ランチビオティックス及びこれらの使用
本発明は、グラム陰性菌及びグラム陽性菌を阻害する単離ランチビオティックスを提供する。ランチビオティックスはアミノ酸配列を含み、この化合物のアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有している。ランチビオティックスは、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態で、グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を有している。本発明はまた、ランチビオティックスを形成して使用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
継続出願データ
本出願は、2007年7月20日付けで出願された米国特許仮出願第60/961,374号明細書の優先権を主張する。前記明細書を参考のため、本明細書中に引用する。
【0002】
政府の補助金
本発明は、エネルギー省によって与えられた、許可番号DE-FG02-98ER82577及びDE-FG02-00ER83009に基づく政府支援によって為された。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
人間の腸の微生物多様性に関する最近の分子研究は、以前に認識されたものよりもはるかに多くの多様性を明らかにしているが、人体への個々の群の関与について目下知られていることは極めて少ない(Gill他、2006, Science, 312: 1355-1359)。数的に支配的な1微生物群であるビフィズス菌は、良好な腸内健康状態と関連することがしばしば示唆されており、これらは、母乳で育てられている乳児の便において有力に支配する(Yoshioka他、1983, Pediatrics, 72: 317-321)。この現象は、小児科医Henri Tissierによる1899年におけるこれらの細菌の発見を導き、そしてこれに続いて、Tissierは乳幼児下痢症を治療するためにこれらの細菌を使用することになった(Tissier, 1906, Crit Rev Soc Biol, 60: 359-361)。ビフィズス菌の提議された有益な効果はさらに、高齢者におけるこれらの細菌の減少、及びこれに伴う他の微生物群、とりわけクロストリジウム及び大腸菌(E. coli)の増加によって裏付けられている(Mitsuoka他, 1973, Zentralbl Bakteriol [Orig A], 223:333-342, Hopkins他, 2001, Gut 48:198-205, Ishibashi他, 1997, Mal J Nutr, 3:149-159)。このことにより、潜在的な腸内の健康利益のために食品中にビフィズス菌を含むことの関心が世界的に高まっている(O'Sullivan, Primary Sources of Probiotic Cultures, Probiotics in food safety and human health. Goktepe他編、Boca Raton: Taylor & Francis/CRC Press, 2006:91-107)。しかしながら、ビフィズス菌に関する臨床摂食研究は、摂食試験中に被検者の便中に菌株を検出することはできるものの、これらは、研究を中止すると急速に失われることを示し、人間の腸内環境内で競合するための菌株の競合的適応が失われる可能性を指摘している(O'Sullivan, Primary Sources of Probiotic Cultures, Probiotics in food safety and human health. Goktepe他編、Boca Raton: Taylor & Francis/CRC Press, 2006:91-107, Fukushima他, 1998, Int J Food Microbiol, 42:39-44, Su他, 2005, FEMS Micrbiol Lett, 244:99-103)。これは、発酵環境が、人間の結腸の緩衝された嫌気性環境とは大きく異なることに伴う、菌株の減衰に起因すると言える。
【0004】
バクテリオシンは、多くのタイプの細菌によって生成される、ペプチドに基づく抗微生物化合物であり、密接に関連する細菌に対して阻害作用を有する。しばしば、阻害スペクトルは、生成細菌の属の範囲内にある。ランチビオティックスは、幅広い阻害スペクトルを有し、また翻訳後修飾される一種のバクテリオシンである。具体的には、修飾酵素がいくつかのアミノ酸を修飾してランチオニン残基にする。乳酸菌Lactococcus laticsのいくつかの菌株によって生成されるナイシンは、ほとんどのグラム陽性菌にまで及ぶ、今まで記述されている中で最も幅広い阻害スペクトルを有するランチビオティックスである。その広いスペクトルを考えて、これは、保存剤及び保存寿命延長剤として幅広く使用される。残念ながら、腐敗菌及び病原菌はグラム陽性菌だけではない。多くの病原体、例えばE. coli及びSalmonellaがグラム陰性であり、また多くの腐敗菌、例えばPseudomonas及びKlebsiellaもグラム陰性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方を阻害するビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)のプロバイオティック培養から、バイシン(bisin)と題されるランチビオティックスを提供する。これは、今日まで、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方に対して天然阻害作用を有することが記述された最初のバクテリオシンである。従ってこれは、グラム陰性菌、特にPseudomonasの酵素活性が多くの欠陥の原因となることを考えれば、乳製品における効果的な保存寿命延長剤となる可能性を有する。
【0006】
ランチビオティックスを生成する可能性は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株のゲノム配列から初めて認識されたが、菌株によって生成されるランチビオティックスを検出する最初の試みは不成功であった。ランチビオティックスが生成されることになる成長条件が見いだされる前に、更なる試験が必要となった。続いて、その阻害スペクトルを試験し、そしてグラム陽性指示菌及びグラム陰性指示菌の両方に対する効果的な阻害を明示するために、バイオアッセイを用いた。
【0007】
本発明は、アミノ酸配列を含む単離された生物活性化合物であって、化合物のアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有している、単離された生物活性化合物を提供する。ポリペプチド配列は、配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列の少なくとも1つの同類置換を含んでいてよい。化合物は、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態で、グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を有している。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。いくつかの態様において、これは好ましくはP. aeruginaosaではない。化合物は、グラム陽性菌、例えばLactobacillus種、Lactococcus種、Streptococcus種、Staphylococcus種、又はBacillus種の成長を阻害する。化合物はBifidobacteriumによって生成されてよい。本発明はまた、単離された生物活性化合物と食品とを含む組成物、及び、単離された生物活性化合物と、医薬として許容される担体とを含む組成物を含む。
【0008】
本発明はまた、単離ポリヌクレオチドであって:(a)該ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有しているポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は(b)ヌクレオチド配列(a)の完全相補形を含む、単離ポリヌクレオチドを提供する。単離ポリヌクレオチドは、異種調節配列に作動可能的に連結されていてよい。本発明はまた、単離ポリヌクレオチドを含有するベクター、及び単離ポリヌクレオチドを含有する細胞を提供する。
【0009】
本発明は、単離ランチビオティックスであって、ランチビオティックスが、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態で、グラム陰性菌の成長を阻害する、単離ランチビオティックスを提供する。ランチビオティックスはアミノ酸配列を含み、化合物のアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有している。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。
いくつかの態様において、これは好ましくはP. aeruginaosaではない。
【0010】
本発明は、ランチビオティックスと食品とを含む組成物であって、ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を有している組成物を提供する。ランチビオティックスは食品の表面上、食品中、又はその組み合わせにおいて存在していてよい。ランチビオティックスはアミノ酸配列を含み、ランチビオティックスのアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有していてよい。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。
【0011】
本発明は、ランチビオティックスと医薬として許容される担体とを含む組成物であって、ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する組成物を提供する。ランチビオティックスはアミノ酸配列を含み、ランチビオティックスのアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有していてよい。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。
【0012】
本発明はまた、本明細書中に記載された化合物を製造する方法を提供する。この方法は、ランチビオティックスを製造するために適した条件下で単離Bifidobacteriumを成長させることを含んでよく、Bifidobacteriumはランチビオティックスを生成する。この方法はさらに、ランチビオティックスを単離することを含む。成長は、表面上でBifidobacterium、好ましくはB. longumを成長させることを含んでよい。本発明はまた、この方法によって製造されたランチビオティックスを含む。
【0013】
ランチビオティックスの製造方法は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む微生物を成長させることを含んでよく、ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とは少なくとも80%の同一性を有しており、微生物は、ポリペプチドを製造するために適した条件下で成長させられ、微生物はポリペプチドを生成する。微生物はさらに、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、又はこれらの組み合わせから選択されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。成長は、表面上でBifidobacterium、好ましくはB. longumを成長させることを含んでよい。本発明はまた、この方法によって製造されたポリペプチドを含む。この方法はさらに、例えば、アルコール(例えばメタノール)を含む組成物で抽出することによって、ポリペプチドを単離することを含んでよい。
【0014】
さらに、本発明によって、ランチビオティックスの使用方法が提供される。方法は、ランチビオティックスを食品に添加することを含んでよく、ランチビオティックスはグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む。この方法は、例えばランチビオティックスを含むケーシング、フィルム、又はパッケージング材料の表面を該食品に接触させることにより、食品の表面にランチビオティックスを加えることを含んでいてよい。添加は、該ランチビオティックスを食品に添加することを含んでいてよい。ランチビオティックスは、食品保存剤として作用してよい。
【0015】
本発明は、アミノ酸配列を含む生物活性化合物を含む歯磨き剤、例えばマウスウォッシュ又は練り歯磨きであって、化合物のアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有しており、化合物がグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる歯磨き剤を提供する。
【0016】
また、本発明によって、ランチビオティックスを含む組成物を動物、例えばヒトに投与することを含むランチビオティックスの使用方法であって、患者が該ランチビオティックスによって阻害される微生物による感染症を有するか又はそのリスクがあり、そしてランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる、ランチビオティックスの使用方法も提供される。組成物は、医薬として許容される担体を含んでいてよく、また組成物は局所投与されてよい。
【0017】
本発明はまた、単離された生物学的活性ポリペプチドであって、該ポリペプチドのアミノ酸配列と、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有している、単離された生物学的活性ポリペプチドを提供する。また、本発明には、ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドも含まれる。
【0018】
本発明はさらに、ランチビオティックスを生成するBifidobacteriumを提供する。ランチビオティックスはグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。Bifidobacteriumはカプセル封入されているか、又は例えば錠剤形状を成していてよく、食品中に存在していてよい。本発明はまた、Bifidobacteriumを、これを必要とする動物に投与することを含む方法であって、Bifidobacteriumがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含むランチビオティックスを生成することになる、方法を提供する。
【0019】
「及び/又は」という用語は、記載の要素のうちの1つ又は全て、又は記載の要素のうちのいずれか2つ又は3つ以上の組み合わせを意味する。
【0020】
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、或る環境下で特定の利益をもたらし得る本発明の実施態様を意味する。しかしながら、同じ又は他の環境下で、他の実施態様が好ましいこともある。さらに、1つ又は2つ以上の好ましい実施態様を挙げることが、他の実施態様が有用ではないことをほのめかすことにはならず、またこのことは、本発明の範囲から他の実施態様を排除しようとするものではない。
【0021】
「含む」という用語及びこの変化形は、明細書及び特許請求の範囲においてこれらの用語が現れる場所で限定的な意味を有することはない。
【0022】
他に断りのない限り、「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ」は、相互交換可能に使用され、1つ又は2つ以上のものを意味する。
【0023】
さらに本明細書中では、終点による数値的範囲を挙げる場合には、これは、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0024】
本明細書中に開示された、不連続なステップを含むいかなる方法に関しても、ステップは、任意の実現可能な順序で行われてよい。また、適切な場合には、2つ又は3つ以上のステップの任意の組み合わせを同時に行うこともできる。
【0025】
本発明の上記概要は、本発明の開示された各実施態様を、又は実施形ごとに記述しようとするものではない。以下の記載においては実施態様をより具体的に例示する。本出願全体を通していくつかの個所で、例の一覧によって指針が提供されるが、これらの例はいくつかの組み合わせで用いることができる。それぞれの事例において、挙げられた一覧は、代表的なグループとしてのみ役立つのであって、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、B. longum DJO10A.(A)及びNCC2705.(B)における可動性インテグレーゼ・カセット(MIC)の編成を示す図である。Orf1,2及び3は3つの隣接する、しかしながら異なるxerCインテグレーゼ遺伝子を意味する。Pは、MICIIIに11bp伸長を有する保存20bpパリンドローム(TTAAACCGACATCGGTTTAA)(配列番号24))である。IRは、MICI及びIIに3bp伸長、MICIIIに5bp伸長、及びMIC1,2及び3に1bp伸長を有する96bp逆反復(IR)(GATTAAGCCGGGTTTGTTGTTAAGCCGGGGAACGGTTCGGGGTCTTGGTGGCTGGCCGTGTCCCATGTGGTTTCCCGGCTTAACGTTCCGGGTTAT)(配列番号25)である。IS挿入配列を意味する。
【図2】図2はゲノム固有領域を示す図である。(A)B. longum DJO10A及びNCC2705ゲノムのベース偏差指数(BDI)分析。テキスト中に定義された各ゲノムの固有領域に番号を付けた。oriC及びterCの位置は緑の矢印によって示す。文字は、両ゲノム内に存在する限定的BDIピークを有する領域からの予測遺伝子表現型を意味する。すなわちa GTPase、b カチオン輸送ATPase、c DNA分配タンパク質、d コロイルグリシンヒドロラーゼ、e グルタミン・シンターゼ・ベータ鎖、f アラニル−tRNAシンテターゼ、g ピルビン酸キナーゼ、h カチオン輸送ATPase、i フィブロネクチンIII型、j アミノペプチダーゼC、k サブチリシン様セリンプロテアーゼ、l ソルターゼ、m 脂肪酸シンターゼ。(B)NCC2705における予測欠失位置に残るushA遺伝子からの、緑のバーによって示された361bp DNA残存物の位置を示す固有領域1の編成。空色のORFは、両ゲノム間の共通の遺伝子を示す。a 可動性インテグレーゼカセット。
【図3】図3は、2つのB. longumゲノム間のオリゴ糖利用遺伝子クラスター7の比較を示す図である。固有領域10におけるDJO10A固有遺伝子は、ダークグレーに着色されており、ISL3型IS要素は黒に着色されており、他のマッチ遺伝子は白に着色されている。galA,α−ガラクトシダーゼ;lacI,LacI型リプレッサー;malEFG,ABC型輸送系;ISL3,ISL3型IS要素;agl1,グリコシダーゼ;ilvA,トレオニンデヒドラターゼ;SIR2,NAD依存性タンパク質デアセチラーゼ;glyH,グリコシルヒドロラーゼ;hyp,仮想タンパク質。
【図4】図4は、菌株DJO10Aにおける固有領域13のポリオール代謝に関与する遺伝子の編成、及び、B. adolescentis ATCC 15703における類似領域との比較を示す。アミノ酸同一性が、相同遺伝子間で示されている。黒い影を付けたORFは、固有領域13及びB. adolescentis ATCC 15703における対応ホモログに由来する。
【図5】図5は、選択された細菌のヒ素耐性を示す。(A) ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum) DJO10A、Bacillus subtilis 168(Kunst他, 1997, Nature 1997, 390: 249-256)、Bacteroides thetaiotamicron VPI-5482 (Xu他, 2003, Science 2003, 299: 2074-2076), Lactobacillus brevis ATCC 367 (Makarova他, Proc Natl Acad Sci USA 103:15611-15616), L. plantarum WCFS1 (Kleerebezem他、2003, Proc Natl Acad Sci USA 2003, 100; 1990-1995), L. johnsonii NCC 533 (Pridmore他, 2004, Proc Natl Acad Sci USA 2004, 101:2512-2517)及びE. coli K-12(Sofia他, 1994, Nucleic Acids Res 1994, 22:2576-2586)の完成ゲノム配列からコンパイルされたヒ素耐性遺伝子クラスターの遺伝子編成。a.胞子形成中に部位特異的リコンビナーゼSpoIVCAによって切除される48kb要素、b.プラスミド配列、arsR、リプレッサー、arsA、ヒ素刺激ATPase、arsB、亜ヒ酸塩排出ポンプ、arsC、ヒ酸塩レダクターゼ、arsD、ヒ素シャペロン、hyp、仮想タンパク質を示す。(B)B. longum DJO10Aのヒ素耐性活性と、発酵適応されたB. animalis亜種lactis菌株、E. coli及びLactobacillus plantarumとの比較。c. van Kranenburg他(van Kranenburg他, 2005, Appl Environ Microbiol 2005, 71:1223-1230)に定義されたデータから計算。
【図6】図6は、B. longum DJO10Aによるランチビオティックスの生成を示す。(A)ランチビオティックスをコードするB. longum DJO10A固有領域12、及び菌株NCC2705及びDJO10A-JH1における対応ゲノム位置の編成。IS30に続くA又はB識別子は、ゲノム内のこの位置だけに見いだされるIS30要素の固有クラスを意味する。’ 識別子は、フラグメント化IS30要素である。(B)XbaI消化された、B. longum DJO10Aの総DNA及びその発酵適応単離体DJO10A-JH1のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)分析。白い矢印は、菌株DJO10A-JH1から失われたバンドを示す。(C)指示菌としてDJO10A及びDJO10A-JH1を用いた、B. longum DJO10Aによるランチビオティックス生成に対するバイオアッセイ。
【図7】図7は、B. longum DJO10AのゲノムにおけるIS30「ジャンピング」を示す。(A)B. longum DJO10A及びラボラトリー適応DJO10A-JH1のゲノムにおけるIS30要素のゲノム位置。グレーの矢印は、DJO10AゲノムDNAの直接配列決定によって識別された5つの要素を示す。白い矢印は、DJO10AゲノムDNAから調製されたいくつかの配列決定クローン内で検出された要素の位置を示す。A6下のアスタリスクは、この要素がDJO10A DNAのいくつかの配列決定クローンから欠けていたことを示す。(B)4つの異なるIS要素群に対して特異的なプローブを使用して、左のゲル及びそのサザン・ハイブリダイゼーション(右のゲル)において示されたDJO10AのNruI消化ゲノムDNA。(1)はDJO10Aを意味し、そして(2)はDJO10A-JH1を意味する。矢印は、(A)に示した特定のIS30要素に対応するDJO10Aにおけるバンドを示す。
【図8】図8は、Clostridium difficile及びE. coliに対するB. longum DJO10A及びそのin vitro適応誘導体、菌株DJO10A-JH1の模擬便競合分析を示す。(A)B. longum DJO10A-JH1(水平線)及びB. longum DJO10A(ハッチ)との競合に続く競合研究開始時のE. coli DJOec1の生存細胞数(黒)。(B)B. longum DJO10A-JH1(水平線)及びB. longum DJO10A(ハッチ)との競合に続く競合研究開始時のC. difficile DJOec1の生存細胞数(黒)。N=3。
【図9】図9は、oriC領域の保存構造を示す。これは、2つのB. longumゲノム内の3つのクラスターから成っている。DnaAボックスは、以下のようにA〜Gで指定された7つのタイプから成っている:タイプA(TTATCCACA)、タイプB(TTGTCCACA)、タイプC(TTTTCCACA)、タイプD(TTACCCACA)、タイプE(TTATCCACC)、タイプF(TTATTCACA)、タイプG(TTATGCACA)。
【図10】図10は、B. longumゲノムによってコードされたI及びII型制限修飾(R−M)系を示す。(A)B. longum DJO10AとNCC2705との間のI型R−M系をコードするゲノム位置のアラインメント。(B)Sau3AI−II型R−M系(認識部位5'-GATC-3')と、他の細菌内の類似のR−M系との比較、及び(C)EcoRII−II型R−M系(認識部位5'-CCWGG-3')と、他の細菌内の類似のR−M系との比較。B. longum DJO10Aと比較されたタンパク質配列同一性パーセンテージが示されている。
【図11】図11は、11の異なるタイプのオリゴ糖利用遺伝子クラスターの編成(DJO10Aの11タイプ及びNCC2705の7タイプ)を示す。菌株DJO10Aの固有の遺伝子が示されている。IS,挿入配列;Hyp,仮想タンパク質;Arab,アラビノシダーゼ;E,malE;F,malF;G,malG;R,lacI型リプレッサー;K,ABCトランスポーターのATPase;αGal,αガラクトシダーゼ;βXyl,β−キシロシダーゼ;Est,エステラーゼ;LCFACS,長鎖脂肪酸アセチルCoAシンテターゼ;f,フラグメント化遺伝子;XylT,D−キシロース・プロトン・シンポーター;βGal,β−ガラクトシダーゼ;Arab−βGal,アラビノガラクタン・エンド1,4−β−ガラクトシダーゼ;O157,E. coli O157内にのみホモログを有するORF;αMAN,α−マンノシダーゼ;GlycH,グリコシルヒドロラーゼ;NAc−Glc,N−アセチルグルコサミニダーゼ;UhpB,ヒスチジンキナーゼ;RfbA,dTDP−グルコースピロホスホリラーゼ;RfbB,dTDP−D−グルコース4,6−デヒドラターゼ;RfbC,dTDP−4−デヒドロラムノース3,5−エピメラーゼ;RgpF,リポ多糖類生合成タンパク質;TagG,ABC型多糖/リン酸ポリオール輸出系、パーミアーゼ成分;TagH,ABC型多糖/リン酸ポリオール輸出系、ATPアーゼ成分;MdoB,ホスホグリセロール・トランスフェラーゼ;ProP,パーミアーゼ;Acyl−Est,アシルエステラーゼ。なお、クラスター7におけるグリコシルヒドロラーゼ遺伝子は、NCC2705ゲノム注釈におけるイソマルターゼとして注釈付けされた。
【図12】図12は、dN:dS比に基づく、B. longum DJO10AとNCC2705との間の全ての遺伝子ホモログのヌクレオチド置換分析を示す。
【図13】図13は、B. longum DJO10Aにおける4つの予測LPXTG型細胞表面アンカータンパク質の編成を示す。シグナル・ペプチド・ボックス下の数字は、シグナル・ペプチドの位置を示す。それぞれのタンパク質のサイズは、アミノ酸で示されている。
【図14】図14は、B. longum DJO10A-JH1からのランチビオティックス遺伝子クラスターの損失を示す。(A)PCR.M,1kb DNAラダー(Invitrogen)によるB. longum DJO10AにおけるDJO10A特異的遺伝子及びその発酵適応単離体DJO10A-JH1の検出;レーン1,固有領域15;レーン2,固有領域6;レーン3,固有領域9;レーン4,固有領域11;レーン5,固有領域5;レーン6,固有領域7;レーン7,固有領域12;レーン8,16S rRNA部分遺伝子。矢印は菌株DJO10A-JH1から失われたランチビオティックス・コードされた固有領域12を示す。(B)lanMプローブ、及びB. longum DJO10A及びDJO10A-JH1のEcoRI消化ゲノムを使用したサザンブロット分析。lanMを含有する1.7kb EcoRIバンドが矢印で示されている。
【図15】図15は、便競合成長試験に使用される4種の細菌のRCM培地中の成長曲線を示す。全ての細菌は、成長したばかりの培養物から1%で接種された。四角,E. coli DJOec1;三角,Clostridium difficile DJOec1;丸,B. longum DJO10A-JH1;及び菱形,B. longum DJO10A。
【図16】図16は、ランチビオティックスをコードする遺伝子クラスター(配列番号23)を含むB. longum DJO10A(Genbank Accession No. CP000605)のゲノム配列部分を示す。配列番号23内に存在するのは:ヌクレオチド1979049-1979753(配列番号1)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号2);ヌクレオチド1979747-1980907(配列番号3)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号4);ヌクレオチド1981217-1981417(配列番号5)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号6);ヌクレオチド1981501-1982160(配列番号7)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号8);ヌクレオチド1982200-1982937(配列番号9)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号10);ヌクレオチド1983009-1986110(配列番号11)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号12);ヌクレオチド1986161-1986979(配列番号13)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号14);ヌクレオチド1986976-1989213(配列番号15)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号16)が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、或る特定の微生物の成長を阻害する化合物を提供する。本発明の化合物はポリペプチドを含む。本明細書中に使用される「ポリペプチド」という用語は、広義では、ペプチド結合によって結合された2つ以上のアミノ酸から成るポリマーを意味する。「ポリペプチド」という用語はまた、ジスルフィド結合によって結合された2つ以上のポリペプチドを含有する分子、又は多量体(例えば二量体、四量体)として共有結合又は非共有結合されたポリペプチドの複合体を含む。このように、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質は、ポリペプチドの定義範囲内に全て含まれ、これらの用語は相互交換可能に使用される。言うまでもなく、これらの用語はアミノ酸のポリマーの特定長さを暗示することはなく、また、そのポリペプチドが組み換え技術、化学的又は酵素的合成を用いて製造されるものかどうか、又は自然発生型であるかどうかを暗示又は区別しようとするものでもない。本発明の化合物は、本明細書中ではランチビオティックスと呼ぶことができる。好ましくは、本発明の化合物は単離されている。本明細書中に使用される「単離」ポリペプチド、例えばランチビオティックス、又はポリヌクレオチドは、その自然環境から取り出されるか、又は組み換え技術を用いて生成されるか、又は化学的又は酵素的に合成されたポリペプチド又はポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドは、精製されている、すなわち、いかなる他のポリペプチド又はポリヌクレオチド又は関連する細胞生成物又はその他の不純物も含有していない。
【0028】
一例を挙げるならば、微生物、例えばビフィズス菌(Bifidobacterium)による本発明の化合物の製造中に、プレペプチドが生成され、次いで3つの工程、すなわち、特定アミノ酸の脱水、特定アミノ酸間のチオエーテル結合の形成、及びシグナル・ペプチダーゼによる切断により処理される。最初のプレペプチドは、アミノ酸配列番号6を有していてよい。
【0029】
プレペプチドは、脱水による結果として中間体をもたらすように処理される。セリン残基を脱水することによりジデヒドロアラニンを形成することができる。このように、配列番号6を基準とする位置36,38,42,45,47,49,52,61又はこれらの組み合わせにおけるセリンアミノ酸を脱水することにより、ジデヒドロアラニンを形成することができる。好ましくは位置47,49及び61のセリンアミノ酸を脱水することにより、ジデヒドロアラニンを形成する。トレオニンアミノ酸を脱水することにより、ジデヒドロブチリンを形成することができる。このように、配列番号6を基準とする位置54,57又はこれらの組み合わせにおけるトレオニンアミノ酸を脱水することにより、ジデヒドロブチリンを形成することができる。好ましくは両位置54及び57のトレオニンを脱水することにより、ジデヒドロブチリンを形成する。
【0030】
このように、アミノ酸の脱水から生じた中間ポリペプチドは、下記構造:
メチオニン−セリン−イソロイシン−アスパラギン酸−グルタミン酸−リシン−セリン−イソロイシン−バリン−グリシン−グルタミン酸−セリン−フェニルアラニン−グルタミン酸−アスパラギン酸−ロイシン−セリン−アラニン−アラニン−アスパラギン酸−メチオニン−アラニン−メチオニン−ロイシン−トレオニン−グリシン−アルギニン−アスパラギン−アスパラギン酸−アスパラギン酸−グリシン−バリン−アラニン−プロリン−アラニン−Xaa1−ロイシン−Xaa2−フェニルアラニン−アラニン−バリン−Xaa3−バリン−ロイシン−Xaa4−バリン−−Xaa5−フェニルアラニン−Xaa6−アラニン−システイン−Xaa7−バリン−Xaa8−バリン−バリン−Xaa9−アルギニン−ロイシン−アラニン−Xaa10−システイン−グリシン−アスパラギン−システイン−リシン(配列番号19)
を有していてよく、
ここでXaa1,2,3,4,5,6,7及び10は、それぞれ独立してセリン又はジデヒドロアラニンであり、そしてXaa8及び9は、それぞれ独立してトレオニン又はジデヒドロブチリンである。特定アミノ酸の脱水から生じた中間ポリペプチドの好ましい例は、
メチオニン−セリン−イソロイシン−アスパラギン−グルタミン酸−リシン−セリン−イソロイシン−バリン−グリシン−グルタミン酸−セリン−フェニルアラニン−グルタミン酸−アスパラギン酸−ロイシン−セリン−アラニン−アラニン−アスパラギン酸−メチオニン−アラニン−メチオニン−ロイシン−トレオニン−グリシン−アルギニン−アスパラギン−アスパラギン酸−アスパラギン酸−グリシン−バリン−アラニン−プロリン−アラニン−セリン−ロイシン−セリン−フェニルアラニン−アラニン−バリン−セリン−バリン−ロイシン−セリン−バリン−ジデヒドロアラニン−フェニルアラニン−ジデヒドロアラニン−アラニン−システイン−セリン−バリン−ジデヒドロブチリン−バリン−バリン−ジデヒドロブチリン−アルギニン−ロイシン−アラニン−ジデヒドロアラニン−システイン−グリシン−アスパラギン−システイン−リシン(配列番号20)
である。
【0031】
特定アミノ酸の脱水から生じたポリペプチドは、特定アミノ酸間のチオエーテル結合を形成するようにさらに処理される。別のアミノ酸とのチオエーテル結合を形成するために使用されるときに、2−アミノ酪酸(Abu)を形成するように、ジデヒドロブチリン残基を処理することができ、別のアミノ酸とのチオエーテル結合を形成するために使用されるときに、アラニンを形成するように、ジデヒドロアラニン残基を処理することができ、そして別のアミノ酸とのチオエーテル結合を形成するために使用されるときに、アラニンを形成するように、システイン残基を処理することができる。ランチビオティックスにおいて観察されているように、異なるアミノ酸間のチオエーテル結合の形成から、ランチオニン及び3−メチルランチオニン残基が生じる。
【0032】
処理されたポリペプチドはさらに、2つのアミノ酸間の切断によってさらに処理される。予測切断部位は、アミノ酸33と34との間である。配列番号6の他の切断部位を使用して、処理済ペプチドを生じさせてもよい。
【0033】
このようにして、本発明の化合物は下記構造:
プロリン−アラニン−Xaa1−ロイシン−Xaa2−フェニルアラニン−アラニン−バリン−Xaa3−バリン−ロイシン−Xaa4−バリン−−Xaa5−フェニルアラニン−Xaa6−アラニン−Xaa7−Xaa8−バリン−Xaa9−バリン−バリン−Xaa10−アルギニン−ロイシン−アラニン−Xaa11−Xaa12−グリシン−アスパラギン−Xaa13−リシン(配列番号21)
を有していてよく、
ここでXaa1,2,3,4,5,6,8及び11は、それぞれ独立してセリン、ジデヒドロアラニン、又はアラニンであり、そしてXaa7、12及び13は、それぞれ独立してシステイン又はアラニンであり、そしてXaa9及び10は、それぞれ独立してトレオニン、ジデヒドロブチリン、又は2−アミノ酪酸である。本発明の化合物の好ましい例は、プロリン−アラニン−セリン−ロイシン−セリン−フェニルアラニン−アラニン−バリン−セリン−バリン−ロイシン−セリン−バリン−アラニン−フェニルアラニン−ジデヒドロアラニン−アラニン−アラニン−セリン−バリン−ジデヒドロブチリン−バリン−バリン−2アミノ酪酸−アルギニン−ロイシン−アラニン−アラニン−アラニン−グリシン−アスパラギン−アラニン−リシン(配列番号22)である。
【0034】
化合物は少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つのチオエーテル架橋を有していてよい。好ましくは、本発明の化合物は、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、最も好ましくは3つの架橋を有している。架橋は、配列番号21の位置Xaa1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12及び13の任意の2つの残基間に、任意の組み合わせで存在することが可能である。好ましくは各架橋は、システイン残基、すなわち配列番号21のXaa7,12,又は13を含む。本発明の化合物の好ましい例は、位置14(Xaa5)及び18(Xaa7)、位置24(Xaa10)及び29(Xaa12)、及び位置28(Xaa11)及び32(Xaa13)の間にチオエーテル架橋を有する配列番号22である。
【0035】
本発明の化合物は、配列番号19,20,21又は22、好ましくは配列番号21で示したもの以外のポリペプチドを含んでいてもよい。例えば、本発明の化合物は、別のアミノ酸配列と構造類似性を有するポリペプチドを含んでいてもよい。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして一般に、配列の長さに沿って同一アミノ酸の数を最適化するために、2つのアミノ酸配列(すなわち候補アミノ酸配列及び配列番号19,20,21,又は22のアミノ酸配列)の残基をアライニングすることによって決定され、同一アミノ酸の数を最適化するためにアライメントを行う上で一方又は両方の配列のギャップが許されるが、各配列内のアミノ酸はそれでもなお適切な順序のままでなければならない。候補アミノ酸配列は、配列番号21のようなアミノ酸配列に存在するアミノ酸配列と比較されるアミノ酸配列である。候補アミノ酸配列はBifidobacteriumから単離されてもよく、又は、組み換え技術を用いて生成されてもよく、又は化学的又は酵素的に合成されてもよい。好ましくは2つのアミノ酸配列が、GCGパッケージ(バージョン10.2, Madison WI)内のBESTFITアルゴリズムを使用して、又はTatusova他(FEMS Microbiol. Lett 1999, 174: 247-250)によって記載され、例えばNational Center for Biotechnology Information, National Institutes of Healthによって維持されているインターネット・サイトで、ワールド・ワイド・ウェブを通して入手可能なBAST 2サーチ・アルゴリズムのBlastpプログラムを使用して比較される。好ましくは、全てのBLAST 2サーチ・パラメータに対するデフォルト値が使用され、これらのデフォルト値はマトリックス=BLOSUM62;オープン・ギャップ・ペナルティ=11、拡張ギャップ・ペナルティ=1、ギャップx_ドロップオフ=50、期待=10、ワードサイズ=3、及び任意にはフィルターオンを含む。BLASTサーチ・アルゴリズムを使用して2つのアミノ酸配列を比較する際に、構造類似性は「同一性」と称される。好ましくは、本発明の化合物はまた、配列番号19、20、21、又は22、好ましくは配列番号21に対して、少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも81%のアミノ酸同一性、少なくとも82%のアミノ酸同一性、少なくとも83%のアミノ酸同一性、少なくとも84%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも86%のアミノ酸同一性、少なくとも87%のアミノ酸同一性、少なくとも88%のアミノ酸同一性、少なくとも89%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも91%のアミノ酸同一性、少なくとも92%のアミノ酸同一性、少なくとも93%のアミノ酸同一性、少なくとも94%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、少なくとも96%のアミノ酸同一性、少なくとも97%のアミノ酸同一性、少なくとも98%のアミノ酸同一性、又は少なくとも99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0036】
配列番号19、20、21、又は22、好ましくは配列番号21に対して構造類似性を有する本発明の化合物は、配列番号19、20、21、又は22で開示された配列の1つ又は2つ以上の同類置換を含んでいてよい。同類置換は典型的には、同じクラスの員である1つのアミノ酸を別のアミノ酸の代わりに配置することである。例えば、タンパク質生化学分野においてよく知られているように、特定のサイズ又は特徴(例えば電荷、疎水性、及び/又は親水性)を有するアミノ酸群に属するアミノ酸は一般に、ポリペプチドの二次構造及び/又は三次構造を大幅に変更することなしに、別のアミノ酸の代わりに置換することができる。本発明の目的において、同類アミノ酸置換基は、下記残基クラスのうちの1つのクラスの中からアミノ酸残基を交換することから生じるものと定義される:クラスI:Gly,Ala,Val,Leu,及びIle(脂肪族側鎖を表す);クラスII:Gly,Ala,Val,Leu,Ile,Ser,及びThr(脂肪族及び脂肪族ヒドロキシル側鎖を表す);クラスIII:Tyr,Ser,及びThr(ヒドロキシル側鎖を表す);クラスIV:Cys及びMet(硫黄含有側鎖を表す);クラスV:Glu,Asp,Asn及びGln(カルボキシル又はアミド基を含有する側鎖);クラスVI:His,Arg及びLys(塩基性側鎖);クラスVII:Gly,Ala,Pro,Trp,Tyr,Ile,Val,Leu,Phe及びMet(疎水性側鎖を表す);クラスVIII:Phe,Trp,及びTyr(芳香族側鎖を表す);及びクラスIX:Asn及びgln(アミド側鎖を表す)。これらのクラスは、標準遺伝コードにおいてコードされていない、例えばアミノ酸の翻訳後修飾から生じるアミノ酸を含めて、自然発生型のアミノ酸に限定されることはなく、人工アミノ酸をも含む。同類置換は任意の位置、好ましくは、配列番号21の位置1,2,4,6,7,8,10,11,13,15,17,20,22,23,25,26,27,30,31,33又はこれらの組み合わせに存在していてよい。
【0037】
表現型としてサイレントのアミノ酸置換形をどのように形成するかに関する指針はBowie他(1990, Science, 247: 1306-1310)において提供されている。ここで著者は、タンパク質がアミノ酸置換形に対して驚くほど耐容性を有することを示している。例えば、Bowie他は、変化に対するポリペプチド配列の耐容性を研究するために2つの主なアプローチがあることを開示している。第1の方法は、突然変異が自然淘汰によって受け入れられるか又は拒絶される進化過程に依存する。第2のアプローチは、クローニングされた遺伝子の特定の位置にアミノ酸変化を導入するために遺伝子工学を利用し、機能性を維持する配列を同定するために選択又はスクリーニングを行う。著者によって述べられているように、これらの研究は、タンパク質がアミノ酸置換形に対して驚くほどに耐容性を有することを明らかにしている。著者はさらに、どの変化がタンパク質の特定位置で許容的である可能性が高いかを示している。例えば、ほとんどの埋め込みアミノ酸残基は非極性側鎖を必要とする一方、表面側鎖の少数の構成要件は概ね保存される。他のこのような表現型としてサイレントの置換形は、Bowie他及びこれに引用された参考文献に記載されている。
【0038】
好ましくは、本発明の化合物は、生物学的に活性である。本明細書中に使用される「生物学的活性」化合物及び「生物学的活性」を有する化合物は、指示菌の成長を阻害する化合物である。生物学的活性に関して試験されるべきランチビオティックスを微生物、好ましくはBifidobacteriumによって生成しようとする時には、その微生物を使用して寒天プレート中心に接種し、そして所定の時間、例えば2日間にわたってインキュベートすることにより微生物の複製及びランチビオティックスの生成を可能にすることができる。好ましくは、寒天プレートはMRS又はBLIMである。次に、異なるプレート上又はブロス中で予め成長させた指示菌株を融解トップ寒天、例えば0.5%寒天中に懸濁させ、そして被験ランチビオティックスを生成する微生物を含有するプレート上に注ぐ。使用される指示菌株の量は様々であるが、しかし典型的には、ランチビオティックス生成微生物の不在において、1〜2日で目に見える成長をもたらす濃度で添加される。トップ寒天を冷やして固化させておき、そしてプレートを、指示菌株の成長を可能にするための条件下でインキュベートする。プレートの中央に接種された微生物の周りに指示菌株が存在しなければ、それは、その微生物が生物学的活性を有するランチビオティックスを生成しつつあることを示す。プレートには、指示菌株の成長が完全にないこともあり、又は、プレート中心に指示菌株の跡のハローがある場合もある。
【0039】
生物学的活性に関して試験されるべきランチビオティックスが単離又は精製されるときには、寒天プレート中心に穴を空け、そして単離又は精製されたランチビオティックスを含有する溶液を穴に添加し、そして寒天内に拡散させておくことができる。次に、異なるプレート上又はブロス中で予め成長させた指示菌株を融解トップ寒天、例えば0.5%寒天中に懸濁させ、そして被験ランチビオティックスを生成する微生物を含有するプレート上に注ぐ。使用される指示菌株の量は様々であるが、しかし典型的には、ランチビオティックス生成微生物の不在において、1〜2日で目に見える成長をもたらす濃度で添加される。トップ寒天を冷やして固化させておき、そしてプレートを、指示菌株の成長を可能にするための条件下でインキュベートする。プレートの中央に接種された微生物の周りに指示菌株が存在しなければ、それは、その微生物が生物学的活性を有するランチビオティックスを生成しつつあることを示す。プレートには、指示菌株の成長が完全にないこともあり、又はプレート中心に指示菌株の跡のハローがある場合もある。
【0040】
いくつかのランチビオティックスは、グラム陰性菌に対して何らかの生物学的活性を有することが知られているが、しかし典型的にはこの生物学的活性は、グラム陰性菌の外膜がランチビオティックスに曝露される前に損なわれる場合にのみ存在する。本発明のランチビオティックスは、外膜に対する損傷なしに、グラム陰性菌に対する生物学的活性を有する。従って、ランチビオティックスが生物学的活性を有するかどうかを試験するときには、この試験は好ましくは、グラム陰性菌の外膜を損なわない条件下で行われる。このような条件は、例えば、培地中にキレート剤を含むこと、浸透圧衝撃、熱、静水圧の条件に指示菌を曝すこと、外膜のリポ多糖類に影響を与える亜致死抗菌剤への曝露、亜致死マイクロ波曝露、及び亜致死超音波処理を含む。同様に、いくつかのランチビオティックスは、グラム陰性菌に対して何らかの生物学的活性を有しているが、しかし典型的には、この生物学的活性は、グラム陰性菌が、グラム陽性菌を阻害するために使用されるよりも高濃度のランチビオティックスに曝露される場合にのみ存在する(Hillman,米国特許出願公開第20020128186号明細書)。本発明のランチビオティックスは、同じ濃度で使用されたときに、グラム陰性菌及びグラム陽性菌に対する生物学的活性を有している。
【0041】
好ましい指示菌株は例えば、Mirococcus leuteus, Lactococcus lactis, Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermdis, E. coli, Serratia marcescens, 及びProteus vulgarisを含む。
【0042】
本発明の化合物はまた、10分間の100℃までの加熱に対して抵抗性であり、pH2のペプシン及びpH7.5のプロナーゼEによるタンパク質分解によって不活性化され、そしてα−キモトリプシン、プロテイナーゼK、トリプシン、及びサーモリシンによるタンパク質分解によっては不活性化されないことを特徴としている。この化合物は、等電点9.5及び分子量3291.8ダルトンであると予測される。
【0043】
本発明はまた、他の単離ポリペプチドを提供する。一例を挙げるならば、Bifidobacteriumのような微生物による、本発明の化合物、例えば配列番号22の製造は、7種の他のポリペプチドによって促進される。これら7種のポリペプチドの自然発生形は、自然発生型のプレタンパク質配列番号6をコードするコード領域を含む一連のコード領域によってコードされ、これら7種のポリペプチドのそれぞれの発現は、化合物、例えば配列番号22を生成することになる。
【0044】
これらの7種のポリペプチドは、2成分系の応答レギュレーター(配列番号2)、シグナル伝達ヒスチジン・キナーゼ(配列番号4)、応答レギュレーター(配列番号8)、プレペプチド修飾ポリペプチド(配列番号10)、修飾酵素(配列番号12)、免疫ポリペプチド(配列番号14)、及びトランスポーターポリペプチド(配列番号16)である。トランスポーターポリペプチドは、プレペプチドを切断するプロテアーゼの能力を含むと予測される。また、本発明においては、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸配列との構造類似性を有するポリペプチドも含まれる。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして一般に、2つのアミノ酸配列(すなわち候補アミノ酸配列及び配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸配列)の残基をアライニングすることによって決定される。好ましくは、本発明のこの態様のポリペプチドはまた、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16に対して、少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも81%のアミノ酸同一性、少なくとも82%のアミノ酸同一性、少なくとも83%のアミノ酸同一性、少なくとも84%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも86%のアミノ酸同一性、少なくとも87%のアミノ酸同一性、少なくとも88%のアミノ酸同一性、少なくとも89%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも91%のアミノ酸同一性、少なくとも92%のアミノ酸同一性、少なくとも93%のアミノ酸同一性、少なくとも94%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、少なくとも96%のアミノ酸同一性、少なくとも97%のアミノ酸同一性、少なくとも98%のアミノ酸同一性、又は少なくとも99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをも含む。配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16に対して構造類似性を有する本発明のポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16で開示された配列の1つ又は2つ以上の同類置換を含んでいてよい。
【0045】
配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16に対して構造類似性を有するポリペプチドは好ましくは、配列番号22の生物活性化合物を生成する活性を有している。配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16に対して構造類似性を有するポリペプチドが活性を有するかどうかは、他の自然発生型ポリペプチドを有する微生物、好ましくはBifidobacterium中に、変更アミノ酸配列を有するポリペプチドのうちの1つを発現させ、そして本発明の生物活性化合物が生成されるかどうかを決定することにより判断することができる。例えば、配列番号2に対する構造類似性を有するポリペプチドが活性に関して試験される場合には、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16を有する細胞中にポリペプチドを発現させ、そしてこの細胞を、本発明の化合物の生成に適した条件下で成長させることができる。その細胞が生物学的活性を有する化合物を生成するならば、試験されたポリペプチド、すなわち配列番号2に対する構造類似性を有するポリペプチドは活性である。
【0046】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、ポリヌクレオチド、好ましくは単離ポリヌクレオチドを提供する。本明細書中に使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの高分子形態、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドを意味し、また二本鎖及び一本鎖双方のDNA及びRNAを含む。ポリヌクレオチドは、異なる機能を有するヌクレオチド配列、例えばコード配列、及び非コード配列、例えば調節配列を含んでいてよい。コード配列、非コード配列、及び調節配列を下記に定義する。ポリヌクレオチドは天然源から直接得ることができ、或いは、組み換え技術、酵素技術、化学技術によって調製することができる。ポリヌクレオチドは、トポロジーにおいて線形又は円形であってよい。ポリヌクレオチドは例えばベクター、例えば発現又はクローニング・ベクターの一部、又はフラグメントであってよい。
【0047】
本発明の1つのポリヌクレオチドは、配列番号17(配列番号23のヌクレオチド1981316-1981417)を含み、この配列番号17は、配列番号6のアミノ酸34−66で示されたポリペプチドをコードする。言うまでもなく、配列番号6のアミノ酸34−66によって表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号17で開示されたヌクレオチド配列に限定されることはなく、遺伝子コードの縮退の結果としてこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのクラスをも含む。例えば、天然発生型ヌクレオチド配列番号17は、配列番号6のアミノ酸34−66で示されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のクラスの1員にすぎない。
【0048】
本発明の生物学的活性ポリペプチドをコードする他のポリヌクレオチドは、配列番号17のヌクレオチド配列との構造類似性を有するポリヌクレオチドを含む。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして、配列の長さに沿って同一ヌクレオチドの数を最適化するために、2つのポリヌクレオチド配列(すなわち候補配列及び配列番号17のヌクレオチド配列)の残基をアライニングすることによって決定され、共有されるヌクレオチドの数を最適化するためにアライメントを行う上で一方又は両方の配列のギャップが許されるが、各配列内のヌクレオチドはそれでもなお適切な順序のままでなければならない。候補配列は、配列番号17と比較される配列である。候補ヌクレオチド配列はBifidobacteriumから単離されてもよく、又は、組み換え技術を用いて生成されてもよく、又は化学的又は酵素的に合成されてもよい。好ましくは2つのヌクレオチド配列が、GCGパッケージ(バージョン10.2, Madison WI)内のBESTFITアルゴリズムを使用して、又はTatusova他(FEMS Microbiol. Lett 1999, 174: 247-250)によって記載され、例えばNational Center for Biotechnology Information, National Institutes of Healthによって維持されているインターネット・サイトで、ワールド・ワイド・ウェブを通して入手可能なBAST 2サーチ・アルゴリズムのBlastnプログラムを使用して比較される。好ましくは、全てのBLAST 2サーチ・パラメータに対するデフォルト値が使用され、これらのデフォルト値はマッチに対する報酬=1、ミスマッチに対するペナルティ=−2、オープン・ギャップ・ペナルティ=5、拡張ギャップ・ペナルティ=2、ギャップx_ドロップオフ=50、期待=10、ワードサイズ=11、及び任意にはフィルターオンを含む。BLASTサーチ・アルゴリズムを使用して2つのヌクレオチド配列を比較する際に、構造類似性は「同一性」と称される。好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号17に対して、少なくとも80%のヌクレオチド同一性、少なくとも81%のヌクレオチド同一性、少なくとも82%のヌクレオチド同一性、少なくとも83%のヌクレオチド同一性、少なくとも84%のヌクレオチド同一性、少なくとも85%のヌクレオチド同一性、少なくとも86%のヌクレオチド同一性、少なくとも87%のヌクレオチド同一性、少なくとも88%のヌクレオチド同一性、少なくとも89%のヌクレオチド同一性、少なくとも90%のヌクレオチド同一性、少なくとも91%のヌクレオチド同一性、少なくとも92%のヌクレオチド同一性、少なくとも93%のヌクレオチド同一性、少なくとも94%のヌクレオチド同一性、少なくとも95%のヌクレオチド同一性、少なくとも96%のヌクレオチド同一性、少なくとも97%のヌクレオチド同一性、少なくとも98%のヌクレオチド同一性、又は少なくとも99%のヌクレオチド同一性を有するヌクレオチド配列を含む。好ましくは、配列番号17に対して構造類似性を有するヌクレオチド配列が、生物学的活性を有する本発明の化合物をコードする。
【0049】
任意には、配列番号17に対して同一であるか、又は配列番号17と構造類似性を有するポリヌクレオチドは、配列番号17の5’又は上流にすぐ隣接して配置された付加的なヌクレオチド配列を含む。この任意の配置は、処理中に除去されたプレペプチドのアミノ末端領域、すなわち配列番号6のアミノ酸1−33に対応するポリペプチドをコードする。これらのヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド1−99で開示されている。言うまでもなく、配列番号6のアミノ酸1−33によって表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド1−99で開示されたヌクレオチド配列に限定されることはなく、遺伝子コードの縮退の結果としてこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのクラスをも含む。
【0050】
プレペプチドのアミノ末端領域をコードする他の単離ポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド1−99のヌクレオチド配列との構造類似性を有するポリヌクレオチドを含む。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして2つのポリヌクレオチド(すなわち候補配列及び配列番号5のヌクレオチド1−99)の残基をアライニングすることによって決定される。好ましくは、このようなポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド1−99に対して、少なくとも80%のヌクレオチド同一性、少なくとも81%のヌクレオチド同一性、少なくとも82%のヌクレオチド同一性、少なくとも83%のヌクレオチド同一性、少なくとも84%のヌクレオチド同一性、少なくとも85%のヌクレオチド同一性、少なくとも86%のヌクレオチド同一性、少なくとも87%のヌクレオチド同一性、少なくとも88%のヌクレオチド同一性、少なくとも89%のヌクレオチド同一性、少なくとも90%のヌクレオチド同一性、少なくとも91%のヌクレオチド同一性、少なくとも92%のヌクレオチド同一性、少なくとも93%のヌクレオチド同一性、少なくとも94%のヌクレオチド同一性、少なくとも95%のヌクレオチド同一性、少なくとも96%のヌクレオチド同一性、少なくとも97%のヌクレオチド同一性、少なくとも98%のヌクレオチド同一性、又は少なくとも99%のヌクレオチド同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0051】
本発明はまた、本発明の化合物の製造を容易にする7種のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む。これらのポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、及び配列番号15を含む。これらのポリヌクレオチドはそれぞれ、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、及び配列番号16をコードする。言うまでもなく、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16によって表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15で開示されたヌクレオチド配列に限定されることはなく、遺伝子コードの縮退の結果としてこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのクラスもまた含む。
【0052】
本発明の化合物の発現を容易にする7種のポリペプチドのうちの1種をコードする他のポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15のヌクレオチド配列との構造類似性を有するポリヌクレオチドを含む。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして、上記のように、2つのポリヌクレオチド(すなわち候補配列のヌクレオチド配列及び配列番号1のヌクレオチド配列)の残基をアライニングすることによって決定される。好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15に対して、少なくとも80%のヌクレオチド同一性、少なくとも81%のヌクレオチド同一性、少なくとも82%のヌクレオチド同一性、少なくとも83%のヌクレオチド同一性、少なくとも84%のヌクレオチド同一性、少なくとも85%のヌクレオチド同一性、少なくとも86%のヌクレオチド同一性、少なくとも87%のヌクレオチド同一性、少なくとも88%のヌクレオチド同一性、少なくとも89%のヌクレオチド同一性、少なくとも90%のヌクレオチド同一性、少なくとも91%のヌクレオチド同一性、少なくとも92%のヌクレオチド同一性、少なくとも93%のヌクレオチド同一性、少なくとも94%のヌクレオチド同一性、少なくとも95%のヌクレオチド同一性、少なくとも96%のヌクレオチド同一性、少なくとも97%のヌクレオチド同一性、少なくとも98%のヌクレオチド同一性、又は少なくとも99%のヌクレオチド同一性を有するヌクレオチド配列を含む。配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15に対する構造類似性を有するヌクレオチド配列が、配列番号22の化合物を生成する活性を有する。このような活性に対する試験は上記の通りである。
【0053】
本発明のポリヌクレオチドは、ベクター内に存在していてよい。ベクターは、複製ポリヌクレオチド、例えばプラスミド、ファージ、コスミド、又は人工染色体であり、複製ポリヌクレオチドには、別のポリヌクレオチドを付着させることにより、付着ポリヌクレオチドの複製を行うことができる。ベクター内に存在するときには、本発明のポリヌクレオチドは組み換えポリヌクレオチドと称されることがある。本明細書中に使用される「組み換えポリヌクレオチド」は、自然の状態では結合されない配列を有するポリヌクレオチドを意味する。配列は、組み換え技術を用いて、種々異なるポリヌクレオチド配列の人工操作によって結合することができ、或いは、化学的又は酵素的に合成することもできる。本発明のポリヌクレオチドを含有するベクターの構築は、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を採用する。Sambrook他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照されたい。
【0054】
ベクターは更なるクローニング(ポリヌクレオチドの増幅)を可能にし(すなわちクローニング・ベクター)、又はコード領域によってコードされたポリペプチドの発現を可能にする(すなわち発現ベクター)。好適な発現ベクターは、所定量のポリペプチド、好ましくは、本発明の組成物中に使用して、例えば患者に投与することができる本発明の化合物を生成するために使用することができるベクターを含む。ベクターは、本発明のポリペプチド又はそのフラグメントをコードするコード領域を含む。本明細書中に使用される「コード領域」は、ポリペプチドをコードし、そして適切な調節配列の制御下に置かれると、コードされたポリペプチドを発現させるヌクレオチド配列を意味する。コード領域の境界は一般に、その5’末端の翻訳開始コドンと、その3’末端の翻訳停止コドンとによって決定される。
【0055】
ベクターは、結果として生じる構造の種々の所望の特徴、例えば選択マーカー、ベクター複製速度などに応じて選択される。本明細書中でベクターをクローニングするか又は発現させるのに適した宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞である。
【0056】
発現ベクターは任意には、コード領域に作動可能的に連結された調節配列を含む。調節配列は、これが作動可能的に連結されているコード領域の発現を調節するヌクレオチド配列である。調節配列の非限定的例は、プロモーター、転写開始部位、翻訳開始部位、翻訳停止部位、及びターミネーターを含む。「作動可能的に連結」は、そのように記述された成分が、所期の形でこれらが機能するのを可能にする関係にあるような並置状態を意味する。調節配列は、コード領域の発現が調節配列と適合性のある条件下で達成されるように結合されていると、コード領域に「作動可能的に連結」されていることになる。本発明はいかなる特定のプロモーターの使用によっても限定されることはなく、多種多様なプロモーターが知られている。プロモーターは、下流(3’方向)の転写を開始するために、細胞内のRNAポリメラーゼに結合する調節シグナルとして作用する。使用されるプロモーターは構成的又は誘導性プロモーターであってよい。これは宿主細胞に対して異種であってよいが、このことが必要であるわけではない。本明細書中に使用される「異種」調節配列は、これが通常は作動可能的に連結されないコード領域に作動可能的に連結された調節配列である。
【0057】
発現ベクトルは任意には、ポリペプチドを生成するように転写メッセージの翻訳を開始するために、リボソーム結合部位及び開始部位(例えばコドンATG)を含んでいてよい。発現ベクトルは、翻訳を終了させるための終止配列を含んでいてもよい。終止配列は典型的には、対応するアミノアセチル−tRNAが存在しないコドンであり、ひいてはポリペプチド合成を終わらせる。宿主細胞を転写するために使用されるポリヌクレオチドは任意にはさらに、転写終止配列を含んでいてもよい。
【0058】
ベクターは、本発明の2つ以上のポリヌクレオチドを含んでいてよい。本発明の2つ以上のポリヌクレオチドが1つのベクター中に存在すると、ポリヌクレオチドはオペロン内に編成され、そしてオペロン内の第1コード領域の上流に配置された同じプロモーターに作動可能的に連結されていてよい。或いは、2つ以上のプロモーターが、ポリヌクレオチドの発現を駆動してもよい。
【0059】
宿主細胞内に導入されたベクターは任意には、1つ又は2つ以上のマーカー配列を含む。これらのマーカー配列は、典型的には、成長培地内の化合物を不活性化又はその他の形で検出するか、又はこの化合物によって検出された分子をコードする。例えば、マーカー配列を含むことにより、形質転換細胞を抗生物質に対して耐性にすることができ、又は形質細胞に化合物特異的代謝を与えることができる。マーカー配列の例は、カナマイシン、アンピリシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ネオマイシン、及びエリスロマイシンに対する耐性を与える配列である。
【0060】
製造方法
本発明はまた、本発明の化合物を製造する方法に関する。本発明の化合物を製造する方法は、化合物を生成するのに適した条件下でBifidobacteriumを成長させることを含む。典型的には、このような条件は、表面上にBifidobacteriumを成長させることを含む。固形培地のために使用可能な好適な成分の一例としては、寒天、ゼラチン、及びゴム、例えばアルギン酸塩、及びキサンタンなどが挙げられる。培地は完全又は最小、好ましくは完全であってよい。好適な培地の一例としては、発酵性糖、例えばMRS、BLIM、及びブレイン・ハート・インフュージョンを含む複合培地が挙げられる。
【0061】
本発明の化合物を生成することができるビフィズス菌は、個体から得ることができ、或いはラボラトリー菌株を使用することもできる。本発明の化合物の源として使用することができるビフィズス菌の例は、B. adolescentis, B. aerophilum, B. angulatum, b. animalis, B. asteroides, B. bifidum, B. boum, B. breve, B. catenulatum, B. choerinum, B. coryneforme, B. cuniculi, B. denticolens, B. dentium, B. gallicum, B. gallinarum, B. indicum, B. infantis, B. inopinatum, B. longum, B. magnum, B. merycicum, B. minimum, B. pseudocatenulatum, B. pseudolongum, B. psychraerophilum, B. pullorum, B. ruminantium, B. saeculare, B. scardovii, B. subtile, B. thermacidophilum, 及びB. thermophilumを含む。好ましくは、Bifidobacteriumは、B. breve, B. infantis,又はB. longumであり、より好ましくはB. longumである。
【0062】
ビフィズス菌は、液体培地中で長時間の試験管内培養後、ランチビオティックスを生成する能力を失うと考えられているので、Bifidobacteriumは、好ましくは個体から得られる。個体からBifidobacteriumを得る方法は日常的であり当業者によく知られている(例えばKullen他, 1997, FEMS Microbiol. Lett., 154:377-383; O'Suillivan, 米国特許第6,746,672号明細書)。例えば新鮮な便試料を個体から収集して、適量の滅菌溶液、例えば滅菌ペプトン水(0.1%)中ですぐに均質化することができる。個体は胃腸障害の履歴がなく、また、前年に抗生物質を使用したことがないことが好ましい。ホモジネートは嫌気性チャンバーに移されてよく、ここでホモジネートを連続希釈し、そして例えばBIM−25(Munoa他, 1988, Appl. Environ. Microbiol., 54;1715-1718)上で平板培養することができる。37℃で嫌気性インキュベーションを行った後、赤いコロニーをランダムに選択することができる。BIM−25プレート上に現れたコロニーの真正性は、日常的な方法、例えばフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼの活性を評価することによって、又はビフィズス菌のための診断酵素によって、又はKullen他(1997, FEMS Microbiol. Lett., 154:377-383)によって記載された16s rRNA遺伝子又はrecA遺伝子の分子分析によって検証することができる。
【0063】
微生物、例えばBifidobacteriumが、ランチビオティックス生成を許す条件においてひとたび成長しだしたら、成長し続けることが可能であると期待される。しかし、本発明の化合物を生成するBifidobacteriumは、ランチビオティックス生成を好まない条件下、例えばブロス中で長時間にわたって成長させるべきではない。それというのもこのような条件は、化合物をコードする遺伝子クラスターを失うおそれがあるからである。遺伝子クラスターは免疫遺伝子をもコードするので、ランチビオティックスが環境中にある場合には、失われることはない。
【0064】
Bifidobacteriumが本発明の化合物を生成するかどうかを決定するために、Bifidobacteriumをスクリーニングすることができる。スクリーニング法は、ランチビオティックスの発現に適した条件下でBifidobacteriumを培養し、そしてランチビオティックスの存在に関して試験することを含む。或る事象が生じるのに「適した」条件、又は或る事象、例えばBifidobacteriumによるランチビオティックスの生成が生じるのを「可能にする」条件、又は「好適な」条件は、このような事象の発生を妨げない条件である。このように、これらの条件は、その事象を許し、増強し、容易にし、且つ/又は助成する。Bifidobacteriumが本発明の化合物を発現させるかどうかを決定する方法は上記の通りである。
【0065】
スクリーニング法は、Bifidobacteriumが、本発明の化合物の合成に関与するポリヌクレオチドのうちの1種又は2種以上を有するかどうかを決定することを含んでいてよい。例えば、本発明のポリヌクレオチドの存在は、増幅によって決定することができる。好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってポリヌクレオチドを増幅する。PCRに際しては、試験Bifidobacteriumに由来するポリヌクレオチド、好ましくは染色体DNAにモル過剰のプライマー対を添加する。プライマーを伸長させることにより、所望の増幅ポリヌクレオチドを合成するための鋳型として作用する相補プライマー伸長生成物を形成する。期待サイズの増幅ポリヌクレオチドが存在するならば、このことは、試験Bifidobacteriumが本発明の化合物を生成できることを示す。
【0066】
増幅させることができる好適なポリヌクレオチドは、配列番号1,3,5,7,9,11,13及び15に存在するコード領域を含む。好ましくは、増幅されるポリヌクレオチドは、ポリペプチド配列番号6をコードするヌクレオチド配列(配列番号5)の一部である。本発明のポリヌクレオチドの一部を増幅させるプライマーは、容易に入手可能なコンピュータ・プログラム、例えばOMIGAプログラム(Oxford Molecular, Ltd., Oxford, UK)を使用して設計することができる。プライマーを設計する上で考慮することができるファクターの一例としては、溶融温度、プライマー長、増幅生成物のサイズ、及び特異性が挙げられる。プライマー長は、一般に15〜30ヌクレオチドであるが、しかし所望の場合にはこれよりも短くても長くてもよい。PCRによってポリヌクレオチドを増幅する条件は、使用されるプライマーのヌクレオチド配列に応じて変化し、またこのような条件を決定する方法は、当業者には日常的である。プライマー対の例は、例えば、676bpの増幅生成物をもたらすLANRI−F(ATGAAGGCGATTCTGTTTC, 配列番号38)及びLANR1−R(TCACAGCTCGATATTGGTG, 配列番号39)、並びに、788bpの増幅生成物をもたらすLANTI−F(GAGCA TCAAT GAGAA GTCC, 配列番号56)及びLANT1−R(GCAAT CAACA CCAAA ACC, 配列番号57)を含む。
【0067】
別の態様では、本発明のポリヌクレオチドの存在は、試験Bifidobacterium中に存在するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するように設計されたポリヌクレオチド・プローブで決定することができる。本明細書中に使用される「ハイブリッド形成」、「ハイブリッド形成する」、及び「ハイブリダイゼーション」は、標準条件下でプローブとターゲット・ポリヌクレオチドとの間の非共有相互作用を意味する。標準的なハイブリッド形成条件は、プローブがターゲット・ポリヌクレオチドとハイブリッド形成するのを可能にする条件である。このような条件は、当業者に良く知られた技術を用いてプローブ及びーゲット・ポリヌクレオチドのために容易に決定される。例えばSambrook他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory: New York (1989)を参照されたい。ハイブリダイゼーションによって同定することができる好適なポリヌクレオチドは、配列番号1,3,5,7,9,11,13及び15に存在するコード領域を含む。好ましくは、ハイブリダイゼーションによって同定されるポリヌクレオチドは、ポリペプチド配列番号6をコードするヌクレオチド配列である。プローブは、20未満のヌクレオチド、少なくとも20のヌクレオチド、少なくとも50のヌクレオチド、少なくとも100のヌクレオチドの長さであってよい。
【0068】
別の態様の場合、本発明の化合物を生成する方法は、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、好ましくは配列番号22に対して構造類似性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする組み換えポリヌクレオチドを含む微生物を成長させることを含んでいてよい。微生物は、本発明のlanAをコードするコード領域を含んでいてよく、そして任意には、本発明のlanR2、本発明のlanK、本発明のlanR1、本発明のlanD、本発明のlanM、本発明のlanI、本発明のlanTをコードするコード領域、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。好ましくは、微生物は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16をコードするコード領域、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。本発明の化合物はin vivoで生成されてもよい(Xie他, 2004, Science 303:679-681)。
【0069】
本発明の化合物をコードする組み換えポリヌクレオチドを含む微生物は、古細菌、真核生物又は真正細菌、好ましくは真正細菌、例えばグラム陰性菌又はグラム陽性菌であってよい。グラム陰性菌の一例としては、E. coli及びSalmonella種が挙げられる。グラム陽性菌の一例としては、Bacillus種、例えばB. subtilis、Enterococcus種、例えばE. faecium、E. faecalis、乳酸菌、例えばLactococcus lactis、L.sakei、及びStreptomycesが挙げられる。他の微生物は、酵母、例えばSaccharomyces cerevisiae及びPichia pastorisを含む。
【0070】
本発明の化合物は単離することができる。例えば、本発明の化合物を生成する微生物、好ましくはBifidobacteriumは、ランチビオティックスの生成に適した条件で成長させ、そして培地を含む培養物を、化合物の単離に適した条件に曝露することができる。1つの態様の場合、本発明の化合物は、細胞、及び任意には、細胞が成長させられる固形培地を乾燥させることにより単離することができる。任意には、培養物をさらに処理することにより、これを滅菌することができる。例えば、培養物は、培養物中に存在するビフィズス菌を殺すための条件に曝露することにより処理することができる。滅菌に有用な条件の例は、熱又は紫外線照射を含む。培養物は、事実上全ての湿分が除去され、化合物を含有する粉末が残るまで乾燥させることができる。培養物を乾燥させる方法は、当業者に知られており、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、トンネル乾燥、真空乾燥、及び空気乾燥を含む。このような方法の結果は、本発明の化合物を含む、数多くの成分を含む混合物である。このような混合は、食品に添加することができる。食品に添加される混合物は滅菌状態である。
【0071】
別の態様の場合、本発明のランチビオティックスは、メタノール抽出によって単離することができる。ランチビオティックスを単離及び/又は精製するための当業者に知られた方法を用いてさらに単離及び/又は精製するために、付加的な方法を用いることができる。このような方法は典型的には、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィを含むカラムクロマトグラフィ、及び、例えばC18カラムを使用する逆相HPLCのような高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を含む。使用されるべき最適条件は、日常試験によって決定することができる。本発明の精製された化合物は、周知の合成化学技術を用いて形成することができる。
【0072】
組成物
本発明はまた、組成物を提供する。組成物は本発明の化合物を含むことができる。このような組成物は任意には、医薬として許容される担体を含む。本明細書中に使用される「医薬として許容される担体」は、医薬投与物と適合性があり、また受容者に有害でない、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、などを含む。組成物中に存在する化合物は単離又は精製されてよい。単離化合物は、細胞を乾燥させることにより単離される化合物であってよい。組成物中には、追加的な活性化合物を組み入れることもできる。
【0073】
本発明の組成物はさらに、グラム陰性菌の外膜を損なう少なくとも1種の成分を含んでいてよい。例えば組成物は少なくとも1種のキレート剤、例えば金属キレート剤を含んでいてよい。キレート剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)をランチビオティックスと一緒に使用すると、結果としていくつかのランチビオティックス、例えばナイシンの活性をグラム陽性菌だけから、グラム陰性菌を含むものまで拡張することが知られている(Blackburn他、米国特許第5,691,301号明細書)。キレート剤を本発明の化合物と一緒に使用することは、化合物がグラム陰性菌に対して活性であるためには必要とならない。金属キレート剤の例は、天然及び合成化合物を含む。天然化合物の例は、植物フェノール化合物、例えばフラボノイドを含む。フラボノイドの例は、銅キレート剤カテキン及びナリンゲニン、及び鉄キレート剤ミリセチン及びケセルチンを含む。合成銅キレート剤の例は、例えばテトラチオモリブデートを含み、また合成亜鉛キレート剤の例は、例えばN,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)−エチレンジアミンを含む。合成鉄キレート剤の例は、2,2’−ジピリジル、8−ヒドロキシキノリン、EDTA、エチレンジアミン−ジ−O−ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、デスフェリオキサミンメタンスルホネート(デスフェロール)、トランスフェリン、ラクトフェリン、オボトランスフェリン、生物学的シデロフォア、例えばキサテコレート及びヒドロキサメート、及びクエン酸を含む。好ましくは、キレート剤はEDTAである。
【0074】
本発明の組成物はさらに、少なくとも1種の界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を含んでもよい。非イオン性界面活性剤の例は、グリセロールモノラウレート、スクロースエステル、例えばスクロースパルミテート、ポリソルベート20、TRITON X-100、Isoceteth-20、ARLASOLVE 200L、ラウルアミンオキシド、デシルポリグルコース、Phospholipid PTC、及びMEROXAPOL 105などを含む。
【0075】
本発明の組成物は、静菌/殺菌活性を有する他の物質を含んでいてよい。一例としては、リソスタフィン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、ペニシリン、メチシリンを含むベータ−ラクタム、モキサラクタム及びセファロスポリン、例えばセファクロル、セファドロキシル、セファマンドールナフェート、セファゾリン、セフィキシム、セフィンタゾール、セフォニオイド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタンム、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフォドキシムプロキセチル、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、セファロスポリンC、セファロスポリンCナトリウム塩、セファロシン、セファロシンナトリウム塩、セファロシン二水和物、セファピリン、セフラジン、セフロキシメアキセチル、及びロラカルベフなど、糖ペプチド、抗ブドウ球菌酵素を含む抗菌酵素、例えばムタノリシン、リゾチーム又はセロジルムラミダーゼ、抗菌抗体、他の抗菌ペプチド、例えばデフェンシン、及び他のランチビオティックス、例えばナイシン、スブチリン、エピデルミン、シナマイシン、デュラマイシン、アンコベニン及びPep5を含むバクテリオシンが挙げられる。いくつかの態様では、組成物が局所適用されるときに、これらの薬剤が特に好ましいことがある。
【0076】
組成物は、食品における使用のために許容し得る有機酸、又はこれらの酸の塩を含有してよい。組成物は個々の酸又は塩、又はこれらの混合物を含有していてよい。組成物中に使用するための好ましい有機酸又は塩は、酢酸、酢酸ナトリウム、二酢酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、プロピオン酸、例えばプロピオン酸ナトリウム及びプロピオン酸カリウムを含むプロピオン酸塩、クエン酸又はその塩、例えばクエン酸ナトリウム又はクエン酸カリウム、又はその組合せを含む。
【0077】
患者への投与のための組成物は、薬学分野で知られた方法によって調製することができる。一般には、組成物は、その所期投与ルートと適合性のある投与形態で製剤することができる。投与ルートの例としては、灌流;非経口、例えば静脈内、皮膚内、筋内、皮下;局所、例えば粘膜(例えば鼻腔、舌下、膣、頬、又は直腸)及び経皮;耳;及び口が挙げられる。溶液又は懸濁液は下記成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば投与用の水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はエチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸ナトリウム;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸、又はリン酸塩;電解質、例えばナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオン、及び等張性調節剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロースが挙げられる。pHは、酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムで調節することができる。組成物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与用バイアル内に密閉することができる。
【0078】
組成物は、滅菌水溶液(水溶性)又は分散体、及び滅菌溶液又は分散体を即席調製するための滅菌粉末を含むことができる。静脈内投与の場合、好適な担体は生理食塩水、静菌水、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。組成物は典型的には滅菌組成物であり、そして注射使用に適している場合には、容易な注射可能性が存在する程度に流体であるべきである。これは、製造及び貯蔵の条件下で安定であり、任意には、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されているべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であってよい。微生物作用は、種々の任意の抗菌剤又は抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどによって防止することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことにより、注射用組成物を長期にわたって吸収することができる。
【0079】
所要量の活性化合物(すなわち本発明の化合物)を、必要に応じて、上記に列挙した成分のうちの1種又は組み合わせとともに適切な溶媒中に取り込み、続いて濾過滅菌する。一般に、活性化合物を滅菌ビヒクル中に取り込むことにより、分散体を調製する。滅菌ビヒクルは、塩基性分散媒及び上に列挙したものからの所要の他の成分を含有している。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、このような乾燥は、活性成分と、前に滅菌濾過された溶液からの任意の付加的な所期成分とから成る粉末をもたらす。
【0080】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤又は可食担体を含む。経口治療投与を目的として、活性化合物は賦形剤と合体させ、錠剤又はカプセル剤、例えばゼラチンカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、歯磨き剤として使用するために流体担体を使用して調製することもできる。歯磨き剤は、液体、ペースト、又は粉末、例えばマウスウォッシュ又は練り歯磨きであってよい。医薬的に適合性のある結合剤が、組成物の一部として含まれていてよい。錠剤、丸剤、及びカプセル剤などは、下記成分のいずれか、又は同様の性質を有する化合物を含有することができる:バインダー、例えば微結晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチン;賦形剤、例えば澱粉又はラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel、又はコーンスターチ;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はSterotes;流動促進剤、例えばコロイド二酸化ケイ素;甘味剤、スクロース又はサッカリン;又は香料添加剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味剤。別の態様では、組成物は、本発明の化合物を発現させるトランスジェニック植物であってよい。
【0081】
吸入による投与の場合、活性化合物は、好適な駆出剤、例えばヒドロフルオロアルカンのようなガスを含有する加圧容器又はディスペンサー、又はネブライザーから、エアロゾル・スプレイの形態で供給することができる。
【0082】
局所投与のために、本発明の組成物は、局所に適用することができ、また皮膚及び粘膜の表面内に広がり吸収されるのを可能にする種々の混合物及び組み合わせを含んでいてよい。一例としては、スプレイ、ミスト、エアロゾル、ローション、クリーム、水性及び非水性溶液又は液体、油、ゲル、粉末、軟膏、ペースト、軟膏、エマルジョン及び懸濁液が挙げられる。局所用製剤は、本発明の化合物と、局所用の乾燥、液体、クリーム及びエアロゾル製剤中に一般に使用されるコンベンショナルな医薬用又は化粧品用の希釈剤又は担体とを組み合わせることにより調製されてよい。
【0083】
粉末は、任意の好適な粉末ベース、例えばタルク、ラクトース、及び澱粉などを用いて形成されていてよい。溶液は、水性又は非水性ベースを用いて製剤することができ、そして1種又は2種以上の分散剤、懸濁剤、及び可溶化剤などを含むこともできる。活性化合物の水溶液又は非水溶液又は懸濁液から粘性溶液又はコロイドゲルを形成するのに効果的な分子量及び濃度レベルを有するポリマーを使用して、局所用ゲルを調製することができる。局所用ゲルをそれから調製することができるポリマーは、ポリホスホエステル、ポリエチレングリコール、高分子量ポリ(酪)酸、ヒドロキシプロピルセルロース、キトサン、及びポリスチレンスルホネートなどを含む。
【0084】
例えば水性又は油性ベースとともに、そして好適な増粘剤、ゲル化剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、又は稠度調節剤などを添加することによって、軟膏、クリーム及びローションを製剤することができる。ベースは水、アルコール、又は油、例えば液体パラフィン、鉱物油、又は植物油、例えば落花生油又はひまし油を含む。ベースの性質に従って使用することができる増粘剤は、軟質パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリホスホエステル、ポリ(酪酸)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースガム、アクリレートポリマー、親水性ゲル化剤、キトサン、ポリスチレンスルホネート、ワセリン、羊毛油、水素化ラノリン、及び蜜蝋などを含む。
【0085】
軟膏、ペースト、クリーム、ゲル及びローションは、賦形剤、例えば動物性及び植物性の脂肪、油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛、及びこれらの混合物を含有することもできる。粉末及びスプレイは、賦形剤、例えばケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含有することもできる。溶液、懸濁液又は分散体は、局所適用のためのエアロゾルを製造するために日常的に使用される周知の手段のいずれかによって、エアロゾル又はスプレーに変換することができる。一般に、このような方法は、通常は不活性担体ガスを有する溶液、懸濁液又は分散体の容器を加圧するか、又は加圧する手段を提供し、そして加圧されたガスを小さなオリフィスに通すことを含む。スプレイ及びエアロゾルは、習慣的な駆出剤、例えばクロロフルオロ炭化水素又は揮発性無置換型炭化水素、例えばブタン及びプロパンを含有することもできる。
【0086】
賦形剤は、皮膚吸収を促進する化合物、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、及び脂肪酸の部分グリセリドなどを含んでいてよい。部分脂肪酸グリセリドの一例としては、IMWITOR 742及びIMWITOR 308が挙げられる。局所用製剤は任意には、化粧品受容性を改善するための不活性成分、例えば保湿剤、界面活性剤、香料、着色剤、エモリエント、及び充填剤などを含んでいてもよい。
【0087】
粉末をダスティングするか、エアロゾルを噴霧するか、又は患者又は介護者の指先で、又は例えば綿棒又は布を用いた他のコンベンショナルな塗布により、所望の皮膚部位に軟膏、クリーム、ローション、溶液又はゲルの膜を広げることによって、組成物を直接に投与することができる。製品は先ず皮膚に塗り、そして指先又はアプリケーターで広げるか、又は指先に着けて皮膚に広げることができる。組成物は任意には先ず、局所用アプリケーター、例えば包帯、綿棒、湿潤織布又は不織布などの表面に塗布し、次いでこれを組成物を受容するための皮膚部位に着けることができる。
【0088】
活性化合物は、坐剤(例えば坐剤ベース、例えばココアバター及び他のグリセリド)又は直腸送達のための停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0089】
活性化合物は、身体からの急速な排除に対して活性化合物を保護する担体と一緒に調製することができ、これは例えばインプラントを含む徐放製剤である。生分解性、生体適合性のポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ酪酸を使用することができる。材料は商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液は、医薬として許容される担体として使用することもできる。これらは、当業者に知られている方法に従って調製することができる。
【0090】
例において記載されたランチビオティックスは、動物中に存在する間のビフィズス菌によって発現されるので、本発明の化合物は、動物が食べる食物中の使用を含む、動物における使用に安全且つ好適であると期待される。しかしながら、このような活性化合物の毒性及び治療効力を、例えばLD50(個体群の50%までの致死用量)及びED50(個体群の50%に治療上効果的な用量)を測定するために、細胞培養又は実験動物における標準的な医薬処置によって決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比は治療指数であり、そしてこれは比LD50/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。ランチビオティックスの毒性を評価する方法は当業者に知られており、日常的である。
【0091】
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトを含む動物において使用するための所定の範囲の投与量を製剤する際に使用することができる。このような化合物の投与量は好ましくは、毒性をほとんど又は全く伴わずにED50を含む血中濃度範囲内にあることが好ましい。投与量は、採用される投与形態、及び利用される投与ルートに応じて、この範囲内で変化してよい。本発明の方法において使用される化合物の場合、治療上効果的な投与量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。細胞培養で測定して、IC50(すなわち、兆候を半分から最大限まで阻害する試験化合物の濃度)を含む濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて投与量を製剤することができる。このような情報は、有用な投与量をさらに正確に決定するために使用することができる。
【0092】
組成物が医薬用途又は介護用途のために動物に投与されるような態様の場合、組成物は1日当たり1回又は2回以上から、1週間当たり1回又は2回以上まで、1日置きに1回という回数を含めて投与することができる。当業者に明らかなように、例えば疾患又は障害の重症度、以前の治療、患者の一般的なな健康状態及び/又は年齢、及び存在する他の疾患を含む特定のファクターは、患者を効果的に処理するのに必要な投与量及びタイミングに影響を与えることがある。さらに、本発明の有効量の化合物で患者を治療することは、単回の治療を含むことができ、又は好ましくは、一連の治療を含むこともできる。
【0093】
本発明は、患者特異的な投与形態、並びに患者非特異的な複数回投与形態の両方を含む。患者非特異的な複数回投与形態は、生物テロ攻撃の結果として病原に曝露された個体群から汚染物を除去するのに用いることができる。
【0094】
本発明の組成物は、本発明の化合物を発現させる微生物、例えばBifidobacteriumを含んでいてよい。本発明の化合物を発現させる微生物を含む組成物は、例えば糖マトリックス、脂肪マトリックス、多糖マトリックス、又はタンパク質マトリックス中にカプセル封入することができる。この組成物はコーティングされ、且つ/又は錠剤形態中に組み込まれていてもよい。例えば、カプセル封入、コーティング、及び錠剤形態内への組み込みは、組成物中の微生物のより良好な生残を可能にし、或いは、微生物の大腸へのより良好な送達を可能にする。
【0095】
本発明の化合物を発現させる微生物を含むこのような組成物は動物にしばしば経口投与される。当業者には明らかなように、ビフィズス菌は種々異なる食品中に組み込むことができる。具体的には、本発明のビフィズス菌は、発酵乳製品、例えばヨーグルトを含む固形及び半固形の乳製品中に組み込むことができる。乳製品の他の例は、カッテージチーズ、チーズ、及び粉乳を含む。ビフィズス菌は、ベビーフード中に組み込むことができる。ビフィズス菌を添加することができる飲料は、ミルク、野菜ジュース、フルーツジュース、豆乳、発酵豆乳、及びフルーツ味の乳飲料を含む。
【0096】
使用方法
本発明はまた、本明細書中に記載された組成物の使用方法に関する。これらの方法は例えば、医薬用途、食品用途、介護用途、及びプロバイオティック用途を含む。これらの方法は微生物の成長を防止することを含んでよい。成長防止は、本発明の化合物の静菌活性又は殺菌活性に起因していてよい。微生物はグラム陽性又はグラム陰性であってよい。本発明のランチビオティックスに対して感受性であり阻害され得るグラム陽性菌の一例としては、Streptococcus種、例えばS. agalactiae; Enterococcus種、例えばE. faecalis及びE. faecium; Bacillus種、例えばB. anthracis、B. cereus、B. coagulans、及びB. licheniformis; Listeria種、例えばL. monocytogenes; Staphylococcus種、例えばS. aureus; Streptococcus種、例えばS. agalactiae、S. mutans、S. viridans、S. thermophilus、S. constallatus、及びS. zooepidemicus; Clostridium種、例えばC. botulinum、C. difficile、C. perfringens、C. sordellii、C. tetani、C. sordellii、C. sporogenes、C. tyrobutyricum、及びC. putrefasciens; Actinomyces種、例えばA. israelii及びA. naeslundii; Leuconostoc種;Lactobacillus種;Micrococcus種、Mycobacterium種、Corynebacterium種、Propionibacterium種、Pediococcus種、Peptostreptococcus種、sporolactobacillus種、Brevibacterium種、及びSporolactobacillus種
が挙げられる。
【0097】
本発明のランチビオティックスに対して感受性であり阻害され得るグラム陰性菌の一例としては、腸内細菌科の員、例えばCitrobacter種、Edwardsiella種、Enterobacter種、Erwinia種、Escherichia、例えばE. coli(例えばH7:0157)、Ewingella種、Klebsiella、例えばK. pneumoniae種、Plesiomonas、例えばP. shigelloides種、Proteus、例えばP. vulgaris種、Providencia種、Salmonella種、Serratia、例えばS. marcescens種、Shigella種、及びYersinia、例えばY. enterocolitica及びY. pestis; ビブリオ科の員、例えばVibrio alginolyticus、V. cholerae、V. parahaemolyticus、及びV. vulnificus;及びシュードモナス科の員、例えばPseudomonas aeruginosa、P. anguilliseptica、P. oryzihabitans, P. plecoglossicida, P. fluorescens及びP. syringaeが挙げられる。阻害され得るグラム陰性菌の他の一例としては、Helicobacter pylori; Camplyobacter種、例えばC. jejuni、C. coli、及びC. upsaliensis; Bacteroides種、例えばB. frgilis;Fusobacaterium種、例えばF. necrophorum、F. ulcercans、F. russi、及びF. varium; Leptospira種;Pectobacterium種、例えばP. carotovorum; Pasteurella種、例えばP. multocida、Borrelia種、Legionella種、Neissaria種、Fusobacterium種、及びAgrobacterium種が挙げられる。
【0098】
医薬用途及び介護用途は例えば、微生物の成長を阻害、好ましくは防止するために動物を治療する方法を含む。本明細書中で使用する「治療」及び「治療する」は、微生物の存在から生じる患者の兆候の重症性を防止、治癒、遅延、又は低減するために、且つ/又は兆候を引き起こすおそれのある微生物に既に曝露された患者において、指定の期間にわたって兆候を悪化させないために、本発明の組成物を使用することを意味する。治療は、予防的であってよく、或いは、動物の微生物に対する曝露後に開始されてもよい。予防的治療は、微生物の成長を阻害、好ましくは防止し、これにより、患者が後から微生物に曝露された場合に、状態の兆候を防止又は低減するために、本発明の組成物を使用することを意味する。例えば患者が状態の兆候を明らかにする前に開始される予防的な治療を、本明細書中では、状態を発生させる「リスク」のある患者の治療と呼ぶ。状態を招く微生物に対する患者の曝露後に開始される治療は、結果として、その兆候の重症度を低下させるか、又は兆候を完全に取り除く。
【0099】
本明細書中に使用される「兆候」という用語は、微生物の存在によって引き起こされる状態の、患者における客観的エビデンスを意味する。兆候は、微生物に応じて変化することができる。微生物の存在によって引き起こされる状態の兆候及びこのような兆候の評価は、当業者には日常的であり良く知られている。従って、本発明はまた、動物における微生物感染を治療する方法、及び微生物により引き起こされる状態を治療する方法に関する。本明細書中に使用される「微生物感染」は、微生物による動物における有害なコロニー形成を意味する。
【0100】
これらの方法は、微生物によって引き起こされた感染及び/又は状態の兆候を有する動物に、有効量の本発明の組成物を投与し、そして、感染及び/又は状態の兆候が低減したかどうかを決定することを含む。状態の一例としては、創傷感染、口臭、虫歯、全身感染症、及び皮膚感染が挙げられる。
【0101】
これらの方法は、本発明の組成物を動物に投与することを含んでよい。動物は、微生物により引き起こされる状態に罹りやすいいかなる動物であってもよく、その一例として、脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、又は鳥類が挙げられる。哺乳動物の一例としては、ヒト、ウシ亜科の員、例えばウシ及びバイソン;ヤギ亜科の員、例えばヒツジ及びヤギ;Sus属、例えばブタ及びイノシシ;コンパニオン・アニマル、例えばネコ及びイヌ;及びEquus属の員、例えばウマ及びロバが挙げられる。鳥類の一例としては、家禽、例えば七面鳥、ニワトリ、アヒル、及びガチョウが挙げられる。本発明の組成物は、本明細書に記載された、当業者に知られた方法によって動物に送達し、これにより有効量を動物に提供することができる。本発明のこの態様において、「有効量」は、微生物の成長を阻害し、状態の兆候の顕在化を防止し、状態の兆候の重症度を低減し、且つ/又は兆候を完全に取り除くのに効果的な量である。本発明のいずれの組成物も全ての微生物の成長を完全に阻害すること、又は治療されている状態の全ての兆候を治癒又は排除することは必要とされない。
【0102】
食物用途は、例えば、食物を腐敗させる微生物を阻害することによる食物保存を含む。「食物」又は「食品」という用語は、全ての可食栄養物質及び組成物を含み、人間による消費、並びに例えば家畜による消費のために意図されたものを含む。「食物」及び「食品」は、未処理並びに処理済の、例えば調理済みの栄養物質及び組成物、例えば飲料を含む。「食物中に存在する」という表現は、有害な細菌が住むことができる食品部分、例えば外面、内面、又はその組み合わせを意味する。
【0103】
本発明の組成物は、細菌が成長又は分解しやすい食品と一緒に使用することができる。これらの食品の一例としては、乳製品、果実及び野菜から誘導された製品、穀類及び穀類から誘導された製品、食肉、鶏肉、及び海産物が挙げられる。乳製品の例としては、チーズ、ミルク、クリーム、及び発酵乳製品、例えばヨーグルトが挙げられる。食肉の例としては、部分全体又はこれらから製造された加工肉製品を含む、ハム、牛肉、サラミ、鶏肉、及び七面鳥が挙げられる。他の食品は、インスタント食品、前菜、及び肉、デリサラダ、マヨネーズ、ドレッシング(サラダドレッシングを含む)、ソース及び香辛料、パスタ、スープ、食用油、魚、及び魚加工品、卵製品、飲料、無菌包装食品、並びに前記のものの混合物を含む。
【0104】
本発明の組成物は、ブレンド可能な食品と混合し、且つ/又はブレンド可能な食品上に加えることによって使用することができるが、しかし、固形食品の表面に浸漬、リンス、又は噴霧によって加えることにより、又はこのような製品の内部に例えば注入によって加えることもできる。組成物は、マリネー、衣、擦り込み用調味料、煮汁、及び着色剤混合物などとして、又は食品と混合され食品中に組み込まれるべき成分として加えることができる。さらに他の態様の場合、組成物を食品包装材料、例えばケーシング又はフィルムに加え、その後、組成物が食物外面と接触するようにパッケージを食物表面に着けることにより、組成物を食物表面と間接的に接触させることができる。使用されるべき最適量は、処理されるべき特定の食品、及び組成物を食物及び/又は食物表面に加えるために用いられる方法に依存するが、しかし日常試験によって決定することができる。
【0105】
本発明の組成物のプロバイオティック用途は、例えば、本発明の化合物を発現させる微生物、好ましくはBifidobacteriumを、栄養補助食品として、又は食物成分として使用することを含む。栄養補助食品としてのビフィズス菌の使用は当業者に知られており、日常的である。典型的には、本発明の化合物を発現させるビフィズス菌は、これを必要とする動物に投与される。Bifidobacteriumは、生物学的に純粋な培養物として、又は混合培養物として投与することができる。本明細書中に使用される「混合」培養物は、Bifidobacteriumと、少なくとも1種の他の微生物、好ましくは原核微生物、より好ましくは第2のBifidobacteriumとを含有する培養物である。
【0106】
本発明の1つの方法は、本発明の化合物を発現させるBifidobacteriumを動物に投与することにより、動物の胃腸管、好ましくは大腸内の微生物の複製を阻害することを可能にする。この方法は、阻害されるべき微生物の胃腸管内の存在を測定することを含み、この場合、Bifidobacteriumの投与後に動物内の微生物の存在が減少することは、動物の胃腸管内の微生物の複製が阻害されたことを示す。
【0107】
その複製を阻害することができる微生物のタイプは、Bifidobacteriumが投与されたときに動物の胃腸管内に存在する微生物であり、また、Bifidobacteriumが投与された後に胃腸管に導入される微生物である。こうして、本発明の化合物を発現させるBifidobacteriumは、動物の胃腸管内の微生物の確立を阻止する方法において使用することもできる。
【0108】
別のプロバイオティック用途は、動物中にBifidobacteriumフローラを確立する方法を含む。このようなフローラは、胃腸管内のフローラとして自己を確立する他の微生物の能力を競合的に阻害すると期待される。この方法は、本発明の化合物を発現させるBifidobacteriumを動物に投与することを含む。この方法はまた、投与後の所定の時間にわたって、Bifidobacteriumの胃腸管内の存在を測定することを含む。Bifidobacteriumフローラは、便1グラム当たり少なくとも106個のBifidobacteriumがある場合には、動物中に確立されると考えられる。好ましくは、動物は、青年又は成人、又は未熟児、早生児又は成熟児を含む幼児である。この方法は、健常の人体内に、そして、例えば下痢によって、又は抗生物質療法又は化学療法を含む薬物治療によって変えられた正常な腸内フローラを有したことがある人体内にBifidobacteriumフローラを確立するために用いることができる。
【0109】
本発明を下記例によって説明する。言うまでもなく、具体的な例、材料、量、及び手順は、本明細書に示された本発明の範囲及び思想に従って、幅広く解釈されるべきである。
【実施例】
【0110】
例1
ビフィズス菌は、主として、母乳で育てられている乳児の便において有力に支配することを理由として、良好な腸内健康と関連することがしばしば提唱されている。しかしながら、外生的なビフィズス菌に関する臨床摂食研究は、これらが腸内には残らないことを示し、ビフィズス菌は腸外部で成長すると、競合的適応を失うことがあることを示唆している。
【0111】
ビフィズス菌培養物中に発生しているかもしれない遺伝子減衰をさらに理解するために、我々は、腸内単離体である、ラボラトリーで最小培養された(20世代未満)ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum) DJO10Aの完全ゲノム配列を獲得し、そしてこれを培養収集菌株B. longum NCC2705の完全ゲノム配列と比較した。この比較は、菌株DJO10A内の17個の固有DNA領域、及び菌株NCC2705内の6つの固有DNA領域の存在を除いて、高い配列同一性を示す共線的ゲノムを明らかにした。これらの固有領域の大部分が種々の機能を有するタンパク質をコードするのに対して、DJO10Aゲノムから8つ、そしてNCC2705から1つが、ヒト腸内環境に関する種々の形質、具体的にはオリゴ糖及びポリオールの利用、ヒ素耐性、及びランチビオティックス生成に関与すると予測される遺伝子クラスターをコードした。これらの固有領域のうちの7つは、ベース偏差指数分析によって、菌株NCC2705から正確に欠失していることが示唆され、そしてこれは、同じ遺伝子座でNCC2705のゲノム中にまだ残っている領域のうちの1つの内部からのDNA残存物によって実証される。ゲノム領域のこのようなターゲットされた損失は、1,000世代にわたるラボラトリー内の腸内B. longumの成長が2つの大型欠失をもたらし、NCC2705に対する予測欠失事象と類似して、一方の欠失がランチビオティックスコード領域に生じたときに、実験により立証された。模擬便成長研究が、Clostridium difficile及びE. coliに対するこの欠失菌株の著しく低減された競合能力を示した。欠失領域は、ゲノム内部で過剰活性であることが実験により実証されている2つのIS30要素間にあった。他方の欠失領域は、可動性インテグレーゼ・カセットと称される新規クラスの可動因子と境を接した。これらの可動性インテグレーゼ・カセット(MIC)は、ゲノム欠失事象においてこれらの要素の考えられ得る役割を実証する。
【0112】
可動因子によってしばしば促進されるゲノム領域の欠失は、ビフィズス菌が発酵環境に極めて迅速に適応させ(1,000世代当たり2ゲノム欠失)、そして腸内における競合能の付随的な喪失をもたらす。
【0113】
結果及び考察
最小培養されたB. longum菌株のゲノム配列決定。比較ゲノミクスの威力は、種が生息地内で生存競合するのに重要な特徴を知る上での手がかりとなる。培養収集菌株B. longum NCC2705のゲノム配列(Schell他, 2002, Proc Natl Acad Sci USA, 99: 14422-14427)が利用可能であり、このゲノムを、in vitroで意図的に最小培養された菌株からのゲノムと比較する能力は、人間の大腸に由来するこの顕著な種にとって重要であり得る特徴を知る上での手がかりとなる。新たに単離され最小培養されたB. longumは特徴付けされ、そしてシデロフォアの生成を介して他の細菌を静菌的に阻害するその顕著な能力に基づいて菌株DJO10Aが選択され(O'Sullivan, 米国特許第6,746,672号明細書)、出現した特徴は、分析された全ての培養保存収集物び商業的なビフィズス菌において減衰した。従って、これは腸内のその起源から最小限の減衰を有するような単離体として、ゲノム配列決定のために選択された。この菌株の完全ゲノム配列は解読され、以前に記載されたとおり、1つの環状染色体と2つのクリプティック・プラスミド、pDOJH10L及びpDOJH10Sとから成った(Lee及びO'Sullivan, 2006, Appl Environ Microbiol 2006, 72:527-535)。
【0114】
B. longum DJO10Aゲノムの一般的な特徴。B. longum DJO10Aの染色体は、2,375,792bpを含有し、60.15%のG+C含有率、及び4つのrRNAオペロンを含有する1,990個のコード遺伝子、58個のtRNA、6つの挿入配列(IS)群、並びに1つのプロファージを伴った(表1)。そのゲノム特徴は、これが余剰のtRNA_Ser:プロファージ上でコードされたGCTを含有していること以外は、菌株NCC2705と類似した(Ventura他, 2005, Appl Environ Microbiol 2005, 71: 8692-8705)。コドン使用頻度分析は、このtRNAが最も頻繁に使用される、プロファージ内のtRNA_Serであるのに対して、B. longum DJO10Aゲノムの場合には、これは最も多く使用されるtRNA_Serではないことを示した(表2)。これはプロファージ上のその存在に対する進化的選択圧を指摘する。両ゲノムはアミノ酸毎にtRNAを含有するのに対して、アスパラギン及びグルタミン双方に対するアミノアシル−tRNAシンテターゼの対応遺伝子は失われており、これは多くの他の細菌と同様の、これらのアミノ酸を用いた代替翻訳経路への依存を示唆している(Skouloubris他, 2003, Proc Natl Acad Sci USA 2003, 100:11297-11302, Min他, 2002, Proc Natl Acad Sci USA 2002, 99: 2678-2683)。これらの双方の代替経路は、両ゲノム内に存在するgatABCに関与し、また、gltX及びaspSが、それぞれグルタミン代替翻訳経路及びアスパラギン代替翻訳経路に関与する。このことは、この提議された翻訳ルートを実証する。興味深いことに、B. longumゲノムは、逆方向反復によってフランキングされた3つの異なる隣接インテグレーゼと、2つのIS3型IS要素によってサンドイッチされたパリンドローム構造とから成る新規の可動性インテグレーゼ・カセット(MIC)を含有している(図1)。B. longum NCC2705のゲノム分析は、菌株DJO10Aに対して非線形に配置された3つの類似のMICデータ要素を明らかにした。このことはこれらの要素が確かに可動性であることを示す(図9)。興味深いことに、別のBifidobacterium種、B. adolescentis(GeneBank AP009256)、並びに他の腸内細菌、Bacteroides (AE015928)、Lactobacillus (CP000033)、及びE. coli (U00096)のゲノム配列の分析はMIC要素を明らかにしなかった。このことは、これらの構造が、密接に関連するビフィズス菌のサブセットに対して固有であり得ることを示唆している。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
複製の始点及び終点の編成。菌株DJO10Aのゲノム、及び菌株NCC2705の更新ゲノム配列中の同一位置に、oriC及びterCが見いだされた(図9)。これらの領域は両ゲノムにおいて極めて高度に保存され(>99.9%同一性)、そして3つのoriCクラスターと、他の細菌・ゲノムからの予測複製領域と一致するterCとから成る(Mackiewicz他, 2004, Nucleic Acis Res 2004, 32:3781-3791)。しかしながら、両ゲノム中の観察されたoriC領域の位置は、ゲノム非対称{Helicobacter pylori 26695ゲノムに以前に見いだされた特徴(Mackiewicz他, 2004, Nucleic Acis Res 2004, 32:3781-3791, Zawilak他, 2001, Nucleic Acids Res 2001, 29: 2251-2259)}に基づく予測位置とは僅かに異なる。複数のoriCクラスターと同様に、配列決定されたゲノムの大部分と一致する7つの異なるタイプのDnaAボックスが存在し、これらは、染色体複製の開始を制御するのに関与すると提議されている(Mackiewicz他, 2004, Nucleic Acis Res 2004, 32:3781-3791)。
【0118】
制限・修飾(R−M)系。R−M系が細菌に与える保護的な役割を、より高次の有機体の免疫系と比較した(Price及びBickle, 1986, Microbiol Sci 1986, 3:296-299)。多数の細菌中にこれらの系が存在することは、これらが細菌の自然界における生存のための重要な役割を果たすことを示している。B. longumゲノムの双方は、高保存されたI型及び2つのII型のR−M系をコードする(図10)。これらはまた、両菌株の間に100%保存されたメチル化DNA(通常はHhaII又はPStIメチル化DNA)を制限することが予測されるMrr系を含有している(図10A)。I型R−M系を有するMrrのクラスター形成は、E. coli K12(GenBank U00096)と同様である。2つの菌株内のHsdSタンパク質間の低い同一性(40%)は、進化的分岐に続く、これらの菌株内のこのI型R−M系の独立した進化を反映していると思われる。それというのも、これらの系は、異なる配列を認識するのを可能にするために、系の特異性成分(HsdS)を変化させることによって進化するからである。このことは、IS256挿入事象によって不活性化されたhsdS遺伝子の存在によって実証され、この破壊された遺伝子の両部分は著しく高い保存を示す。このことは挿入事象が進化的分岐の前に発生したことを示唆する(図10A)。菌株DJO10Aにおけるこの遺伝子座から上流には、別の制限遺伝子McrA(HpaII又はSssIによってメチル化されたDNAを制限する)があり、これは、NCC2705中には存在しない。両菌株内の保存されたII型R−M系は、極めて頻繁に発生する部位でDNAを制限するSau3AI及びEcoRIIのイソシゾマーである(図10B及び10C)。これは、存在する制限系の範囲とともに、これらの細菌内への外来DNAの侵入を制限する上でのファクターとなり、ひいては、今日までビフィズス菌に関して報告された極めて低いエレクトロポレーション頻度の説明となる。
【0119】
B. longum菌株内の固有ゲノム領域。B. longum DJO10Aのゲノム配列と、菌株NCC2705のゲノム配列とをアラインメントすることにより、これらが可動性のIS及びMIC要素を除いて、高保存されており、そして共線的であることが示される(図9)。遺伝子水平移動機会がない、そして後続の欠失前に突然変異を蓄積する冗長な遺伝子がない安定な環境内で成長する微生物に対して以前に観察されたものと一致する、菌株NCC2705内の見掛けゲノム低減も生じる(Nilsson他, 2005, Proc Natl Acad Sci USA 2005, 102:12112-12116)。2つのゲノム間に、>10bpの248個の固有配列があり、これらの大部分は短く、もし遺伝子があるならばいくつかをコードする。2つの菌株間のこのような多数の固有配列は、Mycobacterium tuberculosisの臨床単離体のゲノム及びラボラトリー内で数十年にわたって広範囲に継代された単離体のゲノムは、2倍のサイズのゲノム中にこのような領域を86個しか示さないことを考えると、驚くべきものであった(Fleishmann他、2002, J Bacteriol 2002, 184;5479-5490)。機能遺伝子及び仮想遺伝子をコードするサイズ3.0〜48.6kbの23個の大型固有領域があり、これらの固有領域のうちの17個は、219個の予測遺伝子をコードする菌株DJO10A内に存在し、またNCC2705内の6つの固有領域は84個の遺伝子をコードする(図2A)。これらの領域は、種内変位領域と以前に関連付けられたoriC及びterCの周りでは、クラスター形成されない(Berger他, 2007, J Bacteriol 2007, 189; 1311-1321, Molenaar他, 2005, J Bacteriol 2005, 187: 6119-6127)。
【0120】
各ゲノム内の1つの固有領域はプロファージに相当する。この分析は最近の細胞水平移動(HGT)事象を予測することから、菌株NCC2705内の切断されたプロファージは、ベース偏差指数(Base Deviation Index)(BDI)ピークと相応しないため、ゲノムの長時間滞在体であるように見える。このプロファージは、菌株DJO10Aのゲノム内で、完全且つ誘導性の、異なるプロファージと置き換えられているように見え(Lee及びO'Sullivan, 2006, Appl Environ Microbiol 2006, 72:527-535)、そしてこの最近のHGT事象を実証する有意なBDIピークと相応する。菌株NCC2705内の他の5つの固有領域は、いかなる有意な遺伝子クラスターも有さずに、大部分が仮想遺伝子、又は種々の機能の遺伝子を含有している。しかしながら、これらの領域のうちの1つ(固有領域4’)は、推定上のキシラン分解遺伝子をコードする。これは、大腸内の競合にとって重要であることが予測される機能である。この領域はBDIピークに相応するので、これは、この菌株によって最近獲得されたものかもしれないことを示唆しており、大腸内のその進化が、この固有領域を獲得するための選択圧を提供することになる。菌株DJO10A内の他の16個の固有領域のうち、8つは、大腸内の競合にとって重要であることが予測される機能、具体的にはオリゴ糖及びポリオールの利用、ヒ素耐性、及びランチビオティックス生成に関与する有意な遺伝子クラスターをコードする。
【0121】
オリゴ糖及びポリオールの利用。COG機能分類(Tatusova他, 2000, Nucleic Acids Res 2000, 28:33-36)に従って、予測された機能を有する菌株DJO10A内の最大数の固有遺伝子が、炭水化物代謝[G]カテゴリーに所属する(表3)。興味深いことに、炭水化物代謝カテゴリー内の固有遺伝子のほとんどが、オリゴ糖利用に関与する。オリゴ糖は、大腸内の微生物が利用できる主要な炭水化物源である。菌株DJO10A内には、全部で11のオリゴ糖利用遺伝子クラスターがあり、そのうち5つは菌株NCC2705内に完全に存在し、2つは部分的に存在する(図11)。注目すべきは、これらのクラスターのうちの1つ(図11のクラスター7)が、菌株DJO10A内の余剰オリゴ糖利用遺伝子の正確な位置に、NCC2705ゲノム内のISL3要素を含有することである(図3)。BDI分析は、菌株DJO10A内の余剰オリゴ糖遺伝子クラスターが、いずれもBDIピークと相応しないため、菌株NCC2705からの進化的分岐に続いては獲得されないことを示唆した(図2A)。最近のHGT事象を示唆するBDIピークの大部分はこの分析を実証する両ゲノムにおいて同じであった。このことは、オリゴ糖利用遺伝子をコードする6つの固有領域6,9,10,11,15及び17が、発酵環境への適応中に、菌株NCC2705から失われたらしいことを示唆する。菌株NCC2705からこれらの固有領域が失われた更なる証拠は、NCC2705内のこの遺伝子座に残されたままである固有領域1内部のushA遺伝子に由来する361bp(98%同一性)のDNA残存物から得られる(図2B)。
【0122】
【表3】
【0123】
ポリオールは、人間によって消化することができず、これらの代謝は人間の大腸内の細菌競合にとって重要であると考えられ、これらの摂取は増大するビフィズス菌数と関係している(Gostner他, 2006, Br J Nutr, 95:49-50)。菌株NCC2705がポリオール代謝に関与する遺伝子を含有しないのに対して、菌株DJO10Aの固有領域13は専らこのために働き(図4)、ポリオール認識、輸送及び脱水に関与する遺伝子を含有しており、また固有領域11内にはいくつかのポリオール代謝遺伝子がある。固有領域13がBDIピークと一致する(図2A)ことを考えると、これは菌株DJO10Aによる遺伝子獲得を表すと言える。興味深いことに、同様のポリオール遺伝子座が、B. adolescentis ATCC 15703内の同様のゲノム位置に見いだされた(図4)。
【0124】
ヒ素耐性。菌株DJO10A内の他の固有領域が、人間の腸内での生残及び競合にとって重要となる特徴に関与すると予測された遺伝子クラスターをコードする。ATP依存性ヒ素耐性遺伝子をコードする2つのオペロンは、固有領域5及び7内にあり、そして腸内生残にとって重要であり得る。それというのも、人間の腸は食事からの低濃度のヒ素を含有しているからである(Ratnaike 2003, Postgrad Med J 2003, 79:391-396)。多くの腸内細菌、例えばE. coli、Lactobacillus及びBacteroidesがヒ素耐性遺伝子を含有している(図5A)。このことは腸内にこのような能力を有することの競合上の利点を実証する。これらのヒ素耐性遺伝子を含有する固有領域5及び7がBDIピークに相応しないので(図2A)、これは、これらの遺伝子を菌株DJO10Aによって最近獲得されることはなく、むしろ、菌株NCC2705から失われ得ることを示唆する。純粋培養発酵環境への適応は結果としてヒ素耐性の損失を招くというこのような理論はさらに、発酵適応ビフィズス菌単離体(B. animalis亜種lactis BB12)よりも2,000%大きい、そしてE. coli K12よりも100%大きい菌株DJO10Aの例外的なヒ酸塩耐性によって実証された(図5B)。このことは、この表現型が腸内単離体に競合上有利であるが、しかし純粋培養発酵環境にとっては重要ではないことを示唆する。
【0125】
ランチビオティックス生成。抗菌ペプチド又はバクテリオシンの生成は、自然環境内の細菌競合にとって重要な特徴である。バクテリオシンの1つの例外的に広いスペクトルのクラスは、ランチビオティックスであり、これらのランチビオティックスは、ランチオニン残基を形成するために翻訳後修飾され、そして今日まで、ビフィズス菌から単離されたものはない。ランチビオティックスを示す遺伝子全てをコードする10.2kb遺伝子クラスターが、菌株DJO10Aの固有領域12内で検出された(図6A)。なお、この固有領域はBDIピークに相応しなかった。このことは、この領域が菌株NCC2705から失われたらしいことを示唆する。ランチビオティックス生成は、腸内の微生物競合にとっては極めて有利であるが、純粋培養における微生物には価値がないので、菌株NCC2705からのこの固有領域12の損失に対して選択圧を与える。
【0126】
発酵環境内のB. longumのゲノム減衰。菌株NCC2705から失われたと予測される菌株DJO10Aのゲノム内の多数の固有DNA領域を考えると、これは、有用ではないDNA領域の欠失が、人間の大腸内に存在するのとは著しく異なる、新しい環境へのB. longumの迅速な適応を反映することを示唆する。このことは、突然変異頻度の上昇を示唆する。菌株DJO10AとNCC2705との間の比較ヌクレオチド置換分析は、遺伝子の大部分が高保存されていることを示す(図12)。このことは密接に関連する2つの菌株を用いて予期することができる。しかし、52個の最小保存遺伝子(図12では「正選択」として挙げた)の分析は、一方の菌株又は他方の菌株に起因し得る突然変異(フレームシフト、欠失、挿入、及び停止変異)のうち、11種が菌株NCC2705から生じ、そして3種が菌株DJO10Aから生じることを示している(表4)。菌株NCC2705において増大する突然変異頻度は、2つの菌株の間の表面タンパク質ホモログをコードする遺伝子を比較することから、さらに実証される。細胞表面アンカリング・タンパク質の1クラスの特徴であるLPXTGモチーフに対応するDJO10Aゲノムを探索することにより、4つの潜在的なタンパク質が見いだされ、そしてこれらのタンパク質(BLD1468、BLD1511、BLD1637及びBLD1638)のSignalP分析は、各事例におけるシグナル配列の存在を確認した(図13の追加ファイル10)。加えて、これらの4つのタンパク質のBLASTP分析は、これらがLPXTGモチーフを含有する他の既知の表面タンパク質に極めて類似していることを示した。NCC2705は、これらの遺伝子ホモログのうちの3つ(BLD1468、BLD1637及びBLD1638)を示し、そしてBLD1511に対して99%アミノ酸同一性を示す予測タンパク質を有したが、しかし、遺伝子の3’末端にISL3が挿入されることに起因してLPXTGモチーフを欠いていた。このことはさらに、ビフィズス菌が人間の腸から純粋培養発酵環境内に移されたときの、ビフィズス菌の迅速な進化状態を強調する。
【0127】
【表4】
【0128】
B. longumゲノム内のIS30「ジャンピング」。発酵環境内のB. longum細胞内部の動的環境は、さらに、異なるDNAバッチからのゲノム配列決定中に、
いくつかのIS要素の位置を除いてどれも同一であるという興味深い観察によってさらに実証される(図7A)。細胞内部のIS要素のこのような極めて迅速な運動は、以前には観察されたことはなかった。ゲノム内部のIS30の運動は、その挿入ターゲット特異性と一致して、特定部位でだけ発生した(Olasz他, 1998, Mol Microbiol 1998, 28; 691-704)。
【0129】
純粋培養環境へのB. longum DJO10Aの適応。腸のような変化しやすい複雑な環境から、比較的安定な単純化された純粋培養環境へ切り換える結果、過剰IS30活性、及び新しい環境にはもはや有益ではない領域の迅速なDNA損失をもたらすという仮説をテストするために、菌株DJO10Aを、ほぼ1,000世代にわたってpH制御なしに典型的なラボラトリー培地中で成長させた。次いで、人間の腸内に生き残るのに有用であることが予測される機能をコードする7つの固有領域に対して単離コロニーをスクリーニングした。ランチビオティックス生成に関与するこれらの領域のうちの1つ(12番)が、単離体の40%から欠けていることが判り(図14)、この仮説を実証した。この適応済菌株DJO10A-JH1の分析は、菌株NCC2705と極めて類似する、全ランチビオティックス領域にわたって広がる欠失を示す(図6A)。パルスフィールド電気泳動(PFGE)を用いてさらに注目されるのは、この領域を含有する39.9kbのXbaIバンドが菌株DJO10A-JH1から欠けていることである(図6B)。培養物の40%から完全ランチビオティックス遺伝子クラスターが失われていることは興味深い。それというのも、クラスターはまた、ランチビオティックス活性から細胞を保護するために免疫遺伝子をコードするからである。しかしながら、菌株DJO10Aによるランチビオティックス生成の分析は、ブロス培地内の成長中に何も生じないことを示し、また、化膿連鎖球菌からのストレプチン生成(Wescombe及びTagg, 2003, Appl environ Mcrobiol 2003, 69:2737-2747)と同様に、生成には固形表面、例えば寒天が必要であった(図6C)。完全ランチビオティックス遺伝子クラスターの損失は、菌株DJO10A-JH1をこのプロナーゼ−E感受性ランチビオティックスに対して感受性にする。プロナーゼ−E感受性ランチビオティックスもまた、広範囲の細菌に対して活性である(図6C)。興味深いことに、純粋培養環境に対する菌株DJO10Aの適応中に欠失するランチビオティックス・ゲノム領域は、2つのIS30要素間に配置された。これはゲノム欠失事象におけるその役割を示唆している。
【0130】
また、純粋培養適応菌株DJO10A-JH1が、140.7kbのXbaIバンドを欠いていることも注目された(図6B)。このバンドが4つのMIC要素のうちの1つを含有していることは興味深く、これが関与したかもしれないことを示唆する。このMIC要素とすぐに境を接する遺伝子座のPCR分析は、この要素からすぐ下流に10〜50kbで延びる欠失を明らかにした。このことはこの欠失事象における要素の考えられる役割を実証する。このことはさらに、DNAの迅速な損失、及びこれらの細菌による進化的適応中の、可動因子の顕著な役割を実証した。
【0131】
菌株DJO10A及びDJO10A-JH1のサザン・ハイブリダイゼーションは、純粋培養環境内での成長中におけるIS30「ジャンピング」を実証する一方、他のIS要素(IS21、IS256及びISL3)の位置は安定のままである(図7B)。B. longumにおけるこのIS30の過剰活性は、欠失事象及び新しい環境に対する適応中のゲノム低減に重要な役割を果たすことができる。
【0132】
適応B. longum菌株DJO10A-JH1の競合的「フィットネス(適応)」。発酵条件における純粋培養成長中にB. longum DJO10Aが被る迅速なゲノム低減は、ゲノム領域の損失が腸内の競合にとって重要であることを示唆した。このin vitro適応が菌株の「適応」に影響を与えるかどうかを試験するために、模擬便競合アプローチを開発した。ビフィズス菌は、腸内環境においてクロストジリウム及び腸内細菌の員と成功裡に競合することがしばしば提議される。これらの両細菌群の一員を、B. longum DJO10A及びそのin vitro適応誘導体DJO10A-JH1の相対競合能力を試験するために選択した。選択された競合菌株が決して減衰しないことを保証するために、選択培地上で平板培養することにより、新鮮な便から新しい単離体を得、そして、16SrRNA遺伝子の配列分析を用いて種形成した。その結果、Clostridium difficile DJOcd1及びE. coli DJOec1を単離し、これらは、B. longum菌株を用いた便競合試験を受ける前に、最小培養された。in vitro成長速度分析は、E. coli DJOec1が最も速い成長速度を有し、これにC. difficile DJOcd1、B. longum DJO10A−JH1及びB. longum DJO10Aが続くことを立証した(図15)。菌株DJO10Aと比較してB. longum DJO10A−JH1の成長速度が著しく高いことは、菌株DJO10A-JH1のゲノム低減がin vitro成長環境を好むことを実証した。
【0133】
模擬嫌気性便環境中でE. coli DJOec1及びC. difficile DJOcd1の双方を用いた競合成長試験は、B. longum DJO10Aが、E. coli及びC. difficileの双方と競合するための著しく高い能力を有することを明らかにした(図8)。B. longum DJO10Aによってこれら両細菌群が著しく低減したことは、純粋培養成長時に示されたゲノム低減が、その元の環境における細菌の競合能力を犠牲にするというゲノム分析仮説を支える。
【0134】
模擬便競合研究は、ランチビオティックスをコードするゲノム領域が、人間の腸内の競合にとって重要であることを示唆したのに対して、この仮説を検証するために、腸内モデルにおけるin vivo研究が必要となる。
【0135】
方法
細菌の菌株及び成長条件。ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株DJO10Aを、健常な若い成人の便から単離し(Islam, 2006, MS thesis. University of Minnesota, Department of Food Science and Nutrition)、B. animalis亜種lactis BB12をChr. Hansen(デンマーク国)から入手した。B. animalis亜種lactis菌株S1、S2及びS14は、発酵食品からの遺伝子的に区別可能な単離体である。Clostridium difficile DJOcd1は、Clostridium difficile Selective Agar(BD Diagnostics)上で平板培養することにより、新鮮な便から単離し、その16S rRNA遺伝子の配列分析によって種形成した。E. coli DJOec1は、MacConkey寒天(Difco)上で平板培養することにより、新鮮な便から単離し、その16S rRNA遺伝子の配列分析によって種形成した。E. coli K12をAmerican Type Culture Collection (ATCC)から入手した。BBL Anaerobicシステム(BBL)又はBactron II Anaerobic/Environmental Chamber (Sheldon Manufacturing)を使用した嫌気性条件下で、0.05%L−システインHCl(Sigma)を補足したMRS(Difco)、ビフィズス菌低鉄培地(BLIM)(Islam, 2006, MS thesis. University of Minnesota, Department of Food Science and Nutrition)又はビフィズス菌発酵培地(BFM)(2%プロテオーゼ・ペプトン、0.15%K2HPO4、0.15%MgSO4・7H2O、0.5%D−グルコース)中で37℃で、ビフィズス菌を培養した。
【0136】
ゲノム配列決定及びアセンブリ。全ゲノム・ショットガン配列決定を、US Department of Energy Joint Genome Institute (JGI)で行った。Phred/Phrep/Consedソフトウェアを使用して配列を227コンティグに集成し、配列カバレージは9.2倍であった。ギャップ閉鎖及びゲノム配列終了を、TermoFidelase-Fimer直接ゲノム配列決定技術を用いてFidelity Systemsで実施した(Slesarev他, 2002, Proc Natl Acad Sci USA, 99:4644-4649)。A5、A6及びA7遺伝子座をカバーするIS30要素を有する、そして有さないショットガン読み取り値を同定し、別々に集成した。ゲノムDNA試料中の長い反復配列の存在及び位置を、固有/反復ジャンクションの直接ゲノム配列決定によって検証した。ストランド置換能力が高められたハイブリッドTopoTaq DNAポリメラーゼで増幅されたPCR生成物を配列決定することにより、最も複雑な高GC豊富反復を分解した。
【0137】
生物情報分析。全ての予測遺伝子をマニュアルでチェックする前に、Glimmer, GeneMark, JGI注釈ツール及びGAMOLA (Altermann他, 2003, OMICS 2003, 7:161-169)を使用して、全てのオープン・リーディング・フレーム(ORF)の注釈を実施した。MUMmer3、ACT4及びClustalXを使用して、2つのB. longumゲノムを比較分析した。OriLoc (Frank及びLobry, 2000, Bioinformatics 2000, 16:560-561)を使用して、複製の始点及び終点を予測した。General Codon Usage Analysis (GCUA)プログラム(McInerney 1998, Bioinformatics 1998, 14: 372-373)を用いて、コドン使用頻度を分析した。Artemis8のスケーリングされたχ2分析によって、ベース偏差指数(BDI)を実施した。遺伝子機能を予測するために、GAMOLA及びInterProScanの2つの保存タンパク質ドメイン・データベースを使用した。両B. longumゲノム配列内の全ての遺伝子を機能分類するために、COG機能カテゴリーを使用した。
【0138】
分子技術。Big-Dyeターミネーター及びABI Prism 3730x1 Autoシーケンサー(Applied Biosystems)を使用して、一般的な配列決定を行った。全てのPCRプライマーを表5に挙げる。固有領域12のサザンブロット分析のために、LANT−F及びLANT−Rプライマーを用いたPCRによって、lanM遺伝子に由来する646bpプローブを得た。IS要素のためのプローブもPCR増幅した。プローブにDIGを標識付けし、これを、製造業者の指示書(Roche)に従って、消化されたゲノムDNAとハイブリッド形成した。製造業者の指示書(Bio-Rad)に従ってCHEF-DR III Variable Angle Pulsed Field Electrophoresis Systemを使用して、XbaIで消化されたB. longumゲノムのパルスフィールドゲル電気泳動を実施した。
【0139】
【表5】
【0140】
2つのB. longumゲノムの間の遺伝子ホモログの同定。Nei及びGojoboriのアルゴリズム(Nei及びGojobori, 1986, Mol Biol Evol 1986, 3:418-426)による比較ヌクレオチド置換分析を利用して、遺伝子ホモログを同定した。NCBIツールキット内のローカルBlastNプログラムを使用して、両ゲノム配列の予測遺伝子を比較し、そしてNeiの重み付けなしの方法I(Nei及びGojobori, 1986, Mol Biol Evol 1986, 3:418-426)によるヌクレオチド置換分析のために1,590個のアライニングされた遺伝子を使用した。dN:dSの比に従って、マッチングされた全ての遺伝子を3つのグループ、すなわち高保存(<0.035)、基準、及び正選択(>1)に分類した。
【0141】
ヒ素の最小阻害濃度。ヒ素の最小阻害濃度を測定するために、BLIMに異なる濃度の亜ヒ酸ナトリウム(AsO2−、1〜100mM)及びヒ酸ナトリウム(AsO3−、1〜500mM)を補足した。成長したばかりの培養物を亜ヒ酸塩/ヒ酸塩培地内に副次接種し、そして48時間にわたって37℃で嫌気的にインキュベートした。
【0142】
in vitro発酵条件へのB. longum DJO10Aの適応。B. longum DJO10AをBFM中で連続的にほぼ1,000世代まで成長させた。次いで培養物を連続希釈し、BFM寒天上に平板培養した。10個のコロニーを分析のためにランダムに選択した。
【0143】
菌株DJO10A−JH1における欠失のマッピング。菌株DJO10A−JH1ゲノムにおけるランチビオティックス・オペロンの欠失の正確な位置を見いだすために、ランチビオティックス・オペロン内部のいくつかの遺伝子を試験するためにPCRを用いた。2つのプライマーF3(位置1,974,570-1,974,587 bp)及びR3(位置1,996,024-1,996,005 bp)を使用することにより、欠失位置に跨るほぼ1.8kbの領域を増幅し、そして配列決定により、正確な境界の位置を特定した(図6)。140.7kbのXbaIフラグメント内の欠失位置をマッピングするために、プライマーMIC−F1(位置1,539,767-1,539,768 bp)及びMIC−R1(位置1,542,535-1,542,553 bp)を使用することにより、MIC IIIの上流領域を増幅し、そしてプライマーMIC−F2(位置1,543,406-1,543,424)及びMIC−R2(位置1,545,713-1,545,732)を使用することにより、下流領域を増幅した。
【0144】
ランチビオティックス活性のバイオアッセイ。B. longum DJO10Aを、MRS寒天プレートの中心に接種し、そして2日間にわたって37℃で嫌気的にインキュベートした。インキュベーション後、1%の指示菌を含有する同じ培地から成る融解0.5%トップ寒天を、インキュベーション前にプレート上に被せた。
【0145】
ビフィズス菌の模擬便競合分析。野生型B. longum DJO10Aの競合「フィットネス(適応)」を、その適応誘導体菌株DJO10A-JH1と比較して評価するために、模擬in vitro便系を開発した。各菌株毎に3部の試験を用いた。各試験は、0.38gの強化クロストリジウム培地(RCM)及び0.02gのムチン(ブタIII型胃)が添加された嫌気チャンバ内の10g滅菌便中で行った。2種の競合細菌をE. coli DJOec1の場合には計算濃度1.2x107cfu/gで、またClostridium difficile DJOcd1の場合には計算濃度5.1x107cfu/gで、全ての管に添加した。B. longum DJO10Aを計算濃度4.0x107cfu/gで、3つの管に添加し、そして菌株DJO10A−JH1を計算濃度4.4cfu/gで、他の3つの管に添加した。標準生菌平板計数を用いて、全ての細菌濃度を計算した。嫌気性環境中で十分に混合した後、管を3日間にわたって37℃で放置し、これにより、便試料全体を90mlペプトン水中で均質化することにより、正確な連続平板計数分析を行った。
【0146】
例2
抽出ビフィズス菌ランチビオティックスの調製
0.05%L−システインHCl(Sigma)を補足したMRSブロス、ビフィズス菌低鉄培地(BLIM)中に、B. longum菌株DJO10Aを成長させた。次いで、100mM PIPESを補足したMRS寒天プレート又は100mM PIPESを補足したBLIM寒天プレートの表面を覆うために両ブロスを使用した。BBL Anaerobicシステム(BBL)又はBactron II Anaerobic/Environmental Chamber (Sheldon Manufacturing)を使用した嫌気性条件下で、2日にわたって37℃でプレートをインキュベートした。20のプレートを使用した。
【0147】
細胞及び寒天培地を圧搾し、そして日常的な方法を用いて、95%メタノールで抽出した。抽出は一晩進めておいた。最終体積をSpeedVac内に入れることにより、エタノールを除去し、そしてランチビオティックスを濃縮した。
【0148】
部分精製のためにMillipore CentriPrep濾過を用いてサイズ分画によって、残りの寒天を除去した。抽出物を、それぞれ15分間及び10分間にわたって1,500Xgで2回遠心分離することにより、Centriprep-30(30kDaカットオフ)で分画し、そして濾液(<30kDa)をCentriprep 10(10kDaカットオフ)に移した。これに、それぞれ40分間及び10分間にわたって3,000Xgで2回遠心分離を施した。濾液をCentriprep 3(3kDaカットオフ)に移した。これに、それぞれ95分間及び35分間にわたって3,000Xgで2回遠心分離を施した。分画された溶液(3〜10kDa)を収集し、そしてSpeedVac機によって濃縮した。
【0149】
濃縮ランチビオティックスを再懸濁し、そしてすぐに、拡散法を用いて試験した。MRS又はBLIMを有するように寒天プレートを形成し、寒天プレートにPIPESを補足し、そして各プレートの真ん中に5ミリメートルのウェルをカットした。懸濁されたランチビオティックス100マイクロリットルをウェル内に入れ、ウェル内の液体がなくなるまで拡散させておいた。次いで、プレートに指示菌株を被せた。
【0150】
ランチビオティックスは、指示菌株M. leuteus, L. lactis, S. aureus, S. epidermdis, E. coli, S. marcescens, 及びP. vulgarisの成長を阻害した。ランチビオティックスはこのアッセイでは、P. aeuruginosaを阻害することはなかった。しかし、これらのデータから、ランチビオティックスがP. aeuruginosaを阻害しないという結論を出すことはできない。
【0151】
例3
抽出ビフィズス菌ランチビオティックスの耐熱性
例2で得られたランチビオティックスを沸騰水浴内に10分間にわたって入れ、次いで、拡散法、及び指示菌株としてM. leuteusを用いて活性に関して試験した。ランチビオティックスは10分間の煮沸後に活性であった。
【0152】
例4
抽出ビフィズス菌ランチビオティックスのタンパク質分解分析
タンパク質分解酵素の原液を下記のように調製した:
ペプシン(Sigma No. P6887)を2mM Tris・HCl中又は水中にpH2、37℃、濃度34600U/ml(10mg/ml)で溶解した。
プロナーゼE(Sigma No. P5147)を20mM Tris・HCl中又は50mM リン酸緩衝液中にpH7.5、37℃、濃度5500U/ml(500mg/ml)で溶解した。
α−キモトリプシン(Sigma No. C4129)を80mM Tris・HCl中にpH7.8、25℃、濃度5100U/ml(100mg/ml)で溶解した。
プロテイナーゼK(Sigma No. P2308)を10mM Tris・HCl中にpH7.5、37℃、濃度6000U/ml(200mg/ml)で溶解した。
トリプシン(MP biochemical (ICI) No. 15021310)、pH7.6、25℃を、濃度4750U/ml(50mg/ml)で使用した。
サーモリシン(Fluka No. 88303)、pH7.2、37℃を、濃度6000U/ml(150mg/ml)で使用した。
【0153】
例2で得られたランチビオティックス100マイクロリットルを各アッセイで使用した。タンパク質分解酵素を、別個の100mlのランチビオティックスに下記のように添加した:ペプシン、5μl(173U);プロナーゼE、20μl(110U);α−キモトリプシン、20μl(102U);プロテイナーゼK、20μl(120U);トリプシン、20μl(95U);及びサーモリシン、20μl(120U)。ペプシン、プロナーゼE、プロテイナーゼK、又はサーモリシンを含有する試料を37℃でインキュベートし、そしてα−キモトリプシン又はトリプシンを含有する試料を25℃でインキュベートした。インキュベーションは24時間であった。消化後、試料をpH7.5まで中和し、そして全ての試料を、10分間にわたって沸騰水中でインキュベートすることにより、タンパク質分解酵素を除去した。
【0154】
拡散法、不活性化タンパク質分解酵素を含有する試料50μl、及び指示菌株としてM. leuteusを使用して、各試料の活性を試験した。抽出ランチビオティックスはペプシン(pH2)に対して、そしてプロナーゼE(pH7.5)に対して感受性であり、また他の4つのタンパク質分解酵素に対しては不感受性であった。
【0155】
本明細書中に引用した全ての特許、特許出願、及び刊行物の完全な開示内容、及び電子的に利用可能な材料(例えば、GenBank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列寄託、例えばSwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列寄託、及びGenBank及びRefSeqにおける注釈付きコード領域からの翻訳を含む)を、参考のため引用する。本出願の開示内容と本明細書中に参考のため引用した文書の開示内容との間に不一致が存在する場合には、本出願の開示内容が優先されるものとする。前記詳細な説明及び例は、理解しやすさのために提供されたにすぎない。そこからは不必要な限定はないと理解されるべきである。本発明は、示され記載された正確な詳細に限定されない。というのも、当業者には明らかな変更形が、特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲の中に含まれることになるからである。
【0156】
他に指示のない限り、明細書及び特許請求の範囲に用いられた成分、分子量などの量を表す全ての数値は、全ての事例において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。従って、他に反対の指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に示された数値パラメータは、本発明により得ようとする所期特性に応じて変化し得る概算値である。最低限でも、また、特許請求の範囲との同等の原則を制限しようという試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、そして通常の丸め技術を適用することにより解釈されるべきである。
【0157】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算値ではあるが、具体例に示された数値はできるかぎり正確に報告されている。しかしながら、全ての数値は本質的に、それぞれの試験測定値において見いだされる標準偏差から必然的に生じる所定の範囲を含んでいる。
【0158】
全ての見出しは読者の便宜のために記載したものであって、特にその旨の断りがない限り、見出しに続く本文の意味を限定するために使用されるものではない。
【図1A】
【図1B】
【技術分野】
【0001】
継続出願データ
本出願は、2007年7月20日付けで出願された米国特許仮出願第60/961,374号明細書の優先権を主張する。前記明細書を参考のため、本明細書中に引用する。
【0002】
政府の補助金
本発明は、エネルギー省によって与えられた、許可番号DE-FG02-98ER82577及びDE-FG02-00ER83009に基づく政府支援によって為された。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
人間の腸の微生物多様性に関する最近の分子研究は、以前に認識されたものよりもはるかに多くの多様性を明らかにしているが、人体への個々の群の関与について目下知られていることは極めて少ない(Gill他、2006, Science, 312: 1355-1359)。数的に支配的な1微生物群であるビフィズス菌は、良好な腸内健康状態と関連することがしばしば示唆されており、これらは、母乳で育てられている乳児の便において有力に支配する(Yoshioka他、1983, Pediatrics, 72: 317-321)。この現象は、小児科医Henri Tissierによる1899年におけるこれらの細菌の発見を導き、そしてこれに続いて、Tissierは乳幼児下痢症を治療するためにこれらの細菌を使用することになった(Tissier, 1906, Crit Rev Soc Biol, 60: 359-361)。ビフィズス菌の提議された有益な効果はさらに、高齢者におけるこれらの細菌の減少、及びこれに伴う他の微生物群、とりわけクロストリジウム及び大腸菌(E. coli)の増加によって裏付けられている(Mitsuoka他, 1973, Zentralbl Bakteriol [Orig A], 223:333-342, Hopkins他, 2001, Gut 48:198-205, Ishibashi他, 1997, Mal J Nutr, 3:149-159)。このことにより、潜在的な腸内の健康利益のために食品中にビフィズス菌を含むことの関心が世界的に高まっている(O'Sullivan, Primary Sources of Probiotic Cultures, Probiotics in food safety and human health. Goktepe他編、Boca Raton: Taylor & Francis/CRC Press, 2006:91-107)。しかしながら、ビフィズス菌に関する臨床摂食研究は、摂食試験中に被検者の便中に菌株を検出することはできるものの、これらは、研究を中止すると急速に失われることを示し、人間の腸内環境内で競合するための菌株の競合的適応が失われる可能性を指摘している(O'Sullivan, Primary Sources of Probiotic Cultures, Probiotics in food safety and human health. Goktepe他編、Boca Raton: Taylor & Francis/CRC Press, 2006:91-107, Fukushima他, 1998, Int J Food Microbiol, 42:39-44, Su他, 2005, FEMS Micrbiol Lett, 244:99-103)。これは、発酵環境が、人間の結腸の緩衝された嫌気性環境とは大きく異なることに伴う、菌株の減衰に起因すると言える。
【0004】
バクテリオシンは、多くのタイプの細菌によって生成される、ペプチドに基づく抗微生物化合物であり、密接に関連する細菌に対して阻害作用を有する。しばしば、阻害スペクトルは、生成細菌の属の範囲内にある。ランチビオティックスは、幅広い阻害スペクトルを有し、また翻訳後修飾される一種のバクテリオシンである。具体的には、修飾酵素がいくつかのアミノ酸を修飾してランチオニン残基にする。乳酸菌Lactococcus laticsのいくつかの菌株によって生成されるナイシンは、ほとんどのグラム陽性菌にまで及ぶ、今まで記述されている中で最も幅広い阻害スペクトルを有するランチビオティックスである。その広いスペクトルを考えて、これは、保存剤及び保存寿命延長剤として幅広く使用される。残念ながら、腐敗菌及び病原菌はグラム陽性菌だけではない。多くの病原体、例えばE. coli及びSalmonellaがグラム陰性であり、また多くの腐敗菌、例えばPseudomonas及びKlebsiellaもグラム陰性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方を阻害するビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)のプロバイオティック培養から、バイシン(bisin)と題されるランチビオティックスを提供する。これは、今日まで、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方に対して天然阻害作用を有することが記述された最初のバクテリオシンである。従ってこれは、グラム陰性菌、特にPseudomonasの酵素活性が多くの欠陥の原因となることを考えれば、乳製品における効果的な保存寿命延長剤となる可能性を有する。
【0006】
ランチビオティックスを生成する可能性は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株のゲノム配列から初めて認識されたが、菌株によって生成されるランチビオティックスを検出する最初の試みは不成功であった。ランチビオティックスが生成されることになる成長条件が見いだされる前に、更なる試験が必要となった。続いて、その阻害スペクトルを試験し、そしてグラム陽性指示菌及びグラム陰性指示菌の両方に対する効果的な阻害を明示するために、バイオアッセイを用いた。
【0007】
本発明は、アミノ酸配列を含む単離された生物活性化合物であって、化合物のアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有している、単離された生物活性化合物を提供する。ポリペプチド配列は、配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列の少なくとも1つの同類置換を含んでいてよい。化合物は、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態で、グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を有している。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。いくつかの態様において、これは好ましくはP. aeruginaosaではない。化合物は、グラム陽性菌、例えばLactobacillus種、Lactococcus種、Streptococcus種、Staphylococcus種、又はBacillus種の成長を阻害する。化合物はBifidobacteriumによって生成されてよい。本発明はまた、単離された生物活性化合物と食品とを含む組成物、及び、単離された生物活性化合物と、医薬として許容される担体とを含む組成物を含む。
【0008】
本発明はまた、単離ポリヌクレオチドであって:(a)該ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有しているポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は(b)ヌクレオチド配列(a)の完全相補形を含む、単離ポリヌクレオチドを提供する。単離ポリヌクレオチドは、異種調節配列に作動可能的に連結されていてよい。本発明はまた、単離ポリヌクレオチドを含有するベクター、及び単離ポリヌクレオチドを含有する細胞を提供する。
【0009】
本発明は、単離ランチビオティックスであって、ランチビオティックスが、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態で、グラム陰性菌の成長を阻害する、単離ランチビオティックスを提供する。ランチビオティックスはアミノ酸配列を含み、化合物のアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有している。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。
いくつかの態様において、これは好ましくはP. aeruginaosaではない。
【0010】
本発明は、ランチビオティックスと食品とを含む組成物であって、ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を有している組成物を提供する。ランチビオティックスは食品の表面上、食品中、又はその組み合わせにおいて存在していてよい。ランチビオティックスはアミノ酸配列を含み、ランチビオティックスのアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有していてよい。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。
【0011】
本発明は、ランチビオティックスと医薬として許容される担体とを含む組成物であって、ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する組成物を提供する。ランチビオティックスはアミノ酸配列を含み、ランチビオティックスのアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有していてよい。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。
【0012】
本発明はまた、本明細書中に記載された化合物を製造する方法を提供する。この方法は、ランチビオティックスを製造するために適した条件下で単離Bifidobacteriumを成長させることを含んでよく、Bifidobacteriumはランチビオティックスを生成する。この方法はさらに、ランチビオティックスを単離することを含む。成長は、表面上でBifidobacterium、好ましくはB. longumを成長させることを含んでよい。本発明はまた、この方法によって製造されたランチビオティックスを含む。
【0013】
ランチビオティックスの製造方法は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む微生物を成長させることを含んでよく、ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とは少なくとも80%の同一性を有しており、微生物は、ポリペプチドを製造するために適した条件下で成長させられ、微生物はポリペプチドを生成する。微生物はさらに、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、又はこれらの組み合わせから選択されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。成長は、表面上でBifidobacterium、好ましくはB. longumを成長させることを含んでよい。本発明はまた、この方法によって製造されたポリペプチドを含む。この方法はさらに、例えば、アルコール(例えばメタノール)を含む組成物で抽出することによって、ポリペプチドを単離することを含んでよい。
【0014】
さらに、本発明によって、ランチビオティックスの使用方法が提供される。方法は、ランチビオティックスを食品に添加することを含んでよく、ランチビオティックスはグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む。この方法は、例えばランチビオティックスを含むケーシング、フィルム、又はパッケージング材料の表面を該食品に接触させることにより、食品の表面にランチビオティックスを加えることを含んでいてよい。添加は、該ランチビオティックスを食品に添加することを含んでいてよい。ランチビオティックスは、食品保存剤として作用してよい。
【0015】
本発明は、アミノ酸配列を含む生物活性化合物を含む歯磨き剤、例えばマウスウォッシュ又は練り歯磨きであって、化合物のアミノ酸配列と配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有しており、化合物がグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる歯磨き剤を提供する。
【0016】
また、本発明によって、ランチビオティックスを含む組成物を動物、例えばヒトに投与することを含むランチビオティックスの使用方法であって、患者が該ランチビオティックスによって阻害される微生物による感染症を有するか又はそのリスクがあり、そしてランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる、ランチビオティックスの使用方法も提供される。組成物は、医薬として許容される担体を含んでいてよく、また組成物は局所投与されてよい。
【0017】
本発明はまた、単離された生物学的活性ポリペプチドであって、該ポリペプチドのアミノ酸配列と、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有している、単離された生物学的活性ポリペプチドを提供する。また、本発明には、ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドも含まれる。
【0018】
本発明はさらに、ランチビオティックスを生成するBifidobacteriumを提供する。ランチビオティックスはグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる。グラム陰性菌は、E. coli、Serratia proteus、又はSalmonella種であってよい。Bifidobacteriumはカプセル封入されているか、又は例えば錠剤形状を成していてよく、食品中に存在していてよい。本発明はまた、Bifidobacteriumを、これを必要とする動物に投与することを含む方法であって、Bifidobacteriumがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態でグラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含むランチビオティックスを生成することになる、方法を提供する。
【0019】
「及び/又は」という用語は、記載の要素のうちの1つ又は全て、又は記載の要素のうちのいずれか2つ又は3つ以上の組み合わせを意味する。
【0020】
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、或る環境下で特定の利益をもたらし得る本発明の実施態様を意味する。しかしながら、同じ又は他の環境下で、他の実施態様が好ましいこともある。さらに、1つ又は2つ以上の好ましい実施態様を挙げることが、他の実施態様が有用ではないことをほのめかすことにはならず、またこのことは、本発明の範囲から他の実施態様を排除しようとするものではない。
【0021】
「含む」という用語及びこの変化形は、明細書及び特許請求の範囲においてこれらの用語が現れる場所で限定的な意味を有することはない。
【0022】
他に断りのない限り、「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ」は、相互交換可能に使用され、1つ又は2つ以上のものを意味する。
【0023】
さらに本明細書中では、終点による数値的範囲を挙げる場合には、これは、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0024】
本明細書中に開示された、不連続なステップを含むいかなる方法に関しても、ステップは、任意の実現可能な順序で行われてよい。また、適切な場合には、2つ又は3つ以上のステップの任意の組み合わせを同時に行うこともできる。
【0025】
本発明の上記概要は、本発明の開示された各実施態様を、又は実施形ごとに記述しようとするものではない。以下の記載においては実施態様をより具体的に例示する。本出願全体を通していくつかの個所で、例の一覧によって指針が提供されるが、これらの例はいくつかの組み合わせで用いることができる。それぞれの事例において、挙げられた一覧は、代表的なグループとしてのみ役立つのであって、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、B. longum DJO10A.(A)及びNCC2705.(B)における可動性インテグレーゼ・カセット(MIC)の編成を示す図である。Orf1,2及び3は3つの隣接する、しかしながら異なるxerCインテグレーゼ遺伝子を意味する。Pは、MICIIIに11bp伸長を有する保存20bpパリンドローム(TTAAACCGACATCGGTTTAA)(配列番号24))である。IRは、MICI及びIIに3bp伸長、MICIIIに5bp伸長、及びMIC1,2及び3に1bp伸長を有する96bp逆反復(IR)(GATTAAGCCGGGTTTGTTGTTAAGCCGGGGAACGGTTCGGGGTCTTGGTGGCTGGCCGTGTCCCATGTGGTTTCCCGGCTTAACGTTCCGGGTTAT)(配列番号25)である。IS挿入配列を意味する。
【図2】図2はゲノム固有領域を示す図である。(A)B. longum DJO10A及びNCC2705ゲノムのベース偏差指数(BDI)分析。テキスト中に定義された各ゲノムの固有領域に番号を付けた。oriC及びterCの位置は緑の矢印によって示す。文字は、両ゲノム内に存在する限定的BDIピークを有する領域からの予測遺伝子表現型を意味する。すなわちa GTPase、b カチオン輸送ATPase、c DNA分配タンパク質、d コロイルグリシンヒドロラーゼ、e グルタミン・シンターゼ・ベータ鎖、f アラニル−tRNAシンテターゼ、g ピルビン酸キナーゼ、h カチオン輸送ATPase、i フィブロネクチンIII型、j アミノペプチダーゼC、k サブチリシン様セリンプロテアーゼ、l ソルターゼ、m 脂肪酸シンターゼ。(B)NCC2705における予測欠失位置に残るushA遺伝子からの、緑のバーによって示された361bp DNA残存物の位置を示す固有領域1の編成。空色のORFは、両ゲノム間の共通の遺伝子を示す。a 可動性インテグレーゼカセット。
【図3】図3は、2つのB. longumゲノム間のオリゴ糖利用遺伝子クラスター7の比較を示す図である。固有領域10におけるDJO10A固有遺伝子は、ダークグレーに着色されており、ISL3型IS要素は黒に着色されており、他のマッチ遺伝子は白に着色されている。galA,α−ガラクトシダーゼ;lacI,LacI型リプレッサー;malEFG,ABC型輸送系;ISL3,ISL3型IS要素;agl1,グリコシダーゼ;ilvA,トレオニンデヒドラターゼ;SIR2,NAD依存性タンパク質デアセチラーゼ;glyH,グリコシルヒドロラーゼ;hyp,仮想タンパク質。
【図4】図4は、菌株DJO10Aにおける固有領域13のポリオール代謝に関与する遺伝子の編成、及び、B. adolescentis ATCC 15703における類似領域との比較を示す。アミノ酸同一性が、相同遺伝子間で示されている。黒い影を付けたORFは、固有領域13及びB. adolescentis ATCC 15703における対応ホモログに由来する。
【図5】図5は、選択された細菌のヒ素耐性を示す。(A) ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum) DJO10A、Bacillus subtilis 168(Kunst他, 1997, Nature 1997, 390: 249-256)、Bacteroides thetaiotamicron VPI-5482 (Xu他, 2003, Science 2003, 299: 2074-2076), Lactobacillus brevis ATCC 367 (Makarova他, Proc Natl Acad Sci USA 103:15611-15616), L. plantarum WCFS1 (Kleerebezem他、2003, Proc Natl Acad Sci USA 2003, 100; 1990-1995), L. johnsonii NCC 533 (Pridmore他, 2004, Proc Natl Acad Sci USA 2004, 101:2512-2517)及びE. coli K-12(Sofia他, 1994, Nucleic Acids Res 1994, 22:2576-2586)の完成ゲノム配列からコンパイルされたヒ素耐性遺伝子クラスターの遺伝子編成。a.胞子形成中に部位特異的リコンビナーゼSpoIVCAによって切除される48kb要素、b.プラスミド配列、arsR、リプレッサー、arsA、ヒ素刺激ATPase、arsB、亜ヒ酸塩排出ポンプ、arsC、ヒ酸塩レダクターゼ、arsD、ヒ素シャペロン、hyp、仮想タンパク質を示す。(B)B. longum DJO10Aのヒ素耐性活性と、発酵適応されたB. animalis亜種lactis菌株、E. coli及びLactobacillus plantarumとの比較。c. van Kranenburg他(van Kranenburg他, 2005, Appl Environ Microbiol 2005, 71:1223-1230)に定義されたデータから計算。
【図6】図6は、B. longum DJO10Aによるランチビオティックスの生成を示す。(A)ランチビオティックスをコードするB. longum DJO10A固有領域12、及び菌株NCC2705及びDJO10A-JH1における対応ゲノム位置の編成。IS30に続くA又はB識別子は、ゲノム内のこの位置だけに見いだされるIS30要素の固有クラスを意味する。’ 識別子は、フラグメント化IS30要素である。(B)XbaI消化された、B. longum DJO10Aの総DNA及びその発酵適応単離体DJO10A-JH1のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)分析。白い矢印は、菌株DJO10A-JH1から失われたバンドを示す。(C)指示菌としてDJO10A及びDJO10A-JH1を用いた、B. longum DJO10Aによるランチビオティックス生成に対するバイオアッセイ。
【図7】図7は、B. longum DJO10AのゲノムにおけるIS30「ジャンピング」を示す。(A)B. longum DJO10A及びラボラトリー適応DJO10A-JH1のゲノムにおけるIS30要素のゲノム位置。グレーの矢印は、DJO10AゲノムDNAの直接配列決定によって識別された5つの要素を示す。白い矢印は、DJO10AゲノムDNAから調製されたいくつかの配列決定クローン内で検出された要素の位置を示す。A6下のアスタリスクは、この要素がDJO10A DNAのいくつかの配列決定クローンから欠けていたことを示す。(B)4つの異なるIS要素群に対して特異的なプローブを使用して、左のゲル及びそのサザン・ハイブリダイゼーション(右のゲル)において示されたDJO10AのNruI消化ゲノムDNA。(1)はDJO10Aを意味し、そして(2)はDJO10A-JH1を意味する。矢印は、(A)に示した特定のIS30要素に対応するDJO10Aにおけるバンドを示す。
【図8】図8は、Clostridium difficile及びE. coliに対するB. longum DJO10A及びそのin vitro適応誘導体、菌株DJO10A-JH1の模擬便競合分析を示す。(A)B. longum DJO10A-JH1(水平線)及びB. longum DJO10A(ハッチ)との競合に続く競合研究開始時のE. coli DJOec1の生存細胞数(黒)。(B)B. longum DJO10A-JH1(水平線)及びB. longum DJO10A(ハッチ)との競合に続く競合研究開始時のC. difficile DJOec1の生存細胞数(黒)。N=3。
【図9】図9は、oriC領域の保存構造を示す。これは、2つのB. longumゲノム内の3つのクラスターから成っている。DnaAボックスは、以下のようにA〜Gで指定された7つのタイプから成っている:タイプA(TTATCCACA)、タイプB(TTGTCCACA)、タイプC(TTTTCCACA)、タイプD(TTACCCACA)、タイプE(TTATCCACC)、タイプF(TTATTCACA)、タイプG(TTATGCACA)。
【図10】図10は、B. longumゲノムによってコードされたI及びII型制限修飾(R−M)系を示す。(A)B. longum DJO10AとNCC2705との間のI型R−M系をコードするゲノム位置のアラインメント。(B)Sau3AI−II型R−M系(認識部位5'-GATC-3')と、他の細菌内の類似のR−M系との比較、及び(C)EcoRII−II型R−M系(認識部位5'-CCWGG-3')と、他の細菌内の類似のR−M系との比較。B. longum DJO10Aと比較されたタンパク質配列同一性パーセンテージが示されている。
【図11】図11は、11の異なるタイプのオリゴ糖利用遺伝子クラスターの編成(DJO10Aの11タイプ及びNCC2705の7タイプ)を示す。菌株DJO10Aの固有の遺伝子が示されている。IS,挿入配列;Hyp,仮想タンパク質;Arab,アラビノシダーゼ;E,malE;F,malF;G,malG;R,lacI型リプレッサー;K,ABCトランスポーターのATPase;αGal,αガラクトシダーゼ;βXyl,β−キシロシダーゼ;Est,エステラーゼ;LCFACS,長鎖脂肪酸アセチルCoAシンテターゼ;f,フラグメント化遺伝子;XylT,D−キシロース・プロトン・シンポーター;βGal,β−ガラクトシダーゼ;Arab−βGal,アラビノガラクタン・エンド1,4−β−ガラクトシダーゼ;O157,E. coli O157内にのみホモログを有するORF;αMAN,α−マンノシダーゼ;GlycH,グリコシルヒドロラーゼ;NAc−Glc,N−アセチルグルコサミニダーゼ;UhpB,ヒスチジンキナーゼ;RfbA,dTDP−グルコースピロホスホリラーゼ;RfbB,dTDP−D−グルコース4,6−デヒドラターゼ;RfbC,dTDP−4−デヒドロラムノース3,5−エピメラーゼ;RgpF,リポ多糖類生合成タンパク質;TagG,ABC型多糖/リン酸ポリオール輸出系、パーミアーゼ成分;TagH,ABC型多糖/リン酸ポリオール輸出系、ATPアーゼ成分;MdoB,ホスホグリセロール・トランスフェラーゼ;ProP,パーミアーゼ;Acyl−Est,アシルエステラーゼ。なお、クラスター7におけるグリコシルヒドロラーゼ遺伝子は、NCC2705ゲノム注釈におけるイソマルターゼとして注釈付けされた。
【図12】図12は、dN:dS比に基づく、B. longum DJO10AとNCC2705との間の全ての遺伝子ホモログのヌクレオチド置換分析を示す。
【図13】図13は、B. longum DJO10Aにおける4つの予測LPXTG型細胞表面アンカータンパク質の編成を示す。シグナル・ペプチド・ボックス下の数字は、シグナル・ペプチドの位置を示す。それぞれのタンパク質のサイズは、アミノ酸で示されている。
【図14】図14は、B. longum DJO10A-JH1からのランチビオティックス遺伝子クラスターの損失を示す。(A)PCR.M,1kb DNAラダー(Invitrogen)によるB. longum DJO10AにおけるDJO10A特異的遺伝子及びその発酵適応単離体DJO10A-JH1の検出;レーン1,固有領域15;レーン2,固有領域6;レーン3,固有領域9;レーン4,固有領域11;レーン5,固有領域5;レーン6,固有領域7;レーン7,固有領域12;レーン8,16S rRNA部分遺伝子。矢印は菌株DJO10A-JH1から失われたランチビオティックス・コードされた固有領域12を示す。(B)lanMプローブ、及びB. longum DJO10A及びDJO10A-JH1のEcoRI消化ゲノムを使用したサザンブロット分析。lanMを含有する1.7kb EcoRIバンドが矢印で示されている。
【図15】図15は、便競合成長試験に使用される4種の細菌のRCM培地中の成長曲線を示す。全ての細菌は、成長したばかりの培養物から1%で接種された。四角,E. coli DJOec1;三角,Clostridium difficile DJOec1;丸,B. longum DJO10A-JH1;及び菱形,B. longum DJO10A。
【図16】図16は、ランチビオティックスをコードする遺伝子クラスター(配列番号23)を含むB. longum DJO10A(Genbank Accession No. CP000605)のゲノム配列部分を示す。配列番号23内に存在するのは:ヌクレオチド1979049-1979753(配列番号1)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号2);ヌクレオチド1979747-1980907(配列番号3)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号4);ヌクレオチド1981217-1981417(配列番号5)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号6);ヌクレオチド1981501-1982160(配列番号7)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号8);ヌクレオチド1982200-1982937(配列番号9)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号10);ヌクレオチド1983009-1986110(配列番号11)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号12);ヌクレオチド1986161-1986979(配列番号13)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号14);ヌクレオチド1986976-1989213(配列番号15)及びこれによりコードされるポリペプチド(配列番号16)が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、或る特定の微生物の成長を阻害する化合物を提供する。本発明の化合物はポリペプチドを含む。本明細書中に使用される「ポリペプチド」という用語は、広義では、ペプチド結合によって結合された2つ以上のアミノ酸から成るポリマーを意味する。「ポリペプチド」という用語はまた、ジスルフィド結合によって結合された2つ以上のポリペプチドを含有する分子、又は多量体(例えば二量体、四量体)として共有結合又は非共有結合されたポリペプチドの複合体を含む。このように、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質は、ポリペプチドの定義範囲内に全て含まれ、これらの用語は相互交換可能に使用される。言うまでもなく、これらの用語はアミノ酸のポリマーの特定長さを暗示することはなく、また、そのポリペプチドが組み換え技術、化学的又は酵素的合成を用いて製造されるものかどうか、又は自然発生型であるかどうかを暗示又は区別しようとするものでもない。本発明の化合物は、本明細書中ではランチビオティックスと呼ぶことができる。好ましくは、本発明の化合物は単離されている。本明細書中に使用される「単離」ポリペプチド、例えばランチビオティックス、又はポリヌクレオチドは、その自然環境から取り出されるか、又は組み換え技術を用いて生成されるか、又は化学的又は酵素的に合成されたポリペプチド又はポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドは、精製されている、すなわち、いかなる他のポリペプチド又はポリヌクレオチド又は関連する細胞生成物又はその他の不純物も含有していない。
【0028】
一例を挙げるならば、微生物、例えばビフィズス菌(Bifidobacterium)による本発明の化合物の製造中に、プレペプチドが生成され、次いで3つの工程、すなわち、特定アミノ酸の脱水、特定アミノ酸間のチオエーテル結合の形成、及びシグナル・ペプチダーゼによる切断により処理される。最初のプレペプチドは、アミノ酸配列番号6を有していてよい。
【0029】
プレペプチドは、脱水による結果として中間体をもたらすように処理される。セリン残基を脱水することによりジデヒドロアラニンを形成することができる。このように、配列番号6を基準とする位置36,38,42,45,47,49,52,61又はこれらの組み合わせにおけるセリンアミノ酸を脱水することにより、ジデヒドロアラニンを形成することができる。好ましくは位置47,49及び61のセリンアミノ酸を脱水することにより、ジデヒドロアラニンを形成する。トレオニンアミノ酸を脱水することにより、ジデヒドロブチリンを形成することができる。このように、配列番号6を基準とする位置54,57又はこれらの組み合わせにおけるトレオニンアミノ酸を脱水することにより、ジデヒドロブチリンを形成することができる。好ましくは両位置54及び57のトレオニンを脱水することにより、ジデヒドロブチリンを形成する。
【0030】
このように、アミノ酸の脱水から生じた中間ポリペプチドは、下記構造:
メチオニン−セリン−イソロイシン−アスパラギン酸−グルタミン酸−リシン−セリン−イソロイシン−バリン−グリシン−グルタミン酸−セリン−フェニルアラニン−グルタミン酸−アスパラギン酸−ロイシン−セリン−アラニン−アラニン−アスパラギン酸−メチオニン−アラニン−メチオニン−ロイシン−トレオニン−グリシン−アルギニン−アスパラギン−アスパラギン酸−アスパラギン酸−グリシン−バリン−アラニン−プロリン−アラニン−Xaa1−ロイシン−Xaa2−フェニルアラニン−アラニン−バリン−Xaa3−バリン−ロイシン−Xaa4−バリン−−Xaa5−フェニルアラニン−Xaa6−アラニン−システイン−Xaa7−バリン−Xaa8−バリン−バリン−Xaa9−アルギニン−ロイシン−アラニン−Xaa10−システイン−グリシン−アスパラギン−システイン−リシン(配列番号19)
を有していてよく、
ここでXaa1,2,3,4,5,6,7及び10は、それぞれ独立してセリン又はジデヒドロアラニンであり、そしてXaa8及び9は、それぞれ独立してトレオニン又はジデヒドロブチリンである。特定アミノ酸の脱水から生じた中間ポリペプチドの好ましい例は、
メチオニン−セリン−イソロイシン−アスパラギン−グルタミン酸−リシン−セリン−イソロイシン−バリン−グリシン−グルタミン酸−セリン−フェニルアラニン−グルタミン酸−アスパラギン酸−ロイシン−セリン−アラニン−アラニン−アスパラギン酸−メチオニン−アラニン−メチオニン−ロイシン−トレオニン−グリシン−アルギニン−アスパラギン−アスパラギン酸−アスパラギン酸−グリシン−バリン−アラニン−プロリン−アラニン−セリン−ロイシン−セリン−フェニルアラニン−アラニン−バリン−セリン−バリン−ロイシン−セリン−バリン−ジデヒドロアラニン−フェニルアラニン−ジデヒドロアラニン−アラニン−システイン−セリン−バリン−ジデヒドロブチリン−バリン−バリン−ジデヒドロブチリン−アルギニン−ロイシン−アラニン−ジデヒドロアラニン−システイン−グリシン−アスパラギン−システイン−リシン(配列番号20)
である。
【0031】
特定アミノ酸の脱水から生じたポリペプチドは、特定アミノ酸間のチオエーテル結合を形成するようにさらに処理される。別のアミノ酸とのチオエーテル結合を形成するために使用されるときに、2−アミノ酪酸(Abu)を形成するように、ジデヒドロブチリン残基を処理することができ、別のアミノ酸とのチオエーテル結合を形成するために使用されるときに、アラニンを形成するように、ジデヒドロアラニン残基を処理することができ、そして別のアミノ酸とのチオエーテル結合を形成するために使用されるときに、アラニンを形成するように、システイン残基を処理することができる。ランチビオティックスにおいて観察されているように、異なるアミノ酸間のチオエーテル結合の形成から、ランチオニン及び3−メチルランチオニン残基が生じる。
【0032】
処理されたポリペプチドはさらに、2つのアミノ酸間の切断によってさらに処理される。予測切断部位は、アミノ酸33と34との間である。配列番号6の他の切断部位を使用して、処理済ペプチドを生じさせてもよい。
【0033】
このようにして、本発明の化合物は下記構造:
プロリン−アラニン−Xaa1−ロイシン−Xaa2−フェニルアラニン−アラニン−バリン−Xaa3−バリン−ロイシン−Xaa4−バリン−−Xaa5−フェニルアラニン−Xaa6−アラニン−Xaa7−Xaa8−バリン−Xaa9−バリン−バリン−Xaa10−アルギニン−ロイシン−アラニン−Xaa11−Xaa12−グリシン−アスパラギン−Xaa13−リシン(配列番号21)
を有していてよく、
ここでXaa1,2,3,4,5,6,8及び11は、それぞれ独立してセリン、ジデヒドロアラニン、又はアラニンであり、そしてXaa7、12及び13は、それぞれ独立してシステイン又はアラニンであり、そしてXaa9及び10は、それぞれ独立してトレオニン、ジデヒドロブチリン、又は2−アミノ酪酸である。本発明の化合物の好ましい例は、プロリン−アラニン−セリン−ロイシン−セリン−フェニルアラニン−アラニン−バリン−セリン−バリン−ロイシン−セリン−バリン−アラニン−フェニルアラニン−ジデヒドロアラニン−アラニン−アラニン−セリン−バリン−ジデヒドロブチリン−バリン−バリン−2アミノ酪酸−アルギニン−ロイシン−アラニン−アラニン−アラニン−グリシン−アスパラギン−アラニン−リシン(配列番号22)である。
【0034】
化合物は少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つのチオエーテル架橋を有していてよい。好ましくは、本発明の化合物は、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、最も好ましくは3つの架橋を有している。架橋は、配列番号21の位置Xaa1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12及び13の任意の2つの残基間に、任意の組み合わせで存在することが可能である。好ましくは各架橋は、システイン残基、すなわち配列番号21のXaa7,12,又は13を含む。本発明の化合物の好ましい例は、位置14(Xaa5)及び18(Xaa7)、位置24(Xaa10)及び29(Xaa12)、及び位置28(Xaa11)及び32(Xaa13)の間にチオエーテル架橋を有する配列番号22である。
【0035】
本発明の化合物は、配列番号19,20,21又は22、好ましくは配列番号21で示したもの以外のポリペプチドを含んでいてもよい。例えば、本発明の化合物は、別のアミノ酸配列と構造類似性を有するポリペプチドを含んでいてもよい。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして一般に、配列の長さに沿って同一アミノ酸の数を最適化するために、2つのアミノ酸配列(すなわち候補アミノ酸配列及び配列番号19,20,21,又は22のアミノ酸配列)の残基をアライニングすることによって決定され、同一アミノ酸の数を最適化するためにアライメントを行う上で一方又は両方の配列のギャップが許されるが、各配列内のアミノ酸はそれでもなお適切な順序のままでなければならない。候補アミノ酸配列は、配列番号21のようなアミノ酸配列に存在するアミノ酸配列と比較されるアミノ酸配列である。候補アミノ酸配列はBifidobacteriumから単離されてもよく、又は、組み換え技術を用いて生成されてもよく、又は化学的又は酵素的に合成されてもよい。好ましくは2つのアミノ酸配列が、GCGパッケージ(バージョン10.2, Madison WI)内のBESTFITアルゴリズムを使用して、又はTatusova他(FEMS Microbiol. Lett 1999, 174: 247-250)によって記載され、例えばNational Center for Biotechnology Information, National Institutes of Healthによって維持されているインターネット・サイトで、ワールド・ワイド・ウェブを通して入手可能なBAST 2サーチ・アルゴリズムのBlastpプログラムを使用して比較される。好ましくは、全てのBLAST 2サーチ・パラメータに対するデフォルト値が使用され、これらのデフォルト値はマトリックス=BLOSUM62;オープン・ギャップ・ペナルティ=11、拡張ギャップ・ペナルティ=1、ギャップx_ドロップオフ=50、期待=10、ワードサイズ=3、及び任意にはフィルターオンを含む。BLASTサーチ・アルゴリズムを使用して2つのアミノ酸配列を比較する際に、構造類似性は「同一性」と称される。好ましくは、本発明の化合物はまた、配列番号19、20、21、又は22、好ましくは配列番号21に対して、少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも81%のアミノ酸同一性、少なくとも82%のアミノ酸同一性、少なくとも83%のアミノ酸同一性、少なくとも84%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも86%のアミノ酸同一性、少なくとも87%のアミノ酸同一性、少なくとも88%のアミノ酸同一性、少なくとも89%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも91%のアミノ酸同一性、少なくとも92%のアミノ酸同一性、少なくとも93%のアミノ酸同一性、少なくとも94%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、少なくとも96%のアミノ酸同一性、少なくとも97%のアミノ酸同一性、少なくとも98%のアミノ酸同一性、又は少なくとも99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0036】
配列番号19、20、21、又は22、好ましくは配列番号21に対して構造類似性を有する本発明の化合物は、配列番号19、20、21、又は22で開示された配列の1つ又は2つ以上の同類置換を含んでいてよい。同類置換は典型的には、同じクラスの員である1つのアミノ酸を別のアミノ酸の代わりに配置することである。例えば、タンパク質生化学分野においてよく知られているように、特定のサイズ又は特徴(例えば電荷、疎水性、及び/又は親水性)を有するアミノ酸群に属するアミノ酸は一般に、ポリペプチドの二次構造及び/又は三次構造を大幅に変更することなしに、別のアミノ酸の代わりに置換することができる。本発明の目的において、同類アミノ酸置換基は、下記残基クラスのうちの1つのクラスの中からアミノ酸残基を交換することから生じるものと定義される:クラスI:Gly,Ala,Val,Leu,及びIle(脂肪族側鎖を表す);クラスII:Gly,Ala,Val,Leu,Ile,Ser,及びThr(脂肪族及び脂肪族ヒドロキシル側鎖を表す);クラスIII:Tyr,Ser,及びThr(ヒドロキシル側鎖を表す);クラスIV:Cys及びMet(硫黄含有側鎖を表す);クラスV:Glu,Asp,Asn及びGln(カルボキシル又はアミド基を含有する側鎖);クラスVI:His,Arg及びLys(塩基性側鎖);クラスVII:Gly,Ala,Pro,Trp,Tyr,Ile,Val,Leu,Phe及びMet(疎水性側鎖を表す);クラスVIII:Phe,Trp,及びTyr(芳香族側鎖を表す);及びクラスIX:Asn及びgln(アミド側鎖を表す)。これらのクラスは、標準遺伝コードにおいてコードされていない、例えばアミノ酸の翻訳後修飾から生じるアミノ酸を含めて、自然発生型のアミノ酸に限定されることはなく、人工アミノ酸をも含む。同類置換は任意の位置、好ましくは、配列番号21の位置1,2,4,6,7,8,10,11,13,15,17,20,22,23,25,26,27,30,31,33又はこれらの組み合わせに存在していてよい。
【0037】
表現型としてサイレントのアミノ酸置換形をどのように形成するかに関する指針はBowie他(1990, Science, 247: 1306-1310)において提供されている。ここで著者は、タンパク質がアミノ酸置換形に対して驚くほど耐容性を有することを示している。例えば、Bowie他は、変化に対するポリペプチド配列の耐容性を研究するために2つの主なアプローチがあることを開示している。第1の方法は、突然変異が自然淘汰によって受け入れられるか又は拒絶される進化過程に依存する。第2のアプローチは、クローニングされた遺伝子の特定の位置にアミノ酸変化を導入するために遺伝子工学を利用し、機能性を維持する配列を同定するために選択又はスクリーニングを行う。著者によって述べられているように、これらの研究は、タンパク質がアミノ酸置換形に対して驚くほどに耐容性を有することを明らかにしている。著者はさらに、どの変化がタンパク質の特定位置で許容的である可能性が高いかを示している。例えば、ほとんどの埋め込みアミノ酸残基は非極性側鎖を必要とする一方、表面側鎖の少数の構成要件は概ね保存される。他のこのような表現型としてサイレントの置換形は、Bowie他及びこれに引用された参考文献に記載されている。
【0038】
好ましくは、本発明の化合物は、生物学的に活性である。本明細書中に使用される「生物学的活性」化合物及び「生物学的活性」を有する化合物は、指示菌の成長を阻害する化合物である。生物学的活性に関して試験されるべきランチビオティックスを微生物、好ましくはBifidobacteriumによって生成しようとする時には、その微生物を使用して寒天プレート中心に接種し、そして所定の時間、例えば2日間にわたってインキュベートすることにより微生物の複製及びランチビオティックスの生成を可能にすることができる。好ましくは、寒天プレートはMRS又はBLIMである。次に、異なるプレート上又はブロス中で予め成長させた指示菌株を融解トップ寒天、例えば0.5%寒天中に懸濁させ、そして被験ランチビオティックスを生成する微生物を含有するプレート上に注ぐ。使用される指示菌株の量は様々であるが、しかし典型的には、ランチビオティックス生成微生物の不在において、1〜2日で目に見える成長をもたらす濃度で添加される。トップ寒天を冷やして固化させておき、そしてプレートを、指示菌株の成長を可能にするための条件下でインキュベートする。プレートの中央に接種された微生物の周りに指示菌株が存在しなければ、それは、その微生物が生物学的活性を有するランチビオティックスを生成しつつあることを示す。プレートには、指示菌株の成長が完全にないこともあり、又は、プレート中心に指示菌株の跡のハローがある場合もある。
【0039】
生物学的活性に関して試験されるべきランチビオティックスが単離又は精製されるときには、寒天プレート中心に穴を空け、そして単離又は精製されたランチビオティックスを含有する溶液を穴に添加し、そして寒天内に拡散させておくことができる。次に、異なるプレート上又はブロス中で予め成長させた指示菌株を融解トップ寒天、例えば0.5%寒天中に懸濁させ、そして被験ランチビオティックスを生成する微生物を含有するプレート上に注ぐ。使用される指示菌株の量は様々であるが、しかし典型的には、ランチビオティックス生成微生物の不在において、1〜2日で目に見える成長をもたらす濃度で添加される。トップ寒天を冷やして固化させておき、そしてプレートを、指示菌株の成長を可能にするための条件下でインキュベートする。プレートの中央に接種された微生物の周りに指示菌株が存在しなければ、それは、その微生物が生物学的活性を有するランチビオティックスを生成しつつあることを示す。プレートには、指示菌株の成長が完全にないこともあり、又はプレート中心に指示菌株の跡のハローがある場合もある。
【0040】
いくつかのランチビオティックスは、グラム陰性菌に対して何らかの生物学的活性を有することが知られているが、しかし典型的にはこの生物学的活性は、グラム陰性菌の外膜がランチビオティックスに曝露される前に損なわれる場合にのみ存在する。本発明のランチビオティックスは、外膜に対する損傷なしに、グラム陰性菌に対する生物学的活性を有する。従って、ランチビオティックスが生物学的活性を有するかどうかを試験するときには、この試験は好ましくは、グラム陰性菌の外膜を損なわない条件下で行われる。このような条件は、例えば、培地中にキレート剤を含むこと、浸透圧衝撃、熱、静水圧の条件に指示菌を曝すこと、外膜のリポ多糖類に影響を与える亜致死抗菌剤への曝露、亜致死マイクロ波曝露、及び亜致死超音波処理を含む。同様に、いくつかのランチビオティックスは、グラム陰性菌に対して何らかの生物学的活性を有しているが、しかし典型的には、この生物学的活性は、グラム陰性菌が、グラム陽性菌を阻害するために使用されるよりも高濃度のランチビオティックスに曝露される場合にのみ存在する(Hillman,米国特許出願公開第20020128186号明細書)。本発明のランチビオティックスは、同じ濃度で使用されたときに、グラム陰性菌及びグラム陽性菌に対する生物学的活性を有している。
【0041】
好ましい指示菌株は例えば、Mirococcus leuteus, Lactococcus lactis, Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermdis, E. coli, Serratia marcescens, 及びProteus vulgarisを含む。
【0042】
本発明の化合物はまた、10分間の100℃までの加熱に対して抵抗性であり、pH2のペプシン及びpH7.5のプロナーゼEによるタンパク質分解によって不活性化され、そしてα−キモトリプシン、プロテイナーゼK、トリプシン、及びサーモリシンによるタンパク質分解によっては不活性化されないことを特徴としている。この化合物は、等電点9.5及び分子量3291.8ダルトンであると予測される。
【0043】
本発明はまた、他の単離ポリペプチドを提供する。一例を挙げるならば、Bifidobacteriumのような微生物による、本発明の化合物、例えば配列番号22の製造は、7種の他のポリペプチドによって促進される。これら7種のポリペプチドの自然発生形は、自然発生型のプレタンパク質配列番号6をコードするコード領域を含む一連のコード領域によってコードされ、これら7種のポリペプチドのそれぞれの発現は、化合物、例えば配列番号22を生成することになる。
【0044】
これらの7種のポリペプチドは、2成分系の応答レギュレーター(配列番号2)、シグナル伝達ヒスチジン・キナーゼ(配列番号4)、応答レギュレーター(配列番号8)、プレペプチド修飾ポリペプチド(配列番号10)、修飾酵素(配列番号12)、免疫ポリペプチド(配列番号14)、及びトランスポーターポリペプチド(配列番号16)である。トランスポーターポリペプチドは、プレペプチドを切断するプロテアーゼの能力を含むと予測される。また、本発明においては、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸配列との構造類似性を有するポリペプチドも含まれる。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして一般に、2つのアミノ酸配列(すなわち候補アミノ酸配列及び配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸配列)の残基をアライニングすることによって決定される。好ましくは、本発明のこの態様のポリペプチドはまた、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16に対して、少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも81%のアミノ酸同一性、少なくとも82%のアミノ酸同一性、少なくとも83%のアミノ酸同一性、少なくとも84%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも86%のアミノ酸同一性、少なくとも87%のアミノ酸同一性、少なくとも88%のアミノ酸同一性、少なくとも89%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも91%のアミノ酸同一性、少なくとも92%のアミノ酸同一性、少なくとも93%のアミノ酸同一性、少なくとも94%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、少なくとも96%のアミノ酸同一性、少なくとも97%のアミノ酸同一性、少なくとも98%のアミノ酸同一性、又は少なくとも99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをも含む。配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16に対して構造類似性を有する本発明のポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16で開示された配列の1つ又は2つ以上の同類置換を含んでいてよい。
【0045】
配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16に対して構造類似性を有するポリペプチドは好ましくは、配列番号22の生物活性化合物を生成する活性を有している。配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16に対して構造類似性を有するポリペプチドが活性を有するかどうかは、他の自然発生型ポリペプチドを有する微生物、好ましくはBifidobacterium中に、変更アミノ酸配列を有するポリペプチドのうちの1つを発現させ、そして本発明の生物活性化合物が生成されるかどうかを決定することにより判断することができる。例えば、配列番号2に対する構造類似性を有するポリペプチドが活性に関して試験される場合には、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16を有する細胞中にポリペプチドを発現させ、そしてこの細胞を、本発明の化合物の生成に適した条件下で成長させることができる。その細胞が生物学的活性を有する化合物を生成するならば、試験されたポリペプチド、すなわち配列番号2に対する構造類似性を有するポリペプチドは活性である。
【0046】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、ポリヌクレオチド、好ましくは単離ポリヌクレオチドを提供する。本明細書中に使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの高分子形態、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドを意味し、また二本鎖及び一本鎖双方のDNA及びRNAを含む。ポリヌクレオチドは、異なる機能を有するヌクレオチド配列、例えばコード配列、及び非コード配列、例えば調節配列を含んでいてよい。コード配列、非コード配列、及び調節配列を下記に定義する。ポリヌクレオチドは天然源から直接得ることができ、或いは、組み換え技術、酵素技術、化学技術によって調製することができる。ポリヌクレオチドは、トポロジーにおいて線形又は円形であってよい。ポリヌクレオチドは例えばベクター、例えば発現又はクローニング・ベクターの一部、又はフラグメントであってよい。
【0047】
本発明の1つのポリヌクレオチドは、配列番号17(配列番号23のヌクレオチド1981316-1981417)を含み、この配列番号17は、配列番号6のアミノ酸34−66で示されたポリペプチドをコードする。言うまでもなく、配列番号6のアミノ酸34−66によって表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号17で開示されたヌクレオチド配列に限定されることはなく、遺伝子コードの縮退の結果としてこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのクラスをも含む。例えば、天然発生型ヌクレオチド配列番号17は、配列番号6のアミノ酸34−66で示されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のクラスの1員にすぎない。
【0048】
本発明の生物学的活性ポリペプチドをコードする他のポリヌクレオチドは、配列番号17のヌクレオチド配列との構造類似性を有するポリヌクレオチドを含む。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして、配列の長さに沿って同一ヌクレオチドの数を最適化するために、2つのポリヌクレオチド配列(すなわち候補配列及び配列番号17のヌクレオチド配列)の残基をアライニングすることによって決定され、共有されるヌクレオチドの数を最適化するためにアライメントを行う上で一方又は両方の配列のギャップが許されるが、各配列内のヌクレオチドはそれでもなお適切な順序のままでなければならない。候補配列は、配列番号17と比較される配列である。候補ヌクレオチド配列はBifidobacteriumから単離されてもよく、又は、組み換え技術を用いて生成されてもよく、又は化学的又は酵素的に合成されてもよい。好ましくは2つのヌクレオチド配列が、GCGパッケージ(バージョン10.2, Madison WI)内のBESTFITアルゴリズムを使用して、又はTatusova他(FEMS Microbiol. Lett 1999, 174: 247-250)によって記載され、例えばNational Center for Biotechnology Information, National Institutes of Healthによって維持されているインターネット・サイトで、ワールド・ワイド・ウェブを通して入手可能なBAST 2サーチ・アルゴリズムのBlastnプログラムを使用して比較される。好ましくは、全てのBLAST 2サーチ・パラメータに対するデフォルト値が使用され、これらのデフォルト値はマッチに対する報酬=1、ミスマッチに対するペナルティ=−2、オープン・ギャップ・ペナルティ=5、拡張ギャップ・ペナルティ=2、ギャップx_ドロップオフ=50、期待=10、ワードサイズ=11、及び任意にはフィルターオンを含む。BLASTサーチ・アルゴリズムを使用して2つのヌクレオチド配列を比較する際に、構造類似性は「同一性」と称される。好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号17に対して、少なくとも80%のヌクレオチド同一性、少なくとも81%のヌクレオチド同一性、少なくとも82%のヌクレオチド同一性、少なくとも83%のヌクレオチド同一性、少なくとも84%のヌクレオチド同一性、少なくとも85%のヌクレオチド同一性、少なくとも86%のヌクレオチド同一性、少なくとも87%のヌクレオチド同一性、少なくとも88%のヌクレオチド同一性、少なくとも89%のヌクレオチド同一性、少なくとも90%のヌクレオチド同一性、少なくとも91%のヌクレオチド同一性、少なくとも92%のヌクレオチド同一性、少なくとも93%のヌクレオチド同一性、少なくとも94%のヌクレオチド同一性、少なくとも95%のヌクレオチド同一性、少なくとも96%のヌクレオチド同一性、少なくとも97%のヌクレオチド同一性、少なくとも98%のヌクレオチド同一性、又は少なくとも99%のヌクレオチド同一性を有するヌクレオチド配列を含む。好ましくは、配列番号17に対して構造類似性を有するヌクレオチド配列が、生物学的活性を有する本発明の化合物をコードする。
【0049】
任意には、配列番号17に対して同一であるか、又は配列番号17と構造類似性を有するポリヌクレオチドは、配列番号17の5’又は上流にすぐ隣接して配置された付加的なヌクレオチド配列を含む。この任意の配置は、処理中に除去されたプレペプチドのアミノ末端領域、すなわち配列番号6のアミノ酸1−33に対応するポリペプチドをコードする。これらのヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド1−99で開示されている。言うまでもなく、配列番号6のアミノ酸1−33によって表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド1−99で開示されたヌクレオチド配列に限定されることはなく、遺伝子コードの縮退の結果としてこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのクラスをも含む。
【0050】
プレペプチドのアミノ末端領域をコードする他の単離ポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド1−99のヌクレオチド配列との構造類似性を有するポリヌクレオチドを含む。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして2つのポリヌクレオチド(すなわち候補配列及び配列番号5のヌクレオチド1−99)の残基をアライニングすることによって決定される。好ましくは、このようなポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド1−99に対して、少なくとも80%のヌクレオチド同一性、少なくとも81%のヌクレオチド同一性、少なくとも82%のヌクレオチド同一性、少なくとも83%のヌクレオチド同一性、少なくとも84%のヌクレオチド同一性、少なくとも85%のヌクレオチド同一性、少なくとも86%のヌクレオチド同一性、少なくとも87%のヌクレオチド同一性、少なくとも88%のヌクレオチド同一性、少なくとも89%のヌクレオチド同一性、少なくとも90%のヌクレオチド同一性、少なくとも91%のヌクレオチド同一性、少なくとも92%のヌクレオチド同一性、少なくとも93%のヌクレオチド同一性、少なくとも94%のヌクレオチド同一性、少なくとも95%のヌクレオチド同一性、少なくとも96%のヌクレオチド同一性、少なくとも97%のヌクレオチド同一性、少なくとも98%のヌクレオチド同一性、又は少なくとも99%のヌクレオチド同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0051】
本発明はまた、本発明の化合物の製造を容易にする7種のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む。これらのポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、及び配列番号15を含む。これらのポリヌクレオチドはそれぞれ、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、及び配列番号16をコードする。言うまでもなく、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16によって表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15で開示されたヌクレオチド配列に限定されることはなく、遺伝子コードの縮退の結果としてこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのクラスもまた含む。
【0052】
本発明の化合物の発現を容易にする7種のポリペプチドのうちの1種をコードする他のポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15のヌクレオチド配列との構造類似性を有するポリヌクレオチドを含む。類似性は構造類似性と呼ばれ、そして、上記のように、2つのポリヌクレオチド(すなわち候補配列のヌクレオチド配列及び配列番号1のヌクレオチド配列)の残基をアライニングすることによって決定される。好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15に対して、少なくとも80%のヌクレオチド同一性、少なくとも81%のヌクレオチド同一性、少なくとも82%のヌクレオチド同一性、少なくとも83%のヌクレオチド同一性、少なくとも84%のヌクレオチド同一性、少なくとも85%のヌクレオチド同一性、少なくとも86%のヌクレオチド同一性、少なくとも87%のヌクレオチド同一性、少なくとも88%のヌクレオチド同一性、少なくとも89%のヌクレオチド同一性、少なくとも90%のヌクレオチド同一性、少なくとも91%のヌクレオチド同一性、少なくとも92%のヌクレオチド同一性、少なくとも93%のヌクレオチド同一性、少なくとも94%のヌクレオチド同一性、少なくとも95%のヌクレオチド同一性、少なくとも96%のヌクレオチド同一性、少なくとも97%のヌクレオチド同一性、少なくとも98%のヌクレオチド同一性、又は少なくとも99%のヌクレオチド同一性を有するヌクレオチド配列を含む。配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15に対する構造類似性を有するヌクレオチド配列が、配列番号22の化合物を生成する活性を有する。このような活性に対する試験は上記の通りである。
【0053】
本発明のポリヌクレオチドは、ベクター内に存在していてよい。ベクターは、複製ポリヌクレオチド、例えばプラスミド、ファージ、コスミド、又は人工染色体であり、複製ポリヌクレオチドには、別のポリヌクレオチドを付着させることにより、付着ポリヌクレオチドの複製を行うことができる。ベクター内に存在するときには、本発明のポリヌクレオチドは組み換えポリヌクレオチドと称されることがある。本明細書中に使用される「組み換えポリヌクレオチド」は、自然の状態では結合されない配列を有するポリヌクレオチドを意味する。配列は、組み換え技術を用いて、種々異なるポリヌクレオチド配列の人工操作によって結合することができ、或いは、化学的又は酵素的に合成することもできる。本発明のポリヌクレオチドを含有するベクターの構築は、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を採用する。Sambrook他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照されたい。
【0054】
ベクターは更なるクローニング(ポリヌクレオチドの増幅)を可能にし(すなわちクローニング・ベクター)、又はコード領域によってコードされたポリペプチドの発現を可能にする(すなわち発現ベクター)。好適な発現ベクターは、所定量のポリペプチド、好ましくは、本発明の組成物中に使用して、例えば患者に投与することができる本発明の化合物を生成するために使用することができるベクターを含む。ベクターは、本発明のポリペプチド又はそのフラグメントをコードするコード領域を含む。本明細書中に使用される「コード領域」は、ポリペプチドをコードし、そして適切な調節配列の制御下に置かれると、コードされたポリペプチドを発現させるヌクレオチド配列を意味する。コード領域の境界は一般に、その5’末端の翻訳開始コドンと、その3’末端の翻訳停止コドンとによって決定される。
【0055】
ベクターは、結果として生じる構造の種々の所望の特徴、例えば選択マーカー、ベクター複製速度などに応じて選択される。本明細書中でベクターをクローニングするか又は発現させるのに適した宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞である。
【0056】
発現ベクターは任意には、コード領域に作動可能的に連結された調節配列を含む。調節配列は、これが作動可能的に連結されているコード領域の発現を調節するヌクレオチド配列である。調節配列の非限定的例は、プロモーター、転写開始部位、翻訳開始部位、翻訳停止部位、及びターミネーターを含む。「作動可能的に連結」は、そのように記述された成分が、所期の形でこれらが機能するのを可能にする関係にあるような並置状態を意味する。調節配列は、コード領域の発現が調節配列と適合性のある条件下で達成されるように結合されていると、コード領域に「作動可能的に連結」されていることになる。本発明はいかなる特定のプロモーターの使用によっても限定されることはなく、多種多様なプロモーターが知られている。プロモーターは、下流(3’方向)の転写を開始するために、細胞内のRNAポリメラーゼに結合する調節シグナルとして作用する。使用されるプロモーターは構成的又は誘導性プロモーターであってよい。これは宿主細胞に対して異種であってよいが、このことが必要であるわけではない。本明細書中に使用される「異種」調節配列は、これが通常は作動可能的に連結されないコード領域に作動可能的に連結された調節配列である。
【0057】
発現ベクトルは任意には、ポリペプチドを生成するように転写メッセージの翻訳を開始するために、リボソーム結合部位及び開始部位(例えばコドンATG)を含んでいてよい。発現ベクトルは、翻訳を終了させるための終止配列を含んでいてもよい。終止配列は典型的には、対応するアミノアセチル−tRNAが存在しないコドンであり、ひいてはポリペプチド合成を終わらせる。宿主細胞を転写するために使用されるポリヌクレオチドは任意にはさらに、転写終止配列を含んでいてもよい。
【0058】
ベクターは、本発明の2つ以上のポリヌクレオチドを含んでいてよい。本発明の2つ以上のポリヌクレオチドが1つのベクター中に存在すると、ポリヌクレオチドはオペロン内に編成され、そしてオペロン内の第1コード領域の上流に配置された同じプロモーターに作動可能的に連結されていてよい。或いは、2つ以上のプロモーターが、ポリヌクレオチドの発現を駆動してもよい。
【0059】
宿主細胞内に導入されたベクターは任意には、1つ又は2つ以上のマーカー配列を含む。これらのマーカー配列は、典型的には、成長培地内の化合物を不活性化又はその他の形で検出するか、又はこの化合物によって検出された分子をコードする。例えば、マーカー配列を含むことにより、形質転換細胞を抗生物質に対して耐性にすることができ、又は形質細胞に化合物特異的代謝を与えることができる。マーカー配列の例は、カナマイシン、アンピリシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ネオマイシン、及びエリスロマイシンに対する耐性を与える配列である。
【0060】
製造方法
本発明はまた、本発明の化合物を製造する方法に関する。本発明の化合物を製造する方法は、化合物を生成するのに適した条件下でBifidobacteriumを成長させることを含む。典型的には、このような条件は、表面上にBifidobacteriumを成長させることを含む。固形培地のために使用可能な好適な成分の一例としては、寒天、ゼラチン、及びゴム、例えばアルギン酸塩、及びキサンタンなどが挙げられる。培地は完全又は最小、好ましくは完全であってよい。好適な培地の一例としては、発酵性糖、例えばMRS、BLIM、及びブレイン・ハート・インフュージョンを含む複合培地が挙げられる。
【0061】
本発明の化合物を生成することができるビフィズス菌は、個体から得ることができ、或いはラボラトリー菌株を使用することもできる。本発明の化合物の源として使用することができるビフィズス菌の例は、B. adolescentis, B. aerophilum, B. angulatum, b. animalis, B. asteroides, B. bifidum, B. boum, B. breve, B. catenulatum, B. choerinum, B. coryneforme, B. cuniculi, B. denticolens, B. dentium, B. gallicum, B. gallinarum, B. indicum, B. infantis, B. inopinatum, B. longum, B. magnum, B. merycicum, B. minimum, B. pseudocatenulatum, B. pseudolongum, B. psychraerophilum, B. pullorum, B. ruminantium, B. saeculare, B. scardovii, B. subtile, B. thermacidophilum, 及びB. thermophilumを含む。好ましくは、Bifidobacteriumは、B. breve, B. infantis,又はB. longumであり、より好ましくはB. longumである。
【0062】
ビフィズス菌は、液体培地中で長時間の試験管内培養後、ランチビオティックスを生成する能力を失うと考えられているので、Bifidobacteriumは、好ましくは個体から得られる。個体からBifidobacteriumを得る方法は日常的であり当業者によく知られている(例えばKullen他, 1997, FEMS Microbiol. Lett., 154:377-383; O'Suillivan, 米国特許第6,746,672号明細書)。例えば新鮮な便試料を個体から収集して、適量の滅菌溶液、例えば滅菌ペプトン水(0.1%)中ですぐに均質化することができる。個体は胃腸障害の履歴がなく、また、前年に抗生物質を使用したことがないことが好ましい。ホモジネートは嫌気性チャンバーに移されてよく、ここでホモジネートを連続希釈し、そして例えばBIM−25(Munoa他, 1988, Appl. Environ. Microbiol., 54;1715-1718)上で平板培養することができる。37℃で嫌気性インキュベーションを行った後、赤いコロニーをランダムに選択することができる。BIM−25プレート上に現れたコロニーの真正性は、日常的な方法、例えばフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼの活性を評価することによって、又はビフィズス菌のための診断酵素によって、又はKullen他(1997, FEMS Microbiol. Lett., 154:377-383)によって記載された16s rRNA遺伝子又はrecA遺伝子の分子分析によって検証することができる。
【0063】
微生物、例えばBifidobacteriumが、ランチビオティックス生成を許す条件においてひとたび成長しだしたら、成長し続けることが可能であると期待される。しかし、本発明の化合物を生成するBifidobacteriumは、ランチビオティックス生成を好まない条件下、例えばブロス中で長時間にわたって成長させるべきではない。それというのもこのような条件は、化合物をコードする遺伝子クラスターを失うおそれがあるからである。遺伝子クラスターは免疫遺伝子をもコードするので、ランチビオティックスが環境中にある場合には、失われることはない。
【0064】
Bifidobacteriumが本発明の化合物を生成するかどうかを決定するために、Bifidobacteriumをスクリーニングすることができる。スクリーニング法は、ランチビオティックスの発現に適した条件下でBifidobacteriumを培養し、そしてランチビオティックスの存在に関して試験することを含む。或る事象が生じるのに「適した」条件、又は或る事象、例えばBifidobacteriumによるランチビオティックスの生成が生じるのを「可能にする」条件、又は「好適な」条件は、このような事象の発生を妨げない条件である。このように、これらの条件は、その事象を許し、増強し、容易にし、且つ/又は助成する。Bifidobacteriumが本発明の化合物を発現させるかどうかを決定する方法は上記の通りである。
【0065】
スクリーニング法は、Bifidobacteriumが、本発明の化合物の合成に関与するポリヌクレオチドのうちの1種又は2種以上を有するかどうかを決定することを含んでいてよい。例えば、本発明のポリヌクレオチドの存在は、増幅によって決定することができる。好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってポリヌクレオチドを増幅する。PCRに際しては、試験Bifidobacteriumに由来するポリヌクレオチド、好ましくは染色体DNAにモル過剰のプライマー対を添加する。プライマーを伸長させることにより、所望の増幅ポリヌクレオチドを合成するための鋳型として作用する相補プライマー伸長生成物を形成する。期待サイズの増幅ポリヌクレオチドが存在するならば、このことは、試験Bifidobacteriumが本発明の化合物を生成できることを示す。
【0066】
増幅させることができる好適なポリヌクレオチドは、配列番号1,3,5,7,9,11,13及び15に存在するコード領域を含む。好ましくは、増幅されるポリヌクレオチドは、ポリペプチド配列番号6をコードするヌクレオチド配列(配列番号5)の一部である。本発明のポリヌクレオチドの一部を増幅させるプライマーは、容易に入手可能なコンピュータ・プログラム、例えばOMIGAプログラム(Oxford Molecular, Ltd., Oxford, UK)を使用して設計することができる。プライマーを設計する上で考慮することができるファクターの一例としては、溶融温度、プライマー長、増幅生成物のサイズ、及び特異性が挙げられる。プライマー長は、一般に15〜30ヌクレオチドであるが、しかし所望の場合にはこれよりも短くても長くてもよい。PCRによってポリヌクレオチドを増幅する条件は、使用されるプライマーのヌクレオチド配列に応じて変化し、またこのような条件を決定する方法は、当業者には日常的である。プライマー対の例は、例えば、676bpの増幅生成物をもたらすLANRI−F(ATGAAGGCGATTCTGTTTC, 配列番号38)及びLANR1−R(TCACAGCTCGATATTGGTG, 配列番号39)、並びに、788bpの増幅生成物をもたらすLANTI−F(GAGCA TCAAT GAGAA GTCC, 配列番号56)及びLANT1−R(GCAAT CAACA CCAAA ACC, 配列番号57)を含む。
【0067】
別の態様では、本発明のポリヌクレオチドの存在は、試験Bifidobacterium中に存在するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するように設計されたポリヌクレオチド・プローブで決定することができる。本明細書中に使用される「ハイブリッド形成」、「ハイブリッド形成する」、及び「ハイブリダイゼーション」は、標準条件下でプローブとターゲット・ポリヌクレオチドとの間の非共有相互作用を意味する。標準的なハイブリッド形成条件は、プローブがターゲット・ポリヌクレオチドとハイブリッド形成するのを可能にする条件である。このような条件は、当業者に良く知られた技術を用いてプローブ及びーゲット・ポリヌクレオチドのために容易に決定される。例えばSambrook他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory: New York (1989)を参照されたい。ハイブリダイゼーションによって同定することができる好適なポリヌクレオチドは、配列番号1,3,5,7,9,11,13及び15に存在するコード領域を含む。好ましくは、ハイブリダイゼーションによって同定されるポリヌクレオチドは、ポリペプチド配列番号6をコードするヌクレオチド配列である。プローブは、20未満のヌクレオチド、少なくとも20のヌクレオチド、少なくとも50のヌクレオチド、少なくとも100のヌクレオチドの長さであってよい。
【0068】
別の態様の場合、本発明の化合物を生成する方法は、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、好ましくは配列番号22に対して構造類似性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする組み換えポリヌクレオチドを含む微生物を成長させることを含んでいてよい。微生物は、本発明のlanAをコードするコード領域を含んでいてよく、そして任意には、本発明のlanR2、本発明のlanK、本発明のlanR1、本発明のlanD、本発明のlanM、本発明のlanI、本発明のlanTをコードするコード領域、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。好ましくは、微生物は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16をコードするコード領域、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。本発明の化合物はin vivoで生成されてもよい(Xie他, 2004, Science 303:679-681)。
【0069】
本発明の化合物をコードする組み換えポリヌクレオチドを含む微生物は、古細菌、真核生物又は真正細菌、好ましくは真正細菌、例えばグラム陰性菌又はグラム陽性菌であってよい。グラム陰性菌の一例としては、E. coli及びSalmonella種が挙げられる。グラム陽性菌の一例としては、Bacillus種、例えばB. subtilis、Enterococcus種、例えばE. faecium、E. faecalis、乳酸菌、例えばLactococcus lactis、L.sakei、及びStreptomycesが挙げられる。他の微生物は、酵母、例えばSaccharomyces cerevisiae及びPichia pastorisを含む。
【0070】
本発明の化合物は単離することができる。例えば、本発明の化合物を生成する微生物、好ましくはBifidobacteriumは、ランチビオティックスの生成に適した条件で成長させ、そして培地を含む培養物を、化合物の単離に適した条件に曝露することができる。1つの態様の場合、本発明の化合物は、細胞、及び任意には、細胞が成長させられる固形培地を乾燥させることにより単離することができる。任意には、培養物をさらに処理することにより、これを滅菌することができる。例えば、培養物は、培養物中に存在するビフィズス菌を殺すための条件に曝露することにより処理することができる。滅菌に有用な条件の例は、熱又は紫外線照射を含む。培養物は、事実上全ての湿分が除去され、化合物を含有する粉末が残るまで乾燥させることができる。培養物を乾燥させる方法は、当業者に知られており、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、トンネル乾燥、真空乾燥、及び空気乾燥を含む。このような方法の結果は、本発明の化合物を含む、数多くの成分を含む混合物である。このような混合は、食品に添加することができる。食品に添加される混合物は滅菌状態である。
【0071】
別の態様の場合、本発明のランチビオティックスは、メタノール抽出によって単離することができる。ランチビオティックスを単離及び/又は精製するための当業者に知られた方法を用いてさらに単離及び/又は精製するために、付加的な方法を用いることができる。このような方法は典型的には、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィを含むカラムクロマトグラフィ、及び、例えばC18カラムを使用する逆相HPLCのような高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を含む。使用されるべき最適条件は、日常試験によって決定することができる。本発明の精製された化合物は、周知の合成化学技術を用いて形成することができる。
【0072】
組成物
本発明はまた、組成物を提供する。組成物は本発明の化合物を含むことができる。このような組成物は任意には、医薬として許容される担体を含む。本明細書中に使用される「医薬として許容される担体」は、医薬投与物と適合性があり、また受容者に有害でない、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、などを含む。組成物中に存在する化合物は単離又は精製されてよい。単離化合物は、細胞を乾燥させることにより単離される化合物であってよい。組成物中には、追加的な活性化合物を組み入れることもできる。
【0073】
本発明の組成物はさらに、グラム陰性菌の外膜を損なう少なくとも1種の成分を含んでいてよい。例えば組成物は少なくとも1種のキレート剤、例えば金属キレート剤を含んでいてよい。キレート剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)をランチビオティックスと一緒に使用すると、結果としていくつかのランチビオティックス、例えばナイシンの活性をグラム陽性菌だけから、グラム陰性菌を含むものまで拡張することが知られている(Blackburn他、米国特許第5,691,301号明細書)。キレート剤を本発明の化合物と一緒に使用することは、化合物がグラム陰性菌に対して活性であるためには必要とならない。金属キレート剤の例は、天然及び合成化合物を含む。天然化合物の例は、植物フェノール化合物、例えばフラボノイドを含む。フラボノイドの例は、銅キレート剤カテキン及びナリンゲニン、及び鉄キレート剤ミリセチン及びケセルチンを含む。合成銅キレート剤の例は、例えばテトラチオモリブデートを含み、また合成亜鉛キレート剤の例は、例えばN,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)−エチレンジアミンを含む。合成鉄キレート剤の例は、2,2’−ジピリジル、8−ヒドロキシキノリン、EDTA、エチレンジアミン−ジ−O−ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、デスフェリオキサミンメタンスルホネート(デスフェロール)、トランスフェリン、ラクトフェリン、オボトランスフェリン、生物学的シデロフォア、例えばキサテコレート及びヒドロキサメート、及びクエン酸を含む。好ましくは、キレート剤はEDTAである。
【0074】
本発明の組成物はさらに、少なくとも1種の界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を含んでもよい。非イオン性界面活性剤の例は、グリセロールモノラウレート、スクロースエステル、例えばスクロースパルミテート、ポリソルベート20、TRITON X-100、Isoceteth-20、ARLASOLVE 200L、ラウルアミンオキシド、デシルポリグルコース、Phospholipid PTC、及びMEROXAPOL 105などを含む。
【0075】
本発明の組成物は、静菌/殺菌活性を有する他の物質を含んでいてよい。一例としては、リソスタフィン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、ペニシリン、メチシリンを含むベータ−ラクタム、モキサラクタム及びセファロスポリン、例えばセファクロル、セファドロキシル、セファマンドールナフェート、セファゾリン、セフィキシム、セフィンタゾール、セフォニオイド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタンム、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフォドキシムプロキセチル、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、セファロスポリンC、セファロスポリンCナトリウム塩、セファロシン、セファロシンナトリウム塩、セファロシン二水和物、セファピリン、セフラジン、セフロキシメアキセチル、及びロラカルベフなど、糖ペプチド、抗ブドウ球菌酵素を含む抗菌酵素、例えばムタノリシン、リゾチーム又はセロジルムラミダーゼ、抗菌抗体、他の抗菌ペプチド、例えばデフェンシン、及び他のランチビオティックス、例えばナイシン、スブチリン、エピデルミン、シナマイシン、デュラマイシン、アンコベニン及びPep5を含むバクテリオシンが挙げられる。いくつかの態様では、組成物が局所適用されるときに、これらの薬剤が特に好ましいことがある。
【0076】
組成物は、食品における使用のために許容し得る有機酸、又はこれらの酸の塩を含有してよい。組成物は個々の酸又は塩、又はこれらの混合物を含有していてよい。組成物中に使用するための好ましい有機酸又は塩は、酢酸、酢酸ナトリウム、二酢酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、プロピオン酸、例えばプロピオン酸ナトリウム及びプロピオン酸カリウムを含むプロピオン酸塩、クエン酸又はその塩、例えばクエン酸ナトリウム又はクエン酸カリウム、又はその組合せを含む。
【0077】
患者への投与のための組成物は、薬学分野で知られた方法によって調製することができる。一般には、組成物は、その所期投与ルートと適合性のある投与形態で製剤することができる。投与ルートの例としては、灌流;非経口、例えば静脈内、皮膚内、筋内、皮下;局所、例えば粘膜(例えば鼻腔、舌下、膣、頬、又は直腸)及び経皮;耳;及び口が挙げられる。溶液又は懸濁液は下記成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば投与用の水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はエチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸ナトリウム;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸、又はリン酸塩;電解質、例えばナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオン、及び等張性調節剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロースが挙げられる。pHは、酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムで調節することができる。組成物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与用バイアル内に密閉することができる。
【0078】
組成物は、滅菌水溶液(水溶性)又は分散体、及び滅菌溶液又は分散体を即席調製するための滅菌粉末を含むことができる。静脈内投与の場合、好適な担体は生理食塩水、静菌水、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。組成物は典型的には滅菌組成物であり、そして注射使用に適している場合には、容易な注射可能性が存在する程度に流体であるべきである。これは、製造及び貯蔵の条件下で安定であり、任意には、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されているべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であってよい。微生物作用は、種々の任意の抗菌剤又は抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどによって防止することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことにより、注射用組成物を長期にわたって吸収することができる。
【0079】
所要量の活性化合物(すなわち本発明の化合物)を、必要に応じて、上記に列挙した成分のうちの1種又は組み合わせとともに適切な溶媒中に取り込み、続いて濾過滅菌する。一般に、活性化合物を滅菌ビヒクル中に取り込むことにより、分散体を調製する。滅菌ビヒクルは、塩基性分散媒及び上に列挙したものからの所要の他の成分を含有している。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、このような乾燥は、活性成分と、前に滅菌濾過された溶液からの任意の付加的な所期成分とから成る粉末をもたらす。
【0080】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤又は可食担体を含む。経口治療投与を目的として、活性化合物は賦形剤と合体させ、錠剤又はカプセル剤、例えばゼラチンカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、歯磨き剤として使用するために流体担体を使用して調製することもできる。歯磨き剤は、液体、ペースト、又は粉末、例えばマウスウォッシュ又は練り歯磨きであってよい。医薬的に適合性のある結合剤が、組成物の一部として含まれていてよい。錠剤、丸剤、及びカプセル剤などは、下記成分のいずれか、又は同様の性質を有する化合物を含有することができる:バインダー、例えば微結晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチン;賦形剤、例えば澱粉又はラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel、又はコーンスターチ;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はSterotes;流動促進剤、例えばコロイド二酸化ケイ素;甘味剤、スクロース又はサッカリン;又は香料添加剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味剤。別の態様では、組成物は、本発明の化合物を発現させるトランスジェニック植物であってよい。
【0081】
吸入による投与の場合、活性化合物は、好適な駆出剤、例えばヒドロフルオロアルカンのようなガスを含有する加圧容器又はディスペンサー、又はネブライザーから、エアロゾル・スプレイの形態で供給することができる。
【0082】
局所投与のために、本発明の組成物は、局所に適用することができ、また皮膚及び粘膜の表面内に広がり吸収されるのを可能にする種々の混合物及び組み合わせを含んでいてよい。一例としては、スプレイ、ミスト、エアロゾル、ローション、クリーム、水性及び非水性溶液又は液体、油、ゲル、粉末、軟膏、ペースト、軟膏、エマルジョン及び懸濁液が挙げられる。局所用製剤は、本発明の化合物と、局所用の乾燥、液体、クリーム及びエアロゾル製剤中に一般に使用されるコンベンショナルな医薬用又は化粧品用の希釈剤又は担体とを組み合わせることにより調製されてよい。
【0083】
粉末は、任意の好適な粉末ベース、例えばタルク、ラクトース、及び澱粉などを用いて形成されていてよい。溶液は、水性又は非水性ベースを用いて製剤することができ、そして1種又は2種以上の分散剤、懸濁剤、及び可溶化剤などを含むこともできる。活性化合物の水溶液又は非水溶液又は懸濁液から粘性溶液又はコロイドゲルを形成するのに効果的な分子量及び濃度レベルを有するポリマーを使用して、局所用ゲルを調製することができる。局所用ゲルをそれから調製することができるポリマーは、ポリホスホエステル、ポリエチレングリコール、高分子量ポリ(酪)酸、ヒドロキシプロピルセルロース、キトサン、及びポリスチレンスルホネートなどを含む。
【0084】
例えば水性又は油性ベースとともに、そして好適な増粘剤、ゲル化剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、又は稠度調節剤などを添加することによって、軟膏、クリーム及びローションを製剤することができる。ベースは水、アルコール、又は油、例えば液体パラフィン、鉱物油、又は植物油、例えば落花生油又はひまし油を含む。ベースの性質に従って使用することができる増粘剤は、軟質パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリホスホエステル、ポリ(酪酸)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースガム、アクリレートポリマー、親水性ゲル化剤、キトサン、ポリスチレンスルホネート、ワセリン、羊毛油、水素化ラノリン、及び蜜蝋などを含む。
【0085】
軟膏、ペースト、クリーム、ゲル及びローションは、賦形剤、例えば動物性及び植物性の脂肪、油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛、及びこれらの混合物を含有することもできる。粉末及びスプレイは、賦形剤、例えばケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含有することもできる。溶液、懸濁液又は分散体は、局所適用のためのエアロゾルを製造するために日常的に使用される周知の手段のいずれかによって、エアロゾル又はスプレーに変換することができる。一般に、このような方法は、通常は不活性担体ガスを有する溶液、懸濁液又は分散体の容器を加圧するか、又は加圧する手段を提供し、そして加圧されたガスを小さなオリフィスに通すことを含む。スプレイ及びエアロゾルは、習慣的な駆出剤、例えばクロロフルオロ炭化水素又は揮発性無置換型炭化水素、例えばブタン及びプロパンを含有することもできる。
【0086】
賦形剤は、皮膚吸収を促進する化合物、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、及び脂肪酸の部分グリセリドなどを含んでいてよい。部分脂肪酸グリセリドの一例としては、IMWITOR 742及びIMWITOR 308が挙げられる。局所用製剤は任意には、化粧品受容性を改善するための不活性成分、例えば保湿剤、界面活性剤、香料、着色剤、エモリエント、及び充填剤などを含んでいてもよい。
【0087】
粉末をダスティングするか、エアロゾルを噴霧するか、又は患者又は介護者の指先で、又は例えば綿棒又は布を用いた他のコンベンショナルな塗布により、所望の皮膚部位に軟膏、クリーム、ローション、溶液又はゲルの膜を広げることによって、組成物を直接に投与することができる。製品は先ず皮膚に塗り、そして指先又はアプリケーターで広げるか、又は指先に着けて皮膚に広げることができる。組成物は任意には先ず、局所用アプリケーター、例えば包帯、綿棒、湿潤織布又は不織布などの表面に塗布し、次いでこれを組成物を受容するための皮膚部位に着けることができる。
【0088】
活性化合物は、坐剤(例えば坐剤ベース、例えばココアバター及び他のグリセリド)又は直腸送達のための停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0089】
活性化合物は、身体からの急速な排除に対して活性化合物を保護する担体と一緒に調製することができ、これは例えばインプラントを含む徐放製剤である。生分解性、生体適合性のポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ酪酸を使用することができる。材料は商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液は、医薬として許容される担体として使用することもできる。これらは、当業者に知られている方法に従って調製することができる。
【0090】
例において記載されたランチビオティックスは、動物中に存在する間のビフィズス菌によって発現されるので、本発明の化合物は、動物が食べる食物中の使用を含む、動物における使用に安全且つ好適であると期待される。しかしながら、このような活性化合物の毒性及び治療効力を、例えばLD50(個体群の50%までの致死用量)及びED50(個体群の50%に治療上効果的な用量)を測定するために、細胞培養又は実験動物における標準的な医薬処置によって決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比は治療指数であり、そしてこれは比LD50/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。ランチビオティックスの毒性を評価する方法は当業者に知られており、日常的である。
【0091】
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトを含む動物において使用するための所定の範囲の投与量を製剤する際に使用することができる。このような化合物の投与量は好ましくは、毒性をほとんど又は全く伴わずにED50を含む血中濃度範囲内にあることが好ましい。投与量は、採用される投与形態、及び利用される投与ルートに応じて、この範囲内で変化してよい。本発明の方法において使用される化合物の場合、治療上効果的な投与量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。細胞培養で測定して、IC50(すなわち、兆候を半分から最大限まで阻害する試験化合物の濃度)を含む濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて投与量を製剤することができる。このような情報は、有用な投与量をさらに正確に決定するために使用することができる。
【0092】
組成物が医薬用途又は介護用途のために動物に投与されるような態様の場合、組成物は1日当たり1回又は2回以上から、1週間当たり1回又は2回以上まで、1日置きに1回という回数を含めて投与することができる。当業者に明らかなように、例えば疾患又は障害の重症度、以前の治療、患者の一般的なな健康状態及び/又は年齢、及び存在する他の疾患を含む特定のファクターは、患者を効果的に処理するのに必要な投与量及びタイミングに影響を与えることがある。さらに、本発明の有効量の化合物で患者を治療することは、単回の治療を含むことができ、又は好ましくは、一連の治療を含むこともできる。
【0093】
本発明は、患者特異的な投与形態、並びに患者非特異的な複数回投与形態の両方を含む。患者非特異的な複数回投与形態は、生物テロ攻撃の結果として病原に曝露された個体群から汚染物を除去するのに用いることができる。
【0094】
本発明の組成物は、本発明の化合物を発現させる微生物、例えばBifidobacteriumを含んでいてよい。本発明の化合物を発現させる微生物を含む組成物は、例えば糖マトリックス、脂肪マトリックス、多糖マトリックス、又はタンパク質マトリックス中にカプセル封入することができる。この組成物はコーティングされ、且つ/又は錠剤形態中に組み込まれていてもよい。例えば、カプセル封入、コーティング、及び錠剤形態内への組み込みは、組成物中の微生物のより良好な生残を可能にし、或いは、微生物の大腸へのより良好な送達を可能にする。
【0095】
本発明の化合物を発現させる微生物を含むこのような組成物は動物にしばしば経口投与される。当業者には明らかなように、ビフィズス菌は種々異なる食品中に組み込むことができる。具体的には、本発明のビフィズス菌は、発酵乳製品、例えばヨーグルトを含む固形及び半固形の乳製品中に組み込むことができる。乳製品の他の例は、カッテージチーズ、チーズ、及び粉乳を含む。ビフィズス菌は、ベビーフード中に組み込むことができる。ビフィズス菌を添加することができる飲料は、ミルク、野菜ジュース、フルーツジュース、豆乳、発酵豆乳、及びフルーツ味の乳飲料を含む。
【0096】
使用方法
本発明はまた、本明細書中に記載された組成物の使用方法に関する。これらの方法は例えば、医薬用途、食品用途、介護用途、及びプロバイオティック用途を含む。これらの方法は微生物の成長を防止することを含んでよい。成長防止は、本発明の化合物の静菌活性又は殺菌活性に起因していてよい。微生物はグラム陽性又はグラム陰性であってよい。本発明のランチビオティックスに対して感受性であり阻害され得るグラム陽性菌の一例としては、Streptococcus種、例えばS. agalactiae; Enterococcus種、例えばE. faecalis及びE. faecium; Bacillus種、例えばB. anthracis、B. cereus、B. coagulans、及びB. licheniformis; Listeria種、例えばL. monocytogenes; Staphylococcus種、例えばS. aureus; Streptococcus種、例えばS. agalactiae、S. mutans、S. viridans、S. thermophilus、S. constallatus、及びS. zooepidemicus; Clostridium種、例えばC. botulinum、C. difficile、C. perfringens、C. sordellii、C. tetani、C. sordellii、C. sporogenes、C. tyrobutyricum、及びC. putrefasciens; Actinomyces種、例えばA. israelii及びA. naeslundii; Leuconostoc種;Lactobacillus種;Micrococcus種、Mycobacterium種、Corynebacterium種、Propionibacterium種、Pediococcus種、Peptostreptococcus種、sporolactobacillus種、Brevibacterium種、及びSporolactobacillus種
が挙げられる。
【0097】
本発明のランチビオティックスに対して感受性であり阻害され得るグラム陰性菌の一例としては、腸内細菌科の員、例えばCitrobacter種、Edwardsiella種、Enterobacter種、Erwinia種、Escherichia、例えばE. coli(例えばH7:0157)、Ewingella種、Klebsiella、例えばK. pneumoniae種、Plesiomonas、例えばP. shigelloides種、Proteus、例えばP. vulgaris種、Providencia種、Salmonella種、Serratia、例えばS. marcescens種、Shigella種、及びYersinia、例えばY. enterocolitica及びY. pestis; ビブリオ科の員、例えばVibrio alginolyticus、V. cholerae、V. parahaemolyticus、及びV. vulnificus;及びシュードモナス科の員、例えばPseudomonas aeruginosa、P. anguilliseptica、P. oryzihabitans, P. plecoglossicida, P. fluorescens及びP. syringaeが挙げられる。阻害され得るグラム陰性菌の他の一例としては、Helicobacter pylori; Camplyobacter種、例えばC. jejuni、C. coli、及びC. upsaliensis; Bacteroides種、例えばB. frgilis;Fusobacaterium種、例えばF. necrophorum、F. ulcercans、F. russi、及びF. varium; Leptospira種;Pectobacterium種、例えばP. carotovorum; Pasteurella種、例えばP. multocida、Borrelia種、Legionella種、Neissaria種、Fusobacterium種、及びAgrobacterium種が挙げられる。
【0098】
医薬用途及び介護用途は例えば、微生物の成長を阻害、好ましくは防止するために動物を治療する方法を含む。本明細書中で使用する「治療」及び「治療する」は、微生物の存在から生じる患者の兆候の重症性を防止、治癒、遅延、又は低減するために、且つ/又は兆候を引き起こすおそれのある微生物に既に曝露された患者において、指定の期間にわたって兆候を悪化させないために、本発明の組成物を使用することを意味する。治療は、予防的であってよく、或いは、動物の微生物に対する曝露後に開始されてもよい。予防的治療は、微生物の成長を阻害、好ましくは防止し、これにより、患者が後から微生物に曝露された場合に、状態の兆候を防止又は低減するために、本発明の組成物を使用することを意味する。例えば患者が状態の兆候を明らかにする前に開始される予防的な治療を、本明細書中では、状態を発生させる「リスク」のある患者の治療と呼ぶ。状態を招く微生物に対する患者の曝露後に開始される治療は、結果として、その兆候の重症度を低下させるか、又は兆候を完全に取り除く。
【0099】
本明細書中に使用される「兆候」という用語は、微生物の存在によって引き起こされる状態の、患者における客観的エビデンスを意味する。兆候は、微生物に応じて変化することができる。微生物の存在によって引き起こされる状態の兆候及びこのような兆候の評価は、当業者には日常的であり良く知られている。従って、本発明はまた、動物における微生物感染を治療する方法、及び微生物により引き起こされる状態を治療する方法に関する。本明細書中に使用される「微生物感染」は、微生物による動物における有害なコロニー形成を意味する。
【0100】
これらの方法は、微生物によって引き起こされた感染及び/又は状態の兆候を有する動物に、有効量の本発明の組成物を投与し、そして、感染及び/又は状態の兆候が低減したかどうかを決定することを含む。状態の一例としては、創傷感染、口臭、虫歯、全身感染症、及び皮膚感染が挙げられる。
【0101】
これらの方法は、本発明の組成物を動物に投与することを含んでよい。動物は、微生物により引き起こされる状態に罹りやすいいかなる動物であってもよく、その一例として、脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、又は鳥類が挙げられる。哺乳動物の一例としては、ヒト、ウシ亜科の員、例えばウシ及びバイソン;ヤギ亜科の員、例えばヒツジ及びヤギ;Sus属、例えばブタ及びイノシシ;コンパニオン・アニマル、例えばネコ及びイヌ;及びEquus属の員、例えばウマ及びロバが挙げられる。鳥類の一例としては、家禽、例えば七面鳥、ニワトリ、アヒル、及びガチョウが挙げられる。本発明の組成物は、本明細書に記載された、当業者に知られた方法によって動物に送達し、これにより有効量を動物に提供することができる。本発明のこの態様において、「有効量」は、微生物の成長を阻害し、状態の兆候の顕在化を防止し、状態の兆候の重症度を低減し、且つ/又は兆候を完全に取り除くのに効果的な量である。本発明のいずれの組成物も全ての微生物の成長を完全に阻害すること、又は治療されている状態の全ての兆候を治癒又は排除することは必要とされない。
【0102】
食物用途は、例えば、食物を腐敗させる微生物を阻害することによる食物保存を含む。「食物」又は「食品」という用語は、全ての可食栄養物質及び組成物を含み、人間による消費、並びに例えば家畜による消費のために意図されたものを含む。「食物」及び「食品」は、未処理並びに処理済の、例えば調理済みの栄養物質及び組成物、例えば飲料を含む。「食物中に存在する」という表現は、有害な細菌が住むことができる食品部分、例えば外面、内面、又はその組み合わせを意味する。
【0103】
本発明の組成物は、細菌が成長又は分解しやすい食品と一緒に使用することができる。これらの食品の一例としては、乳製品、果実及び野菜から誘導された製品、穀類及び穀類から誘導された製品、食肉、鶏肉、及び海産物が挙げられる。乳製品の例としては、チーズ、ミルク、クリーム、及び発酵乳製品、例えばヨーグルトが挙げられる。食肉の例としては、部分全体又はこれらから製造された加工肉製品を含む、ハム、牛肉、サラミ、鶏肉、及び七面鳥が挙げられる。他の食品は、インスタント食品、前菜、及び肉、デリサラダ、マヨネーズ、ドレッシング(サラダドレッシングを含む)、ソース及び香辛料、パスタ、スープ、食用油、魚、及び魚加工品、卵製品、飲料、無菌包装食品、並びに前記のものの混合物を含む。
【0104】
本発明の組成物は、ブレンド可能な食品と混合し、且つ/又はブレンド可能な食品上に加えることによって使用することができるが、しかし、固形食品の表面に浸漬、リンス、又は噴霧によって加えることにより、又はこのような製品の内部に例えば注入によって加えることもできる。組成物は、マリネー、衣、擦り込み用調味料、煮汁、及び着色剤混合物などとして、又は食品と混合され食品中に組み込まれるべき成分として加えることができる。さらに他の態様の場合、組成物を食品包装材料、例えばケーシング又はフィルムに加え、その後、組成物が食物外面と接触するようにパッケージを食物表面に着けることにより、組成物を食物表面と間接的に接触させることができる。使用されるべき最適量は、処理されるべき特定の食品、及び組成物を食物及び/又は食物表面に加えるために用いられる方法に依存するが、しかし日常試験によって決定することができる。
【0105】
本発明の組成物のプロバイオティック用途は、例えば、本発明の化合物を発現させる微生物、好ましくはBifidobacteriumを、栄養補助食品として、又は食物成分として使用することを含む。栄養補助食品としてのビフィズス菌の使用は当業者に知られており、日常的である。典型的には、本発明の化合物を発現させるビフィズス菌は、これを必要とする動物に投与される。Bifidobacteriumは、生物学的に純粋な培養物として、又は混合培養物として投与することができる。本明細書中に使用される「混合」培養物は、Bifidobacteriumと、少なくとも1種の他の微生物、好ましくは原核微生物、より好ましくは第2のBifidobacteriumとを含有する培養物である。
【0106】
本発明の1つの方法は、本発明の化合物を発現させるBifidobacteriumを動物に投与することにより、動物の胃腸管、好ましくは大腸内の微生物の複製を阻害することを可能にする。この方法は、阻害されるべき微生物の胃腸管内の存在を測定することを含み、この場合、Bifidobacteriumの投与後に動物内の微生物の存在が減少することは、動物の胃腸管内の微生物の複製が阻害されたことを示す。
【0107】
その複製を阻害することができる微生物のタイプは、Bifidobacteriumが投与されたときに動物の胃腸管内に存在する微生物であり、また、Bifidobacteriumが投与された後に胃腸管に導入される微生物である。こうして、本発明の化合物を発現させるBifidobacteriumは、動物の胃腸管内の微生物の確立を阻止する方法において使用することもできる。
【0108】
別のプロバイオティック用途は、動物中にBifidobacteriumフローラを確立する方法を含む。このようなフローラは、胃腸管内のフローラとして自己を確立する他の微生物の能力を競合的に阻害すると期待される。この方法は、本発明の化合物を発現させるBifidobacteriumを動物に投与することを含む。この方法はまた、投与後の所定の時間にわたって、Bifidobacteriumの胃腸管内の存在を測定することを含む。Bifidobacteriumフローラは、便1グラム当たり少なくとも106個のBifidobacteriumがある場合には、動物中に確立されると考えられる。好ましくは、動物は、青年又は成人、又は未熟児、早生児又は成熟児を含む幼児である。この方法は、健常の人体内に、そして、例えば下痢によって、又は抗生物質療法又は化学療法を含む薬物治療によって変えられた正常な腸内フローラを有したことがある人体内にBifidobacteriumフローラを確立するために用いることができる。
【0109】
本発明を下記例によって説明する。言うまでもなく、具体的な例、材料、量、及び手順は、本明細書に示された本発明の範囲及び思想に従って、幅広く解釈されるべきである。
【実施例】
【0110】
例1
ビフィズス菌は、主として、母乳で育てられている乳児の便において有力に支配することを理由として、良好な腸内健康と関連することがしばしば提唱されている。しかしながら、外生的なビフィズス菌に関する臨床摂食研究は、これらが腸内には残らないことを示し、ビフィズス菌は腸外部で成長すると、競合的適応を失うことがあることを示唆している。
【0111】
ビフィズス菌培養物中に発生しているかもしれない遺伝子減衰をさらに理解するために、我々は、腸内単離体である、ラボラトリーで最小培養された(20世代未満)ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum) DJO10Aの完全ゲノム配列を獲得し、そしてこれを培養収集菌株B. longum NCC2705の完全ゲノム配列と比較した。この比較は、菌株DJO10A内の17個の固有DNA領域、及び菌株NCC2705内の6つの固有DNA領域の存在を除いて、高い配列同一性を示す共線的ゲノムを明らかにした。これらの固有領域の大部分が種々の機能を有するタンパク質をコードするのに対して、DJO10Aゲノムから8つ、そしてNCC2705から1つが、ヒト腸内環境に関する種々の形質、具体的にはオリゴ糖及びポリオールの利用、ヒ素耐性、及びランチビオティックス生成に関与すると予測される遺伝子クラスターをコードした。これらの固有領域のうちの7つは、ベース偏差指数分析によって、菌株NCC2705から正確に欠失していることが示唆され、そしてこれは、同じ遺伝子座でNCC2705のゲノム中にまだ残っている領域のうちの1つの内部からのDNA残存物によって実証される。ゲノム領域のこのようなターゲットされた損失は、1,000世代にわたるラボラトリー内の腸内B. longumの成長が2つの大型欠失をもたらし、NCC2705に対する予測欠失事象と類似して、一方の欠失がランチビオティックスコード領域に生じたときに、実験により立証された。模擬便成長研究が、Clostridium difficile及びE. coliに対するこの欠失菌株の著しく低減された競合能力を示した。欠失領域は、ゲノム内部で過剰活性であることが実験により実証されている2つのIS30要素間にあった。他方の欠失領域は、可動性インテグレーゼ・カセットと称される新規クラスの可動因子と境を接した。これらの可動性インテグレーゼ・カセット(MIC)は、ゲノム欠失事象においてこれらの要素の考えられ得る役割を実証する。
【0112】
可動因子によってしばしば促進されるゲノム領域の欠失は、ビフィズス菌が発酵環境に極めて迅速に適応させ(1,000世代当たり2ゲノム欠失)、そして腸内における競合能の付随的な喪失をもたらす。
【0113】
結果及び考察
最小培養されたB. longum菌株のゲノム配列決定。比較ゲノミクスの威力は、種が生息地内で生存競合するのに重要な特徴を知る上での手がかりとなる。培養収集菌株B. longum NCC2705のゲノム配列(Schell他, 2002, Proc Natl Acad Sci USA, 99: 14422-14427)が利用可能であり、このゲノムを、in vitroで意図的に最小培養された菌株からのゲノムと比較する能力は、人間の大腸に由来するこの顕著な種にとって重要であり得る特徴を知る上での手がかりとなる。新たに単離され最小培養されたB. longumは特徴付けされ、そしてシデロフォアの生成を介して他の細菌を静菌的に阻害するその顕著な能力に基づいて菌株DJO10Aが選択され(O'Sullivan, 米国特許第6,746,672号明細書)、出現した特徴は、分析された全ての培養保存収集物び商業的なビフィズス菌において減衰した。従って、これは腸内のその起源から最小限の減衰を有するような単離体として、ゲノム配列決定のために選択された。この菌株の完全ゲノム配列は解読され、以前に記載されたとおり、1つの環状染色体と2つのクリプティック・プラスミド、pDOJH10L及びpDOJH10Sとから成った(Lee及びO'Sullivan, 2006, Appl Environ Microbiol 2006, 72:527-535)。
【0114】
B. longum DJO10Aゲノムの一般的な特徴。B. longum DJO10Aの染色体は、2,375,792bpを含有し、60.15%のG+C含有率、及び4つのrRNAオペロンを含有する1,990個のコード遺伝子、58個のtRNA、6つの挿入配列(IS)群、並びに1つのプロファージを伴った(表1)。そのゲノム特徴は、これが余剰のtRNA_Ser:プロファージ上でコードされたGCTを含有していること以外は、菌株NCC2705と類似した(Ventura他, 2005, Appl Environ Microbiol 2005, 71: 8692-8705)。コドン使用頻度分析は、このtRNAが最も頻繁に使用される、プロファージ内のtRNA_Serであるのに対して、B. longum DJO10Aゲノムの場合には、これは最も多く使用されるtRNA_Serではないことを示した(表2)。これはプロファージ上のその存在に対する進化的選択圧を指摘する。両ゲノムはアミノ酸毎にtRNAを含有するのに対して、アスパラギン及びグルタミン双方に対するアミノアシル−tRNAシンテターゼの対応遺伝子は失われており、これは多くの他の細菌と同様の、これらのアミノ酸を用いた代替翻訳経路への依存を示唆している(Skouloubris他, 2003, Proc Natl Acad Sci USA 2003, 100:11297-11302, Min他, 2002, Proc Natl Acad Sci USA 2002, 99: 2678-2683)。これらの双方の代替経路は、両ゲノム内に存在するgatABCに関与し、また、gltX及びaspSが、それぞれグルタミン代替翻訳経路及びアスパラギン代替翻訳経路に関与する。このことは、この提議された翻訳ルートを実証する。興味深いことに、B. longumゲノムは、逆方向反復によってフランキングされた3つの異なる隣接インテグレーゼと、2つのIS3型IS要素によってサンドイッチされたパリンドローム構造とから成る新規の可動性インテグレーゼ・カセット(MIC)を含有している(図1)。B. longum NCC2705のゲノム分析は、菌株DJO10Aに対して非線形に配置された3つの類似のMICデータ要素を明らかにした。このことはこれらの要素が確かに可動性であることを示す(図9)。興味深いことに、別のBifidobacterium種、B. adolescentis(GeneBank AP009256)、並びに他の腸内細菌、Bacteroides (AE015928)、Lactobacillus (CP000033)、及びE. coli (U00096)のゲノム配列の分析はMIC要素を明らかにしなかった。このことは、これらの構造が、密接に関連するビフィズス菌のサブセットに対して固有であり得ることを示唆している。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
複製の始点及び終点の編成。菌株DJO10Aのゲノム、及び菌株NCC2705の更新ゲノム配列中の同一位置に、oriC及びterCが見いだされた(図9)。これらの領域は両ゲノムにおいて極めて高度に保存され(>99.9%同一性)、そして3つのoriCクラスターと、他の細菌・ゲノムからの予測複製領域と一致するterCとから成る(Mackiewicz他, 2004, Nucleic Acis Res 2004, 32:3781-3791)。しかしながら、両ゲノム中の観察されたoriC領域の位置は、ゲノム非対称{Helicobacter pylori 26695ゲノムに以前に見いだされた特徴(Mackiewicz他, 2004, Nucleic Acis Res 2004, 32:3781-3791, Zawilak他, 2001, Nucleic Acids Res 2001, 29: 2251-2259)}に基づく予測位置とは僅かに異なる。複数のoriCクラスターと同様に、配列決定されたゲノムの大部分と一致する7つの異なるタイプのDnaAボックスが存在し、これらは、染色体複製の開始を制御するのに関与すると提議されている(Mackiewicz他, 2004, Nucleic Acis Res 2004, 32:3781-3791)。
【0118】
制限・修飾(R−M)系。R−M系が細菌に与える保護的な役割を、より高次の有機体の免疫系と比較した(Price及びBickle, 1986, Microbiol Sci 1986, 3:296-299)。多数の細菌中にこれらの系が存在することは、これらが細菌の自然界における生存のための重要な役割を果たすことを示している。B. longumゲノムの双方は、高保存されたI型及び2つのII型のR−M系をコードする(図10)。これらはまた、両菌株の間に100%保存されたメチル化DNA(通常はHhaII又はPStIメチル化DNA)を制限することが予測されるMrr系を含有している(図10A)。I型R−M系を有するMrrのクラスター形成は、E. coli K12(GenBank U00096)と同様である。2つの菌株内のHsdSタンパク質間の低い同一性(40%)は、進化的分岐に続く、これらの菌株内のこのI型R−M系の独立した進化を反映していると思われる。それというのも、これらの系は、異なる配列を認識するのを可能にするために、系の特異性成分(HsdS)を変化させることによって進化するからである。このことは、IS256挿入事象によって不活性化されたhsdS遺伝子の存在によって実証され、この破壊された遺伝子の両部分は著しく高い保存を示す。このことは挿入事象が進化的分岐の前に発生したことを示唆する(図10A)。菌株DJO10Aにおけるこの遺伝子座から上流には、別の制限遺伝子McrA(HpaII又はSssIによってメチル化されたDNAを制限する)があり、これは、NCC2705中には存在しない。両菌株内の保存されたII型R−M系は、極めて頻繁に発生する部位でDNAを制限するSau3AI及びEcoRIIのイソシゾマーである(図10B及び10C)。これは、存在する制限系の範囲とともに、これらの細菌内への外来DNAの侵入を制限する上でのファクターとなり、ひいては、今日までビフィズス菌に関して報告された極めて低いエレクトロポレーション頻度の説明となる。
【0119】
B. longum菌株内の固有ゲノム領域。B. longum DJO10Aのゲノム配列と、菌株NCC2705のゲノム配列とをアラインメントすることにより、これらが可動性のIS及びMIC要素を除いて、高保存されており、そして共線的であることが示される(図9)。遺伝子水平移動機会がない、そして後続の欠失前に突然変異を蓄積する冗長な遺伝子がない安定な環境内で成長する微生物に対して以前に観察されたものと一致する、菌株NCC2705内の見掛けゲノム低減も生じる(Nilsson他, 2005, Proc Natl Acad Sci USA 2005, 102:12112-12116)。2つのゲノム間に、>10bpの248個の固有配列があり、これらの大部分は短く、もし遺伝子があるならばいくつかをコードする。2つの菌株間のこのような多数の固有配列は、Mycobacterium tuberculosisの臨床単離体のゲノム及びラボラトリー内で数十年にわたって広範囲に継代された単離体のゲノムは、2倍のサイズのゲノム中にこのような領域を86個しか示さないことを考えると、驚くべきものであった(Fleishmann他、2002, J Bacteriol 2002, 184;5479-5490)。機能遺伝子及び仮想遺伝子をコードするサイズ3.0〜48.6kbの23個の大型固有領域があり、これらの固有領域のうちの17個は、219個の予測遺伝子をコードする菌株DJO10A内に存在し、またNCC2705内の6つの固有領域は84個の遺伝子をコードする(図2A)。これらの領域は、種内変位領域と以前に関連付けられたoriC及びterCの周りでは、クラスター形成されない(Berger他, 2007, J Bacteriol 2007, 189; 1311-1321, Molenaar他, 2005, J Bacteriol 2005, 187: 6119-6127)。
【0120】
各ゲノム内の1つの固有領域はプロファージに相当する。この分析は最近の細胞水平移動(HGT)事象を予測することから、菌株NCC2705内の切断されたプロファージは、ベース偏差指数(Base Deviation Index)(BDI)ピークと相応しないため、ゲノムの長時間滞在体であるように見える。このプロファージは、菌株DJO10Aのゲノム内で、完全且つ誘導性の、異なるプロファージと置き換えられているように見え(Lee及びO'Sullivan, 2006, Appl Environ Microbiol 2006, 72:527-535)、そしてこの最近のHGT事象を実証する有意なBDIピークと相応する。菌株NCC2705内の他の5つの固有領域は、いかなる有意な遺伝子クラスターも有さずに、大部分が仮想遺伝子、又は種々の機能の遺伝子を含有している。しかしながら、これらの領域のうちの1つ(固有領域4’)は、推定上のキシラン分解遺伝子をコードする。これは、大腸内の競合にとって重要であることが予測される機能である。この領域はBDIピークに相応するので、これは、この菌株によって最近獲得されたものかもしれないことを示唆しており、大腸内のその進化が、この固有領域を獲得するための選択圧を提供することになる。菌株DJO10A内の他の16個の固有領域のうち、8つは、大腸内の競合にとって重要であることが予測される機能、具体的にはオリゴ糖及びポリオールの利用、ヒ素耐性、及びランチビオティックス生成に関与する有意な遺伝子クラスターをコードする。
【0121】
オリゴ糖及びポリオールの利用。COG機能分類(Tatusova他, 2000, Nucleic Acids Res 2000, 28:33-36)に従って、予測された機能を有する菌株DJO10A内の最大数の固有遺伝子が、炭水化物代謝[G]カテゴリーに所属する(表3)。興味深いことに、炭水化物代謝カテゴリー内の固有遺伝子のほとんどが、オリゴ糖利用に関与する。オリゴ糖は、大腸内の微生物が利用できる主要な炭水化物源である。菌株DJO10A内には、全部で11のオリゴ糖利用遺伝子クラスターがあり、そのうち5つは菌株NCC2705内に完全に存在し、2つは部分的に存在する(図11)。注目すべきは、これらのクラスターのうちの1つ(図11のクラスター7)が、菌株DJO10A内の余剰オリゴ糖利用遺伝子の正確な位置に、NCC2705ゲノム内のISL3要素を含有することである(図3)。BDI分析は、菌株DJO10A内の余剰オリゴ糖遺伝子クラスターが、いずれもBDIピークと相応しないため、菌株NCC2705からの進化的分岐に続いては獲得されないことを示唆した(図2A)。最近のHGT事象を示唆するBDIピークの大部分はこの分析を実証する両ゲノムにおいて同じであった。このことは、オリゴ糖利用遺伝子をコードする6つの固有領域6,9,10,11,15及び17が、発酵環境への適応中に、菌株NCC2705から失われたらしいことを示唆する。菌株NCC2705からこれらの固有領域が失われた更なる証拠は、NCC2705内のこの遺伝子座に残されたままである固有領域1内部のushA遺伝子に由来する361bp(98%同一性)のDNA残存物から得られる(図2B)。
【0122】
【表3】
【0123】
ポリオールは、人間によって消化することができず、これらの代謝は人間の大腸内の細菌競合にとって重要であると考えられ、これらの摂取は増大するビフィズス菌数と関係している(Gostner他, 2006, Br J Nutr, 95:49-50)。菌株NCC2705がポリオール代謝に関与する遺伝子を含有しないのに対して、菌株DJO10Aの固有領域13は専らこのために働き(図4)、ポリオール認識、輸送及び脱水に関与する遺伝子を含有しており、また固有領域11内にはいくつかのポリオール代謝遺伝子がある。固有領域13がBDIピークと一致する(図2A)ことを考えると、これは菌株DJO10Aによる遺伝子獲得を表すと言える。興味深いことに、同様のポリオール遺伝子座が、B. adolescentis ATCC 15703内の同様のゲノム位置に見いだされた(図4)。
【0124】
ヒ素耐性。菌株DJO10A内の他の固有領域が、人間の腸内での生残及び競合にとって重要となる特徴に関与すると予測された遺伝子クラスターをコードする。ATP依存性ヒ素耐性遺伝子をコードする2つのオペロンは、固有領域5及び7内にあり、そして腸内生残にとって重要であり得る。それというのも、人間の腸は食事からの低濃度のヒ素を含有しているからである(Ratnaike 2003, Postgrad Med J 2003, 79:391-396)。多くの腸内細菌、例えばE. coli、Lactobacillus及びBacteroidesがヒ素耐性遺伝子を含有している(図5A)。このことは腸内にこのような能力を有することの競合上の利点を実証する。これらのヒ素耐性遺伝子を含有する固有領域5及び7がBDIピークに相応しないので(図2A)、これは、これらの遺伝子を菌株DJO10Aによって最近獲得されることはなく、むしろ、菌株NCC2705から失われ得ることを示唆する。純粋培養発酵環境への適応は結果としてヒ素耐性の損失を招くというこのような理論はさらに、発酵適応ビフィズス菌単離体(B. animalis亜種lactis BB12)よりも2,000%大きい、そしてE. coli K12よりも100%大きい菌株DJO10Aの例外的なヒ酸塩耐性によって実証された(図5B)。このことは、この表現型が腸内単離体に競合上有利であるが、しかし純粋培養発酵環境にとっては重要ではないことを示唆する。
【0125】
ランチビオティックス生成。抗菌ペプチド又はバクテリオシンの生成は、自然環境内の細菌競合にとって重要な特徴である。バクテリオシンの1つの例外的に広いスペクトルのクラスは、ランチビオティックスであり、これらのランチビオティックスは、ランチオニン残基を形成するために翻訳後修飾され、そして今日まで、ビフィズス菌から単離されたものはない。ランチビオティックスを示す遺伝子全てをコードする10.2kb遺伝子クラスターが、菌株DJO10Aの固有領域12内で検出された(図6A)。なお、この固有領域はBDIピークに相応しなかった。このことは、この領域が菌株NCC2705から失われたらしいことを示唆する。ランチビオティックス生成は、腸内の微生物競合にとっては極めて有利であるが、純粋培養における微生物には価値がないので、菌株NCC2705からのこの固有領域12の損失に対して選択圧を与える。
【0126】
発酵環境内のB. longumのゲノム減衰。菌株NCC2705から失われたと予測される菌株DJO10Aのゲノム内の多数の固有DNA領域を考えると、これは、有用ではないDNA領域の欠失が、人間の大腸内に存在するのとは著しく異なる、新しい環境へのB. longumの迅速な適応を反映することを示唆する。このことは、突然変異頻度の上昇を示唆する。菌株DJO10AとNCC2705との間の比較ヌクレオチド置換分析は、遺伝子の大部分が高保存されていることを示す(図12)。このことは密接に関連する2つの菌株を用いて予期することができる。しかし、52個の最小保存遺伝子(図12では「正選択」として挙げた)の分析は、一方の菌株又は他方の菌株に起因し得る突然変異(フレームシフト、欠失、挿入、及び停止変異)のうち、11種が菌株NCC2705から生じ、そして3種が菌株DJO10Aから生じることを示している(表4)。菌株NCC2705において増大する突然変異頻度は、2つの菌株の間の表面タンパク質ホモログをコードする遺伝子を比較することから、さらに実証される。細胞表面アンカリング・タンパク質の1クラスの特徴であるLPXTGモチーフに対応するDJO10Aゲノムを探索することにより、4つの潜在的なタンパク質が見いだされ、そしてこれらのタンパク質(BLD1468、BLD1511、BLD1637及びBLD1638)のSignalP分析は、各事例におけるシグナル配列の存在を確認した(図13の追加ファイル10)。加えて、これらの4つのタンパク質のBLASTP分析は、これらがLPXTGモチーフを含有する他の既知の表面タンパク質に極めて類似していることを示した。NCC2705は、これらの遺伝子ホモログのうちの3つ(BLD1468、BLD1637及びBLD1638)を示し、そしてBLD1511に対して99%アミノ酸同一性を示す予測タンパク質を有したが、しかし、遺伝子の3’末端にISL3が挿入されることに起因してLPXTGモチーフを欠いていた。このことはさらに、ビフィズス菌が人間の腸から純粋培養発酵環境内に移されたときの、ビフィズス菌の迅速な進化状態を強調する。
【0127】
【表4】
【0128】
B. longumゲノム内のIS30「ジャンピング」。発酵環境内のB. longum細胞内部の動的環境は、さらに、異なるDNAバッチからのゲノム配列決定中に、
いくつかのIS要素の位置を除いてどれも同一であるという興味深い観察によってさらに実証される(図7A)。細胞内部のIS要素のこのような極めて迅速な運動は、以前には観察されたことはなかった。ゲノム内部のIS30の運動は、その挿入ターゲット特異性と一致して、特定部位でだけ発生した(Olasz他, 1998, Mol Microbiol 1998, 28; 691-704)。
【0129】
純粋培養環境へのB. longum DJO10Aの適応。腸のような変化しやすい複雑な環境から、比較的安定な単純化された純粋培養環境へ切り換える結果、過剰IS30活性、及び新しい環境にはもはや有益ではない領域の迅速なDNA損失をもたらすという仮説をテストするために、菌株DJO10Aを、ほぼ1,000世代にわたってpH制御なしに典型的なラボラトリー培地中で成長させた。次いで、人間の腸内に生き残るのに有用であることが予測される機能をコードする7つの固有領域に対して単離コロニーをスクリーニングした。ランチビオティックス生成に関与するこれらの領域のうちの1つ(12番)が、単離体の40%から欠けていることが判り(図14)、この仮説を実証した。この適応済菌株DJO10A-JH1の分析は、菌株NCC2705と極めて類似する、全ランチビオティックス領域にわたって広がる欠失を示す(図6A)。パルスフィールド電気泳動(PFGE)を用いてさらに注目されるのは、この領域を含有する39.9kbのXbaIバンドが菌株DJO10A-JH1から欠けていることである(図6B)。培養物の40%から完全ランチビオティックス遺伝子クラスターが失われていることは興味深い。それというのも、クラスターはまた、ランチビオティックス活性から細胞を保護するために免疫遺伝子をコードするからである。しかしながら、菌株DJO10Aによるランチビオティックス生成の分析は、ブロス培地内の成長中に何も生じないことを示し、また、化膿連鎖球菌からのストレプチン生成(Wescombe及びTagg, 2003, Appl environ Mcrobiol 2003, 69:2737-2747)と同様に、生成には固形表面、例えば寒天が必要であった(図6C)。完全ランチビオティックス遺伝子クラスターの損失は、菌株DJO10A-JH1をこのプロナーゼ−E感受性ランチビオティックスに対して感受性にする。プロナーゼ−E感受性ランチビオティックスもまた、広範囲の細菌に対して活性である(図6C)。興味深いことに、純粋培養環境に対する菌株DJO10Aの適応中に欠失するランチビオティックス・ゲノム領域は、2つのIS30要素間に配置された。これはゲノム欠失事象におけるその役割を示唆している。
【0130】
また、純粋培養適応菌株DJO10A-JH1が、140.7kbのXbaIバンドを欠いていることも注目された(図6B)。このバンドが4つのMIC要素のうちの1つを含有していることは興味深く、これが関与したかもしれないことを示唆する。このMIC要素とすぐに境を接する遺伝子座のPCR分析は、この要素からすぐ下流に10〜50kbで延びる欠失を明らかにした。このことはこの欠失事象における要素の考えられる役割を実証する。このことはさらに、DNAの迅速な損失、及びこれらの細菌による進化的適応中の、可動因子の顕著な役割を実証した。
【0131】
菌株DJO10A及びDJO10A-JH1のサザン・ハイブリダイゼーションは、純粋培養環境内での成長中におけるIS30「ジャンピング」を実証する一方、他のIS要素(IS21、IS256及びISL3)の位置は安定のままである(図7B)。B. longumにおけるこのIS30の過剰活性は、欠失事象及び新しい環境に対する適応中のゲノム低減に重要な役割を果たすことができる。
【0132】
適応B. longum菌株DJO10A-JH1の競合的「フィットネス(適応)」。発酵条件における純粋培養成長中にB. longum DJO10Aが被る迅速なゲノム低減は、ゲノム領域の損失が腸内の競合にとって重要であることを示唆した。このin vitro適応が菌株の「適応」に影響を与えるかどうかを試験するために、模擬便競合アプローチを開発した。ビフィズス菌は、腸内環境においてクロストジリウム及び腸内細菌の員と成功裡に競合することがしばしば提議される。これらの両細菌群の一員を、B. longum DJO10A及びそのin vitro適応誘導体DJO10A-JH1の相対競合能力を試験するために選択した。選択された競合菌株が決して減衰しないことを保証するために、選択培地上で平板培養することにより、新鮮な便から新しい単離体を得、そして、16SrRNA遺伝子の配列分析を用いて種形成した。その結果、Clostridium difficile DJOcd1及びE. coli DJOec1を単離し、これらは、B. longum菌株を用いた便競合試験を受ける前に、最小培養された。in vitro成長速度分析は、E. coli DJOec1が最も速い成長速度を有し、これにC. difficile DJOcd1、B. longum DJO10A−JH1及びB. longum DJO10Aが続くことを立証した(図15)。菌株DJO10Aと比較してB. longum DJO10A−JH1の成長速度が著しく高いことは、菌株DJO10A-JH1のゲノム低減がin vitro成長環境を好むことを実証した。
【0133】
模擬嫌気性便環境中でE. coli DJOec1及びC. difficile DJOcd1の双方を用いた競合成長試験は、B. longum DJO10Aが、E. coli及びC. difficileの双方と競合するための著しく高い能力を有することを明らかにした(図8)。B. longum DJO10Aによってこれら両細菌群が著しく低減したことは、純粋培養成長時に示されたゲノム低減が、その元の環境における細菌の競合能力を犠牲にするというゲノム分析仮説を支える。
【0134】
模擬便競合研究は、ランチビオティックスをコードするゲノム領域が、人間の腸内の競合にとって重要であることを示唆したのに対して、この仮説を検証するために、腸内モデルにおけるin vivo研究が必要となる。
【0135】
方法
細菌の菌株及び成長条件。ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株DJO10Aを、健常な若い成人の便から単離し(Islam, 2006, MS thesis. University of Minnesota, Department of Food Science and Nutrition)、B. animalis亜種lactis BB12をChr. Hansen(デンマーク国)から入手した。B. animalis亜種lactis菌株S1、S2及びS14は、発酵食品からの遺伝子的に区別可能な単離体である。Clostridium difficile DJOcd1は、Clostridium difficile Selective Agar(BD Diagnostics)上で平板培養することにより、新鮮な便から単離し、その16S rRNA遺伝子の配列分析によって種形成した。E. coli DJOec1は、MacConkey寒天(Difco)上で平板培養することにより、新鮮な便から単離し、その16S rRNA遺伝子の配列分析によって種形成した。E. coli K12をAmerican Type Culture Collection (ATCC)から入手した。BBL Anaerobicシステム(BBL)又はBactron II Anaerobic/Environmental Chamber (Sheldon Manufacturing)を使用した嫌気性条件下で、0.05%L−システインHCl(Sigma)を補足したMRS(Difco)、ビフィズス菌低鉄培地(BLIM)(Islam, 2006, MS thesis. University of Minnesota, Department of Food Science and Nutrition)又はビフィズス菌発酵培地(BFM)(2%プロテオーゼ・ペプトン、0.15%K2HPO4、0.15%MgSO4・7H2O、0.5%D−グルコース)中で37℃で、ビフィズス菌を培養した。
【0136】
ゲノム配列決定及びアセンブリ。全ゲノム・ショットガン配列決定を、US Department of Energy Joint Genome Institute (JGI)で行った。Phred/Phrep/Consedソフトウェアを使用して配列を227コンティグに集成し、配列カバレージは9.2倍であった。ギャップ閉鎖及びゲノム配列終了を、TermoFidelase-Fimer直接ゲノム配列決定技術を用いてFidelity Systemsで実施した(Slesarev他, 2002, Proc Natl Acad Sci USA, 99:4644-4649)。A5、A6及びA7遺伝子座をカバーするIS30要素を有する、そして有さないショットガン読み取り値を同定し、別々に集成した。ゲノムDNA試料中の長い反復配列の存在及び位置を、固有/反復ジャンクションの直接ゲノム配列決定によって検証した。ストランド置換能力が高められたハイブリッドTopoTaq DNAポリメラーゼで増幅されたPCR生成物を配列決定することにより、最も複雑な高GC豊富反復を分解した。
【0137】
生物情報分析。全ての予測遺伝子をマニュアルでチェックする前に、Glimmer, GeneMark, JGI注釈ツール及びGAMOLA (Altermann他, 2003, OMICS 2003, 7:161-169)を使用して、全てのオープン・リーディング・フレーム(ORF)の注釈を実施した。MUMmer3、ACT4及びClustalXを使用して、2つのB. longumゲノムを比較分析した。OriLoc (Frank及びLobry, 2000, Bioinformatics 2000, 16:560-561)を使用して、複製の始点及び終点を予測した。General Codon Usage Analysis (GCUA)プログラム(McInerney 1998, Bioinformatics 1998, 14: 372-373)を用いて、コドン使用頻度を分析した。Artemis8のスケーリングされたχ2分析によって、ベース偏差指数(BDI)を実施した。遺伝子機能を予測するために、GAMOLA及びInterProScanの2つの保存タンパク質ドメイン・データベースを使用した。両B. longumゲノム配列内の全ての遺伝子を機能分類するために、COG機能カテゴリーを使用した。
【0138】
分子技術。Big-Dyeターミネーター及びABI Prism 3730x1 Autoシーケンサー(Applied Biosystems)を使用して、一般的な配列決定を行った。全てのPCRプライマーを表5に挙げる。固有領域12のサザンブロット分析のために、LANT−F及びLANT−Rプライマーを用いたPCRによって、lanM遺伝子に由来する646bpプローブを得た。IS要素のためのプローブもPCR増幅した。プローブにDIGを標識付けし、これを、製造業者の指示書(Roche)に従って、消化されたゲノムDNAとハイブリッド形成した。製造業者の指示書(Bio-Rad)に従ってCHEF-DR III Variable Angle Pulsed Field Electrophoresis Systemを使用して、XbaIで消化されたB. longumゲノムのパルスフィールドゲル電気泳動を実施した。
【0139】
【表5】
【0140】
2つのB. longumゲノムの間の遺伝子ホモログの同定。Nei及びGojoboriのアルゴリズム(Nei及びGojobori, 1986, Mol Biol Evol 1986, 3:418-426)による比較ヌクレオチド置換分析を利用して、遺伝子ホモログを同定した。NCBIツールキット内のローカルBlastNプログラムを使用して、両ゲノム配列の予測遺伝子を比較し、そしてNeiの重み付けなしの方法I(Nei及びGojobori, 1986, Mol Biol Evol 1986, 3:418-426)によるヌクレオチド置換分析のために1,590個のアライニングされた遺伝子を使用した。dN:dSの比に従って、マッチングされた全ての遺伝子を3つのグループ、すなわち高保存(<0.035)、基準、及び正選択(>1)に分類した。
【0141】
ヒ素の最小阻害濃度。ヒ素の最小阻害濃度を測定するために、BLIMに異なる濃度の亜ヒ酸ナトリウム(AsO2−、1〜100mM)及びヒ酸ナトリウム(AsO3−、1〜500mM)を補足した。成長したばかりの培養物を亜ヒ酸塩/ヒ酸塩培地内に副次接種し、そして48時間にわたって37℃で嫌気的にインキュベートした。
【0142】
in vitro発酵条件へのB. longum DJO10Aの適応。B. longum DJO10AをBFM中で連続的にほぼ1,000世代まで成長させた。次いで培養物を連続希釈し、BFM寒天上に平板培養した。10個のコロニーを分析のためにランダムに選択した。
【0143】
菌株DJO10A−JH1における欠失のマッピング。菌株DJO10A−JH1ゲノムにおけるランチビオティックス・オペロンの欠失の正確な位置を見いだすために、ランチビオティックス・オペロン内部のいくつかの遺伝子を試験するためにPCRを用いた。2つのプライマーF3(位置1,974,570-1,974,587 bp)及びR3(位置1,996,024-1,996,005 bp)を使用することにより、欠失位置に跨るほぼ1.8kbの領域を増幅し、そして配列決定により、正確な境界の位置を特定した(図6)。140.7kbのXbaIフラグメント内の欠失位置をマッピングするために、プライマーMIC−F1(位置1,539,767-1,539,768 bp)及びMIC−R1(位置1,542,535-1,542,553 bp)を使用することにより、MIC IIIの上流領域を増幅し、そしてプライマーMIC−F2(位置1,543,406-1,543,424)及びMIC−R2(位置1,545,713-1,545,732)を使用することにより、下流領域を増幅した。
【0144】
ランチビオティックス活性のバイオアッセイ。B. longum DJO10Aを、MRS寒天プレートの中心に接種し、そして2日間にわたって37℃で嫌気的にインキュベートした。インキュベーション後、1%の指示菌を含有する同じ培地から成る融解0.5%トップ寒天を、インキュベーション前にプレート上に被せた。
【0145】
ビフィズス菌の模擬便競合分析。野生型B. longum DJO10Aの競合「フィットネス(適応)」を、その適応誘導体菌株DJO10A-JH1と比較して評価するために、模擬in vitro便系を開発した。各菌株毎に3部の試験を用いた。各試験は、0.38gの強化クロストリジウム培地(RCM)及び0.02gのムチン(ブタIII型胃)が添加された嫌気チャンバ内の10g滅菌便中で行った。2種の競合細菌をE. coli DJOec1の場合には計算濃度1.2x107cfu/gで、またClostridium difficile DJOcd1の場合には計算濃度5.1x107cfu/gで、全ての管に添加した。B. longum DJO10Aを計算濃度4.0x107cfu/gで、3つの管に添加し、そして菌株DJO10A−JH1を計算濃度4.4cfu/gで、他の3つの管に添加した。標準生菌平板計数を用いて、全ての細菌濃度を計算した。嫌気性環境中で十分に混合した後、管を3日間にわたって37℃で放置し、これにより、便試料全体を90mlペプトン水中で均質化することにより、正確な連続平板計数分析を行った。
【0146】
例2
抽出ビフィズス菌ランチビオティックスの調製
0.05%L−システインHCl(Sigma)を補足したMRSブロス、ビフィズス菌低鉄培地(BLIM)中に、B. longum菌株DJO10Aを成長させた。次いで、100mM PIPESを補足したMRS寒天プレート又は100mM PIPESを補足したBLIM寒天プレートの表面を覆うために両ブロスを使用した。BBL Anaerobicシステム(BBL)又はBactron II Anaerobic/Environmental Chamber (Sheldon Manufacturing)を使用した嫌気性条件下で、2日にわたって37℃でプレートをインキュベートした。20のプレートを使用した。
【0147】
細胞及び寒天培地を圧搾し、そして日常的な方法を用いて、95%メタノールで抽出した。抽出は一晩進めておいた。最終体積をSpeedVac内に入れることにより、エタノールを除去し、そしてランチビオティックスを濃縮した。
【0148】
部分精製のためにMillipore CentriPrep濾過を用いてサイズ分画によって、残りの寒天を除去した。抽出物を、それぞれ15分間及び10分間にわたって1,500Xgで2回遠心分離することにより、Centriprep-30(30kDaカットオフ)で分画し、そして濾液(<30kDa)をCentriprep 10(10kDaカットオフ)に移した。これに、それぞれ40分間及び10分間にわたって3,000Xgで2回遠心分離を施した。濾液をCentriprep 3(3kDaカットオフ)に移した。これに、それぞれ95分間及び35分間にわたって3,000Xgで2回遠心分離を施した。分画された溶液(3〜10kDa)を収集し、そしてSpeedVac機によって濃縮した。
【0149】
濃縮ランチビオティックスを再懸濁し、そしてすぐに、拡散法を用いて試験した。MRS又はBLIMを有するように寒天プレートを形成し、寒天プレートにPIPESを補足し、そして各プレートの真ん中に5ミリメートルのウェルをカットした。懸濁されたランチビオティックス100マイクロリットルをウェル内に入れ、ウェル内の液体がなくなるまで拡散させておいた。次いで、プレートに指示菌株を被せた。
【0150】
ランチビオティックスは、指示菌株M. leuteus, L. lactis, S. aureus, S. epidermdis, E. coli, S. marcescens, 及びP. vulgarisの成長を阻害した。ランチビオティックスはこのアッセイでは、P. aeuruginosaを阻害することはなかった。しかし、これらのデータから、ランチビオティックスがP. aeuruginosaを阻害しないという結論を出すことはできない。
【0151】
例3
抽出ビフィズス菌ランチビオティックスの耐熱性
例2で得られたランチビオティックスを沸騰水浴内に10分間にわたって入れ、次いで、拡散法、及び指示菌株としてM. leuteusを用いて活性に関して試験した。ランチビオティックスは10分間の煮沸後に活性であった。
【0152】
例4
抽出ビフィズス菌ランチビオティックスのタンパク質分解分析
タンパク質分解酵素の原液を下記のように調製した:
ペプシン(Sigma No. P6887)を2mM Tris・HCl中又は水中にpH2、37℃、濃度34600U/ml(10mg/ml)で溶解した。
プロナーゼE(Sigma No. P5147)を20mM Tris・HCl中又は50mM リン酸緩衝液中にpH7.5、37℃、濃度5500U/ml(500mg/ml)で溶解した。
α−キモトリプシン(Sigma No. C4129)を80mM Tris・HCl中にpH7.8、25℃、濃度5100U/ml(100mg/ml)で溶解した。
プロテイナーゼK(Sigma No. P2308)を10mM Tris・HCl中にpH7.5、37℃、濃度6000U/ml(200mg/ml)で溶解した。
トリプシン(MP biochemical (ICI) No. 15021310)、pH7.6、25℃を、濃度4750U/ml(50mg/ml)で使用した。
サーモリシン(Fluka No. 88303)、pH7.2、37℃を、濃度6000U/ml(150mg/ml)で使用した。
【0153】
例2で得られたランチビオティックス100マイクロリットルを各アッセイで使用した。タンパク質分解酵素を、別個の100mlのランチビオティックスに下記のように添加した:ペプシン、5μl(173U);プロナーゼE、20μl(110U);α−キモトリプシン、20μl(102U);プロテイナーゼK、20μl(120U);トリプシン、20μl(95U);及びサーモリシン、20μl(120U)。ペプシン、プロナーゼE、プロテイナーゼK、又はサーモリシンを含有する試料を37℃でインキュベートし、そしてα−キモトリプシン又はトリプシンを含有する試料を25℃でインキュベートした。インキュベーションは24時間であった。消化後、試料をpH7.5まで中和し、そして全ての試料を、10分間にわたって沸騰水中でインキュベートすることにより、タンパク質分解酵素を除去した。
【0154】
拡散法、不活性化タンパク質分解酵素を含有する試料50μl、及び指示菌株としてM. leuteusを使用して、各試料の活性を試験した。抽出ランチビオティックスはペプシン(pH2)に対して、そしてプロナーゼE(pH7.5)に対して感受性であり、また他の4つのタンパク質分解酵素に対しては不感受性であった。
【0155】
本明細書中に引用した全ての特許、特許出願、及び刊行物の完全な開示内容、及び電子的に利用可能な材料(例えば、GenBank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列寄託、例えばSwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列寄託、及びGenBank及びRefSeqにおける注釈付きコード領域からの翻訳を含む)を、参考のため引用する。本出願の開示内容と本明細書中に参考のため引用した文書の開示内容との間に不一致が存在する場合には、本出願の開示内容が優先されるものとする。前記詳細な説明及び例は、理解しやすさのために提供されたにすぎない。そこからは不必要な限定はないと理解されるべきである。本発明は、示され記載された正確な詳細に限定されない。というのも、当業者には明らかな変更形が、特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲の中に含まれることになるからである。
【0156】
他に指示のない限り、明細書及び特許請求の範囲に用いられた成分、分子量などの量を表す全ての数値は、全ての事例において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。従って、他に反対の指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に示された数値パラメータは、本発明により得ようとする所期特性に応じて変化し得る概算値である。最低限でも、また、特許請求の範囲との同等の原則を制限しようという試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、そして通常の丸め技術を適用することにより解釈されるべきである。
【0157】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算値ではあるが、具体例に示された数値はできるかぎり正確に報告されている。しかしながら、全ての数値は本質的に、それぞれの試験測定値において見いだされる標準偏差から必然的に生じる所定の範囲を含んでいる。
【0158】
全ての見出しは読者の便宜のために記載したものであって、特にその旨の断りがない限り、見出しに続く本文の意味を限定するために使用されるものではない。
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列を含む単離された生物活性化合物であって、該化合物のアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有する、単離された生物活性化合物。
【請求項2】
ポリペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列の少なくとも1つの同類置換を含む、請求項1に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項3】
前記化合物が、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において、該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む、請求項1に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項4】
前記化合物が、大腸菌(E. coli)、セラチア・プロテウス(Serratia proteus)、又はサルモネラ(Salmonella)種の成長を阻害する、請求項3に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項5】
前記化合物が、グラム陽性菌のラクトバチルス(Lactobacillus)種、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、又はバチルス(Bacillus)種の成長を阻害する、請求項1に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項6】
前記化合物がビフィズス菌(Bifidobacterium)によって生成される、請求項1に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の単離された生物活性化合物及び食品を含む組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の単離された生物活性化合物及び医薬として許容される担体を含む組成物。
【請求項9】
単離ポリヌクレオチドであって:(a)該ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は(b)(a)のヌクレオチド配列の完全相補形を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記ヌクレオチド配列が、アミノ酸配列番号21を含むポリペプチドをコードする、請求項9に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項11】
異種調節配列に作動可能的に連結されている請求項9に記載の単離ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項9に記載の単離ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項13】
請求項9に記載の単離ポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項14】
単離ランチビオティックスであって、該ランチビオティックスが、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害することを特徴とする、単離ランチビオティックス。
【請求項15】
前記ランチビオティックスがアミノ酸配列を含み、該化合物のアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有する、請求項14に記載のランチビオティックス。
【請求項16】
前記グラム陰性菌が、大腸菌(E. coli)、セラチア・プロテウス(Serratia proteus)、又はサルモネラ(Salmonella)種である、請求項15に記載の単離ランチビオティックス。
【請求項17】
ランチビオティックスと食品とを含む組成物であって、該ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む、組成物。
【請求項18】
前記ランチビオティックスが食品の表面上に存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ランチビオティックスが食品中に存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記ランチビオティックスがアミノ酸配列を含み、該ランチビオティックスのアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記グラム陰性菌が、大腸菌(E. coli)、セラチア・プロテウス(Serratia proteus)、又はサルモネラ(Salmonella)種である、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
ランチビオティックス及び医薬として許容される担体を含む組成物であって、該ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する、組成物。
【請求項23】
ランチビオティックスの製造方法であって:
該ランチビオティックスを製造するために適した条件下において単離したビフィズス菌(Bifidobacterium)を成長させる工程を含み、該ビフィズス菌(Bifidobacterium)がランチビオティックスを生成することを特徴とする、方法。
【請求項24】
前記成長工程が、表面上でビフィズス菌(Bifidobacterium)を成長させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ビフィズス菌(Bifidobacterium)がB.ロンガム(B. longum)である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法によって製造されたランチビオティックス。
【請求項27】
ランチビオティックスの製造方法であって:
アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む微生物を成長させる工程を含み、該ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有し、該微生物が、該ポリペプチドを製造するために適した条件下で成長させられ、該微生物が該ポリペプチドを生成することを特徴とする、方法。
【請求項28】
前記微生物がさらに、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、又はこれらの組み合わせから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記成長工程が、前記微生物を表面上で成長させることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記微生物がビフィズス菌(Bifidobacterium)種である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
単離が、アルコールを含む組成物で抽出することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
アルコールがメタノールである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ランチビオティックスを食品に添加することを含む、ランチビオティックスの使用方法であって、該ランチビオティックスが、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む、方法。
【請求項34】
前記添加が、食品の表面にランチビオティックスを適用することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
ランチビオティックスを含むケーシング、フィルム、又はパッケージング材料の表面を食品に接触させることにより、ランチビオティックスが添加される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記添加が、ランチビオティックスを食品に加えることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ランチビオティックスが食品保存剤である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
アミノ酸配列を含む生物活性化合物を含む歯磨き剤であって、該化合物のアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有しており、該化合物が、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む、歯磨き剤。
【請求項39】
歯磨き剤がマウスウォッシュ又は練り歯磨きである、請求項38に記載の歯磨き剤。
【請求項40】
ランチビオティックスを含む組成物を動物に投与することを含むランチビオティックスの使用方法であって、該対象が、該ランチビオティックスによって阻害される微生物による感染症を有するか又はそのリスクがあり、そして該ランチビオティックスが、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる、方法。
【請求項41】
前記組成物が局所投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、医薬として許容される担体を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記動物がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
単離された生物学的活性ポリペプチドであって、該ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号2のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有する、単離された生物学的活性ポリペプチド。
【請求項45】
請求項44に記載のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項46】
ランチビオティックスを生成するビフィズス菌(Bifidobacterium)を含む組成物であって、該ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる、組成物。
【請求項47】
前記ビフィズス菌(Bifidobacterium)がカプセル封入されている、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物がさらに食品を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
ビフィズス菌(Bifidobacterium)を、これを必要とする動物に投与することを含む方法であって、該ビフィズス菌(Bifidobacterium)が、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含むランチビオティックスを生成することを特徴とする、方法。
【請求項1】
アミノ酸配列を含む単離された生物活性化合物であって、該化合物のアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有する、単離された生物活性化合物。
【請求項2】
ポリペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列の少なくとも1つの同類置換を含む、請求項1に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項3】
前記化合物が、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において、該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む、請求項1に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項4】
前記化合物が、大腸菌(E. coli)、セラチア・プロテウス(Serratia proteus)、又はサルモネラ(Salmonella)種の成長を阻害する、請求項3に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項5】
前記化合物が、グラム陽性菌のラクトバチルス(Lactobacillus)種、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、又はバチルス(Bacillus)種の成長を阻害する、請求項1に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項6】
前記化合物がビフィズス菌(Bifidobacterium)によって生成される、請求項1に記載の単離された生物活性化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の単離された生物活性化合物及び食品を含む組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の単離された生物活性化合物及び医薬として許容される担体を含む組成物。
【請求項9】
単離ポリヌクレオチドであって:(a)該ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は(b)(a)のヌクレオチド配列の完全相補形を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記ヌクレオチド配列が、アミノ酸配列番号21を含むポリペプチドをコードする、請求項9に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項11】
異種調節配列に作動可能的に連結されている請求項9に記載の単離ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項9に記載の単離ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項13】
請求項9に記載の単離ポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項14】
単離ランチビオティックスであって、該ランチビオティックスが、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害することを特徴とする、単離ランチビオティックス。
【請求項15】
前記ランチビオティックスがアミノ酸配列を含み、該化合物のアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有する、請求項14に記載のランチビオティックス。
【請求項16】
前記グラム陰性菌が、大腸菌(E. coli)、セラチア・プロテウス(Serratia proteus)、又はサルモネラ(Salmonella)種である、請求項15に記載の単離ランチビオティックス。
【請求項17】
ランチビオティックスと食品とを含む組成物であって、該ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む、組成物。
【請求項18】
前記ランチビオティックスが食品の表面上に存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ランチビオティックスが食品中に存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記ランチビオティックスがアミノ酸配列を含み、該ランチビオティックスのアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記グラム陰性菌が、大腸菌(E. coli)、セラチア・プロテウス(Serratia proteus)、又はサルモネラ(Salmonella)種である、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
ランチビオティックス及び医薬として許容される担体を含む組成物であって、該ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する、組成物。
【請求項23】
ランチビオティックスの製造方法であって:
該ランチビオティックスを製造するために適した条件下において単離したビフィズス菌(Bifidobacterium)を成長させる工程を含み、該ビフィズス菌(Bifidobacterium)がランチビオティックスを生成することを特徴とする、方法。
【請求項24】
前記成長工程が、表面上でビフィズス菌(Bifidobacterium)を成長させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ビフィズス菌(Bifidobacterium)がB.ロンガム(B. longum)である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法によって製造されたランチビオティックス。
【請求項27】
ランチビオティックスの製造方法であって:
アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む微生物を成長させる工程を含み、該ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有し、該微生物が、該ポリペプチドを製造するために適した条件下で成長させられ、該微生物が該ポリペプチドを生成することを特徴とする、方法。
【請求項28】
前記微生物がさらに、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、又はこれらの組み合わせから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記成長工程が、前記微生物を表面上で成長させることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記微生物がビフィズス菌(Bifidobacterium)種である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
単離が、アルコールを含む組成物で抽出することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
アルコールがメタノールである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ランチビオティックスを食品に添加することを含む、ランチビオティックスの使用方法であって、該ランチビオティックスが、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む、方法。
【請求項34】
前記添加が、食品の表面にランチビオティックスを適用することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
ランチビオティックスを含むケーシング、フィルム、又はパッケージング材料の表面を食品に接触させることにより、ランチビオティックスが添加される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記添加が、ランチビオティックスを食品に加えることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ランチビオティックスが食品保存剤である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
アミノ酸配列を含む生物活性化合物を含む歯磨き剤であって、該化合物のアミノ酸配列と配列番号21のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有しており、該化合物が、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含む、歯磨き剤。
【請求項39】
歯磨き剤がマウスウォッシュ又は練り歯磨きである、請求項38に記載の歯磨き剤。
【請求項40】
ランチビオティックスを含む組成物を動物に投与することを含むランチビオティックスの使用方法であって、該対象が、該ランチビオティックスによって阻害される微生物による感染症を有するか又はそのリスクがあり、そして該ランチビオティックスが、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる、方法。
【請求項41】
前記組成物が局所投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、医薬として許容される担体を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記動物がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
単離された生物学的活性ポリペプチドであって、該ポリペプチドのアミノ酸配列と配列番号2のアミノ酸配列とが少なくとも80%の同一性を有する、単離された生物学的活性ポリペプチド。
【請求項45】
請求項44に記載のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項46】
ランチビオティックスを生成するビフィズス菌(Bifidobacterium)を含む組成物であって、該ランチビオティックスがグラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含んでいる、組成物。
【請求項47】
前記ビフィズス菌(Bifidobacterium)がカプセル封入されている、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物がさらに食品を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
ビフィズス菌(Bifidobacterium)を、これを必要とする動物に投与することを含む方法であって、該ビフィズス菌(Bifidobacterium)が、グラム陰性菌の外膜を損傷しない状態において該グラム陰性菌の成長を阻害する特徴を含むランチビオティックスを生成することを特徴とする、方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(A)】
【図8(B)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図16−4】
【図16−5】
【図16−6】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(A)】
【図8(B)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図16−4】
【図16−5】
【図16−6】
【公表番号】特表2010−534063(P2010−534063A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517194(P2010−517194)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/070511
【国際公開番号】WO2009/058440
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510017468)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/070511
【国際公開番号】WO2009/058440
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510017468)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]