。
【0023】
ここで、例えば、メモリ素子がバイポーラスイッチング型メモリ素子として構成される場合、ユニポーラスイッチング型メモリ素子よりも絶対値で小さい書込電圧しか必要としない。従って、より小さな電流がメモリ素子を通して流れる。そのため、電力損失がより小さくなるとともに、メモリ素子の大きさをより良好に規定できる。
【0024】
メモリセルAとBは、有利には、状態A0とB0又は状態A1とB1において、それぞれ公称値で同一の抵抗値を有する。この場合、読出電圧VR 未満の電圧しかメモリ素子に印加されない限り、2つの状態0と1でのメモリ素子の全抵抗は正確に同じである。この公称値の抵抗値からのずれは、メモリ素子の故障の兆候を早期に検知するための診断に使用できる。そして、例えば、フラッシュメモリで一般的な通り、予備メモリ素子に情報を移動させて、不具合を起こす前のメモリ素子を故障品として除外できる。
【0025】
有利には、メモリセルA及びBの大きさは、状態A0から状態A1への、或いは状態B0から状態B1への移行時にメモリセルA及びBの少なくとも一方の電気抵抗が10〜108 倍、有利には、102 〜106 倍、特に有利には、103 〜105 倍変化するように設計される。メモリセルの抵抗の変化が大きい程、読出電圧VR を印加した場合にメモリ素子の状態0と1の間で現れる抵抗での信号差が大きくなる。
【0026】
本発明の特に有利な実施形態では、メモリ素子は、金属性、半導電性又は導電性酸化物の第1の電極と、電気抵抗が可変の活性材料の第1の層と、金属性、半導電性又は導電性酸化物の第2の電極と、電気抵抗が可変の活性材料の別の層と、金属性、半導電性又は導電性酸化物の第3の電極とから成る積層体として構成される。この場合、活性材料の第1の層がメモリセルAを形成し、活性材料の第2の層がメモリセルBを形成する。メモリセルAとBの活性材料は、同じものとするか、或いは異なるものとすることもできる。例えば、電極をそれぞれ白金から構成し、活性材料をそれぞれTiO2 から構成することもできる。そのような積層体としての実現形態は、抵抗型メモリの既存の大量生産プロセスに特に良好に統合できる。基本的には、例えば、固体電解質などの如何なるバイポーラスイッチング型材料システムも使用できる。この実施形態の作用は、電極と活性材料層とを積層体として重ねた配列構成とは関連しない。メモリ素子が、2つのメモリセルの配列構成を外界と接続する2つの電極を有し、これら2つの電極の間に別の電極が配置されていれば十分である。
【0027】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも第2の電極の金属が第1の電極及び/又は第3の電極と異なる。特に、少なくとも第2の電極の金属が第1及び第3の電極の金属よりも大きな貴金属性又は卑金属性を持つことができる。例えば、第1及び第3の電極を銅から構成し、第2の電極を白金から構成できる。ここで、電極の貴金属性の相違は、書込電圧の極性を決定する。第1の金属電極から第2の金属電極への経路上には、第2の電極から第3の電極への経路上とは異なる方向に貴金属性の勾配が延びる。従って、メモリセルAとBは逆直列に接続される。積層体内の第2の電極には、任意選択でバイアス電圧を印加できる。そのようなバイアス電圧によって、1つ又は2つのメモリセルの活性材料が原点に対して対称でない電流−電圧特性曲線を有する場合に、メモリ素子の電流−電圧特性曲線を対称にすることができる。
【0028】
有利には、電極の少なくとも1つが、Au、Cu、Ag、Pt、W、Ti、Al、Ni、TiN、Pd、Ir、Os、IrO2 、RuO2 、SrRuO3 、多結晶シリコンから成る群の中の一つの材料を有する。
【0029】
1つ又は複数の電極は、導電性の酸化物から構成することもできる。これは、例えば、当初から導電性の金属酸化物とするか、さもなければ当初は絶縁性で、その後ドーピングによって導電性とした酸化物とすることもできる。この場合、導電性酸化物から成る電極は、例えば、活性材料が同じ材料クラスに属する場合に有利である。そして、電極と活性材料を製造するために同様の技法、それどころか同じ技法を使用できる。理想的には、その結果、電極と活性材料をそのままの状態で真空を壊すことなく基板上で順番に積層できる。例えば、異なる蒸着パラメータを使用するだけで、同一の出発材料から電極と活性材料を製造できる。
【0030】
本発明の更に別の有利な実施形態では、メモリセルA及びBの少なくとも一方が、2つの電極から構成され、それらの電極の共通の境界面には、活性材料として、電荷キャリア濃度が変化する区域が形成される。この区域は、例えば、空乏領域とするか、或いはショットキー障壁とすることもできる。例えば、一方の電極の材料をドーピングされた三元金属酸化物とし、他方の電極の材料を金属とすることができる。ドーピングされた三元金属酸化物の例は、ニオブをドーピングしたSrTiO3 である。白金から成る電極との共通の境界面に、活性材料として作用する区域が形成される。
【0031】
このような本発明の構成は、メモリセルが依然として2層だけから構成されるという利点を有する。正に、エピタキシャル層システムの製造は、格子不整合のために、個々の層の数が増えるにつれて急激に難しくなる。
【0032】
本発明の更に別の有利な構成では、別の抵抗Rが、メモリセルA及びBと直列接続されるか、或いはメモリセルA及びBの少なくとも一方に挿入される。この場合、正及び負の切換閾値の絶対値が異なるメモリセルA及び/又はBを使用することもできる。この抵抗Rが、切換閾値の絶対値を互いに等しくする。この抵抗Rは、両方のメモリセルA及びBがそれぞれ小さい電気抵抗の状態に有る、即ち、状態A1とB1の組合せが存在する状態でのみ作用する。この抵抗Rの大きさは、有利には、そのような状態の組合せにおいて、それぞれ両方のメモリセルAとBを介した電圧降下が同じになるように設計される。メモリセルA又はBの一方への抵抗の挿入は、別個の抵抗のための空間を節約するとともに、技術的に特に簡単に実現可能である。メモリ素子が、例えば、一連の薄い層の析出によって製造される場合、そのような一連の層に抵抗層として1つの別の材料だけを挿入すればよい。
【0033】
メモリセルの一方が、絶対値で非常に大きく異なる正及び負の切換閾値を有し、その少なくとも一部が抵抗Rによって補償されない場合、状態A0とB1の組合せ(メモリ素子の状態1)から出発して、最低限必要な読出電圧VR が既にメモリセルBを状態B0に切り換えてしまう場合、従って、同時に書込電圧V0 としても作用してしまう場合が起こり得る。この場合、メモリ素子は、本発明で状態1の存在に関する信号として規定された状態A1とB1の組合せ(メモリ素子の状態ON)に達しない。
【0034】
メモリ素子がメモリマトリックスの一部である場合、抵抗Rは、特に、メモリ素子自体の外に配置することもできる。抵抗Rは、例えば、メモリマトリックスのワード線及び/又はビット線を制御する導線の中の1つ内に有る。この場合、メモリマトリックス全体に関して、唯一つの抵抗Rで十分である。複数のメモリ素子を同時に呼び出す場合、そのためには、有利には、メモリマトリックスの行又は列ごとに1つの抵抗を配備できる。抵抗として、例えば、メモリマトリックスの制御に使用されるトランジスタのドレイン−ソース抵抗又はコレクタ−エミッタ抵抗を使用できる。
【0035】
有利には、メモリセルの少なくとも1つが、イオン伝導性材料、ここでは、特に、GeSe、TiO2 、WO3 又はMSQ(メチルシルセスキオキサン)を有する。本発明者は、実験で、これらの材料によって、理論的に期待される切換挙動と実験的に観察される切換挙動の間の一致を実現することができた。
【0036】
一般的に、活性材料は、有利には、Gex Se1-X 、TiOx 、SiOx (特に、SiO2 )、CuOx 、ZnOx 、ZrOx 、NiOx 、HfOx 、WOx (特に、酸化タングステン(VI)WO3 )、Si3 4 、SrZrO3 :Cr、Ba1-x Srx TiO3 (特に、SrTiO3 )、MSQ(メチルシルセスキオキサン又はメチル化−水素化シルセスキオキサン)、HSQ(水素シルセスキオキサン)、Cu:TCNQ(銅:テトラシアノキノジメタン)、(Pr,Ca)MnO3 、(La,Ca)MnO3 、Cu2 S、Ag2 S、(Zn,Cd)S、Al2 3 、FeO、CoO、MnO2 、In2 3 、Ta2 5 、Nb2 5 及びVO2 から成る群の中の少なくとも1つの材料を含むことができる。
【0037】
活性材料は、通常絶縁性である誘電体材料とすることができる。十分に高い電圧の印加により、材料内に少なくとも1つの内部経路を形成することができ、それに沿って、材料が導電性となる。この経路は、例えば、欠陥、金属マイグレーション及びそれ以外の効果など、様々なメカニズムによって形成できる。導電経路が一旦形成された場合、それを遮断することによって、活性材料の電気抵抗を増加でき、再度形成することによって、電気抵抗を減少できる。抵抗値は、印加する電圧によって、或いは隣接する境界面の変化によって調整できる。
【0038】
本発明は、少なくとも2つのメモリ素子P及びQから成る積層体にも関する。この積層体では、メモリ素子Pの一方の極が、外部配線のためにアクセスする電気コンタクトOを介してメモリ素子Qの一方の極と接続される。そのような積層体の集積度は高い。この積層体内に含まれる本発明によるメモリ素子がそれぞれ基本的に高いオーム抵抗を示すことにより、この積層体は技術的に実用可能なものとなっている。メモリ素子が読出電圧VR の印加によって状態1から状態ONに移行した場合、その場合にのみ、オーム抵抗が小さくなる。それによって、有利には、寄生電流経路も、相応の加熱による高い静的電力損失も避けられる。
【0039】
ここで、コンタクトOが外部配線のためにアクセスできることによって、2つのメモリ素子PとQに、互いに独立して同じ極性又は異なる極性の電圧を印加できる。例えば、コンタクトOが接地電位(GND)に有る場合、メモリ素子Pの他方の極を正又は負の電位にすることができる。従って、メモリ素子Pによって、このメモリ素子に書込電圧V0 として作用する電圧降下、さもなければ書込電圧V1 として作用する電圧降下を調節できる。それぞれ絶対的な電位レベルではなく、メモリ素子Pの両極間の電位差が重要である。同じことが、メモリ素子Qにも当てはまる。
【0040】
しかし、メモリ素子は、積層体内に有る直列接続構成においても、共通に書込電圧又は読出電圧を印加できる。
【0041】
本発明によるメモリ素子の個々の特徴の考察時に既に上述した通り、本発明による措置の利点は、特に、多数のメモリ素子から成るメモリマトリックス又はメモリ素子の積層体で得られる。従って、本発明の有利な実施形態では、メモリ素子は、抵抗型作業メモリ(RRAM)のメモリマトリックスへの使用に適合している。従って、本発明は、RRAMのメモリマトリックスでのメモリ素子の使用にも関する。
【0042】
本発明の範囲内において、導電路として形成された多数のワード線と、それらと交差する多数のビット線とを有するメモリマトリックスが開発された。ワード線及び/又はビット線は、特に、互いに平行に延びることができる。本発明の有利な実施形態では、各ワード線と各ビット線が、高々1箇所で交差する。特に、ワード線を第1の平面上に配置し、ビット線を第2の平面上に配置できる。本メモリマトリックスの同形式のメモリマトリックスとの相違点は、本発明によるメモリ素子又はそれらの積層体がワード線とビット線の交差位置に配置されていることである。この場合、有利には、ワード線とビット線は、各交差位置において、それぞれ高々1個のメモリ素子又は積層体と導電接続される。特に有利には、各交差位置において、ワード線とビット線の間に高々1個のメモリ素子又は積層体が接続される。有利には、ワード線及び/又はビット線は、同時にメモリ素子又は積層体の電極として機能できる。メモリマトリックス内のフィーチャサイズFは、有利には、10nm以下である。
【0043】
有利には、逆直列に接続された2つのメモリセルから成る電圧分配器としての本発明によるメモリ素子の構成が、同形式のメモリマトリックスの大きな欠点を解消することが分かった。従来技術では、メモリ素子の読出し及び書込みの際に、選択されたワード線及びビット線を介して実際にアドレス指定されたメモリ素子を通してのみならず、複数の別のメモリ素子、ワード線及びビット線から成る寄生電流経路を通っても電流が流れていた。これらの寄生漏れ電流は、各メモリ素子が基本的に高い電気抵抗を有する状態に有ることによって最小化されるが、但し、この個別のメモリ素子にちょうど読出電圧VR が印加される場合は除外される。従来技術では、寄生電流経路を通る漏れ電流は、同形式のメモリマトリックスの大きさに関する制限因子だった。
【0044】
アドレス指定されていないメモリ素子のオーム抵抗は基本的に高いので、同形式のメモリマトリックスとは対照的に、本発明によるメモリマトリックスの電気特性は、もはや書き込まれるビットパターンに依存しない。従来技術では、このビットパターンに依存することは、同形式のメモリマトリックスの読出しを悪化させ、多くの場合に正しい読出しを不可能にしている。
【0045】
メモリマトリックスは、ハイブリッドCMOS技術の枠内で使用できる。メモリマトリックスは、原理的には3次元に構成することもでき、そのため、メモリマトリックス内に本発明によるメモリ素子が重ねて積層される。
【0046】
本発明によるメモリマトリックスのCMOS集積構成に関して、このメモリマトリックス内に含まれるメモリ素子の抵抗が、もはやマトリックス内に記憶されたビットパターンに依存しないことが利点である。この場合、メモリマトリックスを制御するために使用されるCMOSエレクトロニクスは、もはやメモリマトリックスの全抵抗が広い範囲で変化できるように設計する必要はない。
【0047】
本発明によるメモリ素子は、メモリマトリックスがメモリ素子の積層を有する本発明の構成において特に有利に作用する。それにより、最終的に3次元のメモリマトリックスを実現できる。ここで、このメモリマトリックスの内部にトランジスタが無いという特に有利な作用を奏する。トランジスタは、大きなスペースを必要とし、高い電力損失を発生させる。トランジスタベースのメモリ素子から成る、例えば、立方体形状の配置構成の大きさは、立方体の中心からの不十分な排熱のために、速く限度に達する。本発明によるメモリ素子によって、この限度が明らかに拡大される。
【0048】
メモリマトリックスは、特に、DRAMの高い集積度及びアクセス速度をフラッシュメモリの不揮発性と関連付けた抵抗型作業メモリ(RRAM)で使用できる。従って、本発明は、本発明による少なくとも1つのメモリマトリックスを有する抵抗型作業メモリ(RRAM)にも関する。ここで、メモリマトリックスは、特に、受動メモリ素子のみを有する1つの受動メモリマトリックスとすることができる。そして、メモリマトリックスの内部において、ワード線及びビット線を通る電流と独立して制御できる能動スイッチ素子を完全に無くすことができる。RRAMは、メモリマトリックス自体の他に、例えば、CMOS技術で実現できるメモリ素子用の外部電子回路も有する。この場合、例えば、ワード線を選択的に制御するための1つのデコーダ及びビット線を選択的に制御するための別のデコーダを配備できる。
【0049】
本発明の範囲内において、本発明によるメモリ素子、本発明による積層体又は本発明によるメモリマトリックスの動作方法を開発した。この方法は、少なくとも1つのメモリ素子に読出電圧VR を印加し、その読出電圧VR が、絶対値でメモリ素子のメモリセルA又はBの一方を状態A0又はB0から状態A1又はB1に切り換えるために必要な第1の閾値よりも大きく、この読出電圧VR が、絶対値でメモリ素子の他方のメモリセルA又はBを状態A1又はB1から状態A0又はB0に切り換えるために必要な第2の閾値よりも小さいことを特徴とする。
【0050】
それに代わって、或いはそれと組み合わせて、本発明の範囲内において開発された、本発明によるメモリ素子、本発明による積層体又は本発明によるメモリマトリックスの別の動作方法を使用できる。その方法は、メモリ素子への読出電圧VR の印加によって読み出された情報が、それに続いて、そのメモリ素子に新たに記憶されることを特徴とする。読出電圧VR の印加がメモリ素子の全抵抗の変化を引き起こす限り、メモリ素子は、読出電圧VR の印加前に占めていた状態に自然には戻らない。その限りにおいて、読出しは破壊的である。これは、特に、メモリ素子の状態0が状態A1とB0の組合せで符号化され、メモリ素子の状態1が状態A0とB1の組合せで符号化されるメモリ素子の実施形態に当てはまる。状態1の読出し後には、メモリ素子の2つの所定の状態0と1の何れにも対応しない組合せA1とB1が出現する。それに続くメモリセルAを状態A0に戻すための書込電圧V1 の印加によって、再び状態1に設定する。
【0051】
それに代わって、或いはそれと組み合わせて、本発明は、メモリ素子、積層体又はメモリマトリックスの更に別の動作方法にも関する。この方法の過程において、書込電圧V0 及び/又はV1 を印加した場合のメモリ素子、積層体又はメモリマトリックスを通して流れる電流の時間推移が評価される。
【0052】
この方法は、メモリ素子の状態0が状態A1とB0の組合せで符号化され、メモリ素子の状態1が状態A0とB1の組合せで符号化された実施形態にメモリ素子が有る場合に特別な利点を提供する。
【0053】
その場合、相応の書込電圧の印加による状態0から状態1への、或いはその逆へのメモリ素子の切換えは、基本的に複数のステップで進行することが分かった。メモリ素子の状態0でも状態1でも、常にメモリセルの一方が状態A0又はB0に有り、他方のメモリセルが状態A1又はB1に有る。2つのメモリセルの直列接続構成としてのメモリ素子に対して、その時点以外の状態にメモリ素子を切り換えるのに適した書込電圧が印加された場合、この書込電圧は、先ずは主として電気抵抗が高い方のメモリセル、即ち、状態A0又はB0に有るメモリセルを介して降下する。その結果、このメモリセルは、状態A1又はB1に切り換わる。即ち、ここで、2つのメモリセルが状態A1又はB1に有る場合、メモリ素子は状態ONに有る。しかし、この状態に有る時間は短い。ここで、書込電圧は、2つのメモリセルA及びBを介して同じだけ降下する。ここで、書込電圧の印加前に既に状態A1又はB1に有ったメモリセルを介しては、書込プロセスの開始時よりも高い電圧が降下する。従って、このメモリセルは、そこを介して降下する書込電圧の割合によって、状態A0又はB0に切り換わる。最終的に、2つのメモリセルが、それぞれ状態を切り換えて、メモリ素子は、全体として、2つの状態0(状態A1とB0の組合せ)又は1(状態A0とB1の組合せ)の一方に有る。
【0054】
第1のメモリセルの切換と第2のメモリセルの切換の間の短い時間間隔の間、メモリ素子は状態ON、即ち、全体として電気抵抗が低い方の状態に有る。これは、この時間間隔の間に書込電圧がメモリセルを通して大きな電流パルスを流すことから識別可能である。本発明者は、メモリ素子、積層体又はメモリマトリックスの動作時の電流の時間推移の評価、即ち、このパルスの評価が多くの用途で使用できることを発見した。
【0055】
本発明の特に有利な実施形態では、メモリ素子、積層体又はメモリマトリックスを通して流れる電流における短いパルスの発生を切換プロセスが成功したことの確認として評価できる。理論的には、そのためには、1ps未満のパルス持続期間で十分である。実際には、メモリセルの活性材料としてのTiO2 に関しては10ns以下のパルス持続期間が実証され、WO3 に関しては5ns以下のパルス持続期間が実証された。本発明者が試験した全ての活性材料に関して、切換プロセスの際に10ns以下のパルス持続期間が示されている。
【0056】
パルスの発生及びその後の減衰により、2つのメモリセルの状態の変化が確認される。パルスは、第1のメモリセルが正常に状態A1又はB1に切り換えられ、メモリ素子が全体として状態ONに移行した場合にのみ発生する。このパルスは、その後第2のメモリセルが状態A0又はB0に切り換わり、従って、メモリ素子が全体として再び電気抵抗が高い方の状態を占めた場合にのみ再び減衰する。その時点以外の状態にメモリ素子をそれぞれ切り換えるのに適した書込電圧によって、より高い電流がメモリ素子を通して流れないか、或いはパルスが再び減衰しない場合、そのメモリ素子は故障している。
【0057】
それに代わって、或いはそれと組み合わせて、パルスの発生を書込電圧の印加前に有ったメモリ素子の状態に関する情報として評価できる。例えば、書込電圧V1 が印加された場合に、この書込電圧の印加前にメモリ素子が状態0に有った時にのみパルスが発生する。それに対して、状態1に有った場合、メモリセルBが状態B1に有り、従って、オーム抵抗が低いので、書込電圧V1 は、主として状態A0に有るメモリセルAを介して降下する。しかし、ここで、書込電圧V1 は、メモリセルAを状態A1に切り換えるのに正しい極性を持っていない。両方のメモリセルA及びBは、従って、メモリ素子全体も、その状態を変えず、その結果、パルスは発生しない。
【0058】
このようにして、書込電圧V0 及びV1 での書込みと同時に、既にメモリ素子に存在する情報を読み出すこともできる。有利には、読出電圧VR のための別個の電圧源は必要ない。最も単純な場合、そのような動作のために、更に接地電位(GND)と、それとは異なる単一の電圧源の電位Vとのみが必要である。これら2つの電位をメモリ素子の2つの極に印加する極性は、メモリ素子に書込電圧V0 を印加するのか、或いは書込電圧V1 を印加するのかを決定する。
【0059】
本発明の更に別の有利な実施形態では、メモリ素子、積層体又はメモリマトリックスを通して流れる電流の時間推移の変化が、書込サイクルを繰り返した場合のメモリ素子の劣化の開始に関する指標として評価される。この場合、特に、非常に多数のメモリ素子から成るメモリマトリックスでは、そのようなメモリ素子又はそのようなメモリ素子が存在するメモリマトリックス内の限定された区域を故障部分としてマークして、更なるアクセスを禁止できる。
【0060】
メモリマトリックスが有するメモリ素子が多い程、並びにそのようなメモリ素子が小さい程、もっぱら既に製造プロセスでのばらつきのために、所定の回数の書込サイクル後にメモリ素子の1個又は複数個が動作しないという確率が大きくなる。即ち、メモリセルの層内で統計的に発生する欠陥の影響は、その層が10,000個の原子から構成される場合よりも100個の原子のみから構成される場合の方が明らかに大きくなる。
【0061】
本発明の有利な実施形態では、書込電圧V0 、書込電圧V1 及び読出電圧VR の中の一つ以上が、それぞれ部分的にワード線及びビット線を介して印加される。この場合、特に、ワード線とビット線を介して、それぞれ電圧の半分を印加できる。そのような電圧スキーム(1/2スキーム)は、有利には、ワード線及びビット線の選択によってアドレス指定されたメモリ素子と異なるメモリ素子に印加される電圧を減少させる。本発明の更に別の有利な実施形態が同じ作用を奏する。その実施形態では、1つのメモリ素子に書込電圧V0 、書込電圧V1 及び読出電圧VR の中の一つ以上を印加する場合に、少なくとも1つの別のメモリ素子に異なる符号の電圧が印加される。この場合、特に、アドレス指定されていない全てのワード線に、アドレス指定されたメモリ素子に印加される電圧の2/3倍の大きさの逆電圧を印加できるとともに、アドレス指定されていない全てのビット線に、アドレス指定されたメモリ素子に印加される電圧の1/3倍の大きさの逆電圧を印加できる。この電圧スキーム(2/3スキーム)の範囲内で印加される異なる符号の逆電圧は、アドレス指定されたメモリ素子に印加される電圧V0 、V1 又はVR による、アドレス指定されていないメモリ素子に対する影響を少なくとも部分的に補償する。
【0062】
本発明は、それぞれ第1の書込電圧V0 の印加によって状態0に移行することができ、第2の書込電圧V1 の印加によって状態1に移行できる、少なくとも安定状態0と安定状態1をそれぞれ有する少なくとも2つのメモリ素子P及びQから成る構成において、2つの変数KとLの論理演算の真理値を決定する方法にも関する。有利には、メモリ素子P及びQの2つの状態0及び1は、書込電圧V0 及びV1 よりも絶対値で小さい読出電圧VR を印加した場合にメモリ素子P及びQの電気抵抗値が異なることで表される。有利には、書込電圧V0 、V1 及び読出電圧VR が公称値で同一であるメモリ素子PとQが選択される。
【0063】
変数K及びLは、それぞれ真理値0及び1に割り当てられた2つの電圧レベルの形で実現され、この場合、2つの電圧レベルの差は絶対値でメモリ素子P及びQの書込電圧V0 及びV1 と少なくとも同じ大きさである。この場合、有利には、電圧レベルの少なくとも一方が、絶対値でメモリ素子P及びQの書込電圧V0 及びV1 と少なくとも同じである。例えば、接地電位(GND)を真理値0に割り当て、メモリ素子P及びQの書込電圧V0 及びV1 よりも絶対値が大きい電圧レベルVを真理値1に割り当てることができる。
【0064】
本発明では、ここで、メモリ素子Pの両方の極P1 ,P2 の少なくとも一方に変数Kの電圧レベルを印加する。メモリ素子Qの両方の極Q1 ,Q2 の少なくとも一方には、変数Lの電圧レベルが印加される。有利には、両方のメモリ素子P及びQは、所定の状態、例えば、0に事前に初期化される。
【0065】
これらの措置により、変数K及びLの論理演算の真理値をメモリ素子P及びQの状態として記憶できるとともに、これらのメモリ素子から読み出すこともできることが分かった。
【0066】
即ち、例えば、最も簡単な形態では、メモリ素子Pを変数Kの電圧レベルと接地(又は別の自由に選択可能な電位)の間に接続し、メモリ素子Qを変数Lの電圧レベルと接地(又は別の自由に選択可能な電位)の間に接続することによって、演算「K OR L」の結果を記憶できる。
【0067】
変数Kが真理値1を有する場合、それに対応する電圧レベルによって、メモリ素子Pが状態1に切り換わる。変数Lが真理値1を有する場合、同様にメモリ素子Qが状態1に切り換わる。即ち、両方の真理値の少なくとも一方が1である場合、事前に0に初期化されていたメモリ素子P及びQの少なくとも一方も状態1に有る。従って、演算「K OR L」の真理値1は、少なくとも1つのメモリ素子P又はQが状態1に有ることで具現化される。それに対して、両方の真理値が0である場合、両方のメモリ素子P及びQが状態0のままである。演算「K OR L」の真理値0は、両方のメモリ素子P及びQが状態0に有ることで具現化される。従って、演算の結果がメモリ素子PとQの状態に記憶される。
【0068】
本発明の特に有利な実施形態では、変数K及びLの電圧レベルをメモリ素子P及びQの極に印加した後、メモリ素子PとQの少なくとも1つに読出電圧VR を印加する。有利には、メモリ素子PとQの並列接続構成に、メモリ素子PとQの両方に対して読出電圧VR として作用する電圧が印加される。上記のOR演算の例では、そのために、両方のメモリ素子P及びQが、それぞれ読出電圧VR の電位と接地電位の間に接続される。
【0069】
メモリ素子P及びQの状態に関して、上述した通り、演算の結果として1が記憶されている限り、そのような読出電圧VR の印加は、1つ又は複数のメモリ素子、或いは並列接続構成を通る一つの電流パルスを発生させることが分かった。この場合、読出電圧VR の印加は、メモリ素子P及びQの少なくとも一方を状態1から状態ONに移行させる。それにより、本発明による構成に対応して、メモリ素子のオーム抵抗が低くなり、そのため良好に検出可能な読出電流が流れる。それに対して、演算結果として、0がメモリ素子PとQの状態に記憶されている場合、即ち、両方のメモリ素子が状態0に有る場合、それに対する読出電圧VR の印加は何も変えない。両方のメモリ素子のオーム抵抗は高いままである。高い読出電流は生じない。
【0070】
唯一つのメモリ素子P又はQへの読出電圧VR の印加は、それによって読み出された状態に基づいて、漸く実行された論理演算の真理値の状態が分かれば、それで十分である。この場合、第2のメモリ素子の読出しを行うための作業サイクルを省くことができる。例えば、上記の例で、メモリ素子Pが状態1に切り換わったことで演算「K OR L」の真理値が配列構成に記憶されている場合、読出電圧VR によるメモリ素子Pの読出し後に、漸く演算の真理値が1であることが明らかとなる。メモリ素子Qの状態は何ら結果を変えないので、もはやメモリ素子Qを読出す必要はない。それに対して、実行された論理演算の真理値が、第1のメモリ素子の読出し後に未だ分からない場合、即ち、上記の例で、メモリ素子Pが状態0に有る場合、第2のメモリ素子(ここでは、メモリ素子Q)も読み出さなければならない。
【0071】
メモリ素子の少なくとも一方に読出電圧VR を印加することに代えて、或いはそれと組み合わせて、本発明の更に別の特に有利な実施形態では、変数K及びLの電圧レベルをメモリ素子P及びQの極に印加した場合に、配列構成を通して流れる電流の時間推移が、論理演算の真理値を決定するために評価される。メモリ素子、積層体又はメモリマトリックスを動作させる方法の説明において、メモリ素子の切換えが、メモリ素子を短い時間間隔の間状態ONに設定し、それにより、その時間間隔の間にメモリ素子を通る電流パルスを発生させることを既に明らかにした。ここで、メモリ素子P及びQの極に変数K及びLの電圧レベルを印加した場合に、そのようなパルスを監視することによって、有利には、配列構成内の少なくとも1つのメモリ素子が切り換わったか否かを検出できる。
【0072】
上記の演算「K OR L」の例では、メモリ素子Pは、Kの真理値が1である場合に、状態1に切り換わる。メモリ素子Qは、Lの真理値が1である場合に、状態1に切り換わる。メモリ素子PにKを印加するか、或いはメモリ素子QにLを印加した場合に、配列構成を通して流れる電流に電流パルスが生じていれば、それは、メモリ素子P及びQの少なくとも一方が切り換わっている、即ち、演算の真理値が1であるという情報を提供することとなる。
【0073】
この実施形態の利点は、読出電圧VR 用の別個の電圧源も、配列構成からの結果を読み出すための作業サイクルも必要なくなることである。そのような結果は、配列構成から電流パルスが発生した場合、直ぐに電流パルスの形で現れるとともに、例えば、更に処理して、加算器として構成された論理関数を計算できる。それにも関わらず、そのような結果は、配列構成内に尚も記憶されるとともに、両方のメモリセルP及びQの並列接続構成に読出電圧VR を印加することによって、配列構成から再度抽出できる。
【0074】
本発明の特に有利な実施形態では、本発明によるメモリ素子を対象とする請求項の中のいずれか一つの請求項に記載のメモリ素子P及びQが選択される。本発明によるメモリ素子は、本方法に関して、読出電圧VR によって状態1から状態ONに移行された場合、かつその場合にのみオーム抵抗が低いという決定的な利点を提供する。それ以外の場合、メモリ素子のオーム抵抗は高く、その結果、有利には、寄生漏れ電流が防止される。それは、特に、本方法によって複雑な論理表現式を分析する場合に重要である。そのために、例えば、多数のメモリ素子がマトリックス内に配置された場合、従来技術では、そのようなマトリックス内の2つの任意の格子点の間に、如何なるビットパターンがマトリックス内に記憶されているかにも依存する、多数の漏れ電流経路が存在した。本発明によるメモリ素子の使用は、そのような漏れ電流を解消し、その限りにおいて、本方法が信頼できる真理値を与えることを保証する。
【0075】
本発明の特に有利な実施形態では、本発明によるメモリ素子P及びQから成る積層体及び/又は本発明によるメモリ素子から成る配列構成としてのメモリマトリックスが選択される。所定のデータ用のメモリから論理演算の真理値用のメモリに機能を変更するために、メモリ素子、積層体又はメモリマトリックス自体を何ら変える必要がないことが分かった。メモリ素子に信号が印加する形式のみが変わる。
【0076】
従って、動作期間中に同一のハードウェアを様々な用途に改編できる。これまで厳密だったマイクロプロセッサの演算器とメモリの区別、従って、演算器とメモリの間の接続システムによる計算速度の原理的な制限(「フォン・ノイマン・ボトルネック」)も、これにより解消される。更に、メモリマトリックスの適切な配線により、超並列の論理演算と、それを用いた算術演算とを実行でき、それにより、更なる高速化が可能となる。
【0077】
メモリマトリックスを完全に、或いは部分的にマイクロプロセッサに改編するために本方法を使用する場合、それにより、多数存在する機能素子にトランジスタが無くなり、若干の僅かなトランジスタだけが周辺制御のために必要であるマイクロプロセッサが実現される。これまでの従来技術では、マイクロプロセッサは、チップ上で非常に大きなスペースを必要とする数百万個の多くのトランジスタを備えていた。更に、様々なドーピングを施された半導体から組み立てられたトランジスタは、本発明によるメモリ素子と比べて著しく大きな製造コストがかかった。
【0078】
本発明によるメモリ素子の大幅に小さい漏れ電流及びそれに対応して小さな電力損失が、メモリ素子から成る積層体を有する3次元メモリマトリックスを実用的なものにする。そのようなメモリマトリックスの大きさに関する制限因子は、マトリックスの中央からの排熱である。本発明のメモリ素子は、発生する熱が少ないので、マトリックスを明らかに大きくできる。ここで、本発明による論理演算の真理値を決定する方法を使用して、そのようなマトリックスを完全に、或いは部分的にマイクロプロセッサに改編した場合に、初めて高さ方向のサイズが平面内でのサイズと同程度のマイクロプロセッサを提供できる。この場合、3次元マトリックス内の各区域への常にランダムなアクセスが実現する。
【0079】
本発明の特に有利な実施形態では、極性が異なるメモリ素子PとQは、それぞれ変数Kの電圧レベルと変数Lの電圧レベルの間に接続される。そのような実施形態では、変数KとLの排他的論理和演算(XOR)が実現される。
【0080】
変数KとLが同じ真理値を有する場合、メモリ素子Pを介してもメモリ素子Qを介しても電圧は降下しない。両方のメモリ素子は、それらが始めに初期化された状態0のままである。ここで、両方のメモリ素子PとQ又はそれらの並列接続構成に読出電圧VR を印加した場合、両方のメモリ素子のオーム抵抗は高いままであり、並列接続構成を通して非常に僅かな電流しか流れない。それに対して、変数KとLが異なる真理値を有する場合、それらに対応する電圧レベルの差が、一方ではメモリ素子Pに、他方では逆の符号でメモリ素子Qに印加される。そして、両方のメモリ素子の一方が状態1に切り換わる。ここで、読出電圧VR を印加すると、このメモリ素子が状態1から状態ONに切り換わる。従って、このメモリ素子は、読出電圧VR によって流れる電流のための低オーム抵抗の経路を形成する。この経路は、そのメモリ素子を通して、或いは両方のメモリ素子P及びQの並列接続構成を通して、明瞭に検出可能な読出電流を流す。それに代わって、或いはそれと組み合わせて、K及びLの電圧レベルを同時に印加した場合に配列構成を通って流れる電流の時間推移を評価できる。ここで、短い電流パルスが現れた場合、メモリセルP又はQの一方が状態1に切り換わって、XOR演算の真理値は1である。そのような電流パルスが現れない場合、何れのセルも切り換わらず、真理値は0である。変数Kの真理値は、変数Lの真理値を1としてXOR演算を実行することによって 「NOT K」に反転できる。それにより、最終的に、0に初期化された別のメモリ素子が、変数Lの電圧レベルと「NOT K」の電圧レベルの間に接続されることによって、演算「K AND L」も実現できる。両方の電圧レベルが異なる場合、即ち、KもLも真理値1を有する場合にのみ、別のメモリ素子が状態0から状態1に切り換わる。このメモリ素子は、読出電圧VR を印加することにより、この状態から状態ONに切り換えることができ、それにより明瞭に検出可能な読出電流が流れる。
【0081】
ここで示した演算OR、AND、NOT及びXORと、それによって実現可能なユニバーサルNORゲートとから、例えば、3つの真理値を加算するための全加算器などの任意の論理スイッチをそれぞれ組み立てることができる。
【0082】
XOR演算は、例えば、情報技術のための畳込符号器における、暗号化器又はデュアルレールデコーダ内で使用できる。
【0083】
以下において、本発明の対象を図面に基づき詳しく説明するが、それにより、本発明の対象は限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1a】メモリセルAの電流−電圧特性曲線を示す図
【図1b】メモリセルBの電流−電圧特性曲線を示す図
【図1c】本発明によるメモリセルA及びBから構成されるメモリ素子の実施形態を示す図
【図2】書込み及び読出しのために図1cに図示されたメモリ素子に印加される電圧パルスの時間推移及びメモリ素子のその時々の応答を示す図
【図3】書込及び読出電圧の使用可能な帯域幅におけるメモリセルA及びBのパラメータの10%のばらつきの作用を示す図である。
【図4】本発明によるメモリセルA及びBと直列に接続された更に別の抵抗Rによって電流−電圧特性曲線を対称にしたメモリ素子の実施例を示す図
【図5】本発明によるメモリマトリックスの実施例を示す図
【図6a】0の読出しと1の読出しの間の所定の信号レベル差に関して、本発明によるメモリマトリックスと比較するための従来技術によるメモリマトリックス内のメモリ素子の最大実装可能数を示す図
【図6b】0の読出しと1の読出しの間の所定の信号レベル差に関して、従来技術によるメモリマトリックスと比較するための本発明によるメモリマトリックス内のメモリ素子の最大実装可能数を示す図
【図7】本発明による論理OR演算の真理値を決定する方法の実施例において、a)初期化、b)真理値の記憶及びc)真理値の読出し示す図
【図8】本発明によるメモリ素子の積層体を用いた、本発明による論理OR演算の真理値を決定する方法の実施例において、a)初期化、b)真理値の記憶及びc)真理値の読出しを示す図
【図9】本発明によるメモリマトリックスを用いた、本発明による論理XOR演算の真理値を決定する方法において、実施例のa)初期化、b)真理値の記憶及びc)真理値の読出しを示す図
【図10】本発明によるメモリ素子の積層体を用いた、本発明による論理XOR演算の真理値を決定する方法の実施例において、a)初期化、b)真理値の記憶及びc)真理値の読出しを示す図
【図11】本発明による抵抗型作業メモリ(RRAM)の実施例を示す斜視図
【図12】メモリマトリックス内の寄生電流の問題を図解した図
【図13】書込み時にアドレス指定されていないメモリ素子の影響を防止する2/3電圧スキームの実施例を示す図
【図14】本発明によるメモリ素子で測定したI−V特性曲線を示す図
【図15】メモリマトリックス内のメモリ素子が受ける一連の電圧パルスとメモリ素子を通して流れる電流、電圧及び電流の例をそれぞれアドレス指定されたメモリ素子とアドレス指定されていないメモリ素子に関して示した図
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1aと図1bは、任意のユニットにおける2つの同一のメモリセルAとBの電流(I)−電圧(V)特性曲線と、そのような特性曲線がそれぞれ得られる回路図とを図示している。印加される電圧Vinに関して、メモリセルBの極性はメモリセルAの極性と逆である。メモリセルA及びBは、バイポーラスイッチング型として構成されている。メモリセルA及びBを介して降下する電圧VA 及びVB は、それぞれ印加される電圧Vinと同一である。
【0086】
図1aに図示されたメモリセルAに関するI−V特性曲線は、電気抵抗が高い状態A0から始まる(a)。メモリセルAを介して降下する電圧が正の切換閾値(ここでは、1)に達すると(b)、メモリセルAは状態A1に移行し、その電気抵抗が減少する。導電率が急激に増加し、ここで引き続き電圧が変化すると、I−V特性曲線の勾配が急になる(c)。これは、電圧が更に増加した場合だけでなく、再び正の切換閾値未満に減少するか、それどころか原点を通過して符号が変わった場合にも当てはまる。電圧が負の切換閾値(ここでは、−1)に達すると(d)、漸くメモリセルAは状態A0に戻る。I−V特性曲線の勾配は、電圧Vの更なる変化に関して、その変化が負の方向又は正の方向に起こるのかには関係無く、急激に再び元の値に戻る(e)。
【0087】
図1bに図示された極性が逆のメモリセルBに関するI−V特性曲線は、電気抵抗が小さい状態B1から始まる。この特性曲線の勾配は急峻である(a)。正の切換閾値(ここでは、1)に達すると(b)、メモリセルBは状態B0に切り換わる。抵抗が高くなる。I−V特性曲線の勾配は、引き続く電圧Vの変化に対して、その電圧が更に増加するか、或いは減少するかには関係無く、急激に緩くなる(c)。この緩やかな勾配は、電圧Vが原点を通過して符号を変えた場合にも維持される。負の切換閾値(ここでは、−1)に達すると(d)、漸くメモリセルBは状態B1に戻る。電圧Vがその後V軸の負の方向又は正の方向に変化するのかに関係無く、抵抗が低くなり、I−V特性曲線の勾配は急激に急峻になる。
【0088】
図1cは、本発明によるメモリ素子の実施例に関するI−V特性曲線を図示している。このメモリ素子は、逆直列に接続された同一の抵抗型メモリセルで構成され、その個々のセルとしての挙動は、図1a及び図1bにおいて、それらと関連した説明と共に考察した。図1cは、それに関する回路図も図示しており、その回路図に対して、図示した特性曲線が得られる。ここでは、印加された電圧Vinは、本発明による電圧分配器としてのメモリ素子の構成により、メモリセルAとBを介して降下する2つの電圧VA とVB に分けられる。この場合、抵抗が高い方のメモリセルを介して、より大きい電圧が降下する。
【0089】
この特性曲線は、状態A0とB1の組合せ、即ち、メモリ素子の状態1から始まる(a)。最低限必要な読出電圧VR と等しい第1の正の切換閾値(ここでは、1)において、メモリセルAは状態A1に切り換わる(b)。この場合、両方のメモリセルが小さな電気抵抗を有するので、直列接続構成の全抵抗が急激に減少し、電圧Vの更なる上昇に対して、I−V特性曲線の勾配が急峻となる(c)。状態A0でのメモリセルAは、より高い抵抗を有し、従って、電圧分配器に印加された電圧Vinの大部分がメモリセルAを介して降下するので、状態A1へのメモリセルAの切換えは、状態B0へのメモリセルBの切換えよりも優先される。電圧Vが、最低限必要な書込電圧V0 と等しい第2の正の切換閾値(ここでは、2)に達すると(d)、漸くメモリセルBは状態B0に切り換わる。この場合、直列接続構成の全抵抗は再び高くなり、I−V特性曲線の勾配は、その後の電圧Vの変化に対して再び急激に緩やかとなる(e)。メモリ素子は状態0に有る。同様に、2つの負の切換閾値が有る。負の軸での最低限必要な読出電圧VR と等しい第1の負の切換閾値(ここでは、−1)で、メモリセルBは切り換わって状態B1に戻る(f)。状態B0でのメモリセルBは、より高い抵抗を有し、電圧分配器に印加された電圧Vinの大部分がメモリセルBを介して降下するので、その切換えは、メモリセルAの状態A0への切換えよりも優先される。この場合、両方のメモリセルが小さな電気抵抗を有するので、全抵抗が減少し、導電率、従って、I−V特性曲線の勾配が急激に急峻となる(g)。最低限必要な書込電圧V1 と等しい第2の負の切換閾値(ここでは、−2)において、メモリセルAは状態A0に切り換わる(h)。直列接続構成の全抵抗は増加し、導電率、従って、I−V特性曲線の勾配は急激に緩やかとなる(i)。全体として、メモリ素子は状態1に戻る。
【0090】
2つの正の切換閾値の間又は2つの負の切換閾値間の範囲が、それぞれ読出帯域(「read window」)を構成する。この範囲内の電圧により、メモリ素子を読み出すことができる。実際には、公称値で同一である多数のメモリ素子から成るマトリックスで起こり得る切換閾値のばらつきを考慮に入れるために、この読出帯域は、通常全部使用せずに、上限及び下限に関して、それぞれ約10%の安全マージンを確保する。
【0091】
図2は、図1bに図示された本発明によるメモリ素子の実施例について、様々な演算に関するパルスの時間推移及びその結果生じるメモリ素子を通って流れる電流の時間推移を図示している。図2の下端には、メモリ素子が如何なる時間に如何なる状態に有るのかをそれぞれ図示している。
【0092】
状態0から始まって、先ずは読出電圧VR (ここでは、1)のパルスを与える(a)。状態0は状態A1とB0の組合せで符号化されているので、このパルスは、メモリセルの構成を何ら変えない。従って、このパルスは、電流の変化も起こさない。状態0が読み出される。
【0093】
次に、書込電圧V1 (ここでは、−2.5)のパルスを与える(b)。ここで、メモリセルAが状態A0に切り換わり、メモリセルBが状態B1に切り換わる。これは、メモリ素子を通る電流の短いスパイクとして現れる。切換えが終了した後、メモリ素子は状態1に有り、電流は再び元の値となる。このスパイクは、メモリ素子が書込み前に状態0に有ったという情報と、状態1への切換えに成功したという情報とを提供する。
【0094】
それに続いて与えられた読出電圧VR のパルスは、メモリセルAを状態A1に切り換える(C)。この場合、両方のメモリセルが低い抵抗の状態に有るので、このパルスの期間中、明瞭に検出可能な読出電流が流れる(状態「ON」)。状態1が読み出される。
【0095】
メモリ素子は読出しによって状態1ではなくなるので、次に、その状態1が、書込電圧V1 の新たなパルスによって再びメモリ素子に書き込まれる(d)。メモリセルAが切り換わって状態A1から状態A0に戻るので、短いスパイクが新たに電流に現れる。
【0096】
次に、書込電圧V0 (ここでは、+2.5)のパルスを印加する(e)。状態1の書込みと同様に、A0からA1への切換え及びB1からB0への切換え中に、(極性が逆の)短いスパイクが電流に現れる。
【0097】
それに続く読出電圧VR のパルスは、メモリセルA及びBの構成を何ら変えず、従って、メモリ素子を通る電流の変化も起こさない(f)。状態0が読み出される。
【0098】
図3は、個々のメモリセルの切換電圧及び抵抗値について、如何なる程度の変動幅が許容されるのかを示す最悪の場合の評価を図示している。これは、特に、公称値で同一である非常に多数のメモリ素子から成るメモリマトリックスと関連する。
【0099】
図3では、図1bに図示された実施例のI−V特性曲線の部分図において、メモリセルA及びBの切換電圧及び抵抗値の±10%までのばらつきがメモリ素子の第1及び第2の正の切換閾値並びに破壊閾値のばらつきに波及する様子が図示されている。メモリセルのパラメータのばらつきを±10%と仮定したことにより、第1の正の切換閾値(a)、第2の正の切換閾値(b)及び破壊閾値(c)がそれぞれ分散する可能性の有る範囲が図示されている。V軸の下には、そのような分散を考慮して、アドレス指定されていないメモリ素子に印加される最大許容電圧(d)、読出電圧VR (e)及び書込電圧V0 (f)に関して得られた帯域がそれぞれ図示されている。3つのパラメータ全てに関して、十分に大きく、重なり合わない帯域が得られているので、個々のメモリセルの変数において、最大±10%のばらつきは十分許容される。
【0100】
図4には、本発明による別の抵抗RがメモリセルA及びBと直列に接続されたメモリ素子の実施例が図示されている。切換閾値を含むI−V特性曲線は、図1cに図示された特性曲線と一致する。メモリセルA及びBの特性曲線が図1a及び図1bに示された曲線と異なり、原点に対して非対称である場合でも、本発明により規定される別の抵抗によって、メモリ素子全体に関して、原点に対して対称的な特性曲線を尚も実現できる。電圧分配器内の別の抵抗Rは、それを介して降下する電圧VR によって、状態A1とB1の組合せにおいて、メモリセルAとBを介して同一の電圧VA とVB が降下するという効果を奏する。この実施例では、Rの抵抗値は、状態A1及びB1でのメモリセルA及びBの抵抗値よりも7倍大きい。
【0101】
特性曲線が原点に対して対称である程、読出電圧VR に関する読出帯域は大きくなる。
【0102】
図5には、本発明によるメモリマトリックスの実施例が図示されている。このメモリマトリックスは、ワード線W又はビット線Bを通る電流に依存せずに制御できる能動スイッチ素子を含まない。ワード線Wは垂直に延び、ビット線Bは水平に延びている。1本のワード線Wと1本のビット線Bの間に、それぞれ1つの本発明によるメモリ素子Sが接続されている。列デコーダCDは、各ワード線Wに割り当てられたトランジスタTCを介して各ワード線Wに電圧を印加できる。行デコーダRDは、各ビット線Bに割り当てられたトランジスタTRを介して各ビット線Bに電圧を印加できる。各ビット線Bは、プルアップ抵抗SRを介して供給電圧VDDと接続されている。ビット線Bが、それに割り当てられたトランジスタTRを介して電圧を印加されると同時に、このトランジスタTRは、このビット線Bと、出力電圧Vout を供給する電圧測定デバイスMとの間の接続も確立する。
【0103】
所与の時間に、デコーダCD及びRDによって、常に唯一つのワード線W及び唯一つのビット線Bが制御される。それにより、ちょうどそのワード線Wとそのビット線Bの間に接続されたメモリ素子Sがアドレス指定される。この場合、ワード線W及びビット線Bに印加される電圧は、アドレス指定されたメモリ素子Sに全体として読出電圧VR が加わるように選択される。このメモリ素子Sが状態0に有る場合、制御されたビット線Bに加わる電圧のみが、このビット線Bのセンサ抵抗SRを通る電流、従って、このセンサ抵抗SRでの電圧降下を生じさせる。この電圧降下は、電圧測定デバイスMによって記録される。それに対して、メモリ素子Sが状態1に有る場合、そのメモリ素子Sは、全体として、読出電圧VR によって、抵抗が低い状態ONに移行する。それによりメモリ素子を通って流れる読出電流は、ビット線Bに割り当てられたセンサ抵抗SRにおいて、電圧測定デバイスMによって記録される追加の電圧降下を引き起こす。
【0104】
しかし、複数のワード線又はビット線、それどころか全てのワード線又はビット線を同時に制御することも十分に可能である。それにより、メモリマトリックスに、或いはメモリマトリックスから情報をブロック単位で転送することができ、それはデータスループットを高める。
【0105】
有利には、本発明によるメモリ素子の実施形態により、アドレス指定されていないメモリ素子Sを通る寄生電流が最小化される。しかし、寄生電流を完全になくすことはできない。各寄生電流は、同様にセンサ抵抗SRを通って流れ、従って、そのセンサ抵抗を介した電圧降下に対して、電圧測定デバイスMによって記録されてしまう追加の電圧降下を付与する。従って、メモリ素子Sの究極的な数が存在し、その数を超えると、アドレス指定されたメモリ素子Sから状態0又は1を読み出した場合に、電圧測定デバイスMが記録した電圧が最早確実には区別できなくなる。
【0106】
図6aには、1つのメモリセルのみから成る従来技術による抵抗型メモリ素子を備えたメモリマトリックスに関して、図6bには、本発明によるメモリマトリックスに関して、それぞれ状態0の読出し時と状態1の読出し時の間の電圧測定デバイスMによって記録される電圧Vout の電圧差とメモリマトリックスの駆動電圧の比率ΔV/Vが、メモリマトリックス内のメモリ素子の数nに対してグラフに描かれている。如何なる比率ΔVが技術的に確実な読出しに必要であるか、並びにその要件を辛うじて満足するようにしてメモリマトリックスが如何なる最大数のメモリ素子を備えることができるかは、電圧測定デバイスMが如何なるコストで実現できるかに依存する。
【0107】
この時点の従来技術によるアナログエレクトロニクスにおいて最早大きな挑戦とはならない駆動電圧の10%の電圧差ΔVしか要求されない場合でも、従来技術によるメモリマトリックスは、僅か8個のメモリ素子のサイズで、そのような図6a及び図6bで点線で示した限界に既に達してしまう。それに対して、本発明によるメモリマトリックスでは、100,000個のメモリ素子が有る場合でも、電圧差が10%の閾値の遥かに上に有る。そのため、本発明によるメモリマトリックスは、データ処理に関するサイズにおいて突出して優れている。
【0108】
512×512個のメモリ素子から成るメモリマトリックスに関して、メモリ素子が、典型的には高い電気抵抗の状態で抵抗値108 Ωを有し、低い電気抵抗の状態で抵抗値2kΩを有する場合、供給電圧の86.7%の電圧差を実現できる。
【0109】
図7は、本発明による論理演算の真理値を決定する方法の実施例を図示している。本発明によるメモリ素子PとQの2つから成る配列構成が使用される。メモリ素子Pは、配線のためにアクセス可能な極P1 とP2 を有する。メモリ素子Qは極Q1 とQ2 を有する。各メモリ素子P及びQの色付けが、メモリ素子が占める状態を示す。暗い色付けは状態0に対応し、明るい色付けは状態1に対応し、ハッチングを施した明るい色付けは、状態ONに対応する。
【0110】
一般化を制限するものではないが、極P1 及びP2 又は極Q1 及びQ2 の割当ては、極P1 での電位を極P2 での電位と比べて高くする書込電圧V0 がメモリ素子Pを状態1から状態0に切り換えるように選択される。同様に、極Q1 での電位を極Q2 での電位と比べて高くする書込電圧V0 がメモリ素子Qを状態1から状態0に切り換える。
【0111】
図7aは、この配列構成を初期化する手法を図示している。メモリ素子PとQの両方は、それらの極P1 とQ1 が電位Vを印加され、それらの極P2 とQ2 が接地電位GNDを印加されることにより、それぞれ状態0に初期化される。従って、極P1 とQ1 での電位は、極P2 とQ2 での電位と比べて高くなる。これらの極性での電位差が、メモリセルPとQの両方を状態0に切り換える。
【0112】
図7bは、それに続いて、この配列構成に2つの変数K及びLの論理演算の真理値を記憶する手法を図示している。変数Kの真理値0は、この例では、電圧レベルとして電位Vを割り当てられている。変数Lの真理値1は、電圧レベルとして接地電位GNDを割り当てられている。極P2 とQ2 には電位Vが加わる。両方の極P1 とP2 に同じ電位が加わるので、メモリ素子Pを介して電圧は降下しない。メモリ素子Pは状態0のままである。それに対して、書込電圧Vが、メモリ素子Qを介して極Q2 から極Q1 へ接地に向かって降下する。それにより、メモリ素子Qは状態1に切り換わる。演算「K OR L」の真理値1が、ここで得られたメモリ素子PとQの状態0又は1で具現される。
【0113】
図7cは、それに続いて、この真理値を配列構成から読み出す手法を図示している。極P1 とQ1 には、接地電位GNDに有る極P2 とQ2 に対して読出電圧VR が印加される。この読出電圧VR は、メモリ素子PとQの正の読出帯域内に有る(図1c参照)。これは、状態0に有るメモリ素子Pの状態を何ら変えない。それに対して、状態1に有るメモリ素子Qは状態ONに切り換わる。メモリ素子Q、従って、並列回路を通して、明瞭に検出可能な読出電流が流れる。この読出電流は、この配列構成に記憶された真理値が1だったことを示す。
【0114】
図8は、論理演算「K OR L」の真理値を決定する別の実施例を図示している。図7に図示された実施例との相違は、互いに並んで配置された2つのメモリ素子PとQの代わりに、それらと同じメモリ素子PとQの本発明による積層を使用していることである。図7でも使用している参照符号が、図7に図示された対応部分と同じ作用を奏する部分を示す。
【0115】
図8aには、メモリ素子PとQの両方を初期化する手法が図示されている。そのために、極P1 とQ1 に電圧Vを印加する。極P2 とQ2 は、接地電位GNDが印加された電気コンタクトOを介して接続されている。電圧Vは、メモリ素子Pを介してもメモリ素子Qを介しても降下し、詳しくは、極P1 から極P2 に向かって、並びに極Q1 から極Q2 に向かって降下する。従って、メモリ素子Pにもメモリ素子Qにも書込電圧V0 として作用する。そのため、メモリセルPとQの両方が状態0に初期化される。
【0116】
図8bは、この実施例で演算「K OR L」の真理値を決定する手法を図示している。変数Kの真理値1は、この例では、電圧レベルとして接地電位GNDを割り当てられている。変数Lの真理値0は、電圧レベルとして電位Vを割り当てられている。電圧Vが、メモリ素子Pを介して極P2 から極P1 に降下し、その結果、このメモリ素子が状態1に切り換わる。メモリ素子Qを介して電圧は降下しない。メモリ素子Qの状態は変わらず0のままである。演算「K OR L」の真理値1は、ここで得られたメモリ素子PとQの状態1又は0で具現される。
【0117】
図8cは、この結果を配列構成から読み出す手法を図示している。メモリ素子PとQの両方は、メモリ素子PとQの正の読出帯域内に有る読出電圧VR を印加される(図1c参照)。そのために、接地電位GNDが、メモリ素子PとQを互いに接続しているコンタクトOに印加される。それにより、極P2 とQ2 は接地電位GNDに有る。それに対して、極P1 とQ1 には電位VR が加わる。極P1 から極P2 への電圧降下VR は、状態1に切り換わっているメモリ素子Pを状態ONに移行させて、そのオーム抵抗を低くする。このメモリ素子を通って、明瞭に検出可能な読出電流が流れる。この読出電流は、接地に接続された抵抗RPDを介して、図示された演算増幅器で検出可能な電圧降下を引き起こす。
【0118】
図9は、本発明によるメモリ素子から成る配列構成としてのメモリマトリックスを用いた、本発明による2つの変数KとLの論理演算の真理値を決定する方法の実施例を図示している。このメモリマトリックスは、2つのワード線Word1及びWord2と、これらのワード線と交差するビット線Bit1及びBit2を有する。交差するワード線とビット線は、交点で、本発明による4つのメモリ素子P、Q、R及びSによって互いに接続されている。
【0119】
図9aには、4つのメモリ素子P、Q、R及びSの全てを状態0に初期化する手法が図示されている。4つのメモリ素子の全てに書込電圧V0 として作用する電圧Vが、両方のワード線に印加される一方、両方のビット線は接地電位と接続される。
【0120】
図9bは、演算「K XOR L」の真理値をメモリマトリックスに記憶する手法を図示している。変数Kの真理値1は、この例では、電圧レベルとして電圧Vを割り当てられている。変数Lの真理値0は、電圧レベルとして接地電位(GND)を割り当てられている。ここで、ワード線Word1及びビット線Bit2は、K(V)の電圧レベルを印加され、そのため、この電圧レベルは、メモリ素子Pの極P1 及びメモリ素子Qの極Q2 に加わる。ワード線Word2及びビット線Bit1は、L(GND)の電圧レベルを印加され、そのため、この電圧レベルは、メモリ素子Pの極P2 及びメモリ素子Qの極Q1 に加わる。
【0121】
メモリ素子Pを介した極P1 から極P2 への電圧降下Vは、前記の初期化と同様である。従って、この電圧降下は、メモリ素子Pに書込電圧V0 として作用する。そのため、メモリ素子Pの状態は変わらず0のままである。それに対して、メモリ素子Qには、極Q2 から極Q1 への極性が逆の電圧降下が加わる。この電圧降下は、メモリ素子Qに書込電圧V1 として作用する。これにより、メモリ素子Qは状態1に切り換わる。演算「K XOR L」の真理値1は、ここで得られたメモリ素子PとQの状態0又は1で具現される。
【0122】
図9cは、この真理値をメモリマトリックスから読み出す手法を図示している。両方のワード線は、メモリ素子P及びQの正の読出帯域内に有る読出電圧VR を印加される。この読出電圧VR は、状態1に有るメモリ素子Qを更に状態ONに切り換える。従って、メモリ素子Qのオーム抵抗は低くなる。
【0123】
両方のビット線から抵抗RPDを通って接地に向かって流れる電流が、この抵抗RPDで、図示した演算増幅器によって測定される電圧降下を引き起こす。そのような電流のために、状態ONに有るメモリ素子Qを通る低いオーム抵抗の経路が存在する。従って、そこには、真理値1を示す明瞭に検出可能な読出電流が流れる。
【0124】
この例では、メモリ素子R及びSは動作しない。メモリマトリックスに「K XOR L」の真理値を記憶する際、変数Lがメモリ素子Rの両方の極に加わり、変数Kがメモリ素子Sの両方の極に加わる。従って、0への初期化後、メモリ素子R及びSには、状態1への切換えに十分な電圧降下が起こらない。しかし、ここで、変数Kの代わりに変数Lがワード線Word1に加わり、変数Lの代わりに変数Kがワード線Word2に加わるか、或いはそれに代わって変数Lの代わりに変数Kがビット線Bit1に加わり、変数Kの代わりに変数Lがビット線Bit2に加わった場合、メモリ素子P及びQは動作を停止し、真理値の記憶は、メモリ素子R及びSが引き受ける。このことを利用して、メモリ素子P又はQの一方が故障した場合に、残りのメモリ素子RとSを用いて作業を続けることが可能となる。
【0125】
図10は、論理演算「K XOR L」の真理値を決定するための更に別の実施例を図示している。この実施例は、図8に図示された実施例と同様に、本発明による2つのメモリ素子PとQの積層を配列構成として使用する。
【0126】
図10aは、メモリ素子PとQの両方を状態0に初期化する手法を図示している。メモリ素子Pの極P2 をメモリ素子Qの極Q1 と接続する電気コンタクトOは、接地電位(GND)を印加される。ここで、極P1 は電位Vを印加され、極Q2 は電位−Vを印加される。従って、メモリセルPにおいてもメモリセルQにおいても、電位は、極P2 又はQ2 から接点P1 又はQ1 に至るまでに値Vだけ上昇する。これは、メモリ素子PとQの両方に対して、両方のメモリ素子を状態0に初期化する書込電圧V0 として作用する。
【0127】
図10bは、演算「K XOR L」の真理値を積層体に記憶する手法を図示している。メモリ素子P1 及びQ2 は、それぞれ変数Kの電圧レベルを印加される。変数Kの真理値1は、この例では、電圧レベルとして電圧Vを割り当てられている。コンタクトOは、変数Lの電圧レベルを印加される。変数Lの真理値0は、この例では、電圧レベルとして接地電位(GND)を割り当てられている。
【0128】
初期化の場合と同様に、この電位も極P2 から極P1 へ値Vだけ上昇する。従って、メモリ素子Pには、依然として書込電圧V0 が作用し、その結果、メモリ素子Pは状態0のままである。メモリ素子Qを介して、絶対値では同じであるが極性が逆の電圧が降下する。ここで、電位は極Q1 から極Q2 へ値Vだけ上昇する。これは、極Q2 から極Q1 への同じ大きさの電圧降下と同じ意味を持ち、従って、メモリ素子Qに書込電圧V1 として作用する。メモリ素子Qは状態1に切り換わる。演算「K XOR L」の真理値1は、ここで得られたメモリ素子PとQの状態0又は1で符号化される。
【0129】
図10cは、この真理値を積層体から読み出す手法を図示している。メモリ素子Pは、正の読出帯域の領域内に有る値VR だけ極P2 から極P1 に向かって上昇する電位を印加される。これは、Pが状態0に有ることを何ら変えない。メモリ素子Qは、極Q2 に−VR を印加することによって、値VR だけ極Q2 から極Q1 に向かって上昇する電位を印加される。メモリ素子Qは、状態1に有るので、更に状態ONに切り換わり、従って、オーム抵抗が低くなる。そのため、メモリ素子Qを通って明瞭に検出可能な読出電流が流れ、その読出電流は、抵抗RPDで接地に向かって作用する電圧降下によって、演算増幅器で測定できる。この読出電流は、演算の読み出された真理値1を具現している。
【0130】
変数K及びLの真理値に対する電圧レベルの割当ては、図9及び図10では図7及び図8と逆になっている。図7及び図8では、真理値0に電位Vを割り当て、真理値1に接地電位GNDを割り当てている。その結果、有利には、正の電圧だけで、従って、正の電圧源だけで動作させれば済むこととなる。
【0131】
図11は、本発明による抵抗型作業メモリ(RRAM)10の実施例を斜視図で図示している。この作業メモリ10は、本発明によるワード線とビット線が交差するメモリマトリックス12を有する。ワード線14は、ストリップ形状であり、図11に図示されていない基板上に規則的な相互間隔で形成されている。同様にストリップ形状のビット線16は、ワード線14が有る第1の平面から所定の距離を開けた第2の平面上に規則的な相互間隔で形成されている。ワード線14とビット線16の間の交点に有るメモリ素子22において、各ワード線14は第1の電極18であり、各ビット線16は第2の電極20である。各メモリ素子22は、その電極18と20の間の層26、28及び30から成る積層を有する。
【0132】
本発明の一つの実施形態では、第1の電極18は不活性(例えば、白金)である。第1の電極18上の第1の層26は、活性材料(例えば、ゲルマニウムセレニドGeSe)の第1の層である。第1の層26の上の第2の層28は、電気化学的に活性な電極(例えば、銅)である。第2の層28の上の第3の層30は、活性材料の第2の層(例えば、ゲルマニウムセレニドGeSeから成る別の層)である。第3の層の上の第2の電極20は、又もや不活性な電極(例えば、白金)である。
【0133】
本発明の別の実施形態では、それと異なる順番の積層が規定される。第1の電極18は、電気化学的に活性な電極(例えば、銅)である。第1の電極18の上の第1の層26は、活性材料(例えば、ゲルマニウムセレニド)の第1の層である。第1の層26の上の第2の層28は、不活性電極(例えば、白金)である。第2の層28の上の第3の層30は、活性材料(例えば、ゲルマニウムセレニド)の第2の層である。第3の層の上の第2の電極20は、電気化学的に活性な電極(例えば、銅)である。
【0134】
両方の実施形態において、この抵抗型メモリ素子22の積層の等価回路図を図1cの右図で図示される通り、少なくとも機能的に同一の2つのメモリセル34,36を有する直列接続構成32と看做すことができる。これら2つの抵抗型メモリセル34と36は、直列に接続されているが、電気的には互いに逆並列の方向を向いている。それらは逆直列に接続されている。第1のメモリセル34は、第1の電極18、第1の層26及び第2の層28を有する。第2のメモリセル36は、第2の層28、第3の層30及び第2の電極20を有する。各メモリ素子22は、メモリセル以外に更に別の能動スイッチ素子を含まない受動バイポーラスイッチング抵抗型メモリ素子38である。
【0135】
全く電圧を印加されないか、或いは書込電圧を印加されると、如何なる場合でも、各メモリ素子22は、電気抵抗が高い状態となる。
【0136】
メモリマトリックスは、有利には、CMOS技術とナノエレクトロニクスのハイブリッド方式で実現される。そのために、ナノエレクトロニクス・メモリマトリックスがCMOS論理回路に取り付けられる。それが占有面積及びスケーラビリティと関連する場合、ワード線とビット線が交差する受動メモリマトリックスは、ナノエレクトロニクス・メモリを実現する最も効果的な選択肢である。ワード線14とビット線16の各交点24は、最小セルサイズ4F2 のメモリ素子22を形成し、ここで、Fは最小フィーチャサイズである。メモリセル自体を除いて能動スイッチ素子が無いことが、メモリマトリックスを完全に受動型にしている。
【0137】
図12は、本発明の動機となった受動メモリマトリックスでの寄生電流の問題を図解している。各ワード線14は、単一の抵抗型メモリ素子22を介してのみ、各ビット線16と直に接続されている。しかし、メモリマトリックス内では、これらのワード線とこれらのビット線は、それぞれ少なくとも1つの別のワード線及び/又はビット線と多数の別の抵抗型メモリ素子とを含む様々な寄生電流経路58,60によって繋がっている。従来技術によるメモリ素子では、読出電圧VR の印加によって実現可能な、アドレス指定されたメモリ素子の状態0と1の間の電圧差は、メモリマトリックスのサイズが大きい程急速に減少するとともに、メモリマトリックスに書き込まれるビットパターンに大きく左右される。最悪の場合のシナリオでは、電圧差は、メモリ素子が8×8個だけの配列構成において、既に供給電圧のちょうど10%となってしまう。電圧差及びビットパターンへの依存性を低くすると、電圧差の検出に大きな増幅器が必要となり、メモリマトリックスの使用範囲を少数のメモリ素子に限定するとともに、同じくアクセス時間も制限してしまう。読出し時にも書込み時にも生じる寄生電流経路による静的電力損失が別の問題である。
【0138】
図13は、メモリマトリックスのメモリ素子22に情報を書き込む場合に、アドレス指定されていないメモリ素子の影響を防止する2/3電圧スキームの実施例を図示している。アドレス指定されたメモリ素子を介してのみ、全体の書込電圧Vwrが降下する。それ以外の全てのメモリ素子を介した電圧降下は、1/3Vwrに制限される。
【0139】
図14は、本発明によるメモリ素子のI−V特性曲線を図示している。この特性曲線は、図1cの特性曲線と同様である。しかし、図1cとは異なり、理想的なメモリ素子で計算した特性曲線ではなく、ゲルマニウムセレニドから成る実際に実現したメモリ素子で測定した特性曲線である。
【0140】
測定の開始時(領域C1)には、メモリ素子のメモリセルAが状態A0に有り、メモリセルBが状態B1に有る。直列接続構成のために、全抵抗は高い。第1の正の切換閾値Vth,1に達して、メモリセルAが抵抗が低い状態A1に切り換わるまで、ほぼ全体の電圧がメモリセルAを介して降下する。メモリセルBは状態B1のままであり、従って、同様に低い抵抗を有するので、範囲C2では、メモリ素子の全抵抗は小さい。電圧が第2の正の切換閾値Vth,2に達すると、メモリセルBが、抵抗が高い状態B0に切り換わる。従って、範囲C3では、メモリ素子の全抵抗が再び高くなる。ここで、電圧が再びゼロの方向へ減少した場合、メモリセルAは状態A1のままであり、メモリセルBは状態B0のままである(範囲C4)。そして、電圧が負になった場合も、当初は何ら変わらない(範囲C5)。第1の負の切換閾値−Vth,1に達した場合に、漸くメモリセルBが状態B1に切り換わり、メモリセルBを介して、ほぼ全体の電圧が降下する。メモリセルAは状態A1のままなので、メモリ素子の全抵抗は低い(範囲C6)。電圧が更に負になり、第2の負の切換閾値−Vth,2に達すると、メモリセルAが状態A0に切り換わり、メモリ素子の全抵抗は再び高くなる(範囲C7及び範囲C8)。
【0141】
図15は、本発明によるメモリマトリックス内の本発明によるメモリ素子に印加できる一連の電圧パルスの例とその電圧パルスによってメモリ素子を通して流れる電流を図示している(i)。また、そのような電圧パルスがメモリマトリックスのアドレス指定されていないメモリ素子に作用する寄生電圧とその寄生電圧によってアドレス指定されていないメモリ素子を通して流れる寄生電流とを図示している(ii)。図14において、閾値Vth,1は、それぞれメモリ素子の第1のメモリセルAを切り換えるために最低限必要な電圧の大きさである。従って、閾値Vth,1は、読出電圧VR に関する最小値である。閾値Vth,2は、メモリ素子の第2のメモリセルBも切り換えるのに必要な電圧の大きさである。全体としてメモリ素子を状態0と1の間で切り換えるためには、それぞれメモリセルAとBの両方を切り換えなければならない。図14では、状態0に切り換えるために、書込電圧V0 ≧Vth,2が必要であり、状態1に切り換えるために、書込電圧V1 ≦−Vth,2が必要である。
【0142】
アドレス指定されたメモリ素子の状態0から始めて、メモリ素子は、読み出され(a)、状態1に移行し(b)、読み出され(c)、再び状態1を書き込まれ(d)、メモリ素子が状態0に移行し(e)、最後に読み出されている(f)。読み出しの際、メモリ素子がその前に状態1だった場合にのみ、それと関連する読出電流がそれぞれ流れる。アドレス指定されていないメモリ素子を介して降下する電圧は、メモリセルA又はBを切り換えることができるには小さ過ぎる。従って、アドレス指定されていない全てのメモリ素子の状態は変わらない(g)。
【0143】
また、本発明は、前述した複数の受動バイポーラスイッチング抵抗型メモリ素子に情報を書き込む方法に関する。その方法では、以下の工程が実行される。
・セルを第1の状態に切り換えるために、そのセルに第1の極性の書込パルスを印加する。
・それに続いて、そのセルに同じ極性、さもなければ逆の極性の書込電圧パルスを印加する。
【0144】
この場合、各書込パルスの電圧は、絶対値で、メモリ素子のメモリセルAとBの両方を切り換えるのに必要な閾値Vth,2を上回る。
【0145】
また、本発明は、複数のバイポーラ抵抗スイッチング型メモリ素子、特に、本発明によるバイポーラ抵抗スイッチング型メモリ素子に記憶された情報を読み出す方法に関する。その方法では、以下の工程が実行される。
・メモリ素子を第1の状態に切り換えるための第1の極性の書込パルスをメモリ素子に印加する。
・それに続いて、メモリ素子の1つに読出電圧を印加し、それにより生じる読出電流を測定する。
【0146】
この場合、書込パルスの電圧は、絶対値で、メモリ素子のメモリセルAとBの両方を切り換えるのに必要な閾値Vth,2を上回る。この読出電圧は閾値Vth,2よりも小さい、この読出電圧、有利には、閾値Vth,1よりも大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の安定な状態0と第2の安定な状態1を有するメモリ素子であって、第1の書込電圧V0 の印加によって状態0に移行可能であり、第2の書込電圧V1 の印加によって状態1に移行可能であり、これら2つの状態0と1は、これらの書込電圧V0 及びV1 よりも絶対値が小さい読出電圧VR を印加した場合にメモリ素子の電気抵抗値が異なることで表されるメモリ素子において、
このメモリ素子が、少なくとも2つのメモリセルAとBの直列接続構成を備えており、これらのメモリセルAとBが、それぞれ電気抵抗が高い方の安定な状態A0又はB0と、電気抵抗が低い方の安定な状態A1又はB1とを有することを特徴とするメモリ素子。
【請求項2】
メモリセルAとBが、状態A1とB0の組合せでメモリ素子の状態0を符号化し、状態A0とB1の組合せでメモリ素子の状態1を符号化するように接続されていることを特徴とする請求項1に記載のメモリ素子。
【請求項3】
読出電圧VR が状態A1を設定するとともに、メモリセルBの状態を変えないように、メモリセルAとB及び読出電圧VR の大きさが規定されていることを特徴とする請求項2に記載のメモリ素子。
【請求項4】
書込電圧V0 とV1 の符号が異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項5】
本メモリ素子がバイポーラスイッチング型メモリ素子として構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項6】
メモリセルAとBが、それぞれ線形バイポーラ抵抗スイッチング型材料から構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項7】
メモリセルAとBの少なくとも一方が、電気抵抗が可変の活性材料として、二酸化ケイ素、メチルシルセスキオキサン、メチル化−水素化シルセスキオキサン、酸化タングステン、ゲルマニウムセレニド、二酸化チタン及びチタン酸ストロンチウムの中の一つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項8】
メモリセルAとBが逆直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項9】
メモリセルAとBが、状態A0とB0又は状態A1とB1において、それぞれ公称値で同じ電気抵抗値を有することを特徴とする請求項8に記載のメモリ素子。
【請求項10】
メモリセルAとBの少なくとも一方の電気抵抗が、状態A0から状態A1への移行時又は状態B0から状態B1への移行時に10〜108 倍、有利には、102 〜106 倍変化するように、メモリセルAとBの大きさが規定されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項11】
メモリセルAとBの少なくとも一方の電気抵抗が、状態A0から状態A1への移行時又は状態B0から状態B1への移行時に103 〜105 倍変化することを特徴とする請求項10に記載のメモリ素子。
【請求項12】
本メモリ素子が、金属性、半導電性又は導電性の酸化物の第1の電極と、電気抵抗が可変の活性材料の第1の層と、金属性、半導電性又は導電性の酸化物の第2の電極と、電気抵抗が可変の活性材料の別の層と、金属性、半導電性又は導電性の酸化物の第3の電極とから成る積層体として構成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項13】
少なくとも第2の電極の金属が、第1の電極と第3の電極の中の一つ以上の材料と異なっていることを特徴とする請求項12に記載のメモリ素子。
【請求項14】
少なくとも第2の電極の金属が、第1及び第3の電極の金属よりも貴金属性が大きいか、或いは卑金属性が大きいことを特徴とする請求項13に記載のメモリ素子。
【請求項15】
該電極の少なくとも1つが、Au、Cu、Ag、Pt、W、Ti、Al、Ni、TiN、Pd、Ir、Os、IrO2 、RuO2 、SrRuO3 、多結晶シリコンから成る群の中の一つの材料を含むことを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項16】
メモリセルA及びBの少なくとも一方が、2つの電極から成り、これらの電極の共通の境界面に、活性材料として、電荷キャリア濃度が変化する区域が形成されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項17】
一方の電極の材料が、ドーピングされた三元金属酸化物であり、他方の電極の材料が金属であることを特徴とする請求項16に記載のメモリ素子。
【請求項18】
別の抵抗Rが、メモリセルA及びBと直列に接続されるか、或いはメモリセルA及びBの少なくとも一方に挿入されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項19】
メモリセルA及びBの少なくとも一方の正と負の切換閾値が絶対値で一致するように、抵抗Rの大きさが規定されていることを特徴とする請求項18に記載のメモリ素子。
【請求項20】
メモリセルの少なくとも一方が、活性材料としてイオン伝導性材料を含むことを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項21】
メモリセルの少なくとも一方が、活性材料としてGeSe又はMSQを含むことを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の少なくとも2つのメモリ素子P及びQから成る積層体において、メモリ素子Pの極が、外部配線のためにアクセス可能な電気コンタクトOを介してメモリ素子Qの極と接続されていることを特徴とする積層体。
【請求項23】
多数のワード線と、それらのワード線と交差する多数のビット線とが導電路として構成されたメモリマトリックスにおいて、これらのワード線とビット線の交差位置に、請求項1〜21のいずれか一項に記載のメモリ素子又は請求項22に記載の積層体が配置されていることを特徴とするメモリマトリックス。
【請求項24】
ワード線とビット線の中の一つ以上が互いに平行に延びていることを特徴とする請求項23に記載のメモリマトリックス。
【請求項25】
各ワード線と各ビット線が、高々1箇所で互いに交差していることを特徴とする請求項23又は24に記載のメモリマトリックス。
【請求項26】
ワード線とビット線が、各交差位置で、それぞれ高々1つのメモリ素子又は積層体と導電接続されていることを特徴とする請求項23〜25のいずれか一項に記載のメモリマトリックス。
【請求項27】
ワード線とビット線の間の各交差位置に、高々1つのメモリ素子又は積層体が接続されていることを特徴とする請求項23〜26のいずれか一項に記載のメモリマトリックス。
【請求項28】
本メモリマトリックスが3次元のメモリマトリックスとして構成されていることを特徴とする請求項23〜27のいずれか一項に記載のメモリマトリックス。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のメモリ素子、積層体又はメモリマトリックスの動作方法において、
少なくとも1つのメモリ素子に読出電圧VR を印加し、この読出電圧VR が、絶対値で、メモリ素子のメモリセルA又はBの一方を状態A0又はB0から状態A1又はB1に切り換えるために必要な第1の閾値よりも大きく、この読出電圧VR が、絶対値で、メモリ素子の他方のメモリセルA又はBを状態A1又はB1から状態A0又はB0に切り換えるために必要な第2の閾値よりも小さいことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のメモリ素子、積層体又はメモリマトリックスの動作方法において、メモリ素子への読出電圧VR の印加によって読み出された情報が、それに続き、そのメモリ素子に改めて記憶されることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のメモリ素子、積層体又はメモリマトリックスの動作方法において、書込電圧V0 と書込電圧V1 の中の一つ以上を印加した場合のメモリ素子、積層体又はメモリマトリックスを通して流れる電流の時間推移が評価されることを特徴とする方法。
【請求項32】
メモリ素子、積層体又はメモリマトリックスを通して流れる電流における短いパルスの発生が、切換プロセスが成功したことの確認と書込電圧を印加する前のメモリ素子の状態に関する情報の中の一つ以上として評価されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
書込サイクルを繰り返した場合のメモリ素子、積層体又はメモリマトリックスを通して流れる電流の時間推移における変化が、メモリ素子の劣化の開始に関する指標として評価されることを特徴とする請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
書込電圧V0 、書込電圧V1 及び読出電圧VR の中の一つ以上の一部が、それぞれワード線及びビット線を介して印加されることを特徴とする請求項29〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
1つのメモリ素子に書込電圧V0 、書込電圧V1 及び読出電圧VR の中の一つ以上を印加する場合に、少なくとも1つの別のメモリ素子に異なる符号の電圧を印加することを特徴とする請求項29〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
それぞれ少なくとも安定な状態0及び安定な状態1を有する少なくとも2つのメモリ素子P及びQから成る配列構成において2つの変数K及びLの論理演算の真理値を決定する方法であって、メモリ素子PとQが、それぞれ第1の書込電圧V0 を印加することによって状態0に移行可能であり、第2の書込電圧V1 を印加することによって状態1に移行可能であり、変数K及びLが、それぞれ真理値0及び1に割り当てられた2つの電圧レベルの形で実現され、これら2つの電圧レベルの差が、絶対値で、少なくともメモリ素子P及びQの書込電圧V0 及びV1 と同じ大きさである方法において、本方法が、
・メモリ素子Pの2つの極P1 ,P2 の中の少なくとも一方に、変数Kの電圧レベルを印加する工程と、
・メモリ素子Qの2つの極Q1 ,Q2 の中の少なくとも一方に、変数Lの電圧レベルを印加する方工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項37】
該2つの電圧レベルの中の少なくとも一方が、絶対値で、少なくともメモリ素子P及びQの書込電圧V0 及びV1 と同じ大きさであることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
メモリ素子P及びQの2つの状態0及び1は、絶対値で書込電圧V0 及びV1 よりも小さい読出電圧VR を印加した場合にメモリ素子P及びQの電気抵抗値が異なることで表されることを特徴とする請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜21のいずれか一項に記載のメモリ素子をメモリ素子P及びQとして選択することを特徴とする請求項36〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
メモリ素子P及びQの少なくとも一方に、それに対応する読出電圧VR を印加することを特徴とする請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
変数K及びLの電圧レベルをメモリ素子P及びQの極に印加した後、メモリ素子PとQの両方に対して読出電圧VR として作用する電圧をメモリ素子PとQの並列接続構成に印加することを特徴とする請求項36〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
変数K及びLの電圧レベルをメモリ素子P及びQの極に印加した場合に配列構成を通して流れる電流の時間推移が、論理演算の真理値を決定するために評価されることを特徴とする請求項36〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
公称値で書込電圧V0 ,V1 及び読出電圧VR が同じであるメモリ素子PとQを選択することを特徴とする請求項36〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
メモリ素子PとQから成る請求項22に記載の積層体と請求項23〜28のいずれか一項に記載のメモリマトリックスの中の一つ以上をメモリ素子から成る配列構成として選択することを特徴とする請求項36〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
極性が異なるメモリ素子PとQをそれぞれ変数Kの電圧レベルと変数Lの電圧レベルの間に接続することを特徴とする請求項36〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
変数K及びLの電圧レベルを印加する前に、両方のメモリ素子PとQを所定の状態に初期化することを特徴とする請求項36〜45のいずれか一項に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a)】
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【図7b)】
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【図7c)】
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【図8a)】
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【図8b)】
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【図8c)】
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【図9a)】
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【図9b)】
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【図9c)】
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【図10a)】
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【図10b)】
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【図10c)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−528419(P2012−528419A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512199(P2012−512199)
【出願日】平成22年5月8日(2010.5.8)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000514
【国際公開番号】WO2010/136007
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.RRAM
【出願人】(390035448)フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (100)
【Fターム(参考)】