説明

ラクトバチルスラムノサス及び体重管理

本発明は一般的に、肥満の分野に関する。具体的には、本発明は、肥満の治療のためのプロバイオティクスの使用に関する。本発明の一実施形態は、体重管理の支援、体重減少の促進及び/又は肥満の治療のための組成物を調製するためのラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は一般的に、肥満の分野に関する。具体的には、本発明は、体重管理の支援、体重減少の促進及び/又は肥満の治療のためのプロバイオティクスの使用に関する。
【0002】
ここ数十年、肥満の有病率は世界中で増加し、大流行してきた。世界中で約10億人が体重過剰又は肥満、即ち、死亡率、移動コスト及び経済コストを増加させる状態である。エネルギー摂取がエネルギー消費より多く、過剰なエネルギーが脂肪組織における脂肪として主に蓄えられたとき、肥満が発症する。体重減少及び体重増加の予防は、エネルギー摂取又はバイオアベイラビリティーの減少、エネルギー消費の増加及び/又は脂肪としての貯蔵の減少によって実現することができる。肥満は、糖尿病、アテローム性動脈硬化、変性疾患、気道疾患及びいくつかの癌を含む一連の慢性疾患に関与するので、健康への重大な脅威となる。
【0003】
近年、腸管内菌叢の改変が肥満に関与してきた。これらの変化は、肥満マウスにおいて、腸管内細菌叢の代謝能力に影響を及ぼし、食餌からエネルギーを回収する能力の増大を引き起こすことが示された(Turnbaugh PJ,Ley RE,Mahowald MA,Magrini V,Mardis ER,Gordon JI.「An obesity−associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest」Nature.2006;Ley RE、Turnbaugh PJ、Klein S、Gordon JI「Microbial ecology:human gut microbes associated with obesity」Nature.2006)。腸管内細菌叢のこのような改変は、肥満の病態生理に関与すると考えられている。食品又は栄養補助食品中に存在する有益な細菌、プロバイオティクスは、腸管内菌叢を改変することが知られている(Fuller R & Gibson GR.「Modification of the intestinal microflora using probiotics and prebiotics.」Scand J.Gastroenterol.1997)。
【0004】
国際公開第2006/019222号パンフレットは、t10c12−オクタデカジエノン酸を過剰産生する、体脂肪抑制活性を備えたラクトバチルスラムノサスPL60 KCCM−10654P株を開示している。
【0005】
しかし、t10c12−オクタデカジエノン酸の過剰産生は、t10c12−オクタデカジエノン酸に敏感に反応する患者にとっては問題となり得る。
【0006】
米国特許第7001756号明細書及び中国特許第1670183号明細書は、肥満の治療に有効であることが発見された単離微生物株、ラクトバチルスラムノサスGM−020を提供している。
【0007】
この従来技術に基づいて、本発明の目的は、t10c12−オクタデカジエノン酸の過剰発現を利用せず、及び/又は肥満を治療するために使用でき、従来技術の株の欠点を克服する魅力的な効果を示す他のプロバイオティック細菌を同定することである。
【0008】
この目的は、請求項1を使用することによって実現する。
【0009】
本発明者らは、予期せぬことに、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724株又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007株がこの目的を実現することを発見した。
【0010】
したがって、本発明の一実施形態は、動物における肥満を治療する組成物を調製するためのラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の使用である。
【0011】
本発明の他の実施形態は、体重減少を促進する組成物を調製するためのラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の使用である。
【0012】
さらに、本発明の他の実施形態は、体重管理を支援する組成物を調製するためのラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の使用である。
【0013】
本発明の枠組みで記載された組成物は、長期適用に特に有効である。本発明者らは、例えば、動物モデルで本発明で記載された組成物によって治療したマウスが対照マウスよりも体重増加が著しく少ないことを示した。この効果は、組成物投与が長ければ長いほど更に顕著であった。実験は約2カ月続けられ、時間と共に効果の増大が認められた。
【0014】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間及び/又は少なくとも8週間投与するべきである。
【0015】
この明細書では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0016】
「動物」は、ヒトを含む動物を意味する。
【0017】
「ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724」という用語は、該細菌、該細菌を有する細胞増殖培地又はラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724が培養された細胞増殖培地を含むことを意味する。
【0018】
「ラクトバチルスラムノサスNCC 4007」という用語は、該細菌、該細菌を有する細胞増殖培地又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007が培養された細胞増殖培地を含むことを意味する。
【0019】
「肥満度指数」又は「BMI」は、kgで表された体重をメートルで表された身長の2乗で除した比を意味する。
【0020】
「体重過剰」は、BMIが25〜30の間である成人と定義される。
【0021】
「肥満」は、動物、特にヒト及びその他の哺乳動物の脂肪組織に蓄えられた天然のエネルギー貯蔵量が、特定の健康状態又は死亡率増加と関連する点まで増加した状態である。「肥満体」は、BMIが30を上回る成人と定義される。
【0022】
「プロバイオティック」とは、宿主の健康又は幸福に有利な影響を有する微生物細胞調製物又は微生物細胞の成分を意味する(Salminen S、Ouwehand A.Benno Y.ら「Probiotics:how should they be defined」Trends Food Sci.Technol.1999:10 107〜10)。
【0023】
「プレバイオティック」は、腸内でのプロバイオティック細菌の増殖促進を企図する食品物質を意味する。
【0024】
「食品等級細菌」は、使用され、食品中での使用に安全と一般的に見なされた細菌を意味する。
【0025】
本発明の文脈で「体重減少」とは、全体重の減少である。体重減少は、例えば、体力、健康及び/又は外見を改善するための努力における全体重の減少を意味する。
【0026】
「体重管理」又は「体重維持」は、全体重の維持に関する。例えば、体重管理は、正常と見なされるBMI領域18.5〜25の維持に関与してもよい。
【0027】
本発明の組成物はさらに、保護ハイドロコロイド(例えば、ガム、タンパク質、修飾澱粉)、結合剤、フィルム形成剤、カプセル化剤/材料、壁/シェル材料、マトリクス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸収剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、矯味剤、増量剤、ゲル化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤及び抗菌剤を含有することができる。組成物はまた、限定はしないが、水、任意の起源のゼラチン、植物性ガム、リグニンスルホン酸、タルク、糖類、澱粉、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、矯臭剤、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などを含む従来の医薬品添加物及び補助剤、賦形剤及び希釈剤を含有することができる。いずれの場合も、このような他の成分は、対象とするレシピエントへの適合性を考慮して選択される。
【0028】
この組成物は栄養的に完全な調製乳であってもよい。
【0029】
本発明の組成物は、タンパク質源を含んでもよい。
【0030】
任意の適切な食事性タンパク質、例えば、動物性タンパク質(例えば、ミルクタンパク質、肉タンパク質及び卵タンパク質)、植物性タンパク質(例えば、ダイズタンパク質、コムギタンパク質、コメタンパク質及びマメタンパク質)、遊離アミノ酸の混合物又はそれらの組み合わせを使用することができる。カゼイン及びホエイなどのミルクタンパク質及びダイズタンパク質が特に好ましい。
【0031】
タンパク質は、完全であるか、又は加水分解されているか、又は完全なタンパク質と加水分解されたタンパク質の混合物であってもよい。例えば、牛乳アレルギーの発症の危険性があると考えられる動物には、部分的に加水分解したタンパク質(加水分解の程度2%〜20%)を供給することが望ましいことがある。加水分解したタンパク質が必要な場合、加水分解過程は、所望するように、当業界で知られているように実施することができる。例えば、ホエイタンパク質加水分解物は、1種又は複数のステップでホエイ画分を酵素的に加水分解することによって調製することができる。開始物質として使用したホエイ画分が実質的に乳糖を含まない場合、タンパク質は加水分解過程中にリシン保護がずっと少ないことがわかった。これによって、リシン保護の範囲を全リシンの約15質量%からリシンの約10質量%、例えば、リシンの約7質量%に低下させることができ、タンパク質源の栄養的品質は非常に改善される。
【0032】
この組成物はまた、炭水化物源及び脂肪源を含有することができる。
【0033】
組成物が脂肪源を含む場合、好ましくは、脂肪源は、組成物のエネルギーの5%〜40%、例えば、エネルギーの20%〜30%を供給する。適切な脂肪プロファイルは、カノーラ油、トウモロコシ油及び高オレイン酸ヒマワリ油のブレンドを使用して得ることができる。
【0034】
炭水化物源を組成物に添加することができる。
【0035】
炭水化物源は、好ましくは組成物のエネルギーの40%〜80%を供給する。任意の適切な炭水化物、例えば、スクロース、乳糖、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固形物、マルトデキストリン及びそれらの混合物を使用することができる。食物繊維も、所望するならば、添加することができる。食物繊維は、酵素によって消化されずに小腸を通過し、天然の充填剤及び緩下剤として機能を果たす。食物繊維は、可溶性又は不溶性であってもよく、一般的に、2種類のブレンドが好ましい。適切な食物繊維源には、ダイズ、マメ、オーツ麦、ペクチン、グアーガム、アラビアガム、フルクトオリゴ糖、ガラクト−オリゴ糖、シアリル乳糖及び動物のミルク由来のオリゴ糖が含まれる。好ましい繊維のブレンドは、イヌリンと短鎖フルクト−オリゴ糖との混合物である。好ましくは、繊維が存在する場合、繊維含量は、摂取される組成物の2〜40g/l、より好ましくは4〜10g/lの間である。
【0036】
組成物はまた、USRDAなどの政府機関の推奨にしたがって、微量元素及びビタミンなどの無機質及び微量栄養素を含有することができる。例えば、組成物は、1種又は複数の以下の微量栄養素を1日用量当たり所与の範囲で含有することができる。即ち、カルシウム300〜500mg、マグネシウム50〜100mg、リン150〜250mg、鉄5〜20mg、亜鉛1〜7mg、銅0.1〜0.3mg、ヨウ素50〜200μg、セレン5〜15μg、ベータカロテン1000〜3000μg、ビタミンC 10〜80mg、ビタミンB1 1〜2mg、ビタミンB6 0.5〜1.5mg、ビタミンB2 0.5〜2mg、ナイアシン5〜18mg、ビタミンB12 0.5〜2.0μg、葉酸100〜800μg、ビオチン30〜70μg、ビタミンD 1〜5μg、ビタミンE 3〜10μg。
【0037】
1種又は複数の食品等級乳化剤、例えば、モノ及びジ−グリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチン並びにモノ及びジ−グリセリドは、所望するならば組成物に組み込むことができる。同様に、適切な塩及び安定化剤を含めることもできる。
【0038】
組成物は、例えば、ミルク又は水で再構成するために粉末の形態で、好ましくは経口的に、又は経腸的に投与する。
【0039】
好ましくは、組成物は、粉末、例えば、貯蔵安定性粉末の形態で形成される。貯蔵安定性は、例えば、水分活性が0.2未満、例えば、0.19〜0.05の範囲、好ましくは0.15未満の組成物を形成することによって獲得することができる。
【0040】
水分活性又はaは、ある系における水のエネルギー状態の測定値である。これは、水の蒸気圧を同一温度での純水の蒸気圧で除することによって定義され、したがって、純粋な蒸留水の水分活性は正確に1である。
【0041】
前述した組成物は、任意の適切な方法で調製することができる。例えば、タンパク質、炭水化物源及び脂肪源を適切な割合で一緒にブレンドすることによって調製することができる。使用する場合、乳化剤をこの時点で含めることができる。ビタミン及び無機質はこの時点で添加することができるが、通常、熱分解を回避するために後で添加する。いかなる親油性ビタミン、乳化剤も、ブレンドする前に脂肪源に溶解することができる。次に、水、好ましくは逆浸透を行った水を混合して、液体混合物を形成することができる。水の温度は、成分の分散を助けるために約50℃〜約80℃であると便利である。液体混合物を形成するために、市販の液化装置を使用することができる。次いで、液体混合物を、例えば、2段階で均質化する。
【0042】
次に、液体混合物は細菌負荷を低下させるために、例えば、液体混合物を約80℃〜約150℃の範囲の温度に約5秒間〜約5分間迅速に加熱することによって、熱処理することができる。これは、蒸気噴射、オートクレーブによって、又は熱交換機、例えば、プレート熱交換機によって実施することができる。
【0043】
その後、液体混合物を約60℃〜約85℃、例えば、フラッシュ冷却によって冷却することができる。次に、例えば、2段階で、第1段階では約10MPa〜約30MPaで、第2段階では約2MPa〜約10MPaで、液体混合物を再度均質化することができる。均質化した混合物は、その後さらに冷却して、任意の熱感受性成分、例えば、ビタミン及び無機質を添加することができる。均質化した混合物のpH及び固形成分含有量は、この時点で適宜調節する。
【0044】
均質化した混合物を噴霧乾燥機又は凍結乾燥機などの適切な乾燥装置に移し、粉末に変換する。粉末の水分含量は、約5質量%未満であるべきである。
【0045】
ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007は適切な方法にしたがって培養し、組成物に添加するために、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって調製することができる。ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の適切な培養方法は、当業者には公知である。或いは、細菌調製物は、人工栄養及び調製粉乳などの食品に添加するために適した形態で既に調製されて、クリスチャンハンセン(Christian Hansen)社及びダニスコ(Danisco)社などの専門の供給業者から入手できる。プロバイオティック細菌は、適切な量、好ましくは10〜1012cfu/g粉末の間で、より好ましくは10〜1012cfu/g粉末の間で調製乳に添加することができる。
【0046】
本発明の一実施形態では、本発明を使用することによって調製された組成物で治療した動物は、少なくとも2歳である。この年齢制限は特にヒトに適用される。例えば、本発明を使用することによって調製された組成物で治療した動物がイヌ又はネコの場合、イヌ又はネコは少なくとも4カ月齢であるべきである。
【0047】
本発明の一実施形態では、この組成物は医薬品である。医薬品として、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の投薬量は、医師の推奨にしたがって注意深く調節することができる。
【0048】
本発明によって調製された組成物はまた、食品であってもよい。食品として、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の有益な効果は、だれでも利用可能である。肥満の治療は、非常に早期の段階で開始が可能である。さらに、食品において、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を、摂取することが更により好まれる。本発明に適用できる食品の例としては、ヨーグルト、ミルク、フレーバーミルク、アイスクリーム、インスタントデザート、例えば、ミルク若しくは水で再構成する粉末、チョコレートミルク飲料、麦芽飲料、インスタント食品、ヒト用インスタント食品若しくは飲料又はペット若しくは家畜用を企図した完全食若しくは部分食を形成する食品組成物がある。
【0049】
したがって、一実施形態では、本発明による組成物は、ヒト、ペット又は家畜用を企図した食品である。特に、組成物は、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、家禽又はヒトからなる群から選択された動物用を企図しており、好ましい実施形態では、組成物は成体種、特にヒト成人向けに企図した食品である。
【0050】
本発明の組成物はまた、その他の少なくとも1種のその他の食品等級細菌又は酵母を含むことができる。食品等級の細菌はプロバイオティック細菌であり、好ましくは乳酸菌、ビフィドバクテリア、プロピオニバクテリア又はそれらの混合物からなる群から選択される。プロバイオティック細菌は、プロバイオティック特性が確立された任意の乳酸菌又はビフィドバクテリアであってもよい。例えば、プロバイオティック細菌はまた、ビフィズス菌生成性腸管内菌叢の発生を促進することができ得る。適切なプロバイオティックビフィドバクテリウム種には、とりわけデンマークのクリスチャンハンセン社によって商標Bb12として販売されているビフィドバクテリウム ラクティス CNCM I−3446、日本の森永乳業株式会社によって商標BB536として販売されているビフィドバクテリウム ロングム ATCC BAA−999、ダニスコ社によって商標Bb−03として販売されているビフィドバクテリウム ブレーベの株、森永によって商標M−16Vとして販売されているビフィドバクテリウム ブレーベの株、及びローゼル(ラルマン)社によって商標R0070として販売されているビフィドバクテリウム ブレーベの株が含まれる。適切なプロバイオティック乳酸菌及びビフィドバクテリアの混合物を使用してもよい。
【0051】
食品等級酵母として、以下の、例えば、サッカロマイセス セレビシエ及び/又はサッカロマイセス ブラウディを使用することができる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、この組成物は少なくとも1種のプレバイオティックをさらに含有する。プレバイオティックは、腸内におけるある種の食品等級細菌、特にプロバイオティック細菌の増殖を促進することができ、したがって、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の効果を増強できる。さらに、いくつかのプレバイオティックは、例えば、消化に肯定的な影響を及ぼす。
【0053】
好ましくは、プレバイオティックは、オリゴ糖からなる群から選択され、所望により、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ダイズ及び/又はイヌリン、食物繊維、又はそれらの混合物を含有する。
【0054】
本発明の1つの利点は、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007はいずれも生きた細菌並びに不活性化細菌種として有効である。したがって、生きた細菌の存在が不可能な条件でも、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の効果は消滅しない。
【0055】
しかし、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の少なくとも一部が組成物中で生きていることが好ましく、腸内へ生きて到達することが好ましい。このようにして、それらの菌は腸でコロニーを形成し、増殖によって効果を増大することができる。
【0056】
しかし、特殊な滅菌食品又は医薬品の場合、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007は組成物中で生きていないことが好ましいこともある。したがって、本発明の一実施形態では、少なくとも一部のラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007は組成物中で生きていない。
【0057】
ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007は、いかなる濃度でも有効である。もしラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007が生きて腸に到達するならば、1個の細菌でも、コロニー形成及び増殖によって、強力な効果を十分に実現できる。
【0058】
しかし、医薬品の場合、一般的に、医薬品の1日用量は、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を10cfu〜1012cfuの間で含むことが好ましい。ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の特に適切な1日用量は、10〜1011コロニー形成単位(cfu)であり、より好ましくは10〜1010cfuである。
【0059】
不活性化ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の場合、一般的に、医薬品の1日用量は、ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を10〜1012細胞の間で含むことが好ましい。ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の特に適切な1日用量は、10〜1011細胞であり、より好ましくは10〜1010細胞である。
【0060】
食品組成物の場合、一般的に、食品組成物の乾燥重量1g当たりラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を10〜1012cfuの間で含むことが好ましい。ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の特に適切な量は、食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1011cfuであり、より好ましくは食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1010cfuである。
【0061】
不活性化ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の場合、一般的に、食品組成物は、食品組成物の乾燥重量1g当たりラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を10〜1012細胞の間で含むことが好ましい。ラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の特に適切な量は、食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1011細胞であり、より好ましくは食品組成物の乾燥重量1g当たり10〜1010細胞である。
【0062】
組成物におけるラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の1日用量は、治療する特定の個人又は動物に左右される。重要と考えられる要素には、年齢、体重、性別及び健康状態が含まれる。
【0063】
例えば、組成物中のラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の一般的な1日用量は、1日当たり10〜1012cfu及び/又は細胞の範囲であり、好ましくは1日当たり10〜1010cfu及び/又は細胞であり、好ましくは1日当たり10〜10cfu及び/又は細胞である。
【0064】
本発明によるラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を含む組成物の他の用途は、体重減少及び/又は体重維持を支援することである。
【0065】
適切な体重、特に、体内の脂肪の許容できる重量割合の確立及び維持は、代謝障害の治療又は予防の重要な段階であるので、本発明によるラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を含む組成物の他の用途は、代謝障害を治療又は予防することである。
【0066】
特に、本発明によるラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を含む組成物は、糖尿病、高血圧及び/又は心臓血管疾患の治療又は予防に使用することができ、したがって、いくつかの国々、特に先進国における今日の人々の幸福に大きく寄与することができる。
【0067】
本明細書で記載したいかなる特性も、開示した本発明の範囲から逸脱することなく自由に一緒にすることができることは、当業者には明らかである。
【0068】
本発明の他の特性及び利点は、以下の実施例及び図面から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】CGMCC 1.3724株を投与されたラットは、対照群と比較して体重増加が著しく減少している(11%)ことを示した図である。体重増加は、時間に対して測定する。
【図2】図2は、図1のマウスの脂肪重量増加を示した図である。
【図3】図1のマウスによるグルコース負荷試験の結果を示した図である。
【図4】肥満のマウス及び痩せたマウスの体重増加を経時的に示した図である。
【図5】肥満のマウス及び痩せたマウスの脂肪重量増加を示した図である。
【実施例】
【0070】
実施例1
固形飼料を与えられた6〜8週齢の雄肥満ズッカ−ラット(n=12)を1日当たりラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724 10〜1010cfuで60日間処置した。MRS培地(deMan Rogosa Sharpe)で希釈したラクトバチルスラムノサスNCC−4007バイオマスをNaCl9/1000を含有する飲用溶液に投与し、対照群にはプロバイオティック調製物中に存在するMRS培地の対応量を含む生理食塩水溶液を投与した。体重は試験期間中追跡し、NMRによって評価した体組成は、処置前及び終了時に測定した。グルコース負荷は、処置終了時に、16時間絶食したラットに20%D−グルコース溶液を腹腔内注射によって投与し、注射して0、15、30、60及び120分後に尾静脈から血液試料を採取することから構成される腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)を実施することによって評価した。その後、グルコースは、様々な時点で測定した。
【0071】
図1は、CGMCC 1.3724株を投与されたラットは、対照群と比較して体重増加が著しく減少している(11%)ことを示した図である。
【0072】
体重増加に対する影響は、脂肪重量増加の低下と関連していた(図2)。
【0073】
これらの肥満ラットのグルコース負荷は、曲線下面積によって表されるように、CGMCC 1.3724株投与によって改善された(図3)。
【0074】
ラクトバチルスラムノサスNCC 4007による同一の実験では、類似の結果が得られた。
【0075】
実施例2
7〜8週齢の雄肥満ob/obマウス又は痩せたヘテロ接合体同腹仔ob/+マウスに固形飼料を与え、1日当たりラクトバチルスラムノサスNCC−4007 10〜1010cfuで60日間処置した。MRS培地で希釈したラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724バイオマスをNaCl9/1000を含有する飲用溶液に投与し、対照群はプロバイオティック調製物中に存在するMRS培地の対応量を含む生理食塩水溶液を投与された。体重は試験期間中追跡し、NMRによって評価した体組成は、処置前及び終了時に測定した。
【0076】
飲用溶液に溶かしてCGMCC1.3724を投与された肥満(ob/ob)及び痩せた(ob/+)マウスの両方の体重増加は、それぞれの対照群と比較して、それぞれ、37%及び22%低下した(図4)。
【0077】
CGMCC 1.3724株の投与は肥満マウスの脂肪重量増加の低下を誘導し、対照動物と比較して痩せたマウスでは程度は小さかった(図5)。
【0078】
ラクトバチルスラムノサスNCC 4007による同一の実験では、類似の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト及び/又は動物において体重減少及び/又は体重維持を支援する組成物を調製するためのラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007の使用。
【請求項2】
前記ヒトが少なくとも2歳であり、好ましくは成人であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物が医薬品又は食品であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が少なくとも1種のその他の食品等級細菌及び/又は酵母を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記食品等級細菌が、乳酸菌、ビフィドバクテリア、プロピオニバクテリア又はそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が少なくとも1種のプレバイオティックをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記プレバイオティックが、オリゴ糖からなる群から選択され、所望により、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ダイズ及び/又はイヌリン、食物繊維、又はそれらの混合物を含有することを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも一部のラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007が組成物中で生きていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
少なくとも一部のラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007が組成物中で生きていないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬品が、1日用量当たりラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を10〜1012cfuの間で含むか、或いは前記医薬品が1日用量当たりラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を10〜1012細胞の間で含むことを特徴とする、請求項3〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記食品が、食品組成物の乾燥重量の1g当たりラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を10〜1012cfuの間で含むか、或いは前記食品が食品組成物の乾燥重量の1g当たりラクトバチルスラムノサスCGMCC 1.3724及び/又はラクトバチルスラムノサスNCC 4007を10〜1012細胞の間で含むことを特徴とする、請求項3〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
肥満を治療するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
代謝障害を治療するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
前記代謝障害が、糖尿病、高血圧及び心臓血管疾患からなる群から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−535731(P2010−535731A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519417(P2010−519417)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059755
【国際公開番号】WO2009/021824
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】