ラダー型フィルタとこれを用いた装置
【課題】 ラダー型フィルタを狭帯域化した際に、挿入損失を小さく、減衰傾度を急峻にする手段を得る。
【解決手段】 共振周波数(frp)と反共振周波数(fap)とを有する第1の共振子が並列腕に、共振周波数(frs)と反共振周波数(fas)を有する第2の共振子が直列腕に配置され、入力と一方の外側共振子とを結ぶ入力配線と、出力と他方の外側共振子とを結ぶ出力配線とを備えたラダー型フィルタにおいて、Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、Δf/foが−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ入力配線と出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内でラダー型フィルタである。
【解決手段】 共振周波数(frp)と反共振周波数(fap)とを有する第1の共振子が並列腕に、共振周波数(frs)と反共振周波数(fas)を有する第2の共振子が直列腕に配置され、入力と一方の外側共振子とを結ぶ入力配線と、出力と他方の外側共振子とを結ぶ出力配線とを備えたラダー型フィルタにおいて、Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、Δf/foが−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ入力配線と出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内でラダー型フィルタである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラダー型フィルタに関し、特に中心周波数における挿入損失と、通過域近傍の保証減衰量を改善した狭帯域ラダー型フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、SAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)は通信分野で広く利用され、高性能、小型、量産性等の優れた特徴を有することから特に携帯電話機等に多く用いられている。例えば、米国の1.9GHz帯携帯電話システム(PCS)には、送受とも60MHzの帯域幅(比帯域幅で約3%)を有するRFフィルタが用いられている。携帯電話システムのRF用SAWフィルタには、温度特性の比較的良好な回転YカットX伝搬のタンタル酸リチウム(LiTaO3)基板が用いられ、カット角としては36°や42°等が多く使用されている。これらのカット角のLiTaO3基板を用いると、大きな電気機械結合係数が得られ、携帯電話のRFフィルタに要求される保証帯域幅(比帯域で約1.6%〜約3%)を満たすことができる。
【0003】
一方、複数の航行衛星からの信号電波を受信し、これに基づいて地上の位置情報を高精度に算出するGPS受信機には、中心周波数が1575.42MHz、帯域幅が2.046MHz(比帯域幅で約0.13%)の狭帯域RFフィルタが要求される。このRF帯域の近傍には、インマルサット衛星通信システムに使用されている帯域(ダウンリンクは1525〜1559MHz,アップリンクは1626.5〜1660.5MHz)やイリジウム携帯電話システムに使用されている帯域(1616〜1626.5MHz)、さらには日本のMCA業務用無線システムに使用されている帯域(1501〜1525MHz)があり、これらのシステムとの相互干渉を避けるために、GPS受信機のRF用SAWフィルタは狭帯域で、且つ通過域近傍の減衰特性が急峻のものが要求される。また、GPS衛星から到来する信号電波は微弱であり、また最近ではGPS受信機を搭載した携帯電話機も普及しつつあることから、GPS受信機のRFフィルタには低損失な伝送特性も要求されている。
【0004】
低損失で急峻な減衰特性を有するSAWフィルタとして、例えば特開平10−126212号公報等に詳述されているラダー型SAWフィルタがよく知られている。
図16(a)はラダー型SAWフィルタの基本区間の構成を示す概略図であって、並列腕のSAW共振子Xpと直列腕のSAW共振子Xsとから構成され、それぞれの腕のリアクタンス曲線は同図(b)に示すように設定される。即ち、並列腕SAW共振子Xp(破線)の反共振周波数と、直列腕SAW共振子Xs(実線)の共振周波数とをほぼ一致するように設定すると、その周波数を中心周波数として、図16(b)のF(太い実線)に示すようにバンドパスフィルタが形成される。そして、並列腕SAW共振子Xpの共振周波数と直列腕SAW共振子Xsの反共振周波数とにそれぞれ減衰極が形成され、低損失で減衰傾度の急峻なフィルタが得られる。さらに、減衰傾度の急峻なフィルタや、保証減衰量の大きなフィルタが必要な場合には、複数個のラダー型基本区間フィルタをインピーダンスが整合するように縦続接続して高次のフィルタを構成すればよい。
【0005】
図16(b)から明らかなように、ラダー型SAWフィルタの帯域幅はSAW共振子の共振周波数fsと反共振周波数faとの差df=fa−fsに依存する。そして、共振周波数差dfはSAW共振子の容量比γ(モーショナルキャパシタンスC1に対する静電容量C0の比γ=C0/C1)により次式のように表される。
df=fs((1+1/γ)1/2−1)
従って、ラダー型SAWフィルタの帯域幅はSAW共振子の容量比γによって決定されることになる。
【0006】
図17に示すように直列腕SAW共振子Xsを入出力双方の最外側共振子とし、これらの内側にそれぞれSAW共振子Xpを2つ直列接続した構造の並列腕を配置し、これら2つの並列腕の間にSAW共振子Xsを2つ直列接続した構造の直列腕共振子を配置して梯子状に構成したラダー型SAWフィルタの伝送特性をシュミレーションにより求めることにした。
図18はラダー型SAWフィルタの構造を示す概略断面図であり、所謂チップ・サイズ・パッケージ(CSP)の構造を解析モデルとして採用した。圧電基板1の主表面上にIDT電極2と接続用のパッド電極3とを形成したラダー型SAWフィルタ素子(SAWチップ)Tは、アルミナセラミック基板4の上面に形成した接続用の電極5と金バンプ6を介してフリップチップ実装される。そして、この上に封止用樹脂7を塗布し、硬化させればSAWチップTは密封され、内部に空間8の有るチップ・サイズ・パッケージ(CSP)が構成される。アルミナセラミック基板34は多層構造で上面の電極5と下面の電極9とはアルミナセラミック基板4の内部配線10により接続さる。
【0007】
GPS用RFフィルタのシミュレーションでは、実装基板とSAWチップの配線との電気的特性を表す多ポートのSパラメータを電磁界解析にて求め、これとSAW共振子を実測して得られたSパラメータとを合成して、全体のSパラメータを算出し、図18のような構造のラダー型SAWフィルタの伝送特性を求めることとした(以下、この手法を電磁界解析によるシミュレーションと称す)。
【0008】
圧電基板として48°回転YカットX伝搬LiTaO3基板を用い、直列腕SAW共振子Xsは図19に示すように、IDT電極の交差幅Wが全電極指で一様である、所謂正規型IDT電極を用い、IDT電極とバスバーとの接続部にライン占有率(=電極指ライン幅/(電極指ライン幅+電極指スペース幅)×100[%])の大きなダミー電極を設けることでSAW導波路構造としている。直列腕SAW共振子Xsのパラメータは、波長λ=Ltを2.4543μm、IDT電極対Nsを81対、反射器本数Msを60本,交差幅Wを49μm、電極指先端ギャップG0を0.4μm、ダミー電極長D0を2.5μm、ダミー電極ライン占有率を60%、Lt/Lrを0.99(Ltは波長、Lrは反射器の電極指間間隔の2倍)、隣接電極指中心間距離Ltrを0.46λとし、IDT電極上には絶縁膜(SiO2膜等)は付着しなかった。
【0009】
並列腕SAW共振子XpもSAW導波路構造としているが、IDT電極には図20に示すように楕円状のアポダイズ重み付けを施した。並列腕SAW共振子Xpのパラメータとしては、波長λ=Ltを2.5396μm、IDT電極対数Npを266対、反射器本数Mpを40本、交差幅Wを95μm、電極指先端ギャップG0を0.4μm、ダミー電極長D0を2.5μm、ダミー電極ライン占有率60%、Lt/Lr(Ltは波長、Lrは反射器の電極指間間隔の2倍)を1.0、隣接電極指中心間距離Ltrを0.5λとし、IDT電極上に絶縁膜(SiO2膜等)は付着しなかった。
直列腕、並列腕ともIDT電極のライン占有率は50.0%、電極膜厚Hは0.247μmとした。直列腕SAW共振子Xsの共振周波数frsは1576.419MHz、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数fapは1574.415MHzとした。ここで、Δf=frs−fap、fo=((frs+fap)/2)と定義すると、Δf/foは0.00127となる。
【0010】
以上のように設定したパラメータを用いて電磁界解析によるシミュレーションを行い、得られた伝送特性とインピーダンス特性をそれぞれ図21、22に示す。図21(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰域の特性であり、図22(a)は入力側からみたインピーダンス特性を表すスミスチャート、同図(b)は出力側からみたインピーダンス特性を表すスミスチャートである。
図21(a)、(b)にGPSで使用される帯域より若干広めの帯域G(1575.42±1.2MHz、以下GPS帯と称す)と、日本のMCA業務用無線システムで使われる帯域M(1501〜1525MHz、以下MCA帯と称す)と、インマルサット衛星通信システムで全世界的に使われる帯域S(1626.5〜1660.5MHz、以下インマルサット帯と称す)との規格を記入している。
なお、GPSの通過帯域であるGPS帯挿入損失は1.5dB以下、阻止域となるMCA帯及びインマルサット帯の減衰量は35dB以上としている。
【0011】
【特許文献1】特開平10−126212号公報
【特許文献2】特開2004−242281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特開平10−126212号公報、あるいは特開2004−242281号公報等に開示されている手段は、通過域の広帯域を目的としたものである。これらの手段を用いてラダー型SAWフィルタのシミュレーションを行うと、図21(a)、(b)に示すように、MCA帯及びインマルサット帯の減衰量(35dB以上)をかろうじて満たす特性が得られるものの、フィルタの中心周波数1575.42MHz近傍で挿入損失が規格ぎりぎりになるという問題があった。この原因はGPS帯における入出力インピーダンスが、終端条件である50Ωから大きく離れて容量性を呈しているからである。例えば特開平10−126212号公報段落番号0050に記載されているように、入出力インピーダンスが容量性となる要因はfrs>fapとしたことが挙げられる。それに、図18に示したSAWフィルタの構造では入力配線及び出力配線の各々に対地容量が発生することも関係している。
【0013】
これを改善するため、入力側と出力側にチップインダクタ等を接続すれば、インピーダンス不整合による損失は減るが、部品点数の増加とそれに伴う部品実装面積の増大、及びコストアップ等のデメリットが生ずる。また、インピーダンス整合用のインダクタをマイクロストリップラインやストリップラインにて、図18の実装基板に内蔵することも考えられるが、最近のSAWデバイスの小型化、薄型化要求により、十分な大きさのインダクタンスを実装基板に内蔵することが非常に困難となっている。
また、入力配線及び出力配線に生じる対地容量を低減することで、インピーダンス不整合による損失は小さくなるが、本願発明者の検討では、0.2pF程度の対地容量が入力配線及び出力配線に生ずることは避けられず、これ以上低減することは困難であった。特に圧電基板にLiTaO3やLiNbO3などの比誘電率の大きな材料を用いた場合は、SAWチップ上の配線パターンの対地容量も無視できない大きさとなる。このように、従来のラダー型SAWフィルタの設計手法では、GPS用RFフィルタに要求される規格を十分に満たすフィルタが実現できないという問題があった。
【0014】
また、このようなラダー型フィルタをRF回路や通信装置に使用した場合、ラダー型フィルタ単体で有する対地容量に加えて、ラダー型フィルタが実装されるRF回路や通信装置の回路基板の対地容量も加わることになり、RF回路や装置にも様々な不具合が生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る請求項1の発明は、並列腕に共振周波数がfrpであり反共振周波数がfapである第1の共振子が、直列腕に共振周波数frsであり反共振周波数がfasである第2の共振子が配置されたラダー型フィルタにおいて、
Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ最外側共振子と入出力端子との間の入力配線と出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内でラダー型フィルタを構成する。
請求項2の発明は、底部に表面実装用の外部入力電極と外部出力電極と外部接地電極とを備えた絶縁基板と、該絶縁基板の上部に配した上部入力電極と上部出力電極と上部接地電極とを備えた実装基板と、圧電基板の一方の主表面に入力パッド電極と出力パッド電極と接地パッド電極と第1及び第2のSAW共振子を備えたとSAWチップと、前記外部入力電極と前記上部入力電極と前記入力パッド電極とを結ぶ入力配線と、前記外部出力電極と前記上部出力電極と前記出力パッド電極とを結ぶ出力配線と、を備え、共振周波数(frp)及び反共振周波数(fap)を有する前記第1のSAW共振子が並列腕に配され、共振周波数(frs)及び反共振周波数(fas)を有する前記第2のSAW共振子が直列腕に配されたラダー型SAWフィルタにおいて、
Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、
Δf/foが−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ前記入力配線と前記出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内でラダー型フィルタを構成する。
請求項3の発明は、請求項1あるいは2に記載のラダー型フィルタにおいて、共振子間を結ぶ接続パターンの対地容量の総和が1.5pF以下でラダー型フィルタを構成する。
請求項4の発明は、少なくとも3つの直列腕と、少なくとも2つの並列腕とを有した請求項1乃至3に記載のラダー型フィルタにおいて、最外側の直列腕に配置された共振子の共振周波数よりも、2つの並列腕の間に配置された直列腕の共振子の共振周波数の方を高く設定してラダー型フィルタを構成する。
請求項5の発明は、少なくとも2つの直列腕と、少なくとも3つの並列腕とを有した請求項1乃至3に記載のラダー型フィルタにおいて、最外側の並列腕に配置された共振子の反共振周波数よりも、2つの直列腕の間に配置された並列腕の共振子の反共振周波数の方を低く設定してラダー型フィルタを構成する。
請求項6の発明は、前記圧電基板が回転YカットX伝搬のLiTaO3であり、通過域の挿入損失を1.5dB以下としたとき比帯域幅が1.27%以上2.36%未満である、請求項2乃至5の何れかに記載のラダー型フィルタである。
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかのラダー型フィルタをGPS受信回路に搭載して装置を構成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のラダー型SAWフィルタは、インダクタを用いないで構成するため、フィルタの小型化が可能になり、且つ中心周波数における挿入損失を低減すると共に、通過域近傍の保証減衰量を改善した狭帯域ラダー型SAWフィルタを実現できるので、RF回路や通信装置の性能を向上するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明に係るラダー型SAWフィルタの第一の実施の形態を示す図であって、同図(a)は回路構成、同図(b)は構造を示す概略断面図である。第一実施形態のラダー型SAWフィルタの回路構成は、図1(a)に示すように従来の図17に示したものと同様に、直列腕SAW共振子Xsを入出力双方の最外側共振子とし、これらの内側にそれぞれSAW共振子Xpを2つ直列接続した構造の並列腕を配置し、これら2つの並列腕の間にSAW共振子Xsを2つ直列接続した構造の直列腕共振子を配置して梯子状に構成したラダー型SAWフィルタである。
また、ラダー型SAWフィルタの構造は、図1(b)に示すように従来の図18に示したものと同様にチップ・サイズ・パッケージ(CSP)の構造をしており、図18に示すものと共通部分に同じ符号を付して説明は省略する。
【0018】
図2(a)、(b)、(c)及び図3は、図1(a)に示すフィルタ回路の直列腕SAW共振子Xsの共振周波数をfrs、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数をfapとし、Δf=frs−fap、fo=((frs+fap)/2)としたときの、Δf/foとラダー型SAWフィルタのGPS帯域内最大挿入損失との関係を表した図である。図1(a)に示すCin、Coutは入力配線及び出力配線の対地容量を表している。図1(a)に示したラダー型フィルタに用いるSAW共振子のパラメータは、波長λ以外は図21に用いたものと同じとし、SAW共振子の波長λはΔf/foに応じて設定している。図2(a)、(b)、(c)及び図3では、対地容量値Cin、Coutをパラメータとし、Δf/foとGPS帯域内最大挿入損失との関係を求めるべく、SAW共振子の実測Sパラメータを用いて、回路解析を行った(以下、このようなシミュレーション方法を集中定数によるシミュレーションと称す)。図2(a)、(b)、(c)及び図3に示すように、入力配線及び出力配線に対地容量Cin、Coutを考慮すると、Δf/foが負となる領域にGPS帯域内最大挿入損失値が最小となるΔf/foが存在することが分かった。これはΔf/foを負に設定することで、並列腕共振子Xpと直列腕共振子Xsの各々の誘導領域が通過帯域中央近傍(GPS帯)で重なり合い、その重なり合った誘導領域が入力配線や出力配線に発生する対地容量を打ち消すように作用するためと考えられる。
【0019】
図4は、図1(a)のラダー型フィルタのΔf/foと、1575.42MHzにおける入力インピーダンスの虚数部との関係を表した図である。対地容量Cin、Coutが存在しない場合(Cin=Cout=0pF)は、Δf/foが0の時にインピーダンスの虚数部が0Ωとなるが、対地容量が存在する場合はΔf/foが負となる領域でインピーダンスの虚数部が0Ωとなり、インピーダンス不整合による損失が最小となる。さらに、Δf/foを負側にその絶対値を大きくしていくとインピーダンスは誘導性となり、インピーダンス不整合による損失が大きくなることが分かった。インピーダンスの虚数部が0ΩとなるΔf/foは対地容量Cin、Coutの値によって異なり、対地容量の値が大きくなるほど、インピーダンスの虚数部が0ΩとなるΔf/foは負側にその絶対値が大きくなることが判明した。
【0020】
以上のシミュレーションの結果、入力配線や出力配線に対地容量が存在する場合は、GPS帯域内最大挿入損失値が最小となるΔf/foは、Δf/foが負となる領域に存在すること、その値は対地容量の値が大きくなるに応じて負側にその絶対値が大きくなることが判明した。しかし、Δf/foを負側にその絶対値を大きくし過ぎると、フィルタの比帯域幅が要求規格より大幅に狭くなる虞がある。さらに、図2(a)、(b)、(c)及び図3を比較すると、対地容量Cin、Coutが大きくなるほど、帯域内最大挿入損失が最小となる帯域内最大挿入損失値が大きくなる傾向があることが分かった。 即ち、Δf/foと対地容量とにはそれぞれ上限と下限が存在することになる。
【0021】
GPS帯の挿入損失規格を1.5dB以下とし、1.5dB帯域幅は、SAWフィルタに加わる温度変化による周波数変動、回路基板に実装する際のリフロー工程による周波数変動、熱衝撃や機械的衝撃による周波数変動等の種々の周波数変動を考慮に入れ、その上、製造時の周波数バラツキ分も見込んで、20MHz(比帯域1.27%)以上に設定する必要がある。
図5は、図1(a)に示すラダー型フィルタを集中定数によるシミュレーションを行って求めたフィルタ特性であり、実線は対地容量Cin、Coutを共に1.8pF、Δf/foを−0.00635としたときのフィルタ特性である。一方、破線は対地容量Cin、Coutを共に2.0pF 、 Δf/foを−0.00762 にとした場合のフィルタ特性である。他のパラメータは図21と同じである。実線の帯域幅は20.7MHz、破線の帯域幅は18.5MHzであった。つまり、対地容量が1.8pFよりも大きくなると、Δf/foとして−0.00635よりも負側にその絶対値を大きくしてGPS帯における挿入損失を1.5dB以下とする最適設計を選択しても、帯域幅20MHz以上を実現することができなかった。このことより、対地容量は1.8pF以下、Δf/foは−0.00635以上にする必要があることが明らかとなった。
【0022】
前に述べたように、入力配線及び出力配線はそれぞれ0.2pF程度の対地容量が発生するのは避けられず、図2(a)の図から明らかなようにCin、Coutが共に0.2pF の場合は、Δf/foを−0.0013〜−0.00025に設定することでGPS帯における挿入損失が最小となる。つまり、入力配線及び出力配線に発生する対地容量が0.2pF〜1.8pFの範囲であれば、Δf/foを適宜設定することで、GPS帯における挿入損失を1.5dB以下、帯域幅を20MHz以上(比帯域幅で1.27%以上)のラダー型SAWフィルタが実現できることが分かった。
また、Δf/foの下限値は前述したように、−0.00635であるが、Δf/foの上限値は図2(a)から0未満であればよいことになる。
以上の結果より、−0.00635 ≦ Δf/fo < 0を満たし、且つ入力配線及び出力配線に発生する対地容量を0.2〜1.8pF の範囲内であれば、チップインダクタ等を用いることなくGPS帯域内におけるインピーダンス不整合による損失を低減でき、帯域幅20MHz以上の低損失なラダー型SAWフィルタを実現できることが分かった。
【0023】
図6は、直列腕SAW共振子Xsの共振周波数frsを1572.423MHz、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数fapを1578.416MHzとし、Δf/foを−0.00380に設定した場合の電磁界解析によるシミュレーションで求めた伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。Δf/foを−0.00380にすべく各腕のSAW共振子の波長λを変更した以外は、図21に用いたパラメータと同じとした。入力配線及び出力配線に発生する対地容量はそれぞれ0.499pF、0.516pFとした。図6から明らかなように帯域幅は32.5MHz(比帯域幅で2.06%)となり、減衰特性も十分に規格を満たした良好な特性が得られた。
図7(a)、(b)はそれぞれ入出力側からみたインピーダンス特性のスミスチャートで、従来例である図22に比べてGPS帯における入力インピーダンス及び出力インピーダンスの虚数部が小さくなっていることが分かる。
【0024】
図8(a)、(b)は従来のラダー型SAWフィルタと本発明によるラダー型SAWフィルタとの伝送特性の比較であり、実線が第一の実施例によるラダー型SAWフィルタの伝送特性、破線が従来のラダー型SAWフィルタの伝送特性である。本発明によるラダー型SAWフィルタは、従来のラダー型SAWフィルタよりも挿入損失が小さく、しかも狭帯域になっているため、MCA帯減衰量を保証する際の製造マージンが従来のラダー型SAWフィルタより余裕を持って確保できるようになった。
【0025】
図9は本発明に係る第二の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図であって、図1(a)と異なるところは直列腕共振子Xs間の配線に発生する対地容量Ci(=C1、C2、C3)を考慮して回路設計を行うところである。図9において直列腕共振子Xs間の配線に発生する対地容量C1、C2、C3の総和を1.5pF以下とし、これに本発明の第一の実施例の手法を用いれば、第一の実施例のラダー型SAWフィルタよりも広帯域なラダー型フィルタが実現できることが分かった。
図10は第二の実施例によるラダー型フィルタを集中定数によるシミュレーションで求めた伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。破線が第一の実施例による伝送特性、実線が第二の実施例による伝送特性である。ラダー型SAWフィルタの入力配線及び出力配線に発生する対地容量Cin、Coutを共に0.5pF、Δf/foを−0.00254、波長λ以外の諸パラメータは図21と同じものを用いた。図10の実線と破線とでは、直列腕SAW共振子Xs間の配線に発生する対地容量のみが異なっている。破線の第一の実施例では、直列腕SAW共振子Xs間の配線に発生する対地容量を0pFとしており、実線の第二の実施例では、直列腕SAW共振子Xs間の配線に発生する対地容量をC1=0.1pF,C2=0.5pF,C3=0.1pFとして、直列腕SAW共振子間の配線に発生する対地容量の総和(C1+C2+C3)を0.7pFとしている。破線の第一の実施例では帯域幅29.5MHz、実線の第二の実施例では帯域幅36.7MHzとなり、第二の実施例の方が第一の実施例よりも広帯域なラダー型フィルタが実現できることが分かった。
また、図10(b)から明らかなとおり、第二の実施例の方が第一の実施例よりもMCA帯及びインマルサット帯での減衰量が大きくなることも判明した。
【0026】
図11は、第二の実施例における直列腕共振子Xs間の配線に生ずる対地容量Ciの総和の上限値を説明するための図である。破線は対地容量C1、C2、C3を共に0.7pF(総和が2.1pF)として集中定数によるシミュレーションで求めた伝送特性である。実線はC1、C2、C3を共に0.5pF(総和が1.5pF)としたの場合の伝送特性である。その他のパラメータは図21のものと同じである。図11から明らかなように、直列腕共振子Xs間の配線に発生する対地容量Ciの総和が1.5pFを超えると、GPS帯における挿入損失が1.5dB以上となることがわかった。対地容量Ciを種々変えてシミュレーションを行ったが、対地容量Ciの総和が1.5pFを超えると挿入損失が1.5dB以上となった。対地容量Ciの総和は1.5pF以下とする必要がある。
【0027】
図12は従来のラダー型フィルタと第二の実施例を用いたラダー型SAWフィルタとの伝送特性を比較した図である。破線は従来のラダー型SAWフィルタの伝送特性で、Δf/fo=0.00127とし、直列腕共振子Xs間の配線に発生する対地容量Ciを全て0pFとした。実線は第二の実施例によるラダー型SAWフィルタの伝送特性で、Δf/foを−0.00254とし、対地容量C1を0.1pF、C2を0.5pF、C3を0.1pFとした。その他のパラメータは図21と同じものを用いた。図12(a)より従来のラダー型SAWフィルタ(破線)では、GPS帯域内最大挿入損失が1.12dB、帯域幅が36.0MHzであるのに対し、本発明の第二の実施例ではGPS帯域内最大挿入損失が0.91dB、帯域幅が36.7MHz(比帯域2.33%)となり、第二の実施例のラダー型SAWフィルタは、従来のものより広帯域で、且つ低損失な特性であることが分かった。また、図12(b)は同図(a)と同一のものについて減衰特性を示すものであり、これから明らかなように、第二の実施例を用いたラダー型SAWフィルタの減衰特性の方が、従来のものより急峻な特性であり、MCA帯減衰量やインマルサット帯減衰量を保証する上で、周波数バラツキ等の製造マージンがより大きくなる。
なお、図9に記載の対地容量C1、C2、C3の少なくとも一つが直列腕共振子Xs間の配線のみで実現できない場合、その容量を圧電基板上に形成したくし型キャパシタにて構成しても良い。
【0028】
図13は本発明に係る第三の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成であって、直列腕SAW共振子Xsと、2つのSAW共振子Xpを直列接続した並列腕と、2つのSAW共振子Xs2を直列接続した直列腕と、2つのSAW共振子Xpを直列接続した並列腕と、直列腕SAW共振子Xsと、を交互に接続して梯子状に構成する。そして、並列腕共振子Xpと最外側に配置する直列腕共振子Xsとは−0.00635 ≦ Δf/fo < 0を満たすようにし、2つの並列腕の間に配置する直列腕共振子Xs2の共振周波数はXsのそれより高く設定する。
図14は、第三の実施例のラダー型SAWフィルタを、電磁界解析によるシミュレーションを用いて求めた伝送特性であり、破線が第一の実施例によるラダー型SAWフィルタの伝送特性、実線が第三の実施例による伝送特性である。第一の実施例の破線では、直列腕SAW共振子Xsの共振周波数frsは1572.423MHz、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数fapは1578.416MHz、Δf/foは−0.00380とし、入力配線及び出力配線に発生する対地容量はそれぞれ0.499pF,0.516pFである。第三の実施例の実線では、Xs2の波長λのみを小さくし、Xs2の共振周波数frs2は1575.428MHzとしている。つまり、Xs2の共振周波数frs2はXsの共振周波数frsより3.005MHz高く設定している。他のパラメータは図21のそれと同じとした。第一の実施例によるラダー型SAWフィルタの帯域幅は32.5MHz、GPS帯域内最大挿入損失は0.89dBであるのに対し、第三の実施例によるラダー型SAWフィルタの帯域幅は35.1MHz、GPS帯域内最大挿入損失は0.86dBとなり、GPS帯の挿入損失を劣化させることなく、広帯域な特性が実現できることが判明した。第三の実施例によるラダー型SAWフィルタの場合も、第二の実施例の手法との併用が可能である。
【0029】
図15は本発明に係る第四の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図であって、SAW共振子Xpの並列腕と、SAW共振子Xsの直列腕と、SAW共振子Xp2の並列腕と、SAW共振子Xsの直列腕と、SAW共振子Xpの並列腕と、を交互に接続して梯子状に構成する。さらに、入力配線及び出力配線に発生する対地容量Cin、Coutと、直列腕SAW共振子Xs間の配線に発生する対地容量C1を考慮している。
図15において、直列腕共振子Xsと最外側に配置される並列腕共振子Xpは −0.00635 ≦ Δf/fo < 0を満たすように設定するが、第四の実施例では、さらに2つの直列腕の間に配置される並列腕共振子Xp2の反共振周波数をXpのそれより低く設定する。このように設定することにより、第三の実施例と同様の効果、すなわちGPS帯の挿入損失を劣化させることなく広帯域な特性を実現できることがシミュレーションの結果分かった。
第四の実施例によるラダー型SAWフィルタの場合も、第二の実施例の手法との併用が可能である。図15の回路構成と第二の実施例との併用を行う場合、直列腕SAW共振子間の配線に発生する対地容量C1を1.5pF以下にすれば良い。
【0030】
図13、15よりもラダー回路の段数を増やした場合、本発明の第二、第三、第四の実施例を複数または全て併用することも可能である。
本発明に係るラダー型SAWフィルタが圧電基板に回転YカットX伝搬のLiTaO3を用いると、比帯域幅1.27%以上2.36%未満で低損失且つ、急峻な伝送特性が実現できる。つまり、特開平10−126212号公報にも開示されているようにラダー型SAWフィルタでは比帯域幅2.36%未満の狭帯域フィルタでは、不十分な伝送特性しか得られないというのが常識となっていたが、本発明により狭帯域であっても良好な伝送特性が実現できるようになった。
【0031】
また、本発明によるラダー型SAWフィルタをRF回路や通信装置(例えばGPS受信回路やGPS受信機、あるいはそれらを搭載した携帯電話など)に用いる場合、ラダー型SAWフィルタ単体で有する入力配線や出力配線の対地容量に、実装される回路基板の対地容量がさらに加わることになる。その場合でも、ラダー型SAWフィルタを回路基板へ実装した後、入力配線及び出力配線の各々の対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内となるようすれば、−0.00635≦Δf/fo<0の範囲内で、ラダー型SAWフィルタのΔf/foを適宜設定することにより、低損失なRF回路や干渉波に強い通信装置を実現することができる。
【0032】
以上では、ラダー型SAWフィルタの構成要素である共振子にSAW共振子を用いる場合を説明したが、共振子が圧電薄膜共振子、セラミックを用いたバルク波共振子、同軸型誘電体共振器等の場合でも同様の効果を奏する。
【0033】
また、上記各実施形態例では3つの直列腕SAW共振子と、2つの並列腕SAW共振子とが梯子状に形成されたラダー型SAWフィルタと、2つの直列腕SAW共振子と、3つの並列腕SAW共振子とが梯子状に形成されたラダー型SAWフィルタについて述べたが、並列腕SAW共振子を第一のSAW共振子、直列腕SAW共振子を第二のSAW共振子とすれば、第一のSAW共振子を並列腕に、第二のSAW共振子を直列腕に配したラダー型SAWフィルタと記述することにより、ラダー型SAWフィルタを一般化することが出来る。
【0034】
なお、特開2004−242281号公報にはΔf/foが負となるラダー型SAWフィルタについて記述されているが、本発明とは以下に述べるように根本的な相違点がある。
特開2004−242281号公報の発明の目的の一つは特開平10−126212号公報と同等または同等以上の通過帯域の広帯域化を目的としているが、本発明の目的は特開平10−126212号公報よりも狭帯域なラダー型SAWフィルタを良好な特性にて実現することであり、特開2004−242281号公報目的と本発明の目的とは異なる。
また、特開2004−242281号公報には、直列腕共振子にインダクタが並列に接続されている第1の直列腕共振子と、インダクタが接続されていない第2の直列腕共振子とからなることが必須となっているが、本発明にこれを適用した場合、上述の本発明の効果は全く得られなかった。
【0035】
本発明では、入力配線及び出力配線の対地容量が数値限定されており、その限定の根拠についても説明しているが、特開2004−242281号公報では対地容量に関する記述はない。仮に、入力配線及び出力配線に対地容量が本質的に発生するのは避けられないことは周知の事実であるとしても、その浮遊容量が、並列腕共振子と直列腕共振子との誘導領域同士をオーバーラップさせることで打ち消されるという発想を容易に想致することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るラダー型SAWフィルタの第1の実施例の形態を示す図で、(a)は回路図、(b)はその構造を示した概略断面図である。
【図2】(a)〜(c)は入力配線及び出力配線の対地容量をパラメータとしたときのΔf/f0と帯域内最大挿入損失との関係を示す図である。
【図3】入力配線及び出力配線の対地容量をパラメータとしたときのΔf/f0と帯域内最大挿入損失との関係を示す図である。
【図4】入力配線及び出力配線の対地容量をパラメータとしたときのΔf/f0とインピーダンス虚数部との関係を示す図である。
【図5】実線は対地容量Cin=Cout=1.8pF 、 Δf/fo=−0.00635のときのフィルタ特性、破線は破線は対地容量Cin=Cout=2.0pF 、 Δf/fo=−0.00762 のときのフィルタ特性である。である
【図6】直列腕SAW共振子Xsの共振周波数frs=1572.423MHz、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数fap=1578.416MHz、Δf/fo=−0.00380のときの電磁界解析によるシミュレーションの伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。
【図7】(a)、(b)入出力側からみたインピーダンスのスミスチャートである。
【図8】実線は第一の実施例によるラダー型SAWフィルタの伝送特性、破線は従来の伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。ある
【図9】第二の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図である。
【図10】破線は第一の実施例による伝送特性、実線は第二の実施例による伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。
【図11】破線は第二の実施例の対地容量C1、C2、C3を共に0.7pF、実線はC1、C2、C3を共に0.5pFとしたときの伝送特性である。
【図12】実線は第二の実施例でΔf/fo=−0.00254、対地容量C1=0.1pF、C2=0.5pF、C3=0.1pFのときの伝送特性、破線は従来のラダー型SAWフィルタでΔf/fo=0.00127、対地容量Ci=0pFときの伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。
【図13】第三の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成でる。
【図14】電磁界解析によるシミュレーションで、実線が第三の実施例による伝送特性、破線が第一の実施例による伝送特性である。
【図15】第四の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成である。
【図16】(a)は従来のラダー型SAWフィルタの基本区間を示す図、(b)はリアクタンス曲線とフィルタ特性を示す図である。
【図17】従来のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図である。
【図18】従来のラダー型SAWフィルタの構造を示す概略断面図である。
【図19】直列腕SAW共振子の電極パターンを示す図である。
【図20】並列腕SAW共振子の電極パターンを示す図である。
【図21】従来のラダー型SAWフィルタの伝送特性を示す図で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。
【図22】従来のラダー型SAWフィルタのインピーダンス特性で、(a)は入力側から、(b)は出力側からみたスミスチャートである。
【図23】従来のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
Xs、Xs2 直列腕SAW共振子
Xp、Xp2 並列腕SAW共振子
Cin 入力配線の対地容量
Cout 出力配線の対地容量
C1、C2、C3 直列腕共振子間配線の対地容量
Δf Δf=frs−fap
f0 f0=(frs+fap)/2
1 SAWチップ
2 IDT電極
3 パッド電極
4 アルミナセラミック基板
5 電極
6 金属バンプ
7 封止用樹脂
8 空間
9 外側電極
10 内部配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラダー型フィルタに関し、特に中心周波数における挿入損失と、通過域近傍の保証減衰量を改善した狭帯域ラダー型フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、SAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)は通信分野で広く利用され、高性能、小型、量産性等の優れた特徴を有することから特に携帯電話機等に多く用いられている。例えば、米国の1.9GHz帯携帯電話システム(PCS)には、送受とも60MHzの帯域幅(比帯域幅で約3%)を有するRFフィルタが用いられている。携帯電話システムのRF用SAWフィルタには、温度特性の比較的良好な回転YカットX伝搬のタンタル酸リチウム(LiTaO3)基板が用いられ、カット角としては36°や42°等が多く使用されている。これらのカット角のLiTaO3基板を用いると、大きな電気機械結合係数が得られ、携帯電話のRFフィルタに要求される保証帯域幅(比帯域で約1.6%〜約3%)を満たすことができる。
【0003】
一方、複数の航行衛星からの信号電波を受信し、これに基づいて地上の位置情報を高精度に算出するGPS受信機には、中心周波数が1575.42MHz、帯域幅が2.046MHz(比帯域幅で約0.13%)の狭帯域RFフィルタが要求される。このRF帯域の近傍には、インマルサット衛星通信システムに使用されている帯域(ダウンリンクは1525〜1559MHz,アップリンクは1626.5〜1660.5MHz)やイリジウム携帯電話システムに使用されている帯域(1616〜1626.5MHz)、さらには日本のMCA業務用無線システムに使用されている帯域(1501〜1525MHz)があり、これらのシステムとの相互干渉を避けるために、GPS受信機のRF用SAWフィルタは狭帯域で、且つ通過域近傍の減衰特性が急峻のものが要求される。また、GPS衛星から到来する信号電波は微弱であり、また最近ではGPS受信機を搭載した携帯電話機も普及しつつあることから、GPS受信機のRFフィルタには低損失な伝送特性も要求されている。
【0004】
低損失で急峻な減衰特性を有するSAWフィルタとして、例えば特開平10−126212号公報等に詳述されているラダー型SAWフィルタがよく知られている。
図16(a)はラダー型SAWフィルタの基本区間の構成を示す概略図であって、並列腕のSAW共振子Xpと直列腕のSAW共振子Xsとから構成され、それぞれの腕のリアクタンス曲線は同図(b)に示すように設定される。即ち、並列腕SAW共振子Xp(破線)の反共振周波数と、直列腕SAW共振子Xs(実線)の共振周波数とをほぼ一致するように設定すると、その周波数を中心周波数として、図16(b)のF(太い実線)に示すようにバンドパスフィルタが形成される。そして、並列腕SAW共振子Xpの共振周波数と直列腕SAW共振子Xsの反共振周波数とにそれぞれ減衰極が形成され、低損失で減衰傾度の急峻なフィルタが得られる。さらに、減衰傾度の急峻なフィルタや、保証減衰量の大きなフィルタが必要な場合には、複数個のラダー型基本区間フィルタをインピーダンスが整合するように縦続接続して高次のフィルタを構成すればよい。
【0005】
図16(b)から明らかなように、ラダー型SAWフィルタの帯域幅はSAW共振子の共振周波数fsと反共振周波数faとの差df=fa−fsに依存する。そして、共振周波数差dfはSAW共振子の容量比γ(モーショナルキャパシタンスC1に対する静電容量C0の比γ=C0/C1)により次式のように表される。
df=fs((1+1/γ)1/2−1)
従って、ラダー型SAWフィルタの帯域幅はSAW共振子の容量比γによって決定されることになる。
【0006】
図17に示すように直列腕SAW共振子Xsを入出力双方の最外側共振子とし、これらの内側にそれぞれSAW共振子Xpを2つ直列接続した構造の並列腕を配置し、これら2つの並列腕の間にSAW共振子Xsを2つ直列接続した構造の直列腕共振子を配置して梯子状に構成したラダー型SAWフィルタの伝送特性をシュミレーションにより求めることにした。
図18はラダー型SAWフィルタの構造を示す概略断面図であり、所謂チップ・サイズ・パッケージ(CSP)の構造を解析モデルとして採用した。圧電基板1の主表面上にIDT電極2と接続用のパッド電極3とを形成したラダー型SAWフィルタ素子(SAWチップ)Tは、アルミナセラミック基板4の上面に形成した接続用の電極5と金バンプ6を介してフリップチップ実装される。そして、この上に封止用樹脂7を塗布し、硬化させればSAWチップTは密封され、内部に空間8の有るチップ・サイズ・パッケージ(CSP)が構成される。アルミナセラミック基板34は多層構造で上面の電極5と下面の電極9とはアルミナセラミック基板4の内部配線10により接続さる。
【0007】
GPS用RFフィルタのシミュレーションでは、実装基板とSAWチップの配線との電気的特性を表す多ポートのSパラメータを電磁界解析にて求め、これとSAW共振子を実測して得られたSパラメータとを合成して、全体のSパラメータを算出し、図18のような構造のラダー型SAWフィルタの伝送特性を求めることとした(以下、この手法を電磁界解析によるシミュレーションと称す)。
【0008】
圧電基板として48°回転YカットX伝搬LiTaO3基板を用い、直列腕SAW共振子Xsは図19に示すように、IDT電極の交差幅Wが全電極指で一様である、所謂正規型IDT電極を用い、IDT電極とバスバーとの接続部にライン占有率(=電極指ライン幅/(電極指ライン幅+電極指スペース幅)×100[%])の大きなダミー電極を設けることでSAW導波路構造としている。直列腕SAW共振子Xsのパラメータは、波長λ=Ltを2.4543μm、IDT電極対Nsを81対、反射器本数Msを60本,交差幅Wを49μm、電極指先端ギャップG0を0.4μm、ダミー電極長D0を2.5μm、ダミー電極ライン占有率を60%、Lt/Lrを0.99(Ltは波長、Lrは反射器の電極指間間隔の2倍)、隣接電極指中心間距離Ltrを0.46λとし、IDT電極上には絶縁膜(SiO2膜等)は付着しなかった。
【0009】
並列腕SAW共振子XpもSAW導波路構造としているが、IDT電極には図20に示すように楕円状のアポダイズ重み付けを施した。並列腕SAW共振子Xpのパラメータとしては、波長λ=Ltを2.5396μm、IDT電極対数Npを266対、反射器本数Mpを40本、交差幅Wを95μm、電極指先端ギャップG0を0.4μm、ダミー電極長D0を2.5μm、ダミー電極ライン占有率60%、Lt/Lr(Ltは波長、Lrは反射器の電極指間間隔の2倍)を1.0、隣接電極指中心間距離Ltrを0.5λとし、IDT電極上に絶縁膜(SiO2膜等)は付着しなかった。
直列腕、並列腕ともIDT電極のライン占有率は50.0%、電極膜厚Hは0.247μmとした。直列腕SAW共振子Xsの共振周波数frsは1576.419MHz、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数fapは1574.415MHzとした。ここで、Δf=frs−fap、fo=((frs+fap)/2)と定義すると、Δf/foは0.00127となる。
【0010】
以上のように設定したパラメータを用いて電磁界解析によるシミュレーションを行い、得られた伝送特性とインピーダンス特性をそれぞれ図21、22に示す。図21(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰域の特性であり、図22(a)は入力側からみたインピーダンス特性を表すスミスチャート、同図(b)は出力側からみたインピーダンス特性を表すスミスチャートである。
図21(a)、(b)にGPSで使用される帯域より若干広めの帯域G(1575.42±1.2MHz、以下GPS帯と称す)と、日本のMCA業務用無線システムで使われる帯域M(1501〜1525MHz、以下MCA帯と称す)と、インマルサット衛星通信システムで全世界的に使われる帯域S(1626.5〜1660.5MHz、以下インマルサット帯と称す)との規格を記入している。
なお、GPSの通過帯域であるGPS帯挿入損失は1.5dB以下、阻止域となるMCA帯及びインマルサット帯の減衰量は35dB以上としている。
【0011】
【特許文献1】特開平10−126212号公報
【特許文献2】特開2004−242281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特開平10−126212号公報、あるいは特開2004−242281号公報等に開示されている手段は、通過域の広帯域を目的としたものである。これらの手段を用いてラダー型SAWフィルタのシミュレーションを行うと、図21(a)、(b)に示すように、MCA帯及びインマルサット帯の減衰量(35dB以上)をかろうじて満たす特性が得られるものの、フィルタの中心周波数1575.42MHz近傍で挿入損失が規格ぎりぎりになるという問題があった。この原因はGPS帯における入出力インピーダンスが、終端条件である50Ωから大きく離れて容量性を呈しているからである。例えば特開平10−126212号公報段落番号0050に記載されているように、入出力インピーダンスが容量性となる要因はfrs>fapとしたことが挙げられる。それに、図18に示したSAWフィルタの構造では入力配線及び出力配線の各々に対地容量が発生することも関係している。
【0013】
これを改善するため、入力側と出力側にチップインダクタ等を接続すれば、インピーダンス不整合による損失は減るが、部品点数の増加とそれに伴う部品実装面積の増大、及びコストアップ等のデメリットが生ずる。また、インピーダンス整合用のインダクタをマイクロストリップラインやストリップラインにて、図18の実装基板に内蔵することも考えられるが、最近のSAWデバイスの小型化、薄型化要求により、十分な大きさのインダクタンスを実装基板に内蔵することが非常に困難となっている。
また、入力配線及び出力配線に生じる対地容量を低減することで、インピーダンス不整合による損失は小さくなるが、本願発明者の検討では、0.2pF程度の対地容量が入力配線及び出力配線に生ずることは避けられず、これ以上低減することは困難であった。特に圧電基板にLiTaO3やLiNbO3などの比誘電率の大きな材料を用いた場合は、SAWチップ上の配線パターンの対地容量も無視できない大きさとなる。このように、従来のラダー型SAWフィルタの設計手法では、GPS用RFフィルタに要求される規格を十分に満たすフィルタが実現できないという問題があった。
【0014】
また、このようなラダー型フィルタをRF回路や通信装置に使用した場合、ラダー型フィルタ単体で有する対地容量に加えて、ラダー型フィルタが実装されるRF回路や通信装置の回路基板の対地容量も加わることになり、RF回路や装置にも様々な不具合が生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る請求項1の発明は、並列腕に共振周波数がfrpであり反共振周波数がfapである第1の共振子が、直列腕に共振周波数frsであり反共振周波数がfasである第2の共振子が配置されたラダー型フィルタにおいて、
Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ最外側共振子と入出力端子との間の入力配線と出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内でラダー型フィルタを構成する。
請求項2の発明は、底部に表面実装用の外部入力電極と外部出力電極と外部接地電極とを備えた絶縁基板と、該絶縁基板の上部に配した上部入力電極と上部出力電極と上部接地電極とを備えた実装基板と、圧電基板の一方の主表面に入力パッド電極と出力パッド電極と接地パッド電極と第1及び第2のSAW共振子を備えたとSAWチップと、前記外部入力電極と前記上部入力電極と前記入力パッド電極とを結ぶ入力配線と、前記外部出力電極と前記上部出力電極と前記出力パッド電極とを結ぶ出力配線と、を備え、共振周波数(frp)及び反共振周波数(fap)を有する前記第1のSAW共振子が並列腕に配され、共振周波数(frs)及び反共振周波数(fas)を有する前記第2のSAW共振子が直列腕に配されたラダー型SAWフィルタにおいて、
Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、
Δf/foが−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ前記入力配線と前記出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内でラダー型フィルタを構成する。
請求項3の発明は、請求項1あるいは2に記載のラダー型フィルタにおいて、共振子間を結ぶ接続パターンの対地容量の総和が1.5pF以下でラダー型フィルタを構成する。
請求項4の発明は、少なくとも3つの直列腕と、少なくとも2つの並列腕とを有した請求項1乃至3に記載のラダー型フィルタにおいて、最外側の直列腕に配置された共振子の共振周波数よりも、2つの並列腕の間に配置された直列腕の共振子の共振周波数の方を高く設定してラダー型フィルタを構成する。
請求項5の発明は、少なくとも2つの直列腕と、少なくとも3つの並列腕とを有した請求項1乃至3に記載のラダー型フィルタにおいて、最外側の並列腕に配置された共振子の反共振周波数よりも、2つの直列腕の間に配置された並列腕の共振子の反共振周波数の方を低く設定してラダー型フィルタを構成する。
請求項6の発明は、前記圧電基板が回転YカットX伝搬のLiTaO3であり、通過域の挿入損失を1.5dB以下としたとき比帯域幅が1.27%以上2.36%未満である、請求項2乃至5の何れかに記載のラダー型フィルタである。
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかのラダー型フィルタをGPS受信回路に搭載して装置を構成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のラダー型SAWフィルタは、インダクタを用いないで構成するため、フィルタの小型化が可能になり、且つ中心周波数における挿入損失を低減すると共に、通過域近傍の保証減衰量を改善した狭帯域ラダー型SAWフィルタを実現できるので、RF回路や通信装置の性能を向上するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明に係るラダー型SAWフィルタの第一の実施の形態を示す図であって、同図(a)は回路構成、同図(b)は構造を示す概略断面図である。第一実施形態のラダー型SAWフィルタの回路構成は、図1(a)に示すように従来の図17に示したものと同様に、直列腕SAW共振子Xsを入出力双方の最外側共振子とし、これらの内側にそれぞれSAW共振子Xpを2つ直列接続した構造の並列腕を配置し、これら2つの並列腕の間にSAW共振子Xsを2つ直列接続した構造の直列腕共振子を配置して梯子状に構成したラダー型SAWフィルタである。
また、ラダー型SAWフィルタの構造は、図1(b)に示すように従来の図18に示したものと同様にチップ・サイズ・パッケージ(CSP)の構造をしており、図18に示すものと共通部分に同じ符号を付して説明は省略する。
【0018】
図2(a)、(b)、(c)及び図3は、図1(a)に示すフィルタ回路の直列腕SAW共振子Xsの共振周波数をfrs、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数をfapとし、Δf=frs−fap、fo=((frs+fap)/2)としたときの、Δf/foとラダー型SAWフィルタのGPS帯域内最大挿入損失との関係を表した図である。図1(a)に示すCin、Coutは入力配線及び出力配線の対地容量を表している。図1(a)に示したラダー型フィルタに用いるSAW共振子のパラメータは、波長λ以外は図21に用いたものと同じとし、SAW共振子の波長λはΔf/foに応じて設定している。図2(a)、(b)、(c)及び図3では、対地容量値Cin、Coutをパラメータとし、Δf/foとGPS帯域内最大挿入損失との関係を求めるべく、SAW共振子の実測Sパラメータを用いて、回路解析を行った(以下、このようなシミュレーション方法を集中定数によるシミュレーションと称す)。図2(a)、(b)、(c)及び図3に示すように、入力配線及び出力配線に対地容量Cin、Coutを考慮すると、Δf/foが負となる領域にGPS帯域内最大挿入損失値が最小となるΔf/foが存在することが分かった。これはΔf/foを負に設定することで、並列腕共振子Xpと直列腕共振子Xsの各々の誘導領域が通過帯域中央近傍(GPS帯)で重なり合い、その重なり合った誘導領域が入力配線や出力配線に発生する対地容量を打ち消すように作用するためと考えられる。
【0019】
図4は、図1(a)のラダー型フィルタのΔf/foと、1575.42MHzにおける入力インピーダンスの虚数部との関係を表した図である。対地容量Cin、Coutが存在しない場合(Cin=Cout=0pF)は、Δf/foが0の時にインピーダンスの虚数部が0Ωとなるが、対地容量が存在する場合はΔf/foが負となる領域でインピーダンスの虚数部が0Ωとなり、インピーダンス不整合による損失が最小となる。さらに、Δf/foを負側にその絶対値を大きくしていくとインピーダンスは誘導性となり、インピーダンス不整合による損失が大きくなることが分かった。インピーダンスの虚数部が0ΩとなるΔf/foは対地容量Cin、Coutの値によって異なり、対地容量の値が大きくなるほど、インピーダンスの虚数部が0ΩとなるΔf/foは負側にその絶対値が大きくなることが判明した。
【0020】
以上のシミュレーションの結果、入力配線や出力配線に対地容量が存在する場合は、GPS帯域内最大挿入損失値が最小となるΔf/foは、Δf/foが負となる領域に存在すること、その値は対地容量の値が大きくなるに応じて負側にその絶対値が大きくなることが判明した。しかし、Δf/foを負側にその絶対値を大きくし過ぎると、フィルタの比帯域幅が要求規格より大幅に狭くなる虞がある。さらに、図2(a)、(b)、(c)及び図3を比較すると、対地容量Cin、Coutが大きくなるほど、帯域内最大挿入損失が最小となる帯域内最大挿入損失値が大きくなる傾向があることが分かった。 即ち、Δf/foと対地容量とにはそれぞれ上限と下限が存在することになる。
【0021】
GPS帯の挿入損失規格を1.5dB以下とし、1.5dB帯域幅は、SAWフィルタに加わる温度変化による周波数変動、回路基板に実装する際のリフロー工程による周波数変動、熱衝撃や機械的衝撃による周波数変動等の種々の周波数変動を考慮に入れ、その上、製造時の周波数バラツキ分も見込んで、20MHz(比帯域1.27%)以上に設定する必要がある。
図5は、図1(a)に示すラダー型フィルタを集中定数によるシミュレーションを行って求めたフィルタ特性であり、実線は対地容量Cin、Coutを共に1.8pF、Δf/foを−0.00635としたときのフィルタ特性である。一方、破線は対地容量Cin、Coutを共に2.0pF 、 Δf/foを−0.00762 にとした場合のフィルタ特性である。他のパラメータは図21と同じである。実線の帯域幅は20.7MHz、破線の帯域幅は18.5MHzであった。つまり、対地容量が1.8pFよりも大きくなると、Δf/foとして−0.00635よりも負側にその絶対値を大きくしてGPS帯における挿入損失を1.5dB以下とする最適設計を選択しても、帯域幅20MHz以上を実現することができなかった。このことより、対地容量は1.8pF以下、Δf/foは−0.00635以上にする必要があることが明らかとなった。
【0022】
前に述べたように、入力配線及び出力配線はそれぞれ0.2pF程度の対地容量が発生するのは避けられず、図2(a)の図から明らかなようにCin、Coutが共に0.2pF の場合は、Δf/foを−0.0013〜−0.00025に設定することでGPS帯における挿入損失が最小となる。つまり、入力配線及び出力配線に発生する対地容量が0.2pF〜1.8pFの範囲であれば、Δf/foを適宜設定することで、GPS帯における挿入損失を1.5dB以下、帯域幅を20MHz以上(比帯域幅で1.27%以上)のラダー型SAWフィルタが実現できることが分かった。
また、Δf/foの下限値は前述したように、−0.00635であるが、Δf/foの上限値は図2(a)から0未満であればよいことになる。
以上の結果より、−0.00635 ≦ Δf/fo < 0を満たし、且つ入力配線及び出力配線に発生する対地容量を0.2〜1.8pF の範囲内であれば、チップインダクタ等を用いることなくGPS帯域内におけるインピーダンス不整合による損失を低減でき、帯域幅20MHz以上の低損失なラダー型SAWフィルタを実現できることが分かった。
【0023】
図6は、直列腕SAW共振子Xsの共振周波数frsを1572.423MHz、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数fapを1578.416MHzとし、Δf/foを−0.00380に設定した場合の電磁界解析によるシミュレーションで求めた伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。Δf/foを−0.00380にすべく各腕のSAW共振子の波長λを変更した以外は、図21に用いたパラメータと同じとした。入力配線及び出力配線に発生する対地容量はそれぞれ0.499pF、0.516pFとした。図6から明らかなように帯域幅は32.5MHz(比帯域幅で2.06%)となり、減衰特性も十分に規格を満たした良好な特性が得られた。
図7(a)、(b)はそれぞれ入出力側からみたインピーダンス特性のスミスチャートで、従来例である図22に比べてGPS帯における入力インピーダンス及び出力インピーダンスの虚数部が小さくなっていることが分かる。
【0024】
図8(a)、(b)は従来のラダー型SAWフィルタと本発明によるラダー型SAWフィルタとの伝送特性の比較であり、実線が第一の実施例によるラダー型SAWフィルタの伝送特性、破線が従来のラダー型SAWフィルタの伝送特性である。本発明によるラダー型SAWフィルタは、従来のラダー型SAWフィルタよりも挿入損失が小さく、しかも狭帯域になっているため、MCA帯減衰量を保証する際の製造マージンが従来のラダー型SAWフィルタより余裕を持って確保できるようになった。
【0025】
図9は本発明に係る第二の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図であって、図1(a)と異なるところは直列腕共振子Xs間の配線に発生する対地容量Ci(=C1、C2、C3)を考慮して回路設計を行うところである。図9において直列腕共振子Xs間の配線に発生する対地容量C1、C2、C3の総和を1.5pF以下とし、これに本発明の第一の実施例の手法を用いれば、第一の実施例のラダー型SAWフィルタよりも広帯域なラダー型フィルタが実現できることが分かった。
図10は第二の実施例によるラダー型フィルタを集中定数によるシミュレーションで求めた伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。破線が第一の実施例による伝送特性、実線が第二の実施例による伝送特性である。ラダー型SAWフィルタの入力配線及び出力配線に発生する対地容量Cin、Coutを共に0.5pF、Δf/foを−0.00254、波長λ以外の諸パラメータは図21と同じものを用いた。図10の実線と破線とでは、直列腕SAW共振子Xs間の配線に発生する対地容量のみが異なっている。破線の第一の実施例では、直列腕SAW共振子Xs間の配線に発生する対地容量を0pFとしており、実線の第二の実施例では、直列腕SAW共振子Xs間の配線に発生する対地容量をC1=0.1pF,C2=0.5pF,C3=0.1pFとして、直列腕SAW共振子間の配線に発生する対地容量の総和(C1+C2+C3)を0.7pFとしている。破線の第一の実施例では帯域幅29.5MHz、実線の第二の実施例では帯域幅36.7MHzとなり、第二の実施例の方が第一の実施例よりも広帯域なラダー型フィルタが実現できることが分かった。
また、図10(b)から明らかなとおり、第二の実施例の方が第一の実施例よりもMCA帯及びインマルサット帯での減衰量が大きくなることも判明した。
【0026】
図11は、第二の実施例における直列腕共振子Xs間の配線に生ずる対地容量Ciの総和の上限値を説明するための図である。破線は対地容量C1、C2、C3を共に0.7pF(総和が2.1pF)として集中定数によるシミュレーションで求めた伝送特性である。実線はC1、C2、C3を共に0.5pF(総和が1.5pF)としたの場合の伝送特性である。その他のパラメータは図21のものと同じである。図11から明らかなように、直列腕共振子Xs間の配線に発生する対地容量Ciの総和が1.5pFを超えると、GPS帯における挿入損失が1.5dB以上となることがわかった。対地容量Ciを種々変えてシミュレーションを行ったが、対地容量Ciの総和が1.5pFを超えると挿入損失が1.5dB以上となった。対地容量Ciの総和は1.5pF以下とする必要がある。
【0027】
図12は従来のラダー型フィルタと第二の実施例を用いたラダー型SAWフィルタとの伝送特性を比較した図である。破線は従来のラダー型SAWフィルタの伝送特性で、Δf/fo=0.00127とし、直列腕共振子Xs間の配線に発生する対地容量Ciを全て0pFとした。実線は第二の実施例によるラダー型SAWフィルタの伝送特性で、Δf/foを−0.00254とし、対地容量C1を0.1pF、C2を0.5pF、C3を0.1pFとした。その他のパラメータは図21と同じものを用いた。図12(a)より従来のラダー型SAWフィルタ(破線)では、GPS帯域内最大挿入損失が1.12dB、帯域幅が36.0MHzであるのに対し、本発明の第二の実施例ではGPS帯域内最大挿入損失が0.91dB、帯域幅が36.7MHz(比帯域2.33%)となり、第二の実施例のラダー型SAWフィルタは、従来のものより広帯域で、且つ低損失な特性であることが分かった。また、図12(b)は同図(a)と同一のものについて減衰特性を示すものであり、これから明らかなように、第二の実施例を用いたラダー型SAWフィルタの減衰特性の方が、従来のものより急峻な特性であり、MCA帯減衰量やインマルサット帯減衰量を保証する上で、周波数バラツキ等の製造マージンがより大きくなる。
なお、図9に記載の対地容量C1、C2、C3の少なくとも一つが直列腕共振子Xs間の配線のみで実現できない場合、その容量を圧電基板上に形成したくし型キャパシタにて構成しても良い。
【0028】
図13は本発明に係る第三の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成であって、直列腕SAW共振子Xsと、2つのSAW共振子Xpを直列接続した並列腕と、2つのSAW共振子Xs2を直列接続した直列腕と、2つのSAW共振子Xpを直列接続した並列腕と、直列腕SAW共振子Xsと、を交互に接続して梯子状に構成する。そして、並列腕共振子Xpと最外側に配置する直列腕共振子Xsとは−0.00635 ≦ Δf/fo < 0を満たすようにし、2つの並列腕の間に配置する直列腕共振子Xs2の共振周波数はXsのそれより高く設定する。
図14は、第三の実施例のラダー型SAWフィルタを、電磁界解析によるシミュレーションを用いて求めた伝送特性であり、破線が第一の実施例によるラダー型SAWフィルタの伝送特性、実線が第三の実施例による伝送特性である。第一の実施例の破線では、直列腕SAW共振子Xsの共振周波数frsは1572.423MHz、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数fapは1578.416MHz、Δf/foは−0.00380とし、入力配線及び出力配線に発生する対地容量はそれぞれ0.499pF,0.516pFである。第三の実施例の実線では、Xs2の波長λのみを小さくし、Xs2の共振周波数frs2は1575.428MHzとしている。つまり、Xs2の共振周波数frs2はXsの共振周波数frsより3.005MHz高く設定している。他のパラメータは図21のそれと同じとした。第一の実施例によるラダー型SAWフィルタの帯域幅は32.5MHz、GPS帯域内最大挿入損失は0.89dBであるのに対し、第三の実施例によるラダー型SAWフィルタの帯域幅は35.1MHz、GPS帯域内最大挿入損失は0.86dBとなり、GPS帯の挿入損失を劣化させることなく、広帯域な特性が実現できることが判明した。第三の実施例によるラダー型SAWフィルタの場合も、第二の実施例の手法との併用が可能である。
【0029】
図15は本発明に係る第四の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図であって、SAW共振子Xpの並列腕と、SAW共振子Xsの直列腕と、SAW共振子Xp2の並列腕と、SAW共振子Xsの直列腕と、SAW共振子Xpの並列腕と、を交互に接続して梯子状に構成する。さらに、入力配線及び出力配線に発生する対地容量Cin、Coutと、直列腕SAW共振子Xs間の配線に発生する対地容量C1を考慮している。
図15において、直列腕共振子Xsと最外側に配置される並列腕共振子Xpは −0.00635 ≦ Δf/fo < 0を満たすように設定するが、第四の実施例では、さらに2つの直列腕の間に配置される並列腕共振子Xp2の反共振周波数をXpのそれより低く設定する。このように設定することにより、第三の実施例と同様の効果、すなわちGPS帯の挿入損失を劣化させることなく広帯域な特性を実現できることがシミュレーションの結果分かった。
第四の実施例によるラダー型SAWフィルタの場合も、第二の実施例の手法との併用が可能である。図15の回路構成と第二の実施例との併用を行う場合、直列腕SAW共振子間の配線に発生する対地容量C1を1.5pF以下にすれば良い。
【0030】
図13、15よりもラダー回路の段数を増やした場合、本発明の第二、第三、第四の実施例を複数または全て併用することも可能である。
本発明に係るラダー型SAWフィルタが圧電基板に回転YカットX伝搬のLiTaO3を用いると、比帯域幅1.27%以上2.36%未満で低損失且つ、急峻な伝送特性が実現できる。つまり、特開平10−126212号公報にも開示されているようにラダー型SAWフィルタでは比帯域幅2.36%未満の狭帯域フィルタでは、不十分な伝送特性しか得られないというのが常識となっていたが、本発明により狭帯域であっても良好な伝送特性が実現できるようになった。
【0031】
また、本発明によるラダー型SAWフィルタをRF回路や通信装置(例えばGPS受信回路やGPS受信機、あるいはそれらを搭載した携帯電話など)に用いる場合、ラダー型SAWフィルタ単体で有する入力配線や出力配線の対地容量に、実装される回路基板の対地容量がさらに加わることになる。その場合でも、ラダー型SAWフィルタを回路基板へ実装した後、入力配線及び出力配線の各々の対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内となるようすれば、−0.00635≦Δf/fo<0の範囲内で、ラダー型SAWフィルタのΔf/foを適宜設定することにより、低損失なRF回路や干渉波に強い通信装置を実現することができる。
【0032】
以上では、ラダー型SAWフィルタの構成要素である共振子にSAW共振子を用いる場合を説明したが、共振子が圧電薄膜共振子、セラミックを用いたバルク波共振子、同軸型誘電体共振器等の場合でも同様の効果を奏する。
【0033】
また、上記各実施形態例では3つの直列腕SAW共振子と、2つの並列腕SAW共振子とが梯子状に形成されたラダー型SAWフィルタと、2つの直列腕SAW共振子と、3つの並列腕SAW共振子とが梯子状に形成されたラダー型SAWフィルタについて述べたが、並列腕SAW共振子を第一のSAW共振子、直列腕SAW共振子を第二のSAW共振子とすれば、第一のSAW共振子を並列腕に、第二のSAW共振子を直列腕に配したラダー型SAWフィルタと記述することにより、ラダー型SAWフィルタを一般化することが出来る。
【0034】
なお、特開2004−242281号公報にはΔf/foが負となるラダー型SAWフィルタについて記述されているが、本発明とは以下に述べるように根本的な相違点がある。
特開2004−242281号公報の発明の目的の一つは特開平10−126212号公報と同等または同等以上の通過帯域の広帯域化を目的としているが、本発明の目的は特開平10−126212号公報よりも狭帯域なラダー型SAWフィルタを良好な特性にて実現することであり、特開2004−242281号公報目的と本発明の目的とは異なる。
また、特開2004−242281号公報には、直列腕共振子にインダクタが並列に接続されている第1の直列腕共振子と、インダクタが接続されていない第2の直列腕共振子とからなることが必須となっているが、本発明にこれを適用した場合、上述の本発明の効果は全く得られなかった。
【0035】
本発明では、入力配線及び出力配線の対地容量が数値限定されており、その限定の根拠についても説明しているが、特開2004−242281号公報では対地容量に関する記述はない。仮に、入力配線及び出力配線に対地容量が本質的に発生するのは避けられないことは周知の事実であるとしても、その浮遊容量が、並列腕共振子と直列腕共振子との誘導領域同士をオーバーラップさせることで打ち消されるという発想を容易に想致することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るラダー型SAWフィルタの第1の実施例の形態を示す図で、(a)は回路図、(b)はその構造を示した概略断面図である。
【図2】(a)〜(c)は入力配線及び出力配線の対地容量をパラメータとしたときのΔf/f0と帯域内最大挿入損失との関係を示す図である。
【図3】入力配線及び出力配線の対地容量をパラメータとしたときのΔf/f0と帯域内最大挿入損失との関係を示す図である。
【図4】入力配線及び出力配線の対地容量をパラメータとしたときのΔf/f0とインピーダンス虚数部との関係を示す図である。
【図5】実線は対地容量Cin=Cout=1.8pF 、 Δf/fo=−0.00635のときのフィルタ特性、破線は破線は対地容量Cin=Cout=2.0pF 、 Δf/fo=−0.00762 のときのフィルタ特性である。である
【図6】直列腕SAW共振子Xsの共振周波数frs=1572.423MHz、並列腕SAW共振子Xpの反共振周波数fap=1578.416MHz、Δf/fo=−0.00380のときの電磁界解析によるシミュレーションの伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。
【図7】(a)、(b)入出力側からみたインピーダンスのスミスチャートである。
【図8】実線は第一の実施例によるラダー型SAWフィルタの伝送特性、破線は従来の伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。ある
【図9】第二の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図である。
【図10】破線は第一の実施例による伝送特性、実線は第二の実施例による伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。
【図11】破線は第二の実施例の対地容量C1、C2、C3を共に0.7pF、実線はC1、C2、C3を共に0.5pFとしたときの伝送特性である。
【図12】実線は第二の実施例でΔf/fo=−0.00254、対地容量C1=0.1pF、C2=0.5pF、C3=0.1pFのときの伝送特性、破線は従来のラダー型SAWフィルタでΔf/fo=0.00127、対地容量Ci=0pFときの伝送特性で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。
【図13】第三の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成でる。
【図14】電磁界解析によるシミュレーションで、実線が第三の実施例による伝送特性、破線が第一の実施例による伝送特性である。
【図15】第四の実施例のラダー型SAWフィルタの回路構成である。
【図16】(a)は従来のラダー型SAWフィルタの基本区間を示す図、(b)はリアクタンス曲線とフィルタ特性を示す図である。
【図17】従来のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図である。
【図18】従来のラダー型SAWフィルタの構造を示す概略断面図である。
【図19】直列腕SAW共振子の電極パターンを示す図である。
【図20】並列腕SAW共振子の電極パターンを示す図である。
【図21】従来のラダー型SAWフィルタの伝送特性を示す図で、同図(a)はパスバンド特性、同図(b)は減衰特性である。
【図22】従来のラダー型SAWフィルタのインピーダンス特性で、(a)は入力側から、(b)は出力側からみたスミスチャートである。
【図23】従来のラダー型SAWフィルタの回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
Xs、Xs2 直列腕SAW共振子
Xp、Xp2 並列腕SAW共振子
Cin 入力配線の対地容量
Cout 出力配線の対地容量
C1、C2、C3 直列腕共振子間配線の対地容量
Δf Δf=frs−fap
f0 f0=(frs+fap)/2
1 SAWチップ
2 IDT電極
3 パッド電極
4 アルミナセラミック基板
5 電極
6 金属バンプ
7 封止用樹脂
8 空間
9 外側電極
10 内部配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列腕に共振周波数がfrpであり反共振周波数がfapである第1の共振子が、直列腕に共振周波数frsであり反共振周波数がfasである第2の共振子が配置されたラダー型フィルタにおいて、
Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ最外側共振子と入出力端子との間の入力配線と出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内であることを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項2】
底部に表面実装用の外部入力電極と外部出力電極と外部接地電極とを備えた絶縁基板と、該絶縁基板の上部に配した上部入力電極と上部出力電極と上部接地電極とを備えた実装基板と、圧電基板の一方の主表面に入力パッド電極と出力パッド電極と接地パッド電極と第1及び第2のSAW共振子を備えたとSAWチップと、前記外部入力電極と前記上部入力電極と前記入力パッド電極とを結ぶ入力配線と、前記外部出力電極と前記上部出力電極と前記出力パッド電極とを結ぶ出力配線と、を備え、共振周波数(frp)及び反共振周波数(fap)を有する前記第1のSAW共振子が並列腕に配され、共振周波数(frs)及び反共振周波数(fas)を有する前記第2のSAW共振子が直列腕に配されたラダー型SAWフィルタにおいて、
Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、
Δf/foが−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ前記入力配線と前記出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内であることを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のラダー型フィルタにおいて、共振子間を結ぶ接続パターンの対地容量の総和が1.5pF以下であることを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項4】
少なくとも3つの直列腕と、少なくとも2つの並列腕とを有した請求項1乃至3に記載のラダー型フィルタにおいて、
最外側の直列腕に配置された共振子の共振周波数よりも、2つの並列腕の間に配置された直列腕の共振子の共振周波数の方を高く設定することを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項5】
少なくとも2つの直列腕と、少なくとも3つの並列腕とを有した請求項1乃至3に記載のラダー型フィルタにおいて、
最外側の並列腕に配置された共振子の反共振周波数よりも、2つの直列腕の間に配置された並列腕の共振子の反共振周波数の方を低く設定することを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項6】
前記圧電基板が回転YカットX伝搬のLiTaO3であり、通過域の挿入損失を1.5dB以下としたとき比帯域幅が1.27%以上2.36%未満であることを特徴とする、請求項2乃至5の何れかに記載のラダー型フィルタ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかのラダー型フィルタをGPS受信回路に搭載したことを特徴とする装置。
【請求項1】
並列腕に共振周波数がfrpであり反共振周波数がfapである第1の共振子が、直列腕に共振周波数frsであり反共振周波数がfasである第2の共振子が配置されたラダー型フィルタにおいて、
Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ最外側共振子と入出力端子との間の入力配線と出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内であることを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項2】
底部に表面実装用の外部入力電極と外部出力電極と外部接地電極とを備えた絶縁基板と、該絶縁基板の上部に配した上部入力電極と上部出力電極と上部接地電極とを備えた実装基板と、圧電基板の一方の主表面に入力パッド電極と出力パッド電極と接地パッド電極と第1及び第2のSAW共振子を備えたとSAWチップと、前記外部入力電極と前記上部入力電極と前記入力パッド電極とを結ぶ入力配線と、前記外部出力電極と前記上部出力電極と前記出力パッド電極とを結ぶ出力配線と、を備え、共振周波数(frp)及び反共振周波数(fap)を有する前記第1のSAW共振子が並列腕に配され、共振周波数(frs)及び反共振周波数(fas)を有する前記第2のSAW共振子が直列腕に配されたラダー型SAWフィルタにおいて、
Δf=(frs−fap)、fo=((frs+fap)/2)と定義したとき、
Δf/foが−0.00635≦Δf/fo<0の関係を満たし、且つ前記入力配線と前記出力配線の各々に発生する対地容量が0.2〜1.8pFの範囲内であることを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のラダー型フィルタにおいて、共振子間を結ぶ接続パターンの対地容量の総和が1.5pF以下であることを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項4】
少なくとも3つの直列腕と、少なくとも2つの並列腕とを有した請求項1乃至3に記載のラダー型フィルタにおいて、
最外側の直列腕に配置された共振子の共振周波数よりも、2つの並列腕の間に配置された直列腕の共振子の共振周波数の方を高く設定することを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項5】
少なくとも2つの直列腕と、少なくとも3つの並列腕とを有した請求項1乃至3に記載のラダー型フィルタにおいて、
最外側の並列腕に配置された共振子の反共振周波数よりも、2つの直列腕の間に配置された並列腕の共振子の反共振周波数の方を低く設定することを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項6】
前記圧電基板が回転YカットX伝搬のLiTaO3であり、通過域の挿入損失を1.5dB以下としたとき比帯域幅が1.27%以上2.36%未満であることを特徴とする、請求項2乃至5の何れかに記載のラダー型フィルタ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかのラダー型フィルタをGPS受信回路に搭載したことを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−135921(P2006−135921A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348699(P2004−348699)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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