説明

ラミネート装置、およびラミネート装置におけるダイヤフラムの取り付け方法

【課題】真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することができ、かつ、ダイヤフラムに穴を開ける必要のないラミネート装置、およびラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法を提供する。
【解決手段】下面が開放された内部空間を有する上ケース2と、上面が開放された内部空間を有する下ケース3と、上ケースの下面側に着脱可能で、ダイヤフラムの周縁部を支持するフレーム4と、上ケースと下ケースの少なくとも一方に設けられた排吸気手段11,12と、上ケースと下ケースとの間に配置された被ラミネート体を支持および加熱するための支持台および加熱手段7,8とを備える。そして、このラミネート装置はさらに、上ケースとフレームとの間にダイヤフラムを挟み込んだ状態で、上ケースおよびフレームの端面よりも内側で、上ケースとフレームを締め付けるための締付け具32を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール等の被ラミネート体をラミネートするためのラミネート装置、およびそのラミネート装置におけるダイヤフラムの取り付け方法に関する。
【0002】
本発明は特に、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することや、ダイヤフラムに穴を開けずにダイヤフラムを固定することのできるラミネート装置、およびそのラミネート装置におけるダイヤフラムの取り付け方法に関する。
【0003】
なお、ダイヤフラムの新規取り付けも交換もともにダイヤフラムの「取り付け」を伴うため、本明細書ではこれらをまとめてダイヤフラムの取り付けという。
【背景技術】
【0004】
従来のラミネート装置の構造は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。以下、図5から図8を参照して、これらの特許文献に記載のラミネート装置について説明する。
【0005】
図5は、従来のラミネート装置1の構造を概略的に示した側方断面図である。図5において、X方向およびY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。X,Y,Z方向は、互いに垂直となっている。
【0006】
図5に示すように、ラミネート装置1は、下面が開放された内部空間を有する上ケース2と、上面が開放された内部空間を有する下ケース3と、上ケース2の下面側または下ケース3の上面側に着脱可能なフレーム4を備える。上ケース2は、図示しない昇降装置により上下動が可能なように構成されている。
【0007】
図5の場合、フレーム4は、上ケース2に取り付けられるが、下ケース3に取り付けられるようにしてもよい。
【0008】
図5の場合、フレーム4は、ダイヤフラム5の周縁部を支持し、上ケース2に取り付けられる。ダイヤフラム5は例えば、フッ素ゴム、ブチル、シリコンのような耐熱性のある弾性体のシートからなる。
【0009】
上ケース2と下ケース3との間には、被ラミネート体6を支持および加熱するための支持台7および加熱手段8が設けられている。加熱手段8はここでは、支持台7の下部に配置されたヒータ盤である。加熱手段8は例えば、支持台7の内部に設けられていても構わない。
【0010】
支持台7は、支柱9によって下ケース3から支持されている。一方、加熱手段8は、昇降手段10によって昇降可能に支持されている。
【0011】
昇降手段10は、加熱手段8を被ラミネート体6に近づけあるいは遠ざけ、それによって支持台7を介して被ラミネート体6を好ましい状態で加熱することができる。
【0012】
加熱手段8は、支持台7と一体化され、被ラミネート体6を直接加熱するようにしてもよい。
【0013】
上ケース2は、排吸気手段11を有している。一方、下ケース3は、排吸気手段12を有している。図5では真空ポンプの図示を省略しているが、排吸気手段11,12は、排吸気口、排吸気管、真空ポンプを含んでいる。また、排吸気手段は、下ケース3のみまたは上ケース2のみに設けられている場合もある。
【0014】
フレーム4の下ケース3との接合面には、シール部材13が設けられており、上ケース2と下ケース3が合着したときに、上ケース2と下ケース3の内部空間が気密になるようにしている。
【0015】
図5のラミネート装置1によって、ラミネート加工は以下のように行われる。
【0016】
最初に、上ケース2と下ケース3は互いに離開されており、ダイヤフラム5が、弛まないように排吸気手段11によって上ケース2に引きつけられる。
【0017】
次に、矢印Pで示すように、被ラミネート体6が、上ケース2と下ケース3との間に搬入される。被ラミネート体6は例えば、太陽電池モジュールであり、積層体からなり、層の間には熱によって層を溶着する充填剤が配置されている。
【0018】
被ラミネート体6が支持台7の上に載置されると、上ケース2が下降し、上ケース2と下ケース3が互いに合着され、上ケース2と下ケース3の内部にダイヤフラム5によって仕切られた上チャンバ14と下チャンバ15が形成される。
【0019】
次に、加熱手段8を支持台7に近づけ、被ラミネート体6を加熱するとともに、排吸気手段11,12を操作して、上チャンバ14内を大気圧に戻し、同時に下チャンバ15内を真空引きする。
【0020】
これにより、ダイヤフラム5の上面に大気圧がかかり、被ラミネート体6の表面が均等に圧縮される。被ラミネート体6は、圧縮されると同時に加熱されることにより、充填剤によって層が一体的に固着し、ラミネートされた積層体になる。
【0021】
1つの被ラミネート体6のラミネート加工が完了すると、上ケース2と下ケース3が離開し、次の被ラミネート体6が搬入されて上記工程を繰り返す。
【0022】
このようなラミネート装置1において、ダイヤフラム5は、例えば以下のようにして交換される。
【0023】
ダイヤフラム5は、繰り返しの使用により、真空を保つ性能が劣化し、交換する必要が生じる。従来のダイヤフラム5の交換方法を、図6に説明的に示す。
【0024】
図6は、従来のラミネート装置1におけるダイヤフラムの取り付け方法(交換方法)を説明するための側方断面図である。図6において、図5と同一の部分については図5と同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
図6のダイヤフラム5は、交換される新しいダイヤフラムを示している。この新しいダイヤフラム5は、周縁部に複数の把手16が取り付けられている。
【0026】
ラミネート装置1のサイズを例示すると、約2m×4mである。そのため、ダイヤフラム5は、それ以上のサイズを有している。把手16は、人間が両手で引けるように約50cm間隔でダイヤフラム5の周縁部に多数取り付けられている。図6においては、理解を容易にするため把手16を大きく示しているが、実際はダイヤフラム5の大きさに比して図示のものよりも小さい。
【0027】
ダイヤフラム5を交換する際には、図6に示すように、上ケース2を上げ、フレーム4を取り外して古いダイヤフラム5を取り外し、新しいダイヤフラム5を上ケース2とフレーム4との間に搬入する。
【0028】
次に、加熱手段8によってダイヤフラム5を加熱し、ダイヤフラム5を予め伸張させ、しかる後に、多数の人間がダイヤフラム5を取り囲み、把手16をもってダイヤフラム5を四方に広がるように引っ張る。ダイヤフラム5は、矢印Qに示す方向(X方向の順方向および逆方向)と、図6の紙面に垂直な方向(Y方向の順方向および逆方向)に引っ張られる。
【0029】
ダイヤフラム5が所定の寸法広がったところで、人間の手によって把手16を保持したまま、上ケース2を下降させる。そして、ダイヤフラム5の周縁部を上ケース2とフレーム4との間に挟み、その状態で上ケース2とフレーム4をボルト等の締結具によって固く締結し、ダイヤフラム5を緊張させた状態でフレーム4によってダイヤフラム5の周縁部を把持する。
【0030】
なお、このようなラミネート装置1や、該ラミネート装置1におけるダイヤフラム5の取り付け方法については、例えば、特許文献1に例示されている。
【0031】
ここで、従来のラミネート装置1におけるダイヤフラム5の固定方法の例について説明する。
【0032】
図7は、クランプを用いたダイヤフラム5の固定方法について説明するための側方断面図である。
【0033】
図7では、上ケース2に、複数のクランプレバー23が設けられている。各クランプレバー23は、上ケース2の外面側壁に取り付けられたブラケット25に、取付け軸24を介して支持されている。また、各クランプレバー23の下部には、環状の止め金22が遊着されている。止め金22は、フレーム4の外面側壁に取り付けられた掛け金21に係止できるようになっている。
【0034】
図7では、ダイヤフラム5を上ケース2とフレーム4との間に挟んだ状態で、止め金22を掛け金21に引っ掛け、クランプレバー23をその取付け軸24を中心に上方に向けて回転させる。これにより、フレーム4が上方に持ち上がり、ダイヤフラム5が上ケース2とフレーム4との間に固定される。
【0035】
図8は、ボルトを用いたダイヤフラム5の固定方法について説明するための側方断面図である。
【0036】
図8には、上ケース2を上下方向に貫通する複数のボルト穴27と、フレーム4の上面に設けられた複数のボルト穴(ネジ穴)28が示されている。
【0037】
図8では、ダイヤフラム5を上ケース2とフレーム4との間に挟んだ状態で、ボルト穴27にボルト26を差し込み、当該ボルト26をネジ穴28に締め込む。これにより、ダイヤフラム5が、上ケース2とフレーム4との間にボルト26で固定される。
【0038】
なお、以上のようなダイヤフラム5の固定方法については、例えば、特許文献2に例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2010−52387号公報
【特許文献2】特許第3890206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
しかしながら、図7や図8に示す方法には、以下のような問題がある。
【0041】
図7に示す方法では、クランプレバー23が上ケース2の外面側壁に取り付けられているため、クランプレバー23を締める際に、フレーム4の下部の外側(図7のαの部分)に上方向の力がかかり、フレーム4の下部の内側(図7のβの部分)が下がる。その結果、真空時にフレーム4と下ケース3との間からチャンバ内部に大気が流入しやすくなるという問題がある。
【0042】
一方、図8に示す方法では、ダイヤフラム5に、ボルト26を通す穴を開ける必要があり、穴を開ける工程のために、ダイヤフラム5の取り付け時間が長くなるという問題がある。さらには、一度穴を開けると穴の位置によってダイヤフラム5の取り付け位置が制限されるため、ダイヤフラム5の張り直しが困難になるという問題がある。
【0043】
そこで、本発明は、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することができ、かつ、ダイヤフラムに穴を開ける必要のないラミネート装置、およびラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明の一の態様であるラミネート装置は、下面が開放された内部空間を有する上ケースと、上面が開放された内部空間を有する下ケースと、前記上ケースの下面側に着脱可能で、ダイヤフラムの周縁部を支持するフレームと、前記上ケースと前記下ケースの少なくとも一方に設けられた排吸気手段と、前記上ケースと前記下ケースとの間に配置された被ラミネート体を支持および加熱するための支持台および加熱手段とを備える。そして、前記ラミネート装置はさらに、前記上ケースと前記フレームとの間に前記ダイヤフラムを挟み込んだ状態で、前記上ケースおよび前記フレームの端面よりも内側で、前記上ケースと前記フレームを締め付けるための締付け具を備える。
【0045】
また、本発明の別の態様であるラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法は、下面が開放された内部空間を有する上ケースと、上面が開放された内部空間を有する下ケースと、前記上ケースの下面側に着脱可能で、ダイヤフラムの周縁部を支持するフレームと、前記上ケースと前記下ケースの少なくとも一方に設けられた排吸気手段と、前記上ケースと前記下ケースとの間に配置された被ラミネート体を支持および加熱するための支持台および加熱手段とを備えるラミネート装置に使用される。そして、前記取り付け方法では、前記上ケースと前記フレームとの間に前記ダイヤフラムを挟み込んだ状態で、前記上ケースおよび前記フレームの端面よりも内側で、前記上ケースと前記フレームを締付け具により締め付ける。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することができ、かつ、ダイヤフラムに穴を開ける必要のないラミネート装置、およびラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態のラミネート装置の構造を概略的に示した側方断面図である。
【図2A】図1のラミネート装置の構造をより詳細に示した側方断面図である。
【図2B】図2Aのラミネート装置の構造を示した側方断面図である。
【図2C】図2Aのラミネート装置の構造を示した平面図である。
【図2D】図2Aに示すC型締付け具の構造を示した側方断面図である。
【図2E】図2Aに示すC型締付け具の動作を説明するための側方断面図である。
【図2F】C型締付け具が使用されたラミネート装置を示した平面図である。
【図2G】C型締付け具が使用されたラミネート装置を示した側方断面図である。
【図3A】本発明の第2実施形態のラミネート装置の構造を概略的に示した側方断面図である。
【図3B】図3Aのラミネート装置の構造を示した側方断面図である。
【図3C】図3Aのラミネート装置の構造を示した平面図である。
【図3D】図3Aに示すC型締付け具の動作を説明するための側方断面図である。
【図4A】本発明の第3実施形態のラミネート装置の構造を概略的に示した側方断面図である。
【図4B】図4Aに示すC型締付け具の構造を示した側方断面図である。
【図4C】図4Aに示すC型締付け具の構造を示した側方断面図である。
【図4D】図4Aに示すC型締付け具の構造を示した平面図である。
【図4E】本発明の第3実施形態の変形例のラミネート装置の構造を概略的に示した側方断面図である。
【図4F】図4Eに示すC型締付け具の構造を示した側方断面図である。
【図4G】図4Eに示すC型締付け具の構造を示した側方断面図である。
【図4H】図4Eに示すC型締付け具の構造を示した平面図である。
【図5】従来のラミネート装置の構造を概略的に示した側方断面図である。
【図6】従来のラミネート装置におけるダイヤフラムの取り付け方法を説明するための側方断面図である。
【図7】クランプを用いたダイヤフラムの固定方法について説明するための側方断面図である。
【図8】ボルトを用いたダイヤフラムの固定方法について説明するための側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0049】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のラミネート装置31の構造を概略的に示した側方断面図である。図1のラミネート装置31の全般的な構造は、図5のラミネート装置1の構造と同様である。図1において、図5と同一の部分については図5と同一の符号を付し、重複する説明は省略し、図5との相違点を中心に説明する。
【0050】
図1に示すように、ラミネート装置31は、下面が開放された内部空間を有する上ケース2と、上面が開放された内部空間を有する下ケース3と、上ケース2の下面側または下ケース3の上面側に着脱可能なフレーム4を備える。図1の場合、フレーム4は、上ケースの下面側に取り付けられ、ダイヤフラム5の周縁部を支持している。
【0051】
上ケース2と下ケース3との間には、被ラミネート体6を支持および加熱するための支持台7および加熱手段8が設けられている。本実施形態では、加熱手段8が、支持台7と一体化されている。支持台7および加熱手段8は、支柱9によって下ケース3から支持されている。
【0052】
上ケース2は、排吸気手段11を有しており、下ケース3は、排吸気手段12を有している。本実施形態の上ケース2には、排吸気手段11が1つだけ設けられているが、上ケース2には、排吸気手段11を複数設けても構わない。同様に、本実施形態の下ケース3には、排吸気手段12が1つだけ設けられているが、下ケース3には、排吸気手段13を複数設けても構わない。また、排吸気手段は、下ケース3のみまたは上ケース2のみに設けられている場合もある。
【0053】
被ラミネート体6をラミネート加工する際には、支持台7の上に被ラミネート体6を搬入した後、上ケース2を下降させて上ケース2と下ケース3を合着させる。これにより、上ケース2と下ケース3の内部に、ダイヤフラム5によって仕切られた上チャンバ14と下チャンバ15が形成される。次に、上下チャンバ14,15内を真空引きをした後、上チャンバ14のみに大気を導入する。これにより、ダイヤフラム5が下方に膨張して、被ラミネート体6が支持台7とダイヤフラム5により挟圧される。その結果、被ラミネート体6の内部のEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂の化学反応が促進されて、ラミネート加工がなされる。
【0054】
本実施形態では、図1に示すように、ラミネート装置31に、C型締付け具32が取り付けられている。そして、上ケース2とフレーム4との間にダイヤフラム5を挟み込んだ状態で、上ケース2とフレーム4がC型締付け具32により締め付けられている。以下、このC型締付け具32について詳細に説明する。
【0055】
図2Aは、図1のラミネート装置31の構造をより詳細に示した側方断面図である。
【0056】
図2Aには、上記のC型締付け具32が示されている。C型締付け具32は、上ケース2を上方から押圧可能な第1の分割体32bと、フレーム4を下方から押圧可能な第2の分割体32cとを有する。図2Aにはさらに、第1の分割体32bと第2の分割体32cを回動させるための支点ピン32aが示されている。
【0057】
本実施形態では、上ケース2とフレーム4との間にダイヤフラム5を挟み込んだ状態で、上ケース2とフレーム4を第1の分割体32bと第2の分割体32cにより上下から挟み込み、上ケース2とフレーム4をC型締付け具32によって締め付ける。これにより、上ケース2とフレーム4との間のダイヤフラム5が固定される。図2Aには、C型締付け具32によってダイヤフラム5が固定された様子が示されている。
【0058】
図2Aには、第1の分割体32bを上下方向に貫通する第1のボルト穴32eと、第2の分割体32cを上下方向に貫通する第2のボルト穴32fが示されている。本実施形態では、具体的には、これらのボルト穴32e,32fに共通のボルト32dを差し込み、上ケース2とフレーム4をこのボルト32dで締め付けることで、ダイヤフラム5を固定する。本実施形態では、ダイヤフラム5の取り付け時にはボルト32dを締め込み、ダイヤフラム5の取り外し時にはボルト32dをゆるめる。
【0059】
図2Aに示すように、第1の分割体32bの一端部側には、支点ピン32aが嵌挿される第1のピン穴32gが設けられ、第1の分割体32bの他端部側には、上ケース2を上方から押圧するための第1の押圧面S1が設けられている。同様に、第2の分割体32cの一端部側には、支点ピン32aが嵌挿される第2のピン穴32hが設けられ、第2の分割体32cの他端部側には、フレーム4を下方から押圧するための第2の押圧面S2が設けられている。
【0060】
本実施形態では、第1および第2のピン穴32g,32hに、共通の支点ピン32aが嵌挿されており、上ケース2とフレーム4は、第1の押圧面S1と第2の押圧面S2との間でC型締付け具32により締め付けられている。後述の図2Bには、X方向から見た第1および第2の押圧面S1,S2が示され、後述の図2Cには、Z方向から見た第1および第2のピン穴32g,32hが示されている。
【0061】
図2Aでは、上ケース2およびフレーム4の締付け位置がP1で示され、上ケース2およびフレーム4のダイヤフラム5近傍における外面側壁(端面)の位置がP2で示されている。
【0062】
本実施形態では、矢印Aで示すように、締付け位置P1が端面位置P2よりも内側(ダイヤフラム5の中心側)に入った構造が採用されており、C型締付け具32が、上ケース2とフレーム4を、端面位置P2よりも内側で締め付けている。具体的には、第1の分割体32bが、端面位置P2よりも内側で上ケース2を上方から押圧し、第2の分割体32cが、端面位置P2よりも内側でフレーム4を下方から押圧している。
【0063】
なお、締付け具32は、本実施形態ではおおむねC型の断面形状を有しているが、上ケース2を上方から押圧可能な部材と、フレーム4を下方から押圧可能な部材とを有していれば、C型以外の断面形状を有していても構わない。また、これらの部材はそれぞれ、単一の材料で形成されていても、複数の材料で形成されていても構わない。
【0064】
図2Aにはさらに、フレーム4の上面に設けられた凹部内に配置された丸パッキン33と、フレーム4の下面に設けられた凹部内に配置された丸パッキン34が示されている。丸パッキン33は、ダイヤフラム5の下面に接する位置に配置されており、丸パッキン34は、下ケース3の上面に接する位置に配置されている。これらの丸パッキン33,34は、ラミネート加工時に上ケース2と下ケース3を密着させる際に、チャンバ14,15の真空漏れを防ぐために配置されている。
【0065】
図2Bおよび図2Cはそれぞれ、図2Aのラミネート装置31の構造を示した側方断面図および平面図である。図2Bには、C型締付け具32をX方向から見た様子が示されており、図2Cには、C型締付け具32をZ方向から見た様子が示されている。C型締付け具32の構造および動作の詳細は、図2Dおよび図2Eに示されている。
【0066】
図2Dは、図2Aに示すC型締付け具32の構造を示した側方断面図である。図2Dには、第1の分割体32bと第2の分割体32cが、ボルト32dで固定された様子が示されている。
【0067】
図2Eは、図2Aに示すC型締付け具32の動作を説明するための側方断面図である。C型締付け具32がボルト32dで固定されていない場合、第1の分割体32bと第2の分割体32cは、図2Eに示すように動作させることが可能である。符号32b’および32c’で示す破線は、第1および第2の分割体32b,32cが、支点ピン32aを中心に回転する様子を示している。
【0068】
本実施形態では、このようなC型締付け具32を複数使用して、上ケース2とフレーム4との間にダイヤフラム5を固定する。これらのC型締付け具32によりダイヤフラム5を固定した様子を、図2Fおよび図2Gに示す。
【0069】
図2Fおよび図2Gはそれぞれ、複数のC型締付け具32が使用されたラミネート装置31を示した平面図および側方断面図である。
【0070】
本実施形態では、C型締付け具32は、図2Fに示すように、ラミネート装置31の周囲にほぼ等間隔に取り付けられる。隣り合うC型締付け具32間の間隔は、例えば300mm〜400mmである。一方、ラミネート装置31のサイズは、例えば約2m×4mである。
【0071】
図2Fおよび図2Gには、剥離シート43と、剥離シート43に付着したEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂を取り除くための上ブラシ41と、上ブラシ41の近傍に設けられた上ブラシ用ローラー42が示されている。
【0072】
剥離シート43は、図2Gに示すように、上ケース2の上面、下面、およびX方向に垂直な側面を取り囲む環状の形状を有している。図2Gでは、排吸気手段11が、剥離シート43とぶつかる位置に配置されているが、これは作図上の便宜によるものであり、実際は、排吸気手段11は、剥離シート43とぶつからない位置に配置されている。
【0073】
また、上ブラシ41および上ブラシ用ローラー42は、上ケース2の外側に設置されている。図2Fおよび図2Gにおいて、上ブラシ41は、剥離シート43の外側に配置されており、ブラシ用ローラー42は、剥離シート43の内側に配置されている。
【0074】
図2Fおよび図2Gにはさらに、被ラミネート体6を搬送するためにコンベアを動かすための搬送チェーン44と、搬送チェーン44を覆う搬送チェーンカバー45が示されている。搬送チェーン44および搬送チェーンカバー45は、ラミネート装置31の側面に設置されている。
【0075】
なお、C型締付け具32とこれらの部品(41〜45)との関係については、後述することにする。
【0076】
ここで、図2Aを参照しつつ、ラミネート装置31におけるダイヤフラム5の取り付け方法について説明する。
【0077】
まず、上ケース2とフレーム4との間にダイヤフラム5を挟んだ状態で、ダイヤフラム5を周囲から引っ張る。この際、ダイヤフラム5を引っ張るために、ダイヤフラム5にはラミネート装置31からはみ出た部分が必要である。
【0078】
次に、上ケース2をフレーム4の上に降ろす。これにより、ダイヤフラム5が、上ケース2とフレーム4により挟まれ、上ケース2の重力によりダイヤフラム5が固定される。ただし、この状態においては、上ケース2をフレーム4から取り外すと、ダイヤフラム5が固定されていない状態となってしまう。
【0079】
次に、ラミネート装置31からはみ出ているダイヤフラム5を切る。この際、ダイヤフラム5は、C型締付け具32の内側におさまる大きさに切る必要がある。
【0080】
次に、C型締付け具32を用意して、ラミネート装置31に取り付ける。具体的には、上ケース2とフレーム4を第1の分割体32bと第2の分割体32cにより挟み込み、次に、上ケース2とフレーム4をボルト32dにより締め付ける。これにより、上ケース2とフレーム4が一体化し、ダイヤフラム5が固定される。なお、図2Aには、ダイヤフラム5が、C型締付け具32の内側におさまっている様子が示されている。
【0081】
なお、ダイヤフラム5は、ボルト穴32eおよび32fよりも内側で第1の分割体32bと第2の分割体32cにより挟み込まれており、ダイヤフラム5は、ボルト穴32eおよび32fの下部には存在していない点に留意されたい。その結果、本実施形態では、ボルト32dを通すための穴をダイヤフラム5に開けずに、ダイヤフラム5が上ケース2とフレーム4との間に固定されている。
【0082】
また、図2Fおよび図2Gのように複数のC型締付け具32を取り付ける際、これらのC型締付け具32は、同時に取り付ける必要はなく、順番に取り付けても構わない。よって、C型締付け具32の取り付け作業は、必ずしも複数人で行う必要はなく、一人の作業者のみで行っても構わない。
【0083】
最後に、本実施形態のラミネート装置31の効果について説明する。
【0084】
上述の図7に示す方法では、上ケース2の外面側壁に取り付けられたクランプレバー23によってダイヤフラム5を固定する。そのため、クランプレバー23を締める際に、フレーム4の下部の外側に上方向の力がかかってフレーム4の下部の内側が下がり、真空時にフレーム4と下ケース3との間からチャンバ内部に大気が流入しやすくなってしまう。即ち、真空漏れが生じやすくなってしまう。
【0085】
これに対し、本実施形態では、上ケース2を上方から押圧可能な第1の分割体32bと、フレーム4を下方から押圧可能な第2の分割体32cとを有する締付け具32により、上ケース2とフレーム4を挟み込んで締め付けることで、ダイヤフラム5を固定する。
【0086】
よって、本実施形態によれば、図2Aに示すように、上ケース2およびフレーム4の端面位置P2よりも内側で、上ケース2とフレーム4を締め付けることが可能となる。このことには、上ケース2の外面側壁にクランプ時の力がかかる図7の方法と比べ、フレーム4の下部の内側が下がることを抑制でき、真空漏れが生じにくくなるという利点がある。
【0087】
このように、本実施形態によれば、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することが可能となる。
【0088】
また、上述の図8に示す方法では、上ケース2およびフレーム4に設けられたボルト穴27,28を利用して、ダイヤフラム5をボルト26で固定する。そのため、図8に示す方法では、ダイヤフラム5に、ボルト26を通す穴を開ける必要があり、穴を開ける工程のために、ダイヤフラム5の取り付け時間が長くなるという問題がある。さらには、一度穴を開けると穴の位置によってダイヤフラム5の取り付け位置が制限されるため、ダイヤフラム5の張り直しが困難になるという問題がある。
【0089】
これに対し、本実施形態では、上記のような締付け具32により上ケース2とフレーム4を挟み込んで締め付けることで、ダイヤフラム5を固定する。よって、本実施形態によれば、図2Aに示すように、ボルト26を通すための穴をダイヤフラム5に開けずに、ダイヤフラム5を固定することが可能となる。これにより、本実施形態では、ダイヤフラム5の取り付け時間の短縮や張り直しが可能となり、ラミネート装置31の稼働率の向上やコストダウンを実現することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態の締付け具32は、支点ピン32aと、支点ピン32aを中心に回転可能な第1および第2の分割体32b,32cにより構成されており、第1および第2の分割体32b,32cにはそれぞれ、第1および第2のボルト穴32e,32fが設けられている。
【0091】
これにより、本実施形態では、これらのボルト穴32e,32fを使用して、上ケース2とフレーム4をボルト32dで締め付けることが可能となっている。締付け具32をボルト32d以外で締め付ける構成の具体例については、後述の第2実施形態で説明する。
【0092】
なお、本実施形態では、加熱手段8が、下チャンバ15(下ケース3)内に設置されているが(図1参照)、上チャンバ14(上ケース2)内に設置されていても構わない。
【0093】
また、本実施形態では、ラミネート装置31内に1組の支持台7および加熱手段8が設けられ、チャンバ内部に1つの被ラミネート体6を収容可能な構造が採用されている(図1参照)。しかしながら、本実施形態では、ラミネート装置31内に複数組の支持台7および加熱手段8を設け、チャンバ内部に複数の被ラミネート体6を収容可能な構造を採用しても構わない。この場合には、これらの被ラミネート体6を上下に積層して収容する多段式の構造を採用して、チャンバ内部のスペースの無駄を少なくすることが望ましい。
【0094】
また、本実施形態のC型締付け具32は、図2Fおよび図2Gに示すように、上ケース2およびフレーム4の側部に取り付けられる。そのため、C型締付け具32のサイズが大きすぎると、上ブラシ用ローラー42、搬送チェーン44、搬送チェーンカバー45等の他の部品の動作や設置を邪魔してしまう可能性がある。よって、C型締付け具32のサイズは、これらの部品の動作や設置の妨げとならないサイズとすることが望まれる。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することができ、かつ、ダイヤフラム5に穴を開ける必要のないラミネート装置31、およびラミネート装置31のダイヤフラム取り付け方法を提供することが可能となる。
【0096】
(第2実施形態)
図3Aは、本発明の第2実施形態のラミネート装置51の構造を概略的に示した側方断面図である。図3Aのラミネート装置51の全般的な構造は、図5のラミネート装置1や図2Aのラミネート装置31の構造と同様である。図3Aにおいて、図5や図2Aと同一の部分についてはこれらと同一の符号を付し、重複する説明は省略し、図5や図2Aとの相違点を中心に説明する。
【0097】
図3Aには、図2Aに示すC型締付け具32と異なる構造を有するC型締付け具52が示されている。図3Aに示すC型締付け具52は、上ケース2を上方から押圧可能な部材として、スプリング52eによって付勢されるローラー52cを有し、フレーム4を下方から押圧可能な部材として、締付け具本体52aを有する。図3Aでは、ローラー52cが上ケース2を上方から押圧する第1の押圧面がS3で示され、締付け具本体52aがフレーム4を下方から押圧する第2の押圧面がS4で示されている。
【0098】
本実施形態では、フレーム4の下部に、締付け具本体52aの下側の先端部を着脱可能にはめ込むための溝Gが設けられている。また、溝Gと締付け具本体52aとの接触面の断面形状は、図3Aに示すように、フレーム4の下方の点Fを中心とする円弧形となっている。
【0099】
よって、締付け具本体52aは、点Fを支点として回転可能となっている。また、上記接触面の断面形状が円弧形であるため、締付け具本体52aが回転しても、締付け具本体52aと溝Gとの間の面接触が保たれるようになっている。支点Fは、図3Aに示すように、締付け具本体52aの下側の先端部内に位置しており、溝Gの内部に位置している。
【0100】
締付け具本体52aには、締付け具本体52aを回転させるための握り部52bが取り付けられている。握り部52bは、少ない力で締付け具本体52aを回転させることができるよう、支点Fから比較的遠い位置に設けることが望ましい。本実施形態では、握り部52bと支点Fとの距離が、ローラー52cと支点Fとの距離よりも遠くなっている。締付け具本体52aは、握り部52bを回転させることにより、溝Gから外すことが可能である。
【0101】
また、締付け具本体52aの上側の先端部には、スプリング軸52fを上下方向に貫通させるためのスプリング軸穴52gが設けられている。そして、スプリング軸52fの上端には、第1のスプリングストッパ52hが取り付けられ、スプリング軸52fの上端と下端との間には、第2のスプリングストッパ52iが取り付けられている。これにより、スプリング軸52fが、スプリング軸穴52gから抜けないようになっている。
【0102】
図3Aにはさらに、ローラー52c用のスプリング52eが示されている。スプリング52eは、締付け具本体52aの上側の先端部と第2のスプリングストッパ52iとの間に配置されており、スプリング52eの内部には、スプリング軸52fが貫通している。そして、スプリング軸52fの下部には、ローラー回転軸52dが貫通している。ローラー52cは、ローラー回転軸52dを中心に回転可能となっている。なお、ローラー回転軸52dは、スプリング軸52fの下端と第2のスプリングストッパ52iとの間を貫通している。
【0103】
本実施形態では、C型締付け具52の取り付けや取り外しを、握り部52bの押し引きにより行うことが可能である。
【0104】
本実施形態では、C型締付け具52を取り付ける際には、握り部52bをラミネート装置51の内側方向に押す。これにより、ローラー52cが上ケース2の上面に沿って転がり移動し、上ケース2の上面に設けられた溝Hにローラー52cがはまり込む。こうして、C型締付け具52がラミネート装置51に取り付けられる。
【0105】
一方、C型締付け具52を取り外す際には、握り部52bをラミネート装置51の外側方向に引く。これにより、ローラー52cは、溝Hから抜け出て、取り付け時とは逆方向に上ケース2の上面に沿って転がり移動する。こうして、C型締付け具52がラミネート装置51から取り外される。
【0106】
このように、本実施形態では、C型締付け具52の取り付けや取り外しを、握り部52bの押し引きにより行うことができる。また、本実施形態では、C型締付け具52をラミネート装置51に取り付けることで、ローラー52cが、スプリング52eのスプリング弾性により付勢されて、上ケース2の上面を押圧する。これにより、本実施形態では、上ケース2とフレーム4が締付け具本体52aとローラー52cにより締め付けられ、上ケース2とフレーム4との間のダイヤフラム5が固定される。
【0107】
なお、本実施形態では、ラミネート装置51に取り付けられたC型締付け具52が不意に外れることがないよう、ダイヤフラム5近傍における上ケース2の上面とフレーム4の下面との距離や、溝Hの深さや、スプリング52eの弾性係数を、適切な値に設定することが望ましい。また、これらの値は、握り部52bによるC型締付け具52の取り付けや取り外しが困難にならない程度の値とすることが望ましい。
【0108】
図3Bおよび図3Cはそれぞれ、図3Aのラミネート装置51の構造を示した側方断面図および平面図である。図3Bには、C型締付け具52をX方向から見た様子が示されており、図3Cには、C型締付け具52をZ方向から見た様子が示されている。C型締付け具52の動作の詳細は、図3Dに示されている。
【0109】
図3Dは、図3Aに示すC型締付け具52の動作を説明するための側方断面図である。上述のように、C型締付け具52は、支点Fを中心に回転させることが可能である。符号52’で示す破線は、C型締付け具52が、支点Fを中心に回転する様子を示している。
【0110】
本実施形態では、このようなC型締付け具52を複数使用して、上ケース2とフレーム4との間にダイヤフラム5を固定する。これらのC型締付け具52によるダイヤフラム5の固定方法は、第1実施形態と同様である(図2F,図2Gを参照)。
【0111】
ここで、図3Aを参照しつつ、ラミネート装置51におけるダイヤフラム5の取り付け方法について説明する。
【0112】
まず、ダイヤフラム5を、上ケース2とフレーム4との間に挟む。次に、締付け具本体52aの下側の先端部を、フレーム4の溝Gにはめ込む。この時点では、C型締付け具52は、フレーム4に固定されていないことに留意されたい。
【0113】
次に、握り部52bを持ち、握り部52bをラミネート装置51の内側に向けて押す。これにより、C型締付け具52は、支点Fを中心として、ラミネート装置51の内側方向に回転する。また、ローラー52cは、上ケース2の上面を転がることとなる。
【0114】
図3Aに示すように、上ケース2の側面付近において、上ケース2の上面の形状は曲線状になっており、そこに溝Hが設けられている。よって、本実施形態では、C型締付け具52を一定以上の力で押さないと、ローラー52cが溝Hの位置まで到達しない。ローラー52cが溝Hの位置まで到達すると、ローラー52cは溝Hにおさまり、スプリング52eがローラー52cを下向きに押す力により、ダイヤフラム5は固定される。
【0115】
また、スプリング52eがローラー52cを下向きに押す力により、ローラー52cが固定されると共に、締付け具本体52aも固定される。これにより、一定以上の力がC型締付け具52にかからない限り、C型締付け具52が外れなくなる。
【0116】
一方、ダイヤフラム5を取り外す際には、握り部52bを持ち、握り部52bをラミネート装置51の外側に向けて引くことで、取り外し可能である。この際、C型締付け具52を一定以上の力で引かないと、ローラー52cは溝Hから抜け出ない。
【0117】
なお、ダイヤフラム5の取り付け時には、第1実施形態で説明したように、C型締付け具52を取り付ける前に、ラミネート装置51からはみ出たダイヤフラム5を切り、ダイヤフラム5をC型締付け具52の内側におさまる大きさにする必要がある。この際、本実施形態では、ローラー52cが溝Hにおさまる際にダイヤフラム5が邪魔にならないよう、ダイヤフラム5を、溝Hに届かない大きさに切っておくことが望ましい。図3Aには、溝Hに届かない大きさに切られたダイヤフラム5が示されている。
【0118】
最後に、本実施形態のラミネート装置51の効果について説明する。
【0119】
本実施形態では、第1実施形態と同様、上ケース2を上方から押圧可能な部材(ローラー52c)と、フレーム4を下方から押圧可能な部材(締付け具本体52a)とを有する締付け具52により、上ケース2とフレーム4を挟み込んで締め付けることで、ダイヤフラム5を固定する。
【0120】
よって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様、上ケース2およびフレーム4の端面位置P2よりも内側で、上ケース2とフレーム4を締め付けることが可能となり、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することが可能となる。
【0121】
また、本実施形態では、図8に示すようなボルト26ではなく、上記のような締付け具52により上ケース2とフレーム4を挟み込んで締め付けることで、ダイヤフラム5を固定する。よって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様、ボルトを通すための穴をダイヤフラム5に開けずに、ダイヤフラム5を固定することが可能となる。
【0122】
また、本実施形態の締付け具52は、上ケース2の上面に沿って転がり移動するローラー52cと、ローラー52cが上ケース2の上面を押圧するよう、ローラー52cを付勢するスプリング52e等により構成されている。
【0123】
これにより、本実施形態では、ボルトを使用せずに締付け具52を固定することが可能となり、ダイヤフラム5の取り付け作業が簡易化される。一般に、スプリング52eの弾性力に抗してローラー52cを転がすのに要する力や時間は、ボルトを締めるのに要する力や時間よりも少なくて済む。よって、本実施形態によれば、ボルトを締めるのに比べ、少ない力で短時間にダイヤフラム5を取り付けることが可能となる。
【0124】
なお、本実施形態では、上ケース2を上方から押圧可能な部材の方を、締付け具本体52aとして、フレーム4を下方から押圧可能な部材の方を、ローラー52cとしても構わない。
【0125】
また、本実施形態では、C型締付け具52に、C型締付け具52をラミネート装置51に取り付けられた状態でロックするためのロック機能を設けても構わない。理由は、本実施形態では、スプリング弾性によりC型締付け具52を固定しているため、C型締付け具52に誤って大きな力がかかると、C型締付け具52が外れる可能性があるからである。
【0126】
ロック機能の例としては、窓ガラスの開閉レバーに設けられているロックや、市販のキャスター等に設けられているローラーの回転止めのロックのようなものが挙げられる。或いは、小さな針金状の鍵で開閉させることが可能な鍵穴をC型締付け具52に設けるようにしてもよい。
【0127】
このようなロック機能によれば、ロックを解除するかロック等を破壊しない限り、C型締付け具52は一般に外れないため、C型締付け具52が意図せずに外れてしまう可能性を低減することが可能となる。なお、このようなロック機能は、第2実施形態に限らず、第1実施形態に適用しても構わない。また、上記以外のロック機能の例については、後述する第3実施形態にて説明する。
【0128】
以上のように、本実施形態によれば、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することができ、かつ、ダイヤフラム5に穴を開ける必要のないラミネート装置51、およびラミネート装置51のダイヤフラム取り付け方法を提供することが可能となる。
【0129】
(第3実施形態)
図4Aは、本発明の第3実施形態のラミネート装置61の構造を概略的に示した側方断面図である。図4Aのラミネート装置61の全般的な構造は、図5のラミネート装置1や図2Aのラミネート装置31などの構造と同様である。図4Aにおいて、図5や図2Aと同一の部分についてはこれらと同一の符号を付し、重複する説明は省略し、図5や図2Aとの相違点を中心に説明する。
【0130】
図4Aには、図2Aに示すC型締付け具32や、図3Aに示すC型締付け具52と異なる構造のC型締付け具62が示されている。
【0131】
本実施形態のC型締付け具62は、図4Aに示す形状の締付け具本体62aにより構成されている。締付け具本体62aの一端部側(下側の先端部側)には、フレーム4を下方から押圧するための押圧面S6が設けられており、締付け具本体62aの他端部側(上側の先端部側)には、上ケース2を上方から押圧するネジ62cを通すためのネジ穴62dが設けられている。図4Aでは、ネジ62cが上ケース2を上方から押圧する押圧面が、S5で示されている。
【0132】
ネジ62cの根元には、図4Aに示すように、締付けハンドル62bが取り付けられている。本実施形態では、図4Aに示す位置に締付け具本体62aを配置し、ネジ穴62dにネジ62cを差し込み、締付けハンドル62bを回してネジ62cを締めることで、上ケース2がネジ62cにより上方から押圧されると共に、フレーム4が押圧面S6にて下方から押圧される。このようにして、上ケース2とフレーム4がC型締付け具62により締め付けられ、上ケース2とフレーム4との間のダイヤフラム5が固定される。
【0133】
図4Bおよび図4Cは、図4Aに示すC型締付け具62の構造を示した側方断面図である。図4Bには、図4Aと同様、C型締付け具62をY方向から見た様子が示され、図4Cには、C型締付け具62をX方向から見た様子が示されている。
【0134】
図4Dは、図4Aに示すC型締付け具62の構造を示した平面図である。図4Dには、C型締付け具62をZ方向から見た様子が示されている。図4Dに示すように、本実施形態の締付けハンドル62bは、Z方向から見て棒状の形状を有している。図4Dでは、この形状の長手方向が、Y方向となっている。
【0135】
なお、図4Aおよび図4Bでは、作図の便宜上、図4Cや図4Dとは締付けハンドル62bの締付け具合が異なっている点に留意されたい。
【0136】
次に、第3実施形態の変形例について説明する。
【0137】
図4Eは、本発明の第3実施形態の変形例のラミネート装置61の構造を概略的に示した側方断面図である。図4Eのラミネート装置61の全般的な構造は、図4Aのラミネート装置61の構造と同様である。図4Eにおいて、図4Aと同一の部分については図4Aと同一の符号を付し、重複する説明は省略し、図4Aとの相違点を中心に説明する。
【0138】
図4Eに示す締付け具本体62aの上面には、ネジ穴62dに加え、ロック部材用の穴62gが設けられている。図4Eには、穴62gに挿入される挿入部62fと、穴62gの上部に突き出る突出部62eからなるロック部材が示されている。図4Eには、ロック部材の挿入部62fが、穴62gに挿入され、ロック部材の突出部62eが、穴62gの上部に突き出ている様子が示されている。
【0139】
ネジ穴62dとロック部材用の穴62gは、図4Eに示すように、締付けハンドル62bを回すと、締付けハンドル62bと突出部62eとがぶつかる位置に設けられている。よって、本変形例では、ネジ62cをネジ穴62dに取り付けた後に、ロック部材の挿入部62fを穴62gに取り付けることで、締付けハンドル62bが緩んで回転するのを防止することが可能となる。即ち、ロック部材は、C型締付け具62をラミネート装置61に取り付けられた状態でロックするロック機能を発揮する。
【0140】
よって、本変形例によれば、C型締付け具62が意図せずに外れてしまう可能性を低減することが可能となる。
【0141】
なお、ロック部材の挿入部62fと、ロック部材用の穴62gには、ネジ溝が切られていても、切られていなくても構わない。前者には、ロック部材がしっかりと固定され、ロック部材が意図せずに外れてしまう可能性が低減されるという利点がある。一方、後者には、ロック部材の取り付けや取り外しが容易になるという利点がある。
【0142】
図4Fおよび図4Gは、図4Eに示すC型締付け具62の構造を示した側方断面図である。図4Fには、図4Eと同様、C型締付け具62をY方向から見た様子が示され、図4Gには、C型締付け具62をX方向から見た様子が示されている。
【0143】
図4Hは、図4Eに示すC型締付け具62の構造を示した平面図である。図4Hには、C型締付け具62をZ方向から見た様子が示されている。図4Hでは、図4Dと同様、締付けハンドル62bの形状の長手方向が、Y方向となっている。
【0144】
なお、図4Eおよび図4Fでは、作図の便宜上、図4Gや図4Hとは締付けハンドル62bの締付け具合が異なっている点に留意されたい。
【0145】
最後に、再び図4Aを参照して、本実施形態のラミネート装置61の効果について説明する。
【0146】
本実施形態では、締付け具本体62aの一端部側に、フレーム4を下方から押圧するための押圧面S6が設けられ、締付け具本体62aの他端部側に、上ケース2を上方から押圧するネジ62cを通すためのネジ穴62dが設けられた締付け具62により、上ケース2とフレーム4を挟み込んで締め付けることで、ダイヤフラム5を固定する。
【0147】
よって、本実施形態によれば、第1及び第2実施形態と同様、上ケース2およびフレーム4の端面位置P2よりも内側で、上ケース2とフレーム4を締め付けることが可能となり、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することが可能となる。
【0148】
また、本実施形態では、図8に示すようなボルト26ではなく、上記のような締付け具62により上ケース2とフレーム4を挟み込んで締め付けることで、ダイヤフラム5を固定する。よって、本実施形態によれば、第1及び第2実施形態と同様、ボルトを通すための穴をダイヤフラム5に開けずに、ダイヤフラム5を固定することが可能となる。
【0149】
また、本実施形態では、締付け具62を、締付け具本体62aにネジ穴62dを設けるだけで製造でき、締付け具62の製造が容易になるという利点がある。
【0150】
以上のように、本実施形態によれば、真空時におけるチャンバ内部への大気の流入を抑制することができ、かつ、ダイヤフラム5に穴を開ける必要のないラミネート装置61、およびラミネート装置61のダイヤフラム取り付け方法を提供することが可能となる。
【0151】
なお、第1実施形態のC型締付け具32では、ボルト32d以外の締結部材を採用するようにしても構わない。
【0152】
また、第2実施形態のC型締付け具52では、ローラー52c以外の回転部材や、スプリング52e以外の弾性部材を採用するようにしても構わない。
【0153】
また、第3実施形態のC型締付け具62では、締付け具本体62aが、単一の部材で構成されていても、複数の部材で構成されていても構わない。
【0154】
以上、本発明の具体的な態様の例を、第1から第3実施形態により説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0155】
1 ラミネート装置
2 上ケース
3 下ケース
4 フレーム
5 ダイヤフラム
6 被ラミネート体
7 支持台
8 加熱手段
9 支柱
10 昇降手段
11 排吸気手段
12 排吸気手段
13 シール部材
14 上チャンバ
15 下チャンバ
16 把手
21 掛け金
22 止め金
23 クランプレバー
24 取付け軸
25 ブラケット
26 ボルト
27 ボルト穴
28 ボルト穴(ネジ穴)
31 ラミネート装置
32 C型締付け具
32a 支点ピン
32b 第1の分割体
32c 第2の分割体
32d 締付けボルト
32e 第1のボルト穴
32f 第2のボルト穴
32g 第1のピン穴
32h 第2のピン穴
33 丸パッキン
34 丸パッキン
41 上ブラシ
42 上ブラシ用ローラー
43 剥離シート
44 搬送チェーン
45 搬送チェーンカバー
51 ラミネート装置
52 C型締付け具
52a 締付け具本体
52b 握り部
52c ローラー
52d ローラー回転軸
52e スプリング
52f スプリング軸
52g スプリング軸穴
52h 第1のスプリングストッパ
52i 第2のスプリングストッパ
61 ラミネート装置
62 C型締付け具
62a 締付け具本体
62b 締付けハンドル
62c ネジ
62d ネジ穴
62e ロック部材の突出部
62f ロック部材の挿入部
62g ロック部材用の穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面が開放された内部空間を有する上ケースと、
上面が開放された内部空間を有する下ケースと、
前記上ケースの下面側に着脱可能で、ダイヤフラムの周縁部を支持するフレームと、
前記上ケースと前記下ケースの少なくとも一方に設けられた排吸気手段と、
前記上ケースと前記下ケースとの間に配置された被ラミネート体を支持および加熱するための支持台および加熱手段とを備えるラミネート装置において、
前記上ケースと前記フレームとの間に前記ダイヤフラムを挟み込んだ状態で、前記上ケースおよび前記フレームの端面よりも内側で、前記上ケースと前記フレームを締め付けるための締付け具を備えることを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
前記締付け具は、
前記上ケースの端面よりも内側で前記上ケースを上方から押圧可能な第1の分割体と、
前記フレームの端面よりも内側で前記フレームを下方から押圧可能な第2の分割体と、
前記第1および第2の分割体を回動させるための支点ピンとを有し、
前記第1の分割体の一端部側には、前記支点ピンが嵌挿される第1のピン穴が設けられ、
前記第1の分割体の他端部側には、前記上ケースを上方から押圧するための第1の押圧面が設けられ、
前記第2の分割体の一端部側には、前記支点ピンが嵌挿される第2のピン穴が設けられ、
前記第2の分割体の他端部側には、前記フレームを下方から押圧するための第2の押圧面が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項3】
前記締付け具は、
前記締付け具の取り付け時または取り外し時に、前記上ケースの上面または前記フレームの下面に沿って転がり移動するローラーと、
前記ローラーが前記上ケースの上面または前記フレームの下面を押圧するよう、前記ローラーを付勢するスプリングと、
を有することを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項4】
前記締付け具の一端部側には、前記フレームを下方から押圧するための押圧面が設けられ、
前記締付け具の他端部側には、前記上ケースを上方から押圧するネジを通すためのネジ穴が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項5】
前記締付け具は、前記締付け具を前記ラミネート装置に取り付けられた状態でロックするためのロック機能を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のラミネート装置。
【請求項6】
下面が開放された内部空間を有する上ケースと、
上面が開放された内部空間を有する下ケースと、
前記上ケースの下面側に着脱可能で、ダイヤフラムの周縁部を支持するフレームと、
前記上ケースと前記下ケースの少なくとも一方に設けられた排吸気手段と、
前記上ケースと前記下ケースとの間に配置された被ラミネート体を支持および加熱するための支持台および加熱手段とを備えるラミネート装置において、
前記上ケースと前記フレームとの間に前記ダイヤフラムを挟み込んだ状態で、前記上ケースおよび前記フレームの端面よりも内側で、前記上ケースと前記フレームを締付け具により締め付ける、
ことを特徴とするラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法。
【請求項7】
前記締付け具は、
前記上ケースの端面よりも内側で前記上ケースを上方から押圧可能な第1の分割体と、
前記フレームの端面よりも内側で前記フレームを下方から押圧可能な第2の分割体と、
前記第1および第2の分割体を回動させるための支点ピンとを有し、
前記第1の分割体の一端部側には、前記支点ピンが嵌挿される第1のピン穴が設けられ、
前記第1の分割体の他端部側には、前記上ケースを上方から押圧するための第1の押圧面が設けられ、
前記第2の分割体の一端部側には、前記支点ピンが嵌挿される第2のピン穴が設けられ、
前記第2の分割体の他端部側には、前記フレームを下方から押圧するための第2の押圧面が設けられており、
前記上ケースと前記フレームを、前記第1の押圧面と前記第2の押圧面との間で前記締付け具により締め付けることを特徴とする請求項6に記載のラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法。
【請求項8】
前記締付け具は、ローラーと、前記ローラー用のスプリングとを有し、
前記上ケースの上面または前記フレームの下面に沿って前記ローラーを転がり移動させることで、前記締付け具の取り付けまたは取り外しを行い、
前記ローラーが前記上ケースの上面または前記フレームの下面を押圧するよう、前記スプリングにより前記ローラーを付勢することで、前記上ケースと前記フレームを締め付けることを特徴とする請求項6に記載のラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法。
【請求項9】
前記締付け具の一端部側には、前記フレームを下方から押圧するための押圧面が設けられ、
前記締付け具の他端部側には、前記上ケースを上方から押圧するネジを通すためのネジ穴が設けられており、
前記上ケースを前記ネジにより上方から押圧し、前記フレームを前記押圧面にて下方から押圧することで、前記上ケースと前記フレームを締め付けることを特徴とする請求項6に記載のラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法。
【請求項10】
前記締付け具のロック機能により、前記締付け具を前記ラミネート装置に取り付けられた状態でロックすることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載のラミネート装置のダイヤフラム取り付け方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−255641(P2011−255641A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134223(P2010−134223)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(595013427)株式会社エヌ・ピー・シー (54)
【Fターム(参考)】