説明

ライトパイプ、照明光学系及び画像投影装置

【課題】入射口5から入射した光源からの光を、側壁面3で繰り返し反射して射出口6から射出させるライトパイプ1において、光の指向性が高く、輝度分布の均一な照明光を、光の利用効率を向上させて射出させる。
【解決手段】ライトパイプ1の側壁面3の入射口5側の領域に回折部4を設け、回折部4において、入射角γ1よりも反射角γ2が大きくなるように反射させて、射出口6から射出される光の射出角度βが入射口5から入射される光の入射角度αよりも小さくなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端から光を導入し、他端からその光を射出するライトパイプ、及びこれを用いた照明光学系及び画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を液晶表示素子やDMD(digital micromirror device)素子等の光変調素子に照射し、スクリーン上に画像を投影する画像投影装置が普及している。光変調素子に照射する光源として、ハロゲンランプや高圧水銀ランプ等が用いられてきた。しかし、これらの光源は大電力が必要なことや、温度が上昇するので冷却装置が必要であるために、重量や体積が大きくなり、装置全体をコンパクトに構成することの妨げとなった。一方、近年、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)の輝度及び発光効率が向上している。LEDは、駆動電圧が低く、小型軽量であるために、画像投影装置の光源に利用できれば、装置全体の小型化、軽量化を図ることができる。
【0003】
しかし、LEDから射出される光は指向性が低く、リフレクタや集光レンズ系が必要なことや、光が射出される方向の輝度は必ずしも均一ではない。射出光の指向性が低いと、画像投影に利用できる光の割合が低下し、投影面が暗くなる。また、射出方向に対して輝度むらが存在すると、投影面に輝度むらが生じて、画像品質が低下する。特許文献1は、このような不具合を、ロッドインテグレータ(以下、ライトパイプという。)を用いて改善しようというものである。
【0004】
図7は、特許文献1に記載される照明用光源装置50の断面構造を示す。照明用光源装置50は、ライトパイプ51と、ライトパイプ51の光入射開口54に設けた白色LED52とから構成されている。白色LED52は、ライトパイプ51の端部よりも発光点53を光案内通路56の内側に設置し、発光点53から発光する光を効率よく光射出開口55まで導くことができる。また、ライトパイプ51を中空の筒状としたので、中実の柱状のライトパイプを用いる場合よりも、光の内面反射の回数が増える。そのため、光が光射出開口55から射出される際に、より均一な強度の照明光を得ることができる、というものである。
【0005】
図8は、特許文献2に記載される照明装置60の断面構造を示す。複数のテーパロッド63と、その先に、これらの複数のテーパロッド63の射出側開口部を集合したロッド64と、すり鉢状の各テーパロッド63の底に設置されるLED68R、68G、68B及び各LEDを搭載した基板67とからなるLEDアレイ62から構成されている。各LED68R、68G、68Bで発光した光は、テーパロッド63の壁面により反射されて射出角が狭くなり、ロッド64の射出端から射出される。LED68R、68G、68Bの複数の光源から発光した各色の光が合成されて、より指向性の高い白色光を射出させることができる、というものである。
【特許文献1】特開2005−283918号公報
【特許文献2】特開2003−330109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される照明用光源装置50において、例えば、白色LED52の発光点53において発光した光の射出角をθとする。発光点53で発光した光は、ライトパイプ51の内表面57で繰り返して反射され、光射出開口55に進む。しかし、内表面57で光が反射する場合、入射角と反射角は等しい。即ち、白色LED52から射出された光が光射出開口55から射出するときは、上記射出角が維持される。従って、光射出開口55から射出される光の射出角をφとすると、この射出角φは発光角θとほとんど同じとなる。従って、図7に示される照明用光源装置50では、ライトパイプ51から射出する光の指向性は、光源であるLED52から射出する光の指向性とさほど変わらない。従って、光の利用効率を低下させないための追加の工夫も必要となる。特に、プロジェクタに用いた場合、投影レンズの許容入射角はLEDの発光角より小さいため、許容入射角より大きな射出角でライトパイプから射出された光は、投影レンズから投影されず、損失となる。
【0007】
特許文献2に記載される照明装置60では、各LED68R、68G、68Bで発光した光は、リフレクタの機能を有するテーパロッド63により指向性が高くなって射出される。しかし、各LED68R、68G、68Bにおいて発光した光は各テーパロッド63内で繰り返し反射されず、また、テーパロッド63の先に設けたロッド64は口径が大きいので、テーパロッド63から射出された光の繰り返し反射回数は少ない。例えば各LED68R、68G、68Bから射出された光に射出角依存性がある場合は、ロッド64から射出される射出光の角度依存性がそのまま保持され、投影される画像に色むらとして現れる。同様に、各LED68R、68G、68B間で発光色が異なる場合、ロッド64から射出される光に色分布が発生する恐れがある。色分布が発生すると投影画像の品質が低下するので、ロッド64と光変調素子との間に、光混合手段を更に設ける等の対策が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するために以下の手段を講じた。
【0009】
請求項1に係る発明においては、入射口から入射される光源からの光を、側壁面で繰り返し反射させて射出口から射出させるライトパイプにおいて、前記射出口から射出される光の射出角度が前記入射口から入射される光の入射角度よりも小さくなるように、前記側壁面の前記入射口側の領域に回折部を設けた。
【0010】
請求項2に係る発明においては、前記回折部は、複数の回折溝を有し、前記複数の回折溝のうち隣り合う回折溝の間隔を、前記入射口に近づくほど狭くしたことを特徴とする請求項1に記載のライトパイプとした。
【0011】
請求項3に係る発明においては、前記光源は、LEDであり、前記側壁面で囲繞される空間の断面形状が、前記LEDの射出面の形状と略同一であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のライトパイプとした。
【0012】
請求項4に係る発明においては、前記断面形状は、多角形状であり、少なくとも一組の隣り合う側壁面における前記入射口側の領域に設けた前記回折部どうしで、前記複数の回折溝のうち隣り合う回折溝の間隔が異なることを特徴とする請求項3に記載のライトパイプとした。
【0013】
請求項5に係る発明においては、請求項1〜4のいずれか1項に記載のライトパイプの入射口に、光源を密着して設けたことを特徴とする照明光学系とした。
【0014】
とした。
【0015】
請求項6に係る発明においては、請求項5に記載の照明光学系を、3原色に夫々対応して有し、さらに、これらの前記照明光学系から射出される光を合成する光合成部と、前記光合成部により合成した光を変調する光変調部と、前記光変調部により変調した光を投影する投影部と、を有する画像投影装置とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るライトパイプは、光源からの光を入射口で導入し、側壁面で繰り返し反射させて射出口から射出させる。この場合に、射出口から射出される光の射出角度が、入射口から入射される光の入射角度よりも小さくなるようにするために、側壁面の入射口側の領域に回折部を設けた。これにより、入射した光の指向性よりも高い指向性を付与し、射出面における輝度の均一性を向上させた光を射出させることができ、結果として光の利用効率を向上させることができる、という利点を有する。
【0017】
また、回折部は複数の回折溝を有し、回折溝のうち隣り合う回折溝の間隔を、入射口に近づくほど狭くした。ライトパイプの入射口の領域に入射した光は、発光素子からの発光角が大きいほど入射口近くの回折部に入射する。入射口近くの回折部は、射出口側の回折部よりも溝の間隔が狭いため、より強い回折作用を受けて回折される。つまり、発光角の大きな光線ほど、略平行光に近づく大きな偏角作用を受けることができるので、結果的に射出光の指向性をより高めることができる。
【0018】
また、光源をLEDとし、側壁面で囲まれる空間の断面形状が、LEDの射出面の形状と略同一とした。これにより、ライトパイプを入射口から射出口に向けて、断面を末広状に拡大させることがないので、光源の発光面積を維持して、かつ、入射した光を指向性の高い射出光として射出することができるという、利点を有している。
【0019】
また、ライトパイプの断面形状を多角形状とし、少なくとも一組の隣り合う側壁面に設けた回折部は、互いに回折溝の間隔が異なるようにした。これにより、隣り合う辺に対応する回折溝の回折条件を個別に設定可能となり、射出光の輝度分布を所望の分布へとコントロールできる、という利点を有している。
【0020】
また、上記のライトパイプの入射口に、光源を密着して設けた照明光学系とした。これにより、光源の光の漏れを防止することができるので、光の利用効率を向上させることができる、という利点を有している。
【0021】
また、上記の照明光学系を用い、上記照明光学系から射出された光を合成する光合成部と、光合成部により合成した光を変調する光変調部と、光変調部により変調した光を投影する投影部とを有する画像投影装置とした。これにより、軽量、小型の画像投影装置を構成することができる、という利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の構成を、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るライトパイプ1の構成を表す模式的な縦断面図である。ライトパイプ1は、筒型の形状を有し、内部が中空の導光体2から構成されている。導光体2の内壁面が側壁面3であり、光を反射する反射面により構成されている。導光体2は、入射口5から光を入射し、射出口6から当該入射した光を射出する。導光体2の入射口5側の側壁面3には、回折部4が形成されている。広がりを持って入射する光束のうちの最大角度を入射角度αとすると、入射角度αで入射した光は、回折部4において射出口6側に回折される。この回折部4においては、回折部4の回折条件に従って、入射角γ1で入射した光は、入射角γ1よりも大きな角度の反射角γ2で反射される。回折部4以外の側壁面3では、入射角γ3と反射角γ4とは等しい。これにより、広がりを持って射出する光束のうちの最大角度を射出角度βとすると、射出角度βは入射角度αよりも小さくなる。
【0024】
導光体2として、ガラス等の無機材料や、プラスチック等の樹脂材料、金属材料、セラミックス等を使用する。導光体2の側壁面3には、金属薄膜、例えばAgやAl等の金属膜や誘電体多層膜から成る反射膜を設けている。導光体2は、断面が円形又は楕円形の筒形の形状であってもよいし、多角の筒状形状であってもよい。均一な面光源が必要な装置に応じて、その形状を設定する。例えば、表示有効面が四角形の光変調素子に光を照射する場合には、導光体2の短手方向の断面を四角形にする。これにより、指向性が高く面内輝度分布の均一性の高い射出光を得ることができる。
【0025】
回折部4は、導光体2の入射口5側の領域の側壁面3に沿って形成する、或いは、側壁面3の一部に形成する。回折部4の形状は、凹形状やV字形状の溝、或いは凸形状や断面が三角形あるいは鋸歯状の突条とすることができる。これらの形状は、回折格子の式において回折光を取り出したい一つないし複数の次数光の回折効率が最大化されるように決めることができる。これらの溝や突条は回折格子やホログラムのパターンを備えるように形成することができる。例えば回折格子のピッチの例としては、入射角度αが80°で入射口へ入射する光を射出口より射出する角度として射出角度βを15°以下に指向性を高めたい場合、屈折率nを1、壁面への入射角度をθin、壁面での反射角度をθとするならばp(nsinθ−sinθin) =mλ(mは整数)の式よりmを1として0.67μm程度のピッチサイズが必要になる。さらに数回の回折による反射が行われる場合、数回の回折による反射の合計にて射出角15°以下になるようにピッチを施してもよい。
【0026】
図2は、本発明の実施形態に係るライトパイプ1の回折部4を表す説明図である。図2(a)は、ライトパイプ1の入射口5側の領域の模式的な部分断面図であり、図2(b)は、ライトパイプ1の入射口5側の領域の模式的な斜視図である。
【0027】
図2(a)及び図2(b)に示すように、ライトパイプ1は四角形の筒形状からなる導光体2により構成されている。導光体2の内部は中空であり、導光体2の内壁面からなる側壁面3は反射面により構成されている。導光体2の入射口5側の領域の側壁面3には、回折部4が形成されている。回折部4は、多数の回折溝15から構成されている。回折溝15は、導光体2の長手方向に直交する方向の周囲に沿って形成されている。回折溝15の間隔は、射出口6側の間隔P2よりも入射口5側の間隔P1のほうが狭い。つまり、回折溝15の間隔は、入射口5に近づくほど狭くなる。これにより、入射口5の近傍において、大きな入射角度αで入射した光は反射を繰り返して混合され、入射口5から離れるに従い側壁面3で反射する反射角が大きくなる。そして、導光体2の長手方向に略平行な反射光に変換されて、射出口6から小さな射出角度βで射出される。
【0028】
特に、導光体2の入射口5に入射する光のうち、入射角度αが大きいほど入射口5近くの回折部4に入射する。入射口5近くの回折部4は、射出口6側の回折部4よりも回折溝15の間隔が狭いので、より強い回折作用を受けて回折され、射出口6側により大きく曲げられる。なお、導光体2の長手方向における回折部4の長さをLGとし、入射口5の幅をWとして、LG=W/(tan(β/2))とすれば、射出角度βより大きい角度で入射した光は必ず回折部4に入射するので、射出口6から、小さな射出角度βで射出させることができる。
【0029】
従って、導光体2の長手方向に直交する方向の断面積を、入射口5側で小さく、射出口6側で大きくする必要がない。そのため、射出口6の射出面積を小さく構成することができるので、点光源に近く、かつ、射出面において均一な輝度分布を有する、指向性の高い光を射出することができる。
【0030】
なお、上記実施形態における回折溝15は、図2(b)に示すように、導光体2の左右の側壁の側壁面3と上下の側壁の側壁面3において同一のピッチで形成したが、これに限定されない。例えば、左右の側壁の側壁面3に形成する回折溝15のピッチと、上下の側壁の側壁面3に形成する回折溝15のピッチとを異なるように形成することができる。これにより、射出口6において、左右の方向にも上下の方向にも均一な輝度分布を有する光を射出させることができる。また、回折溝15として、平行な溝に代えて、ホログラムの回折パターンとすることができる。特に、入射口5から入射する光が点光源から射出されるような、放射方向に強度分布を有する場合に有効である。
【0031】
図3は、本発明の他の実施形態に係るライトパイプ1の構成を表す模式的な縦断面図である。同一の部分又は同一の機能を表す部分には同一の符号を付している。ライトパイプ1は、柱状の中実型の導光体2から構成されている。導光体2の外壁面が側壁面3である。導光体2は、入射口5から光を入射し、射出口6から当該入射した光を射出する。導光体2の入射口5側の側壁面3には、回折部4が形成されている。入射角度αで入射した光は、回折部4において射出口6側に反射される。この回折部4においては、回折部4の回折条件に従って、入射角γ1で入射した光は、入射角γ1よりも大きな角度の反射角γ2で反射される。回折部4以外の側壁面3では、入射角γ3と反射角γ4とは等しい。これにより、射出角度βは入射角度αよりも小さくなる。
【0032】
回折部4の形状は、凹形状やV字形状の溝、或いは凸形状や断面が三角形あるいは鋸歯状の突条からなる回折溝15とすることができる。回折溝15は、導光体2の長手方向に直交する方向の外周に形成されている。回折溝15の間隔は、射出口6側の間隔よりも入射口5側の間隔のほうを狭く構成することができる。つまり回折溝15の間隔は、入射口5に近づくほど狭くなるように構成することができる。これにより、入射口5から大きな入射角度αで入射した光は壁面への入射角度より大きな反射角で反射を繰り返して混合され、回折部4の領域では入射口5から離れるに従い側壁面3で反射する反射角が壁面入射角に近くなる。また、本実施形態のように中実型の導光体2の場合には、入射光が導光体2に入射する際に屈折され、見かけ上入射角度αが小さくなる。そのために、例えば回折溝15のブレーズ角を小さくすることができ、回折溝15の作成が容易になる。
【0033】
また、特に、導光体2の入射口5に入射する光のうち、入射角度αが大きいほど入射口5近くの回折部4に入射する。入射口5近くの回折部4は、射出口6側の回折部4よりも回折溝15の間隔が狭いので、より強い回折作用を受けて回折され、射出口6側により大きく曲げられる。ここで、導光体2の長手方向における回折部4の長さをLGとし、入射口5の幅をWとして、LG=W/(tan(β/2))とすれば、射出角度βより大きい角度で入射した光は必ず回折部4に入射するので、射出口6から、小さな射出角度βで射出させることができる。
【0034】
また、導光体2の外形を多角形とした場合に、当該多角形の隣り合う辺に対応する側壁面3において、回折溝15のピッチを異なるように形成することができる。例えば、導光体2の長手方向に直交する方向の断面が長方形の場合に、当該長方形の短辺の側壁面3と長辺の側壁面3とで、回折溝15のピッチを異なるように形成することができる。各側壁面3に形成する回折溝15のピッチを適切に設定することにより、射出口6において短辺方向にも長辺方向にも均一な光の輝度分布を得ることができる。また、回折溝15として、平行な溝に代えて、ホログラムの回折パターンとすることができる。特に、入射口5から入射する光が点光源から射出されるような、放射方向に強度分布を有する場合に有効である。また、回折溝15は、断面が三角形やV字状に限定されず、矩形状の凹凸や、半円形状であってもよい。
【0035】
導光体2として、ガラス等の無機材料やプラスチック等の樹脂材料を使用することができる。導光体2の外壁面である側壁面3の、少なくとも回折部4が構成される領域には、例えばAgやAl等の反射膜を設ける。しかし、回折部4以外の側壁面3には必ずしもこのような反射膜を設けなくともよい。側壁面3において光は全反射され、光を導光体2の内部に閉じ込めることができるためである。また、導光体2は、多角形状のほかに円柱形状とすることができる。均一な面光源が必要な装置に応じて、その形状を設定する。例えば、表示有効面が四角形の光変調素子に光を照射する場合には、導光体2の短手方向の断面を四角形にすることができる。
【0036】
図4は、本発明の実施形態に係る照明光学系10を表す模式的な縦断面図である。図4(a)は導光体2が中空型の筒形状を有し、図4(b)は導光体2が中実型の柱形状を有する場合であり、それぞれの導光体2の入射口5に発光素子11を設けた。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0037】
図4(a)に示すように、導光体2からなるライトパイプ1の入射口5に発光素子11が設置されている。導光体2の内壁面からなる側壁面3により囲まれる空間は、導光体2の長手方向に直交する方向においてほぼ同一の断面形状を備えている。ライトパイプ1は、図1及び図2において説明したのと同様なので、説明を省略する。また、図4(b)に示すように、導光体2からなるライトパイプ1の入射口5に発光素子11が設置されている。導光体2の外壁面からなる側壁面3により囲まれる領域は、導光体2の長手方向に直行する方向においてほぼ同一の断面形状を備えている。ライトパイプ1は、図3において説明したと同様なので、説明を省略する。
【0038】
発光素子11は、基体8と、基体8に設置されたLED7とから構成されている。LED7の光の射出面9は、導光体2の入射口5の形状と略同一の形状を有し、入射口5に密着して形成されている。そのために、射出面9から射出される光は、外部に漏れることなく導光体2の内部に導入される。導光体2の内部に導入された光は、回折部4により射出口6側に反射され、指向性が高く、かつ、射出口6における輝度分布の均一性の高い射出光に変換される。また、射出面9から斜め方向に射出された光も射出光として利用するので、光の利用効率を向上させることができる。また、図4(b)の中実型の導光体2とLED7の夫々の屈折率のマッチングを図ることにより、入射口5の表面及びLED7の発光面における反射ロスを低減することができる。
【0039】
図5は、本発明の実施形態に係る画像投影装置20を表す模式的な断面図である。画像投影装置20は、光合成部22と、光合成部22の3つの辺に設けた光変調部21R、21G、21Bと、3つの光変調部21R、21G、21Bの夫々に対応して設けた3つのリレーレンズ24R、24G、24Bと、この3つのリレーレンズ24R、24G、24Bの夫々に対応して設けた3つの照明光学系10R、10G、10Bと、投影部23から構成されている。ここで、光合成部22はダイクロイックプリズムにより構成されている。光変調部21Rは赤色の画像を表示する液晶表示素子、光変調部21Gは緑色の画像を表示する液晶表示素子、光変調部21Bは青色の画像を表示する液晶表示素子により構成されている。3つの照明光学系10R、10G、10Bの夫々は、導光体2からなるライトパイプ1の入射口5に、赤色発光のLED7からなる赤色発光素子11R、緑色発光のLED7からなる緑色発光素子11G、及び、青色発光のLED7からなる青色発光素子11Bを備えている。投影部23は、画像投影用の投影レンズ系により構成されている。
【0040】
各照明光学系10R、10G、10Bの射出口6は、各光変調部21R、21G、21Bの表示有効領域の形状と相似する面形状を有している。各光変調部21R、21G、21Bの表示有効領域が四角形を有し、当該四角形の縦横の長さの比が例えば3対4の場合には、各照明光学系10R、10G、10Bも四角形を有し、当該四角形の射出口6の縦横比も3対4に設定されている。導光体2の入射口5側の側壁面3には回折溝からなる回折部4が形成されている。回折溝のピッチは入射口5側に近づくにつれて狭くなる。また、各照明光学系10R、10G、10Bの左右の側壁の内面に形成される回折溝と、上下の側壁の内面に形成される回折溝とは、隣り合う回折溝の間隔が異なる。また、各照明光学系10R、10G、10Bの回折溝の間隔も、各発光素子11R、11G、11Bの発光色に合わせて、異なるように形成されている。
【0041】
各照明光学系10R、10G、10Bの夫々から射出された光は、各リレーレンズ24R、24G、24Bを介して略平行な照明光として各光変調部21R、21G、21Bに照射される。各光変調部21R、21G、21Bは、入射した照明光を各色に対応する画像光に変換する。各光変調部21R、21G、21Bから射出された画像光は、光合成部22により加法混色され、投影部23を介して、スクリーン等に投影される。このように構成することにより、光利用効率が高く、軽量でコンパクトな画像投影装置20を構成することが可能となる。なお、各光変調部21R、21G、21Bに各リレーレンズ24R、24G、24Bから略平行光を照射することに代えて、投射レンズの入射開口数にマッチングさせた光束を照射しても良い。
【0042】
なお、上記実施形態においては、各照明光学系10R、10G、10Bと各光変調部21R、21G、21Bの間にリレーレンズ24R、24G、24Bを設けたが、これらのリレーレンズ24R、24G、24Bを除去して、各照明光学系10R、10G、10Bに対応する各光変調部21R、21G、21Bに近接配置することができる。この場合は、各照明光学系10R、10G、10Bの射出口6の形状と各光変調部21R、21G、21Bの表示有効領域とほぼ同じ面形状とすることができる。また、照明光学系10R、10G、10Bとして、図4(a)に示した中空型の導光体2を用いた場合を示しているが、これに代えて図4(b)に示した中実型の導光体2を用いることができる。
【0043】
図6は、本発明の他の実施形態に係る画像投影装置20を表す模式的な断面図である。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。図6において、画像投影装置20は、照明光学系10と、リレーレンズ24と、反射型の光変調部21と、光変調部21から反射される画像光を投影する投影部23から構成されている。照明光学系10は、導光体2と、導光体2に入射口5に設けた発光素子11から構成されている。発光素子11は、基体8と、基体8の上に設けた赤色発光のLED7Rと、緑色発光のLED7Gと、青色発光のLED7Bから構成されている。各LED7R、7G、7Bは基体8に集積して設置され、LED7R、7G、7Bの全体の発光面は、入射口5の入射面の形状とほぼ同じ形状を備え、導光体2の端部に密着設置されている。従って、各LED7R、7G、7Bから発光された光は、外部に漏れない。各LED7R、7G、7Bから発光した各色の光は、導光体2の回折部4及び側壁面3において反射を繰り返し、射出口6の射出面では、輝度分布が均一で指向性の高い射出光に変換される。
【0044】
光変調部21は、DMD素子により構成されている。DMD素子は、多数のマイクロミラーが画像信号に応じて回転可能に構成されている。照明光学系10から射出された光は、リレーレンズ24を介してDMD素子に照射され、DMD素子の多数のマイクロミラーにより表示画像に応じて反射され、レンズ系から構成される投影部23を介してスクリーン等に投影される。
【0045】
DMD素子は次の様に動作する。発光素子11を駆動する光源駆動回路は、各LED7R、7G、7Bを時分割駆動して、赤色、緑色、青色の光を順次発光させる。DMD素子を駆動する表示駆動回路は、上記時分割駆動に同期して、DMD素子に赤色の画像、緑色の画像、青色の画像を順次表示させる。これにより、投影部23からは、赤色、緑色、青色の各画像が順次投影され、観察者はこれらを混色して、通常画像として見ることができる。
【0046】
なお、光の混色方法として、図5に示すように、異なる色の照明光学系10を用いて、光合成部22により照明光学系10から射出される光を合成して混色し、この混色された光をリレーレンズ24を介して反射型の光変調部21に照射し、光変調部21により変調した光を投影部23により投影するようにしてもよい。この場合に、照明光学系10は3原色の夫々に対応させる。また、図6において、照明光学系10と光変調部21との間隙にリレーレンズ24を設けたが、これリレーレンズ24を省くことができる。また、光変調部21として、DMD素子に代えて、反射型液晶表示素子を使用することができる。また、照明光学系10として、図4(a)に示した中空型の導光体2を用いた場合を示しているが、これに代えて図4(b)に示した中実型の導光体2を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係るライトパイプの模式的な縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るライトパイプの説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るライトパイプの説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る照明光学系の模式的な縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像投影装置の模式的な断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画像投影装置の模式的な断面図である。
【図7】従来公知の照明用光源装置の断面図である。
【図8】従来公知の照明装置の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ライトパイプ
2 導光体
3 側壁面
4 回折部
5 入射口
6 射出口
7 LED
8 基体
9 射出面
10 照明光学系
20 画像投影装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射口から入射される光源からの光を、側壁面で繰り返し反射させて射出口から射出させるライトパイプにおいて、
前記射出口から射出される光の射出角度が前記入射口から入射される光の入射角度よりも小さくなるように、前記側壁面の前記入射口側の領域に回折部を設けたことを特徴とするライトパイプ。
【請求項2】
前記回折部は、複数の回折溝を有し、
前記複数の回折溝のうち隣り合う回折溝の間隔を、前記入射口に近づくほど狭くしたことを特徴とする請求項1に記載のライトパイプ。
【請求項3】
前記光源は、LEDであり、
前記側壁面で囲繞される空間の断面形状が、前記LEDの射出面の形状と略同一であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のライトパイプ。
【請求項4】
前記断面形状は、多角形状であり、
少なくとも一組の隣り合う側壁面における前記入射口側の領域に設けた前記回折部どうしで、前記複数の回折溝のうち隣り合う回折溝の間隔が異なることを特徴とする請求項3に記載のライトパイプ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のライトパイプの入射口に、光源を密着して設けたことを特徴とする照明光学系。
【請求項6】
請求項5に記載の照明光学系を、3原色に夫々対応して有し、
さらに、
これらの前記照明光学系から射出される光を合成する光合成部と、
前記光合成部により合成した光を変調する光変調部と、
前記光変調部により変調した光を投影する投影部と、を有する画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−244360(P2009−244360A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88191(P2008−88191)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】