説明

モータポンプ装置

【課題】製造が容易で、コスト的に有利なモータポンプ装置を提供する。
【解決手段】モータポンプ装置1の呼吸孔12を通気性且つ防水性を有するフィルタで塞いだ。呼吸孔12をフィルタ14で塞いでも、フィルタ14の通気性により呼吸機能を保持したまま、フィルタの防水性により水の浸入を防止できる。雨天走行時や洗車時等に呼吸孔12部分が被水しても、水がモータ収容室2内に浸入するおそれはない。呼吸孔12をフィルタ14で塞ぐだけの簡単な構造であり、従来のように複雑な迷路構造を形成する必要がないため、製造が容易で、コスト的に有利である。また、モータポンプ装置1の全体形状及びサイズの変更が小さく、周辺構造に影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のウィンドウォッシャーやヘッドランプウォッシャーには、洗浄液を噴射するモータポンプ装置が使用されている。モータポンプ装置は、モータを内蔵した駆動部と、インペラを回転させて洗浄液をタンクより吸引して噴射するポンプ部と、から構成されている。モータの出力軸はシールを貫通してポンプ部側へ突出し、その先端にインペラが固定されている。インペラはモータの駆動力で回転し、洗浄液を圧送する。
【0003】
モータを収納するモータ収容室内の空気は、モータ駆動時とモータ停止時の温度差より膨張と収縮を繰り返すため、モータ収容室を密閉化すると、収縮時(減圧時)に、ポンプ部の洗浄液が出力軸の貫通部を通じてモータ収容室に浸入するおそれがある。
【0004】
これを防止するために、ケースにはモータ収容室の内部とケースの外部とを連通させる呼吸孔が形成されている。この呼吸孔は特殊な形状に形成され、そこにカバー部材を取付けることにより、呼吸孔とカバー部材との間に三次元的な迷路構造を形成し、空気だけが通過して水が浸入しないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第2544360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、呼吸孔とカバー部材との間に三次元的な迷路構造を形成しているため、構造が複雑で、製造が困難であり、コスト的に不利である。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、製造が容易で、コスト的に有利なモータポンプ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、ケースに内部のモータ収容室とケースの外部とを連通させる呼吸孔を設けたモータポンプ装置であって、前記呼吸孔を、通気性且つ防水性を有するフィルタで塞いだことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、呼吸孔にフィルタを貼着したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、呼吸孔にフィルタを内蔵したグロメットを取付けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、フィルタが樹脂製の微細多孔質膜であることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、フィルタに、織布、不織布、フェルト、ネットの少なくとも1つから成る通気性を有する基材を接合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、フィルタの通気性により呼吸孔の呼吸機能を保持したまま、フィルタの防水性により呼吸孔から水の浸入を防止することができる。フィルタで呼吸孔を塞ぐだだけの構造で、従来のように複雑な迷路構造を形成する必要がないため、製造が容易で、コスト的に有利である。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、呼吸孔にフィルタを貼着するだけの構造のため、構造が特に簡単である。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、呼吸孔にフィルタを内蔵したグロメットを取付ける構造のため、フィルタの取付け作業が容易である。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、フィルタが樹脂製の微細多孔質膜であるため、サイズが小さく、フィルタを設けても、モータポンプ装置の全体形状及びサイズの変更が小さい。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、フィルタに、通気性を有する織布、不織布、フェルト、ネットの少なくとも1つから成る通気性を有する基材を接合したため、フィルタの形状が安定し、取り扱いが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、製造が容易で、コスト的に有利なモータポンプ装置を提供するという目的を、内部にモータ収容室とポンプ室とを備えたケースと、前記モータ収容室に配置されたモータと、前記ポンプ室に回転自在に配置され前記モータによって駆動して液体を圧送するインペラと、を備えるモータポンプ装置であって、前記ケース内のモータ収容室と前記ケース外とを連通する呼吸孔を、通気性且つ防水性を有するフィルタで塞いだことで実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図4は、本発明の第1実施例を示す図である。この実施例に係るモータポンプ装置1は、自動車のウィンドウォッシャーやヘッドランプウォッシャーに使用されるもので、フロントガラスやヘッドランプに噴射する洗浄液をタンクから圧送するためのものである。
【0019】
モータポンプ装置1は、内部にモータ収容室2およびポンプ室3を備えるケース5と、モータ収容室2に配置されたモータ6と、ポンプ室3に回転自在に配置されたインペラ11と、を備えて構成されている。
【0020】
ケース5は、全体として上下方向に延在する略円筒状に形成されており、内部のモータ収容室2とポンプ室3とが略円板状の隔壁4を隔てて上下に区画形成されている。
【0021】
隔壁4の中央部には貫通孔4aが設けられており、この貫通孔4aを通じてモータの出力軸7がポンプ室3に突き抜けており、このモータの出力軸7の突出端部にインペラ11が固定されている。
【0022】
隔壁4の貫通孔4aの周囲には、隔壁4からポンプ室3に向けて突出する円筒状のボス部4cが設けられており、このボス部4cの内周面とモータの出力軸7との間にシール部材としてのパッキン8が嵌合されて、このパッキン8が隔壁4の貫通孔4aに密着することで、当該隔壁4の貫通孔4aがシールされている。
【0023】
ポンプ室3内には、上述の如くインペラ11が配置されており、このポンプ室3の下部には、ポンプ室3の入口となる吸引筒9が一体に設けられているとともに、ポンプ室の側部には、ポンプ室3の出口となる排出筒10が一体に設けられている。モータ6の駆動力によりインペラ11が回転すると、洗浄液が図示せぬタンクからチューブを介して吸引筒9より吸引され、吸入された洗浄液が排出筒10から噴射される。排出筒10はチューブを介して図示せぬ噴射ノズルと連結され、噴射ノズルから洗浄液がフロントガラスやヘッドランプに噴射されるようになっている。
【0024】
モータ収容室2の下部には、出力軸7の外周側に(この例では出力軸7を収容するボス部4cの外周側に)、空間Sが形成されており、その空間Sに相当するケース5の側壁に呼吸孔12が形成されている。この呼吸孔12は四角形で、モータ収容室2の内部の空間Sとケース5の外部と、を連通させている。この例では吸入孔12は、モータ収容室2の底面(隔壁4の上面)と略同一の位置に設けられている。
【0025】
ポンプ室3に対応するケース5の外周面は、モータ収容室3に対応するケース5の外周面よりも小径に形成されており、このため、ケース5の外周面のうち隔壁4に相当する位置には段差13が設けられており、この段差13の上側に呼吸孔12が近接して設けられている。
【0026】
この呼吸孔12の外側には円形のフィルタ14が貼着され、このフィルタ14で呼吸孔12が塞がれた状態となっている。なお、フィルタ14は段差13にまたがって貼着されている。フィルタ14は四フッ化エチレン樹脂製の微細多孔質膜であり、微細多孔により、空気を通過する通気性を有するとともに水の通過を防止する防水性を有している。この例のフィルタ14は、1cm2あたり数億個以上の微細孔を有しており、またフィルタ14の通気量は18cc/minである。
【0027】
フィルタ14には、ポリオレフィン系樹脂製の不織布から成る基材15がラミネートされている。フィルタ14に基材15をラミネートしているため、フィルタ14の形状が安定し、取り扱いが容易である。基材15はフィルタ14よりも高い通気性を有している。基材15は、不織布の他に、織布、フェルト、ネット等でも良く、素材としても樹脂の他に、ガラスや金属等でも良い。フィルタ14は基材15側にリング状の両面接着テープ16を有し、該両面接着テープ16を介して呼吸孔12に貼着され、呼吸孔12を塞ぐ。フィルタ14の下部は段差13に沿って貼着された状態となる。
【0028】
この実施例によれば、呼吸孔12をフィルタ14で塞いでも、フィルタ14の通気性により呼吸機能を保持したまま、フィルタ14の防水性により水の浸入を防止することができる。そのため、雨天走行時や洗車時等に呼吸孔12部分が被水しても、水がモータ収容室2内に浸入するおそれはない。
【0029】
以上のように、本実施例によれば、呼吸孔12をフィルタ14で塞ぐだけの簡単な構造であり、従来のように複雑な迷路構造を形成する必要がないため、製造が容易で、コスト的に有利である。
【0030】
また、本実施例によれば、フィルタ14が樹脂製の微細多孔質膜であるため、サイズが小さく、フィルタ14を呼吸孔12に貼着しても、モータポンプ装置1の全体形状及びサイズの変更が小さく、周辺構造に影響を与えない。
【0031】
更に、本実施例によれば、呼吸孔12がフィルタ14で塞がれ、呼吸孔12が開放状態とならないため、呼吸孔12の位置も特別に被水しにくい位置に選定する必要がなく、モータポンプ装置1のレイアウト自由度が向上する。
【実施例2】
【0032】
図5〜図7は、本発明の第2実施例を示す図である。この実施例のモータポンプ装置17では、呼吸孔18を円筒突起状に形成し、そこにフィルタ19を内蔵したグロメット20を差し込んで取付けている。
【0033】
グロメット20は貫通孔21を有する円筒型で、その貫通孔21を塞ぐようにフィルタ19が一体的に組み込まれている。このフィルタ19には、図示されていないが先の実施例と同様の基材がラミネートされている。
【0034】
グロメット20の先端側は開口端側に向けて除々に拡径するテーパ面22になっており、水を外部に排出しやすい構造になっている。グロメット20の基端側には呼吸孔18の外径に相当する内径の差込部23が形成されており、呼吸孔18と隙間なく嵌合するようになっている。
【0035】
この実施例によれば、上述の第1実施例の効果に加え、フィルタ19を内蔵したグロメット20を呼吸孔18に取付けるようにしているため、フィルタ19の取付け作業が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上の実施例では、フィルタ14、19で呼吸孔12、18を塞ぐ構造として、貼着方式、及びグロメット方式を例にしたが、これらに限定されるものでなく、その他の方式でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施例に係るモータポンプ装置を示す側面図。
【図2】フィルタを示す断面図。
【図3】呼吸孔にフィルタを貼着した状態を示すモータポンプ装置の部分側面図。
【図4】モータポンプ装置を示す断面図。
【図5】第2実施例に係るモータポンプ装置を示す断面図。
【図6】グロメットを示す断面図。
【図7】呼吸孔にグロメットを取付けた状態を示すモータポンプ装置の部分断面図。
【符号の説明】
【0038】
1、17 モータポンプ装置
2 モータ収容室
3 ポンプ室
5 モータケース
6 モータ
7 出力軸
11 インペラ
12、18 呼吸孔
14、19 フィルタ
15 基材
20 グロメット
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にモータ収容室とポンプ室とを備えたケースと、前記モータ収容室に配置されたモータと、前記ポンプ室に回転自在に配置され前記モータによって駆動して液体を圧送するインペラと、を備えるモータポンプ装置であって、
前記ケースの内部のモータ収容室と前記ケースの外部とを連通する呼吸孔を、通気性且つ防水性を有するフィルタで塞いだことを特徴とするモータポンプ装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータポンプ装置であって、
前記呼吸孔に、前記フィルタを貼着したことを特徴とするモータポンプ装置。
【請求項3】
請求項1記載のモータポンプ装置であって、
前記呼吸孔に、前記フィルタを内蔵したグロメットを取付けたことを特徴とするモータポンプ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータポンプ装置であって、
前記フィルタが、樹脂製の微細多孔質膜であることを特徴とするモータポンプ装置。
松性の樹脂膜
【請求項5】
請求項4記載のモータポンプ装置であって、
前記フィルタに、織布、不織布、フェルト、ネットの少なくとも1つから成る通気性を有する基材を接合したことを特徴とするモータポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−2407(P2008−2407A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174605(P2006−174605)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】