説明

ラジエータサポート

【課題】ラジエータが上方へ大きく変位した直後の落下時の生じる異音及び振動を抑え、振動吸収性能の安定化及び耐久性の向上を図るもの。
【解決手段】取付孔4を有する車体側取付部材2と、車体側取付部材2に対向する支持面6に固定ピン7を有するラジエータ3との間に介在されるラジエータサポート10で、取付孔4に挿入される嵌合部16と、嵌合部16に設けられ取付孔4の内径より大きな外径の環状のフランジ部18と、嵌合部16に設けられ固定ピン7が挿入されるピン支持部20と、フランジ部18の内部を嵌合部16から径方向外方へ延びる金属製の補強部材12と、フランジ部18からラジエータ3の支持面6へ突出するストッパゴム部22とを備え、補強部材12と車体側取付部材2との間に配置された下層ゴム部17が補強部材12とラジエータ3の支持面6との間に配置された上層ゴム部19より肉厚に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータと、車体に設けられた車体側取付部材との間に介在されて、防振状態でラジエータを車体に支持させるラジエータサポートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるラジエータは、その下面に突設された固定ピンが、ラジエータの下方に設置された車体側取付部材の取付孔内に挿入され、車体側取付部材に対してラジエータサポートを介して弾性的に支持されている。これによって、ラジエータと車体との間の振動伝達が抑制された状態でラジエータが車体に取り付けられるようになっているのである。
【0003】
上記のようなラジエータと車体側取付部材との間に介在されるラジエータサポートには、従来から種々の構造のものがある。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、車体側取付部材の取付孔に嵌入される樹脂製の剛性外筒部材と、ラジエータの下面に突設された固定ピンが内部に嵌入される樹脂製の剛性内筒部材と、剛性外筒部材及び剛性内筒部材との間に介在させたゴム弾性体とで構成されるラジエータサポートが開示されている。また、下記特許文献2,3には、車体側取付部材の取付孔に嵌入される挿入部と、ラジエータの下面に突設された固定ピンが内部に嵌入される結合ホールとをゴム弾性体のみで形成したラジエータサポートが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたラジエータサポートでは、車体側取付部材に当接する剛性外筒部材が剛性の高い樹脂製で構成されているため、ラジエータが上方へ大きく変位した直後の落下時のようにラジエータサポートに大きな加振力が作用すると、剛性外筒部材が車体側取付部材に強く衝突し異音及び振動が発生する問題がある。
【0006】
また、特許文献2,3に開示されたラジエータサポートは、ゴム弾性体のみから構成されているため、剛性の高い樹脂材が車体側取付部材に直に接することがないものの、ラジエータサポートに大きな加振力が作用すると、ラジエータサポートにおいて車体側取付部材と当接する部分が過度に変形してしまい、有効に振動を吸収することができなかったり、ラジエータサポートの耐久性が悪化したりする問題がある。特許文献2,3に開示されたラジエータサポートでは、ゴム弾性体のゴム硬度を高くして剛性を高めることも考えられるが、このような場合であると、ゴム弾性体が滑らかに撓み変形せず振動を有効に吸収できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−175197号公報
【特許文献2】特開2006−8129号公報
【特許文献3】特開2000−38038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点を考慮してなされたものであり、ラジエータが上方へ大きく変位した直後の落下時に生じる異音及び振動を抑えることができ、しかも、振動吸収性能の安定化及び耐久性の向上を図ることができるラジエータサポートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るラジエータサポートは、取付孔を有する車体側取付部材と、前記車体側取付部材に対向する支持面に固定ピンを有するラジエータとの間に介在されるラジエータサポートにおいて、前記取付孔に挿入される嵌合部と、前記嵌合部の一端部に設けられ前記取付孔の内径より大きな外径をなす環状のフランジ部と、前記嵌合部の内方に設けられ前記固定ピンが挿入されるピン支持部と、前記フランジ部の内部を前記嵌合部から径方向外方へ向けて延びる金属製の補強部材と、前記フランジ部から前記ラジエータの支持面へ向けて突出するストッパゴム部とを備え、前記フランジ部において前記補強部材と前記車体側取付部材との間に配置された下層ゴム部が前記補強部材と前記ラジエータの支持面との間に配置された上層ゴム部より肉厚に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るラジエータサポートでは、フランジ部において車体側取付部材に当接する下層ゴム部が、ラジエータの支持面に対向する上層ゴム部より肉厚に設けられているため、金属製の補強部材によりラジエータサポートの剛性を高めて振動吸収性能の安定化と耐久性の向上を図りつつ、上方へ大きく変位した直後のラジエータの落下時に、肉厚に設けられた下層ゴム部が車体側取付部材に柔らかく衝突することとなり異音及び振動の発生を抑えることができる。
【0011】
また、本発明に係るラジエータサポートでは、下層ゴム部に補強部材へ向けて陥没する凹部が設けられてもよく、これにより、下層ゴム部が車体側取付部材に当接した際に下層ゴム部が滑らかに撓み変形することとなり、異音及び振動をより効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ラジエータが上方へ大きく変位した直後の落下時の生じる異音及び振動を抑えることができ、しかも、ラジエータサポートによる振動吸収性能の安定化及び耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るラジエータサポートの部分断面図である。
【図2】図1に示すラジエータサポートの平面図である。
【図3】図1に示すラジエータサポートの底面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図2のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態のラジエータサポート10は、図1に示すように、車体のフレームに固定された車体側取付部材2とラジエータ3との間に介在されて、ラジエータ3を車体側取付部材2に対して弾性的に支持するもので、金属製の補強部材12とこの補強部材12に加硫接着され補強部材12を覆うゴム弾性体14とから構成されている。
【0016】
車体側取付部材2は、円形状の取付孔4が穿設された金属板からなり、取付孔4の周縁部がラジエータ3から離れる方向へ延びる取付壁5が設けられている。車体側取付部材2と対向するラジエータ3の支持面6には車体側取付部材2へ向けて突出する固定ピン7が設けられている。なお、本明細書では、車体側取付部材2の上方からラジエータ3を取り付ける場合について説明し、車体側取付部材2よりラジエータ3が位置する方向(図1、図4及び図5の上方)を上方とし、その反対側を下方とする。
【0017】
ラジエータサポート10を構成するゴム弾性体14は、円筒状の嵌合部16と、環状のフランジ部18と、ラジエータ3の固定ピン7を支持するピン支持部20と、フランジ部18からラジエータ3の支持面6へ向けて突出するストッパゴム部22とを備え、嵌合部16、フランジ部18、ピン支持部20、及びストッパゴム部22の各部材が補強部材12を被覆するようにゴム材によって一体に形成されている。
【0018】
より詳細には、嵌合部16は、その外径が車体側取付部材2に穿設された取付孔4の内径より所定寸法だけ小さく設けられ、車体側取付部材2の上方より取付孔4に挿入される。嵌合部16の上端部には、嵌合部16の径方向外方へ突出するフランジ部18が設けられている。
【0019】
フランジ部18は、取付孔4の内径より大きな外径を有しており、車体側取付部材2の取付孔4に上方から嵌合部16を挿入すると、フランジ部18の下面が車体側取付部材2の取付孔4の外周縁部に当接する。
【0020】
嵌合部16及びフランジ部18の内部には上記の補強部材12が埋設されている。補強部材12は、軸方向に沿って嵌合部16の内部に埋設された筒部11と、筒部11の上端から径方向外方へ向けて延びフランジ部18の内部に埋設された鍔部13とを備え、全体として断面L字状をなしている。
【0021】
フランジ部18は、図1、図4及び図5に示すように、鍔部13の下側に位置し鍔部13と車体側取付部材2との間に配置された下層ゴム部17が、鍔部13の上側に位置し鍔部13とラジエータ3の支持面6との間に配置された上層ゴム部19より肉厚に設けられている。
【0022】
また、図3及び図5に示すように、フランジ部18の下層ゴム部17には、補強部材12へ(つまり、上方へ)向けて陥没する凹部24がフランジ部18の周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、8個)設けられている。
【0023】
凹部24は、凹部24の底部24aのゴム材の肉厚、つまり、底部24aから補強部材12の鍔部13まで距離が所定大きさ以上、一例として1mm以上になるように上方への陥没量が設定されている。凹部24の底部24aには、補強部材12へ繋がる穴部26が設けられている。
【0024】
フランジ部18の上層ゴム部19には、ラジエータ3の支持面6へ(つまり、上方へ)向けて突出するストッパゴム部22がフランジ部18の周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、6個)設けられている。上層ゴム部19の周縁部19aは角を丸めた形状に設けられており、この周縁部19aに上層ゴム部19の一部を切り欠き鍔部13の先端部を外部へ露出させる切欠部28がフランジ部18の周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、4個)設けられている。
【0025】
ピン支持部20は、嵌合部16の内方に同軸状に配置され、固定ピン7が上方から下方へ挿入される支持孔30を備えた円筒状をなしており、ピン支持部20の外周面が、嵌合部16の上端内周面から径方向内方に突出する連結ゴム部32によって連結されている。支持孔30の内周面には径方向内方へ突出する環状の凸部34が設けられており、支持孔30に挿入された固定ピン7の保持力を高めている。
【0026】
ピン支持部20の上端は、フランジ部18からラジエータ3の支持面6へ向けて上方に突出するストッパゴム部22よりも上方へ延び、固定ピン7の支持孔30に固定ピン7を挿入した状態では、ラジエータ3の支持面6が、フランジ部18に設けられたストッパゴム部22に当接せず、ストッパゴム部22から上方へ間隔をあけて配置される。
【0027】
本実施形態のラジエータサポート10は、補強部材12を加硫金型にセットした状態でゴム材を注入し補強部材12の外表面にゴム弾性体14を一体に加硫成形するが、このときゴムの注入圧によって補強部材12が浮き上がって成形不良となるのを防ぐため、補強部材12を加硫金型に設けたピンによって押さえ付けた状態でゴムを注入して加硫成形する。下層ゴム部17の凹部24の底面に設けられた穴部26及び上層ゴム部19の周縁部19aに設けられた切欠部28は、上記のように補強部材12の外表面にゴムを加硫成形の際に加硫金型に設けたピンによって形成される。
【0028】
以上のような本実施形態のラジエータサポート10は、嵌合部16が車体側取付部材2の取付孔4に上方より挿入されるとともに、ピン支持部20に設けられた支持孔30にラジエータ3の固定ピン7が挿入されることで、車体側取付部材2とラジエータ3との間に介在され、車体側取付部材2とラジエータ3との間で生じる振動を嵌合部16とピン支持部20とを連結する連結ゴム部32が吸収し振動の伝達を抑えることができる。
【0029】
その際に、大きな加振力がラジエータサポート10に作用しても、嵌合部16からフランジ部18にかけて金属製の補強部材12が埋設されているため、ゴム弾性体14のゴム硬度を高くすることなく嵌合部16及びフランジ部18の過度の変形を防止することができる。そのため、本実施形態のラジエータサポート10では、要求される防振特性に応じた適切なゴム材からゴム弾性体14を構成することができ、連結ゴム部32において振動を有効に吸収することができる。
【0030】
しかも、本実施形態のラジエータサポート10では、フランジ部18の上層ゴム部19に上方へ向けて突出するストッパゴム部22が設けられフランジ部18全体の高バネ定数化が図られているため、大きな加振力がラジエータサポート10に作用してもフランジ部18全体が撓み変形しにくく、大きな加振力に対しても優れた振動吸収性能を発揮することができる。
【0031】
また、本実施形態のラジエータサポート10では、ラジエータ3が上方へ大きく変位した直後の落下時のようにラジエータサポート10に大きな加振力が作用し、車体側取付部材2にフランジ部18が衝突することがあっても、車体側取付部材2に当接する下層ゴム部17が上層ゴム部19よりも肉厚に設けられているため、下層ゴム部17が滑らかに撓み変形して異音及び振動の発生を抑えることができる。
【0032】
しかも、下層ゴム部17に補強部材12へ向けて陥没する凹部24が設けられているため、下層ゴム部17がより一層滑らかに撓み変形しやすくなり、効果的に異音及び振動を抑えることができる。
【0033】
また、本実施形態のラジエータサポート10では、下層ゴム部17に設けられた凹部24の底部24aのゴム材の肉厚が所定大きさ以上に設けられており、たとえ、下層ゴム部17が摩耗しても車体側取付部材2と金属製の補強部材12とが直接当接することによる異音も生じることがない。
【0034】
さらにまた、加硫成形時に補強部材12を押さえ付けるため加硫金型に設けたピンによって形成される穴部26が、凹部24の底部24aに設けられ車体側取付部材2に当接することがない。そのため、加硫成形により得られたゴム弾性体14の穴部26の周囲にバリや欠肉が有ったとしても、車体側取付部材2と下層ゴム部17との当接状態に変化がなく、ラジエータサポート10の特性に悪影響を与えないことから、製造歩留まりを向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
2…車体側取付部材 3…ラジエータ 4…取付孔
5…取付壁 6…支持面 7…固定ピン
10…ラジエータサポート 11…筒部 12…補強部材
13…鍔部 14…ゴム弾性体 16…嵌合部
17…下層ゴム部 18…フランジ部 19…上層ゴム部
19a…周縁部 20…ピン支持部 22…ストッパゴム部
24…凹部 24a…底部 26…穴部
28…切欠部 30…支持孔 32…連結ゴム部
34…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を有する車体側取付部材と、前記車体側取付部材に対向する支持面に固定ピンを有するラジエータとの間に介在されるラジエータサポートにおいて、
前記取付孔に挿入される嵌合部と、前記嵌合部の一端部に設けられ前記取付孔の内径より大きな外径をなす環状のフランジ部と、前記嵌合部の内方に設けられ前記固定ピンが挿入されるピン支持部と、前記フランジ部の内部を前記嵌合部から径方向外方へ向けて延びる金属製の補強部材と、前記フランジ部から前記ラジエータの支持面へ向けて突出するストッパゴム部とを備え、
前記フランジ部において前記補強部材と前記車体側取付部材との間に配置された下層ゴム部が前記補強部材と前記ラジエータの支持面との間に配置された上層ゴム部より肉厚に設けられていることを特徴とするラジエータサポート。
【請求項2】
前記下層ゴム部に前記補強部材へ向けて陥没する凹部が、前記フランジ部の周方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のラジエータサポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−180901(P2012−180901A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44346(P2011−44346)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】