説明

モードS二次監視レーダ

【課題】監視空域内に存在する航空機(トランスポンダ)を適確に捕捉し、航空機を安全に飛行させるモードS二次監視レーダを提供する。
【解決手段】質問を送信する送信制御手段131と、ATCRBS機及びモードS機から質問に対して送信された応答を受信する受信手段123と、受信した各応答が含む位置情報について相関を求める相関処理手段135aと、受信した応答を分類する分類手段135bと、相関処理及び分類の結果から、質問に対して受信したATCRBS応答がATCRBS機から送信されたものであるか否かを判定する判定手段135cと、判定の結果に基づいて監視空域を飛行する航空機の状態に関するレポートを生成する生成手段135dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視空域内を飛行する航空機を監視するモードS二次監視レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
地上局のモードS二次監視レーダ(SSRモードS)1は、空港や航空路の主要地点に管制施設として設置されている。モードS二次監視レーダ1は、図11に示すように、アンテナ11、送受信部12及び処理部14を備え、処理部14の制御によって、送受信部12及びアンテナ11を介して質問を送信する。モードS二次監視レーダ1から送信された質問が航空機に搭載されるトランスポンダ2のアンテナ21及び送受信部22を介して受信されると、信号処理部23の制御によって送受信部22及びアンテナ21を介して航空機からの応答が送信される。航空機から受信した応答に含まれるデータを用いて、該当する監視空域を飛行する航空機を監視している(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
モードS二次監視レーダ1及びトランスポンダ2は、非特許文献1に記載されるような規格にしたがって構成されており、トランスポンダ2には、ATCRBSトランスポンダと、モードSトランスポンダの二種類がある。また、モードS二次監視レーダ1は、送信する質問に対して、各トランスポンダから図12に示すような応答を受信する。
【0004】
モードS二次監視レーダ1は、モードA/C質問Q1を送信したとき、ATCRBSトランスポンダを搭載した航空機(ATCRBS機)からATCRBS応答Aa1を受信し、モードSトランスポンダを搭載した航空機(モードS機)からATCRBS応答Ab1を受信する。また、モードS二次監視レーダ1は、モードA/C専用質問Q2を送信したとき、ATCRBS機からATCRBS応答Aa2を受信するが、モードS機からの応答はない。
【0005】
さらに、モードS二次監視レーダ1は、モードSオールコール質問Q3を送信したとき、モードS機からモードSオールコール応答Ab2を受信するが、ATCRBS機からの応答はない。モードS二次監視レーダ1では、オールコール期間とロールコール期間が設定され、航空機を監視しているが、これらの質問Q1,Q2,Q3は、オールコール期間に送信される。また、ロールコール期間には、モードS二次監視レーダ1は、登録される各モードS機に対してモードSロールコール質問Q4を送信し、この質問Q4を受信した各モードS機からモードSロールコール応答Ab3を受信する。
【非特許文献1】ICAO、「INTERNATIONAL STANDARDS AND RECOMMENDED PRACTICES AERONAUTICAL TELECOMMUNICATIONS ANNEX 10」、1998年7月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、モードS機で搭載されるモードSトランスポンダが不良モードSトランスポンダであるとき、本来であればモードS質問(モードSオールコール質問、モードSロールコール質問)に対して送信されるはずのモードS応答(モードSオールコール応答、モードSロールコール応答)が送信されないことがあった。
【0007】
また、従来、応答のパルス幅が狭い等の問題により、モードSトランスポンダが搭載される航空機からモードS質問に対して送信されたモードS応答が、モードS二次監視レーダ1で受信できないこともあった。
【0008】
このように、従来、モードS二次監視レーダ1からモードS質問を送信しても、モードS機からは、モードS応答を受信できないことがあった。モードS機からモードS応答を受信することができない場合、監視空域内を飛行するモードS機を捕捉できず、モードS二次監視レーダ1は、航空機を安全に飛行させることができないという問題が生じる。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、監視空域内に存在する航空機(トランスポンダ)からの応答を受信するとともに、監視空域内に存在する航空機を適確に捕捉し、航空機を安全に飛行させるモードS二次監視レーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴に係るモードS二次監視レーダは、質問を送信し、所定の監視空域に存在するATCRBSトランスポンダが搭載されるATCRBS機及びモードSトランスポンダが搭載されるモードS機を監視するモードS二次監視レーダであって、質問を送信する送信制御手段と、ATCRBS機及びモードS機から質問に対して送信された応答を受信する受信手段と、受信した各応答が含む位置情報について相関を求める相関処理手段と、受信した応答を分類する分類手段と、相関処理及び分類の結果から、質問に対して受信したATCRBS応答がATCRBS機から送信されたものであるか否かを判定する判定手段と、判定の結果に基づいて監視空域を飛行する航空機の状態に関するレポートを生成する生成手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、監視空域内に存在する航空機(トランスポンダ)からの応答を受信するとともに、監視空域内に存在する航空機を適確に捕捉し、航空機を安全に飛行させるモードS二次監視レーダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1について説明する。本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ(SSRモードS)1は、地上局に設置され、アンテナ11と、アンテナ11に接続された送受信部12と、送受信部12に接続されてコンピュータを内蔵した処理部13とを備えている。アンテナ11は、図1に示すように、送受信部12の送受切替器121を介して、送信器122及び受信器123に接続され、送信器122及び受信器123は処理部13に接続されている。
【0013】
処理部13は、図1に示すように、送信器122に接続された送信制御器131と、受信器123に接続されたモードS応答処理器132及びATCRBS応答処理器133と、送信制御器131及びモードS応答処理器132に接続されたチャネル管理器134と、送信制御器131、モードS応答処理器132、ATCRBS応答処理器133及びチャネル管理器134に接続された監視処理器135と、処理部13全体のシステムを統括制御すべく、送信する質問の方位方向におけるシステムの動作や質問信号形成のためのタイミングを形成して供給するタイミング信号発生器136とを有している。
【0014】
送信器122は、処理部13からの制御によって、送受切替器121及びアンテナ11を介して質問を送信する。受信器123は、アンテナ11及び送受切替器121を介して航空機から質問に対応して送信された応答が入力される。
【0015】
送信制御手段131は、第1オールコール期間にモードA/C質問Q1を送信し、第2オールコール期間にモードSオールコール質問Q3及びモードA/C専用質問Q2を送信し、ロールコール期間に登録されているモードSトランスポンダを搭載する航空機に対してモードSロールコール質問Q4を送信する。
【0016】
図1を用いて上述したモードS二次監視レーダ1では、図2に示すように、オールコール期間とロールコール期間とが交互に繰り返されるが、オールコール期間については、第1オールコール期間と第2オールコール期間とが所定の順序で繰り返される。
【0017】
ここで、第1オールコール期間は、モードA/C質問Q1を送信し、モードS機及びATCRBS機の両航空機から送信されるATCRBS応答Ab1,Aa1を受信する期間である。ここでは、「第1オールコール期間に受信したATCRBS応答」を「第1ATCRBS応答」とする。また、第2オールコール期間は、モードSオールコール質問Q3及びモードA/C専用質問Q2を送信し、モードS機から送信されるモードSオールコール応答Ab2を受信するとともに、ATCRBS機から送信されるATCRBS応答Aa2を受信する期間である。ここでは、「第2オールコール期間に受信したATCRBS応答」を「第2ATCRBS応答」と記載する。さらに、ロールコール期間は、登録されているモードS機に対してモードSロールコール質問Q4を送信し、モードS機から送信されるモードSロールコール応答Ab3を受信する期間である。
【0018】
モードS応答処理器132は、入力された応答に関する処理を行うため、図1に示すように、判定手段132aを有するとともに、記憶装置に航空機データ132bを記憶している。航空機データ132bは、ロールコールによる監視対象としている航空機の識別子を含んでいる。判定手段132aは、入力された応答が正常であるか否かを判定するとともに、正常である場合に応答を監視処理器135に出力する。また、判定手段132aは、応答が正常でない場合には応答を破棄する。具体的には、モードSオールコール応答である場合、応答が適正なフォーマットであるとともに、モードS二次監視レーダ1に付与されている自サイトIDが応答に含まれるPIフィールドと一致する場合、正常であると判定する。また、モードSロールコール応答である場合、応答が適正なフォーマットであるとともに、予測モードアドレスと応答に含まれるモードSアドレスが一致する場合、正常であると判定する。ここで、予測モードアドレスとは、航空機データ132bにロールコールによる監視対象として含まれる航空機の識別子をいう。
【0019】
ATCRBS応答処理器133は、ATCRBS応答が入力されると、入力されたATCRBS応答が正常であるか否かを判定し、正常である場合に応答を監視処理器135に出力する。また、ATCRBS応答処理器133は、応答が正常でない場合には応答を破棄する。
【0020】
チャネル管理器134は、オールコール期間において応答を受信する期間の設定、ロールコール期間に質問を送信する期間及び各質問に対応する応答を受信する期間の設定等をスケジューリングする。
【0021】
監視処理器135は、モードS応答処理器132やATCRBS応答処理器133から航空機から受信した応答が入力されると、入力された応答に基づいて、検出レポートを出力し、送信制御器131やチャネル管理器134に制御信号を出力し、監視空域内を飛行する航空機を監視する。監視処理器135は、モードS応答処理器132から入力した応答に基づく処理を実行するため、図1に示すように、相関処理手段135a、分類手段135b、判定手段135c及び生成手段135dを有し、記憶装置に予測データ135eを記憶している。
【0022】
予測データ135eは、各時刻に各航空機が飛行する予定の位置である予測位置が関連付けられるデータである。
【0023】
相関処理手段135aは、受信した各応答が含む位置情報について相関を求める。以下では、第1ATCRBS応答が含む位置情報とモードSオールコール応答が含む位置情報との相関を「第1相関C1」、第1ATCRBS応答が含む位置情報と第2ATCRBS応答が含む位置情報との相関を「第2相関C2」、第1ATCRBS応答が含む位置情報とモードSロールコール応答が含む位置情報との相関を「第3相関C3」として説明する。
【0024】
分類手段135bは、第1ATCRBS応答をAタイプとBタイプとに分類(タイプ分け)する。具体的には、分類手段135bは、第2ATCRBS応答を受信すると、同一の航空機から第1ATCRBS応答と第2ATCRBS応答とを受信した場合、その第1ATCRBS応答をAタイプと分類する。一方、第1ATCRBS応答のみを受信し、同一の航空機から第2ATCRBS応答を受信していない場合には、分類手段135bは、その第1ATCRBS応答をBタイプと分類する。
【0025】
判定手段135cは、相関処理手段135aで求められた相関に基づいて、モードA/C質問に対して受信した第1ATCRBS応答がATCRBS機から送信されたものであるかモードS機から送信されたものであるかを判定する。具体的には、判定手段135cは、Aタイプの第1ATCRBS応答をATCRBS機から送信されたものであると判定する。また、判定手段135cは、第1ATCRBSB応答がAタイプでなく、第1ATCRBS応答について求められた第2相関又は第3相関が所定の範囲外である場合、第1ATCRBS応答はATCRBS機から送信されたものであると判定する。さらに、判定手段135cは、第1ATCRBS応答が含む位置情報が予測データ135eで第1ATCRBS応答を受信した時刻に関連付けられるモードS機の予測位置の範囲内でない場合、第3相関が所定の範囲外である場合、及び第1ATCRBS応答とモードSロールコールとのAコードが不一致であって、第1ATCRBS応答にアラート情報が含まれる場合、第1ATCRBS応答はATCRBS機から送信されたものと判定する。一方、判定手段135cは、第1ATCRBS応答がATCRBS機から送信されたものと判定しないケースのとき、モードS機から送信したものと判定する。
【0026】
生成手段135dは、判定の結果に基づいて、監視空域内を飛行するモードS機に関するモードSレポートを生成するとともにATCRBS機に関するATCRBSレポートを生成し、生成したレポートを出力する。
【0027】
タイミング信号発生器136は、処理部13全体のシステムを統括制御すべく、送信する質問の方位方向におけるシステムの動作や質問信号形成のためのタイミングを形成して供給する。
【0028】
〈第1オールコール期間〉
第1オールコール期間におけるモードS二次監視レーダ1の処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0029】
第1オールコール期間には、送信制御器131は、モードA/C質問Q1を送信する(S11)。
【0030】
モードA/C質問Q1に対して、モードS機又はATCRBS機から第1ATCRBS応答Aa1,Ab1が送信されると、第1ATCRBS応答Aa1,Ab1はアンテナ11で受信され、送受切替器121及び受信器123を介して、ATCRBS応答処理器133に入力される(S12)。ここでは、モードS二次監視レーダ1は、監視空域内の複数の航空機から応答を受信する。
【0031】
ATCRBS応答処理器133は、入力した第1ATCRBS応答Aa1,Ab1が正常な応答であるか否かを判定する(S13)。入力した第1ATCRBS応答Aa1,Ab1が正常な応答である場合(S13でYES)、ATCRBS応答処理器133は、第1ATCRBS応答Aa1,Ab1を監視処理器135に出力し、監視処理器135によってメモリ(図示せず)に記憶される(S14)。監視処理器135では、受信した全ての正常な第1ATCRBS応答Aa1,Ab1をメモリに記憶する。
【0032】
ここで、監視処理器135は、入力されてメモリに記憶した第1ATCRBS応答がモードS機又はATCRBS機のいずれから送信された応答であるか不明である。
【0033】
〈第2オールコール期間〉
第2オールコール期間におけるモードS二次監視レーダ1の処理について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0034】
第2オールコール期間には、送信制御器131は、A/C専用質問Q2及びモードSオールコール質問Q3を送信する(S21)。
【0035】
モードSオールコール質問Q3に対して、モードS機からモードSオールコール応答Ab2が送信されると、モードSオールコール応答Ab2はアンテナ11で受信され、送受切替器121及び受信器123を介して、モードS応答処理器132に入力される(S22)。入力したモードSオールコール応答Ab2が正常な応答である場合(S23でYES)、モードS応答処理器132は、モードS応答Ab2を処理対象としてモードS応答データに記録するとともに、監視処理器135に出力する。監視処理器135は、入力したモードS応答Ab2をメモリ(図示せず)に記憶する(S24)。
【0036】
また、モードA/C専用質問Q2に対して、ATCRBS機から第2ATCRBS応答Ab2が送信されると、第2ATCRBS応答Ab2はアンテナ11で受信され、送受切替器121及び受信器123を介して、ATCRBS応答処理器133に入力される(S25)。入力した第2ATCRBS応答Aa2が正常な応答である場合(S26でYES)、ATCRBS応答処理器133は、第2ATCRBS応答Aa2を処理対象として第2ATCRBS応答データとしてATCRBS応答処理器133のメモリ(図示せず)に記録するとともに、監視処理器135に出力する。監視処理器135は、入力した第2ATCRBS応答Aa2をメモリ(図示せず)に記憶する(S27)。
【0037】
このように、監視処理器135では、受信した全ての正常なモードSオールコール応答Ab2及び第2ATCRBS応答Aa2をメモリに記憶する。また、ここで登録された航空機データは、例えば航空機の位置情報等を含み、監視処理器135を介して外部に出力される。
【0038】
図4に説明した処理に続いて監視処理器135で行われる相関処理及び判定処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
相関処理手段135aは、メモリに記憶されている第2ATCRBS応答Aa2と第1ATCRBS応答Aa1,Ab1に含まれるレンジ、アジマス及び高度を利用して位置情報の相関(第1相関C1)を求め、メモリに記憶する(S301)。
【0040】
判定手段135cは、求められた第1相関C1が予め定められている範囲内であり、各応答に含まれるモードAコードとモードCコードが同一であることを判定すると(S302でYES)、第2ATCRBS応答Aa2を処理対象としてメモリに登録するとともに、分類手段135bは、メモリに記録されている第1ATCRBS応答Aa1,Ab1をタイプ分けする(S303)。
【0041】
具体的には、分類手段135bは、モードA/C質問Q1及びモードA/C専用質問Q2の両方に応答がある場合、第1ATCRBS応答をAタイプとする。すなわち、第1ATCRBS応答を送信した航空機から第2ATCRBS応答Aa2も受信した場合、第1ATCRBS応答をAタイプとして登録する。一方、判定手段135cは、モードA/C専用質問Q2にのみ応答がある場合、第1ATCRBS応答をBタイプとして登録する。すなわち、メモリに記録されている第1ATCRBS応答を送信した航空機から第2ATCRBS応答Aa2を受信していない場合、第1ATCRBS応答をBタイプとする。ここで、Aタイプとされた応答は、ATCRBS機から送信された応答の候補であり、Bタイプとされた応答は、モードS機から送信された応答の候補である。
【0042】
続いて、相関処理手段135aは、メモリに記憶されているモードSオールコール応答Ab2と第1ATCRBS応答Aa1,Ab1に含まれるレンジ及びアジマスを利用して位置情報の相関(第2相関C2)を求め、メモリに記憶する(S304)。
【0043】
判定手段135cは、求められた第2相関C2が予め定められている範囲内であり、各応答に含まれるモードSアドレスが同一であることを判定すると(S305でYES)、モードSオールコール応答Ab2を処理対象の応答としてメモリに登録する(S306)。
【0044】
続いて、各第1ATCRBS応答Aa1,Ab1についてモードS機から送信されたかATCRBS機から送信されたかの判定が行われる。任意の第1ATCRBS応答のタイプがBタイプであるとき(S308でYES)、このBタイプの第1ATCRBS応答と所定の範囲内の相関(第2相関C2)のモードSオールコール応答Ab2がメモリに記録されているか否か、すなわち、この第1ATCRBS応答が登録されているモードS機から送信された応答であるかを判定する(S309)。
【0045】
Bタイプの第1ATCRBS応答と所定範囲内の相関であるモードSオールコール応答Ab2があるとき(S309でYES)、判定手段135cは、対象としている第1ATCRBS応答は、モードS機が送信したものと判定し、判定結果を記憶する(S310、S311)。具体的には、判定手段135cは、対象としている第1ATCRBS応答の内容をモードSレポートに含めるようにしたデータをメモリに記憶させる。生成手段135dでは、レポート生成のタイミングの際には、メモリに記憶された当該データを用いて、モードSレポートを生成する。
【0046】
また、第1ATCRBS応答のタイプがAタイプの場合(S308でNO)、対象としている第1ATCRBS応答は、ATCRBS機が送信したものとし判定し、判定結果を記憶する(S312、S313)。具体的には、判定手段135cは、対象としている第1ATCRBS応答の内容をATCRBSレポートに含めるようにしたデータをメモリに記憶させる。生成手段135dでは、レポート生成の際には、メモリに記憶された当該データを用いて、ATCRBSレポートを生成する。
【0047】
一方、第1ATCRBS応答のタイプがBタイプであって、所定範囲内の相関のモードSオールコール応答Ab2がない(所定範囲内の第2相関C2がない)場合(S308でYES、 S309でNO)、図5に示す処理を終了し、図8を用いて後述するロールコール応答との相関処理へ移行する。
【0048】
このステップS308〜S313の処理が繰り返されることによって、第1オールコール期間の間に受信した各第1ATCRBS応答Aa1,Ab1がモードS機とATCRBS機のいずれから送信されたものかの判定の処理が終了する(S307)。
【0049】
図6を用いて、第1ATCRBS応答がモードS機によって送信されたものであるか否かを判定する一例を説明する。図6に示す一例では、モードSオールコール質問Q3に対して受信したモードSオールコール応答Ab2と、モードA/C専用質問Q2に対して受信した第2ATCRBS応答Aa2と、モードA/C質問Q1に対して受信した第1ATCRBS応答Ab1及びAa1が受信されてメモリに記憶されている。なお、図6に示す第1ATCRBS応答Ab1は、モードSオールコール応答Ab2を送信したモードS機(Aコード:860000)によって送信された応答である。
【0050】
ステップS301では、相関処理手段135aは、応答Aa2と応答Ab1、応答Aa2と応答Aa1について第1相関C1を求めてメモリに一時記憶させる。
【0051】
その後、判定手段135cは、ステップS302で応答Aa2と応答Ab1の第1相関C1、応答Aa2と応答Aa1の第1相関C1がそれぞれ所定の範囲内であるか否かを判定し、ステップS303で登録する。
【0052】
例えば、ここで、ATCRBS応答Ab1は、同一の航空機から送信された第2ATCRBS応答がメモリに存在しないため、Bタイプとされる。また、応答Aa2と応答Aa1とは、同一の航空機によって送信されており、第1相関C1は所定の範囲内になり、処理対象として登録される。ここで、ATCRBS応答Aa1は、同一の航空機から送信された第2ATCRBS応答Aa1がメモリに存在するため、Aタイプとされる。
【0053】
続くステップS304で相関処理手段135aは、応答Ab2と応答Ab1、応答Ab2と応答Aa1について第2相関C2を求めてメモリに一時記憶させる。
【0054】
その後、相関処理手段135aは、ステップS305で応答Ab2と応答Ab1の第2相関C2、応答Ab2と応答Aa1の第2相関C2がそれぞれ所定の範囲内であるか否かを判定し、ステップS306で登録する。例えば、応答Ab2と応答Ab1とは、同一の航空機から送信されており、第2相関C2が所定の範囲内であり、モードSアドレスも同一であるため処理対象として登録される。
【0055】
このように登録された結果から、続くステップS308〜S311で第1ATCRBS応答Ab1は、Bタイプであって、応答Ab2との第2相関C2が所定の範囲内であるため、判定手段135cによってモードS機から送信されたものと判定され、生成手段135dによってモードSレポートに含められる。また、続くステップS308,312,313で第1ATCRBS応答Aa1は、Aタイプであるため、判定手段135cによってATCRBS機から送信されたものと判定され、生成手段135dによってATCRBSレポートに含められる。
【0056】
このように、モードS二次監視レーダでは、第1ATCRBS応答について、第2ATCRBS応答及びモードSオールコール応答との相関を求めるとともにタイプ分けすることで、第1ATCRBS応答がモードS機から送信されたものであるか、又はATCRBS機から送信されたものであるかを判定し、レポートに含めて監視空域を飛行する航空機を正確に監視することができる。
【0057】
〈ロールコール期間〉
ロールコール期間におけるモードS二次監視レーダ1の処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
ロールコール期間には、メモリ(図示せず)に送信するモードSロールコール質問Q4が記憶されている場合(S41でYES)、送信制御器131は、モードSロールコール質問Q4を送信する(S42)。
【0059】
モードSロールコール質問Q4に対して、モードS機からモードSロールコール応答Ab3が送信されると、モードSロールコール応答Ab3はアンテナ11、送受切替器121及び受信器123を介して、モードS応答処理器132に入力される(S43)。
【0060】
入力したモードSロールコール応答Ab3が正常な応答である場合(S44でYES)、モードS応答処理器132は、航空機データ132bに登録するとともに、モードSロールコール応答Ab3を監視処理器135に出力する(S45)。
【0061】
一方、入力したモードSロールコール応答Ab3が正常な応答ではない場合(S44でNO)ステップS42に戻り、再び質問を送信する。
【0062】
続いて、監視処理器135からの入力によって送信制御器131は、次のロールコール期間で送信するモードSロールコール質問Q4を生成し、メモリに記憶する(S46)。
【0063】
図5のフローチャートのステップS309でNOであった場合、図7の処理が終了した場合に、監視処理器135で行われる相関処理及び判定処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0064】
モードSロールコール応答Ab3を受信したとき(S501でYES)、判定手段135cは、相関処理手段135aで求められたモードSロールコール応答Ab3と第1ATCRBS応答との相関(第3相関C3)が所定の範囲内にあるか否かを判定する(S503)。具体的には、相関処理手段135aは、応答に含まれるレンジ、アジマス及び高度を利用して位置情報の相関を第3相関C3として求め、判定手段135cで利用される。
【0065】
第3相関C3が所定の範囲内であるとき(S503でYES)、判定手段135cは、各応答に含まれるAコードが一致するか否かを判定する(S504)。Aコードが一致する場合(S504でYES)、判定手段135cは、アラートが発生しているか否かを判定する(S505)。ここで、アラートとは、異常の発生等を表わす情報であり、モードSロール応答Ab3のフライトステータスに含まれる情報から判断することができる。
【0066】
Aコードが一致する場合(S504でYES)又は、Aコードが一致せず、アラートが発生している場合(S504でNO、S505でYES)、判定手段153bは、対象としている第1ATCRBS応答は、モードS機が送信したものと判定し(S507)、第1ATCRBS応答の内容とともに、判定の結果をメモリに記録する(S508)。
【0067】
一方、モードSロールコール応答を受信していないとき(S501でNO)、判定手段135cは、対象としている第1ATCRBS応答が含む航空機の位置情報が記憶装置で記憶されているいずれかのモードS機の予測位置の範囲内であるか否かを判定する(S509)。第1ATCRBS応答が含む航空機の位置情報がモードS機の予測位置の範囲内であって、第1ATCRBS応答がBタイプであるとき(S509でYES、S510でYES)、ステップS504に進む。
【0068】
また、予測位置の範囲外である場合(S509でNO)、Bタイプの第1ATCRBS応答でないとき(S510でNO)判定手段135cは、対象としている第1ATCRBS応答は、ATCRBS機が送信したものと判定し(S511)、第1ATCRBS応答の内容とともに、判定の結果をメモリに記録する(S512)。ここで、第1ATCRBS応答がBタイプであるか否かは、図5のステップS303で分類されてメモリに記憶されているタイプを用いて行うものとする。
【0069】
他に、範囲外であると判定された場合(S503でNO)、アラートが発生していない場合(S505でNO)、又は、Bタイプでない場合(S506でNO)にもATCRBS機が送信したATCRBS応答であると判定して判定の結果を記録する(S511、S512)。
【0070】
図9を用いて、同一のモードS機(Aコード:860000)から第1ATCRBS応答Ab1とモードSロールコール応答Ab3を受信した場合における処理の一例について説明する。図9に示す例では、モードA/C専用質問Q2に対して受信した第2ATCRBS応答Aa2と、モードA/C質問Q1に対して受信した第1ATCRBS応答Ab1及びAa1と、モードSロールコール質問Q4に対して受信したモードSロールコール応答Ab3がメモリに記憶されている。なお、図9に示す第1ATCRBS応答Ab1は、モードSロールコール応答Ab3を送信したモードS機(Aコード:860000)によって送信された応答である。また、図9に示す例では、モードS二次監視レーダ1は、モードSオールコール質問Q3に対しては、モードS機からの応答は受信していない。
【0071】
まず、判定手段135cは、第1ATCRBS応答Ab1を対象としたとき、応答Ab1と応答Ab3は同一の航空機から送信されているため第3相関C3が所定の範囲内になり、ステップS503においてYESに進む。また、同一の航空機に送信されているためAコードは一致し、ステップS504においてYESに進む。ここで、アラートが発生していれば、ステップS505でYESに進むが、アラートが発生していない場合には判定手段135cは、応答Ab1はモードS機によって送信されたものと判定し、モードSレポートに含められる。
【0072】
また、判定手段135cは、第1ATCRBS応答Aa1を対象としたとき、応答Aa1と応答Ab3と異なる航空機によって送信されているため第3相関C3が所定の範囲内でないと判定すれば、ステップS503においてNOに進む。一方、第3相関C3が所定の範囲内であっても、第1ATCRBS応答Aa1はAタイプであるため、ステップS506においてNOに進む。従って、応答Aa1は、ATCRBS機によって送信されたものと判定され、ATCRBSレポートに含められる。
【0073】
また、図10を用いて、モードS機(Aコード:860000)から受信すべきであったロールコール応答Ab3を受信できなかった場合における第2相関処理及び第2判定処理の一例について説明する。図10に示す例では、モードA/C専用質問Q2に対して受信した第2ATCRBS応答Aa2と、モードA/C質問Q1に対して受信した第1ATCRBS応答Ab1及びAa1がメモリに記憶されている。なお、図10に示す例では、応答Ab1は、モードS機(Aコード:860000)によって送信された応答である。また、図10に示す例では、モードS二次監視レーダ1は、モードSロールコール質問Q4に対して送信されたモードS機からの応答は受信できていない。
【0074】
モードSロールコール応答を受信していないため、ステップS501ではNOに進む。まず、判定手段135cは第1ATCRBS応答Ab1を対象としたとき、応答Ab1の位置情報は、モードS機から送信された応答であるため、モードS機の予測位置の範囲内となり、ステップS509においてYESに進む。続いて、応答Ab1は、Bタイプであるため、ステップS510でNOに進む。また、Aコードが一致しているためS504でYESに進み、Bタイプであるため、ステップS506でYESに進む。従って、ステップS508において、応答Ab1は、モードS機によって送信されたものと判定され、モードSレポートに含められる。
【0075】
次に、判定手段135cは、第1ATCRBS応答Aa1を対象としたとき、応答Aa1は、ATCRBS機から送信された応答であるため、モードS機の予測位置の範囲外であり、ステップS509においてNOに進む。従って、ステップS511において、判定手段135cは、応答Aa1をATCRBS機から送信されたものと判定し、ATCRBSレポートに含める対象とする。
【0076】
このように、モードS二次監視レーダ1では、図10に示すように、モードSロールコール質問に対しては、モードS機からの応答は受信していない場合であっても、モードS機からの第1ATCRBS応答をモードSレポートに含めることができ、監視空域を飛行する航空機を正確に監視することができる。
【0077】
上述したように、本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダは、モードA/C質問、モードA/C専用質問、モードSオールコール質問、モードSロールコール質問を送信し、受信した各応答について相関を求めるとともにタイプ分けし、ATCRBS応答がモードS機によって送信されたものであるか、又はATCRBS機によって送信されたものであるかを判定している。これによって、モードS二次監視レーダがモードSオールコール質問又はモードSロールコール質問に対する応答を受信できない場合であっても、モードA/C質問に対して受信したATCRBS応答を利用して、航空機の監視を行うことができる。
【0078】
なお、モードS二次監視レーダ1はハードウェアとして説明したが、一般的なコンピュータのCPUに、監視プログラムをインストールさせることで、CPUに各処理手段を備えるモードS二次監視レーダ1が実現される。
【0079】
上記のように、本発明を各実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0080】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明に記載した事項と自明な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダの機能ブロック図である。
【図2】図1で示したモードS二次監視レーダにおける質問を送信するタイミングの説明図である。
【図3】第1オールコール期間における処理の一例を説明するフローチャートである。
【図4】第2オールコール期間における処理の一例を説明するフローチャートである。
【図5】図4で受信した応答に関する処理の一例を説明するフローチャートである。
【図6】オールコール期間に受信される応答について説明する一例である。
【図7】ロールコール期間における処理の一例を説明するフローチャートである。
【図8】図7で受信した応答に関する処理の一例を説明するフローチャートである。
【図9】ロールコール期間に受信される応答について説明する一例である。
【図10】ロールコール期間に受信される応答について説明する他の例である。
【図11】モードS二次監視レーダの概略図である。
【図12】モードS二次監視レーダから送信される質問と、受信される応答である。
【図13】従来のモードS二次監視レーダにおける質問を送信するタイミングの説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1…モードS二次監視レーダ
11…アンテナ
12…送受信部
121…送受切替器
122…送信器
123…受信器(受信手段)
13…処理部
131…送信制御器(送信制御手段)
132…応答処理器
132a…判定手段
132b…航空機データ
133…ATCRBS応答処理器
133a…相関処理手段
133b…航空機データ
134…チャネル管理器
135…監視処理器
135a…相関処理手段
135b…分類手段
135c…判定手段
135d…生成手段
135e…予測データ
136…タイミング信号発生器
2…トランスポンダ
21…アンテナ
22…送受信部
23…信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問を送信し、所定の監視空域に存在するATCRBSトランスポンダが搭載されるATCRBS機及びモードSトランスポンダが搭載されるモードS機を監視するモードS二次監視レーダであって、
質問を送信する送信制御手段と、
前記ATCRBS機及び前記モードS機から前記質問に対して送信された応答を受信する受信手段と、
受信した各応答が含む位置情報について相関を求める相関処理手段と、
受信した応答を分類する分類手段と、
前記相関処理及び前記分類の結果から、前記質問に対して受信したATCRBS応答が前記ATCRBS機から送信されたものであるか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果に基づいて前記監視空域を飛行する航空機の状態に関するレポートを生成する生成手段と、
を備えることを特徴とするモードS二次監視レーダ。
【請求項2】
前記送信制御手段は、第1オールコール期間にA/C質問を送信し、第2オールコール期間にA/C専用質問及びモードSオールコール質問を送信し、
前記受信手段は、前記ATCRBS機及び前記モードS機から前記A/C質問に対して第1ATCRBS応答を受信し、前記ATCRBS機から前記A/C専用質問に対して第2ATCRBS応答を受信し、前記モードS機から前記モードSオールコール質問に対してモードSオールコール応答を受信し、
前記相関処理手段は、前記第1ATCRBS応答と前記第2ATCRBS応答との相関を求め、
前記分類手段は、前記第1ATCRBS応答と前記第2ATCRBS応答との相関が所定の範囲内であり、前記第2ATCRBS応答を送信した航空機から受信した前記第1ATCRBS応答をAタイプとし、
前記判定手段は、前記Aタイプの第1ATCRBS応答を前記ATCRBS機から送信されたものであると判定する請求項1記載のモードS二次監視レーダ。
【請求項3】
前記相関処理手段は、前記第1ATCRBS応答と前記モードSオールコール応答との相関を求め、
前記判定手段は、前記第1ATCRBSB応答がAタイプでなく、前記第1ATCRBS応答と前記モードSオールコール応答との相関が所定の範囲外である場合、前記第1ATCRBS応答は前記ATCRBS機から送信されたものであると判定する請求項2記載のモードS二次監視レーダ。
【請求項4】
前記モードS二次監視レーダは、各時刻に各航空機が飛行する予定の位置である予測位置を関連付けた予測データを記憶する記憶装置を備え、
前記送信制御手段は、ロールコール期間にモードSロールコール質問を送信し、
前記受信手段は、前記モードS機から前記モードSロールコール質問に対してモードSロールコール応答を受信し、
前記相関処理手段は、前記第1ATCRBS応答と前記モードSロールコール応答との相関を求め、
前記判定手段は、前記第1ATCRBS応答が含む位置情報が前記予測データで前記第1ATCRBS応答を受信した時刻に関連付けられる前記モードS機の予測位置の範囲内でない場合、前記第1ATCRBS応答と前記モードSロールコール応答との相関が所定の範囲外である場合、及び前記第1ATCRBS応答と前記モードSロールコールとのAコードが不一致であって、前記第1ATCRBS応答にアラート情報が含まれる場合、前記第1ATCRBS応答は前記ATCRBS機から送信されたものと判定する請求項2記載のモードS二次監視レーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−224388(P2008−224388A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62297(P2007−62297)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】