説明

モータ

【課題】出力軸の軸受部分からの異物侵入をより確実に防止できるモータを提供する。
【解決手段】出力軸14の先端部側から軸受保持孔20側への油分等の異物侵入を防止するためのスリンガ24は、装着孔24a周囲の環状の平板部24bがジョイント23とボール軸受21の内輪21bとで軸方向に挟圧保持(圧接挟持)されて環状に圧接し、出力軸14に一体回転するように装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力軸部分において外部からの油分等の異物侵入を防止する構造を有するモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な構成のモータが知られているが、その一つに、有底筒状のヨークハウジング内に回転電機子を収容し、該ハウジングの開口部を閉塞するエンドフレームに回転電機子の出力軸を貫通させてボール軸受にて支持し、その出力軸の先端部を外部に突出させる構成ものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、出力軸の先端部が天方向に向くようにモータが装置に対して取り付けられる場合、出力軸の先端部やエンドフレーム表面に付着した油分等が軸受保持孔内に侵入してボール軸受側に到達すると、内輪と出力軸との間、内輪と外輪との間、外輪とエンドフレームとの間の各隙間からその油分等がモータ内に侵入してしまう。特に、エンドフレーム側に回転電機子の整流子が配置されている場合では、侵入してきた油分等がその整流子や給電ブラシに付着し、不具合を生じさせる虞があった。
【0004】
そこで、出力軸方向から見て軸受保持孔の開口部を細い隙間からなるラビリンス構造を設けて覆うように出力軸に対して軸封部材(遮蔽部材に相当)を装着し、該軸封部材にて油分等のボール軸受側への到達を抑制する構成のものも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−257483号公報
【特許文献2】実開昭59−25941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、細い隙間からなるラビリンス構造を設けた場合においても、軸封部材の外表面にて径方向外側に油分等が伝わって隙間に到達すると、毛管作用やモータ内が負圧状態になることにより、その油分等が隙間を通じてボール軸受に到達し、モータ内へ侵入する虞がある。また、軸封部材の径方向内側に油分等が伝わり出力軸まで伝わると、その出力軸を伝ってボール軸受側に到達し、そこからモータ内に侵入する虞もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、出力軸の軸受部分からの異物侵入をより確実に防止することができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハウジング部材に設けた軸受保持孔に軸受を介して出力軸を回転可能に支持し、該出力軸の先端部を外部に突出させて構成されるモータであって、装着孔を有する環状をなして前記出力軸に一体回転するように装着され、該装着による異物侵入の遮蔽及び前記出力軸との一体回転時の遠心力による異物の飛散作用にて、前記出力軸の先端部側から前記軸受保持孔側への異物侵入を防止する遮蔽部材を備えており、前記遮蔽部材は前記装着孔の周囲に環状の平板部を有し、該平板部の少なくとも一面が軸方向に位置する被当接部材に対し環状に圧接していることをその要旨とする。
【0009】
この発明では、出力軸の先端部側から軸受保持孔側への異物侵入を防止するための遮蔽部材は、出力軸に一体回転するように装着され、装着孔周囲の環状の平板部においてその少なくとも一面が軸方向に位置する被当接部材に対し環状に圧接する。これにより、出力軸の回転時には、遮蔽部材に付着した油分等の異物が出力軸との一体回転による遠心力の作用にて径方向外側に飛散する。また、出力軸の非回転時等において遮蔽部材に付着した油分等の異物が径方向内側に移動しても、遮蔽部材の装着孔周りの平板部が被当接部材と環状に圧接することから、その圧接部分以内への異物の移動が抑制される。これにより、遮蔽部材の径方向外側及び内側からの油分等の異物侵入がより確実に防止される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記出力軸の先端側には前記遮蔽部材の装着孔を軸方向に覆う前記被当接部材たる第1部材が固定されるとともに、前記遮蔽部材よりも反先端部側には前記被当接部材たる第2部材が設けられ、前記遮蔽部材は、その環状の平板部が前記第1部材と前記第2部材とにそれぞれ環状に当接した状態で軸方向に挟圧保持されていることをその要旨とする。
【0011】
この発明では、遮蔽部材は、その環状の平板部が第1及び第2部材にて軸方向に挟圧保持される。つまり、遮蔽部材は、出力軸に固定される第1及び第2部材に対して密着しシール性の高い状態で挟持されるため、遮蔽部材の装着孔側への油分等の異物侵入、即ち装着孔から軸受側への異物侵入が防止される。また、遮蔽部材は、出力軸に固定される第1及び第2部材にて挟持されるため、例えば遮蔽部材の固定に出力軸への圧入等を用いない容易な固定態様を採用しても空転を防止でき、出力軸との一体回転が可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材は、前記被当接部材よりも低剛性の軟材料にて構成されたことをその要旨とする。
この発明では、遮蔽部材は、該遮蔽部材と圧接する被当接部材よりも低剛性の軟材料にて構成されるため、遮蔽部材と被当接部材との圧接時に相互がより密着状態となり、高いシール性を容易に確保できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材は銅系材、前記被当接部材は鉄系材にて構成されたことをその要旨とする。
この発明では、遮蔽部材は銅系材、被当接部材は鉄系材にて構成、即ち遮蔽部材が被当接部材よりも軟材料にて構成されるため、遮蔽部材と被当接部材とがより密着し、高いシール性を容易に確保できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材の平板部における前記出力軸の先端部側の面には、その平板部の内側の前記装着孔側への異物侵入を防止するシール手段が備えられたことをその要旨とする。
【0015】
この発明では、遮蔽部材の平板部における出力軸の先端部側の面には、その平板部の内側の装着孔側への異物侵入を防止するシール手段が備えられる。つまり、シール手段にて、遮蔽部材の装着孔側への油分等の異物侵入、即ち装着孔から軸受側への異物侵入が防止される。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のモータにおいて、前記シール手段は、前記遮蔽部材の平板部における前記出力軸の先端部側の面とその面に対向する前記被当接部材とに当接するようにその部材間に介在されるシール部材を含むことをその要旨とする。
【0017】
この発明では、遮蔽部材と被当接部材とに当接するようにシール部材がその部材間に介在される。これにより、各部材間の隙間のシールが効率良く行われる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のモータにおいて、前記シール部材は、更に前記出力軸に対して当接することをその要旨とする。
【0018】
この発明では、シール部材は更に出力軸に対しても当接、即ち遮蔽部材、被当接部材及び出力軸の3部材に跨って当接するため、各部材間の隙間のシールが効率良く行われる。
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載のモータにおいて、前記シール部材は、前記被当接部材、前記遮蔽部材及び前記出力軸の少なくとも1部材に形成された収容部内に収容されたことをその要旨とする。
【0019】
この発明では、シール部材は被当接部材、遮蔽部材及び出力軸の少なくとも1部材に形成された収容部内に収容されるため、シール部材の位置ズレ防止や、シール部材の各部材に対する接触状態を安定させることが可能となる。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載のモータにおいて、前記シール手段は、前記遮蔽部材の平板部の装着孔周りに一体形成された環状凸部を含み、該環状凸部にて前記被当接部材に環状に当接してシールすることをその要旨とする。
【0021】
この発明では、遮蔽部材の平板部の装着孔周りに環状凸部が一体形成され、該環状凸部にて被当接部材に環状に当接してシールする。つまり、遮蔽部材と被当接部材との間のシールを該遮蔽部材に一体形成した環状凸部にて部品点数を増加させずに容易にシールでき、また遮蔽部材と被当接部材との圧接の際に環状凸部の先端部が被当接部材にて潰れその当接面の平面形状に倣い易くなるため、相互の密着性を高くでき、シール性を高くすることが可能となる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のモータにおいて、前記環状凸部は、前記被当接部材からの押圧力にて前記装着孔の内周面が前記出力軸に圧接するように折り曲げられてなることをその要旨とする。
【0023】
この発明では、遮蔽部材と被当接部材との間をシールすべく該遮蔽部材に設けた環状凸部は、圧接する被当接部材からの押圧力にて出力軸に対して圧接力が生じるように折り曲げられて構成される。つまり、遮蔽部材と被当接部材との圧接の際に環状凸部に押圧力が作用すると、該遮蔽部材の装着孔の内周面が出力軸に圧接し密着性が高くなるため、遮蔽部材と出力軸との間のシール性も高くすることが可能となる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材は、少なくとも外周側部分が前記出力軸の先端側に向けて傾斜した傾斜部を有して構成されたことをその要旨とする。
【0025】
この発明では、遮蔽部材は、少なくとも外周側部分が出力軸の先端側(ハウジング部材とは反対側)に向けて傾斜した傾斜部を有するため、出力軸との一体回転時の遠心力による異物の飛散作用にて、遮蔽部材に付着した油分等の異物を自身から、即ち軸受部分からより遠くに飛散させることができ、軸受部分への油分等の異物侵入の抑制に寄与できる。
【0026】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材は、前記傾斜部が前記出力軸の軸直交方向に対して45°に設定されたことをその要旨とする。
この発明では、遮蔽部材はその傾斜部が出力軸の軸直交方向に対して45°に設定されるため、出力軸との一体回転時の飛散作用にて油分等の異物をより確実に遠くに飛散させることが可能となる。
【0027】
請求項13に記載の発明は、請求項11に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材は、前記傾斜部が径方向外側ほど前記出力軸に対して離間する方向に湾曲する形状にて構成されたことをその要旨とする。
【0028】
この発明では、遮蔽部材はその傾斜部が径方向外側ほど出力軸に対して離間する方向に湾曲する形状をなすことから、出力軸との一体回転時の飛散作用にて油分等の異物をより確実に遠くに飛散させることが可能となる。
【0029】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材は、その外周縁部が前記軸受保持孔の開口部よりも径方向外側に延出されて構成されたことをその要旨とする。
【0030】
この発明では、遮蔽部材はその外周縁部が軸受保持孔の開口部よりも径方向外側に延出されることから、出力軸との一体回転時の飛散作用にてより確実に軸受保持孔の開口部よりも遠くに飛散させることが可能となる。
【0031】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材は、外周縁部を除く一部が前記軸受保持孔内に位置するように設けられたことをその要旨とする。
【0032】
この発明では、遮蔽部材はその外周縁部を除く一部が軸受保持孔内に位置するように設けられるため、遮蔽部材の軸方向への突出を抑えることができ、モータの軸方向への小型化に寄与できる。
【0033】
請求項16に記載の発明は、請求項1〜15のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記ハウジング部材の外表面には、前記軸受保持孔への異物の移動を抑制すべく該軸受保持孔の周囲に環状溝が形成されたことをその要旨とする。
【0034】
この発明では、ハウジング部材の外表面において軸受保持孔の周囲に環状溝が形成されることで、軸受保持孔に向けて油分等の異物が移動する状況でもその異物を環状溝内に留めることが可能となる。
【0035】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材は、その外周縁部が前記環状溝の内径側部分よりも径方向外側に延出されて構成されたことをその要旨とする。
【0036】
この発明では、遮蔽部材はその外周縁部が環状溝の内径側部分よりも径方向外側に延出されることから、例えば外周縁部から油分等の異物が軸方向に落下する状況であっても、その異物を環状溝内に収容し留めることが可能となる。
【0037】
請求項18に記載の発明は、請求項16又は17に記載のモータにおいて、前記環状溝は、外径側側壁が径方向外側に向けて傾斜するように構成されたことをその要旨とする。
この発明では、環状溝はその外径側側壁が径方向外側に向けて傾斜形状をなすことから、溝の開口幅を広く確保でき、油分等の異物を溝内に好適に留めることが可能となる。
【0038】
請求項19に記載の発明は、請求項1〜15のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記ハウジング部材の外表面には、前記軸受保持孔への異物の移動を抑制すべく該軸受保持孔の周囲に環状の侵入抑制部が形成されたことをその要旨とする。
【0039】
この発明では、ハウジング部材の外表面において軸受保持孔の周囲に環状の侵入抑制部が形成されることで、軸受保持孔に向けて油分等の異物が移動する状況でもその異物の移動を侵入抑制部にて抑制することが可能となる。
【0040】
請求項20に記載の発明は、請求項19に記載のモータにおいて、前記侵入抑制部は複数であり、前記軸受保持孔の周囲にそれぞれ環状に設けられたことをその要旨とする。
この発明では、侵入抑制部は複数で、軸受保持孔の周囲にそれぞれ環状に設けられるため、軸受保持孔に向けての油分等の異物の移動をより確実に抑制できる。
【0041】
請求項21に記載の発明は、請求項1〜20のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記軸受はボール軸受にて構成されるものであり、その内輪が前記出力軸に挿通され、外輪が前記ハウジング部材の軸受保持孔に圧入されたことをその要旨とする。
【0042】
この発明では、ボール軸受の内輪が出力軸に挿通(非圧入)され、外輪がハウジング部材の軸受保持孔に圧入される。つまり、遮蔽部材と被当接部材との間が十分にシールされることから、ボール軸受の内輪に出力軸に対する圧入等の強固な固定態様を特に用いなくてもよい。またこれにより、ボール軸受の高精度な寸法管理が不要となる。
【0043】
請求項22に記載の発明は、請求項1〜20のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記軸受はボール軸受にて構成されるものであり、その内輪が前記出力軸に圧入され、外輪が前記ハウジング部材の軸受保持孔に圧入されたことをその要旨とする。
【0044】
この発明では、ボール軸受の内輪が出力軸に圧入され、外輪がハウジング部材の軸受保持孔に圧入されることから、内輪と出力軸との間、外輪と軸受保持孔の内周面との間の各隙間を小さくでき、油分等の異物侵入が生じ難くなる。
【0045】
請求項23に記載の発明は、請求項1〜22のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記軸受はボール軸受にて構成され、その内輪と外輪との間の開口を閉塞するシール板を有するものであり、該シール板は、外輪側に固定され内輪側に延出されて構成されたことをその要旨とする。
【0046】
この発明では、ボール軸受の内輪と外輪との間の開口を閉塞するシール板は、外輪側に固定され内輪側に延出されて構成されるため、仮に遮蔽部材の外周側から侵入してきた油分等の異物は軸受部分ではそのシール板の内周側からの侵入が強いられる所謂迷路構造となる。そのため、軸受部分から内部への油分等の異物侵入が抑制される。
【0047】
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載のモータにおいて、前記ボール軸受は、前記シール板が外輪側に固定され内輪側に摺接可能に接触するように構成されたことをその要旨とする。
【0048】
この発明では、ボール軸受はそのシール板が外輪側に固定され内輪側に摺接可能に接触する構成のため、シール板にてそれ以上内側への油分等の異物侵入をより確実に抑制できる。
【0049】
請求項25に記載の発明は、請求項2に記載のモータにおいて、前記遮蔽部材を挟圧保持する前記第1部材は他部材との連結を図る連結部材であり、前記第2部材はボール軸受の内輪であることをその要旨とする。
【0050】
この発明では、遮蔽部材は、その環状の平板部が連結部材とボール軸受の内輪とで軸方向に挟圧保持される。つまり、遮蔽部材は、連結部材とボール軸受の内輪に対して密着しシール性の高い状態で挟持される。
【0051】
請求項26に記載の発明は、請求項1〜25のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記出力軸には他部材との連結を図る前記被当接部材たる連結部材が装着されるものであり、その連結部材は焼結金属製よりなることをその要旨とする。
【0052】
この発明では、出力軸に装着される連結部材に焼結金属製のものを用いる構成のモータに適用される。つまり、焼結金属製の連結部材は空孔を有し、その空孔を介する油分等の異物の滲み出しが遮蔽部材側に集合し易い構成のモータに適用する意義は大きい。換言すれば、焼結(成形)による形状自由度の高い安価な連結部材の使用が可能となる。
【0053】
請求項27に記載の発明は、請求項1〜26のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記ハウジング部材内には、前記出力軸と一体回転する整流子を有する回転電機子が回転可能に収容されるものであり、前記回転電機子は、前記整流子側が前記出力軸の突出側となるように収容されたことをその要旨とする。
【0054】
この発明では、回転電機子はその整流子側が出力軸の突出側となるようにハウジング部材内に収容される構成のモータに適用される。つまり、開口部を有する軸受部分とその整流子とが近接する構成、即ち軸受部分から侵入する油分等の異物が整流子に付着しその異物付着による不具合の生じ易い構成のモータに適用する意義は大きい。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、出力軸の軸受部分からの異物侵入をより確実に防止することができるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)(b)は本実施形態におけるモータの構成図である。
【図2】出力軸の軸受部分の拡大断面図である。
【図3】(a)〜(c)は別例における出力軸の軸受部分の拡大断面図である。
【図4】(a)は別例における出力軸の軸受部分の拡大断面図、(b)はスリンガを示す断面図である。
【図5】(a)は別例における出力軸の軸受部分の拡大断面図、(b)はスリンガを示す断面図である。
【図6】(a)は別例における出力軸の軸受部分の拡大断面図、(b)はスリンガを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1(a)(b)は、本実施形態のモータ10を示す。モータ10は、車両用電動パワーステアリング装置(EPS)の駆動源として用いられるモータである。モータ10は、有底筒状のヨークハウジング11内に回転電機子12が回転可能に収容、この場合、回転電機子12の整流子13側がハウジング11の開口部側となるように回転可能に収容され、回転電機子12の出力軸14がそのハウジング11の開口部を閉塞するエンドフレーム15の中央部から外部に突出されてなる。
【0058】
詳述すると、エンドフレーム15の中央部には、図2に示すように、その表裏(モータ10の軸線L1方向)を貫通するように形成された円形状の軸受保持孔20が備えられ、該軸受保持孔20にはボール軸受21が収容されている。ボール軸受21は、外輪21aがその軸受保持孔20に圧入固定され、内輪21bが出力軸14に圧入固定されている。因みに、ボール軸受21は、外輪21aと内輪21bとの間に転動可能に設けられるボール21c部分に外部から異物が侵入しないように、外輪21aと内輪21bとの間の軸方向両側の開口を閉塞する一対のシール板21dが備えられている。シール板21dは、外輪21aと内輪21bとの間の開口の幅より若干幅広の円環状をなし、その外周縁部が外輪21aに固定されるとともに内周縁部が内輪21bに摺接可能に接触して、外輪21aと内輪21bとの間に外部から異物が侵入するのを防止している。
【0059】
エンドフレーム15の外表面における軸受保持孔20の周囲には、該軸受保持孔20と同心円をなす円環状で断面矩形状の環状溝22が形成されている。環状溝22は、軸受保持孔20の開口部20aを囲繞するように一つ設けられている。環状溝22は、エンドフレーム15の外表面に付着した油分等がそれ以上、内側に位置する軸受保持孔20の開口部20a側、即ちボール軸受21からモータ10内に移動することを防止すべく設けられるものである。
【0060】
エンドフレーム15から突出する出力軸14の先端部には、鉄系等の燒結金属から形成される円筒状のジョイント23の基端部が固定されている。円筒状のジョイント23の内側貫通孔は、軸方向一方側が出力軸14に固定される固定孔23aと、軸方向他方側に他部材としてのステアリング装置側の駆動軸(図示略)が嵌挿され少なくとも回転方向に係止する連結孔23bとを有している。ジョイント23は、その固定孔23aによる連結にて出力軸14と一体回転可能であり、先端部側から連結孔23b内に嵌挿されるステアリング装置側の駆動軸に出力軸14の回転力を伝達するものである。このような燒結金属製のジョイント23は、成形にて容易に作製することが可能である。
【0061】
ジョイント23とボール軸受21との間には、金属板(本実施形態では銅材で形成されているが、ジョイント23及びボール軸受21よりも剛性が低い軟材料であればよく、アルミ等の材料を用いることも可)にて略カップ状に形成されたスリンガ24が備えられている。
【0062】
具体的には、スリンガ24は、中心部に前記出力軸14の断面形状に対応する円形状の装着孔24aを有する円環状の平板部24bと、該平板部24bの径方向外側端部の折曲げ部24cから一方側に折り曲げられた円環状の傾斜部24dとを有してなる。尚、スリンガ24の折曲げ部24cと傾斜部24dの外周縁部24eとは、装着孔24aと同心円状に設けられている。スリンガ24が装着孔24aにて出力軸14に嵌挿された装着状態では、平板部24bは出力軸14の軸線L1と直交し、傾斜部24dはその平板部24bに対して(軸線L1との直交線L2に対して)所定角度θ°(本実施形態では45°)に直線状に傾斜する。またこの場合、傾斜部24dは、出力軸14の先端側(エンドフレーム15とは反対側)に向けられる。
【0063】
また、スリンガ24は、その平板部24bがジョイント23の端面23dと鉄系材料からなるボール軸受21の内輪21bの端面21eとで圧接挟持されている。スリンガ24は、出力軸14への嵌挿により該出力軸14に対して一体回転するように装着されるが、ジョイント23とボール軸受21の内輪21bとの挟持にてより確実な空転の防止がなされている。尚、ジョイント23とボール軸受21の内輪21bとの挟持の際、スリンガ24の平板部24bはボール軸受21のシール板21d及び外輪21aには接触しないようになっている。また、スリンガ24の平板部24bと傾斜部24dの一部は軸受保持孔20内に位置しており、傾斜部24dの途中から外周縁部24e側は軸受保持孔20の軸方向外側に位置している。スリンガ24の傾斜部24dの外周縁部24eは、径方向においては軸受保持孔20の開口縁部よりも外側に位置し、該軸受保持孔20の外側に設けられる環状溝22の略中央部まで延びている。
【0064】
ジョイント23の固定孔23aの基端部には、端部に向けて拡径するようなテーパ面23cが形成され、該テーパ面23cの形成による断面三角形の環状の収容空間S内に位置するように出力軸14に対して弾性部材よりなるOリング25が装着されている。Oリング25は断面円形状をなし、その固定孔23a基端部のテーパ面23cと、スリンガ24の平板部24bのジョイント23側の面と、出力軸14の外周面との3面にそれぞれ弾性力にて密着している。Oリング25は、ジョイント23側からスリンガ24の装着孔24aに向かう油分等の移動を防止すべく設けられるものである。
【0065】
このように構成されたモータ10において、例えば出力軸14が天方向側(水平面より上側)を向くようにパワーステアリング装置に取り付けられる場合、ジョイント23部分やその連結先のギヤ等に塗布される潤滑油といった油分等は、出力軸14の回転時にスリンガ24のジョイント23側の面に飛散して付着することがある。また、出力軸14が垂直上方向に近く向けられる場合は、出力軸14の停止時においてもスリンガ24のジョイント23側の面に油分等の垂れが生じることがある。特に、焼結金属製のジョイント23は空孔が生じているため、ジョイント23の連結孔23b内から外側への油分等の滲み出しも生じることがある。
【0066】
このとき、スリンガ24のジョイント23側の面の油分等がスリンガ24の装着孔24aに向けて移動しても、Oリング25によるシールにてそれ以上の移動は防止される。つまり、スリンガ24の装着孔24a内周面と出力軸14の外周面との間の隙間を通じてのボール軸受21側、ひいてはモータ10内への油分等の侵入がそのOリング25の装着にてより確実に防止される。
【0067】
また、スリンガ24のジョイント23側の面に溜まった油分等は、出力軸14の回転に伴うスリンガ24の回転により作用する遠心力にて径方向外側に移動し、傾斜部24dの外周縁部24eから外側に飛散する。このとき、油分等は、傾斜部24dの傾斜形状からより遠くに飛散することになる。また、油分等が飛散するスリンガ24の外周縁部24eは、軸方向視で軸受保持孔20の径方向外側の環状溝22上に位置することから、少なくともその環状溝22を含む径方向外側に飛散する。そのため、飛散した油分等がエンドフレーム15の外表面に付着して軸受保持孔20に移動しても、環状溝22にてそれ以上内側への移動が防止される。これらにより、油分等のボール軸受21からモータ10内への侵入がより確実に防止されるようになっている。
【0068】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)出力軸14の先端部側から軸受保持孔20側への異物侵入を防止するためのスリンガ24は、装着孔24a周囲の環状の平板部24bがジョイント23とボール軸受21の内輪21bとで軸方向に挟圧保持(圧接挟持)されて環状に圧接し、出力軸14に一体回転するように装着されている。これにより、出力軸14の回転時には、スリンガ24に付着した油分等の異物が出力軸14との一体回転による遠心力の作用にて径方向外側に飛散する。また、出力軸14の非回転時等においてスリンガ24に付着した油分等の異物が径方向内側に移動しても、スリンガ24の平板部24bがジョイント23とボール軸受21の内輪21bとに環状に圧接(密着)することから、その圧接部分以内への異物の移動が抑制される。これにより、スリンガ24の径方向外側及び内側からの油分等の異物侵入がより確実に防止され、軸受21部分からモータ10内への侵入をより確実に防止することができる。また、ジョイント23とボール軸受21の内輪21bとの挟持や装着孔24a周りのシール性が高められるため、スリンガ24に対し出力軸14とより密着する圧入等の強固な固定態様が不要とでき、スリンガ24の容易な固定態様を採用することもできる。また、平板部24bがジョイント23とボール軸受21の内輪21bとの間に挟持されるため、平板部24bにてその挟持を容易に行うことができる。
【0069】
(2)剛性の低い銅系材にて形成したスリンガ24の平板部24bは、剛性の高い鉄系材にて形成したジョイント23とボール軸受21の内輪21bとの両端面23d,21eで圧接挟持される。これにより、その挟持の際に、剛性が低く柔らかい側のスリンガ24の平板部24bが剛性の高い端面23d,21eの表面形状に倣うため、いずれの圧接面においてより密着状態とでき高いシール性を容易に確保できる。即ち、スリンガ24とジョイント23との間を経由する油分等の異物の出力軸14側への侵入や、スリンガ24とボール軸受21の内輪21bとの間を経由する油分等の異物の出力軸14側への侵入を抑制することができる。
【0070】
(3)スリンガ24、出力軸14及びジョイント23の3部材に跨って当接するように出力軸14にOリング25を装着することで、一般的なOリング25の出力軸14への装着で容易にシールを行うことができる。また、Oリング25がスリンガ24、出力軸14及びジョイント23の3部材に跨って接触することで、各部材間の隙間のシールを効率良く行うことができる。
【0071】
(4)ジョイント23の固定孔23aに形成したテーパ面23cにて、スリンガ24、出力軸14及びそのジョイント23の間に収容空間Sが形成され、Oリング25はその収容空間S内に収容される。そのため、Oリング25の位置ズレ防止や、Oリング25の各部材に対する接触状態を安定させることができる。
【0072】
(5)スリンガ24はその外周側部分が出力軸14の先端側(エンドフレーム15とは反対側)に向けて傾斜した傾斜部24dを有するため、出力軸14との一体回転時の遠心力による異物の飛散作用にて、スリンガ24に付着した油分等の異物を自身から、即ち軸受21部分からより遠くに飛散させることができ、軸受21部分への油分等の異物侵入の抑制に寄与することができる。また、スリンガ24の傾斜部24dは出力軸14の軸直交方向に対して45°に設定されるため、油分等の異物をより確実に遠くに飛散させることができる。
【0073】
(6)スリンガ24はその外周縁部24eが軸受保持孔20の開口部20aよりも径方向外側に延出されることから、出力軸14との一体回転時の飛散作用にてより確実に軸受保持孔20の開口部20aよりも遠くに飛散させることができ、軸受21部分への油分等の異物侵入の抑制に寄与できる。
【0074】
(7)エンドフレーム15の外表面において軸受保持孔20の周囲に環状溝22が形成されることで、軸受保持孔20に向けて油分等の異物が移動する状況でもその異物を環状溝22内に留めることができ、軸受21部分への油分等の異物侵入の抑制に寄与できる。
【0075】
(8)スリンガ24はその外周縁部24eが環状溝22の内径側部分よりも径方向外側に延出されることから、例えば外周縁部24eから油分等の異物が軸方向に落下する状況であっても、その異物を環状溝22内に収容し留めることができ、軸受21部分への油分等の異物侵入の抑制に寄与できる。
【0076】
(9)スリンガ24は、出力軸14に装着されるジョイント23とボール軸受21の内輪21bとの間に挟持されるため、例えばスリンガ24の固定に圧入等を用いない容易な固定態様を採用しても、その挟持にてスリンガ24の空転を防止でき、出力軸14との一体回転を可能とすることができる。
【0077】
(10)ボール軸受21の内輪21bが出力軸14に圧入され、外輪21aがエンドフレーム15の軸受保持孔20に圧入されることから、内輪21bと出力軸14との間、外輪21aと軸受保持孔20の内周面との間の各隙間を小さくでき、油分等の異物侵入を生じ難くすることができる。
【0078】
(11)ボール軸受21の内輪21bと外輪21aとの間の開口を閉塞するシール板21dは、外輪21a側に固定され内輪21b側に延出されて構成されるため、仮にスリンガ24の外周側から侵入してきた油分等の異物は軸受21部分ではそのシール板21dの内周側からの侵入が強いられる所謂迷路構造となる。そのため、軸受21部分から内部への油分等の異物侵入を抑制できる。また、油分等の異物がシール板21dが内輪21b側に到達しても、そのシール板21dは内輪21b側に摺接可能に接触する構成のため、シール板21dにてそれ以上内側への油分等の異物侵入をより確実に抑制できる。
【0079】
(12)スリンガ24はその外周縁部24eを除く一部が軸受保持孔20内に位置するように設けられるため、スリンガ24の軸方向への突出を抑えることができ、モータ10の軸方向への小型化に寄与できる。
【0080】
(13)ジョイント23は焼結金属製であるが、焼結金属製のジョイント23は空孔を有しその空孔を介する油分等の異物の滲み出しがスリンガ24側に集合し易い。しかしながら、Oリング25にてスリンガ24の装着孔24a部分のシール性が高められるため、このような焼結金属製のジョイント23を用いる本実施形態のモータ10に適用する意義は大きい。換言すれば、焼結(成形)による形状自由度の高い安価なジョイント23の使用が可能となる。
【0081】
(14)回転電機子12の整流子13側が出力軸14の突出側となるようにエンドフレーム15内に収容される。つまり、開口部を有する軸受21部分とその整流子13とが近接する構成、即ち軸受21部分から侵入する油分等の異物が整流子13に付着しその異物付着による不具合の生じ易い本実施形態のモータ10に適用する意義は大きい。
【0082】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態で用いたスリンガ24において、形状や取付構造、取付位置等、適宜変更してもよい。
【0083】
例えば、傾斜部24dの傾斜角度を45°以外に設定してもよい。
また図3(a)に示すように、スリンガ24の傾斜部24dを径方向外側ほど出力軸14に対して離間する方向に湾曲させてもよい。これにより、出力軸14との一体回転時の飛散作用にて、油分等の異物をより確実に遠くに飛散させることが可能となる。
【0084】
また、スリンガ24を2以上の折曲げ部を有する形状にて形成してもよい。
また、スリンガ24をボール軸受21の内輪21bとジョイント23とで挟持したが、例えば内輪21bと別途設けた他の部材とで挟持させる等、挟持態様を適宜変更してもよい。また、挟持を用いないで出力軸14に装着する態様としてもよい。また、スリンガ24を出力軸14に圧入させてもよい。
【0085】
また、スリンガ24の一部を軸受保持孔20内に配置したが、全体が軸受保持孔20から外側部分に出た状態で出力軸14に装着する態様であってもよい。
また、スリンガ24を金属板以外で作製してもよい。
【0086】
・上記実施形態のエンドフレーム15の外表面に形成した環状溝22において、形状、数、位置等、適宜変更してもよい。
例えば図3(b)に示すように、環状溝22の外径側側壁22aを径方向外側に向けて傾斜形状としてもよい。これにより、溝22の開口幅を広く確保でき、油分等の異物を溝22内に好適に留めることが可能となる。また、溝22の天方向側の部位ではその溝22内に油分等の異物が外径側である天方向から侵入し易く、地方向側の部位ではその溝22に溜まっていた油分等の異物が外径側である地方向に流出し易い。
【0087】
また図3(c)に示すように、環状溝22を2重に設けてもよく、それ以上設けてもよい。これにより、軸受保持孔20に向けての油分等の異物の移動をより確実に抑制可能となる。
【0088】
また、環状溝22のように溝形状に限らず、例えば環状凸部としても、油分等の異物の軸受保持孔20に向けて移動が抑制可能である。
・上記実施形態では、ジョイント23の固定孔23aにテーパ面23cを形成することでOリング25の収容空間Sを形成したが、スリンガ24や出力軸14に収容空間Sの形成のため凹部等を形成してもよい。また、収容空間Sをジョイント23、スリンガ24及び出力軸14の2以上の部材に跨って形成してもよい。また、収容空間Sを別途形成せず、各部材間の隙間にOリング25を介在させてもよい。
【0089】
・上記実施形態では、シール部材としてOリング25を用いたが、Oリング以外のシール部材や、構造によりシールするシール手段を用いてもよい。
例えば図4〜図6に示すように、シール手段をスリンガ24に一体に備える態様としてもよい。このようにすれば、部品点数、組付工数の低減が可能となる。
【0090】
図4(a)(b)に示すように、スリンガ24の平板部24bの表面及び裏面にて、装着孔24a周りに同心円をなす環状凸部24fが一体に形成される。環状凸部24fは、断面三角形状をなし、スリンガ24の平板部24bの表面、即ちジョイント23の端面23dとの対向面に3つ設けられ、該端面23dと装着孔24a周りに環状に当接してシールする。また、スリンガ24の平板部24bの裏面、即ちボール軸受21の内輪21bの端面21eとの対向面に1つ設けられ、該端面21eと装着孔24a周りに環状に当接してシールする。
【0091】
これにより、スリンガ24の挟圧保持の際に、平板部24bの表面側の環状凸部24fの先端部が容易にジョイント23の端面23dにて潰れその端面23dの平面形状に倣い、また裏面側の環状凸部24fの先端部が容易にボール軸受21の内輪21bの端面21eにて潰れその端面23dの平面形状に倣うため、相互の密着性を高くでき、シール性を高くすることができる。また、スリンガ24に一体形成した環状凸部24fにて容易にシールでき、シールが十分であればOリング25を省略することも可能である。
【0092】
また図5(a)(b)に示すように、スリンガ24の平板部24bの表面及び裏面にて、装着孔24a周りに弾性部材よりなる環状当接部24gを焼き付け等にて一体に成形する。これにより、上記と同様に、スリンガ24の挟圧保持の際に平板部24bの表面側の環状当接部24gがジョイント23の端面23dにて潰れて倣い、また裏面側の環状当接部24gがボール軸受21の内輪21bの端面21eにて潰れて倣うため、相互の密着性が高く、シール性が高くなる。
【0093】
また図6(a)(b)に示すように、スリンガ24の平板部24bにて、例えば裏面側から表面側に半円状に折り曲げて環状凸部24hを形成してもよい。これにより、スリンガ24の挟圧保持の際に、ジョイント23の端面23dからの押圧力にてスリンガ24の装着孔24aの内縁部が出力軸14に圧接するため、相互の密着性が高くなり、上記と同様に、ジョイント23の端面23dとの間のシール性が高まるとともに、スリンガ24と出力軸14との間のシール性も高くすることができる。
【0094】
・上記実施形態では、ボール軸受21の外輪21aを軸受保持孔20に圧入し、内輪21bを出力軸14に圧入する構成としたが、例えばボール軸受21の内輪21bを出力軸14に挿通(非圧入)としてもよい。つまり、ジョイント23とスリンガ24との間や、スリンガ24と出力軸14との間が十分にシールされることから、ボール軸受21の内輪21bに出力軸14に対する圧入等の強固な固定態様を特に用いなくてもよい。またこれにより、ボール軸受21の高精度な寸法管理が不要となる。
【0095】
・上記実施形態では、焼結金属製のジョイント23を用いたが、その他の加工により形成されるジョイントを用いた構成のものに適用してもよい。また、ジョイント23のないものに適用してもよい。
【0096】
・上記実施形態では、出力軸14を支持する軸受にボール軸受21を用いたが、ボール軸受以外の軸受を用いた構成のものに適用してもよい。
・上記実施形態では、整流子13を有するモータ10に適用したが、その他の構成のモータ、例えばブラシレスモータ等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0097】
10…モータ、12…回転電機子、13…整流子、14…出力軸、15…エンドフレーム(ハウジング部材)、20…軸受保持孔、20a…開口部、21…ボール軸受、21a…外輪、21b…内輪(被当接部材、第2部材)、21d…シール板、22…環状溝(侵入抑制部)、22a…外径側側壁、23…ジョイント(被当接部材、第1部材、連結部材)、24…スリンガ(遮蔽部材)、24a…装着孔、24b…平板部、24d…傾斜部、24e…外周縁部、24f…環状凸部(シール手段)、24g…環状当接部(シール手段)、24h…環状凸部(シール手段)、25…Oリング(シール手段、シール部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング部材に設けた軸受保持孔に軸受を介して出力軸を回転可能に支持し、該出力軸の先端部を外部に突出させて構成されるモータであって、
装着孔を有する環状をなして前記出力軸に一体回転するように装着され、該装着による異物侵入の遮蔽及び前記出力軸との一体回転時の遠心力による異物の飛散作用にて、前記出力軸の先端部側から前記軸受保持孔側への異物侵入を防止する遮蔽部材を備えており、
前記遮蔽部材は前記装着孔の周囲に環状の平板部を有し、該平板部の少なくとも一面が軸方向に位置する被当接部材に対し環状に圧接していることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記出力軸の先端側には前記遮蔽部材の装着孔を軸方向に覆う前記被当接部材たる第1部材が固定されるとともに、前記遮蔽部材よりも反先端部側には前記被当接部材たる第2部材が設けられ、
前記遮蔽部材は、その環状の平板部が前記第1部材と前記第2部材とにそれぞれ環状に当接した状態で軸方向に挟圧保持されていることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材は、前記被当接部材よりも低剛性の軟材料にて構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材は銅系材、前記被当接部材は鉄系材にて構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材の平板部における前記出力軸の先端部側の面には、その平板部の内側の前記装着孔側への異物侵入を防止するシール手段が備えられたことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項5に記載のモータにおいて、
前記シール手段は、前記遮蔽部材の平板部における前記出力軸の先端部側の面とその面に対向する前記被当接部材とに当接するようにその部材間に介在されるシール部材を含むことを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のモータにおいて、
前記シール部材は、更に前記出力軸に対して当接することを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のモータにおいて、
前記シール部材は、前記被当接部材、前記遮蔽部材及び前記出力軸の少なくとも1部材に形成された収容部内に収容されたことを特徴とするモータ。
【請求項9】
請求項5に記載のモータにおいて、
前記シール手段は、前記遮蔽部材の平板部の装着孔周りに一体形成された環状凸部を含み、該環状凸部にて前記被当接部材に環状に当接してシールすることを特徴とするモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のモータにおいて、
前記環状凸部は、前記被当接部材からの押圧力にて前記装着孔の内周面が前記出力軸に圧接するように折り曲げられてなることを特徴とするモータ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材は、少なくとも外周側部分が前記出力軸の先端側に向けて傾斜した傾斜部を有して構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項12】
請求項11に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材は、前記傾斜部が前記出力軸の軸直交方向に対して45°に設定されたことを特徴とするモータ。
【請求項13】
請求項11に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材は、前記傾斜部が径方向外側ほど前記出力軸に対して離間する方向に湾曲する形状にて構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材は、その外周縁部が前記軸受保持孔の開口部よりも径方向外側に延出されて構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材は、外周縁部を除く一部が前記軸受保持孔内に位置するように設けられたことを特徴とするモータ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ハウジング部材の外表面には、前記軸受保持孔への異物の移動を抑制すべく該軸受保持孔の周囲に環状溝が形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項17】
請求項16に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材は、その外周縁部が前記環状溝の内径側部分よりも径方向外側に延出されて構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のモータにおいて、
前記環状溝は、外径側側壁が径方向外側に向けて傾斜するように構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ハウジング部材の外表面には、前記軸受保持孔への異物の移動を抑制すべく該軸受保持孔の周囲に環状の侵入抑制部が形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項20】
請求項19に記載のモータにおいて、
前記侵入抑制部は複数であり、前記軸受保持孔の周囲にそれぞれ環状に設けられたことを特徴とするモータ。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記軸受はボール軸受にて構成され、その内輪が前記出力軸に挿通され、外輪が前記ハウジング部材の軸受保持孔に圧入されたことを特徴とするモータ。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記軸受はボール軸受にて構成され、その内輪が前記出力軸に圧入され、外輪が前記ハウジング部材の軸受保持孔に圧入されたことを特徴とするモータ。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記軸受はボール軸受にて構成され、その内輪と外輪との間の開口を閉塞するシール板を有するものであり、該シール板は、外輪側に固定され内輪側に延出されて構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項24】
請求項23に記載のモータにおいて、
前記ボール軸受は、前記シール板が外輪側に固定され内輪側に摺接可能に接触するように構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項25】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記遮蔽部材を挟圧保持する前記第1部材は他部材との連結を図る連結部材であり、前記第2部材はボール軸受の内輪であることを特徴とするモータ。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記出力軸には他部材との連結を図る前記被当接部材たる連結部材が装着されるものであり、その連結部材は焼結金属製よりなることを特徴とするモータ。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ハウジング部材内には、前記出力軸と一体回転する整流子を有する回転電機子が回転可能に収容されるものであり、
前記回転電機子は、前記整流子側が前記出力軸の突出側となるように収容されたことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−250668(P2011−250668A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170598(P2010−170598)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】