ラインヘッド、ラインヘッドの製造方法、及び記録装置
【課題】インクを吐出する位置や方向にばらつきがなく、印字品質を向上することが可能なラインヘッド、ラインヘッドの製造方法、及び記録装置を提供する。
【解決手段】複数の第1ノズル孔23を有するベースプレート21と、ベースプレート21上に配置された、第1ノズル孔23に連通する第2ノズル孔25と、第2ノズル孔25毎に設けられたアクチュエーターと、を有するノズルユニット22と、を備える。
【解決手段】複数の第1ノズル孔23を有するベースプレート21と、ベースプレート21上に配置された、第1ノズル孔23に連通する第2ノズル孔25と、第2ノズル孔25毎に設けられたアクチュエーターと、を有するノズルユニット22と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインヘッド、ラインヘッドの製造方法、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した記録装置の一つとしてインクジェット式記録装置がある。インクジェット式記録装置としては、印字速度の高速化の要請から、ノズルヘッドが移動する方式ではなく、ノズル孔が印刷の全幅にわたって配列されたヘッドユニットを用いたものが提案されている。
【0003】
そこで、印刷媒体の全幅をカバーできるラインヘッドが必要になるが、そのような長尺のラインヘッドを一体で形成することは困難なため、例えば、特許文献1〜特許文献3に記載のように、比較的小面積のノズルヘッドを複数組み合わせて配置することでラインヘッドを構成することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−34360号公報
【特許文献2】特許第3302785号公報
【特許文献3】特開2004−322606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のノズルヘッドのアライメントが上手くいかないと、ノズル間でインク吐出の位置や方向がばらついて、例えば印字物にスジ状の印刷ムラが発生する場合があった。また、複数のノズルヘッドをアライメントした後に、圧力を加えたり熱を加えたりすると、ノズルヘッドの位置がずれてしまうという課題があった。つまり、複数のノズルヘッドの位置を高精度で合わせることが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るラインヘッドは、複数の第1ノズル孔を有する第1基板と、前記第1基板上に複数配置され、前記複数の第1ノズル孔のうち対応する第1ノズル孔と連通する第2ノズル孔と、前記第2ノズル孔毎に設けられたアクチュエーターと、を有するノズルユニットと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1基板上にノズルユニットを配置するときには、第1基板に設けられた第1ノズル孔を基準として、第1ノズル孔に第2ノズル孔が連通するようにノズルユニットを位置決めすればよいので、ノズルユニットの位置決めにおいて高い精度が要求されずに済む。言い換えれば、第1基板における第1ノズル孔の位置精度を確保すれば、ノズルユニットの位置精度に関わらず、高い位置精度でインク等を吐出可能なラインヘッドを提供できる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るラインヘッドにおいて、前記第1基板と前記ノズルユニットとが接する部分において、前記第2ノズル孔の径が前記第1ノズル孔の径より大きいことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第2ノズル孔の径が第1ノズル孔の径よりも大きいので、第1基板にノズルユニットを配置した際の位置ずれを許容することができる。言い換えれば、第2ノズル孔の位置が正規の位置からずれた場合でも、例えば、第2ノズル孔から第1ノズル孔に液体を送ることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るラインヘッドにおいて、前記ノズルユニットは、前記第1基板における前記複数の第1ノズル孔からなるノズル列毎に設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ノズル列を1つの単位として1つのノズルユニットが配置されているので、1回の位置合わせで複数の第2ノズル孔の位置を複数の第1ノズル孔の位置に高精度に合わせることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るラインヘッドにおいて、前記ノズル列は、第1方向に対して傾斜するように並列して前記第1基板上に複数配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、複数の第1ノズル孔からなるノズル列が、例えば、印刷用紙の搬送方向(第1方向)に対し傾斜するように配置されることにより、印刷に寄与する第1ノズル孔の間隔を狭ピッチ化することができる。つまり、高精細にインクを吐出することが可能なラインヘッドを提供できる。
【0015】
[適用例5]本適用例に係るラインヘッドの製造方法は、第1基板に複数の第1ノズル孔をフォトリソグラフィ法を用いて形成する第1ノズル孔形成工程と、前記複数の第1ノズル孔のうち対応する第1ノズル孔と連通する第2ノズル孔を第2基板に複数形成する第2ノズル孔形成工程と、前記第2ノズル孔毎に対応して前記第2基板にアクチュエーターを組み合わせてノズルユニットを形成するノズルユニット形成工程と、前記第1基板と前記ノズルユニットとを陽極接合によって接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
この方法によれば、第1基板とノズルユニットとを接合した際、フォトリソグラフィ法を用いて形成した第1基板の第1ノズル孔の位置が吐出する位置の基準となるので、ノズルユニット間で互いの位置合わせする場合と比較して、第1ノズル孔間の位置精度を向上させることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係るラインヘッドの製造方法において、前記接合工程は、前記複数の第1ノズル孔の一部を前記第1基板のアライメントマークとして用いることが好ましい。
【0018】
この方法によれば、第1ノズル孔の一部を用いることにより、専用にアライメントマークを形成しなくても第1基板とノズルユニットとの位置合わせを行うことができる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係る記録装置は、上記に記載のラインヘッドを備えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、上述したラインヘッドを備えているので、ノズル間の位置精度を向上させることができ、印字速度を高めると共に印字品質を向上させることが可能な記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ラインヘッドを備えた記録装置としての液体吐出装置の構成を示す模式図。
【図2】ラインヘッドの構造を示す模式平面図であり、(a)はベースプレートとノズルユニットとを組み合わせた状態を示す模式平面図、(b)はベースプレートの構造を示す模式平面図、(c)はノズルユニットの構造を示す模式平面図。
【図3】図2に示すラインヘッドのA部の構造を模式的に示す拡大斜視図。
【図4】図3に示すラインヘッドのB−B'線に沿う模式断面図。
【図5】ラインヘッドの製造方法を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図6】ラインヘッドの製造方法を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図7】ラインヘッドの製造方法を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図8】ラインヘッドの製造方法を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図9】ノズルユニットの配置の変形例を示す模式平面図。
【図10】ノズルユニットの配置の変形例を示す模式平面図。
【図11】ノズルユニットの配置の変形例を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0023】
<記録装置の構成>
図1は、ラインヘッドを備えた記録装置としての液体吐出装置(インクジェット式記録装置)の構成を示す模式図である。以下、液体吐出装置の構成を、図1を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、液体吐出装置10は、記録用紙11をプラテン12上に搬送する搬送ローラー13と、搬送ローラー13を回転駆動するステップモーター14と、ガイドレール15により記録用紙11の搬送方向(第1方向)に対して直角方向に移動可能に取り付けられ搬送された記録用紙11にインク滴を吐出するラインヘッド20と、記録用紙11の搬送方向に対して直角方向にラインヘッド20を振動させる振動素子30(図3、図4参照)と、装置全体をコントロールするコントローラー40とを備える。
【0025】
振動素子30は、例えば、PZTなどの圧電素子(電歪振動子)により形成されており、ラインヘッド20に取り付けられている。したがって、振動素子30を振動させることにより、ラインヘッド20をガイドレール15に沿って記録用紙11の搬送方向に対して直角方向に振動させることができる。
【0026】
コントローラー40は、CPU41を中心としたマイクロプロセッサーとして構成されており、CPU41の他に、各種処理プログラムを記憶するROM42と、データを一時的に記憶するRAM43と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリー44と、外部機器と情報のやり取りを行なうインターフェイス(I/F)45と、図示しない入出力ポートとを備える。
【0027】
RAM43には、印刷バッファー領域が設けられており、この印刷バッファー領域には、ユーザーPC46からインターフェイス(I/F)45を介して受信した印刷用データを記憶することができるようになっている。コントローラー40には、操作パネル47からの各種操作信号などが入力ポートを介して入力されており、コントローラー40からは、ラインヘッド20への駆動信号やステップモーター14への駆動信号、操作パネル47への出力信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0028】
なお、操作パネル47は、ユーザーからの各種の指示を入力すると共に状態を表示出力するためのデバイスであり、図示しないが、各種の指示に対応する文字や図形または記号が表示されるディスプレイやユーザーが各種操作を行なうためのボタン類が設けられている。
【0029】
<ラインヘッドの構成>
図2は、ラインヘッドの構造を示す模式平面図である。図2(a)は、第1基板としてのベースプレートとノズルユニットとを組み合わせた状態を示す模式平面図である。図2(b)は、ベースプレートの構造を示す模式平面図である。図2(c)は、ノズルユニットの構造を示す模式平面図である。以下、ラインヘッドの構造を、図2(a)〜図2(c)を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、例えば、3色のインクを用いる場合のノズルの配置を示している。
【0030】
図2に示すように、ラインヘッド20は、ベースプレート21と、このベースプレート21に並べて固定された複数のノズルユニット22とを備えている。
【0031】
ベースプレート21としては、例えば、ガラスなどの透明基板が挙げられる。ベースプレート21には、インクを吐出するための第1ノズル孔23が複数形成されている。具体的には、第1方向である搬送方向に対して傾斜するように並列して、複数の第1ノズル孔23からなるノズル列が複数設けられている。更に、ベースプレート21には、複数のノズルユニット22を接合する際に用いるアライメントマーク24が形成されている。
【0032】
また、第1ノズル孔23及びアライメントマーク24は、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、ベースプレート21に形成されている。フォトリソグラフィ法を用いることにより、第1ノズル孔23及びアライメントマーク24の位置精度を向上させることができる。具体的には、例えば、位置精度を0.5μm以下に抑えることができる。
【0033】
ノズルユニット22は、インクを吐出させるものであり、ノズル列毎に配置されている。また、ノズルユニット22は、インクを吐出する部分である複数の第2ノズル孔25が形成された第2基板としてのノズルユニットプレート26(図3、図4参照)を有する。ノズルユニットプレート26は、例えば、シリコン基板やガラス基板などである。
【0034】
なお、ノズルユニット22がベースプレート21に接合された際には、第2ノズル孔25と第1ノズル孔23が連通するようになっている。また、ノズルユニット22には、ノズルユニット22とベースプレート21とを接合する際に用いるアライメントマーク27が形成されている。
【0035】
このようなノズルユニット22がベースプレート21に複数並べられることにより、記録用紙11の全幅に亘ってノズル孔23,25が配列されることになる。ラインヘッド20は、ベースプレート21のアライメントマーク24を基準にノズルユニット22のアライメントマーク27を合わせて配置することにより、高画質印字を可能にしている。
【0036】
図3は、図2に示すラインヘッドのA部の構造を模式的に示す拡大斜視図である。図4は、図3に示すラインヘッドのB−B'線に沿う模式断面図である。以下、ラインヘッドの構造を、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0037】
図3及び図4に示すラインヘッド20は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の色のうちの一色と対応するラインヘッド20の構造を示す図である。なお、他の色に対応するラインヘッド20の構造も同様となっている。
【0038】
ラインヘッド20を構成するノズルユニット22は、ノズルユニットプレート26とアクチュエーター22aとを有する。アクチュエーター22aは、振動板31と隔壁32とを有し、ノズルユニットプレート26と振動板31とによって隔壁32を挟み込んでいる。更に、アクチュエーター22aは、第2ノズル孔25の各々に連通したインク圧力室33を備え、各インク圧力室33の圧力を圧電素子(振動素子30)を用いて変化させ、インクを吐出する構造を有している。また、インク圧力室33は、大容量の共通インク室34を介して相互につながっており、共通インク室34にはインク供給源(図示せず)からインクが供給される構造を有している。
【0039】
ノズルユニット22の上部には、例えば、溶媒に染料または顔料を含有したシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ35(図1参照)が配置されている。そして、インクカートリッジ35から供給される各色インクに対応するインク滴36が、第2ノズル孔25から第1ノズル孔23を通って吐出できるようになっている。
【0040】
なお、ラインヘッド20からインク滴36を吐出させる手法としては、圧電素子(ピエゾ素子)に電圧を作用させることによりこの圧電素子を変形させてインク滴36を吐出するピエゾ方式や、ヒーターなどの発熱抵抗体に電圧を作用させてインクを過熱させることにより気泡を発生させこの気泡によりインクを加圧してインク滴36を吐出するサーマルインクジェット方式などを用いることができる。
【0041】
各ベースプレート21の複数の第1ノズル孔23は、例えば、0.2mmの間隔(ピッチ)をもって一直線状に形成されており、それらの第1ノズル孔23の右端と左端の間の距離は、記録用紙11の幅よりもやや大きい。そして、各インク圧力室33の振動板31を挟んだ上側には、第1電極37、ピエゾ素子38、および第2電極39がそれぞれ積層されている。
【0042】
図4に示すように、ベースプレート21の第1ノズル孔23の断面形状は、例えば、異なる傾斜を有する二段のテーパー孔23a,23bとなっている。第1ノズル孔23と連通する第2ノズル孔25の孔径は、第1ノズル孔23の孔径より大きくなっている。
【0043】
このように、第1ノズル孔23をインクが吐出する正規の孔径で形成し、第2ノズル孔25を第1ノズル孔23より大きく設定することにより、ベースプレート21とノズルユニット22とを組み合わせた際の位置ずれ(合わせ精度)が許容でき、吐出量などの変化に影響を与えることを抑えることができる。
【0044】
振動板31の近傍には、インクカートリッジ35と繋がった孔51が設けられている。インクカートリッジ35の各色のインクパック(図示せず)から、孔51を介して共通インク室34へインクを供給した上で、ピエゾ素子38へ両電極37,39から電圧を印加すると、ピエゾ素子38の伸縮による振動板31の振動を受けてインク圧力室33の内圧が変化し、そのインク圧力室33に貯留されているインクがノズル孔23,25からインク滴36として吐出される。
【0045】
<ラインヘッドの製造方法>
図5〜図8は、ラインヘッドの製造方法を工程順に示す模式図である。(a)は、ラインヘッドの製造方法を示す模式平面図である。(b)は、(a)に示すラインヘッドのC−C'線に沿う模式断面図である。以下、ラインヘッドの製造方法を、図5〜図8を参照しながら説明する。
【0046】
まず、図5に示すように、ベースプレート21となる前駆体プレート21aを準備する。前駆体プレート21aとしては、例えば、透明基板であるガラス基板が挙げられる。また、ガラス基板以外のものとしては、なるべく熱膨張係数が合うものが好ましく、例えば、樹脂やシリコン系の材料であってもよい。透明の定義としては、可視光領域以外でも装置構造上判別できる領域であれば可とする。
【0047】
次に、図6に示すように、前駆体プレート21aの縁以外の部分を、ベースプレート21の厚みに形成する。具体的には、例えば、フッ酸などのエッチング液を用いて、前駆体プレート21aをエッチングする。また、エッチング以外の方法として、機械加工によってベースプレート21の厚みになるように形成するようにしてもよい。
【0048】
これにより、前駆体プレート21bの縁は原料のままの厚みに残り、それ以外の部分の厚みはベースプレート21の厚みに薄くなる。その結果、前駆体プレート21bの強度が著しく低下することを抑えることができる。薄くなった部分のベースプレート21の厚みは、例えば、60μm〜70μm程度である。
【0049】
次に、図7に示すように、前駆体プレート21b(図6参照)の掘り込まれた部分に第1ノズル孔23を形成する(第1ノズル孔形成工程)。まず、第1ノズル孔23の一段目のテーパー孔23a(吐出側)となる部分に、第1開口孔を有する第1レジストパターンを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。次に、第1レジストパターンをマスクとして、等方性のドライエッチングを行う。これにより一段目のテーパー孔23aが形成される。このテーパー孔23aの吐出口の径は、例えば、20μmである。
【0050】
次に、第1レジストパターンを除去し、フォトリソグラフィ技術を用いて、二段目のテーパー孔23bとなる部分に、第2開口孔を有する第2レジストパターンを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する(第1ノズル孔形成工程)。そして、この第2レジストパターンをマスクとして、等方性のドライエッチングを行う。第1開口孔と第2開口孔とはエッチングレートが異なっており、これにより、二段のテーパー孔23a,23bを有する第1ノズル孔23が形成される。
【0051】
このように、ベースプレート21の第1ノズル孔23を、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することにより、第1ノズル孔23間の位置精度を向上させることができる。その後、ノズルユニット22を構成するノズルユニットプレート26に第2ノズル孔25を形成し(第2ノズル孔形成工程)、ノズルユニットプレート26とアクチュエーター22aとを組み合わせる(ノズルユニット形成工程)。
【0052】
次に、図8に示すように、ベースプレート21とノズルユニット22とを陽極接合する(接合工程)。まず、ベースプレート21及びノズルユニット22に形成されたアライメントマーク24,27を基準に互いの位置合わせを行う。
【0053】
具体的には、ベースプレート21に形成されたアライメントマーク24の位置を基準に、ノズルユニット22に形成されたアライメントマーク27の位置が一致するか、例えば、ノズルユニット22を介してCCDカメラや顕微鏡などの光学系を用いて確認しながら位置合わせを行う。
【0054】
なお、CCDカメラを用いて、撮影されたアライメントマーク24,27などの画像を画像処理することにより、ベースプレート21とノズルユニット22とを自動的に位置合わせさせるようにしてもよい。
【0055】
次に、位置合わせが行われたベースプレート21とノズルユニット22とを、例えば、380℃に加熱し、ノズルユニット22を陽極、ベースプレート21を陰極に接続し、800Vの電圧を加えることで陽極接合する。
【0056】
これにより、第1ノズル孔23と第2ノズル孔25とが連通してノズル孔23,25が形成される。また、第2ノズル孔25の径を第1ノズル孔23の径より大きく設定することにより、ベースプレート21とノズルユニット22とを組み合わせた際の位置ずれ(合わせ精度)が許容でき、吐出量などの変化に影響を与えることを抑えることができる。
【0057】
以上詳述したように、ラインヘッド20、ラインヘッド20の製造方法、及び記録装置によれば、以下に示す効果が得られる。
【0058】
(1)本実施形態のラインヘッド20によれば、ベースプレート21上にノズルユニット22を配置するときには、ベースプレート21に設けられた第1ノズル孔23を基準として、第1ノズル孔23に第2ノズル孔25が連通するようにノズルユニット22を位置決めすればよいので、ノズルユニット22の位置決めにおいて高い精度が要求されずに済む。言い換えれば、ベースプレート21における第1ノズル孔23の位置精度を確保すれば、ノズルユニット22の位置精度に関わらず、高い位置精度でインク滴36を吐出可能なラインヘッド20を提供できる。
【0059】
(2)本実施形態のラインヘッド20によれば、第2ノズル孔25の孔径が第1ノズル孔23の孔径よりも大きいので、ベースプレート21にノズルユニット22を配置した際の位置ずれを許容することができる。言い換えれば、第2ノズル孔25の位置が正規の位置からずれた場合でも、例えば、第2ノズル孔25から第1ノズル孔23にインクを送ることができる。
【0060】
(3)本実施形態のラインヘッド20の製造方法によれば、ベースプレート21とノズルユニット22とを接合した際、フォトリソグラフィ法を用いて形成したベースプレート21の第1ノズル孔23の位置が吐出する位置の基準となるので、ノズルユニット22間でノズル孔の位置合わせする場合と比較して、第1ノズル孔23と第1ノズル孔23との位置精度を向上させることができる。
【0061】
(4)本実施形態の記録装置によれば、上述したラインヘッド20を備えているので、ノズル間の位置精度を向上させることができ、印字速度を高めると共に印字品質を向上させることが可能な記録装置(液体吐出装置10)を提供することができる。
【0062】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0063】
(変形例1)
上記したように、ベースプレート21に対するノズルユニット22の配置パターンは、図2に示すような配置形態に限定されず、例えば、図9〜図11に示すような配置であってもよい。図9〜図11は、ノズルユニット122(122a,122b),222(222a,222b),322(322a,322b,322c)の配置形態の変形例を示す模式平面図である。図9に示すラインヘッド110は、2色の場合のときのノズルユニット122を配置したパターンである。具体的には、2色のノズルユニット122a,122bを交互に配置すると共に、ベースプレート121に対して傾斜させて配置している。これによれば、図2に示すラインヘッド20に比べて色の再現性が低下するものの、高精細に印刷することができる。
【0064】
図10に示すラインヘッド210は、2色のノズルユニット222a,222bをベースプレート221の長辺に対して平行に配置したパターンである。具体的には、2色のノズルユニット222a,222bを交互に配置している。これによれば、上述した図9に示すラインヘッド110に比べて、ノズル孔23,25のピッチ間隔が広がり精細度が低下するものの、少ないノズルユニット222a,222bで省スペース化が可能となるラインヘッド210を提供することができる。
【0065】
図11に示すラインヘッド310は、3色のノズルユニット322a,322b,322cをベースプレート321の長辺に対して平行に配置したパターンである。具体的には、3色のノズルユニット322a,322b,322cを順に繰り返し配置している。これによれば、上述した図10に示すラインヘッド210に比べて、面積が広くなるものの、色の再現性を向上させることができる。
【0066】
(変形例2)
上記したように、第1ノズル孔の断面形状は、二段のテーパー形状になっていることに限定されず(図4参照)、ストレート部分を含む形状であってもよい。例えば、インクを吐出する側のノズルの部分がストレートになっていることにより、インクの流れる方向を安定させることが可能となり、インクを狙った位置に吐出させることができる。形成方法としては、例えば、異方性エッチングによって垂直方向にストレート孔を貫通させた後に、等方性エッチングによってテーパー形状を途中まで開けることによって形成することができる。
【0067】
(変形例3)
上記したように、ピエゾ素子を用いてインクを吐出させる方法に限定されず、例えば、静電方式やサーマル方式、その他の方法を用いて吐出させるようにしてもよい。
【0068】
(変形例4)
上記したように、アライメントマーク24,27を形成してベースプレート21とノズルユニット22との位置合わせをすることに代えて、例えば、第1ノズル孔23や第2ノズル孔25の一部をアライメントマークとして用いて互いの位置合わせをするようにしてもよい。これによれば、アライメントマーク24,27の形成工程を省略することができる。
【符号の説明】
【0069】
10…液体吐出装置、11…記録用紙、12…プラテン、13…搬送ローラー、14…ステップモーター、15…ガイドレール、20,110,210,310…ラインヘッド、21,121,221,321…第1基板としてのベースプレート、21a,21b…前駆体プレート、22,122,122a,122b,222a,222b,322a,322b,322c…ノズルユニット、22a…アクチュエーター、23…第1ノズル孔、23a,23b…テーパー孔、24…アライメントマーク、25…第2ノズル孔、26…第2基板としてのノズルユニットプレート、27…アライメントマーク、30…振動素子、31…振動板、32…隔壁、33…インク圧力室、34…共通インク室、35…インクカートリッジ、36…インク滴、37…第1電極、38…ピエゾ素子、39…第2電極、40…コントローラー、41…CPU、42…ROM、43…RAM、44…フラッシュメモリー、45…インターフェイス、46…ユーザーPC、47…操作パネル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインヘッド、ラインヘッドの製造方法、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した記録装置の一つとしてインクジェット式記録装置がある。インクジェット式記録装置としては、印字速度の高速化の要請から、ノズルヘッドが移動する方式ではなく、ノズル孔が印刷の全幅にわたって配列されたヘッドユニットを用いたものが提案されている。
【0003】
そこで、印刷媒体の全幅をカバーできるラインヘッドが必要になるが、そのような長尺のラインヘッドを一体で形成することは困難なため、例えば、特許文献1〜特許文献3に記載のように、比較的小面積のノズルヘッドを複数組み合わせて配置することでラインヘッドを構成することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−34360号公報
【特許文献2】特許第3302785号公報
【特許文献3】特開2004−322606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のノズルヘッドのアライメントが上手くいかないと、ノズル間でインク吐出の位置や方向がばらついて、例えば印字物にスジ状の印刷ムラが発生する場合があった。また、複数のノズルヘッドをアライメントした後に、圧力を加えたり熱を加えたりすると、ノズルヘッドの位置がずれてしまうという課題があった。つまり、複数のノズルヘッドの位置を高精度で合わせることが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るラインヘッドは、複数の第1ノズル孔を有する第1基板と、前記第1基板上に複数配置され、前記複数の第1ノズル孔のうち対応する第1ノズル孔と連通する第2ノズル孔と、前記第2ノズル孔毎に設けられたアクチュエーターと、を有するノズルユニットと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1基板上にノズルユニットを配置するときには、第1基板に設けられた第1ノズル孔を基準として、第1ノズル孔に第2ノズル孔が連通するようにノズルユニットを位置決めすればよいので、ノズルユニットの位置決めにおいて高い精度が要求されずに済む。言い換えれば、第1基板における第1ノズル孔の位置精度を確保すれば、ノズルユニットの位置精度に関わらず、高い位置精度でインク等を吐出可能なラインヘッドを提供できる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るラインヘッドにおいて、前記第1基板と前記ノズルユニットとが接する部分において、前記第2ノズル孔の径が前記第1ノズル孔の径より大きいことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第2ノズル孔の径が第1ノズル孔の径よりも大きいので、第1基板にノズルユニットを配置した際の位置ずれを許容することができる。言い換えれば、第2ノズル孔の位置が正規の位置からずれた場合でも、例えば、第2ノズル孔から第1ノズル孔に液体を送ることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るラインヘッドにおいて、前記ノズルユニットは、前記第1基板における前記複数の第1ノズル孔からなるノズル列毎に設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ノズル列を1つの単位として1つのノズルユニットが配置されているので、1回の位置合わせで複数の第2ノズル孔の位置を複数の第1ノズル孔の位置に高精度に合わせることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るラインヘッドにおいて、前記ノズル列は、第1方向に対して傾斜するように並列して前記第1基板上に複数配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、複数の第1ノズル孔からなるノズル列が、例えば、印刷用紙の搬送方向(第1方向)に対し傾斜するように配置されることにより、印刷に寄与する第1ノズル孔の間隔を狭ピッチ化することができる。つまり、高精細にインクを吐出することが可能なラインヘッドを提供できる。
【0015】
[適用例5]本適用例に係るラインヘッドの製造方法は、第1基板に複数の第1ノズル孔をフォトリソグラフィ法を用いて形成する第1ノズル孔形成工程と、前記複数の第1ノズル孔のうち対応する第1ノズル孔と連通する第2ノズル孔を第2基板に複数形成する第2ノズル孔形成工程と、前記第2ノズル孔毎に対応して前記第2基板にアクチュエーターを組み合わせてノズルユニットを形成するノズルユニット形成工程と、前記第1基板と前記ノズルユニットとを陽極接合によって接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
この方法によれば、第1基板とノズルユニットとを接合した際、フォトリソグラフィ法を用いて形成した第1基板の第1ノズル孔の位置が吐出する位置の基準となるので、ノズルユニット間で互いの位置合わせする場合と比較して、第1ノズル孔間の位置精度を向上させることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係るラインヘッドの製造方法において、前記接合工程は、前記複数の第1ノズル孔の一部を前記第1基板のアライメントマークとして用いることが好ましい。
【0018】
この方法によれば、第1ノズル孔の一部を用いることにより、専用にアライメントマークを形成しなくても第1基板とノズルユニットとの位置合わせを行うことができる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係る記録装置は、上記に記載のラインヘッドを備えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、上述したラインヘッドを備えているので、ノズル間の位置精度を向上させることができ、印字速度を高めると共に印字品質を向上させることが可能な記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ラインヘッドを備えた記録装置としての液体吐出装置の構成を示す模式図。
【図2】ラインヘッドの構造を示す模式平面図であり、(a)はベースプレートとノズルユニットとを組み合わせた状態を示す模式平面図、(b)はベースプレートの構造を示す模式平面図、(c)はノズルユニットの構造を示す模式平面図。
【図3】図2に示すラインヘッドのA部の構造を模式的に示す拡大斜視図。
【図4】図3に示すラインヘッドのB−B'線に沿う模式断面図。
【図5】ラインヘッドの製造方法を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図6】ラインヘッドの製造方法を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図7】ラインヘッドの製造方法を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図8】ラインヘッドの製造方法を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図。
【図9】ノズルユニットの配置の変形例を示す模式平面図。
【図10】ノズルユニットの配置の変形例を示す模式平面図。
【図11】ノズルユニットの配置の変形例を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0023】
<記録装置の構成>
図1は、ラインヘッドを備えた記録装置としての液体吐出装置(インクジェット式記録装置)の構成を示す模式図である。以下、液体吐出装置の構成を、図1を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、液体吐出装置10は、記録用紙11をプラテン12上に搬送する搬送ローラー13と、搬送ローラー13を回転駆動するステップモーター14と、ガイドレール15により記録用紙11の搬送方向(第1方向)に対して直角方向に移動可能に取り付けられ搬送された記録用紙11にインク滴を吐出するラインヘッド20と、記録用紙11の搬送方向に対して直角方向にラインヘッド20を振動させる振動素子30(図3、図4参照)と、装置全体をコントロールするコントローラー40とを備える。
【0025】
振動素子30は、例えば、PZTなどの圧電素子(電歪振動子)により形成されており、ラインヘッド20に取り付けられている。したがって、振動素子30を振動させることにより、ラインヘッド20をガイドレール15に沿って記録用紙11の搬送方向に対して直角方向に振動させることができる。
【0026】
コントローラー40は、CPU41を中心としたマイクロプロセッサーとして構成されており、CPU41の他に、各種処理プログラムを記憶するROM42と、データを一時的に記憶するRAM43と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリー44と、外部機器と情報のやり取りを行なうインターフェイス(I/F)45と、図示しない入出力ポートとを備える。
【0027】
RAM43には、印刷バッファー領域が設けられており、この印刷バッファー領域には、ユーザーPC46からインターフェイス(I/F)45を介して受信した印刷用データを記憶することができるようになっている。コントローラー40には、操作パネル47からの各種操作信号などが入力ポートを介して入力されており、コントローラー40からは、ラインヘッド20への駆動信号やステップモーター14への駆動信号、操作パネル47への出力信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0028】
なお、操作パネル47は、ユーザーからの各種の指示を入力すると共に状態を表示出力するためのデバイスであり、図示しないが、各種の指示に対応する文字や図形または記号が表示されるディスプレイやユーザーが各種操作を行なうためのボタン類が設けられている。
【0029】
<ラインヘッドの構成>
図2は、ラインヘッドの構造を示す模式平面図である。図2(a)は、第1基板としてのベースプレートとノズルユニットとを組み合わせた状態を示す模式平面図である。図2(b)は、ベースプレートの構造を示す模式平面図である。図2(c)は、ノズルユニットの構造を示す模式平面図である。以下、ラインヘッドの構造を、図2(a)〜図2(c)を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、例えば、3色のインクを用いる場合のノズルの配置を示している。
【0030】
図2に示すように、ラインヘッド20は、ベースプレート21と、このベースプレート21に並べて固定された複数のノズルユニット22とを備えている。
【0031】
ベースプレート21としては、例えば、ガラスなどの透明基板が挙げられる。ベースプレート21には、インクを吐出するための第1ノズル孔23が複数形成されている。具体的には、第1方向である搬送方向に対して傾斜するように並列して、複数の第1ノズル孔23からなるノズル列が複数設けられている。更に、ベースプレート21には、複数のノズルユニット22を接合する際に用いるアライメントマーク24が形成されている。
【0032】
また、第1ノズル孔23及びアライメントマーク24は、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、ベースプレート21に形成されている。フォトリソグラフィ法を用いることにより、第1ノズル孔23及びアライメントマーク24の位置精度を向上させることができる。具体的には、例えば、位置精度を0.5μm以下に抑えることができる。
【0033】
ノズルユニット22は、インクを吐出させるものであり、ノズル列毎に配置されている。また、ノズルユニット22は、インクを吐出する部分である複数の第2ノズル孔25が形成された第2基板としてのノズルユニットプレート26(図3、図4参照)を有する。ノズルユニットプレート26は、例えば、シリコン基板やガラス基板などである。
【0034】
なお、ノズルユニット22がベースプレート21に接合された際には、第2ノズル孔25と第1ノズル孔23が連通するようになっている。また、ノズルユニット22には、ノズルユニット22とベースプレート21とを接合する際に用いるアライメントマーク27が形成されている。
【0035】
このようなノズルユニット22がベースプレート21に複数並べられることにより、記録用紙11の全幅に亘ってノズル孔23,25が配列されることになる。ラインヘッド20は、ベースプレート21のアライメントマーク24を基準にノズルユニット22のアライメントマーク27を合わせて配置することにより、高画質印字を可能にしている。
【0036】
図3は、図2に示すラインヘッドのA部の構造を模式的に示す拡大斜視図である。図4は、図3に示すラインヘッドのB−B'線に沿う模式断面図である。以下、ラインヘッドの構造を、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0037】
図3及び図4に示すラインヘッド20は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の色のうちの一色と対応するラインヘッド20の構造を示す図である。なお、他の色に対応するラインヘッド20の構造も同様となっている。
【0038】
ラインヘッド20を構成するノズルユニット22は、ノズルユニットプレート26とアクチュエーター22aとを有する。アクチュエーター22aは、振動板31と隔壁32とを有し、ノズルユニットプレート26と振動板31とによって隔壁32を挟み込んでいる。更に、アクチュエーター22aは、第2ノズル孔25の各々に連通したインク圧力室33を備え、各インク圧力室33の圧力を圧電素子(振動素子30)を用いて変化させ、インクを吐出する構造を有している。また、インク圧力室33は、大容量の共通インク室34を介して相互につながっており、共通インク室34にはインク供給源(図示せず)からインクが供給される構造を有している。
【0039】
ノズルユニット22の上部には、例えば、溶媒に染料または顔料を含有したシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ35(図1参照)が配置されている。そして、インクカートリッジ35から供給される各色インクに対応するインク滴36が、第2ノズル孔25から第1ノズル孔23を通って吐出できるようになっている。
【0040】
なお、ラインヘッド20からインク滴36を吐出させる手法としては、圧電素子(ピエゾ素子)に電圧を作用させることによりこの圧電素子を変形させてインク滴36を吐出するピエゾ方式や、ヒーターなどの発熱抵抗体に電圧を作用させてインクを過熱させることにより気泡を発生させこの気泡によりインクを加圧してインク滴36を吐出するサーマルインクジェット方式などを用いることができる。
【0041】
各ベースプレート21の複数の第1ノズル孔23は、例えば、0.2mmの間隔(ピッチ)をもって一直線状に形成されており、それらの第1ノズル孔23の右端と左端の間の距離は、記録用紙11の幅よりもやや大きい。そして、各インク圧力室33の振動板31を挟んだ上側には、第1電極37、ピエゾ素子38、および第2電極39がそれぞれ積層されている。
【0042】
図4に示すように、ベースプレート21の第1ノズル孔23の断面形状は、例えば、異なる傾斜を有する二段のテーパー孔23a,23bとなっている。第1ノズル孔23と連通する第2ノズル孔25の孔径は、第1ノズル孔23の孔径より大きくなっている。
【0043】
このように、第1ノズル孔23をインクが吐出する正規の孔径で形成し、第2ノズル孔25を第1ノズル孔23より大きく設定することにより、ベースプレート21とノズルユニット22とを組み合わせた際の位置ずれ(合わせ精度)が許容でき、吐出量などの変化に影響を与えることを抑えることができる。
【0044】
振動板31の近傍には、インクカートリッジ35と繋がった孔51が設けられている。インクカートリッジ35の各色のインクパック(図示せず)から、孔51を介して共通インク室34へインクを供給した上で、ピエゾ素子38へ両電極37,39から電圧を印加すると、ピエゾ素子38の伸縮による振動板31の振動を受けてインク圧力室33の内圧が変化し、そのインク圧力室33に貯留されているインクがノズル孔23,25からインク滴36として吐出される。
【0045】
<ラインヘッドの製造方法>
図5〜図8は、ラインヘッドの製造方法を工程順に示す模式図である。(a)は、ラインヘッドの製造方法を示す模式平面図である。(b)は、(a)に示すラインヘッドのC−C'線に沿う模式断面図である。以下、ラインヘッドの製造方法を、図5〜図8を参照しながら説明する。
【0046】
まず、図5に示すように、ベースプレート21となる前駆体プレート21aを準備する。前駆体プレート21aとしては、例えば、透明基板であるガラス基板が挙げられる。また、ガラス基板以外のものとしては、なるべく熱膨張係数が合うものが好ましく、例えば、樹脂やシリコン系の材料であってもよい。透明の定義としては、可視光領域以外でも装置構造上判別できる領域であれば可とする。
【0047】
次に、図6に示すように、前駆体プレート21aの縁以外の部分を、ベースプレート21の厚みに形成する。具体的には、例えば、フッ酸などのエッチング液を用いて、前駆体プレート21aをエッチングする。また、エッチング以外の方法として、機械加工によってベースプレート21の厚みになるように形成するようにしてもよい。
【0048】
これにより、前駆体プレート21bの縁は原料のままの厚みに残り、それ以外の部分の厚みはベースプレート21の厚みに薄くなる。その結果、前駆体プレート21bの強度が著しく低下することを抑えることができる。薄くなった部分のベースプレート21の厚みは、例えば、60μm〜70μm程度である。
【0049】
次に、図7に示すように、前駆体プレート21b(図6参照)の掘り込まれた部分に第1ノズル孔23を形成する(第1ノズル孔形成工程)。まず、第1ノズル孔23の一段目のテーパー孔23a(吐出側)となる部分に、第1開口孔を有する第1レジストパターンを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。次に、第1レジストパターンをマスクとして、等方性のドライエッチングを行う。これにより一段目のテーパー孔23aが形成される。このテーパー孔23aの吐出口の径は、例えば、20μmである。
【0050】
次に、第1レジストパターンを除去し、フォトリソグラフィ技術を用いて、二段目のテーパー孔23bとなる部分に、第2開口孔を有する第2レジストパターンを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する(第1ノズル孔形成工程)。そして、この第2レジストパターンをマスクとして、等方性のドライエッチングを行う。第1開口孔と第2開口孔とはエッチングレートが異なっており、これにより、二段のテーパー孔23a,23bを有する第1ノズル孔23が形成される。
【0051】
このように、ベースプレート21の第1ノズル孔23を、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することにより、第1ノズル孔23間の位置精度を向上させることができる。その後、ノズルユニット22を構成するノズルユニットプレート26に第2ノズル孔25を形成し(第2ノズル孔形成工程)、ノズルユニットプレート26とアクチュエーター22aとを組み合わせる(ノズルユニット形成工程)。
【0052】
次に、図8に示すように、ベースプレート21とノズルユニット22とを陽極接合する(接合工程)。まず、ベースプレート21及びノズルユニット22に形成されたアライメントマーク24,27を基準に互いの位置合わせを行う。
【0053】
具体的には、ベースプレート21に形成されたアライメントマーク24の位置を基準に、ノズルユニット22に形成されたアライメントマーク27の位置が一致するか、例えば、ノズルユニット22を介してCCDカメラや顕微鏡などの光学系を用いて確認しながら位置合わせを行う。
【0054】
なお、CCDカメラを用いて、撮影されたアライメントマーク24,27などの画像を画像処理することにより、ベースプレート21とノズルユニット22とを自動的に位置合わせさせるようにしてもよい。
【0055】
次に、位置合わせが行われたベースプレート21とノズルユニット22とを、例えば、380℃に加熱し、ノズルユニット22を陽極、ベースプレート21を陰極に接続し、800Vの電圧を加えることで陽極接合する。
【0056】
これにより、第1ノズル孔23と第2ノズル孔25とが連通してノズル孔23,25が形成される。また、第2ノズル孔25の径を第1ノズル孔23の径より大きく設定することにより、ベースプレート21とノズルユニット22とを組み合わせた際の位置ずれ(合わせ精度)が許容でき、吐出量などの変化に影響を与えることを抑えることができる。
【0057】
以上詳述したように、ラインヘッド20、ラインヘッド20の製造方法、及び記録装置によれば、以下に示す効果が得られる。
【0058】
(1)本実施形態のラインヘッド20によれば、ベースプレート21上にノズルユニット22を配置するときには、ベースプレート21に設けられた第1ノズル孔23を基準として、第1ノズル孔23に第2ノズル孔25が連通するようにノズルユニット22を位置決めすればよいので、ノズルユニット22の位置決めにおいて高い精度が要求されずに済む。言い換えれば、ベースプレート21における第1ノズル孔23の位置精度を確保すれば、ノズルユニット22の位置精度に関わらず、高い位置精度でインク滴36を吐出可能なラインヘッド20を提供できる。
【0059】
(2)本実施形態のラインヘッド20によれば、第2ノズル孔25の孔径が第1ノズル孔23の孔径よりも大きいので、ベースプレート21にノズルユニット22を配置した際の位置ずれを許容することができる。言い換えれば、第2ノズル孔25の位置が正規の位置からずれた場合でも、例えば、第2ノズル孔25から第1ノズル孔23にインクを送ることができる。
【0060】
(3)本実施形態のラインヘッド20の製造方法によれば、ベースプレート21とノズルユニット22とを接合した際、フォトリソグラフィ法を用いて形成したベースプレート21の第1ノズル孔23の位置が吐出する位置の基準となるので、ノズルユニット22間でノズル孔の位置合わせする場合と比較して、第1ノズル孔23と第1ノズル孔23との位置精度を向上させることができる。
【0061】
(4)本実施形態の記録装置によれば、上述したラインヘッド20を備えているので、ノズル間の位置精度を向上させることができ、印字速度を高めると共に印字品質を向上させることが可能な記録装置(液体吐出装置10)を提供することができる。
【0062】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0063】
(変形例1)
上記したように、ベースプレート21に対するノズルユニット22の配置パターンは、図2に示すような配置形態に限定されず、例えば、図9〜図11に示すような配置であってもよい。図9〜図11は、ノズルユニット122(122a,122b),222(222a,222b),322(322a,322b,322c)の配置形態の変形例を示す模式平面図である。図9に示すラインヘッド110は、2色の場合のときのノズルユニット122を配置したパターンである。具体的には、2色のノズルユニット122a,122bを交互に配置すると共に、ベースプレート121に対して傾斜させて配置している。これによれば、図2に示すラインヘッド20に比べて色の再現性が低下するものの、高精細に印刷することができる。
【0064】
図10に示すラインヘッド210は、2色のノズルユニット222a,222bをベースプレート221の長辺に対して平行に配置したパターンである。具体的には、2色のノズルユニット222a,222bを交互に配置している。これによれば、上述した図9に示すラインヘッド110に比べて、ノズル孔23,25のピッチ間隔が広がり精細度が低下するものの、少ないノズルユニット222a,222bで省スペース化が可能となるラインヘッド210を提供することができる。
【0065】
図11に示すラインヘッド310は、3色のノズルユニット322a,322b,322cをベースプレート321の長辺に対して平行に配置したパターンである。具体的には、3色のノズルユニット322a,322b,322cを順に繰り返し配置している。これによれば、上述した図10に示すラインヘッド210に比べて、面積が広くなるものの、色の再現性を向上させることができる。
【0066】
(変形例2)
上記したように、第1ノズル孔の断面形状は、二段のテーパー形状になっていることに限定されず(図4参照)、ストレート部分を含む形状であってもよい。例えば、インクを吐出する側のノズルの部分がストレートになっていることにより、インクの流れる方向を安定させることが可能となり、インクを狙った位置に吐出させることができる。形成方法としては、例えば、異方性エッチングによって垂直方向にストレート孔を貫通させた後に、等方性エッチングによってテーパー形状を途中まで開けることによって形成することができる。
【0067】
(変形例3)
上記したように、ピエゾ素子を用いてインクを吐出させる方法に限定されず、例えば、静電方式やサーマル方式、その他の方法を用いて吐出させるようにしてもよい。
【0068】
(変形例4)
上記したように、アライメントマーク24,27を形成してベースプレート21とノズルユニット22との位置合わせをすることに代えて、例えば、第1ノズル孔23や第2ノズル孔25の一部をアライメントマークとして用いて互いの位置合わせをするようにしてもよい。これによれば、アライメントマーク24,27の形成工程を省略することができる。
【符号の説明】
【0069】
10…液体吐出装置、11…記録用紙、12…プラテン、13…搬送ローラー、14…ステップモーター、15…ガイドレール、20,110,210,310…ラインヘッド、21,121,221,321…第1基板としてのベースプレート、21a,21b…前駆体プレート、22,122,122a,122b,222a,222b,322a,322b,322c…ノズルユニット、22a…アクチュエーター、23…第1ノズル孔、23a,23b…テーパー孔、24…アライメントマーク、25…第2ノズル孔、26…第2基板としてのノズルユニットプレート、27…アライメントマーク、30…振動素子、31…振動板、32…隔壁、33…インク圧力室、34…共通インク室、35…インクカートリッジ、36…インク滴、37…第1電極、38…ピエゾ素子、39…第2電極、40…コントローラー、41…CPU、42…ROM、43…RAM、44…フラッシュメモリー、45…インターフェイス、46…ユーザーPC、47…操作パネル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1ノズル孔を有する第1基板と、
前記第1基板上に複数配置され、前記複数の第1ノズル孔のうち対応する第1ノズル孔と連通する第2ノズル孔と、前記第2ノズル孔毎に設けられたアクチュエーターと、を有するノズルユニットと、
を備えることを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のラインヘッドであって、
前記第1基板と前記ノズルユニットとが接する部分において、前記第2ノズル孔の径が前記第1ノズル孔の径より大きいことを特徴とするラインヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のラインヘッドであって、
前記ノズルユニットは、前記第1基板における前記複数の第1ノズル孔からなるノズル列毎に設けられていることを特徴とするラインヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のラインヘッドであって、
前記ノズル列は、第1方向に対して傾斜するように並列して前記第1基板上に複数配置されていることを特徴とするラインヘッド。
【請求項5】
第1基板に複数の第1ノズル孔をフォトリソグラフィ法を用いて形成する第1ノズル孔形成工程と、
前記複数の第1ノズル孔のうち対応する第1ノズル孔と連通する第2ノズル孔を第2基板に複数形成する第2ノズル孔形成工程と、
前記第2ノズル孔毎に対応して前記第2基板にアクチュエーターを組み合わせてノズルユニットを形成するノズルユニット形成工程と、
前記第1基板と前記ノズルユニットとを陽極接合によって接合する接合工程と、
を有することを特徴とするラインヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のラインヘッドの製造方法であって、
前記接合工程は、前記複数の第1ノズル孔の一部を前記第1基板のアライメントマークとして用いることを特徴とするラインヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のラインヘッドを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項1】
複数の第1ノズル孔を有する第1基板と、
前記第1基板上に複数配置され、前記複数の第1ノズル孔のうち対応する第1ノズル孔と連通する第2ノズル孔と、前記第2ノズル孔毎に設けられたアクチュエーターと、を有するノズルユニットと、
を備えることを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のラインヘッドであって、
前記第1基板と前記ノズルユニットとが接する部分において、前記第2ノズル孔の径が前記第1ノズル孔の径より大きいことを特徴とするラインヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のラインヘッドであって、
前記ノズルユニットは、前記第1基板における前記複数の第1ノズル孔からなるノズル列毎に設けられていることを特徴とするラインヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のラインヘッドであって、
前記ノズル列は、第1方向に対して傾斜するように並列して前記第1基板上に複数配置されていることを特徴とするラインヘッド。
【請求項5】
第1基板に複数の第1ノズル孔をフォトリソグラフィ法を用いて形成する第1ノズル孔形成工程と、
前記複数の第1ノズル孔のうち対応する第1ノズル孔と連通する第2ノズル孔を第2基板に複数形成する第2ノズル孔形成工程と、
前記第2ノズル孔毎に対応して前記第2基板にアクチュエーターを組み合わせてノズルユニットを形成するノズルユニット形成工程と、
前記第1基板と前記ノズルユニットとを陽極接合によって接合する接合工程と、
を有することを特徴とするラインヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のラインヘッドの製造方法であって、
前記接合工程は、前記複数の第1ノズル孔の一部を前記第1基板のアライメントマークとして用いることを特徴とするラインヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のラインヘッドを備えることを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−143956(P2012−143956A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3722(P2011−3722)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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