説明

ラフィノース結晶の製造方法

【課題】ラフィノース結晶の製造において、従来行われてきた冷却結晶化法に比して、製造時間を短縮し且つ結晶粒径を自由に調整することのできる新しい結晶化方法を開発する。
【解決手段】蒸発結晶化法、例えばラフィノース含有液調製工程、ラフィノース含有液濃縮工程、種晶添加工程、減圧下での結晶成長工程、微細結晶の溶解工程、助晶工程、遠心分離(分蜜)によるラフィノース結晶回収工程からなる蒸発結晶化法により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラフィノース結晶の製造方法に関するものであり、更に詳細には、従来専ら行われていた冷却結晶化法とは全く異なる蒸発結晶化法によってラフィノース含有溶液からラフィノース結晶を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラフィノースは、スクロースのグルコシル基の第6位の炭素原子にガラクトースがα−1,6結合した3糖類のオリゴ糖であり、現在は、甜菜糖蜜を原料とした抽出法により製造されている。
【0003】
この甜菜糖蜜からラフィノースを製造する方法については特許文献1に、また、ラフィノース結晶の製造方法については、特許文献2、非特許文献1、2に記載されているが、すべて冷却結晶化法にてラフィノースの結晶化が行われている。
【0004】
すなわち、各先行技術文献においては、ラフィノースの結晶化について、それぞれ、次のように記載されているように、いずれも、専ら、冷却結晶化法によって結晶化が行われている。
【0005】
特公昭56−39640(特許文献1)
ビート糖蜜からクロマト分離によりラフィノース画分を回収して、結晶化を行うことを特徴とする、ラフィノースの製造方法に関するものであって、蔗糖の晶出しない濃度範囲において濃縮し、種結晶法により、ラフィノース(5水塩)を結晶として採取する。ブリックス60.8に濃縮し、ラフィノースをシードし常温にて一昼夜緩く撹拌放置したところ、針状の微細結晶が析出したことが記載されている。
【0006】
特開平11−75900(特許文献2)
ラフィノースの結晶を効率よく大量に製造する方法に関するものであって、ラフィノースを冷却結晶化で製造する際の装置及び結晶化法が具体的に記載されている。ラフィノースの結晶化は、蒸発結晶化にて行われていない。
上記から明らかなように、結晶化は、蒸発結晶化法ではなく冷却結晶化法にて行われている。
【0007】
精糖技術研究会誌第30号p.72−80(非特許文献1)。
ビート糖蜜からクロマト分離によりラフィノース画分を回収して、結晶化を行った。結晶化に関しては、ラフィノース画分を濃縮後、若干のシーディングを行い、冷蔵庫(4℃)中に24時間放置後、室温で18時間助晶したことが記載されている。
本報告においても、その記載から明らかなように、ラフィノースの結晶化は、冷却結晶化法にて行われており、蒸発結晶化では行われていない。
【0008】
精糖技術研究会誌第31号p.55−63(1982)(非特許文献2)
パイロットプラントによるラフィノースの製造試験についての報告である。ラフィノース区分をBx(ブリックス)70まで濃縮し、容量400Lのジャケット付き横型クリスタライザーに入れ、回転数10rpmでゆっくり回転させ、温度60℃付近でラフィノースの微粉末をシードし、さらに12〜16時間助晶した後分蜜することが記載されている。
具体的には、あらかじめ種用クリスタライザーで種結晶を作り、ジャケットに冷水を通したクリスタライザーに移し、80℃に加温したBx40の母液を徐々に添加して結晶を成長させた、との記載がある。
本報告においても、上記から明らかなように、ラフィノースの結晶化は、冷却結晶化法にて行われており、蒸発結晶化法では行われていない。
【0009】
当業界において、1968年ドイツ精糖工業会編集、北海道糖業株式会社訳「精糖技術(上巻)」p.434−435(非特許文献3)にも明記されているように、物質の結晶化にあたり、各種物質の温度に対する溶解度曲線(非特許文献3のp.435に示されている第1図)より、溶解度の溶解従属性が非常に強いI−曲線の場合は、「冷却結晶化法を選ぶべきである」と規定されている。これに対して、その溶解度が温度にほとんど影響を受けない物質IIの場合は、蒸発結晶化法が適していると明記されている。
【0010】
ここで、ラフィノース及び蔗糖の温度に対する溶解度曲線(図1)を見てみると、ラフィノースの場合は、溶解度曲線の傾きが大きく、溶解温度による溶解度の変化が大きい、換言すれば、溶解度の温度従属性が非常に強いことが明示されている。このことは、ラフィノースの溶解度曲線は非特許文献3に示されているI−曲線と同様であることを明示するものであり、このような場合には「冷却結晶化法を選ぶべきである」と同文献に明記されている。
【0011】
この点は、特許文献2にも、例えば発明の効果の項においても、「従来においてもラフィノースの結晶化は冷却結晶法がとられている」と明記されており、ラフィノースの結晶化は、他の方法ではなく、冷却結晶化法によることが常法であることが明示されている。
【0012】
このような技術常識にしたがい、従来のラフィノースの冷却結晶化法は、ラフィノースがスクロースや他のオリゴ糖と比較して溶解度曲線の傾きが大きく、溶液温度による溶解度の変化が大きいという特性を利用したものである。結晶化とは対象物質を過飽和の状態にして析出させることであるから、ラフィノースの結晶化は小さな温度変化で過飽和状態にできるというラフィノースの溶解度特性を生かした冷却結晶化法が適していると考えられてきた。そのため、ラフィノース結晶の製造法は専ら冷却結晶化法が採用されてきた。
【0013】
また、図1に示した溶解度曲線を見れば、ラフィノースは、これを暖かい内に溶解しておけば室温に放置しておくだけできわめて容易に結晶化してくることは当業者ならずとも容易に理解し得ることである。してみれば、このようにきわめて簡単に結晶化するラフィノースについて、わざわざエネルギーを要する煎糖処理すること、つまり、蒸発結晶化法によって結晶化することは考えられないといわざるを得ない。事実、蒸発結晶化法によってラフィノースを結晶化した成功例についての報告は未だなされていない。
【0014】
本発明は、このような技術常識にあえて反して従来からの技術常識として行われてきた冷却結晶化法にかえて従来全く想像もされなかった蒸発結晶化法にあえて着目し、蒸発結晶化法をはじめてラフィノースの結晶化に適用したところ、結晶化に成功した。そのうえ、結晶化時間を大幅に短縮できるだけでなく、結晶の大きさを自由に調整できるという著効、特に工場での大量製造に好適であることも確認し、本発明を完成したものである。
【0015】
このように、本発明は従来想像されたこともなく全く実施もされてもいなかった蒸発結晶化法をラフィノースの結晶化にはじめて成功しただけでなく、きわめて顕著な効果が奏される点でも特徴的であり、このように卓越した本発明は、充分に新規性及び進歩性に関する要件を具備するものである。
【特許文献1】特公昭56−39640号公報
【特許文献2】特開平11−75900号公報
【非特許文献1】精糖技術研究会誌、第30号、p.72−80(1982)
【非特許文献2】精糖技術研究会誌、第31号、p.55−63(1982)
【非特許文献3】ドイツ精糖工業会編集、北海道糖業株式会社訳、「精糖技術(上巻)」、p.434−435(1968)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、ラフィノースの需要の高まりにともない、ラフィノースの製造能力を上げるために、短時間で結晶を製造することができ、さらに、製造する結晶粒径を調整することが可能なしかも容易な結晶化方法、それも大量に処理できる工業化にも対応できる新規にして有用なラフィノースの結晶化方法を新たに開発する目的でなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決する目的でなされたものであって、従来専ら行われていた冷却結晶化法では所期の目的(短時間結晶化、結晶粒径の調整)が達成されないことを確認し、その結果、発想の転換の必要性を認めた。
【0018】
そこで本発明者らは、各方面から検討した結果、技術常識上そしてまた溶解度曲線からも明らかなように、ラフィノースの結晶化には冷却結晶化法が適しており、実際の製造にも専ら冷却結晶化法が用いられているにもかかわらず、これを改良するのではなく、全く別の方法で課題を解決することとし、冷却結晶化法とは対極をなし、しかも従来行われたこともない蒸発結晶化法にはじめて着目した。
【0019】
そして、本発明者らは、ラフィノース含有液を蒸発結晶化処理したところ短時間で十分な大きさのラフィノース結晶を析出することができ、またその際、結晶化条件を調整することにより、結晶粒径を任意に調整できることをはじめて見出した。
【0020】
本発明は、この有用新知見に基づき更に研究の結果遂に完成されたものであって、ラフィノース含有液から従来行われたことのない蒸発結晶化法によりラフィノース結晶を回収すること、を特徴とするラフィノース結晶の製造方法を基本的技術思想とするものである。
【0021】
本発明の実施態様は、次のとおりである。
(1)ラフィノース含有液から蒸発結晶化法によりラフィノース結晶を回収すること、を特徴とするラフィノース結晶の製造方法。
(2)ラフィノース含有液のラフィノース純度が乾燥固形分あたり50%以上、好ましくは55〜95%、好適には60〜90%であること、を特徴とする(1)に記載のラフィノース結晶の製造方法。
(3)ラフィノース含有液を固形分濃度(固形分含量)で40重量%以上、好ましくは45〜75重量%、好適には48〜65重量%に濃縮した後に結晶化すること、を特徴とする(1)又は(2)に記載のラフィノース結晶の製造方法。
(4)ラフィノース含有液の濃縮液に種晶を加えること、を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のラフィノース結晶の製造方法。
(5)ラフィノース含有液の濃縮液に種晶を加えた後、絶対圧100〜10mmHg、好ましくは85〜65mmHg、好適には75〜70mmHgで温度を30〜70℃に維持しながら結晶を成長させること、を特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のラフィノース結晶の製造方法。
(6)ラフィノース結晶を成長させた後、当該液の温度を結晶成長工程よりも2〜15℃低下させラフィノース結晶を回収すること、を特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のラフィノース結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
従来専ら行われていた冷却結晶化法では十分な大きさのラフィノース結晶を析出させるのに長時間を要するため、ラフィノースの製造工程においては、結晶化工程が製造能力の制限要因となっていた。さらに、冷却結晶化法では、ラフィノースの用途によって適する結晶粒径が異なる場合があっても、結晶粒径を調整するのが難しく、粒度分布の狭い結晶を製造することは容易ではなかった。
【0023】
これに対して本発明によれば、結晶化に要する時間が従来の冷却結晶化法に比べ短時間で済むため、ラフィノースの製造工程における結晶化工程の能力不足が解消される。また、ラフィノースの用途によって適する結晶粒径が異なる場合があっても、結晶粒径を調整することが容易であるという著効が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、蒸発結晶化法によるラフィノースの結晶化方法、ないしラフィノース結晶の製造方法に関するものである。蒸発結晶化法であればすべて使用できるが、その手順は例えば次のとおりである。
【0025】
(1)ラフィノース含有液の調製、(2)濃縮、(3)種晶のシーディング、(4)減圧下結晶成長工程、(5)微細結晶溶解(必要あれば、本工程をくり返す)、(6)助晶工程、(7)遠心分離、濾過、デカンテーション等固液分離の常套手段にて、生成したラフィノース結晶を回収する。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明でいうラフィノース含有液は、ラフィノースを含有した溶液であればすべてのものが包含されるが、その代表例として、甜菜糖蜜由来のラフィノース高含有溶液が挙げられる。甜菜糖蜜とは、甜菜糖を製造する際、砂糖白下を分蜜機で分蜜した時に生じる振蜜が該当する。ラフィノース高含有溶液とは、ラフィノース純度が乾燥固形分あたり50〜100%のものであり、甜菜糖蜜からイオン交換樹脂によるクロマト分離によって得られたラフィノース画分、ラフィノース粗結晶の振蜜、粗結晶溶解液、精製結晶の振蜜等がこれに該当する。
【0028】
本発明における蒸発結晶化にはラフィノース純度が乾燥固形分あたり50%以上、好ましくは60%以上であるラフィノース含有液を用いる。ラフィノース純度50%以下でも結晶化は可能であるが、結晶を十分な大きさまで成長させるのに時間がかかるため、実用的ではない。
【0029】
結晶化においては、まず、上記のラフィノース含有液を固形分濃度40%以上、好ましくは固形分濃度50〜70%となるまで濃縮する。低い固形分濃度で蒸発結晶化するためには、低温にして過飽和とする必要がある。低温で水を蒸発させながら結晶化させるには、減圧度を強めなければならないため、固形分濃度40%以下での結晶化は実用的ではない。
【0030】
その後、濃縮液に核となる種晶(ラフィノース微細結晶もしくはラフィノース微細結晶の懸濁液)を添加する。種晶を加えた後、絶対圧100〜10mmHgで温度を30〜70℃、好ましくは40〜60℃に維持しながら2〜12時間かけて結晶を成長させる。温度30℃以下での結晶化は、上述の通り実用的ではない。また、70℃以上の温度では結晶は析出しない。
【0031】
ラフィノース結晶を成長させている際に発生するラフィノース微結晶は、当該液を加温するか、もしくは加水することにより溶解する。必要に応じてこの工程を繰り返す。
【0032】
このようにしてラフィノース結晶を成長させた後、2〜12時間かけて当該液の温度を結晶成長工程よりも2〜15℃低下させて結晶をさらに成長させ、得られたラフィノース結晶を分蜜により回収する。
【0033】
上記工程で製造されるラフィノース結晶は、粒度分布の狭い均一な結晶である。
【0034】
本発明に係る蒸発結晶化において、生成する結晶の粒径は、加える(シードする)種晶の数と過飽和度によって制御することができる。
すなわち、シードする種晶の目数を多くし、過飽和度が高い状態で結晶化を行うと、粒径の小さな結晶が製造でき、反対に、シードする種晶の目数を少なくし、過飽和度を抑えた状態で結晶化を行うと、粒径の大きな結晶が製造できる。
【0035】
過飽和状態とは、ある物質がその温度におけるその物質の溶解度を超えて溶解している状態であり、過飽和度はその割合を示したものである。従って、同じ温度では固形分濃度が高いほど過飽和度は高く、同じ固形分濃度では温度が低いほど過飽和度が高いということになる。
【0036】
そこで、育晶時(結晶成長工程)の温度を同じとすると、シードする種晶の量(シードする種晶の目数)を多くして、固形分濃度の高い状態で育晶(結晶成長)を行うと、粒径の小さな結晶が得られ、シードする種晶の量(シードする種晶の目数)を少なくし、固形分濃度の低い状態で育晶(結晶成長)すると、大きな結晶が得られることになる。
このように、蒸発結晶化方法によれば、シードする種晶の量、結晶成長時の温度、濃度を適宜コントロールすることにより、目的とする粒径の結晶を製造することができる。
【0037】
本発明は、ラフィノースの結晶化に蒸発結晶化法をはじめて導入することによって、短時間の結晶化に成功しただけでなく、上記のように結晶の大きさを使用目的に応じて、必要とされる大きさに自由に調整することにも初めて成功したものであって、極めて顕著な効果を奏するものである。
このように、本発明はラフィノースを蒸発結晶化法によって結晶化することにより、目的とする粒径のラフィノース結晶を大量生産、工業生産することを初めて可能にするものであって、ラフィノースと蒸発結晶化法とのユニークにして極めて特異的な特徴ある有機的結合をなすものである。
【0038】
ラフィノースの蒸発結晶化手順を例示すれば次のとおりである:
(1)純度50%以上(乾燥固形分あたり)のラフィノース含有溶液を用意する。
(2)該ラフィノース溶液を固形分濃度40重量%以上に濃縮する。
(3)濃縮液に種晶(ラフィノースの微細結晶または微細結晶を少量のエタノールに懸濁させたもの)を加える。
(4)種晶を添加後、絶対圧100〜10mmHg、温度30〜70℃に維持して結晶を成長させる。
(5)結晶成長過程で析出した微細結晶を、当該液を加熱あるいは加水することにより溶解する。必要に応じてこの操作を繰り返す。
(6)ラフィノースの結晶を成長させた後、当該液の温度を2〜15℃低下させることにより、さらに結晶を成長させる。(助晶)
(7)精製した結晶を遠心分離(分蜜)により回収する。
【実施例】
【0039】
以下に本発明の実施例について既述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
ラフィノース(無水物)168gとスクロース42gを水315gに溶解し、固形分濃度40%、ラフィノース純度80%のモデル糖液(525g)を作成した。これを全量500ml容のフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターにて45℃で固形分濃度54%まで濃縮した。そこにラフィノース微細結晶170mgをエタノールに懸濁した液を添加し、低速でフラスコを回転させながら45℃、70mmHgで育晶した。4時間後、遠心分離機を用いて結晶を分離した。この時の結晶化率は52%、結晶の純度は95%であった。
【0041】
(実施例2)
ラフィノース(無水物)126gとスクロース84gを水315gに溶解し、固形分濃度40%、ラフィノース純度60%のモデル糖液(525g)を作成した。これを全量500ml容のフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターにて50℃で固形分濃度62%まで濃縮した。そこにラフィノース微細結晶130mgをエタノールに懸濁した液を添加し、低速でフラスコを回転させながら50℃、72mmHgで育晶した。8時間後、遠心分離機を用いて結晶を分離した。この時の結晶化率は33%、結晶の純度は82%であった。
【0042】
(実施例3)
ラフィノース(無水物)189gとスクロース21gを水315gに溶解し、固形分濃度40%、ラフィノース純度90%のモデル糖液(525g)を作成した。これを全量500ml容のフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターにて45℃で固形分濃度48%まで濃縮した。そこにラフィノース微細結晶170mgをエタノールに懸濁した液を添加し、低速でフラスコを回転させながら45℃、70mmHgで育晶した。2時間後、減圧を止め、引き続き2時間かけて温度40℃まで下げて助晶した。その後、遠心分離機を用いて結晶を分離した。この時の結晶化率は52%、結晶の純度は98%であった。
【0043】
(実施例4)
脱塩工程を経て甜菜糖を製造する際、生産される糖蜜(固形分濃度80%)を固形分濃度60%に稀釈し、温度80℃でイオン交換樹脂によるクロマト分離を行い、ラフィノースに富む画分を得た。この画分の組成は以下の通りであった。
【0044】
固形分濃度 6%
ラフィノース 62%
スクロース 5%
その他 33%
【0045】
このラフィノース画分を固形分濃度40%まで濃縮した濃縮液を用いて結晶化を行った。この濃縮液525gを500ml容フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターにて50℃で固形分濃度60%まで濃縮した。そこにラフィノース微細結晶130mgをエタノールに懸濁した液を添加し、低速でフラスコを回転させながら50℃、72mmHgで育晶した。8時間後、遠心分離機を用いて結晶を分離した。この時の結晶化率は35%、結晶の純度は85%であった。
【0046】
なお、ラフィノースの結晶化率は、以下のようにして求めた。
ラフィノースの結晶化率(%)=(A/B)×100
【0047】
A=結晶重量(g)×結晶のラフィノース純度(%)
B=結晶化に用いた糖液中のラフィノース重量(g)
【0048】
本発明によれば、従来から行われていた冷却結晶化法が12〜16時間、長い場合には18〜24時間あるいはそれ以上の長時間を要するのに対して、本発明方法(蒸発結晶化法)によれば、早い場合には2時間あるいはそれ以内の短時間、通常、4〜8時間あるいはそれよりも短時間で結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ラフィノース及び蔗糖の温度と溶解度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラフィノース含有液から蒸発結晶化法によりラフィノース結晶を回収すること、を特徴とするラフィノース結晶の製造方法。
【請求項2】
ラフィノース含有液のラフィノース純度が乾燥固形分あたり50%以上であること、を特徴とする請求項1に記載のラフィノース結晶の製造方法。
【請求項3】
ラフィノース含有液を固形分濃度で40重量%以上に濃縮した後に結晶化すること、を特徴とする請求項1又は2に記載のラフィノース結晶の製造方法。
【請求項4】
ラフィノース含有液の濃縮液に種晶を加えること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のラフィノース結晶の製造方法。
【請求項5】
ラフィノース含有液の濃縮液に種晶を加えた後、絶対圧100〜10mmHgで温度を30〜70℃に維持しながら結晶を成長させること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のラフィノース結晶の製造方法。
【請求項6】
ラフィノース結晶を成長させた後、当該液の温度を結晶成長工程よりも2〜15℃低下させラフィノース結晶を回収すること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のラフィノース結晶の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−95281(P2009−95281A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270166(P2007−270166)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000231981)日本甜菜製糖株式会社 (58)
【Fターム(参考)】