モータ
【課題】フレキシブル配線板を通した貫通孔からモータ内部への塵埃の侵入を防止することのできるモータを提供する。
【解決手段】ステータコア13が固定されたフレーム11と、ステータコア13に導体線を巻回して成るステータコイル14と、ステータコイル14に通電するためのフレキシブル配線板3とを具備してなるモータである。配線板3は、フレーム11の内底面11c側に配設された内側配線部31と、貫通孔11bを通じて外底面11d側に引き出された引出配線部32とを有する。引出配線部32の幅W2は貫通孔11bの長手長さLより小さく、該引出配線部32と内側配線部31は、引出配線部32の幅W2より大きい幅広封止部34を介して連なる。そして、幅広封止部34が貫通孔11bを塞ぐ位置にあって接着剤4でフレーム11に固着され、引出配線部32は、幅広封止部34との境界部分で接着剤4によりフレーム11に固着されている。
【解決手段】ステータコア13が固定されたフレーム11と、ステータコア13に導体線を巻回して成るステータコイル14と、ステータコイル14に通電するためのフレキシブル配線板3とを具備してなるモータである。配線板3は、フレーム11の内底面11c側に配設された内側配線部31と、貫通孔11bを通じて外底面11d側に引き出された引出配線部32とを有する。引出配線部32の幅W2は貫通孔11bの長手長さLより小さく、該引出配線部32と内側配線部31は、引出配線部32の幅W2より大きい幅広封止部34を介して連なる。そして、幅広封止部34が貫通孔11bを塞ぐ位置にあって接着剤4でフレーム11に固着され、引出配線部32は、幅広封止部34との境界部分で接着剤4によりフレーム11に固着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクをはじめとするディスク状記録媒体やポリゴンミラーなどを回転させるためのモータに係わり、特にベースフレームを貫通して外部からステータコイルに駆動電流を供給するためのフレキシブル配線板を備えるモータであって、そのフレキシブル配線板がベースフレームを貫通する部分からモータ内部に塵埃が侵入するのを防止できるようにしたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、精密機器類の駆動源として用いられるモータでは、ステータコイルに外部から駆動電流を供給する手段として、大きな配線領域を必要としない薄板状のフレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)を利用し、これをベースフレームに形成されるスリット状の貫通孔からモータの外部に引き出しているが、フレキシブル配線板をベースフレームに貫通させただけでは、その貫通孔からモータの内部に塵埃が侵入してモータの回転性能を損ねてしまい、ハードディスクドライブ(HDD)では情報の記録再生に支障を来たす虞もある。
【0003】
このため、フレキシブル配線板を通した貫通孔から塵埃が侵入せぬよう、その貫通孔を接着剤により閉鎖することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特に、フレキシブル配線板が通された貫通孔の位置において、ベースフレームの内側からシールを貼り付けて貫通孔を塞いだ後、ベースフレームの外側から貫通孔内に紫外線硬化樹脂を注入してこれを硬化させることが行われている(例えば、特許文献2)。
【0005】
又、モータが組み込まれる一眼レフカメラのレンズ鏡筒において、モータを仕込むべく筐体に形成した貫通孔にフレキシブル配線板を宛がい、これにより貫通孔を塞ぐようにしたものが知られている(例えば、特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−300746号公報(段落0021、図1)
【0007】
【特許文献2】特開平11−299168号公報(段落0028、図1〜図7)
【特許文献3】特開平1−235909号公報(第2〜3頁、第1〜第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1によれば、図13に示すように貫通孔Hに通されたフレキシブル配線板Cは、モータの外部でベースフレームFから浮き上がった状態に撓むので、貫通孔Hに接着剤Aを注入しても、フレキシブル配線板Cの撓み部Dfで貫通孔Hが開口したままになる。特に、図14(図13を下側からみた状態)のように、フレキシブル配線板Cの幅が貫通孔Hの長手長さと略同一の場合、貫通孔Hに注入した接着剤Aをフレキシブル配線板Cの撓み部Dfに良好に回り込ませることができないので、その部分からモータ内部に塵埃が侵入してしまう(図13に示される矢印を参照)。
【0009】
又、図15(図13を下側からみた状態)のように、貫通孔Hに対してフレキシブル配線板Cの幅を小さくすると、貫通孔Hに注入した接着剤をフレキシブル配線板Cの撓み部Dfに回り込ませることはできても、接着剤の多くがフレキシブル配線板Cと貫通孔Hの隙間からモータ内部に流入してしまうので、貫通孔Hの封止が却って困難になるほか、モータ内部に流入した接着剤が駆動部に付着してモータ性能に支障を来たす虞がある。
【0010】
一方、特許文献2では、シールを併用するので接着剤が貫通孔からモータ内部に流入してしまうことを防止できるが、貫通孔の位置に合わせてシールを貼り付ける作業は難儀であり、しかも作業工数や部品点数が増えるのでモータの生産性が悪化し、コスト高にもなるという問題がある。
【0011】
又、特許文献3のようにフレキシブル配線板を貫通孔に宛がっただけでは、貫通孔の封止が不確実となるし、貫通孔からフレキシブル配線板を引き出すような構造のモータには適用できない。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的はフレキシブル配線板を通した貫通孔からモータ内部への塵埃の侵入を防止することのできるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の目的を達成するため、
ステータコア13が固定されたベースフレーム11と、ステータコア13に導体線を巻回して成るステータコイル14と、そのステータコイル14に通電するための薄板状のフレキシブル配線板3と、を具備して構成されるモータにおいて、
フレキシブル配線板3は、
前記導体線の端部を導電接続したランド部31aを有してベースフレーム11の内底面11c側に配設された内側配線部31と、
ベースフレーム11に形成された長孔状の貫通孔11bを通じて内底面11c側から該内底面とは反対の外底面11d側に引き出された引出配線部32と、を有し、
引出配線部32の幅W2は貫通孔11bの長手長さLより小さく、該引出配線部32と内側配線部31は、引出配線部32の幅W2より大きい幅広封止部34を介して連なり、
その幅広封止部34が貫通孔11bを塞ぐ位置にあって該貫通孔11bに注入されたシーリング材4でベースフレーム11に固着され、
引出配線部32は、幅広封止部34との境界部分でシーリング材4によりベースフレーム11に固着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るモータによれば、ステータコイルに通電するためのフレキシブル配線板を備え、これが内側配線部と該内側配線部に連続して貫通孔から外部に引き出される引出配線部とを有し、その引出配線部の幅が貫通孔の長手長さより小さくされるため貫通孔への通し作業を容易に行うことができる。
【0015】
又、引出配線部と内側配線部は、引出配線部の幅より大きい幅広封止部を介して連なり、その幅広封止部が貫通孔を塞ぐ位置に配置されることから、シーリング材を貫通孔に注入したとき、そのシーリング材が貫通孔から漏れ出て意図せぬ部分に付着してしまうことを防止できる。
【0016】
特に、引出配線部と幅広封止部との境界部分では、貫通孔を形成するベースフレームと引出配線部との間にシーリング材が良好に回り込み、これが引出配線部の幅方向に沿って延びるようになるので、貫通孔を確実に塞いで外部からモータ内部に塵埃が侵入することを防止でき、しかも幅広封止部が貫通孔を塞ぐ位置でシーリング材によりベースフレームに固着されると共に、引出配線部も幅広封止部との境界部分でベースフレーム側に回り込んだシーリング材によりベースフレームに固着されるので、シーリング材によるフレキシブル配線板の接着強度が上がり、その剥離が防止されるので防塵効果を長期に亘って維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。尚、以下ではハードディスクを回転駆動するHDDモータを代表例として説明するが、本発明はその他のディスクを回転駆動するディスク駆動モータやポリゴンミラーを回転駆動する走査用モータなどとしても適用することができる。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明に係るモータの構成例を示した縦断面図である。同モータはハードディスク駆動装置(HDD)を構成するものであり、その形態はステータ1(固定子)の外周にロータ2(回転子)を設けたアウタロータ型とされる。
【0019】
本例において、ステータ1は、中心部分に筒状部11aを有するベースフレーム11と、その筒状部11a内に嵌め込まれる円筒状の軸受12などから構成される。ベースフレーム11は、鋳物(アルミダイカスト等)を切削するか、あるいは金属板(アルミ板やニッケル鍍金を施した鉄板等)をプレス加工するなどして形成されるもので、その筒状部11aの外周には珪素鋼板の積層物などから成るステータコア13が嵌着固定される。
【0020】
ステータコア13は、放射状に広がる複数の磁極ティース部13a(歯状突起)を有し、その各磁極ティース部13aには絶縁被膜を施した銅線などの導体線(コイル巻線)を巻回してステータコイル14が形成されている。そして、そのステータコイル14に後述するフレキシブル配線板3(FPC)を通じて駆動電流(電機子電流)が流されるようにしてある。
【0021】
又、軸受12は、銅系焼結金属やステンレス(SUS)などから形成されるラジアル動圧軸受であり、その一端はシール板15にて密閉されている。特に、軸受12は高い組立精度を得るために、ベースフレームの筒状部11a内に圧入もしくは接着剤にて固定されている。そして、係る軸受12内にはステンレスなどから成るロータ軸21が挿入され、そのロータ軸21が軸受12内に充填される潤滑油を介して回転自在に支持されるようにしてある。
【0022】
図1のように、ロータ軸21の一端外周には軸受12とシール板15とで挟まれる鍔部21aが形成され、その鍔部21aの上下両面もしくは該鍔部21aに対向する軸受12とシール板15の部位には図示せぬ動圧発生溝が形成されており、これによる潤滑油の加圧でロータ軸21に作用するスラスト荷重が支持されるようになっている。
【0023】
又、図1のようにロータ軸21の外周部にもヘリングボーン形の動圧発生溝21bが形成され、これによる潤滑油の加圧でロータ軸21に作用するラジアル荷重が支持されるようにしてあるが、その種の溝を軸受12の内周面に形成するか、軸受12とロータ軸21の双方に形成するようにしてもよい。尚、軸受12は動圧型に限らず、その他のすべり軸受や転がり軸受に代えることもできる。
【0024】
一方、ロータ2は、上記のロータ軸21や該ロータ軸21に固着されるロータハブ22などから構成される。ロータハブ22は、ステンレスなどから形成される断面凹字形の部材で、その中心が軸受12より突出するロータ軸21の先端に固着されている。特に、ロータハブ22の外周には鍔部22aが形成され、その鍔部22aでディスクD(本例においてハードディスク)が支持されるようになっている。又、ロータハブ22の内周面には、ステータコア13の各磁極ティース部13aの先端面(突極)に近接して、回転力を発生するに必要な磁束(界磁束)を発生する界磁マグネット23が装着されている。係る界磁マグネット23は、N極とS極が周方向に交互に着磁されたリング状の永久磁石(例えばNd−Fe−B系)であり、その表面にはニッケル鍍金が施されている。
【0025】
そして、以上のように構成されるモータによれば、ステータコイル14に駆動電流を流して回転磁界を発生させ、これに界磁マグネット23の磁束を作用せしめてロータハブ22の回転が行われる。
【0026】
図2は同モータの部分拡大図である。この図で明らかなように、ベースフレーム11にはモータ内部(ロータハブ22の内側であってステータコイル14などが位置する部分)に通じる貫通孔11bが形成され、その貫通孔11bを通じて上記のフレキシブル配線板3がベースフレーム11の内底面11c側から該内底面とは反対の外底面11d側に引き出されている。
【0027】
又、ベースフレーム11の外底面11dには、貫通孔11bから引き出されたフレキシブル配線板3を這わせるための凹部11eが形成される。尚、その凹部11eはベースフレーム11に固定される防塵板16により覆われるが、凹部11eの一端は外部に開放されているので、貫通孔11bを閉塞しなければ凹部11eの一端側から貫通孔11bを通じてモータ内部に塵埃が侵入してしまう。このため、貫通孔11b内にはシーリング材として紫外線硬化樹脂などから成る液状の接着剤4(粘性は5000mPa・s以上)が注入され、その硬化をもって貫通孔11bが塞がれている。
【0028】
図3は貫通孔の部分を外側からみた底面図であり、同図におけるハッチング部分は接着剤4の塗布領域をあらわしている。尚、図3から明らかなように、貫通孔11bはフレキシブル配線板3の引出方向(ベースフレーム11の半径方向)に対して直交する方向に延びる長孔状(その長手長さLがフレキシブル配線板3の引出方向と直交する態様)であり、本例においてその長手長さLは6.7mm、隙間寸法Sは1.0mmとされている。
【0029】
次に、図4はフレキシブル配線板を示す。この図で明らかなように、フレキシブル配線板3は、樹脂シートなどから絶縁基材3aを支持体とし、これに銅箔などから成る複数条(本例において4本)の導体パターン3bを形成した薄板状の形態で、その片側は円弧状の内側配線部31とされ、この内側配線部31の一端側に帯状の引出配線部32が連なる構成とされる。
【0030】
内側配線部31には、導体パターン3bの各一端が個別に導電接続する複数(本例において4つ)のランド部31aが設けられており、その各ランド部31aにステータコイルを形成する導体線(コイル巻線)の端部が導電接続されるようになっている。尚、本例において、図1に示したステータコイル14は、3相スター結線とするために、9つの磁極ティース部13aに対して3本の導体線が2つおきに巻回されているところ、それら導体線の各一端が3つのランド部31aに別々に導電接続されると共に、それら導体線の他の各一端がコモン端子として残る一つのランド部31aに導電接続される。
【0031】
又、引出配線部32の一端側には長方形状の端子部33が連続して形成され、その端子部33が図示せぬコネクタなどを介して駆動回路に接続される。
【0032】
ここで、引出配線部32と端子部33は、それぞれ上記の貫通孔11bに通し得るようその幅W2,W3が貫通孔の長手長さL(図3参照)よりも小さく(本例においてW2は2.4mm)されるが、内側配線部31と引出配線部32との連続部分には、引出配線部32より幅広な幅広封止部34が形成される。つまり、内側配線部31と引出配線部32は、引出配線部32の幅より大きな幅広封止部34を介して連ねられている。この幅広封止部34は、引出配線部32の幅方向両側に突出する翼状の突片であり、その幅W1は貫通孔の長手長さLと同じか、それよりも僅かに小さく設定されている。
【0033】
そして、係るフレキシブル配線板3によれば、引出配線部32が端子部33側から貫通孔11b内に通され、内側配線部31が両面テープなどによりベースフレームの内底面11cに貼着固定される。特に、幅広封止部34は貫通孔11bを塞ぐ位置に配置され、その幅広封止部34により貫通孔11bがその周縁部に僅少隙間を残して塞がれるようにしている。
【0034】
図5はフレキシブル配線板が通された貫通孔の部分を示す拡大図であり、図6には同部分を外側(ベースフレームの外底面11d側)からみた状態、図7には同部分を内側(ベースフレームの内底面11c側)からみた状態を示す。
【0035】
図5から明らかなように、幅広封止部34は、内側配線部31側の端縁34aがベースフレームの内底面11cに重なった状態で引出配線部32側が貫通孔11b内に導入される。特に、本例によれば、幅広封止部34は、引出配線部32側の端縁34bがベースフレームの外底面11dに重ねられず、その端縁34bと貫通孔11bとの間に隙間pが形成される。
【0036】
しかして、ベースフレーム11の外底面11d側から貫通孔11b内に接着剤を注入すると、幅広封止部34が接着剤4の支えになってモータ内部に接着剤4が垂れ込まず、その硬化をもって幅広封止部34がベースフレーム11に固着され、しかもその接着剤4は上記の隙間pからベースフレーム11と引出配線部32との間に回り込み、これによって引出配線部32も幅広封止部34との境界部分でベースフレーム11に固着される。従って、引出配線部32が浮き上がって撓み部Dfが拡大してしまうことがない。
【0037】
特に、ベースフレーム11と引出配線部32との間に回り込んだ接着剤4は、隙間pの毛管作用により図6に示す矢印のようにフレキシブル配線板3の撓み部Df内に良好に行き渡り、図7に示されるよう引出配線部32の全幅に亘って接着剤4が連なり、貫通孔11bが完全に塞がれるため、その貫通孔11bからモータ内部への塵埃の侵入が防止される。尚、引出配線部32の幅や接着剤4の粘性によっては、接着剤4が引出配線部32の全幅に亘って連ならない場合もあるが、引出配線部32の幅方向中央部に非接着部分が残っていても、貫通孔11bとの連通部分は極めて小さくなるので、塵埃が侵入する虞は殆どない。
【0038】
ここで、幅広封止部34は、内側配線部31側の端縁34aのみがベースフレーム11に重ねられることに限らず、図8のように引出配線部32側でも端縁34bがベースフレームの外底面11dに重なっていてもよい。そして、この場合でも図8のように幅広封止部34と引出配線部32との境界部分から、ベースフレーム11と引出配線部32との間に接着剤4を回し込み、幅広封止部34と引出配線部32とを接着剤4にてベースフレーム11に固着しながら貫通孔11bを完全に塞ぐことができる。
【0039】
次に、図9は幅広封止部の変形例を示す。図9において、幅広封止部34は内側配線部31と境目なく連なる形態であり、その幅W1は上記例と同じく引出配線部32より大きく、貫通孔11bの長手長さLに対しては同じか、それよりも若干小さくされる。そして、この種の幅広封止部34でも、これを貫通孔11b内に導入して接着剤4の支えとしながら、該幅広封止部34と引出配線部32との境界部分おいて、図5〜図8に示されるものと同様に、ベースフレーム11と引出配線部32との間に接着剤4を回し込んで貫通孔11bを完全に塞ぐことができる。
【0040】
尚、幅広封止部34の幅W1は、貫通孔11bの長手長さLと同じ、あるいはそれより若干小さくされることに限らず、その幅W1を貫通孔11bの長手長さLより大きくしてもよく、この場合には幅広封止部34は貫通孔11bを塞ぐ位置に配置されるものの貫通孔11b内には導入されず、図10のようにベースフレーム11の内底面11c側で貫通孔11bに宛がわれ、引出配線部32が貫通孔11b内を通じてベースフレームの外底面11d側に引き出される。
【0041】
そして、図10の示されるような態様でも、ベースフレームの外底面11d側から貫通孔11b内に注入される接着剤4により、幅広封止部34がベースフレーム11に固着されると共に、幅広封止部34と引出配線部32と境界部分において、引出配線部32とベースフレーム11(貫通孔11bの側壁)との間に接着剤4が回り込んで引出配線部32がベースフレーム11に固着される。特に、接着剤4は、フレキシブル配線板3に撓み部Dfが形成されても上記例と同じく貫通孔11bを完全に塞ぐので、モータ内部に塵埃が侵入するのを防止できる。
【実施例2】
【0042】
図11は、本発明に係るモータの他の構成例を示した縦断面図である。尚、実施例1と同一の機能、構成を有する部分について、ここでは同一符号を付して詳細な説明を省略する。ここに、このモータの形態は実施例1とは異なり、ステータ1(固定子)の内周にロータ2(回転子)を設けたインナロータ型とされる。
【0043】
尚、インナロータ型モータは、主として1.8インチHDDなどのように軸方向の設計制限が厳しいモータに適用される。このタイプでは、ステータコア13を外方側(ロータ軸21からより離れた位置)に設置し、ロータ部分を軸方向に拡大して設計できるので、軸剛性を確保しながら小型化に対応することができるという利点を有する反面、図1に示した構造のようにフレキシブル配線板3(FPC)を設置するスペースがベースフレーム11に存在しない。このため、ステータコア13の上方で、シールドプレート17と呼ばれる板材をベースフレーム11に取り付け、該シールドプレート17のベースフレーム11と対向する面側にフレキシブル配線板3を固着している。
【0044】
本来、シールドプレート17は、情報を磁気で記録する媒体であるディスクDに対し、インナロータ型ではむき出し状態になってしまうステータコア13やロータ部に存在する界磁マグネット23から発される磁束を漏洩させないためのものであるが、本例ではそのシールドプレート17の底面部にフレキシブル配線板3を固着する一方、ベースフレーム11には実施例1と同様にモータ内部(ロータハブ22より外周であってステータコア13に近接する部分)に通じる貫通孔11bを形成し、その貫通孔11bを通じてフレキシブル配線板3をベースフレーム11の内底面11c側から該内底面とは反対の外底面11d側に引き出している。
【0045】
そして、このような態様でも、実施例1と同じくベースフレーム11の外底面11d側から貫通孔11b内に注入される接着剤4により、図12のように幅広封止部34がベースフレーム11に固着されると共に、幅広封止部34と引出配線部32との境界部分において、引出配線部32とベースフレーム11(貫通孔11bの側壁)との間に接着剤4が回り込んで引出配線部32がベースフレーム11に固着される。特に、図5〜図10に示したようにフレキシブル配線板3に撓み部Dfが形成されても、接着剤4は実施例1と同じく貫通孔11bを完全に塞ぐので、モータ内部に塵埃が侵入するのを防止できる。
【0046】
尚、実施例2では、シールドプレート17が存在するため、ベースプレート11の外底面11d側からしか紫外線を照射することができないので、接着剤4にはアウトガスを考慮して熱硬化型接着剤や乾燥硬化型接着剤を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るモータの構成例を示す縦断面図
【図2】同モータの部分拡大断面図
【図3】フレキシブル配線板の引き出し部分を示す底面図
【図4】フレキシブル配線板を示す平面図
【図5】フレキシブル配線板が通された貫通孔の横断面図
【図6】図5の部分をモータ外部からみた状態を示す説明図
【図7】図5の部分をモータ内部からみた状態を示す説明図
【図8】フレキシブル配線板が通された貫通孔の他の態様を示す横断面図
【図9】フレキシブル配線板の変更例を示す平面図
【図10】フレキシブル配線板が通された貫通孔の他の態様を示す横断面図
【図11】本発明に係るモータの他の構成例を示す縦断面図
【図12】図11の部分拡大図
【図13】従来例を示す要部断面図
【図14】従来例の説明図
【図15】従来例の説明図
【符号の説明】
【0048】
11 ベースフレーム
11b 貫通孔
11c 内底面
11d 外底面
13 ステータコア
14 ステータコイル
3 フレキシブル配線板
31 内側配線部
31a ランド部
32 引出配線部
34 幅広封止部
4 シーリング材(接着剤)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクをはじめとするディスク状記録媒体やポリゴンミラーなどを回転させるためのモータに係わり、特にベースフレームを貫通して外部からステータコイルに駆動電流を供給するためのフレキシブル配線板を備えるモータであって、そのフレキシブル配線板がベースフレームを貫通する部分からモータ内部に塵埃が侵入するのを防止できるようにしたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、精密機器類の駆動源として用いられるモータでは、ステータコイルに外部から駆動電流を供給する手段として、大きな配線領域を必要としない薄板状のフレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)を利用し、これをベースフレームに形成されるスリット状の貫通孔からモータの外部に引き出しているが、フレキシブル配線板をベースフレームに貫通させただけでは、その貫通孔からモータの内部に塵埃が侵入してモータの回転性能を損ねてしまい、ハードディスクドライブ(HDD)では情報の記録再生に支障を来たす虞もある。
【0003】
このため、フレキシブル配線板を通した貫通孔から塵埃が侵入せぬよう、その貫通孔を接着剤により閉鎖することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特に、フレキシブル配線板が通された貫通孔の位置において、ベースフレームの内側からシールを貼り付けて貫通孔を塞いだ後、ベースフレームの外側から貫通孔内に紫外線硬化樹脂を注入してこれを硬化させることが行われている(例えば、特許文献2)。
【0005】
又、モータが組み込まれる一眼レフカメラのレンズ鏡筒において、モータを仕込むべく筐体に形成した貫通孔にフレキシブル配線板を宛がい、これにより貫通孔を塞ぐようにしたものが知られている(例えば、特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−300746号公報(段落0021、図1)
【0007】
【特許文献2】特開平11−299168号公報(段落0028、図1〜図7)
【特許文献3】特開平1−235909号公報(第2〜3頁、第1〜第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1によれば、図13に示すように貫通孔Hに通されたフレキシブル配線板Cは、モータの外部でベースフレームFから浮き上がった状態に撓むので、貫通孔Hに接着剤Aを注入しても、フレキシブル配線板Cの撓み部Dfで貫通孔Hが開口したままになる。特に、図14(図13を下側からみた状態)のように、フレキシブル配線板Cの幅が貫通孔Hの長手長さと略同一の場合、貫通孔Hに注入した接着剤Aをフレキシブル配線板Cの撓み部Dfに良好に回り込ませることができないので、その部分からモータ内部に塵埃が侵入してしまう(図13に示される矢印を参照)。
【0009】
又、図15(図13を下側からみた状態)のように、貫通孔Hに対してフレキシブル配線板Cの幅を小さくすると、貫通孔Hに注入した接着剤をフレキシブル配線板Cの撓み部Dfに回り込ませることはできても、接着剤の多くがフレキシブル配線板Cと貫通孔Hの隙間からモータ内部に流入してしまうので、貫通孔Hの封止が却って困難になるほか、モータ内部に流入した接着剤が駆動部に付着してモータ性能に支障を来たす虞がある。
【0010】
一方、特許文献2では、シールを併用するので接着剤が貫通孔からモータ内部に流入してしまうことを防止できるが、貫通孔の位置に合わせてシールを貼り付ける作業は難儀であり、しかも作業工数や部品点数が増えるのでモータの生産性が悪化し、コスト高にもなるという問題がある。
【0011】
又、特許文献3のようにフレキシブル配線板を貫通孔に宛がっただけでは、貫通孔の封止が不確実となるし、貫通孔からフレキシブル配線板を引き出すような構造のモータには適用できない。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的はフレキシブル配線板を通した貫通孔からモータ内部への塵埃の侵入を防止することのできるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の目的を達成するため、
ステータコア13が固定されたベースフレーム11と、ステータコア13に導体線を巻回して成るステータコイル14と、そのステータコイル14に通電するための薄板状のフレキシブル配線板3と、を具備して構成されるモータにおいて、
フレキシブル配線板3は、
前記導体線の端部を導電接続したランド部31aを有してベースフレーム11の内底面11c側に配設された内側配線部31と、
ベースフレーム11に形成された長孔状の貫通孔11bを通じて内底面11c側から該内底面とは反対の外底面11d側に引き出された引出配線部32と、を有し、
引出配線部32の幅W2は貫通孔11bの長手長さLより小さく、該引出配線部32と内側配線部31は、引出配線部32の幅W2より大きい幅広封止部34を介して連なり、
その幅広封止部34が貫通孔11bを塞ぐ位置にあって該貫通孔11bに注入されたシーリング材4でベースフレーム11に固着され、
引出配線部32は、幅広封止部34との境界部分でシーリング材4によりベースフレーム11に固着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るモータによれば、ステータコイルに通電するためのフレキシブル配線板を備え、これが内側配線部と該内側配線部に連続して貫通孔から外部に引き出される引出配線部とを有し、その引出配線部の幅が貫通孔の長手長さより小さくされるため貫通孔への通し作業を容易に行うことができる。
【0015】
又、引出配線部と内側配線部は、引出配線部の幅より大きい幅広封止部を介して連なり、その幅広封止部が貫通孔を塞ぐ位置に配置されることから、シーリング材を貫通孔に注入したとき、そのシーリング材が貫通孔から漏れ出て意図せぬ部分に付着してしまうことを防止できる。
【0016】
特に、引出配線部と幅広封止部との境界部分では、貫通孔を形成するベースフレームと引出配線部との間にシーリング材が良好に回り込み、これが引出配線部の幅方向に沿って延びるようになるので、貫通孔を確実に塞いで外部からモータ内部に塵埃が侵入することを防止でき、しかも幅広封止部が貫通孔を塞ぐ位置でシーリング材によりベースフレームに固着されると共に、引出配線部も幅広封止部との境界部分でベースフレーム側に回り込んだシーリング材によりベースフレームに固着されるので、シーリング材によるフレキシブル配線板の接着強度が上がり、その剥離が防止されるので防塵効果を長期に亘って維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。尚、以下ではハードディスクを回転駆動するHDDモータを代表例として説明するが、本発明はその他のディスクを回転駆動するディスク駆動モータやポリゴンミラーを回転駆動する走査用モータなどとしても適用することができる。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明に係るモータの構成例を示した縦断面図である。同モータはハードディスク駆動装置(HDD)を構成するものであり、その形態はステータ1(固定子)の外周にロータ2(回転子)を設けたアウタロータ型とされる。
【0019】
本例において、ステータ1は、中心部分に筒状部11aを有するベースフレーム11と、その筒状部11a内に嵌め込まれる円筒状の軸受12などから構成される。ベースフレーム11は、鋳物(アルミダイカスト等)を切削するか、あるいは金属板(アルミ板やニッケル鍍金を施した鉄板等)をプレス加工するなどして形成されるもので、その筒状部11aの外周には珪素鋼板の積層物などから成るステータコア13が嵌着固定される。
【0020】
ステータコア13は、放射状に広がる複数の磁極ティース部13a(歯状突起)を有し、その各磁極ティース部13aには絶縁被膜を施した銅線などの導体線(コイル巻線)を巻回してステータコイル14が形成されている。そして、そのステータコイル14に後述するフレキシブル配線板3(FPC)を通じて駆動電流(電機子電流)が流されるようにしてある。
【0021】
又、軸受12は、銅系焼結金属やステンレス(SUS)などから形成されるラジアル動圧軸受であり、その一端はシール板15にて密閉されている。特に、軸受12は高い組立精度を得るために、ベースフレームの筒状部11a内に圧入もしくは接着剤にて固定されている。そして、係る軸受12内にはステンレスなどから成るロータ軸21が挿入され、そのロータ軸21が軸受12内に充填される潤滑油を介して回転自在に支持されるようにしてある。
【0022】
図1のように、ロータ軸21の一端外周には軸受12とシール板15とで挟まれる鍔部21aが形成され、その鍔部21aの上下両面もしくは該鍔部21aに対向する軸受12とシール板15の部位には図示せぬ動圧発生溝が形成されており、これによる潤滑油の加圧でロータ軸21に作用するスラスト荷重が支持されるようになっている。
【0023】
又、図1のようにロータ軸21の外周部にもヘリングボーン形の動圧発生溝21bが形成され、これによる潤滑油の加圧でロータ軸21に作用するラジアル荷重が支持されるようにしてあるが、その種の溝を軸受12の内周面に形成するか、軸受12とロータ軸21の双方に形成するようにしてもよい。尚、軸受12は動圧型に限らず、その他のすべり軸受や転がり軸受に代えることもできる。
【0024】
一方、ロータ2は、上記のロータ軸21や該ロータ軸21に固着されるロータハブ22などから構成される。ロータハブ22は、ステンレスなどから形成される断面凹字形の部材で、その中心が軸受12より突出するロータ軸21の先端に固着されている。特に、ロータハブ22の外周には鍔部22aが形成され、その鍔部22aでディスクD(本例においてハードディスク)が支持されるようになっている。又、ロータハブ22の内周面には、ステータコア13の各磁極ティース部13aの先端面(突極)に近接して、回転力を発生するに必要な磁束(界磁束)を発生する界磁マグネット23が装着されている。係る界磁マグネット23は、N極とS極が周方向に交互に着磁されたリング状の永久磁石(例えばNd−Fe−B系)であり、その表面にはニッケル鍍金が施されている。
【0025】
そして、以上のように構成されるモータによれば、ステータコイル14に駆動電流を流して回転磁界を発生させ、これに界磁マグネット23の磁束を作用せしめてロータハブ22の回転が行われる。
【0026】
図2は同モータの部分拡大図である。この図で明らかなように、ベースフレーム11にはモータ内部(ロータハブ22の内側であってステータコイル14などが位置する部分)に通じる貫通孔11bが形成され、その貫通孔11bを通じて上記のフレキシブル配線板3がベースフレーム11の内底面11c側から該内底面とは反対の外底面11d側に引き出されている。
【0027】
又、ベースフレーム11の外底面11dには、貫通孔11bから引き出されたフレキシブル配線板3を這わせるための凹部11eが形成される。尚、その凹部11eはベースフレーム11に固定される防塵板16により覆われるが、凹部11eの一端は外部に開放されているので、貫通孔11bを閉塞しなければ凹部11eの一端側から貫通孔11bを通じてモータ内部に塵埃が侵入してしまう。このため、貫通孔11b内にはシーリング材として紫外線硬化樹脂などから成る液状の接着剤4(粘性は5000mPa・s以上)が注入され、その硬化をもって貫通孔11bが塞がれている。
【0028】
図3は貫通孔の部分を外側からみた底面図であり、同図におけるハッチング部分は接着剤4の塗布領域をあらわしている。尚、図3から明らかなように、貫通孔11bはフレキシブル配線板3の引出方向(ベースフレーム11の半径方向)に対して直交する方向に延びる長孔状(その長手長さLがフレキシブル配線板3の引出方向と直交する態様)であり、本例においてその長手長さLは6.7mm、隙間寸法Sは1.0mmとされている。
【0029】
次に、図4はフレキシブル配線板を示す。この図で明らかなように、フレキシブル配線板3は、樹脂シートなどから絶縁基材3aを支持体とし、これに銅箔などから成る複数条(本例において4本)の導体パターン3bを形成した薄板状の形態で、その片側は円弧状の内側配線部31とされ、この内側配線部31の一端側に帯状の引出配線部32が連なる構成とされる。
【0030】
内側配線部31には、導体パターン3bの各一端が個別に導電接続する複数(本例において4つ)のランド部31aが設けられており、その各ランド部31aにステータコイルを形成する導体線(コイル巻線)の端部が導電接続されるようになっている。尚、本例において、図1に示したステータコイル14は、3相スター結線とするために、9つの磁極ティース部13aに対して3本の導体線が2つおきに巻回されているところ、それら導体線の各一端が3つのランド部31aに別々に導電接続されると共に、それら導体線の他の各一端がコモン端子として残る一つのランド部31aに導電接続される。
【0031】
又、引出配線部32の一端側には長方形状の端子部33が連続して形成され、その端子部33が図示せぬコネクタなどを介して駆動回路に接続される。
【0032】
ここで、引出配線部32と端子部33は、それぞれ上記の貫通孔11bに通し得るようその幅W2,W3が貫通孔の長手長さL(図3参照)よりも小さく(本例においてW2は2.4mm)されるが、内側配線部31と引出配線部32との連続部分には、引出配線部32より幅広な幅広封止部34が形成される。つまり、内側配線部31と引出配線部32は、引出配線部32の幅より大きな幅広封止部34を介して連ねられている。この幅広封止部34は、引出配線部32の幅方向両側に突出する翼状の突片であり、その幅W1は貫通孔の長手長さLと同じか、それよりも僅かに小さく設定されている。
【0033】
そして、係るフレキシブル配線板3によれば、引出配線部32が端子部33側から貫通孔11b内に通され、内側配線部31が両面テープなどによりベースフレームの内底面11cに貼着固定される。特に、幅広封止部34は貫通孔11bを塞ぐ位置に配置され、その幅広封止部34により貫通孔11bがその周縁部に僅少隙間を残して塞がれるようにしている。
【0034】
図5はフレキシブル配線板が通された貫通孔の部分を示す拡大図であり、図6には同部分を外側(ベースフレームの外底面11d側)からみた状態、図7には同部分を内側(ベースフレームの内底面11c側)からみた状態を示す。
【0035】
図5から明らかなように、幅広封止部34は、内側配線部31側の端縁34aがベースフレームの内底面11cに重なった状態で引出配線部32側が貫通孔11b内に導入される。特に、本例によれば、幅広封止部34は、引出配線部32側の端縁34bがベースフレームの外底面11dに重ねられず、その端縁34bと貫通孔11bとの間に隙間pが形成される。
【0036】
しかして、ベースフレーム11の外底面11d側から貫通孔11b内に接着剤を注入すると、幅広封止部34が接着剤4の支えになってモータ内部に接着剤4が垂れ込まず、その硬化をもって幅広封止部34がベースフレーム11に固着され、しかもその接着剤4は上記の隙間pからベースフレーム11と引出配線部32との間に回り込み、これによって引出配線部32も幅広封止部34との境界部分でベースフレーム11に固着される。従って、引出配線部32が浮き上がって撓み部Dfが拡大してしまうことがない。
【0037】
特に、ベースフレーム11と引出配線部32との間に回り込んだ接着剤4は、隙間pの毛管作用により図6に示す矢印のようにフレキシブル配線板3の撓み部Df内に良好に行き渡り、図7に示されるよう引出配線部32の全幅に亘って接着剤4が連なり、貫通孔11bが完全に塞がれるため、その貫通孔11bからモータ内部への塵埃の侵入が防止される。尚、引出配線部32の幅や接着剤4の粘性によっては、接着剤4が引出配線部32の全幅に亘って連ならない場合もあるが、引出配線部32の幅方向中央部に非接着部分が残っていても、貫通孔11bとの連通部分は極めて小さくなるので、塵埃が侵入する虞は殆どない。
【0038】
ここで、幅広封止部34は、内側配線部31側の端縁34aのみがベースフレーム11に重ねられることに限らず、図8のように引出配線部32側でも端縁34bがベースフレームの外底面11dに重なっていてもよい。そして、この場合でも図8のように幅広封止部34と引出配線部32との境界部分から、ベースフレーム11と引出配線部32との間に接着剤4を回し込み、幅広封止部34と引出配線部32とを接着剤4にてベースフレーム11に固着しながら貫通孔11bを完全に塞ぐことができる。
【0039】
次に、図9は幅広封止部の変形例を示す。図9において、幅広封止部34は内側配線部31と境目なく連なる形態であり、その幅W1は上記例と同じく引出配線部32より大きく、貫通孔11bの長手長さLに対しては同じか、それよりも若干小さくされる。そして、この種の幅広封止部34でも、これを貫通孔11b内に導入して接着剤4の支えとしながら、該幅広封止部34と引出配線部32との境界部分おいて、図5〜図8に示されるものと同様に、ベースフレーム11と引出配線部32との間に接着剤4を回し込んで貫通孔11bを完全に塞ぐことができる。
【0040】
尚、幅広封止部34の幅W1は、貫通孔11bの長手長さLと同じ、あるいはそれより若干小さくされることに限らず、その幅W1を貫通孔11bの長手長さLより大きくしてもよく、この場合には幅広封止部34は貫通孔11bを塞ぐ位置に配置されるものの貫通孔11b内には導入されず、図10のようにベースフレーム11の内底面11c側で貫通孔11bに宛がわれ、引出配線部32が貫通孔11b内を通じてベースフレームの外底面11d側に引き出される。
【0041】
そして、図10の示されるような態様でも、ベースフレームの外底面11d側から貫通孔11b内に注入される接着剤4により、幅広封止部34がベースフレーム11に固着されると共に、幅広封止部34と引出配線部32と境界部分において、引出配線部32とベースフレーム11(貫通孔11bの側壁)との間に接着剤4が回り込んで引出配線部32がベースフレーム11に固着される。特に、接着剤4は、フレキシブル配線板3に撓み部Dfが形成されても上記例と同じく貫通孔11bを完全に塞ぐので、モータ内部に塵埃が侵入するのを防止できる。
【実施例2】
【0042】
図11は、本発明に係るモータの他の構成例を示した縦断面図である。尚、実施例1と同一の機能、構成を有する部分について、ここでは同一符号を付して詳細な説明を省略する。ここに、このモータの形態は実施例1とは異なり、ステータ1(固定子)の内周にロータ2(回転子)を設けたインナロータ型とされる。
【0043】
尚、インナロータ型モータは、主として1.8インチHDDなどのように軸方向の設計制限が厳しいモータに適用される。このタイプでは、ステータコア13を外方側(ロータ軸21からより離れた位置)に設置し、ロータ部分を軸方向に拡大して設計できるので、軸剛性を確保しながら小型化に対応することができるという利点を有する反面、図1に示した構造のようにフレキシブル配線板3(FPC)を設置するスペースがベースフレーム11に存在しない。このため、ステータコア13の上方で、シールドプレート17と呼ばれる板材をベースフレーム11に取り付け、該シールドプレート17のベースフレーム11と対向する面側にフレキシブル配線板3を固着している。
【0044】
本来、シールドプレート17は、情報を磁気で記録する媒体であるディスクDに対し、インナロータ型ではむき出し状態になってしまうステータコア13やロータ部に存在する界磁マグネット23から発される磁束を漏洩させないためのものであるが、本例ではそのシールドプレート17の底面部にフレキシブル配線板3を固着する一方、ベースフレーム11には実施例1と同様にモータ内部(ロータハブ22より外周であってステータコア13に近接する部分)に通じる貫通孔11bを形成し、その貫通孔11bを通じてフレキシブル配線板3をベースフレーム11の内底面11c側から該内底面とは反対の外底面11d側に引き出している。
【0045】
そして、このような態様でも、実施例1と同じくベースフレーム11の外底面11d側から貫通孔11b内に注入される接着剤4により、図12のように幅広封止部34がベースフレーム11に固着されると共に、幅広封止部34と引出配線部32との境界部分において、引出配線部32とベースフレーム11(貫通孔11bの側壁)との間に接着剤4が回り込んで引出配線部32がベースフレーム11に固着される。特に、図5〜図10に示したようにフレキシブル配線板3に撓み部Dfが形成されても、接着剤4は実施例1と同じく貫通孔11bを完全に塞ぐので、モータ内部に塵埃が侵入するのを防止できる。
【0046】
尚、実施例2では、シールドプレート17が存在するため、ベースプレート11の外底面11d側からしか紫外線を照射することができないので、接着剤4にはアウトガスを考慮して熱硬化型接着剤や乾燥硬化型接着剤を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るモータの構成例を示す縦断面図
【図2】同モータの部分拡大断面図
【図3】フレキシブル配線板の引き出し部分を示す底面図
【図4】フレキシブル配線板を示す平面図
【図5】フレキシブル配線板が通された貫通孔の横断面図
【図6】図5の部分をモータ外部からみた状態を示す説明図
【図7】図5の部分をモータ内部からみた状態を示す説明図
【図8】フレキシブル配線板が通された貫通孔の他の態様を示す横断面図
【図9】フレキシブル配線板の変更例を示す平面図
【図10】フレキシブル配線板が通された貫通孔の他の態様を示す横断面図
【図11】本発明に係るモータの他の構成例を示す縦断面図
【図12】図11の部分拡大図
【図13】従来例を示す要部断面図
【図14】従来例の説明図
【図15】従来例の説明図
【符号の説明】
【0048】
11 ベースフレーム
11b 貫通孔
11c 内底面
11d 外底面
13 ステータコア
14 ステータコイル
3 フレキシブル配線板
31 内側配線部
31a ランド部
32 引出配線部
34 幅広封止部
4 シーリング材(接着剤)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアが固定されたベースフレームと、前記ステータコアに導体線を巻回して成るステータコイルと、そのステータコイルに通電するための薄板状のフレキシブル配線板と、を具備して構成されるモータにおいて、
前記フレキシブル配線板は、
前記導体線の端部を導電接続したランド部を有して前記ベースフレームの内底面側に配設された内側配線部と、
前記ベースフレームに形成された長孔状の貫通孔を通じて前記内底面側から該内底面とは反対の外底面側に引き出された引出配線部と、を有し、
前記引出配線部の幅は前記貫通孔の長手長さより小さく、該引出配線部と前記内側配線部は、前記引出配線部の幅より大きい幅広封止部を介して連なり、
その幅広封止部が前記貫通孔を塞ぐ位置にあって該貫通孔に注入されたシーリング材で前記ベースフレームに固着され、
前記引出配線部は、前記幅広封止部との境界部分で前記シーリング材により前記ベースフレームに固着されていることを特徴とするモータ。
【請求項1】
ステータコアが固定されたベースフレームと、前記ステータコアに導体線を巻回して成るステータコイルと、そのステータコイルに通電するための薄板状のフレキシブル配線板と、を具備して構成されるモータにおいて、
前記フレキシブル配線板は、
前記導体線の端部を導電接続したランド部を有して前記ベースフレームの内底面側に配設された内側配線部と、
前記ベースフレームに形成された長孔状の貫通孔を通じて前記内底面側から該内底面とは反対の外底面側に引き出された引出配線部と、を有し、
前記引出配線部の幅は前記貫通孔の長手長さより小さく、該引出配線部と前記内側配線部は、前記引出配線部の幅より大きい幅広封止部を介して連なり、
その幅広封止部が前記貫通孔を塞ぐ位置にあって該貫通孔に注入されたシーリング材で前記ベースフレームに固着され、
前記引出配線部は、前記幅広封止部との境界部分で前記シーリング材により前記ベースフレームに固着されていることを特徴とするモータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−211961(P2008−211961A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267364(P2007−267364)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(508100033)アルファナ テクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(508100033)アルファナ テクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】
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