説明

モニタ連動形操作装置

【課題】モニタ自体を3軸を中心にそれぞれ回転操作することによりモニタに表示されるゲーム画面の物体を体感的に移動させることができるゲーム装置に用いられるモニタ連動形操作装置を提供する。
【解決手段】液晶モニタ1の枠を掴んで、前後および左右に傾けたり、回転させたりすると、X軸,Y軸およびZ軸の回転量を検出する。そして、回転量に応じた位置まで、その回転速度,加速度で球などの移動対象物が移動する。液晶モニタ1を傾けたり、回転させたりすることにより、球を各方向に各速度で直に移動するためプレイヤは直観的な操作感を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用ゲーム筐体において、モニタ装置を動かすことによりゲーム内の入力判定に反映させることができるモニタ連動形操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりゲームを進行させる入力手段としてはレバー,ボタン,トラックボール,パドルなどの操作装置を使用するものが一般的である。
ゲームの中には重力や慣性などを利用するものが存在するが、上記のようなレバー操作やボタン操作などで行うためゲーム画面はプレイヤの操作に対し、例えばレバーを手前側に倒せば、画面上のキャラクタが座るというような間接的な処理や動きとなって表されるものである。
また、体感的に入力できるものとして筐体を左右に移動させることにより、左右に移動させることができる体感ボクシングゲームなどがある(非特許文献1)。さらに、画面も連動して動くものとして2つのスティックを動かすシューティングゲームなどが存在する(非特許文献2)。
上記各非特許文献は動かす対象はモニタであるが、上記非特許文献1は1軸方向のみの動きであり、非特許文献2は2つのスティックを動かし、やはり入力に対し間接的な動きとなる。
【0003】
また、3軸方向を回転操作量として出力する操作装置として多軸ジョイスティックが提案されている(特許文献1)。これは人の腰のベルトに取り付けられたジョイスティックのグリップをX,Y軸方向に動かすことによりその方向にそれそれ設けたポテンショメータにより検出し、Z軸についてはグリップからZ軸シャフトに作用するモーメントによる応力が歪みゲージで検出されて歪みゲージの検出出力により各軸を中心とした回転操作量を出力させるものである。
これも直にモニタを動かすものではない。
【非特許文献1】heavyweightchamp SEGA/1988 WEBページ (http://www.miut.com/sega/16b/hwchamp/hwchamp.htm ) 2007/5/14現在
【非特許文献2】DANGER ZONE シネマトロニクス/1987 WEB ページ (http://homepage1.nifty.com/fjk/retrogames/mekuman/mekuman4.htm ) 2007/5/14現在
【特許文献1】特開平8−66882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、モニタ自体を3軸を中心にそれぞれ回転操作することによりモニタに表示されるゲーム画面の物体を体感的に移動させることができるゲーム装置に用いられるモニタ連動形操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、モニタ装置の表面を水平方向に設置し、X軸,Y軸およびZ軸方向を中心にそれぞれ独立に回転可能なモニタ装置と、前記モニタ装置の各軸を中心に回転させたとき、モニタを回転量に応じた姿勢に導く回転機構と、前記各軸の回転機構の回転量を検出する各軸回転量検出手段と、前記各軸回転量検出手段で検出した回転量を回転角に変換する回転角変換手段と、前記回転角変換手段からの回転角に対応した加速度を求める加速度算出手段と、回転に要する時間を計測する計測手段と、前記加速度算出手段からの加速度,前記回転角変換手段の回転角および計測手段の計測時間によって各回転位置での速度を算出する速度算出手段と、前記計測手段からの計測時間および速度算出手段からの速度より各軸毎の移動対象物の移動量を算出する移動量算出部と、前記モニタ装置に移動対象物を表示する処理部であって、各軸毎に算出された移動量および速度に基づく画像処理を行う移動対象物表示処理部を備え、前記モニタ装置の各軸方向に対し加えられる回転角,速度および加速度に応じた移動量,速度および加速度で前記移動対象物を移動表示させることを特徴とする。
本発明の請求項2は、請求項1記載の発明において前記各軸回転量検出手段は、前記各軸の回転機構の回転量を検出し、電圧値に変換する回路であり、前記回転角変換手段は前記各軸回転量検出手段の電圧値を回転角に変換する電圧−回転角変換回路であることを特徴とする。
本発明の請求項3は、請求項2記載の発明において各軸回転量検出手段はボリュームと抵抗によって構成されることを特徴とする。
本発明の請求項4は請求項1,2または3記載の発明において前記移動対象物は平面に載置された球であることを特徴とする。
本発明の請求項5は、請求項1,2,3または4記載の発明において前記モニタ装置は液晶モニタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、ゲームに用いられる球の動きを直観的で分かりやすく捉えることができ、ゲームの中の仮想空間を、より現実的に表示することができる。また、簡単な構造で構成できるため、耐久性の高いモニタ連動形操作装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面等を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1Aは、本発明によるモニタ連動形操作装置の外観の概略を示す斜視図である。
モニタ装置は液晶モニタ1で構成され、液晶モニタ1は手15で把持することができる厚さの枠を有している。液晶モニタ1の中央に支持軸1bが取り付けられ、この支持軸1bがX軸,Y軸を中心に回動し、Z軸を中心に回動可能に構成されている。
液晶モニタ1は図1Aに示すように水平に設置され、プレイヤは手15によって液晶モニタ1の両枠1aを掴み、液晶モニタ1の各軸(X軸,Y軸,Z軸)を中心に任意の量回動させることができる。
【0008】
図1Bはモニタ装置に表示される球の画像例を示す図である。
(a)はモニタ装置1に板12が表示され、その上に板12の範囲内を転がる球14が表示されており、モニタ装置1の傾く方向に、その傾く速度に応じた動きで球14が移動する。(b)は仮想空間における球の物理的動きを示すものであり、各方向の回転操作に応じて、その方向に球が移動することとなる。
【0009】
図2は、図1の操作装置の構造の実施の形態を示す分解斜視図である。
液晶モニタ1の中央に取り付けられた支持軸1bの端部に嵌合軸3が形成されている。
嵌合軸3は回転基盤4の中央に設けられた嵌合孔4cに嵌入され、液晶モニタ1は回転基盤4に対し矢印17方向に回動可能である。回転基盤4と液晶モニタ1との間にはプレイヤが手を離したとき液晶モニタ1を予め決められた位置(初期位置)に復帰させるスプリングリターン機構6が設けられている。
回転基盤4の左側面と右側面に回転基盤軸4a,4bが設けられている。回転基盤軸4a,4bは内枠10の前後に設けられた嵌合孔10d,10cにそれぞれ嵌入され、回転基盤4は内枠10に対し、矢印16方向に回動可能である。回転基盤4と内枠10の間にはプレイヤが手を離したとき液晶モニタ1を予め決められた位置に復帰させるスプリングリターン機構5が設けられている。
【0010】
また、内枠10の前側面と後側面に内枠軸10a,10bが設けられている。内枠軸10a,10bは外枠11の前後に設けられた嵌合孔11a,11bにそれぞれ嵌入され、内枠10は外枠11に対し、矢印18方向に回動可能である。内枠10と外枠11との間にはプレイヤが手を離したとき液晶モニタ1を予め決められた位置に復帰させるスプリングリターン機構12が設けられている。
X軸,Y軸およびZ軸にはボリューム8,9および7が配置され、ボルューム7の軸は嵌合軸3に固定され、ボリューム8の軸は回転基盤軸4aに固定され、さらにボリューム9は内枠軸10bに固定され、各軸を中心に回動したとき、各ボリュームの軸は同様に回動し、その回転角が電圧値として検知される。
【0011】
図3は、本発明による操作装置の回路の実施の形態を示す回路図である。
ボリューム7,8および9の一端は電源電圧Vccに接続され、ボリューム7の他端は抵抗RX を介して設置されている。同様にボリューム8の他端は抵抗RY を介して設置され、ボリューム9の他端は抵抗RZ を介して設置されている。ボリューム7,8および9と各抵抗との接続点にはボリュームの回転角に応じてボリュームと抵抗の分圧電圧VX ,VY およびVZ がそれぞれ出力される。分圧電圧VX ,VY およびVZ は電圧−回転角変換部20によって回転角(回転量)が検出され、時間計測部21と回転角−加速度算出部25に送られる。
時間計測部21は回転量の変化率、すなわち回転量を微分することにより回転開始および停止のタイミングを得る。そして、回転開始から停止までを所定時間間隔(例えば,15ms)毎に時間を計測するものである。時間計測部21は各軸を中心にした回転に要する停止までの時間tX ,tY およびtZ を得ることができ、速度算出部22に送られる。
【0012】
回転角−加速度算出部25は回転角に対する加速度を算出する演算を行い、入力する回転角対応の加速度を導き出す。
速度算出部22では各軸を中心にした回転量対応の時間tX ,tY を時間計測部21から取得するとともに回転角−加速度算出部25からその回転量における加速度を得て、式(1)の演算を行ってその回転位置(tn の時刻)での速度を算出する。
n =vn-1 +αn ×(tn-1 −tn )・・・(1)
図5にその様子を説明する図を示す。
n の時刻の速度はその前の時刻tn-1 での速度vn-1 に加速度αn から求めた増加分(または減算分)を加えて求めることができる。なお、時刻tn-1 とtn の間の間隔は上述したように15msなどに設定されている。この時間間隔は、例えば10ms,20msなどにも設定できる。時間間隔が小さければ、速度の変化が細かく算出でき、円滑に動く球の画像処理を行うことができる。
移動量算出部23は、各時間間隔毎の速度を得て、その時間間隔での球の移動量を算出し、これらをすべて加算することより球が移動する途中の計測時点での球の移動量を算出する。
画像処理部24は球の移動過程における各計測時点での移動量および速度の情報を得て、その情報に基づき球を、求めた速度で画面上を移動させる動き画像を形成する処理を行う。
【0013】
図4にX軸を中心に回転したときの入力に対する特性を示す。これはX軸の周囲を最大に回転できる角度を±30度とした場合の例である。
(a)はボリューム電圧と操作装置の回転角の一例を示す図である。
回転角0度のときの電圧値をVX0とした場合、−30度回転から+30度回転までの電圧の関係はVX-30からVX+30までとなる。なお、ボリュームの回転角(モニタ装置の傾き)と分圧電圧の関係は非直線となっている。
(b)は回転角(回転量)と加速度の関係の一例を示す図である。回転角0度より±に回転した場合には±30度までの間は直線関係で加速度を求めることができる。回転角−加速度算出部25ではこのようなグラフとなる演算を行ってもよいし、また、このようなグラフとなる表を予め記憶しておき、この表を参照することにより回転角対応の加速度を求めることができる。
【0014】
図4(c)は球を目標位置まで移動させるために例えばモニタ装置を20度回転させ元の水平状態に戻したときの速度変化を示している。
プレイヤはモニタ装置上で球を目標となる位置に移動させる場合、通常、当初は急激にモニタ装置を傾け、ある角度で少しの間その角度を保持し、球が目標位置に達する少し前にモニタ装置を元の水平位置に戻すように操作する。したがって球の速度は目標位置に達するまでの半分より通過した位置で速度が最も大きくなり、目標位置に近づくにつれて速度が小さくなり、最後は速度0となって、球の目標位置にもたらされる。
図4(d)は図4(c)のような速度特性となるときの対応する加速度の例を示している。
モニタ装置を傾けた直後は球は急速に加速されるが、速度が一定に近づくと加速度は0付近になり、停止直前に急激に負の加速度が加えられ停止位置で0となる。
なお、Y軸およびZ軸についても同様な処理がなされ、X軸,Y軸およびZ軸の動作を合成する画像処理がなされる。
このようにモニタ装置の傾きに応じてモニタ上の球の動きを表示することにより、プレイヤはモニタ装置画面上の球を直に転がしているような操作感を得ることができる。
【0015】
図6は各軸に対する回転角(回転量),加速度,計測時間および時間との関係を具体的に説明するための図である。
(a)は目標位置に達するまでの時間に対し、予め決めた時間間隔で区切った位置での時間(速度)計測の例を示している。(b)は(a)のような時間間隔で計測する場合を表に纏めたものである。
表のNo1〜3はX軸,Y軸およびZ軸に対しそれぞれ回転角が10°,回転角10°の時の加速度が1m/s2 の場合であり、表のNo4〜6はX軸,Y軸およびZ軸に対しそれぞれ回転角が20°,回転角20°の時の加速度が2m/s2 の場合であり、表のNo7〜9はX軸,Y軸およびZ軸に対しそれぞれ回転角が30°,回転角30°の時の加速度が4m/s2 の場合である。
【0016】
No1の場合については計測時間60msのときの算出された速度が示されている。
計測時間60msでは計測時間45msのときの速度v3 に、加速度1m/s2 から求めた速度1m/sを加えたv4 の速度が得られる。
No2の場合は計測時間30msのときの算出された速度が示されている。計測時間30msでは計測時間15msのときの速度v1 に、加速度1m/s2 から求めた速度1m/sを加えたv2 の速度が得られる。なお、v0 は初速であり、この例では0である。
【0017】
以上の実施の形態では、移動対象物として球を例にしているが、移動体対象物は形状が球以外の矩形形状や曲面形状であってもよく、転がって移動するのではなくすべって移動するものでもよい。また、ゲームに登場するキャラクタ自体であってもよい。
また、移動対象物のみを移動させる例を示したが、モニタ装置内に表示されている球が搭載されている板を連動させて傾け、それによって球を回転させるように画像処理することも可能である。
さらにボリュームにより回転角を電圧値に変換して回転量(回転角)を求める実施の形態について説明したが、パルスカム入力装置などのアナログ変化に感知する装置を回転角検出手段として用いることもできる。パルスカム入力装置は各軸方向の回転に対しパルスを発生させるようにし、発生パルスの数によりその回転量を検出するものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
アーケードセンタやイベント会場に設置される、ゲーム機などに用いられる操作装置である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明によるモニタ連動形操作装置の外観を示す斜視図である。
【図1B】モニタ装置に表示される球の画像例を示す図である。
【図2】図1の操作入力操作装置の構造の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図3】操作装置の回路の実施の形態を示す回路図である。
【図4】X軸を中心にモニタ装置が回転したときの各出力特性を説明するための図である。
【図5】各時刻(時間)での速度を算出する場合を説明するための図である。
【図6】各軸に対する回転角(回転量),加速度,計測時間および時間との関係を表にしたものである。
【符号の説明】
【0020】
1 液晶モニタ(モニタ装置)
3 嵌合軸
4 回転基盤
5,6,12 スプリングリターン機構
7,8,9 ボリューム
10 内枠
11 外枠
14 球(移動対象物)
20 電圧−回転角変換部(回転角変換手段)
21 時間計測部
22 速度算出部
23 移動量算出部
24 画像処理部
25 回転角−加速度算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタ装置の表面を水平方向に設置し、X軸,Y軸およびZ軸方向を中心にそれぞれ独立に回転可能なモニタ装置と、
前記モニタ装置の各軸を中心に回転させたとき、モニタを回転量に応じた姿勢に導く回転機構と、
前記各軸の回転機構の回転量を検出する各軸回転量検出手段と、
前記各軸回転量検出手段で検出した回転量を回転角に変換する回転角変換手段と、
前記回転角変換手段からの回転角に対応した加速度を求める加速度算出手段と、
回転に要する時間を計測する計測手段と、
前記加速度算出手段からの加速度,前記回転角変換手段の回転角および計測手段の計測時間によって各回転位置での速度を算出する速度算出手段と、
前記計測手段からの計測時間および速度算出手段からの速度より各軸毎の移動対象物の移動量を算出する移動量算出部と、
前記モニタ装置に移動対象物を表示する処理部であって、各軸毎に算出された移動量および速度に基づく画像処理を行う移動対象物表示処理部を備え、
前記モニタ装置の各軸方向に対し加えられる回転角,速度および加速度に応じた移動量,速度および加速度で前記移動対象物を移動表示させることを特徴とするモニタ連動形操作装置。
【請求項2】
前記各軸回転量検出手段は、前記各軸の回転機構の回転量を検出し、電圧値に変換する回路であり、
前記回転角変換手段は前記各軸回転量検出手段の電圧値を回転角に変換する電圧−回転角変換回路である、
ことを特徴とする請求項1記載のモニタ連動形操作装置。
【請求項3】
各軸回転量検出手段はボリュームと抵抗によって構成されることを特徴とする請求項2記載のモニタ連動形操作装置。
【請求項4】
前記移動対象物は平面に載置された球であることを特徴とする請求項1,2または3記載のモニタ連動形操作装置。
【請求項5】
前記モニタ装置は液晶モニタであることを特徴とする請求項1,2,3または4記載のモニタ連動形操作装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−305178(P2008−305178A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151879(P2007−151879)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(306019111)株式会社タイトー (475)
【Fターム(参考)】