説明

モータ式車両駆動装置

【課題】強度安全率を低下させることなく従来よりも小形軽量化を実現し、バネ下荷重を低減して車両の操作安定性の向上に寄与できるモータ式車両駆動装置を提供する。
【解決手段】タイヤ67およびホイール64を有する駆動輪6と、駆動輪6のホイール64の内側に配設され、ホイール64を回転駆動する駆動トルクを出力する出力軸(ロータハブ33)を有するモータ3と、モータ3の出力軸33に回転連結され駆動輪6のホイール64に固定されたホイール軸41と、モータ3の出力軸33からホイール軸41に動力伝達する動力伝達経路に配設され、モータ3の出力軸33からホイール軸41に動力伝達する動力伝達経路に配設され、伝達トルクが所定トルクに達するまでは直結状態を維持し、所定トルクを超過するとすべりを発生して伝達トルクを制限するトルク制限機構5と、を備えることを特徴とするモータ式車両駆動装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動輪を構成するホイールの内側に配設されたモータ式車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動輪を構成するホイールの内側にモータを配設し、インバータから電力を供給して回転速度制御を行いホイールを駆動するモータ式車両駆動装置(インホイールモータ)の開発が鋭意進められている。このモータ式車両駆動装置によれば、従来の変速装置やデファレンシャル装置、伝達軸などを組み合わせたパワートレーンが不要となり、車両構造が大きく様変わりして技術革新が進む。最近では、モータ式車両駆動装置を装備した電気自動車が各種試作されて展示会に出展されており、商業ベースの量産化への期待が高まってきている。この種のモータ式車両駆動装置の技術例が特許文献1および2に開示されている。
【0003】
特許文献1のインホイールモータは、車体のサスペンションに連結されたハウジング内のステータおよびロータと、平行多軸タイプの減速機構と、回転角度検出手段と、ブレーキ装置の油圧配管とを備えている。そして、減速機構、回転角度検出手段、および油圧配管は、それぞれロータ軸に対して偏心位置に配設されている。これにより、減速機構はロータ軸に対して偏心した比較的狭い面積を占有し、減速機構を避けた位相に回転角度検出手段と油圧配管とが配設され、各部材が効率よくレイアウトされるようになっている。
【0004】
また、特許文献2のインホイールモータ構造は、車体側に固定されたステータ部と、ロータ部と、ステータ部にロータ部を回転可能に取り付けるハブベアリングと、ステータまたはロータの径方向内側に配置された遊星ギヤとを備えている。これにより、各部品を効率的にレイアウトしてホイール内に収納できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−114858号公報
【特許文献2】特開2007−253686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1および特許文献2を始めとするモータ式車両駆動装置(インホイールモータ)では通常、シャフトや減速用ギヤの強度はモータ出力だけでなく各種の外来トルクを考慮して決められている。つまり、タイヤ側からの衝撃的な入力やブレーキによる急制動においても破損しないように、モータから出力される最大駆動トルクに対するよりもさらに過大な強度を確保するように決められている。例えば、車輪が縁石等へ乗り上げたときにタイヤに加わる荷重がトルクとして衝撃的に駆動装置に加わる場合がある。また、氷結した路上でブレーキロックさせるとタイヤは0.1秒程度で停止するため、モータ慣性による大きなせん断力が出力軸などに発生する。このような過大な外来トルクを考慮するので、シャフトや減速用ギヤなどの諸部材が過大に頑丈となり、駆動装置全体が大形化して重量が増加するという問題点が生じる。
【0007】
さらに、モータ式車両駆動装置は駆動輪とともに車体のサスペンション装置を介して車体に相対変位可能に連結されるので、駆動装置の重量増加はバネ下荷重の増加に直結する。したがって、駆動装置の重量が増加することにより、車両の操作安定性や運動性能が著しく低下するという問題点が派生する。
【0008】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、強度安全率を低下させることなく従来よりも小形軽量化を実現し、バネ下荷重を低減して車両の操作安定性の向上に寄与できるモータ式車両駆動装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に係るモータ式車両駆動装置の発明は、タイヤおよびホイールを有する駆動輪と、前記駆動輪の前記ホイールの内側に配設され、前記ホイールを回転駆動する駆動トルクを出力する出力軸を有するモータと、前記モータの前記出力軸に回転連結され前記駆動輪の前記ホイールに固定されたホイール軸に動力伝達する動力伝達経路に配設され、伝達トルクが所定トルクに達するまでは前記出力軸と前記ホイールとの連結状態を維持し、前記所定トルクを超過するとすべりを発生して伝達トルクを制限するトルク制限機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記モータの前記出力軸と前記ホイール軸との間に減速機構を備え、前記トルク制限機構は前記モータの前記出力軸と前記減速機構との間、前記減速機構内、および前記減速機構と前記ホイール軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記減速機構は平行多軸形減速機構であって、前記モータの前記出力軸に平行配置されたカウンター軸と、前記モータの前記出力軸に設けられた第1駆動ギヤと、前記カウンター軸に設けられて前記第1駆動ギヤに噛合しかつ前記第1駆動ギヤよりも歯数が多い第1従動ギヤと、前記カウンター軸に設けられた第2駆動ギヤと、前記ホイール軸に設けられて前記第2駆動ギヤに噛合しかつ前記第2駆動ギヤよりも歯数が多い第2従動ギヤとを有し、前記トルク制限機構は、前記モータの前記出力軸と前記第1駆動ギヤとの間、前記カウンター軸と前記第1従動ギヤまたは前記第2駆動ギヤとの間、および前記第2従動ギヤと前記ホイール軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項2において、前記減速機構はプラネタリギヤ形減速機構であって、前記モータの前記出力軸に連結されたサンギヤと、前記ギヤケースに固定されたリングギヤと、前記サンギヤおよび前記リングギヤに噛合するプラネタリギヤを支承し前記ホイール軸に連結されたプラネタリキャリアとを有し、前記トルク制限機構は、前記モータの前記出力軸と前記サンギヤとの間、ならびに前記プラネタリキャリアと前記ホイール軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、トルク制限機構は、伝達トルクが所定トルクに達するまでは連結状態を維持し、所定トルクを超過するとすべりを発生して伝達トルクを制限するようになっている。ここで、モータから出力される最大駆動トルクに基づいて所定トルクの大きさを定めることにより、確実にモータで駆動輪を駆動できる。一方、タイヤ側からの衝撃的な入力やブレーキによる急制動などにより所定トルクを越える過大な外来トルクが伝達されても、トルク制限機構の作用により駆動装置内部には所定トルクを大幅に超える過大な応力は発生しない。このため、駆動装置内部で過大な強度を確保する必要がなくなり、シャフトなどの諸部材を小形軽量化でき、この効果は駆動装置全体に波及する。したがって、強度安全率を低下させることなく、従来よりも小形軽量化したモータ式車両駆動装置を実現できる。また、駆動装置の軽量化によりバネ下荷重が低減されるので、車両の操作安定性の向上に寄与できる。
【0014】
請求項2に係る発明では、減速機構を備える構成において、モータの出力軸と減速機構との間、減速機構内、および減速機構と駆動輪のホイールに固定されたホイール軸との間であればどの位置にトルク制限機構を組み込んでも、駆動装置内部には所定トルクを大幅に超える過大な応力は発生しない。トルク制限機構の配置には自由度があり、小形軽量化に好適な配置を適宜選択することができる。これにより、シャフトに加え減速ギヤなどの諸部材を小形軽量化でき、駆動装置全体を小形軽量化できる。
【0015】
請求項3に係る発明では、減速機構は平行多軸形減速機構であって、トルク制限機構は、モータの出力軸と第1駆動ギヤとの間、カウンター軸と第1従動ギヤまたは第2駆動ギヤとの間、およびと第2従動軸と駆動輪のホイールに固定されたホイール軸との間に組み込むことができる。したがって、トルク制限機構を好適な位置に配置することができ、モータ式車両駆動装置を小形軽量化する効果が環著になる。
【0016】
請求項4に係る発明では、減速機構はプラネタリギヤ形減速機構であって、トルク制限機構は、モータの出力軸とサンギヤとの間、ならびにプラネタリキャリアとホイール軸との間の少なくとも一つの位置に組み込むことができる。したがって、トルク制限機構を好適な位置に配置することができ、モータ式車両駆動装置を小形軽量化する効果が環著になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態のモータ式車両駆動装置の全体構成を後方から見た断面図である。
【図2】図1中のロータ軸およびトルク制限機構の詳細を示す断面図である。
【図3】第2実施形態のモータ式車両駆動装置の全体構成を後方から見た断面図である。
【図4】図3中のロータ軸およびトルク制限機構の詳細を示す断面図である。
【図5】本発明のトルク制限機構に用いることができるトルクリミッターの一部断面斜視図である。
【図6】本発明のトルク制限機構に用いることができる別のトルクリミッターの一部断面斜視図である。
【図7】別のトルクリミッターのトルク制限部の詳細構造およびその作用を説明する断面図であり、(1)は駆動トルクを伝達している状態、(2)は駆動トルクを伝達しない状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための第1実施形態を、図1および図2を参考にして説明する。図1は本発明の第1実施形態のモータ式車両駆動装置の全体構成を後方から見た断面図である。図中で、右方が車体側、左方がタイヤ側になっている。第1実施形態のモータ式車両駆動装置1は、電気自動車の左右の駆動輪にそれぞれ設けられて、各駆動輪を個別に回転駆動する。モータ式車両駆動装置1は、ハウジング2、モータ3、平行多軸形減速機構4、トルク制限機構5、駆動輪6などにより構成されている。
【0019】
図1に示されるように、ハウジング2は、車幅方向内側のモータハウジング21および外側のギアハウジング25で構成されている。両ハウジング21、25は図示しないボルトにより、車幅方向に並んで結合されている。モータハウジング21の車幅方向内側面には上下一対のストラット連結部23が一体形成されている。モータハウジング21の下側のストラット連結部23の下方には、紙面に並行して配置された前後一対のロアアーム連結部24(一方のみ図示)が一体形成されている。ストラット連結部23は、車体側のストラット91の下端に連結され、ロアアーム連結部24は、車体側のロアアーム92の外端に連結されている。ストラット91およびロアアーム92により、モータ式車両駆動装置1全体がサスペンション装置を介して車体に相対変位可能に連結されている。
【0020】
モータ3は、モータハウジング21内に配置され、ロータ31およびステータ35を主にして構成されている。詳述すると、モータハウジング21内に車幅方向に延びる軸線AX上にロータ軸32が配設されている。ロータ軸32の縮径された内側端(図中の右端)321は、モータハウジング21側のベアリング22に回転可能に支承され、ロータ軸32の縮径された外側端(図中の左端)は、後述するスピンドル軸41の右端に回転可能に支承されている。ロータ軸32の車幅方向内側寄りの外周には、後に詳述するトルク制限機構5が配設されている。トルク制限機構5は、円環状をなすロータハブ33の内周部331をロータ軸32に圧接している。ロータハブ33の外周は、折り曲げられて車幅方向内向きに延びる筒部332となり、筒部332の外周に永久磁石を有するロータコア34が配設されている。ロータハブ33およびロータコア34でロータ31が構成されており、ロータハブ33がモータ3の出力軸に相当する。
【0021】
一方、モータハウジング21の内周面には、ロータ31の周囲を取り囲むように、所定間隙を介して円環状のステータ35が配設されている。詳細は説明しないが、ステータ35は、円環状のステータコアと、ステータコアに巻回されて周方向に列設された多数のステータコイルとから構成されている。各ステータコイルは、ケーブルを介して図略の電源装置に接続されて通電され、回転磁界を生成する。
【0022】
平行多軸形減速機構4は、ギアハウジング25内に配置され、ロータ軸32から入力される駆動トルクを減速し、駆動輪6のホイール64に固定されたホイール軸でもあるスピンドル軸41から出力する機構である。詳述すると、ギアハウジング25内のロータ軸32の車幅方向外側に、軸線AXを共通にしてスピンドル軸41が配設されている。スピンドル軸41は、ギアハウジング25側のベアリング26により回転可能に支承されている。スピンドル軸41の車幅方向内側の端部は、ロータ軸32の外側端を回転可能に支承している(詳細は図2を参考にして後述)。これにより、ロータ軸32およびスピンドル軸41は、ハウジング2に対して回転可能に支承され、かつ互いに相対回転可能となっている。
【0023】
また、ギアハウジング25内において、ロータ軸32およびスピンドル軸41に離隔して平行するようにカウンター軸42が配設されている。カウンター軸42の車幅方向外側端および内側端はそれぞれ、ギアハウジング25側のベアリング27、28により回転可能に支承されている。
【0024】
ロータ軸32にはロータギア(第1駆動ギヤ)43が一体形成され、カウンター軸42にはロータギア43よりも歯数が多い第1カウンターギア(第1従動ギヤ)44が一体形成されている。ロータギア43と第1カウンターギア44とは噛合しており、減速機能を有する。また、カウンター軸24の第1カウンターギア44よりも車幅方向外側に第2カウンターギア(第2駆動ギヤ)45が一体形成され、スピンドル軸41には第2カウンターギア35よりも歯数が多いスピンドルギア(第2従動ギヤ)46が一体形成されている。第2カウンターギア45とスピンドルギア46とは噛合しており、減速機能を有する。したがって、モータ3から出力された駆動トルクは、ロータギア43から第1カウンターギア44を経て、第2カウンターギア45からスピンドルギアへと伝達され、減速される。また、平行多軸形減速機構4の総合減速比は、2箇所の減速機能における減速比の積で求められる。
【0025】
スピンドル軸41のギアハウジング25から車幅方向外側に突出した部分の外周には、ホイールハブ61が外嵌されている。ホイールハブ61は、内向き(図中の右向き)に開口する有底二重円筒状をなし、ドーナツ状の内部空間に油圧式のドラムブレーキ62が内蔵されている。また、ホイールハブ61は、有底二重円筒の環状の底面から車幅方向外向きに突出する固定ボルト63を有している。
【0026】
駆動輪6は、スピンドル軸41の外周に固定配設されて、スピンドル軸41と一体的に回転する。駆動輪6は、ホイール64およびタイヤ67を主にして構成されている。ホイール64は、円環状のホイールディスク65と、ホイールディスク65の外周に設けられた筒状のリム部66で構成されている。さらに、リム部66の外周にタイヤ67が配設されて駆動輪6が構成されている。ホイールディスク65は、ホイールハブ61の固定ボルト63に嵌入する取り付け孔68を有している。ホイールディスク65の取り付け孔68を固定ボルト63に嵌入させたのち、固定ボルト63にナット69を螺合させることで、ホイール64をホイールハブ61に取り付けられるようになっている。
【0027】
図2は、図1中のロータ軸32およびトルク制限機構5の詳細を示す断面図である。図示されるように、中空のロータ軸32の縮径された内側端321は、モータハウジング21側のベアリング22に回転可能に支承され、ロータ軸32の縮径された外側端322は、スピンドル軸41の車幅方向内側の内周側に配設されたベアリング411に回転可能に支承されている。ロータ軸32の内側寄りの外周に、軸線AXを中心として概ね軸対称のトルク制限機構5が配設されている。
【0028】
トルク制限機構5は、ロータ軸32側の支持フランジ51、2枚のライニング材52、53、圧接部材54、2枚一対の皿ばね55、56、回り止めリング57、押さえリング58などで構成されている。ロータ軸32の車幅方向中間よりもやや内側寄りに、径方向外向きに延在するように支持フランジ51が一体形成されている。ロータ軸32の支持フランジ51の車幅方向内側は、段差を有して縮径され、縮径された外周面の軸線AX方向の途中にスプライン溝323が形成されている。さらに、スプライン溝323の内側端部の外周面に雄ねじ324が螺設されている。
【0029】
ロータ軸32の支持フランジ51の車幅方向内側にはロータハブ33の内周部331が配置され、内周部331を挟み込んで2枚の円環状のライニング材52、53が配置されている、内側(図中の右側)のライニング材53のさらに内側に、圧接部材54が配置されている。圧接部材54は、ライニング材53に摺接する環状板部541と、環状板部541の外周縁から軸線AX方向内向きに延びる筒状部542とで形成されている。環状板部541の内側(図中の右側)で筒状部542とスプライン溝323との間に、2枚一対の円環状の皿ばね55、56が向かい合って配置されている。内側の皿ばね56のさらに内側に回り止めリング57が配置されている。回り止めリング57は、スプライン溝323に嵌合しており、軸線AX方向への移動はできるが、ロータ軸32に対して相対回転できないようになっている。回り止めリング57の内側に、雄ねじ324と螺合して押さえリング58が配置される。
【0030】
ここで、押さえリング58を雄ねじ324に対して締め込んでゆくと、押さえリング58は回り止めリング57を車幅方向外側に押し込む。この回り止めリング57の変位により、一対の皿ばね55、56が付勢される。これにより、2枚のライニング材52、53を介して、ロータハブ33の内周部331が支持フランジ51に圧接される。ライニング材52、53は、摺動摩擦抵抗の大きさを安定化する機能を有している。したがって、押さえリング58の雄ねじ324への締め込み位置を調整することにより、皿ばね55、56の変形量すなわち付勢力を調整できる。これにより、ロータハブ33とロータ軸32とがすべり始める(相対回転を始める)所定トルクを自在に設定できる。所定トルクの大きさは、モータ3から出力される最大駆動トルクに基づいて適宜定める。押さえリング58の締め込み位置の調整を行った後に、ねじ59を用いて押さえリング58を回り止めリング57に固定し、調整した所定トルクを安定化する。なお、トルク制限機構5にトルク伝達の方向依存性はなく、ロータハブ33からロータ軸32へのトルク伝達および逆方向のトルク伝達で所定トルクは概ね同じ値になる。
【0031】
本第1実施形態では、トルク制限機構5は、ロータハブ33とロータ軸32との間に組み込まれており、換言すればモータ3の出力軸と第1駆動ギヤとの間に組み込まれている。
【0032】
第1実施形態のモータ式車両駆動装置1では、トルク制限機構5は、伝達トルクが所定トルクに達するまで、ロータハブ33とロータ軸32との直結状態を維持して一体的に回転させる。そして、伝達トルクが所定トルクを超過すると、ロータハブ33とロータ軸32との間ですべりが発生して互いに相対回転し、伝達トルクを制限するようになっている。したがって、タイヤ67側からの衝撃的な入力やドラムブレーキ62による急制動などにより所定トルクを越える過大な外来トルクがスピンドル軸41に伝達されても、トルク制限機構5の作用により駆動装置1内部には所定トルクを大幅に超える過大な応力は発生しない。
【0033】
このため、駆動装置1内部で過大な強度を確保する必要がなくなり、スピンドル軸41やカウンター軸42、ロータ軸32、さらには各ギヤ43〜46などの諸部材を小形軽量化できる。この効果は、例えばハウジング2やベアリング22、26、27、28、411の小形軽量化など、駆動装置1全体に波及する。したがって、強度安全率を低下させることなく、従来よりも小形軽量化したモータ式車両駆動装置1を実現できる。また、駆動装置1の軽量化によりストラット91およびロアアーム92に支持されるバネ下荷重が低減されるので、車両の操作安定性の向上に寄与できる。
【0034】
例えば、トルク制限機構5を備えない従来のモータ式車両駆動装置では、モータから出力される最大駆動トルクの10倍程度の外来トルクを考慮した強度を確保していた。これに対して、本第1実施形態で所定トルクを最大駆動トルクの1.2倍程度に設定すれば確実にモータ3で駆動輪6を駆動でき、一方、最大駆動トルクの2.5倍程度の外来トルクに対する強度を確保すれば強度安全率は十分である。したがって、考慮すべき外来トルクが従来の(1/4)程度になって、格段の小形軽量化を実現できる。
【0035】
なお、トルク制限機構5の配置には自由度があり、上述の実施形態に限定されず、モータ7の出力軸72と第1駆動ギヤ43との間、カウンター軸42と第1従動ギヤ44または第2駆動ギヤ45との間、および第2従動ギヤ46とホイール軸41との間の少なくとも一つの位置に組み込むことができる。例えば、ロータハブ33とロータ軸32とを一体的に結合し、平行多軸形減速機構4のスピンドルギア(第2従動ギヤ)46とスピンドル軸(ホイール軸)41との間にトルク制限機構を組み込むようにしてもよい。ただし、平行多軸形減速機構4の出力側にトルク制限機構を配置する構成では、入力側配置のトルク制限機構5と比較して減速比の逆数倍の駆動トルクを考慮することになる。しかし、車輪6側から伝達されるトルクは増大されることがない。
【0036】
次に、減速機構の構造が異なる第2実施形態のモータ式車両駆動装置について、図3および図4を参考にして説明する。図3は、第2実施形態のモータ式車両駆動装置の全体構成を後方から見た断面図である。図中で、左方が車体側、右方がタイヤ側になっている。第2実施形態のモータ式車両駆動装置10は、電気自動車の左右の駆動輪にそれぞれ設けられて、各駆動輪を個別に回転駆動する。モータ式車両駆動装置10は、モータ7、プラネタリギヤ形減速機構8、トルク制限機構50、駆動輪60などにより、車幅方向に延びる軸線AYを中心にして概ね軸対称に構成されている。
【0037】
図示されるように、モータ7は大きく分けて、ステータ75が配設されたステータ部76と、ロータ71が配設されたロータ部72とにより構成されている。ロータ部72は、モータ7の出力軸に相当する。ステータ部76は、ホイール64内に収まる大きさと形状で、車体側にナックル(図示省略)やロアアームブラケット(図示省略)を介して支持されている。ステータ部76の車幅方向内側を向いた側面は円板状のステータ部基部761となっている。ステータ部基部761の径方向外側の周縁部には、車幅方向外向きに円筒状のステータ部周面部762が一体形成されている。ステータ部周面部762の径方向内側には、ロータ部72のロータ71がステータ部76に対して回転可能に配設されている。ロータ71は、円筒状となっており、ステータ部周面部762の内周側に離隔して収まっている。
【0038】
ロータ71の径方向内側の面に離隔して対向するように、円筒状のステータ75が配設されている。ステータ75は、ステータ部基部761の径方向外寄りから車幅方向外向きに延びるように一体形成された円筒状のステータ支持部763の外周面に支持されている。ステータ支持部763の径方向内側に離隔して、ロータ部72のロータ支持円筒部721が配設されている。ロータ支持円筒部721の車幅方向外側の部分は、径方向外向きに折り曲げられてロータ71を保持するロータ保持部722が一体形成されている。
【0039】
ロータ支持円筒部721の車幅方向内側の部分は、径方向内向きに折り曲げられて円環状のロータ支持部基部723が一体形成されている。ロータ支持部基部723の内周部724の内側に、ロータ軸79が貫設されている。ロータ支持部基部723の内周部724とロータ軸79との間に、トルク制限機構50が配設されている。ロータ軸79は、ベアリング791によりステータ部基部761に回転可能に支承され、ベアリング792によりホイールハブ89と相対回転できるようになっている。ロータ軸79の車幅方向内側端部には、フットブレーキおよびパーキングブレーキを兼用するドラムブレーキのドラム793が配設されている。また、ロータ支持部基部723の車幅方向外側には、ロータ部72とホイールハブ89との間を所定の減速比で接続するプラネタリギヤ形減速機構8が配設されている。
【0040】
一方、ステータ部周面部762の車幅方向外側の部分は径方向内向きに折り曲げられて、ロータ部72のロータ保持部722と離隔して対面する円環状のステータ部外側面部764が一体形成されている。ステータ部外側面部764の径方向内側の端部には、ハブベアリング77を支持するステータ部側ハブベアリング支持部765が一体形成されている。ステータ部76は、ハブベアリング77の内側に、略軸形状のホイールハブ89を回転可能に支承している。
【0041】
プラネタリギヤ形減速機構8は、入力要素となるサンギヤ81、固定要素となるリングギヤ83、およびプラネタリギヤを82支承して出力要素となるプラネタリキャリア84を有する周知の減速機構である。サンギヤ81は、ロータ軸79のトルク制限機構50よりも車幅方向外側の外周面に刻設されている。複数のプラネタリギヤ82は、サンギヤ81の周りに配設され、サンギヤ81に噛合して公転するようになっている。リングギヤ83は、複数のプラネタリギヤ82に噛合するようにプラネタリギヤ82の外側に配設され、かつギヤケース85に保持(固定)されている。ギヤケース85は、ステータ部76側のハブベアリング支持部765に固定支持されている。プラネタリキャリア84は、複数のプラネタリギヤ82の軸を支承して配設されている。プラネタリキャリア84は、その車幅方向外側のホイールハブ89と一体形成されている。ホイールハブ89は駆動輪60のホイール64に固定されてホイール軸をなしている。プラネタリギヤ形減速機構8の減速比は、各ギヤ81、82、83の歯数を設定することで適宜定められる。
【0042】
駆動輪60は、ホイールハブ89の車幅方向外側に一体的に配設され、ホイール64およびタイヤ67を主にして構成されている。詳述すると、ホイールハブ89の車幅方向外側に、ホイール64を形成する円盤状のホイールディスク65が固設されている。ホイールディスク65の外周には筒状のリム部66が形成され、リム部66の外周にタイヤ67が配設されて駆動輪60が構成されている。
【0043】
図4は、図3中のロータ軸79およびトルク制限機構50の詳細を示す断面図である。図示されるように、トルク制限機構50の構成は第1実施形態のトルク制限機構5と同一で、図2と比較して左右が反転している。また、トルク制限機構50は、ロータ支持部基部723の内周部724とロータ軸79とがすべり始める(相対回転を始める)所定トルクを自在に設定できる。
【0044】
第2実施形態のモータ式車両駆動装置10における作用および効果は、プラネタリギヤ形減速機構8の減速メカニズムが異なる点を除いて第1実施形態と概ね同様であるので、説明は省略する。
【0045】
なお、トルク制限機構50の配置には自由度があり、モータ7の出力軸であるロータ部72とプラネタリギヤ形減速機構8との間、プラネタリギヤ形減速機構8内、およびプラネタリギヤ形減速機構8とホイール軸41との間の少なくとも一つの位置に組み込むことができる。例えば、ロータ部72とロータ軸79とを一体的に結合し、プラネタリキャリア84と駆動輪60のホイール64に固定されたホイール軸をなすホイールハブ89とを別部材としてその間にトルク制限機構を組み込むようにしてもよい。ただし、プラネタリギヤ形減速機構8の出力側にトルク制限機構を配置する構成では、入力側配置のトルク制限機構50と比較して減速比の逆数倍のトルクを考慮することになる。しかし、車輪6側から伝達されるトルクは増大されることがない。
【0046】
次に、第1および第2実施形態のモータ式車両駆動装置1、10に共通に応用できるトルク制限機構を2種類説明する。図5は、本発明のトルク制限機構に用いることができるトルクリミッター9の一部断面斜視図である。トルクリミッター9は、駆動軸91と従動フランジ92との間の駆動トルクの伝達を制限する機構である。トルクリミッター9は、駆動軸91および従動フランジ92の他に、調整ナット931、板ばね932、スイッチリング933、および鋼球934などで構成されており、次に詳述する。
【0047】
駆動軸91は、図示されるように筒状の部材であり、軸方向の一端面(図中の左前側)に取り付けねじ孔(図には見えていない)を有し、さらに一端面から筒状の内周に向かって徐々に内径が減少するテーパブッシュ911を有している。取り付けねじ孔とテーパブッシュ911を用いて、駆動トルクを入力する任意の軸体919を駆動軸91に結合することができる。駆動軸91の一端面側の外周には雄ねじ912が刻設されて、調整ナット931が螺着されている。駆動軸91の軸方向の中間付近の外周には、径方向に突出する環状ハブ913が設けられている。環状ハブ913の外周面には、軸線方向から見て略V字状の凹部914が複数個形成されている。各凹部914には、鋼球934が嵌入配置されている。
【0048】
従動フランジ92は、駆動トルクを出力する略環状の部材であり、駆動軸91の外周に環状ハブ913と隣接して配設されている。従動フランジ92は、駆動軸91に対して軸線方向への移動はできず、相対回転は可能とされている。従動フランジ92の環状ハブ913に対向する面には、径方向から見て略V字状で鋼球934が嵌入できる凹部921が複数個形成されている。
【0049】
調整ナット931は略環状で、内周面に雌ねじ93Aが刻設されている。調整ナット931の外周側は、一端面側(図中の左前側)で外径が大きく、テーパ部93Bを挟んで、他端面側(図中の右奥側)に小径部93Cが形成されている。調整ナット931の小径部93Cの外側に、略環状の板ばね932が配設されている。板ばね932の他端面側に、スイッチリング933が配設されている。スイッチリング933は略環状で、内周側は一端面側(図中の左前側)が小さな内径の小径部93D、他端面側(図中の右奥側)が大きな内径の大径部93Eとなっている。スイッチリング933の大径部93Eと、駆動軸91の環状ハブ913の凹部914との間で鋼球934を径方向に保持できるようになっている。また、スイッチリング933の小径部93Dと、従動フランジ92の凹部921との間で鋼球934を軸線方向に保持できるようになっている。
【0050】
ここで、調整ナット931を駆動軸91の雄ねじ912に対して締め込んでゆくと、調整ナット931のテーパ部93Bは板ばね932を他端面方向(図中の右奥方向)に押し込む。これにより、板ばね932がスイッチリング933を軸線方向に付勢し、スイッチリング933は鋼球934を従動フランジ92の凹部921に嵌入圧接する。したがって、小さな駆動トルクは、駆動軸91の環状ハブ913から鋼球934を経由して従動フランジ92に伝達される。また、駆動トルクが所定トルクを超過すると、鋼球934が板ばね932の付勢力に抗して従動フランジ92の凹部921から逸脱し、駆動軸91と従動フランジ92とがすべって相対回転する。これにより、伝達される駆動トルクを制限できる。なお、トルクリミッター9にトルク伝達の方向依存性はなく、所定トルクの大きさは調整ナット931の締め込み量を調整することにより自在に調整可能である。
【0051】
図5のトルクリミッター9は、例えば次のようにして、第1実施形態に組み込むことができる。すなわち、図2でトルク制限機構5を無くして、トルクリミッター9の駆動軸91をロータ軸32に結合し、従動フランジ92をロータハブ33の内周部331に結合する。トルクリミッター9を組み込んだ態様における作用および効果は、第1実施形態と概ね同様になる。
【0052】
図6は、本発明のトルク制限機構に用いることができる別のトルクリミッター90の一部断面斜視図である。また、図7は、別のトルクリミッター90のトルク制限部97の詳細構造およびその作用を説明する断面図である。別のトルクリミッター90は、2つのフランジ94、95の間で伝達される駆動トルクを制限する機構である。トルクリミッター90は、Aフランジ94およびBフランジ95の他に、外枠96、Aフランジ94側のトルク制限部97、およびBフランジ95側のスラストパッド98で構成されており、次に詳述する。
【0053】
Aフランジ94およびBフランジ95は、図6に示されるように略筒状の部材であり、同一外径寸法部分をもち、軸線を共有している。Aフランジ94およびBフランジ95の同一外径寸法部分には、筒状の外枠96が外嵌されている。外枠96に対して、Aフランジ94は固定され、Bフランジ95は軸線方向への移動はできず相対回転は可能とされている。
【0054】
トルク制限部97は、Aフランジ94の外周に等角度間隔で複数個設けられている。トルク制限部97は、図6および図7に示されるように、外筒部97A、キャリアロッド97B、鋼球97G、中間エレメント97H、スラストワッシャ97I、および複数の皿ばね97Jで構成されている。外筒部97Aは軸線方向に配置され、その中心にキャリアロッド97Bを軸線方向に移動可能に保持している。キャリアロッド97Bは、Bフランジ95に対向する一端側(図7の左側)が太い大径部97Cで、途中に段差部97Dを有し、他端側(図7の右側)が細い小径部97Eになっている。キャリアロッド97Bの大径部97Cの先端には、球状空間を有する鋼球保持部97Fが設けられ、鋼球保持部97F内に鋼球97Gが回転可能に収容されている。
【0055】
キャリアロッド97Bの段差部97Dと外筒部97Aとの間に、楔状の中間エレメント97Hが周方向に複数個配置されている。中間エレメント97Hは、中心側が肉厚で外側が肉薄の略台形断面形状になっている。さらに、キャリアロッド97Bの小径部97Eと外筒部97Aとの間に、略環状のスラストワッシャ97Iおよび略環状の複数の皿ばね97Jが配置されている。スラストワッシャ97Iは、中心側が肉薄で外側が肉厚の略台形断面形状になっており、中間エレメント97Hとテーパ面同士で摺接している。略環状の複数の皿ばね97Jは軸線方向に列設されており、他端側が外筒部97Aによって支持され、一端側がスラストワッシャ97Iを付勢している。この付勢力は、中間エレメント97Hからキャリアロッド97Bの段差部97Dに伝わり、キャリアロッド97BはBフランジ95に向けて付勢されている。
【0056】
一方、Bフランジ95のAフランジ94に対向する面には、スラストパッド98が等角度間隔で複数個設けられている。スラストパッド98は、トルク制限部97のキャリアロッド97Bの先端の鋼球97Gが圧接する凹部98Aを有している。
【0057】
図7で、(1)は駆動トルクを伝達している状態、(2)は駆動トルクを伝達しない状態をそれぞれ示している。図7(1)に示されるように、付勢されたキャリアロッド97Bの先端の鋼球97Gは、Aフランジ94から突出してBフランジ95のスラストパッド98の凹部98Aに圧接している。したがって、小さな駆動トルクは、鋼球97Gを介して、Aフランジ94とBフランジ95の間で伝達される。ここで、駆動トルクが増加すると、鋼球97Gがキャリアロッド97Bを他端側(図7の右向き矢印Z)に押圧する力が大きくなる。そして、伝達トルクが所定トルクを超過すると、キャリアロッド97Bが皿ばね97Jの付勢力に抗して矢印Z方向に微動しつつ、中間エレメント97Hを径方向外向きに変位させる。これにより、皿ばね97Jの付勢力がキャリアロッド97Bに作用しなくなって、駆動トルクを伝達しないフリー状態となる。なお、トルクリミッター90にトルク伝達の方向依存性はなく、所定トルクの大きさは皿ばね97Jの強度や列設個数、スラストパッド98の凹部98Aの形状などを変更することにより調整可能である。また、フリー状態は、Aフランジ94とBフランジ95の回転数差を検出し、図略の復帰機構を動作させることにより解消できる。
【0058】
図6および図7で説明したトルクリミッター90は、例えば次のようにして、第2実施形態に組み込むことができる。すなわち、トルク制限機構50を無くしてロータ部72とロータ軸79とを一体的に結合し、プラネタリキャリア84とホイールハブ89とを別部材とし、プラネタリキャリア84をトルクリミッター90のAフランジ94に結合し、ホイールハブ89をBフランジ95に結合する。トルクリミッター90を組み込んだ態様における作用および効果は、第2実施形態と概ね同様になる。
【0059】
第1および第2実施形態において、トルク制限機構(5または50)の配置には自由度があり、モータ7の出力軸72に回転連結され駆動輪6のホイール64に固定されたホイール軸41に動力伝達する動力伝達経路の途中に配設すればよい。そして、モータ7の出力軸72とホイール軸41との間に減速機構(4または8)を備える場合は、トルク制限機構(5または50)はモータ7の出力軸72と減速機構(4または8)との間、減速機構(4または8)内、および減速機構(4または8)とホイール軸(41または89)との間の少なくとも一つの位置に組み込むことができる。
【0060】
なお、第1実施形態では平行多軸形減速機構4、第2実施形態ではプラネタリギヤ形減速機構8を備えているが、本発明は減速機構の形式を限定しない。例えば、サイクロイド形減速機構やハーモニック形減速機構を備えるモータ式車両駆動装置でも、本発明を実施できる。さらには、上述したトルク制限機構5、50やトルクリミッター9、90以外の方式のトルク制限機構を用いることもできる。本発明は、その他さまざまな応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1、10:モータ式車両駆動装置
2:ハウジング 21:モータハウジング 25:ギアハウジング
3:モータ 31:ロータ 32:ロータ軸 33:ロータハブ(出力軸)
34:ロータコア 35:ステータ
4:平行多軸形減速機構 41:スピンドル軸(ホイール軸) 42:カウンター軸
43:ロータギア(第1駆動ギヤ)
44:第1カウンターギア(第1従動ギヤ)
45:第2カウンターギア(第2駆動ギヤ)
46:スピンドルギア(第2従動ギヤ)
5、50:トルク制限機構 51:支持フランジ 52、53:ライニング材
54:圧接部材 55、56皿ばね 57:回り止めリング
58:押さえリング
6、60:駆動輪 61:ホイールハブ 62:ドラムブレーキ
64:ホイール 67:タイヤ
7:モータ 71:ロータ 72:ロータ部(出力軸)
75:ステータ 76:ステータ部 79:ロータ軸
8:プラネタリギヤ形減速機構 81:サンギヤ 82:プラネタリギヤ
83:リングギヤ 84:プラネタリキャリア 85:ギヤケース
89:ホイールハブ(ホイール軸)
9:トルクリミッター(トルク制限機構)
91:駆動軸 92:従動フランジ 931:調整ナット
932:板ばね 933:スイッチリング 934:鋼球
90:別のトルクリミッター(トルク制限機構)
94:Aフランジ 95:Bフランジ 96:外枠
97:トルク制限部 98:スラストパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤおよびホイールを有する駆動輪と、
前記駆動輪の前記ホイールの内側に配設され、前記ホイールを回転駆動する駆動トルクを出力する出力軸を有するモータと、
前記モータの前記出力軸に回転連結され前記駆動輪の前記ホイールに固定されたホイール軸と、
前記モータの前記出力軸から前記ホイール軸に動力伝達する動力伝達経路に配設され、伝達トルクが所定トルクに達するまでは連結状態を維持し、前記所定トルクを超過するとすべりを発生して伝達トルクを制限するトルク制限機構と、
を備えることを特徴とするモータ式車両駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記モータの前記出力軸と前記ホイール軸との間に減速機構を備え、前記トルク制限機構は前記モータの出力軸と前記減速機構との間、前記減速機構内、および前記減速機構と前記ホイール軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とするモータ式車両駆動装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記減速機構は平行多軸形減速機構であって、前記モータの前記出力軸に平行配置されたカウンター軸と、前記モータの前記出力軸に設けられた第1駆動ギヤと、前記カウンター軸に設けられて前記第1駆動ギヤに噛合しかつ前記第1駆動ギヤよりも歯数が多い第1従動ギヤと、前記カウンター軸に設けられた第2駆動ギヤと、前記ホイール軸に設けられて前記第2駆動ギヤに噛合しかつ前記第2駆動ギヤよりも歯数が多い第2従動ギヤとを有し、
前記トルク制限機構は、前記モータの前記出力軸と前記第1駆動ギヤとの間、前記カウンター軸と前記第1従動ギヤまたは前記第2駆動ギヤとの間、および前記第2従動ギヤと前記ホイール軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とするモータ式車両駆動装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記減速機構はプラネタリギヤ形減速機構であって、前記モータの前記出力軸に連結されたサンギヤと、前記ギヤケースに固定されたリングギヤと、前記サンギヤおよび前記リングギヤに噛合するプラネタリギヤを支承し前記ホイール軸に連結されたプラネタリキャリアとを有し、
前記トルク制限機構は、前記モータの前記出力軸と前記サンギヤとの間、ならびに前記プラネタリキャリアと前記ホイール軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とするモータ式車両駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192766(P2012−192766A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56441(P2011−56441)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】