説明

ライニング工法、ライニング材、ライニング材接着装置

【課題】ライニング材が接合部の表面側から捲れ上がるのを防止する。
【解決手段】構造物の一例である既設管の内面に沿ってライニング材を既設管の管軸方向に螺旋状または環状に接合して行き、ライニング材の接合部に、既設管の内面と反対側に向って所定の幅で開口しかつライニング材の長さ方向に延在するように溝を形成する。そして、この溝を溶融状態の樹脂等の充填材で埋めて、既設管の内面と反対側に位置するライニング材の表面を面一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の壁面にライニングを施すライニング工法と、該工法で用いるライニング材およびライニング材接着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物の壁面の補修や更生や防食等を目的として、該壁面に沿って合成樹脂製のライニング材を接合しながら設置してライニングを施すことが従来から行われている。例えば施工対象が構造物の一例である既設管の内面の場合は、ライニング材を既設管の内面に沿って管軸方向へ螺旋状または環状に接合して設置して行くことにより、該内面にライニングを施している。
【0003】
ライニング材には、例えば下記の特許文献1に開示されているように、一方の側部にライニング材の裏面側(既設管の内面側)へ突出する突起が設けられ、他方の側部にその突起を嵌合可能な受け溝が設けられ、受け溝に突起を嵌合することにより接合できるものがある。
【0004】
また、ライニング材には、下記の特許文献2に開示されているように、接合部がほぞ状条帯と該ほぞ状条帯をライニング材の幅方向に嵌合するほぞ穴状溝形条帯とから構成することにより伸縮可能で、既設管の管路の曲がりやずれ等の複雑な態様に対応できるものがある。
【0005】
さらに、ライニング材には、下記の特許文献3に開示されているように、ライニング材の表面側(既設管の内面と反対側)にあるほぞ穴状溝形条帯の表側壁が、ライニング材の裏面側にあるほぞ穴状溝形条帯の裏側壁より外側へ延出していて、ほぞ状条帯とほぞ穴状溝形条帯の嵌合により接合された後に、ほぞ状条帯より延出した表側壁の余分な部分を切除して、残余の部分で接合部の表面側に生ずる伸縮動作に起因する隙間を埋めるものがある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−69036号公報
【特許文献2】特許第2929156号公報
【特許文献3】特開2005−1368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のようにライニング材を接合したままにしておくと、施工後にライニング材が接合部の表面側から捲れ上がる恐れがある。特に、上述した特許文献2のようなライニング材の接合構造では、ほぞ穴状溝形条帯の表側壁が長く突出していて、既設管の管路が曲がっている箇所の外周側におけるライニング材の接合部の表面側に幅広の隙間が生じるため、該隙間に既設管内を流れる水やゴミ等の異物が入り込んで表側壁の先端に衝突することにより、表側壁が捲れ上がり易い。また、上述した特許文献3のようなライニング材の接合構造でも、ほぞ状条帯とほぞ穴状溝形条帯の嵌合によりほぞ穴状溝形条帯の表側壁が表面から張り出すように撓んで塑性変形したり、ほぞ穴状溝形条帯の表側壁の余分な部分の切除後に残った部分で接合部の表面側に生じる隙間を完全に埋められなかったりするため、表側壁が捲れ上がり易い。さらに、上述した特許文献1のようなライニング材の接合構造でも、ライニング材の接合部の表面側に若干隙間が生じるため、ライニング材の突起を設けている側部の先端が突起と受け溝の嵌合部から離れていればいるほど、該先端から捲れ上がり易い。このようなライニング材の捲れ上がりが、例えば下水管の内面等で発生した場合は、捲れ上がった部分に下水中に含まれる針金や枝や毛等の異物が堆積して下水の流れを阻害する等の好ましくない結果を招き、また、例えば建造物の壁面等で発生した場合は、捲れ上がった部分に人や周囲物が衝突して事故が起こる等の好ましくない結果を招く。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その課題とするところは、ライニング材が接合部の表面側から捲れ上がるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、構造物の壁面に沿ってライニング材を接合しながら設置して、該壁面にライニングを施すライニング工法において、前記壁面に沿ってライニング材を接合して、該接合部に前記壁面と反対側に向って所定の幅で開口しかつライニング材の長さ方向に延在する溝を形成し、該溝を充填材で埋めて、ライニング材の前記壁面と反対側に位置する表面を面一にする。なお、本工法において、ライニング材の接合部に形成する溝の開口幅の大きさは、一定でもよいし変化してもよい。
【0010】
このようにすると、施工後にライニング材の側部先端に異物が衝突しなくなり、ライニング材が接合部の表面側から捲れ上がるのを防止することができる。また、ライニング材の接合部の表面側に所定の開口幅の溝を能動的に形成するので、従来のライニング材の接合部に隙間が受動的に生じるのとは異なり、該溝を過不足無く埋めるのに必要な充填材を用いて、ライニング材の表面を容易に面一にすることができる。
【0011】
また、本発明の一実施形態では、ライニング材は、一方の側部に段差部を介して幅方向と平行に外側へ向って突出しかつ長さ方向へ延在するほぞ状条帯が設けられ、他方の側部に幅方向と平行に外側へ向って突出しかつ長さ方向へ延在する前記ほぞ状条帯と嵌合可能なほぞ穴状溝形条帯が設けられ、前記両条帯の嵌合により接合され、該接合部が前記両条帯の嵌合深さの調節により伸縮可能であり、該ライニング材を前記壁面に沿って接合して、該接合部に段差部とほぞ状条帯と該ライニング材の表面側に位置するほぞ穴状溝形条帯の表側壁とにより囲まれる前記溝を形成し、該溝を充填材で埋めて、ライニング材の表面を面一にする。
【0012】
このようにすると、構造物の壁面の態様に対応可能なライニング材において、施工後にライニング材のほぞ穴状溝形条帯の表側壁先端に異物が衝突しなくなり、表側壁が捲れ上がるのを防止することができる。
【0013】
また、本発明の一実施形態では、前記ライニング材の前記接合部を前記壁面の態様に対応するように伸縮させて、前記接合部に前記溝を形成する。
【0014】
このようにすると、ライニング材を構造物の壁面に沿って壁面の態様に対応するように接合しながら配置すると同時に、接合部の伸縮状態に応じた開口幅の溝、即ちほぞ状条帯とほぞ穴状溝形条帯の嵌合深さに応じて開口幅が変化する溝を接合部の表面側に形成することができる。そして、該溝を充填材で埋めて、ライニング材の表面を面一にすることで、構造物の壁面に沿って、壁面の態様に対応しかつ捲れ上がらないライニング壁体を構築することができる。
【0015】
また、本発明の一実施形態では、前記ライニング材は、ほぞ穴状溝形条帯の前記表側壁がほぞ状条帯との嵌合状態で段差部よりほぞ状条帯と反対側に延出する長さで突出していて、該ライニング材の前記壁面に沿った接合によって段差部よりほぞ状条帯と反対側に延出しかつ表面より前記壁面と反対側へ張り出した前記表側壁を、延出および張り出しを矯正可能でかつ接合状態を維持可能な位置で切断して、前記接合部に前記溝を形成する。
【0016】
このようにすると、ライニング材の接合部の表面側に、段差部とほぞ状条帯とほぞ穴状溝形条帯の表側壁の切断面とで囲まれる溝を形成することができる。また、表側壁の延出および張り出しを矯正可能でかつ接合状態を維持可能な位置中における段差部から一定間隔をおいた位置を切断することで、接合部の表面側に略一定の開口幅の溝を形成することができる。そして、該溝を充填材で埋めて、ライニング材の表面を面一にすることで、構造物の壁面に沿って、壁面の態様に対応しかつ捲れ上がらないライニング壁を構築することができる。さらに、ほぞ穴状溝形条帯の表側壁を、上記のように接合部の表面側に溝を形成するように切断するのは、前述の特許文献3のように接合部の表面側に隙間が生じないように切断するより極めて容易であり、表側壁の切断に要する手間と時間を大幅に減ずることができる。
【0017】
また、本発明の一実施形態では、前記構造物の壁面は既設管の内面であり、前記ライニング材を該内面に沿って既設管の管軸方向へ螺旋状または環状に接合した後に、該接合部に形成した前記溝を充填材で埋めて、前記ライニング材の表面を面一にする。
【0018】
このようにすると、既設管の内面に沿って管軸方向へ、該管の管路の曲がりやずれ等の態様に対応しかつ捲れ上がらないライニング管を構築することができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態では、充填材として前記ライニング材の材質と同種の樹脂を用い、該樹脂を熱で溶融させた状態で前記溝に充填して、前記ライニング材と一体化させる。
【0020】
このようにすると、ライニング材の接合部の表面側に形成した溝をライニング材と同種材質の樹脂によって隙間なく埋めて、接合部を接着し、ライニング材の表面を確実に面一でかつ連続した状態にすることができる。このため、施工後にライニング材の側部先端に異物が完全に衝突しなくなり、ライニング材が接合部の表面側から捲れ上がるのを確実に防止することができる。また、施工後にライニング材を構成する樹脂の経年変化が生じても、ライニング材が接合部の表面側から捲れ上がるのを確実に防止することができる。さらに、ライニング材の接合部の止水性が向上し、接合部に他のシール部材を予め介在させておく必要がなくなり、コストを削減することができる。
【0021】
さらに、本発明の一実施形態では、溶融状態の前記樹脂を吐出するノズルを前記溝に沿って移動させながら、該ノズルから前記溝に前記樹脂を注入充填する。
【0022】
このようにすると、ライニング材の接合部の表面側に形成した溝に、ノズルからライニング材と同種材質の溶融状態の樹脂を確実に注入充填して、該溝を隙間なく埋めることができる。
【0023】
また、本発明は、構造物の壁面にライニングを施すために、該壁面沿って接合されながら設置されるライニング材であって、一方の側部に、段差部を介して幅方向と平行に外側へ向って突出しかつかつ長さ方向へ延在するほぞ状条帯が設けられ、他方の側部に、幅方向と平行に外側へ向って突出しかつ長さ方向へ延在するほぞ状条帯と嵌合可能なほぞ穴状溝形条帯が設けられ、前記両条帯の嵌合により接合された後に該接合部に長さ方向に延在するように形成される溝の底に相当するほぞ状条帯の位置に、溶融状態の樹脂を吐出するノズルの前記溝に沿った移動を案内するガイド部が設けられている。
【0024】
このようにライニング材にガイド部を設けると、ガイド部によりノズルを接合部の表面側に形成した溝に確実に沿って移動させて、該溝に溶融状態の樹脂をより確実かつ迅速に注入充填して、該溝を埋めることができる。
【0025】
さらに、本発明は、前記ライニング材を接着するライニング材接着装置であって、溶融状態の樹脂を吐出するノズルと、ノズルの先端に設けられていて、前記ライニング材の前記ガイド部に係合する係合部とを備え、係合部を前記ガイド部に係合させた状態で前記ライニング材の長さ方向へ移動しながら、ノズルから前記ライニング材の前記接合部に形成された前記溝に溶融状態の樹脂を注入充填して、前記接合部を接着する。
【0026】
このようなライニング材接着装置によると、ノズルをライニング材の接合部の表面側に形成した溝からずれることなく確実かつ容易に移動させて、該溝に溶融状態の樹脂を確実かつ迅速に注入充填することができ、該溝を埋めるのに要する手間と時間を大幅に減ずることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ライニング材の接合部の表面側に形成した溝を充填材で埋めて、ライニング材の表面を面一にするので、施工後にライニング材の側部先端に異物が衝突しなくなり、ライニング材が接合部の表面側から捲れ上がるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態につき図を参照しながら説明する。なお、便宜上、各図において実質的に同一部分には同一符号を付している。
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態に係るライニング材1の一部を示す斜視図である。ライニング材1は、例えばポリエチレン、ポリオレフィン、塩化ビニル等の熱可塑性樹脂で形成されていて、耐腐食性および可撓性を有し、長さ方向Lへ延在している。ライニング材1には、長さ方向Lに長尺な帯状タイプのものや、長方形や正方形といった矩形のパネル状タイプのものや、長さ方向Lが周方向となる円形、多角形、または馬蹄形等の環状タイプのもの等がある。ライニング材1の表面1aは円滑であり、ライニング材1の裏面1bには、複数のリブ2が長さ方向Lへ延びかつ幅方向Wへ所定の間隔で並列するように設けられている。該リブ2の先端には、リブ2より幅の広いフランジ3が設けられている。
【0030】
ライニング材1の幅方向Wの一方の側部には、段差部4を介して幅方向Wと平行に外側へ向かって突出しかつ長さ方向Lへ延在するほぞ状条帯5が設けられている。該ほぞ状条帯5の先端には、爪部5aが設けられている。ライニング材1の幅方向Wの他方の側部には、幅方向Wと平行に外側へ向って突出しかつ長さ方向Lへ延在しかつほぞ状条帯5と嵌合可能なほぞ穴状溝形条帯6が設けられている。該ほぞ穴状溝形条帯6の溝形部を形成している壁のうち、裏面1b側に位置している裏側壁6bの先端には、ほぞ状条帯5の爪部5aと係合する爪部6cが設けられていて、表面1a側に位置している表側壁6aは、表面1aの一部を構成している。ほぞ状条帯5の幅方向Wへの突出幅W1は、ほぞ穴状溝形条帯6の表側壁6aの幅方向Wへの突出幅W2より長くかつ裏側壁6bの幅方向Wへの突出幅W3より短くなっている(W2<W1<W3)。
【0031】
同一または異なるライニング材1は、ほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6とを嵌合させることで接合される。ほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さは変えることができ、該嵌合深さの調節によりライニング材1の接合部を伸縮させることができる。
【0032】
構造物の一例である下水管等の既設管の内面にライニングを施す場合は、上述の帯状タイプまたは環状タイプのライニング材1が用いられる。図2は、帯状タイプのライニング材1を既設管P内で接合した状態を示す図である。このような状態にするには、既設管P内で帯状タイプのライニング材1を、裏面1bが既設管Pの内面Paに対面するように、内面Paに沿って既設管Pの管軸Pj方向へ螺旋状に巻回して行き、対向するほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6とを嵌合させて接合して行く。図3は、環状タイプのライニング材1を既設管P内で接合した状態を示す図である。このような状態にするには、既設管P内で複数の該ライニング材1を、裏面1bが既設管Pの内面Paに対面しかつほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6とが対向するように、内面Paに沿って既設管Pの管軸Pj方向へ順次並べて行き、対向するほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6とを嵌合させて接合して行く。
【0033】
また、上記のように帯状タイプまたは環状タイプのライニング材1を接合して行く際には、前述したほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さの調節により、ライニング材1の接合部Aを既設管Pの管路の態様に対応するように伸縮させる。詳しくは、既設管Pの管路が真っ直ぐな真直部Sでは、ほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さを一定にして、接合部Aを一様に伸縮させる。既設管Pの管路が緩く曲がっている曲がり部Cでは、曲率半径の小さい内周部Piで、ほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さを深くして、接合部Aを収縮させ、曲率半径の大きい外周部Poで、ほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さを浅くして、接合部Aを伸長させる。
【0034】
図2および図3では、既設管Pの真直部Sの接合部Aおよび曲がり部Cの内周側Piの接合部Aは、図5(a)に示すように、ほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さをほぞ状条帯5の先端がほぞ穴状溝形条帯6の溝形部の底に接するように最も深くすることにより、最も収縮した状態にある。既設管Pの曲がり部Cの外周側Poの接合部Aは、図5(b)に示すように、ほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さをほぞ状条帯5の爪部5aがほぞ穴状溝形条帯6の爪部6cと係り合うように最も浅くすることにより、最も伸長した状態にある。
【0035】
図5(a)の状態では、接合部Aが最も収縮していて、上述したようにほぞ穴状溝形条帯6の表側壁6aの突出幅W2がほぞ状条帯5の突出幅W1より短いので、接合部Aに表面1a側、即ち既設管Pの内面Paと反対側に向って開口幅H1で開口する溝Bが形成される(H1=W1−W2)。図5(b)の状態では、接合部Aが最も伸長しているので、接合部Aに表面1a側に向って開口幅H1より広い開口幅H2で開口する溝Bが形成される(H1<H2<W1)。つまり、図2および図3のようにライニング材1を接合することによって、ライニング材1の接合部Aの表面1a側には、段差部4とほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の表側壁6aとにより囲まれかつライニング材1の長さ方向Lに延在する溝Bが形成され、該溝Bの開口幅は、真直部Sでは一定値H1であり、曲がり部Cでは内周側Piから外周側Poに向うに連れて最小値H1から最大値H2へと漸進的に大きくなる。
【0036】
一方、下水槽や建造物等の一般構造物の壁面にライニングを施す場合は、上述の帯状タイプまたはパネル状タイプのライニング材1が用いられる。図4は、一般構造物Kの壁面Kaに沿って帯状タイプのライニング材1を接合した状態を示す図である。なお、パネル状タイプのライニング材1を用いた場合は、図4と長さ方向Lの大きさが相違するだけなので、図示を省略する。図4のような状態にするには、複数の帯状タイプのライニング材1を、裏面1bが構造物Kの壁面Kaに対面しかつほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6とが対向するように、壁面Kaに沿って並べて行き、対向するほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6とを嵌合させて接合して行く。またその際には、ライニング材1のほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さを一定にして、接合部Aを一様に伸縮させる。なお、図4では図示を省略しているが、壁面Kaに段差や曲がり部がある場合は、前述したほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さの調節により、ライニング材1の接合部Aを壁面Kaの態様に対応するように伸縮させる。
【0037】
図4では、接合部Aを、図5(a)に示すように、ほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さをほぞ状条帯5の先端がほぞ穴状溝形条帯6の溝形部の底に接するように最も深くすることにより、最も収縮させている。つまり、図4のようにライニング材1を接合することにより、接合部Aには、段差部4とほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の表側壁6aとにより囲まれかつ表面1a側(壁面Kaと反対側)に向って一定の開口幅H1で開口しかつライニング材1の長さ方向Lに延在する溝Bが形成される。
【0038】
上述のようにしてライニング材1の接合部Aに溝Bを形成すると、該溝Bを充填材で埋める。充填材としては、例えばライニング材1の材質と同種の樹脂を用いる。該樹脂を溝Bに埋めるために、図6(a)、(b)に示すようなライニング材接着装置10を用いる。ライニング材接着装置10は、ノズル11と連結されたシリンダ14の内部で熱により溶融されて該内部から所定の圧力で押し出された上記樹脂を、矢印で示すようにノズル11の穴11aを通して吐出口11bから吐出する。また、ライニング材接着装置10は、ノズル11の先端に設けられた面からなる均し部11cと該ノズル11の側面に回転自在に連結された一対のローラ13とをライニング材1の表面1aに接触させて、ライニング材1の長さ方向Lへ滑らかに移動する。ノズル11は、耐熱性が高く異物付着性が低い(異物が付着し難い)テフロン(登録商標)等の合成樹脂から形成されている。図7は、ノズル11の先端側を示す斜視図である。ノズル11の先端には、上述の吐出口11bと均し部11cの他に、突起からなる係合部12が設けられている。均し部11cの幅N1は、前述したライニング材1の接合部Aの溝Bの最大開口幅H2の2倍程度に大きくなっていて(H2×2≒N1)、係合部12の幅N2は、前述したライニング材1の接合部Aの溝Bの最小開口幅H1より若干小さくなっている(H1<N2)。均し部11cおよび係合部12の先端面は、例えば図7(a)に示すように平面であってもよいし、図7(b)に示すように曲面であってもよい。
【0039】
このようなライニング材接着装置10を、まず、図6(a)、(b)に示すようにライニング材1の接合部A上に設置する。このとき、ノズル11の吐出口11bを接合部Aの溝Bに向け、ノズル11の先端の均し部11cを溝Bを跨ぐようにライニング材1の表面1aに着け、係合部12を溝Bに嵌入させてライニング材1の段差部4に係合させる。そして、係合部12をライニング材1の段差部4に係合させた状態で、ライニング材接着装置10をライニング材1に押し付けつつ、図6(b)に矢印で示すようにライニング材1の長さ方向Lへ移動させながら、ノズル11の吐出口11bから接合部Aの溝B内に溶融状態の樹脂を注入充填して、溝Bを埋めて行く。このとき、吐出口11bから溝B内に注入充填された樹脂は、ノズル11の均し部11cに付着することなく、均し部11cでライニング材1の表面1aと同一高さになるように即座に均される。また、例えば溝Bの開口幅が広い箇所で係合部12が段差部4から離れても、均し部11cの幅N1が溝Bの最大開口幅H2の2倍程度に大きくなっているので、溝B内に注入充填された樹脂は均し部11cで表面1aと同一高さになるように確実に均される。溝B内に注入充填した樹脂が硬化すると、接合部A、即ち段差部4と表側壁6aとほぞ状条帯5とが接着されて(樹脂溶接または樹脂融着された状態)、図8(a)、(b)に示すようにライニング材1の表面1aが面一となる。図中の符号7は硬化後の樹脂を示している。これにより、図2〜図4に示した状態から、溝Bが消えて無くなり、ライニング材1の表面1aが連続した状態となる。
【0040】
この後、ライニング材1と既設管Pの内面Paまたは一般構造物Kの壁面Kaとの間に形成された空隙、即ちライニング材1のリブ2およびフランジ3の介在によって所定の大きさに確保された裏込め空隙に、モルタル等の裏込め材を注入充填し、該裏込め材を硬化させてライニング材1を既設管Pまたは一般構造物Kと一体化させる。これにより、既設管Pの内面Paまたは一般構造物Kの壁面Kaに沿ってライニング更生管または更生壁体が構築でき、ライニングが完了する。
【0041】
上述した第1実施形態のようにすると、ライニング材1の接合部Aの表面1a側に形成した溝Bを樹脂で埋めてライニング材1の表面1aを面一にするので、施工後にほぞ穴状溝形条帯6の表側壁6a先端に異物が衝突しなくなり、ライニング材1が接合部Aの表面1a側から捲れ上がるのを防止することができる。また、接合部Aの表面1a側に開口幅H1〜H2の溝Bを能動的に形成するので、従来のライニング材の接合部に隙間が受動的に生じるのとは異なり、該溝Bを過不足無く埋めるのに必要な樹脂を用いて、ライニング材1の表面1aを容易に面一にすることができる。
【0042】
また、ライニング材1を既設管Pの内面Paまたは構造物Kの壁面Kaに沿って該管Pまたは壁面Kaの態様に対応するように接合しながら配置すると同時に、接合部Aの伸縮状態に応じた開口幅の溝B、即ちほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の嵌合深さに応じて開口幅がH1〜H2の間で変化する溝Bを接合部Aの表面1a側に形成することができ、後述する第2、第3実施形態よりも溝Bの形成にかかる手間と時間を減ずることが可能となる。そして、溝Bを樹脂で埋めて、ライニング材1の表面1aを面一にするので、既設管Pの内面Paまたは構造物Kの壁面Kaに沿って、該管Pまたは壁面Kaの態様に対応しかつ捲れ上がらないライニング更生管または更生壁体を構築することが可能となる。
【0043】
また、ライニング材1の接合部Aに形成した溝Bにライニング材1の材質と同種の樹脂を熱で溶融させた状態で充填して、ライニング材1と一体化させるので、溝Bを上記樹脂によって隙間なく埋めて、接合部Aを接着し、ライニング材1の表面1aを確実に面一でかつ連続した状態にすることができる。このため、ほぞ穴状溝形条帯6の表側壁6a先端に異物が完全に衝突しなくなり、ライニング材1が接合部Aの表面1a側から捲れ上がるのを確実に防止することができる。また、ライニング材1を構成する樹脂の経年変化が生じても、ライニング材1が接合部Aの表面1a側から捲れ上がるのを確実に防止することができる。さらに、ライニング材1の接合部Aの止水性が向上し、接合部Aに他のシール部材を予め介在させておく必要がなくなり、コストを削減することができる。
【0044】
また、ノズル11を溝Bに沿って移動させながら、該ノズル11の吐出口11bから溶融状態の樹脂を吐出するので、接合部Aに形成した溝Bに溶融状態の樹脂を確実に注入充填して、溝Bを隙間なく埋めることができる。
【0045】
図9は、本発明の第2実施形態に係るライニング材1’の一部を示す斜視図である。本実施形態のライニング材1’は、図1に示したライニング材1と比べて、ほぞ穴状溝形条帯6’の側壁6a’、6b’の突出幅が長い点で相違し、それ以外は一致している。ほぞ穴状溝形条帯6’の側壁6a’、6b’は、ほぞ状条帯5より外側へ向って長く突出している。表側壁6a’は、裏側壁6b’より外側へ向って長く突出していて、ほぞ穴状溝形条帯6’とほぞ状条帯5との嵌合状態で段差部4よりほぞ状条帯5と反対側に延出する長さで突出している。即ち、表側壁6a’ の幅方向Wへの突出幅W4は、ほぞ状条帯5の幅方向Wへの突出幅W1および裏側壁6b’の幅方向Wへの突出幅W5より長く(W1<W5<W4)、ほぞ状条帯5の爪部5aを除いた幅W1’と裏側壁6b’の爪部6cを除いた幅W5’との合計値より長くなっている(W1’+W5’<W4)。
【0046】
このライニング材1’を、例えば図2および図3に示した既設管Pの曲がり部C内で、前述したようにほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6’の嵌合により螺旋状または環状に接合する。すると、既設管Pの曲がり部Cの内周側Piの接合部A’は、例えば図10(a)に示すようにほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6’の嵌合深さをほぞ状条帯5の先端がほぞ穴状溝形条帯6’の溝形部の底に接するように最も深くすることにより、最も収縮した状態となる。既設管Pの曲がり部Cの外周側Poの接合部A’は、例えば図10(b)に示すようにほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6’の嵌合深さをほぞ状条帯5の爪部5aがほぞ穴状溝形条帯6’の爪部6cと係り合うように最も浅くすることにより、最も伸長した状態となる。
【0047】
図10(a)の状態では、接合部A’が最も収縮していて、上述したようにほぞ穴状溝形条帯6’の表側壁6a’の突出幅W4がほぞ状条帯5の突出幅W1より長いので、表側壁6a’が段差部4よりほぞ状条帯5と反対側へ最も長い幅T1で延出して、表面1aより既設管Pの内面Paと反対側へ張り出した状態となる(T1≒W4−W1)。図10(b)の状態では、接合部A’が最も伸長していて、上述したように表側壁6a’の突出幅W4がほぞ状条帯5の爪部5aを除いた幅W1’と裏側壁6b’の爪部6cを除いた幅W5’との合計値より長いので、表側壁6a’が段差部4よりほぞ状条帯5と反対側へ最も短い幅T2で延出して、表面1aより既設管Pの内面Paと反対側へ張り出した状態となる(T2<T1)。つまり、既設管2の内面Paに沿ってライニング材1’を接合することによって、ライニング材1’の接合部A’では、表側壁6a’が段差部4よりほぞ状条帯5と反対側へ延出しかつ既設管Pの内面Paと反対側へ張り出し、表側壁6a’の段差部4を越える延出幅は、曲がり部Cの内周側Piから外周側Poに向うに連れて最大値T1から最小値T2へと漸進的に小さくなる。
【0048】
上記のようにしてライニング材1’の接合部A’で表側壁6a’が延出して張り出すと、表側壁6a’を延出および張り出しを矯正可能でかつ接合状態(嵌合状態)を維持可能な位置、即ち表側壁6a’における段差部4より所定距離根元側にあってほぞ状条帯5の先端より所定距離先端側にある位置6dで切断する。そのために、図11(a)、(b)に示すようなライニング材切断装置20を用いる。ライニング材切断装置20は、フレーム21に下方へ垂直に突出するように連結されたカッター22でライニング材1を切断する。カッター22の刃先22aは、表側壁6aを切断しやすいように片刃状に形成されている。また、ライニング材切断装置20は、フレーム21の前後側面に回転自在に連結された二対のローラ23をライニング材1の表面1aに接触させて、ライニング材1の長さ方向Lへ滑らかに移動する。
【0049】
このようなライニング材切断装置20をライニング材1’の表側壁6a’上に設置する。その際、ライニング材1’が螺旋状に接合されている場合は、ライニング材1’の長さ方向Lの先端部または終端部付近における表面1aにローラ23を着けて、表側壁6a’の6d位置にカッター22を食い込ませる。一方、ライニング材1’が環状に接合されている場合は、表側壁6a’の6d位置にカッター22を挿入可能な切れ目を形成し、その切れ目からカッター22を挿入して食い込ませ、表面1aにローラ23を着ける。
【0050】
そして上記設置状態から、ライニング材切断装置20をライニング材1’に押し付けつつ、図11(b)に矢印で示すライニング材1’の長さ方向Lへ移動させながら、図11(a)、(b)に示すようにカッター22で表側壁6a’の6d位置を切断して行く。このとき、表側壁6a’の切れ目から段差部4とカッター22とを見て、段差部4とカッター22との間隔を略一定に保つようにライニング材切断装置20を移動させることにより、表側壁6a’の6d位置中の段差部4から略一定間隔をおいた位置をカッター22で切断して行く。切断後、ライニング材1’の接合部A’には、図12(a)、(b)に示すように、段差部4とほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6の表側壁6aの切断面とにより囲まれかつ表面1a側(既設管Pの内面Paと反対側)に向ってほぞ状条帯5の突出幅W1より狭い略一定の幅H3で開口する溝B’が形成される(H3<W1)。勿論、該溝B’は、ライニング材1の長さ方向Lに延在している。
【0051】
上記のようにしてライニング材1’の接合部A’に溝B’を形成すると、前述したようにライニング材接着装置10(図6)によって溝B’内に溶融状態の樹脂を注入充填して、溝B’を埋める。そして、溝B’内の樹脂を硬化させて、接合部A’を接着し、図13(a)、(b)に示すようにライニング材1の表面1aを面一にする。その際、表側壁6a’の切断後に残った残余部分をほぞ状条帯5側へ押さえ付けながら溝B’内の樹脂を硬化させて、該残余部分をほぞ状条帯5と確実に接着させ、表面1aより既設管Pの内面Paと反対側に張り出さないように矯正する。この後は、前述したようにライニング材1’と既設管Pとの間の裏込め空隙に裏込め材を注入充填して硬化させ、ライニング材1を既設管Pと一体化させる。
【0052】
上述した第2実施形態のようにすると、ライニング材1’の接合部A’の表面1a側に、段差部4とほぞ状条帯5とほぞ穴状溝形条帯6’の表側壁6a’の切断面とで囲まれる溝B’を形成することができる。また、表側壁6a’の延出および張り出しを矯正可能でかつ接合状態を維持可能な6d位置中における段差部4から一定間隔をおいた位置を切断することで、接合部A’の表面側1aに略一定の開口幅H3の溝B’を形成することができる。そして、該溝B’を溶融状態の樹脂で埋めて、ライニング材1’の表面1aを面一にするので、ほぞ穴状溝形条帯6’の表側壁6a’先端に異物が衝突しなくなり、既設管Pの内面Paに沿って、該管Pの態様に対応しかつ捲れ上がらないライニング更生管を構築することが可能となる。さらに、ほぞ穴状溝形条帯6’の表側壁6a’の張り出し部分を上記のように接合部A’の表面1a側に溝B’を形成するように切断するのは、前述の特許文献3のように接合部の表面側に隙間が生じないように切断するより極めて容易であり、表側壁6a’の切断に要する手間と時間を大幅に減ずることができる。
【0053】
図14は、本発明の第3実施形態に係るライニング材1”の一部を示す斜視図である。本実施形態のライニング材1”は、図9に示したライニング材1’と比べて、ほぞ状条帯5” の根元に段差部4と連通しかつ表面1a側に向って一定の開口幅Gで開口するガイド溝5b”が設けられている点で相違し、それ以外は一致している。ほぞ状条帯5” のガイド溝5b”が設けられている位置は、ほぞ状条帯5”とほぞ穴状溝形条帯6’との嵌合によりライニング材1”を接合された後に該接合部に長さ方向Lに延在するように形成する溝の底に相当する位置である。
【0054】
このライニング材1”を、例えば図2および図3に示した既設管Pの曲がり部C内で、前述したように螺旋状または環状に接合すると、曲がり部Cの内周側Piの接合部A”は、例えば図15(a)に示すようにほぞ状条帯5”とほぞ穴状溝形条帯6’の嵌合深さを最も深くすることにより、最も収縮した状態となり、外周側Poの接合部A”は、例えば図15(b)に示すようにほぞ状条帯5”とほぞ穴状溝形条帯6’の嵌合深さを最も浅くすることにより、最も伸長した状態となる。また、接合部A”では、表側壁6a’が段差部4よりほぞ状条帯5”と反対側へ延出しかつ表面1aより既設管Pの内面Paと反対側へ張り出し、表側壁6a’の段差部4を越える延出幅は、内周側Piから外周側Poに向うに連れて最大値T1から最小値T2へと漸進的に小さくなる。
【0055】
上記のようにしてライニング材1”の接合部A”で表側壁6a’が延出して張り出すと、表側壁6a’を延出および張り出しを矯正可能でかつ接合状態を維持可能な位置6dで切断する。そのために、図16(a)、(b)に示すようなライニング材切断装置20”を用いる。ライニング材切断装置20”は、図11に示したライニング材切断装置20と比べて、カッター22の下部に係合バー24が連結されている点で相違し、それ以外は一致している。
【0056】
このようなライニング材切断装置20”をライニング材1”の表側壁6a’上に設置する。その際、ライニング材1”が螺旋状に接合されている場合は、ライニング材1”の長さ方向Lの先端部または終端部付近における表面1aにローラ23を着けて、ガイド溝5b”内に係合バー24を挿入して係合させ、表側壁6a’の6d位置にカッター22を食い込ませる。一方、ライニング材1”が環状に接合されている場合は、表側壁6a’の6d位置に係合バー24を挿入可能な切れ目を形成し、その切れ目から係合バー24を挿入してガイド溝5b”に係合させ、表側壁6a’ の6d位置にカッター22を食い込ませて、表面1aにローラ23を着ける。
【0057】
そして上記設置状態から、係合バー24をガイド溝5b”に係合させた状態で、ライニング材切断装置20”をライニング材1’に押し付けつつ、図16(b)に矢印で示すライニング材1”の長さ方向Lへ移動させながら、図16(a)、(b)に示すようにカッター22で上記表側壁6a’の6d位置を切断して行く。このとき、係合バー24がガイド溝5b”に係合しているので、表側壁6a’の6d位置中のガイド溝5b”直上位置、即ち段差部4からガイド溝5b”の開口幅Gより若干狭い一定間隔をおいた位置がカッター22により切断されて行く。切断後、ライニング材1”の接合部A”には、図17(a)、(b)に示すように、段差部4とほぞ状条帯5”とほぞ穴状溝形条帯6’の表側壁6a’の切断面とにより囲まれかつ表面1a側(既設管Pの内面Paと反対側)に向かって一定の幅H4で開口する溝B”が形成される(H4<G)。勿論、該溝B”は、ライニング材1の長さ方向Lに延在している。
【0058】
上記のようにしてライニング材1”の接合部A”に溝B”を形成すると、図18に示すライニング材接着装置10”によって溝B”内に溶融状態の樹脂を注入充填する。このライニング材接着装置10”は、図6に示したライニング材接着装置10と比べて、係合部12”の突出高さが高い点で相違し、それ以外は一致している。
【0059】
このようなライニング材接着装置10”を、図18に示すようにライニング材1”の接合部A”上に設置する。このとき、ノズル11の吐出口11bを接合部A”の溝B”に向け、係合部12”を溝B”およびガイド溝5b”に嵌入させて、ガイド溝5b”に係合させる。次いで、係合部12”をガイド溝5b”に係合させた状態で、ライニング材接着装置10”をライニング材1”の長さ方向Lへ移動させながら、ノズル11から溝B”およびガイド溝5b”内に溶融状態の樹脂を注入充填して、溝B”、5b”を埋める。そして、表側壁6a’の切断後に残った残余部分をほぞ状条帯5”側へ押さえ付けながら、溝B”、5b”内の樹脂を硬化させて、接合部A”および、表側壁6a’の残余部分とほぞ状条帯5”とを接着し、図19(a)、(b)に示すようにライニング材1”の表面1aを面一にする。この後は、前述したようにライニング材1”と既設管Pとの間の裏込め空隙に裏込め材を注入充填して硬化させ、ライニング材1”を既設管Pと一体化させる。
【0060】
上述した第3実施形態のようにすると、ライニング材1”の接合部A”の表面1a側に、段差部4とほぞ状条帯5”とほぞ穴状溝形条帯6’の表側壁6a’の切断面とで囲まれる一定の開口幅H4の溝B”を形成することができる。また、ライニング材接着装置10”の係合部12”をライニング材1のガイド溝5b”に係合させた状態で、ライニング材接着装置10”をライニング材1”の長さ方向Lへ移動させるので、ノズル11を溝B”からずれることなく確実かつ容易に移動させながら、溝B”内に溶融状態の樹脂を確実かつ迅速に注入充填することができ、溝B”を埋めるのに要する手間と時間を大幅に減ずることができる。そして、溝B”を樹脂で埋めて、ライニング材1”の表面1aを面一にするので、ほぞ穴状溝形条帯6’の表側壁6a’先端に異物が衝突しなくなり、既設管Pの内面Paに沿って、該管Pの態様に対応しかつ捲れ上がらないライニング更生管を構築することが可能となる。
【0061】
本発明は、以上述べた実施形態以外にも種々の形態を採用することができる。例えば、以上の実施形態では、充填材としてライニング材の材質と同種の樹脂を用いた例を挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではなく、これ以外に、ライニング材の材質と異なる種類の樹脂や合成ゴム等を用いてもよい。また、充填材としては、ライニング材の接合部に形成した溝を埋めるときに液体状態であり埋めた後に固体状態に変化するもののみに限らず、例えば、埋めるときから溝に応じた大きさの固定状態であるものでもよいし、埋めるときに粒子状態であり埋めた後に固体状態に変化するものでもよい。
【0062】
また、第2、第3実施形態では、ライニング材1’、1”を既設管の内面にライニングを施すのに用いた例を挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではなく、ライニング材1’、1”は、一般構造物の壁面にライニングを施すのに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係るライニング材の一部を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るライニング材の帯状タイプを既設管内で接合した状態を示す図である。
【図3】第1実施形態に係るライニング材の環状タイプを既設管内で接合した状態を示す図である。
【図4】第1実施形態に係るライニング材の帯状タイプを一般構造物に沿って接合した状態を示す図である。
【図5】第1実施形態に係るライニング材の接合状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態に係るライニング材接着装置を示す図である。
【図7】第1実施形態に係るライニング材接着装置のノズルの斜視図である。
【図8】第1実施形態に係るライニング材の接着状態を示す断面図である。
【図9】第2実施形態に係るライニング材の一部を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態に係るライニング材の接合状態を示す断面図である。
【図11】第2実施形態に係るライニング材切断装置を示す図である。
【図12】第2実施形態に係るライニング材の切断状態を示す断面図である。
【図13】第2実施形態に係るライニング材の接着状態を示す断面図である。
【図14】第3実施形態に係るライニング材の一部を示す斜視図である。
【図15】第3実施形態に係るライニング材の接合状態を示す断面図である。
【図16】第3実施形態に係るライニング材切断装置を示す図である。
【図17】第3実施形態に係るライニング材の切断状態を示す断面図である。
【図18】第3実施形態に係るライニング材接着装置を示す図である。
【図19】第3実施形態に係るライニング材の接着状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1、1’、1” ライニング材
1a 表面
4 段差部
5、5” ほぞ状条帯
5b” ガイド溝
6、6’ ほぞ穴状溝形条帯
6a、6a’ 表側壁
6d 表側壁の張り出しおよび延出を矯正可能でかつ接合状態を維持可能な位置
7 溝内で硬化したライニング材の材質と同種の樹脂
10、10” ライニング材接着装置
11 ノズル
12、12”係合部
A、A’、A” 接合部
B、B’、B” 溝
H1、H2、H3、H4 溝の開口幅
K 一般構造物
Ka 一般構造物の壁面
L ライニング材の長さ方向
P 既設管
Pa 既設管の内面
Pj 既設管の管軸
W ライニング材の幅方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面に沿ってライニング材を接合しながら設置して、該壁面にライニングを施すライニング工法において、
前記壁面に沿ってライニング材を接合して、該接合部に前記壁面と反対側に向って所定の幅で開口しかつライニング材の長さ方向に延在する溝を形成し、該溝を充填材で埋めて、ライニング材の前記壁面と反対側に位置する表面を面一にすることを特徴とするライニング工法。
【請求項2】
請求項1に記載のライニング工法において、
前記ライニング材は、一方の側部に段差部を介して幅方向と平行に外側へ向って突出しかつ長さ方向へ延在するほぞ状条帯が設けられ、他方の側部に幅方向と平行に外側へ向って突出しかつ長さ方向へ延在する前記ほぞ状条帯と嵌合可能なほぞ穴状溝形条帯が設けられ、前記両条帯の嵌合により接合され、該接合部が前記両条帯の嵌合深さの調節により伸縮可能であり、
前記ライニング材を前記壁面に沿って接合して、該接合部に前記段差部と前記ほぞ状条帯と該ライニング材の前記表面側に位置するほぞ穴状溝形条帯の表側壁とにより囲まれる前記溝を形成し、該溝を充填材で埋めて、前記ライニング材の前記表面を面一にすることを特徴とするライニング工法。
【請求項3】
請求項2に記載のライニング工法において、
前記ライニング材の前記接合部を前記壁面の態様に対応するように伸縮させて、前記接合部に前記溝を形成することを特徴とするライニング工法。
【請求項4】
請求項2に記載のライニング工法において、
前記ライニング材は、前記ほぞ穴状溝形条帯の前記表側壁が前記ほぞ状条帯との嵌合状態で前記段差部より前記ほぞ状条帯と反対側に延出する長さで突出していて、
前記ライニング材の前記壁面に沿った接合によって前記段差部より前記ほぞ状条帯と反対側に延出しかつ前記表面より前記壁面と反対側へ張り出した前記表側壁を、延出および張り出しを矯正可能でかつ接合状態を維持可能な位置で切断して、前記接合部に前記溝を形成することを特徴とするライニング工法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のライニング工法において、
前記構造物の壁面は既設管の内面であり、
前記ライニング材を前記内面に沿って前記既設管の管軸方向へ螺旋状または環状に接合した後に、該接合部に形成した前記溝を充填材で埋めて、前記ライニング材の前記表面を面一にすることを特徴とするライニング工法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のライニング工法において、
前記充填材として前記ライニング材の材質と同種の樹脂を用い、該樹脂を熱で溶融させた状態で前記溝に充填して、前記ライニング材と一体化させることを特徴とするライニング工法。
【請求項7】
請求項6に記載のライニング工法において、
溶融状態の前記樹脂を吐出するノズルを前記溝に沿って移動させながら、該ノズルから前記溝に前記樹脂を注入充填することを特徴とするライニング工法。
【請求項8】
構造物の壁面にライニングを施すために、該壁面沿って接合されながら設置されるライニング材であって、
一方の側部に、段差部を介して幅方向と平行に外側へ向って突出しかつかつ長さ方向へ延在するほぞ状条帯が設けられ、
他方の側部に、幅方向と平行に外側へ向って突出しかつ長さ方向へ延在する前記ほぞ状条帯と嵌合可能なほぞ穴状溝形条帯が設けられ、
前記両条帯の嵌合により接合された後に該接合部に長さ方向に延在するように形成される溝の底に相当する前記ほぞ状条帯の位置に、溶融状態の樹脂を吐出するノズルの前記溝に沿った移動を案内するガイド部が設けられていることを特徴とするライニング材。
【請求項9】
請求項8に記載のライニング材を接着するライニング材接着装置であって、
溶融状態の樹脂を吐出するノズルと、
前記ノズルの先端に設けられていて、前記ライニング材の前記ガイド部に係合する係合部と、を備え、
前記係合部を前記ガイド部に係合させた状態で前記ライニング材の長さ方向へ移動しながら、前記ノズルから前記ライニング材の前記接合部に形成された前記溝に溶融状態の樹脂を注入充填して、前記接合部を接着することを特徴とするライニング材接着装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−247860(P2006−247860A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63548(P2005−63548)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000160784)株式会社クボタ建設 (8)
【出願人】(596011792)大東工機株式会社 (10)
【出願人】(501468828)有限会社インテス (20)
【Fターム(参考)】