説明

モジュール式熱交換システム

本発明は、熱交換モジュール(2,21,22)を含むモジュール式熱交換システム(1)に関するものである。前記熱交換システム(1)の少なくとも1個の第1熱交換モジュール(2)が熱交換器(3)を有している。該熱交換モジュール(2)の外側境界面は流入面(4)と流出面(5)とから構成され、それによって、作動時には、搬送流体(6)が熱交換モジュール(2)へ流入面(4)を経て供給され、熱交換器(3)と流れ接触でき、流出面を経て熱交換モジュール(2)から排出され、これによって、前記搬送流体(6)と熱交換器(3)を貫流する伝熱媒体(7)との間で熱交換が行われる。本発明によれば、第1熱交換モジュール(2,21)の第1境界面(81)は、第1熱交換モジュール(2,21)の第2境界面(82)に対して事前設定可能な傾角(α)で傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前提部に記載の熱交換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換システムの使用は、先行技術による事実上概観不可能なほど多数の用途が知られている。熱交換器は普通の家庭用冷蔵庫等の冷蔵システムや建築物の空調システムに使用され、またあらゆる種類の乗物、特に自動車、航空機、船舶には燃焼機関の水冷式又は油冷式の冷却器として使用され、更に、冷却回路では凝縮器又は蒸発器として使用され、更にまた、その他の、当業者には周知の多数の種々の用途に使用されている。
その場合、極めて様々な用途の熱交換器を適切に分類するには様々な可能性がある。一つの試みは異なる種類の熱交換器の構造又は製造形式によって区別することである。
【0003】
その場合、いわゆる「フィン式熱交換器」と、「ミニチャネル」又は「マイクロチャネル」式熱交換器とに区別することができる。
フィン式熱交換器は極めて以前からよく知られており、あらゆる種類の熱交換器同様、二つの媒体間の熱伝達に、例えば、それだけではないにせよ、古典的な家庭用冷蔵庫の場合で知られているように、冷媒から空気への、またその逆の伝達に役立つ。その場合、熱は熱交換器を介して周囲空気へ放出され、冷蔵庫内部に冷却能力が産生される。
【0004】
熱交換器外部の周囲媒体、つまり、例えば水、油、しばしば単純に周囲空気は、例えば熱を吸収したり、熱交換器へ熱を伝達したりするが、その際に相応に冷却されたり加熱されたりする。第2の媒体は、例えば液体冷却担体(liquid cold carrier)、熱担体、蒸発又は凝縮冷媒であることがある。いずれにしても、周囲媒体、例えば空気は、第2媒体、例えば、熱交換システム内を循環する冷媒より著しく低い熱伝達係数を有している。このことは2媒体の伝熱面が著しく異なることによってバランスが取られている。高い熱伝達係数を有する媒体は外側が極めて拡大された表面を有する管内を流れ、拡大表面のところで、例えば空気への熱伝達が薄手の金属薄板(リブ、フィン)を介して行われる。
【0005】
図3には、その種の自体公知のフィン式熱交換器の一部材が簡単な例で示されている。実際には、熱交換器は図3に示した部材の複数部材で構成されている。
内表面に対する外表面の比は、その場合、フィンの幾何形状(=管の直径、管の配置、管の間隔)並びにフィンの間隔に依存する。フィンの間隔は、用途の相違に応じて種々に選択される。しかし、この間隔は、純熱力学的な観点からすれば出来るだけ小さく、しかし、空気側での圧力損失が大きすぎない程度に小さくすべきである。効率的な最適値は約2mmであり、この値は凝縮器や熱交換器の場合に典型的な値である。
【0006】
これらのいわゆるフィン式熱交換器の製造は久しい以前から周知の標準化された工程に従って行われる。フィンはプレス機と特別の工具とを用いて打ち抜きされ、パケット(packets)にされる。次いで管が押し込まれ、十分に密着して管とフィンとの間で良好な熱伝達が行われるように機械式又は液圧式に拡管される。次いで、個々の管がベンドや入口タンク及び出口タンクを介して互いに接続され、しばしばはんだ付けされる。
【0007】
その場合、効率は、フィン表面と空気間で伝達される熱をフィン内の熱伝導により管に伝達せねばならないという事実によって決まる。この熱伝達効率は、フィンの熱伝導率又は肉厚が大であれば、また複数管の間隔が小さければ、それだけ高くなる。ここではフィンの効率について説明する。効率を考えた場合、今日ではフィン材料として主としてアルミニウムが使用される。アルミニウムは、経済的な条件で高い熱伝導率(約220W/mK)を有するからである。管間隔は出来るだけ小さくすべきだが、問題はその結果、管が多く必要になることである。管が多く必要になればコストが高くなる。管は(通例、銅製なので)薄手のアルミニウム製フィンよりはるかに高価だからである。これらの材料費は管直径及び壁厚を低減することで、つまり熱交換器を少数の大きな管でではなく多数の小さい管で作ることで低減できる。この解決策は、小直径の極めて多数の管が狭い間隔で配置されるので、熱力学的には理想的かもしれない。しかし、コストのかなりの部分を占める要因は拡管と管のはんだ付けの労働時間である。前記の幾何形状によって、労働時間は極端に増加しよう。
【0008】
このため、数年前に既に新しい種類の熱交換器、すなわちいわゆるミニチャネル式又はマイクロチャネル式熱交換器が開発された。この熱交換器は全く異なる方法で製造され、フィン式熱交換器の理想の構成に、すなわち狭い間隔で多くの小さい管が配置された構成にほとんど合致する。
しかし、ミニチャネル式熱交換器には小管の代わりにアルミニウムの押し出し形材(extruded aluminum sectoins)が使用され、これらの極小チャネルは例えば約1mmの直径を有している。図2には同じく自体公知のこの押し出し形材が略示されている。その場合実際には、熱交換器は、必要な熱容量によるが、中心的な熱交換部材としての単一の押し出し形材で処理できる。より高い熱伝達能力を達成するには、もとより、複数の押し出し形材を単一熱交換器に同時に配置し、それらを適当に組み合わせて、例えば入口供給管及び出口供給管を介して、例えばはんだ付け等で互いに結合することができる。
【0009】
その種の形材は、複数の材料から、例えば適当な押し出し方法で簡単に、様々な形状に製造できる。しかし、ミニチャネル式熱交換器の製造には他の製造方法、例えば適当に成形された金属薄板の集成その他の適当な方法も知られている。
それらの形材は、拡管できず、また拡管する必要もなく、打ち抜きされたフィン・パケット内へ押し込まれることもない。その代わりに、例えば薄板金ストリップ、特にアルミニウム・ストリップが互いに密に2形材間に配置され(通常の間隔は例えば<1cm)、それによって熱交換パケットが、薄板金ストリップと形材が交互に隣接配置されることで実現される。このパケットは次いで、はんだ付け炉内で完全にはんだ付けされる。
【0010】
狭い間隔とチャネルの小直径とによって、極めて高いフィン効率と極めて小さい充填容量(内部チャネル側)を有する熱交換器が実現する。この技術の別の利点は材料の接触(腐食)が避けられ軽量であり(銅ではないため)、高い圧力安定性(約100バール)を有し、コンパクトな構成形式(熱交換器の典型的な奥行き、例えば20mm)を有する点である。
ミニチャネル式熱交換器は、1990年代に可動の用途での使用が確立した。そのための理想的な必要条件は、軽量で、ブロックの奥行きが小さく、寸法が制限されていることである。自動車のラジエータや自動車の空調システムの凝縮器及び蒸発器は、今日では、ほとんどもっぱらミニチャネル式熱交換器で実現されている。
【0011】
定置の分野では、一方でより大型の熱交換器が通常要求され、他方では重量やコンパクトな設計は重視されず、むしろ理想的な価格/性能比が重視される。ミニチャネル式熱交換器はこれまで定置の用途には寸法が限られ過ぎていた。多くの小型モジュールが複雑な及び/又は高価な形式で互いに結合されねばならなかった。加えてアルミニウムの使用は、押し出し形材の場合、比較的高価なので、コスト面の利点は材料使用の観点からは事実上期待できない。
自動車分野では生産個数が多量なためミニチャネル式熱交換器の製造工程が標準化され改良された結果、この技術は今日では成熟したと見ることができる。はんだ付け炉の寸法もこの間に大型化されたので、熱交換器も約1×2mの寸法で作ることができる。接続システムにまつわる当初の難点は除かれた。その後、入口タンクや出口タンクをはんだ付けする複数の方法の特許が取得されている。
しかし、この技術は、とりわけ、アルミニウムに比較して銅の価格が著しく上昇した結果、定置用途にとっても極めて魅力的となっている。
【0012】
熱交換の場合、事実上一つの周囲媒体のみ、例えば空気のみが熱交換器に利用可能な単純なシステムに加えて、いわゆるハイブリッド・クーラー又はハイブリッド・ドライクーラー、例えば国際特許出願第90/15299号公開公報(WO90/15299)または欧州特許第428647号公報(EP 428647B1)に開示されたクーラーが公知である。該クーラーでは、主冷却回路のガス状又は液状の被冷却媒体がフィン式熱交換器内を貫流し、放熱すべき熱は、冷却フィンを介して一部は顕熱として、一部は潜熱として空気流内へ放熱される。空気流は、好ましくは可変速度の1個以上のファンにより熱交換器を通って搬送される。潜熱の放熱は、液状媒体、好ましくは水により行われるが、水が好適なのは、その固有値、例えば熱伝導率、硬度、カーボネート含有量のためであり、水は、その都度、しずく形成液状フィルムとして空気側の熱伝達面に付着する。過剰の水分は熱交換器部材の直下の捕集ボウル内へ滴下する。スプレー式熱交換器概念も周知であり、その場合、水はフィン式熱交換器に吹付けられ、完全蒸発し、その過程で蒸発エネルギーがエネルギー利用最適化のための湿潤化の場合同様、伝熱改善に利用される。この場合、過剰水なしでも作業可能だが、付着物の形成の阻止を必要とし、そのために例えばVE水(VE water)が使用される。
【0013】
特殊な場合には、水に加えて他の冷却流体、例えば油も考えられることは言うまでもない。
熱交換器のフィンの湿潤化又はスプレー処理の作業形式では、結果として、従来の方法、例えば開放冷却タワーの場合よりかなりのエネルギー及び水の節約となる。しかし、電解質と結合して腐食が生じてはならないフィンと関連して湿潤化又はスプレー処理の熱交換器では材料選択が制限される点は、不都合である。
ハイブリッド熱交換器では、したがって水による直接の湿潤化又はスプレー処理により管を有するフィン式熱交換器の熱伝達がかなり改善されると理解される。その場合、特に必要なことは、フィン・パケット内の空気速度を調整してフィン表面から水が持って行かれないようにすることである。この措置はファンの速度調整又は他の適当な手段によって達成するのが好ましい。
【0014】
その場合、吹き付け水又は湿潤化水が溶存イオンと共に電解質として作用する点が欠点であり、それによって、熱交換器に通常使用される材料対である銅製管とアルミニウム製フィンとに様々な腐食の問題が生じる。
その場合、熱交換器の適当な表面保護手段としていわゆる電気泳動浸漬コーティング(cataphoretic dig coating)を使用することが知られている。更に、銅製の管と銅製のフィン、アルミニウム製の管とアルミニウム製のフィン、ステンレス鋼製の管とステンレス鋼製のフィン等の材料対が接触腐食の問題を解決するために使用される。また、熱交換器を完全に亜鉛コーティングすることも知られている。その場合、循環水又はスプレー水の質に対して、pH値、水の硬度、塩素含有量、伝導率等の点で高い要求が課せられる。これは、一方では蒸発によるフィン上の凝縮物の付着を防止し、他方では付着物と一緒になって腐食を生じさせ得る化学反応物質含有量が過大に生じることがないようにするためである。
【0015】
例えば自動車工学や家庭用の技術分野の小型熱交換器の場合に知られているより高い伝熱能力を得るために、これまで大型熱交換システムの場合には既述のハイブリッド技術を利用する試みがなされてきた。
より高い伝熱能力を得る別の可能性は、基本的に、複数の個別熱交換構成部品の相互結合によって、例えばAl−MCHXモジュールの結合によって、より高い熱交換能力を得ようと試みるものである。
しかし、従来の公知熱交換システムのすべてに伴う1つの問題は、従来の熱交換システムでは伝熱能力の点で要求に全く適応できないか、又は適応するのは極めて困難であるということ、つまり、最終的に大きな労力とかなりの出費なしには適応できないということである。このことは、従来システムの伝熱能力の増大、低減のいずれの点でも該当する。
【0016】
これらの周知の難点の理由は様々である。
公知熱交換システムは通例密閉型ユニットであり、その伝熱能力は一定の狭い範囲でしか調整できない。例えば冷媒の貫流量は熱交換器によって調整されるか、又は冷媒、例えば冷却空気の量はファンの吸い込み能力によって変化するからである。また冷却空気量を低減することは可能だが、その場合には、例えば熱交換器に調節可能な空気遮断フラップを備えることで、熱交換器に供給される冷却空気の貫流量を調節できるようにする。
しかしながら、熱交換システムの性能は、これらの公知の措置では、熱交換率がゼロと最大値の間で変動するに過ぎない。それでは、システムに条件づけられた最大値を超えて伝熱能力を高めることはできない。
【0017】
また、従来の熱交換システムの伝熱能力を望むだけ小さくするか、又はゼロまで低減することは通例不可能であり、つまり特に経済的及び/又は技術的理由から不可能か、もしくは意味がない。言い換えると、公知熱交換システムは、常に、特定の最大伝熱能力で稼働せねばならず、そのために、しばしば稼働が不必要に非効率的となり、しかも、それを避けられない。
したがって、例えば、所属の冷蔵設備の寸法が著しく低減されたために、従来式の熱交換システムの伝熱能力を効果的に低減しようと思えば、これまでは、現行の熱交換システムを相応に低い伝熱能力の別のシステムに取り替える以外に道はなかった。
【0018】
逆に、例えば所属の冷蔵設備を著しく大型にせねばならないために現行の熱交換システムの伝熱能力を著しく高めようと思えば、それまでの熱交換システムをより高い伝熱能力を有するシステムと取り換える以外の経済的選択肢は、通例実際には残されていないことが多い。従来式のシステムの伝熱能力は、したがって、特に経済的観点からは簡単には効果的に高められない。純構成上の観点からは、例えば所与の伝熱能力を有する公知熱交換システムに追加熱交換器を付加することは簡単にはできない。追加熱交換器を現行の建築物構造に付加したり現行の冷却回路に接続することは、純幾何形状上の観点から簡単には可能でない。
そのような拡張は、純幾何形状上の観点から困難を伴うが、原理的には実現可能な場合でも技術的に極めて複雑及び/又は高価であるため変更に値しないことが多い。
【0019】
現行システムの伝熱能力を高める一つの可能性は、もちろん一般には第2の付加的システムを備えることである。しかし、実際には新たな問題も生じて、そのような解決策が許されない場合が多い。
つまり、付加的熱交換システムを問題なしに現行の制御・調整エレクトロニクスに組み込むことはできない。第1に、対応制御システムは、技術的に簡単には別の熱交換システムを制御するようには設計されていないので、付加的な制御エレクトロニクスを組み込まねばならない。しかし、双方の熱交換システムが、例えば、同時に同一の拡張冷蔵設備の冷却用に作業せねばならない場合、2つの独立した制御システムを相互に整合させることは少なくとも極めて難しい。多くの場合、とりわけ供給される冷却能力の頻繁な及び/又は大幅な変動が要求される場合には、制御システムの信頼のおける相互整合は不可能である。
【0020】
しかし、多くの場合、例えば、付加的熱伝達システムの設置は、スペース上の理由だけで不可能である。
これは、例えば、付加的制御エレクトロニクス及び/又は、所要冷却器や別の自体公知の構成部品を有する付加的冷却回路を設置することは、所与のスペース関係で現場では不可能なためである。しかし、例えばフィン式熱交換器形式及び/又はマイクロチャネル式熱交換器形式での熱交換器を含む公知の嵩高な熱交換モジュールを追加設置することも、スペース上の理由だけで不可能か、又は技術上、経済上の観点からは単純に手がかかり過ぎることが多い。
このことは、熱交換モジュールを付加することによる現行熱交換システムの拡張が、純幾何形状面の理由から十分にコンパクトには行われ得ないために、結局、拡張熱交換システムでは所要出力密度(power density)が達せられないことを意味する。
【0021】
更に、公知熱交換システムの不十分な出力密度の問題は、多くの分野で一般に未解決の問題である。特に、多量の熱を出来るだけ短時間に極めて小スペース内で伝達せねばならない場合、例えば、極めて高性能なデータ処理システムかその他の当業者には自体公知のシステム等の大型電子システムの場合には、公知熱交換システムの出力密度は、しばしば不十分である。その場合、唯一の解決策は、多くの場合、熱交換器を有する複数熱交換モジュールを十分に離れた場所に、つまり、あまりコンパクトではない熱交換モジュール用の十分なスペースがある場所に設置することだが、周知の技術上、経済上の欠点を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の目的は、改良型の熱交換システム、それも、先行技術の周知の問題が克服され、かつ特に、コンパクトな構成ゆえに、一方では、高い冷却性能が最小スペースで達せられ、つまり、熱伝達の点で、より高い出力密度が得られる熱交換システムを得ることである。他方、熱交換システムは同時にその伝熱能力を、極めて融通性のある、技術的に簡単かつ経済的に効率的な仕方で容易に変更できるようにするのがよい。つまり、極めて広い限界内で伝熱能力の増大と低減の双方が可能となるようにすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的を達成する本発明の主旨は独立請求項1により特徴づけられている。
従属請求項は、本発明の特に好ましい実施例に係わるものである。
本発明は、したがって、熱交換器を有する少なくとも1つの第1熱交換モジュールを含む熱交換モジュールを備えたモジュール式熱交換システムに係わるものである。この場合、熱交換モジュールの外側の境界は流入面と流出面とによって形成され、これによって、搬送流体と作動時に熱交換器を貫流する熱媒体との間の熱交換時、搬送流体は流入面を介して熱交換モジュールに供給され、熱交換器と流れ接触(flow contact)し、熱交換モジュールから流出面を経て再び排出される。本発明によれば、第1熱交換モジュールの第1境界面は、第1熱交換モジュールの第2境界面に対し事前設定可能な傾角で傾斜している。
【0024】
本発明にとって重要な点は、本発明によるモジュール式熱交換システムでは、第1熱交換モジュールの第1境界面は、第1熱交換モジュールの第2境界面に対し事前設定可能な傾角で傾斜している点である。
傾角は特に好ましくは90°以外の角度だが、傾角を適切に選択することで、本発明により得られるモジュール式構成の熱交換システムは、実施形式に応じて1つか2つか3つの立体寸法で事実上周期的(periodically)又は非周期的(non−periodically)に、好ましくは等しい熱交換モジュールを併設することで拡張できるが、また1つ以上の熱交換モジュールを現行システムから簡単に除去することで縮小することもできる。
その場合、傾角の適切な選択、又は相互傾斜面の具体的選択により、1つ又は2つ又は3つの立体寸法で周期的拡張(periodic expansion)が可能かどうかが明確に決定され、あるいはまた本発明によるモジュール式熱交換システムを構成するために組み合わせ可能な熱交換モジュールの最大数が決定される。
【0025】
例えば、傾角60°の三角柱の外形が熱交換モジュールの構成形状に選択された場合、この種の熱交換モジュールが最大6個組み合わされて、極めてコンパクトな六角形構成の熱交換システムを形成でき、このシステムは、熱伝達の点で極めて高い出力密度を有している。
熱交換能力を、6個の熱交換モジュールで構成された六角形熱交換システムに対する新たな要求により低減したい場合には、要求された数の熱交換モジュールを六角形熱交換システムから簡単に除去することができる。
したがって、別の場合、例えば、熱交換モジュールが傾角45°の平行六面体形式で構成されている場合には、各2個のそのような熱交換モジュールを特にコンパクトに、例えば傾斜面を介して集成でき、また必要とあれば、任意に別のモジュールを付加して拡張できる。
このように、伝熱能力及び/又は熱伝達の出力密度は、本発明のモジュール式熱交換システムでは、好ましくは等しい熱交換モジュールの規則的な反復により、又は等しい熱交換モジュールの除去により、簡単にかつ効率的に適応させることができる。
【0026】
したがって、特に好ましい実施例では、第1熱交換モジュールの第1境界面が第1熱交換モジュールの第2境界面に対して事前設定可能な傾角で傾斜している結果、モジュール式熱交換システムは第2熱交換モジュールによって特にコンパクトな構成形状で拡張できる。該第2熱交換モジュールは第1熱交換モジュールと等しいのが好ましい。この場合、コンパクトな構成形状とは、2つの熱交換モジュールが、双方の間に出来るだけ空きスペースが小さくなるように、好ましくは空きスペースが全く残らないように、互いに出来るだけスペースを節約する形式で結合できることを意味している。
特に簡単で、特にコンパクトな費用対効果のよい構成形状の場合、熱交換器自体が熱交換モジュールの構成内で支持機能を有している。この状態は、例えば、熱交換器自体が熱交換モジュールのハウジング壁を形成するか、又は熱交換モジュールのハウジングがハウジングの全境界面のところに境界壁を有さないようにし、その結果、熱交換器自体がハウジング構成部材として統合的な結合及び安定化の静的機能を果たすようにすることで実現できる。
【0027】
既述のように、熱交換システムが複数の熱交換モジュールで構成されている本発明の実施例には特に重要な意義が与えられる。なぜなら、伝熱能力は例えば熱交換モジュールの除去によって特に簡単に低減できるからである。
熱交換モジュールの第1境界面と第2境界面との間の傾角は、0°〜180°が好都合であり、特に20°〜70°、好ましくは40°〜50°だが、特に好ましい傾角は45°及び/又は90°〜180度、特に120°である。
本発明の一特定実施例では、熱交換モジュールの第1境界面と第2境界面との間の傾角は、熱交換クラスタ形式での熱交換システムの構成の場合、360°/nの値を有し、この場合、nは整数であり、熱交換クラスタは好ましくは複数の等しい熱交換モジュールで構成され、熱交換モジュールの第1境界面と第2境界面との傾角は、例えば6角形の熱交換クラスタ編成の場合には60°であり、該6角形熱交換クラスタは、最大熱交換能力及び/又は熱交換の最大出力密度を達成するために、6個の等しい熱交換モジュールで構成される。
【0028】
別の簡単な実施例の場合、熱交換システムの境界面はそのハウジングに設けられておらず、この欠けたハウジング境界面が、熱交換システムを設置した状態では、設置対象の壁部、特に建築物の壁部によって補完される。
伝熱媒体/搬送流体間の熱伝達の出力密度の更なる増大及び/又は伝熱媒体と搬送流体間の伝熱率の増大をはかるには、熱交換器の冷却用に冷却器、特にガス流発生用ファンを備え、かつ/又は熱交換システムを、自体公知のようにかつ又冒頭に詳細に説明したように、ハイブリッド・システムとして製作できる。熱交換器に冷却流体、特に冷却水を散布するためには、散布装置を設けることができる。その場合、冷却流体を分離するために、しずく分離器(drop separator)を備えるのが好ましい。
その場合、熱交換器自体は、先行技術により自体公知のように、複数のマイクロチャネルによりマイクロチャネル式熱交換器として製作可能、及び/又は冷却フィンを備えたフィン式熱交換器として製作可能である。特に、熱交換システムは、フィン式熱交換器とマイクロチャネル式熱交換器との組み合わせ形式が、具体的に要求される場合には、そのような構成形状に製作できる。
【0029】
本発明による熱交換システムの伝熱能力を調整する可能性を改善するために、搬送流体の流量(flow rate)の調整のために密閉部材(sealing)、特に空気密閉部材(air sealing)を備えることができ、その場合、該密閉部材は、手動式に又は制御ユニットを介して、事前設定可能な操作パラメータに応じて制御及び/又は調整することができる。
熱・機械応力の補償には自体公知の補償手段を備えると有利である。
本発明のモジュール式熱交換システムの構成部品、つまり、例えば熱交換器、及び/又は伝熱媒体の供給管路及び/又は排出管路、及び/又はその他の本発明による熱交換システムの全構成部品は、汎用結合部材(universal connection element)により熱交換システムの他の全構成部品と結合でき、それによって、例えば熱交換モジュールの付加や除去が特に簡単に可能となる。特に、伝熱媒体用の入口タンク及び出口タンク、又は熱交換システムの薄板金部品やその他のモジュール及び構成部品は、特に汎用結合部材で結合するのが好ましい。その場合、これらの汎用結合部材は、熱交換システム又は熱交換モジュールの垂直取り付け及び水平取り付けの両方に特に好適である。
【0030】
加えて、熱交換システムには、更にクリーニング・システムを備えることができ、該クリーニング・システムには、特に、塵埃捕集グリッド及び/又は掻き取り装置及び/又は洗浄装置、特にクリーニング開口及び/又はクリーニング・フラップが含まれることで、熱交換システム又はその構成部品、例えば熱交換モジュールその他の構成部品は、簡単かつ効果的に清浄化できる。他の可能な実施例に加えて、この場合、熱交換器は、例えばクリーニング・フラップのところに備えることができ、かつ/又は熱交換器自体をクリーニング・フラップとして作製することができる。
しかし、作動時の熱交換システムの制御及び/又は調整用に、必ずではないが、通例は、制御ユニットが備えられ、特に、冷却器及び/又はクリーニング・システム及び/又は空気密閉部材、及び/又は熱交換媒体の操作・状態パラメータ、及び/又は熱交換システムのその他の操作パラメータを制御するためのデータ処理システムを有する制御ユニットが備えられる。これは、現行熱交換システムについての従来技術により当業者には自体公知のことである。
【0031】
熱交換システム又は熱交換モジュール、及び/又は熱交換モジュールの熱交換器及び/又は境界面、特に熱交換システム全体は、特に好ましくは金属製及び/又は合金製、特に単一合金製であり、とりわけステンレス鋼製、特にアルミニウム製又はアルミニウム合金製とすることができ、好ましくは犠牲金属を防食手段として用い、かつ/又は熱交換システムに部分的に保護層、特に防食層を備えるのが好ましい。特に入口タンク及び出口タンクは、たとえばCOで作業する場合、高圧用に、ステンレス鋼等の極めて強力な材料で作るのが好ましい。
本発明による熱交換システムは、具体的にはラジエータ、特に乗物用、具体的には陸上の乗物用又は航空機用または水の乗物用のラジエータ、もしくは可動もしくは定置の暖房設備用又は冷凍・冷蔵設備用又は空調設備用の冷却器又は凝縮器又は蒸発器、特に、機械用、データ処理システム用、建築物用、その他の熱交換システムを用いて作業する装置用の冷却装置である。
以下で、図面を参照して本発明を更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による熱交換システムの第1実施例の図。
【図2】マイクロチャネルを有する図1の熱交換器。
【図3】フィン式熱交換器の一部材。
【図4】空気密閉部材を備えた図1の実施例。
【図5a】クリーニング・フラップを備えた第3実施例。
【図5b】クリーニング処理中の図5aの実施例。
【図6a】汎用結合部材を有する本発明による熱交換システムの別の実施例。
【図6b】図6aの汎用結合部材の詳細図。
【図7】2個の熱交換モジュールを有する熱交換システム。
【図8a】縦置き使用時の第1公知熱交換システム。
【図8b】横置き使用時の第2公知熱交換システム。
【図9】縦置き使用時の本発明による熱交換システム。
【図10】横置き使用時の本発明による熱交換システム。
【図11】4個の熱交換モジュールで構成した別の熱交換システム。
【図12】6角形の熱交換クラスタの第1実施例。
【図13】図12のクラスタの第2実施例。
【図14】熱交換クラスタの別の実施例。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0033】
図1には、本発明による熱交換システムの単純な第1実施例が略示されており、以下では、その全体を符号1で示すことにする。
図1の本発明による熱交換システム1は、伝熱媒体7、例えば冷却液7又は蒸発媒体7と、搬送流体6、例えば空気6との間での熱交換用の熱交換器2を有する熱交換モジュール2,21を、主要な部品として含んでいる。この場合の熱交換器3は、複数のマイクロチャネル10を備えた自体公知のマイクロチャネル式熱交換器3である。熱交換器3の複数マイクロチャネル10は、図1に示されていないが当業者には概して周知である結合システムを介して、同様に図示されていない冷凍機に接続され、伝熱媒体7の熱交換が行われる。
冷凍機は、熱交換器3の入口セグメントを備えた入口チャネルと熱交換器3の出口セグメントを備えた出口チャネルとを含む接続システムに、自体公知の形式で流れ接続されており、それにより、空気6との熱交換のための伝熱媒体7が、入口チャネルから入口セグメントを経て熱交換器3の複数のマイクロチャネル10を通過して、最終的には出口セグメントを介して出口チャネルへ送られる。
【0034】
熱交換モジュール2の外側境界は、この場合、流入面4と流出面5とによって形成され、それにより、作動状態では、矢印6で示す方向に流れる搬送流体6と、熱交換器3を貫流する伝熱媒体7との間の熱交換のために、搬送流体6は、流入面4を経て熱交換モジュール2へ供給され、熱交換器3と流れ接触し、流出面5を経て再び熱交換モジュールから流出されうる。
空気6と伝熱媒体7との間でより効果的に熱交換ができるように、付加的に冷却器9が、この場合はファン9が配置され、このファンにより、熱交換モジュール2,21を貫流する時間単位当たりの空気6の量が制御できる。
【0035】
この場合、熱交換器3自体により形成される熱交換モジュール2,21の第1境界面81は、第1熱交換モジュール2,21の第2境界面82,83に対し、事前設定可能な傾角αで傾斜している。この特定例では、該傾角は約35°である。別の実施例では、傾角αは、また別の値、例えば35°を超えるか又は35°未満の値も可能であり、例えば25°又は45°の値も可能である。図1の単純な実施例の場合、第2境界面82,83は、設置対象の壁部800で形成されている。該設置対象は、この場合、冷蔵所だが、これ以上詳しくは図示しない。
【0036】
マイクロチャネル10を有する図1の熱交換器3は、図2に略示断面図で示されている。図3の古典的なフィン式熱交換器3に使用されているような小管の代わりに、既述のように、例えば約1mm直径の極めて多数の小チャネル10を有するミニチャネル式熱交換器3の場合、アルミニウムの押し出し形材が使用される。図2の熱交換器6は、例えば適当な押し出し加工により複数材料から簡単に種々の形状に製作できる。その場合、図2の熱交換器3は、また、例えば、適当に付形した薄板金形材の組み立て体により、又は他の適当な方法により、図2には明示されていない変化形として製作できる。
【0037】
図2の場合と異なり、図3には、自体公知の冷却フィン300付きのフィン式熱交換器3の一部材が示されており、該熱交換器は、本発明の実施例のマイクロチャネル式熱交換器3の代わりに、同じように使用できよう。伝熱媒体7は、フィン式熱交換器3の管部材を貫流し、作動時には、流過する空気6との熱交換が主として冷却フィン300を介して行われる。言うまでもなく、実際には、熱交換器3は、通例、図3に示す複数の部材で製作される。本発明の極めて特殊な実施例では、スペース上の理由から明示できないが、熱交換器3として、組み合わせ熱交換器3が使用される。このことは、本発明の熱交換システム1が、複数のマイクロチャネル10を有する熱交換器3に加えて、同時に、極めて特殊な使用目的用の冷却フィン300付きのフィン式熱交換器3を含むことを意味する。
【0038】
どのようなより大きい伝熱能力にさえ対処できるように、熱交換システム1は、また、いわゆるハイブリッド・システム1として製作することもできる。該システムの機能原理は、当業者には自体公知であるから別個の図面で明示する必要はなかろう。その場合、外部冷却流体、特に冷却水又は冷却オイルを熱交換器3に散布するために、散布器を備えるのが好ましい。特に、作動時に外部流体を分離かつ捕集するための、例えばパン(pan)形式のしずく分離器を付加的に備えることができ、それによって、外部冷却流体を外部冷却システムに再循環させることができる。外部冷却システムは、外部冷却流体を冷却するのに役立ち、かつ熱交換器を反復冷却するために散布システムを介して再び熱交換器3に冷却流体を供給できる。
【実施例2】
【0039】
図4には、図1に示した簡単な実施例の第2実施例が、空気密閉部材11を付加して略示されている。空気密閉部材11は、複数の個々の日光遮蔽部材111又はベネチアン・ブラインド部材111を含む日光遮蔽器又はベネチアン・ブラインドの形式で作製するのが好ましい。それにより、熱交換器3の遮蔽度を、好ましくは電子式の制御及び/又は調整により可変にすることができる。その場合、空気密閉部材の、例えば全部又は一部が、個々の日光遮蔽部材111又はベネチアン・ブラインド部材111を寄せ集めることで、公知形式で熱交換器3の表面から移動させられるか、又は個々のベネチアン・ブラインド部材111と熱交換器3の表面との角度を変更して、空気6の有効通過面積が変更される。熱交換器3の熱交換能力の調整が、これによって、簡単な形式で、冷却システムの流れ動態を変更することなく可能になる。
【実施例3】
【0040】
図5a及び図5bには、図1に示した実施例の、クリーニング・フラップ121を有する第3形式が示されている。図5aは、クリーニング処理の直前の熱交換システム1を示している。熱交換システムの作業時に不可避的に集積する塵埃から、クリーニング処理によって熱交換器3の内部、特に表面は解放されねばならない。図5bは、クリーニング処理中の熱交換システム1を示している。
クリーニング・フラップ121は、アクセス・フラップ121として構成され、回転軸(axis of rotation)122を中心として矢印P方向に旋回できるので、例えば汎用結合システム13として作られてもいる、回転軸122を中心としてクリーニング・フラップ121を旋回させることにより熱交換システム1内部へのアクセスが提供され、簡単に内部での作業、修理、クリーニングが、熱交換システム1を分解することなく可能になる。
【0041】
図5bは、熱交換器3がクリーニング液体123、例えば水123で洗浄されているところを示している。クリーニング・フラップ121が、図5aの位置から出発し、回転軸122を中心として旋回させられることで、図5bに示すように、クリーニング処理中に汚れたクリーニング液体123を確実に捕集する捕集パン121として役立ち、それにより汚れたクリーニング液体が、場合によっては自動式に排出され、安全に廃棄される結果、例えば環境汚染が防止される。
【実施例4】
【0042】
図6aには、本発明による熱交換システムの別の実施例が略示されている。この場合、クリーニング・フラップ121が、図6bによる汎用結合部材13に固定されている。汎用結合部材13は、とりわけ、図6a及び図6bには明示されていない自体公知の入口タンクと出口タンクとの簡単かつ確実な結合に適している。該タンクは、熱交換器3に対し伝熱媒体7を出入させるのに役立っている。
汎用結合部材13は、好ましくは、熱交換システム1の対応部品に、特に簡単に例えばねじ結合又ははんだ付けにより結合できるように設計されている。
【0043】
それは伝熱媒体7を案内する管路の接続に役立ち、あるいはまたそれ自体を伝熱媒体7の搬送用管路として適応させることもできる。更に、それは薄板金部材、例えばクリーニング・フラップ12その他の部材の結合にも適している。所与のモジュール式熱交換システム1の場合、汎用結合部材13は、一つの同一実施形式において、それが出来るだけ多くの異なる結合部に同時に使用できるように細部を構成されることで、細部のほか出来るだけ違いが少なく作られた汎用結合部材以外は同一モジュール式熱交換システム1に使用する必要がないようにするのが好ましい。
理想的な場合、汎用結合部材13は、モジュール式熱交換システムのあらゆる部材間のあらゆる結合機能を同時に引き受けるように構成され、その結果、同一モジュール式熱交換システム1には一種類のみの汎用結合部材を使用すればよいようにし、それにより構成は著しく簡単化され、本発明によるモジュール式熱交換システム1では、拡張又は縮小によって、システムの極めて高い融通性が保証される。
【0044】
図7には、等しい2個の熱交換モジュール2,21,22を有する、本発明によるモジュール式熱交換システム1が示されている。2個のモジュールは等しい構成を有し、傾角αの値は45°である。当業者には直ちに理解されようが、両方向矢印DPの両方向に、原則として、欲するだけ多くの等しい熱交換モジュール2,21,22を付加することができる。このことは、単一の種類の熱交換モジュール2,21,22のみを備えることによってモジュール式熱交換システム1の熱交換能力を変更し、システム1に事実上どのような事前設定可能な目標熱交換能力でも提供したりもしくは現行システムを拡張したり、あるいはまた熱交換モジュール2,21,22の数を削減することで現行システムの熱交換能力を低減できることを意味している。個々の熱交換モジュール2,21,22は、図6a及び図6bを参照して既に説明した汎用結合部材13を使用して熱交換システム1に統合するのが特に好ましい。
【0045】
本発明による熱交換システム1が、熱交換モジュール2,21,22の数や配置可能性の点で有している著しい融通性に加えて、本発明による熱交換システム1は、また、その構成または設置の方向に関しても、極めて融通性に富んでいる。
図8a及び図8bには、先行技術による2個の公知熱交換システム1´が略示されている。
本発明と先行技術とを更に明瞭に区別するために、先行技術による実施例に係わる符号にはダッシュを付し、本発明の符号にはダッシュを付さない。
図8a及び図8bに示す公知熱交換システム1´の主な欠点は、重力方向Sに対して、図8aに示すように縦置きのみか、図8bに示すように横置きのみのいずれかでしか使用できない点である。この場合、縦とは、熱交換システム1´からの空気6´の流出方向が重力方向Sに対して事実上直角であることを意味し、これに対し、横置きとは、熱交換システムから出る空気6´が重力方向と事実上平行又は逆並列(anti−parallel)であることを意味する。
【0046】
図8aの熱交換システム1´は、縦置き用に設計されており、したがって、横置き用にのみ設計された図8bの熱交換システムと取り替えることはできない。
本発明によるモジュール式熱交換システム1は、この場合も、図9及び図10に印象的に示すように、より融通性がある。
図9には、縦置き形式で2個の熱交換モジュール2,21,22を含む熱交換システム1が示され、図10には、横置き形式で熱交換システム1が示されているが、いずれも重力方向Sに対する縦置き、横置きの形式である。この場合、図9及び図10の熱交換システムの個々の熱交換モジュール2,21,22は、完全に等しい。このことは、縦置き及び横置きの双方可能な熱交換システム1を製作するために、1種類だけの熱交換モジュール2,21,22を用意すればよいことを意味する。具体的には、同一熱交換システム1が、縦置き、横置きの熱交換モジュール2,21,22を同時に含むことさえ可能である。
【0047】
図11の例では、各々2個のファン9を有する4個の熱交換モジュール2,21,22から成る別の熱交換システム1が示してある。この場合、個々の熱交換モジュール2,21,22の熱交換能力は著しく増大する。当業者には問題なく理解されようが、図11の実施例は、縦置き、横置き双方の形式を使用できる点が好都合である。
【実施例5】
【0048】
図12には、六角形状の熱交換クラスタ1の第1実施例が示されている。図12の熱交換クラスタ1の形状のモジュール式熱交換システム1は、6個の等しい熱交換モジュール2,21,22を含み、該モジュールは、すべて60°の傾角を有している。この特定幾何形状を選択することで、6個の熱交換モジュール2,21,22を組み合わせて六角形のクラスタを形成できる。各熱交換モジュール2,21,22の外向きの端面は、熱交換器3として構成されるか、又は熱交換器3が外向きの端面に組み込まれている。作動時には、搬送流体6、つまり例えば空気6が、熱交換器3を含む外向き端面を経てファン9によって吸い込まれる。このファン6は、外向き端面に対し直角方向の熱交換モジュール2,21,22の境界面内に配置されている。
熱交換クラスタ1としてのこの特定構成形式は、極めて狭いスペースで高い伝熱能力が要求される場合に、常に、特に効果的に使用できる。
【実施例6】
【0049】
図13には、図12の熱交換クラスタの第2実施例が示されている。図13の実施例は、図12の形式とは、ファン9の配置と熱交換器3の配置とが交換されている点で著しく異なっている。このことは、図13の実施例でのファン9が外向き面に配置され、熱交換器3は、外向き面と直角の面内に配置され、これら直角の面内に傾角αが位置するか、これらの面を熱交換器3が形成する。
【実施例7】
【0050】
最後に、図14には図12の熱交換クラスタ1の別の実施例が、図12の方向Rから見た図で示されている。図14の実施例は、各々傾角αが60°の6個の等しい熱交換モジュール2,21,22が使用されず、各々傾角αが72°の、等しい熱交換モジュール2,21,22が5個だけ使用されている点で、図12の実施例とは異なっている。要求に応じて、複数nの等しい熱交換モジュール(a number of n identical heat exchangede modules)2,21,22を有する概してどのような所望の熱交換クラスタ1でも構成でき、その場合には、各熱交換モジュール2,21,22は、傾角αが360°/nである。
本出願の枠内で説明した複数実施例は、単なる例と理解されたい。このことは、本発明が、特許請求の範囲によってのみ制限されることを意味する。提示した実施例の適宜な組み合わせも、すべて同じように本発明に属するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール式熱交換システムであって、熱交換器(3)を有する少なくとも1個の第1熱交換モジュール(21)を含む熱交換モジュール(2,21,22)を含み、しかも、該熱交換モジュール(2)の外側境界面が流入面(4)と流出面(5)とによって形成され、このため、搬送流体(6)と作動時に前記熱交換器(3)を貫流する伝熱媒体(7)との間の熱交換時に、前記搬送流体(6)が前記流入面(4)を経て前記熱交換モジュール(2)に供給され前記熱交換器(3)と流れ接触して前記流出面(5)を経て再び前記熱交換モジュール(2)から流出できる形式のものにおいて、
前記第1熱交換モジュール(2,21)の第1境界面(81)が、該第1熱交換モジュール(2,21)の第2境界面(82)に対して事前設定可能な傾角(α)で傾斜していることを特徴とする、モジュール式熱交換システム。
【請求項2】
前記第1熱交換モジュール(2,21)の前記第1境界面(81)が、前記第1熱交換モジュール(2,21)の第2境界面(82)に対し事前設定可能な傾角(α)で傾斜しており、これにより、前記モジュール式熱交換システムが、第2熱交換モジュール(22)によって特にコンパクトな構成形式で拡張でき、該第2熱交換モジュール(22)は、好ましくは前記第1熱交換モジュール(21)と等しい、請求項1記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記熱交換器(3)が、前記熱交換モジュール(2,21,22)の形成時、支持機能を果たす、請求項1または2のいずれかに記載の熱交換システム。
【請求項4】
前記熱交換システムが複数の熱交換モジュール(2,21,22)によって形成される、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項5】
前記熱交換モジュール(2,21,22)の前記第1境界面(81)と前記第2境界面(82)との間の傾角(α)が、0°から180°、特に20°から70°、好ましくは40°から50°のそれぞれ端を含む間にあり、特に好ましくは45°であり、かつ/又は前記傾角(α)が90°から180°のそれぞれ端を含む間にあり、特に120度である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項6】
熱交換クラスタ(1)を構成する場合、前記熱交換モジュール(2,21,22)の前記第1境界面(81)と前記第2境界面との間の前記傾角(α)が360°/nの値を有し、該熱交換クラスタ(1)が、好ましくは複数nの等しい熱交換モジュール(2,21,22)によって構成されており、六角形熱交換クラスタ(1)を形成する場合には、前記熱交換モジュール(2,21,22)の前記第1境界面(81)と前記第2境界面(82)間の前記傾角(α)が好ましくは60°であり、該六角形熱交換クラスタ(1)が、好ましくは6個の等しい熱交換モジュール(2,21,22)によって形成される、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項7】
前記熱交換システムの境界面(83)が、設置対象の壁部(800)、特に建築物の壁部(800)によって形成される、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項8】
前記熱交換器(3)の冷却用に、冷却器(9)、特にガス流(61)発生用のファン(9)が備えられ、前記伝熱媒体(7)と前記搬送流体(6)間の伝熱率が高められ、かつ/又は前記熱交換システムがハイブリッド・システム(1)として構成されており、また冷却流体、特に冷却水を前記熱交換器(3)に散布するために散布装置が備えられ、かつ/又は前記冷却流体を分離するためにしずく分離器が備えられている請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項9】
前記熱交換器(3)が複数のマイクロチャネル(10)によってマイクロチャネル式熱交換器(3)として構成され、かつ/又は前記熱交換器(3)が冷却フィンを有するフィン式熱交換器(3)として構成され、かつ/又は前記熱交換システムが、前記フィン式熱交換器(3)と前記マイクロチャネル式熱交換器(3)との組み合わせ熱交換システム(1)として構成されている、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項10】
前記搬送流体(6)の通過率を調製するための密閉部材、特に空気密閉部材(11)が備えられている、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項11】
熱・機械応力の補償用に補償手段が備えられ、かつ/又は前記熱交換システムの構成部材の結合用に汎用結合部材(13)が備えられている、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項12】
クリーニング・システム(12,121,122)が備えられ、該クリーニング・システムが、特に塵埃捕集グリッド(121)及び/又は掻き取り器(121)及び/又は洗浄器(121)、特にクリーニング開口(121)及び/又はクリーニング・フラップ(121)を含み、かつ/又は前記熱交換器(3)が前記クリーニング・フラップ(121)のところに備えられ、かつ/又は該熱交換器(3)がクリーニング・フラップ(121)として構成されている、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項13】
作動時の前記熱交換システムの制御及び/又は調整用に、前記冷却器(9)及び/又は前記クリーニング・システム及び/又は前記空気密閉部材(11)及び/又は前記伝熱媒体(6)の作業もしくは状態パラメータ及び/又はその他の熱交換システム作業パラメータを制御するための制御ユニット、特にデータ処理システムを有する制御ユニットが備えられている、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項14】
前記熱交換モジュール(2,21,22)及び/又は前記熱交換器(3)及び/又は前記熱交換モジュール(2,21,22)の前記境界面(2,21,22)が、つまりは全熱交換システム(2,21,22)が、金属製又は合金製、特に単一金属製又は単一合金製、特にステンレス鋼製、とりわけアルミニウム製又はアルミニウム合金製であり、しかも、好ましくは犠牲金属が防食手段として用いられ、かつ/又は前記熱交換システム(2,21,22)が、少なくとも部分的に保護層、特に防食層を備えている、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項15】
前記熱交換システムが、ラジエータ、特に乗り物用、とりわけ陸上乗物用又は航空機用又は水上・水中乗物用のラジエータであり、あるいはまた可動もしくは定置の暖房システム用又は冷却システム用又は空気調和システム用の冷却器又は凝縮器又は蒸発器であり、特に、機械用又はデータ処理システム用又は建築物用の冷却装置である、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の熱交換システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−506902(P2011−506902A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538508(P2010−538508)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063991
【国際公開番号】WO2009/077225
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(510008732)アー − ヒート アライド ヒート イクスチェンジ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト (5)
【Fターム(参考)】