説明

モータ駆動装置

【課題】モータ駆動回路の破壊により、制御電源の出力に接続される負荷が短絡して過大な故障電流が流れることにより、制御電源が破壊に至る場合がある。
【解決手段】制御電源からの電圧が入力されて、主電源からモータの駆動巻線へ電力を供給するインバータ部と、前記制御電源を電力源とし前記インバータ部への通電信号を発生する制御部を備え、前記制御電源の負荷が短絡した時に前記制御電源を保護する回路保護素子を、制御電源電力供給線に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機などの送風ファン用途に供されるモータ駆動装置に関し、特にモータ駆動装置の破壊による上位機器への故障波及を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の送風ファン用途に供されるモータ駆動装置としては、モータの巻線への電力源である直流電源と、前記駆動装置の構成要素の各部品への電力源である制御電源と、前記モータへの運転指令とを、外部から供給されて機能し、前記モータの回転信号を外部へ出力するモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図15はモータ駆動装置の従来例の全体構成図であり、制御回路104、パワースイッチング素子105、逆流防止ダイオードD1〜D3、モータ駆動巻線L1〜L3からなるモータ、高電圧直流電源101、制御電源102、速度制御手段103から構成されている。パワースイッチング素子105には高電圧直流電源101(高電圧)出力が入力される。制御回路104には、制御電源102(低電圧)と速度制御手段103(低電圧)の出力が逆流防止ダイオードD1並びに逆流防止ダイオードD2を介して入力され、またモータの速度信号を速度制御手段103(低電圧)に逆流防止ダイオードD3を介して出力するように構成される。
【0004】
逆流防止ダイオードD1〜D3はモータ駆動回路破壊による高電圧の高電圧直流電源出力と低電圧の制御電源及び速度制御手段が短絡の際、図16のように高電圧と制御電圧に対し高電圧がカソードとなるように接続され構成される。ここでモータ駆動回路106内部においてVdcとVCCが短絡すると、図16のように制御電源102と逆流防止ダイオードD1に高電圧が印加されるが、逆流防止ダイオードD1のカソード側に高電圧が印加されるので逆流防止ダイオードD1は非導通状態にあり、高電圧は制御電源102に印加されることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−110867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のモータ駆動装置においては、逆流防止ダイオードD1により制御電源102に高電圧は印加されないものの、破壊により制御電源の負荷である制御回路の制御電源入力端子のインピーダンスが著しく低下すると、制御電源からの故障電流が過大になり、制御電源の構成要素を破壊しうるという課題があった。本発明はモータ駆動回路の破壊により制御電源の負荷が低インピーダンスになって発生する過大な故障電流により制御電源が故障に至ることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の発明のモータ駆動装置は、制御電源からの電圧が入力されて、主電源からモータの駆動巻線へ電力を供給するインバータ部と、前記制御電源を電力源とし前記インバータ部への通電信号を発生する制御部を備え、前記制御電源の負荷が短絡した時に前記制御電源を保護する回路保護素子を、制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明のモータ駆動装置は、前記主電源は、商用交流電源を整流平滑して得られる直流電圧を出力するものであり、前記制御電源は、出力端子にトランジスタを備え前記主電源から電圧変換手段を介して得られる主電源より比較的低い電圧を出力するものであることを特徴とする。
【0009】
第3の発明のモータ駆動装置は、前記インバータ部並びに前記制御部が短絡時の故障電流を制限する第一の抵抗を前記インバータ部への前記制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0010】
第4の発明のモータ駆動装置は、前記インバータ部並びに前記制御部の短絡時の故障電流を制限する第一の抵抗を前記制御部への前記制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0011】
第5の発明のモータ駆動装置は、前記インバータ部並びに前記制御部の短絡時の故障電流を制限する第一の抵抗を前記インバータ部と前記制御部への前記制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0012】
第6の発明のモータ駆動装置は、前記制御電源から複数の高速ダイオードを介して電力が供給されるフローティング電源と、前記主電源に対しトーテムポール接続した絶縁ゲート型トランジスタからなるスイッチ手段を備え、前記インバータ部は絶縁ゲート型トランジスタのゲート駆動用の高電圧ICを含み、前記インバータ部と前記制御部の短絡時の故障電流を制限する第一の抵抗を前記フローティング電源への制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0013】
第7の発明のモータ駆動装置は、前記回路保護素子は、ヒューズもしくはマイクロヒューズもしくはヒューズ抵抗器であることを特徴とする。
【0014】
第8の発明のモータ駆動装置は、前記回路保護素子は、正特性サーミスタであることを特徴とする。
【0015】
第9の発明のモータ駆動装置は、主電源線に第二の抵抗を設け、制御電源線に第一のダイオードを設けたことを特徴とする。
【0016】
第10の発明のモータ駆動装置は、商用交流電源を整流平滑して得られる直流電圧を出力する主電源と、出力端子にトランジスタを備え前記主電源から電圧変換手段を介して得られる主電源より比較的低い電圧を出力する制御電源と、機能動作用電源として前記制御電源からの電圧が入力され前記主電源からモータのの駆動巻線へ電力供給するインバータ部と、前記制御電源を電力源とし、前記インバータ部への通電信号を発生する制御部を備えたモータ駆動装置であって、
前記インバータ部並びに前記制御部が短絡時に発生する故障電流を制限する第一の抵抗を前記インバータ部への前記制御電源からの電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0017】
第11の発明のモータ駆動装置は、前記第一の抵抗を前記制御部への制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0018】
第12の発明のモータ駆動装置は、前記第一の抵抗をインバータ部及び制御部への共通の制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0019】
第13の発明のモータ駆動装置は、前記制御電源から複数の高速ダイオードを介して電力が供給されるフローティング電源と、前記主電源に対しトーテムポール接続した絶縁ゲート型トランジスタからなるスイッチ手段を備え、前記インバータ部は絶縁ゲート型トランジスタのゲート駆動用の高電圧ICとを含み、前記第一の抵抗は前記フローティング電源への制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする。
【0020】
第14の発明のモータ駆動装置は、主電源線に第二の抵抗を設け、制御電源線に第一のダイオードを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のモータ駆動装置は制御電源から制御部への制御電源電力供給線に回路保護素子を設けることで、インバータ部並びに制御部の短絡故障時には回路保護素子により故障電流を遮断し、上位機器に破壊が及ばないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1のモータ駆動装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1のモータ駆動装置の動作説明図
【図3】本発明の実施の形態2のモータ駆動装置の構成図
【図4】本発明の実施の形態2のモータ駆動装置の動作説明図
【図5】本発明の実施の形態3のモータ駆動装置の構成図
【図6】本発明の実施の形態3のモータ駆動装置の動作説明図
【図7】本発明の実施の形態4のモータ駆動装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態4のモータ駆動装置の動作説明図
【図9】本発明の実施の形態5のモータ駆動装置の構成図
【図10】本発明の実施の形態5のモータ駆動装置の動作説明図
【図11】本発明の実施の形態6のモータ駆動装置の構成図
【図12】本発明の実施の形態6のモータ駆動装置の動作説明図
【図13】本発明の実施の形態7のモータ駆動装置の構成図
【図14】本発明の実施の形態7のモータ駆動装置の動作説明図
【図15】従来のモータ駆動装置の全体構成図
【図16】従来のモータ駆動装置の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1のモータ駆動装置の構成図である。モータ駆動回路1は、モータ駆動巻線L、L、Lと出力端子が接続されたインバータ部2と、PWM信号を発生してインバータ部2へ供給する制御部3を主要構成要素としており、主電源4の出力は前記インバータ部の主電源入力端子へ接続され、制御電源5の出力は前記モータ駆動回路1に設けた回路保護素子12を介して、インバータ部2の制御電源入力端子と、制御部3の制御電源入力端子に各々接続されている。また、制御部3には制御信号入力端子VSPと、回転信号出力端子FGの2つのインターフェースを有し、それぞれモータ駆動回路1の外部にあるマイコン6のポートに接続されている。
【0024】
図2は本発明の実施の形態1のモータ駆動装置の動作説明図である。図2では制御電源5からの電流ICCと、回路保護素子12の制御電源側の入力電圧VCCINと、制御部3とインバータ部2への出力電圧VCCOUTの計時変化を示している。今、時刻t=tの時、モータ駆動回路1は正常状態にあり、制御電源5から出力電圧VCC=VCC0が前記回路保護素子12を介して、インバータ部2および制御部3へ入力されて、電流ICC=ICC0が通流している。
【0025】
次に時刻t=t1の時、インバータ部2及び制御部3に何らかの要因により短絡故障が発生すれば、制御電源5からのICCは短絡によるインピーダンスの低下によって正常時より極めて大きな電流ICC1が発生する。この電流ICC1で回路保護素子12内部に発生するジュール熱により、時刻t=tになると、回路保護素子12が断線し、ICC=0となり、故障時の電流ICC1が遮断される。
【0026】
また電流ICC1が発生している時刻t=t〜tの間、制御電源5の出力電圧すなわち回路保護素子12の入力電圧VCCINは、図中VCC1のように低下し、加えて回路保護素子12のジュール熱によるインピーダンス増大により、VCCOUTはVCC1’へ低下した後、時刻t=tで0となる。
【0027】
以上のように、本発明のモータ駆動回路1は故障時に制御電源に発生する大電流を回路保護素子により遮断するので制御電源は破壊に至らない。また、回路保護素子として、故障電流の損失により温度上昇すると、ある温度で大きなインピーダンスになる特性を予め有するPTCサーミスタを用いて、故障時には短絡電流をわずかな値に制限する方法もある。
【0028】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2のモータ駆動装置の構成図である。上位機器側電装基板9は、マイコン6、主電源4、制御電源5を主要構成要素とし、主電源4は、整流器10と電解コンデンサ11から成り、商用電源8からの交流電圧を整流平滑して直流電圧VDCを出力する。制御電源5はDC/DCコンバータ13とトランジスタQからなり、前記VDCから低電圧VCCを出力する。モータ駆動回路1の構成は実施の形態1と同様であるので説明を省く。
【0029】
図4は本発明の実施の形態2のモータ駆動装置の動作説明図である。主電源からの電流IDC、制御電源からの電流ICC、回路保護素子12の制御電源側の入力電圧VCCIN、制御部3とインバータ部2側の出力電圧VCCOUTの故障時の変化を示している。今、時刻t=tの時、モータ駆動回路1は正常状態にあり、主電源4から直流電圧VDCがインバータ部2へ入力されて、モータ駆動巻線L、L、Lへ電力供給を行っており、電流IDC0が発生している。そして制御電源5から出力電圧VCC=VCC0が回路保護素子12を介して、インバータ部2と制御部3へ入力されて、電流ICC=ICC0が通流している。
【0030】
次に時刻t=tの時、インバータ部2に何らかの要因により短絡故障が発生すれば、主電源4からのIDCは、IDC1なる大電流が発生する。これによりインバータ部2の制御電源側もしくは制御部3へ故障が波及し、時刻t=t11で、制御電源5のトランジスタQからの電流ICCは、短絡によるインピーダンスの低下によって正常時より極めて大きな電流ICC1が発生する。ICC1により回路保護素子12内部において発生するジュール熱により、時刻t=t21になると回路保護素子12が断線し、ICC=0となり故障時の電流ICC1が遮断される。
【0031】
又、電流ICC1が発生している時刻t=t11〜t21の間、制御電源5の出力電圧である回路保護素子12の入力電圧VCCINは、図中VCC1のように低下し、加えて回路保護素子12のジュール熱によるインピーダンス増大によりVCCOUTはVCC1’へ低下した後、時刻t=t21で0となる。
【0032】
一方、IDCは時刻t=tで、インバータ部2内部での断線又は図示しない回路部品の断線によりIDC=0になっている。図中ではt=t=t11という具合に同時発生としたが、異なるタイミングであってもよい。
【0033】
以上のように、本発明のモータ駆動回路1は、故障時に制御電源に発生する大電流を回路保護素子により遮断するので、制御電源は破壊に至らない。又、回路保護素子として、故障電流の損失により温度上昇すると、ある温度で大きなインピーダンスになる特性を予め有するPTCサーミスタを用いて、故障時には短絡電流をわずかな値に制限する方法もある。
【0034】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3のモータ駆動装置の構成を示す図である。抵抗Rをインバータ部2の制御電源入力端子に設けている以外は実施の形態2のモータ駆動装置と同じ構成である。
【0035】
図6は本発明の実施の形態3のモータ駆動装置の動作説明図である。主電源からの電流IDC、制御電源からインバータ部2へ流れる電流ICC(INV)と、制御部3へ流れる電流ICC(IC)、そして両者の総和である電流ICC、回路保護素子12の制御電源側の入力電圧VCCIN、制御部3、インバータ部2側の出力電圧VCCOUTの故障時の変化を示している。
【0036】
図6において、今、時刻t=tの時、モータ駆動回路1は正常状態にあり、主電源4から直流電圧VDCがインバータ部2へ入力されて、モータ駆動巻線L、L、Lへ電力供給を行っており電流IDC0が発生している。そして制御電源5から出力電圧VCC=VCC0が回路保護素子12を介して、インバータ部2及び制御部3に入力されることにより、インバータ部2にはICC(INV)0が、制御部3へは、ICC(IC)0が通流し、そして制御電源5からはICC=ICC0=ICC(INV)0+ICC(IC)0が通流している。
【0037】
次に時刻t=tの時、インバータ部2に何らかの要因により短絡故障が発生すれば、主電源4からのIDCはIDC1なる大電流が発生する。これによりインバータ部2の制御電源側へ故障が波及し、時刻t=t11で、制御電源5のトランジスタQからの電流ICC(INV)は短絡によるインピーダンスの低下によって正常時より大きな電流ICC(INV)1が発生する。しかしながら抵抗RによりICC(INV)1の値はトランジスタQの許容範囲内に収まっている。ICC(INV)1により、ICCもICC1なる正常時に比べ比較的大きな電流が発生する。ICC1により回路保護素子12内部において発生するジュール熱により、時刻t=t21になると回路保護素子12が断線し、ICC=0となり故障時の電流ICC1が遮断される。
【0038】
又、短絡電流ICC1が発生している時刻t=t11〜t21の間、制御電源5の出力電圧である回路保護素子12の入力電圧VCCINはVCC1のように低下するが、故障時の電流値は抵抗Rにより制限を受けるので、実施の形態2のそれにくらべて低下は小さい。加えて回路保護素子12のジュール熱によるインピーダンス増大によりVCCOUTは、VCC1’へ低下した後、時刻t=t21で0となる。
【0039】
抵抗Rの抵抗値は、故障時に発生するICCの電流値が制御電源5のトランジスタQの許容範囲内の値で且つ回路保護素子の断線に十分な値になるよう予め設定される。
【0040】
一方、IDCは時刻t=tで、インバータ部2内部での断線又は図示しない回路部品の断線によりIDC=0になっている。図中ではt=t=t11という具合に同時発生としたが、異なるタイミングであってもよい。
【0041】
抵抗Rは、インバータ部2短絡故障に備え、インバータ部2の制御電源入力端子側へ設けたが、制御部3の短絡故障に備えて制御部3の制御電源入力端子側へ設けてもよいし、双方に設けてもよい。
【0042】
以上のように、本発明のモータ駆動回路1は故障時に制御電源に発生する電流の上限値を抵抗R1により制限した上で、回路保護素子により遮断するので制御電源は破壊に至らない。又、回路保護素子として故障電流の損失により温度上昇すると、ある温度で大きなインピーダンスになる特性を予め有するPTCサーミスタを用いて、故障時には短絡電流をわずかな値に制限する方法もある。
【0043】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4のモータ駆動装置について図7および図8を用いて説明する。図7において、インバータ部2は、トーテムポール接続された絶縁ゲート型トランジスタQ、Q、Q、Q、Q、Qからなるスイッチ手段16と、スイッチ手段16の各トランジスタへゲート信号を出力する高電圧IC(HVIC)15と、スイッチ手段16の各トランジスタの内、主電源側、すなわち上アーム側の各トランジスタQ、Q、Qのゲート電圧発生のためのフローティング電源14とを主要構成要素とし、フローティング電源14には、抵抗R及び並列接続されたダイオードD101、D102、D103を介して、制御電源5から電力供給を受ける構成とした。その他の構成は実施の形態3と同じであり説明は省く。
【0044】
図8は本発明の実施の形態4のモータ駆動装置の動作説明図である。主電源4からの電流IDC、制御電源5からフローティング電源14へ流れる電流ICC(boot)と、HVICへ流れる電流ICC(INV)と、制御部3へ流れる電流ICC(IC)、そして3者の総和である電流ICC、回路保護素子12の制御電源側の入力電圧VCCIN、制御部3とインバータ部2側の出力電圧VCCOUTの故障時の変化を示している。
【0045】
図8において、今、時刻t=tの時、モータ駆動回路1は正常状態にあり、主電源4から直流電圧VDCがインバータ部2へ入力されて、モータ駆動巻線L、L、Lへ電力供給を行っており電流IDCが発生している。そして制御電源5から出力電圧VCC=VCC0が回路保護素子12を介して、フローティング電源14、HVIC15、制御部3に入力されることにより、フローティング電源14にはICC(boot)0が、HVIC15にはICC(INV)0が、制御部3へはICC(IC)0が通流し、そして制御電源5からはICC=ICC0=ICC(boot)0+ICC(INV)0+ICC(IC)0が通流している。
【0046】
次に時刻t=t1の時、モータ駆動回路1のスイッチ手段16に何らかの要因により短絡故障が発生すれば、主電源4からのIDCはIDC1なる大電流が発生する。これにより、フローティング電源14へ故障が波及し、時刻t=t11で制御電源5のトランジスタQからの電流ICC(boot)は、短絡によるインピーダンスの低下によって正常時より大きな電流ICC(boot)1が発生する。しかしながら抵抗RによりICC(boot)1の値は、トランジスタQの許容範囲内に収まっている。ICC(boot)1によりICCもICC1なる正常時に比べ比較的大きな電流が発生する。ICC1により回路保護素子12内部において発生するジュール熱により、時刻t=t21になると回路保護素子12が断線し、ICC==0となり故障時の大電流ICC1が遮断される。
【0047】
又、短絡電流ICC1が発生している時刻t=t11〜t21の間、制御電源5の出力電圧である回路保護素子12の入力電圧VCCINはVCC1のように低下するが、故障時の電流値は抵抗Rにより制限を受けるので実施の形態2のそれにくらべて低下は小さい。加えて回路保護素子12のジュール熱によるインピーダンス増大により、VCCOUTはVCC1’へ低下した後、時刻t=t21で0となる。
【0048】
抵抗Rの抵抗値は、故障時に発生するICCの電流値が制御電源5のトランジスタQの許容範囲内の値で且つ回路保護素子の断線に十分な値になるよう予め設定される。
【0049】
一方、IDCは時刻t=tで、インバータ部2内部での断線又は図示しない回路部品の断線によりIDC=0になっている。図中ではt=t=t11という具合に同時発生としたが、異なるタイミングであってもよい。
【0050】
以上のように、本発明のモータ駆動回路1は故障時に制御電源に発生する電流の上限値を抵抗Rにより制限した上で、回路保護素子により遮断するので制御電源は破壊に至らない。又、回路保護素子として、故障電流の損失により温度上昇すると、ある温度で大きなインピーダンスになる特性を予め有するPTCサーミスタを用いて、故障時には短絡電流をわずかな値に制限する方法もある。
【0051】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5のモータ駆動装置について、図9および図10で説明する。本形態は、実施の形態3のモータ駆動装置における回路保護素子のみを省いた構成で、その他は同じである。
【0052】
図10は本発明の実施の形態5のモータ駆動装置の動作説明図である。図10では、主電源からの電流IDC、制御電源からインバータ部2へ流れる電流ICC(INV)と、制御部3へ流れる電流ICC(IC)、そして両者の総和である電流ICC、制御電源VCCの故障時の変化を示している。
【0053】
今、時刻t=tの時、モータ駆動回路1は正常状態にあり、主電源4から直流電圧VDCがインバータ部2へ入力されて、モータ駆動巻線L、L、Lへ電力供給を行っており電流IDCが発生している。そして制御電源5から出力電圧VCC=VCC0が出力されて、インバータ部2と制御部3へ入力されることにより、インバータ部2にはICC(INV)0が、制御部3へはICC(IC)0が、そして制御電源5からはICC=ICC0=ICC(INV)0+ICC(IC)0が通流している。
【0054】
次に時刻t=tの時、モータ駆動回路1のインバータ部2に何らかの要因により短絡故障が発生すれば、主電源4からのIDCはIDC1なる大電流が発生する。これによりインバータ部2の制御電源側へ故障が波及し、時刻t=t11で制御電源5のトランジスタQからの電流ICC(INV)は、短絡によるインピーダンスの低下によって正常時より大きな電流ICC(INV)1が発生する。しかしながら、抵抗RによりICC(INV)1の値はトランジスタQの許容範囲内に収まっている。ICC(INV)1によりICCもICC1なる正常時に比べ比較的大きな電流が発生し、以降連続してICC1が通流する。ICC1は正常時に比べ大きな値ではあるが、Q0の許容範囲に対し余裕があるので制御電源5の出力電圧VCCの電圧値には影響しない。
【0055】
抵抗Rの抵抗値は故障時に発生するICCの電流値が連続して発生しても、制御電源5のトランジスタQの許容範囲内の値になるよう予め設定される。
【0056】
一方、IDCは時刻t=tで、インバータ部2内部での断線又は図示しない回路部品の断線によりIDC=0になっている。図中ではt=t=t11という具合に同時発生としたが、異なるタイミングであってもよい。
【0057】
抵抗Rは、インバータ部2短絡故障に備え、インバータ部2の制御電源入力端子側へ設けたが、制御部3の短絡故障に備えて制御部3の制御電源入力端子側へ設けてもよいし、双方に設けてもよい。
【0058】
以上のように、本発明のモータ駆動回路1は故障時に制御電源に発生する電流の上限値を抵抗R1により制限するので制御電源は破壊に至らない。
【0059】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6のモータ駆動装置について、図11および図12で説明する。本実施の形態6のモータ駆動装置は、実施の形態4のモータ駆動装置における回路保護素子のみを省いた構成でその他は同じある。
【0060】
図12は、本発明の実施の形態6のモータ駆動装置の動作説明図である。主電源4からの電流IDC、制御電源5からフローティング電源14へ流れる電流ICC(boot)と、HVICへ流れる電流ICC(INV)と、制御部3へ流れる電流ICC(IC)、そして3者の総和である電流ICC、制御電源の出力電圧VCCの故障時の変化を示している。
【0061】
今、時刻t=tの時、モータ駆動回路1は正常状態にあり、主電源4から直流電圧VDCがインバータ部2へ入力されて、モータ駆動巻線L、L、Lへ電力供給を行っており電流IDCが発生している。そして制御電源5から出力電圧VCC=VCC0が出力されて、フローティング電源14にはICC(boot)0が、HVIC15にはICC(INV)0が、制御部3へはICC(IC)0が、そしてICC=ICC0=ICC(boot)0+ICC(INV)0+ICC(IC)0が通流している。
【0062】
次に時刻t=t1の時、モータ駆動回路1のスイッチ手段16に何らかの要因により短絡故障が発生したことにより、主電源4からのIDCはIDC1なる大電流が発生する。これによりフローティング電源14へ故障が波及し、時刻t=t11で、制御電源5のトランジスタQからの電流ICC(boot)は、短絡によるインピーダンスの低下によって正常時より大きな電流ICC(boot)1が発生する。しかしながら、抵抗RによりICC(boot)1の値は、トランジスタQの許容範囲内に収まっている。ICC(boot)1により、ICCもICC1なる正常時に比べ比較的大きな電流が発生する。ICC1は、正常時に比べ大きな値ではあるが、Qの許容範囲に対し余裕があるので制御電源5の出力電圧VCCの電圧値には影響しない。
【0063】
抵抗Rの抵抗値は、故障時に発生するICCの電流値が連続して発生しても、制御電源5のトランジスタQの許容範囲内の値になるよう予め設定される。
【0064】
一方、IDCは時刻t=tで、インバータ部2内部での断線又は図示しない回路部品の断線によりIDC=0になっている。図中ではt=t=t11という具合に同時発生としたが、異なるタイミングであってもよい。
【0065】
以上のように、本発明のモータ駆動回路1は故障時に制御電源に発生する電流の上限値を抵抗Rにより制限するので制御電源は破壊に至らない。
【0066】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7のモータ駆動装置について、図13および図14で説明する。本実施の形態7のモータ駆動装置は、実施の形態6のモータ駆動装置において、主電源電力供給線に抵抗Rを、制御電源電力供給線にダイオードDを、制御信号線にダイオードDを、回転信号線にダイオードDを設けた構成とし、その他の構成は同じである。
【0067】
図14は本発明の実施の形態7のモータ駆動装置の動作説明図である。主電源4からの電流IDC、制御電源5からフローティング電源14へ流れる電流ICC(boot)と、HVICへ流れる電流ICC(INV)と、制御部3へ流れる電流ICC(IC)、そして3者の総和である電流ICC、ダイオードDのカソード側電圧VCC(D1K)、回路保護素子12の制御電源側の入力電圧VCCIN、制御部3とインバータ部2側の出力電圧VCCOUTの故障時の変化を示している。
【0068】
今、時刻t=tの時、モータ駆動回路1は正常状態にあり、主電源4から直流電圧VDCが抵抗Rを介してインバータ部2へ入力されて、モータ駆動巻線L、L、Lへ電力供給を行っており電流IDCが発生している。そして制御電源5から出力電圧VCC=VCC0が回路保護素子12、ダイオードDを介して、Dの順電圧VFを減じて供給され、フローティング電源14にはICC(boot)0が、HVIC15にはICC(INV)0が、制御部3へはICC(IC)0が、そしてICC=ICC0=ICC(boot)0+ICC(INV)0+ICC(IC)0が通流している。
【0069】
次に時刻t=t1の時、モータ駆動回路1のスイッチ手段16に何らかの要因により短絡故障が発生すれば、主電源4からのIDCはIDC1なる大電流が発生する。これにより、HVIC、制御部3、フローティング電源14へ故障が波及して、制御電源電力供給線のDのカソード側電圧VCC(D1K)には大きな電圧VDC0が発生するが、Dは逆バイアス状態のためDのアノード側には高電圧は発生しない。
【0070】
次に、時刻t=tになると、Rが断線に至り、Dのカソード側電圧も低下しIDC2=0となる。続いて時刻t=t11で、制御電源5のトランジスタQからの電流ICC(boot)は、短絡によるインピーダンスの低下によって正常時より大きな電流ICC(boot)1が発生する。しかしながら、抵抗RによりICC(boot)1の値はトランジスタQの許容範囲内に収まっている。ICC(boot)1によりICCもICC1なる正常時に比べ比較的大きな電流が発生する。ICC1により回路保護素子12内部において発生するジュール熱により、時刻t=t21になると回路保護素子12が断線し、ICC=0となり故障時の大電流ICC1が遮断される。
【0071】
又、短絡電流ICC1が発生している時刻t=t11〜t21の間、回路保護素子12のジュール熱によるインピーダンス増大により、VCCOUTはVCC1’へ低下した後、時刻t21でVCCOUT=0となる。
【0072】
抵抗Rの抵抗値は、故障時に発生するICCの電流値が制御電源5のトランジスタQの許容範囲内の値で且つ回路保護素子の断線に十分な値になるよう予め設定される。
【0073】
また、図中ではt=t=t11という具合に同時発生としたが異なるタイミングであってもよい。
【0074】
また、DおよびDは、スイッチ手段16の短絡故障が制御部3へ波及してマイコン6のポートに過電圧が印加されて、マイコン6が故障に至ることを防ぐ目的で設けられる。
【0075】
以上のように、本発明のモータ駆動回路1は故障時に制御電源に発生する電流の上限値を抵抗R1により制限した上で、回路保護素子により遮断するので制御電源は破壊に至らない。
【0076】
又、回路保護素子として、故障電流の損失により温度上昇すると、ある温度で大きなインピーダンスになる特性を予め有するPTCサーミスタを用いて、故障時には短絡電流をわずかな値に制限する方法もある。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のモータ駆動装置は、商用電源を整流平滑などして得られる高電圧の電源と、高電圧電源を元に発生させる低電圧電源の2つにより駆動される家電用モータ駆動・制御に好適である。
【符号の説明】
【0078】
1 モータ駆動回路
2 インバータ部
3 制御部
4 主電源
5 制御電源
6 マイコン
8 商用電源
9 上位機器側電装基板
10 整流器
11 電解コンデンサ
12 回路保護素子
13 DC/DCコンバータ
14 フローティング電源
15 HVIC
16 スイッチ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電源からの電圧が入力されて、主電源からモータの駆動巻線へ電力を供給するインバータ部と、前記制御電源を電力源とし前記インバータ部への通電信号を発生する制御部を備え、前記制御電源の負荷が短絡した時に前記制御電源を保護する回路保護素子を、制御電源電力供給線に設けたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記主電源は、商用交流電源を整流平滑して得られる直流電圧を出力するものであり、前記制御電源は、出力端子にトランジスタを備え前記主電源から電圧変換手段を介して得られる主電源より比較的低い電圧を出力するものであることを特徴とする請求項1記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記インバータ部並びに前記制御部が短絡時の故障電流を制限する第一の抵抗を前記インバータ部への前記制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする請求項2記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記インバータ部並びに前記制御部の短絡時の故障電流を制限する第一の抵抗を前記制御部への前記制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする請求項2記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記インバータ部並びに前記制御部の短絡時の故障電流を制限する第一の抵抗を前記インバータ部と前記制御部への前記制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする請求項2記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記制御電源から複数の高速ダイオードを介して電力が供給されるフローティング電源と、前記主電源に対しトーテムポール接続した絶縁ゲート型トランジスタからなるスイッチ手段を備え、前記インバータ部は絶縁ゲート型トランジスタのゲート駆動用の高電圧ICを含み、前記インバータ部と前記制御部の短絡時の故障電流を制限する第一の抵抗を前記フローティング電源への制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする請求項2記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記回路保護素子は、ヒューズもしくはマイクロヒューズもしくはヒューズ抵抗器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記回路保護素子は、正特性サーミスタであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
主電源線に第二の抵抗を設け、制御電源線に第一のダイオードを設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項10】
商用交流電源を整流平滑して得られる直流電圧を出力する主電源と、出力端子にトランジスタを備え前記主電源から電圧変換手段を介して得られる主電源より比較的低い電圧を出力する制御電源と、機能動作用電源として前記制御電源からの電圧が入力され前記主電源からモータのの駆動巻線へ電力供給するインバータ部と、前記制御電源を電力源とし、前記インバータ部への通電信号を発生する制御部を備えたモータ駆動装置であって、
前記インバータ部並びに前記制御部が短絡時に発生する故障電流を制限する第一の抵抗を前記インバータ部への前記制御電源からの電力供給線に設けたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項11】
前記第一の抵抗を前記制御部への制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする請求項7記載のモータ駆動装置。
【請求項12】
前記第一の抵抗をインバータ部及び制御部への共通の制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする請求項7記載のモータ駆動装置。
【請求項13】
前記制御電源から複数の高速ダイオードを介して電力が供給されるフローティング電源と、前記主電源に対しトーテムポール接続した絶縁ゲート型トランジスタからなるスイッチ手段を備え、前記インバータ部は絶縁ゲート型トランジスタのゲート駆動用の高電圧ICとを含み、前記第一の抵抗は前記フローティング電源への制御電源電力供給線に設けたことを特徴とする請求項7記載のモータ駆動装置。
【請求項14】
主電源線に第二の抵抗を設け、制御電源線に第一のダイオードを設けたことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−99231(P2013−99231A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243297(P2011−243297)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】