説明

モータ装置並びにこれを搭載した車両又はアクチュエータ

【課題】2つのモータを軸心を一致させて組み込むことを容易にする。
【解決手段】モータハウジング41a、41bと、これらのモータハウジング41a、41bの端部に取着されるフロントカバー部42a、42b及びエンドカバー部43a、43bと、これらのカバー部42a、42b、43a、43bに設けられてモータ軸46を支持するベアリング44a、44b、45a、45bとを具備する一対のモータMa、Mbを、エンドカバー部43a、43b同士を重合させた背合わせの状態に配置して、各モータハウジング41a、41bから突出したモータ軸46a、46bの端部を出力端として使用するように構成する。そして、一対のエンドカバー部43a、43bを共通の部材に一体的に作り込んで接続体15を構成し、この接続体15に、各々のエンドカバー部43a、43bが備えるべきベアリング45a、45bを一体的に設けることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の産業機械に利用可能な、モータ装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、フォークリフトを構成するモータ駆動系に着目すると、図5に示すように、左右の車輪105の車軸(アクスル)106がステアリングアクスル103に収納され、このステアリングアクスル103にディファレンシャルギヤ102が接続されて、このディファレンシャルギヤ102にモータ104から動力を入力するように構成されるのが通例である。そして、操舵時にディファレンシャルギヤ102において左右の車軸106が受ける負荷に応じた動力分配を行い、所要の旋回性能等を実現している。この点において、フォークリフトの駆動系は一般的な車両と大きく異なるところはない。
【0003】
ところで、フォークリフト等には一般車両にはない小回りが要求され、極力小さい旋回半径が求められる。この場合、ディファレンシャルギヤ102の動作は、操舵時の負荷を利用した差動的、従動的なものであるため、実現できる旋回半径には自ずと限界がある。
【0004】
そこで、積極的に旋回半径を追求すべく、例えば特許文献1や図6に示すように、左右の車軸202を切り離して、個々のモータM1・M2によって逆回転制御も可能なように構成したものが考えられている。
【特許文献1】特開2000−318995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる特許文献1や図6の場合に、車軸と一体となったモータ軸202や図示しない軸受等の要素部品をモータハウジング内に一体的に組み込んだ単体モータを2つ用いて個別に車体フレームに取り付けると、取付誤差等によって左右のモータ軸202の軸心がずれる可能性があり、モータ軸202のズレは不必要な負荷を生じさせ、走行性能の低下や運転効率の低下を招くとともに、耐久性能の低下にもつながる。そして、このような不具合を可及的に回避するためには、個々のモータM1・M2の双方に厳しい取付条件が要求されることとなる。
このような事情は、フォークリフト等の乗用車両に限らず、鉄道車両やロボット、工作機械のターンテーブル等においても同様である。
【0006】
本発明は、このように2つのモータを背合わせに配置することが要求される目的・用途に好適に適合し得る構造を備えたモータ装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明のモータ装置は、モータハウジングと、このモータハウジングの端部に取着されるフロントカバー部及びエンドカバー部と、これらのカバー部に設けられてモータ軸を支持する軸受とを具備する一対のモータを、エンドカバー部同士を重合させた背合わせの状態に配置して、各モータハウジングから突出したモータ軸の端部を出力端として使用するものであって、前記一対のエンドカバー部を共通の部材に一体的に作り込んで接続体を構成し、この接続体に、各々のエンドカバー部が備えるべき軸受を一体的に設けたことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、モータハウジング間が接続体によって位置決め状態で連結されて構造躯体となり、また、接続体上に各エンドカバー部が備えるべき軸受を配置することで軸受同士の位置決めもなされる。このため、モータハウジング同士の組付けが容易となり、モータ軸の相対的な位置決めも的確に行うことが可能になるとともに、部品の共用化による部品点数の削減、コストダウン、小型化にも資することとなる。ここに言うモータ軸の相対的な位置決めとは、必ずしも軸心を一致させる場合に限らず、例えば軸心同士がハの字状に角度をなしている態様等も含まれる。
【0010】
モータハウジング同士の位置決め精度と連結強度の双方を向上させるためには、接続体のエンドカバー部が、モータハウジングに位置決め状態で嵌合する嵌合部を有していることが望ましい。
【0011】
モータハウジング同士の連結強度を更に高めるためには、モータハウジングの外周に、隣接するモータハウジングの外周との間を引き寄せて緊締する緊締部を更に有することが好ましい。
【0012】
モータ同士の連結方向に沿った寸法管理を容易にするためには、モータハウジングの端部に、嵌合状態でエンドカバー部の一部を当接させるスラスト面を形成し、当接状態でモータハウジングの外周間に緊締しろとなるクリアランスが存在する寸法関係に設定していることが望ましい。
【0013】
上記の構成は、モータ軸は2つのモータハウジングを貫通する単一のものである場合、或いは2つのモータ軸が一体的に連結されている場合を含むものであるが、本発明は、各モータがそれぞれ別個にモータ軸を備え、ハウジングから突出したモータ軸の出力端が独立駆動可能とされている場合に特に有効となる。
【0014】
このようなモータ装置を効率良く利用して車両をするためには、一対のモータハウジングを連結状態で車輪の間に構造躯体の一部を構成するように配置することが望ましい。
【0015】
また、このようなモータ装置を効率良く利用してアクチュエータを構成するためには、一対のモータハウジングを連結状態で駆動対象物の間に構造躯体の一部を構成するように配置することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明した構成であるから、一対のモータを背合わせに配置して使用するにあたり、それらのエンドカバー部及び一部の軸受を接続体に一体的に構成することで、少なくともモータ軸を精度良く簡単に位置決めした状態で一対のモータを合理的に組付けることができ、これにより厳しい取付条件を要求されることなく、所要の性能や耐久性等を有効に担保するとともに、モータの長さ管理や小型化、コストダウンをも図れるようにした、新規有用なモータ装置等を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1に本実施形態のモータ装置を適用したフォークリフトの原理図を示し、図2に同モータ装置の概念的な断面図を示す。
【0019】
このモータ装置は、図1に示すように、左右の車輪5a、5bの間に第1のモータMaおよび第2のモータMbを背合わせに連ねて配置し、各々のモータMa,Mbから突出した図2に示すモータ軸46a、46bを出力端として、これらのモータ軸46a、46bを図1に示すステアリングアクスル6a、6bに格納しつつ車輪5a、5bに接続している。
【0020】
具体的に説明すると、モータMa(Mb)は、軸方向の両端に開口部47a1、47a2(47b1、47b2)を有した概略円筒状をなすモータハウジング41a(41b)と、これらのモータハウジング41a(41b)の軸方向両端に位置する前記開口部47a1、47a2(47b1、47b2)に取着されるフロントカバー部42a(42b)及びエンドカバー部43a(43b)と、これらのカバー部42a、43a(42b、43b)に設けられるモータ軸用の軸受たるベアリング44a、45a(44b、45b)と、両ベアリング44a、45a(44b、45b)に支持されるモータ軸46a(46b)とを具備し、フロントカバー部42a(42b)からモータ軸46a(46b)が突出して出力端とされる。両モータハウジング41a(41b)内には、例えば、ベアリング44a、45a間(44b、45b間)にモータ軸46a(46b)を正逆駆動する図示しない電磁駆動部が組み込まれるなど、他の必要な要素部品も内設されている。
【0021】
この実施形態におけるモータMa(Mb)のフロントカバー部42a(42b)およびエンドカバー部43a(43b)は樹脂により作られたもので、特に本実施形態における両モータMa、Mbのエンドカバー部43a、43bは、共通の樹脂部材に一体的に作り込まれて接続体15を構成している。すなわち、この接続体15は、図3に示すように、第1のモータハウジング41aのエンド側の開口部47a2に印籠構造の下に嵌合する第1の嵌合部48aと、第2のモータハウジング41bのエンド側の開口部47b2に印籠構造の下に嵌合する第2の嵌合部48bとを具備し、第1の嵌合部48aと第2の嵌合部48bとの間に所要の中間肉厚部48cが確保されている。この場合、第1の嵌合部48aと中間肉厚部48cとが第1のエンドカバー部43aに相当し、第2の嵌合部48bと中間肉厚部48cとが第2のエンドカバー部43bに相当している。勿論、中間肉厚部48cを設けなくとも本発明の基本的構成は成立し得る。
【0022】
また、前記接続体15には、図2に示すように、第1のモータMaに属するエンドカバー部43aが備えるべきベアリング45aと、第2のモータMbに属するエンドカバー部43bが備えるべきベアリング45bとが一体的に設けてあり、それらのベアリング45a、45bは、モータ軸46a、46bの軸心を合致させて支持し得る位置関係に設定されている。
【0023】
モータハウジング41a、41bのエンド側の開口部47a2、47b2内には、エンドカバー部43a、43bの嵌合部48a、48bを図3→図4のように嵌合させた際に当該嵌合部48a、48bの先端48a1、48b1を当接させるスラスト面47a3、47b3が形成してあり、その当接状態でモータハウジング41a、41bの外周間に、緊締しろとなる前記中間肉厚部48cの寸法に対応したクリアランスCが存在する寸法関係に設定している
【0024】
そして、モータハウジング41a、41bの外周囲に、径方向に突出するフランジ7a、7bを設け、両フランジ7a、7bをボルト8及びナット9を用いて引き寄せる方向に緊締するようにしており、これらフランジ7a、7b、ボルト8及びナット9が本発明の緊締部Aを構成している。
【0025】
以上のモータ装置は、適宜の制御手段から前記モータハウジング41a、41b内に備わる電磁駆動部に対してトルク制御を行うことによって、負荷に対して差動的な動作を行わせるディファレンシャルギヤとしての作用を営んだり、第1の車輪5aと第2の車輪5bとを逆方向に駆動することによってフォークリフトに可及的に小さい旋回半径を実現すること等が可能となる。
【0026】
なお、モータハウジング41a、41bは、車両のシャーシ等とともに構造躯体の一部となるように組み込まれており、図1に示すアクスルハウジング6a、6bは、フォークリフトの主要構成部であるマスト1の取付先として利用されている。勿論、モータハウジング41a、41bをマスト1の取付先として利用することも可能である。
【0027】
以上のように、本実施形態のモータ装置は、モータハウジング41a、41bと、これらのモータハウジング41a、41bの端部に取着されるフロントカバー部42a、42b及びエンドカバー部43a、43bと、これらのカバー部42a、42b、43a、43bに設けられてモータ軸46を支持するベアリング44a、44b、45a、45bとを具備する一対のモータMa、Mbを、エンドカバー部43a、43b同士を重合させた背合わせの状態に配置して、各モータハウジング41a、41bから突出したモータ軸46a、46bの端部を出力端として使用するようにしたものである。
【0028】
そして、一対のエンドカバー部43a、43bを共通の部材に一体的に作り込んで接続体15を構成し、この接続体15に、各々のエンドカバー部43a、43bが備えるべきベアリング45a、45bを一体的に設けたものである。
【0029】
このように構成すると、モータハウジング41a、41b間が接続体15によって位置決め状態で連結されて構造躯体となり、また、接続体15上に各エンドカバー部43a、43bが備えるべきベアリング45a、45bを配置することでベアリング45a、45b同士の位置決めもなされる。このため、モータハウジング41a、41b同士の組付けが容易となり、モータ軸46a、46bの相対的な位置決めも的確に行うことが可能になるとともに、部品の共用化による部品点数の削減、コストダウン、小型化にも資することとなる。
【0030】
この場合、接続体15のエンドカバー部43a、43bが、モータハウジング41a、41bに位置決め状態で嵌合する嵌合部48a、48bを有しているため、接続体15を介してモータハウジング41a、41b同士の位置決め精度と連結強度を有効に向上させることができる。
【0031】
また、モータハウジング41a、41bの外周に、互いを引き寄せて緊締する緊締部Aを有しており、モータハウジング41a、41b同士を直接連結して1つの塊にするので、連結強度を更に高めることができる。
【0032】
さらに、モータハウジング41a、41bの端部に、嵌合状態でエンドカバー部43a、43bの一部を当接させるスラスト面47a3、47b3を形成し、当接状態でモータハウジング41a、41bの外周間に緊締しろとなるクリアランスCが存在する寸法関係に設定しているので、モータ装置の軸方向寸法に組付誤差を無くして寸法管理を容易にすることができ、またモータハウジング41a、41bの外周間にクリアランスCを設けることにより緊締具Aによる締付け力を適正に導入して、連結強度を更に有効に高めることができる。
【0033】
また、各モータMa、Mbがそれぞれ別個にモータ軸46a、46bを備え、ハウジング41a、41bから突出したモータ軸46a、46bの出力端が独立駆動可能とされているので、モータ軸46a、46bの軸心を適切に合致させた状態で同期駆動、逆駆動など適宜の動作を行わせることができ、ステアリング性能等を有効に向上させることが可能となる。
【0034】
そして、このようなモータ装置を利用する際に、一対のモータハウジング41を連結状態で車輪5a、5aの間に構造躯体の一部として組み込むようにしていているの、車両本体を効率良く構成することが可能となる。
【0035】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態では本発明のモータ装置をフォークリフトに適用した例について説明したが、一般車両や鉄道車両の駆動モータ、ロボットのACサーボモータ、工作機械のターンテーブル駆動モータ等としても有効利用することができる。
【0037】
また、上記のモータ装置を利用し、一対のモータハウジングを連結状態で駆動対象物の間に構造躯体の一部を構成するように配置して各種のアクチュエータとすることも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係るモータ装置を組み込んだフォークリフトの概要を示す模式的な構成図。
【図2】同モータ装置の内部構造を示す模式的な断面図。
【図3】同モータ装置の組立手順を示す要部拡大断面図。
【図4】図3に対応して組立後の状態を示す断面図。
【図5】従来のフォークリフトの概要を示す模式的な構成図。
【図6】従来の不具合を説明するための図。
【符号の説明】
【0039】
15…接続体
41a、41b…モータハウジング
42a、42b…フロントカバー部
43a、43b…エンドカバー部
44a、44b、45a、45b…軸受(ベアリング)
46a、46b…モータ軸
47a3、47b3…スラスト面
48a、48b…嵌合部
A…緊締部
C…クリアランス
Ma、Mb…モータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングと、このモータハウジングの端部に取着されるフロントカバー部及びエンドカバー部と、これらのカバー部に設けられてモータ軸を支持する軸受とを具備する一対のモータを、エンドカバー部同士を重合させた背合わせの状態に配置して、各モータハウジングから突出したモータ軸の端部を出力端として使用するモータ装置であって、前記一対のエンドカバー部を共通の部材に一体的に作り込んで接続体を構成し、この接続体に、各々のエンドカバー部が備えるべき軸受を一体的に設けたことを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
接続体のエンドカバー部が、モータハウジングに位置決め状態で嵌合する嵌合部を有する請求項1記載のモータ装置。
【請求項3】
モータハウジングの外周に、隣接するモータハウジングの外周との間を引き寄せて緊締する緊締部を更に有する請求項2記載のモータ装置。
【請求項4】
モータハウジングの端部に、嵌合状態でエンドカバー部の一部を当接させるスラスト面を形成し、当接状態でモータハウジングの外周間に緊締しろとなるクリアランスが存在する寸法関係に設定している請求項3記載のモータ装置。
【請求項5】
各モータがそれぞれ別個にモータ軸を備え、ハウジングから突出したモータ軸の出力端が独立駆動可能とされている請求項1〜4何れかに記載のモータ装置。
【請求項6】
請求項1〜5何れかに記載のモータ装置を利用したものであって、一対のモータハウジングを連結状態で車輪の間に構造躯体の一部を構成するように配置してなることを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項1〜5何れかに記載のモータ装置を利用したものであって、一対のモータハウジングを連結状態で駆動対象物の間に構造躯体の一部を構成するように配置してなることを特徴とするアクチュエータ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−45875(P2010−45875A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206233(P2008−206233)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】