説明

メラミン化粧板及びその製造方法

【課題】表面が滑りやすくなることなく、指紋等の油汚れが目立ち難いメラミン化粧板及びそのようなメラミン化粧板を効率良く製造することができるメラミン化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】メラミン化粧板10は、表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面15が形成され、該凹凸面15上に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含む微細粗面層14が形成されて構成されている。微細粗面層14の厚みは1〜10μmであることが好ましい。このメラミン化粧板10は、転写フィルムを用いる転写法によって作製される。転写フィルムは、表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面15を有する粗面フィルム上に、バインダー中に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含有するコーティング液を塗布してコーティング層を形成することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル、カウンター等の家具、扉等の建具などに使用され、指紋等の油汚れが目立ちにくいメラミン化粧板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミン化粧板は、強度、硬さ、耐熱性等の物性に優れていることから、テーブル、カウンター等の材料として好適に用いられている。一般にメラミン化粧板は、化粧用パターン原紙にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を含浸、乾燥させたメラミン樹脂含浸パターン紙と、クラフト紙にフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を含浸、乾燥させたフェノール樹脂含浸コア紙とを積層し、プレス機で加圧、加熱することにより製造される。このメラミン化粧板の表面には、人の手が触れたときに指紋等の油汚れが付着しやすいという欠点があった。
【0003】
そこで、そのような油汚れを目立たないようにするために、表面に撥水撥油性を有する低屈折率層を形成したメラミン化粧板が提案されている(特許文献1を参照)。すなわち、撥水撥油性を有する低屈折率層は、水接触角が90°以上でオレイン酸接触角が45°以上のものである。具体的には、フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとがグラフト化されたシロキサングラフト型ポリマーを主成分とするものである。
【0004】
しかしながら、メラミン化粧板表面に撥水撥油性を有する低屈折率層を形成した場合には、指紋等の油汚れが付着し難くなる一方、メラミン化粧板の表面が滑りやすくなる。そのため、メラミン化粧板をテーブル、カウンター等に使用したときには、メラミン化粧板上に置いたものが簡単に滑り、取扱性が悪いという問題があった。
【0005】
さらに、油汚れを目立たないようにするために、転写シートを用いて表面に低屈折率層を形成したメラミン化粧板が提案されている(特許文献2を参照)。すなわち、そのメラミン化粧板は、オルガノシリカゾルとシロキサングラフト型ポリマーとを含む組成物が基材上に配置された転写シートを用い、その転写シートをメラミン樹脂含浸紙に積層して熱圧成形し、転写操作を行うことにより、表面に低屈折率層が設けられたものである。
【0006】
しかしながら、得られる低屈折率層は屈折率が低いが、それだけでは表面に付着した指紋等の油汚れを目立ち難くするには不十分である。加えて、低屈折率層の表面にはオルガノシリカゾルに基づいてナノメートルサイズの凹凸が形成されるが、その凹凸により指紋等の油汚れが付着する面積を十分に減少させることはできない。このため、メラミン化粧板表面に付着した油汚れを目立ち難くすることは依然として難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−34984号公報
【特許文献2】特開2009−52019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、表面が滑りやすくなることなく、指紋等の油汚れが目立ち難いメラミン化粧板及びそのようなメラミン化粧板を効率良く製造することができるメラミン化粧板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のメラミン化粧板は、表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面が形成され、該凹凸面上に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含む微細粗面層が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明のメラミン化粧板は、請求項1に係る発明において、前記微細粗面層の厚みが1〜10μmであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明のメラミン化粧板の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のメラミン化粧板の製造方法である。すなわち、表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面を有する粗面フィルム上に、バインダー中に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含有するコーティング液を塗布してコーティング層を形成した転写フィルムを、メラミン化粧板に対してコーティング層がメラミン化粧板側になるように積層した後、加熱プレス成形を行い、次いで転写フィルムのうち粗面フィルムを剥離してコーティング層をメラミン化粧板表面に転写し、表面に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含む微細粗面層が形成されたメラミン化粧板を製造することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明のメラミン化粧板の製造方法は、請求項3に係る発明において、前記平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子は、粗面フィルム中に0.1〜10質量%分散されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明のメラミン化粧板の製造方法は、請求項3又は請求項4に係る発明において、前記コーティング液は、平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子がバインダー樹脂に分散されて形成され、平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子100質量部に対するバインダー樹脂の割合が10〜150質量部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のメラミン化粧板は、表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面が形成され、該凹凸面上に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含む微細粗面層が形成されている。このため、メラミン化粧板の表面にはミクロンメートルサイズの凹凸面が形成され、その凹凸面上にナノメートルサイズの微細な凹凸が形成された二重構造となっている。そして、指紋等の油汚れはその微細な凹凸の最も高い凸部表面に付着するため、油汚れが付着する面積を減少させることができる。なお、凹凸面及び微細粗面層の表面に形成される凹凸は微細なものであるため、表面の滑りやすさにはほとんど影響を与えない。
【0014】
従って、メラミン化粧板は、表面が滑りやすくなることなく、指紋等の油汚れを目立ち難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の実施形態におけるメラミン化粧板の構成を模式的に示す概略断面図、(b)はメラミン化粧板の表面を拡大して示す部分拡大断面図。
【図2】(a)は実施形態の樹脂含浸紙を模式的に示す概略断面図、(b)は転写フィルムを示す概略断面図、(c)は樹脂含浸紙上に転写フィルムを積層した状態を示す概略断面図、(d)は転写フィルムの表面を拡大して示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
メラミン化粧板は、表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ(二酸化ケイ素、SiO)粒子に基づく凹凸面が形成され、その凹凸面上に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子に基づく微細粗面層が形成されて構成されている。具体的には、図1(a)に示すように、メラミン化粧板10は、5枚のフェノール樹脂含浸紙11上に1枚のメラミン樹脂含浸紙12が積層されて樹脂含浸紙13が構成され、この樹脂含浸紙13上に微細粗面層14が形成されて構成されている。図1(b)の拡大断面図に示すように、メラミン樹脂含浸紙12の表面には平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面15が形成され、該凹凸面15上に前記微細粗面層14が形成されている。
【0017】
シリカ微粒子の平均粒子径は1〜60nmであり、好ましくは10〜20nmである。シリカ微粒子の平均粒子径が1nmを下回る場合には、後述するバインダーと混合してコーティング液を調製したときシリカ微粒子の凝集が起こってシリカ微粒子の分散が安定しなくなる。その一方、60nmを上回る場合には、指紋等の油汚れに対する接触面積が増え、油汚れを目立たなくする効果が低下すると共に、微細粗面層14表面の微細な凹凸が粗くなるため乱反射により白化したように見える。
【0018】
前記微細粗面層14の厚みは1〜10μmであることが好ましい。この厚みが1μm未満の場合、微細粗面層14表面に形成される凹凸が微細になり過ぎて平滑面に近くなり、指紋等の油汚れを目立たなくすることが難しくなる。その一方、厚みが10μmを超える場合、微細粗面層14表面の微細な凹凸にむらが発生しやすくなる傾向を示す。
【0019】
次に、メラミン化粧板10の製造方法について説明する。
まず、図2(a)に示すように、5枚のフェノール樹脂含浸紙11上に1枚のメラミン樹脂含浸紙12を積層して樹脂含浸紙13を調製する。フェノール樹脂含浸紙11及びメラミン樹脂含浸紙12は1枚又は複数枚が適宜選択して使用される。フェノール樹脂含浸紙11は、コア紙として坪量150〜250g/mのクラフト紙にフェノール樹脂を含浸率が45〜60%となるように含浸し、100〜140℃で乾燥させることにより製造される。
【0020】
メラミン樹脂含浸紙12は、パターン紙として坪量60〜160g/mのチタン紙にメラミン樹脂を含浸率が70〜140%となるように含浸し、100〜140℃で乾燥させることにより製造される。なお、フェノール樹脂含浸紙11及びメラミン樹脂含浸紙12における含浸率は、次式で求められる。
【0021】
含浸率(%)=〔(含浸後の含浸紙の質量)−(含浸前の原紙の質量)〕×100/(含浸前の原紙の質量)
次いで、図2(b)に示すように、表面に凹凸を有する粗面フィルム16を用意し、その粗面フィルム16上に、バインダー中に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含有するコーティング液を塗布してコーティング層17を形成した転写フィルム18を調製する。上記粗面フィルム16は、樹脂フィルムに平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子が分散されて構成されている。このため、図2(d)の拡大断面図に示すように、粗面フィルム16表面にはそのシリカ粒子に基づく凹凸を有する凹凸面15が形成され、該凹凸面15上にコーティング層17が設けられている。このように樹脂フィルムにシリカ粒子が分散されて構成されていることにより、加熱プレス成形時に粗面フィルム16表面の凹凸が維持され、メラミン化粧板10表面に凹凸を形成することができる。
【0022】
粗面フィルム16を、係るシリカを用いることなく、エンボス加工により形成しようとすると、加熱プレス成形時に樹脂フィルムが平滑に伸ばされるためメラミン化粧板10表面に凹凸が形成されなくなる。前記樹脂フィルムとしては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、ポリエステルフィルム(PETフィルム等)、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)等が用いられる。
【0023】
前記コーティング液は、平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子がバインダー樹脂に分散されて形成され、平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子100質量部に対するバインダー樹脂の割合が10〜150質量部であることが好ましい。シリカ微粒子は、水性シリカゾルを水又はアルコールに分散させたコロイド溶液であることが望ましい。水性シリカゾルの水酸基はメラミン樹脂との相溶性が良く、メラミン化粧板10の品質が低下しない。逆に、疎水化処理したシリカゾルはメラミン樹脂との相溶性が悪く、メラミン化粧板10の品質が低下する。コロイド溶液中のシリカ微粒子の濃度は1〜40質量%であることが好ましい。この場合、コロイド溶液の安定性を良好に維持することができる。
【0024】
バインダー樹脂は、コーティング液を粗面フィルム16上に塗布する場合にシリカが脱落しないようにすると共に、メラミン樹脂との相溶性が良好なものが好ましい。そのようなバインダー樹脂としては、カゼイン樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。
【0025】
シリカ微粒子100質量部に対するバインダー樹脂の割合が10質量部より少ない場合には、コーティング液を粗面フィルム16上に塗布したときシリカ微粒子が脱落するおそれがある。一方、その割合が150質量部より多い場合には、コーティング液を粗面フィルム16上に塗布したときバインダー樹脂が表面を覆うため、転写後に形成される微細粗面層14表面が平滑になりやすく、耐指紋性が低下する傾向を示す。
【0026】
続いて、図2(c)に示すように、転写フィルム18を樹脂含浸紙13に対してコーティング層17が樹脂含浸紙13側になるように積層する。そして、その状態で加熱プレス成形を行い、その後図1(a)に示すように転写フィルム18のうち粗面フィルム16を剥離してコーティング層17を樹脂含浸紙13表面に転写する。加熱プレス成形における加熱温度は125〜150℃が好ましいと共に、圧力は4.9〜8.8MPaが好ましい。加熱プレス成形によって例えば厚み0.8〜1.2mmに成形される。このような操作を経て、表面にコーティング層17が乾燥、固化されて形成された微細粗面層14を有するメラミン化粧板10を製造することができる。
【0027】
以上の実施形態により発揮される効果について以下にまとめて説明する。
(1) 本実施形態におけるメラミン化粧板10は、表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面15が形成され、該凹凸面15上に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含む微細粗面層14が形成されている。このため、メラミン化粧板10の表面にはミクロンメートルサイズの凹凸面15が形成され、その凹凸面15上にナノメートルサイズの微細な凹凸が形成された二重構造となっている。そして、指紋等の油汚れはその微細な凹凸の最も高い凸部表面に付着するため、油汚れが付着する面積を低減させることができると共に、油汚れが付着する微細な点を減少させることができる。なお、凹凸面15及び微細粗面層14の表面に形成される凹凸は微細なものであるため、表面の滑りやすさにはほとんど影響しない。
【0028】
従って、メラミン化粧板10は、表面が滑りやすくなることなく、指紋等の油汚れを目立ち難くすることができる。よって、このメラミン化粧板10を、濃色のテーブル、カウンター、扉等の化粧材用途に好適に使用することができる。
【0029】
(2) 微細粗面層14の厚みが1〜10μmであることにより、メラミン化粧板10の表面に微細粗面層14が十分に存在し、微細粗面層14の機能を有効に発揮することができる。
【0030】
(3) メラミン化粧板10は、転写フィルム18を用いた転写法により製造される。すなわち、表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面15を有する粗面フィルム16上に、バインダー中に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含有するコーティング液を塗布してコーティング層17を形成した転写フィルム18を作製する。この転写フィルム18を樹脂含浸紙13に対してコーティング層17が樹脂含浸紙13側になるように積層した後、加熱プレス成形を行う。次いで、転写フィルム18のうち粗面フィルム16を剥離してコーティング層17を樹脂含浸紙13表面に転写し、表面に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含む微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を製造する。
【0031】
従って、この製造方法によれば、転写法によりメラミン化粧板10の表面に凹凸面15及びその上に微細粗面層14を精度良く形成することができ、効率良く目的のメラミン化粧板10を調製することができる。
【0032】
(4) 前記平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子は、粗面フィルム16中に0.1〜10質量%分散されている。このため、転写フィルム18の表面、延いてはメラミン化粧板10表面にミクロンメートルサイズの凹凸面15を容易に形成することができる。
【0033】
(5) コーティング液は、平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子がバインダー樹脂に分散されて形成され、平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子100質量部に対するバインダー樹脂の割合が10〜150質量部に設定されている。このため、コーティング液中のシリカ微粒子の含有量が十分に確保されると共に、コーティングに適正な粘性を得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
<実施例1>
(転写フィルム18の作製)
平均粒子径10〜20nmのシリカ微粒子をメタノールに分散させたシリカゾル〔コロイド溶液、固形分30質量%、日産化学工業(株)製〕100質量部と、カゼイン樹脂〔固形分25質量%、DICグラフィックス(株)製〕50質量部とを混合してコーティング液を調製した。このコーティング液を水及びメタノールで希釈し、粘度が20〜30mPa・sになるように調整した。得られたコーティング液を、平均粒子径0.1〜2μmのシリカ粒子が分散された二軸延伸ポリプロピレンフィルム〔OPPフィルム、東レ(株)製のYM−17S〕の粗面(光沢度10度)に乾燥厚み(塗布厚)が1μmとなるように塗布し、熱風乾燥させて転写フィルム18を作製した。すなわち、図2(b)に示すように、得られた転写フィルム18は、粗面フィルム16上にコーティング層17が形成されている。
(フェノール樹脂含浸紙11の作製)
コア紙として坪量200g/mのクラフト紙にフェノール樹脂を含浸率が55%となるように含浸し、130℃で乾燥させることによりフェノール樹脂含浸紙11を作製した。
(メラミン樹脂含浸紙12の作製)
パターン紙として坪量100g/mのチタン紙にメラミン樹脂を含浸率が110%となるように含浸し、130℃で乾燥させることによりメラミン樹脂含浸紙12を作製した。
(メラミン化粧板10の調製)
図2(a)に示すように、メラミン化粧板10を構成する樹脂含浸紙13は、5枚のフェノール樹脂含浸紙11上に1枚のメラミン樹脂含浸紙12が積層されて構成されている。そして、図2(c)に示すように、前記転写フィルム18を、樹脂含浸紙13に対してコーティング層17が樹脂含浸紙13側になるように積層し、その状態で加熱プレス成形を行い、厚み1.2mmに形成した。加熱プレス成形では、加熱温度を135℃及び圧力を7.8MPaに設定した。その後、図1(a)に示すように、転写フィルム18の粗面フィルム16を剥離してコーティング層17を樹脂含浸紙13表面に転写し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を製造した。なお、微細粗面層14の厚みは、前記コーティング層17の厚みに相当する。
【0035】
この微細粗面層14を有するメラミン化粧板10について、次に示す方法で外観及び耐指紋性を測定し、評価した。その結果を表1に示した。
(外観の評価方法)
表面に微細粗面層14が設けられたメラミン化粧板10を目視により観察し、下記の評価基準にて評価した。
【0036】
◎:仕上がり良好、○:仕上がり若干白く見える、△:仕上がりが白く見える、×:仕上がりにむらがある。
(耐指紋性の評価方法)
メラミン化粧板10表面に実際に指紋をつけて、指紋がどれだけ目立つかを目視により下記の評価基準にて評価した。
【0037】
○:指紋が目立たない、△:指紋が若干目立つ、×:指紋が目立つ。
<実施例2>
実施例1において、微細粗面層14の厚みを5μmとした以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<実施例3>
実施例1において、微細粗面層14の厚みを10μmとした以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<実施例4>
実施例1において、微細粗面層14の厚みを0.5μmとした以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<実施例5>
実施例1において、微細粗面層14の厚みを15μmとした以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<実施例6>
実施例1において、コーティング液を前記シリカゾル100質量部とカゼイン樹脂100質量部との混合物とした以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<実施例7>
実施例1において、コーティング液を前記シリカゾル100質量部とカゼイン樹脂150質量部との混合物とした以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<実施例8>
実施例1において、コーティング液を前記シリカゾル100質量部とカゼイン樹脂10質量部との混合物とした以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<比較例1>
実施例1において、転写フィルム18として表面が平滑(光沢度140度)な二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を使用した以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<比較例2>
実施例1において、転写フィルム18として表面が平滑なポリエチレンフィルム(PEフィルム)を使用した以外は同様に実施し、表面に微細粗面層14が形成されたメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<比較例3>
実施例1において、転写フィルム18を用いる転写操作を省略した以外は同様に実施し、表面が平滑なメラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
<比較例4>
実施例1において、コーティング層17が形成されていない転写フィルム18を用いた以外は同様に実施し、メラミン化粧板10を調製した。このメラミン化粧板10について、外観及び耐指紋性を実施例1と同様に測定し、その評価結果を表1に示した。
【0038】
【表1】

表1に示したように、実施例1〜3及び実施例6〜8のメラミン化粧板10では、外観及び耐指紋性のいずれも良好であった。実施例4では、コーティング層17の塗布厚すなわち微細粗面層14の厚みが0.5μmという極薄い厚みに形成されたため、メラミン化粧板10の耐指紋性が低下する傾向を示した。さらに、実施例5では、微細粗面層14の厚みが15μmという非常に厚い厚みに形成されたため、メラミン化粧板10の外観が若干低下した。
【0039】
これに対して、比較例1及び2では転写フィルム18として表面が平滑なフィルムを使用したことから、メラミン化粧板10の外観は良好であったが、耐指紋性が不良であった。また、比較例3では転写操作によってメラミン化粧板10の表面に微細な凹凸を形成しなかったことから、メラミン化粧板10の外観は良好であったが、耐指紋性が悪い結果であった。さらに、比較例4ではメラミン化粧板10の表面にミクロンメートルサイズの凹凸面15が形成されているため外観は仕上がりが白く見えると共に、その表面にナノメートルサイズの微細な凹凸が形成されていないため耐指紋性が悪い結果を示した。
【0040】
なお、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 凹凸面15を形成する粒子として、平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子のほか、アルミナ等の無機粒子を併用することも可能である。
【0041】
・ 転写フィルム18を作製するに際し、粗面フィルム16の表面に離型を容易にする薬剤を塗布した後にコーティング液を塗布し、粗面フィルム16上にコーティング層17を形成することもできる。
【0042】
・ メラミン化粧板10は、合板、樹脂板等の基材上に前記樹脂含浸紙13を積層して構成することもできる。
・ メラミン化粧板10を構成する樹脂含浸紙13として、5枚のフェノール樹脂含浸紙11上に1枚のメラミン樹脂含浸紙12を積層し、さらにその上に坪量10〜30g/mのオーバーレイ紙にメラミン樹脂を含浸率200〜400%含浸させたものを積層して構成することもできる。この場合、メラミン化粧板10の耐磨耗性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
10…メラミン化粧板、14…微細粗面層、15…凹凸面、16…粗面フィルム、17…コーティング層、18…転写フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面が形成され、該凹凸面上に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含む微細粗面層が形成されていることを特徴とするメラミン化粧板。
【請求項2】
前記微細粗面層の厚みが1〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載のメラミン化粧板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のメラミン化粧板の製造方法であって、
表面に平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子に基づく凹凸面を有する粗面フィルム上に、バインダー中に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含有するコーティング液を塗布してコーティング層を形成した転写フィルムを、メラミン化粧板に対してコーティング層がメラミン化粧板側になるように積層した後、加熱プレス成形を行い、次いで転写フィルムのうち粗面フィルムを剥離してコーティング層をメラミン化粧板表面に転写し、表面に平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子を含む微細粗面層が形成されたメラミン化粧板を製造することを特徴とするメラミン化粧板の製造方法。
【請求項4】
前記平均粒子径が0.1〜2μmのシリカ粒子は、粗面フィルム中に0.1〜10質量%分散されていることを特徴とする請求項3に記載のメラミン化粧板の製造方法。
【請求項5】
前記コーティング液は、平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子がバインダー樹脂に分散されて形成され、平均粒子径が1〜60nmのシリカ微粒子100質量部に対するバインダー樹脂の割合が10〜150質量部であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のメラミン化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−152659(P2011−152659A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14157(P2010−14157)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(501307642)イビデン建装 株式会社 (2)
【Fターム(参考)】