説明

ユビキタス通信システムにおける端末およびその管理装置

【課題】 他人の端末のユーザID等を変更することなく、かつ、情報漏洩等の問題を生ずることなく利用できるユビキタス通信システムを提供する。
【解決手段】 ユビキタス通信システム上で端末を管理する端末管理装置に、各ユーザに属する端末に関する情報を保持する端末管理部11と、他ユーザに開放可能な端末と当該端末を開放可能なユーザとを予め登録した親登録許可リスト12と、他ユーザから借用可能な端末と当該端末が属するユーザとを予め登録した子登録許可リスト13と、第1のユーザから第2のユーザに属する端末についての関連性設定要求があったとき、前記リストを参照し、第2のユーザに属する端末を第1のユーザに利用させることができると判定された場合に、第1のユーザの端末管理部11に第2のユーザに属する端末を登録する関連性設定部14とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ環境を、ユーザ専用の特定機器ではなく、手近にある様々な機器によって提供するユビキタスコンピューティングに関し、特に、ユビキタス通信システム上の端末およびこれを管理する端末管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
個人が利用するコンピュータ環境や、それによって提供される様々なサービス、例えば電子メールの送受信や各種チケットの予約・購買といったサービスを、ユーザ専用の特定機器ではなく、手近にある機器によって提供する、いわゆるユビキタスコンピューティングの検討が進んでいる。
【0003】
このユビキタスコンピューティングの概念を通信機器に適用し、携帯電話やファクシミリ送受信機などの複数の通信機器を組み合わせて通信機能を提供するユビキタス通信システムの検討も進んでいる(例えば特許文献1参照)。また、映像の送受信機としてテレビおよびビデオカメラを用い、音声の送受信機として携帯電話を用いることにより、テレビ電話の機能を提供するといったシステムも提案されている。
【特許文献1】特開平9−62597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなユビキタス通信システムには、以下のような問題がある。
【0005】
通信機器をはじめとして、あらゆる情報機器は、通常の場合、特定の者に所有または管理されている。従って、ユビキタス通信システムのユーザが、手近にある通信機器を利用して通信を行う場合は、そのユーザが他人の通信機器を一時的に借用するという形態になる。
【0006】
そうした場合、借用した端末を、例えば自分の電話番号に対する発着信を行える自分の端末として動作させるためには、その端末に対して、ユーザID、サーバアドレスなどの接続情報、または認証情報等を設定しなければならない。従って、ユーザにとって設定の手間がかかる、ユーザインタフェースが複雑になる、認証情報漏洩の可能性がある、といった様々な課題がある。
【0007】
本発明の目的は、これらの課題を鑑み、他人の端末のユーザID等を変更することなく、かつ、情報漏洩等の問題を生ずることなく利用できるユビキタス通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる端末管理装置は、各ユーザが他のユーザに属する端末を借用して通信を行うことが可能なユビキタス通信システム上で端末を管理する端末管理装置であって、各ユーザについて、当該ユーザに属する端末に関する情報を保持する端末管理部と、前記各ユーザに属する端末のうち他ユーザに開放可能な端末と、当該端末を開放可能なユーザとに関する情報を保持する親登録許可リスト管理部と、
他ユーザから借用可能な端末と、当該端末が属するユーザとに関する情報を保持する子登録許可リスト管理部と、第1のユーザから第2のユーザに属する端末についての関連性設定要求があったとき、前記親登録許可リスト管理部および前記子登録許可リスト管理部を参照し、当該第2のユーザに属する端末を前記第1のユーザに利用させることができると判定された場合に、前記第1のユーザについての端末管理部に、当該第2のユーザに属する端末に関する情報を登録する関連性設定部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、各ユーザについて、当該ユーザに属する端末に関する情報を端末管理部にあらかじめ格納し、前記各ユーザに属する端末のうち他ユーザに開放可能な端末と、当該端末を開放可能なユーザとに関する情報を親登録許可リスト管理部にあらかじめ格納し、他ユーザから借用可能な端末と、当該端末が属するユーザとに関する情報を子登録許可リスト管理部にあらかじめ格納しておけば、第1のユーザから第2のユーザに属する端末についての関連性設定要求があったとき、関連性設定部が、親登録許可リスト管理部および子登録許可リスト管理部を参照し、第2のユーザに属する端末を第1のユーザに利用させることができると判定された場合に、第1のユーザについての端末管理部に当該第2のユーザに属する端末に関する情報を登録する。
【0010】
これにより、予め親子関係を設定しておいた他ユーザの端末を借用して、当該端末のユーザID等を変更することなく、通信を実行することが可能となる。また、ユーザ間で親子関係と開放(借用)すべき端末とを予め設定しておくことにより、親ユーザにとっては、盗聴などのプライバシー漏洩を防止できるという利点があり、子ユーザにとっては、自分の通信機器が無断で他のユーザに利用されるというリソース無断利用を抑止できるという利点がある。
【0011】
また、上記の端末管理装置において、前記端末管理部が、各ユーザに属する端末に関する情報として、各端末で通信可能なメディアを表すメディア情報を含み、前記第1のユーザからの発信イベントの受信を契機とし、当該発信イベントに含まれる発信端末のメディア情報と前記端末管理部のメディア情報とを照合することにより、当該第1のユーザに属する端末として前記端末管理部に登録されている端末から、前記発信端末として適した端末を選択して呼を再設定する呼制御部をさらに備えたことが好ましい。あるいは、前記端末管理部が、各ユーザに属する端末に関する情報として、各端末で通信可能なメディアを表すメディア情報を含み、通信成立後に前記端末管理部に対する更新を検出した場合、その時点の前記端末管理部のメディア情報を参照し、当該第1のユーザに属する端末として前記端末管理部に登録されている端末から適切な端末を選択して呼を再設定する呼制御部をさらに備えたことが好ましい。これらの構成では、呼制御部が通信すべきメディアに応じて通信環境を最適化して呼を再設定することにより、通信効率やユーザの利便性が向上するという利点がある。
【0012】
また、上記の端末管理装置において、前記関連性設定要求に、予め作成した秘匿情報を含め、関連性設定時に前記秘匿情報を提示させ、保存されている秘匿情報と照合することにより、当該関連性設定要求が正当な端末からなされたことを確認することが好ましい。
【0013】
また、前述の目的を達成するために、本発明の端末は、上述したいずれかの構成にかかる端末管理装置によって管理される端末であって、他の端末と相互に接近したことを近接無線によって検知した場合、自端末と他端末から取得した機器IDを含む関連性設定要求を生成し、前記端末管理装置の関連性設定部へ送信することを特徴とする。近接無線としては、RFID等を用いることができる。この構成によれば、端末同士が互いに接近した際に、それらの端末の機器IDを近接無線で取得して端末管理装置へ送り、関連性を設定することにより、端末同士の関連性を自動的に登録することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、他人の端末のユーザID等を変更することなく、かつ、情報漏洩等の問題を生ずることなく利用できるユビキタス通信システムを提供することができる。また、ユーザ間で親子関係と開放(借用)すべき端末とを予め設定しておくことにより、親ユーザにとっては、盗聴などのプライバシー漏洩を防止できるという利点があり、子ユーザにとっては、自分の通信機器が無断で他のユーザに利用されるというリソース無断利用を抑止できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の一実施形態にかかるユビキタス通信システムの基本的構成を概略的に示したブロック図である。図2に示すように、本実施形態にかかるユビキタス通信システムでは、ユーザ毎に当該ユーザの利用可能端末群が予め登録されており、利用可能端末群を管理する端末管理モジュール1が設けられている。すなわち、各ユーザに対して1つの端末管理モジュール1が存在する。端末管理モジュール1は、異なるユーザに跨った端末間に定義される関係性を管理し、その設定を制限することにより、異なるユーザ間での安全な端末貸借機能を実現する。端末管理モジュール1は、各ユーザの利用可能端末群に属するいずれかの端末内か、利用可能端末群からアクセス可能な機器(例えば通信制御機器やホームサーバ等)内に存在する。つまり、端末管理モジュール1が搭載された端末または機器が、本発明の端末管理装置の一実施形態となる。
【0017】
本実施形態のユビキタス通信システムでは、各端末について、ユーザ間で関連性(親子関係)を設定することができる。すなわち、一つの端末について、あるユーザと他のユーザとの間に「関連性がある」とは、いずれかのユーザが、他のユーザが所有または管理する端末を借用可能であるということを意味する。端末の関連性は、同一のユーザIDが2つの端末に対して設定されることによって定義される。従って、特定のユーザから見れば、他のユーザとの間に、
(1)他のユーザの端末を、自分の端末として利用する場合
(2)自分の端末を、他のユーザの端末として利用させる場合
の2通りの関連性が存在することになる。(1)の場合は、自分が「親」、他のユーザが「子」の関係にある。(1)の関連性を持たせることを制限することは、盗聴などのプライバシー漏洩を防止する点で有益である。(2)の場合は、自分が「子」、他のユーザが「親」の関係にある。(2)の関連性を持たせることを制限することは、自分の通信機器が無断で他のユーザに利用されるというリソース無断利用を抑止する点で有益である。
【0018】
本実施形態のユビキタス通信システムでは、図2に示すように、親ユーザの端末と子ユーザの端末との間で互いの機器IDを検出する。なお、機器IDとは、各端末に付与されている識別子であって、当該端末の所有者(または管理者)のユーザIDと当該端末の端末IDとを含んでいる。端末IDは、各端末に固有に付与された識別子であり、通信の際に宛先や送信元を表す。子ユーザの端末管理モジュール1は、検出した親ユーザの端末IDに対する通信の発着信端末として、子ユーザの端末が利用可能となるように、端末の関連性を設定する。親ユーザの端末管理モジュール1は、検出した子ユーザの端末IDの端末を、自らの端末IDに対する通信の発着信端末として利用可能となるよう、端末の関連性の設定を行う。
【0019】
このような機能を実現するために、端末管理モジュール1は図1に示すような内部構成を有する。図1は、端末管理モジュール1の基本構成を示すブロック図である。端末管理モジュール1は、端末管理部11、親登録許可リスト12、子登録許可リスト13、関連性設定部14を有する。端末管理部11は、当該ユーザの利用可能端末群に含まれる端末毎に存在する。図1の例では、図示しない3つの端末(a〜c)に対応して、3つの端末管理部11が存在している。端末管理部11は、各端末の端末IDを保持し、その端末IDを有する端末の間で、端末登録リクエストや、発着信などの呼制御情報を送受信する機能を持つ。
【0020】
関連性設定部14は、端末管理部11からの端末登録リクエストを受け付け、端末の関連性を設定する。端末の関連性の設定は、図3を参照して以下に詳述するが、親ユーザの端末管理モジュール1への子ユーザ端末の登録、すなわち、その子ユーザ端末に対応する端末管理部11が生成端末管理モジュール1に登録されることによって完了する。このように端末の関連性が設定された後、親ユーザは、もともと利用可能端末群に含まれていた自らの端末に加えて、登録された子ユーザの端末を利用して、通信を行うことができる。
【0021】
図3は、本実施形態のユビキタス通信システムにおける関連性設定の基本動作を示すフローチャートである。この関連性設定動作は、本ユビキタス通信システムにおいて、あるユーザの端末に対して他のユーザの端末が接近し、これらの端末の機器IDが互いに検知されたことから開始される。互いに接近した二つの端末のいずれか一方の端末から、当該端末の端末管理モジュール1へ、検知された機器IDのペアを含む端末登録リクエストが送信される。なお、互いに接近した二つの端末のいずれが端末登録リクエストを出すかは、任意の論理で決定できる。
【0022】
端末管理モジュール1は、前記端末登録リクエストを受信すると(S1)、当該モジュールの子登録許可リスト13を参照し(S2)、前記機器IDのペアのいずれかに含まれる端末IDが、子登録許可リスト13に登録されているか否かを判定する(S3)。リストに前記端末IDが存在する場合(S3にてYES)、その端末IDに対応するユーザIDを前記機器IDから抽出し、そのユーザの端末管理モジュール1へ登録依頼を送信する(S4)。そして、前記登録依頼を受け取った端末管理モジュール1は、親登録許可リスト12を参照し(S5)、登録依頼に含まれる端末IDがリストに存在するか否かを判定する。リストに前記端末IDが存在する場合(S6にてYES)、S4で登録依頼の発信元となった端末管理モジュール1へ登録許可レスポンスを返送する(S7)。そして、登録許可レスポンスを受け取った端末管理モジュール1において、登録リクエストの対象端末に対応する端末管理部11を生成し、端末管理モジュール1へ登録する(S8)。
【0023】
以上の動作により、本実施形態のユビキタス通信システムは、予め親子関係を設定しておいた他ユーザの端末を借用して通信を実行することを可能とする。また、ユーザ間で親子関係と開放(借用)すべき端末とを予め設定しておくことにより、親ユーザにとっては、盗聴などのプライバシー漏洩を防止できるという利点があり、子ユーザにとっては、自分の通信機器が無断で他のユーザに利用されるというリソース無断利用を抑止できるという利点がある。
【0024】
[第2の実施形態]
以下、本発明の他の実施形態にかかるユビキタス通信システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施形態のユビキタス通信システムは、RFIDタグおよびリーダ等の近接無線システムを用いて、親ユーザと子ユーザの機器IDを検知する。また、本実施形態のユビキタス通信システムは、子ユーザから借用する端末を親ユーザの利用可能端末として追加登録した後に、親ユーザのメディア環境の変化を検出し、通信環境を最適化する。
【0025】
図4は、本実施形態にかかるユビキタス通信システムにおいて、各ユーザに対応して設けられる端末管理モジュール110の構成を示すブロック図である。端末管理モジュール110は、図2に示した端末管理モジュール1に加えて、呼制御部16をさらに備えている。また、端末管理モジュール110の端末管理部11は、利用可能な端末の端末IDの他に、その端末が取り扱い可能なメディア(音声、ビデオ等)の情報を有している。それ以外の点については、端末管理モジュール110の基本的な構成および基本動作は、前述の端末管理モジュール1と同様である。
【0026】
以下、図5および図6を参照し、具体例に基づいて、本実施形態にかかるユビキタス通信システムの動作について説明する。ここで、ユーザAは、TV電話が設置された自席で作業中であり、ユーザAの利用可能端末群にこのTV電話が登録されている。ユーザBはユーザAの近くにやってきた出張者であり、ユーザBの利用可能端末群に携帯電話が登録されている。ユーザCはユーザBと音声により通話中である。すなわち、ユーザCとユーザBとの間には音声セッションが確立されている。また、ユーザCの利用可能端末群にはTV電話も登録されている。この状態で、ユーザBが、ユーザAのTV電話を借用して、ユーザCとの間に映像セッションを追加しようとしたものとする。すなわち、この場合、ユーザBが「親」であり、ユーザAが「子」の関係である。
【0027】
また、ユーザAとユーザBとの間で、ユーザAのTV電話をユーザBに利用させることについての合意が予めなされている。これにより、図5(a)に示すように、ユーザAの端末管理モジュール110の親登録許可リスト12には、開放可能親ユーザIDとしてBのユーザIDが登録され、開放可能自端末IDとして自らのTV電話の端末IDが登録されているものとする。さらに、図5(b)に示すように、ユーザBの端末管理モジュール110の子登録許可リスト13には、接続可能子ユーザIDとしてユーザAのユーザIDが、接続可能他端末IDとしてユーザAのTV電話の端末IDが登録されているものとする。なお、図5(a)および(b)では、分かりやすさを優先し、登録されているユーザIDおよび端末IDの内容を表記したが、ユーザIDおよび端末IDは、少なくともユビキタス通信システムの中で重複しないよう設定される数字列または英数字列あるいはIPアドレス等である。
【0028】
まず、ユーザBは、自分の携帯電話の機器IDを、ユーザAのTV電話へ通知する(図6のS11)。これは、RFIDを利用して、次のような方法で行うことができる。すなわち、ユーザBの携帯電話には、当該携帯電話の機器IDが記述されたRFIDタグが内蔵しておく。また、TV電話にはRFIDリーダを装備する。ユーザBが自らの携帯電話をユーザAのTV電話に近づけることにより、ユーザAのTV電話のRFIDリーダが、ユーザBの携帯電話の機器IDを読み取る。なお、機器IDとは、第1の実施形態と同様に、ユーザIDと端末IDとから構成される。
【0029】
次に、ユーザAのTV電話は、上述のようにRFIDリーダで読み取ったユーザBの携帯電話の機器IDと自らの機器IDとをペアにして、ユーザAの端末管理モジュールに110へ送信する(S12)。ここで、ユーザAの端末管理モジュール110は、送信された機器IDのペアを、そのモジュール内の関連性設定部14へ送る。関連性設定部14は、親登録ID許可リスト12と子登録ID許可リスト13とを参照し、これらの機器IDに含まれる端末IDのそれぞれが親登録ID許可リスト12または子登録ID許可リスト13に登録されているか否かを判定する(S13)。ここでは、図5(a)に示したように、ユーザAの端末管理モジュール110の親登録許可リスト12に、開放可能親ユーザIDとしてユーザBのユーザID、開放可能自端末IDとしてTV電話の端末IDが登録されている。従って、ユーザAの端末管理モジュール110の関連性設定部14は、ユーザB(親)にユーザA(子)のTV電話を利用させて良いと判断する。
【0030】
次に、ユーザAの端末管理モジュール110は、ユーザBの端末管理モジュール110に対して、子端末登録リクエストを発行する(S14)。このリクエストを受信したユーザBの端末管理モジュール110は、子登録許可リスト13を参照し、ユーザAのTV電話を、ユーザBの利用可能端末群へ追加登録して良いか否かを判定する(S15)。この場合、図5(b)に示したように、ユーザA(子)のTV電話をユーザB(親)に利用させて良い旨の登録がなされているので、ユーザBの端末管理モジュール110の関連性設定部14は、ユーザAのTV電話に相当する端末管理部11を作成し、ユーザBの端末管理モジュール110内に保存する(S16)。
【0031】
これ以後、ユーザBは、ユーザAのTV電話を、自らの利用可能端末群に含まれる端末の一つとして利用することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、ユーザBの端末管理モジュール110の関連性設定部14は、呼制御部16に対して端末環境の再最適化を要求する(S17)。これを受けた呼制御部16は、既存の通信に利用されているメディアを検査し、その時点でのユーザBの端末管理モジュール110に登録されている全ての端末管理部11のメディア情報を参照することにより、ユーザBが利用可能なメディアを判断する(S18)。この場合、前述のとおりユーザAのTV電話が新たに登録されたことにより、ビデオが利用可能であると判断される。しかし、それまでに確立されているのは当初からの音声セッションだけであり、ビデオは利用されていないことがわかる。
【0033】
そこで、ユーザBの端末管理モジュール110の呼制御部16は、ユーザAのTV電話に「ビデオ」を指定した発呼リクエストを送信し(S19)、接続条件を記した発呼リクエストを得る(S20)。続いて、ユーザBの端末管理モジュール110の呼制御部16は、これに既存の「音声」に関するメディア条件を加え、単一の呼変更リクエストを生成し、既存の通信相手であるユーザCに対して送信する(S21)。
【0034】
ユーザCの端末管理モジュール110は、利用可能端末群の中にTV電話がもともと含まれているので、これに指定された条件でビデオのセッションを追加し、ユーザC側のメディア条件を、着信レスポンスでユーザBの端末管理モジュール110へ返送する(S22)。
【0035】
ユーザBの端末管理モジュール110では、着信レスポンスに含まれる「ビデオ」のメディア条件を抽出し、ユーザAのTV電話から受信した発呼リクエストに対するレスポンスとして送信する(S23)。これにより、ユーザAのTV電話とユーザCのTV電話との間で、新規にビデオのセッションが開設される。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、予め親子関係を設定しておいた他ユーザの端末を借用して通信を実行することが可能なユビキタス通信システムを実現できる。また、ユーザ間で親子関係と開放(借用)すべき端末とを予め設定しておくことにより、親ユーザにとっては、盗聴などのプライバシー漏洩を防止できるという利点があり、子ユーザにとっては、自分の通信機器が無断で他のユーザに利用されるというリソース無断利用を抑止できるという利点がある。
【0037】
さらに、本実施形態によれば、RFID等の近接無線システムを利用して親ユーザの端末と子ユーザの端末間で機器IDを検出するので、ユーザが機器IDを手動で設定する等の手間が不要である。さらに、子ユーザから借用する端末を親ユーザの利用可能端末として追加登録した後に、親ユーザのメディア環境の変化を検出し、通信環境を最適化することにより、最適化された環境で通信ができるため、通信効率やユーザの利便性が向上するという利点もある。
【0038】
なお、本実施形態では、親ユーザの端末と子ユーザの端末との間でRFIDによって機器IDを通知する例を示した。しかし、端末間の機器IDの受け渡し方法は、RFIDのみに限定されない。例えば、親ユーザがWebインタフェース等を用いて機器IDを入力し、子ユーザの端末管理モジュールがこれを受け取るようにしても良い。
【0039】
[第3の実施形態]
以下、本発明のさらに他の実施形態について説明する。
【0040】
本実施形態にかかるユビキタス通信システムの端末管理モジュールの基本的な構成は、第2の実施形態と同様である。以下、ユーザAのTV電話とユーザCのTV電話との間で、音声とビデオによる通信が行われている状態を仮定し、ユーザAがユーザBの携帯電話を借用してユーザCのTV電話との間で音声通話を行おうとする場合の、本実施形態のユビキタス通信システムの動作について説明する。すなわち、本実施形態では、ユーザAが「親」であり、ユーザBが「子」の関係になる。
【0041】
なお、ユーザBの携帯電話とユーザAのTV電話との間で、第2の実施形態と同様に、RFIDによる接近感知システムが提供されているものとする。また、ユーザAの端末管理モジュール110の子登録許可リスト13には、図7(a)に示した内容が登録されているものとし、ユーザBの端末管理モジュール110の親登録許可リスト12には、図7(b)に示した内容が登録されているものとする。
【0042】
この状態で、ユーザAがユーザBの携帯電話を借用し、ユーザAのTV電話へ近づけると、ユーザAのTV電話は、RFIDリーダにより携帯電話の機器IDを読み取る(図8のS31)。ユーザAのTV電話は、読み取ったユーザBの携帯電話の機器IDと自らの機器IDとをペアにして、ユーザAの端末管理モジュール110へ送信する(S32)。ユーザAの端末管理モジュール110は、これを関連性設定部14へ送る。関連性設定部14は、送信された機器IDのペアについて、子登録許可リスト13を参照し、子端末としての登録可否を判定する(S33)。この場合、図7(a)に示したように、ユーザBの携帯電話がユーザAの利用可能端末として子登録許可リスト13に載っているので、登録可となる。
【0043】
次に、ユーザAの端末管理モジュール110は、ユーザBの端末管理モジュール110に対して、親登録リクエストを送信する(S34)。ユーザBの端末管理モジュール110は、親登録許可リスト12(図7(b))を参照し(S35)、一致するので、登録許可レスポンスを送信する(S36)。登録許可レスポンスを受信したユーザAの端末管理モジュール110は、ユーザBの携帯電話に対応する端末管理部11を作成し、ユーザAの端末管理モジュール110内に保存する(S37)。
【0044】
これ以後、ユーザAは、ユーザBの携帯電話を、自らの利用可能端末群に含まれる端末の一つとして利用することが可能となる。
【0045】
ユーザAの端末管理モジュール110の関連性設定部14は、呼制御部16に対して端末環境の再最適化を要求する(S38)。これを受けた呼制御部16は、既存の通信に利用されているメディアを検査し、その時点でのユーザAの利用可能端末群において利用可能なメディアを検索する(S39)。この例では、ユーザAの利用可能端末群のうち、音声通信に利用可能な端末は、ユーザAのTV電話とユーザBの携帯電話との二つである。従って、呼制御部16は、例えばこれらの端末毎に予め優先度を設定する等の任意の論理を用いて、いずれかの端末を選択する。この場合、携帯電話が選択されたものとする。
【0046】
この場合、現状の音声セッションを、ユーザAが借用しているユーザBの携帯電話に移し変える必要がある。このため、ユーザAの端末管理モジュール110は、まず、ユーザAのTV電話に既存の音声セッションの切断リクエストを送り(S40)、新たにユーザBの携帯電話に音声発呼リクエストを送信する(S41)。
【0047】
ユーザBの端末管理モジュール110はこれを受信し、ユーザBの携帯電話に音声発呼リクエストを送信する。ユーザBの携帯電話は自らへの接続条件を記した発呼リクエストを送信し(S42)、ユーザAの端末管理モジュール110はこれを受信する。
【0048】
ユーザAの端末管理モジュール110は、ユーザCに対して音声の接続条件変更リクエストを送信し(S43)、ユーザCのTV電話は既存の音声セッションを切断し、自らへの接続条件を記したレスポンスを返送する(S44)。
【0049】
このレスポンスは最終的にユーザBの携帯電話へと送信され、ユーザBの携帯電話とユーザCのTV電話との間で音声によるセッションが確立する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、端末同士が互いに接近した際に、それらの端末の機器IDを端末管理モジュールへ送り、関連性を設定することにより、端末同士の関連性を自動的に登録することが可能である。
【0051】
[第4の実施形態]
以下、図9および図10を参照しながら、本発明のさらに他の実施形態について説明する。前述した各実施形態と同様の構成については同じ参照符号を付記し、詳細な説明を省略する。
【0052】
本実施形態にかかるユビキタス通信システムは、図9に示す端末管理モジュール130を備えている。端末管理モジュール130は、第2の実施形態または第3の実施形態の端末管理モジュール110に、秘匿情報としてのチケットを生成するチケット生成部18をさらに備えた構成である。
【0053】
ここで、第2の実施形態と同様に、ユーザBとユーザCとの間で音声通信が行われている状態を仮定し、本実施形態のユビキタス通信システムの動作について説明する。また、ユーザBの携帯電話とユーザAのTV電話との間には、RFIDによる接近感知システムが提供されているものとする。
【0054】
ユーザBの携帯電話は、ユーザAのTV電話の接近を検出すると、ユーザBの端末管理モジュール130に対してチケットの生成を要求する(図10のS51)。ユーザBの端末管理モジュール130は、この要求を受けとると、チケット生成部18に乱数を生成させる。チケット生成部18は、生成した乱数を秘匿情報として保存する一方、これを暗号化し、チケットとして携帯電話に送信する(S52)。
【0055】
携帯電話は、RFIDタグに、前記チケットの値と自らの機器IDを設定する。そして、この携帯電話がユーザAのTV電話に近づけられると、TV電話は、携帯電話のRFIDタグからチケットの値と機器IDとを読み出し(S53)、第2の実施形態と同様に、自らの端末管理モジュール130へ登録リクエストを送信する(S54)。
【0056】
ユーザAの端末管理モジュール130は、親登録許可リスト12を検索する(S55)。そして、端末管理モジュール130は、機器IDに含まれる端末IDが親登録許可リスト12に登録されている端末IDと一致した場合、子端末登録リクエストに前述のチケットを添付して、ユーザBの端末管理モジュール130に送信する(S56)。
【0057】
ユーザBの端末管理モジュール130では、チケットを復号化し、得られた文字列がチケット生成部18に保存されているものと一致するか否かをチェックする(S57)。一致した場合、確かにS52において払い出したチケットであることが確認できる。以降のシーケンスは第2の実施形態において図6に示したS5以降と同一であるため、説明を省略する。
【0058】
以上のとおり、本実施形態によれば、親ユーザの端末の機器IDに暗号化されたチケットを添付して子ユーザへ送り、関連性の設定時に返送されたチケットを復号して保存されている乱数と比較することにより、関連性を設定しようとする端末を確認することができる。これにより、盗聴や無断利用といったセキュリティ上の問題をより確実に防止できる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明を限定するものではなく、発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の例では、端末の例として携帯電話とTV電話を提示したが、端末の実施態様はこれらに限定されない。
【0060】
上述の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)各ユーザが他のユーザに属する端末を借用して通信を行うことが可能なユビキタス通信システム上で端末を管理する端末管理装置であって、
各ユーザについて、当該ユーザに属する端末に関する情報を保持する端末管理部と、
前記各ユーザに属する端末のうち他ユーザに開放可能な端末と、当該端末を開放可能なユーザとに関する情報を保持する親登録許可リスト管理部と、
他ユーザから借用可能な端末と、当該端末が属するユーザとに関する情報を保持する子登録許可リスト管理部と、
第1のユーザから第2のユーザに属する端末についての関連性設定要求があったとき、前記親登録許可リスト管理部および前記子登録許可リスト管理部を参照し、当該第2のユーザに属する端末を前記第1のユーザに利用させることができると判定された場合に、前記第1のユーザについての端末管理部に、当該第2のユーザに属する端末に関する情報を登録する関連性設定部とを備えたことを特徴とする端末管理装置。
(付記2)前記端末管理部が、各ユーザに属する端末に関する情報として、各端末で通信可能なメディアを表すメディア情報を含み、
前記第1のユーザからの発信イベントの受信を契機とし、当該発信イベントに含まれる発信端末のメディア情報と前記端末管理部のメディア情報とを照合することにより、当該第1のユーザに属する端末として前記端末管理部に登録されている端末から、前記発信端末として適した端末を選択して呼を再設定する呼制御部をさらに備えた、付記1に記載の端末管理装置。
(付記3)前記端末管理部が、各ユーザに属する端末に関する情報として、各端末で通信可能なメディアを表すメディア情報を含み、
通信成立後に前記端末管理部に対する更新を検出した場合、その時点の前記端末管理部のメディア情報を参照し、当該第1のユーザに属する端末として前記端末管理部に登録されている端末から適切な端末を選択して呼を再設定する呼制御部をさらに備えた、付記1に記載の端末管理装置。
(付記4)前記関連性設定要求に、予め作成した秘匿情報を含め、関連性設定時に前記秘匿情報を提示させ、保存されている秘匿情報と照合することにより、当該関連性設定要求が正当な端末からなされたことを確認する、付記1に記載の端末管理装置。
(付記5)付記1〜3のいずれか一項の端末管理装置によって管理される端末であって、
他の端末と相互に接近したことを近接無線によって検知した場合、自端末と他端末から取得した機器IDを含む関連性設定要求を生成し、前記端末管理装置の関連性設定部へ送信することを特徴とする端末。
(付記6)各ユーザが他のユーザに属する端末を借用して通信を行うことが可能なユビキタス通信システムであって、
各ユーザについて、当該ユーザに属する端末に関する情報を保持する端末管理部と、
前記各ユーザに属する端末のうち他ユーザに開放可能な端末と、当該端末を開放可能なユーザとに関する情報を保持する親登録許可リスト管理部と、
他ユーザから借用可能な端末と、当該端末が属するユーザとに関する情報を保持する子登録許可リスト管理部と、
第1のユーザから第2のユーザに属する端末についての関連性設定要求があったとき、前記親登録許可リスト管理部および前記子登録許可リスト管理部を参照し、当該第2のユーザに属する端末を前記第1のユーザに利用させることができると判定された場合に、前記第1のユーザについての端末管理部に、当該第2のユーザに属する端末に関する情報を登録する関連性設定部とを備えたことを特徴とするユビキタス通信システム。
(付記7)前記端末が、他の端末と相互に接近したことを近接無線により検知する近接検知部を備え、他端末の接近を検知した場合、自端末と他端末から取得した機器IDを含む関連性設定要求を生成し、前記関連性設定部へ送信する、付記6に記載のユビキタス通信システム。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ユーザ専用の特定機器ではなく、手近にある様々な機器によってコンピュータ環境を提供するユビキタスコンピューティングを実現するための端末およびその管理装置、あるいはこれらによって構成されるユビキタス通信システムとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる端末管理モジュールの基本構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態にかかるユビキタス通信システムの基本的構成を概略的に示したブロック図である。
【図3】第1の実施形態にかかるユビキタス通信システムが備える端末管理モジュールの基本動作を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態にかかる端末管理モジュールの基本構成を示すブロック図である。
【図5】(a)は、第2の実施形態にかかる端末管理モジュールに登録されている親登録許可リストの一例を示す説明図であり、(b)は子登録許可リストの一例を示す説明図である。
【図6】第2の実施形態のユビキタス通信システムの動作を示すチャート図である。
【図7】(a)は、第3の実施形態にかかる端末管理モジュールに登録されている子登録許可リストの一例を示す説明図であり、(b)は親登録許可リストの一例を示す説明図である。
【図8】第3の実施形態のユビキタス通信システムの動作を示すチャート図である。
【図9】本発明の第4の実施形態にかかるユビキタス通信システムが備える端末管理モジュールの基本構成を示すブロック図である。
【図10】第4の実施形態のユビキタス通信システムの動作を示すチャート図である。
【符号の説明】
【0063】
1 登録管理モジュール
11 端末管理部
12 親登録許可リスト
13 子登録許可リスト
14 関連性設定部
16 呼制御部
18 チケット生成部
110 登録管理モジュール
130 登録管理モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ユーザが他のユーザに属する端末を借用して通信を行うことが可能なユビキタス通信システム上で端末を管理する端末管理装置であって、
各ユーザについて、当該ユーザに属する端末に関する情報を保持する端末管理部と、
前記各ユーザに属する端末のうち他ユーザに開放可能な端末と、当該端末を開放可能なユーザとに関する情報を保持する親登録許可リスト管理部と、
他ユーザから借用可能な端末と、当該端末が属するユーザとに関する情報を保持する子登録許可リスト管理部と、
第1のユーザから第2のユーザに属する端末についての関連性設定要求があったとき、前記親登録許可リスト管理部および前記子登録許可リスト管理部を参照し、当該第2のユーザに属する端末を前記第1のユーザに利用させることができると判定された場合に、前記第1のユーザについての端末管理部に、当該第2のユーザに属する端末に関する情報を登録する関連性設定部とを備えたことを特徴とする端末管理装置。
【請求項2】
前記端末管理部が、各ユーザに属する端末に関する情報として、各端末で通信可能なメディアを表すメディア情報を含み、
前記第1のユーザからの発信イベントの受信を契機とし、当該発信イベントに含まれる発信端末のメディア情報と前記端末管理部のメディア情報とを照合することにより、当該第1のユーザに属する端末として前記端末管理部に登録されている端末から、前記発信端末として適した端末を選択して呼を再設定する呼制御部をさらに備えた、請求項1に記載の端末管理装置。
【請求項3】
前記端末管理部が、各ユーザに属する端末に関する情報として、各端末で通信可能なメディアを表すメディア情報を含み、
通信成立後に前記端末管理部に対する更新を検出した場合、その時点の前記端末管理部のメディア情報を参照し、当該第1のユーザに属する端末として前記端末管理部に登録されている端末から適切な端末を選択して呼を再設定する呼制御部をさらに備えた、請求項1に記載の端末管理装置。
【請求項4】
前記関連性設定要求に、予め作成した秘匿情報を含め、関連性設定時に前記秘匿情報を提示させ、保存されている秘匿情報と照合することにより、当該関連性設定要求が正当な端末からなされたことを確認する、請求項1に記載の端末管理装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項の端末管理装置によって管理される端末であって、
他の端末と相互に接近したことを近接無線によって検知した場合、自端末と他端末から取得した機器IDを含む関連性設定要求を生成し、前記端末管理装置の関連性設定部へ送信することを特徴とする端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−268729(P2006−268729A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89228(P2005−89228)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】