説明

ラプチャーディスク

【課題】疲労限度を超えるような交番圧力が作用した場合でも破裂が生じないようなラプチャーディスクを提供する。
【解決手段】環状スペーサ2の一方の表面に外側シェルが取り付けられ、他方の表面に受圧部である内側シェル4が配置され、且つこれら両シェル同士間の空間部に圧力変動を緩和させ得る充填材5が配置されるとともに、内側シェル4が、環状スペーサ2に取り付けられた環状支持リング6により支持されてなるラプチャーディスクであって、環状支持リングにより内側シェルの外周部を支持するとともにこれら両対向面同士の環状隙間に、圧力変動による圧力波の伝播を軽減し得る軽減機構7を具備させ、この軽減機構を、環状支持リングおよび内側シェルに、それぞれ同心状に複数本形成された環状突起11,12にて構成するとともに、これら環状突起を互いに櫛歯状となるように配置させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラプチャーディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスエンジンを用いて発電を行うとともにその際に発生する熱エネルギー(排ガスや冷却水からの排熱)を回収するようにしたガスエンジン・コージェネ設備が採用されている。
【0003】
そして、ガスエンジン・コージェネ設備におけるガスエンジンの排ガスの排出系統においては、図7に示すように、ガスエンジン51から排出される圧力変動が大きく且つ高温の排ガスを導く排気ダクト52にはサイレンサ53が接続されるとともに、異常圧力例えば高圧が発生した場合に、大気に放出するためのガス放出管54がその分岐ダクト部52aに接続されており、さらにこのガス放出管54における分岐ダクト部52aへの接続部には、ラプチャーディスク55が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、ガスエンジン51から排出される排ガスは高温であるため、ラプチャーディスク55として、断熱材が挿入された二重構造のものが採用されている。
例えば、このラプチャーディスクは、所定厚さの環状スペーサの一方の表面に耐圧部である外側シェルが取り付けられるとともに他方の表面に受圧部である内側シェルが配置され、且つこれら両シェル同士間に形成される空間部に圧力変動を緩和させ得るとともに断熱用としてグラスウールなどの充填材(断熱材でもある)が配置され、さらに内側シェルが、上記環状スペーサの他方の表面に取り付けられた環状支持リングにより支持されたものであった。勿論、上記外側シェルに、排ガスの圧力が所定値(所謂、設定圧力である)以上になると破断するような応力集中部が形成されている。
【特許文献1】特公平06−104191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ラプチャーディスクの構成によると、内側シェルは環状支持リング上に載置された状態であるため、排ガスの圧力変動については、殆どが、両シェル同士間の空間部すなわち充填材を介して外側シェルに伝わってしまう。
【0006】
このため、上記圧力変動、所謂交番圧力が、ラプチャーディスクの設定圧力(破裂圧力ともいう)を超えない場合で且つ当該ラプチャーディスクの疲労限度に近い値またはそれを超えるような場合には、外側シェルに予め設けられている応力集中部が金属疲労を起こし、ラプチャーディスクが破裂してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、例えば疲労限度に近い値またはそれを超えるような交番圧力が作用した場合でも、応力集中部が疲労破壊するのを防止し得るラプチャーディスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るラプチャーディスクは、所定厚さの環状スペーサの一方の表面に耐圧部である外側シェルが取り付けられるとともに他方の表面に受圧部である内側シェルが配置され、且つこれら両シェル同士の空間部に圧力変動を緩和させ得る充填材が配置されるとともに、内側シェルが、上記環状スペーサの他方の表面に取り付けられた環状支持リングにより支持されてなるラプチャーディスクであって、
上記環状支持リングにより内側シェルの外周部を支持するとともにこれら両対向面同士の環状隙間に、圧力変動による圧力波の伝播を軽減し得る軽減機構を具備させたものである。
【0009】
また、本発明の他のラプチャーディスクは、上記ラプチャーディスクにおける軽減機構を、
環状支持リングおよび内側シェルに、それぞれ同心状に複数本形成された環状突起にて構成するとともに、上記環状支持リングおよび内側シェルのいずれか一方に形成された環状突起を、他方に形成された環状突起同士の間に位置させるように配置したものであり、
また環状支持リングおよび内側シェルのいずれか一方に同心状に複数本形成された環状突起と、これら環状突起同士間に配置された充填材と、上記内側シェルおよび環状支持リングのいずれか他方に形成されて上記充填材に押圧される環状突起とで構成したものであり、
また環状支持リングおよび内側シェルのいずれか一方に形成された環状突起と、上記環状支持リングおよび内側シェルのいずれか他方に形成されて上記環状突起を案内し得る環状凹部を有する係合部材とで構成したものである。
【0010】
さらに、本発明の他のラプチャーディスクは、上記各ラプチャーディスクにおける内側シェルの受圧面側に錘部材を取り付けたものであり、
また上記各ラプチャーディスクにおける外側シェルと内側シェルとの間に形成される空間部にアキュームレータを接続したものである。
【発明の効果】
【0011】
上記各ラプチャーディスクの構成によると、圧力変動が大きい排ガスの排出系統に設けられるラプチャーディスクの内側シェルとその環状支持リングとの対向面に、環状突起が櫛歯状に設けられてなる圧力変動による圧力波の軽減機構、または一方に設けられた環状突起同士間に配置された充填材に他方に設けられた環状突起が押圧されてなる圧力変動による圧力波の軽減機構、または一方に設けられた環状突起と他方に設けられて当該環状突起を案内し得る環状凹部を有する係合部材とからなる圧力変動による圧力波の軽減機構を設けたので、内側シェル側から外側シェルに伝わる圧力変動を軽減させることができ、したがって例えば疲労限度に近い交番圧力またはそれを超えるような交番圧力が作用した場合でも、ラプチャーディスク自身が破裂するのを防止することができる。
【0012】
また、ラプチャーディスクの内側シェルに錘部材を取り付けることにより、外側シェルに伝わる圧力波を一層軽減させることができ、
さらにラプチャーディスクの外側シェルと内側シェルとの間に形成される空間部にアキュームレータを接続することにより、当該空間部に伝わる圧力変動をアキュームレータにて吸収することができるので、やはり、外側シェルに伝わる圧力波を一層軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係るラプチャーディスクについて説明する。
ここでのラプチャーディスクは、背景技術の欄で説明したように、排ガスの圧力変動が大きく且つ温度が高いガスエンジンからの排ガスの排出系統に設けられるものとして説明する。なお、ガスエンジンのガス排出系統についての説明は、背景技術の欄で説明したものと同一であるため省略する。
【0014】
図1に示すように、ガスエンジンから排出される排ガスの排出系統を構成する排気ダクトに接続されたガス放出管の基端部に取り付けられるラプチャーディスク1は、概略的には、所定厚さの環状スペーサ2の一方の表面に耐圧部である外側シェル3がそのフランジ部(外周縁部)3aを介して取り付けられるとともに他方の表面には受圧部である内側シェル4が配置され、且つこれら両シェル3,4同士間に形成される空間部Sに、圧力変動による圧力波を軽減(緩和)させ得る断熱材としてのグラスウールなどの充填材5が配置されるとともに、内側シェル4が、環状スペーサ2の他方の表面に取り付けられた環状支持リング6により支持されたものであり、さらに上記環状支持リング6の内周部6aにより内側シェル4の外周部4aを支持するとともにこれら環状支持リング6と内側シェル4の外周部4aとの対向面同士間に形成される環状隙間には、圧力変動による圧力波の伝播を軽減(減衰)し得る軽減機構(減衰機構ともいえる)7が具備されたものである。なお、ここで示す環状は、正確に言うと円環状である。
【0015】
ところで、外側シェル3のフランジ部3a以外の中央本体部3bと内側シェル4については、外方に膨出するように椀状(割球面とも言う)に形成されており、当然に、外側シェル3には、図示しないが、異常な圧力、例えば高圧が作用した場合に(設定圧力を超えた場合に)破裂するように、ノッチ、スリットなどの応力集中部(破断部でもある)が予め形成されている。なお、この応力集中部は、圧力変動による圧力波を受けて振動した場合、すなわち疲労限度に近い交番圧力(疲労限度に相当する交番圧力も含まれる)または疲労限度を超えるような交番圧力を受けた場合に、疲労破壊などを起こしやすいもので、例えば通常、外側シェル3の本体中央部3bとフランジ部3aとの境界部分に形成されている。
【0016】
次に、圧力変動による圧力波の伝播を軽減し得る軽減機構7について説明する。
この軽減機構7としては、図2に示すように、環状支持リング6の内周部6aと内側シェル4の外周部4aとの対向面に、それぞれ同心状に複数本ずつ例えば3本ずつ板状の環状突起11,12が形成されるとともに、これら環状突起11,12同士は、相手方の突起同士間に形成される環状溝部13,14内に入り込むように配置されている。
【0017】
言い換えれば、櫛歯状に形成された環状突起11,12同士が互いに嵌り合ってラビリンス構造が形成されていることになる。
このように、環状突起11,12同士が互いに嵌り込み合っているため、排気ダクトからの排ガスの圧力変動による圧力波がこれら環状突起11,12同士間を通過する際に、つまりラビリンス構造により圧力損失が発生し、外側シェル3に伝わる圧力波が軽減されることになる。なお、図面上、見やすくするために、環状スペーサ2と各シェル3,4および環状支持リング6との間にそれぞれ隙間があるように図示したが、勿論、実際には密着状態にされている。
【0018】
ここで、上記ラプチャーディスク1における全体的な作用について説明しておく。
すなわち、ガスエンジンからの排ガスは排気ダクトに入るとともに、その一部はサイレンサを通過して排熱回収ボイラに導かれる。
【0019】
ところで、排気ダクト入口側の圧力が上昇した場合、排気ダクト入口とラプチャーディスク1付近との間に圧力差が生じ、これに伴って、排気ダクト入口からラプチャーディスク1付近に向かう圧力波が発生し、つまり、圧力変動が内側シェル4に伝わることになる。
【0020】
そして、この圧力変動が、ラプチャーディスク1の設定圧力を超えるような異常圧力である場合には、両シェル3,4同士間の空間部Sを介して内側シェル4から外側シェル3に圧力波が伝わり、外側シェル3に形成された応力集中部が破断して高圧の排ガスが大気に逃がされることになる。
【0021】
一方、圧力変動がすなわち交番圧力が設定圧力を越えないようなものであるとともに、ラプチャーディスク1の疲労限度に近い値である場合または疲労限度を超えるようなものである場合には、その圧力波は両シェル3,4同士間の環状隙間から空間部Sに入り外側シェル4に伝わることになるが、環状隙間に設けられた軽減機構7である環状突起11,12同士によるラビリンス構造にて、圧力波が軽減(減衰)されるため、外側シェル3に形成された応力集中部の疲労破壊が抑制され、ラプチャーディスク1自身の破裂が防止される。勿論、空間部Sに配置された充填材5が変形することにより、また環状隙間から空間部S内に入り広がることにより、圧力波が減衰される。なお、交番圧力が疲労限度に近い値またはそれを超えるような場合について説明したが、勿論、疲労限度より小さい場合でも、その圧力波は減衰される。
【0022】
このように、圧力変動が大きい排ガスの排出系統に設けられるラプチャーディスクの内側シェルとその環状支持リングとの対向面同士間の環状隙間に、板状の環状突起が互いに入り込むように設けられてなるラビリンス構造の軽減機構を設けたので、圧力変動による圧力波が外側シェルに伝わるのを抑制することができ、したがってラプチャーディスクの長寿命化を図ることができる。
【0023】
ところで、上記説明においては、軽減機構7として環状突起を櫛歯状に配置したものとしたが、例えば図3に示すように、内側シェル4の外周部4aの下面に環状突起として、例えばリング体21を環状取付材22を介して取り付けるとともに、環状支持リング6の内周部6aの上面に上記リング体21を下方から案内支持し得る環状凹部23aを有する断面がV字状の係合部材23とから構成してもよい。勿論、これらリング体21と係合部材23とにより、圧力波が外側シェル3に伝わるのを軽減(抑制)することができる。
【0024】
なお、上記リング体21および係合部材23を金属製で構成してもよく、また温度が低い場合には、合成樹脂または合成ゴムにて構成してもよい。
また、図4に示すように、軽減機構7として、環状支持リング6の内周部6aの上面に2つの板状の環状突起31,31を形成するとともに、内側シェル4の外周部4aの下面に上記両環状突起31,31同士間の環状溝部32内に入り込む板状の環状突起33を形成し、且つ上記環状溝部32内に耐熱性を有する多孔質材料であるグラスウールなどの充填材34を配置した構成にしてもよい。
【0025】
さらに、上記実施の形態(軽減機構の変形例の分も含む)において、図5に示すように、内側シェル4に所定の錘部材41を取り付けて(この場合、内側シェルの下面は、椀状ではなく水平面にされている)、外側シェル3に伝わる圧力変動による圧力波を軽減(抑制)させるようにしてもよく、また環状スペーサ2に形成された貫通穴2aに挿入された接続配管42を介してアキュームレータ43を接続して、空間部S内に伝わった圧力変動をアキュームレータ43にて吸収させることにより、外側シェル3に伝わる圧力変動による圧力波を軽減(減衰)させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係るラプチャーディスクの断面図である。
【図2】同ラプチャーディスクを示す図1のA部拡大断面図である。
【図3】同ラプチャーディスクの変形例に係る図1のA部に相当する拡大断面図である。
【図4】同ラプチャーディスクの変形例に係る図1のA部に相当する拡大断面図である。
【図5】同ラプチャーディスクの変形例に係る図1のA部に相当する拡大断面図である。
【図6】同ラプチャーディスクの変形例に係る図1のA部に相当する拡大断面図である。
【図7】従来例に係るガスエンジンの排ガスの排出系統を説明する概略構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ラプチャーディスク
2 環状スペーサ
3 外側シェル
3a フランジ部
4 内側シェル
4a 外周部
5 充填材
6 環状支持リング
6a 内周部
7 軽減機構
11 環状突起
12 環状突起
13 環状溝部
14 環状溝部
21 リング体
23 係合部材
23a 環状凹部
31 環状突起
32 環状溝部
33 環状突起
34 充填材
41 錘部材
43 アキュームレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定厚さの環状スペーサの一方の表面に耐圧部である外側シェルが取り付けられるとともに他方の表面に受圧部である内側シェルが配置され、且つこれら両シェル同士の空間部に圧力変動を緩和させ得る充填材が配置されるとともに、内側シェルが、上記環状スペーサの他方の表面に取り付けられた環状支持リングにより支持されてなるラプチャーディスクであって、
上記環状支持リングにより内側シェルの外周部を支持するとともにこれら両対向面同士の環状隙間に、圧力変動による圧力波の伝播を軽減し得る軽減機構を具備させたことを特徴とするラプチャーディスク。
【請求項2】
軽減機構を、
環状支持リングおよび内側シェルに、それぞれ同心状に複数本形成された環状突起にて構成するとともに、
上記環状支持リングおよび内側シェルのいずれか一方に形成された環状突起を、他方に形成された環状突起同士の間に位置させるように配置したことを特徴とする請求項1に記載のラプチャーディスク。
【請求項3】
軽減機構を、
環状支持リングおよび内側シェルのいずれか一方に同心状に複数本形成された環状突起と、これら環状突起同士間に配置された充填材と、上記内側シェルおよび環状支持リングのいずれか他方に形成されて上記充填材に押圧される環状突起とで構成したことを特徴とする請求項1に記載のラプチャーディスク。
【請求項4】
軽減機構を、
環状支持リングおよび内側シェルのいずれか一方に形成された環状突起と、上記環状支持リングおよび内側シェルのいずれか他方に形成されて上記環状突起を案内し得る環状凹部を有する係合部材とで構成したことを特徴とする請求項1に記載のラプチャーディスク。
【請求項5】
内側シェルの受圧面側に錘部材を取り付けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のラプチャーディスク。
【請求項6】
外側シェルと内側シェルとの間に形成される空間部にアキュームレータを接続したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のラプチャーディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−45667(P2008−45667A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222137(P2006−222137)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】