説明

メラニン生成抑制剤、活性酸素消去剤、及び該剤を含有する組成物

【課題】本発明の目的は、活性酸素消去作用とチロシナーゼの阻害作用を併せ持ち、メラニンの生成を効果的に抑制できるメラニン生成抑制剤を提供することである。また、本発明の目的は、活性酸素を消失させる能力に優れた活性酸素消去剤を提供することである。
【解決手段】スイカの抽出物をメラニン生成抑制剤の有効成分として使用する。また、スイカの葉の抽出物を活性酸素消去剤の有効成分として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニンの生成を効果的に抑制できるメラニン生成抑制剤に関する。また、本発明は、活性酸素を消失させる能力に優れた活性酸素消去剤に関する。更に、本発明は、これらの剤を含有し、活性酸素の消去作用又はメラニン生成抑制作用を有効に発揮する、化粧料、医薬品、食品、育毛剤等の各種組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
しみ、そばかす、シワ、アトピー性皮膚炎等の肌のトラブルには、活性酸素が大きく関与している。また活性酸素は、肌のトラブル以外にも、種々の病気や老化を引き起こす原因の一つである。活性酸素種の中でも、ヒドロキシル・ラジカルは非常に反応性が高く危険であり、生体内で発生すると瞬時に近傍の生体物質を攻撃して酸化させてしまう。従って、ヒドロキシルラジカル等の活性酸素を効果的に分解する物質を用いて、化粧品・食品等に活性酸素消去能を付与することは有用であると考えられている。
【0003】
また、肌のしみやそばかすについては、活性酸素やチロシナーゼが関与してメラニンが生成し、これが沈着することによって生じることが分かっている。そのため、しみやそばかすを効果的に予防し、白い肌を維持するには、活性酸素を消失させるだけでなく、チロシナーゼをも阻害することが効果的であると考えられている。
【0004】
従来、化粧料の分野では、活性酸素の消去やメラニン生成抑制を目的として、抗酸化物質の配合が広く行われているが、これらは主に化学合成した人工の化合物を用いる例が多い。この人工の化合物では、人体に対する副作用を与える等、安全性の点で問題があったり、また、光劣化や自動酸化により分解を受け易いため、所望の効果が得られないという問題点があった。
【0005】
一方、従来より、天然由来成分であるシトルリンには、活性酸素を消去する作用があり、化粧料等に配合して使用し得ることが知られている(特許文献1参照)。また、本発明者等は、野生種スイカの果汁には、シトルリンが含有されており、優れた抗酸化作用があることを明らかにしている(特許文献2参照)。しかしながら、スイカから得られる抽出物が、メラニンの生成に対して如何なる作用を及ぼすかについては明らかにされていない。また、スイカの葉(特に野生種スイカの葉)から得られる抽出物が、どのような生理活性を示すかについては一切知られていない。
【0006】
このような従来技術を背景として、安全性が高く、優れたチロシナーゼの阻害活性や活性酸素消去活性を持つ天然由来成分、特に、活性酸素消去作用と共にチロシナーゼの阻害作用をも併せ持つ天然由来成分の探索が望まれていた。更に、活性酸素から人体を効果的に防御でき、安全性の高い化粧料、食品、医薬品等の創出が求められていた。
【特許文献1】特開2002−226370号公報
【特許文献2】特願2004−135241号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、活性酸素消去作用とチロシナーゼの阻害作用を併せ持ち、メラニンの生成を効果的に抑制できるメラニン生成抑制剤を提供することである。また、本発明は、活性酸素を消失させる能力に優れた活性酸素消去剤を提供することを目的とする。更に、本発明は、活性酸素の消去作用やメラニン生成抑制作用を有効に発揮する、化粧料、医薬品、食品等の各種形態の組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、野生種スイカの抽出物(特に、野生種スイカの葉の抽出物)には、優れたチロシナーゼ阻害作用があることを見出した。更に、野生種スイカの葉の抽出物には、優れた活性酸素消去作用があることをも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる発明を提供する:
項1. スイカの抽出物を有効成分とする、メラニン生成抑制剤。
項2. スイカが野生種スイカである、項1に記載のメラニン生成抑制剤。
項3. 項1又は2に記載のメラニン生成抑制剤を含有する組成物。
項4. 前記組成物が化粧料組成物である、項3に記載の組成物。
項5. 前記組成物が医薬組成物である、項3に記載の組成物。
項6. 前記組成物が食品組成物である、項3に記載の組成物。
項7. スイカの葉の抽出物を有効成分とする、活性酸素消去剤。
項8. スイカが野生種スイカである、項7に記載の活性酸素消去剤。
項9. 項7又は8に記載の活性酸素消去剤を含有する組成物。
項10. 前記組成物が化粧料組成物である、項9に記載の組成物。
項11. 前記組成物が医薬組成物である、項9に記載の組成物。
項12. 前記組成物が食品組成物である、項9に記載の組成物。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
メラニン生成抑制剤
本発明のメラニン生成抑制剤は、スイカ(好ましくは野生種スイカ)の抽出物を有効成分とすることを特徴とする。スイカの果実、葉、茎等の部位には、シトルリン以外に活性酸素消去作用やチロシナーゼ阻害作用の発現に寄与する他の成分が含まれている。それ故、スイカの上記部位を抽出処理して得られる抽出物には、シトルリンと共に、活性酸素消去作用やチロシナーゼ阻害作用の発現に寄与する他の成分が含有されており、含有するシトルリンの作用効果の範囲を超えて、より優れたメラニン生成抑制作用を発現することができる。
【0011】
本発明において、有効成分として使用される「スイカ」とは、ウリ科の蔓性一年草のことであり、学名では(シトルルス ラナタス:Citrullus lanatus)と呼ばれている植物である。本発明において使用されるスイカとしては、その種や原産国等については特に制限されないが、一層優れた活性酸素消去活性及びチロシナーゼ阻害活性を獲得するという観点からは、野生種スイカを使用することが望ましい。
【0012】
ここで、「野生種スイカ」とは、アフリカ・ボツアナ共和国付近一帯に位置するカラハリ砂漠に生育する野生のスイカ(シトルルス ラナタス:Citrullus lanatus)である。本発明では、野生種スイカとして、上記の野生のスイカの他に、上記の野生のスイカの場合と同等のメラニン生成抑制作用を有する限り、上記の野生のスイカを交配育種したものや、人工的に畑等で栽培したものを使用してもよい。ここで、「野生のスイカの場合と同等のメラニン生成抑制作用」とは、対象となるスイカの抽出物が、該抽出物中のシトルリン含量に相当する量のシトルリンを単独で使用した場合に比して、チロシナーゼ阻害活性が高いことを意味する。
【0013】
スイカの抽出物は、スイカの地上部の部位を抽出対象として抽出処理することによって得ることができる。抽出対象部位としては、スイカの地上部のいずれかの部位である限り特に制限されないが、具体的には、スイカの果肉、果実部の外皮、果実部の内皮、葉部、及び/又は茎部等が好適に使用される。これらの抽出対象部位の内、好ましくはスイカの果肉、及び/又は葉部であり、更に好ましくは葉部/又は茎部である。本発明において、1種の抽出部位を単独で使用してもよく、また2種以上の抽出部位を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0014】
スイカの抽出物は、抽出対象部位の種類に応じた抽出処理に供されることにより調製される。例えば、スイカの抽出対象部位をそのまま、或いは必要に応じて、乾燥、細切、又は破砕したものを、抽出溶媒により抽出することにより調製できる。
【0015】
スイカの抽出物の抽出に使用される溶媒としては、特に制限されず、極性及び非極性溶媒の何れであってもよい。当該抽出溶媒として、具体的には、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜5の低級アルコール;1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール;酢酸エチル、等の極性溶媒が例示される。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。当該抽出溶媒として、好ましくは極性溶媒であり、更に好ましくは水、又は水とエタノールの混合液である。
【0016】
スイカの抽出物を調製するための抽出方法としては、浸漬法やパーコレーション法等の通常用いられている植物抽出物の抽出方法を採用することができる。
【0017】
また、抽出対象部位がスイカの果肉である場合には、本発明で使用されるスイカの抽出物は、上記の抽出溶媒を使用して得られるもの以外に、果肉を磨り潰して、又は圧搾して得られる液体画分等であってもよい。なお、当該液体画分には、スイカの果汁も含まれる。
【0018】
上記方法で得られるスイカの抽出物は、メラニン生成抑制剤の有効成分として、液状のまま使用してもよいが、必要に応じて濃縮、乾燥等の処理に供して濃縮物や乾燥物として使用してもよい。また、当該濃縮物又は乾燥物は、更に適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して用いてもよい。また、得られた抽出物を、液体クロマトグラフィー等の慣用されている精製法を用いて、活性酸素消去作用又はチロシナーゼ阻害抑制作用を有する画分を取得し、精製して使用することもできる。
【0019】
スイカの抽出物は、外用(経皮適用)、内用(内服又は摂取)等の各種形態で適用されることにより、メラニン生成抑制作用を有効に発揮できる。特に、スイカの葉の抽出物を使用する場合、活性酸素消去作用とチロシナーゼの阻害作用を同時に発現できるので、メラニン生成抑制作用を一層有効に発揮することが可能である。それ故、本発明のメラニン生成抑制剤は、化粧料、食品、医薬品、入浴剤、洗浄剤、飼料、育毛剤等として使用される組成物の一成分として配合して使用される。このように、メラニン生成抑制剤(スイカの葉の抽出物)を含む組成物は、メラニン生成抑制用組成物として有用である。
【0020】
本発明のメラニン生成抑制剤を含む組成物において、該剤の配合割合については、メラニン生成抑制に有効な割合であればよく、該組成物の形態や用途等に応じて適宜調整されるが、通常、組成物の総量に対して、スイカの抽出物が、乾燥重量換算で0.0001〜50重量%となる割合が挙げられる。
【0021】
活性酸素消去剤
本発明の活性酸素消去剤は、スイカ(好ましくは野生種スイカ)の葉の抽出物を有効成分とすることを特徴とする。スイカの葉の抽出物には、シトルリンが含有されていることが分かっているが、該抽出物中には、シトルリンの作用(具体的には、活性酸素消去作用等)以外に活性酸素消去作用の発現に寄与する他の成分が含まれている。それ故、スイカの葉抽出物は、含有するシトルリンの作用効果の範囲を超えて、より優れた活性酸素消去作用を発現する。
【0022】
本発明の活性酸素消去剤において、スイカの葉の抽出物の原料としては、野生種スイカを使用することが望ましい。
【0023】
スイカの葉の抽出物は、該スイカの葉部を抽出処理に供することにより得られる。本発明では、抽出対象となる植物部位として、上記スイカの葉部を含む限り、茎部等を含む地上部をそのまま抽出処理することにより得られる抽出物を使用してもよい。
【0024】
なお、スイカの葉の抽出物の調製に使用される抽出溶媒及び抽出方法については、前記メラニン生成抑制剤の欄に記載の通りである。また、本発明の活性酸素消去剤に使用されるスイカの葉の抽出物の形態や精製度についても、前記メラニン生成抑制剤で使用される抽出物の場合と同様である。
【0025】
スイカの葉抽出物は、外用(経皮適用)、内用(内服又は摂取)等の各種形態で適用されることにより、活性酸素の消去作用を有効に発現する。それ故、本発明の活性酸素消去剤は、化粧料、食品、医薬品、入浴剤、洗浄剤、飼料、育毛剤等として使用される組成物の一成分として配合して使用される。このように、活性酸素消去剤(スイカの葉の抽出物)を含む組成物は、活性酸素消去用組成物として有用である。
【0026】
本発明の活性酸素消去剤を含む組成物において、該剤の配合割合については、前記メラニン生成抑制剤を含む組成物の場合と同様である。即ち、活性酸素消去剤の配合割合としては、一般的には、組成物の総量に対して、スイカの葉抽出物が、乾燥重量換算で0.0001〜50重量%となる割合が挙げられる。
【0027】
以下に、本発明の活性酸素消去剤又はメラニン生成抑制剤の具体的使用態様について、化粧料、食品、医薬品を例に挙げて説明する。
【0028】
化粧料
化粧料の分野では、活性酸素消去又はメラニン生成抑制に有効な量の野生種スイカの葉抽出物と共に、香粧学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、活性酸素消去用又はメラニン生成抑制用の化粧料組成物が提供される。当該化粧料組成物は、メラニン生成抑制作用を効果的に発揮でき、肌を白く保つのに好適であるので、美白用化粧料として有用である。
【0029】
当該化粧料組成物の形状については特に制限されないが、例えば、ペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、エアゾール状、スプレー状等が挙げられる。また、当該化粧料組成物の形態についても、制限されるものではないが、例えば、ファンデーション、頬紅、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー、白粉等のメーキャップ化粧料;乳液、クリーム、ローション、オイル及びパック等の基礎化粧料;ヘアジェル、ヘアスプレー、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアムース、ポマード、チック、ヘアクリーム、ヘアシャンプー、ヘアトリートメント、ヘアリンス等の毛髪用化粧料;洗顔料、クレンジング、ボディ洗浄料等の洗浄料;清拭剤;清浄剤;入浴剤等の浴用化粧料等が挙げられる。
【0030】
また、当該化粧料組成物における活性酸素消去剤又はメラニン生成抑制剤の配合割合としては、前述する割合の範囲内で適宜設定すればよいが、好ましくは、該組成物の総量に対して、スイカの葉抽出物が乾燥重量換算で0.0001〜50重量%、更に好ましくは0.001〜20重量%となる割合が望ましい。
【0031】
食品
食品の分野では、活性酸素消去又はメラニン生成抑制を生体内で発現するのに有効な量のスイカの抽出物を食品素材として各種食品に配合することにより、活性酸素消去又はメラニン生成抑制効果を奏する食品組成物を提供することができる。即ち、本発明は、食品の分野において、活性酸素消去用、メラニン生成抑制用、又は美白用と表示された食品組成物を提供することができる。当該食品組成物としては、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等を挙げることができる。
【0032】
当該食品組成物として、より具体的には、飲料(炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、アルコール飲料、果汁飲料、茶類、栄養飲料等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、菓子類(ガム、キャンディー、クッキー、グミ、ビスケット、ゼリー等)、パン、シリアル等を例示できる。また、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品等の場合であれば、粉末、顆粒、カプセル、トローチ、シロップ等の形態のものであってもよい。
【0033】
また、当該食品組成物における活性酸素消去剤又はメラニン生成抑制剤の配合割合としては、前述する割合の範囲内で適宜設定すればよいが、好ましくは、該組成物の総量に対して、スイカの抽出物が乾燥重量換算で0.0001〜50重量%、更に好ましくは0.001〜20重量%となる割合が望ましい。
【0034】
医薬品
医薬の分野では、活性酸素消去又はメラニン生成抑制に有効な量のスイカの抽出物と共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、活性酸素消去用又はメラニン生成抑制用の医薬組成物が提供される。なお、当該医薬組成物には、医薬品及び医薬部外品の双方が含まれる。
【0035】
当該医薬組成物は、内用的に適用されても、また外用的に適用されても、上記所望の作用を発揮することができる、故に、当該医薬組成物は、内服剤;静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射及び腹腔内注射等の注射剤;経粘膜適用剤、経皮適用剤等の製剤形態で使用することができる。
【0036】
当該医薬組成物の剤型としては、適用形態に応じて適宜設定されるが、一例として、錠剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤;液剤、乳剤、懸濁剤等の液状製剤;軟膏剤、ゲル剤等の半固形製剤が挙げられる。
【0037】
当該医薬組成物の適用量は、適用対象者の性別や年齢、該組成物の適用形態、期待される効果等に基づいて、適宜設定することができる。
【0038】
また、当該医薬組成物における活性酸素消去剤又はメラニン生成抑制剤の配合割合については、適用形態や適用量等に応じて、前述する割合の範囲内で適宜設定すればよいが、好ましくは、該組成物の総量に対して、スイカの抽出物が乾燥重量換算で0.0001〜50重量%、更に好ましく0.001〜20重量%となる割合が望ましい。
【0039】
当該医薬組成物は、活性酸素やメラニンの生成により惹起される疾病や症状の予防乃至治療薬として有用である。活性酸素により惹起される疾病や症状としては、具体的には、歯肉炎、歯周炎等の歯周病、肺炎等の炎症;心筋梗塞、動脈硬化等の循環器疾患;糖尿病の合併症;イニシエーターやプロモーターに起因する肺癌、胃癌等の癌;脳卒中;肩こり;冷え性;高血圧;老人性痴呆;肝斑等の皮膚疾患等が例示される。また、メラニンの生成により惹起される疾病や症状としては、具体的には、しみ、そばかす、肝斑、しわ等の皮膚疾患や皮膚の老化等が例示される。
【発明の効果】
【0040】
従来、シトルリンには活性酸素を消去する作用があることが知られている。また、本発明においてメラニン生成抑制剤又は活性酸素消去剤として使用するスイカの抽出物又はスイカの葉の抽出物にも、シトルリンを含有することが分かっている。これらの抽出物は、含有するシトルリンが他の含有成分と共存することにより活性酸素消去作用が増強されて発揮されるので、単にシトルリンをメラニン生成抑制剤や活性酸素消去剤として使用する場合に比してその有用性は高い。
【0041】
また、本発明によれば、人類により長年の食経験があるスイカを原料として得られた抽出物を活性酸素消去剤又はメラニン生成抑制剤として使用しており、安全性が高いため、医薬品としてのみならず、食品、化粧料等の多岐に亘る形態の組成物で活性酸素の消去やメラニンの生成抑制を有効に発揮することが可能である。
【0042】
更に、本発明は、従来廃棄されていたスイカの葉を原料として好適に使用すできるので、資源の有効利用という点でも利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 活性酸素消去作用
ボツワナ・カラハリ砂漠由来の野生種スイカ植物体から、葉、茎を含む地上部全てを採取した。次いでこの地上部を液体窒素と共に乳鉢に入れ、乳棒を用いてすり潰した。次いで、地上部の湿重量とバッファー量が湿重量(g) : バッファー量(ml) =1 : 5になるように25mM リン酸バッファー(pH 7.5)を加えて、さらにすり潰した。破砕液を遠心チューブに移した後、80℃で10分間熱処理を行った。さらに15000rpmで10min遠心し、上清を合計500ml回収した。得られた上清を「葉抽出物含有溶液」とした。この葉抽出物含有溶液100ml当たり、スイカの葉抽出物が、乾燥重量換算で0.8g含有されていた。
【0044】
野生種スイカの葉抽出物含有溶液の活性酸素消去作用を、サリチル酸の酸化を指標とした競争反応解析により検定した(Akashi, et al (2001) FEBS Lett., 508: 438-442)。具体的には、50 mMのリン酸バッファー(pH 7.4)内に、2 mMサリチル酸と0.5重量%の野生種スイカ葉抽出物含有溶液を溶解させた。次いで0.6 mM 過酸化水素、0.15 mM FeEDTA、0.26 mMアスコルビン酸を添加してヒドロキシル・ラジカルを発生させ、25℃、90分間反応させた。サリチル酸の酸化によって生じたdihydrozyl benzoic acid(DHBA)の定量は文献(Smirnoff and Cumbes (1989) Phytochemistry, 28: 1057-1060)に記載の方法に従った。また、比較として、野生種スイカ葉抽出物含有溶液の代わりに、水、2.8μMのシトルリン水溶液、ホウレンソウの葉抽出物含有溶液を使用して、上記と同様に試験を行った。なお、上記野生種スイカ葉抽出物含有溶液には0.56 mMのシトルリンが含まれており、0.5重量%の野生種スイカ葉抽出物含有溶液を含む試験サンプルには2.8μMのシトルリンが含まれていることを予め確認している。また、上記ホウレンソウの葉抽出物含有溶液は、野生種スイカの地上部の代わりにホウレンソウの葉を使用すること以外は、上記の野生種スイカ葉抽出物含有溶液の製法に従って調製した。
【0045】
得られた結果を図1に示す。その結果、野生種スイカ葉抽出物含有溶液を0.5重量%含有することにより、水のみを加えた場合に比べ、サリチル酸の酸化が47%も抑制された(図1)。またホウレンソウ葉抽出物含有溶液の場合と比較しても、野生種スイカ葉抽出物含有溶液の活性酸素消去活性の方が顕著に高かった。このことから、野生種スイカ葉抽出物は非常に優れた活性酸素消去能力を有していることが明らかになった。一方、2.8μMのシトルリン水溶液についてその活性酸素消去活性を測定したところ、サリチル酸の酸化は0.2%程度しか抑制されなかった。このことは、野生種スイカ葉抽出物において、シトルリン以外の物質が、その高い活性酸素消去活性に寄与していることを示している。
【0046】
実施例2 チロシナーゼ阻害作用
野生種スイカ葉抽出物及びスイカの果肉の抽出物のチロシナーゼ阻害作用を評価するために、以下の試験を行った。
【0047】
まず、ボツワナ・カラハリ砂漠由来の野生種スイカの果実の外皮、内皮、及び種子を取り除き、果肉部位を得た。次いで、この果肉をミキサーで破砕し、ガーゼで濾過することにより、野生種スイカ果肉抽出液(1.16mMのシトルリン含有)を得た。
また、上記実施例1に記載の方法に従って、野生種スイカ葉抽出物含有溶液を製造した。
【0048】
斯くして得られた野生種スイカ果肉抽出液及び野生種スイカ葉抽出物含有溶液のメラニン生成抑制作用を、L-DOPAを基質としたドーパクロム法を用いて検定した(Tada, et al.(2002) J. Oleo. Sci., 51: 19-27.)。具体的には、19mMのリン酸バッファー(pH 6.8)中で、0.5mM L-DOPA と5重量%の野生種スイカ果肉抽出液又は野生種スイカ葉抽出物含有溶液を共存させた。次いで、これに、30units/ml mashroom チロシナーゼを添加してドーパクロムを発生させ、1分後のドーパクロムの生成量を475nmの吸光度で測定した。測定した吸光度の値から、文献 (Tada, et al.(2002) J. Oleo. Sci., 51: 19-27.)に記載の方法に従って、メラニン合成阻害率を算出した。また、比較として、野生種スイカ果肉抽出液又は野生種スイカ葉抽出物含有溶液の代わりに、水、又はレタスの葉抽出物含有溶液を使用して、上記と同様に試験を行った。なお、上記レタスの葉抽出物含有溶液は、野生種スイカの地上部の代わりにレタスの葉を使用すること以外は、上記実施例1の欄に記載の野生種スイカ葉抽出物含有溶液の製法に従って調製した。
【0049】
得られた結果を図2に示す。その結果、野生種スイカ果肉抽出液又は野生種スイカ葉抽出物含有溶液を5重量%含有することにより、水のみを加えたコントロールに比べ、ドーパクロムの生成が約42.7%抑制された(図2)。特に、野生種スイカ葉抽出物含有溶液を使用した場合に、ドーパクロムの生成が一層効果的に抑制されることが明らかとなった。対照的に、レタスの葉抽出物含有溶液5重量%含有サンプルはチロシナーゼ活性を約22.7%促進してしまうことが確認された。このことから、野生種スイカの抽出物(特に、野生種スイカの葉抽出物)は非常に高いメラニン生成抑制作用を有しており、美白用化粧料等の構成成分として非常に有用であることが明らかになった。
【0050】
処方例1 乳液
(重量%)
実施例1で製造したスイカの葉抽出物含有溶液 20
スクワレン 5
ワセリン 3
セスキオレイン酸ソルビタン 1
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O) 1
プロピレングリコール 5
エタノール 3
pH調整剤 適量
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100重量%
【0051】
処方例2 錠剤
以下に示す組成の錠剤(1錠当たりの重量:300mg)を製造した。なお、以下の処方において示す「スイカの葉抽出物の乾燥固形物」は、実施例1で製造したスイカの葉抽出物含有溶液を乾燥させて粉末状にしたものである。
(重量部)
スイカの葉抽出物の乾燥固形物 1
結晶セルロース 20
乳糖 73
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 5
ステアリン酸マグネシウム 1
合計 100重量部
【0052】
処方例3 顆粒
以下に示す成分を混合し、これに80容量%エタノール水溶液を適量加えた後、押出し造粒、次いで乾燥を行って、顆粒を製造した。なお、以下の処方において示す「スイカの葉抽出物の乾燥固形物」は、実施例1で製造したスイカの葉抽出物含有溶液を乾燥させて粉末状にしたものである。
(重量%)
スイカの葉抽出物の乾燥固形物 2
ビタミンC 1
クエン酸 2.5
粉糖 60
乳糖 30
香料 適量
合計 100重量%
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1における測定結果、即ち、野生種スイカ葉抽出物の活性酸素消去作用を示す図である。
【図2】実施例2における測定結果、即ち、野生種スイカ果肉抽出液及び野生種スイカ葉抽出物のメラニン合成抑制作用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイカの抽出物を有効成分とする、メラニン生成抑制剤。
【請求項2】
スイカが野生種スイカである、請求項1に記載のメラニン生成抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメラニン生成抑制剤を含有する組成物。
【請求項4】
前記組成物が化粧料組成物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が医薬組成物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が食品組成物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
スイカの葉の抽出物を有効成分とする、活性酸素消去剤。
【請求項8】
スイカが野生種スイカである、請求項7に記載の活性酸素消去剤。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の活性酸素消去剤を含有する組成物。
【請求項10】
前記組成物が化粧料組成物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が医薬組成物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が食品組成物である、請求項9に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−197360(P2007−197360A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17456(P2006−17456)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】