説明

ラミネート装置、物品処理装置及び太陽電池パネルの製造方法

【課題】太陽電池パネルを効率的に製造できるラミネート装置を提供する。
【解決手段】ラミネート装置10は、チャンバX内に、太陽電池パネル積層体100を載置可能な載置板12と、太陽電池パネル積層体100の周縁部と当接して加熱する加熱部22aを有する加熱板22と、給排気口17とを備える。給排気口17からチャンバX内を排気し、減圧環境で、加熱部22aを太陽電池パネル積層体100の周縁部のみに当接し、太陽電池パネル積層体100の周縁部を気密に溶着する。未溶着の部分は、後工程の架橋工程で溶着及び架橋する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの生産に用いられるラミネート装置、物品処理装置及び太陽電池パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルは、一般に、レイアップ工程、ラミネート工程、架橋工程、を経て製造される。レイアップ工程は、太陽電池パネルの構成部材を溶融層を介して積層して太陽電池パネル積層体を形成する工程である。ラミネート工程は、太陽電池パネル積層体を加熱後冷却することにより溶融層を溶融して構成部材を溶着してラミネート加工する加熱・加圧工程である。架橋工程は溶融層を架橋構造として強化する熱処理工程である。
【0003】
上記のラミネート工程で使用されるラミネート装置として、板状の加熱体により太陽電池パネル積層体の上面全体をほぼ均等に加熱及び押圧する装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−144431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このラミネート装置は、太陽電池パネル積層体の全面を加熱する。このため、加熱に時間を要する。さらに、加熱により溶融した溶融層が、太陽電池セルのマトリックスの間や配線・結線部分に浸透するには、一定の時間を要する。これらの問題は、太陽電池パネルが大型の場合に顕著となる。
【0006】
さらに、従来の太陽電池パネルの製造工程では、レイアップ工程の所要時間と比較してラミネート工程の所要時間が長く、処理の滞りが生じてしまう。レイアップされた積層体を製造ライン上に滞留させないため、ラミネート装置を複数台設置することも考えられる。しかし、この場合、設置スペースを確保する必要があり、設置コストも増大してしまう。このように、従来のラミネート装置は、太陽電池パネルを効率的に生産することが困難であった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、太陽電池パネルの生産を効率的に行うことが可能なラミネート装置、物品処理装置及び太陽電池パネルの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、積層体を短時間でラミネート処理可能とすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第一の観点に係るラミネート装置は、
太陽電池パネル積層体を載置可能な支持体と、
前記支持体に載置された太陽電池パネル積層体の周縁部を加熱及び押圧する加熱部と、
を備える、
ことを特徴とする。
【0009】
前記加熱部は、例えば、前記太陽電池パネル積層体の周縁部に当接する枠状の突出部を備えてもよい。
【0010】
前記ラミネート装置は、前記加熱部と前記支持体に支持された処理対象の太陽電池パネル積層体とを収容するチャンバと、前記チャンバ内を減圧状態にする真空装置と、を備えてもよい。
【0011】
例えば、前記太陽電池パネル積層体は、太陽電池セルのストリング又はマトリックスから構成されたセル層と、前記セル層を挟むように配置された第1と第2のシートと、前記セル層と前記第1のシートとの間に配置された第1の溶着層と、前記セル層と前記第2のシートとの間に配置された第2の溶着層と、から構成され、
平面視では、前記セル層は、前記太陽電池パネル積層体の周縁部を避けて配置され、前記第1と第2の溶着層は、前記太陽電池積層体の周縁部まで延在し、
前記加熱部は、第1と第2の溶着層の周縁部を溶融することにより、第1と第2のシートを気密に溶着する、構成としてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第二の観点に係る物品処理装置は、
上述のラミネート装置と、
密封構造を有し、大気から遮断された状態で前記ラミネート装置と連通可能に形成されている架橋炉と、
前記ラミネート装置によってラミネート加工された太陽電池パネル積層体を前記架橋炉に搬送する搬送手段と、を備え、
前記架橋炉は、前記搬送手段により搬入された太陽電池パネル積層体を加熱することにより、前記第1と第2の溶着層を架橋処理する、
ことを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第三の観点に係る太陽電池パネルの製造方法は、
太陽電池のセル層と、前記セル層を挟み込む第1と第2のシートと、前記セル層と前第1のシートとの間に配置された第1の溶着層と、前記セル層と前記第2のシートとの間に配置された第2の溶着層と、から構成される太陽電池パネル積層体の周縁部を加熱することにより、前記第1と第2の溶着層を溶融し、
前記溶融した前記第1と第2の溶着層とを冷却することにより固化して前記第1と第2のシートを気密に溶着し、
前記溶着済みの太陽電池パネル積層体を熱処理することにより、前記第1と第2の溶着層を構成する高分子を架橋させることにより、前記セル層と前記第1と第2のシートを固着させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、太陽電池パネルを効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池パネルの製造方法を示す図である。
【図2】太陽電池パネル積層体を模式的に示した図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のラミネート装置を模式的に示す断面図であり、太陽電池パネル積層体を導入した状態を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のラミネート装置を模式的に示す断面図であり、上チャンバを下降させた状態を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のラミネート装置を模式的に示す断面図であり、加熱板を太陽電池パネル積層体に当接させた状態を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のラミネート装置を模式的に示す断面図であり、上チャンバを上昇させた状態を示す図である。
【図7】(a)は上チャンバを模式的に示す断面図であり、(b)は上チャンバの底面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る物品処理装置を示す図であり、ラミネート装置を物品処理装置の一部とした場合の、全体図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る物品処理装置の全体図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る物品処理装置における太陽電池パネル積層体の供給手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で下記の実施形態及び図面に変更を加えることが出来るのはもちろんである。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る太陽電池パネルの製造方法と該製造方法に用いて好適なラミネート装置について説明する。
【0018】
本実施形態に係る太陽電池パネルの製造工程は、図1に示すように、レイアップ工程、ラミネート工程、架橋工程、から構成される。
【0019】
レイアップ工程は、太陽電池パネルを構成する部材を積み上げる工程である。以下、太陽電池パネルを構成する部材を積み上げたものを太陽電池パネル積層体100と呼ぶ。
【0020】
太陽電池パネル積層体100は、図2(a)に示すように、最下層のカバーシート101と、シート状の溶着層102と、太陽電池セルの層(セル層)103と、シート状の溶着層104と、バックシート105と、から構成される。
【0021】
カバーシート101は、太陽電池パネルの表面部分となる部材であり、強化ガラス、樹脂等から構成される。また、溶着層102、104は、高温で溶融すると共に熱架橋性を有する高分子材料、例えばEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂のシートから構成されている。溶着層102、104は、各部材を接着すると共にカバーシート101とバックシート105との間の空間を充填するための部材である。また、バックシート105は、太陽電池パネルの背面部分となる部材であり、強化ガラス、樹脂、例えば、ポリエチレン樹脂から構成されている。
【0022】
セル層103は、マトリックス状又はストリング状に配列された太陽電池セル106と、これらを相互に接続するリード線107等から構成されている。
【0023】
平面視では、カバーシート101、溶着層102、104、バックシート105は、同一のサイズに形成されている。一方、セル層103は、平面視では、カバーシート101、溶着層102、104、バックシート105より小さく形成されている。
【0024】
レイアップ工程では、図2(a)、(b)に示すように、カバーシート101と、溶着層102と、セル層103と、溶着層104と、バックシート105と、をこの順に中心がほぼ一致するように積層し、太陽電池パネル積層体100を形成する。この際、太陽電池パネル積層体100の中心部では、カバーシート101と、溶着層102と、セル層103と、溶着層104と、バックシート105とが積層され、一方、周縁部108では、カバーシート101と、溶着層102と104と、バックシート105とが積層される。
【0025】
次に、形成された太陽電池パネル積層体100を図1(b)に示すラミネート工程に搬送し、ラミネート装置10により、以下の手順により、ラミネート処理を行う。なお、ラミネート装置10の詳細については後述する。
【0026】
まず、真空環境(減圧雰囲気)下で、太陽電池パネル積層体100の周縁部(セル層103の配置されていない部分)108のみを選択的に60℃程度に加熱すると共に押圧する。これにより、溶着層102、104の周縁部108が溶融する。続いて、押圧状態を維持しつつ加熱部分を冷却する(自然冷却でもよい)。これにより、太陽電池パネル積層体100の周縁部に積層されたバックシート105と溶着層104、溶着層102と溶着層104、及び溶着層102とカバーシート101、の周縁部108がそれぞれ溶着し、太陽電池パネル積層体100が一体化される。さらに、太陽電池パネル積層体100の内部は真空度の高い気密状態に維持される。
【0027】
なお、この時点では、セル層103の配置されている部分は溶着されていない。
【0028】
次に、ラミネート加工された太陽電池パネル積層体100を図1(c)に示す架橋工程に搬送する。架橋工程では、ラミネート処理された太陽電池パネル積層体100を、架橋炉40内に配置し、加圧・加熱環境下に40分程度置くことにより、溶着層102、104を構成する高分子材料を相互に連結させる架橋処理を行う。この際、溶着層102、104は、カバーシート101とセル層103の間、太陽電池セル106相互とリード線107の間、バックシート105とセル層103の間等を充填する。
【0029】
この工程により、太陽電池パネル積層体100全体が強固に一体化され、セル層103がカバーシート101とバックシート105によって封止された太陽電池パネルが製造される。
続いて、製造された太陽電池パネルを次工程に搬送する。
【0030】
以上のように、ラミネート工程において、太陽電池パネル積層体100の周縁部108のみ溶着することにより、ラミネート工程における加熱時間を短縮することができる。また、減圧雰囲気で太陽電池パネル積層体100の周縁部108を溶着するので、水蒸気や空気が太陽電池パネル積層体100内に残るといった問題も発生しない。さらに、太陽電池パネル積層体100の周縁部108を気密に溶着・封止しているので、内部が真空状態に維持され、後工程で、内部に水蒸気や空気が浸入する虞がない。また、ラミネート工程において、太陽電池パネル積層体100の周縁部108のみ溶着することにより、太陽電池パネル積層体100の全面を溶着する場合よりも、ヒータの容量を低減でき、省エネルギー効果が期待できる。
【0031】
また、太陽電池パネル積層体100の周縁部108には、太陽電池セル106及びリード線107が存在しないため、溶着しやすく、短時間で溶着可能である。このため、レイアップ工程とラミネート工程での枚葉処理が可能となり、ストリームライン化が可能となる。さらに、セル層103を押圧及び加熱しないので、太陽電池セル106及びリード線107の押圧による損傷や熱による損傷を防止できる。
【0032】
なお、ここでは、架橋工程において加圧・加熱環境下で架橋処理を行うものとして説明したが、架橋処理は必ずしも加圧環境下で行う必要ななく、大気圧の加熱環境下で架橋処理を行うようにしてもよい。
【0033】
次に、ラミネート装置10の詳細について説明する。
ラミネート装置10は、太陽電池パネル積層体100を上述の方法でラミネート加工するための装置であり、図3に示すように、下チャンバ11と、上チャンバ21と、制御部80とを備えている。
【0034】
下チャンバ11は、上面に開口を有する略直方体の箱状に形成され、底面に載置板12と支持ピン13と給排気口17を備えている。給排気口17は、バルブ19を介して真空ポンプ18に接続される。バルブ19は、外気側にも切り替え可能な切替弁(3方弁)になっており、外気を導入可能である。給排気口17は、バルブ19を介して給気可能に構成される。また、下チャンバ11の上端面15には、シール部材15aが設けられている。
【0035】
載置板12には、貫通孔16が穿設されている。支持ピン13は、貫通孔16内に上下動可能に配置されている。支持ピン13は、例えばエアーシリンダ、油圧シリンダ、ラックピニオンなどの公知の手段により上下動可能に構成されている。支持ピン13は、上昇した際、その上端が載置板12の上面よりも上方に位置し、下降した際、その上端が、載置板12の上面と面一又はより下方となるように構成されている。
【0036】
上チャンバ21は、下面に開口を有する略直方体の箱状に形成され、上下動可能に構成されている。また、上チャンバ21の下端面25には、シール部材25aが設けられている。図4に示すように、上チャンバの下端25が下降して、下チャンバ11の上端15と合着することにより、上チャンバ21の下端25及び下チャンバ11の上端15のシール部材25a、15aが密着し、気密チャンバXが形成される。
【0037】
上チャンバ21内には、加熱板22が配置されている。加熱板22は、ロッド23を介して上下動が可能である。ロッド23の上下動には、例えば、油圧シリンダなどの公知の手段を用いることができる。
【0038】
加熱板22の下面には、図3および図7に示すように、底面形状が枠状(ロ字型)に形成された突出部が形成されている。突出部は、太陽電池パネル積層体100とほぼ同一の外径寸法を有し、その下面22aは、下降時に、太陽電池パネル積層体100の周縁部108(セル層103の配置されていない部分)に当接する。突出部内には、シーズヒータ22bが組み込まれており、下面22aは加熱部として機能する。なお、ここでは加熱板22の熱源としてシーズヒータ22bを用いる例について説明するが、カーボンヒータなど他のものを熱源として用いてもよい。
【0039】
制御部80は、コンピュータから構成され、ラミネート装置10の動作を制御する。具体的には、制御部80は、制御部80内の記憶部に記憶された制御プログラムにしたがって、上チャンバ21の上下動、加熱板22の上下動、シーズヒータ22bへの通電(加熱)、支持ピン13の上下動、バルブ19の開閉(切替)、真空ポンプ18、等を制御するための制御信号を各部に供給することにより、ラミネート装置10の動作を制御する。
【0040】
次に、上記構成を有するラミネート装置10の動作を説明する。なお、以下の説明において、各部の動作は制御部80により制御されているが、理解を容易にするため、逐一の言及は避けるものとする。
【0041】
まず、図3に示すように、上チャンバ21を上昇させ、続いて、下チャンバ11の支持ピン13を上昇させる。
次に、レイアップ工程で製造された太陽電池パネル積層体100を、ローラーコンベア、ロボットアーム等により、搬送し、支持ピン13上に載置する。
【0042】
次に、図4に示すように、支持ピン13を下降させ、太陽電池パネル積層体100を載置板12に載置する。さらに、上チャンバ21を下降させ、上チャンバの下端25を、下チャンバ11の上端15と合着させ、チャンバX全体を密閉する。
【0043】
続いて、バルブ19の真空ポンプ18側を開くと共に真空ポンプ18を作動させ、チャンバX内のガスを給排気口17から排気することにより真空引きし、チャンバX内を減圧する。この真空引きにより、太陽電池パネル積層体100内の空気も除去される。
【0044】
次に、図5に示すように、加熱板22を降下し、突出部の下面(加熱部)22aを太陽電池パネル積層体100の周縁部108に当接させて太陽電池パネル積層体100を押圧すると共にシーズヒータ22bに通電し下面22aを約60℃程度に加熱し、溶着層102、104の周縁部を溶融する。なお、加熱板22を予め加熱してから、突出部の下面22aを太陽電池パネル積層体100の周縁部108に押圧するようにしてもよい。
【0045】
シーズヒータ22bに1分程度通電した後、自然冷却し、溶着層102、104の溶融した部分を固化することにより、カバーシート101の周縁部と溶着層102の周縁部、溶着層102と溶着層104の周縁部、溶着層104の周縁部とバックシート105の周縁部とをそれぞれ固着する。即ち、太陽電池パネル積層体100の周縁部108を互いに気密に貼り合わせて封止する。
【0046】
次に、加熱板22を上昇させ、太陽電池パネル積層体100と加熱板22とを離間させる。また、バルブ19を外気側に切り替えて、給排気口17から大気を導入する。太陽電池パネル積層体100が大気環境に置かれても、その周縁部108が気密封止されているので、太陽電池パネル積層体100の内部の真空状態は保たれる。
【0047】
チャンバX内が大気圧に復帰した後、図6に示すように、上チャンバ21を上昇させる。また、支持ピン13を上昇させ、太陽電池パネル積層体100を載置板12から離間させる。続いて、太陽電池パネル積層体100を、ローラーコンベア等で、図示しない後工程へ運搬し、ラミネート装置10の動作は終了する。
【0048】
以上説明したように、ラミネート装置10は、太陽電池パネル積層体100の周縁部108のみを加熱・加圧することが可能であり、上述の種々の効果を奏することが可能となる。
【0049】
なお、ラミネート装置10の構成は、上述の例に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。例えば、上述の例では、分割型のチャンバを例示したが、チャンバは分割できない箱形や丸形(円筒形)などの構成でもよい。
【0050】
また、太陽電池パネル積層体100の構成は適宜変更可能である。さらに、太陽電池パネル積層体100の周縁部を気密に封着する例を示したが、周縁部に加えて中央部分の一又は複数箇所(太陽電池セル106やリード線107を避けた位置)を溶着するようにしてもよい。また、溶着箇所は、適宜変更可能である。太陽電池パネル積層体100の中央部分の一又は複数箇所を加熱することなく押圧して、太陽電池パネル積層体100のずれや、中央部分の浮き上がりを防止するようにしてもよい。
【0051】
さらに、所望の位置を部分的に加熱・押圧できるならば、加熱板の形状・構造は任意である。また、太陽電池パネルの形状も任意であり、太陽電池パネルの形状に応じて、加熱板の突出部の形状・幅も適宜設定される。
【0052】
また、周縁部108を溶着させた太陽電池パネル積層体100の自然冷却については、加熱板22を太陽電池パネル積層体100の周縁部108に当接させた状態で行うものとして説明したが、加熱板22を上昇させ、太陽電池パネル積層体100と離間させた状態で行うようにしてもよい。さらに、チャンバX内を大気圧に復帰させた後、支持ピン13を上昇させて行ってもよい。太陽電池パネル積層体100の自然冷却の方法は、太陽電池パネル積層体100の品質を保ちつつ、溶着層102、104の溶融した部分を固化させることができれば任意の方法であってよい。
【0053】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、ラミネート処理した太陽電池パネル積層体100を架橋工程に搬送して処理する必要がある。以下、太陽電池パネル積層体100の移動量が小さくてすむ一体型の熱処理装置について説明する。
【0054】
本実施形態に係る熱処理装置200は、図8に示すように、予備加圧室(第1室)210と架橋炉(第2室)240と減圧室(第3室)250の3室と、制御部90とから構成されている。
【0055】
予備加圧室210は、基本的に、上述のラミネート装置10と同様の基本構成を有する。但し、予備加圧室210は一体型であり、導入扉32と、第1密閉扉33と、導管35と、調圧弁36と、をさらに備えている。また、ラミネート装置10の上チャンバ21が昇降しない点が、第1の実施形態とは異なる。
【0056】
導入扉32は、予備加圧室210を大気から遮断する。また、第1密閉扉33は、予備加圧室210と架橋炉240とを遮断する。導入扉32と第1密閉扉33とにより、予備加圧室210内は密封可能である。
【0057】
導管35は、調圧弁36を備え、予備加圧室210と架橋炉240とを連通している。
【0058】
架橋炉240は、第1密閉扉33と第2密閉扉52とにより、密封可能に構成され、加圧状態を保持可能に構成されている。また、架橋炉240は、電気ヒータ等により加熱状態を保持可能に構成されている。
【0059】
減圧室250は、第2密閉扉52と、搬出扉53と、導管55と、調圧弁56と、排気弁59を備えている。
【0060】
第2密閉扉52は、減圧室250を架橋炉240から遮断している。また、搬出扉53は、減圧室250を大気から遮断している。また、第2密閉扉52と搬出扉53とにより、減圧室250内は密封可能である。
【0061】
導管55は、調圧弁56を備え、架橋炉240と減圧室250とを連通している。
排気弁59は、減圧室250と大気との間を開閉する。
【0062】
次に、上記構成を有する熱処理装置200の動作(太陽電池パネル積層体100のラミネート工程および架橋工程)について説明する。なお、以下の説明において、熱処理装置200を構成する各部の動作は、制御部90により制御されるが、理解を容易にするため、逐一の言及は避けるものとする。
【0063】
まず、各扉32、33、52、53を全て封止状態とする。また、バルブ19、及び、各弁36、56、59を閉じる。これらの処理によって、予備加圧室210、架橋炉240、減圧室250は密閉状態となる。
【0064】
また、架橋炉240を予め所望の架橋処理に適した雰囲気、例えば、60℃、0.2MPaの雰囲気に調整する。
【0065】
続いて、予備加圧室210の導入扉32を開き、また、支持ピン13を上昇させる。次に、ローラーコンベア等の導入手段31により、太陽電池パネル積層体100を予備加圧室210内に搬入し、支持ピン13上に載置する。その後、導入扉32を閉鎖し、予備加圧室210内を密閉状態とする。
【0066】
次に、支持ピン13を下降させ、太陽電池パネル積層体100を載置板12上に載置する。
【0067】
次に、真空ポンプ18を作動させ、給排気口17から真空引きする。チャンバ内の圧力が所定値に達すると、シーズヒータ22bを加熱し、突出部の下面22aを、太陽電池パネル積層体100に押圧し、溶着層102、104を溶融し、太陽電池パネル積層体100の周縁部108を貼り合わせる。なお、上述したように加熱板22を予め加熱してから、突出部の下面22aを太陽電池パネル積層体100の周縁部108に押圧するようにしてもよい。
【0068】
続いて、ラミネート加工された太陽電池パネル積層体100を架橋炉240に搬送して架橋処理を行うため、まず、導管35内の調圧弁36を開放し、架橋炉240内の雰囲気を予備加圧室210内に導入する。
【0069】
予備加圧室210内の雰囲気と架橋炉240内の雰囲気とがほぼ等しくなると、第1密閉扉33を開放する。また、支持ピン13を上昇させて、太陽電池パネル積層体100を載置板12から離間させる。その後、太陽電池パネル積層体100を、搬送手段34により架橋炉240へ搬送する。搬送手段34は、ローラーコンベア又はトラバーサ等の横方向搬送機が用いられる。導管35内の調圧弁36は第1密閉扉33が開放された後、閉じられる。
【0070】
架橋炉240へ搬送された太陽電池パネル積層体100は、内部の所定位置に配置される。
【0071】
続いて、第1密閉扉33を閉鎖する。架橋炉240内は、加圧状態のまま60℃に維持されており、溶着層102及び104全体が溶融し、太陽電池セル106の間や、リード線107の間等の空間に隙間無く浸透する。
【0072】
その後、架橋炉240内を140℃まで加熱し、太陽電池パネル積層体100を約40分間滞留させ、溶着層102、104を構成する高分子を架橋させる。
【0073】
所定時間が経過すると、太陽電池パネル積層体100を架橋炉240から減圧室250に搬出するため、まず、架橋炉240と減圧室250とを連通する導管55内の調圧弁56を開放し、架橋炉240と減圧室250の雰囲気をほぼ同一とする。
【0074】
次に、第2密閉扉52を開放し、搬送手段54により、架橋処理済の太陽電池パネル積層体100を減圧室250に搬送する。
【0075】
その後、第2密閉扉52を閉鎖し、減圧室250を密閉し、加圧状態のまま、太陽電池パネル積層体100を、空冷又は水冷により冷却する。
【0076】
なお、空冷の場合に、供給する冷却用気体は、温度及び蒸気圧を除湿機などの露点調整手段で調整した気体であることが望ましい。また、減圧室250内は、熱処理装置200が設置されている場所(例えば低露点クリーンルーム)における気体の露点と同じか少なくともそれより僅かに低い露点になるように調整されていることが望ましい。このようすれば、太陽電池パネル積層体100に水分が付着することを防止できる。
【0077】
冷却後、排気弁59を開放し、減圧室250の圧力と温度を、大気とほぼ同一とする。
【0078】
その後、減圧室250の搬出扉53を開放し、太陽電池パネル積層体100を搬出手段51により搬出する。以上で、太陽電池パネル積層体のラミネート工程および架橋工程が終了し、太陽電池パネルが製造される。
【0079】
以上説明したように、第2の実施形態の熱処理装置200によれば、太陽電池パネル積層体100のラミネート工程と架橋工程を同一の装置で行うことができる。従って、ラミネート工程後の仕掛品の移動が少なく、製造時間が短縮できる。また、同一の装置で製造できるので、設備の設置スペースを縮小できる。
【0080】
また、架橋炉240内を加圧して架橋工程を行うことで、大気圧で架橋工程を行う場合に比べ、空気分子の密度が上がるため、架橋炉240内の温度分布が向上する。これにより、太陽電池パネル積層体100における温度分布も向上し、架橋反応を均一に起こすことができるようになる。さらに、化学反応は空気分子の衝突回数によって反応の時間が変化するため、加圧状態で架橋工程を行うことで大気圧状態よりも早く架橋反応が終わることが期待でき、架橋工程の時間の短縮を期待できる。
【0081】
なお、熱処理装置200の構成は、上述の例に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。例えば、上述の例では、予備加圧室(第1室)210と架橋炉(第2室)240と減圧室(第3室)250の3室と、を導管35や導管55を介して連通し、第1室から第3室の雰囲気(気圧)を調整するように構成されていたが、第1室から第3室にそれぞれに加圧機構を設けて、別個に雰囲気(気圧)を調整するようにしてもよい。
【0082】
また、架橋路240内の温度は、当初60℃に調整され、架橋を行うときに140℃まで加熱されるものとして説明したが、当初から140℃に調整され、140℃に維持されるようにしてもよい。
【0083】
(第3の実施形態)
上記第1及び第2の実施形態では、ラミネート工程の所要時間に比して架橋工程の所要時間が長く、枚葉処理及び処理のストリームライン化が困難である。このような問題を解決可能な一体型の熱処理装置300について図9を参照して説明する。
【0084】
本実施形態の熱処理装置300の基本構成は、図8に示した第2の実施形態の熱処理装置200と同一である。但し、太陽電池パネルの生産効率を向上するため、架橋炉240内に収容タワー400を備える点が異なる。また、架橋炉240内の温度は140℃に調整される。
【0085】
収容タワー400は、予備加圧室210から枚葉方式にて供給される太陽電池パネル積層体100を順次受入れ、これを架橋炉240内において垂直上方へ重ねて収容する。また、収容タワー400は、n個の物品受入れ部位(スロット)420(1)〜420(n)を有している。nの値は任意であるが、1つの太陽電池パネル積層体100のラミネート工程に要する時間をA、1つの太陽電池パネル積層100の架橋工程に要する時間をBとしたときに、n>(B/A)+1 と設定することが望ましい。
【0086】
以下、収容タワー400を含む架橋炉240の動作について説明する。
なお、予備加圧室210の動作は第2実施形態と同一である。また、理解を容易するため、以下の説明では、n=6とする。
【0087】
制御部90は、初期状態では、収容タワー400の第1の物品受入れ部位420(1)を供給ライン410上に配置する。この状態において、図10(A)に示すように、第1密封扉33を開放して太陽電池パネル積層体100を架橋炉240内へ供給すると、太陽電池パネル積層体100は、収容タワー400の第1の物品受入れ部位420(1)に収容される。
【0088】
次に、受入れ部位を1つ置きに充填するように収容タワー400を2ピッチ分だけ垂直上方へ移動させ、図10(B)に示すように、第3の受入れ部位420(3)を供給ライン410上に配置し、太陽電池パネル積層体100を供給する。
【0089】
次いで、同様の手法に従って、図10(C)〜(F)に示すように、収容タワー400の第5受入れ部位420(5)→第6受入れ部位420(6)→第4受入れ部位420(4)→第2受入れ部位420(2)に、順次太陽電池パネル積層体100を収容する。これにより収容タワー400の全ての受入れ部位420(1)〜420(6)に太陽電池パネル積層体100が収容される。
【0090】
架橋炉240に搬入後、一定時間を経過し、架橋処理が終了した太陽電池パネル積層体100は、図10(H),(I)に例示するように、受入れ部位420(1)→420(3)→420(5)→420(6)→420(4)→420(2)→420(1)...の順で、即ち、受け入れ順に減圧室250に順次排出される。
【0091】
このような構成とすれば、予備加圧室210から順次供給される太陽電池パネル積層体100を順次架橋炉240に収容でき、架橋処理済みの太陽電池パネル積層体100を減圧室250に順次排出することができる。このため、ラミネート工程の所要時間と架橋工程の所要時間の差を吸収し、太陽電池パネルの製造工程の枚葉処理及びストリームライン化が可能となる。また、架橋炉240内で複数の太陽電池パネル積層体100を処理するので、上記第2の実施形態で説明した、加圧状態で架橋工程を行うことの効果がより高まる。即ち、複数の太陽電池パネル積層体100について、均一の架橋処理を行い、均一の太陽電池パネルを製造できるという効果が期待できる。
【0092】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0093】
例えば、上記実施形態において、加熱板22の下端は、底面形状がロ字型に形成されていたが、これに限られるものではなく、I字型に形成されていてもよい。この場合は、加熱板の下端を、太陽電池パネル積層体100の外周に順に当接すればよい。
【0094】
例えば、上記実施形態において、加熱板22により、太陽電池パネル積層体100の上方から加熱していたが、これに限られるものではない。載置板12に加熱部を備え、太陽電池パネル積層体100の下方から加熱することも可能である。また、上方の加熱板22及び下方の載置板12の双方から加熱することも可能である。
【0095】
例えば、上記実施形態において、加熱板22は、上下動可能に構成されていたが、これに限られるものではなく、載置板12が上下動可能に構成されていてもよい。この場合、載置板12は、油圧シリンダなどの公知の手段を用いて上下動可能に構成される。
【0096】
例えば、上記実施形態において、上チャンバ21は、上下動可能に構成されていたが、これに限られるものではなく、下チャンバ11とヒンジを介して接合されていてもよい。この場合は、上チャンバ21がヒンジを中心に回動することにより、ラミネート装置10が開放できるように構成される。
【0097】
例えば、上記実施形態において、加熱板22は、当接して太陽電池パネル積層体100を加熱していたが、これに限られるものではない。加熱板22の下端に緩衝材を配置して、緩衝材を介して加熱してもよい。
【0098】
上述した各部のサイズ、温度、圧力などは例示であり、限定されるものではない。また、各部の材質も限定されるものではない。例えば、溶着層102,104の材質としてEVAを例示したが、ある程度の熱で溶融可能な架橋性の物質ならば、任意の物質を使用可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 ラミネート装置
11 下チャンバ
12 載置板
13 支持ピン
17 給排気口
21 上チャンバ
22 加熱板
22a 加熱部
22b シーズヒータ
31 導入手段
32 導入扉
33 第1密閉扉
34 搬送手段
35 導管
36 調圧弁
40 架橋炉
80 制御部
100 太陽電池パネル積層体
101 カバーシート
102 溶着層
103 セル層(太陽電池セルの層)
104 溶着層
105 バックシート
106 太陽電池セル
107 リード線
108 周縁部
200 熱処理装置
300 熱処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネル積層体を載置可能な支持体と、
前記支持体に載置された太陽電池パネル積層体の周縁部を加熱及び押圧する加熱部と、
を備える、
ことを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記太陽電池パネル積層体の周縁部に当接する枠状の突出部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項3】
前記加熱部と前記支持体に支持された処理対象の太陽電池パネル積層体とを収容するチャンバと、前記チャンバ内を減圧状態にする真空装置と、を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のラミネート装置。
【請求項4】
前記太陽電池パネル積層体は、太陽電池セルのストリング又はマトリックスから構成されたセル層と、前記セル層を挟むように配置された第1と第2のシートと、前記セル層と前記第1のシートとの間に配置された第1の溶着層と、前記セル層と前記第2のシートとの間に配置された第2の溶着層と、から構成され、
平面視では、前記セル層は、前記太陽電池パネル積層体の周縁部を避けて配置され、前記第1と第2の溶着層は、前記太陽電池積層体の周縁部まで延在し、
前記加熱部は、第1と第2の溶着層の周縁部を溶融することにより、第1と第2のシートを気密に溶着する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のラミネート装置。
【請求項5】
請求項4に記載のラミネート装置と、
密封構造を有し、大気から遮断された状態で前記ラミネート装置と連通可能に形成されている架橋炉と、
前記ラミネート装置によってラミネート加工された太陽電池パネル積層体を前記架橋炉に搬送する搬送手段と、を備え、
前記架橋炉は、前記搬送手段により搬入された太陽電池パネル積層体を加熱することにより、前記第1と第2の溶着層を架橋処理する、
ことを特徴とする物品処理装置。
【請求項6】
太陽電池のセル層と、前記セル層を挟み込む第1と第2のシートと、前記セル層と前第1のシートとの間に配置された第1の溶着層と、前記セル層と前記第2のシートとの間に配置された第2の溶着層と、から構成される太陽電池パネル積層体の周縁部を加熱することにより、前記第1と第2の溶着層を溶融し、
前記溶融した前記第1と第2の溶着層とを冷却することにより固化して前記第1と第2のシートを気密に溶着し、
前記溶着済みの太陽電池パネル積層体を熱処理することにより、前記第1と第2の溶着層を構成する高分子を架橋させることにより、前記セル層と前記第1と第2のシートを固着させる、
ことを特徴とする太陽電池パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−84009(P2011−84009A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239840(P2009−239840)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(593139695)株式会社協真エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】