説明

モータ駆動装置

【課題】モータを適正に動作させることができ、かつ、電流検出用抵抗による電力損失を小さくできるモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ駆動装置1は、直流電源Vccに接続されている制御回路部10と、電流検出経路50を構成する電流検出用抵抗R1及びインダクタL0と、比較器20とを備え、制御回路部10からモータ2に駆動電力を供給する。電流検出用抵抗R1は制御回路部10に接続されており、インダクタL0は電流検出用抵抗R1と直流電源Vccの負電極との間に接続されている。電流検出経路50は、モータ2の駆動電力に応じた検出電圧を検出する。検出電圧と基準電圧との比較結果が比較器20から制御回路部10に出力され、それに応じてモータ2が制御される。電流検出経路50として電流検出用抵抗R1のみが設けられている場合と比較して、インダクタL0の直流分の抵抗値だけ電流検出用抵抗R1の抵抗値を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ駆動装置に関し、特に、モータの過電流を検出できるモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動するモータ駆動装置は、モータに駆動電流を流すモータ駆動回路(インバータ回路)と、モータ駆動回路を制御する制御回路などを備えている。
【0003】
モータに異常状態が発生すると、モータの駆動電流が異常に上昇し、モータ駆動回路のスイッチング素子や駆動コイルなどの部品が破損する可能性がある。このようなモータ駆動回路の部品の破損を防止するため、モータの駆動電流を検出する電流検出用抵抗を備え、モータの過電流を検出できるようにしたモータ駆動装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されているモータ駆動回路は、モータとアース間に挿入された電流検出用抵抗から検出した電圧と基準電圧とを比較器により比較し、モータが過負荷となっていることを検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−9672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されているモータ駆動回路において、モータに比較的大きな駆動電流を流す場合、電流検出用抵抗による電力損失が大きなものとなるという問題がある。また、電流検出用抵抗による電力損失が大きくなると、電流検出用抵抗の発熱量が多くなるという問題がある。
【0007】
電流検出用抵抗による電力損失を低減するためには、電流検出用抵抗の抵抗値を下げ、かつ、これに合わせて、比較器において電流検出用抵抗により検出された検出電圧との比較対象となる基準電圧を低くする必要がある。しかしながら、基準電圧を低くすると、モータの「振れ」や回転ムラなどにより発生するノイズの影響が大きくなる。すなわち、基準電圧を低くすると、比較器が誤動作してモータの過電流が誤検出されやすくなるため、電流検出用抵抗を下げるのには限界がある。
【0008】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、モータを適正に動作させることができ、かつ、電流検出用抵抗による電力損失を小さくできるモータ駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ駆動装置は、直流電源からの電力を用いてモータを駆動制御する制御回路部と、制御回路部と直流電源の負電極との間に配置され、モータに流れる駆動電流に応じた電圧値を検出する電流検出経路と、電流検出経路により検出された検出電圧と予め設定された基準電圧とを比較する比較回路とを備え、電流検出経路は、制御回路部に接続されている抵抗素子と、抵抗素子と直流電源の負電極との間に接続された少なくとも1つのインダクタとを有し、抵抗素子の抵抗値と少なくとも1つのインダクタの直流分の抵抗値との和を電流検出経路の抵抗値として、検出電圧を検出する。
【0010】
好ましくはモータ駆動装置は、直流電源の正電極と負電極との間に配置され、直流電源の電源電圧に重畳するノイズを除去するフィルタ回路をさらに備え、少なくとも1つのインダクタの全部又は一部は、フィルタ回路の一部を構成する。
【0011】
好ましくはフィルタ回路は、少なくとも1つのインダクタに含まれる第1のインダクタと、直流電源の正電極に接続される第2のインダクタと、第1のインダクタの直流電源側の端子と第2のインダクタの直流電源側の端子との間に接続される第1のコンデンサと、第1のインダクタの制御回路部側の端子と第2のインダクタの制御回路部側の端子との間に接続される第2のコンデンサとを有する。
【発明の効果】
【0012】
これらの発明に従うと、電流検出経路は、抵抗素子とインダクタとを有し、抵抗素子の抵抗値とインダクタの直流分の抵抗値との和を電流検出経路の抵抗値として、検出電圧を検出する。したがって、モータを適正に動作させることができ、かつ、抵抗素子による電力損失を小さくできるモータ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の一例に係るモータ駆動装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態の別の例に係るモータ駆動装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】フィルタ回路の変型例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の一例におけるモータ駆動装置について説明する。
【0015】
[実施の形態]
【0016】
図1は、本発明の実施の形態の一例に係るモータ駆動装置1の回路構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示されるモータ駆動装置1は、以下に説明する実施の形態の基礎となるものである。図1に示されるように、モータ駆動装置1は、モータ2に接続されており、モータ2を駆動させる。モータ駆動装置1は、制御回路部10と、電流検出用抵抗(抵抗素子の一例)R1と、インダクタL0と、比較器(比較回路の一例)20とを備えている。
【0018】
制御回路部10は、直流電源Vccに直列に接続されている。直流電源Vccは、例えば、電圧が24Vの直流電力を供給する。制御回路部10は、モータ2に接続されており、直流電源Vccからの電力を用いてモータ2を駆動制御する。電流検出用抵抗R1は、直流電源Vccの負電極側において制御回路部10に接続されている。インダクタL0は、電流検出用抵抗R1と直流電源Vccの負電極との間に接続されている。モータ駆動装置1の回路は、直流電源Vccの負電極とインダクタL0との間で接地されている。
【0019】
比較器20の入力端子の一方(−)は、制御回路部10と電流検出用抵抗R1との間に接続されており、入力端子の他方(+)は、基準電圧源Vddに接続されている。比較器20の出力端子は、制御回路部10に接続されている。
【0020】
制御回路部10は、大まかに、モータ駆動回路11と、モータ制御部12とを有している。モータ駆動回路11は、例えばインバータ回路であり、モータ2に接続されている。モータ制御部12は、モータ駆動回路11を制御することで、直流電源Vccの電力に基づいてモータ駆動回路11からモータ2に駆動電流を供給する。
【0021】
モータ駆動回路11は、例えば、次のような回路構成を有している。すなわち、モータ駆動回路11は、スイッチ素子Q1〜Q4を含んでいる。スイッチ素子Q1及びQ3は、例えばpチャネル型FET(Field Effect Transistor)であり、スイッチ素子Q2及びQ4は、例えばnチャネル型FETである。スイッチ素子Q1〜Q4は、Hブリッジ回路を構成している。スイッチ素子Q1〜Q4のゲート端子の各々はモータ制御部12に接続されている。
【0022】
スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とは、直流電源Vccと電流検出用抵抗R1との間に直列に接続されている。スイッチ素子Q1のドレイン端子は、直流電源Vccに接続されている。スイッチ素子Q1のソース端子は、スイッチ素子Q2のドレイン端子に接続されている。スイッチ素子Q2のソース端子は、電流検出用抵抗R1に接続されている。
【0023】
スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q4とは、直流電源Vccと電流検出用抵抗R1との間に直列に接続されている。すなわち、スイッチ素子Q1,Q2と、スイッチ素子Q3,Q4とは、互いに並列に、直流電源Vccと電流検出用抵抗R1との間に接続されている。スイッチ素子Q3のドレイン端子は、直流電源Vccに接続されている。スイッチ素子Q3のソース端子は、スイッチ素子Q4のドレイン端子に接続されている。スイッチ素子Q4のソース端子は、電流検出用抵抗R1に接続されている。
【0024】
モータ2の一方の端部2aは、スイッチ素子Q1のソース端子とスイッチ素子Q2のドレイン端子との間に接続されている。モータ2の他方の端部2bは、スイッチ素子Q3のソース端子とスイッチ素子Q4のドレイン端子との間に接続されている。
【0025】
モータ制御部12は、目標とするトルクなどに応じてパルス幅変調(PWM)された駆動信号を生成し、モータ駆動回路11に対して出力する。駆動信号は、スイッチ素子Q1〜Q4のそれぞれのゲート端子に入力される。これにより、駆動信号に応じてスイッチ素子Q1〜Q4がオンオフする。
【0026】
モータ制御部12は、次のようにモータ駆動回路11を制御して、モータ2を駆動する駆動電流の向きを切り替えたり、モータ2をPWM制御により駆動させたりする。すなわち、モータ制御部12は、スイッチ素子Q1及びQ3を、交互に相補的にオンオフさせる。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2との通電状態は常に互いに逆になり、スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q4との通電状態は常に互いに逆になる。スイッチ素子Q1がオンであり、スイッチ素子Q2がオフである場合、モータ2の端部2aの電位は直流電源Vccの電位となる。スイッチ素子Q3がオンであり、スイッチ素子Q4がオフである場合、モータ2の端部2bの電位は直流電源Vccの電位となる。モータ2の端部2aの電位と端部2bの電位とは、互いに逆相となるようにモータ制御部12によって制御される。
【0027】
制御回路部10と直流電源Vccの負電極との間の部分、すなわち、電流検出用抵抗R1及びインダクタL0は、電流検出経路50を構成する。電流検出経路50は、電流検出用抵抗R1及びインダクタL0で発生する電圧降下分の電圧値を、モータ2のモータコイルに流れる駆動電流に応じて検出電圧として検出する。比較器20には、電流検出経路50により検出された検出電圧、すなわち電流検出用抵抗R1の制御回路部10側の電圧が入力される。
【0028】
比較器20は、検出電圧と基準電圧源Vddより印加される基準電圧との比較結果による差電圧信号をモータ制御部12に出力する。検出電圧は、例えば、瞬間的な負荷トルクの増大により、モータ2の電機子コイルに流れる駆動電流が電流の制限値を超えた場合などに、瞬間的に大きくなる。検出電圧が基準電圧を超えると、差電圧信号がモータ制御部12に入力される。
【0029】
モータ制御部12は、比較器20から出力された差電圧信号が入力されると、それに応じて制御機能を行い、モータ2を停止させたり、モータ2の回転速度を低下させたりする。
【0030】
なお、比較器20に入力される基準電圧は、モータ2の仕様やその他のモータ駆動装置1の仕様などに応じて、予め設定されたものである。基準電圧は、モータ2に過電流が流れすぎないように、かつ、モータ2の「振れ」や回転ムラなどが若干あってもモータ2がある程度駆動できるように、適当な値が設定されていればよい。これにより、モータ2は適切に動作可能になる。
【0031】
ここで、電流検出経路50に設けられているインダクタL0は、ノイズ低減などの作用を有するとともに、コイル線材が持つ直流抵抗成分による直流分の抵抗値を有している。モータ駆動装置1において、電流検出用抵抗R1の抵抗値は、従来のように電流検出経路50として電流検出用抵抗R1だけを設けている場合(この場合を「従来の場合」ということがある。)と比較して、インダクタL0の直流分の抵抗値だけ小さくなっている。すなわち、電流検出経路50の全体としての抵抗値は、電流検出用抵抗R1の抵抗値と、インダクタL0の直流分の抵抗値との総和となり、従来の場合と略同等となっている。したがって、従来の場合と同様に電流検出経路50により検出電圧が検知され、比較器20及びモータ制御部12により、モータ2に流れる電流に応じた制御が行われる。
【0032】
図2は、本実施の形態の別の例に係るモータ駆動装置1aの回路構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示されるモータ駆動装置1aの基本的な構成は、上述のモータ駆動装置1の構成と同じであるため、ここでの説明を繰り返さない。モータ駆動装置1aは、フィルタ回路が設けられているものであり、フィルタ回路の一部を構成するインダクタが、電流検出用抵抗R1で発生する電力損失を低減する電力損失低減用のインダクタを兼ねている。
【0034】
モータ駆動装置1aにおいて、制御回路部10と、比較器20と、電流検出用抵抗R1とは、モータ駆動装置1のそれと同様に構成されて配置されている。モータ駆動装置1aは、さらに、ノイズフィルタ(フィルタ回路の一例)30を有している。
【0035】
図2に示すように、ノイズフィルタ30は、直流電源Vccの正電極と負電極との間に接続されている。すなわち、ノイズフィルタ30は、直流電源Vccに対して、直列に接続された制御回路部10及び電流検出用抵抗R1に並列に接続されている。ノイズフィルタ30は、例えばπ型フィルタの一態様といえる構成を有している。ノイズフィルタ30は、直流電源Vccの電源電圧に重畳するノイズ(例えば、1MHz以下のEMIノイズなど)を除去する。
【0036】
ノイズフィルタ30は、インダクタL1,L2及びコンデンサC1,C2の4つの素子で構成されている。インダクタ(第1のインダクタの一例)L1は、電流検出用抵抗R1と直流電源Vccの負電極との間に接続されている。インダクタ(第2のインダクタの一例)L2は、直流電源Vccの正電極に直列に接続されている。コンデンサC1,C2は、インダクタL1,L2のそれぞれの両端間に接続されている。すなわち、コンデンサ(第1のコンデンサの一例)C1は、インダクタL1の直流電源Vcc側の端子と、インダクタL2の直流電源Vcc側の端子との間に接続されている。また、コンデンサ(第2のコンデンサの一例)C2は、インダクタL1の制御回路部10側の端子と、インダクタL2の制御回路部10側の端子との間に接続されている。
【0037】
ここで、インダクタL1は、電流検出用抵抗R1とともに、電流検出経路50aを構成する。ノイズフィルタ30のインダクタL1は、モータ駆動装置1におけるインダクタL0に相当する。すなわち、モータ駆動装置1aでは、ノイズフィルタ30の一部を構成するインダクタL1が、電流検出用抵抗R1で発生する電力損失を低減する電力損失低減用のインダクタL0を兼ねている。このようにインダクタL1が設けられていることにより、上述と同様に、電流検出用抵抗R1の抵抗値は、従来のように電流検出経路50aとして電流検出用抵抗R1だけが設けられている場合の抵抗値よりも小さく設定されている。
【0038】
このようにノイズフィルタ30のインダクタL1が電流検出経路50aに設けられていることよる作用について次に説明する。
【0039】
電流検出経路に電流検出用抵抗だけが設けられている従来の回路構成において、例えば、電流検出用抵抗R1の抵抗値を0.02Ωとし、電流検出用抵抗R1に流れる電流を7.5Aとした場合を想定する。この場合、電流検出用抵抗R1により検出される電圧(直流電圧)は、7.5A×0.02Ω=0.15Vとなる。また、電流検出用抵抗R1で消費される電力は、7.5A^2(2乗)×0.02Ω=1.125Wとなる。
【0040】
これに対して、本実施の形態において、例えば、インダクタL1の抵抗値(コイル線材が持つ直流抵抗成分;直流のため、L成分は無しと見なす)を0.01Ωとし、電流検出用抵抗R1を0.01Ωに変更して、インダクタL1と電流検出用抵抗R1との合成抵抗を従来と同じ0.02Ωにした場合を想定する。この場合、電流検出用抵抗R1を流れる電流は7.5Aとなり、検出電圧は0.15Vとなって従来と変わらない。また、電流検出用抵抗R1で消費される電力は、7.5A^2×0.01Ω=0.5625Wとなり、従来の回路構成と比較して、電流検出用抵抗による電力損失は半減する。
【0041】
[ノイズフィルタの変形例の説明]
【0042】
モータ駆動装置1aは、ノイズフィルタ30とは異なる構成のフィルタ回路を有していてもよい。
【0043】
図3は、フィルタ回路の変型例を示す図である。
【0044】
図3において、3種類のフィルタ回路30a,30b,30cが示されている(それぞれ、図3の(a)、(b)、(c))。モータ駆動装置1aは、ノイズフィルタ30に代えて、フィルタ回路30a,30b,30cのいずれかを用いたものであってもよい。
【0045】
図3(a)に示されるように、フィルタ回路30aは、π型フィルタである。フィルタ回路30aの端子31aは直流電源Vccの正電極に接続され、端子32aは直流電源Vccの負電極に接続される。端子33aは制御回路部10に接続され、端子34aは電流検出用抵抗R1に接続される。端子32a,34a間には、インダクタL3が接続されている。端子31a,32a間には、コンデンサC3が接続されており、端子33b,34a間には、コンデンサC4が接続されている。
【0046】
フィルタ回路30aにおいて、インダクタL3は、電流検出用抵抗R1とともに電流検出経路50aを構成する。したがって、上述と同様に、電流検出用抵抗R1の抵抗値を、インダクタL3の直流分の抵抗値の分だけ、電流検出経路50aとして電流検出用抵抗R1だけが設けられている従来の場合の抵抗値よりも小さく設定できる。
【0047】
図3(b)に示されるように、フィルタ回路30bは、L型フィルタである。フィルタ回路30bの端子31bは直流電源Vccの正電極に接続され、端子32bは直流電源Vccの負電極に接続される。端子33bは制御回路部10に接続され、端子34bは電流検出用抵抗R1に接続される。端子32b,34b間には、インダクタL4が接続されている。端子31b,33b間のラインと、端子34bとインダクタL4とを接続するラインとの間には、コンデンサC5が接続されている。
【0048】
フィルタ回路30bにおいて、インダクタL4は、電流検出用抵抗R1とともに電流検出経路50aを構成する。したがって、上述と同様に、電流検出用抵抗R1の抵抗値を、インダクタL4の直流分の抵抗値の分だけ、従来の場合の抵抗値よりも小さく設定できる。
【0049】
図3(c)に示されるように、フィルタ回路30cは、T型フィルタである。フィルタ回路30cの端子31cは直流電源Vccの正電極に接続され、端子32cは直流電源Vccの負電極に接続される。端子33cは制御回路部10に接続され、端子34cは電流検出用抵抗R1に接続される。端子32c,34c間には、端子32cに近い方から順に、2つのインダクタL5,L6が直列に接続されている。端子31c,33c間のラインと、インダクタL5,L6間のラインとの間には、コンデンサC6が接続されている。
【0050】
フィルタ回路30cにおいて、インダクタL5,L6は、電流検出用抵抗R1とともに電流検出経路50aを構成する。したがって、上述と同様に、電流検出用抵抗R1の抵抗値を、従来の場合の抵抗値よりも小さく設定できる。この場合、インダクタL5の直流分の抵抗値と、インダクタL6の直流分の抵抗値と、電流検出用抵抗R1の抵抗値とが、電流検出経路50aの抵抗値となるので、電流検出用抵抗R1の抵抗値は、2つのインダクタL5,L6の直流分の抵抗値だけ小さく設定されればよい。
【0051】
[実施の形態における効果]
【0052】
以上のように構成されたモータ駆動装置では、電流検出経路には、インダクタが設けられているので、従来のように電流検出経路として電流検出用抵抗だけを設けている場合(従来の場合)と比較して、電流検出用抵抗の抵抗値を小さくすることができる。すなわち、電流検出経路の抵抗値は、電流検出用抵抗の抵抗値と、電流検出経路において配置されているインダクタの直流分の抵抗値との総和となる。したがって、電流検出用抵抗の抵抗値をインダクタの直流分の抵抗値だけ小さくしても、電流検出経路の抵抗値を、従来の場合と同等の値にすることができる。
【0053】
このように、本実施の形態では、電流検出用経路に電流検出用抵抗とインダクタとが設けられており、従来は電流検出用抵抗だけに発生していた電力損失を、電流検出用抵抗とインダクタとで分割することができる。電流検出用抵抗の抵抗値を小さくすることにより、電流検出用抵抗で発生する電力損失を低減することができる。また、電流検出経路の電力損失は、従来と比較して、増加することがない。ノイズフィルタなどのフィルタ回路やその他のインダクタを用いる回路などと電流検出経路とを別個のものと考えて電流検出用抵抗の抵抗値を小さくしない場合と比較して、電流検出用抵抗で消費される電力損失を大幅に低減させることができる。換言すると、フィルタ回路などの回路に用いられるインダクタを、電流検出経路における電流検出用抵抗で発生する電力損失を低減する電力損失低減用のインダクタとして共用することで、電流検出経路の電流検出用抵抗の抵抗値を小さくすることができ、モータ駆動装置の電流検出用抵抗の電力損失を低減させることができる。したがって、モータの過電流を確実に防止し、かつ、モータを適正に動作させることができる状態を維持したままで、モータ駆動装置の効率を高めることができる。また、電流検出用抵抗の電力損失が低減するので、モータ駆動装置の発熱を抑制できる。
【0054】
また、モータ駆動装置では、電力損失低減用のインダクタとして、ノイズフィルタの一部を構成するものが兼ねられている。したがって、モータ駆動装置の部品点数を増やすことなく、製造コストを低く抑えたまま、電流検出用抵抗の電力損失の低減を図ることができる。
【0055】
[その他]
【0056】
電流検出用抵抗と直流電源の負電極との間に接続される、電流検出経路のインダクタは、1個に限定されるものではなく、複数であってもよい。複数のインダクタが直列に接続されている場合、複数のインダクタの直流分との抵抗値と電流検出用抵抗との和が電流検出経路の抵抗値となる。また、この場合、複数のインダクタ同士は、直列接続に限定されず、並列に接続されていてもよい。
【0057】
モータ駆動装置は、上述の図2に示されるようなフィルタ回路を用いたものに限られない。図1に示されるようなインダクタを有するモータ駆動装置においても、インダクタが電流検出経路を構成するように配置することで、電流検出用抵抗の電力損失を低減させる効果などを得ることができる。
【0058】
複数のインダクタが電流検出経路に設けられている場合において、そのうちの全部がフィルタ回路の一部を構成するようにしてもよいし、そのうちの一部のインダクタがフィルタ回路の一部を構成するようにしてもよい。
【0059】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1,1a モータ駆動装置
2 モータ
10 制御回路部
11 モータ駆動回路
12 モータ制御部
20 比較器(比較回路の一例)
30 ノイズフィルタ(フィルタ回路の一例)
30a,30b,30c フィルタ回路
50,50a 電流検出経路
C1,C2 コンデンサ
L0,L1〜L6 インダクタ
R1 電流検出用抵抗(抵抗素子の一例)
Vcc 直流電源
Vdd 基準電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電力を用いてモータを駆動制御する制御回路部と、
前記制御回路部と前記直流電源の負電極との間に配置され、前記モータに流れる駆動電流に応じた電圧値を検出する電流検出経路と、
前記電流検出経路により検出された検出電圧と予め設定された基準電圧とを比較する比較回路とを備え、
前記電流検出経路は、
前記制御回路部に接続されている抵抗素子と、
前記抵抗素子と前記直流電源の負電極との間に接続された少なくとも1つのインダクタとを有し、
前記抵抗素子の抵抗値と前記少なくとも1つのインダクタの直流分の抵抗値との和を前記電流検出経路の抵抗値として、前記検出電圧を検出する、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記直流電源の正電極と負電極との間に配置され、前記直流電源の電源電圧に重畳するノイズを除去するフィルタ回路をさらに備え、
前記少なくとも1つのインダクタの全部又は一部は、前記フィルタ回路の一部を構成する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記フィルタ回路は、
前記少なくとも1つのインダクタに含まれる第1のインダクタと、
前記直流電源の正電極に接続される第2のインダクタと、
前記第1のインダクタの前記直流電源側の端子と前記第2のインダクタの前記直流電源側の端子との間に接続される第1のコンデンサと、
前記第1のインダクタの前記制御回路部側の端子と前記第2のインダクタの前記制御回路部側の端子との間に接続される第2のコンデンサとを有する、請求項2に記載のモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55786(P2013−55786A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191961(P2011−191961)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】