説明

ラマン活性分子がナノ粒子二量体の接合部に位置する二量体コア−シェルナノ粒子、その用途およびその製造方法

本発明は、ラマン活性分子がナノ粒子二量体の接合部に位置する構造のナノ粒子二量体に関し、より具体的には、表面にオリゴヌクレオチドで結合された金または銀コア(core)と、前記コアを取り囲む金または銀シェル(shell)とからなるコア−シェルナノ粒子二量体に関する。また、本発明は、前記コア−シェルナノ粒子二量体とその製造方法、および用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラマン活性分子がナノ粒子から構成された二量体の接合部に位置するように製造されたナノ粒子二量体に関し、より具体的には、コアの表面にオリゴヌクレオチドで結合されており、前記コアを取り囲む金または銀シェル(shell)からなるコア−シェルナノ粒子二量体に関する。コアを形成するナノ粒子は、金または銀ナノ粒子である。また、本発明は、前記コア−シェルナノ粒子二量体、その製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的サンプルおよびその他のサンプルからの単一分子に対する高感度の正確な検出は、医学診断学、病理学、毒物学、環境サンプリング、化学的分析およびその他の多い分野で広く使用可能であり、このため、ここ数年、生物−化学分野では、少量の合成物質および生体分子の代謝、分布および結合などを研究するのに特定の物質で標識されたナノ粒子および化学物質を広く使用してきた。代表的には、放射性同位元素を用いた方法、有機蛍光物質を用いた方法、無機物質の量子ドット(Quantum dots)を用いた方法がある。
【0003】
放射性同位元素を用いた方法において、放射性標識物質(Radioactive isotope)としては、生体内で広く発見されるH、12C、31P、32S、127Iなどの放射性同位体であるH、14C、32P、35S、125Iなどが広く使用される。これらの放射性同位元素は、非放射性の同位体と化学的性質がほぼ類似していて任意に置換が可能であり、放出エネルギーが比較的大きく、少量の検出も可能であるという長所があるため、長い間使用されてきた。しかし、人体に有害な放射線のため取り扱いが容易でなく、一部の同位元素の放射性は、放出エネルギーが大きい代わりに、半減期が短く、長時間の保管や実験に不便な欠点もあった。
【0004】
放射性同位元素に対する代替法として広く使用されるのは、有機蛍光物質(Organic fluorescent dyes)である。蛍光物質は、特定の波長によって活性化されると、固有の波長を有する光を発光する。特に、検索法の小型化に伴い、放射性物質も検出限界を現わして検索に長時間が要求される。これに対し、蛍光物質の場合、適切な条件で1分子あたり数千個の光子を放出することができ、単一分子水準の検出までも理論的に可能である。しかし、放射性同位元素のように活性リガンドの元素を直接置換することはできず、構造の活性関係により比較的活性に影響を与えない部分を変形して蛍光物質を連結しなければならないという限界があった。また、このような蛍光標識物質は、時間の経過によって蛍光強度が弱くなり(photobleaching)、活性化させる光の波長が非常に狭く、発光する光の波長が非常に広く、互いに異なる蛍光物質の間に干渉があるという短所を持っている。また、使用可能な蛍光物質の数が極めて限られている。
【0005】
また、半導体ナノ物質の量子ドットは、CdSe、CdS、ZnS、ZnSeなどから構成されており、大きさおよび種類に応じてそれぞれ異なる色の光を発光する。有機蛍光物質に比べて広い活性波長を有し、狭い発光波長を示すため、異なる色を発光する種類が有機蛍光物質より多い。したがって、最近、有機蛍光物質の欠点を克服するための方法として量子ドットが多く用いられている。しかし、毒性が強く、大量生産が困難であるという欠点があった。また、理論的にその種類は多様であるが、実際に使用される数は極めて限られている。
【0006】
これらの問題を解決するための方法として、最近では、ラマン分光学および/または表面プラズモン共鳴を利用した標識物質を用いている。
【0007】
その中でも、表面増強ラマン散乱法(Surface Enhanced Raman Scattering、SERS)は、金、銀などの金属ナノ構造の粗い(roughened)表面に分子が吸着する時、ラマン散乱の強度が10〜10倍以上急激に増加する現象を利用した分光法である。光を有形媒質に通過させる場合、ある程度の量は固有方向から外れるが、このような現象がラマン散乱として知られている。散乱した光の一部が光の吸収および電子の高いエネルギー準位に励起することにより、固有の刺激された光と振動数が異なり、ラマン放出スペクトルの波長はサンプル内の光吸収分子の化学組成および構造特性を示すため、ラマン分光法は、現在非常に急速な速度で発展しているナノ技術と結合し、たった1つの分子を直接測定することができる高感度の技術として発展可能であり、特に、メディカルセンサとして極めて重要に使用できるものと大きな期待が寄せられている。この表面増強ラマン分光法(SERS)の効果は、プラズモン共鳴の現象に関連付けられ、ここで、金属ナノ粒子は、金属内の伝導電子の集団カップリングにより、入射電磁放射線に応答して明確な光学的共鳴を示すため、本質的に、金、銀、銅および他の特定金属のナノ粒子は、電磁放射線の集中化効果を向上させる小型アンテナとして作用することができる。このような粒子の近傍に位置する分子は、ラマン分光法分析に対してはるかに大きな感度を示す。
【0008】
したがって、高感度DNA分析と共に、SERSセンサを用いて多様な疾病に関連する遺伝子、蛋白質(バイオマーカー)の早期診断を行おうとする研究が盛んになっている。ラマン分光法は、他の分析法(赤外線分光法)の方法とは異なり、様々な利点がある。赤外線分光法は、分子の双極子モーメントの変化がある分子の場合に強い信号を得ることができるのに対し、ラマン分光法は、分子の誘導偏極率に変化がある非極性分子の場合にも強い信号を得ることができるため、ほぼすべての有機分子が固有のラマンシフト(Raman Shift、cm−1)を持っている。また、水分子による干渉に影響されないため、蛋白質、遺伝子などの生体分子(biomolecules)の検出により好適である。しかし、低い信号強度により、長い研究期間にもかかわらず実用化される水準には至らなかった。前記表面増強ラマン散乱法の発見以来、地道な研究を重ね、蛍光分子が吸着したナノ粒子の無秩序な凝集体において単一分子水準の信号が検出可能な表面増強ラマン散乱(Surface−Enhanced Raman Scattering、SERS)が報告されて以降(Science1997、275(5303)、1102;Phys rev lett1997、78(9)、1667)、多様なナノ構造(ナノ粒子、ナノシェル、ナノ線)を用いたSERS増強現象に関する研究が報告された。このような高感度のSERS現象をバイオセンサの開発に利用するために、Mirkin研究チームは、最近、DNAと結合された金ナノ粒子を用いた高感度DNA分析に成功し、このようなフォーマットの検出限界は20fMであった(2002、Science、297、1536)。しかし、ラマン活性分子(例えば、Rhodamine6G)を有する銀(Ag)ナノ粒子の塩誘導凝集(salt induced aggregation)に基づく単一分子SERS活性基質を製造する方法は、最初の研究以来、ほとんど進んでいない。不均一に(heterogeneous)凝集されたコロイドは、単にその分画(1%未満)のみが単一分子SERS活性を有することが報告された(J Phys Chem B2002、106(2)、311)。このようにランダムに不均一になった(粗くなった)表面は、SERSに関連する多量の興味深く必須のデータを提供するが、表面形態学上の小さい変化によっても増強(enhancement)の変化が大きく変化するため、このような戦略は本質的に再現が不可能である。最近では、FangらがSERSにおける増強部位の分布の定量的な測定に関して報告した。最も密集した部位(EF>10)は、計1,000,000部位のうち64部位であったが、これらは全体のSERS強度に24%を寄与することが報告された(Science、2008、321、388)。このようなSERS信号が極大化可能な構造体を再現性あるように確保できれば、非常に信頼度の高い有用な超高感度の生体分子分析法となり得、体外診断法のほか、生体内イミジング技術としても非常に有用であると判断される。
【0009】
しかし、前の多様な分析物のSERS検出に関する方法では、典型的に基板および/または支持体上にコーティングされるコロイド金属粒子、例えば、凝集された銀ナノ粒子を用い、このような配列は、時には10〜10だけ増加した感度でSERS検出を可能とするのに対し、ヌクレオチドなどの小さい分析物の単一分子の検出はできなかった。また、SERSの利点にもかかわらず、SERS現象は、メカニズムが完璧に理解されていないだけでなく、正確に構造的に定義されているナノ物質の合成および制御の困難さと、スペクトルの測定時に用いられる光の波長、偏光方向に応じた増強効率の変化などにより、再現性および信頼性の面で解決しなければならない問題が多く、これは、ナノバイオセンサの開発および商用化を含むSERS現象の応用に大きな課題として残されている。このような問題を解決するために構造的に正確に定義されているナノ物質(well−defined nanostructure)の光学的性質に対する理解とこれを用いてSERS現象を正確に制御するための研究の必要性が非常に切実になっている。
【0010】
このため、Jeong、Proke、Schneider、Leeは、金属粒子二量体(dimer)の場合、2つ以上のナノ粒子の間に非常に強い電磁場のホットスポット(hot spotまたはinterstitial field)が形成されてSERS信号が増強されると報告し、電磁的な理論計算によれば、前記ホットスポット(hot spot)によって1012程度のSERS増強が予測される。このようにラマン検出の増強された感度は、コロイド粒子凝集体の内部で明確に均一でないが、ホットスポットの存在の有無によって異なる。しかし、このようなホットスポットの物理的構造、増強された感度のナノ粒子からの距離範囲、および感度を増強させる分析物と凝集体ナノ粒子との間の空間的関係性は、その特性が提示されていない。また、凝集されたナノ粒子は溶液中において本質的に不安定で、単一粒子分析物の検出の再現性に逆効果をもたらす。
【0011】
また、金または銀二量体構造に対する理論的なシミュレーションおよびproof−of−concept(概念証明)の試みが存在するとしても、ナノ粒子間の接合部(junction)に実際に単一分子を位置させて製造した例はなかった。金または銀ナノ粒子をSERSのよく定義された再現可能な構造を有するように合成することは、依然として挑むべき課題として残されている。
【0012】
そこで、本発明者らは、単一DNAの検出に高度の敏感度と再現性を有するナノ粒子構造物を開発しようと集中的で綿密な研究を重ねた結果、コア−シェル構造の二量体ナノ粒子の接合部(junction)に単一ラマン活性分子を位置させ、シェルの厚さを調節して前記二量体ナノ粒子間の間隔距離を特定の範囲に調節することにより、ラマン活性分子が2つのナノ粒子の接合部に位置するコア−シェル構造の二量体ナノ粒子を開発し、前記二量体ナノ粒子が非常に強化された表面増強ラマン散乱(Surface−Enhanced Raman Scattering、SERS)信号を示し、高度に再現可能なホットスポットナノ粒子であることを立証し、前記ナノ粒子のラマン散乱増強は、SERS増強因子(EEM)が〜2.7×1012までとなることを確認することにより本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明のーつの目的は、ラマン活性分子がナノ粒子二量体の接合部に位置するコア−シェル構造のナノ粒子二量体を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、前記ナノ粒子二量体の製造方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記ナノ粒子二量体を用いた分析物の検出方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、前記ナノ粒子二量体を含む分析物検出用キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様として、本発明は、表面にオリゴヌクレオチドが結合された金または銀コア(core)と、前記コアを取り囲む金または銀シェル(shell)とからなるコア−シェルナノ粒子2つの接合部にラマン活性分子が位置し、前記2つのナノ粒子がオリゴヌクレオチドを介して連結された構造を有するナノ粒子二量体に関するものである。
【0018】
より具体的には、本発明のナノ粒子二量体は、2つのナノ粒子から構成されており、それぞれのナノ粒子は、コア(金または銀)と、コアを取り囲むシェル(金または銀)とから構成されており、それぞれのナノ粒子のコアの表面にオリゴヌクレオチドが結合されてシェルの外部に露出しており、前記2つのオリゴヌクレオチド間の混成結合によって連結されている構造を持っている。また、前記混成結合がなされる部分の接合部にはラマン活性分子が位置することができる。特に、前記それぞれのナノ粒子は、オリゴヌクレオチドの一方の末端がコアの表面に結合され、前記オリゴヌクレオチドの一部は、シェルの外部に露出しており、露出した部分の配列により二量体を形成することができる。この時、それぞれ露出した2つのオリゴヌクレオチドが互いに混成結合するか、またはそれぞれ露出した2つのオリゴヌクレオチドとすべて混成結合するオリゴヌクレオチドを介して混成結合することができる。
【0019】
本発明において、用語「コア」とは、その表面にオリゴヌクレオチドが直接結合されている金属粒子を意味し、好ましくは、金または銀である。また、本発明において、用語「シェル」とは、前記コアを取り囲んでいる金属コーティング層であって、コアの表面に結合されているオリゴヌクレオチドの一部がシェルの内部に位置する。本発明において、シェルとして金または銀を使用することが好ましい。
【0020】
したがって、好ましい態様として、本発明は、i)金コアおよび銀シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体と、ii)銀コアおよび金シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体と、iii)金コアおよび金シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体と、iv)銀コアおよび銀シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体と、v)金コアおよび銀シェルからなるコア−シェルナノ粒子と、銀コアおよび金シェルからなるコア−シェルナノ粒子とが連結されたナノ粒子二量体とからなる群より選択されるナノ粒子二量体に関するものである。最も好ましくは、本発明のナノ粒子二量体は、金コアおよび銀シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体である。
【0021】
前記のような本発明のコア−シェル構造のナノ粒子二量体は、ホモ二量体(homodimer)またはヘテロ二量体(heterodimer)として存在することができる。ホモ二量体は、大きさと構造が同一のナノ粒子2つが連結されて二量体を形成したものであり、ヘテロ二量体は、大きさまたは構造が互いに異なるナノ粒子2つが連結されて二量体を形成したものである。
【0022】
本発明にかかる表面増強ラマン散乱ナノ標識粒子の中心を形成しているコア粒子は、直径が5nm〜300nmであることが好ましいが、これは、コアの直径が5nm未満であれば、ラマン表面増強効果が低下する問題があり、300nmを超えると、生物学的応用時に多くの制約を受ける問題があるからである。より好ましくは、コアの直径は、10nm〜40nmが好ましい。ナノ粒子は、形状の面においておおよそ球形であり得るが、任意の形状または不規則な形状のナノ粒子が使用可能である。
【0023】
前記コア粒子の表面にはナノシェルが導入されているが、ナノシェルは、コア粒子の表面に増強されたラマン散乱(Raman scattering)効果を与えることで、ラマン分光法による分析をより容易にする。すなわち、ナノシェルが導入されたコア粒子は、表面増強散乱効果(surface enhanced Raman scattering)が非常に大きいため、どのような化学物質のシグナルも得られるという利点がある。好ましくは、本発明のシェルの厚さは、1nm〜300nmで、より好ましくは1〜20nmである。また、シェルの厚さは、コアの大きさと使用されたDNAの長さが増加するにつれて比例的に増加することができる。
【0024】
本発明のコア粒子の表面には、1つ以上のオリゴヌクレオチドが結合されて機能化されていることを特徴とする。まず、コアAには、3’末端がチオールで改質された1つ以上の保護オリゴヌクレオチドと、同様に3’末端がチオールで改質された1つのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドとが結合できる。一方、コアBには、5’末端がチオールで改質された1つ以上の保護オリゴヌクレオチドと、同様に5’末端がチオールで改質された1つのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドとが結合できる。また、前記コアAの表面に改質されたターゲット捕捉オリゴヌクレオチド、およびコアBの表面に改質されたターゲット捕捉オリゴヌクレオチドのうちのいずれか一方には、ラマン活性分子が改質されていることを特徴とする。また、コアAに5’末端を用いた結合、コアBに3’末端を用いた結合によっても本発明に至ることができる。
【0025】
本発明において、用語「保護オリゴヌクレオチド」とは、コア粒子の表面に結合されており、ターゲット捕捉オリゴヌクレオチドがコアの表面によく結合できるようにコア粒子を安定化する一方、表面を保護する機能を果たすオリゴヌクレオチドをいう。
【0026】
本発明において、用語「ターゲット捕捉オリゴヌクレオチド」とは、ターゲットオリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドであって、コアAのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドとコアBのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドは、共に1つの共通ターゲットオリゴヌクレオチドと混成化(hybridization)されてナノ粒子二量体構造を形成する。
【0027】
本発明において、用語「ターゲットオリゴヌクレオチド」とは、コアAのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドおよびコアBのターゲット捕捉オリゴヌクレオチド共に相補的な配列を含んでおり、それぞれのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドと混成化をなすことにより、2つのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドを連結してナノ粒子二量体構造を形成する架橋の役割を果たすオリゴヌクレオチドをいい、本二量体構造を用いた最終目標分析物を意味するものではない。
【0028】
本発明の保護オリゴヌクレオチドおよびターゲット捕捉オリゴヌクレオチドは、3’末端または5’末端が表面結合官能基を有する化合物で改質され、表面結合官能基を介してコア粒子の表面に付着している。
【0029】
本発明において、用語「表面結合官能基を有する化合物」は、オリゴヌクレオチドをコア粒子の表面に付着させるために、各オリゴヌクレオチドの3’または5’末端に連結させた化合物をいう。このような表面結合官能基を有する化合物の類型は、溶液に沈殿しない小凝集体のナノ粒子を生成する限り限定されない。表面結合官能基を介してナノ粒子を架橋結合させる方法は、当分野において公知である(Feldheim、The Electrochemical Society Interface、Fall、2001、pp.22−25参照)。表面結合官能基を有する化合物の一末端は、コア粒子の表面に付着する表面結合官能基を保有するが、好ましくは、硫黄を含む基、例えば、チオール基またはスルフヒドリル基(sulfhydryl、HS)である。前記反応基は、アルコールおよびフェノールの誘導体として酸素サイトに硫黄を含むRSHの式を有する化合物であり得る。あるいは、前記反応基は、それぞれRSSR’またはRSR’の式を有するチオールエステル(thiol ester)またはジチオールエステル(dithiol ester)であり得る。あるいは、前記反応基は、アミノ基(−NH)であり得る。追加的に、前記表面結合官能基を有する化合物は、DNAプローブ、抗体、オリゴヌクレオチドおよびアミノ酸などのような生体分子に対する反応グループ(reactive group)であって、例えば、−NH、−COOH、−CHO、−NCO、およびエポキシド基のような多様な反応基に連結できる。このような多くの反応性基は、当分野において公知であり、本方法および装置に使用可能である。
【0030】
また、前記オリゴヌクレオチドにおいて、表面結合官能基を有する化合物の反対末端は、スペーサー配列を含むことができ、スペーサー配列は、コアの表面に導入されるシェルがターゲット捕捉オリゴヌクレオチドのターゲット認識配列をカバー(covering)しながら、適切なシェルの厚さを維持できる空間を提供する。本発明では、スペーサー配列の一例として、A10−PEGを用いた。
【0031】
本発明において、用語「ラマン活性分子」とは、本発明のナノ粒子二量体が1つ以上の分析物に付着した時、ラマン検出装置による分析物の検出および測定を容易にする物質をいう。本発明では、コアAの表面に改質されたターゲット捕捉オリゴヌクレオチド、およびコアBの表面に改質されたターゲット捕捉オリゴヌクレオチドのうちのいずれか一方には、ラマン活性分子が改質されていることを特徴とする。ラマン活性分子は、特定のラマンスペクトルを示すため、以降、生体分子をより効果的に分析できるようにするという利点がある。
【0032】
ラマン分光法に使用可能なラマン活性分子は、有機または無機分子、原子、複合体または合成分子、染料、天然発生染料(フィコエリトリンなど)、C60のような有機ナノ構造体、バッキーボール、炭素ナノチューブ、量子ドット、有機蛍光分子などを含む。具体的には、ラマン活性分子の例として、FAM、Dabcyl、TRITC(テトラメチルローダミン−5−イソチオシアネート)、MGITC(マラカイトグリーンイソチオシアネート)、XRITC(X−ローダミン−5−イソチオシアネート)、DTDC(3,3−ジエチルチアジカルボシアニンヨージド)、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7−ニトロベンズ−2−1,3−ジアゾール)、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、パラ−アミノ安息香酸、エリトロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、5−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシ、フルオレセイン、5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラクロロフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、6−カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、アゾメチン、シアニン(Cy3、Cy3.5、Cy5)、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、アミノアクリジン、量子ドット、炭素同素体、シアン化物、チオール、塩素、臭素、メチル、リンまたは硫黄などがあるが、これらに限定されず、使用されたラマン活性分子が明確なラマンスペクトルを示さなければならず、互いに異なる類型の分析物と特に結合したり関連付けられなければならない。好ましくは、シアニン系の蛍光維持分子のCy3、Cy3.5、Cy5、またはFAM、Dabcyl、Rhodamine系の蛍光分子を含む有機蛍光分子である。有機蛍光分子は、ラマン分析時に用いるレーザ波長と共鳴し、より高いラマン信号の検出が可能であるという利点がある。ラマン活性分子は、分析物に直接付着できるか、多様なリンカー化合物を介して付着できる。
【0033】
本発明者らは、ラマン活性分子がナノ粒子二量体の接合部(junction)に位置する場合にのみ、SERS信号の検出が可能であることを確認した。具体的には、コア−シェルモノマー構造では、ホットスポットがなく、また、たった1つのラマン活性分子が存在するため、SERS信号が検出されなかった(図3(A)−1、2)。
【0034】
他の態様として、本発明は、前記ラマン活性分子でラベリングされたコア−シェル構造のナノ粒子二量体の製造方法に関するものである。
【0035】
より具体的には、1)表面が保護オリゴヌクレオチドおよびターゲット捕捉オリゴヌクレオチドで結合されたコアAと、表面が保護オリゴヌクレオチドおよびラマン活性分子が末端に結合されたターゲット捕捉オリゴヌクレオチドで結合されたコアBとをそれぞれ製造するステップと、2)前記製造されたコアAおよびコアBにターゲットオリゴヌクレオチドを処理して混成化させることにより、二量体を形成するステップと、3)前記コアAおよびコアBの表面にそれぞれシェルを導入するステップとを含むナノ粒子二量体の製造方法に関するものである。
【0036】
ステップ1)は、それぞれ表面が保護オリゴヌクレオチドおよびターゲット捕捉オリゴヌクレオチドで結合されているコアAおよびコアBを製造するステップである。本発明の具体的な実施例では、1つのターゲット捕捉オリゴヌクレオチド配列がコア粒子の表面に結合されるように調節するために、金コア粒子Aを、3’末端がチオールで改質された2種のオリゴヌクレオチド配列である、1つ以上の保護オリゴヌクレオチドおよび1つのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドで結合した。金コア粒子Bも、5’末端がチオールで改質された2種のオリゴヌクレオチド配列によって結合した。前記2種のオリゴヌクレオチド配列のモル比は、金コア粒子の表面のオリゴヌクレオチドのナノ粒子−大きさ依存的ローディング(loading)能力に基づき、コアAに対しては99:1、コアBに対しては199:1となるように調節した(図1(A))。重要なこととして、コアBに結合されたターゲット捕捉オリゴヌクレオチド配列の末端に、ラマン信号の機能を果たすCy3、FAM、またはDabcylを結合させた。
【0037】
また、ターゲット捕捉オリゴヌクレオチド配列(target capturing sequence)が結合されないモノマー粒子を除去し、オリゴヌクレオチド改質されたコアAおよびBを精製するために、磁気(magnetic)分離技術を利用することができる。トシル(tosyl)グループマグネチックビーズ(直径1μm、インビトロジェン)は、アミン改質されたオリゴヌクレオチドの相補的配列により、それぞれコアAまたはBのターゲット捕捉配列で置換結合することができる。ターゲット捕捉配列で結合されたコア粒子のみがマグネチックビーズに相補的な混成結合をするため、反応後溶液中において外部磁場を加えて磁性ナノ粒子を分離した後、二重螺旋DNA塩基配列の溶融点(Tm)以上に昇温し、磁性ナノ粒子に結合されたコア粒子を分離することができる。
【0038】
追加的に、前記ステップ1)でコアAとコアBとをそれぞれ製造した後、コアAとコアBのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドと相補的な配列を有する磁性マイクロ粒子と混成化反応を進行し、コアAとコアBからターゲット捕捉オリゴヌクレオチドが結合されたナノ粒子のみを分離する過程をさらに含むことができる。
【0039】
ステップ2)は、前記製造されたコアAおよびコアBにターゲットオリゴヌクレオチドを加えて混成化させることにより、二量体を形成するステップである。ステップ1)でマグネチックビーズによって分離および精製されたコア粒子AおよびBの溶液は、例えば、0.3MのPBS内の十分な量のターゲットオリゴヌクレオチド配列との混成結合により、目的の二量体ナノ粒子を合成することができる。したがって、本発明にかかる二量体合成法は、非常に高い収率(70−80%)で二量体を合成することができる。
【0040】
ステップ3)として、コア粒子の表面へのナノシェル粒子の導入は、例えば、金コア粒子および銀ナノ粒子の前駆体を、溶媒の存在下に10〜100℃で反応させることによって導入されることが好ましい。前記銀ナノ粒子の前駆体は、AgNO、またはAgClOを選択することが好ましく、金ナノ粒子の前駆体は、HAuClなどのAuイオンを含むいずれの化合物も前駆体として使用可能である。また、銀イオンや金イオンを金または銀ナノ粒子に転換するのに必要な還元剤は、ヒドロキノン(hydroquinone)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、アスコルビン酸ナトリウム(Sodium Ascorbate)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。ナノシェル形成反応の溶媒は、水溶液(精製水またはリン酸バッファーなどが存在してもかまわない)が好ましい。ナノシェルの精密な厚さ調節のために、さらに安定化剤(stabilizer)を追加することができる。前記反応温度が10℃未満であれば、銀ナノ粒子を形成させるのに過度に多い時間がかかる問題があり、100℃を超えると、銀ナノ粒子が不均一に形成される問題があるため、前記範囲の温度で反応させることが好ましい。前記において、反応時間は、反応温度に応じて10〜24時間の間に調節できる。
【0041】
本発明にかかるラマン活性分子が2つのナノ粒子の接合部に位置するコア−シェル構造のナノ粒子二量体は、ナノ粒子二量体の表面またはコアの表面に、検出しようとする分析物を認識できるバイオ分子が機能化され、各種生体分子を検出するのに応用可能である。
【0042】
例えば、検出しようとする分析物は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、グリコプロテイン、リポプロテイン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、糖、炭水化物、オリゴサッカリド、ポリサッカリド、脂肪酸、脂質、ホルモン、代謝産物、サイトカイン、ケモカイン、受容体、神経伝達物質、抗原、アレルゲン、抗体、基質、代謝産物、補助因子、抑制剤、薬物、薬学物、営養物、プリオン、毒素、毒物、爆発物、殺虫剤、化学無機剤、生体有害性製剤、放射線同位元素、ビタミン、ヘテロ環芳香族化合物、発癌物質、突然変異誘発要因、痲酔剤、アンフェタミン、バルビツレート、幻覚剤、廃棄物または汚染物であり得る。また、分析物が核酸の場合、前記核酸は、遺伝子、ウイルスRNAおよびDNA、バクテリアDNA、カビDNA、哺乳動物DNA、cDNA、mRNA、RNAおよびDNA断片、オリゴヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、改質されたオリゴヌクレオチド、単鎖および二本鎖核酸、自然的および合成核酸を含む。
【0043】
また、前記分析物を認識できる、ナノ粒子二量体などの表面に結合可能なバイオ分子の非限定的な例は、抗体、抗体断片、遺伝操作抗体、単鎖抗体、受容体蛋白質、結合蛋白質、酵素、抑制剤蛋白質、レクチン、細胞癒着蛋白質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸またはアプタマーを挙げることができる。
【0044】
さらに、本発明のナノ粒子二量体は、ナノ粒子二量体全体が無機物でコーティングできる。無機物でナノ粒子二量体全体がコーティングされると、構造が変形する可能性が少なくなるため、ナノ粒子二量体の構造を安定して維持することができ、保管および使用により好ましい。前記無機物は、ナノ粒子二量体の構造を維持し、ラマン信号に影響を与えない物質であれば限定はなく、一例として、シリカを使用することができる。
【0045】
さらに他の態様として、本発明は、前記のような本発明のナノ粒子二量体を用いた分析物の検出方法を提供する。
【0046】
より具体的には、1)本発明のナノ粒子二量体を製造するステップと、2)前記ナノ粒子二量体の表面またはコアの表面に、検出しようとする分析物を認識できるバイオ分子を機能化するステップと、3)前記ナノ粒子二量体を、1つ以上の分析物を含むサンプルに露出させるステップと、4)レーザ励起(excitation)およびラマン分光法を用いて1つ以上の分析物を検出および確認するステップとを含む分析物の検出方法に関するものである。
【0047】
好ましくは、本発明の分析物は、任意の公知のラマン分光法によって検出または確認可能であり、好ましくは、表面増強ラマン分光法(SERS、Surface Enhanced Raman Scattering)、表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS、Surface enhanced resonance Raman spectroscopy)、ハイパー−ラマンおよび/または非干渉性反ストークスラマン分光法(CARS、coherent anti−Stokes Raman spectroscopy)を用いることができる。
【0048】
本発明において、用語「表面増強ラマン散乱法(SERS)」とは、粗く処理された特定の金属表面に吸着していたり、数百ナノメートル以内の距離に位置している時に発生するラマン散乱の一種で、この時、ラマン散乱の強度は、一般的なラマンの強度に比べて10〜10倍以上増加する現象を利用した分光法をいう。用語「表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)」とは、SERS活性表面での吸着物に対するレーザ励起波長の共鳴現象を利用した分光法をいう。用語「非干渉性反ストークスラマン分光法(CARS)」とは、ラマン活性媒質に固定可変の2つのレーザ光を入射させ、これらの結合によって得られる反ストークス放射のスペクトルを測定する分光法をいう。
【0049】
より具体的な態様として、本発明の前記分析物の検出方法は、1)本発明のナノ粒子二量体を製造するステップと、2)前記ナノ粒子二量体の表面またはコアの表面に、検出しようとする核酸に相補的なバイオ分子を機能化するステップと、3)試料から核酸を抽出、精製、および増幅させるステップと、4)前記増幅された核酸の特定配列にコア−シェルナノ粒子二量体を反応させて混成化を行うステップと、5)前記ナノ粒子二量体が結合された核酸にラマン分光を行うステップとを含む核酸の検出方法であり得る。また、これと同じ類型の方法を用いて核酸に関するその他の情報、例えば、サンプルに存在する1種以上の単一塩基多型性(SNP)または他の遺伝的変異の形態を検出することができ、ひいては、DNAシーケンシングにも応用可能である。
【0050】
このような実施態様において、ラマン活性基板は、1つ以上のラマン検出単位装置と作動可能に結合できる。ラマン分光法による分析物の検出のための様々な方法は、当該分野において公知である(例えば、米国特許第6,002,471号、第6,040,191号、第6,149,868号、第6,174,677号、第6,313,914号)。SERSおよびSERRSにおいて、ラマン検出の感度は、粗い金属表面、例えば、銀、金、白金、銅またはアルミニウム表面上に吸収された分子に対して10以上に増強される。
【0051】
ラマン検出装置の非限定的な例は、米国特許第6,002,471号に開示されている。励起ビームは、532nmの波長における周波数重畳されたNd:YAGレーザ、または365nmの波長における周波数重畳されたTi:サファイアレーザによって生成される。パルスレーザビームまたは連続レーザビームが使用可能である。励起ビームは、共焦点の光学器および顕微鏡レンズを通過して1つ以上の分析物を含むラマン活性基板上に焦点が集められる。分析物からのラマン放出光は、顕微鏡レンズおよび共焦点光学器によって集められ、スペクトル分離のために単色光装置と結合される。共焦点光学器としては、背景信号を減少させるための干渉フィルタ(dichroic filter)、遮断フィルタ、共焦点ピンホール、対物レンズおよび鏡の組み合わせを含む。共焦点光学器のみならず、標準フルフィールド(full field)光学器も使用可能である。ラマン放出信号は、信号をカウントしデジタル化するコンピュータとインタフェースで連結されたなだれ型光ダイオードを含むラマン検出器によって検出される。
【0052】
検出装置の他の例は、米国特許第5,306,403号に開示されており、ここでは、単光子カウント方式で作動するガリウム−砒素光電子増倍管(RCA Model C31034またはBurle Industries Model C3103402)が備えられたSpex Model1403二重格子分光計を挙げることができる。励起化供給源は、SpectraPhysics、モデル166からの514.5nm線アルゴン−イオンレーザ、およびクリプトン(krypton)−イオンレーザ(Innova70、非干渉性)の647.1nm線を含む。
【0053】
他の励起化供給源としては、337nmにおける窒素レーザ(Laser Science Inc.)、および325nmにおけるヘリウム−カドミウムレーザ(Liconox(米国特許第6,174,677号))、発光ダイオード、Nd:YLFレーザ、および/または多様なイオンレーザおよび/または染料レーザを含む。励起ビームは、バンドパスフィルタ(Corion)によりスペクトルで精製され、6X対物レンズ(Newport、Model L6X)を用いるラマン活性基板上に焦点化できる。対物レンズは、ホログラフィービームスプリッタ(Kaiser Optical Systems,Inc.、Model HB647−26N18)を用いて分析物を励起させ、ラマン信号を収集して励起ビームおよび放出されたラマン信号に対する直角形態を作るのにすべて使用可能である。ホログラフィーノッチフィルタ(Kaiser Optical Systems,Inc.)は、レイリー(Rayleigh)散乱放射線を減少させるのに使用可能である。他のラマン検出器としては、赤色増強された高感度電荷結合素子(RE−ICCD)検出システム(Princeton Instruments)が装着されたISA HR−320分光器を含む。フーリエ変換分光器(マイケルソン干渉計に基づく)、荷電注入装置、光ダイオードアレイ、InCaAs検出器、電子増倍CCD、高感度CCDおよび/または光トランジスタアレイなど、他の類型の検出器が使用可能である。
【0054】
当該分野において公知の任意の適切な形態または構成のラマン分光法または関連手法が分析物の検出に使用可能であり、ここでは、ノーマルラマンスキャッタリング、共鳴ラマンスキャッタリング、表面増強ラマンスキャッタリング、表面増強共鳴ラマンスキャッタリング、非干渉性反ストークスラマン分光法(CARS)、刺激ラマンスキャッタリング、逆ラマン分光法、刺激ゲインラマン分光法、ハイパー−ラマンスキャッタリング、分子光学レーザ試験器(molecular optical laser examiner、MOLE)またはラマンマイクロ探針またはラマン顕微鏡法または共焦点ラマンマイクロ分光器、3次元またはスキャニングラマン、ラマン飽和分光法、時間分解共鳴ラマン、ラマン解離分光法またはUV−ラマン顕微鏡法を含むが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の特定の実施態様において、ラマン検出装置は、コンピュータを含むことができる。前記実施態様は、使用されるコンピュータの類型について制限を設けない。例示的なコンピュータは、情報を相互交換するバスおよび情報処理のためのプロセッサを含むことができる。コンピュータは、RAMまたは他の動的格納装置、ROM(Read Only Memory)または他の静的格納装置およびデータ格納装置、例えば、マグネチックディスクまたは光学ディスクおよびこれに相応するドライブをさらに含むことができる。また、コンピュータは、当該分野において公知の周辺装置、例えば、表示装置(例えば、陰極線管または液晶表示)、アルファベット入力装置(例えば、キーボード)、カーソル調整装置(例えば、マウス、トラックボールまたはカーソル方向キー)およびコミュニケーション装置(例えば、モデム、ネットワークインタフェースカードまたはイーサネット、トークンリングまたはその他の類型のネットワークと結合するのに用いられたインタフェース装置)を含むことができる。
【0056】
本発明の特定の実施態様において、ラマン検出装置は、コンピュータと作動可能に結合できる。検出装置からのデータは、プロセッサによって処理され、データは主記憶装置に格納できる。標準分析物に対する放出プロファイル上のデータはさらに主記憶装置またはROMに格納できる。プロセッサは、ラマン活性基板での分析物からの放出スペクトルを比較し、サンプルの分析物の類型を確認することができる。プロセッサは、検出装置からのデータを分析し、様々な分析物の正体および/または濃度を測定することができる。互いに異なって備えられたコンピュータは、特定の履行に使用可能である。したがって、システムの構造は、本発明の相違する実施態様で異なり得る。データの収集作業後、典型的には、データはデータ分析作業に送られる。分析作業を容易にするために、検出装置によって得られたデータは、前述したように、デジタルコンピュータを用いて典型的に分析する。典型的には、コンピュータは、検出装置からのデータの収容および格納のみならず、収集されたデータの分析および報告のために適切にプログラミングされる。
【0057】
さらに他の態様として、本発明は、本発明のナノ粒子二量体を含む分析物検出用キットに関するものである。
【0058】
具体的には、検出しようとする分析物が核酸の場合には、試料に含まれた核酸を増幅するために、RT−PCRを行うために必要な要素を含むキットであり得る。RT−PCRキットは、検出対象の核酸に対する特異的なそれぞれのプライマー対のほか、テストチューブまたは他の適切なコンテナ、反応緩衝液(pHおよびマグネシウムの濃度は様々である)、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq−ポリメラーゼおよび逆転写酵素のような酵素、DNase、RNase抑制剤、DEPC水(DEPC−water)、滅菌水などをさらに含むことができる。また、定量対照区として使用される遺伝子に特異的なプライマー対をさらに含むことができる。より好ましくは、本発明のキットは、DNAチップを行うために必要な必須要素を含む検出キットであり得る。DNAチップキットは、遺伝子またはその断片に該当するcDNAがプローブで付着している基板、および蛍光標識プローブを製作するための試薬、製剤、酵素などをさらに含むことができる。また、基板は、定量対照区の遺伝子またはその断片に該当するcDNAをさらに含むことができる。
【0059】
他の具体例として、検出しようとする分析物が蛋白質の場合には、抗体の免疫学的検出のために、基質、適当な緩衝溶液、本発明のナノ粒子二量体で標識された2次抗体、発色基質などをさらに含むことができる。前記基質は、ニトロセルロース膜、ポリビニル樹脂で合成された96ウェルプレート、ポリスチレン樹脂で合成された96ウェルプレート、およびガラスからなるスライドガラスなどが使用可能である。
【0060】
このような検出キットには、当分野において一般的に用いられる道具、試薬などが含まれる。このような道具/試薬としては、好適な担体、検出可能な信号を生成できる標識物質、溶解剤、洗浄剤、緩衝剤、安定化剤などを含むが、これらに限定されない。標識物質が酵素の場合には、酵素活性を測定可能な基質および反応停止剤を含むことができる。好適な担体としては、これらに限定されないが、可溶性担体、例えば、当分野において公知の生理学的に許容される緩衝液、例えば、PBS、不溶性担体、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカリド、ラテックスに金属めっきした磁性微粒子のような高分子、その他の紙、ガラス、金属、アガロースおよびこれらの組み合わせであり得る。
【0061】
抗原−抗体複合体の形成は、組職免疫染色、放射能免疫分析法(RIA)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウエスタンブロット法(Western Blotting)、免疫沈澱分析法(Immunoprecipitation Assay)、免疫拡散分析法(Immunodiffusion Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、蛋白質チップ(protein chip)などがあり、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0062】
本発明にかかるラマン活性分子が2つのナノ粒子の接合部に位置するコア−シェルナノ粒子二量体は、ラマン活性分子が正確に2つのナノ粒子の接合部に位置しており、ラマン活性分子とナノ粒子の表面との間の距離は、銀または金ナノ粒子で正確に厚さが調節されているため、非常に強化された表面増強ラマン散乱(SERS)信号を得ることができる。しかも、たった1つのラマン活性分子が位置しているにもかかわらず、強いラマン信号を得ることができる。また、前記コア−シェルナノ粒子二量体を合成した方法などは、非常に高い純度で二量体を合成できる有用な方法であり、特に、コアA、Bの合成時のオリゴヌクレオチドの当量的調節、磁性ナノ粒子を用いたコアA、Bの精製などにより、高純度で目的のナノ構造体を合成することができた。さらに、2つのナノ粒子間のギャップは、ナノ水準に調節可能な方法でギャップ間の距離を調節することができる。したがって、このコア−シェルナノ構造は、非常に高い程度に信号が増幅されたナノ構造体であるため、これを用いたDNA、特定疾病の発病と進行に関連する蛋白質(バイオマーカー)などの分析物の検出に高度に適用可能であり、大規模ゲノム配列分析、単一塩基多型性(SNP)の検出、配列の比較、遺伝子型別分析、疾病相関および薬剤の開発などに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(A)および(B)は、マグネチック精製、DNAハイブリッド化、および銀シェルの形成過程による金ナノ粒子二量体の合成過程を示す概路図である。プローブA保護配列は、3’−HS−(CH−A10−PEG18−AAACTCTTTGCGCAC−5’、プローブAターゲット結合配列は、3’−HS−(CH−A10−PEG18−CTCCCTAATAACAAT−5’、MMP−Aの変形した配列は、3’−NH−(CH−A10−PEG18−ATTGTTATTAGGGAG−5’(Tm=38℃)である。プローブB保護配列は、5’−HS−(CH−A10−PEG18−AAACTCTTTGCGCAC−3’、プローブBターゲット結合配列は、5’−HS−(CH−A10−PEG18−ATCCTTATCAATATTAAA−Cy3−3’MMP−Bの変形した配列は、5’−NH−(CH−A10−PEG18−TTTAATATTGATAAGGAT−3’(Tm=40℃)である。下線の配列は、銀シェルの形成を促進するためにデザインされたスペーサー配列である。ターゲットDNA配列は、5’−GAGGGATTATTGTTAAATATTGATAAGGAT−3’(炭疽菌配列)である。(C)は、各二量体ナノ粒子からSERSホットスポット構造を調べるための校正されたAFM、共焦点ラマン分光器(レーザ焦点径250nm)を用いた実験装置を示したものである。
【図2】(A)は、金ナノ粒子二量体を形成する前と後の紫外線−可視光線スペクトルおよびHR−TEMイメージを示したものである。(B)は、金ナノ粒子二量体に銀シェルを導入する前と後の紫外線−可視光線スペクトルおよびHR−TEMイメージを示したものである。(C)は、銀シェルの厚さに応じて〜400nmの銀ナノパーティクルのプラズモン共鳴を示したものである。金−銀コア−シェル二量体構造のHR−TEMイメージに対応する。図示のコア−シェルナノ粒子のHR−TEMイメージであるC.1a、C.1bは、それぞれ銀シェルの厚さが5nm、10nmの金−銀コア−シェルモノマーを示す。C.2、C.3、C.4は、銀シェルの厚さがそれぞれ〜3nm、〜5nm、〜10nmの金−銀コア−シェルヘテロ二量体粒子を示す。
【図3】(A)は、金−銀コア−シェルモノマーおよびヘテロ二量体ナノ粒子のAFM(atomic force micrograph、1μm×1μm)を示す。(B)は、金−銀コア−シェルナノ粒子のモノマーまたは二量体から得た校正されたSERSスペクトルを示したものである。(C)は、514.5nmの励起レーザ、1s蓄積(1s accumulation)、サンプル100μW、レーザ焦点径250nmで得たすべてのスペクトルを示したものである。ラマンスペクトル(赤い線)は、NaCl溶液による、凝集された銀コロイドにおいてCy3改質されたオリゴヌクレオチドから得たものであり、ラマンスペクトル(黒い線)は、同様の条件においてCy3−フリーオリゴヌクレオチドから得たのである。
【図4】各分析された金−銀コア−シェル二量体ナノ粒子が単一分子活性を有するCy3に相応するSERS信号を示す図である。(A)は、金−銀コア−シェル二量体のタッピングモードのAFMイメージ(5μm×5μm)を示す(図2(B)−2の銀シェルの厚さ〜5nm、間隔距離1nm以下に対応する)。(B)は、各二量体構造から得たCy3の表面増強ラマンスペクトルを示したもので、レーザ波長514.5nm、レーザ電力〜80μW、レーザ焦点径〜250nm、露光時間(integration time)1秒で測定したものである。
【図5】(A)および(B)は、蓄積時間1秒で同一の粒子から得たブリンキングSERSスペクトルを示したものであり、(C)は、他の入射レーザ偏光における金−銀コア−シェルヘテロ二量体から得たSERSスペクトルを示したものであり、(D)は、θに関する1470および1580cm−1のラマンバンドの統合SERS強度のpolar spotを示す。レーザ波長514.5nm、レーザ電力〜40μW、レーザ焦点径〜250nm、露光時間(integration time)20秒で測定したものである。
【図6】FAMとDabcylラベリングされたオリゴヌクレオチドで改質されたナノ粒子二量体から得たSERSスペクトルを示したものである。(A)は、溶液内のFAMラベリングされたオリゴヌクレオチド(1nM)、およびDabcylラベリングされたオリゴヌクレオチド(1nM)のラマンスペクトルを示す。(B)は、FAMラベリングされた金−銀コア−シェルナノ粒子二量体(銀シェル、5nm)、Dabcylラベリングされた金−銀コア−シェルナノ粒子二量体(銀シェル、5nm)のラマンスペクトルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されたものに過ぎず、実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0065】
<実施例1.ラマン活性分子(Cy3)が2つのナノ粒子の接合部に位置する金−銀コア−シェルナノ粒子の製造>
ラマン活性金−銀コア−シェル二量体の合成は、ターゲットオリゴヌクレオチドが結合された金ナノ粒子およびそれに追加的に銀前駆体の量によって調節される銀シェル形成のDNA−directed bridging methodに基づいて合成した(図1)。
【0066】
まず、保護(protecting)およびターゲット捕捉オリゴヌクレオチド配列のモル比の正確な調節および効果的な精製ステップにより、ターゲットオリゴヌクレオチドを有する高度に精製された金ナノ粒子二量体構造を得た。依然として金ナノ粒子(AuNP)の表面およびCy3分子間の最大間隔距離d(gap distance)が7.5nmであるため、増幅された電磁的増大を得るために間隔を減らす必要があった。SERS検出において、銀が金に比べて数倍より向上した効果があるため、銀ナノシェルを導入することとした。
【0067】
具体的には、増幅されたSERS信号を作るために、ナノ粒子間の間隔距離を減らすため、銀ナノシェルを既存に知られた改質方法(Chem.Comm.2008、J.Phys.Chem.B2004、108、5882−5888)によってナノメートル水準に調節し、金ナノ粒子二量体の表面をコーティングした。常温で3時間、0.3MのPBS溶液内で、安定化剤として100μLのポリ(ビニル)ピロリドン、および還元剤として50μLのL−アスコルビン酸ナトリウム[10−1M]の存在下に、金ナノ粒子二量体溶液250μMを多様な量のAgNO[10−3M]と反応させた。〜3nm、〜5nm、〜10nmの銀シェルの厚さを有する金−銀コア−シェルヘテロ二量体ナノ粒子は、それぞれ30μL、40μL、70μLのAgNO[10−3M]溶液を用いて合成した。この方法により、銀シェルの厚さを、〜3nm、〜5nm、〜10nmなどのナノ単位で調節するのに成功し、ターゲットオリゴヌクレオチドと結合された金−銀コア−シェルヘテロ二量体構造を得ることができた。
【0068】
典型的な合成方法により、1つのターゲット捕捉オリゴヌクレオチド配列が金ナノ粒子の表面に改質されるように調節するために、プローブAに対する金ナノ粒子(15nm)を2種の3’末端チオール改質されたオリゴヌクレオチド配列で機能化(functionalize)した。プローブBに対する金ナノ粒子(30nm)も、2種の5’末端チオール改質されたオリゴヌクレオチド配列によって機能化した。2種の配列のモル比は、金ナノ粒子の表面のオリゴヌクレオチドのナノ粒子−大きさ依存的ローディング(loading)能力に基づき、プローブAに対して99:1、プローブBに対して199:1となるように調節した(図1)。重要なことには、プローブBに対してターゲット捕捉オリゴヌクレオチド配列は、ラマンタグとして機能するCy3を末端に結合した。オリゴヌクレオチド改質されたプローブAおよびBはさらに、ターゲット捕捉分子配列(target capturing sequence)が結合されないモノマー粒子を除去するために、磁気(magnetic)分離技術によって精製する。マグネチックビーズ(直径1μm、インビトロジェン)のトシル(tosyl)グループは、アミン改質されたオリゴヌクレオチド相補的配列により、それぞれプローブAまたはBのターゲット捕捉配列で置換結合された。ターゲット捕捉配列で結合されている金ナノ粒子のみがマグネチックビーズによって分離できる。次に、精製されたプローブAおよびB溶液は、0.3MのPBS内の十分な量のターゲットオリゴヌクレオチド配列で混成反応した。
【0069】
また、前記と類似の方法により、ラマン活性分子としてそれぞれFAMとDabcylラベリングされたオリゴヌクレオチドで改質された金−銀コア−シェルナノ粒子二量体を製造した。
【0070】
<実施例2.紫外線−可視光線分光法(UV−visible spectroscopy)およびHR−TEMイメージ分析>
金ナノ粒子二量体の形成(ラマン活性分子としてCy3を使用)は、紫外線−可視光線分光法(UV−visible spectroscopy)およびHR−TEMイメージから確認した(図2)。紫外線−可視光線スペクトルは、二量体の形成後に若干の赤色変換されたスペクトルを示し、これは、Oaul Alivisatosら(Angew chem.1999.38(12)、1808)が報告した前の結果と一致する。図2(A)は、金ナノ粒子二量体の典型的なHR−TEMを示す。最小200個を分析した結果、25%の粒子がモノマーで存在し、65%が二量体で存在し、10%以下が三量体または四量体またはそれ以上の凝集体で存在した。金粒子間の粒子間距離は、HR−TEM分析による時、ca.2〜3nmであった。実際に、溶液状態(0.3PBS)におけるナノ粒子間の間隔距離は、乾燥状態よりはるかに長い〜15nmであることが予想される。また、増幅されたSERS信号を作るために、ナノ粒子間の間隔距離を減らすため、銀ナノ粒子が既存に知られた改質方法(Chem.Comm.2008、J.Phys.Chem.B2004、108、5882−5888)によってナノメートルで調節しながら、金ナノ粒子二量体の表面に導入した(実施例1参照)。〜3nm〜10nmの銀シェルの厚さを有する金−銀コア−シェルモノマー(図2(C)の1a、1b)も、類似の条件で精製されたプローブB溶液(30nmのAuNP)から合成した。各溶液の紫外線−可視光線スペクトル(図2(B))は、銀シェルの厚さに応じて〜400nmのプラズモン共鳴ピークで区別された。図2(C)は、個別の金−銀コア−シェルヘテロ二量体のHR−TEMイメージを示し、直径26nm−36nm(図2(C)−2)、30nm−40nm(図2(C)−3)、40nm−50nm(図2(C)−3)の2つのコア−シェルナノ粒子の球形および銀シェルの厚さを示す。2つのナノ粒子の間には1nm以下の狭い隙間がある。図2(C)−1a、1bはさらに、個別の金−銀コア−シェルモノマーのHR−TEMイメージを示し、直径40nm(シェルの厚さ=5nm、図2(C)−1a)、50nm(シェルの厚さ=10nm、図2(C)−1b)の各ナノ粒子の球形および銀シェルの厚さを示す。
【0071】
次に、コア−シェルナノ粒子のモノマーまたはヘテロ二量体(ラマン活性分子としてCy3を使用)のSERS/AFMを測定した。典型的な方法において、繰り返された遠心分離(8000rpm、20分、3回)によって洗浄された金−銀コア−シェルヘテロ二量体溶液のaliquot(20μL)は、ポリ−L−リシンコーティングされたガラスの表面にスピンコーティング(spin coated)し、超純水ウォーター(nanopure water)で数回洗浄した後、空気中で乾燥した。サンプルの製造後、直ちにAFMおよびSERS測定に用いた。SERSスペクトルは、変換光学顕微鏡(inverted optical microscope)(Axovert200、Zeiss)が装着されたAFM関連のNanoRaman顕微鏡によって記録し、これとは別のホームメードスキャニングコントローラによって圧電(piezoelectric)x−yサンプルスキャナ(Physik Instrument)を調整した。アルゴンイオンレーザ(Melles Griot、USA)の514.5nm線が単一モードの光学繊維とカップリングされた励起ソース(excitation source)として用いられた。カラーフィルタ(dichroic mirror)(520DCLP、Chroma Technology Corp.)は、50nW〜1mWにおいて励起(excitation)レーザビームがガラスカバースリップ上層表面上の回折−限界スポット(250nm)にビームの焦点を置いた油浸対物レンズ顕微鏡(oil immersion microscope objective顕微鏡)(100×、1.6N.A.、Zeiss)を向くようにした。Nanoscope IVコントローラを用いて、AFM(Bioscope、Digital Instruments Inc.、Veeco Metrology Group)を微小機械(micro mechanical)ステージに置いた。光学顕微鏡ステージ上端のタッピングモードのAFMモジュールは、100nmのオーバーラップprecisionのAFM地形イメージ(topographical image)のラマン信号に関連付けられている。レーザ焦点スポットは、AFMチップの中心に合わせられており、AFMチップの末端に対して対称的に散乱する。ラマン信号のバックグラウンドは、LN2冷却された(−125℃)電荷結合装置で集められる。散乱したスペクトルは、1つのacquision、1秒間の蓄積(accumulation)、400μW、500−2000cm−1の範囲で記録した。すべてのデータは、Siからバックグラウンド信号を引くことによって修正されたベースラインである。
【0072】
<実施例3.金−銀コア−シェルナノ粒子のAFM(atomic force micrograph)分析>
図3(A)は、代表的なコア−シェルモノマーおよびヘテロ二量体ナノ構造(ラマン活性分子としてCy3を使用)の拡大されたAMF(atomic force micrograph)イメージ(1μm×1μm)を示す。形状および直径は、HR−TEM分析結果と一致した。図3(B)は、SERSスペクトルが、図3(A)で指示された単一粒子に対するAFMイメージによって校正されたことを示す。コア−シェルモノマー構造にはホットスポットがなく、また、たった1つのCy3分子のみが存在するため、銀シェルの厚さが5nm(図3(A)−1)または10nm(図3(A)−2)の金−銀コア−シェルモノマーはSERS信号が検出されなかった。銀シェルがない金二量体または1nm以下の間隔距離を有する金二量体もSERS信号が検出されなかった。これは、514.5nmのレーザ励起条件下の電磁的増大が不足するからである。シェルの厚さが薄い(3nm未満)図3(A)−4の場合、同様に入射レーザパワー(〜200μM)を高めた場合にも信号が検出されなかった。この結果は、非常に薄い銀レイヤー(layer)は、十分な電磁的増大を生産することができないことを示す。一方、シェルの厚さが〜5nmの図3(A)−5の場合には、1つのCy3がナノ粒子間の接合部(junction)に位置する単一金−銀コア−シェル二量体から検出した相対的に高いSERS信号が現れた。低い強度(intensity)にもかかわらず、514.5nmのレーザ励起(excitation)での指紋スペクトル(fingerprint spectra)である1470および1580cm−1においてCy3の特徴的なピークが現れた。低い強度(intensity)は、単一分子SERS研究(science1997.275(5203)、1102、Phys rev lett1997、78(9)、1667、Nano lett2006、6(1)2173、Nano lett DOI:10.1021/ni803621x)で用いたパワー強度(intensity)に比べた時、比較的低いレーザパワー(100μW)およびホットスポット部位内でたった1つの分子に影響を与える。また、金ナノ粒子上で改質されたオリゴヌクレオチドのような他種からのシグナルを測定した。図3(C)は、凝集された銀コロイドにおいて、Cy3改質されたオリゴヌクレオチド(5−HS−(CH−A10−PEG18−ATCCTTATCAATATTAAA−Cy3−3’、1nM、赤い線)のSERSスペクトルを、Cy3−フリーオリゴヌクレオチド(5−HS−(CH−A10−PEG18−ATCCTTATCAATATTAAA−3’、1nM、黒い線)のSERSスペクトルと比較した結果を示す。図3(C)(黒い線)のSERSスペクトルは、アデニン塩基(A10がスペーサー配列として用いられた)がリッチであることにより、アデニンモード(734cm−1、1320cm−1)が優位にあることと、他の塩基よりも増大していることを示す(JACS、2008、130(16)、5523)。また、他のDNA塩基に対してこれまで報告された最も低い検出限界がマイクロモル以下(sub−micromolar)の範囲であることも重要である(JACS、2006、128、15580)。しかし、図3(C)のSERSスペクトル(赤い線)は、Cy3分子で発生した信号である1470cm−1、1580cm−1における相対的に高い信号を示す(Ananl chem.2004、76、412−417)。しかし、ラマン強度および時間によるスペクトル位置変動(spectral positions fluctuate with time)、およびスペクトルが各二量体ごとに異なって観察される(J.Phys.Chem.B2002、106、8096)。したがって、スペクトルパターンは、既存に報告されたのと完全には符合しない。銀シェルの厚さに関係なく、実験条件下で金−銀コア−シェルモノマーでの検出可能なSERS信号の不在は、二量体構造の接合部に位置するCy構造のみが1470および1580cm−1においてSERSピークを誘導することを確認させる。シェルの厚さが〜10nmにおけるコア−シェル二量体のラマンスペクトル(図3(A)−6)は、1480cm−1における他のCy−3関連ピークとともに、734cm−1、1320cm−1におけるアデニンモードが優位にあることを示す。他のナノ粒子に対するラマン散乱強度は、実験ごとに一定の形式(form)を維持しない。厚い銀シェルは、適切でない電磁的増強をもたらすCy3分子をカバーすることができる。
【0073】
<実施例4.金−銀コア−シェル二量体ナノ粒子の入射レーザの偏光によるSERSスペクトル分析>
シェルの厚さが〜5nmである大部分のコア−シェル二量体ナノ粒子(ラマン活性分子としてCy3を使用)は、図4(A)、(B)に示すように、単一粒子から検出可能なSERSを示した。入射レーザ光(incident laser light)が二量体の粒子間軸に正確に偏光されないことを考慮すれば(図4(A)−1、2、3、4、5)、垂直的に偏光化された各二量体ナノ粒子は、検出可能なSERS信号を示す。しかし、図5(C)は、1470cm−1において小さいピークのみを示すが、これは、二量体の発生(orientation)が入射管に略垂直であるからである。したがって、シェルの厚さが最適化されたこれらのコア−シェル二量体ナノ構造が単一DNAの検出に高度に適用可能なホットスポット構造であり得ることを発見した。
【0074】
単一分子の検出においてオン−オフブリンキング(blinking)が発見されることは実験的によく知られている(図5(A))(J.Phys.Chem.B2002、106、8096)。ラマン強度がない時、10秒の時間が生じ、次いで、ラマン強度が戻ると、周期的なon”時間が生じる。このオン−オフサイクリング現象は、信号が存在する超強力場(intense field)からついには永遠に消えるまで数分間継続することができる。また、ホットスポットの内外で分子の運動による秒単位のSERS強度変化(fluctuation)を観察することができる。これらのブリンキングおよび変動(blinking and fluctuation)現象は前の文献とよく合致する。
【0075】
図5(C)および図5(D)は、金−銀コア−シェル二量体に対するSERS信号の入射レーザの偏光化された依存を示す。すべてのスペクトルは、514.5nmの励起レーザ(excitation laser)、20s蓄積(accumulation)、サンプル40μWで検出される。入射されたレーザ光が二量体の縦軸(longitudinal axis)に平行に偏光化された時、Cy3ピークが最大化された。レーザが縦軸から20および40度回転した時、Cy3信号は次第に減少した。最後に、光が縦軸に垂直に偏光した時、Cy3ピークは消えた(例えば、90および270度)。1580cm−1において、次の公式により二量体構造でホットスポットの増強因子(enhancement factor:EF)を測定した。
【0076】
EF=(Isers×Nbulk)/(Ibulk×Nmolecule
【0077】
sersとIbulkは、SERSおよびbulkスペクトルに対する同一バンドの強度を示し、Nbulkは、bulkサンプルに対するbulk分子標識の数を示し、Nmoleculeは、SERSスペクトルにおいてCy3分子標識の数を示す(Nmolecule=1)。1580cm−1のバンド領域で最も強いスペクトルとバンドが現れたため、このバンドをIsersとIbulk強度として用いた。このような接近により、ホットスポットのEFは2.7×1012で計算された。
【0078】
一方、FAMとDabcylラベリングされたオリゴヌクレオチドで改質されたナノ粒子二量体からSERSスペクトルを測定した場合にも、Cy3の場合と同様に、高感度のラマンスペクトルを得ることができ、本発明にかかるナノ粒子二量体の構造および製造方法は、一般的なラマン活性分子に対して効果があることを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にオリゴヌクレオチドが結合された金または銀コア(core)と、前記コアを取り囲む金または銀シェル(shell)とからなるコア−シェルナノ粒子2つの接合部にラマン活性分子が位置し、前記2つのナノ粒子がオリゴヌクレオチドを介して連結された構造を有することを特徴とするナノ粒子二量体。
【請求項2】
前記それぞれのナノ粒子は、オリゴヌクレオチドの一方の末端がコアの表面に結合され、前記オリゴヌクレオチドの一部は、シェルの外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体。
【請求項3】
前記それぞれのナノ粒子の表面に結合されたオリゴヌクレオチドは、保護オリゴヌクレオチドおよびターゲット捕捉オリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項2に記載のナノ粒子二量体。
【請求項4】
前記2つのナノ粒子の表面に結合されたターゲット捕捉オリゴヌクレオチドは、ターゲットオリゴヌクレオチドと混成化をなしていることを特徴とする請求項3に記載のナノ粒子二量体。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドは、チオール基、アミン基およびアルコール基からなる群より選択されるいずれか1つの表面結合官能基で金ナノ粒子、銀ナノ粒子の表面に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドは、前記表面結合官能基とオリゴヌクレオチドとの間にスペーサー配列を含むことを特徴とする請求項5に記載のナノ粒子二量体。
【請求項7】
前記ナノ粒子二量体は、
i)金コアおよび銀シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体と、
ii)銀コアおよび金シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体と、
iii)金コアおよび金シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体と、
iv)銀コアおよび銀シェルからなるコア−シェルナノ粒子2つが連結されたナノ粒子二量体と、
v)金コアおよび銀シェルからなるコア−シェルナノ粒子と、銀コアおよび金シェルからなるコア−シェルナノ粒子とが連結されたナノ粒子二量体とからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体。
【請求項8】
前記コアの直径は、5〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体。
【請求項9】
前記コアの直径は、10〜40nmであることを特徴とする請求項8に記載のナノ粒子二量体。
【請求項10】
前記シェルの厚さは、1〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体。
【請求項11】
前記シェルの厚さは、1〜20nmであることを特徴とする請求項10に記載のナノ粒子二量体。
【請求項12】
前記ラマン活性分子は、FAM、Dabcyl、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7−ニトロベンズ−2−1,3−ジアゾール)、テキサスレッド(Texas Red)染料、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファーストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアント(brilliant)クレシルブルー、パラ−アミノ安息香酸、エリトロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、5−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシ、フルオレセイン、5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラクロロフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、6−カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、アミノアクリジン、量子ドット、炭素ナノチューブ、炭素同素体、シアン化物、チオール、塩素、臭素、メチル、リン、硫黄およびシアニン染料(Cy3、Cy3.5、Cy5)、ローダミン(Rhodamine)からなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体。
【請求項13】
前記ラマン活性分子は、有機蛍光分子であることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体。
【請求項14】
請求項1に記載のナノ粒子二量体の表面またはコアの表面に、検出しようとする分析物を認識できるバイオ分子が機能化されていることを特徴とするナノ粒子二量体。
【請求項15】
前記検出しようとする分析物は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、グリコプロテイン、リポプロテイン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、糖、炭水化物、オリゴサッカリド、ポリサッカリド、脂肪酸、脂質、ホルモン、代謝産物、サイトカイン、ケモカイン、受容体、神経伝達物質、抗原、アレルゲン、抗体、基質、代謝産物、補助因子、抑制剤、薬物、薬学物、営養物、プリオン、毒素、毒物、爆発物、殺虫剤、化学無機剤、生体有害性製剤、放射線同位元素、ビタミン、ヘテロ環芳香族化合物、発癌物質、突然変異誘発要因、痲酔剤、アンフェタミン、バルビツレート、幻覚剤、廃棄物または汚染物であることを特徴とする請求項14に記載のナノ粒子二量体。
【請求項16】
前記バイオ分子は、抗体、抗体断片、受容体蛋白質、結合蛋白質、酵素、抑制剤蛋白質、細胞癒着蛋白質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸またはアプタマーであることを特徴とする請求項14に記載のナノ粒子二量体。
【請求項17】
前記ナノ粒子二量体は、無機物で全体がコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体。
【請求項18】
前記無機物は、シリカであることを特徴とする請求項17に記載のナノ粒子二量体。
【請求項19】
1)表面が保護オリゴヌクレオチドおよびターゲット捕捉オリゴヌクレオチドで結合されたコアAと、表面が保護オリゴヌクレオチドおよびラマン活性分子が末端に結合されたターゲット捕捉オリゴヌクレオチドで結合されたコアBとをそれぞれ製造するステップと、
2)前記製造されたコアAおよびコアBにターゲットオリゴヌクレオチドを処理して混成化させることにより、二量体を形成するステップと、
3)前記コアAおよびコアBの表面にそれぞれシェルを導入するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子二量体の製造方法。
【請求項20】
前記ステップ1)でコアAとコアBとをそれぞれ製造した後、コアAとコアBのターゲット捕捉オリゴヌクレオチドと相補的な配列を有する磁性マイクロ粒子と混成化反応を進行し、コアAとコアBからターゲット捕捉オリゴヌクレオチドが結合されたナノ粒子のみを分離する過程をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のナノ二量体の製造方法。
【請求項21】
前記シェルの導入は、コアからなる二量体とシェル前駆体を、還元剤および安定化剤の存在下で反応させることによって行われることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
1)請求項1〜18のいずれか1項に記載のナノ粒子二量体を製造するステップと、
2)前記ナノ粒子二量体の表面またはコアの表面に、検出しようとする分析物を認識できるバイオ分子を機能化するステップと、
3)前記ナノ粒子二量体を、1つ以上の分析物を含むサンプルに露出させるステップと、
4)レーザ励起(excitation)およびラマン分光法を用いて1つ以上の分析物を検出および確認するステップとを含むことを特徴とする分析物の検出方法。
【請求項23】
1)請求項1〜18のいずれか1項に記載のナノ粒子二量体を製造するステップと、
2)前記ナノ粒子二量体の表面またはコアの表面に、検出しようとする核酸に相補的なバイオ分子を機能化するステップと、
3)試料から核酸を抽出、精製、および増幅させるステップと、
4)前記増幅された核酸の特定配列にコア−シェルナノ粒子二量体を反応させて混成化を行うステップと、
5)前記ナノ粒子二量体が結合された核酸にラマン分光を行うステップとを含むことを特徴とする核酸の検出方法。
【請求項24】
前記核酸の検出方法は、疾病の診断のための核酸の検出方法であることを特徴とする請求項23に記載の核酸の検出方法。
【請求項25】
前記核酸の検出方法は、単一塩基多型性(SNP)の検出方法であることを特徴とする請求項23に記載の核酸の検出方法。
【請求項26】
前記ラマン分光法が、表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)ハイパーラマンおよび/または非干渉性反ストークスラマン分光法(CARS)であることを特徴とする請求項22に記載の分析物の検出方法。
【請求項27】
前記核酸は、遺伝子、ウイルスRNAおよびDNA、バクテリアDNA、カビDNA、哺乳動物DNA、cDNA、mRNA、RNAおよびDNA断片、オリゴヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、改質されたオリゴヌクレオチド、単鎖および二本鎖核酸、自然的および合成核酸であることを特徴とする請求項22に記載の分析物の検出方法。
【請求項28】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のナノ粒子二量体を含むことを特徴とする分析物検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−513796(P2013−513796A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543027(P2012−543027)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008862
【国際公開番号】WO2011/071343
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(308011247)コリア リサーチ インスティチュートオブ ケミカルテクノロジー (2)
【出願人】(508369906)エスエヌユー アール アンド ディービー ファウンデーション (11)
【Fターム(参考)】