説明

モニタ輝度制御システム及び該システムを用いた医用診断システム

【課題】モニタが設置される場所の明るさに適切に対応してモニタの表示輝度を制御するモニタ輝度制御システム及び該システムを用いた医用診断システムを提供する。
【解決手段】モニタ1の周囲の明るさを検出する検出手段2と、検出手段2が明るさの変化を検出したときに所定時間の計測を開始するタイマ4と、所定時間が経過したときに、検出手段2によって検出された明るさの変化に合わせてモニタ1の輝度を調節する制御手段3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタの輝度を部屋の明るさに合わせて制御するシステム及び該システムを用いた医用診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の厚さにかかわらず所定の明るさの被検体のX線透視像を得るX線診断装置が提案されている(特許文献1参照)。従来、被検体が非常に厚い場合に、ビデオ信号が所定のレベルに達する前にX線発生器の出力が最大となってしまうことがあり、この場合、得られるX線透視像が通常よりも暗くなることから診断に支障が生じることがあった。そのためこの提案におけるX線診断装置では、X線発生器の最大出力下でX線透視を行いビデオ信号が基準としている信号レベル(基準ビデオ信号)より小さい時に、TVカメラのゲインを上げる等の措置を講じ、基準信号レベルまでビデオ信号を増幅するようにした。このようにすることで、モニタ像が暗くて診断できなかったような厚い被検体の場合であっても、通常の厚さの被検体の場合と同じ輝度のモニタ像が得られ、診断効果を上げることができる。
【特許文献1】特開平7−79384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、上記特許文献1では、モニタの輝度を被検体の厚さに拘わらず略一定に保つ技術が開示されているが、モニタに自動輝度制御機能(オートブライトネスコントロール)が備えられている場合の輝度の自動調節については特許文献1内には明らかにされていない。この自動輝度制御機能は、モニタに光センサ等の検出器が備えられており、周囲の明るさに応じて、例えば、周囲が明るい場合にはモニタの表示輝度を上げ、反対に暗い場合には表示輝度を下げてモニタの画面を見やすくするためにモニタの表示輝度を自動的に変える機能である。
【0004】
しかしながら、この自動輝度制御機能はモニタの使用者が画面を見る際の負担を軽減するための機能であることから、一般的に周囲の明るさの変化に敏感に反応するように制御するようにされていることが多い。従って、モニタが設置されている部屋が明るくなったり暗くなったりする場合の他、例えば、周囲の明るさを検出するセンサの前を人が横切ったり、手をかざす等、一時的にセンサ部分が影になるような場合にも表示輝度が変化する場合がある。このように検出器が敏感に反応し、表示輝度が頻繁に変化すると却って使用者の使い勝手を悪くすることになる。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、モニタが設置される場所の明るさに適切に対応してモニタの表示輝度を制御するモニタ輝度制御システム及び該システムを用いた医用診断システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る特徴は、モニタ輝度制御システムは、モニタの周囲の明るさを検出する検出手段と、検出手段が明るさの変化を検出したときに所定時間の計測を開始するタイマと、所定時間が経過したときに、検出手段によって検出された明るさの変化に合わせて前記モニタの輝度を調節する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モニタが設置される場所の明るさに適切に対応してモニタの表示輝度を制御するモニタ輝度制御システム及び該システムを用いた医用診断システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るモニタ1内には、モニタ1が設置されている場所の周囲の明るさを検出する検出手段2と、検出手段2から入力された明るさの情報に基づいて輝度の変更を制御する制御手段3と、時間の測定を行うタイマ4と、制御手段3からの制御信号により輝度を調節する輝度調節手段5と、情報をモニタ1の画面に表示するとともに、輝度が調節される表示手段6が備えられている。
【0010】
検出手段2は、例えば光センサであり、モニタ1付近の明るさ(照度)を検出する。検出された明るさは、電気信号等に変換されて制御手段3に入力される。
【0011】
制御手段3内には、図示しない比較手段3aと判断手段3bとが設けられている。比較手段3aでは、検出手段2によって検出された明るさが変化したか否かを比較する。そしてこの比較結果に基づいて判断手段3bでは、モニタ1周辺が明るくなったのか、或いは暗くなったのかを判断する。
【0012】
タイマ4は、モニタ1周辺の明るさが変化したことをトリガーとして時間の測定を開始する。これは、モニタ1が設置されている場所が一定の時間同じ明るさ(暗さ)であることを確認してモニタ1の輝度を変更するためである。従って、制御手段3は、検出手段2からの明るさについての情報と、タイマ4からの測定時間の情報とを用いて、表示手段6を適切な輝度をもって表示させるための情報を輝度調節手段5に送ることができる。
【0013】
より詳しくモニタ1における輝度の調節について説明すると、図2のフローチャートに示すように、まず、検出手段2がモニタ1の周囲の明るさを検出する(ST1)。検出された明るさは上述のように、例えば電気信号に変換されて制御手段3に入力される。入力された電気信号は、比較手段3a、判断手段3bによって明るさに変化があったか否かが判断される(ST2)。明るさに変化がない場合には(ST2のN)再度明るさを検出するステップ1の状態まで戻る。
【0014】
明るさに変化があった場合には(ST2のY)、タイマ4により時間の測定が開始される(ST3)。これは、明るさに変化があった場合にすぐにモニタ1の輝度を変更するように制御すると、例えば、検出手段2の部分に少し影ができて一瞬暗くなったような場合にまで輝度が変更されることになり、頻繁な輝度の変更はモニタ1の使用者の使い勝手を却って悪くすることになるからである。そのため、タイマ4によって所定の時間経過したか否かを測定して(ST4)、所定の時間経過後、再度モニタ1が設置されている場所の明るさを検出する(ST5)。そして、制御手段3内の比較手段3aにおいて今回(ST5)検出された明るさと直近(ST1)に検出された明るさとが比較され、判断手段3bで明るさに変更があったか否かが判断される。
【0015】
その結果、明るさが変化しなかった場合に(ST6のN)、モニタ1の輝度を変更する(ST7)。一方、明るさが変化している場合には(ST6のY)、例えば、モニタ1の前を人が横切った等、検出手段2の付近が短時間暗くなった(明るくなった)だけであると判断することが可能である。従って、この場合には輝度を変更せず、そして明るさが変化していることから改めてタイマ4による時間の測定が開始される(ST3)。
【0016】
このようにタイマ4を用いて所定の時間一定の明るさが継続したことを確認してモニタ1の輝度を変更するという制御を行うことにより、検出手段の検出結果に即応して輝度が頻繁に変化することを防ぐとともに、モニタが設置される場所の明暗に適切に対応して使用者の使い勝手に配慮したモニタ輝度制御システムを提供することができる。
【0017】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0018】
第2の実施の形態は、医用診断システムに第1の実施の形態に示したモニタ輝度制御システムを搭載したモニタを備えた場合である。なお、この第2の実施の形態においては、図3に示すように、X線診断装置を例にとって説明するが、このX線診断装置の他にモニタを備える、例えば、CT(computed tomography:コンピュータ断層撮影)装置、超音波診断装置、磁気共鳴診断装置、及びガンマカメラやPET(positron-emission tomography:ポジトロン放出断層撮影)等の核医学装置等の医用診断システム、或いは、診断データを保存する画像保存・通信システム等についても利用可能である。
【0019】
図3に示すように、X線診断装置10は、検査室11内に保持装置12と、システムコントローラ13と、モニタ14と、ルームライト15とから構成される。
【0020】
図3に示すX線診断装置10における保持装置12は、寝台天板12aを中心にして寝台天板12aの上方からX線を照射して、下方で撮影するオーバーチューブの場合を示している。このX線診断装置10は、X線を寝台天板12aの下方から照射するアンダーチューブの場合であってもよい。また、第2の実施の形態を示す図3においては、例えば保持装置12やシステムコントローラ13等、X線診断装置10を構成する全ての要素が同一検査室11内に置かれているが、保持装置12は実際に患者である被検体が入室してX線透視・撮影を受ける検査室(撮影室)に設置され、システムコントローラ13、モニタ14、ルームライト15は操作室に設置されるものであってもよい。
【0021】
第2の実施の形態における保持装置12では、寝台天板12aの上方にX線管12bが設けられ、システムコントローラ13内の高電圧発生手段13aから高電圧電力の供給を受けてX線を照射する。また、X線管12bの出射側には、出射されたX線を絞って不要部位へのX線照射を防ぐ複数枚の鉛羽で構成されたX線照射野絞り12cが設けられている。
【0022】
一方、寝台天板12aを挟むようにX線管12bと対向する位置に透過したX線を入射させるI.I.(Image Intensifier:画像増強管)12dが設けられ、このI.I.12dの出力側には、変換された光学像を適切な大きさに補正する光学系12eと、補正された光学像をTV映像信号に変換するTVカメラ(または撮影素子)12fとが設けられる。
【0023】
I.I.12dは、図示しない入力蛍光面、光電陰極、収束(フォーカス)電極、陽極及び出力蛍光面で構成される大形の真空管、入力窓並びに高圧電源等からなり、TVカメラに入力されたTV映像信号はシステムコントローラ13に入力される。
【0024】
システムコントローラ13には、X線管に高電圧電力を供給する高電圧発生手段13aとX線診断装置10の各部を制御する制御手段13bが設けられている。
【0025】
制御手段13bは、X線管12bから被検体に照射するX線量を制御するため高電圧発生手段13aに対して制御信号を出力する。また、I.I.12d、光学系12e、TVカメラ12fを介して入力されたTV映像信号を出力してモニタ14にX線照射によって得られた映像を映し出す。ルームライト15にもON(点灯)またはOFF(消灯)の信号を出力し、X線を照射する間、すなわち、診療中はルームライト15を消灯させるようにする。
【0026】
ここで、モニタは、第2の実施の形態におけるX線診断装置10や検査、診断装置と一体に構成されている医用診断システムにおいては、これら診断装置等と同じ、例えば検査室内に設置される。このような場合であって、さらに診察の際(医用診断システムを使用する際)に検査室を暗くする必要が生じる場合がある。また、モニタは診断装置等が設置される検査室とは別の部屋(モニタ室)に設けられることもあり、例えば、X線診断を行う場合は、X線照射の際モニタ室は暗くなる。これらのような場合に、モニタ14の輝度も検査室やモニタ室の明るさに合わせてその輝度が変化しなければ使用者の使い勝手に悪い影響を与える。
【0027】
図4は、X線診断装置10を用いて被検体に対するX線診断を行う際のX線診断装置10、ルームライト15とモニタ14との制御の流れを示すフローチャートである。被検体へのX線照射にあたっては、まずX線照射の準備を行う(ST11)。この準備は、いわゆる「ready状態」のことであり、高電圧を印加してからX線が照射されるまでのタイムラグ(例えば、2〜3秒)の間の状態を表わす。
【0028】
次に、X線照射がready状態となった後、検査室11のルームライト15がOFF(消灯)され、検査室11は暗くなる。ルームライト15がOFFされるとモニタ14のタイマ4がOFFされる(ST13)。これは、第1の実施の形態において説明したように、モニタの頻繁な輝度変化を避けるためにタイマ4を用いて一定の時間明るい状態、或いは暗い状態が継続した場合に限って輝度を変化させることとすると、検査室11はルームライト15がOFFとなって暗くなっているにも拘わらず、タイマ4が働いてモニタ14の画面のみが検査室11が明るい状態に合わせた輝度のままとなる。
【0029】
そこで、まずモニタ14のタイマ4をOFFとして(ST13)、モニタ14の設置されている場所の明るさが変化した場合に合わせてすぐにモニタ14の輝度が変更されるようにする。その上で、モニタ14の検出手段2が明るさを検出し(ST14)、検出された明るさに対応してモニタ14の輝度を下げる(ST15)。
【0030】
ルームライト15がOFFされ(ST12)、モニタ14の輝度が下がると(ST15)、X線照射が開始され(ST16)、検査が終了するとX線照射が停止される(ST17)。このX線照射による検査は、被検体の人数に合わせて複数回行われてもよく、この場合、検査室11の中は暗い状態が続くことになるので、モニタ14の輝度も下がった状態が維持される。
【0031】
X線照射が停止されると(ST17)、検査室11のルームライト15がONされる(ST18)。ルームライト15がONされると検査室11は明るくなるため、モニタ14の検出手段2によって検出された検査室11の明るさに合わせてモニタ14の輝度も上がる(ST19、ST20)。その後、モニタ14のタイマ4がONされ(ST21)、検査中はOFFされていたタイマによる時間の測定が改めて開始される(ST22)。
【0032】
このようにモニタ14に備えられたタイマ4を検査中は一時的にOFFすることで、モニタ14の輝度を検査室11の明るさに即応するように制御を行うことにより、検査の開始時と終了時に、すなわち、検査室11内の明るさに変化があった場合に、輝度の変化に時間がかかることを防止するとともに、モニタ14が設置される場所の明るさに適切に対応して使用者の使い勝手に配慮したモニタ輝度制御システム及び該システムを用いた医用診断システムを提供することができる。
【0033】
上記実施の形態では、被検体を透過したX線を検出するX線検出器としてI.I.を適用した場合について説明したが、X線検出器として、平面検出器を適用しても全く同様である。もちろん、平面検出器として間接変換型であっても直接変換型であってもよい。
【0034】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】モニタの内部構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態におけるモニタ輝度制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】モニタ輝度制御システムを備えるモニタを具備するX線診断装置の構成を示すブロック図である。
【図4】第2の実施の形態におけるモニタ輝度制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 モニタ
2 検出手段
3 制御手段
4 タイマ
5 輝度調節手段
6 表示手段
10 X線診断装置
11 検査室
12 保持装置
13 システムコントローラ
14 モニタ
15 ルームライト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタの周囲の明るさを検出する検出手段と、
前記検出手段が明るさの変化を検出したときに所定時間の計測を開始するタイマと、
前記所定時間が経過したときに、前記検出手段によって検出された明るさの変化に合わせて前記モニタの輝度を調節する制御手段と、
を備えることを特徴とするモニタ輝度制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記モニタが設置された場所の明るさが変化した場合に、前記タイマをOFFし、前記検出手段によって検出された明るさに合わせて前記モニタの輝度を調節することを特徴とする請求項1に記載のモニタ輝度制御システム。
【請求項3】
前記モニタと、
前記モニタに具備された請求項1または請求項2に記載のモニタ輝度制御システムと、
を備えることを特徴とする医用診断システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−236810(P2007−236810A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66472(P2006−66472)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】